【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、定置型の水素貯蔵や、自動車、輸送用機器などの水素貯蔵に用いる水素吸蔵合金、水素吸蔵合金の製造方法、及び水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、深刻化する地球環境問題を解決するために、クリーンなエネルギー源として水素が着目されており、水素製造、貯蔵、利用技術の開発が活発に進められている。
【0003】
水素貯蔵システムの現状においては、水素吸蔵合金を水素貯蔵材料として用いる技術が最も実用化に近いレベルにあると考えられている。
【0004】
水素吸蔵合金として最も良く知られているLaNi5系合金の水素吸蔵能は、常温で1MPaの水素圧力下において1.4wt%である。また、最近注目されているバナジウム系合金でも常温、1MPa水素圧力下において2.4wt%であり、水素吸蔵能はまだ実用のレベルに達していないと考えられる。
【0005】
例えば、燃料電池自動車では500kmの航続距離が目標とされている。この航続距離を達成するためには、1回の水素充填で6wt%程度の水素吸蔵量が必要となる。
【0006】
従来の水素吸蔵合金は、1MPa以下で使用されることを前提として開発されてきた(例えば、非特許文献1参照。)。1MPa以下で使用される理由としては、以下の2つがある。第1の理由は、1MPaを超える高圧水素取り扱い困難であることによる。第2の理由は、水素吸蔵合金の主な用途が、ニッケル水素電池用の負極用であり、低い平衡圧での水素移動が要求されたためである。したがって、水素吸蔵合金の組成は、1MPa以下、または1MPa付近で水素移動が起こるような組成に設計されており、1MPaで最大吸蔵量を示すように開発されてきた。
【0007】
他の水素吸蔵合金としては、TiaCrbV1−a−b−c−dAcBd式で示される体心立方(以下、BCCという。)系合金が提案されている。なお、上記式のAにはMoが含まれ、Bはランタノイド系元素を示している。
【0008】
【非特許文献1】
若尾慎二郎著、「新技術シリーズ(6)水素吸蔵合金」、パワー社、1993年、第2章、2.6項
【0009】
【特許文献1】
特開平11−80865号公報、第2頁
【0010】
【特許文献2】
特開2002−194465、第4頁
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した水素吸蔵合金に1MPa以下でのシステム圧力で水素を貯蔵した水素貯蔵システムは、長距離の航続距離を要求される燃料電池自動車には不十分である。実際には、水素吸蔵合金を内蔵しない高圧水素タンクを用いた燃料電池車では35MPaの高圧タンクが専用に開発されており、将来的には70MPaの高圧水素タンクの搭載も検討されていることが現状である。
【0012】
また、上記したランタノイド系元素を含む水素吸蔵合金では、単位重量当たりの水素吸蔵量が低下するという問題がある。BCC系の水素吸蔵合金では、金属原子1個当たり、2個の水素が吸着すると考えられている。しかしながら、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)の原子量は50前後であるのに対し、ランタノイド系は最も原子量の軽いLaでも140程度あり、またランタノイド系元素の混合物であるミッシュメタルでは150近い原子量となる。上述したようにBCC系合金の金属1原子当たりの水素吸着量は2個であるので、使用する金属の原子量増加は、金属単位重量当たりの水素吸蔵量を低下させるだけであり好ましくない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、金属単位重量当たりの水素吸蔵量が大きい水素吸蔵合金、その製造方法、及び水素貯蔵システムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の特徴は、水素吸蔵合金であって、チタン(Ti)−バナジウム(V)−クロム(Cr)−モリブデン(Mo)系合金を主成分とし、Vが10〜17.5mol%、Moが1〜5mol%の成分比率であることを要旨としている。
【0015】
第1の特徴に係る発明においては、TiとCrとの成分比率が、1:1.6〜1.9であることが好ましく、(Ti+Cr):(V+Mo)の成分比率が85:15〜80:20の範囲であることが好ましい。特に、第1の特徴に係る発明においては、水素吸蔵合金が、体心立方(BCC)結晶構造であることが好ましい。
【0016】
本発明の第2の特徴は、Ti−V−Cr−Mo系合金を主成分とし、Vが10〜17.5mol%、Moが2.5〜5mol%の成分比率である水素吸蔵合金の製造方法であって、合金溶湯を毎秒100℃以上の冷却速度で急冷凝固処理することを要旨としている。第2の特徴に係る発明においては、急冷凝固処理が施された合金に、1100℃〜1400℃の範囲の温度で熱処理を行うことが好ましい。
【0017】
第2の特徴に係る発明では、合金溶湯を急冷凝固させることにより、BCC結晶構造を持つ水素吸蔵性能の高い水素吸蔵合金を得ることができる。
【0018】
本発明の第3の特徴は、Ti−V−Cr−Mo系合金を主成分とする水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵システムであって、水素満充填時の圧力が3MPa以上の水素貯蔵システムであることを要旨としている。
【0019】
第3の特徴に係る発明では、水素吸蔵合金が、3MPa以上の高圧において、水素吸蔵量が上昇する合金組成としてはTi−V−Cr−Mo系合金を主成分としており、さらにBCC結晶構造を有することで特に大きな水素吸蔵性能を発揮することができる。
【0020】
【発明の効果】
第1の特徴に係る発明によれば、金属単位重量当たりの水素吸蔵量が大きい水素吸蔵合金を得ることができる。
【0021】
第2の特徴に係る発明によれば、金属単位重量当たりの水素吸蔵量が大きい水素吸蔵合金を低コストで製造することができる。
【0022】
第3の特徴に係る発明によれば、水素貯蔵量が大きく、且つ軽量な水素吸蔵システムを実現することができる。このため、この水素貯蔵システムを燃料電池自動車に適用することにより、航続距離を長くすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る水素吸蔵合金、その製造方法、及び水素貯蔵システムの詳細を実施の形態に基づいて説明する。
【0024】
(水素吸蔵合金)
本実施の形態の水素吸蔵合金は、BCC(体心立方)結晶構造を有するTi−V−Cr−Mo系合金を主成分とする。このようなTi−V−Cr−Mo系合金において、組成比がある範囲を外れるとBCC結晶とはならず、ラーベス系の結晶をとる場合がある。また、合金溶湯の冷却速度があまりにも遅いと、BCC結晶構造とはならず、ラーベス系に転移する場合がある。
