JP2004188330A - 浮遊遮光部材 - Google Patents

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Akihiro Ito
彰洋 伊藤
Terukazu Arai
輝一 新井
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Kureha Techno Engineering Co Ltd
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Kureha Techno Engineering Co Ltd
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Abstract

【課題】波風のある実際の湖沼水面においても浮遊遮光部材同士の重なりの発生が十分に防止され効率的かつ確実に水域を遮光し、藻類の異常発生を十分に抑制することが可能な浮遊遮光部材を提供することである。
【解決手段】本発明の浮遊遮光部材1は、基準面Aに対して面対称でかつ該基準面に対して両面凸状となっており、基準面に対する水平断面が略六角形である第1面18と第2面20とが連設されてなる形状を有しており、水面に浮遊させて水域を遮光するための部材であって、第1面と第2面とのなす角度αが14度〜50度であり、かつ、部材の嵩比重が0.1〜0.3であることを特徴とする。上記のように第1面と第2面とのなす角度αを14度〜50度とし、かつ、嵩比重を0.1〜0.3とすることで、浮遊遮光部材同士の重なりを十分に抑えることができるため、効率的かつ確実に水域を遮光でき、藻類の増殖等を十分に抑制することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湖沼の水が富栄養化して繁茂している藻類を減少させるか又は藻類の増殖を抑制するために水面に浮遊させて水域を遮光する遮光部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近時、湖沼(本明細書において、湖沼とは湖,沼,池,プ−ル等を含むものとする)においては、着生藻類やアオコ等の浮遊藻類が繁殖してその水質が悪化し、水道,観光,レクリエーション等に支障を来す場合があることが広く知られており、特に、アオコの発生による水の汚染が問題となっている。その原因は、湖沼に窒素やリンを多量に含む生活排水が流入して湖沼の水が富栄養化し、この富栄養化により、糸状藻類等の着生藻類やアオコ等の浮遊藻類が激増して、湖沼の生態系が変化するからである。
【0003】
上記のようなアオコの発生を抑制する手法としては、種々の手法が提案されている。例えば、水面に浮遊遮光部材を所要数以上自由浮遊させて水中への光を遮断する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−263034号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000−263034号公報に開示されている技術では、浮遊遮光部材が水中への光を遮断することで水中の藻類の活性を低下ないしは死滅させ、藻類の異常発生の抑制が図られているものの、未だ十分なものではなかった。
【0006】
すなわち、特開2000−263034号公報においては、波風がある実際の湖沼水面では、浮遊遮光部材が水面に垂直な方向に沈み込んだり、傾いたりする傾向が見られ、これらの沈み込みや傾きにより浮遊遮光部材同士が重なり、部材間に隙間が生じてしまう場合があった。そして、このように部材間に隙間が生じると、隙間部分から水中に光が入ってしまい、藻類の異常発生を十分に抑制できないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、波風がある実際の湖沼水面においても浮遊遮光部材同士の重なりの発生が十分に防止され、効率的かつ確実に水域を遮光し、藻類の異常発生を十分に抑制することが可能な浮遊遮光部材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、実際の湖沼水面において浮遊遮光部材同士が重なりあうことにより隙間が生じ、遮光効率が低下するという問題点について鋭意研究を重ねた。
