【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器、航空機、産業用ロボット、医療機器、自動車などに用いられる、導電性に優れ、かつ高強度のAg合金極細線およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器、航空機、産業用ロボット、医療機器、自動車などの分野では、近年、小型化、軽量化、電子化、情報の高密度化、環境対応化に伴い、省スペース化、軽量化、省資源化のため、これら機器に用いられる電線の細径化(例えば、φ0.05mm程度)の要請が高まってきている。
特に自動車用ハーネスやロボットのアーム部分等の強い屈曲特性を要する部位においては、細径化された電線においても高強度と高導電性が要求される。また、これら機器の組立て時にも、ある程度の強度が必要とされる。
【0003】
そこで、そのような用途の導体素線には、高い強度を維持するため、錫、銀、ジルコニウム、鉄などを添加した銅合金を用いたり、大径の母線からの伸線加工等の強加工を行うことが多かった。
【0004】
しかしながら、高強度化を目的として銅に添加元素を加えたり(合金化)、強加工を行うと導電性が低下する。導電性が低下した導体を用いて電線を製造すると電線の抵抗が上がり、所定の電気容量を確保するためには導体断面積を大きくしなければならず、細径化が図れないという問題があった。
このような状況下で、現在用いられている銅合金極細線と同等の強度(引張強さ800MPa以上)を保持したまま、より高い導電性(導電率80%IACS以上)を有した材料が求められている。
【0005】
また、銅を基材とする電線材料では、導体表面の変色防止やはんだ付け性改善の観点から、錫、銀などのめっきが施されることが多い。めっき工程はコストアップの要因となるのはもちろん、ピンホールや密着性不良などのめっきの不具合をなくすためには、厳密な工程管理が必要になるという問題もあった。
【0006】
一方、銅以外に高い導電率を示す材料として銀が挙げられ、各種センサーや摺動接点材料等に利用されている(特許文献1、2参照)。
しかしながら、銀または銀を基材とする合金は、電線材料として機械的強度が得られにくく、また高価である等の問題があり、汎用されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開昭64−87736号公報
【特許文献2】
特開平6−172894号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高強度(引張強さ800MPa以上)と高い導電性(導電率80%IACS以上)を同時に満たす極細線を提供することである。また、本発明の他の課題は、高強度(引張強さ800MPa以上)を保持したまま、高い導電性(導電率80%IACS以上)を有する極細線を製造し得る方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究した。その結果、Cuを3.0wt%〜6.0wt%含有するAg合金を極細線とした場合、引張強さを850MPaより大きくした場合は、80%IACS以上の導電率を達成することが困難であり、逆に導電率を82%IACSより大きくすると、引張強さを800MPa以上とすることが困難になるという関係にあり、該Ag合金極細線の引張強さを800MPa〜850MPa、導電率を80%IACS〜82%IACSの範囲にすることにより、800MPa以上の引張強さと80%IACS以上の導電率を同時に満たすことができることを見出した。
また、このようなAg合金極細線は、400℃〜600℃で0.5時間〜5時間の熱処理を行った後、断面減少率の範囲が99.00%〜99.91%である冷間伸線加工を行うことにより好適に製造し得ることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0010】
(1)Cuを3.0wt%〜6.0wt%含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなることを特徴とするAg合金極細線であって、引張強さが800MPa〜850MPaでかつ、導電率が80%IACS〜82%IACSであることを特徴とするAg合金極細線。
(2)Cuを3.0wt%〜6.0wt%含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなるAg合金極細線の製造方法であって、冷間伸線加工前に400℃〜600℃で0.5時間〜5時間の熱処理を行い、引続いて断面減少率が99.00%〜99.91%の冷間伸線加工を行う工程を含むことを特徴とするAg合金極細線の製造方法。
(3)上記(2)記載の製造方法で製造されるAg合金極細線であって、引張強さが800MPa〜850MPaでかつ、導電率が80%IACS〜82%IACSであることを特徴とするAg合金極細線。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のAg合金極細線について説明する。
本発明のAg合金極細線は、その引張強さが800MPa〜850MPaであり、かつ導電率が80%IACS〜82%IACSである。
これは、上述のように本発明のAg合金極細線の引張強さを850MPaより大きくした場合は、80%IACS以上の導電率を達成することが困難となり、逆に導電率を82%IACSより大きくすると、引張強さを800MPa以上とすることが困難になるという関係にあり、高強度と高導電率を同時に達成するために上記範囲とする必要があるからである。
【0012】
本発明のAg合金極細線で使用されるAg合金のCu含有量は、3.0wt%〜6.0wt%である。Cu含有量が3.0wt%未満では、強度増加が不十分となり、6.0wt%より多いと導電率が低下する傾向があるためである。好ましいCu含有量は4.0wt%〜6.0wt%であり、より好ましくは5.0wt%〜6.0wt%である。
【0013】