【0025】
そこで、本実施の形態に係る水素吸蔵合金は、Ti−V−Cr−Mo系合金を主成分とする水素吸蔵合金の成分比率が、V:10〜17.5mol%、Mo:2.5〜5mol%の範囲としている。水素吸蔵合金を構成する金属元素の組み合わせ方は、水素吸蔵量の多い金属元素単体と、吸蔵量は少ないが水素化反応が速く、しかも反応温度を低くできる元素を組み合わせるのが基本である。
【0026】
上記組成のうちバナジウム(V)元素は安定な水素化物を形成する性質を持ち、水素吸蔵量の多い元素である。したがって、ある程度の量のV元素を添加しなければ、十分な水素吸蔵性能を得ることができない。V元素の添加量が10mol%未満では、十分な水素吸蔵性能を得ることができないと考えられる。また、V元素の添加量が10mol%未満では、合金の結晶形態もラーベス系の結晶形態をとることとなり、水素吸蔵量の減少を招く。一方、V元素の含有量が17.5mol%を超えるとVの水素化物が安定になり、水素放出性能に悪影響を与える。このため、Vの含有量をこれ以上増やしても水素吸蔵量の増加の割合が小さくなる。また、Vは60,000円/kgを越える高価な元素であり、特に自動車の動力源として使用するには数十kgのオーダで使用することとなるため、これ以上のバナジウムの含有量の増加は現実的ではない。
【0027】
また、Mo元素は、水素化反応を促進する役割をもち、特に水素吸蔵合金の水素放出性能を改善する。Moの含有量が1mol%未満では、Moの添加効果(水素化反応を促進する効果)を十分に得ることができない。また、Moの存在はBCC結晶化を促進する効果もあるので、少なくとも1%以上添加することが好ましい。一方、Moの含有量が5mol%以上の場合は、水素吸蔵合金の水素吸蔵量が減少する。また、Moは上記元素の中では融点が2620℃(他の元素はいずれも2000℃以下)と高く、Moの含有量が増えると製造上均一に混合し冷却することが困難となる。
【0028】
さらに、本実施の形態における水素吸蔵合金を構成するTi−Cr−V−Mo合金の中で、Ti元素は安定な水素化物を形成する性質を持ち、水素吸蔵量の多い元素である。Crは水素化反応を促進する役割をもち、特に水素放出性能を改善する。水素吸蔵性能と水素放出性能のバランスを考慮すると、TiとCrの含有量(mol%)の比率が、1:1.6〜1:1.9の範囲であることが望ましい。この範囲を逸脱してTiが多くなると、BCC系の結晶構造の合金からラーベス系の結晶構造の合金に変わり吸蔵量の低下を招く。一方、Crが多くなると常温常圧でも残留水素量が増え、水素の取り出しが事実上困難となる。
【0029】
そこで、Ti−Cr−V−Moを主成分とするBCC系の結晶構造の水素吸蔵合金の(Ti+Cr):(V+Mo)の成分比率が、85:15〜80:20の範囲であることが望ましい。VとMoの添加は高い水素吸蔵性能を有するBCC系結晶構造を形成し易くする意味において重要である。
【0030】
なお、V+Moが15以下となるとラーベス系結晶となり、十分な水素吸蔵性能が得られない場合がある。一方、V+Moが20を越えると、必然的にVの含有量が多くなる為、水素化物が安定化し水素放出性能の低下を招く。またコスト高の問題、元素の融点差(特にMo)による製造上の問題も発生する。
【0031】
上記した組成の水素吸蔵合金は、ランタノイド系の金属を含有しないため、金属単位重量当たりの水素吸蔵量が大きい水素吸蔵合金を得ることができる。また、Moの存在は、0.1MPaまで減圧したときの、残留水素吸蔵量を低減する効果があり、有効水素吸蔵量を増加させる効果がある。
【0032】
ここで、有効水素吸蔵量を定義すると、図1に示すように、水素吸蔵合金に水素を吸着させた最も高い水素吸蔵量から、これ以上水素を離脱させることができない状態での残留水素吸蔵量を差し引いた量である。
【0033】
(水素吸蔵合金の製造方法)
次に、本実施の形態に係る水素吸蔵合金の製造方法について説明する。上記したTi−Cr−V−Moを主成分とするBCC系の結晶化された水素吸蔵合金の調製法としては、水焼入れ等により合金溶湯が毎秒100℃以上の冷却速度で急冷凝固されて調製されることが望ましい。合金溶湯の冷却速度が毎秒100℃より少ない場合は融点の違いにより得られた組成が不均一となることが考えられる他、上記組成においても、BCC系の結晶がラーベス系結晶に転移する可能性もあり、水素吸蔵性能の低下を招くことも考えられる。
【0034】
また、このように毎秒100℃以上の冷却速度で急冷凝固させたままの状態では、凝固収縮時の歪みやミクロ偏析が残っており、水素吸蔵特性が十分でない。そこで、1100℃〜1400℃の温度範囲で適宜加熱処理することで、歪みやミクロ偏析を無くし均一な組織にすることで、目標とする良好な特性を得ることができる。
【0035】
具体的な一例としては、以下に説明するような手順で行えばよい。
【0036】
(1)まず、純度99%以上のTi、Cr、V、Moの粉末を、上記した水素吸蔵合金の組成比(原子数比)となるように秤量する。
【0037】
(2)次に、これら秤量したTi、Cr、V、Moの粉末を、アルゴン雰囲気中でアーク溶解炉に入れ一緒に溶かして合金化する。
【0038】
(3)その後、得られた合金はすぐに水中に移し、100℃〜150℃/秒の冷却速度となるように、水焼入れ作業を行なう。または、水冷の銅鋳型に薄く注ぎ凝固させる。
【0039】
(4)さらに、凝固収縮時の歪みやミクロ偏析を除去するため、1100℃〜1400℃の温度範囲で加熱処理して、歪みやミクロ偏析を無くし均一な組織となるようにする。
【0040】
本実施の形態に係る水素吸蔵合金の製造方法では、簡単な工程により水素吸蔵性能の高い水素吸蔵合金を容易に製造することができる。特に、上記したように、合金溶湯を毎秒100℃以上の冷却速度で急冷凝固させることによりBCC系の結晶構造の吸蔵性能の高い水素吸蔵合金を製造することができる。
【0041】
なお、合金化させた後の加熱処理(後処理)の温度範囲について、温度を変えて、10MPaにおける水素吸蔵量と、0.1MPaまで減圧した時の残留水素量、有効水素吸蔵量水素吸蔵量(10MPa)とを調べた結果を下表1に示す。なお、水素吸蔵合金としては、組成比率が、Ti(30mol%)、Cr(40mol%)、V(20mol%)、Mo(10mol%)の試料を用いた。
【0042】
【表1】
表1から判るように、処理温度が1000℃では、水素吸蔵合金における残留水素吸蔵量が増加すると共に、有効水素吸蔵量が低下する。因みに、110℃〜1400℃の範囲の加熱処理温度では、水素吸蔵量(1MPa)が3.623〜3.705であるのに対し、1000℃の加熱処理温度では、水素吸蔵量(1MPa)が3.234とやや小さくなる。また、処理温度が1450℃を越えると溶融が起こるため適当でない。したがって、処理温度が1100℃〜1400℃の範囲では、水素吸蔵量が大きく(3.623〜3.705)、残留水素吸蔵量が小さく(0.805〜1.087)、有効水素吸蔵量が大きい(2.536〜2.900)という良好な特性を示している。