その結果、浮遊遮光部材の最大水平断面積を有する部分が水面にくるように嵩比重を約0.5にするという通常の発想を大きく転換し、嵩比重を従来の約0.5より相当小さくしかつ浮遊遮光部材の側面の水平面に対する傾斜角を所定の範囲内にすることにより浮遊遮光部材同士の重なりを十分に軽減できるという知見を得て本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、上記目的を達成するために、本発明の浮遊遮光部材は、基準面に対して面対称でかつ該基準面に対して両面凸状となっており、基準面に対する水平断面が略正六角形である第1面と第2面とが連設されてなる形状を有しており、水面に浮遊させて水域を遮光するための部材であって、第1面と第2面とのなす角度αが14度〜50度であり、かつ、部材の嵩比重が0.1〜0.3であることを特徴とするものである。
【0010】
第1面と第2面とのなす角度α及び嵩比重を上記のような範囲にすることで、浮遊遮光部材を水面に複数浮かべた場合に、浮遊遮光部材が傾くことが十分に抑制され、浮遊遮光部材同士が重なりあうことをより確実に防止することができる。そのため、浮遊遮光部材の1つの浮遊遮光部材で遮光可能な範囲を最大に利用することができる。更に、傾きや重なりが防止されることで浮遊遮光部材間の空隙面積が減少するため、複数の浮遊遮光部材で遮光できる最大面積で効率的かつ確実に水域を遮光することができる。
【0011】
このような本発明の浮遊遮光部材は、内部空間が形成されている中空体であることが好適である。このように内部空間が形成されている中空体であると、材料使用量を低減でき、内部空間を有さないものに比べて同等の重量の部材で、遮光可能な面積を大きくすることができる。
【0012】
そして、本発明の浮遊遮光部材が中空体である場合に、内部空間に、嵩比重を調節する調節液(例えば、水)を封入することが好適である。このように調節液を封入するようにすれば、封入する調節液の量を変えることで浮遊遮光部材の嵩比重を容易に調節することができる。
【0013】
更に、前記調節液に代えて、または前記調節液と共に、内部空間に加圧ガス(例えば、空気、窒素)を封入することも望ましい。このように加圧ガスを内部空間に封入することで浮遊遮光部材の内圧(内部気圧)を高めることができるため、材質等を代えずに浮遊遮光部材の強度を向上させることができる。
【0014】
また、前記本発明の浮遊遮光部材は、樹脂発泡材及び多孔質材からなる群から選択される少なくとも1つの材料より形成される芯部を有し、その芯部の表面が非透水性処理されていても良い。このような構成では、中実構造の浮遊遮光部材を形成することができる。この場合、例えば、嵩比重が0.1〜0.3またはそれより小さい嵩比重の樹脂発泡材あるいは多孔質材で芯部を形成し、その芯部の表面を非透水性材で覆うことで嵩比重を調節して、浮遊遮光部材とすることが好ましい。また、芯部を嵩比重0.1〜0.3の材料を使用して形成した場合には、芯部の表面を加熱溶融してマトリクス構造を無くす等の非透水性処理をして水が滲入しないようにすれば良い。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の浮遊遮光部材の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。全図を通し、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る浮遊遮光部材1の側面図、図2は浮遊遮光部材1の平面図、図3は図2におけるIII-III線に沿った断面図を夫々示した図である。
尚、以下、複数の浮遊遮光部材1を区別する必要のあるときは、浮遊遮光部材1aのように適宜a,b等の符号を順次付して区別する。
【0017】
