JP2004182650A - α−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents
α−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】より低コストで高純度のα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法を提供する。
【解決手段】1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法において、(a)金属を担体に担持してなる触媒および(b)酸触媒を使用することを特徴とする製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法において、(a)金属を担体に担持してなる触媒および(b)酸触媒を使用することを特徴とする製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
α−ヒドロキシカルボン酸エステルは、ポリグリコール酸などの各種の合成樹脂の原料となる重合用モノマーなどとして工業的に重要な化合物である。従来、α−ヒドロキシカルボン酸エステルは、α−ヒドロキシカルボン酸とアルコールとを反応させてエステル化することにより製造される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、工業用グレードのα−ヒドロキシカルボン酸は、水溶液であるうえに純度が低いので、従来の方法では、高純度のα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得ることが困難である。また、高純度のα−ヒドロキシカルボン酸を用いた場合には、原料が高価であるので、経済性よくα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得ることができない。
【0004】
従って、本発明の主な目的は、より低コストで高純度のα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以前、かかる従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を金属を担体に担持してなる触媒の存在下において反応させる方法を見出した。
【0006】
しかしながら、この方法であっても、α−ヒドロキシカルボン酸エステルの選択率を改善する余地がある。
【0007】
そこで、本発明者は、従来技術の問題点を解決し且つ収率を改善するために更に鋭意研究を重ねた結果、1,2−ジオールと1級アルコールと酸素とを反応させる際に、金属を担体に担持してなる触媒および酸触媒を用いると上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記のα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法に係るものである。
1.1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法において、(a)金属を担体に担持してなる触媒および(b)酸触媒を使用することを特徴とする製造方法。
2.1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法において、
(1)金属を担体に担持してなる触媒の存在下、1,2−ジオールと1級アルコールとを酸素酸化させてα−ヒドロキシカルボン酸エステル及びα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルを含む反応混合物を得る第一工程、及び
(2)第一工程において得られた反応混合物と酸触媒の存在下、α−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルと1級アルコールとをエステル交換反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得る第二工程
を有することを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
3.(a)金属を担体に担持してなる触媒および(b)酸触媒の共存下、1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させる上記1に記載の製造方法。
4.1級アルコールが、メタノールであり、酸触媒が、H型陽イオン交換樹脂である上記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5.第二工程に先立って、反応混合物中のα−ヒドロキシカルボン酸エステルの一部又は全部を除去する工程を有する上記2に記載の製造方法。
6.1,2−ジオールが、エチレングリコールである上記1〜5の何れかに記載の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法において、(a)金属を担体に担持してなる触媒(以下、「担持型金属触媒」ということがある)および(b)酸触媒を使用することを特徴とする製造方法に係る。
【0010】
1.担持型金属触媒
(1)触媒活性成分
本発明においては、活性成分である金属が担体に担持された触媒、即ち担持型金属触媒を用いる。
【0011】
活性成分である金属は、特に制限されないが、好ましくは貴金属であり、例えば、金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などを例示することができ、金、パラジウム、ルテニウムなどがより好ましい。
【0012】
本発明において用いる触媒は、上記の貴金属を必須成分として含み、更に、活性成分として、第4周期から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族および6B族並びに第4周期の8族からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有することができる。以下、これらの元素を第二元素ということがある。第二元素の具体例として、例えばZn, Cd, Hgなどの2B族;Ga, In, Tlなどの3B族;Ge, Sn, Pbなどの4B族;As, Sb, Biなどの5B族;Se, Te, Poなどの6B族;Fe, Co, Niなどの8族などを例示することができる。本発明において用いる触媒としては、第二元素として少なくともPbを含む触媒が好ましい。例えば、Au, PdおよびRuからなる群から選択される少なくとも1種の活性成分およびPbを含む金属微粒子が担体上に担持された触媒を好適に用いることができる。