本発明のAg合金極細線で使用されるAg合金において、Cu以外の残部は全てAgであることが好ましいが、Pb、Bi、Fe、As、Sb、S等の不可避不純物を含んでいてもよい。当該不可避不純物の合計の含有量は、導電率の低下を防ぐためには、0.05wt%以下が好ましく、0.01wt%以下がより好ましい。
【0014】
本発明のAg合金極細線の線径は、φ0.015mm〜φ0.08mmの範囲が好ましく、φ0.015mm〜φ0.05mmがより好ましい。線径がこの範囲より大きくなると、機器類の省スペース化、軽量化という要請に応えることができないが、上記範囲より小さいと高導電性を達成することが困難になるからである。
【0015】
本発明のAg合金極細線に用いられる原料は、従来公知のAg−Cu合金に用いられる原料、例えば市販の銀地金、電気銅地金、タフピッチ銅、無酸素銅等を任意に用いることができる。なお、タフピッチ銅を用いる場合、含有する酸素量は、溶解中の内部酸化を防ぐ必要があるため、0.04wt%以下が好ましい。
【0016】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、「冷間伸線加工前に400℃〜600℃で0.5時間〜5時間の熱処理を行い、引続いて断面減少率が99.00%〜99.91%の冷間伸線加工する工程」(以下、工程(I)ともいう。)を含む方法である。
このような製造方法を採用することにより、Ag合金極細線の引張強さを800MPa〜850MPa、導電率を80%IACS〜82%IACSの範囲に好適に導くことができる。
【0017】
本発明の製造方法においては、少なくとも上記工程(I)を含んでいればよく、当該分野における従来公知の種々の他の工程と組み合わせることによりAg合金極細線を製造することができる。
例えば、Ag合金極細線の原料を溶解、鋳造した後、熱間圧延もしくは熱間押出しで荒引線を製造し、伸線加工により所望の線径とした後、工程(I)を行う方法が挙げられる。
【0018】
上記溶解、鋳造工程では、原料を好ましくは非酸化性雰囲気で加熱して溶解・攪拌し、次いで得られたAg合金熔湯を金型に鋳込んでケークやビレットを得る。次いで、公知の熱間圧延、例えば、950〜1200℃で圧延ロール等を用いた圧延で荒引線を得る方法が挙げられる。熱間圧延の代わりに押出し機を用いた熱間押出しによって荒引線を得る方法もある。鋳塊がケークの場合は、熱間圧延が好ましく、ビレットの場合は熱間押出しが好ましい。また、溶融・鋳造・熱間圧延を連続して行う連続鋳造圧延方式によって荒引線を製造してもよい。
このようにして得られる荒引線の線径は、φ5mm〜φ20mmの範囲が好ましく、φ6mm〜φ10mmがより好ましい。
【0019】
かくして得られた荒引線は、工程(I)を行う前に伸線加工を行うことにより所望の線径とする。続いて行う工程(I)により所定の素線径とするためである。したがって、該伸線加工では、上記荒引線を断面減少率87.5%〜99.99%、好ましくは95.0%〜99.5%で伸線し、線径をφ0.1mm〜φ4.0mm、好ましくはφ0.2mm〜φ2.0mmとする。
【0020】
このような伸線加工は、ダイス伸線、ロール圧延、スウェージング加工等の様々な加工を採用できるが、加工コスト、形状安定性の点から通常ダイス伸線が採用される。また、該伸線加工は、冷間加工でも熱間加工でもよいが、加工コスト、酸化防止の観点から冷間加工が好ましい。
【0021】
続く工程(I)では、まず、400℃〜600℃で0.5時間〜5時間の熱処理を行う。このような熱処理によって、続く冷間伸線加工において、導電率の低下や伸線中の断線を防止することができる。
【0022】
熱処理の温度は、400℃〜600℃である。400℃未満では、導電率の回復が不十分となり、600℃を越えると強度の低下が過大となる傾向があるからである。好ましい温度の範囲は、450℃〜550℃であり、より好ましくは470℃〜530℃である。
【0023】
また、熱処理時間は、0.5時間〜5時間である。0.5時間より短いと導電率の回復が不十分となり、5時間より長いと強度の低下が過大となる傾向があるからである。好ましい加熱時間は、0.8時間〜4時間であり、より好ましくは1.0時間〜2.0時間である。
【0024】
工程(I)においては、熱処理の後冷間伸線加工の前に、10℃〜40℃程度まで冷却してもよい。冷却する場合は、徐冷してもよいし、水などに浸けて急冷してもよい。
【0025】
工程(I)においては、引続いて断面減少率が99.00%〜99.91%の冷間伸線加工を行う。
工程(I)における冷間伸線加工の断面減少率が99.00%未満では、冷間伸線加工による引張強度の強化が十分ではなく、99.91%を越えると、導電率が低下する傾向があるからである。好ましい断面減少率は、99.1%〜99.91%であり、より好ましくは99.2%〜99.9%である。
【0026】
工程(I)における冷間伸線加工は、ダイス伸線、ロール圧延、スウェージング加工等の様々な加工を採用できるが、形状安定性、加工速度等の向上が図れるため、通常ダイス伸線が採用される。また、該冷間伸線加工は、1回の連続伸線加工でもよく、2回以上に分割して行ってもよい。さらには、乾式伸線加工でも、湿式伸線加工でもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。
【0027】
かくして得られたAg合金極細線は、当該分野における従来公知の撚り線加工によって、電子機器、航空機、産業用ロボット、医療機器、自動車などに使用される電線導体とすることができる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0029】
実施例1
銅含有量が3.0wt%となるような比率で電気銅地金および銀地金を原料として用い、還元性雰囲気下(Arガス)で1100℃に加熱して溶解させ、ビレットの形に鋳造した。次いで960℃で熱間押出機を用いて荒引線(線径φ6.7mm)を得た。この荒引線を伸線ダイスを用いて断面減少率99.4%の冷間伸線加工を行い、φ0.5mmの合金線を得た。
【0030】