浮遊遮光部材1は、図1及び図2から理解されるように、2つの同一形状の切頭六角錐10,12における底面に相当する領域を対向させて合わせた形状である。即ち、切頭六角錐10の底面に相当する略六角形の領域を基準面Aとした場合、基準面Aに対して両面凸状である。また、切頭六角錐10の側面14(以下、各側面を区別する場合には、側面14aのように適宜a〜fの符号を付す。)及び頂部平面16とで形成される第1面18と、基準面Aに対して第1面18と面対称な第2面20とを連設した形状である。基準面Aは、図2に示すように略正六角形であることが好適である。これは、浮遊遮光部材1を複数浮かべて水中入射光を有効に遮るためには、浮遊遮光部材1同士を隙間無く配置する必要があり、正六角形の場合は辺の長さが等しいので隙間無く配置され易いためである。
また、正六角形の場合は、正三角形や正四角形に比べて自動整列配置しやすく、隙間無く配置された場合に安定しており配列状態が崩れにくい。上記のように第1面18と第2面20とを基準面Aに対して面対称とし、基準面Aを正六角形とすることで基準面Aに対する水平断面も正六角形となっている。
【0018】
浮遊遮光部材1の最大水平断面積、即ち、基準面Aでの水平断面積は、0.02m2〜4m2であることが、遮光効率・水面での安定性・強度等の観点から好適である。
【0019】
また、図1に示す第1面18と第2面20とのなす角度αは、14度〜50度であることが必要である。角度αが14度未満の場合には、浮遊遮光部材1を水面に複数浮かべた場合に、浮遊遮光部材1が平板に近づくため浮遊遮光部材1同士が重なりあいやすくなる。浮遊遮光部材1同士が重なると、複数の浮遊遮光部材1で実際に遮光できる有効な遮光面積(以下、「有効遮光面積」という)が、当該浮遊遮光部材1で理論的に遮光できる最大の面積(以下、最大有効遮光面積という)よりも小さくなる。そのため、角度αが14度未満の浮遊遮光部材1では、水中入射光を効率的に遮ることができない。
【0020】
一方、角度αが50度を越える場合には、浮遊遮光部材1が傾き易くなる。浮遊遮光部材1が傾くと、浮遊遮光部材1間に空隙が生じやすくなり、その空隙から光が水中に入る。また、例えば、1つの浮遊遮光部材1aが傾いた際に、隣接する他の浮遊遮光部材1bがその浮遊遮光部材1aに部分的に被さると、浮遊遮光部材1aの傾きが解消されない。以上のように、浮遊遮光部材1が傾くことで浮遊遮光部材1間の空隙面積が増加すると共に、その浮遊遮光部材1の傾きも解消しにくくなるため、確実に光を遮ることができない。そのため、水中に光が届いてしまい藻類が増殖等する場合が生じやすい。
【0021】
また、本実施形態に係る浮遊遮光部材1は、図3から理解されるように、内部空間22を有する中空体である。浮遊遮光部材1の頂壁24には、内部空間22に水28及び加圧ガスを封入するための封入口26が形成されている。封入口26には、例えば、水28及び/または加圧ガスを封入後に密封できるように栓30をするようにしておけばよい。本実施形態では、栓30をした場合に頂壁24の外表面、即ち、頂部平面16が平坦になるようになっている。
【0022】
上記の内部空間22に水28を封入することで浮遊遮光部材1の嵩比重を自在に調節することができ、加圧ガスを封入して浮遊遮光部材1の内圧を高めることで浮遊遮光部材1の構造体としての強度を向上させることができる。更に、上記のように頂壁24を設けることで、浮遊遮光部材1を製造するための材料使用量を低減させることができかつ横波の影響を減少させられる。尚、頂壁24の面積は浮遊遮光部材1の基準面Aにおける水平断面の面積の2〜10%が適切で、さらには2〜5%が好ましい。頂壁24が広すぎると浮遊遮光部材1を水面に浮かべた際に、頂壁24にのった塵芥が落ちにくくかつ平板に近づくと水面の揺動を受けやすいためである。
【0023】
上記の浮遊遮光部材1の材料は、耐水性、遮光性及び耐候性を有していれば良く、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、防食防錆加工した金属、非腐食性金属等が挙げられ、必要に応じて顔料、着色剤等を含有させたり、塗膜を備えるようにすれば良い。
【0024】
