JP2004191182A - タンパク質分子の活性化状態を検査する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】タンパク質分子の活性化状態を迅速かつ簡便に検査する方法を提供すること。
【解決手段】タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子を反応させる工程と、当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する工程とを具備することを特徴とする方法。
【選択図】 なし
【解決手段】タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子を反応させる工程と、当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する工程とを具備することを特徴とする方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質分子の活性化状態を検査する方法に関し、より具体的には、タンパク質分子が活性化されているか否かを検査する方法、および活性化状態にあるタンパク質分子と活性化状態にないタンパク質分子との存在比を検査する方法に関する。とりわけ、本発明の方法は、細胞内信号伝達分子の活性化状態の分析に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
タンパク質の機能解析は、タンパク質がどのような活性を持ち、何と相互作用して、どのような反応を引き起こしているかを調べることであり、それは、一つのタンパク質だけではなく、連続する反応系あるいは一連のタンパク質の相互作用の分子機構を理解することである。細胞が刺激を受けて応答する際には、細胞内で劇的な変化が起きている。細胞外からの刺激を、まず最初に受容体などが感知し、受容体の構造が変化して細胞内領域で何らかの酵素活性の変化が起こる。このようにして活性化された受容体は、細胞内でシグナル伝達分子と相互作用し、シグナル伝達分子が活性化される。これらのシグナル伝達分子群の複雑な連係プレイによって核をはじめとした細胞内各所に司令が送られることで、細胞の応答様式、増殖調節が管理されている。シグナル伝達分子は、それ自身が何らかの修飾を受け(GDP/GTP交換反応、リン酸化、脱リン酸化、分解など)、構造変化し、下流のシグナル伝達分子と相互作用してシグナルを伝えていく。タンパク質リン酸化は、シグナル伝達の中核となる反応であり、タンパク質の中でリン酸化されるアミノ酸は、セリン、スレオニン、チロシンである。
【0003】
従来、このタンパク質リン酸化反応の測定方法として、活性化状態の測定対象となるタンパク質分子の基質となるタンパク質分子を、その特異的抗体などで精製し、ウェスタンブロッティングで検出する方法が知られている。すなわち、細胞抽出液を、SDS-PAGE電気泳動で分離し、ニトロセルロースなどの膜へ目的のタンパク質を吸着させ、その後、目的のタンパク質の活性型を認識する抗体と、その抗体を認識する標識抗体を用いて検出する方法である。
【0004】
また、以下のような測定方法も知られている。まず、遺伝子操作により作製した遺伝子を大腸菌などに導入し、目的のタンパク質の基質となるタンパク質とアフィニティカラムで精製可能なタンパク質との融合タンパク質を大量に得る。当該融合タンパク質を、細胞抽出液より抗体などで精製した目的のタンパク質に加え、ラジオアイソトープで融合タンパク質をラベルする。それをSDS-PAGE電気泳動で分離し、融合タンパク質のバンドの強さをオートラジオグラフィーで検出する。
【0005】
また近年、プロテインキナーゼやホスファターゼを蛍光ベースで高処理量スクリーニングする方法が示されている(特許文献1)が、基質となる分子が高価なペプチドを用いており、技術を要する競合法にて分析している点で問題を有する。
【0006】
このように、タンパク質の活性化に関連した従来法は何れも、電気泳動法やブロッティング法(ウェスタンブロッティング等)のように、極めて不便で複雑な実験作業を必要とし、多大な労力および時間を要する問題がある。更に、32P等の放射性アイソトープを用いる場合には、関係法令によって取り扱い者が限定される問題がある。またブロッティング法は、電気泳動を用いるため多検体・多項目を処理するのが困難である。さらに、活性化の強弱を数値化するためにはスキャナー等でバンドのパターンを取込み、その濃淡から得なければならず、閾値が狭くその範囲内にするのは、熟練と経験を要する。また、ペプチドを基質に用いることは、その都度合成しなければならず手間と時間を要する。
【0007】
更に、従来のタンパク質の活性化を検査する方法は、何れも検体の数に応じて異なる容器中で検体毎に反応させ測定することが必要である。
【0008】
【特許文献1】
特表2001−526380号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情の下になされ、本発明の目的は、タンパク質の活性化状態を測定する既存の検査方法が有する以下の問題点
・検査時間が長い
・多量の検体量、試薬量を必要とする
・1検体の判定につき複数判定が必要である
・検査価格が高価である
・工程、判定に熟練を要する
・全自動化が困難である
等を解消する、検査方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を提供する。
(1)タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子を反応させる工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する工程とを具備することを特徴とする方法。
(2)タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子を反応させ、該基質分子に分子量の変化を起こさせる工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を、該基質分子の分子量の変化に基づいて検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。
(3)タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用よって分子量の変化を伴う変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を、該基質分子の分子量の変化に基づいて検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。
(4)単一の溶液中で複数のタンパク質分子群の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査される複数のタンパク質分子群と、活性化状態にある該タンパク質分子群のそれぞれの作用によって変化が生じる各々の基質分子群であって、区別して検出され得る異なる標識物質で標識された基質分子群とを反応させる工程と、
前記反応後の各々の基質分子群に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する各々の検出用分子群を反応させる工程と、
前記基質分子群の各々に対して、当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。
(5)(1)〜(4)の何れか1に記載の、タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
前記基質分子を標識する標識物質が蛍光物質であり、
前記基質分子に生じる変化を、前記蛍光物質のブラウン運動を利用して、蛍光相関分光法(Fluoresence Correlation Spectroscopy)によって測定することを特徴とする方法。
(6)タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、第一の蛍光物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子であって前記第一の蛍光物質とは区別して検出される第二の蛍光物質で標識された検出用分子を反応させる第二の工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を、前記第一の蛍光物質および前記第二の蛍光物質の相互相関分析により検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
[第一の実施の形態]
以下、本発明の一実施形態を、「活性化状態を検査されるタンパク質分子」が、基質分子をリン酸化するリン酸化酵素である場合について説明する。本説明において図1のリン酸化酵素についての説明図も適宜参照されたい。ただし本発明が本実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0012】
本実施形態は、
(1)活性化状態を検査されるリン酸化酵素と、蛍光物質で標識された基質分子であって活性化状態にあるリン酸化酵素によってリン酸化される基質分子とを反応させる第一の工程と、
(2)前記反応後の基質分子に対して、リン酸化された基質分子を特異的に認識する検出用分子(例えば抗体)を反応させ、基質分子の分子量を増大させる第二の工程と、
(3)リン酸化された基質分子および/またはリン酸化されていない基質分子を、該基質分子の分子量の変化に基づいて検出する第三の工程と
を具備する。
【0013】
{第一の工程}
本実施形態において、「活性化状態を検査されるリン酸化酵素」は、活性化状態にあるか否かが未知のリン酸化酵素である。具体的に「活性化状態を検査されるリン酸化酵素」は、リン酸化酵素が活性化状態にあるか否かを検査したい細胞から、検査したいリン酸化酵素を、当該酵素が失活しないように適切に抽出した抽出物であり得る。
【0014】