【0043】
次に、本実施の形態に係る水素吸蔵合金の製造方法を適用した実施例1〜実施例9及び比較例1〜比較例6の水素吸蔵合金について説明する。下表2には実施例1〜実施例6及び比較例1〜比較例3の成分組成と、水素吸蔵量(10MPa)、残留水素吸蔵量(0.1MPa)、有効水素吸蔵量とを示す。また、下表3には、実施例7〜実施例9及び比較例4〜比較例6の成分組成、水素吸蔵量(10MPa)、残留水素吸蔵量(0.1MPa)、有効水素吸蔵量とを示す。
【0044】
【表2】
【表3】
(実施例1)
実施例1で製造される水素吸蔵合金は、Ti−V−Cr−Mo系合金である。以下、調製法について説明する。
【0045】
まず、純度99%以上のTi、Cr、V、Moを組成比(原子数比)で、それぞれ30%、50%、15%、5%となるように秤量する。
【0046】
次に、これらの金属粉体を均一に混ぜ合わせた後、アルゴン雰囲気中でアーク溶解炉に入れ一緒に溶かして合金化する。その際、組成が均一となるように、合金のインゴットを回転させながら溶解を5回繰り返した。
【0047】
続いて、得られた合金をすぐに水中に移し、110℃〜150℃/分の冷却速度となるように、水焼入れ作業を行なった。
【0048】
その後、凝固収縮時の歪みやミクロ偏析を除去するため、1250℃に加熱して、歪みやミクロ偏析を無くし、均一な組織となるよう熱処理を行なった。なお、加熱処理を行った後は除冷した。
【0049】
(比較例1)
純度99%以上のTi、Cr、Niを組成比(原子数比)で、それぞれ30%、50%、20%となるように秤量し、アルゴン雰囲気中でアーク溶解炉に入れ一緒に溶かして合金化した。以下、均一化の溶解処理、及び、水焼入れ等の処理方法は上記した実施例1に準じた。
【0050】
(比較例2)
純度99%以上のTi、Cr、Vを組成比(原子数比)で、それぞれ37.5%、52.5%、10%となるように秤量し、アルゴン雰囲気中でアーク溶解炉に入れ一緒に溶かして合金化した。以下、均一化の溶解処理、及び、水焼入れ等の処理方法は実施例1に準じた。
【0051】
上記した実施例1及び比較例1、比較例2で製造された水素吸蔵合金について比較・検討する。実施例1及び比較例1、比較例2で製造された水素吸蔵合金を試料として、JIS、H、7201の方法に従って水素吸蔵放出測定試験を行った。
【0052】
まず、水素が吸蔵されていない原点を正確に得るため、各試料を200℃で3時間真空引きすることにより、残留しているガスを放出させてから測定を行なった。測定温度は25℃とした。
【0053】
(実施例1と比較例1の水素吸蔵量と水素圧力との関係)
図2は、実施例1と比較例1のPCT(水素圧−組成−温度)曲線を示す。図2に示すように、比較例1のTi−Ni−Cr合金では、1MPa付近では、実施例1以上の水素吸蔵量を示す。しかしながら、比較例1で用いた合金は3MPaを超えると、圧力が上昇しても水素吸蔵量はほぼ一定の値を示すようになる。一方、実施例1で用いたTiCrVMo合金は、1MPa付近においては比較例1に比べて低い水素吸蔵量を示しているが、1MPa〜10MPaの範囲で圧力上昇と共に水素吸蔵量が上昇し、3MPa以上の圧力領域においては、比較例1以上の水素吸蔵性能を示すことが判明した。
【0054】
(実施例1と比較例2の水素吸蔵量と水素圧力との関係)
図3は、実施例1と比較例2のPCT曲線を示している。図3に示すように、比較例2は実施例1の水素吸蔵合金において、Vの添加量を10%に低減し、Moを添加しない場合の比較例である。Vの添加量も10%と低く、Moも未添加であることが影響して、水素吸蔵性能が実施例1の水素吸蔵合金に比べて著しく低くなっていることが判明した。また、X線回折で分析したところ、実施例1の水素吸蔵合金はBCC結晶構造を有していたが、比較例2の水素吸蔵合金ではラーベス系結晶構造となっており、水素吸蔵性能の差となって現れたと考えられる。
【0055】
(実施例2)
まず、純度99%以上のTi、Cr、V、Moを組成比(原子数比)で、それぞれ30%、50%、17.5%、2.5%となるように秤量し、アルゴン雰囲気中でアーク溶解炉に入れ一緒に溶かして合金化した。実施例に準じた均一化の溶解処理後水冷した銅鋳型に流し込み、厚さ5mmの板状に急冷凝固させた。その後、1400℃に加熱し、歪みの均一化を行い、水中で急冷した。
【0056】
(比較例3)
純度99%以上のTi、Cr、Vを組成比(原子数比)で、それぞれ30%、50%、20%となるように秤量し、アルゴン雰囲気中でアーク溶解炉に入れ一緒に溶かして合金化した。以下、均一化の溶解処理、及び、凝固等の処理方法は実施例2に準じた。
【0057】
(実施例1、2及び比較例3の水素吸蔵量と水素圧力との関係)
図4には、実施例1、実施例2、及び比較例3のPCT曲線を示す。実施例2は実施例1に対して、Vの添加量を増やし、Moの添加量を2.5%以下に低減した例である。比較例3はさらにVの添加量を増やし、Moを未添加とした例である。
【0058】
Moの添加量低減と共に、図4に示すように、特に0.1MPaにおける残留水素量が低減されることが判明した。すなわち、Moの添加は、有効水素吸蔵量を増加させる手段として効果的であることが判る。
【0059】
(実施例3〜9)
実施例3〜9については、上記した表1及び表2に水素吸蔵合金の組成、ならびに10MPaにおける水素吸蔵量と、0.1MPaまで減圧した時の残留水素量、有効水素吸蔵量について示す。なお、実施例3〜9の試料の調整方法についても、実施例1と同様の処理にて行なった。
【0060】
(比較例4〜6)
比較例4〜6については、上記した表3に水素吸蔵合金の組成、ならびに10MPaにおける水素吸蔵量と、0.1MPaまで減圧した時の残留水素量、有効水素吸蔵量について示す。なお、比較例4〜6の試料の調製方法も上記した実施例1に準じて行った。
【0061】
上記した表1、表2に示す実施例3〜9及び比較例4〜6を比較して判るように、実施例7及び実施例9を除いてTiとCrとの成分比率が1:1.6〜1.9の範囲であり、良好な有効水素吸蔵量を有することが判る。
【0062】
また、上記した表1、表2に示す実施例1〜実施例9の成分組成に着目すると、(Ti+Cr):(V+Mo)の成分比率が85:15〜80:20の範囲であり、このような成分比率に設定することが水素吸蔵量の増加に好影響を与えているものと考えられる。
【0063】
(水素貯蔵システム)
次に、上記した組成比率を有するTi−Cr−V−Moを主成分とする水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵システムについて説明する。この水素貯蔵システムでは、水素満充填時の圧力が3MPa以上となるように設定されている。本実施の形態の組成を有する水素吸蔵合金を用いると3MPa以上においても圧力上昇と共に水素吸蔵量が上昇し、従来の水素吸蔵合金を大幅に上回る貯蔵量を得ることができる。
