JP2004184791A - 光学素子、その製造方法及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】斜面の面精度に優れる微細凹部が位置精度よく分散分布して横方向の入射光を縦方向に効率よく光路変換して、表示像が乱れにくい光出射手段を有する光学素子の開発。
【解決手段】透明基材の片面に横断面台形の凹部(A)からなる光出射手段を有する光学素子(10)、その光学素子を液晶表示パネルにおける液晶セルの少なくとも片側に配置してなる液晶表示装置、レーザーエッチングにて被照射膜を貫通する横断面台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段を形成する光学素子の製造方法及びその光学素子の光出射手段を形成した面の形態を転写した金型を得てその形態を透明基材に転写する光学素子の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】透明基材の片面に横断面台形の凹部(A)からなる光出射手段を有する光学素子(10)、その光学素子を液晶表示パネルにおける液晶セルの少なくとも片側に配置してなる液晶表示装置、レーザーエッチングにて被照射膜を貫通する横断面台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段を形成する光学素子の製造方法及びその光学素子の光出射手段を形成した面の形態を転写した金型を得てその形態を透明基材に転写する光学素子の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、面精度に優れる横断面台形の凹部からなる光出射手段を有して、横方向の入射光を効率よく縦方向に光路変換して表示像が乱れにくい液晶表示装置を形成しうる光学素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【発明の背景】
従来、ストライプ状のプリズム構造からなる光出射手段を有するサイドライト型導光板を液晶表示パネルの視認側表面に配置してなるフロントライト式の反射型液晶表示装置が知られていた(特開平11−250715号公報)。斯かる光出射手段の形成は、板の表面をダイヤモンドバイト等で切削する機械加工方式や、三角形の開口を有する投影マスクを走査させるドライエッチング方式にて行われていた。
【0003】
しかしながらストライプ状のプリズム構造では液晶パネルの画素と干渉してモアレが発生し、表示品位が低下しやすいこと、導光板が液晶パネルの前面に位置するフロントライト式では、外光の表面反射で液晶表示のコントラストが低下しやすく、また導光板の傷等の欠陥が目立ちやすいことなどの難点があった。
【0004】
【発明の技術的課題】
前記に鑑みて本発明者等は、微小サイズの凹部(溝)の多数を分散分布させてなる光出射手段による方式に想到した。これによれば、前記したモアレ問題や表面反射問題、欠陥による視認阻害問題などを容易に克服しうる。
【0005】
しかしながら、斯かる微小サイズの凹部を分散分布させてなる光出射手段を従来の方法で製造することが困難な問題点があった。すなわち機械加工では微小サイズの凹部を所定位置に精度よく分散分布させる断続構造を形成することが著しく困難であり、ダイヤモンド砥石を用いる方法でも断面形状が一定な凹部の断続構造を形成することは著しく困難である。また三角形の開口を有する投影マスクを走査させるドライエッチング方法にても、横断面三角形の凹部における斜面の交点からなる溝頂点の形状や斜面が粗く光出射手段とした場合に表示像の乱れや輝度低下の原因となりやすい。
【0006】
前記に鑑みて本発明は、斜面の面精度に優れる微細凹部が位置精度よく分散分布して横方向の入射光を縦方向に効率よく光路変換して、表示像が乱れにくい光出射手段を有する光学素子の開発を課題とする。
【0007】
【課題の解決手段】
本発明は、透明基材の片面に、その基材表面での開口が長方形であり、かつ横断面形状が台形である凹部の複数が不連続に分布してなる光出射手段を有してなり、前記透明基材が形成する平面に対する角度に基づいて、前記凹部の当該開口長方形に基づく一対の長辺面の一方が傾斜角35〜48度の光路変換斜面からなり、他方の対向面が角度40〜90度の面からなることを特徴とする光学素子、及びその光学素子を液晶表示パネルにおける液晶セルの少なくとも片側に配置してなることを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。
【0008】
また本発明は、投影マスクを介してレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を、投影像を作り出す光学機器を介しその大きさを制御して透明基材からなる被照射膜に照射しつつ、前記投影マスクの移動を介しレーザー光の照射量に変化をもたせて被照射膜をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、当該被照射膜を貫通する横断面形状が台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段を形成することを特徴とする前記光学素子の製造方法、及びその光学素子の光出射手段を形成した面の形態を転写した金型を得る工程、その金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態を透明基材に転写した後、それを金型より分離する工程を有することを特徴とする前記光学素子の製造方法を提供するものである。
【0009】
さらに本発明は、投影マスクを介してレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を、投影像を作り出す光学機器を介しその大きさを制御してレーザーエッチングが可能な被照射膜に照射しつつ、前記投影マスクの移動を介しレーザー光の照射量に変化をもたせて被照射膜をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、当該被照射膜を貫通する横断面形状が台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段に対応する形態を形成する工程、その光出射手段に対応する形態を形成した面の形態を転写した金型を得る工程、及びその金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態を透明基材に転写した後、それを金型より分離する工程を有することを特徴とする前記光学素子の製造方法を提供するものである。
【0010】
【発明の効果】
本発明によれば、横断面が台形の凹部としたことで面精度(平面度ないし直線性)に優れる斜面を形成でき、また両端部の鋭角な切込み等の形状精度に優れる凹部を形成できて微細構造の凹部が位置精度よく分散分布し、横方向の光を縦方向に効率よく光路変換して伝送光が散乱しにくい光出射手段を有する光学素子を得ることができ、液晶表示パネルの側面や角部より入射させた光を効率よく視認方向に光路変換して、表示像が乱れにくく明るくて見易い表示の液晶表示装置を形成でき、透明フィルムからなる光学素子では薄型軽量化も容易である。横断面三角形の凹部では溝頂点の乱れで伝送光が大きく散乱する。
【0011】
【発明の実施形態】
本発明による光学素子は、透明基材の片面に、その基材表面での開口が長方形であり、かつ横断面形状が台形である凹部の複数が不連続に分布してなる光出射手段を有してなり、前記透明基材が形成する平面に対する角度に基づいて、前記凹部の当該開口長方形に基づく一対の長辺面の一方が傾斜角35〜48度の光路変換斜面からなり、他方の対向面が角度40〜90度の面からなるものである。その例を図1に示した。10が光学素子であり、10Aが透明基材、Aが横断面台形の凹部、aが光路変換斜面、bが対向面である。なお10Bは支持基材、10Cは接着手段、10Dは剥離フィルムである。
【0012】
光学素子の製造は、例えば投影マスクを介してレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を、投影像を作り出す光学機器を介しその大きさを制御して透明基材からなる被照射膜に照射しつつ、投影マスクの移動を介しレーザー光の照射量に変化をもたせて被照射膜をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、当該被照射膜を貫通する横断面形状が台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段を形成する方法などにより行うことができる。
【0013】
前記方法の工程例を図2に示した。1がレーザー発振器、2、3が投影マスクを形成する部分マスク、2a、3aがレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成する開口部、4がレーザー光の投影像41を作り出す光学機器としてのレンズ、5がレーザー光の照射を受けてレーザーエッチングされる対象の被照射膜、Aが被照射膜5に形成した凹部である。
【0014】
なお2A、3Aは部分マスク2、3を固定保持するマスクステージ、6は被照射膜5を固定保持するワークステージである。図例のマスクステージ2A、3A及びワークステージ6は、図外の駆動源を介しそれぞれ独立して、三次元直交座標に基づくX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向に移動でき、かつX軸、Y軸及びZ軸の各軸において軸回転可能である。
【0015】
従ってマスクステージ2Aの前記各軸方向における移動又は/及び軸回転を介して、部分マスク2の位置と配置角度を部分マスク3と被照射膜5とは独立に制御することができる。部分マスク3についてもマスクステージ3Aを介して同様に部分マスク2と被照射膜5とは独立に制御することができる。
【0016】
またワークステージ6の前記各軸方向における移動又は/及び軸回転を介して、被照射膜5の位置と配置角度を部分マスク2と部分マスク3とは独立に制御することができる。なおレーザー発振器1と光学機器4は、独立して前記各軸方向における移動と軸回転が可能となっており、マスクステージ2A、3A(部分マスク2、3)に対する位置と配置角度を制御できるようになっている。
【0017】
また図例では、レーザー発振器1と光学機器4は、投影マスク(2、3)に対する位置と配置角度を制御したのちは、凹部の形成に際してその状態が固定系として維持される。ただしそれらは、必要に応じマスクステージ2A又は/及びマスクステージ3Aと連動して、一体的に移動又は/及び軸回転可能に形成することもできる。
【0018】
前記により、レーザー光の照射方向に基づいて上下の位置関係で配置された部分マスク2、3において、レーザー発振器1に基づくレーザー光が、先ず部分マスク2における長方形の開口部2aより透過し、開口部以外の部分が他のレーザー光を不必要な光としてその透過を遮蔽して、そのレーザー光線像を部分マスク3に投影する。
【0019】
次に、部分マスク2を介して部分マスク3に投影されたレーザー光は、部分マスク3における長方形の開口部3aより透過し、開口部以外の部分が他のレーザー光を不必要な光としてその透過を遮蔽して、その透過光に基づくレーザー光線像の大きさがレンズ4を介し制御(縮小)されて、被照射膜5に照射され、その被照射膜の形成材がレーザー光により部分的にエッチングされて消失し、除去される。
【0020】
前記の場合に、部分マスク2と部分マスク3をその各開口部2a、3aがレーザー光を長方形に成形し、かつその長方形の開閉用の対向辺を部分マスク2と部分マスク3が一辺ずつ分担するように配置してレーザー光透過部を形成し、そのレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を介し被照射膜5にレーザー光を照射しつつ、部分マスク2と部分マスク3をそのマスクステージ2A、3Aを介し移動させてレーザー光透過部を開閉する。
【0021】
前記の部分マスク2、3を介したレーザー光透過部の開閉操作により、その各部分マスクの移動距離に応じて被照射膜の形成材を連続的に除去でき、その場合にレーザー光の照射時間が長い位置(レーザー光透過量の積分値が多い位置)ほど、従ってレーザー光透過部の閉塞位置に近いほど深くエッチングされて凹部(溝)Aが形成される。
【0022】
従って上記した部分マスク2、3の開口部2a、3aを介して形成したレーザー光透過部の如く、複数の部分マスクを用いてレーザー光透過部を変形可能に形成し、そのレーザー光透過部を介し被照射膜に照射する長方形のレーザー光線像を制御して、具体的にはその長方形における対向する一対の長辺を形成する部分マスクを介したレーザー光透過部の開閉動作により、その部分マスクの移動方向におけるレーザー光透過量の積分値を連続的に変化させて、形成される凹部の深さ方向における単位面積当たりのエッチング量を連続的に変化させ、それにより凹部における光路変換斜面と対向面を形成することができる。
【0023】
なお上記図2の例では各部分マスクを1枚のマスクにて形成したが、2枚以上のマスクの組合せにて目的とする形態を形成する部分マスクとすることもできる。また図例では部分マスク2、3に設けた長方形の開口部が上下で重畳する配置関係として、レーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成したがレーザー光透過部は、投影マスクを形成する2枚又は3枚以上の部分マスクの全体を介して、レーザー光を長方形に成形する開口形態が形成されればよい。
【0024】
従って例えば開口部を有しない短冊などからなる全遮蔽型の部分マスクの4枚を用いて投影マスクとし、それらを中央に長方形の開口部が形成されるように口ノ字状に配置してレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成することもできる。またコノ字形やL字形の全遮蔽型の部分マスクの2枚、又はコノ字形とI字形の全遮蔽型の部分マスクの2枚を用いて投影マスクとし、それらを中央に長方形の開口部が形成されるように口ノ字状に配置してレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成することもできる。
【0025】
前記の如く投影マスクは、レーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成できる、適宜な形態を有する複数の部分マスクの組合せ体として形成することができる。斯かるレーザー光透過部を介しレーザー光を長方形に成形して被照射膜に照射することより、膜表面での開口が長方形の凹部を形成することができる。
【0026】
投影マスクを介して形成するレーザー光透過部の長方形の大きさについては、特に限定はない。レーザー光透過部によるレーザー光透過像は、レンズ等の光学機器を介しその大きさを制御して、一般には縮小して被照射膜に照射することより、その過程でのサイズ制御も可能であり、従って前記長方形の大きさは形成目的の凹部サイズに応じて適宜に決定することができる。
【0027】
またレーザー光透過部による長方形における対向する一対の長辺を形成する部分マスクの一辺側又は両辺側を、レーザー光透過部が開閉する方向に移動させることにより、従って当該長方形の短辺と平行に移動させることにより、被照射膜表面での開口長方形に対応する長辺面が光路変換斜面とその対向面として形成された凹部とすることができる。
【0028】
形成する凹部における光路変換斜面や対向面の膜平面に対する角度は、レーザー光透過部による長方形を開閉する際の部分マスクの移動速度、照射するレーザー光の強さや量などにて制御することができる。膜平面に対する角度が一定な光路変換斜面や対向面の形成は、例えばレーザー光の照射量を一定として単位時間当たりのエッチング量を一定とし、部分マスクを一定速度で移動させる方式などにより行うことができる。レーザー光照射量が一定の場合には部分マスクの移動速度を大きくするほど傾斜角の小さい斜面を形成することができる。
【0029】
前記した部分マスクの移動については、レーザー光透過部を開く方向又は閉塞する方向のいずれかを選択することができる。形成される凹部における光路変換斜面と対向面の直線性(面精度)、特に光路変換斜面の直線性の点より、閉塞方向に部分マスクを移動させる方式が好ましい。面の直線性に乏しいと光路変換光が分散するなど指向性が低下し、液晶表示の品質欠陥となりやすい。
【0030】
従って凹部形成の好ましい方式は、投影マスクが不必要な透過光を遮蔽してレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成する少なくとも2枚の部分マスクからなり、それら部分マスクの内の当該長方形における一対の長辺の一方又は両方を形成する部分マスクを当該長方形の短辺と平行に、かつ当該レーザー光透過部がレーザー光を長方形に成形する状態から閉塞する方向に移動させて、形成される凹部の短辺方向におけるレーザー光透過量の積分値を連続的に変化させ、形成される凹部の深さ方向における単位面積当たりのエッチング量を連続的に変化させて、横断面台形の凹部を形成する方式である。
【0031】
前記により、マスク移動方式による凹部両端部の鋭角な切込みに加えて、レーザー光透過部の閉塞方式による緩・急斜面の高度な面精度を達成でき、総じて形状精度に優れる凹部を形成できて微細構造の凹部も位置精度よく分散分布させることができ、横方向の光を縦方向に効率よく光路変換する光出射手段を形成することができる。
【0032】
一方、図1の例の如く被照射膜が形成する平面に対する傾斜角θ1が35〜48度の光路変換斜面aと、当該角度θ2が40〜90度の対向面bとを具備する凹部Aの形成は、例えばエッチングレート(1ショット当たりのエッチング量)0.01〜5μm/パルスにてレーザーエッチングする際に、当該対向辺の一辺側を形成する部分マスクを他辺側を形成する部分マスクの1.1〜150倍の速度で移動させる方式などにより行うことができる。
【0033】
すなわち投影マスクを介して1パルス当たり0.01〜5μm、就中0.05〜4μm、特に0.1〜2μmの被照射膜がエッチングされる強さのレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を光学機器を介しレーザー光透過像の大きさを制御(縮小)して被照射膜に照射しつつ、部分マスクの内のレーザー光透過部による長方形の一対の長辺を形成する部分マスクをその一辺側/他辺側に基づき1.1〜150、就中1.5〜100、特に2〜70の速度比にて当該長方形の短辺と平行な方向に、かつ好ましくはレーザー光透過部が閉塞する方向に移動させる。
【0034】
前記の操作を介して、被照射膜の形成材をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、被照射膜平面に対する傾斜角が35〜48度の光路変換斜面と40〜90度未満の対向面とを具備する、被照射膜面での開口が長方形の凹部を形成することができる。なお上記の長方形や平行移動は、厳密なものでなくてもよく、製造精度等に基づく変形が許容される。