ここでリン酸化酵素は、任意のリン酸化酵素であり得、例えば、細胞内シグナル伝達の反応を担うセリン/トレオニンキナーゼ、チロシンキナーゼ等が含まれる。より具体的には、MAPキナーゼ、更に具体的には、Jun-N末端キナーゼ(c-Jun N-terminal kinase、以下JNKとも称する)、細胞外シグナル制御キナーゼ(extracellular signal-regulated kinase、以下ERKとも称する)が挙げられる。
【0015】
なお、本発明の方法は、リン酸化酵素の活性化状態を検査することに限定されるものではなく、活性化状態にあるか否かが未知の任意のタンパク質分子に利用できるものである。本発明において、タンパク質分子は、当該タンパク質分子と基質分子との反応溶液をそのまま測定、検出に用いることを考慮すると、細胞から取り出したものを用いることが好ましい。
【0016】
本実施形態において、「蛍光物質で標識された基質分子であって活性化状態にあるリン酸化酵素によってリン酸化される基質分子」は、活性化状態にある前記リン酸化酵素によってリン酸化される分子であり、リン酸化されたことを検出できるように蛍光物質で標識されている。なお、本発明において、基質分子を標識する標識物質は、基質分子を追跡可能なものであればよく、例えば蛍光物質、金コロイドなどの粒子が使用可能であり、好ましくは、蛍光物質を使用することができる。蛍光物質としては、FITC(fluorescein isothiocyanate)、Cy3(Amersham社)、GFPやYFP等の蛍光タンパク質、金属錯体等が挙げられる。
【0017】
本実施形態において、リン酸化酵素がJNKである場合、当該酵素の基質であるc-Junを基質分子として使用することができる。なお、c-Junは、該タンパク質分子の全アミノ酸配列を使用してもよいし、あるいはJNKによってリン酸化されるアミノ酸残基(セリン残基)を含む部分アミノ酸配列を基質として使用してもよい。
【0018】
基質分子がタンパク質である場合、遺伝子工学的手法を用いて、基質タンパク質分子と蛍光タンパク質との融合タンパク質を作製することにより、蛍光標識された基質分子を作製してもよい。
【0019】
また、基質分子は、後述の実施例に記載されるとおり、基質分子の回収、精製を、ビーズを用いて簡便に行うことができるように、ビーズとの結合のための連結分子を備えていてもよい。例えば、ビーズとの結合のための連結分子として、GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)を用い、GSTと基質分子の融合タンパク質を作製し、これを基質分子として用いてもよい。GSTと基質分子の融合タンパク質を基質として用いた場合、ビーズ側の連結分子にはグルタチオンが使用され、これにより、ビーズと基質分子の結合が可能となり、基質分子の回収、精製が簡便になる。なお、基質分子をビーズで回収するための連結分子は、GSTとグルタチオンの組み合わせに限定されず、アビジンとビオチンの組み合わせ、抗原と抗体の組み合わせ、(His)6(ヒスチジンが6個つらなったもの)とNi(ニッケル)の組み合わせ等、連結可能な分子の組み合わせであれば任意の連結分子を使用することができる。
【0020】
前記リン酸化酵素と前記基質分子との反応は、反応に適した緩衝液中で、適切な温度において行うことができる。
【0021】
{第二の工程}
第二の工程において、前記第一の工程による反応後の基質分子に対して、「リン酸化された基質分子を特異的に認識する検出用分子(例えば抗体)」を反応させる。検出用分子として抗体を使用した場合、第二の工程の反応により、基質分子に抗体が結合する。これにより、抗体が結合した基質分子は、抗体が結合する前と比べて、その分子量は増大する。ここで使用する抗体は、リン酸化された基質分子のみを特異的に認識して結合するものであって、リン酸化されていない基質分子に対しては結合しないものである。ここで抗体分子は、基質分子の分子量の変化を引き起こすために用いられるものである。
【0022】
このように本発明の方法では、検出用分子として、基質分子の分子量の変化を引き起こすことが可能な分子を用いることができ、これは抗体分子に限定されない。すなわち、検出用分子は、リン酸化された基質分子とリン酸化されていない基質分子とを識別し、特異的にどちらか一方のみに結合して、基質分子の分子量変化を引き起こす分子であれば任意のものを使用することができる。抗体分子以外に、基質分子のチロシン残基のリン酸化を認識するSH2ドメイン(Src homology 2 domain)を含むペプチド分子を使用することができる。
【0023】
例えば、基質分子がc-Junである場合、検出用分子として、リン酸化されたc-Jun分子のリン酸化された部分を特異的に認識する抗体(例えば、anti-phosphoserine抗体)を使用することができる。このような抗体は、商業的に入手可能なものを使用してもよいし、当業者に周知の手法を用いて作製してもよい。
【0024】
あるいは、検出用分子として、基質分子を標識している標識物質とは別の標識物質により標識された分子(例えば抗体分子)を用いることも可能である。例えば、基質分子を標識している第一の蛍光物質とは異なる第二の蛍光物質により標識された分子(例えば抗体分子)を検出用分子として用い、第二の蛍光物質を特異的に検出することにより、タンパク質分子の基質分子に対する作用の有無および/または程度を検出することができる。第一の蛍光物質と第二の蛍光物質の2種類の蛍光物質の挙動を追跡する手法として、蛍光相関分光法(FCS)の相互相関分析を使用することができる。
【0025】
このように、検出用分子として、第二の標識物質により標識された検出用分子(例えば抗体分子)を用いた場合、当該検出用分子の基質への結合が、FCSにて識別不可能な程度の分子量の違いしかもたらさなくても、第二の標識物質の存在により検出用分子の基質への結合の有無を捉えることが可能となる。
【0026】
{第三の工程}
第三の工程において、リン酸化された基質分子および/またはリン酸化されていない基質分子を、当該基質分子の分子量の変化に基づいて検出する。
【0027】
本発明において「検出する」とは、活性化状態にあるタンパク質分子の作用によって変化が生じた(本実施形態ではリン酸化された)基質分子の存在の有無を検出してもよいし、あるいは、活性化状態にあるタンパク質分子の作用によって変化が生じた基質分子と変化が起こっていない基質分子との存在比を検出してもよい。
【0028】
ここで変化が生じた(本実施形態ではリン酸化された)基質分子の存在が検出されるということは、当該基質分子をリン酸化するリン酸化酵素が活性化状態にあることを意味する。また、ここで変化が生じた(本実施形態ではリン酸化された)基質分子の存在比率が高いということは、当該基質分子をリン酸化するリン酸化酵素が高い比率で活性化状態にあることを意味する。
【0029】
本発明において検出は、好ましくは、基質分子に生じる変化を、基質分子を標識する蛍光物質のブラウン運動を利用して蛍光相関分光法(Fluoresence Correlation Spectroscopy、以下FCSともいう)で測定することにより行うことができる。FCSを用いて、検出用分子の結合により分子量の増大した基質分子と、分子量の変化が起こらなかった基質分子とを、これら基質分子の拡散時間の違いによって区別して検出することができる。あるいは、FCSを用いて、第二の蛍光物質で標識された検出用分子の結合により当該蛍光物質で標識された基質分子と、第二の蛍光物質で標識されなかった基質分子とを、標識の有無により区別して検出することができる。
【0030】
{FCSについて}
以下、FCSについて説明する。
【0031】
FCSの基本的な特徴は、顕微鏡視野下の極微小領域における平均数個の蛍光分子のブラウン運動に由来する蛍光の「ゆらぎ」を通して、均一系の溶液に含まれる蛍光分子の濃度や分子間作用を物理的な分離過程を経ずに、しかもほぼ実時間でモニターできることにある。このように、FCSは、溶液中の自由な分子運動を検出しているため、幅広い研究対象に応用できると期待されている技術である。
【0032】
FCSの測定原理、光学系および測定系の構成については、特開2000−125900(核酸配列の増幅反応を用いた標的核酸の検出方法/金城政孝)を参照することができる。
【0033】
すなわち、レーザ光励起の共焦点光学系を試料測定部とし、そこでの蛍光発光を検出器で捉えた後、ディジタル相関器でデータの記録と解析を行うようになっている。励起光であるレーザ光は、試料溶液のほんの1点に集中され、かつ共焦点光学系の特性からその1点からの蛍光発光を検出系でとらえることになる。実際の溶液中の測定領域は、理想的な点ではなく円柱状の領域となる。その大きさは例えば、直径約400 nm、軸長約2000 nm、容積フェムトリットル(10-15)である。FCSの測定領域は溶液であり、領域中に存在する蛍光分子はブラウン運動を行っている。したがって、一定の測定領域における分子の数は常に一定ではなく、ある値を中心に変動して「数ゆらぎ」が起きている。更にこの数ゆらぎに起因して、測定される蛍光の強度に「強度ゆらぎ」が発生する。この蛍光強度のゆらぎを解析することで、拡散速度に関する情報と分子の数に関する情報を得ることができる。
【0034】
FCSは、単一の蛍光物質の挙動を解析する自己相関分析および2種類の蛍光物質の挙動を解析する相互相関分析の両方を行うことができる技術である。
【0035】
{他のタンパク質の例について}
以上、活性化状態を検査するタンパク質分子としてリン酸化酵素を例に説明してきたが、他のタンパク質の例について以下で説明する。適宜図1の模式図も参照されたい。
【0036】
例えば脱リン酸化酵素の活性化状態を検査する場合、当該酵素は活性化状態にあると、基質分子を脱リン酸化する。この脱リン酸化反応が起こったことを、上述したような「リン酸化された基質にのみ結合する抗体」を検出用分子として使用して検出することができる。すなわち、前記抗体が基質分子に結合する割合が高いほど、リン酸化されている基質が残存している割合が高く、脱リン酸化反応が起こっていないことを意味し、これは活性化状態にある脱リン酸化酵素の比率が低いことを意味する。逆に、前記抗体が基質分子に結合する割合が低いほど、脱リン酸化反応が起こっていることを意味し、これは活性化状態にある脱リン酸化酵素の比率が高いことを意味する。