【0064】
図5は、本実施の形態に係る水素貯蔵システムを示している。この水素貯蔵システムは、水素ボンベ1と、主タンク2とから大略構成されている。主タンク2には、循環媒体が流通される主タンク用熱交換器3と、上記した組成の水素吸蔵合金とが内蔵されている。また、主タンク2には、図5に示すように、水素ボンベ用レギュレータ4が設けられている。さらに、主タンク2には、圧力計5と、水素ボンベ用レギュレータ6とが取り付けられている。
【0065】
このような構成において、水素ボンベ1と主タンク2とが、クイックコネクタ7で接続されるようになっている。このクイックコネクタ7は、例えば燃料電池自動車側に設けられている。このクイックコネクタ7に接続される第1水素供給管8には、図示するように、水素充填用流量コントローラ9が設けられている。また、クイックコネクタ7と主タンク2とは、第2水素供給管10で接続されている。さらに、主タンク2には、水素送出管11が接続されており、この水素送出管10を介して燃料電池スタックなどの動力源へ水素を送出するようになっている。なお、水素送出管11には、動力源供給用レギュレータ12と動力源供給用流量コントローラ13が設けられている。本実施の形態の水素貯蔵システムでは、主タンク2における水素満充填時の圧力が3MPa以上となるように設定されている。
【0066】
本実施の形態に係る水素貯蔵システムにおいては、水素吸蔵合金としてBCC結晶構造を有するTi−Cr−V−Mo系合金を主成分とし、上記した所定の合金組成とすることにより水素吸蔵性能を向上することができる。特に、主タンク2における水素満充填時の圧力が3MPa以上としたことにより、より一層の高い水素吸蔵性能が得られる。また、この水素貯蔵システムでは、上記した組成の水素吸蔵合金が、ランタノイド系の金属を含有しないため、金属単位重量当たりの水素吸蔵量が大きい水素吸蔵合金を得ることができるため、主タンク2の軽量化を図ることができる。また、Moの存在は、0.1MPaまで減圧したときの、残留水素吸蔵量を低減し有効水素吸蔵量を増加させる効果がある。
【0067】
(他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、上記した実施の形態の開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0068】
例えば、上記した実施の形態では、水素吸蔵合金を燃料電池自動車の水素貯蔵システムに適用したが、自動車以外の輸送用機器などの水素貯蔵に用いる水素貯蔵や、定置型の水素貯蔵などに適用できることは云うまでもない。
【0069】
また、Vが10〜17.5mol%、Moが1〜5mol%の成分比率であるTi−V−Cr−Mo系合金を主成分とし、他の副成分を含み、実質的にBCC結晶構造をとるものであれば、上記表1及び表2に示した実施例1〜9の組成以外を採用することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水素吸蔵合金の水素吸蔵量の定義を示すPCT曲線を示すグラフである。
【図2】実施例1と比較例1のPCT曲線を比較したグラフである。
【図3】実施例1と比較例2のPCT曲線を比較したグラフである。
【図4】実施例1、実施例2及び比較例3のPCT曲線を比較したグラフである。
【図5】本実施の形態に係る水素貯蔵システムの概略を示す説明図である。
【符号の説明】
1 水素ボンベ
2 主タンク
3 主タンク用熱交換器
9 水素充填用流量コントローラ[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a hydrogen storage alloy used for stationary hydrogen storage, hydrogen storage for automobiles, transportation equipment, and the like, a method for producing the hydrogen storage alloy, and a hydrogen storage system using the hydrogen storage alloy.
[0002]
[Prior art]
In recent years, hydrogen has attracted attention as a clean energy source in order to solve the increasingly serious global environmental problem, and development of hydrogen production, storage, and utilization technologies has been actively promoted.
[0003]
In the current state of hydrogen storage systems, it is considered that the technology using a hydrogen storage alloy as a hydrogen storage material is at a level that is closest to practical use.
[0004]
The LaNi 5- based alloy, which is best known as a hydrogen storage alloy, has a hydrogen storage capacity of 1.4 wt% at room temperature under a hydrogen pressure of 1 MPa. The vanadium-based alloy, which has recently attracted attention, is 2.4 wt% at normal temperature and 1 MPa hydrogen pressure, and it is considered that the hydrogen storage capacity has not yet reached a practical level.
[0005]
For example, in a fuel cell vehicle, a cruising distance of 500 km is targeted. In order to achieve this cruising distance, one hydrogen filling requires a hydrogen storage amount of about 6 wt%.