この合金線を、500℃で1時間の熱処理を行った後、断面減少率97.44%、99.00%、99.64%、99.91%で、同様の冷間伸線加工を行い、線径がそれぞれφ0.08mm、φ0.05mm、φ0.03mm、φ0.015mmの合金線を得た。
【0031】
実施例2
銅含有率が4wt%となるようにした以外は、実施例1と同様の方法により、各合金線を得た。
【0032】
実施例3
銅含有率が5wt%となるようにした以外は、実施例1と同様の方法により、各合金線を得た。
【0033】
実施例4
銅含有率が6wt%となるようにした以外は、実施例1と同様の方法により、各合金線を得た。
【0034】
比較例1
銅含有率が2wt%となるようにした以外は、実施例1と同様の方法により、各合金線を得た。
【0035】
比較例2
銅含有率が7wt%となるようにした以外は、実施例1と同様の方法により、各合金線を得た。
【0036】
比較例3
原料としてCu−0.3%Sn合金を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、各合金線を得た。
【0037】
実施例1〜4および比較例1〜3で得られた各合金線について、その引張強さと導電率を測定し、合金線のCu含有率、断面減少率、引張強さと導電率の関係を調査した。調査結果を表1に示す。表1の上段は引張強さ(MPa)、下段は導電率(%IACS)をそれぞれ示す。
なお、引張強さは、JIS Z2241、導電率はJIS H0505に基づきそれぞれ測定した。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例1では、断面減少率99.91%、実施例2では、断面減少率99.64%、実施例3および4では、断面減少率99.00%および99.64%において、引張強さ800MPa以上で、かつ導電率80%IACSを示したが、断面減少率99.74%においてはこのような高い引張強さと導電率を同時に示すものはなかった。
比較例1〜3にの合金線おいては、いずれの断面減少率においても引張強さ800MPa以上で、かつ導電率80%IACSを示すものはなかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明のAg合金極細線は、Cuを3.0wt%〜6.0wt%含有するAg合金を極細線とすることにより得られた、引張強さが800MPa以上で、かつ導電率が80%IACS以上という、高強度と高導電率を同時に満たす極細線である。
また、本発明の製造方法によって、引張強さが800MPa以上で、かつ導電率が80%IACS以上という、高強度と高導電率を同時に満たす極細線を提供することができる。
さらには、本発明のAg合金極細線は銀基合金であるために、めっきの必要がなく、耐食性、接触抵抗、製造管理の面で有利である。
このようなAg合金極細線は、電子機器、航空機、産業用ロボット、医療機器、自動車などにおいて、特に自動車用ハーネス、ロボット用電線等の屈曲特性を要する部位に好適に使用される。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a highly conductive and high-strength ultrafine Ag alloy wire used in electronic devices, aircraft, industrial robots, medical devices, automobiles, and the like, and a method for producing the same.
[0002]
[Prior art]
In the fields of electronic equipment, aircraft, industrial robots, medical equipment, automobiles, etc., in recent years, with the miniaturization, weight reduction, digitization, high density of information, and environmental friendliness, space saving, weight saving, resource saving Therefore, there is an increasing demand for reducing the diameter (for example, about φ0.05 mm) of electric wires used in these devices.
In particular, high strength and high conductivity are required even in a thinned wire in a portion requiring strong bending characteristics, such as a harness for an automobile or an arm portion of a robot. Also, a certain degree of strength is required when assembling these devices.
[0003]
Therefore, in order to maintain high strength, conductor wires for such applications use copper alloys with addition of tin, silver, zirconium, iron, etc., or strong processing such as wire drawing from a large diameter bus. Was often done.
[0004]