【0037】
また、別の例としてタンパク質分解酵素の活性化状態を検査する場合、当該酵素は活性化状態にあると、基質分子を分解し、当該基質の分子量を小さくする。タンパク質分解酵素のように、検査されるタンパク質分子が、基質分子に対して分子量の変化を伴う反応を引き起こす場合には、上述の検出用分子の使用は不要となる。すなわち、この場合、分解されて分子量の小さくなった基質分子と、分解作用を受けず分子量の変化していない基質分子とは、その分子量の差に基づいて直接識別して検出することが可能である。
【0038】
このように本発明の検査方法は、任意のタンパク質分子の活性化状態を検査する方法として幅広く応用することが可能である。
【0039】
[第二の実施の形態]
以上、第一の実施の形態においては、1種類のタンパク質分子の活性化状態を検査する方法について説明したが、本実施形態では、複数のタンパク質分子群の活性化状態を、単一の溶液中で検査する方法について説明する。なお、上述の第一の実施の形態の説明も適宜参照されたい。
【0040】
すなわち、本実施形態は、
複数のタンパク質分子群の活性化状態を検査する方法であって、
(1)活性化状態を検査される複数のタンパク質分子群と、活性化状態にある該タンパク質分子群のそれぞれの作用によって変化が生じる各々の基質分子群であって、区別して検出され得る異なる標識物質で標識された基質分子群とを反応させる第一の工程と、
(2)前記反応後の各々の基質分子群に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する各々の検出用分子群を反応させる第二の工程と、
(3)前記基質分子群の各々に対して、当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する第三の工程と
を具備する。
【0041】
本実施の形態において、複数のタンパク質分子群とは、2種類以上の被検タンパク質を意味し、例えば2〜5種類のタンパク質をいう。
【0042】
本実施形態において、「活性化状態を検査される複数のタンパク質分子群」とは、活性化状態にあるか否かが未知の複数のタンパク質分子である。具体的に、当該複数のタンパク質分子群は、当該複数のタンパク質が活性化状態にあるか否かを検査したい細胞から、当該複数のタンパク質をその活性化状態を維持したまま適切に抽出した抽出物であり得る。
【0043】
例えば、複数のタンパク質分子として、シグナル伝達に関与する一連のタンパク質分子が挙げられる。例えば、シグナル伝達に関与する複数のプロテインキナーゼが挙げられる。より具体的には、複数のタンパク質分子として、後述の実施例で記載するとおり、Jun-N末端キナーゼ(c-Jun N-terminal kinase)および細胞外シグナル制御キナーゼ(extracellular signal-regulated kinase)が挙げられる。
【0044】
本実施形態の第一の工程において、前記複数のタンパク質分子群と、活性化状態にあるこれらタンパク質分子のそれぞれの作用によって変化が生じる対応の各基質分子群とを反応させる。ここで、基質分子群は、それぞれ区別して検出され得る異なる標識物質で識別標識されている。区別して検出され得る標識物質とは、好ましくは、区別して検出され得る蛍光物質であり、例えば、FITC(励起波長490nm、放射波長520nm)、Cy3(励起波長550nm、放射波長570nm)、Cy5(励起波長649nm、放射波長670nm)を使用することができる。このように区別して検出され得る蛍光物質を使用して、各蛍光物質を励起するそれぞれの励起光を試料に照射し、試料中の複数種類の蛍光物質を励起する。各蛍光物質から放射される異なる放射波長は、それぞれ対応する光検出器で検出される。このように基質分子群を、区別して検出され得る標識物質で識別標識しておけば、単一試料溶液中に含まれる複数のタンパク質群の活性化状態を1回の測定で検査することが可能となる。
【0045】
なお、このような本実施形態において、検出のための装置は、複数の励起光を試料に照射するための複数の光源、および試料から放射される複数の放射光を区別して検出するための複数の光検出器を備えている必要がある。
【0046】
{第二の工程}
第二の工程では、複数の基質分子群のそれぞれに対して、タンパク質(活性化状態にある)の作用を受けて変化が生じた基質分子または作用を受けていない基質分子の何れか一方を特異的に認識するそれぞれの検出用分子を反応させる。
【0047】
例えば、検査される複数のタンパク質群が、Jun-N末端キナーゼ(JNK)および細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)である場合、検出用分子としては、リン酸化された各基質分子(すなわちリン酸化されたc-Junおよびリン酸化されたMBP(Myelin Basic Protein))のみを特異的に認識する抗体分子(すなわちanti-phospho-Jun抗体およびanti-phopho-MBP抗体)を使用することができる。
【0048】
なお、第一の実施の形態で上述したとおり、検出用分子は、これら抗体分子に限定されず、検出のために基質分子の分子量変化を引き起こすことが可能な任意の分子、および基質分子に第二の標識物質を結合させることが可能な任意の分子を使用することもできる。
【0049】
{第三の工程}
第三の工程では、第一の実施の形態と同様、区別して検出され得る標識物質で標識された基質分子群の各々に対して、当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する。
【0050】
{本発明の効果}
本発明は、標識された基質に対して特異的におこる活性化タンパク質の反応を分子レベルで捉え、基質の反応部分を検出用抗体(例えば抗体)で認識し、複数の経過時点で標識物質を測定し、その時間的な位置変化を検出する。この位置変化を定量的に検出することにより、標識した基質が活性化タンパク質により修飾された場合の特異的反応を、動的に計測することが可能である。従って、本発明は、電気泳動による分離、膜へのブロッティング、オートラジオグラフィーなどの工程は不要であり、従来法に比較して検査時間を短縮し検査工程を簡便化することが可能である。さらに、遺伝子操作を用いることで、基本となるプラスミドに目的のタンパク質をコードする遺伝子を挿入すればよく、時間と手間が省かれ経済的である。
【0051】
また、従来のタンパク質の活性化状態を検査する手法では、何れも検体の数に応じて異なる容器中で検体毎に反応させ測定することが必要であった。しかし、本発明では、異なる特異性を有した基質タンパク質を、それぞれ異なる標識物質で標識することにより、その各々の標識物質に動的変化が生じたかを検出することができる。従って、同一容器内で異なる活性タンパク質に特異性を有する複数の基質を混合しても同時に判定が可能であり、試料の必要量の低減、反応容器数の低減が可能となり、検査の簡便化をはかることができる。また、全自動のシステム化も可能である。
【0052】
【実施例】
以下、本発明の実施例について記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
以下の実施例1および2は、上述の第一の実施の形態に対応し、実施例3および4は、上述の第二の実施の形態に対応する例である。実施例1および3は、被検タンパク質をまず免疫沈降させた反応例であり、実施例2および4は、被検タンパク質を免疫沈降させず、まず基質分子と反応させた反応例である。なお、本実施例に記載の反応例は、The Journal of Immunology, 2001, 166: 1641-1649に示すように従来の測定法に従っており、得られた結果は信頼できるものである。
【0054】
〈実施例1〉
マウス由来のマクロファージ様細胞株J774を、1μg/mL LPS(リポポリサッカライド;Sigmaより購入)を用いて、10分間、37℃で刺激した。活性化した細胞を、4℃に冷やしたlysis buffer(1% Triton X-100、0.1% SDS、10mM Tris-HCl(pH 7.4)、1mM sodium deoxycholate、4mM EDTA、1mM Na3VO4、0.01mg/mL leupeptin、1mM PMSF、0.01mg/mL aprotinin)1mLで溶解し、15,000rpm、10分遠心した。上清を別のチューブに移し、anti−JNK1抗体およびanti−JNK2抗体(Santa CruzBiotechnology)を加え、4℃で一昼夜反応させた後、protein G-Sepharoseビーズ(アマシャム社)を加え免疫沈降を行い不要物を取り除いた。それに、kinase buffer(20mM HEPES(pH 7.4)、100mM NaCl、5mM MnCl2、5mM MgCl2、0.04mM ATP)、FITCラベルしたGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質(UBI社)を加え、30℃、30分反応させた。その後、Glutathione-Sepharoseビーズを加え、反応後不要物を洗浄操作にて取り除き、FITCラベルしたGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質をビーズから解離した。その後、解離状態の基質を抗原抗体反応が可能な条件までPBSで希釈し、anti-phosphoserine抗体(Sigma社)またはanti-phospho-Jun抗体(UBI社)と反応させ、FCSにて測定した。その結果を図1および表1に示す。
【0055】
ここで、GST-c-Jun(1-79)融合タンパク質のFITCラベルは、NHS-Fluorescein(PIERCE社)を用いてPIERCE社の方法に従って行った。
【0056】
【表1】
【0057】
活性化処理を行った細胞中に含まれるJNKは活性化状態にあるため、基質分子をリン酸化し、当該リン酸化部位を特異的に認識する抗体の結合により、基質分子の分子量は増大した。一方、活性化処理を行わなかった細胞中に含まれるJNKは活性化状態にないため、基質分子は未反応の状態にあり、その分子量は、「蛍光標識された基質」のみを測定した場合と同じであった。