浮遊遮光部材1の嵩比重は、0.1〜0.3であることが必要である。嵩比重が0.1未満の場合には、軽すぎて浮遊遮光部材1を水面に複数浮かべた場合に、風に飛ばされたりして水面を遮光できない場合が生じる。更に、浮遊遮光部材1が軽すぎると動かされやすいため、波の影響で隣接する浮遊遮光部材1の一方が他方に部分的に覆い被さる状態が生じやすく、浮遊遮光部材1の配列が崩れて空隙が生じやすい。そのため、水面を確実に遮光できず、藻類の増殖等が起こりやすくなる。
【0025】
嵩比重が0.1〜0.3の場合、浮遊遮光部材1を水面に浮かべると、喫水線が基準面Aよりも下側にくる。喫水線が基準面Aよりも下側にくると、基準面Aと喫水線との間の空間により、波による浮遊遮光部材1の水面に垂直な方向である高さ方向の変位が吸収される。従って、浮遊遮光部材1を水面に複数浮かべると、風雨に対しても安定して整列して浮遊し、傾きも少なく、浮遊遮光部材1同士の重なりも抑制される。そのため、複数の浮遊遮光部材1の有効遮光面積は最大有効遮光面積に近づく。これにより、浮遊遮光部材1で遮光すべき光を確実に遮ることができ、藻類を減少させることができる。
【0026】
嵩比重が0.3より大きいと、沈み込みが生じてくる。沈み込みが生じると、上述したような基準面Aと喫水面との間の空間が生じないため、波による水面に垂直な方向、即ち、基準面Aに垂直な方向の変位が吸収されず、浮遊遮光部材1が不安定になり、重なりが生じやすくなる。浮遊遮光部材1同士に重なりが生じると、浮遊遮光部材1間に空隙が生じたりするため光を確実に遮れず、藻類の繁殖等を抑制できない。
【0027】
以上述べたように、第1面18と第2面20とのなす角度αを14度〜50度としかつ嵩比重を0.1〜0.3とした浮遊遮光部材1を水面に複数浮遊させると、風雨に対しても水面上に安定して整列配置しかつ重なりを低減することができる。これにより空隙面積が減少しかつ1つの浮遊遮光部材1で遮光できる面積を最大限に利用できるため、複数の浮遊遮光部材1の有効遮光面積は最大有効遮光面積に近づく。従って、従来の浮遊遮光部材に比べて効率的かつ確実に遮光することができ、藻類の増殖等を十分に抑制できる。
【0028】
浮遊遮光部材を複数浮かべて水中入射光を遮るためには浮遊遮光部材同士をつなげた固定係留方式と浮遊遮光部材を自由に浮遊させる自由浮遊方式とがある。
固定係留方式の場合、浮遊遮光部材を水面に安定して浮遊させられるが、風や水の流れにのって移動する表層藻類に対応できない。一方、自由浮遊方式の場合、風や水の流れにのって表層藻類を自動追尾できるため移動する表層藻類に対応できる。また、自由浮遊方式では、固定係留方式のように浮遊遮光部材を固定する手間が省け、更に、水位変動にも自動的に対応することができる。ただし、従来の浮遊遮光部材では浮遊遮光部材自体が水面に安定して浮遊できず複数の浮遊遮光部材を浮かべても浮遊遮光部材間から光が入射し水中入射光を十分に遮れなかった。
【0029】
これに対して、本実施形態の浮遊遮光部材1では、上記のように水面に安定して浮遊して効率的かつ確実に光を遮れる。したがって、本実施形態の浮遊遮光部材1は、上記の自由浮遊方式による藻類抑制システムに効果的に適用することができ、風や水の流れにのって表層藻類を自動追尾して藻類の増殖等を十分に抑制することができる。
【0030】
次に本発明に係る浮遊遮光部材の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態における浮遊遮光部材1は、図4に示すように中実構造である。
【0031】
浮遊遮光部材1は、頂壁24に封入口26が設けられていない点以外は、第1の実施形態の浮遊遮光部材1と同一形状で、同一の嵩比重を有している。即ち、浮遊遮光部材1における第1面18と第2面20とのなす角度αは、14度〜50度であり、嵩比重は0.1〜0.3である。
【0032】