【0013】
活性成分である金属は、上記貴金属を単独で含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。2種以上の貴金属を含む場合には、本発明の効果が得られる限り、一部又は全部が合金、金属間化合物等を形成していても良い。
【0014】
また、活性成分である金属が、貴金属と第二元素とを含む場合には、本発明の効果が得られる限り、一部又は全部が合金、金属間化合物等を形成していても良い。貴金属および第二元素は、通常微粒子として担体に担持されている。本発明において用いる触媒は、本発明の効果を妨げない範囲内で貴金属および第二元素以外の他の元素または不純物が含まれていても良い。
【0015】
活性成分である金属粒子の粒子径は、所定の触媒活性が得られる限り限定的ではないが、平均粒子径は、通常10nm以下程度、好ましくは6nm以下程度、より好ましくは5nm以下程度、特に好ましくは1〜5nm程度である。この範囲内に設定すれば、より確実に優れた触媒活性を得ることができる。平均粒子径の下限値は特に制限されないが、物理的安定性の見地より約1nm程度とすれば良い。
【0016】
なお、本発明における金属粒子の平均粒子径は、担体上の金属粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)による観察により任意に選んだ120個のうち、(1)大きい順に上から10個及び(2)小さい順に下から10個の合計20個を除いた100個の粒子径の算術平均値を示す。また、金属粒子の粒子径分布の極大値が1〜6nm程度、特に1〜5nm程度の範囲にあることが好ましい。粒子径の分布は狭い方が好ましく、上記120個の粒子径の標準偏差(Standard Deviation)が2以下程度、特に1.5以下程度であることが好ましい。
【0017】
触媒における金属活性成分の担持量は、最終製品の用途、担体の種類等に応じて適宜決定すれば良いが、通常は担体100重量部に対して0.01〜20重量部程度、特に0.1〜10重量部とすることが好ましい。
【0018】
(2)担体
担体としては、従来から触媒担体として用いられているものを使用することができ、特に限定されない。例えば、市販品を使用することができる。また、公知の製法によって得られるものも使用できる。例えば、金属酸化物(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等)、複合金属酸化物(シリカ・アルミナ、チタニア・シリカ、シリカ・マグネシア等)、ゼオライト(ZSM−5等)、メソポーラスシリケート(MCM−41等)などの無機酸化物;天然鉱物(粘土、珪藻土、軽石等);炭素材料(活性炭、黒鉛等)の各種担体を挙げることができ、これらの中では無機酸化物が好ましい。
【0019】
本発明では、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Sn、Pb、La及びCeの少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる無機酸化物担体を好ましく用いることができる。上記酸化物は、単体元素の酸化物が2以上混合された混合酸化物であっても良いし、あるいは複酸化物(又は複合酸化物)であっても良い。無機酸化物担体としては、Si、Al、TiおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物が好ましい。
【0020】
担体の製法も限定されず、公知の製法を用いることができる。例えば、含浸法、共沈法、イオン交換法、気相蒸着法、混練法、水熱合成法等が挙げられる。
【0021】
例えば、上記の無機酸化物担体は、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Sn、Pb、La及びCeの少なくとも1種を含む水溶性化合物の水溶液をシリカに含浸させた後、得られた含浸体を焼成する方法などによって得られる。かかる無機酸化物担体は、触媒活性成分である微粒子をより確実に担持できるとともに、微粒子との相乗的な作用によっていっそう高い触媒活性を得ることができる。
【0022】
上記の担体の製法で用いられる化合物は限定されない。例えば、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物等の無機化合物、カルボン酸塩、アルコキサイド、アセチルアセトナート等の有機化合物が挙げられる。
【0023】
上記の水溶性化合物も、水溶性であれば限定的でない。例えば、硫酸チタニル、硝酸ジルコニル、硝酸亜鉛、硝酸ランタン、硝酸鉄、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム等の無機酸塩;チタンn−ブトキシド、チタンアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、酢酸鉛、酢酸マグネシウム等の有機酸塩を挙げることができる。これらの塩は無水物又は水和物のいずれであっても良い。また、上記水溶液の濃度は、用いる水溶性化合物の種類等に応じて適宜設定できる。
【0024】
上記水溶液をシリカに含浸させる量は限定的ではないが、通常はシリカ100重量部に対して1〜20重量部程度となるようにすれば良い。
【0025】
本発明では、無機酸化物担体は多孔質であることが好ましく、特にその比表面積(BET法)が50m2/g以上程度のものが好ましく、100m2/g以上程度であることがより好ましく、100〜800m2/g程度のものが特に好ましい。担体の形状・大きさは限定的でなく、最終製品の用途等に応じて適宜決定すれば良い。
【0026】
2.担持型金属触媒の製造方法
担持型金属触媒の製造方法は、上記のような担持体が得られる限りその制限はない。例えば、所望の金属及びその化合物の少なくとも1種を含む担体を熱処理することによって得ることができる。金属の化合物は、水酸化物、塩化物、カルボン酸塩、硝酸塩、アルコキサイド、アセチルアトナート塩等のいずれであっても良い。
【0027】
また、担体に2種以上の金属を担持させる場合、担持させる順序も限定的でなく、いずれが先であっても良いし、また同時であっても良い。すなわち、(A)貴金属を担体に担持した後、第二元素を担持する方法、(B)第二元素を担体に担持した後、貴金属を担持する方法、(C)貴金属と第二元素とを同時に担体に担持する方法のいずれであってもよい。以下、各方法について説明する。