【0058】
〈実施例2〉
マウス由来のマクロファージ様細胞株J774を、1μg/mL LPS(リポポリサッカライド;Sigmaより購入)を用いて、10分間、37℃で刺激した。活性化した細胞を、4℃に冷やしたlysis buffer(1% Triton X-100、0.1% SDS、10mM Tris-HCl(pH 7.4)、1mM sodium deoxycholate、4mM EDTA、1mM Na3VO4、0.01mg/mL leupeptin、1mM PMSF、0.01mg/mL aprotinin)1mLで溶解し、15,000rpm、10分遠心した。上清を別のチューブに移し、FITCラベルしたGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質(UBI社)を加え、4℃で一昼夜反応させた。その後、Glutathione-Sepharoseビーズを加えて、反応したFITCラベルGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質を集め、それにkinase buffer(20mM HEPES(pH 7.4)、100mM NaCl、5mM MnCl2、5mM MgCl2、0.04mM ATP)を加え反応させた。それを、anti-phosphoserine抗体(Sigma社)またはanti-phospho-Jun抗体(UBI社)と反応させ、FCSにて測定した。その結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
活性化処理を行った細胞中に含まれるJNKは活性化状態にあるため、基質分子をリン酸化し、その結果、当該リン酸化部位を特異的に認識する抗体の結合により分子量の増大した基質分子(相関時間約250μ秒の分子)が存在していた。一方、活性化処理を行わなかった細胞中に含まれるJNKは活性化状態にないため、基質分子は未反応の状態にあり、前述の分子量の増大した基質分子は存在しなかった。
【0061】
〈実施例3〉
マウス由来のマクロファージ様細胞株J774を、1μg/mL LPS(リポポリサッカライド;Sigmaより購入)を用いて、10分間、37℃で刺激した。活性化した細胞を、4℃に冷やしたlysis buffer(1% Triton X-100、0.1% SDS、10mM Tris-HCl(pH 7.4)、1mM sodium deoxycholate、4mM EDTA、1mM Na3VO4、0.01mg/mL leupeptin、1mM PMSF、0.01mg/mL aprotinin)1mLで溶解し、15,000rpm、10分遠心した。上清を別のチューブに移し、anti−JNK1抗体およびanti−JNK2抗体(Santa CruzBiotechnology)並びにanti−ERK1抗体およびanti−ERK2抗体(Santa CruzBiotechnology)を加え、4℃で一昼夜反応させた後、protein G-Sepharoseビーズ(アマシャム社)を加え免疫沈降を行い不要物を取り除いた。それに、kinase buffer(20mM HEPES(pH 7.4)、100mM NaCl、5mM MnCl2、5mM MgCl2、0.04mM ATP)、FITCラベルしたGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質(UBI社)およびCy3標識したGST-MBP(Myelin Basic protein)融合タンパク質を加え、30℃、30分反応させた。その後、anti-phospho-Jun抗体とanti-phospho-MBP抗体(UBI社)を反応させ、次にprotein G-Sepharoseビーズを加え免疫沈降を行い、リン酸化された蛍光標識基質を得た。ビーズから解離状態にある基質をFCSにて測定した。その結果を表3および表4に示す。なお、ここでビーズから基質を解離させるための解離処理(尿素処理)を行ってもよい。
【0062】
ここで、GST-MBP(1-79)融合タンパク質のCy3ラベルは、Cy3 labelling kit(Amersham社)を用いてAmersham社の方法に従って行った。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
活性化処理を行った細胞中に含まれるJNKは活性化状態にあるため、基質分子をリン酸化し、その結果、当該リン酸化部位を特異的に認識する抗体の結合により分子量の増大した基質分子(相関時間約250μ秒の分子)が存在していた(表3)。一方、活性化処理を行わなかった細胞中に含まれるJNKは活性化状態にないため、基質分子は未反応の状態にあり、前述の分子量の増大した基質分子は存在しなかった(表3)。
【0066】
また、活性化処理を行った細胞中に含まれるERKは活性化状態にあるため、基質分子をリン酸化し、その結果、当該リン酸化部位を特異的に認識する抗体の結合により分子量の増大した基質分子(相関時間約250μ秒の分子)が存在していた(表4)。一方、活性化処理を行わなかった細胞中に含まれるERKは活性化状態にないため、基質分子は未反応の状態にあり、前述の分子量の増大した基質分子は存在しなかった(表4)。
【0067】
このように、本発明では、単一の試験管内に含まれる複数のタンパク質(本実施例ではJNKとERK)の活性化状態を、それぞれのタンパク質を分離することなく混在させた状態で測定することができる。また、この場合、JNKの基質を標識する蛍光物質(FITC)とERKの基質を標識する蛍光物質(Cy3)のそれぞれを励起可能な(2つの)光源と、各蛍光物質が放射する各放射光を検出可能な(2つの)検出器とを備えた装置を用いて測定を行うことにより、1回の測定で複数のタンパク質の活性化状態を検査することが可能である。
【0068】
〈実施例4〉
マウス由来のマクロファージ様細胞株J774を、1μg/mL LPS(リポポリサッカライド;Sigmaより購入)を用いて、10分間、37℃で刺激した。活性化した細胞を、4℃に冷やしたlysis buffer(1% Triton X-100、0.1% SDS、10mM Tris-HCl(pH 7.4)、1mM sodium deoxycholate、4mM EDTA、1mM Na3VO4、0.01mg/mL leupeptin、1mM PMSF、0.01mg/mL aprotinin)1mLで溶解し、15,000rpm、10分遠心した。上清を別のチューブに移し、FITCラベルしたGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質(UBI社)およびCy3標識したGST-MBP(Myelin Basic protein)融合タンパク質を加え、4℃で一昼夜反応させた。その後、Glutathione-Sepharoseビーズを加えて、反応したFITCラベルGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質およびCy3標識したGST-MBP(1-79)融合タンパク質を集め、それにkinase buffer(20mM HEPES(pH 7.4)、100mM NaCl、5mM MnCl2、5mM MgCl2、0.04mM ATP)を加え反応させた。それを、anti-phosphoserine抗体(Sigma社)とanti-phosphothreoine抗体(Sigma社)、またはanti-phospho-Jun抗体(UBI社)とanti-phospho-MBP抗体(UBI社)を反応させ、FCSにて測定した。これにより、実施例3と同様の結果を得た。
【0069】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の検査方法によれば、タンパク質分子の活性化状態の有無および/または活性化状態の程度を検査することができる。また、本発明の検査方法によれば、単一の試験管内において、複数のタンパク質の活性化状態を1回の測定で検査することも可能である。
【0070】
また、本発明の検査方法の利点としては、タンパク質の活性化状態を、単数ずつ、もしくは複数を同一の溶液中で高速に判定していくことができる。従って、本発明の方法は、従来の検査方法に比較して、検査時間の短縮、検査工程の簡便化、検体量、試薬量の低減、試薬などの材料費の節減、全自動化システムが可能である等の利点を有する。
【0071】
更に本発明の検査方法は、細胞内の所定のタンパク質分子が活性化状態にあるか否かを検査することにより、細胞の状態(例えば癌化状態)を調べる際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の検査方法における反応を模式的に示す図。
【図2】FITC標識c-Jun融合タンパク質の相関曲線を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質分子の活性化状態を検査する方法に関し、より具体的には、タンパク質分子が活性化されているか否かを検査する方法、および活性化状態にあるタンパク質分子と活性化状態にないタンパク質分子との存在比を検査する方法に関する。とりわけ、本発明の方法は、細胞内信号伝達分子の活性化状態の分析に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
タンパク質の機能解析は、タンパク質がどのような活性を持ち、何と相互作用して、どのような反応を引き起こしているかを調べることであり、それは、一つのタンパク質だけではなく、連続する反応系あるいは一連のタンパク質の相互作用の分子機構を理解することである。細胞が刺激を受けて応答する際には、細胞内で劇的な変化が起きている。細胞外からの刺激を、まず最初に受容体などが感知し、受容体の構造が変化して細胞内領域で何らかの酵素活性の変化が起こる。このようにして活性化された受容体は、細胞内でシグナル伝達分子と相互作用し、シグナル伝達分子が活性化される。これらのシグナル伝達分子群の複雑な連係プレイによって核をはじめとした細胞内各所に司令が送られることで、細胞の応答様式、増殖調節が管理されている。シグナル伝達分子は、それ自身が何らかの修飾を受け(GDP/GTP交換反応、リン酸化、脱リン酸化、分解など)、構造変化し、下流のシグナル伝達分子と相互作用してシグナルを伝えていく。タンパク質リン酸化は、シグナル伝達の中核となる反応であり、タンパク質の中でリン酸化されるアミノ酸は、セリン、スレオニン、チロシンである。