本実施形態における浮遊遮光部材1は、芯部32と被覆部34とを有する。芯部32は、樹脂発泡材及び多孔質材からなる群から選択された少なくとも1つの材料で形成されている。芯部32を形成している樹脂発泡材、多孔質材としては、その嵩比重が0.3以下であればよく特に限定する必要はない。尚、嵩比重が0.1未満の場合には、後述するように被覆部34を利用して浮遊遮光部材1全体の嵩比重を0.1〜0.3にする。樹脂発泡材としては、例えば、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン等が挙げられる。また、多孔質材としては織布、不織布等が挙げられ、それらを構成している繊維は天然繊維であっても、人工的に作られた樹脂繊維であっても良い。
【0033】
また、樹脂発泡材、多孔質材として、いわゆる圧密発泡材や圧密多孔質材を使用することも可能である。圧密発泡材としては、例えば、圧密発泡スチロール、圧密発泡ポリプロピレン、圧密発泡ポリエチレン等が挙げられる。また、圧密多孔質材としては、例えば、木材等の圧密セルロース等が挙げられる。
【0034】
被覆部34は、芯部32に水の滲入を防止する非透水性処理の1つとして非透水性材で形成されている。また、被覆部34は、浮遊遮光部材1の嵩比重を0.1〜0.3に調節する機能を有する。非透水性材の材料は耐水性及び耐候性を有していれば良く、特に限定されないが、例えば、高密度の樹脂、強化プラスチック、防食防錆加工した金属、又は非腐食性金属等が嵩比重調整の観点から好適である。
【0035】
尚、浮遊遮光部材1は遮光性を有しているが、芯部32及び被覆部34のうちの少なくとも一方が遮光性を有していれば良い。また、図4において角度αを芯部32の外表面で形成される角度としているが、これは、被覆部34は芯部32の外表面をその形状に沿って被覆しているため、芯部32における角度は、被覆部34の外表面、即ち、第1面18と第2面20とのなす角度αと等しいからである。
【0036】
本実施形態に係る浮遊遮光部材1において、第1面18と第2面20とのなす角度αが14度〜50度であること、及び、嵩比重が0.1〜0.3であることの作用効果は第1の実施形態の場合と同様である。即ち、複数の浮遊遮光部材1を水面に浮かべた場合、重ならずに水面で安定して整列して浮遊し、浮遊遮光部材1間の空隙面積が減少する。このため、遮光できる範囲が最大有効遮光面積に近づくため効率的かつ確実に光を遮ることができ、藻類の増殖等を抑制することができる。また、本実施形態のように中実の浮遊遮光部材1の場合、加工が容易であるため浮遊遮光部材1を小型化する場合に適している。更に、自由浮遊方式で使用することによりその効果を発揮できる点は、第1の実施の形態と同様である。
【0037】
尚、非透水性処理として、例えば、芯部32の嵩比重が0.1〜0.3である場合に、芯部32の外表面を加熱溶融しマトリクス構造をなくして非透水性にする処理や、ゴム、樹脂、プラスチックで被覆すること、ニス、ワックス又は撥水性を有する塗料等を塗布するといった処理等を施こしても良い。
【0038】
上記第1及び第2の実施形態において浮遊遮光部材1は、図2に示すように基準面Aに対する水平断面を正六角形とし、また図1に示すように第1面18と第2面20との境界部分が角型になっている態様であるが、これらに限定されず、種々の態様が考えられる。例えば、図5に示すように図2における正六角形の角の部分等が湾曲または面取りされていても良い。
【0039】
また、図6に示すように、図5に示した浮遊遮光部材1の側面図において、第1面18と第2面20との境界部分が外側に凸の曲面を形成していても良い。この場合、第1面18と第2面20とのなす角度αは、図5及び図6から理解されるように第1面18側における側面14a及び側面14aと隣接する側面14fとで形成される外縁線36と、その外縁線36と基準面Aに対して対称な第2面20側の外縁線38とにおける夫々の直線部分を、基準面A側に延長した場合の延長線のなす角度αとすればよい。
【0040】
更に、図7は、浮遊遮光部材1において第1面18と第2面20との境界部分が基準面Aに対して垂直になっている場合の浮遊遮光部材1の側面図である。この場合も、図7に示すように第1面18と第2面20とのなす角度αは、夫々の外縁線36,38を基準面A側に延長した場合の延長線のなす角度αとすればよい。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4及び比較例1〜4)
