JP2004184282A - 色素標識化合物およびこれを用いた糖化ヘモグロビンの測定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、糖尿病管理に有効なマーカーとなる糖化ヘモグロビン(HbA1c)の免疫的検出に有用な色素標識化合物、および当該色素標識化合物を用いたHbA1cの測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
HbA1cは血液中に存在するヘモグロビンの一種で、糖尿病管理のマーカーとして有用である。しかし、その構造は、他のヘモグロビン(大部分はHbA0)と非常に似ており、違いはアミノ酸β鎖のN末端にフルクトースが結合しているか否かという点だけである。HbA1cの測定にはこのわずかな違いを見分けることのできる技術が必要とされる。
【0003】
現在、HbA1c測定方法の主流はHPLC法であるが、操作の容易性および特異性の観点からみると、抗原抗体反応を利用した免疫的測定法のほうが有利である。従来、HbA1cを免疫的に測定する方法としては、抗HbA1c抗体とこれに結合する酵素標識二次抗体とを用いた酵素免疫測定法が主流であった。例えば特許文献1には、HbA1cの測定方法として、炭素数2〜6のアルデヒド化合物の存在下で行う酵素免疫測定法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−171016号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の酵素免疫測定法は、免疫的測定の特徴である特異性は発揮できるものの、その操作が煩雑で測定完了に3時間程度の長時間を要するという問題がある。そこで、本発明の目的は、操作が容易で測定時間の短い糖化ヘモグロビンの測定方法を実現すること、およびこれに用いる新規な色素標識化合物を提案することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明は、抗HbA1c抗体が結合するHbA1c上の特徴的部位の構造A、色素の構造B、および前記構造Aと前記構造Bとを結合する部位を有することを特徴とする色素標識化合物を提供する。
前記色素標識化合物は、化学式(1):
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、Xは蛍光を発する色素の構造B、nおよびmはそれぞれ独立して1〜5の整数)で表されるのが好ましい。
【0009】
前記構造Bが発する蛍光の波長が400〜800nmであるのが好ましい。
また、前記構造Bがシアニン系色素またはメロシアニン系色素の構造を有するのが好ましい。
また、前記構造Aがフルクトース−バリン−ヒスチジンの構造を有するのが好ましい。
【0010】
前記色素標識化合物は、化学式(2):
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、nは1、3、5または7、mは1〜5の整数、xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)で表されるのが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記色素標識化合物および抗糖化ヘモグロビン抗体を含む緩衝溶液の蛍光強度と、前記緩衝溶液に検体試料を添加した後の蛍光強度との強度変化を測定することを特徴とする検体試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法を提供する。
この場合も、前記蛍光強度が400〜800nmの波長の蛍光の強度であるのが有効である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、上述のような課題を解決するために、抗HbA1c抗体が結合するHbA1c上の特徴的部位の構造A、色素の構造B、および前記構造Aと前記構造Bとを結合する部位を有することを特徴とする色素標識化合物を提供する。
本発明に係る色素標識化合物を用いて、血液中または尿中のHbA1cを測定する場合、血液または尿は水溶液であるので、水溶性に富むペプチド結合を有する部位(スペーサー)を用いると、色素標識化合物の水溶性が向上するので好ましい。
また、本発明の色素標識化合物は、化学式(1):
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、xは蛍光を発する色素の構造B、nおよびmはそれぞれ独立して1〜5の整数)で表されるフルクトシルアミノ酸色素標識化合物であるのが好ましい。
ここで、xは、光励起によって蛍光を発する色素の構造B(化合物)であり、例えば、シアニン系、メロシアニン系、フルオレセイン系、またはダンシル系などの色素化合物が挙げられる。なかでも、シアニン系およびメロシアニン系の色素化合物は、不純物の影響を受け難い長波長領域の蛍光を発することや、比較的水溶性が良好であることなどから好ましい。
【0017】
また、nおよびmは、それぞれ独立して1〜5の整数である。抗体が結合する際の立体障害、化合物の水溶性、および化合物合成時の効率などの観点から、nは3であるのが好ましく、mは2であるのが好ましい。
本発明に係るフルクトシルアミノ酸色素標識化合物は、色素骨格よりのびる原子鎖の末端に、HbA1cの特徴的部位であり、かつ抗HbA1c抗体が結合する部位と同様の構造A(フルクトース−バリン−ヒスチジン)を有している。したがって、このフルクトシルアミノ酸色素標識化合物は抗HbA1c抗体に結合する擬似抗原となる。