【0003】
従来、このタンパク質リン酸化反応の測定方法として、活性化状態の測定対象となるタンパク質分子の基質となるタンパク質分子を、その特異的抗体などで精製し、ウェスタンブロッティングで検出する方法が知られている。すなわち、細胞抽出液を、SDS-PAGE電気泳動で分離し、ニトロセルロースなどの膜へ目的のタンパク質を吸着させ、その後、目的のタンパク質の活性型を認識する抗体と、その抗体を認識する標識抗体を用いて検出する方法である。
【0004】
また、以下のような測定方法も知られている。まず、遺伝子操作により作製した遺伝子を大腸菌などに導入し、目的のタンパク質の基質となるタンパク質とアフィニティカラムで精製可能なタンパク質との融合タンパク質を大量に得る。当該融合タンパク質を、細胞抽出液より抗体などで精製した目的のタンパク質に加え、ラジオアイソトープで融合タンパク質をラベルする。それをSDS-PAGE電気泳動で分離し、融合タンパク質のバンドの強さをオートラジオグラフィーで検出する。
【0005】
また近年、プロテインキナーゼやホスファターゼを蛍光ベースで高処理量スクリーニングする方法が示されている(特許文献1)が、基質となる分子が高価なペプチドを用いており、技術を要する競合法にて分析している点で問題を有する。
【0006】
このように、タンパク質の活性化に関連した従来法は何れも、電気泳動法やブロッティング法(ウェスタンブロッティング等)のように、極めて不便で複雑な実験作業を必要とし、多大な労力および時間を要する問題がある。更に、32P等の放射性アイソトープを用いる場合には、関係法令によって取り扱い者が限定される問題がある。またブロッティング法は、電気泳動を用いるため多検体・多項目を処理するのが困難である。さらに、活性化の強弱を数値化するためにはスキャナー等でバンドのパターンを取込み、その濃淡から得なければならず、閾値が狭くその範囲内にするのは、熟練と経験を要する。また、ペプチドを基質に用いることは、その都度合成しなければならず手間と時間を要する。
【0007】
更に、従来のタンパク質の活性化を検査する方法は、何れも検体の数に応じて異なる容器中で検体毎に反応させ測定することが必要である。
【0008】
【特許文献1】
特表2001−526380号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情の下になされ、本発明の目的は、タンパク質の活性化状態を測定する既存の検査方法が有する以下の問題点
・検査時間が長い
・多量の検体量、試薬量を必要とする
・1検体の判定につき複数判定が必要である
・検査価格が高価である
・工程、判定に熟練を要する
・全自動化が困難である
等を解消する、検査方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を提供する。
(1)タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子を反応させる工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する工程とを具備することを特徴とする方法。
(2)タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子を反応させ、該基質分子に分子量の変化を起こさせる工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を、該基質分子の分子量の変化に基づいて検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。
(3)タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用よって分子量の変化を伴う変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を、該基質分子の分子量の変化に基づいて検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。
(4)単一の溶液中で複数のタンパク質分子群の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査される複数のタンパク質分子群と、活性化状態にある該タンパク質分子群のそれぞれの作用によって変化が生じる各々の基質分子群であって、区別して検出され得る異なる標識物質で標識された基質分子群とを反応させる工程と、
前記反応後の各々の基質分子群に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する各々の検出用分子群を反応させる工程と、
前記基質分子群の各々に対して、当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。
(5)(1)〜(4)の何れか1に記載の、タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
前記基質分子を標識する標識物質が蛍光物質であり、
前記基質分子に生じる変化を、前記蛍光物質のブラウン運動を利用して、蛍光相関分光法(Fluoresence Correlation Spectroscopy)によって測定することを特徴とする方法。
(6)タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、第一の蛍光物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子であって前記第一の蛍光物質とは区別して検出される第二の蛍光物質で標識された検出用分子を反応させる第二の工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を、前記第一の蛍光物質および前記第二の蛍光物質の相互相関分析により検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
[第一の実施の形態]
以下、本発明の一実施形態を、「活性化状態を検査されるタンパク質分子」が、基質分子をリン酸化するリン酸化酵素である場合について説明する。本説明において図1のリン酸化酵素についての説明図も適宜参照されたい。ただし本発明が本実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0012】
本実施形態は、
(1)活性化状態を検査されるリン酸化酵素と、蛍光物質で標識された基質分子であって活性化状態にあるリン酸化酵素によってリン酸化される基質分子とを反応させる第一の工程と、
(2)前記反応後の基質分子に対して、リン酸化された基質分子を特異的に認識する検出用分子(例えば抗体)を反応させ、基質分子の分子量を増大させる第二の工程と、
(3)リン酸化された基質分子および/またはリン酸化されていない基質分子を、該基質分子の分子量の変化に基づいて検出する第三の工程と
を具備する。
【0013】
{第一の工程}
本実施形態において、「活性化状態を検査されるリン酸化酵素」は、活性化状態にあるか否かが未知のリン酸化酵素である。具体的に「活性化状態を検査されるリン酸化酵素」は、リン酸化酵素が活性化状態にあるか否かを検査したい細胞から、検査したいリン酸化酵素を、当該酵素が失活しないように適切に抽出した抽出物であり得る。
【0014】
ここでリン酸化酵素は、任意のリン酸化酵素であり得、例えば、細胞内シグナル伝達の反応を担うセリン/トレオニンキナーゼ、チロシンキナーゼ等が含まれる。より具体的には、MAPキナーゼ、更に具体的には、Jun-N末端キナーゼ(c-Jun N-terminal kinase、以下JNKとも称する)、細胞外シグナル制御キナーゼ(extracellular signal-regulated kinase、以下ERKとも称する)が挙げられる。
【0015】
なお、本発明の方法は、リン酸化酵素の活性化状態を検査することに限定されるものではなく、活性化状態にあるか否かが未知の任意のタンパク質分子に利用できるものである。本発明において、タンパク質分子は、当該タンパク質分子と基質分子との反応溶液をそのまま測定、検出に用いることを考慮すると、細胞から取り出したものを用いることが好ましい。
【0016】
本実施形態において、「蛍光物質で標識された基質分子であって活性化状態にあるリン酸化酵素によってリン酸化される基質分子」は、活性化状態にある前記リン酸化酵素によってリン酸化される分子であり、リン酸化されたことを検出できるように蛍光物質で標識されている。なお、本発明において、基質分子を標識する標識物質は、基質分子を追跡可能なものであればよく、例えば蛍光物質、金コロイドなどの粒子が使用可能であり、好ましくは、蛍光物質を使用することができる。蛍光物質としては、FITC(fluorescein isothiocyanate)、Cy3(Amersham社)、GFPやYFP等の蛍光タンパク質、金属錯体等が挙げられる。
【0017】
本実施形態において、リン酸化酵素がJNKである場合、当該酵素の基質であるc-Junを基質分子として使用することができる。なお、c-Junは、該タンパク質分子の全アミノ酸配列を使用してもよいし、あるいはJNKによってリン酸化されるアミノ酸残基(セリン残基)を含む部分アミノ酸配列を基質として使用してもよい。
【0018】
基質分子がタンパク質である場合、遺伝子工学的手法を用いて、基質タンパク質分子と蛍光タンパク質との融合タンパク質を作製することにより、蛍光標識された基質分子を作製してもよい。
【0019】