【0035】
他方、横断面形状が台形の凹部の形成は、上記によるレーザーエッチングの際に、そのエッチングが被照射膜の裏面側に及ぶようにして、被照射膜を貫通した凹部を形成することにより行うことができる。その場合、光路変換斜面と対向面の延長仮想線が交差する側の被照射膜における開口幅が小さいと、すなわち形成凹部の横断面形状が三角形に近いと、その三角形の溝頂点部分の形状異常による伝送光の散乱に準じた液晶表示の欠陥の影響が現れやすくなる。
【0036】
前記影響の防止の点より好ましい横断面台形の凹部は、図3に例示した如く光路変換斜面aと対向面bを被照射膜5の深さ方向に延長した場合の仮想線の交点pと被照射膜表面との直線距離に基づく凹部Aの深さhの0.6〜0.95倍の厚さdを有する被照射膜に対して、前記の貫通エッチングを施したものである。なおその場合、被照射膜は、レーザーエッチングされない基板、特にガラス板の如くレーザー光透過性の基板上に支持してレーザーエッチング処理に供することが形成凹部の形状精度の向上の点より好ましい。
【0037】
光学素子における光出射手段は、図1、4、5に例示した如く横断面が台形で基材表面での開口が長方形であり、その長方形に基づく一対の長辺面として傾斜角θ1が35〜48度の光路変換斜面aと、角度θ2が40〜90度の対向面bを具備する凹部Aの複数を透明基材10Aの片面に不連続に分布させたものである。
【0038】
従って前記の光出射手段は、上記したレーザーエッチングによる凹部形成操作を被照射膜上の異なる位置に繰り返し適用して、被照射膜の所定位置に複数の凹部を不連続に分散分布させることにより形成することができる。ちなみに図2の例ではワークステージ6を介し被照射膜5を移動することで凹部の形成位置を制御でき、その場合に例えば被照射膜の移動をランダムとしたり、さらにその移動距離に長短差をもたせることで、凹部がランダムに配置され、さらに分布密度が変化する状態の光出射手段を容易に形成することができる。
【0039】
光学素子は、上記した方法で被照射膜に透明基材を用いて一体ずつ製造することができる。量産性等の点より光学素子の好ましい製造方法は、上記の方法で得た光学素子を母型に用いて、光学素子形成用の金型を製造し、その金型を用いて光学素子を量産する方法である。
【0040】
ちなみに前記の金型の形成は、光学素子の光出射手段を形成した面の形態を型形成材に転写することにより行うことができる。また光学素子の形成は、得られた金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態を透明基材に転写した後、それを金型より分離することにより行うことができる。
【0041】
前記した光出射手段の形態を金型に転写して光学素子を形成する方法は、その光出射手段の形態を有する素材が光学素子でない場合にも適用でき、その光学素子でない素材に設けた光出射手段に対応する形態を金型に転写し、その金型に転写した面形態を透明基材に転写する方法にても光学素子を形成することができる。従ってその場合には被照射膜として透明基材以外のものも用いうる。
【0042】
すなわち投影マスクを介してレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を、投影像を作り出す光学機器を介しその大きさを制御して被照射膜に照射しつつ、前記投影マスクの移動を介しレーザー光の照射量に変化をもたせて被照射膜をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、当該被照射膜を貫通する横断面形状が台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段を形成する上記した方法を適用するに当たり、その被照射膜にレーザーエッチングが可能な適宜な材料からなるものを用いて、その被照射膜に光出射手段に対応する形態を形成した後、斯かる被照射膜における光出射手段対応形態を有する面の形態を転写した金型を得て、その金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態を透明基材に転写し、その透明基材を金型より分離して光学素子を製造する方法である。
【0043】
上記においてレーザー発振器としては、例えばエキシマレーザーやYAGレーザー、チタン・サファイアレーザーやCO2レーザー、フェムト秒レーザーなどの、ドライエッチング加工が可能な適宜なものを1種又は2種以上用いうる。就中、微細加工精度等の点より波長400nm以下の紫外領域のレーザー光が得られる発振器によるアブレーション加工が好ましい。
【0044】
レーザー光は、2次や3次や4次等の高調波として被照射膜に照射することもでき、また連続やパルス等の照射モードなどの発振形態についても適宜に選択することができる。形成される凹部の形状やサイズ、その分散分布の配置状態は、光学機器等を付加したレーザー加工機の解像力と位置決め精度に依存し、形成できる光路変換斜面等の精度もレーザー加工機の発振周波数やステージ等を介した部分マスクの移動の速度と精度に依存するので、高精度の加工機を用いることが好ましい。
【0045】
被照射膜としては、上記した方法に応じて透明基材のほか、レーザー光でエッチングできる適宜なものを用いることができて特に限定はなく、2光子励起によるレーザー加工でエッチングできるものなどからなっていてもよい。一般には照射レーザー光吸収性で電気絶縁性の高分子からなる膜が用いられる。その高分子膜は、硬化樹脂又は熱可塑性樹脂のいずれで形成されていてもよく、透明樹脂からなる場合にはそのまま透明基材として用いうる。
【0046】
ちなみに前記高分子膜の例としては、ポリエステル系樹脂やエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂やポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂やABS樹脂、アクリル系樹脂やセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂やシリコーン系樹脂、ポリエーテル系樹脂や塩化ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂やノルボルネン系樹脂等からなる塗工膜やフィルムなどがあげられる。
【0047】
また特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマー、例えば(A)側鎖に置換又は/及び非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換又は/及び非置換のフェニル基並びにニトリル基を有する熱可塑性樹脂との前記A、Bを含有する樹脂組成物、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系等の熱や紫外線、電子線等の放射線で重合処理しうる硬化型樹脂などからなる塗工膜やフィルムなどよりなる高分子膜もあげられる。
【0048】
ちなみに前記A、Bを含有する樹脂組成物の具体例としては、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有するものなどがあげられる。フィルムは、樹脂組成物の押出成形などにて形成することができる。
【0049】
耐熱性や耐薬品性、レーザー加工性の点より好ましい高分子膜は、熱硬化性樹脂、就中ポリイミド系樹脂やポリエーテルスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂などからなるもの、特にポリイミド系樹脂からなるものである。また紫外域のレーザー光で加工する場合には、アクリル系やメタクリル系やウレタン系等の紫外線硬化樹脂などからなる紫外線吸収性の高分子膜が好ましい。また透明基材である場合には可視光域の透過率に優れる高分子膜が好ましい。
【0050】
高分子膜等からなる被照射膜は、フィルムやシートや板の形態を有するものが一般的であり、単層物や複層物等の適宜な層形態を有するものであってよい。従って被照射膜は、例えば高分子膜のレーザー加工面にエッジ部分の角度のシャープさ等の加工精度の向上や保護などを目的とした金属層やポリマー層等を、10μm以下、就中1nm〜5μmなどの、レーザー加工が可能な厚さで有していてもよい。
【0051】
被照射膜は、上記したように形成する凹部の大きさに応じて貫通孔が形成される厚さとされる。一般には加工時のハンドリング性や加工表面のフラット性などの点より2μm〜100μm、就中5〜80μm、特に10〜50μmとされる。なお被照射膜は、必要に応じガラスや金属や高分子等の基板などからなる支持体上に固定保持してワークステージ上に配置し、レーザーエッチング加工に供することもできる。
【0052】
一方、投影マスクを形成する部分マスクとしては、金属などのレーザー光遮蔽性材料からなる適宜なものを用いうる。石英等からなるガラス板上に金属や誘電体等の適宜なレーザー光遮蔽性材料を蒸着し、必要に応じてその蒸着層をパターニングしてレーザー光透過部を形成してなるガラスマスクなども用いうる。ガラスマスクにおける蒸着材料としては、限定するものではないが、レーザー光に対する耐久性や解像力の点よりクロムやアルミニウム、モリブデンや誘電体多層膜などが好ましい。
【0053】
なお部分マスクは、上記したように2枚又は3枚以上のマスクで形成して、それらを重ねてレーザー光の照射に供することもできる。凹部の複数を分布させてなる光出射手段等の形成に際しては、被照射膜が移動させられるが、その場合、投影マスクないしそれを形成する部分マスクと被照射膜の両方を同期させて移動させる方式も採ることができる。
【0054】
上記した所定の凹部の複数を形成した被照射膜を母型とした光学素子形成用の金型の製造は、例えば光出射手段又はそれに対応する形態を設けた被照射膜に電気鋳造法を適用することにより行うことができる。これにより被照射膜に設けた光出射手段等を形成する凹部に高精度に対応した凸部を有する金型を形成することができる。
【0055】
前記の電気鋳造法としては、被照射膜のレーザー加工を施した側より金属を充填して、被照射膜の当該光出射手段等を有する面形状を写したレプリカを有する金属層からなる金型を形成する、従来に準じた方法を適用することができる。その場合、被照射膜は、台形凹部に基づく開口より充填金属が漏れないように基板上に支持することが好ましい。なお金属層の形成に際しては被照射膜に導電膜が設けられるが、その導電膜の形成についても従来に準じた方法を適用することができる。
【0056】
金型を形成する金属の種類については特に限定はなく、一般には例えば金や銀、銅や鉄、ニッケルやコバルト、あるいはそれらの合金類などが用いられ、窒化物やリン等を添加したものなどであってもよい。用いる金属種は、1種でもよし、2種以上であってもよく、また異種金属を積層してなる金型を形成することもできる。
【0057】
金型として形成する金属層の厚さは、適宜に決定してよい。被照射膜と分離する際の破損防止や、光学素子形成時のハンドリング性などの点より、凸部を有しない部分の厚さが0.02〜3mm程度の金属層からなる金属箔ないし金属板による金型としたものが好ましい。
【0058】
前記の金型を介した光学素子の形成は、例えば放射線硬化型樹脂を必要に応じ透明フィルムや透明板等に塗布して支持した状態で、金型の凸部を形成した面に密着させて、放射線硬化型樹脂層に金型の凸部形成側の表面形状を写し、それにより当該表面形状を写した成形層を形成し、それに放射線を照射して成形層を硬化させ、その成形硬化層を金型から分離することにより行うことができる。
【0059】
前記により金型の凸部形成側の表面形状に高精度に対応した凹部と表面形状を有する、従って母型の被照射膜における光出射手段又はそれに対応する形態を高精度に再現してなる、当該傾斜角θ1が35〜48度の光路変換斜面aと当該角度θ2が40〜90度の対向面bとを具備し、横断面形状が台形で、表面での開口が長方形の凹部の複数が透明基材の片面に不連続に分布してなる光出射手段を有する光学素子を得ることができる。
【0060】
前記において光学素子の好ましい製造方法は、変形性の金型を円柱状ないし円筒状の円形回転体の外周に捲着し、その回転体を介し金型を回転させながらその回転下の金型に、長尺の透明フィルムに設けた放射線硬化型樹脂の塗布層を順次圧着して金型の表面形状を写した成形層を連続的に形成しつつ、その成形層に透明フィルムを介し放射線を照射して、光学素子を連続的に製造する方法である。
【0061】
光学素子の製造は、例えば前記した電気鋳造法による金型を補強する方式などの適宜な方式で射出成形用の金型を形成し、その金型を用いた射出成形方式にて行うこともできる。斯かる方式は、例えば導光板等として使用できる板状の透明基材からなる光学素子を形成する場合などに特に適している。従って光学素子は、流動状態とした熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を介して金型における所定の形状を転写する方式などにても形成することができる。
【0062】
光学素子は、その透明基材の厚さに基づいて透明フィルムや、導光板等に適した透明板として形成でき、光出射手段が直線性(平面性)に優れる光路変換斜面と対向面を有して、長辺方向の両端が鋭角に切り込まれた微小サイズで横断面台形の凹部からなることより、その光路変換斜面が反射効率に優れてその反射光が指向性に優れると共に、凹部形状の乱れに基づく散乱も生じにくくて指向性に優れる出射光や表示光を提供する。
【0063】
従って光学素子は、導光板や液晶セルの側面や角部より照明装置を介し入射させた光ないしその伝送光を、光路変換斜面を介し反射させて裏面側(光出射手段を有しない側)に、従って液晶表示パネルの視認方向などに光路変換して出射させ、その出射光を液晶表示パネル等の照明光(表示光)として利用できることを可能とする。その場合、光学素子は通例、液晶セルの平面に沿う方向にその光出射手段の形成面が外側となるように配置される。
【0064】
上記の金型を介した成形において、必要に応じ放射線硬化型樹脂の支持に用いて、光学素子を形成することのある透明フィルムや透明板は、照明装置等を介して入射させる光の波長域に応じそれに透明性を示す適宜な材料の1種又は2種以上を用いて形成しうる。ちなみに可視光域では、例えば上記の被照射膜で例示したものなどで代表される透明樹脂や、熱、紫外線、電子線等で重合処理しうる硬化型樹脂などがあげられる。
【0065】
なお光学素子の形成に際する、放射線硬化型樹脂の成形層に対する透明フィルム又は透明板からなる透明基材の密着配置には、上記した事前の塗工方式のほか、例えば金型上の成形層の上に透明基材を配置する事後方式などの、成形層上に透明基材を密着させた状態でその透明基材側より放射線を照射して成形層を硬化させうる適宜な方式を採ることができる。
【0066】
前記の放射線硬化型樹脂には、例えば上記した紫外線硬化型樹脂などの紫外線の照射、就中、紫外線又は/及び電子線の照射にて硬化処理できる適宜な樹脂の1種又は2種以上を用いることができ、その種類について特に限定はない。就中、光透過率に優れる成形硬化層を形成できる放射線硬化型樹脂が好ましい。
【0067】
また放射線硬化型樹脂の成形硬化層の形成に際し、支持用の透明基材を用いた場合、光学素子は、その透明基材と当該成形硬化層とが固着一体化したものとして得ることもできるし、透明基材とは分離された状態の当該成形硬化層からなるものとして得ることもできる。透明基材と当該成形硬化層の分離は、例えば透明基材を剥離剤で表面処理する方式などの適宜な方式にて達成することができる。
【0068】
前記した固着一体化の場合、成形硬化層と透明基材の屈折率差が大きいと、界面反射等にて光の出射効率が大きく低下する場合がある。それを防止する点より、透明基材との屈折率差が−0.02〜0.04、就中−0.01〜0.03、特に0〜0.02の成形硬化層を形成できる放射線硬化型樹脂が好ましい。またその場合、透明基材よりも付加する成形硬化層の屈折率を高くすることが出射効率の点より好ましい。
【0069】
なお金型上ないし透明基材上に形成する放射線硬化型樹脂の塗布層の厚さは、金型における凸部の高さの1〜5倍、就中1.1〜3倍、特に1.2〜2倍が好ましいが、これに限定されない。本発明においては横断面台形の凹部に対応した凸部形状を有する金型であることより、金型の取扱い時やその形状の転写時等に損傷を生じやすかった三角形の頂点がない凸部形状であることより、金型が劣化しにくく寿命に優れている。
【0070】
光学素子は、上記したようにその透明基材の厚さに基づいて透明フィルム又は透明板として形成することができる。透明基材の厚さについては適宜に決定でき特に限定はない。一般には5mm以下、就中5μm〜3mm、特に10μm〜2mmが好ましい。特に透明フィルムの場合には薄型軽量化等の点より5〜300μm、就中10〜200μm、特に20〜100μmが好ましい。斯かる厚さとすることで打ち抜き処理等によるサイズ加工も容易に行うことができる。
【0071】
光学素子は、単層物として形成されていてもよいし、同種又は異種の材料からなる積層体などとして形成されていてもよい。透明フィルムからなる光学素子を透明板に接着して導光板を形成することもできる。なお導光板は、前記した透明板からなる光学素子として形成することもできる。光学素子を必要に応じ接着層等を介して他部材と積層する場合、その他部材は通例、光学素子の光出射手段を有しない側に積層される。
【0072】
光路変換斜面への入射効率を高めて明るくてその均一性に優れる表示の液晶表示装置を得る点より、光学素子の好ましい屈折率は、液晶セル、特にそのセル基板と同等以上、就中1.49以上、特に1.52以上である。またフロントライト方式とする場合の表面反射を抑制する点よりは1.6以下、就中1.56以下、特に1.54以下の屈折率であることが好ましい。なお屈折率は、可視光域の場合、D線に基づくことが一般的であるが、入射光の波長域に特異性等のある場合には前記に限定されず、その波長域に応じることもできる(以下同じ)。
【0073】
輝度ムラや色ムラを抑制して、表示ムラの少ない液晶表示装置を得る点より好ましい光学素子は、複屈折を示さないか、複屈折の小さいもの、就中、面内の平均位相差が50nm以下のものである。位相差の小さい光学素子とすることにより、偏光板等を介した直線偏光が入射した場合に、その偏光状態を良好に維持できて表示品位の低下防止に有利である。
【0074】
表示ムラ防止の点より、光学素子における面内の好ましい平均位相差は、30nm以下、就中20nm以下、特に10nm以下であり、その位相差の場所毎のバラツキが可及的に小さいものがより好ましい。さらに光学素子に発生する内部応力を抑制して、その内部応力による位相差の発生を防止する点よりは、光弾性係数の小さい材料からなる光学素子が好ましい。加えて光学素子の厚さ方向の平均位相差も50nm以下、就中30nm以下、特に20nm以下であることが表示ムラ防止等の点より好ましい。