【0018】
さらに、本発明に係る色素標識化合物は、化学式(2):
【0019】
【化5】
【0020】
で表されるのが好ましい。
本発明に係る色素標識化合物を示す化学式(2)において、mは、ある程度の水溶性を保持しておくという理由から、1〜5の整数であればよい。なかでも、水溶性に加えて合成の容易性という理由から、mは3であるのが好ましい。
また、nは、骨格に蛍光を発する機能を付与するという理由から、1、3、5または7であればよい。なかでも、実際の測定時に、不純物の影響を受けにくく、長波長の蛍光を発するという理由から、nは5であるのが好ましい。
【0021】
また、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子のいずれか1種のハロゲン原子であればよいが、化合物の安定性を考慮し、臭素原子であるのが好ましい。
なお、上記化学式(1)および(2)で表される色素標識化合物の合成方法については、以下の実施例において具体的に説明する。
【0022】
つぎに、本発明は、上記色素標識化合物を用いて検体試料に含まれるHbA1cを測定する方法にも関する。具体的には、上記化学式(1)または(2)で表される色素標識化合物および抗HbA1c抗体を含む緩衝溶液の蛍光強度(第一の蛍光強度)を測定し、ついで前記緩衝溶液にHbA1cを含む検体試料を添加した後の蛍光強度(第二の蛍光強度)を測定する。そして、第一の蛍光強度から第二の蛍光強度への強度変化を測定して、前記検体試料中のHbA1cを測定する。
【0023】
本発明に係る化学式(1)および(2)で表される色素標識化合物は、インドレニン環内の窒素原子よりのびる原子鎖の末端に、HbA1cの特徴的部位でありかつ抗HbA1c抗体が結合する部位と同様の構造A(フルクトース−バリン−ヒスチジン)を有する。したがって、この色素標識化合物は抗HbA1c抗体に結合する擬似抗原となる。
【0024】
したがって、本発明のHbA1cの測定方法は、色素標識化合物が抗HbA1c抗体と結合したときに、結合していない場合に比べて色素の放つ蛍光強度が強くなる現象を利用するものである。
まず、抗HbA1c抗体と上記色素標識化合物とをあらかじめ混合した緩衝溶液を調製しておく。こうすると抗体と色素標識化合物とは結合する。この緩衝溶液に適当な波長の励起光を照射して蛍光強度(第一の蛍光強度)を測定する。
【0025】
次に、前記緩衝溶液に、本当の抗原であるHbA1cを含む検体試料を加える。そうすると結合力の高いHbA1cが、色素標識化合物にとってかわって前記抗体と結合する。この状態で上記と同様にして蛍光強度(第二の蛍光強度)を測定する。抗体との結合がなくなった色素標識化合物は、蛍光の増強効果がなくなるため、全体として蛍光強度は下がる。この強度の変化を測定することで、前記検体試料中のHbA1cの量を測定することができる。
【0026】
【実施例】
以下、具体的に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の実施例1においては、化学式(1)で表され、m=2、n=3、Xがメロシアニン系色素化合物である色素標識化合物を合成した。また、実施例3においては、化学式(2)で表され、m=3、n=5、Xが臭素原子のペンタメチンシアニン系色素標識化合物を合成した。
【0027】
《実施例1:色素標識化合物の合成》
本実施例においては、図1の(g)に示すシアニン系色素標識化合物の合成を行った。図1は、かかるシアニン系色素標識化合物の合成経路を示す図である。まず、10gの図1の(a)に示すトリメチルインドレニン(分子量159.2、0.063モル)と16.8gのブロモプロピルフタルイミド(分子量268.1、0.063モル)とを、ベンゼン20ml中に混合し、得られた混合液を窒素気流下、120℃で3時間加熱した。ベンゼンは反応中に蒸発した。反応生成物を冷却し、ジエチルエーテルで繰り返し洗浄することにより、図1の(b)で示される淡赤色の粉末(化合物b)を得た。収量は26.5g(99%)であった。
【0028】
次に、26gの化合物b(分子量427.3、0.061モル)と9.1gのN,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド(分子量149.2、0.061モル)とを、100mlの乾燥ピリジンに溶解し、得られた混合溶液を30分間還流した。得られた反応液が赤く呈色したのを確認した後、室温にもどし、当該反応液を2Lのジエチルエーテル中に滴下し、生じた固体を濾別し、図1の(c)で示される化合物c(27.3g、0.049モル)を得た。
【0029】
さらに、27gの化合物c(分子量558.5、0.049モル)を、100mlの90%エタノールに溶解し、これに4.91gのヒドラジン一水和物(分子量50.1、0.098モル)を加えて、得られた混合溶液を2時間還流した。得られた反応液を室温まで冷却した後、約50mlの1N塩酸を加えてクロロホルムで3回洗浄した。水層に水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性とした後、クロロホルムで3回抽出した。クロロホルム層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、クロロホルムを減圧下で溜去して図1の(d)で示される化合物d(21.0g、0.049モル)を得た。