【0028】
方法(A)
上記(A)の方法は、貴金属を担体に担持した後、第二元素を担持する方法である。まず、貴金属が担持されてなる貴金属担持体を製造する。貴金属担持体の製法は限定的でなく、例えば、共沈法、イオン交換法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の従来の方法を適用でき、イオン交換法、析出沈殿法、含浸法等が好ましい。
【0029】
イオン交換法を用いる場合には、例えば貴金属のカチオン性錯塩を含む水溶液に担体を共存させ、貴金属のカチオン性錯体を担体表面上にカチオンとして結合担持させた後、焼成および/または還元処理などを経て貴金属担持体を得ることができる。貴金属のカチオン性錯体をイオン交換により担体表面上に担持させる場合には、上記水溶液の貴金属錯塩濃度、温度、pHなどの諸条件を適宜制御すればよい。また、焼成および/または還元処理に先立って、貴金属のカチオン性錯体を担体表面上にカチオンとして結合担持させた担体について、水洗、乾燥などを施してもよい。
【0030】
析出沈殿法を用いる場合には、例えば貴金属化合物を含む水溶液に担体を共存させ、貴金属含有沈殿物を担体表面上に析出沈殿させた後、貴金属含有沈殿物が析出した担体を焼成することによって貴金属担持体を得ることができる。貴金属含有沈殿物を担体表面上に析出沈殿させる場合には、上記水溶液の貴金属濃度、温度、pH等の諸条件を適宜制御すれば良い。また、貴金属含有沈殿物が析出した担体について、必要に応じて、焼成に先立って水洗、乾燥等を施しても良い。
【0031】
含浸法を用いる場合には、例えば貴金属化合物を含む溶液に担体を共存させ、貴金属化合物を担体表面上に吸着させた後、焼成および/または還元処理などを経て貴金属担持体を得ることができる。貴金属化合物を担体表面上に吸着させる場合には、上記溶液の貴金属化合物濃度、温度、pHなどの諸条件を適宜制御すればよい。また、貴金属化合物を担体表面上に吸着させた担体について、焼成および/または還元処理に先だって、洗浄、乾燥などを施してもよい。
【0032】
上記貴金属化合物は、水または有機溶媒に溶解する化合物であれば特に限定されない。例えば、金化合物としては、テトラクロロ金(III)酸「H〔AuCl4〕」、テトラクロロ金(III)酸ナトリウム「Na〔AuCl4〕」、ジシアノ金(I)酸カリウム「K〔Au(CN)2〕」、ジエチルアミン金(III)三塩化物「(C2H5)2NH〔AuCl3〕」等の錯体;シアン化金(I)等が挙げられる。これらの化合物は少なくとも1種を用いることができる。パラジウム化合物としては、酸化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、テトラアンミンパラジウム水酸塩、パラジウムアセチルアセトナート、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウムなどを例示することができる。ルテニウム化合物としては、例えば、酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、硝酸ルテニウム、テトラアンミンルテニウム塩化物、テトラアンミンルテニウム硝酸塩、テトラアンミンルテニウム水酸塩、ルテニウムアセチルアセトナート、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを例示できる。
【0033】
上記水溶液の貴金属濃度は、用いる化合物の種類等によって異なるが、通常は0.1〜100mmol/L程度とすれば良い。また、上記水溶液のpHは、通常5〜10程度、好ましくは6〜9程度に設定すれば良い。上記pHは、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等のアルカリにより調節することができる。また、必要により、塩酸等の酸を使用することもできる。これらのアルカリ又は酸は、必要により水溶液の形態で使用しても良い。
【0034】
貴金属担持体を製造する際の焼成は、例えば以下のようにして行うことができる。必要に応じて、焼成に先立って予め所定温度に加熱して乾燥しても良い。乾燥温度は、通常150℃未満程度とすれば良い。焼成温度は、通常150〜800℃程度、好ましくは200〜700℃程度、より好ましくは250〜600℃程度とすれば良い。焼成雰囲気は空気(大気)中又は酸化性雰囲気中でも良いし、あるいは窒素、アルゴンガス、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中、水素ガス、一酸化炭素等の還元性雰囲気中のいずれであっても良い。また、焼成時間は、焼成温度、固形分の大きさ等に応じて適宜決定すれば良い。かかる焼成によって、貴金属が担体表面に強固に固定された所定の貴金属担持体を得ることができる。上記の方法などにより得られた貴金属担持体は、以下に述べるように更に第二元素を担持してから触媒として用いてもよいが、貴金属担持体のままでも、本発明では触媒として用いることができる。
【0035】
次に、第二元素及びその化合物の少なくとも1種を貴金属担持体に担持した後、熱処理することにより貴金属と第二元素とを複合化させる。
【0036】
上記の担持方法は限定的でなく、従来方法に従って行うことができる。例えば、含浸法、イオン交換法、気相蒸着法等が挙げられる。このうち、含浸法が好適に使用できる。例えば、第二元素を含む化合物が溶解した溶液と上記貴金属担持体との混合物を調製した後、当該混合物から回収された固形分を熱処理することにより好適に第二元素を担持することができる。
【0037】
第二元素を含む化合物としては、特に限定されないが、例えば、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、塩化物等の無機化合物、ギ酸塩、酢酸塩、β−ジケトン化合物、アルコキサイド等の有機化合物を例示することができる。より具体的には、酢酸鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硝酸ビスマス、ゲルマニウム(III)ブトキシド、ニッケルビスマスアセチルアセトナート、酢酸鉄等を挙げることができる。
【0038】