【0075】
斯かる低位相差の光学素子の形成は、例えば既成の透明基材を焼鈍処理する方式等にて、内部の光学歪みを除去する方式などの適宜な方式にて行いうる。好ましい形成方式は、キャスティング方式にて位相差の小さい透明基材を形成する方式である。光学素子における前記の位相差は、可視域の光、特に波長550nmの光に基づくものであることが好ましい。
【0076】
なお上記した面内の平均位相差は、(nx−ny)×dにて定義され、厚さ方向の平均位相差は、{(nx+ny)/2−nz}×dにて定義される。ただしnxは透明基材の面内において最大の屈折率を示す方向の平均屈折率、nyは透明基材の面内においてnx方向に直交する方向の平均屈折率、nzは透明基材の厚さ方向の平均屈折率、dは透明基材の平均厚さを意味する。
【0077】
光学素子に設ける光出射手段は、モアレの防止等の点より図4、5の例の如く透明基材10の片面において、所定の凹部Aの複数が不連続に分布したものとして形成される。横断面台形の凹部は、サイズの小型化による視覚性の低減や製造効率などの点より有利である。凹部は、被照射膜内又は光学素子内に凹んでいること(溝)を意味する。また横断面は、凹部における光路変換斜面に対する横断面を意味する。
【0078】
前記により、導光板や液晶セルの側面等に配置した照明装置による側面方向からの入射光ないしその伝送光を、光路変換斜面aを介し光学素子の光出射手段を有しない裏面側に光路変換して、導光板や液晶セル等に対し法線方向の指向性に優れる光を、照明装置光の利用効率よく出射させることができる。なお横断面に基づく台形は、厳密な意味ではなく加工精度に基づく面の角度変化等は許容されるが、本発明においてはその加工精度に優れている。
【0079】
光路変換斜面の傾斜角θ1が35度未満では、液晶表示パネルより出射する表示光の角度が30度を越えることとなり視認に不利となる。一方、光路変換斜面の当該傾斜角が48度を超えると、全反射されずに光路変換斜面から光洩れが生じやすくなり光利用効率が低下する。
【0080】
前記において光路変換斜面による反射方式に代えて、表面を粗面化した光出射手段による散乱反射方式とした場合には、垂直な方向に反射しにくく液晶表示パネルから正面方向より大きく傾いた方向に出射されて液晶表示が暗く、コントラストに乏しくなる。
【0081】
光路変換斜面を介し効率よく全反射させて、光出射手段を有しない側より、光学素子平面の法線方向に指向性よく出射させ、液晶セルを効率よく照明して明るくて見やすい液晶表示を達成する点より、光路変換斜面の好ましい傾斜角θ1は38〜45度、就中40〜43度である。
【0082】
光出射手段を形成する複数の凹部の分布は、その光路変換斜面に基づいて図4の例の如く平行に分布していてもよいし、不規則に分布していてもよい。さらに図5の例の如く仮想中心に対してピット状(同心円状)に配置された分布状態にあってもよい。
【0083】
ちなみに前記したピット状配置の分布は、レーザー光を照射する際に、被照射膜の端面又はその外側に仮想中心を想定し、その仮想中心より派生する仮想の放射線に対して直交する方向に部分マスクのレーザー光透過部閉塞線が形成されるように凹部を設けることにより形成することができる。なお二箇所以上の仮想中心を想定して、その各仮想中心に対してピット状に分布配置した複数の凹部からなる光出射手段とすることもできる。
【0084】
複数の凹部の分散分布による配置状態は、その凹部の形態などに応じて適宜に決定することができる。上記したように光路変換斜面aは、照明モードにおいて照明装置による側面方向からの入射光を裏面方向に反射して光路変換するものであることより、透明フィルムからなる光学素子の場合には、斯かる光路変換斜面を具備する凹部を全光線透過率が60〜95%、就中75〜92%で、ヘイズが2〜30%、就中4〜20%となるように光学素子の片面に、不連続に分散分布させることが、照明装置を介した側面方向からの光を光路変換して液晶セルを効率よく照明する面光源を得て、明るくてコントラストに優れる液晶表示を達成する点より好ましい。
【0085】
斯かる全光線透過率とヘイズの特性は、凹部のサイズや分布密度等の制御にて達成でき、例えば光学素子の片面に占める光出射手段の投影面積に基づく占有面積を1/100〜1/3、就中1/50〜1/5、特に1/30〜1/10とすることにより達成することができる。特にフロントライト式の光学素子である場合には、表示像の乱れ防止や外光モードでの外光の入射効率などの点より、当該占有面積を5〜20%とすることが好ましい。
【0086】
より具体的には凹部、ないしその光路変換斜面のサイズが大きいと、観察者にその光路変換斜面の存在が認識されやすくなって表示品位を大きく低下させやすくなり、液晶セルに対する照明の均一性も低下しやすくなることなども考慮して、被照射膜面ないし光学素子表面での開口が長方形の凹部において、その開口の長辺長が短辺長の3倍以上、就中5倍以上、特に8倍以上の凹部であることが好ましい。
【0087】
また光路変換斜面の長さを、凹部の深さの5倍以上、就中8倍以上、特に10倍以上の凹部とすることが好ましい。さらに光路変換斜面の長さは、500μm以下、就中200μm以下、特に10〜150μm、凹部の深さ及び幅は2μm〜100μm、就中5〜80μm、特に10〜50μmとすることが好ましい。なお前記の長さは、光路変換斜面の長辺長に基づき、深さは光学素子の光出射手段形成面を基準とする。また幅は、光路変換斜面の長辺方向と深さ方向とに直交する方向の長さに基づく。
【0088】
なお凹部を形成する光路変換斜面aの対向面bは、光路変換斜面としての傾斜角を満足させない場合、セル側面等の横方向からの入射光を裏面より出射することに寄与するものではなく、表示品位や光伝送ないし光出射に可及的に影響しないことが好ましい。ちなみに対向面の傾斜角θ2が小さいと光学素子面に対する投影面積が大きくなり、光学素子を視認側に配置するフロントライト方式による外光モードでは、その対向面による表面反射光が観察方向に戻って表示品位を阻害しやすくなる。
【0089】
従って前記の場合、対向面の傾斜角θ2は大きいほど有利であり、それにより光学素子面に対する投影面積を小さくできて全光線透過率の低下等を抑制でき、また表面反射光を低減できてその反射光を光学素子面方向に傾けることができ、液晶表示への影響を抑制することができる。斯かる点より対向面の好ましい傾斜角θ2は、60度以上、就中70度以上、特に75〜90度である。
【0090】
凹部を形成する面、特に光路変換斜面は、可及的に凹凸や屈曲のない直線面であることが好ましい。凹部の断面形状は、その面の傾斜角等が光学素子の全面で一定な形状であってもよいし、吸収ロスや先の光路変換による伝送光の減衰に対処して光学素子上での発光の均一化を図ることを目的に、光が入射する側の側面から遠離るほど凹部を大きくしてもよい。
【0091】
また凹部を一定ピッチで分散分布させた光出射手段とすることもできるし、光が入射する側の側面から遠離るほど徐々にピッチを狭くして、凹部の分布密度を高くした光出射手段とすることもできる。さらに凹部の分布密度や配置位置等が不規則なランダムピッチによる光出射手段にて、光学素子上での発光の均一化を図ることもできる。ランダムピッチは、画素との干渉によるモアレの防止に特に有利である。よって光出射手段は、ピッチに加えて、形状等も異なる凹部の組合せからなっていてもよい。
【0092】
凹部における光路変換斜面は、液晶セルの側面方向より入射させる光の方向に対面していることが出射効率の向上の点より好ましい。従って線状光源を用いる場合の光路変換斜面は、一定の方向を向いていることが好ましい。また発光ダイオード等の点状光源を用いる場合の光路変換斜面は、その点状光源の発光中心の方向を向いていることが好ましい。
【0093】
凹部の断続端の形状等については特に限定はないが、その部分への入射光の低減化等による影響の抑制の点より、鋭角に掘り込まれたものであることが好ましく、従って光学素子が形成する平面に対して60〜90度の角度にあることが好ましい。
【0094】
また透明フィルムからなる光学素子は、光出射手段を形成する凹部部分を除き、その表裏面が可及的に平滑な平坦面であること、就中±2度以下の角度変化、特に0度の平坦面であることが好ましい。またその角度変化が長さ5mmあたり1度以内であることが好ましい。斯かる平坦面とすることによりフィルム面の大部分を角度変化が2度以下の平滑面とすることでき、液晶セルの内部を伝送する光を効率よく利用できて、画像を乱さない均一な光出射を達成することができる。
【0095】
上記したように凹部のピット状配置は、点状光源を導光板や液晶表示パネルの側面や角部等に配置し、その点状光源による側面方向からの放射状の入射光ないしその伝送光を光路変換斜面aを介し光路変換して、光学素子を可及的に均一に発光させ、液晶セル等に対し法線方向の指向性に優れる光を照明装置光の利用効率よく光学素子から出射させることを目的とする。
【0096】
従って凹部のピット状配置は、点状光源の配置が容易となるように、光学素子の端面又はその外側に仮想中心が形成されるように行うことが好ましい。仮想中心は、同じ又は異なる光学素子端面に対して一箇所又は二箇所以上形成することができる。
【0097】
光学素子における光出射手段形成面には、必要に応じて外光の表面反射による視認阻害の防止を目的としたノングレア処理や反射防止処理、傷付き防止を目的としたハードコート処理などを施すことができる。斯かる処理を施した光学素子は、特にフロントライト方式に好ましく用いうる。
【0098】
前記したノングレア処理は、サンドブラスト方式やエンボス加工方式等の粗面化方式、シリカ等の前記した透明粒子を配合した樹脂の塗工方式などの種々の方式で、表面を微細凹凸構造化することにより施すことができる。また反射防止処理は、干渉性の蒸着膜を形成する方式などにて施すことができる。更にハードコート処理は、硬化型樹脂等の硬質樹脂を塗工する方式などにて施すことができる。ノングレア処理や反射防止処理やハードコート処理は、その1種又は2種以上の処理を施したフィルムの接着方式などにても施すことができる。
【0099】
光学素子は、図1の例の如く光出射手段を有しない側に接着手段10Cを有するものとすることができる。透明フィルムからなる光学素子は、上記したように側面や角部からの入射光を伝送する基板に対して配置されるものである。その場合に、光学素子を接着手段を介して基板に密着させることにより、光出射手段の光路変換斜面を介した反射効率、ひいては側面等の方向よりの入射光の有効利用による輝度を向上させることができる。
【0100】
接着手段としての接着層の形成には、例えば紫外線や放射線等の照射又は加熱で硬化する接着剤などの適宜なものを用いることができ、特に限定はない。就中、透明性に優れて被接着体との屈折率差が小さいものが好ましい。また簡便接着性等の取扱性や内部応力の発生を抑制する応力緩和性などの点よりは、粘着層が好ましく用いうる。
【0101】
粘着層の形成には、例えばゴム系やアクリル系、ビニルアルキルエーテル系やシリコーン系、ポリエステル系やポリウレタン系、ポリエーテル系やポリアミド系、スチレン系などの適宜なポリマーをベースポリマーとする粘着剤などを用いうる。就中、アクリル酸ないしメタクリル酸のアルキルエステルを主体とするポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤の如く透明性や耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いられる。
【0102】
また接着層は、それに例えばシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化錫や酸化インジウム、酸化カドミウムや酸化ノンモン等の導電性のこともある無機系粒子や、架橋又は未架橋ポリマー等の有機系粒子などの適宜な透明粒子を1種又は2種以上含有させて光拡散型のものとすることもできる。
【0103】
光学素子は、偏光板の透明保護層として用いることもできる。すなわち図6の例の如く、光学素子10をその光出射手段Aを有しない側を介し偏光板25に積層したものとすることもできる。その場合、光学素子と偏光板は、接着手段を介して接着積層されていることが、光出射手段Aの光路変換斜面aを介した反射効率、ひいては側面や角部の方向からの入射光の有効利用による輝度向上の点より好ましい。
【0104】
前記した偏光板一体型の光学素子は、そのまま液晶表示パネル等に適用することができる。その場合、光出射手段が外側に位置するように光学素子を配置する方式が、通例である。複屈折による位相差が発生しにくい光学素子の使用にて、図6の矢印γの如く偏光板25を介した直線偏光が入射した場合にその偏光状態を良好に維持できて、偏光板に再入射した際の吸収や、表示品位の低下を有効に防止することができる。
【0105】
偏光板としては、適宜なものを用いることができ特に限定はない。高度な直線偏光の入射による良好なコントラスト比の表示を得る点などよりは、例えばポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて延伸したものからなる吸収型偏光フィルムなどの如く、偏光度の高い偏光板が好ましく用いうる。
【0106】
偏光板は、前記偏光フィルムの片側又は両側に透明保護層を有するものであってもよい。透明保護層は、フィルムの接着方式やポリマー液等の塗布方式などにて付与でき、その形成には上記の被照射膜で例示した樹脂、就中トリアセチルセルロースの如く透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性などに優れる樹脂が好ましく用いられる。上記した偏光板一体型の光学素子は、薄型化を目的に光学素子が当該透明保護層を兼ねるものとして積層されていてもよいし、透明保護層の外側に付加する状態で積層されていてもよい。
【0107】
偏光板一体型の光学素子にも、液晶セル等の他部材と接着するための透明な接着層等の接着手段を、必要に応じて設けることができる。その接着層は、上記に準じることができる。なお光学素子に設けた接着層に対しては、図1の例の如くそれを実用に供するまでの間、異物の混入等の防止を目的に剥離フィルム10Dを仮着して、カバーしておくことが好ましい。
【0108】
光学素子は、その光出射手段(光路変換斜面)を介して、照明装置による側面や角部の方向からの入射光ないしその伝送光を、視認に有利な垂直性に優れる方向(法線方向)に光路変換して光の利用効率よく出射し、また外光に対しても良好な透過性を示すものとすることができる。
【0109】
従って例えば従来の透過型や、反射層ないし半透過型反射層を具備する反射型ないし半透過型等の各種の液晶表示パネル等に適用して、明るくて見やすい透過型、又は外光・照明両用型の液晶表示装置などの種々の装置を形成することができる。また透明フィルムからなる光学素子の場合には液晶表示装置等の薄型軽量化も達成することができる。
【0110】
前記した液晶表示装置の例を図6に示した。図は、光学素子10を反射層具備の従来の反射型液晶表示パネルの視認側に適用して、フロントライト方式の外光・照明両用型液晶表示装置とした例を示したものである。20、30が液晶セルにおけるセル基板、40が液晶層、31が反射層である。
【0111】
図例の如く液晶表示装置は、光学素子10を液晶表示パネルにおける液晶セルの少なくとも片側に配置することにより形成することができる。その場合、光学素子は、その光出射手段を有する側が外側となるように、液晶表示パネルの視認側又は背面側の少なくとも一方に配置することが一般的である。上記のように光学素子は、透明フィルムタイプや導光板タイプとして形成でき、そのいずれもがフロントライト又はバックライトとして用いうるが、一般には導光板タイプの光学素子は、バックライトとして用いることが好ましい。
【0112】
光学素子、特に透明フィルムタイプのものは、接着層を介し液晶セル等に接着することが明るい表示を達成する点より好ましい。さらに明るくてコントラストに優れる液晶表示を達成する点より、最寄りの液晶セル基板との屈折率差が−0.02〜0.04の透明フィルムを用いた光学素子の使用が好ましい。これにより照明装置を介した入射光ないしその伝送光が全反射で液晶セル基板内に閉じ込められてパネル照明の光量が低下し、液晶表示が暗くなることを抑制できる。また屈折率差にて大きな反射損が発生して液晶表示が暗くなりコントラストが低下することを抑制できる。
【0113】
透明フィルムタイプの光学素子を利用した照明機構は、図6の例の如く液晶表示パネルの1又は2以上の側面又は/及び角部、特に光学素子10を配置した側の液晶セル基板20の1又は2以上の側面又は/及び角部に、1個又は2個以上の照明装置51を配置することにより形成することができる。
【0114】
前記において図5の例の如きピット状配置の光出射手段を有する光学素子の場合には、点状の照明装置による放射状入射光を効率よく利用して明るい表示を達成する点より、ピット状配置の光出射手段の仮想中心を含む垂直線上における液晶セルの側面又は/及び角部に点状の照明装置を配置することが好ましい。
【0115】
仮想中心に対応した点状の照明装置の斯かる配置に際しては、光出射手段の仮想中心が光学素子の端面にあるか、その外側にあるかなどに応じて図6の例の如く、液晶セル基板20の点状の照明装置を配置する側を突出させる方式などの適宜な対応策を採ることができる。線状の照明装置等の他の照明装置を配置する場合も同様である。
【0116】
導光板や液晶セルの側面等に配置する照明装置としては、適宜なものを用いることができる。例えば発光ダイオード等の点状光源のほか、(冷,熱)陰極管等の線状光源、点状光源を線状や面状等に配列したアレイ体、あるいは点状光源と線状導光板を組合せて点状光源からの入射光を線状導光板を介し線状の照明装置に変換するようにしたものなどが好ましく用いうる。
【0117】
また照明装置は、光学素子の光路変換斜面が対面することとなる導光板や液晶表示パネルの側面等に配置することが、出射効率の点より好ましい。上記したピット状配置の場合も含めて、光路変換斜面が照明装置に対して可及的に垂直に対面するように配置することにより、照明装置を介した側面や角部からの入射光を効率よく面状に変換して高効率に面発光させることができる。
【0118】
従って凹部が光路変換斜面としての傾斜角を満足する対向面を具備して二面の光路変換斜面を具備する凹部による光出射手段を有する光学素子の場合には、導光板や液晶セル基板の対向する側面や角部の両方に対応した数の照明装置を配置することもできる。またピット状配置の場合には、光学素子における光出射手段の仮想中心に対応した1個所又は2個所以上に点状の照明装置を配置することもできる。
【0119】