However, when an additional element is added to copper (alloying) or strong processing is performed for the purpose of increasing the strength, the conductivity is reduced. When an electric wire is manufactured using a conductor with reduced conductivity, the resistance of the electric wire increases, and the conductor cross-sectional area must be increased in order to secure a predetermined electric capacity. Was.
Under these circumstances, a material having higher conductivity (conductivity of 80% IACS or more) while maintaining the same strength (tensile strength of 800 MPa or more) as the currently used copper alloy ultrafine wire is required. Have been.
[0005]
In addition, in the case of a copper-based wire material, plating of tin, silver, or the like is often performed from the viewpoint of preventing discoloration of the conductor surface and improving solderability. The plating process not only causes a cost increase, but also has a problem that strict process control is required to eliminate plating defects such as pinholes and poor adhesion.
[0006]
On the other hand, a material having high conductivity other than copper is silver, which is used for various sensors and sliding contact materials (see Patent Documents 1 and 2).
However, silver or an alloy containing silver as a base material has problems such as difficulty in obtaining mechanical strength as an electric wire material, and is expensive, and is not widely used.
[0007]
[Patent Document 1]
JP-A-64-87736 [Patent Document 2]
JP-A-6-172894
[Problems to be solved by the invention]
An object of the present invention is to provide an ultrafine wire that simultaneously satisfies high strength (tensile strength of 800 MPa or more) and high conductivity (conductivity of 80% IACS or more). Another object of the present invention is to provide a method for producing an ultrafine wire having high conductivity (80% IACS or more in electrical conductivity) while maintaining high strength (800 MPa or more in tensile strength). .
[0009]
[Means for Solving the Problems]
The present inventors have intensively studied to solve the above problems. As a result, when an ultrafine wire is made of an Ag alloy containing 3.0 wt% to 6.0 wt% of Cu, it is difficult to achieve a conductivity of 80% IACS or more when the tensile strength is made larger than 850 MPa. On the contrary, if the electric conductivity is larger than 82% IACS, it is difficult to increase the tensile strength to 800 MPa or more, and the Ag alloy ultrafine wire has a tensile strength of 800 MPa to 850 MPa and an electric conductivity of 80 MPa. It has been found that by setting the range of% IACS to 82% IACS, a tensile strength of 800 MPa or more and a conductivity of 80% IACS or more can be simultaneously satisfied.