第二元素を含む化合物が溶解した溶液は、第二元素を含む化合物及びそれが溶解する溶媒の組合せを用いることにより調製できる。溶媒としては特に限定はないが、水、有機溶媒等を用いることができる。有機溶媒としては、例えばアルコール、ケトン、芳香族炭化水素、カルボン酸エステル、ニトリル等を挙げることができる。特に、水及びアルコール(特にメタノール及びエタノール)の少なくとも1種を用いることが好ましい。従って、上記組合せは、水又はアルコールに溶解する上記化合物を用いることが好ましい。例えば、第二元素としてPbを用いる場合は、酢酸鉛(水和物でも良い。)をメタノールに溶解させた溶液を好適に用いることができる。
【0039】
第二元素を含む化合物が溶解した溶液の第二元素濃度は、上記化合物の種類、溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、通常は0.01〜10mmol/L程度にすれば良い。
【0040】
また、上記貴金属担持体と、第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合割合は、上記溶液の濃度、貴金属又は第二元素の所望の担持量等に応じて適宜決定することができる。
【0041】
上記貴金属担持体と、第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合物を調製した後、当該混合物から固形分を回収する。固形分の回収方法は限定的ではないが、例えば第二元素を含む化合物を貴金属担持体に担持されるようにすれば良い。例えば、エバポレーター等により溶媒を留去することが好ましい。
【0042】
次いで、固形分の熱処理を実施する。熱処理温度は、得られる各金属粒子が貴金属及び第二元素から構成されるような温度とすれば良い。すなわち、最終的に得られる貴金属属粒子担持体を触媒として用いた場合に貴金属と第二元素との複合化による触媒活性が発現されるように熱処理すれば良い。
【0043】
かかる熱処理温度は、第二元素の種類等によって異なるが一般的には50〜800℃程度、好ましくは100〜600℃程度とすれば良い。
【0044】
熱処理雰囲気は特に限定されず、還元性雰囲気、酸化性雰囲気、不活性雰囲気等のいずれでも良い。還元性雰囲気とするためには、例えば水素、一酸化炭素、アルコール等の還元性ガスのほか、これらの還元性ガスを窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した混合ガスを使用すれば良い。また、酸化性雰囲気とするためには、酸素、空気等を含むガスを使用すれば良い。不活性雰囲気とするためには、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを使用すれば良い。本発明では、特に還元性雰囲気とすることが望ましい。また、酸化性雰囲気で熱処理した後、還元性雰囲気で熱処理することもできる。
【0045】
また、熱処理時間は、熱処理の温度等によって適宜変更することができるが、通常10分〜24時間程度とすれば良い。
【0046】
第二元素の種類によっては、貴金属との複合化をさらに促進するために、上記熱処理に先立ってホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ギ酸等の還元剤を用いて固形分を還元処理しても良い。
【0047】
方法(B)
上記(B)の方法は、第二元素を担体に担持した後、貴金属を担持する方法である。第二元素に担持する方法は限定的でなく、例えば上記(A)と同様の方法を使用できる。すなわち、担体にまず上記(A)と同様の方法にて第二元素を担持すれば良い。第二元素の原料、担持条件等も、上記(A)で掲げたものと同様にすれば良い。
【0048】
ただし、場合によっては、その後の貴金属担持操作上好ましい付加的処理として、酸化性雰囲気下(空気又は酸素を含むガスの存在下)300〜900℃程度で焼成することにより第二元素を担体に強固に固定化することができる。
【0049】
こうして製造された第二元素担持体への貴金属の担持は、上記(A)と同様の方法にて実施できる。すなわち、イオン交換法、析出沈殿法、含浸法等により貴金属を担持した後、乾燥及び焼成を上記(A)と同様にして実施すれば良い。また、上記(A)と同様、貴金属と第二元素との複合化をより十分なものとするために、上記(A)と同様の還元性雰囲気下での熱処理を行うことが望ましい。また、必要に応じて、さらに還元剤を用いた還元処理を組み合わせることもできる。
【0050】
方法(C)
上記(C)の方法は、貴金属と第二元素とを同時に担体に担持する方法である。その方法は、両者を同時に担持できれば限定されない。例えば、共沈法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の従来の方法が使用できる。いずれの場合も、担体に貴金属を担持する際に、系内に第二元素を含む化合物を共存させることによって両者を同時に担持することができる。さらに、両者を担持したものを上記の方法(A)又は(B)と同様に熱処理及び/又は還元処理を施すことにより、貴金属及び第二元素を含む貴金属属超微粒子が担体上に担持された触媒を得ることができる。
【0051】
本発明では、イオン交換法、析出沈殿法、含浸法などを好適に使用することができる。析出沈殿法では、貴金属を含む化合物(例えば水酸化物)として析出し、沈殿を形成しやすい条件(例えば、上記化合物が水酸化物である場合、温度30〜100℃程度、pH5〜10程度、貴金属濃度0.1〜100mmol/L程度)において、第二元素を含む化合物が析出し、沈殿を形成するように制御することが望ましい。この場合、第二元素を含む水溶性化合物を出発原料として用い、その水溶液から第二元素を含む水酸化物として沈殿を形成させることが望ましい。また、沈殿形成の際に、貴金属と第二元素の各水酸化物が同時に沈殿を形成し、貴金属及び第二元素とをともに含有する水酸化物を生成することが望ましい。これらの沈殿物は、さらに熱処理及び/又は還元処理を施すことによって触媒を得ることができる。
【0052】
含浸法では、貴金属化合物及び第二元素を含む化合物が有機溶媒中に溶解した溶液に担体を加え、必要により有機溶媒の留去等を行うことにより、貴金属化合物及び第二元素を含む化合物を同時に担体上に付着させ、次いで熱処理及び/又は還元処理を施すことによって触媒を得ることができる。典型例として、金の場合について例示すると、金のアセチルアセトナート化合物(例えば、ジメチル金アセチルアセトナート)と第二元素のアセチルアセトナート化合物(例えば、ニッケルアセチルアセトナート)とを含有するメタノール溶液を担体に含浸させ、メタノールを留去した後、乾燥及び還元処理することによって、金及び第二元素を含有する金合金超微粒子(例えば、Au−Ni合金超微粒子)が担体に担持された触媒を得ることができる。