図5、図6、図8に示すように、内部空間22を有する浮遊遮光部材1を、第1面18と第2面20とのなす角度αを様々に変化させて作製し、その角度αが有効遮光面積(遮光効率)、水面での整列具合、安定性などに与える影響に関して試験した。尚、図8は、図6の浮遊遮光部材1の端部の拡大断面図である
実施例1の浮遊遮光部材1は、基準面Aに対して第1面18側の切頭六角錐10に相当する部分と、第2面20側の切頭六角錐12に相当する部分とを別々に作った後に組み合わせて作製した。尚、切頭六角錐10,12に相当する部分は、図8のように第1面18と第2面20との境界部分が曲面となっているため、以下、特に、変形切頭六角錐40,42と夫々いうものとする。
【0042】
変形切頭六角錐40は、ポリエチレン樹脂を用いて作製した。変形切頭六角錐40の肉厚tは3.0mmとした。また、浮遊遮光部材1の第1面18と第2面20とのなす角度αを18度とするため、角度αの半分の角度である変形切頭六角錐40の側壁44と基準面Aとのなす角度θが9度となるように、外縁線36における直線部分を水平面に垂直な面に投影した場合の鉛直方向に対する長さである片側高さaを11.0mmとし、外縁線36における直線部分を水平面へ投影した長さである長辺長さbを69.1mmとした。基準面Aの一辺の長さcは125.0mm、頂部平面の一辺の長さdは25.0mmで、基準面Aの湾曲部46の曲率半径R1は10.0mm、変形切頭六角錐40の側壁44における基準面A側の端部48の曲率半径R2は10.0mmであった。更に、変形切頭六角錐40の内側において側壁44の平面部分と曲面部分との連接部分には、図8に示すように連結用部材50を設けた。
【0043】
上記の変形切頭六角錐40と同一形状のものを作製し、変形切頭六角錐42とした。そして、夫々の底面に相当する部分を対向させて、対向する連結用部材50,52の面を溶着して浮遊遮光部材1を作製した。
【0044】
以上のようにして作製した浮遊遮光部材1の内部空間22に水28を封入することで、嵩比重を0.25とした。
【0045】
また、実施例2〜4の浮遊遮光部材1は、材質、肉厚t、基準面Aの一辺の長さc、頂部平面の一辺の長さd、曲率半径R1、曲率半径R2及び長辺長さbを実施例1と同一とし、片側高さaを表1に示すように変えることで角度θを変化させて作製した。嵩比重は全て実施例1の場合と同様に0.25とした。
【0046】
【表1】
Figure 2004188330
【0047】
上記実施例1〜4の浮遊遮光部材1を夫々10個作製して屋外のため池で、実施例1〜3に対しては2002年10月4日、実施例4に対しては2002年10月11日に各4時間試験を行った。表2に試験状況を示す。試験日の天候は実施例1〜3の場合は快晴であり、実施例4の場合は晴れていた。また、実施例1〜3の試験時の平均風速は1.5m/sであり水面は穏やかで波のない状態であった。実施例4の場合は、平均風速が2.0m/sであり水面は穏やかであったがわずかに波が生じていた。
【0048】
【表2】
Figure 2004188330
【0049】
また、比較例1〜4の浮遊遮光部材1は、材質、肉厚t、基準面Aの一辺の長さc、頂部平面の一辺の長さd、曲率半径R1、曲率半径R2及び長辺長さbを実施例1と同一とし、片側高さaを表1に示すように変えることで角度θを変化させて作製した。また、嵩比重は比較例1〜4における浮遊遮光部材1において全て実施例1の場合と同じ0.25とした。
【0050】
比較試験は、実施例1〜4の場合と同様に表1に示す比較例1〜4の浮遊遮光部材1を夫々10個ずつ作製したものを、実施例1〜4と同じ場所で水面に浮遊させて行った。比較例1〜4の試験状況は表2の通りである。
【0051】
上記の実施例1〜4及び比較例1〜4の結果は以下の通りである。
【0052】