【0030】
ついで、21gの化合物d(分子量428.4、0.049モル)を100mlのエタノールに溶解し、得られた混合溶液を室温で攪拌しながら、10mlのエタノールに溶解した23.1gのスクシンイミジルピリジルジチオプロピオネート(SPDP)(分子量312.4、0.074モル)を滴下した。室温で3時間攪拌した後、得られた反応液を約1Lのジエチルエーテル中に滴下し、生じた固体を濾別した。得られた固体の洗浄を繰り返すことにより、図1の(e)に示される化合物e(29.1g、0.047モル)を得た。
【0031】
29gの化合物e(分子量625.7、0.046モル)を100mlのエタノールに溶解し、得られた混合溶液を室温で攪拌しながら、10mlのエタノールに溶解した28.6gの化合物f(分子量519.6、0.055モル)を滴下した。室温で3時間攪拌した後、得られた反応液を濃縮し、中圧液体クロマトグラフィー(NH2タイプ、展開溶媒:メタノール/アセトニトリル=1/5)で精製し、42.4gの図1の(g)に示す本発明に係る色素標識化合物g(分子量1034.1、0.041モル)を得た。得られた化合物gの1H−NMR(溶媒DMSO−d6、400MHz)のケミカルシフトを図2に示した。図2の(a)に化合物gの各部位を示し、図2の(b)に結果を示した。
【0032】
《実施例2:色素標識化合物の蛍光強度変化の測定》
実施例1で合成した本発明に係る色素標識化合物(化合物g)(3×10−7M)と抗HbA1c抗体(5×10−7M)とを、リン酸緩衝溶液(PBS溶液)に混合して混合緩衝溶液を調製し、この溶液を1.7ml取り、25℃で1分間攪拌した後、励起波長560nmで590nmの蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度(第一の蛍光強度)は138.45であった。
【0033】
次に、この溶液に最終濃度10−4.5MのHbA1cを含むPBS溶液(検体試料)を加え、励起波長560nmで590nmの蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度(第二の蛍光強度)は80.30であった。
蛍光強度の変化率を、以上の第一の蛍光強度および第二の蛍光強度から、式:{1−(第二の蛍光強度/第一の蛍光強度)}×100にしたがって求めたところ、(1−80.30/138.45)×100=42.0(%)であった。
【0034】
HbA1cの最終濃度が10−5.2M、10−6.2M、10−6.9M、10−7.3M、10−8Mの検体試料についても、それぞれ上記と同様の方法で蛍光強度を測定し、変化率を計算した。変化率はそれぞれ37.9%(10−5.2M)、26.3%(10−6.2M)、14.5%(10−6.9M)、6.5%(10−7.3M)、1.9%(10−8M)であった。結果を図3に示す。図3において、縦軸は蛍光強度変化率(%)で、横軸はHbA1c濃度の対数である。
【0035】
これにより、本発明に係る色素標識化合物を用いれば、検体試料のHbA1c濃度(最終濃度)に応じた蛍光強度の変化率が得られる。したがって、あらかじめHbA1c濃度(最終濃度)と蛍光強度の変化率との関係を求めて、例えば検量線を作成しておけば、蛍光強度の変化率を測定することによって、検体試料のHbA1c濃度を求めることができる。すなわち、本発明によれば、操作の容易性に加え、迅速性をも発揮できる効果がある。これにより、より簡単、迅速にHbA1cを測定することが可能となる。
【0036】
《実施例3:シアニン系色素標識化合物の合成》
本実施例においては、図4の(g)に示す色素標識化合物の合成を行った。図4は、かかるシアニン系色素標識化合物の合成経路を示す図である。
まず、10gの図4の(a)に示すトリメチルインドレニン(分子量159.2、0.063モル)と16.8gのブロモプロピルフタルイミド(分子量268.1、0.063モル)とを、ベンゼン20ml中に混合し、得られた混合液を窒素気流下、120℃で3時間加熱した。ベンゼンは反応中に蒸発した。反応生成物を冷却し、ジエチルエーテルで繰り返し洗浄し、図4の(b)で示される淡赤色の粉末(化合物b)を得た。収量は26.5g(99%)であった。
【0037】
次に、26gの化合物b(分子量427.3、0.061モル)と10gのテトラメトキシプロパン(分子量164.2、0.061モル)とを、100mlの乾燥ピリジンに溶解し、得られた混合溶液を30分間還流した。得られた反応液が青く呈色したのを確認した後、室温にもどし、当該反応液を2リットルのジエチルエーテル中に滴下し、生じた固体を濾別し、図4の(c)で示される化合物c(45.6g)を得た。
【0038】
さらに、40gの化合物c(分子量809.8、0.049モル)を、100mlの90%エタノールに溶解し、これに4.91gのヒドラジン一水和物(分子量50.1、0.098モル)を加えて、得られた混合溶液を2時間還流した。得られた反応液を室温まで冷却した後、約50mlの1N塩酸を加えてクロロホルムで3回洗浄した。水層に水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性とした後、クロロホルムで3回抽出した。クロロホルム層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、クロロホルムを減圧下で溜去して図4の(d)で示される化合物d(24.7g)を得た。
【0039】