【0053】
上記の析出沈殿法又は含浸法で使用される原料化合物、操作条件等は、前記の方法(A)で示したものを適用できる。
【0054】
3.酸触媒
本発明において用いる酸触媒は、エステル交換反応に対して活性を有する酸性物質であれば特に制限されない。
【0055】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸;カルボン酸、スルホン酸などの有機酸;カルボキシル基,スルホン基などを有するH型陽イオン交換樹脂;酸性白土などの固体酸;リンタングステン酸(12タンスグストリン酸)などのヘテロポリ酸;塩化アルミニウムなどの金属塩等を例示することができる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、酪酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、安息香酸など例示することができる。スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などを例示することができる。これらの酸触媒の中では、H型陽イオン交換樹脂が好ましい。
【0056】
4.反応原料
本発明において用いる1,2−ジオールは、1位と2位に水酸基を有する限り特に限定されず、例えば、3価以上の多価アルコールであってもよい。上記1,2−ジオールの具体例として、例えば、エチレングリコール、1,2−プロプレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどの炭素数2〜10の脂肪族1,2−ジオール;グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの1位と2位に水酸基を有する炭素数3〜10の脂肪族多価アルコールなどのほか、これら1,2−ジオールの誘導体などが挙げられる。1,2−ジオールの誘導体としては、例えば、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどのハロゲンを含有する炭素数2〜10の脂肪族1,2−ジオール;2−フェニル−1,2−エタンジオールなどの芳香環を有する炭素数2〜10の脂肪族1,2−ジオールなどが挙げられる。1,2−ジオールとしては、エチレングリコールなどの炭素数2〜6程度の脂肪族ジオールを好適に使用できる。これら1,2−ジオールは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0057】
本発明において用いる1級アルコールは、1級水酸基を有する限り特に制限されず、例えば、2価以上の多価アルコールであってもよい。1級アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノールなどの炭素数1〜10の脂肪族1級アルコール;1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどの1級水酸基を有する炭素数2〜10の脂肪族多価アルコール;アリルアルコール、メタリルアルコール等の1級水酸基を有する炭素数3〜10の脂肪族不飽和アルコール;ベンジルアルコール等の芳香環を有するアルコール等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの炭素数1〜4の脂肪族1級アルコールを好適に使用でき、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの1価アルコールが特に好ましい。これら1級アルコールは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0058】
本発明の製造方法では、目的とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの種類等によって上記1,2−ジオール及び1級アルコールを適宜選択すれば良い。例えば、グリコール酸エステルを合成する場合には、1,2−ジオールとしてエチレングリコールと使用し、1級アルコールとしてメタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの1級アルコールを使用すれば良い。
【0059】
5.α−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法
本発明のα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法では、担持型金属触媒と酸触媒とを用いる。担持型金属触媒は、1,2−ジオールと1級アルコールと酸素とを反応させて、α−ヒドロキシカルボン酸エステルと水とを生成する反応において触媒として作用する。この反応の副反応として、1,2−ジオールどうしと酸素が反応しα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルが副生する反応が起こる。酸触媒は、副生成物であるα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルと1級アルコールとがエステル交換反応をし、α−ヒドロキシカルボン酸エステルが生成する反応において触媒として作用する。
【0060】
担持型金属触媒と酸触媒は、共存させて使用してもよい。例えば、両者とも反応初期から添加し、一段階反応としてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造してもよい。または、先ず、担持型金属触媒の存在下、1,2−ジオールと1級アルコールとを酸素酸化させた後に、反応混合物に酸触媒を添加してもよい。即ち、以下に示すような2工程を有する2段階反応としてもよい。
【0061】
(1)金属を担体に担持してなる触媒の存在下、1,2−ジオールと1級アルコールとを酸素酸化させてα−ヒドロキシカルボン酸エステル及びα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルを含む反応混合物を得る第一工程、及び
(2)第一工程において得られた反応混合物と酸触媒の存在下、α−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルと1級アルコールとをエステル交換反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得る第二工程。
【0062】
(1) 一段階反応について