角度θが1.7度、5.0度では、浮遊遮光部材1同士が覆い被さりやすいことがわかった。夫々の角度での試験終了時における有効遮光面積と最大有効遮光面積との比は、夫々約0.88、約0.92であった。尚、以下において有効遮光面積と最大有効遮光面積との比は何れも試験終了時の値である。角度θが9.0度、13.8度、19.9度、25.0度では、浮遊遮光部材1は水面で安定して整列し、重なりが生じにくくなっていることが観察された。角度θが9.0度、13.8度、19.9度、及び25.0度での有効遮光面積と最大有効遮光面積との比は、夫々約0.98、約0.99、約0.99及び約0.98であった。また、角度θが、30.1度、34.8度では浮遊遮光部材1が傾きやすく浮遊遮光部材1間に空隙が生じやすいことが観察された。この場合の有効遮光面積と最大有効遮光面積との比は、夫々約0.94、約0.93であった。
【0053】
以上のように、第1面18と第2面20とのなす角度αが14度〜50度の範囲内の場合には、浮遊遮光部材1は重ならずに水面上で安定に整列配置して、空隙が生じにくいことが観察された。そして、角度αが14度〜50度の範囲外の場合には、重なりが生じること等により浮遊遮光部材1間に空隙が生じやすくなっていることが観察された。即ち、同じ嵩比重の場合、第1面18と第2面20とのなす角度αが14度〜50度の場合には、浮遊遮光部材1の最大有効遮光面積に近づくため、光を効率的かつ確実に遮断でき、水中の藻類の異常発生を抑制することができることが確認された。
(実施例5〜8及び比較例5〜8)
浮遊遮光部材1の嵩比重を変化させて、嵩比重が有効遮光面積(遮光効率)、水面での整列具合、安定性などに与える影響に関して試験した。
【0054】
実施例5の浮遊遮光部材1は、発泡ポリスチレンを削り出して中実の変形切頭六角錐40,42を夫々作製し、それらの底面に相当する部分を対向させて張り合わせて作製した。実施例5の浮遊遮光部材1の嵩比重は、変形切頭六角錐40,42を張り合わせる際に、その中心位置に約125g分の鋼鉄球を埋め込むことで0.1とした。実施例5の浮遊遮光部材1の外形寸法は、実施例1の浮遊遮光部材1の外形寸法と同一とした。即ち、基準面Aの一辺の長さcは125.0mm、頂部平面の一辺の長さdは25.0mm、片側長さaは11.0mm、長辺長さbは69.1mm、曲率半径R1は10.0mm及び曲率半径R2は10.0mmである。また、第1面18と第2面20とのなす角度αは18度である。
【0055】
また、実施例6の浮遊遮光部材1は、内部空間22に水28を封入しない点以外は、実施例1の浮遊遮光部材1と同様の作製手順により、実施例1の浮遊遮光部材1と同寸法となるように作製した。実施例6の浮遊遮光部材1は、上述のように内部空間22に水28を封入しないことから、総重量が310gで嵩比重が0.2であった。
【0056】
実施例7及び実施例8の浮遊遮光部材1は、その嵩比重を調節するために内部空間22に水28を表3に示すように封入した点以外は、実施例1の浮遊遮光部材1と同様の作製手順により実施例1の浮遊遮光部材1と同寸法となるように作製した。実施例7及び実施例8の嵩比重は表3に示す通りである。
【0057】
【表3】
Figure 2004188330
【0058】
上述した実施例5〜8の浮遊遮光部材1を夫々10個作製して屋外のため池で2002年10月17日に各4時間を試験を行った。試験時の状況を表4に示す。試験日の天候は晴れており、各試験時の平均風速は1.9m/sであり水面は穏やかで波のない状態だった。
【0059】
【表4】
Figure 2004188330
【0060】
比較例5〜8の浮遊遮光部材1は、その嵩比重を調節するために内部空間22に水28を表3に示すように封入した点以外は、実施例1の浮遊遮光部材1と同様の作製手順により実施例1の浮遊遮光部材1と同寸法となるように作製した。
比較例5〜8の嵩比重は表3に示す通りである。
比較例5〜8における試験時の状況は表4の通りである。
【0061】
上記の実施例5〜8及び比較例5〜8の試験結果は以下の通りである。
【0062】