また、基質分子は、後述の実施例に記載されるとおり、基質分子の回収、精製を、ビーズを用いて簡便に行うことができるように、ビーズとの結合のための連結分子を備えていてもよい。例えば、ビーズとの結合のための連結分子として、GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)を用い、GSTと基質分子の融合タンパク質を作製し、これを基質分子として用いてもよい。GSTと基質分子の融合タンパク質を基質として用いた場合、ビーズ側の連結分子にはグルタチオンが使用され、これにより、ビーズと基質分子の結合が可能となり、基質分子の回収、精製が簡便になる。なお、基質分子をビーズで回収するための連結分子は、GSTとグルタチオンの組み合わせに限定されず、アビジンとビオチンの組み合わせ、抗原と抗体の組み合わせ、(His)6(ヒスチジンが6個つらなったもの)とNi(ニッケル)の組み合わせ等、連結可能な分子の組み合わせであれば任意の連結分子を使用することができる。
【0020】
前記リン酸化酵素と前記基質分子との反応は、反応に適した緩衝液中で、適切な温度において行うことができる。
【0021】
{第二の工程}
第二の工程において、前記第一の工程による反応後の基質分子に対して、「リン酸化された基質分子を特異的に認識する検出用分子(例えば抗体)」を反応させる。検出用分子として抗体を使用した場合、第二の工程の反応により、基質分子に抗体が結合する。これにより、抗体が結合した基質分子は、抗体が結合する前と比べて、その分子量は増大する。ここで使用する抗体は、リン酸化された基質分子のみを特異的に認識して結合するものであって、リン酸化されていない基質分子に対しては結合しないものである。ここで抗体分子は、基質分子の分子量の変化を引き起こすために用いられるものである。
【0022】
このように本発明の方法では、検出用分子として、基質分子の分子量の変化を引き起こすことが可能な分子を用いることができ、これは抗体分子に限定されない。すなわち、検出用分子は、リン酸化された基質分子とリン酸化されていない基質分子とを識別し、特異的にどちらか一方のみに結合して、基質分子の分子量変化を引き起こす分子であれば任意のものを使用することができる。抗体分子以外に、基質分子のチロシン残基のリン酸化を認識するSH2ドメイン(Src homology 2 domain)を含むペプチド分子を使用することができる。
【0023】
例えば、基質分子がc-Junである場合、検出用分子として、リン酸化されたc-Jun分子のリン酸化された部分を特異的に認識する抗体(例えば、anti-phosphoserine抗体)を使用することができる。このような抗体は、商業的に入手可能なものを使用してもよいし、当業者に周知の手法を用いて作製してもよい。
【0024】
あるいは、検出用分子として、基質分子を標識している標識物質とは別の標識物質により標識された分子(例えば抗体分子)を用いることも可能である。例えば、基質分子を標識している第一の蛍光物質とは異なる第二の蛍光物質により標識された分子(例えば抗体分子)を検出用分子として用い、第二の蛍光物質を特異的に検出することにより、タンパク質分子の基質分子に対する作用の有無および/または程度を検出することができる。第一の蛍光物質と第二の蛍光物質の2種類の蛍光物質の挙動を追跡する手法として、蛍光相関分光法(FCS)の相互相関分析を使用することができる。
【0025】
このように、検出用分子として、第二の標識物質により標識された検出用分子(例えば抗体分子)を用いた場合、当該検出用分子の基質への結合が、FCSにて識別不可能な程度の分子量の違いしかもたらさなくても、第二の標識物質の存在により検出用分子の基質への結合の有無を捉えることが可能となる。
【0026】
{第三の工程}
第三の工程において、リン酸化された基質分子および/またはリン酸化されていない基質分子を、当該基質分子の分子量の変化に基づいて検出する。
【0027】
本発明において「検出する」とは、活性化状態にあるタンパク質分子の作用によって変化が生じた(本実施形態ではリン酸化された)基質分子の存在の有無を検出してもよいし、あるいは、活性化状態にあるタンパク質分子の作用によって変化が生じた基質分子と変化が起こっていない基質分子との存在比を検出してもよい。
【0028】
ここで変化が生じた(本実施形態ではリン酸化された)基質分子の存在が検出されるということは、当該基質分子をリン酸化するリン酸化酵素が活性化状態にあることを意味する。また、ここで変化が生じた(本実施形態ではリン酸化された)基質分子の存在比率が高いということは、当該基質分子をリン酸化するリン酸化酵素が高い比率で活性化状態にあることを意味する。
【0029】
本発明において検出は、好ましくは、基質分子に生じる変化を、基質分子を標識する蛍光物質のブラウン運動を利用して蛍光相関分光法(Fluoresence Correlation Spectroscopy、以下FCSともいう)で測定することにより行うことができる。FCSを用いて、検出用分子の結合により分子量の増大した基質分子と、分子量の変化が起こらなかった基質分子とを、これら基質分子の拡散時間の違いによって区別して検出することができる。あるいは、FCSを用いて、第二の蛍光物質で標識された検出用分子の結合により当該蛍光物質で標識された基質分子と、第二の蛍光物質で標識されなかった基質分子とを、標識の有無により区別して検出することができる。
【0030】
{FCSについて}
以下、FCSについて説明する。
【0031】
FCSの基本的な特徴は、顕微鏡視野下の極微小領域における平均数個の蛍光分子のブラウン運動に由来する蛍光の「ゆらぎ」を通して、均一系の溶液に含まれる蛍光分子の濃度や分子間作用を物理的な分離過程を経ずに、しかもほぼ実時間でモニターできることにある。このように、FCSは、溶液中の自由な分子運動を検出しているため、幅広い研究対象に応用できると期待されている技術である。
【0032】
FCSの測定原理、光学系および測定系の構成については、特開2000−125900(核酸配列の増幅反応を用いた標的核酸の検出方法/金城政孝)を参照することができる。
【0033】
すなわち、レーザ光励起の共焦点光学系を試料測定部とし、そこでの蛍光発光を検出器で捉えた後、ディジタル相関器でデータの記録と解析を行うようになっている。励起光であるレーザ光は、試料溶液のほんの1点に集中され、かつ共焦点光学系の特性からその1点からの蛍光発光を検出系でとらえることになる。実際の溶液中の測定領域は、理想的な点ではなく円柱状の領域となる。その大きさは例えば、直径約400 nm、軸長約2000 nm、容積フェムトリットル(10-15)である。FCSの測定領域は溶液であり、領域中に存在する蛍光分子はブラウン運動を行っている。したがって、一定の測定領域における分子の数は常に一定ではなく、ある値を中心に変動して「数ゆらぎ」が起きている。更にこの数ゆらぎに起因して、測定される蛍光の強度に「強度ゆらぎ」が発生する。この蛍光強度のゆらぎを解析することで、拡散速度に関する情報と分子の数に関する情報を得ることができる。
【0034】
FCSは、単一の蛍光物質の挙動を解析する自己相関分析および2種類の蛍光物質の挙動を解析する相互相関分析の両方を行うことができる技術である。
【0035】
{他のタンパク質の例について}
以上、活性化状態を検査するタンパク質分子としてリン酸化酵素を例に説明してきたが、他のタンパク質の例について以下で説明する。適宜図1の模式図も参照されたい。
【0036】
例えば脱リン酸化酵素の活性化状態を検査する場合、当該酵素は活性化状態にあると、基質分子を脱リン酸化する。この脱リン酸化反応が起こったことを、上述したような「リン酸化された基質にのみ結合する抗体」を検出用分子として使用して検出することができる。すなわち、前記抗体が基質分子に結合する割合が高いほど、リン酸化されている基質が残存している割合が高く、脱リン酸化反応が起こっていないことを意味し、これは活性化状態にある脱リン酸化酵素の比率が低いことを意味する。逆に、前記抗体が基質分子に結合する割合が低いほど、脱リン酸化反応が起こっていることを意味し、これは活性化状態にある脱リン酸化酵素の比率が高いことを意味する。
【0037】
また、別の例としてタンパク質分解酵素の活性化状態を検査する場合、当該酵素は活性化状態にあると、基質分子を分解し、当該基質の分子量を小さくする。タンパク質分解酵素のように、検査されるタンパク質分子が、基質分子に対して分子量の変化を伴う反応を引き起こす場合には、上述の検出用分子の使用は不要となる。すなわち、この場合、分解されて分子量の小さくなった基質分子と、分解作用を受けず分子量の変化していない基質分子とは、その分子量の差に基づいて直接識別して検出することが可能である。
【0038】
このように本発明の検査方法は、任意のタンパク質分子の活性化状態を検査する方法として幅広く応用することが可能である。
【0039】
[第二の実施の形態]
以上、第一の実施の形態においては、1種類のタンパク質分子の活性化状態を検査する方法について説明したが、本実施形態では、複数のタンパク質分子群の活性化状態を、単一の溶液中で検査する方法について説明する。なお、上述の第一の実施の形態の説明も適宜参照されたい。
【0040】
すなわち、本実施形態は、
複数のタンパク質分子群の活性化状態を検査する方法であって、
(1)活性化状態を検査される複数のタンパク質分子群と、活性化状態にある該タンパク質分子群のそれぞれの作用によって変化が生じる各々の基質分子群であって、区別して検出され得る異なる標識物質で標識された基質分子群とを反応させる第一の工程と、
(2)前記反応後の各々の基質分子群に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する各々の検出用分子群を反応させる第二の工程と、
(3)前記基質分子群の各々に対して、当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する第三の工程と
を具備する。
【0041】
本実施の形態において、複数のタンパク質分子群とは、2種類以上の被検タンパク質を意味し、例えば2〜5種類のタンパク質をいう。
【0042】