照明装置は、その点灯による照明モードでの視認を可能とするものであり、外光・照明両用型の液晶表示装置の場合に、外光による外光モードにて視認するときには点灯の必要がないので、その点灯・消灯を切り替えうるものとされる。その切り替え方式には任意な方式を採ることができ、従来方式のいずれも採ることができる。なお照明装置は、発光色を切り替えうる異色発光式のものであってもよく、また異種の照明装置を介して異色発光させうるものとすることもできる。
【0120】
図6の例の如く照明装置51に対しては、必要に応じ発散光を導光板や液晶セルの側面に導くためにそれを包囲するリフレクタ52などの適宜な補助手段を配置した組合せ体とすることもできる。リフレクタとしては、高反射率の金属薄膜を付設した樹脂シートや白色シートや金属箔などの適宜な反射シートを用いうる。リフレクタは、その端部を液晶セル基板等の端部に接着する方式などにて、照明装置の包囲を兼ねる固定手段として利用することもできる。
【0121】
液晶表示装置は一般に、液晶シャッタとして機能する液晶セルとそれに付随の駆動装置、フロントライト又はバックライト(光学素子)及び必要に応じての反射層や補償用位相差板等の構成部品を適宜に組立てることなどにより形成される。本発明においては光学素子と照明装置を用いて照明機構を形成する点を除いて特に限定はなく、従来のフロントライト型やバックライト型のものに準じて形成することができる。
【0122】
従って用いる液晶セルについては特に限定はなく、図例の如く液晶セル基板20、30の間に封止材41を介し液晶40を封入し、その液晶等による光制御を介して表示光を得るようにした、適宜な透過型や反射型、ないしハーフミラーの如く光を透過し、かつ反射する半透過型反射層を用いた半透過型のものを用いることができる。
【0123】
ちなみに前記液晶セルの具体例としては、TN型やSTN型、IPS型やHAN型、OCB型やVA型の如きツイスト系や非ツイスト系、ゲストホスト系や強誘電性液晶系の液晶セル、あるいは内部拡散式等の光拡散型の液晶セルなどがあげられる。また液晶の駆動方式も、例えばアクティブマトリクス方式やパッシブマトリクス方式などの適宜なものであってよい。液晶の駆動は通例、図6の例の如く、液晶セル基板の内側に設けた電極22、31を介して行われる。
【0124】
反射型ないし半透過型の液晶表示装置では反射層ないし半透過型反射層の配置が必須であるが、その配置位置については図6に例示の如く液晶セルの内側に設けることもできるし、液晶セルの外側に設けることもできる。従って図6の例で電極31は、反射層も兼ねている。
【0125】
反射層についは、例えばアルミニウムや銀、金や銅やクロム等の高反射率金属の粉末をバインダ樹脂中に含有する塗工層や蒸着方式等による金属薄膜の付設層、その塗工層や付設層を基材で支持した反射シート、金属箔や透明導電膜、誘電体多層膜などの、従来に準じた適宜な反射層として形成することができる。また半透過型反射層についても、例えばハーフミラーや反射材含有シート、前記反射層に多数の孔を設けたなどの、従来に準じた適宜な半透過型反射層として形成することができる。
【0126】
一方、透過型の液晶表示装置は、液晶表示パネルの背面側に光学素子を配置してバックライト機構を形成することにより製造しうる。その場合に、光出射手段の背面側(外側)に反射層を設けることにより、光路変換斜面等から洩れる光を反射させて液晶セルの方向に戻すことでパネル照明に利用でき、輝度の向上を図ることができる。またその反射層を拡散反射面とすることで、反射光を拡散させて正面方向に向けることができ、視認により有効な方向に向けることができる。
【0127】
さらに前記した反射層の配置により、透過型で、かつ外光・照明両用型の液晶表示装置を形成することも可能である。その場合には透明フィルムタイプの光学素子が特に好ましく用いうる。透過型液晶表示装置に配置する反射層は、上記した反射型液晶表示装置で例示した反射層に準じることができる。なお電界により光を変調する液晶層を有する反射型液晶表示装置では、図6の例の如く液晶セルの視認側に光学素子を配置するフロントライト式が一般的である。
【0128】
他方、半透過型反射層を用いた半透過型液晶表示装置の場合には、前記したフロントライト方式及びバックライト方式のいずれにても照明機構を形成することができる。従って液晶表示パネルの視認側と背面側の両方に光学素子を配置して、フロントライトとバックライトの両方の照明機構を設けた、外光・照明両用型の半透過型液晶表示装置を形成することもできる。
【0129】
なお前記の透過型において、反射層を液晶セルの外側に配置する場合、その液晶セル基板や電極は、液晶表示を可能とするために透明基板や透明電極として形成することが必要である。一方、図6の例の如く、液晶セルの内部に反射層を兼ねる電極31を設ける場合には、液晶表示を可能とするためにその視認側の液晶セル基板20や電極22は透明基板や透明電極として形成する必要があるが、背面側の液晶セル基板30はその反射層31と同様に透明である必要はなく、不透明体にて形成されていてもよい。半透過型の場合には、前記の透過型や反射型に準じうる。
【0130】
液晶セル基板の厚さについては、特に限定はなく液晶の封入強度や、配置する照明装置の大きさなどに応じて適宜に決定しうる。一般には光伝送効率と薄型軽量性のバランスなどの点より10μm〜5mm、就中50μm〜2mm、特に100μm〜1mmの厚さとされる。また液晶セル基板の厚さは、照明装置を配置する側と配置しない側とで相違していてもよいし、同厚であってもよい。透明フィルムタイプの光学素子の場合、輝度向上の点より照明装置を配置する側の液晶セル基板を厚くすることが有利である。
【0131】
液晶表示パネルの形成に際しては、必要に応じ図6の例の如く、液晶を配向させるためのラビング膜等の配向膜21、32や、カラー表示を実現するためのカラーフィルタ23、低屈折率層24、偏光板25、位相差板26などを設けることができる。配向膜は液晶層に隣接するように配置し、カラーフィルタは液晶セル基板と電極の間に配置する方式が一般的である。なお直線偏光を介した表示光の制御を目的とした偏光板は、液晶セルの視認側及び背面側の一方又は両方の適宜な位置に配置することができる。
【0132】
前記した低屈折率層は、図6の矢印βの如く、照明装置51を介した側面や角部の方向からの入射光を界面反射させて、照明装置より遠離る方向の後方に効率よく伝送し、後方にある光路変換斜面にも光が効率よく入射して、パネル表示面の全面での明るさの均一性の向上を目的とする。従って低屈折率層は、透明フィルムタイプの光学素子の場合に有利に適用することができる。低屈折率層は、その配置位置に応じてフッ素化合物等の無機物や有機物からなる適宜な低屈折率材料による透明層や接着層として形成することができる。
【0133】
低屈折率層の配置位置は、図6の例の如く照明装置51を配置した液晶セル基板20の内側、すなわち基板の光学素子付設側とは反対の面が液晶表示の明るさの向上の点より好ましい。また液晶セル基板よりも屈折率が0.01以上、就中0.02〜0.15、特に0.05〜0.10低い低屈折率層が液晶表示の明るさの向上の点より好ましい。
【0134】
液晶表示装置の形成に際しては必要に応じ、上記したノングレア層等のほかに光拡散層や位相差板などの適宜な光学層の1層又は2層以上を付加した液晶表示パネルとすることもできる。光拡散層は、表示光の拡散による表示範囲の拡大や発光の平準化による輝度の均一化、液晶セル内の伝送光の拡散による光学素子への入射光量の増大などを目的とする。なお前記の付加する光学層は、必要に応じ接着層等を介し光学素子と積層一体化して液晶セルに適用することもできる。
【0135】
光拡散層は、上記のノングレア層に準じた表面微細凹凸構造を有する塗工層や拡散シートなどによる適宜な方式にて設けることができる。光拡散層は、接着層に透明粒子を配合して接着層を兼ねる層として配置することもでき、これにより液晶表示装置の薄型化を図かることができる。光拡散層は、光学素子と視認側の液晶セル基板の間などの適宜な位置に、1層又は2層以上を配置することができる。
【0136】
また前記した位相差板は、光学補償による視野角の拡大や着色防止等を目的とし通例、図6の如く視認側又は/及び背面側の偏光板と液晶セル基板の間に配置される。補償用の位相差板には、波長域などに応じて適宜なものを用いることができ1層又は2層以上の位相差層の重畳層として形成されていてもよい。
【0137】
位相差板は、適宜な透明ポリマーからなるフィルムを一軸や二軸等の適宜な方式で延伸処理してなる複屈折性フィルム、ネマチック系やディスコティック系等の適宜な液晶ポリマーの配向フィルムやその配向層を透明基材で支持したものなどとして得ることができ、熱収縮性フィルムの加熱収縮力の作用下に厚さ方向の屈折率を制御したものなどであってもよい。
【0138】
なお上記した図6の反射型液晶表示装置において、外光・照明両用による視認は、照明装置51の点灯による照明モードにおいて図例の矢印αの如く、光学素子10の裏面より出射した光が、液晶セルを経由してその反射層31で反射された後、液晶セル内を逆経由して光学素子に至り、光出射手段A以外の部分より透過した表示光が視認される。
【0139】
一方、照明装置の消灯による外光モードにおいては、光学素子10の光出射手段形成面における光出射手段以外の部分より入射した光が反射層31を介し、前記に準じ液晶セル内を逆経由して光学素子に至り、光出射手段以外の部分より透過した表示光が視認される。
【0140】
他方、透過型液晶表示装置において外光・照明両用による視認は、照明装置の点灯による照明モードにおいて、背面側に配置した光学素子より出射した光が液晶セル内に入射し、偏光板等を透過した表示光が視認される。また照明装置の消灯による外光モードでは、視認側表面より入射した外光が液晶セルを透過して光学素子に至り、その光出射手段形成面の光出射手段以外の部分より入射した光が背面に設けた反射層を介し反転し、液晶セル内を逆経由して透過した表示光が視認される。なお半透過型液晶表示装置では、前記の反射型と透過型に準じて外光・照明両用による視認が行われる。
【0141】
本発明において、上記した液晶表示装置を形成する各部品は、全体的又は部分的に積層一体化されて固着されていてもよいし、分離容易な状態に配置されていてもよい。界面反射の抑制によるコントラストの低下防止などの点よりは、固着状態にあることが好ましい。また透明フィルムタイプの光学素子は、少なくとも偏光板ないし液晶セルと固着密着状態にあることが好ましい。前記の固着処理には、粘着剤等の適宜な透明接着剤を用いることができ、その透明接着層に透明粒子等を含有させて拡散機能を示す接着層などとすることもできる。
【0142】
また前記の形成部品、特に視認側のそれには、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などにより紫外線吸収能をもたせることもできる。
【0143】
【実施例】
参考例
屈折率1.52の無アルカリガラス板の上に酸化インジウム・スズ(ITO)透明導電層をスパッタリング方式にて形成し、その上にポリビニルアルコール溶液をスピンコートしてその乾燥膜をラビング処理し視認側と背面側の液晶セル基板を得た。なお視認側液晶セル基板では、ガラス板上にフッ化マグネシウムを蒸着して低屈折率層を形成しアルゴン雰囲気中でプラズマ処理を施した後、その上にITO透明導電層を形成した。
【0144】
ついで前記の視認側と背面側の液晶セル基板をそのラビング面をラビング方向が直交するように対向させて、球形のガラスビーズよりなるギャップ調節材を配した後、周囲をエポキシ樹脂でシールしたのち液晶を注入して液晶セルを形成した。
【0145】
実施例1
金属箔に長さ1500μm、幅200μm又は長さ2000μm、300μmの長方形の開口を設けた2種類の部分マスクを上下に配置し、前記開口の重畳で長さ1000μm、幅130μmのレーザー光透過部が形成されるようにした投影マスクを形成し、そのマスクを介し波長248nmのエキシマレーザー光をビーム幅1.5mmで照射し、投影マスクの透過光をレンズを介し1/15に縮小して、ガラス基板上にスピンコータで塗工形成した厚さ8μmのポリイミド膜に照射する方式において、レーザー光をエッチングレート0.26μm/パルスで照射しながら、レーザー光透過部を幅130μmの開状態から、前記2種の部分マスクを速度比30:3の異なる速度で幅方向に等速移動させて閉塞状態とし、ポリイミド膜を貫通した凹部を形成した。
【0146】
前記の凹部は、レーザー光透過部の閉塞方向に向かって深くエッチングされた横断面が台形のものであり、長さ約100μm、幅約13μm、深さ約8μmで、膜面に対する傾斜角が41度の光路変換斜面と78度の対向面を有するものであり、凹部の両端部が鋭角に掘り込まれると共に、光路変換斜面に加えて対向面もその面精度(平面性)に優れていた。なお図3に基づくd/hは、0.84である。
【0147】
ついで前記のエッチング加工を、ワークステージのXYZθの各軸を走査してポリイミド膜に対する位置を変えながら繰り返して、ポリイミド膜の片面に前記凹部の複数をランダムな分布状態で、かつ分布密度がフィルムの一辺より遠離るほど大きくなる状態で有する被照射膜(母型としての光学素子)を形成した。なお凹部の開口が膜表面で占有する面積は、1/10であった。
【0148】
次に、前記被照射膜の凹部付き面に電気鋳造法によりニッケルを充填して、厚さが約200μmの金属層を形成した後、被照射膜を剥離して所定の凸部形成面を有する金型を得た後、その凸部形成面に対し放射線硬化型のアクリル系樹脂を約100μmの厚さで塗布して金型の表面形状を写した成形層を形成した後、それに放射線を照射して成形層を硬化させ、形成された成形硬化層を金型より剥離して、光出射手段を有する光学素子を得た。
【0149】
前記の光学素子における光出射手段は、フィルム面に対する傾斜角が41度の光路変換斜面と78度の対向面を有する、長さ約100μm、幅約13μm、深さ約8μmで横断面台形の凹部の複数からなり、これは母型のポリイミド膜に設けた凹部からなる光出射手段と高精度に対応するものであった。従って凹部の両端部が鋭角に掘り込まれると共に、光路変換斜面に加えて対向面もその面精度に優れていた。
【0150】
前記の光学素子を光出射手段を有しない側を介してポリビニルアルコール系偏光板と、屈折率1.523のアクリル系粘着層にて接着した後、それを光出射手段を外側にして参考例で得た液晶セルの視認側に屈折率1.523のアクリル系粘着層を介して接着し、セルの背面側に反射層具備の偏光板を同様に接着して反射型液晶表示装置を得た。
【0151】
比較例
被照射膜として厚さ50μmのポリイミドフィルムを用いたほかは実施例1に準じて光学素子を形成し、それを用いて反射型液晶表示装置を得た。なお光学素子の光出射手段を形成する凹部は、長さ約100μm、幅約13μm、深さ約9.5μmで横断面形状が三角形であり、フィルム面に対する傾斜角が41度の光路変換斜面と78度の対向面を有するものであった。また凹部の両端部が鋭角に掘り込まれると共に、光路変換斜面と対向面の面精度に優れていたが、溝頂点部分の形状が不統一で若干変形するものであった。
【0152】
評価試験
実施例、比較例で得た反射型液晶表示装置の視認側液晶セル基板の側面に冷陰極管を配置し、銀蒸着のポリエステルフィルムで包囲してフィルム端部を液晶セル基板の上下面に両面粘着テープで接着し冷陰極管を保持固定したものについて、暗室にて液晶セルに電圧を印加しない状態で冷陰極管を点灯させて、入射側面より10mmと20mmの位置での最大輝度を示す方向の輝度(トプコン社製、BM7)とコントラストを調べた。
【0153】
前記の結果を次表に示した。
【0154】
表より実施例では、比較例に比べて明るさに優れており、特に光源から遠離る位置での輝度の維持に優れて面発光の均一性に優れていることが判る。また目視による液晶表示のコントラストの評価において、実施例では白黒表示の両方で明瞭であったが、比較例では散乱光の影響でコントラストが悪く、実用できる範囲を超えるものであった。また実施例では外光モードにおいても明るくてその均一性に優れる表示であった。この結果から、比較例の如く三角形の溝頂点部分の変形等が散乱の原因となり伝送光の輝度低下やコントラストの低下を引き起こすことが判る。
【0155】
以上より断面台形の凹部が輝度とコントラストの点で優れており、また光学素子を配置した液晶表示パネルの側面等に照明装置を設けるだけで面発光が可能であり、液晶表示の乱れや輝度ムラ等の表示ムラが少なくて明るくて見やすい表示品位の良好な外光・照明両用型等の液晶表示装置を形成できることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の断面図
【図2】製造方法の説明図
【図3】被照射膜の説明図
【図4】光学素子における光出射手段の説明図
【図5】光学素子における他の光出射手段の説明図
【図6】液晶表示装置の断面図
【符号の説明】
1:レーザー発振器
2、3:部分マスク(投影マスク)
2a、3a:開口部(レーザー光透過部)
4:光学機器(41:投影像)
5:被照射膜(光学素子)
10:光学素子
10A:透明基材
A:凹部(a:光路変換斜面、b:対向面)
20、30:液晶セル基板 40:液晶層 51:照明装置
【発明の技術分野】
本発明は、面精度に優れる横断面台形の凹部からなる光出射手段を有して、横方向の入射光を効率よく縦方向に光路変換して表示像が乱れにくい液晶表示装置を形成しうる光学素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【発明の背景】
従来、ストライプ状のプリズム構造からなる光出射手段を有するサイドライト型導光板を液晶表示パネルの視認側表面に配置してなるフロントライト式の反射型液晶表示装置が知られていた(特開平11−250715号公報)。斯かる光出射手段の形成は、板の表面をダイヤモンドバイト等で切削する機械加工方式や、三角形の開口を有する投影マスクを走査させるドライエッチング方式にて行われていた。
【0003】
しかしながらストライプ状のプリズム構造では液晶パネルの画素と干渉してモアレが発生し、表示品位が低下しやすいこと、導光板が液晶パネルの前面に位置するフロントライト式では、外光の表面反射で液晶表示のコントラストが低下しやすく、また導光板の傷等の欠陥が目立ちやすいことなどの難点があった。
【0004】
【発明の技術的課題】
前記に鑑みて本発明者等は、微小サイズの凹部(溝)の多数を分散分布させてなる光出射手段による方式に想到した。これによれば、前記したモアレ問題や表面反射問題、欠陥による視認阻害問題などを容易に克服しうる。
【0005】
しかしながら、斯かる微小サイズの凹部を分散分布させてなる光出射手段を従来の方法で製造することが困難な問題点があった。すなわち機械加工では微小サイズの凹部を所定位置に精度よく分散分布させる断続構造を形成することが著しく困難であり、ダイヤモンド砥石を用いる方法でも断面形状が一定な凹部の断続構造を形成することは著しく困難である。また三角形の開口を有する投影マスクを走査させるドライエッチング方法にても、横断面三角形の凹部における斜面の交点からなる溝頂点の形状や斜面が粗く光出射手段とした場合に表示像の乱れや輝度低下の原因となりやすい。