Further, such an Ag alloy ultrafine wire is subjected to a heat treatment at 400 ° C. to 600 ° C. for 0.5 hours to 5 hours, and then a cold reduction in which the cross-sectional reduction rate ranges from 99.00% to 99.91%. The present inventors have found that the wire can be favorably manufactured by wire drawing, and have completed the present invention. That is, the present invention is as follows.
[0010]
(1) An ultrafine Ag alloy wire containing 3.0 wt% to 6.0 wt% of Cu and the balance of Ag and unavoidable impurities, having a tensile strength of 800 MPa to 850 MPa and an electrical conductivity Is 80% IACS to 82% IACS.
(2) A method for producing an ultrafine Ag alloy wire containing 3.0 wt% to 6.0 wt% of Cu and the balance of Ag and unavoidable impurities, wherein the temperature is 400 ° C. to 600 ° C. before cold drawing. A method for producing an Ag alloy ultrafine wire, comprising a step of performing a heat treatment for 0.5 to 5 hours, and subsequently performing a cold drawing with a reduction in area of 99.00% to 99.91%. .
(3) An ultrafine Ag alloy wire produced by the production method described in (2) above, having a tensile strength of 800 MPa to 850 MPa and a conductivity of 80% IACS to 82% IACS. Ag alloy extra fine wire.
[0011]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, the Ag alloy ultrafine wire of the present invention will be described.
The ultrafine Ag alloy wire of the present invention has a tensile strength of 800 MPa to 850 MPa and a conductivity of 80% IACS to 82% IACS.
This is because, as described above, when the tensile strength of the ultrafine Ag alloy wire of the present invention is larger than 850 MPa, it becomes difficult to achieve a conductivity of 80% IACS or more, and conversely, the conductivity becomes 82% IACS. This is because it is difficult to increase the tensile strength to 800 MPa or more when the thickness is increased, and it is necessary to set the tensile strength in the above range in order to simultaneously achieve high strength and high electrical conductivity.
[0012]
The Cu content of the Ag alloy used in the Ag alloy ultrafine wire of the present invention is 3.0 wt% to 6.0 wt%. If the Cu content is less than 3.0 wt%, the strength is insufficiently increased, and if it is more than 6.0 wt%, the conductivity tends to decrease. The preferred Cu content is from 4.0 wt% to 6.0 wt%, more preferably from 5.0 wt% to 6.0 wt%.
[0013]
In the Ag alloy used in the Ag alloy ultrafine wire of the present invention, the remainder other than Cu is preferably all Ag, but may contain unavoidable impurities such as Pb, Bi, Fe, As, Sb, and S. . The total content of the unavoidable impurities is preferably 0.05% by weight or less, more preferably 0.01% by weight or less, in order to prevent a decrease in conductivity.
[0014]
The wire diameter of the Ag alloy ultrafine wire of the present invention is preferably in the range of φ0.015 mm to φ0.08 mm, and more preferably φ0.015 mm to φ0.05 mm. If the wire diameter is larger than this range, it is not possible to meet the demand for space saving and light weight of the equipment, but if it is smaller than the above range, it will be difficult to achieve high conductivity.
[0015]
The raw material used for the Ag alloy ultrafine wire of the present invention may be a raw material used for a conventionally known Ag-Cu alloy, for example, any commercially available silver bullion, electrolytic copper bullion, tough pitch copper, oxygen-free copper, or the like. it can. When tough pitch copper is used, the amount of oxygen contained is preferably 0.04 wt% or less because it is necessary to prevent internal oxidation during melting.
[0016]
Next, the manufacturing method of the present invention will be described.
The production method according to the present invention is characterized in that “a heat treatment is performed at 400 ° C. to 600 ° C. for 0.5 hours to 5 hours before cold drawing, and the cross-sectional reduction rate is 99.00% to 99.91%. Step of cold drawing "(hereinafter, also referred to as step (I)).