[0006]
Conventional hydrogen storage alloys have been developed on the premise that they are used at 1 MPa or less (for example, see Non-Patent Document 1). The following two reasons are used at 1 MPa or less. The first reason is that it is difficult to handle high-pressure hydrogen exceeding 1 MPa. The second reason is that the main use of the hydrogen storage alloy is for a negative electrode for a nickel-metal hydride battery, and hydrogen transfer at a low equilibrium pressure is required. Therefore, the composition of the hydrogen storage alloy is designed to be such that hydrogen transfer occurs at or below 1 MPa or near 1 MPa, and has been developed to exhibit a maximum storage capacity at 1 MPa.
[0007]
Other hydrogen-absorbing alloy, Ti a Cr b V 1- a-b-c-d A c B d body centered cubic represented by formula based alloy has been proposed (hereinafter. Referred BCC). A in the above formula includes Mo, and B indicates a lanthanoid element.
[0008]
[Non-patent document 1]
Shinjiro Wakao, "New Technology Series (6) Hydrogen Storage Alloys", Power Corporation, 1993, Chapter 2, Section 2.6
[Patent Document 1]
JP-A-11-80865, page 2
[Patent Document 2]
JP-A-2002-194465, page 4
[Problems to be solved by the invention]
However, the hydrogen storage system in which hydrogen is stored in the hydrogen storage alloy at a system pressure of 1 MPa or less is insufficient for a fuel cell vehicle that requires a long cruising distance. In fact, for fuel cell vehicles using high-pressure hydrogen tanks without a built-in hydrogen storage alloy, a high-pressure tank of 35 MPa has been developed exclusively, and the installation of a high-pressure hydrogen tank of 70 MPa may be considered in the future. It is the current situation.
[0012]
Further, the hydrogen storage alloy containing the above-mentioned lanthanoid element has a problem that the hydrogen storage amount per unit weight is reduced. It is considered that two hydrogen atoms are absorbed per metal atom in a BCC-based hydrogen storage alloy. However, titanium (Ti), vanadium (V), and chromium (Cr) have an atomic weight of about 50, while the lanthanoid-based La has the lightest atomic weight of about 140, and a misty metal that is a mixture of lanthanoid-based elements In this case, the atomic weight becomes close to 150. As described above, since the amount of hydrogen adsorbed per metal atom of the BCC alloy is two, an increase in the atomic weight of the metal used only decreases the amount of hydrogen absorbed per metal unit weight, which is not preferable.
[0013]
Therefore, an object of the present invention is to provide a hydrogen storage alloy having a large hydrogen storage amount per metal unit weight, a method for producing the same, and a hydrogen storage system.
[0014]
[Means for Solving the Problems]
A first feature of the present invention is a hydrogen storage alloy, which is mainly composed of a titanium (Ti) -vanadium (V) -chromium (Cr) -molybdenum (Mo) -based alloy and has a V of 10 to 17.5 mol%. , Mo have a component ratio of 1 to 5 mol%.
[0015]
In the invention according to the first aspect, the component ratio of Ti and Cr is preferably 1: 1.6 to 1.9, and the component ratio of (Ti + Cr) :( V + Mo) is 85:15 to 80. : 20 is preferable. In particular, in the invention according to the first aspect, the hydrogen storage alloy preferably has a body-centered cubic (BCC) crystal structure.
[0016]
A second feature of the present invention is the production of a hydrogen storage alloy having a Ti-V-Cr-Mo-based alloy as a main component and a component ratio of V of 10 to 17.5 mol% and Mo of 2.5 to 5 mol%. The subject matter of the present invention is to rapidly solidify a molten alloy at a cooling rate of 100 ° C. or more per second. In the invention according to the second aspect, it is preferable that the alloy subjected to the rapid solidification treatment is heat-treated at a temperature in the range of 1100 ° C to 1400 ° C.
[0017]
In the invention according to the second aspect, by rapidly solidifying the molten alloy, a hydrogen storage alloy having a BCC crystal structure and high hydrogen storage performance can be obtained.
[0018]
A third feature of the present invention is a hydrogen storage system using a hydrogen storage alloy containing a Ti-V-Cr-Mo-based alloy as a main component, wherein the pressure at the time of full filling of hydrogen is 3 MPa or more. The gist is that there is.
[0019]
In the invention according to the third aspect, the hydrogen storage alloy has a Ti-V-Cr-Mo-based alloy as a main component as an alloy composition whose hydrogen storage amount increases at a high pressure of 3 MPa or more, and further has a BCC crystal structure. By virtue of this, particularly large hydrogen storage performance can be exhibited.
[0020]
【The invention's effect】
According to the first aspect, a hydrogen storage alloy having a large hydrogen storage amount per metal unit weight can be obtained.
[0021]
According to the invention according to the second aspect, a hydrogen storage alloy having a large hydrogen storage amount per metal unit weight can be manufactured at low cost.
[0022]
According to the invention according to the third aspect, a hydrogen storage system having a large hydrogen storage amount and a light weight can be realized. Therefore, by applying this hydrogen storage system to a fuel cell vehicle, the cruising distance can be increased.
[0023]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, details of a hydrogen storage alloy, a method for producing the same, and a hydrogen storage system according to the present invention will be described based on embodiments.
[0024]
(Hydrogen storage alloy)
The hydrogen storage alloy of the present embodiment is mainly composed of a Ti-V-Cr-Mo-based alloy having a BCC (body-centered cubic) crystal structure. In such a Ti-V-Cr-Mo alloy, if the composition ratio deviates from a certain range, a BCC crystal may not be formed and a Laves crystal may be formed. On the other hand, if the cooling rate of the molten alloy is too low, the BCC crystal structure may not be formed, and the alloy may be transformed into a Laves system.
[0025]
Therefore, in the hydrogen storage alloy according to the present embodiment, the component ratio of the hydrogen storage alloy containing a Ti-V-Cr-Mo-based alloy as a main component is V: 10 to 17.5 mol%, Mo: 2.5 to The range is 5 mol%. The basic method of combining metal elements constituting the hydrogen storage alloy is to combine a metal element alone having a large hydrogen storage amount and an element having a small storage amount but a high hydrogenation reaction and capable of lowering the reaction temperature.