【0006】
前記に鑑みて本発明は、斜面の面精度に優れる微細凹部が位置精度よく分散分布して横方向の入射光を縦方向に効率よく光路変換して、表示像が乱れにくい光出射手段を有する光学素子の開発を課題とする。
【0007】
【課題の解決手段】
本発明は、透明基材の片面に、その基材表面での開口が長方形であり、かつ横断面形状が台形である凹部の複数が不連続に分布してなる光出射手段を有してなり、前記透明基材が形成する平面に対する角度に基づいて、前記凹部の当該開口長方形に基づく一対の長辺面の一方が傾斜角35〜48度の光路変換斜面からなり、他方の対向面が角度40〜90度の面からなることを特徴とする光学素子、及びその光学素子を液晶表示パネルにおける液晶セルの少なくとも片側に配置してなることを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。
【0008】
また本発明は、投影マスクを介してレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を、投影像を作り出す光学機器を介しその大きさを制御して透明基材からなる被照射膜に照射しつつ、前記投影マスクの移動を介しレーザー光の照射量に変化をもたせて被照射膜をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、当該被照射膜を貫通する横断面形状が台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段を形成することを特徴とする前記光学素子の製造方法、及びその光学素子の光出射手段を形成した面の形態を転写した金型を得る工程、その金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態を透明基材に転写した後、それを金型より分離する工程を有することを特徴とする前記光学素子の製造方法を提供するものである。
【0009】
さらに本発明は、投影マスクを介してレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を、投影像を作り出す光学機器を介しその大きさを制御してレーザーエッチングが可能な被照射膜に照射しつつ、前記投影マスクの移動を介しレーザー光の照射量に変化をもたせて被照射膜をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、当該被照射膜を貫通する横断面形状が台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段に対応する形態を形成する工程、その光出射手段に対応する形態を形成した面の形態を転写した金型を得る工程、及びその金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態を透明基材に転写した後、それを金型より分離する工程を有することを特徴とする前記光学素子の製造方法を提供するものである。
【0010】
【発明の効果】
本発明によれば、横断面が台形の凹部としたことで面精度(平面度ないし直線性)に優れる斜面を形成でき、また両端部の鋭角な切込み等の形状精度に優れる凹部を形成できて微細構造の凹部が位置精度よく分散分布し、横方向の光を縦方向に効率よく光路変換して伝送光が散乱しにくい光出射手段を有する光学素子を得ることができ、液晶表示パネルの側面や角部より入射させた光を効率よく視認方向に光路変換して、表示像が乱れにくく明るくて見易い表示の液晶表示装置を形成でき、透明フィルムからなる光学素子では薄型軽量化も容易である。横断面三角形の凹部では溝頂点の乱れで伝送光が大きく散乱する。
【0011】
【発明の実施形態】
本発明による光学素子は、透明基材の片面に、その基材表面での開口が長方形であり、かつ横断面形状が台形である凹部の複数が不連続に分布してなる光出射手段を有してなり、前記透明基材が形成する平面に対する角度に基づいて、前記凹部の当該開口長方形に基づく一対の長辺面の一方が傾斜角35〜48度の光路変換斜面からなり、他方の対向面が角度40〜90度の面からなるものである。その例を図1に示した。10が光学素子であり、10Aが透明基材、Aが横断面台形の凹部、aが光路変換斜面、bが対向面である。なお10Bは支持基材、10Cは接着手段、10Dは剥離フィルムである。
【0012】
光学素子の製造は、例えば投影マスクを介してレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を、投影像を作り出す光学機器を介しその大きさを制御して透明基材からなる被照射膜に照射しつつ、投影マスクの移動を介しレーザー光の照射量に変化をもたせて被照射膜をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、当該被照射膜を貫通する横断面形状が台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段を形成する方法などにより行うことができる。
【0013】
前記方法の工程例を図2に示した。1がレーザー発振器、2、3が投影マスクを形成する部分マスク、2a、3aがレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成する開口部、4がレーザー光の投影像41を作り出す光学機器としてのレンズ、5がレーザー光の照射を受けてレーザーエッチングされる対象の被照射膜、Aが被照射膜5に形成した凹部である。
【0014】
なお2A、3Aは部分マスク2、3を固定保持するマスクステージ、6は被照射膜5を固定保持するワークステージである。図例のマスクステージ2A、3A及びワークステージ6は、図外の駆動源を介しそれぞれ独立して、三次元直交座標に基づくX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向に移動でき、かつX軸、Y軸及びZ軸の各軸において軸回転可能である。
【0015】
従ってマスクステージ2Aの前記各軸方向における移動又は/及び軸回転を介して、部分マスク2の位置と配置角度を部分マスク3と被照射膜5とは独立に制御することができる。部分マスク3についてもマスクステージ3Aを介して同様に部分マスク2と被照射膜5とは独立に制御することができる。
【0016】
またワークステージ6の前記各軸方向における移動又は/及び軸回転を介して、被照射膜5の位置と配置角度を部分マスク2と部分マスク3とは独立に制御することができる。なおレーザー発振器1と光学機器4は、独立して前記各軸方向における移動と軸回転が可能となっており、マスクステージ2A、3A(部分マスク2、3)に対する位置と配置角度を制御できるようになっている。
【0017】
また図例では、レーザー発振器1と光学機器4は、投影マスク(2、3)に対する位置と配置角度を制御したのちは、凹部の形成に際してその状態が固定系として維持される。ただしそれらは、必要に応じマスクステージ2A又は/及びマスクステージ3Aと連動して、一体的に移動又は/及び軸回転可能に形成することもできる。
【0018】
前記により、レーザー光の照射方向に基づいて上下の位置関係で配置された部分マスク2、3において、レーザー発振器1に基づくレーザー光が、先ず部分マスク2における長方形の開口部2aより透過し、開口部以外の部分が他のレーザー光を不必要な光としてその透過を遮蔽して、そのレーザー光線像を部分マスク3に投影する。
【0019】
次に、部分マスク2を介して部分マスク3に投影されたレーザー光は、部分マスク3における長方形の開口部3aより透過し、開口部以外の部分が他のレーザー光を不必要な光としてその透過を遮蔽して、その透過光に基づくレーザー光線像の大きさがレンズ4を介し制御(縮小)されて、被照射膜5に照射され、その被照射膜の形成材がレーザー光により部分的にエッチングされて消失し、除去される。
【0020】
前記の場合に、部分マスク2と部分マスク3をその各開口部2a、3aがレーザー光を長方形に成形し、かつその長方形の開閉用の対向辺を部分マスク2と部分マスク3が一辺ずつ分担するように配置してレーザー光透過部を形成し、そのレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を介し被照射膜5にレーザー光を照射しつつ、部分マスク2と部分マスク3をそのマスクステージ2A、3Aを介し移動させてレーザー光透過部を開閉する。
【0021】
前記の部分マスク2、3を介したレーザー光透過部の開閉操作により、その各部分マスクの移動距離に応じて被照射膜の形成材を連続的に除去でき、その場合にレーザー光の照射時間が長い位置(レーザー光透過量の積分値が多い位置)ほど、従ってレーザー光透過部の閉塞位置に近いほど深くエッチングされて凹部(溝)Aが形成される。
【0022】
従って上記した部分マスク2、3の開口部2a、3aを介して形成したレーザー光透過部の如く、複数の部分マスクを用いてレーザー光透過部を変形可能に形成し、そのレーザー光透過部を介し被照射膜に照射する長方形のレーザー光線像を制御して、具体的にはその長方形における対向する一対の長辺を形成する部分マスクを介したレーザー光透過部の開閉動作により、その部分マスクの移動方向におけるレーザー光透過量の積分値を連続的に変化させて、形成される凹部の深さ方向における単位面積当たりのエッチング量を連続的に変化させ、それにより凹部における光路変換斜面と対向面を形成することができる。
【0023】
なお上記図2の例では各部分マスクを1枚のマスクにて形成したが、2枚以上のマスクの組合せにて目的とする形態を形成する部分マスクとすることもできる。また図例では部分マスク2、3に設けた長方形の開口部が上下で重畳する配置関係として、レーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成したがレーザー光透過部は、投影マスクを形成する2枚又は3枚以上の部分マスクの全体を介して、レーザー光を長方形に成形する開口形態が形成されればよい。
【0024】
従って例えば開口部を有しない短冊などからなる全遮蔽型の部分マスクの4枚を用いて投影マスクとし、それらを中央に長方形の開口部が形成されるように口ノ字状に配置してレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成することもできる。またコノ字形やL字形の全遮蔽型の部分マスクの2枚、又はコノ字形とI字形の全遮蔽型の部分マスクの2枚を用いて投影マスクとし、それらを中央に長方形の開口部が形成されるように口ノ字状に配置してレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成することもできる。
【0025】
前記の如く投影マスクは、レーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成できる、適宜な形態を有する複数の部分マスクの組合せ体として形成することができる。斯かるレーザー光透過部を介しレーザー光を長方形に成形して被照射膜に照射することより、膜表面での開口が長方形の凹部を形成することができる。
【0026】
投影マスクを介して形成するレーザー光透過部の長方形の大きさについては、特に限定はない。レーザー光透過部によるレーザー光透過像は、レンズ等の光学機器を介しその大きさを制御して、一般には縮小して被照射膜に照射することより、その過程でのサイズ制御も可能であり、従って前記長方形の大きさは形成目的の凹部サイズに応じて適宜に決定することができる。
【0027】
またレーザー光透過部による長方形における対向する一対の長辺を形成する部分マスクの一辺側又は両辺側を、レーザー光透過部が開閉する方向に移動させることにより、従って当該長方形の短辺と平行に移動させることにより、被照射膜表面での開口長方形に対応する長辺面が光路変換斜面とその対向面として形成された凹部とすることができる。
【0028】
形成する凹部における光路変換斜面や対向面の膜平面に対する角度は、レーザー光透過部による長方形を開閉する際の部分マスクの移動速度、照射するレーザー光の強さや量などにて制御することができる。膜平面に対する角度が一定な光路変換斜面や対向面の形成は、例えばレーザー光の照射量を一定として単位時間当たりのエッチング量を一定とし、部分マスクを一定速度で移動させる方式などにより行うことができる。レーザー光照射量が一定の場合には部分マスクの移動速度を大きくするほど傾斜角の小さい斜面を形成することができる。
【0029】
前記した部分マスクの移動については、レーザー光透過部を開く方向又は閉塞する方向のいずれかを選択することができる。形成される凹部における光路変換斜面と対向面の直線性(面精度)、特に光路変換斜面の直線性の点より、閉塞方向に部分マスクを移動させる方式が好ましい。面の直線性に乏しいと光路変換光が分散するなど指向性が低下し、液晶表示の品質欠陥となりやすい。
【0030】
従って凹部形成の好ましい方式は、投影マスクが不必要な透過光を遮蔽してレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成する少なくとも2枚の部分マスクからなり、それら部分マスクの内の当該長方形における一対の長辺の一方又は両方を形成する部分マスクを当該長方形の短辺と平行に、かつ当該レーザー光透過部がレーザー光を長方形に成形する状態から閉塞する方向に移動させて、形成される凹部の短辺方向におけるレーザー光透過量の積分値を連続的に変化させ、形成される凹部の深さ方向における単位面積当たりのエッチング量を連続的に変化させて、横断面台形の凹部を形成する方式である。
【0031】
前記により、マスク移動方式による凹部両端部の鋭角な切込みに加えて、レーザー光透過部の閉塞方式による緩・急斜面の高度な面精度を達成でき、総じて形状精度に優れる凹部を形成できて微細構造の凹部も位置精度よく分散分布させることができ、横方向の光を縦方向に効率よく光路変換する光出射手段を形成することができる。
【0032】
一方、図1の例の如く被照射膜が形成する平面に対する傾斜角θ1が35〜48度の光路変換斜面aと、当該角度θ2が40〜90度の対向面bとを具備する凹部Aの形成は、例えばエッチングレート(1ショット当たりのエッチング量)0.01〜5μm/パルスにてレーザーエッチングする際に、当該対向辺の一辺側を形成する部分マスクを他辺側を形成する部分マスクの1.1〜150倍の速度で移動させる方式などにより行うことができる。
【0033】
すなわち投影マスクを介して1パルス当たり0.01〜5μm、就中0.05〜4μm、特に0.1〜2μmの被照射膜がエッチングされる強さのレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を光学機器を介しレーザー光透過像の大きさを制御(縮小)して被照射膜に照射しつつ、部分マスクの内のレーザー光透過部による長方形の一対の長辺を形成する部分マスクをその一辺側/他辺側に基づき1.1〜150、就中1.5〜100、特に2〜70の速度比にて当該長方形の短辺と平行な方向に、かつ好ましくはレーザー光透過部が閉塞する方向に移動させる。
【0034】
前記の操作を介して、被照射膜の形成材をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、被照射膜平面に対する傾斜角が35〜48度の光路変換斜面と40〜90度未満の対向面とを具備する、被照射膜面での開口が長方形の凹部を形成することができる。なお上記の長方形や平行移動は、厳密なものでなくてもよく、製造精度等に基づく変形が許容される。
【0035】
他方、横断面形状が台形の凹部の形成は、上記によるレーザーエッチングの際に、そのエッチングが被照射膜の裏面側に及ぶようにして、被照射膜を貫通した凹部を形成することにより行うことができる。その場合、光路変換斜面と対向面の延長仮想線が交差する側の被照射膜における開口幅が小さいと、すなわち形成凹部の横断面形状が三角形に近いと、その三角形の溝頂点部分の形状異常による伝送光の散乱に準じた液晶表示の欠陥の影響が現れやすくなる。
【0036】
前記影響の防止の点より好ましい横断面台形の凹部は、図3に例示した如く光路変換斜面aと対向面bを被照射膜5の深さ方向に延長した場合の仮想線の交点pと被照射膜表面との直線距離に基づく凹部Aの深さhの0.6〜0.95倍の厚さdを有する被照射膜に対して、前記の貫通エッチングを施したものである。なおその場合、被照射膜は、レーザーエッチングされない基板、特にガラス板の如くレーザー光透過性の基板上に支持してレーザーエッチング処理に供することが形成凹部の形状精度の向上の点より好ましい。
【0037】
光学素子における光出射手段は、図1、4、5に例示した如く横断面が台形で基材表面での開口が長方形であり、その長方形に基づく一対の長辺面として傾斜角θ1が35〜48度の光路変換斜面aと、角度θ2が40〜90度の対向面bを具備する凹部Aの複数を透明基材10Aの片面に不連続に分布させたものである。
【0038】
従って前記の光出射手段は、上記したレーザーエッチングによる凹部形成操作を被照射膜上の異なる位置に繰り返し適用して、被照射膜の所定位置に複数の凹部を不連続に分散分布させることにより形成することができる。ちなみに図2の例ではワークステージ6を介し被照射膜5を移動することで凹部の形成位置を制御でき、その場合に例えば被照射膜の移動をランダムとしたり、さらにその移動距離に長短差をもたせることで、凹部がランダムに配置され、さらに分布密度が変化する状態の光出射手段を容易に形成することができる。
【0039】
光学素子は、上記した方法で被照射膜に透明基材を用いて一体ずつ製造することができる。量産性等の点より光学素子の好ましい製造方法は、上記の方法で得た光学素子を母型に用いて、光学素子形成用の金型を製造し、その金型を用いて光学素子を量産する方法である。
【0040】
ちなみに前記の金型の形成は、光学素子の光出射手段を形成した面の形態を型形成材に転写することにより行うことができる。また光学素子の形成は、得られた金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態を透明基材に転写した後、それを金型より分離することにより行うことができる。
【0041】
前記した光出射手段の形態を金型に転写して光学素子を形成する方法は、その光出射手段の形態を有する素材が光学素子でない場合にも適用でき、その光学素子でない素材に設けた光出射手段に対応する形態を金型に転写し、その金型に転写した面形態を透明基材に転写する方法にても光学素子を形成することができる。従ってその場合には被照射膜として透明基材以外のものも用いうる。
【0042】