ついで、20gの化合物d(分子量549.6、0.036モル)を100mlのエタノールに溶解し、得られた混合溶液を室温で攪拌しながら、10mlのエタノールに溶解した28.4gのスクシンイミジルピリジルジチオプロピオネート(SPDP)(分子量312.4、0.091mol)を滴下した。室温で3時間攪拌した後、得られた反応液を約1リットルのジエチルエーテル中に滴下し、生じた固体をろ別した。得られた固体の洗浄を繰り返すことにより、図4の(e)に示される化合物e(28.3g)を得た。
【0040】
20gの化合物e(分子量944.2、0.021モル)を100mlのエタノールに溶解し、得られた混合溶液を室温で攪拌しながら、10mlのエタノールに溶解した22.4gの化合物f(分子量533.6、0.042モル)を滴下した。室温で3時間攪拌した後、得られた反応液を濃縮し、中圧液体クロマトグラフィー(NH2タイプ、展開溶媒:メタノール/アセトニトリル=1/5)で精製し、図4の(g)に示す本発明に係る色素標識化合物g(17.6g、分子量1761.0)を得た。得られた化合物gの1H−NMRのケミカルシフトを図5に示した。図5の(a)に化合物gの各部位を示し、図5の(b)に結果を示した。
【0041】
《実施例4:色素標識化合物の蛍光強度変化の測定》
実施例3で合成した本発明に係る色素標識化合物(化合物g)(3×10−7M)と抗HbA1c抗体(5×10−7M)とをリン酸緩衝溶液(PBS溶液)に混合して混合緩衝溶液を調製し、この溶液を1.74ml取り、25℃で1分間攪拌した後、励起波長600nmで660nmの蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度(第一の蛍光強度)は58.01であった。
【0042】
次に、この溶液に最終濃度10−4.5MのHbA1cを含むPBS溶液(検体試料)を加え、励起波長600nmで660nmの蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度(第二の蛍光強度)は38.52であった。
蛍光強度の変化率を、以上の第一の蛍光強度および第二の蛍光強度から、式:{1−(第二の蛍光強度/第一の蛍光強度)}×100にしたがって求めたところ、(1−38.52/58.01)×100=33.6(%)であった。
【0043】
HbA1cの最終濃度が10−5.2M、10−6.2M、10−6.9M、10−7.3M、10−8Mの検体試料についても、それぞれ上記と同様の方法で蛍光強度を測定し、変化率を計算した。変化率はそれぞれ31.2%(10−5.2M)、23.5%(10−6.2M)、11.0%(10−6.9M)、5.3%(10−7.3M)、3.0%(10−8M)であった。
【0044】
これにより、本発明に係る色素標識化合物を用いれば、検体試料のHbA1c濃度(最終濃度)に応じた蛍光強度の変化率が得られる。したがって、あらかじめHbA1c濃度(最終濃度)と蛍光強度の変化率との関係を求めて、例えば検量線を作成しておけば、蛍光強度の変化率を測定することによって、検体試料のHbA1c濃度を求めることができる。すなわち、本発明によれば、操作の容易性に加え、迅速性をも発揮できる効果がある。これにより、より簡単、迅速にHbA1cを測定することが可能となる。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る色素標識化合物は、抗HbA1c抗体が結合するHbA1c上の特徴的部位(エピトープ)の構造を有する化合物であるため、抗HbA1c抗体と比較的弱く結合することができ、HbA1c測定の際の有用な擬似抗原となる。また、本発明に係るHbA1cの測定方法を用いれば、免疫的測定の特徴である特異性を活かしつつ、操作の容易性に加え、迅速性をも発揮できる効果がある。これにより、簡単かつ迅速にHbA1cを測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る色素標識化合物の合成経路を示す図である。
【図2】本発明に係る色素標識化合物の1H−NMRケミカルシフトを表す図である。
【図3】本発明の実施例2における蛍光強度変化率(%)とHbA1c濃度の対数との関係を示すグラフである。
【図4】本発明に係る別の色素標識化合物の合成経路を示す図である。
【図5】本発明に係る別の色素標識化合物の1H−NMRケミカルシフトを表す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、糖尿病管理に有効なマーカーとなる糖化ヘモグロビン(HbA1c)の免疫的検出に有用な色素標識化合物、および当該色素標識化合物を用いたHbA1cの測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
HbA1cは血液中に存在するヘモグロビンの一種で、糖尿病管理のマーカーとして有用である。しかし、その構造は、他のヘモグロビン(大部分はHbA0)と非常に似ており、違いはアミノ酸β鎖のN末端にフルクトースが結合しているか否かという点だけである。HbA1cの測定にはこのわずかな違いを見分けることのできる技術が必要とされる。
【0003】