[0026]
Of the above compositions, the vanadium (V) element has a property of forming a stable hydride and is an element having a large hydrogen storage amount. Therefore, unless a certain amount of V element is added, sufficient hydrogen storage performance cannot be obtained. If the addition amount of the V element is less than 10 mol%, it is considered that sufficient hydrogen storage performance cannot be obtained. If the addition amount of the element V is less than 10 mol%, the crystal form of the alloy also takes a Laves-type crystal form, which causes a decrease in the hydrogen storage amount. On the other hand, when the content of the V element exceeds 17.5 mol%, the hydride of V becomes stable, and adversely affects the hydrogen release performance. Therefore, even if the V content is further increased, the rate of increase in the hydrogen storage amount decreases. In addition, V is an expensive element exceeding 60,000 yen / kg, and since it is used in the order of several tens of kilograms particularly when used as a power source of an automobile, the content of vanadium further increases. Is not realistic.
[0027]
Further, the Mo element has a role of accelerating the hydrogenation reaction, and particularly improves the hydrogen releasing performance of the hydrogen storage alloy. If the content of Mo is less than 1 mol%, the effect of adding Mo (the effect of promoting the hydrogenation reaction) cannot be sufficiently obtained. Since the presence of Mo also has the effect of promoting BCC crystallization, it is preferable to add at least 1% or more. On the other hand, when the Mo content is 5 mol% or more, the hydrogen storage amount of the hydrogen storage alloy decreases. Further, Mo has a high melting point of 2620 ° C. (all other elements are 2000 ° C. or less) among the above-mentioned elements, and when the content of Mo increases, it becomes difficult to mix and cool uniformly in production.
[0028]
Further, in the Ti—Cr—V—Mo alloy constituting the hydrogen storage alloy according to the present embodiment, the Ti element has a property of forming a stable hydride and has a large hydrogen storage amount. Cr has a role of accelerating the hydrogenation reaction, and particularly improves the hydrogen release performance. In consideration of the balance between the hydrogen storage performance and the hydrogen release performance, it is desirable that the ratio of the contents (mol%) of Ti and Cr is in the range of 1: 1.6 to 1: 1.9. If the amount of Ti is out of this range and increases, the alloy changes from a BCC-based crystal structure to an Laves-based crystal structure, resulting in a decrease in occlusion amount. On the other hand, when the amount of Cr increases, the amount of residual hydrogen increases even at normal temperature and normal pressure, and it becomes practically difficult to extract hydrogen.
[0029]
Therefore, it is desirable that the component ratio of (Ti + Cr) :( V + Mo) of the hydrogen storage alloy having a BCC-based crystal structure containing Ti-Cr-V-Mo as a main component is in the range of 85:15 to 80:20. . The addition of V and Mo is important in terms of facilitating the formation of a BCC-based crystal structure having high hydrogen storage performance.
[0030]
When V + Mo is 15 or less, a Laves crystal is formed, and sufficient hydrogen storage performance may not be obtained. On the other hand, if V + Mo exceeds 20, the content of V is inevitably increased, so that the hydride is stabilized and the hydrogen release performance is reduced. In addition, there is a problem of high cost and a problem of manufacturing due to a difference in melting point of elements (especially Mo).
[0031]
Since the hydrogen storage alloy having the above composition does not contain a lanthanoid metal, a hydrogen storage alloy having a large hydrogen storage amount per unit weight of metal can be obtained. Further, the presence of Mo has an effect of reducing the residual hydrogen storage amount when the pressure is reduced to 0.1 MPa, and has an effect of increasing the effective hydrogen storage amount.
[0032]
Here, when the effective hydrogen storage amount is defined, as shown in FIG. 1, the residual hydrogen storage amount in a state where hydrogen cannot be desorbed any more from the highest hydrogen storage amount in which hydrogen is adsorbed on the hydrogen storage alloy. Is the amount after subtracting
[0033]
(Production method of hydrogen storage alloy)
Next, a method for manufacturing the hydrogen storage alloy according to the present embodiment will be described. As a method of preparing a crystallized hydrogen storage alloy of the BCC type containing Ti-Cr-V-Mo as a main component, the molten alloy is rapidly solidified at a cooling rate of 100 ° C or more per second by water quenching or the like. It is desirable to be done. If the cooling rate of the molten alloy is lower than 100 ° C. per second, the obtained composition may be non-uniform due to the difference in melting point, and even in the above-mentioned composition, the possibility that BCC-based crystals may transform into Laves-based crystals It is also conceivable that the hydrogen storage performance may be reduced.
[0034]
Further, in such a state where the solidification is rapidly solidified at a cooling rate of 100 ° C. or more per second, distortion and micro-segregation during solidification shrinkage remain, and the hydrogen storage properties are not sufficient. Therefore, by performing appropriate heat treatment in a temperature range of 1100 ° C. to 1400 ° C., distortion and micro-segregation are eliminated, and a uniform structure is obtained, so that desired good characteristics can be obtained.
[0035]
As a specific example, the procedure may be performed as described below.
[0036]
(1) First, powders of Ti, Cr, V, and Mo having a purity of 99% or more are weighed so as to have the composition ratio (atomic ratio) of the hydrogen storage alloy described above.
[0037]
(2) Next, the weighed powders of Ti, Cr, V, and Mo are put into an arc melting furnace in an argon atmosphere and melted together to form an alloy.
[0038]
(3) Then, the obtained alloy is immediately transferred to water, and water quenching is performed so that the cooling rate is 100 ° C. to 150 ° C./sec. Alternatively, it is poured thinly into a water-cooled copper mold and solidified.
[0039]
(4) Further, in order to remove distortion and micro-segregation during solidification shrinkage, heat treatment is performed in a temperature range of 1100 ° C. to 1400 ° C. to eliminate distortion and micro-segregation so as to obtain a uniform structure.
[0040]
In the method for manufacturing a hydrogen storage alloy according to the present embodiment, a hydrogen storage alloy having high hydrogen storage performance can be easily manufactured by simple steps. In particular, as described above, by rapidly solidifying the molten alloy at a cooling rate of 100 ° C. or more per second, it is possible to manufacture a hydrogen storage alloy having a high storage performance of a BCC crystal structure.
[0041]
In the temperature range of the heat treatment (post-treatment) after alloying, the hydrogen storage amount at 10 MPa, the residual hydrogen amount when the pressure was reduced to 0.1 MPa, the effective hydrogen storage amount, and the hydrogen storage amount (10 MPa) is shown in Table 1 below. As the hydrogen storage alloy, a sample having a composition ratio of Ti (30 mol%), Cr (40 mol%), V (20 mol%), and Mo (10 mol%) was used.