すなわち投影マスクを介してレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を、投影像を作り出す光学機器を介しその大きさを制御して被照射膜に照射しつつ、前記投影マスクの移動を介しレーザー光の照射量に変化をもたせて被照射膜をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、当該被照射膜を貫通する横断面形状が台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段を形成する上記した方法を適用するに当たり、その被照射膜にレーザーエッチングが可能な適宜な材料からなるものを用いて、その被照射膜に光出射手段に対応する形態を形成した後、斯かる被照射膜における光出射手段対応形態を有する面の形態を転写した金型を得て、その金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態を透明基材に転写し、その透明基材を金型より分離して光学素子を製造する方法である。
【0043】
上記においてレーザー発振器としては、例えばエキシマレーザーやYAGレーザー、チタン・サファイアレーザーやCO2レーザー、フェムト秒レーザーなどの、ドライエッチング加工が可能な適宜なものを1種又は2種以上用いうる。就中、微細加工精度等の点より波長400nm以下の紫外領域のレーザー光が得られる発振器によるアブレーション加工が好ましい。
【0044】
レーザー光は、2次や3次や4次等の高調波として被照射膜に照射することもでき、また連続やパルス等の照射モードなどの発振形態についても適宜に選択することができる。形成される凹部の形状やサイズ、その分散分布の配置状態は、光学機器等を付加したレーザー加工機の解像力と位置決め精度に依存し、形成できる光路変換斜面等の精度もレーザー加工機の発振周波数やステージ等を介した部分マスクの移動の速度と精度に依存するので、高精度の加工機を用いることが好ましい。
【0045】
被照射膜としては、上記した方法に応じて透明基材のほか、レーザー光でエッチングできる適宜なものを用いることができて特に限定はなく、2光子励起によるレーザー加工でエッチングできるものなどからなっていてもよい。一般には照射レーザー光吸収性で電気絶縁性の高分子からなる膜が用いられる。その高分子膜は、硬化樹脂又は熱可塑性樹脂のいずれで形成されていてもよく、透明樹脂からなる場合にはそのまま透明基材として用いうる。
【0046】
ちなみに前記高分子膜の例としては、ポリエステル系樹脂やエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂やポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂やABS樹脂、アクリル系樹脂やセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂やシリコーン系樹脂、ポリエーテル系樹脂や塩化ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂やノルボルネン系樹脂等からなる塗工膜やフィルムなどがあげられる。
【0047】
また特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマー、例えば(A)側鎖に置換又は/及び非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換又は/及び非置換のフェニル基並びにニトリル基を有する熱可塑性樹脂との前記A、Bを含有する樹脂組成物、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系等の熱や紫外線、電子線等の放射線で重合処理しうる硬化型樹脂などからなる塗工膜やフィルムなどよりなる高分子膜もあげられる。
【0048】
ちなみに前記A、Bを含有する樹脂組成物の具体例としては、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有するものなどがあげられる。フィルムは、樹脂組成物の押出成形などにて形成することができる。
【0049】
耐熱性や耐薬品性、レーザー加工性の点より好ましい高分子膜は、熱硬化性樹脂、就中ポリイミド系樹脂やポリエーテルスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂などからなるもの、特にポリイミド系樹脂からなるものである。また紫外域のレーザー光で加工する場合には、アクリル系やメタクリル系やウレタン系等の紫外線硬化樹脂などからなる紫外線吸収性の高分子膜が好ましい。また透明基材である場合には可視光域の透過率に優れる高分子膜が好ましい。
【0050】
高分子膜等からなる被照射膜は、フィルムやシートや板の形態を有するものが一般的であり、単層物や複層物等の適宜な層形態を有するものであってよい。従って被照射膜は、例えば高分子膜のレーザー加工面にエッジ部分の角度のシャープさ等の加工精度の向上や保護などを目的とした金属層やポリマー層等を、10μm以下、就中1nm〜5μmなどの、レーザー加工が可能な厚さで有していてもよい。
【0051】
被照射膜は、上記したように形成する凹部の大きさに応じて貫通孔が形成される厚さとされる。一般には加工時のハンドリング性や加工表面のフラット性などの点より2μm〜100μm、就中5〜80μm、特に10〜50μmとされる。なお被照射膜は、必要に応じガラスや金属や高分子等の基板などからなる支持体上に固定保持してワークステージ上に配置し、レーザーエッチング加工に供することもできる。
【0052】
一方、投影マスクを形成する部分マスクとしては、金属などのレーザー光遮蔽性材料からなる適宜なものを用いうる。石英等からなるガラス板上に金属や誘電体等の適宜なレーザー光遮蔽性材料を蒸着し、必要に応じてその蒸着層をパターニングしてレーザー光透過部を形成してなるガラスマスクなども用いうる。ガラスマスクにおける蒸着材料としては、限定するものではないが、レーザー光に対する耐久性や解像力の点よりクロムやアルミニウム、モリブデンや誘電体多層膜などが好ましい。
【0053】
なお部分マスクは、上記したように2枚又は3枚以上のマスクで形成して、それらを重ねてレーザー光の照射に供することもできる。凹部の複数を分布させてなる光出射手段等の形成に際しては、被照射膜が移動させられるが、その場合、投影マスクないしそれを形成する部分マスクと被照射膜の両方を同期させて移動させる方式も採ることができる。
【0054】
上記した所定の凹部の複数を形成した被照射膜を母型とした光学素子形成用の金型の製造は、例えば光出射手段又はそれに対応する形態を設けた被照射膜に電気鋳造法を適用することにより行うことができる。これにより被照射膜に設けた光出射手段等を形成する凹部に高精度に対応した凸部を有する金型を形成することができる。
【0055】
前記の電気鋳造法としては、被照射膜のレーザー加工を施した側より金属を充填して、被照射膜の当該光出射手段等を有する面形状を写したレプリカを有する金属層からなる金型を形成する、従来に準じた方法を適用することができる。その場合、被照射膜は、台形凹部に基づく開口より充填金属が漏れないように基板上に支持することが好ましい。なお金属層の形成に際しては被照射膜に導電膜が設けられるが、その導電膜の形成についても従来に準じた方法を適用することができる。
【0056】
金型を形成する金属の種類については特に限定はなく、一般には例えば金や銀、銅や鉄、ニッケルやコバルト、あるいはそれらの合金類などが用いられ、窒化物やリン等を添加したものなどであってもよい。用いる金属種は、1種でもよし、2種以上であってもよく、また異種金属を積層してなる金型を形成することもできる。
【0057】
金型として形成する金属層の厚さは、適宜に決定してよい。被照射膜と分離する際の破損防止や、光学素子形成時のハンドリング性などの点より、凸部を有しない部分の厚さが0.02〜3mm程度の金属層からなる金属箔ないし金属板による金型としたものが好ましい。
【0058】
前記の金型を介した光学素子の形成は、例えば放射線硬化型樹脂を必要に応じ透明フィルムや透明板等に塗布して支持した状態で、金型の凸部を形成した面に密着させて、放射線硬化型樹脂層に金型の凸部形成側の表面形状を写し、それにより当該表面形状を写した成形層を形成し、それに放射線を照射して成形層を硬化させ、その成形硬化層を金型から分離することにより行うことができる。
【0059】
前記により金型の凸部形成側の表面形状に高精度に対応した凹部と表面形状を有する、従って母型の被照射膜における光出射手段又はそれに対応する形態を高精度に再現してなる、当該傾斜角θ1が35〜48度の光路変換斜面aと当該角度θ2が40〜90度の対向面bとを具備し、横断面形状が台形で、表面での開口が長方形の凹部の複数が透明基材の片面に不連続に分布してなる光出射手段を有する光学素子を得ることができる。
【0060】
前記において光学素子の好ましい製造方法は、変形性の金型を円柱状ないし円筒状の円形回転体の外周に捲着し、その回転体を介し金型を回転させながらその回転下の金型に、長尺の透明フィルムに設けた放射線硬化型樹脂の塗布層を順次圧着して金型の表面形状を写した成形層を連続的に形成しつつ、その成形層に透明フィルムを介し放射線を照射して、光学素子を連続的に製造する方法である。
【0061】
光学素子の製造は、例えば前記した電気鋳造法による金型を補強する方式などの適宜な方式で射出成形用の金型を形成し、その金型を用いた射出成形方式にて行うこともできる。斯かる方式は、例えば導光板等として使用できる板状の透明基材からなる光学素子を形成する場合などに特に適している。従って光学素子は、流動状態とした熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を介して金型における所定の形状を転写する方式などにても形成することができる。
【0062】
光学素子は、その透明基材の厚さに基づいて透明フィルムや、導光板等に適した透明板として形成でき、光出射手段が直線性(平面性)に優れる光路変換斜面と対向面を有して、長辺方向の両端が鋭角に切り込まれた微小サイズで横断面台形の凹部からなることより、その光路変換斜面が反射効率に優れてその反射光が指向性に優れると共に、凹部形状の乱れに基づく散乱も生じにくくて指向性に優れる出射光や表示光を提供する。
【0063】
従って光学素子は、導光板や液晶セルの側面や角部より照明装置を介し入射させた光ないしその伝送光を、光路変換斜面を介し反射させて裏面側(光出射手段を有しない側)に、従って液晶表示パネルの視認方向などに光路変換して出射させ、その出射光を液晶表示パネル等の照明光(表示光)として利用できることを可能とする。その場合、光学素子は通例、液晶セルの平面に沿う方向にその光出射手段の形成面が外側となるように配置される。
【0064】
上記の金型を介した成形において、必要に応じ放射線硬化型樹脂の支持に用いて、光学素子を形成することのある透明フィルムや透明板は、照明装置等を介して入射させる光の波長域に応じそれに透明性を示す適宜な材料の1種又は2種以上を用いて形成しうる。ちなみに可視光域では、例えば上記の被照射膜で例示したものなどで代表される透明樹脂や、熱、紫外線、電子線等で重合処理しうる硬化型樹脂などがあげられる。
【0065】
なお光学素子の形成に際する、放射線硬化型樹脂の成形層に対する透明フィルム又は透明板からなる透明基材の密着配置には、上記した事前の塗工方式のほか、例えば金型上の成形層の上に透明基材を配置する事後方式などの、成形層上に透明基材を密着させた状態でその透明基材側より放射線を照射して成形層を硬化させうる適宜な方式を採ることができる。
【0066】
前記の放射線硬化型樹脂には、例えば上記した紫外線硬化型樹脂などの紫外線の照射、就中、紫外線又は/及び電子線の照射にて硬化処理できる適宜な樹脂の1種又は2種以上を用いることができ、その種類について特に限定はない。就中、光透過率に優れる成形硬化層を形成できる放射線硬化型樹脂が好ましい。
【0067】
また放射線硬化型樹脂の成形硬化層の形成に際し、支持用の透明基材を用いた場合、光学素子は、その透明基材と当該成形硬化層とが固着一体化したものとして得ることもできるし、透明基材とは分離された状態の当該成形硬化層からなるものとして得ることもできる。透明基材と当該成形硬化層の分離は、例えば透明基材を剥離剤で表面処理する方式などの適宜な方式にて達成することができる。
【0068】
前記した固着一体化の場合、成形硬化層と透明基材の屈折率差が大きいと、界面反射等にて光の出射効率が大きく低下する場合がある。それを防止する点より、透明基材との屈折率差が−0.02〜0.04、就中−0.01〜0.03、特に0〜0.02の成形硬化層を形成できる放射線硬化型樹脂が好ましい。またその場合、透明基材よりも付加する成形硬化層の屈折率を高くすることが出射効率の点より好ましい。
【0069】
なお金型上ないし透明基材上に形成する放射線硬化型樹脂の塗布層の厚さは、金型における凸部の高さの1〜5倍、就中1.1〜3倍、特に1.2〜2倍が好ましいが、これに限定されない。本発明においては横断面台形の凹部に対応した凸部形状を有する金型であることより、金型の取扱い時やその形状の転写時等に損傷を生じやすかった三角形の頂点がない凸部形状であることより、金型が劣化しにくく寿命に優れている。
【0070】
光学素子は、上記したようにその透明基材の厚さに基づいて透明フィルム又は透明板として形成することができる。透明基材の厚さについては適宜に決定でき特に限定はない。一般には5mm以下、就中5μm〜3mm、特に10μm〜2mmが好ましい。特に透明フィルムの場合には薄型軽量化等の点より5〜300μm、就中10〜200μm、特に20〜100μmが好ましい。斯かる厚さとすることで打ち抜き処理等によるサイズ加工も容易に行うことができる。
【0071】
光学素子は、単層物として形成されていてもよいし、同種又は異種の材料からなる積層体などとして形成されていてもよい。透明フィルムからなる光学素子を透明板に接着して導光板を形成することもできる。なお導光板は、前記した透明板からなる光学素子として形成することもできる。光学素子を必要に応じ接着層等を介して他部材と積層する場合、その他部材は通例、光学素子の光出射手段を有しない側に積層される。
【0072】
光路変換斜面への入射効率を高めて明るくてその均一性に優れる表示の液晶表示装置を得る点より、光学素子の好ましい屈折率は、液晶セル、特にそのセル基板と同等以上、就中1.49以上、特に1.52以上である。またフロントライト方式とする場合の表面反射を抑制する点よりは1.6以下、就中1.56以下、特に1.54以下の屈折率であることが好ましい。なお屈折率は、可視光域の場合、D線に基づくことが一般的であるが、入射光の波長域に特異性等のある場合には前記に限定されず、その波長域に応じることもできる(以下同じ)。
【0073】
輝度ムラや色ムラを抑制して、表示ムラの少ない液晶表示装置を得る点より好ましい光学素子は、複屈折を示さないか、複屈折の小さいもの、就中、面内の平均位相差が50nm以下のものである。位相差の小さい光学素子とすることにより、偏光板等を介した直線偏光が入射した場合に、その偏光状態を良好に維持できて表示品位の低下防止に有利である。
【0074】
表示ムラ防止の点より、光学素子における面内の好ましい平均位相差は、30nm以下、就中20nm以下、特に10nm以下であり、その位相差の場所毎のバラツキが可及的に小さいものがより好ましい。さらに光学素子に発生する内部応力を抑制して、その内部応力による位相差の発生を防止する点よりは、光弾性係数の小さい材料からなる光学素子が好ましい。加えて光学素子の厚さ方向の平均位相差も50nm以下、就中30nm以下、特に20nm以下であることが表示ムラ防止等の点より好ましい。
【0075】
斯かる低位相差の光学素子の形成は、例えば既成の透明基材を焼鈍処理する方式等にて、内部の光学歪みを除去する方式などの適宜な方式にて行いうる。好ましい形成方式は、キャスティング方式にて位相差の小さい透明基材を形成する方式である。光学素子における前記の位相差は、可視域の光、特に波長550nmの光に基づくものであることが好ましい。
【0076】
なお上記した面内の平均位相差は、(nx−ny)×dにて定義され、厚さ方向の平均位相差は、{(nx+ny)/2−nz}×dにて定義される。ただしnxは透明基材の面内において最大の屈折率を示す方向の平均屈折率、nyは透明基材の面内においてnx方向に直交する方向の平均屈折率、nzは透明基材の厚さ方向の平均屈折率、dは透明基材の平均厚さを意味する。
【0077】
光学素子に設ける光出射手段は、モアレの防止等の点より図4、5の例の如く透明基材10の片面において、所定の凹部Aの複数が不連続に分布したものとして形成される。横断面台形の凹部は、サイズの小型化による視覚性の低減や製造効率などの点より有利である。凹部は、被照射膜内又は光学素子内に凹んでいること(溝)を意味する。また横断面は、凹部における光路変換斜面に対する横断面を意味する。
【0078】
前記により、導光板や液晶セルの側面等に配置した照明装置による側面方向からの入射光ないしその伝送光を、光路変換斜面aを介し光学素子の光出射手段を有しない裏面側に光路変換して、導光板や液晶セル等に対し法線方向の指向性に優れる光を、照明装置光の利用効率よく出射させることができる。なお横断面に基づく台形は、厳密な意味ではなく加工精度に基づく面の角度変化等は許容されるが、本発明においてはその加工精度に優れている。
【0079】
光路変換斜面の傾斜角θ1が35度未満では、液晶表示パネルより出射する表示光の角度が30度を越えることとなり視認に不利となる。一方、光路変換斜面の当該傾斜角が48度を超えると、全反射されずに光路変換斜面から光洩れが生じやすくなり光利用効率が低下する。
【0080】
前記において光路変換斜面による反射方式に代えて、表面を粗面化した光出射手段による散乱反射方式とした場合には、垂直な方向に反射しにくく液晶表示パネルから正面方向より大きく傾いた方向に出射されて液晶表示が暗く、コントラストに乏しくなる。
【0081】
光路変換斜面を介し効率よく全反射させて、光出射手段を有しない側より、光学素子平面の法線方向に指向性よく出射させ、液晶セルを効率よく照明して明るくて見やすい液晶表示を達成する点より、光路変換斜面の好ましい傾斜角θ1は38〜45度、就中40〜43度である。
【0082】
光出射手段を形成する複数の凹部の分布は、その光路変換斜面に基づいて図4の例の如く平行に分布していてもよいし、不規則に分布していてもよい。さらに図5の例の如く仮想中心に対してピット状(同心円状)に配置された分布状態にあってもよい。
【0083】
ちなみに前記したピット状配置の分布は、レーザー光を照射する際に、被照射膜の端面又はその外側に仮想中心を想定し、その仮想中心より派生する仮想の放射線に対して直交する方向に部分マスクのレーザー光透過部閉塞線が形成されるように凹部を設けることにより形成することができる。なお二箇所以上の仮想中心を想定して、その各仮想中心に対してピット状に分布配置した複数の凹部からなる光出射手段とすることもできる。
【0084】