現在、HbA1c測定方法の主流はHPLC法であるが、操作の容易性および特異性の観点からみると、抗原抗体反応を利用した免疫的測定法のほうが有利である。従来、HbA1cを免疫的に測定する方法としては、抗HbA1c抗体とこれに結合する酵素標識二次抗体とを用いた酵素免疫測定法が主流であった。例えば特許文献1には、HbA1cの測定方法として、炭素数2〜6のアルデヒド化合物の存在下で行う酵素免疫測定法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−171016号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の酵素免疫測定法は、免疫的測定の特徴である特異性は発揮できるものの、その操作が煩雑で測定完了に3時間程度の長時間を要するという問題がある。そこで、本発明の目的は、操作が容易で測定時間の短い糖化ヘモグロビンの測定方法を実現すること、およびこれに用いる新規な色素標識化合物を提案することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明は、抗HbA1c抗体が結合するHbA1c上の特徴的部位の構造A、色素の構造B、および前記構造Aと前記構造Bとを結合する部位を有することを特徴とする色素標識化合物を提供する。
前記色素標識化合物は、化学式(1):
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、Xは蛍光を発する色素の構造B、nおよびmはそれぞれ独立して1〜5の整数)で表されるのが好ましい。
【0009】
前記構造Bが発する蛍光の波長が400〜800nmであるのが好ましい。
また、前記構造Bがシアニン系色素またはメロシアニン系色素の構造を有するのが好ましい。
また、前記構造Aがフルクトース−バリン−ヒスチジンの構造を有するのが好ましい。
【0010】
前記色素標識化合物は、化学式(2):
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、nは1、3、5または7、mは1〜5の整数、xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)で表されるのが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記色素標識化合物および抗糖化ヘモグロビン抗体を含む緩衝溶液の蛍光強度と、前記緩衝溶液に検体試料を添加した後の蛍光強度との強度変化を測定することを特徴とする検体試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法を提供する。
この場合も、前記蛍光強度が400〜800nmの波長の蛍光の強度であるのが有効である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、上述のような課題を解決するために、抗HbA1c抗体が結合するHbA1c上の特徴的部位の構造A、色素の構造B、および前記構造Aと前記構造Bとを結合する部位を有することを特徴とする色素標識化合物を提供する。
本発明に係る色素標識化合物を用いて、血液中または尿中のHbA1cを測定する場合、血液または尿は水溶液であるので、水溶性に富むペプチド結合を有する部位(スペーサー)を用いると、色素標識化合物の水溶性が向上するので好ましい。
また、本発明の色素標識化合物は、化学式(1):
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、xは蛍光を発する色素の構造B、nおよびmはそれぞれ独立して1〜5の整数)で表されるフルクトシルアミノ酸色素標識化合物であるのが好ましい。
ここで、xは、光励起によって蛍光を発する色素の構造B(化合物)であり、例えば、シアニン系、メロシアニン系、フルオレセイン系、またはダンシル系などの色素化合物が挙げられる。なかでも、シアニン系およびメロシアニン系の色素化合物は、不純物の影響を受け難い長波長領域の蛍光を発することや、比較的水溶性が良好であることなどから好ましい。
【0017】
また、nおよびmは、それぞれ独立して1〜5の整数である。抗体が結合する際の立体障害、化合物の水溶性、および化合物合成時の効率などの観点から、nは3であるのが好ましく、mは2であるのが好ましい。
本発明に係るフルクトシルアミノ酸色素標識化合物は、色素骨格よりのびる原子鎖の末端に、HbA1cの特徴的部位であり、かつ抗HbA1c抗体が結合する部位と同様の構造A(フルクトース−バリン−ヒスチジン)を有している。したがって、このフルクトシルアミノ酸色素標識化合物は抗HbA1c抗体に結合する擬似抗原となる。
【0018】
さらに、本発明に係る色素標識化合物は、化学式(2):
【0019】
【化5】
【0020】
で表されるのが好ましい。
本発明に係る色素標識化合物を示す化学式(2)において、mは、ある程度の水溶性を保持しておくという理由から、1〜5の整数であればよい。なかでも、水溶性に加えて合成の容易性という理由から、mは3であるのが好ましい。
また、nは、骨格に蛍光を発する機能を付与するという理由から、1、3、5または7であればよい。なかでも、実際の測定時に、不純物の影響を受けにくく、長波長の蛍光を発するという理由から、nは5であるのが好ましい。
【0021】
また、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子のいずれか1種のハロゲン原子であればよいが、化合物の安定性を考慮し、臭素原子であるのが好ましい。
なお、上記化学式(1)および(2)で表される色素標識化合物の合成方法については、以下の実施例において具体的に説明する。
【0022】