By adopting such a manufacturing method, it is possible to suitably guide the tensile strength of the ultrafine Ag alloy wire to the range of 800 MPa to 850 MPa and the conductivity to the range of 80% IACS to 82% IACS.
[0017]
In the production method of the present invention, it is sufficient that at least the above step (I) is included, and an ultrafine Ag alloy wire can be produced by combining it with various other steps conventionally known in the art.
For example, there is a method in which a raw material for an Ag alloy ultrafine wire is melted and cast, then a rough drawn wire is produced by hot rolling or hot extrusion, a desired wire diameter is formed by wire drawing, and then the step (I) is performed. Can be
[0018]
In the melting and casting steps, the raw material is heated and melted and stirred, preferably in a non-oxidizing atmosphere, and then the obtained Ag alloy melt is cast into a mold to obtain a cake and a billet. Next, a method of obtaining a rough drawn line by known hot rolling, for example, rolling at 950 to 1200 ° C. using a rolling roll or the like is included. There is also a method of obtaining a rough drawn line by hot extrusion using an extruder instead of hot rolling. When the ingot is a cake, hot rolling is preferable, and when the ingot is a billet, hot extrusion is preferable. Further, the rough drawn wire may be manufactured by a continuous casting and rolling method in which melting, casting, and hot rolling are continuously performed.
The wire diameter of the rough drawn wire thus obtained is preferably in the range of φ5 mm to φ20 mm, more preferably φ6 mm to φ10 mm.
[0019]
The rough drawn wire thus obtained is drawn to a desired wire diameter before performing the step (I). This is because the predetermined element diameter is obtained in the subsequent step (I). Accordingly, in the wire drawing, the rough wire is drawn at a sectional reduction rate of 87.5% to 99.99%, preferably 95.0% to 99.5%, and the wire diameter is φ0.1 mm to φ4. 0 mm, preferably φ0.2 mm to φ2.0 mm.
[0020]
For such wire drawing, various processes such as die wire drawing, roll rolling, swaging, and the like can be adopted, but from the viewpoint of working cost and shape stability, die wire drawing is usually employed. The wire drawing may be cold working or hot working, but cold working is preferred from the viewpoint of working cost and prevention of oxidation.
[0021]
In the subsequent step (I), first, heat treatment is performed at 400 ° C. to 600 ° C. for 0.5 to 5 hours. By such a heat treatment, it is possible to prevent a decrease in the electrical conductivity and a break during the drawing in the subsequent cold drawing.
[0022]
The temperature of the heat treatment is 400 ° C to 600 ° C. If the temperature is lower than 400 ° C., the recovery of the electrical conductivity becomes insufficient, and if the temperature exceeds 600 ° C., the strength tends to be excessively reduced. A preferred temperature range is 450 ° C to 550 ° C, more preferably 470 ° C to 530 ° C.
[0023]
The heat treatment time is 0.5 hours to 5 hours. If the time is shorter than 0.5 hour, the recovery of the electrical conductivity is insufficient, and if the time is longer than 5 hours, the strength tends to be excessively reduced. The preferred heating time is from 0.8 hours to 4 hours, more preferably from 1.0 hours to 2.0 hours.
[0024]
In the step (I), after the heat treatment and before the cold drawing, it may be cooled to about 10 ° C to 40 ° C. In the case of cooling, it may be gradually cooled, or may be immersed in water or the like and rapidly cooled.
[0025]
In the step (I), cold drawing is performed with a cross-sectional reduction rate of 99.00% to 99.91%.
If the cross-sectional reduction rate of the cold drawing in the step (I) is less than 99.00%, the tensile strength is not sufficiently enhanced by the cold drawing, and if it exceeds 99.91%, the electrical conductivity decreases. This is because there is a tendency. The preferred area reduction ratio is 99.1% to 99.91%, more preferably 99.2% to 99.9%.
[0026]
Various processes such as die drawing, roll rolling, and swaging can be employed for the cold drawing in the step (I). However, since the shape stability and the processing speed can be improved, the normal die drawing is performed. Adopted. Further, the cold drawing may be performed by one continuous drawing or may be performed by dividing into two or more times. Furthermore, dry wire drawing or wet wire drawing may be used, or a combination thereof may be used.