本実施形態において、「活性化状態を検査される複数のタンパク質分子群」とは、活性化状態にあるか否かが未知の複数のタンパク質分子である。具体的に、当該複数のタンパク質分子群は、当該複数のタンパク質が活性化状態にあるか否かを検査したい細胞から、当該複数のタンパク質をその活性化状態を維持したまま適切に抽出した抽出物であり得る。
【0043】
例えば、複数のタンパク質分子として、シグナル伝達に関与する一連のタンパク質分子が挙げられる。例えば、シグナル伝達に関与する複数のプロテインキナーゼが挙げられる。より具体的には、複数のタンパク質分子として、後述の実施例で記載するとおり、Jun-N末端キナーゼ(c-Jun N-terminal kinase)および細胞外シグナル制御キナーゼ(extracellular signal-regulated kinase)が挙げられる。
【0044】
本実施形態の第一の工程において、前記複数のタンパク質分子群と、活性化状態にあるこれらタンパク質分子のそれぞれの作用によって変化が生じる対応の各基質分子群とを反応させる。ここで、基質分子群は、それぞれ区別して検出され得る異なる標識物質で識別標識されている。区別して検出され得る標識物質とは、好ましくは、区別して検出され得る蛍光物質であり、例えば、FITC(励起波長490nm、放射波長520nm)、Cy3(励起波長550nm、放射波長570nm)、Cy5(励起波長649nm、放射波長670nm)を使用することができる。このように区別して検出され得る蛍光物質を使用して、各蛍光物質を励起するそれぞれの励起光を試料に照射し、試料中の複数種類の蛍光物質を励起する。各蛍光物質から放射される異なる放射波長は、それぞれ対応する光検出器で検出される。このように基質分子群を、区別して検出され得る標識物質で識別標識しておけば、単一試料溶液中に含まれる複数のタンパク質群の活性化状態を1回の測定で検査することが可能となる。
【0045】
なお、このような本実施形態において、検出のための装置は、複数の励起光を試料に照射するための複数の光源、および試料から放射される複数の放射光を区別して検出するための複数の光検出器を備えている必要がある。
【0046】
{第二の工程}
第二の工程では、複数の基質分子群のそれぞれに対して、タンパク質(活性化状態にある)の作用を受けて変化が生じた基質分子または作用を受けていない基質分子の何れか一方を特異的に認識するそれぞれの検出用分子を反応させる。
【0047】
例えば、検査される複数のタンパク質群が、Jun-N末端キナーゼ(JNK)および細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)である場合、検出用分子としては、リン酸化された各基質分子(すなわちリン酸化されたc-Junおよびリン酸化されたMBP(Myelin Basic Protein))のみを特異的に認識する抗体分子(すなわちanti-phospho-Jun抗体およびanti-phopho-MBP抗体)を使用することができる。
【0048】
なお、第一の実施の形態で上述したとおり、検出用分子は、これら抗体分子に限定されず、検出のために基質分子の分子量変化を引き起こすことが可能な任意の分子、および基質分子に第二の標識物質を結合させることが可能な任意の分子を使用することもできる。
【0049】
{第三の工程}
第三の工程では、第一の実施の形態と同様、区別して検出され得る標識物質で標識された基質分子群の各々に対して、当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する。
【0050】
{本発明の効果}
本発明は、標識された基質に対して特異的におこる活性化タンパク質の反応を分子レベルで捉え、基質の反応部分を検出用抗体(例えば抗体)で認識し、複数の経過時点で標識物質を測定し、その時間的な位置変化を検出する。この位置変化を定量的に検出することにより、標識した基質が活性化タンパク質により修飾された場合の特異的反応を、動的に計測することが可能である。従って、本発明は、電気泳動による分離、膜へのブロッティング、オートラジオグラフィーなどの工程は不要であり、従来法に比較して検査時間を短縮し検査工程を簡便化することが可能である。さらに、遺伝子操作を用いることで、基本となるプラスミドに目的のタンパク質をコードする遺伝子を挿入すればよく、時間と手間が省かれ経済的である。
【0051】
また、従来のタンパク質の活性化状態を検査する手法では、何れも検体の数に応じて異なる容器中で検体毎に反応させ測定することが必要であった。しかし、本発明では、異なる特異性を有した基質タンパク質を、それぞれ異なる標識物質で標識することにより、その各々の標識物質に動的変化が生じたかを検出することができる。従って、同一容器内で異なる活性タンパク質に特異性を有する複数の基質を混合しても同時に判定が可能であり、試料の必要量の低減、反応容器数の低減が可能となり、検査の簡便化をはかることができる。また、全自動のシステム化も可能である。
【0052】
【実施例】
以下、本発明の実施例について記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
以下の実施例1および2は、上述の第一の実施の形態に対応し、実施例3および4は、上述の第二の実施の形態に対応する例である。実施例1および3は、被検タンパク質をまず免疫沈降させた反応例であり、実施例2および4は、被検タンパク質を免疫沈降させず、まず基質分子と反応させた反応例である。なお、本実施例に記載の反応例は、The Journal of Immunology, 2001, 166: 1641-1649に示すように従来の測定法に従っており、得られた結果は信頼できるものである。
【0054】
〈実施例1〉
マウス由来のマクロファージ様細胞株J774を、1μg/mL LPS(リポポリサッカライド;Sigmaより購入)を用いて、10分間、37℃で刺激した。活性化した細胞を、4℃に冷やしたlysis buffer(1% Triton X-100、0.1% SDS、10mM Tris-HCl(pH 7.4)、1mM sodium deoxycholate、4mM EDTA、1mM Na3VO4、0.01mg/mL leupeptin、1mM PMSF、0.01mg/mL aprotinin)1mLで溶解し、15,000rpm、10分遠心した。上清を別のチューブに移し、anti−JNK1抗体およびanti−JNK2抗体(Santa CruzBiotechnology)を加え、4℃で一昼夜反応させた後、protein G-Sepharoseビーズ(アマシャム社)を加え免疫沈降を行い不要物を取り除いた。それに、kinase buffer(20mM HEPES(pH 7.4)、100mM NaCl、5mM MnCl2、5mM MgCl2、0.04mM ATP)、FITCラベルしたGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質(UBI社)を加え、30℃、30分反応させた。その後、Glutathione-Sepharoseビーズを加え、反応後不要物を洗浄操作にて取り除き、FITCラベルしたGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質をビーズから解離した。その後、解離状態の基質を抗原抗体反応が可能な条件までPBSで希釈し、anti-phosphoserine抗体(Sigma社)またはanti-phospho-Jun抗体(UBI社)と反応させ、FCSにて測定した。その結果を図1および表1に示す。
【0055】
ここで、GST-c-Jun(1-79)融合タンパク質のFITCラベルは、NHS-Fluorescein(PIERCE社)を用いてPIERCE社の方法に従って行った。
【0056】
【表1】
【0057】
活性化処理を行った細胞中に含まれるJNKは活性化状態にあるため、基質分子をリン酸化し、当該リン酸化部位を特異的に認識する抗体の結合により、基質分子の分子量は増大した。一方、活性化処理を行わなかった細胞中に含まれるJNKは活性化状態にないため、基質分子は未反応の状態にあり、その分子量は、「蛍光標識された基質」のみを測定した場合と同じであった。
【0058】
〈実施例2〉
マウス由来のマクロファージ様細胞株J774を、1μg/mL LPS(リポポリサッカライド;Sigmaより購入)を用いて、10分間、37℃で刺激した。活性化した細胞を、4℃に冷やしたlysis buffer(1% Triton X-100、0.1% SDS、10mM Tris-HCl(pH 7.4)、1mM sodium deoxycholate、4mM EDTA、1mM Na3VO4、0.01mg/mL leupeptin、1mM PMSF、0.01mg/mL aprotinin)1mLで溶解し、15,000rpm、10分遠心した。上清を別のチューブに移し、FITCラベルしたGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質(UBI社)を加え、4℃で一昼夜反応させた。その後、Glutathione-Sepharoseビーズを加えて、反応したFITCラベルGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質を集め、それにkinase buffer(20mM HEPES(pH 7.4)、100mM NaCl、5mM MnCl2、5mM MgCl2、0.04mM ATP)を加え反応させた。それを、anti-phosphoserine抗体(Sigma社)またはanti-phospho-Jun抗体(UBI社)と反応させ、FCSにて測定した。その結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
活性化処理を行った細胞中に含まれるJNKは活性化状態にあるため、基質分子をリン酸化し、その結果、当該リン酸化部位を特異的に認識する抗体の結合により分子量の増大した基質分子(相関時間約250μ秒の分子)が存在していた。一方、活性化処理を行わなかった細胞中に含まれるJNKは活性化状態にないため、基質分子は未反応の状態にあり、前述の分子量の増大した基質分子は存在しなかった。