つぎに、本発明は、上記色素標識化合物を用いて検体試料に含まれるHbA1cを測定する方法にも関する。具体的には、上記化学式(1)または(2)で表される色素標識化合物および抗HbA1c抗体を含む緩衝溶液の蛍光強度(第一の蛍光強度)を測定し、ついで前記緩衝溶液にHbA1cを含む検体試料を添加した後の蛍光強度(第二の蛍光強度)を測定する。そして、第一の蛍光強度から第二の蛍光強度への強度変化を測定して、前記検体試料中のHbA1cを測定する。
【0023】
本発明に係る化学式(1)および(2)で表される色素標識化合物は、インドレニン環内の窒素原子よりのびる原子鎖の末端に、HbA1cの特徴的部位でありかつ抗HbA1c抗体が結合する部位と同様の構造A(フルクトース−バリン−ヒスチジン)を有する。したがって、この色素標識化合物は抗HbA1c抗体に結合する擬似抗原となる。
【0024】
したがって、本発明のHbA1cの測定方法は、色素標識化合物が抗HbA1c抗体と結合したときに、結合していない場合に比べて色素の放つ蛍光強度が強くなる現象を利用するものである。
まず、抗HbA1c抗体と上記色素標識化合物とをあらかじめ混合した緩衝溶液を調製しておく。こうすると抗体と色素標識化合物とは結合する。この緩衝溶液に適当な波長の励起光を照射して蛍光強度(第一の蛍光強度)を測定する。
【0025】
次に、前記緩衝溶液に、本当の抗原であるHbA1cを含む検体試料を加える。そうすると結合力の高いHbA1cが、色素標識化合物にとってかわって前記抗体と結合する。この状態で上記と同様にして蛍光強度(第二の蛍光強度)を測定する。抗体との結合がなくなった色素標識化合物は、蛍光の増強効果がなくなるため、全体として蛍光強度は下がる。この強度の変化を測定することで、前記検体試料中のHbA1cの量を測定することができる。
【0026】
【実施例】
以下、具体的に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の実施例1においては、化学式(1)で表され、m=2、n=3、Xがメロシアニン系色素化合物である色素標識化合物を合成した。また、実施例3においては、化学式(2)で表され、m=3、n=5、Xが臭素原子のペンタメチンシアニン系色素標識化合物を合成した。
【0027】
《実施例1:色素標識化合物の合成》
本実施例においては、図1の(g)に示すシアニン系色素標識化合物の合成を行った。図1は、かかるシアニン系色素標識化合物の合成経路を示す図である。まず、10gの図1の(a)に示すトリメチルインドレニン(分子量159.2、0.063モル)と16.8gのブロモプロピルフタルイミド(分子量268.1、0.063モル)とを、ベンゼン20ml中に混合し、得られた混合液を窒素気流下、120℃で3時間加熱した。ベンゼンは反応中に蒸発した。反応生成物を冷却し、ジエチルエーテルで繰り返し洗浄することにより、図1の(b)で示される淡赤色の粉末(化合物b)を得た。収量は26.5g(99%)であった。
【0028】
次に、26gの化合物b(分子量427.3、0.061モル)と9.1gのN,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド(分子量149.2、0.061モル)とを、100mlの乾燥ピリジンに溶解し、得られた混合溶液を30分間還流した。得られた反応液が赤く呈色したのを確認した後、室温にもどし、当該反応液を2Lのジエチルエーテル中に滴下し、生じた固体を濾別し、図1の(c)で示される化合物c(27.3g、0.049モル)を得た。
【0029】
さらに、27gの化合物c(分子量558.5、0.049モル)を、100mlの90%エタノールに溶解し、これに4.91gのヒドラジン一水和物(分子量50.1、0.098モル)を加えて、得られた混合溶液を2時間還流した。得られた反応液を室温まで冷却した後、約50mlの1N塩酸を加えてクロロホルムで3回洗浄した。水層に水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性とした後、クロロホルムで3回抽出した。クロロホルム層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、クロロホルムを減圧下で溜去して図1の(d)で示される化合物d(21.0g、0.049モル)を得た。
【0030】
ついで、21gの化合物d(分子量428.4、0.049モル)を100mlのエタノールに溶解し、得られた混合溶液を室温で攪拌しながら、10mlのエタノールに溶解した23.1gのスクシンイミジルピリジルジチオプロピオネート(SPDP)(分子量312.4、0.074モル)を滴下した。室温で3時間攪拌した後、得られた反応液を約1Lのジエチルエーテル中に滴下し、生じた固体を濾別した。得られた固体の洗浄を繰り返すことにより、図1の(e)に示される化合物e(29.1g、0.047モル)を得た。
【0031】
29gの化合物e(分子量625.7、0.046モル)を100mlのエタノールに溶解し、得られた混合溶液を室温で攪拌しながら、10mlのエタノールに溶解した28.6gの化合物f(分子量519.6、0.055モル)を滴下した。室温で3時間攪拌した後、得られた反応液を濃縮し、中圧液体クロマトグラフィー(NH2タイプ、展開溶媒:メタノール/アセトニトリル=1/5)で精製し、42.4gの図1の(g)に示す本発明に係る色素標識化合物g(分子量1034.1、0.041モル)を得た。得られた化合物gの1H−NMR(溶媒DMSO−d6、400MHz)のケミカルシフトを図2に示した。図2の(a)に化合物gの各部位を示し、図2の(b)に結果を示した。