嵩比重が0.10、0.20、0.25、0.30では浮遊遮光部材1は、水面で揺れにくく安定していることが観察された。夫々の嵩比重における有効遮光面積と最大有効遮光面積との比は、全て約0.99であった。また、嵩比重0.39〜0.60では嵩比重が0.30までに比べて浮遊遮光部材1が沈み込みやすくなり、水面で不安定になる傾向にあることが観察された。特に、嵩比重が0.47以上では喫水線が基準面Aを越えて浮遊遮光部材1が沈み込み、浮遊遮光部材1同士が重なり合いやすいことが観察された。嵩比重が0.39、0.47、0.53及び0.60における有効遮光面積と最大有効遮光面積との比は、夫々約0.96、約0.97、約0.92及び約0.93であった。
【0063】
以上のように、本発明における浮遊遮光部材1の嵩比重の範囲である0.1〜0.3の場合には、浮遊遮光部材1は水面において安定でかつ浮遊遮光部材1同士が重なりにくく、有効遮光面積が最大有効遮光面積に近づくことが確認された。一方、嵩比重が0.1〜0.3の範囲でない場合には、沈み込みが生じ重なり合いやすいことが観察された。上述したように嵩比重が0.1〜0.3の範囲である場合には、有効遮光面積が最大有効遮光面積に近づくために、水中入射光を効率的かつ確実に遮ることができる。そのため、例えば、本実施例と同様の形状であるが嵩比重が上記の範囲にない浮遊遮光部材を用いた場合よりも藻類の増殖を十分に抑制することができる。
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の浮遊遮光部材によれば、波風がある実際の湖沼水面におていも浮遊遮光部材同士の重なりの発生を大幅に低減でき、浮遊遮光部材間の空隙面積を十分に少なくなくすることができる。そのため、浮遊遮光部材を浮かべた水域を効率的かつ確実に遮光することができるため、藻類の異常発生を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の浮遊遮光部材の一実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明の浮遊遮光部材の一実施形態を示す平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の浮遊遮光部材の他の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の浮遊遮光部材の更に他の実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明の浮遊遮光部材の更に他の実施形態を示す側面図である。
【図7】本発明の浮遊遮光部材の更に他の実施形態を示す側面図である。
【図8】図6における浮遊遮光部材の端部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1…浮遊遮光部材、10、12…切頭六角錐、14…側面、16…頂部平面、18…第1面、20…第2面、22…内部空間、24…頂壁、26…封入口、28…水(調節液)、30…栓、32…芯部、34…被覆部、36,38…外縁線、40,42…変形切頭六角錐、44…側壁、46…湾曲部、48…端部、50,52…連結用部材、A…基準面

Claims (5)

  1. 基準面に対して面対称でかつ前記基準面に対して両面凸状となっており、前記基準面に対する水平断面が略正六角形である第1面と第2面とが連設されてなる形状を有しており、水面に浮遊させて水域を遮光するための部材であって、
    前記第1面と前記第2面とのなす角度αが14度〜50度であり、かつ、
    前記部材の嵩比重が0.1〜0.3であることを特徴とする浮遊遮光部材。
  2. 内部空間が形成されている中空体であることを特徴とする請求項1に記載の浮遊遮光部材。
  3. 前記内部空間に嵩比重を調節する調節液が封入されていることを特徴とする請求項2に記載の浮遊遮光部材。
  4. 前記内部空間に加圧ガスが封入されていることを特徴とする請求項2に記載の浮遊遮光部材。
  5. 樹脂発泡材及び多孔質材からなる群から選択される少なくとも1つの材料より形成される芯部を有し、前記芯部の表面が非透水処理されていることを特徴とする請求項1に記載の浮遊遮光部材。
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