【0061】
〈実施例3〉
マウス由来のマクロファージ様細胞株J774を、1μg/mL LPS(リポポリサッカライド;Sigmaより購入)を用いて、10分間、37℃で刺激した。活性化した細胞を、4℃に冷やしたlysis buffer(1% Triton X-100、0.1% SDS、10mM Tris-HCl(pH 7.4)、1mM sodium deoxycholate、4mM EDTA、1mM Na3VO4、0.01mg/mL leupeptin、1mM PMSF、0.01mg/mL aprotinin)1mLで溶解し、15,000rpm、10分遠心した。上清を別のチューブに移し、anti−JNK1抗体およびanti−JNK2抗体(Santa CruzBiotechnology)並びにanti−ERK1抗体およびanti−ERK2抗体(Santa CruzBiotechnology)を加え、4℃で一昼夜反応させた後、protein G-Sepharoseビーズ(アマシャム社)を加え免疫沈降を行い不要物を取り除いた。それに、kinase buffer(20mM HEPES(pH 7.4)、100mM NaCl、5mM MnCl2、5mM MgCl2、0.04mM ATP)、FITCラベルしたGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質(UBI社)およびCy3標識したGST-MBP(Myelin Basic protein)融合タンパク質を加え、30℃、30分反応させた。その後、anti-phospho-Jun抗体とanti-phospho-MBP抗体(UBI社)を反応させ、次にprotein G-Sepharoseビーズを加え免疫沈降を行い、リン酸化された蛍光標識基質を得た。ビーズから解離状態にある基質をFCSにて測定した。その結果を表3および表4に示す。なお、ここでビーズから基質を解離させるための解離処理(尿素処理)を行ってもよい。
【0062】
ここで、GST-MBP(1-79)融合タンパク質のCy3ラベルは、Cy3 labelling kit(Amersham社)を用いてAmersham社の方法に従って行った。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
活性化処理を行った細胞中に含まれるJNKは活性化状態にあるため、基質分子をリン酸化し、その結果、当該リン酸化部位を特異的に認識する抗体の結合により分子量の増大した基質分子(相関時間約250μ秒の分子)が存在していた(表3)。一方、活性化処理を行わなかった細胞中に含まれるJNKは活性化状態にないため、基質分子は未反応の状態にあり、前述の分子量の増大した基質分子は存在しなかった(表3)。
【0066】
また、活性化処理を行った細胞中に含まれるERKは活性化状態にあるため、基質分子をリン酸化し、その結果、当該リン酸化部位を特異的に認識する抗体の結合により分子量の増大した基質分子(相関時間約250μ秒の分子)が存在していた(表4)。一方、活性化処理を行わなかった細胞中に含まれるERKは活性化状態にないため、基質分子は未反応の状態にあり、前述の分子量の増大した基質分子は存在しなかった(表4)。
【0067】
このように、本発明では、単一の試験管内に含まれる複数のタンパク質(本実施例ではJNKとERK)の活性化状態を、それぞれのタンパク質を分離することなく混在させた状態で測定することができる。また、この場合、JNKの基質を標識する蛍光物質(FITC)とERKの基質を標識する蛍光物質(Cy3)のそれぞれを励起可能な(2つの)光源と、各蛍光物質が放射する各放射光を検出可能な(2つの)検出器とを備えた装置を用いて測定を行うことにより、1回の測定で複数のタンパク質の活性化状態を検査することが可能である。
【0068】
〈実施例4〉
マウス由来のマクロファージ様細胞株J774を、1μg/mL LPS(リポポリサッカライド;Sigmaより購入)を用いて、10分間、37℃で刺激した。活性化した細胞を、4℃に冷やしたlysis buffer(1% Triton X-100、0.1% SDS、10mM Tris-HCl(pH 7.4)、1mM sodium deoxycholate、4mM EDTA、1mM Na3VO4、0.01mg/mL leupeptin、1mM PMSF、0.01mg/mL aprotinin)1mLで溶解し、15,000rpm、10分遠心した。上清を別のチューブに移し、FITCラベルしたGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質(UBI社)およびCy3標識したGST-MBP(Myelin Basic protein)融合タンパク質を加え、4℃で一昼夜反応させた。その後、Glutathione-Sepharoseビーズを加えて、反応したFITCラベルGST-c-Jun(1-79)融合タンパク質およびCy3標識したGST-MBP(1-79)融合タンパク質を集め、それにkinase buffer(20mM HEPES(pH 7.4)、100mM NaCl、5mM MnCl2、5mM MgCl2、0.04mM ATP)を加え反応させた。それを、anti-phosphoserine抗体(Sigma社)とanti-phosphothreoine抗体(Sigma社)、またはanti-phospho-Jun抗体(UBI社)とanti-phospho-MBP抗体(UBI社)を反応させ、FCSにて測定した。これにより、実施例3と同様の結果を得た。
【0069】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の検査方法によれば、タンパク質分子の活性化状態の有無および/または活性化状態の程度を検査することができる。また、本発明の検査方法によれば、単一の試験管内において、複数のタンパク質の活性化状態を1回の測定で検査することも可能である。
【0070】
また、本発明の検査方法の利点としては、タンパク質の活性化状態を、単数ずつ、もしくは複数を同一の溶液中で高速に判定していくことができる。従って、本発明の方法は、従来の検査方法に比較して、検査時間の短縮、検査工程の簡便化、検体量、試薬量の低減、試薬などの材料費の節減、全自動化システムが可能である等の利点を有する。
【0071】
更に本発明の検査方法は、細胞内の所定のタンパク質分子が活性化状態にあるか否かを検査することにより、細胞の状態(例えば癌化状態)を調べる際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の検査方法における反応を模式的に示す図。
【図2】FITC標識c-Jun融合タンパク質の相関曲線を示す図。
Claims (6)
- タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子を反応させる工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する工程とを具備することを特徴とする方法。 - タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子を反応させ、該基質分子に分子量の変化を起こさせる工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を、該基質分子の分子量の変化に基づいて検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。 - タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、標識物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用よって分子量の変化を伴う変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を、該基質分子の分子量の変化に基づいて検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。 - 単一の溶液中で複数のタンパク質分子群の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査される複数のタンパク質分子群と、活性化状態にある該タンパク質分子群のそれぞれの作用によって変化が生じる各々の基質分子群であって、区別して検出され得る異なる標識物質で標識された基質分子群とを反応させる工程と、
前記反応後の各々の基質分子群に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する各々の検出用分子群を反応させる工程と、
前記基質分子群の各々に対して、当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載の、タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
前記基質分子を標識する標識物質が蛍光物質であり、
前記基質分子に生じる変化を、前記蛍光物質のブラウン運動を利用して、蛍光相関分光法(Fluoresence Correlation Spectroscopy)によって測定することを特徴とする方法。 - タンパク質分子の活性化状態を検査する方法であって、
活性化状態を検査されるタンパク質分子と、第一の蛍光物質で標識された基質分子であって活性化状態にある前記タンパク質分子の作用によって変化が生じる基質分子とを反応させる工程と、
前記反応後の基質分子に対して、当該変化前の基質分子または当該変化後の基質分子の何れか一方を特異的に認識する検出用分子であって前記第一の蛍光物質とは区別して検出される第二の蛍光物質で標識された検出用分子を反応させる第二の工程と、
当該変化前の基質分子および/または当該変化後の基質分子を、前記第一の蛍光物質および前記第二の蛍光物質の相互相関分析により検出する工程と
を具備することを特徴とする方法。
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