本発明は、金属を担体に担持してなる触媒および酸触媒の存在下、1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を一段階反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法を含む。酸素(酸素ガス)は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスで希釈されていても良い。また、空気等の酸素含有ガスを用いることもできる。酸素含有ガスの反応系への供給方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。特に、液中へのバブリング等を好適に用いることができる。
【0063】
上記反応の形態としては、連続式、回分式、半回分式等のいずれであっても良く、特に限定されるものではない。担持型金属触媒は、反応形態として回分式を採用する場合には、反応装置に原料とともに一括して仕込めば良い。また、反応形態として連続式を採用する場合には、反応装置に予め担持型金属触媒を充填しておくか、あるいは反応装置に原料とともに担持型金属触媒を連続的に仕込めば良い。担持型金属触媒は、固定床、流動床、懸濁床等のいずれの形態であっても良い。また、酸触媒として、固体酸触媒を用いる場合には、担持型金属触媒と同様の方法により仕込めばよい。また、固体酸触媒以外の酸触媒は、単に添加すればよい。
【0064】
1,2−ジオールと1級アルコールとの反応割合は特に限定されないが、1,2−ジオールに対する1級アルコールのモル比は、通常1:2〜50程度であり、1:3〜20程度がより好ましい。上記範囲内とすることにより、より効率的にα−ヒドロキシカルボン酸エステルを合成することが可能になる。
【0065】
担持型金属触媒および酸触媒の使用量は、原料である1,2−ジオールまたは1級アルコールの種類、触媒の種類、反応条件等に応じて適宜決定すれば良い。酸触媒の使用量の上限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常10重量部程度であり、好ましくは5重量部程度である。酸触媒の使用量の下限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常0.1重量部程度であり、好ましくは0.5重量部程度である。担持型金属触媒の使用量の上限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常30重量部程度であり、好ましくは15重量部程度である。担持型金属触媒の使用量の下限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常0.2重量部程度であり、好ましくは1重量部程度である。なお、溶媒を用いる場合には、反応混合物の重量に溶媒の重量を含めるものとする。
【0066】
反応時間は特に限定されるものではなく、通常は反応時間又は滞留時間(反応器内滞留液量/液供給量)として、設定した条件などにより適宜設定することができる。反応時間又は滞留時間の上限は、通常20時間程度、好ましくは10時間程度である。反応時間又は滞留時間の下限は、通常0.5時間程度、好ましくは1時間程度である。
【0067】
反応温度、反応圧力等の諸条件は、原料である1,2−ジオールまたは1級アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜決定すれば良い。反応温度の上限は、通常180℃程度、好ましくは150℃程度、より好ましくは120℃程度である。反応温度の下限は、通常0℃程度、好ましくは20℃程度、より好ましくは50℃程度とすれば良い。この範囲内の温度に設定することにより、いっそう効率的に反応を進行させることができる。反応圧力は、減圧、常圧又は加圧のいずれであっても良い。反応圧力(ゲージ圧)の上限は、通常5MPa程度であり、2MPa程度が好適である。反応圧力(ゲージ圧)の下限は、通常0.05MPa程度であり、0.1MPa程度が好適である。反応器流出ガスの酸素濃度が爆発範囲(5.5%)を超えないように全圧を設定すれば良い。また、反応系のpHは、副生成物抑制等の見地よりpH2〜9程度とすることが望ましい。pH調節のために、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物(カルボン酸塩)を反応系への添加剤として使用することもできる。
【0068】
1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素の反応は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒を用いることにより、目的とするカルボン酸エステルを効率良く製造できる場合がある。使用できる溶媒としては、原料である1,2−ジオールまたは1級アルコールを溶解し、反応条件下で自ら反応しにくいものであれば限定的でなく、原料アルコールの種類、反応条件等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、水のほか、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン含有化合物等を挙げることができる。溶媒の使用量は、溶媒の種類、アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
【0069】
1,2−ジオールと1級アルコールとの反応後は、反応系から触媒を分離した後、生成したα−ヒドロキシカルボン酸エステルを公知の分離精製手段等を用いて回収すれば良い。触媒の分離方法は公知の方法に従えば良い。例えば、酸触媒として固体酸触媒を用いる場合には、金属担持触媒とともに、ろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて触媒を分離することができる。酸触媒として固体酸触媒以外の酸触媒を用いる場合には、例えば、予め金属担持触媒をろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて分離した後、中和処理し、塩として酸触媒をろ過分離することができる。中和処理に用いる塩基性物質は、特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを例示できる。
【0070】
(2) 二段階反応について
本発明の製造方法は、以下のような二工程を含む二段階反応であってもよい。