【0032】
《実施例2:色素標識化合物の蛍光強度変化の測定》
実施例1で合成した本発明に係る色素標識化合物(化合物g)(3×10−7M)と抗HbA1c抗体(5×10−7M)とを、リン酸緩衝溶液(PBS溶液)に混合して混合緩衝溶液を調製し、この溶液を1.7ml取り、25℃で1分間攪拌した後、励起波長560nmで590nmの蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度(第一の蛍光強度)は138.45であった。
【0033】
次に、この溶液に最終濃度10−4.5MのHbA1cを含むPBS溶液(検体試料)を加え、励起波長560nmで590nmの蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度(第二の蛍光強度)は80.30であった。
蛍光強度の変化率を、以上の第一の蛍光強度および第二の蛍光強度から、式:{1−(第二の蛍光強度/第一の蛍光強度)}×100にしたがって求めたところ、(1−80.30/138.45)×100=42.0(%)であった。
【0034】
HbA1cの最終濃度が10−5.2M、10−6.2M、10−6.9M、10−7.3M、10−8Mの検体試料についても、それぞれ上記と同様の方法で蛍光強度を測定し、変化率を計算した。変化率はそれぞれ37.9%(10−5.2M)、26.3%(10−6.2M)、14.5%(10−6.9M)、6.5%(10−7.3M)、1.9%(10−8M)であった。結果を図3に示す。図3において、縦軸は蛍光強度変化率(%)で、横軸はHbA1c濃度の対数である。
【0035】
これにより、本発明に係る色素標識化合物を用いれば、検体試料のHbA1c濃度(最終濃度)に応じた蛍光強度の変化率が得られる。したがって、あらかじめHbA1c濃度(最終濃度)と蛍光強度の変化率との関係を求めて、例えば検量線を作成しておけば、蛍光強度の変化率を測定することによって、検体試料のHbA1c濃度を求めることができる。すなわち、本発明によれば、操作の容易性に加え、迅速性をも発揮できる効果がある。これにより、より簡単、迅速にHbA1cを測定することが可能となる。
【0036】
《実施例3:シアニン系色素標識化合物の合成》
本実施例においては、図4の(g)に示す色素標識化合物の合成を行った。図4は、かかるシアニン系色素標識化合物の合成経路を示す図である。
まず、10gの図4の(a)に示すトリメチルインドレニン(分子量159.2、0.063モル)と16.8gのブロモプロピルフタルイミド(分子量268.1、0.063モル)とを、ベンゼン20ml中に混合し、得られた混合液を窒素気流下、120℃で3時間加熱した。ベンゼンは反応中に蒸発した。反応生成物を冷却し、ジエチルエーテルで繰り返し洗浄し、図4の(b)で示される淡赤色の粉末(化合物b)を得た。収量は26.5g(99%)であった。
【0037】
次に、26gの化合物b(分子量427.3、0.061モル)と10gのテトラメトキシプロパン(分子量164.2、0.061モル)とを、100mlの乾燥ピリジンに溶解し、得られた混合溶液を30分間還流した。得られた反応液が青く呈色したのを確認した後、室温にもどし、当該反応液を2リットルのジエチルエーテル中に滴下し、生じた固体を濾別し、図4の(c)で示される化合物c(45.6g)を得た。
【0038】
さらに、40gの化合物c(分子量809.8、0.049モル)を、100mlの90%エタノールに溶解し、これに4.91gのヒドラジン一水和物(分子量50.1、0.098モル)を加えて、得られた混合溶液を2時間還流した。得られた反応液を室温まで冷却した後、約50mlの1N塩酸を加えてクロロホルムで3回洗浄した。水層に水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性とした後、クロロホルムで3回抽出した。クロロホルム層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、クロロホルムを減圧下で溜去して図4の(d)で示される化合物d(24.7g)を得た。
【0039】
ついで、20gの化合物d(分子量549.6、0.036モル)を100mlのエタノールに溶解し、得られた混合溶液を室温で攪拌しながら、10mlのエタノールに溶解した28.4gのスクシンイミジルピリジルジチオプロピオネート(SPDP)(分子量312.4、0.091mol)を滴下した。室温で3時間攪拌した後、得られた反応液を約1リットルのジエチルエーテル中に滴下し、生じた固体をろ別した。得られた固体の洗浄を繰り返すことにより、図4の(e)に示される化合物e(28.3g)を得た。
【0040】
20gの化合物e(分子量944.2、0.021モル)を100mlのエタノールに溶解し、得られた混合溶液を室温で攪拌しながら、10mlのエタノールに溶解した22.4gの化合物f(分子量533.6、0.042モル)を滴下した。室温で3時間攪拌した後、得られた反応液を濃縮し、中圧液体クロマトグラフィー(NH2タイプ、展開溶媒:メタノール/アセトニトリル=1/5)で精製し、図4の(g)に示す本発明に係る色素標識化合物g(17.6g、分子量1761.0)を得た。得られた化合物gの1H−NMRのケミカルシフトを図5に示した。図5の(a)に化合物gの各部位を示し、図5の(b)に結果を示した。
【0041】
《実施例4:色素標識化合物の蛍光強度変化の測定》