[0042]
[Table 1]
As can be seen from Table 1, when the processing temperature is 1000 ° C., the residual hydrogen storage amount in the hydrogen storage alloy increases and the effective hydrogen storage amount decreases. Incidentally, at a heat treatment temperature in the range of 110 ° C. to 1400 ° C., the hydrogen storage amount (1 MPa) is 3.623 to 3.705, whereas at a heat treatment temperature of 1000 ° C., the hydrogen storage amount (1 MPa) is small. 3.234, which is slightly smaller. On the other hand, if the processing temperature exceeds 1450 ° C., melting occurs, which is not appropriate. Therefore, when the processing temperature is in the range of 1100 ° C. to 1400 ° C., the hydrogen storage amount is large (3.623 to 3.705), the residual hydrogen storage amount is small (0.805 to 1.087), and the effective hydrogen storage amount is small. It shows good characteristics of being large (2.536 to 2.900).
[0043]
Next, hydrogen storage alloys of Examples 1 to 9 and Comparative Examples 1 to 6 to which the method for manufacturing a hydrogen storage alloy according to the present embodiment is applied will be described. Table 2 below shows the component compositions of Examples 1 to 6 and Comparative Examples 1 to 3, the hydrogen storage amount (10 MPa), the residual hydrogen storage amount (0.1 MPa), and the effective hydrogen storage amount. Table 3 below shows the component compositions, hydrogen storage amounts (10 MPa), residual hydrogen storage amounts (0.1 MPa), and effective hydrogen storage amounts of Examples 7 to 9 and Comparative Examples 4 to 6. Show.
[0044]
[Table 2]
[Table 3]
(Example 1)
The hydrogen storage alloy manufactured in Example 1 is a Ti-V-Cr-Mo-based alloy. Hereinafter, the preparation method will be described.
[0045]
First, Ti, Cr, V, and Mo having a purity of 99% or more are weighed so as to be 30%, 50%, 15%, and 5% in composition ratio (atomic ratio), respectively.
[0046]
Next, after uniformly mixing these metal powders, they are put into an arc melting furnace in an argon atmosphere and melted together to form an alloy. At that time, melting was repeated 5 times while rotating the alloy ingot so that the composition became uniform.
[0047]
Subsequently, the obtained alloy was immediately transferred to water, and water quenching was performed at a cooling rate of 110 ° C to 150 ° C / min.
[0048]
Thereafter, in order to remove distortion and micro-segregation during solidification shrinkage, heating was performed at 1250 ° C. to eliminate distortion and micro-segregation and heat treatment was performed to obtain a uniform structure. After the heat treatment, cooling was performed.
[0049]
(Comparative Example 1)
Ti, Cr, and Ni with a purity of 99% or more are weighed so as to be 30%, 50%, and 20%, respectively, in a composition ratio (atomic ratio), put in an arc melting furnace in an argon atmosphere, and melted together to form an alloy. It has become. Hereinafter, the dissolving treatment for homogenization, the treatment method such as water quenching, and the like were in accordance with Example 1 described above.
[0050]
(Comparative Example 2)
Ti, Cr, and V having a purity of 99% or more are weighed so as to be 37.5%, 52.5%, and 10% in composition ratio (atomic ratio), respectively, and put together in an arc melting furnace in an argon atmosphere. And alloyed. Hereinafter, the dissolving treatment for homogenization and the treatment method such as water quenching were in accordance with Example 1.
[0051]
The hydrogen storage alloys manufactured in Example 1 and Comparative Examples 1 and 2 are compared and examined. Using the hydrogen storage alloys produced in Example 1 and Comparative Examples 1 and 2 as samples, a hydrogen storage / release measurement test was performed according to the method of JIS, H, 7201.
[0052]
First, in order to accurately obtain the origin at which hydrogen was not absorbed, each sample was evacuated at 200 ° C. for 3 hours to release the remaining gas before measurement. The measurement temperature was 25 ° C.
[0053]
(Relationship between hydrogen storage amount and hydrogen pressure in Example 1 and Comparative Example 1)
FIG. 2 shows PCT (hydrogen pressure-composition-temperature) curves of Example 1 and Comparative Example 1. As shown in FIG. 2, the Ti—Ni—Cr alloy of Comparative Example 1 shows a hydrogen storage amount higher than that of Example 1 near 1 MPa. However, when the alloy used in Comparative Example 1 exceeds 3 MPa, the hydrogen storage amount shows a substantially constant value even when the pressure increases. On the other hand, the TiCrVMo alloy used in Example 1 shows a lower hydrogen storage amount near 1 MPa than in Comparative Example 1, but the hydrogen storage amount increases with the pressure increase in the range of 1 MPa to 10 MPa, and the hydrogen storage amount increases to 3 MPa or more. In the pressure range of, it was found that the hydrogen storage performance of Comparative Example 1 or higher was exhibited.
[0054]
(Relationship between hydrogen storage amount and hydrogen pressure in Example 1 and Comparative Example 2)
FIG. 3 shows the PCT curves of Example 1 and Comparative Example 2. As shown in FIG. 3, Comparative Example 2 is a comparative example in which the addition amount of V is reduced to 10% and Mo is not added in the hydrogen storage alloy of Example 1. It was found that the addition amount of V was as low as 10% and that Mo was not added, so that the hydrogen storage performance was significantly lower than that of the hydrogen storage alloy of Example 1. Further, when analyzed by X-ray diffraction, the hydrogen storage alloy of Example 1 had a BCC crystal structure, but the hydrogen storage alloy of Comparative Example 2 had a Laves-type crystal structure, indicating a difference in hydrogen storage performance. It seems that it appeared.
[0055]
(Example 2)
First, Ti, Cr, V, and Mo having a purity of 99% or more are weighed so as to be 30%, 50%, 17.5%, and 2.5% in composition ratio (atomic ratio), respectively. And put into an arc melting furnace and melted together to form an alloy. The solution was poured into a water-cooled copper mold after homogenizing dissolution treatment according to the example, and rapidly solidified into a plate having a thickness of 5 mm. Then, it heated to 1400 degreeC, uniformed the distortion, and was rapidly cooled in water.
[0056]
(Comparative Example 3)
Ti, Cr, and V with a purity of 99% or more are weighed so that the composition ratio (atomic ratio) becomes 30%, 50%, and 20%, respectively, and put into an arc melting furnace in an argon atmosphere and melted together to form an alloy. It has become. Hereinafter, the dissolving treatment for homogenization, the treatment method such as solidification, and the like were in accordance with Example 2.