[0027]
The Ag alloy ultrafine wire thus obtained can be used as a wire conductor for use in electronic devices, aircraft, industrial robots, medical devices, automobiles, and the like by a conventionally known stranded wire process in this field.
[0028]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described more specifically with reference to examples. The present invention is not limited by these.
[0029]
Example 1
Using an electrolytic copper ingot and a silver ingot in such a ratio that the copper content becomes 3.0 wt%, the material is heated and melted at 1100 ° C. in a reducing atmosphere (Ar gas) and cast into a billet. did. Next, a rough drawn wire (wire diameter φ6.7 mm) was obtained at 960 ° C. using a hot extruder. This rough wire was subjected to cold wire drawing with a reduction ratio of cross section of 99.4% using a wire drawing die to obtain an alloy wire of φ0.5 mm.
[0030]
This alloy wire was subjected to a heat treatment at 500 ° C. for 1 hour, and then subjected to the same cold drawing at 97.44%, 99.00%, 99.64%, and 99.91% reduction in area. And alloy wires having wire diameters of 0.08 mm, 0.05 mm, 0.03 mm, and 0.015 mm, respectively.
[0031]
Example 2
Each alloy wire was obtained in the same manner as in Example 1 except that the copper content was 4 wt%.
[0032]
Example 3
Each alloy wire was obtained in the same manner as in Example 1 except that the copper content was 5 wt%.
[0033]
Example 4
Each alloy wire was obtained in the same manner as in Example 1 except that the copper content was 6 wt%.
[0034]
Comparative Example 1
Each alloy wire was obtained in the same manner as in Example 1 except that the copper content was 2 wt%.
[0035]
Comparative Example 2
Each alloy wire was obtained in the same manner as in Example 1, except that the copper content was 7 wt%.
[0036]
Comparative Example 3
Each alloy wire was obtained in the same manner as in Example 1, except that a Cu-0.3% Sn alloy was used as a raw material.
[0037]
For each of the alloy wires obtained in Examples 1 to 4 and Comparative Examples 1 to 3, the tensile strength and the electrical conductivity were measured, and the Cu content, the cross-sectional reduction rate, and the relationship between the tensile strength and the electrical conductivity of the alloy wire were investigated. did. Table 1 shows the survey results. The upper part of Table 1 shows the tensile strength (MPa), and the lower part shows the electrical conductivity (% IACS).
The tensile strength was measured according to JIS Z2241, and the electrical conductivity was measured according to JIS H0505.
[0038]
[Table 1]
[0039]
In Example 1, the cross-section reduction rate was 99.91%, in Example 2, the cross-section reduction rate was 99.64%, and in Examples 3 and 4, the tensile strength was 99.00% and 99.64%. It showed an IACS of 800 MPa or more and an electrical conductivity of 80%, but none of such high tensile strength and electrical conductivity were simultaneously exhibited at a cross-sectional reduction rate of 99.74%.
In the alloy wires of Comparative Examples 1 to 3, none of the alloy wires having a tensile strength of 800 MPa or more and a conductivity of 80% IACS was found at any of the cross-sectional reduction rates.
[0040]
【The invention's effect】
The ultrafine Ag alloy wire of the present invention has a tensile strength of 800 MPa or more and a conductivity of 80% IACS, obtained by using an Ag alloy containing 3.0 wt% to 6.0 wt% of Cu as the ultra fine wire. These are ultrafine wires that simultaneously satisfy high strength and high electrical conductivity.
Further, according to the production method of the present invention, it is possible to provide an ultrafine wire having a tensile strength of 800 MPa or more and a conductivity of 80% IACS or more and satisfying both high strength and high conductivity at the same time.
Further, since the ultrafine Ag alloy wire of the present invention is a silver-based alloy, there is no need for plating, which is advantageous in terms of corrosion resistance, contact resistance, and production control.
Such an ultrafine Ag alloy wire is suitably used in electronic equipment, aircraft, industrial robots, medical equipment, automobiles, and the like, particularly for parts requiring bending characteristics such as automobile harnesses and robot wires.