(1)金属を担体に担持してなる触媒の存在下、1,2−ジオールと1級アルコールとを酸素酸化させてα−ヒドロキシカルボン酸エステル及びα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルを含む反応混合物を得る第一工程、及び
(2)第一工程において得られた反応混合物と酸触媒の存在下、α−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルと1級アルコールとをエステル交換反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得る第二工程。
【0071】
▲1▼第一工程
上記第一工程の反応条件は、上述の(1)一段階反応と同様の条件としてよい。但し、1,2−ジオールと1級アルコールとの反応割合については、反応初期から上述した反応割合となるよう1,2−ジオールと1級アルコールとを仕込んでも良く、または、第二工程に先立って、1級アルコールを追加してもよい。第二工程に先立って1級アルコールを追加する場合には、1級アルコールの仕込量と添加量との合計が、上記の反応割合となればよい。
【0072】
担持型金属触媒の使用量の上限は、担持型金属触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常30重量部程度であり、好ましくは15重量部程度である。担持型金属触媒の使用量の下限は、担持型金属触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常0.2重量部程度であり、好ましくは1重量部程度である。なお、溶媒を用いる場合には、反応混合物の重量に溶媒の重量を含めるものとする。
【0073】
第一工程において得られた反応混合物を、第二工程において用いる。第一工程において得られた反応混合物には、α−ヒドロキシカルボン酸エステルが含まれる。第二工程に先立って反応混合物中のα−ヒドロキシカルボン酸エステルの一部又は全部を除去してから、第二工程に用いてもよい。また、第一工程において得られた反応混合物には、担持型金属触媒も含まれる。第二工程に先立って、反応混合物中の担持型金属触媒の一部又は全部を除去してから、第二工程に用いてもよい。
【0074】
▲2▼第二工程
第二工程は、不活性ガス雰囲気下、酸素雰囲気下などにおいて反応させることができる。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウムなどの希ガス、窒素などを例示することができる。
【0075】
第二工程の反応形態としては、連続式、回分式、半回分式等のいずれであっても良く、特に限定されるものではない。反応形態として回分式を採用する場合には、反応装置に原料とともに一括して仕込めば良い。また、反応形態として連続式を採用し、酸触媒として固体酸触媒を用いる場合には、反応装置に予め固体酸触媒を充填しておくか、あるいは反応装置に原料とともに固体酸触媒を連続的に仕込めば良い。固体酸触媒は、固定床、流動床、懸濁床等のいずれの形態であっても良い。固体酸触媒以外の酸触媒は、単に添加すればよい。
【0076】
酸触媒の使用量は、原料である1,2−ジオールまたは1級アルコールの種類、触媒の種類、反応条件等に応じて適宜決定すれば良い。酸触媒の使用量の上限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常10重量部程度であり、好ましくは5重量部程度である。酸触媒の使用量の下限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常0.1重量部程度であり、好ましくは0.5重量部程度である。なお、溶媒を用いる場合には、反応混合物の重量に溶媒の重量を含めるものとする。
【0077】
第二工程の反応時間は特に限定されるものではなく、通常は反応時間又は滞留時間(反応器内滞留液量/液供給量)として、設定した条件などにより適宜設定することができる。反応時間又は滞留時間の上限は、通常20時間程度、好ましくは10時間程度である。反応時間又は滞留時間の下限は、通常0.5時間程度、好ましくは1時間程度である。
【0078】
反応温度、反応圧力等の諸条件は、原料である1,2−ジオールまたは1級アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜決定すれば良い。反応温度の上限は、通常180℃程度、好ましくは150℃程度、より好ましくは120℃程度である。反応温度の下限は、通常0℃程度、好ましくは20℃程度、より好ましくは50℃程度とすれば良い。この範囲内の温度に設定することにより、いっそう効率的に反応を進行させることができる。反応圧力は、減圧、常圧又は加圧のいずれであっても良い。反応圧力(ゲージ圧)の上限は、通常5MPa程度であり、2MPa程度が好適である。反応圧力(ゲージ圧)の下限は、通常0.05MPa程度であり、0.1MPa程度が好適である。反応器流出ガスの酸素濃度が爆発範囲(5.5%)を超えないように全圧を設定すれば良い。また、反応系のpHは、副生成物抑制等の見地よりpH2〜9程度とすることが望ましい。pH調節のために、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物(カルボン酸塩)を反応系への添加剤として使用することもできる。
【0079】
第二工程の反応は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒を用いることにより、目的とするカルボン酸エステルを効率良く製造できる場合がある。使用できる溶媒としては、1,2−ジオールまたは1級アルコールを溶解し、反応条件下で自ら反応しにくいものであれば限定的でなく、原料アルコールの種類、反応条件等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、水のほか、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン含有化合物等を挙げることができる。溶媒の使用量は、溶媒の種類、アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
【0080】