複数の凹部の分散分布による配置状態は、その凹部の形態などに応じて適宜に決定することができる。上記したように光路変換斜面aは、照明モードにおいて照明装置による側面方向からの入射光を裏面方向に反射して光路変換するものであることより、透明フィルムからなる光学素子の場合には、斯かる光路変換斜面を具備する凹部を全光線透過率が60〜95%、就中75〜92%で、ヘイズが2〜30%、就中4〜20%となるように光学素子の片面に、不連続に分散分布させることが、照明装置を介した側面方向からの光を光路変換して液晶セルを効率よく照明する面光源を得て、明るくてコントラストに優れる液晶表示を達成する点より好ましい。
【0085】
斯かる全光線透過率とヘイズの特性は、凹部のサイズや分布密度等の制御にて達成でき、例えば光学素子の片面に占める光出射手段の投影面積に基づく占有面積を1/100〜1/3、就中1/50〜1/5、特に1/30〜1/10とすることにより達成することができる。特にフロントライト式の光学素子である場合には、表示像の乱れ防止や外光モードでの外光の入射効率などの点より、当該占有面積を5〜20%とすることが好ましい。
【0086】
より具体的には凹部、ないしその光路変換斜面のサイズが大きいと、観察者にその光路変換斜面の存在が認識されやすくなって表示品位を大きく低下させやすくなり、液晶セルに対する照明の均一性も低下しやすくなることなども考慮して、被照射膜面ないし光学素子表面での開口が長方形の凹部において、その開口の長辺長が短辺長の3倍以上、就中5倍以上、特に8倍以上の凹部であることが好ましい。
【0087】
また光路変換斜面の長さを、凹部の深さの5倍以上、就中8倍以上、特に10倍以上の凹部とすることが好ましい。さらに光路変換斜面の長さは、500μm以下、就中200μm以下、特に10〜150μm、凹部の深さ及び幅は2μm〜100μm、就中5〜80μm、特に10〜50μmとすることが好ましい。なお前記の長さは、光路変換斜面の長辺長に基づき、深さは光学素子の光出射手段形成面を基準とする。また幅は、光路変換斜面の長辺方向と深さ方向とに直交する方向の長さに基づく。
【0088】
なお凹部を形成する光路変換斜面aの対向面bは、光路変換斜面としての傾斜角を満足させない場合、セル側面等の横方向からの入射光を裏面より出射することに寄与するものではなく、表示品位や光伝送ないし光出射に可及的に影響しないことが好ましい。ちなみに対向面の傾斜角θ2が小さいと光学素子面に対する投影面積が大きくなり、光学素子を視認側に配置するフロントライト方式による外光モードでは、その対向面による表面反射光が観察方向に戻って表示品位を阻害しやすくなる。
【0089】
従って前記の場合、対向面の傾斜角θ2は大きいほど有利であり、それにより光学素子面に対する投影面積を小さくできて全光線透過率の低下等を抑制でき、また表面反射光を低減できてその反射光を光学素子面方向に傾けることができ、液晶表示への影響を抑制することができる。斯かる点より対向面の好ましい傾斜角θ2は、60度以上、就中70度以上、特に75〜90度である。
【0090】
凹部を形成する面、特に光路変換斜面は、可及的に凹凸や屈曲のない直線面であることが好ましい。凹部の断面形状は、その面の傾斜角等が光学素子の全面で一定な形状であってもよいし、吸収ロスや先の光路変換による伝送光の減衰に対処して光学素子上での発光の均一化を図ることを目的に、光が入射する側の側面から遠離るほど凹部を大きくしてもよい。
【0091】
また凹部を一定ピッチで分散分布させた光出射手段とすることもできるし、光が入射する側の側面から遠離るほど徐々にピッチを狭くして、凹部の分布密度を高くした光出射手段とすることもできる。さらに凹部の分布密度や配置位置等が不規則なランダムピッチによる光出射手段にて、光学素子上での発光の均一化を図ることもできる。ランダムピッチは、画素との干渉によるモアレの防止に特に有利である。よって光出射手段は、ピッチに加えて、形状等も異なる凹部の組合せからなっていてもよい。
【0092】
凹部における光路変換斜面は、液晶セルの側面方向より入射させる光の方向に対面していることが出射効率の向上の点より好ましい。従って線状光源を用いる場合の光路変換斜面は、一定の方向を向いていることが好ましい。また発光ダイオード等の点状光源を用いる場合の光路変換斜面は、その点状光源の発光中心の方向を向いていることが好ましい。
【0093】
凹部の断続端の形状等については特に限定はないが、その部分への入射光の低減化等による影響の抑制の点より、鋭角に掘り込まれたものであることが好ましく、従って光学素子が形成する平面に対して60〜90度の角度にあることが好ましい。
【0094】
また透明フィルムからなる光学素子は、光出射手段を形成する凹部部分を除き、その表裏面が可及的に平滑な平坦面であること、就中±2度以下の角度変化、特に0度の平坦面であることが好ましい。またその角度変化が長さ5mmあたり1度以内であることが好ましい。斯かる平坦面とすることによりフィルム面の大部分を角度変化が2度以下の平滑面とすることでき、液晶セルの内部を伝送する光を効率よく利用できて、画像を乱さない均一な光出射を達成することができる。
【0095】
上記したように凹部のピット状配置は、点状光源を導光板や液晶表示パネルの側面や角部等に配置し、その点状光源による側面方向からの放射状の入射光ないしその伝送光を光路変換斜面aを介し光路変換して、光学素子を可及的に均一に発光させ、液晶セル等に対し法線方向の指向性に優れる光を照明装置光の利用効率よく光学素子から出射させることを目的とする。
【0096】
従って凹部のピット状配置は、点状光源の配置が容易となるように、光学素子の端面又はその外側に仮想中心が形成されるように行うことが好ましい。仮想中心は、同じ又は異なる光学素子端面に対して一箇所又は二箇所以上形成することができる。
【0097】
光学素子における光出射手段形成面には、必要に応じて外光の表面反射による視認阻害の防止を目的としたノングレア処理や反射防止処理、傷付き防止を目的としたハードコート処理などを施すことができる。斯かる処理を施した光学素子は、特にフロントライト方式に好ましく用いうる。
【0098】
前記したノングレア処理は、サンドブラスト方式やエンボス加工方式等の粗面化方式、シリカ等の前記した透明粒子を配合した樹脂の塗工方式などの種々の方式で、表面を微細凹凸構造化することにより施すことができる。また反射防止処理は、干渉性の蒸着膜を形成する方式などにて施すことができる。更にハードコート処理は、硬化型樹脂等の硬質樹脂を塗工する方式などにて施すことができる。ノングレア処理や反射防止処理やハードコート処理は、その1種又は2種以上の処理を施したフィルムの接着方式などにても施すことができる。
【0099】
光学素子は、図1の例の如く光出射手段を有しない側に接着手段10Cを有するものとすることができる。透明フィルムからなる光学素子は、上記したように側面や角部からの入射光を伝送する基板に対して配置されるものである。その場合に、光学素子を接着手段を介して基板に密着させることにより、光出射手段の光路変換斜面を介した反射効率、ひいては側面等の方向よりの入射光の有効利用による輝度を向上させることができる。
【0100】
接着手段としての接着層の形成には、例えば紫外線や放射線等の照射又は加熱で硬化する接着剤などの適宜なものを用いることができ、特に限定はない。就中、透明性に優れて被接着体との屈折率差が小さいものが好ましい。また簡便接着性等の取扱性や内部応力の発生を抑制する応力緩和性などの点よりは、粘着層が好ましく用いうる。
【0101】
粘着層の形成には、例えばゴム系やアクリル系、ビニルアルキルエーテル系やシリコーン系、ポリエステル系やポリウレタン系、ポリエーテル系やポリアミド系、スチレン系などの適宜なポリマーをベースポリマーとする粘着剤などを用いうる。就中、アクリル酸ないしメタクリル酸のアルキルエステルを主体とするポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤の如く透明性や耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いられる。
【0102】
また接着層は、それに例えばシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化錫や酸化インジウム、酸化カドミウムや酸化ノンモン等の導電性のこともある無機系粒子や、架橋又は未架橋ポリマー等の有機系粒子などの適宜な透明粒子を1種又は2種以上含有させて光拡散型のものとすることもできる。
【0103】
光学素子は、偏光板の透明保護層として用いることもできる。すなわち図6の例の如く、光学素子10をその光出射手段Aを有しない側を介し偏光板25に積層したものとすることもできる。その場合、光学素子と偏光板は、接着手段を介して接着積層されていることが、光出射手段Aの光路変換斜面aを介した反射効率、ひいては側面や角部の方向からの入射光の有効利用による輝度向上の点より好ましい。
【0104】
前記した偏光板一体型の光学素子は、そのまま液晶表示パネル等に適用することができる。その場合、光出射手段が外側に位置するように光学素子を配置する方式が、通例である。複屈折による位相差が発生しにくい光学素子の使用にて、図6の矢印γの如く偏光板25を介した直線偏光が入射した場合にその偏光状態を良好に維持できて、偏光板に再入射した際の吸収や、表示品位の低下を有効に防止することができる。
【0105】
偏光板としては、適宜なものを用いることができ特に限定はない。高度な直線偏光の入射による良好なコントラスト比の表示を得る点などよりは、例えばポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて延伸したものからなる吸収型偏光フィルムなどの如く、偏光度の高い偏光板が好ましく用いうる。
【0106】
偏光板は、前記偏光フィルムの片側又は両側に透明保護層を有するものであってもよい。透明保護層は、フィルムの接着方式やポリマー液等の塗布方式などにて付与でき、その形成には上記の被照射膜で例示した樹脂、就中トリアセチルセルロースの如く透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性などに優れる樹脂が好ましく用いられる。上記した偏光板一体型の光学素子は、薄型化を目的に光学素子が当該透明保護層を兼ねるものとして積層されていてもよいし、透明保護層の外側に付加する状態で積層されていてもよい。
【0107】
偏光板一体型の光学素子にも、液晶セル等の他部材と接着するための透明な接着層等の接着手段を、必要に応じて設けることができる。その接着層は、上記に準じることができる。なお光学素子に設けた接着層に対しては、図1の例の如くそれを実用に供するまでの間、異物の混入等の防止を目的に剥離フィルム10Dを仮着して、カバーしておくことが好ましい。
【0108】
光学素子は、その光出射手段(光路変換斜面)を介して、照明装置による側面や角部の方向からの入射光ないしその伝送光を、視認に有利な垂直性に優れる方向(法線方向)に光路変換して光の利用効率よく出射し、また外光に対しても良好な透過性を示すものとすることができる。
【0109】
従って例えば従来の透過型や、反射層ないし半透過型反射層を具備する反射型ないし半透過型等の各種の液晶表示パネル等に適用して、明るくて見やすい透過型、又は外光・照明両用型の液晶表示装置などの種々の装置を形成することができる。また透明フィルムからなる光学素子の場合には液晶表示装置等の薄型軽量化も達成することができる。
【0110】
前記した液晶表示装置の例を図6に示した。図は、光学素子10を反射層具備の従来の反射型液晶表示パネルの視認側に適用して、フロントライト方式の外光・照明両用型液晶表示装置とした例を示したものである。20、30が液晶セルにおけるセル基板、40が液晶層、31が反射層である。
【0111】
図例の如く液晶表示装置は、光学素子10を液晶表示パネルにおける液晶セルの少なくとも片側に配置することにより形成することができる。その場合、光学素子は、その光出射手段を有する側が外側となるように、液晶表示パネルの視認側又は背面側の少なくとも一方に配置することが一般的である。上記のように光学素子は、透明フィルムタイプや導光板タイプとして形成でき、そのいずれもがフロントライト又はバックライトとして用いうるが、一般には導光板タイプの光学素子は、バックライトとして用いることが好ましい。
【0112】
光学素子、特に透明フィルムタイプのものは、接着層を介し液晶セル等に接着することが明るい表示を達成する点より好ましい。さらに明るくてコントラストに優れる液晶表示を達成する点より、最寄りの液晶セル基板との屈折率差が−0.02〜0.04の透明フィルムを用いた光学素子の使用が好ましい。これにより照明装置を介した入射光ないしその伝送光が全反射で液晶セル基板内に閉じ込められてパネル照明の光量が低下し、液晶表示が暗くなることを抑制できる。また屈折率差にて大きな反射損が発生して液晶表示が暗くなりコントラストが低下することを抑制できる。
【0113】
透明フィルムタイプの光学素子を利用した照明機構は、図6の例の如く液晶表示パネルの1又は2以上の側面又は/及び角部、特に光学素子10を配置した側の液晶セル基板20の1又は2以上の側面又は/及び角部に、1個又は2個以上の照明装置51を配置することにより形成することができる。
【0114】
前記において図5の例の如きピット状配置の光出射手段を有する光学素子の場合には、点状の照明装置による放射状入射光を効率よく利用して明るい表示を達成する点より、ピット状配置の光出射手段の仮想中心を含む垂直線上における液晶セルの側面又は/及び角部に点状の照明装置を配置することが好ましい。
【0115】
仮想中心に対応した点状の照明装置の斯かる配置に際しては、光出射手段の仮想中心が光学素子の端面にあるか、その外側にあるかなどに応じて図6の例の如く、液晶セル基板20の点状の照明装置を配置する側を突出させる方式などの適宜な対応策を採ることができる。線状の照明装置等の他の照明装置を配置する場合も同様である。
【0116】
導光板や液晶セルの側面等に配置する照明装置としては、適宜なものを用いることができる。例えば発光ダイオード等の点状光源のほか、(冷,熱)陰極管等の線状光源、点状光源を線状や面状等に配列したアレイ体、あるいは点状光源と線状導光板を組合せて点状光源からの入射光を線状導光板を介し線状の照明装置に変換するようにしたものなどが好ましく用いうる。
【0117】
また照明装置は、光学素子の光路変換斜面が対面することとなる導光板や液晶表示パネルの側面等に配置することが、出射効率の点より好ましい。上記したピット状配置の場合も含めて、光路変換斜面が照明装置に対して可及的に垂直に対面するように配置することにより、照明装置を介した側面や角部からの入射光を効率よく面状に変換して高効率に面発光させることができる。
【0118】
従って凹部が光路変換斜面としての傾斜角を満足する対向面を具備して二面の光路変換斜面を具備する凹部による光出射手段を有する光学素子の場合には、導光板や液晶セル基板の対向する側面や角部の両方に対応した数の照明装置を配置することもできる。またピット状配置の場合には、光学素子における光出射手段の仮想中心に対応した1個所又は2個所以上に点状の照明装置を配置することもできる。
【0119】
照明装置は、その点灯による照明モードでの視認を可能とするものであり、外光・照明両用型の液晶表示装置の場合に、外光による外光モードにて視認するときには点灯の必要がないので、その点灯・消灯を切り替えうるものとされる。その切り替え方式には任意な方式を採ることができ、従来方式のいずれも採ることができる。なお照明装置は、発光色を切り替えうる異色発光式のものであってもよく、また異種の照明装置を介して異色発光させうるものとすることもできる。
【0120】
図6の例の如く照明装置51に対しては、必要に応じ発散光を導光板や液晶セルの側面に導くためにそれを包囲するリフレクタ52などの適宜な補助手段を配置した組合せ体とすることもできる。リフレクタとしては、高反射率の金属薄膜を付設した樹脂シートや白色シートや金属箔などの適宜な反射シートを用いうる。リフレクタは、その端部を液晶セル基板等の端部に接着する方式などにて、照明装置の包囲を兼ねる固定手段として利用することもできる。
【0121】
液晶表示装置は一般に、液晶シャッタとして機能する液晶セルとそれに付随の駆動装置、フロントライト又はバックライト(光学素子)及び必要に応じての反射層や補償用位相差板等の構成部品を適宜に組立てることなどにより形成される。本発明においては光学素子と照明装置を用いて照明機構を形成する点を除いて特に限定はなく、従来のフロントライト型やバックライト型のものに準じて形成することができる。
【0122】
従って用いる液晶セルについては特に限定はなく、図例の如く液晶セル基板20、30の間に封止材41を介し液晶40を封入し、その液晶等による光制御を介して表示光を得るようにした、適宜な透過型や反射型、ないしハーフミラーの如く光を透過し、かつ反射する半透過型反射層を用いた半透過型のものを用いることができる。
【0123】
ちなみに前記液晶セルの具体例としては、TN型やSTN型、IPS型やHAN型、OCB型やVA型の如きツイスト系や非ツイスト系、ゲストホスト系や強誘電性液晶系の液晶セル、あるいは内部拡散式等の光拡散型の液晶セルなどがあげられる。また液晶の駆動方式も、例えばアクティブマトリクス方式やパッシブマトリクス方式などの適宜なものであってよい。液晶の駆動は通例、図6の例の如く、液晶セル基板の内側に設けた電極22、31を介して行われる。
【0124】
反射型ないし半透過型の液晶表示装置では反射層ないし半透過型反射層の配置が必須であるが、その配置位置については図6に例示の如く液晶セルの内側に設けることもできるし、液晶セルの外側に設けることもできる。従って図6の例で電極31は、反射層も兼ねている。
【0125】
反射層についは、例えばアルミニウムや銀、金や銅やクロム等の高反射率金属の粉末をバインダ樹脂中に含有する塗工層や蒸着方式等による金属薄膜の付設層、その塗工層や付設層を基材で支持した反射シート、金属箔や透明導電膜、誘電体多層膜などの、従来に準じた適宜な反射層として形成することができる。また半透過型反射層についても、例えばハーフミラーや反射材含有シート、前記反射層に多数の孔を設けたなどの、従来に準じた適宜な半透過型反射層として形成することができる。
【0126】
一方、透過型の液晶表示装置は、液晶表示パネルの背面側に光学素子を配置してバックライト機構を形成することにより製造しうる。その場合に、光出射手段の背面側(外側)に反射層を設けることにより、光路変換斜面等から洩れる光を反射させて液晶セルの方向に戻すことでパネル照明に利用でき、輝度の向上を図ることができる。またその反射層を拡散反射面とすることで、反射光を拡散させて正面方向に向けることができ、視認により有効な方向に向けることができる。
【0127】