実施例3で合成した本発明に係る色素標識化合物(化合物g)(3×10−7M)と抗HbA1c抗体(5×10−7M)とをリン酸緩衝溶液(PBS溶液)に混合して混合緩衝溶液を調製し、この溶液を1.74ml取り、25℃で1分間攪拌した後、励起波長600nmで660nmの蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度(第一の蛍光強度)は58.01であった。
【0042】
次に、この溶液に最終濃度10−4.5MのHbA1cを含むPBS溶液(検体試料)を加え、励起波長600nmで660nmの蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度(第二の蛍光強度)は38.52であった。
蛍光強度の変化率を、以上の第一の蛍光強度および第二の蛍光強度から、式:{1−(第二の蛍光強度/第一の蛍光強度)}×100にしたがって求めたところ、(1−38.52/58.01)×100=33.6(%)であった。
【0043】
HbA1cの最終濃度が10−5.2M、10−6.2M、10−6.9M、10−7.3M、10−8Mの検体試料についても、それぞれ上記と同様の方法で蛍光強度を測定し、変化率を計算した。変化率はそれぞれ31.2%(10−5.2M)、23.5%(10−6.2M)、11.0%(10−6.9M)、5.3%(10−7.3M)、3.0%(10−8M)であった。
【0044】
これにより、本発明に係る色素標識化合物を用いれば、検体試料のHbA1c濃度(最終濃度)に応じた蛍光強度の変化率が得られる。したがって、あらかじめHbA1c濃度(最終濃度)と蛍光強度の変化率との関係を求めて、例えば検量線を作成しておけば、蛍光強度の変化率を測定することによって、検体試料のHbA1c濃度を求めることができる。すなわち、本発明によれば、操作の容易性に加え、迅速性をも発揮できる効果がある。これにより、より簡単、迅速にHbA1cを測定することが可能となる。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る色素標識化合物は、抗HbA1c抗体が結合するHbA1c上の特徴的部位(エピトープ)の構造を有する化合物であるため、抗HbA1c抗体と比較的弱く結合することができ、HbA1c測定の際の有用な擬似抗原となる。また、本発明に係るHbA1cの測定方法を用いれば、免疫的測定の特徴である特異性を活かしつつ、操作の容易性に加え、迅速性をも発揮できる効果がある。これにより、簡単かつ迅速にHbA1cを測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る色素標識化合物の合成経路を示す図である。
【図2】本発明に係る色素標識化合物の1H−NMRケミカルシフトを表す図である。
【図3】本発明の実施例2における蛍光強度変化率(%)とHbA1c濃度の対数との関係を示すグラフである。
【図4】本発明に係る別の色素標識化合物の合成経路を示す図である。
【図5】本発明に係る別の色素標識化合物の1H−NMRケミカルシフトを表す図である。
Claims (7)
- 抗HbA1c抗体が結合するHbA1c上の特徴的部位の構造A、色素の構造B、および前記構造Aと前記構造Bとを結合する部位を有することを特徴とする色素標識化合物。
- 前記構造Bが発する蛍光の波長が400〜800nmであることを特徴とする請求項1または2記載の色素標識化合物。
- 前記構造Bがシアニン系色素またはメロシアニン系色素の構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の色素標識化合物。
- 前記構造Aがフルクトース−バリン−ヒスチジンの構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の色素標識化合物。
- 抗HbA1c抗体が結合するHbA1c上の特徴的部位の構造A、色素の構造B、および前記構造Aと前記構造Bとを結合する部位を有することを特徴とする色素標識化合物、および抗糖化ヘモグロビン抗体を含む緩衝溶液の蛍光強度と、前記緩衝溶液に糖化ヘモグロビンを含む検体試料を添加した後の蛍光強度との強度変化を測定する工程を含むことを特徴とする糖化ヘモグロビンの測定方法。
- 前記蛍光強度が400〜800nmの波長の蛍光の強度である請求項6記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
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JP2002352841A JP2004184282A (ja) | 2002-12-04 | 2002-12-04 | 色素標識化合物およびこれを用いた糖化ヘモグロビンの測定方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010504983A (ja) * | 2006-09-28 | 2010-02-18 | アンサンブル ディスカバリー コーポレイション | 核酸を鋳型とする化学による生物学的検出のための組成物および方法 |
-
2002
- 2002-12-04 JP JP2002352841A patent/JP2004184282A/ja not_active Withdrawn
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