[0057]
(Relationship between hydrogen storage amount and hydrogen pressure in Examples 1 and 2 and Comparative Example 3)
FIG. 4 shows the PCT curves of Example 1, Example 2, and Comparative Example 3. Example 2 is an example in which the addition amount of V is increased and the addition amount of Mo is reduced to 2.5% or less with respect to Example 1. Comparative Example 3 is an example in which the addition amount of V was further increased and Mo was not added.
[0058]
As shown in FIG. 4, it was found that the amount of residual hydrogen, particularly at 0.1 MPa, was reduced along with the reduction of the amount of Mo added. That is, it is understood that the addition of Mo is effective as a means for increasing the effective hydrogen storage amount.
[0059]
(Examples 3 to 9)
For Examples 3 to 9, Tables 1 and 2 above show the composition of the hydrogen storage alloy, the hydrogen storage amount at 10 MPa, the residual hydrogen amount when the pressure is reduced to 0.1 MPa, and the effective hydrogen storage amount. In addition, about the preparation method of the sample of Examples 3-9, it performed by the same process as Example 1.
[0060]
(Comparative Examples 4 to 6)
For Comparative Examples 4 to 6, Table 3 shows the composition of the hydrogen storage alloy, the hydrogen storage amount at 10 MPa, the residual hydrogen amount when the pressure is reduced to 0.1 MPa, and the effective hydrogen storage amount. In addition, the preparation method of the samples of Comparative Examples 4 to 6 was also performed in accordance with Example 1 described above.
[0061]
As can be seen by comparing Examples 3 to 9 and Comparative Examples 4 to 6 shown in Tables 1 and 2 above, except for Examples 7 and 9, the component ratio between Ti and Cr was 1: 1. It is in the range of 6 to 1.9, which indicates that it has a good effective hydrogen storage amount.
[0062]
Focusing on the component compositions of Examples 1 to 9 shown in Tables 1 and 2, the component ratio of (Ti + Cr) :( V + Mo) is in the range of 85:15 to 80:20. It is considered that setting a proper component ratio has a favorable effect on the increase in the hydrogen storage amount.
[0063]
(Hydrogen storage system)
Next, a hydrogen storage system using a hydrogen storage alloy having Ti-Cr-V-Mo as a main component having the above composition ratio will be described. In this hydrogen storage system, the pressure at the time of full hydrogen filling is set to be 3 MPa or more. When the hydrogen storage alloy having the composition of the present embodiment is used, even at 3 MPa or more, the hydrogen storage amount increases with the increase in pressure, and a storage amount that is much larger than that of the conventional hydrogen storage alloy can be obtained.
[0064]
FIG. 5 shows a hydrogen storage system according to the present embodiment. This hydrogen storage system generally includes a hydrogen cylinder 1 and a main tank 2. The main tank 2 contains a heat exchanger 3 for the main tank through which the circulating medium flows, and a hydrogen storage alloy having the above-described composition. The main tank 2 is provided with a hydrogen cylinder regulator 4 as shown in FIG. Further, the main tank 2 is provided with a pressure gauge 5 and a regulator 6 for a hydrogen cylinder.
[0065]
In such a configuration, the hydrogen tank 1 and the main tank 2 are connected by the quick connector 7. This quick connector 7 is provided, for example, on the fuel cell vehicle side. The first hydrogen supply pipe 8 connected to the quick connector 7 is provided with a hydrogen filling flow rate controller 9 as shown in the figure. The quick connector 7 and the main tank 2 are connected by a second hydrogen supply pipe 10. Further, a hydrogen delivery pipe 11 is connected to the main tank 2, and hydrogen is delivered to a power source such as a fuel cell stack via the hydrogen delivery pipe 10. The hydrogen delivery pipe 11 is provided with a power source supply regulator 12 and a power source supply flow rate controller 13. In the hydrogen storage system according to the present embodiment, the pressure when the main tank 2 is fully filled with hydrogen is set to be 3 MPa or more.
[0066]
In the hydrogen storage system according to the present embodiment, a Ti—Cr—V—Mo-based alloy having a BCC crystal structure as a main component is used as the hydrogen storage alloy, and the hydrogen storage performance is improved by using the above-described predetermined alloy composition. can do. In particular, by setting the pressure at the time of full hydrogen filling in the main tank 2 to 3 MPa or more, even higher hydrogen storage performance can be obtained. Further, in this hydrogen storage system, since the hydrogen storage alloy having the above composition does not contain a lanthanoid metal, a hydrogen storage alloy having a large hydrogen storage amount per unit weight of metal can be obtained. The weight can be reduced. Further, the presence of Mo has an effect of reducing the residual hydrogen storage amount and increasing the effective hydrogen storage amount when the pressure is reduced to 0.1 MPa.
[0067]
(Other embodiments)
Although the embodiments have been described above, it should not be understood that the description and drawings constituting a part of the disclosure of the embodiments described above limit the present invention. From this disclosure, various alternative embodiments, examples, and operation techniques will be apparent to those skilled in the art.
[0068]
For example, in the above-described embodiment, the hydrogen storage alloy is applied to the hydrogen storage system of the fuel cell vehicle. However, the hydrogen storage alloy can be applied to the hydrogen storage used for the transportation equipment other than the vehicle, such as the hydrogen storage, and the stationary hydrogen storage. Needless to say.
[0069]
Further, V is a Ti-V-Cr-Mo-based alloy having a component ratio of 10 to 17.5 mol% and Mo is 1 to 5 mol% as a main component, and contains other subcomponents, and substantially has a BCC crystal structure. Of course, it is also possible to adopt a composition other than the compositions of Examples 1 to 9 shown in Tables 1 and 2 above.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a graph showing a PCT curve showing a definition of a hydrogen storage amount of a hydrogen storage alloy according to the present invention.
FIG. 2 is a graph comparing PCT curves of Example 1 and Comparative Example 1.
FIG. 3 is a graph comparing PCT curves of Example 1 and Comparative Example 2.
FIG. 4 is a graph comparing PCT curves of Example 1, Example 2, and Comparative Example 3.
FIG. 5 is an explanatory view schematically showing a hydrogen storage system according to the present embodiment.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF SYMBOLS 1 Hydrogen cylinder 2 Main tank 3 Heat exchanger for main tank 9 Flow controller for hydrogen filling