さらに前記した反射層の配置により、透過型で、かつ外光・照明両用型の液晶表示装置を形成することも可能である。その場合には透明フィルムタイプの光学素子が特に好ましく用いうる。透過型液晶表示装置に配置する反射層は、上記した反射型液晶表示装置で例示した反射層に準じることができる。なお電界により光を変調する液晶層を有する反射型液晶表示装置では、図6の例の如く液晶セルの視認側に光学素子を配置するフロントライト式が一般的である。
【0128】
他方、半透過型反射層を用いた半透過型液晶表示装置の場合には、前記したフロントライト方式及びバックライト方式のいずれにても照明機構を形成することができる。従って液晶表示パネルの視認側と背面側の両方に光学素子を配置して、フロントライトとバックライトの両方の照明機構を設けた、外光・照明両用型の半透過型液晶表示装置を形成することもできる。
【0129】
なお前記の透過型において、反射層を液晶セルの外側に配置する場合、その液晶セル基板や電極は、液晶表示を可能とするために透明基板や透明電極として形成することが必要である。一方、図6の例の如く、液晶セルの内部に反射層を兼ねる電極31を設ける場合には、液晶表示を可能とするためにその視認側の液晶セル基板20や電極22は透明基板や透明電極として形成する必要があるが、背面側の液晶セル基板30はその反射層31と同様に透明である必要はなく、不透明体にて形成されていてもよい。半透過型の場合には、前記の透過型や反射型に準じうる。
【0130】
液晶セル基板の厚さについては、特に限定はなく液晶の封入強度や、配置する照明装置の大きさなどに応じて適宜に決定しうる。一般には光伝送効率と薄型軽量性のバランスなどの点より10μm〜5mm、就中50μm〜2mm、特に100μm〜1mmの厚さとされる。また液晶セル基板の厚さは、照明装置を配置する側と配置しない側とで相違していてもよいし、同厚であってもよい。透明フィルムタイプの光学素子の場合、輝度向上の点より照明装置を配置する側の液晶セル基板を厚くすることが有利である。
【0131】
液晶表示パネルの形成に際しては、必要に応じ図6の例の如く、液晶を配向させるためのラビング膜等の配向膜21、32や、カラー表示を実現するためのカラーフィルタ23、低屈折率層24、偏光板25、位相差板26などを設けることができる。配向膜は液晶層に隣接するように配置し、カラーフィルタは液晶セル基板と電極の間に配置する方式が一般的である。なお直線偏光を介した表示光の制御を目的とした偏光板は、液晶セルの視認側及び背面側の一方又は両方の適宜な位置に配置することができる。
【0132】
前記した低屈折率層は、図6の矢印βの如く、照明装置51を介した側面や角部の方向からの入射光を界面反射させて、照明装置より遠離る方向の後方に効率よく伝送し、後方にある光路変換斜面にも光が効率よく入射して、パネル表示面の全面での明るさの均一性の向上を目的とする。従って低屈折率層は、透明フィルムタイプの光学素子の場合に有利に適用することができる。低屈折率層は、その配置位置に応じてフッ素化合物等の無機物や有機物からなる適宜な低屈折率材料による透明層や接着層として形成することができる。
【0133】
低屈折率層の配置位置は、図6の例の如く照明装置51を配置した液晶セル基板20の内側、すなわち基板の光学素子付設側とは反対の面が液晶表示の明るさの向上の点より好ましい。また液晶セル基板よりも屈折率が0.01以上、就中0.02〜0.15、特に0.05〜0.10低い低屈折率層が液晶表示の明るさの向上の点より好ましい。
【0134】
液晶表示装置の形成に際しては必要に応じ、上記したノングレア層等のほかに光拡散層や位相差板などの適宜な光学層の1層又は2層以上を付加した液晶表示パネルとすることもできる。光拡散層は、表示光の拡散による表示範囲の拡大や発光の平準化による輝度の均一化、液晶セル内の伝送光の拡散による光学素子への入射光量の増大などを目的とする。なお前記の付加する光学層は、必要に応じ接着層等を介し光学素子と積層一体化して液晶セルに適用することもできる。
【0135】
光拡散層は、上記のノングレア層に準じた表面微細凹凸構造を有する塗工層や拡散シートなどによる適宜な方式にて設けることができる。光拡散層は、接着層に透明粒子を配合して接着層を兼ねる層として配置することもでき、これにより液晶表示装置の薄型化を図かることができる。光拡散層は、光学素子と視認側の液晶セル基板の間などの適宜な位置に、1層又は2層以上を配置することができる。
【0136】
また前記した位相差板は、光学補償による視野角の拡大や着色防止等を目的とし通例、図6の如く視認側又は/及び背面側の偏光板と液晶セル基板の間に配置される。補償用の位相差板には、波長域などに応じて適宜なものを用いることができ1層又は2層以上の位相差層の重畳層として形成されていてもよい。
【0137】
位相差板は、適宜な透明ポリマーからなるフィルムを一軸や二軸等の適宜な方式で延伸処理してなる複屈折性フィルム、ネマチック系やディスコティック系等の適宜な液晶ポリマーの配向フィルムやその配向層を透明基材で支持したものなどとして得ることができ、熱収縮性フィルムの加熱収縮力の作用下に厚さ方向の屈折率を制御したものなどであってもよい。
【0138】
なお上記した図6の反射型液晶表示装置において、外光・照明両用による視認は、照明装置51の点灯による照明モードにおいて図例の矢印αの如く、光学素子10の裏面より出射した光が、液晶セルを経由してその反射層31で反射された後、液晶セル内を逆経由して光学素子に至り、光出射手段A以外の部分より透過した表示光が視認される。
【0139】
一方、照明装置の消灯による外光モードにおいては、光学素子10の光出射手段形成面における光出射手段以外の部分より入射した光が反射層31を介し、前記に準じ液晶セル内を逆経由して光学素子に至り、光出射手段以外の部分より透過した表示光が視認される。
【0140】
他方、透過型液晶表示装置において外光・照明両用による視認は、照明装置の点灯による照明モードにおいて、背面側に配置した光学素子より出射した光が液晶セル内に入射し、偏光板等を透過した表示光が視認される。また照明装置の消灯による外光モードでは、視認側表面より入射した外光が液晶セルを透過して光学素子に至り、その光出射手段形成面の光出射手段以外の部分より入射した光が背面に設けた反射層を介し反転し、液晶セル内を逆経由して透過した表示光が視認される。なお半透過型液晶表示装置では、前記の反射型と透過型に準じて外光・照明両用による視認が行われる。
【0141】
本発明において、上記した液晶表示装置を形成する各部品は、全体的又は部分的に積層一体化されて固着されていてもよいし、分離容易な状態に配置されていてもよい。界面反射の抑制によるコントラストの低下防止などの点よりは、固着状態にあることが好ましい。また透明フィルムタイプの光学素子は、少なくとも偏光板ないし液晶セルと固着密着状態にあることが好ましい。前記の固着処理には、粘着剤等の適宜な透明接着剤を用いることができ、その透明接着層に透明粒子等を含有させて拡散機能を示す接着層などとすることもできる。
【0142】
また前記の形成部品、特に視認側のそれには、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などにより紫外線吸収能をもたせることもできる。
【0143】
【実施例】
参考例
屈折率1.52の無アルカリガラス板の上に酸化インジウム・スズ(ITO)透明導電層をスパッタリング方式にて形成し、その上にポリビニルアルコール溶液をスピンコートしてその乾燥膜をラビング処理し視認側と背面側の液晶セル基板を得た。なお視認側液晶セル基板では、ガラス板上にフッ化マグネシウムを蒸着して低屈折率層を形成しアルゴン雰囲気中でプラズマ処理を施した後、その上にITO透明導電層を形成した。
【0144】
ついで前記の視認側と背面側の液晶セル基板をそのラビング面をラビング方向が直交するように対向させて、球形のガラスビーズよりなるギャップ調節材を配した後、周囲をエポキシ樹脂でシールしたのち液晶を注入して液晶セルを形成した。
【0145】
実施例1
金属箔に長さ1500μm、幅200μm又は長さ2000μm、300μmの長方形の開口を設けた2種類の部分マスクを上下に配置し、前記開口の重畳で長さ1000μm、幅130μmのレーザー光透過部が形成されるようにした投影マスクを形成し、そのマスクを介し波長248nmのエキシマレーザー光をビーム幅1.5mmで照射し、投影マスクの透過光をレンズを介し1/15に縮小して、ガラス基板上にスピンコータで塗工形成した厚さ8μmのポリイミド膜に照射する方式において、レーザー光をエッチングレート0.26μm/パルスで照射しながら、レーザー光透過部を幅130μmの開状態から、前記2種の部分マスクを速度比30:3の異なる速度で幅方向に等速移動させて閉塞状態とし、ポリイミド膜を貫通した凹部を形成した。
【0146】
前記の凹部は、レーザー光透過部の閉塞方向に向かって深くエッチングされた横断面が台形のものであり、長さ約100μm、幅約13μm、深さ約8μmで、膜面に対する傾斜角が41度の光路変換斜面と78度の対向面を有するものであり、凹部の両端部が鋭角に掘り込まれると共に、光路変換斜面に加えて対向面もその面精度(平面性)に優れていた。なお図3に基づくd/hは、0.84である。
【0147】
ついで前記のエッチング加工を、ワークステージのXYZθの各軸を走査してポリイミド膜に対する位置を変えながら繰り返して、ポリイミド膜の片面に前記凹部の複数をランダムな分布状態で、かつ分布密度がフィルムの一辺より遠離るほど大きくなる状態で有する被照射膜(母型としての光学素子)を形成した。なお凹部の開口が膜表面で占有する面積は、1/10であった。
【0148】
次に、前記被照射膜の凹部付き面に電気鋳造法によりニッケルを充填して、厚さが約200μmの金属層を形成した後、被照射膜を剥離して所定の凸部形成面を有する金型を得た後、その凸部形成面に対し放射線硬化型のアクリル系樹脂を約100μmの厚さで塗布して金型の表面形状を写した成形層を形成した後、それに放射線を照射して成形層を硬化させ、形成された成形硬化層を金型より剥離して、光出射手段を有する光学素子を得た。
【0149】
前記の光学素子における光出射手段は、フィルム面に対する傾斜角が41度の光路変換斜面と78度の対向面を有する、長さ約100μm、幅約13μm、深さ約8μmで横断面台形の凹部の複数からなり、これは母型のポリイミド膜に設けた凹部からなる光出射手段と高精度に対応するものであった。従って凹部の両端部が鋭角に掘り込まれると共に、光路変換斜面に加えて対向面もその面精度に優れていた。
【0150】
前記の光学素子を光出射手段を有しない側を介してポリビニルアルコール系偏光板と、屈折率1.523のアクリル系粘着層にて接着した後、それを光出射手段を外側にして参考例で得た液晶セルの視認側に屈折率1.523のアクリル系粘着層を介して接着し、セルの背面側に反射層具備の偏光板を同様に接着して反射型液晶表示装置を得た。
【0151】
比較例
被照射膜として厚さ50μmのポリイミドフィルムを用いたほかは実施例1に準じて光学素子を形成し、それを用いて反射型液晶表示装置を得た。なお光学素子の光出射手段を形成する凹部は、長さ約100μm、幅約13μm、深さ約9.5μmで横断面形状が三角形であり、フィルム面に対する傾斜角が41度の光路変換斜面と78度の対向面を有するものであった。また凹部の両端部が鋭角に掘り込まれると共に、光路変換斜面と対向面の面精度に優れていたが、溝頂点部分の形状が不統一で若干変形するものであった。
【0152】
評価試験
実施例、比較例で得た反射型液晶表示装置の視認側液晶セル基板の側面に冷陰極管を配置し、銀蒸着のポリエステルフィルムで包囲してフィルム端部を液晶セル基板の上下面に両面粘着テープで接着し冷陰極管を保持固定したものについて、暗室にて液晶セルに電圧を印加しない状態で冷陰極管を点灯させて、入射側面より10mmと20mmの位置での最大輝度を示す方向の輝度(トプコン社製、BM7)とコントラストを調べた。
【0153】
前記の結果を次表に示した。
【0154】
表より実施例では、比較例に比べて明るさに優れており、特に光源から遠離る位置での輝度の維持に優れて面発光の均一性に優れていることが判る。また目視による液晶表示のコントラストの評価において、実施例では白黒表示の両方で明瞭であったが、比較例では散乱光の影響でコントラストが悪く、実用できる範囲を超えるものであった。また実施例では外光モードにおいても明るくてその均一性に優れる表示であった。この結果から、比較例の如く三角形の溝頂点部分の変形等が散乱の原因となり伝送光の輝度低下やコントラストの低下を引き起こすことが判る。
【0155】
以上より断面台形の凹部が輝度とコントラストの点で優れており、また光学素子を配置した液晶表示パネルの側面等に照明装置を設けるだけで面発光が可能であり、液晶表示の乱れや輝度ムラ等の表示ムラが少なくて明るくて見やすい表示品位の良好な外光・照明両用型等の液晶表示装置を形成できることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の断面図
【図2】製造方法の説明図
【図3】被照射膜の説明図
【図4】光学素子における光出射手段の説明図
【図5】光学素子における他の光出射手段の説明図
【図6】液晶表示装置の断面図
【符号の説明】
1:レーザー発振器
2、3:部分マスク(投影マスク)
2a、3a:開口部(レーザー光透過部)
4:光学機器(41:投影像)
5:被照射膜(光学素子)
10:光学素子
10A:透明基材
A:凹部(a:光路変換斜面、b:対向面)
20、30:液晶セル基板 40:液晶層 51:照明装置
Claims (17)
- 透明基材の片面に、その基材表面での開口が長方形であり、かつ横断面形状が台形である凹部の複数が不連続に分布してなる光出射手段を有してなり、前記透明基材が形成する平面に対する角度に基づいて、前記凹部の当該開口長方形に基づく一対の長辺面の一方が傾斜角35〜48度の光路変換斜面からなり、他方の対向面が角度40〜90度の面からなることを特徴とする光学素子。
- 請求項1において、透明基材がフィルム又は板からなり、凹部の深さと幅が2〜100μmで、長さが10〜500μm、かつ深さの5倍以上である光学素子。
- 請求項1又は2において、凹部がその光路変換斜面に基づいて平行又は1若しくは2以上の仮想中心に対してピット状に分布する光学素子。
- 請求項1〜3において、フィルムからなる透明基材の光出射手段を有しない側に偏光板又は透明板が積層されてなる光学素子。
- 投影マスクを介してレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を、投影像を作り出す光学機器を介しその大きさを制御して透明基材からなる被照射膜に照射しつつ、前記投影マスクの移動を介しレーザー光の照射量に変化をもたせて被照射膜をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、当該被照射膜を貫通する横断面形状が台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段を形成することを特徴とする請求項1〜3に記載の光学素子の製造方法。
- 請求項5に記載の製造方法による光学素子の光出射手段を形成した面の形態を転写した金型を得る工程、その金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態を透明基材に転写した後、それを金型より分離する工程を有することを特徴とする請求項1〜3に記載の光学素子の製造方法。
- 投影マスクを介してレーザー光を照射し、その投影マスクより透過したレーザー光を、投影像を作り出す光学機器を介しその大きさを制御してレーザーエッチングが可能な被照射膜に照射しつつ、前記投影マスクの移動を介しレーザー光の照射量に変化をもたせて被照射膜をレーザーエッチングにて部分的に除去することにより、当該被照射膜を貫通する横断面形状が台形の凹部を形成する操作を繰り返して光出射手段に対応する形態を形成する工程、その光出射手段に対応する形態を形成した面の形態を転写した金型を得る工程、及びその金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態を透明基材に転写した後、それを金型より分離する工程を有することを特徴とする請求項1〜3に記載の光学素子の製造方法。
- 請求項6又は7おいて、金型を、光学素子の光出射手段を形成した面上に電気鋳造により金属層を形成し、それを光学素子と分離して得る請求項1〜3に記載の光学素子の製造方法。
- 請求項6〜8において、金型における光出射手段を形成しうる凸部を有する面の形態の転写を、当該凸部を有する面に放射線硬化型樹脂を密着させてその光出射手段の形状を写した成形層を形成し、その成形層に放射線を照射して硬化させることにより行う請求項1〜3に記載の光学素子の製造方法。
- 請求項9において、成形層の上に透明基材を密着させた状態でその透明基材側より放射線を照射して成形層を硬化させる請求項1〜3に記載の光学素子の製造方法。
- 請求項5又は7〜10において、光路変換斜面と対向面を被照射膜の深さ方向に延長した場合の仮想線の交点と被照射膜表面との直線距離に基づく凹部の深さの0.6〜0.95倍の厚さを有する被照射膜をレーザーエッチングされない基板上に支持してレーザーエッチング処理に供する請求項1〜3に記載の光学素子の製造方法。
- 請求項5又は7〜11において、投影マスクが不必要な透過光を遮蔽してレーザー光を長方形に成形するレーザー光透過部を形成する少なくとも2枚の部分マスクからなり、それら部分マスクの内の当該長方形における一対の長辺の一方又は両方を形成する部分マスクを当該長方形の短辺と平行に、かつ当該レーザー光透過部がレーザー光を長方形に成形する状態から閉塞する方向に移動させて、形成される凹部の短辺方向におけるレーザー光透過量の積分値を連続的に変化させ、形成される凹部の深さ方向における単位面積当たりのエッチング量を連続的に変化させる請求項1〜3に記載の光学素子の製造方法。
- 請求項5又は7〜12において、高分子からなる被照射膜を波長が400nm以下の紫外線レーザー光にてエッチング処理する請求項1〜3に記載の光学素子の製造方法。
- 請求項6又は7〜13において、射出成形用の金型を得て射出成形方式により請求項1〜3に記載の光学素子を得る製造方法。
- 請求項1〜4に記載の光学素子又は請求項5〜14に記載の方法による光学素子を液晶表示パネルにおける液晶セルの少なくとも片側に配置してなることを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項15において、光学素子がその光出射手段を外側にして接着層を介し液晶表示パネルの視認側又は背面側の少なくとも一方に接着されてなる液晶表示装置。
- 請求項15又は16において、液晶表示パネルが透過型、又は反射層若しくは半透過型反射層を具備する外光・照明両用型のものである液晶表示装置。
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