エステル交換反応の反応後は、反応系から触媒を分離した後、生成したカルボン酸エステルを公知の分離精製手段等を用いて回収すれば良い。触媒の分離方法は公知の方法に従えば良い。例えば、酸触媒として固体酸触媒を用いる場合には、ろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて触媒を分離することができる。第一工程において得られた反応混合物に金属担持触媒が含まれる場合には、この時、固体酸触媒と同時に分離すればよい。酸触媒として固体酸触媒以外の酸触媒を用いる場合には、例えば、予め金属担持触媒をろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて分離した後、中和処理し、塩として酸触媒をろ過分離することができる。中和処理に用いる塩基性物質は、特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを例示できる。
【0081】
本発明の製造方法において、例えば1,2−ジオールとしてエチレングリコールを使用し、1級アルコールとして1級アルコール(好ましくは炭素数1〜4の1級アルコール)を用いると、グリコール酸エステルを製造することができる。反応後得られた溶液には、主生成物としてグリコール酸エステルが含まれ、場合によっては、未反応の原料である1級アルコールおよびエチレングリコールが含まれる。更に、反応溶液には、副生成物として、水が含まれ、場合によっては、1級アルコール由来のカルボン酸エステル(例えば1級アルコールとしてメタノールを使用した場合には、ギ酸メチルなど)、シュウ酸エステル、加水分解生成物であるグリコール酸、シュウ酸、シュウ酸モノエステルなどが含まれる。
【0082】
このような反応溶液から目的物であるグリコール酸エステルを単離する方法として、先ず1級アルコールおよび水を留去した後、グリコール酸エステルを蒸留により分離する方法を容易に実施可能な方法として例示できる。グリコール酸エステルを蒸留すると、未反応のエチレングリコールは、蒸留ボトムに含まれる。この時回収された1級アルコールおよびグリコール酸エステルを含む蒸留ボトムは、グリコール酸エステルを製造する時の原料として再利用することができる。
【0083】
触媒を分離した後などに、グリコール酸エステルを蒸留することにより、より高純度のグリコール酸エステルを高収率で分離精製することができる。グリコール酸エステルの蒸留に先立って、1級アルコールおよび水を留去しておくことが、通常好ましい。グリコール酸エステルの蒸留は、公知の方法を用いることができ、例えば、バッチ式蒸留装置として、仕込み釜、精留部、コンデンサー部などを備えた還流を行える通常の装置を用いることができる。
【0084】
上記の方法などにより水およびアルコールを留去し、更に蒸留することにより得られたグリコール酸エステルであっても、未反応原料の1級アルコールとエチレングリコール、更に生成水を含有する場合がある。前記グリコール酸に含まれる1級アルコールは、通常1重量%以下程度であり、精製条件によっては0.2重量%以下程度とすることができる。また、エチレングリコールの含有量は、通常1重量%以下程度であり、精製条件によっては1000重量ppm以下程度とすることができる。水の含有量は、通常1重量%以下程度であり、精製条件によっては0.2重量%以下程度とすることができる。なお、シュウ酸エステルの含有量は、通常0.1重量%以上、より具体的には0.1〜2重量%程度である。
【0085】
また、本発明において得られたグリコール酸エステルには、ホルムアルデヒドおよび塩素はいずれも実質的に含まれない。本発明では、ホルムアルデヒドおよび塩素はいずれも原料として使用せず、また、反応においてもほとんど生成しないからである。本発明によると、ホルムアルデヒドおよび塩素の含有量が、いずれも1重量ppm以下程度、好ましくは100重量ppb以下程度、更に好ましくは10重量ppb以下程度のグリコール酸エステルを提供できる。
【0086】
本発明の製造方法で得られるα−ヒドロキシカルボン酸エステルは、従来技術で得られるα−ヒドロキシカルボン酸エステルと同様の用途に使用することができる。特に、ポリグリコール酸の原料となる重合用モノマーとして好適に用いることができる。
【0087】
【発明の効果】
本発明の方法によると、高い選択率でα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得ることができる。
【0088】
本発明により得られたα−ヒドロキシカルボン酸エステルは、通常、蒸留などの容易な方法で精製することができる。従って、本発明の方法によると、低コストでα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造することができる。
【0089】
本発明の製造方法によると、不純物としてホルムアルデヒドおよび塩素を実質的に含まないグリコール酸エステルを得ることができる。
【0090】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。但し、本発明の範囲は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
【0091】
なお、実施例における物性の測定等は、次のような方法で実施した。
(1)金属微粒子の担持量
蛍光X線分析により測定した。
(2)金属微粒子の平均粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)(装置名「HF−2000」日立製作所、加速電圧200kV)で粒子径を観察し、付属のX線分析装置により粒子の成分分析を行った。
(3)反応生成物の定量
ガスクロマトグラフィー及び/又は液体クロマトグラフィーにより、反応液中の反応生成物の成分を定量分析した。
【0092】
実施例1
第一工程
エチレングリコール(2.2g)、メタノール(11.9g)および酸素を、担持型金属触媒の存在下、液相において反応させた。担持型金属触媒は、シリカ上に20重量%の酸化チタンを担持したチタニア・シリカ担体に、金を前記担体の5重量%担持させた触媒を使用した。触媒に担持された金の平均粒子径は、3nmであった。240分間反応させた後、担持型金属触媒を濾別除去して、反応液を得た。
【0093】
得られた反応液には、グリコール酸メチル14.2重量%、グリコール酸2−ヒドロキシエチル1.4重量%、シュウ酸ジメチル0.1重量%、ギ酸メチル1.7重量%、グリコール酸0.6重量%、水7.1重量%、未反応のエチレングリコール3.2重量%およびメタノール71.7重量%が含まれていた。
【0094】
第二工程
第一工程において得られた反応液10.0gに、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸0.03gを添加し、オートクレーブ内において密閉し、窒素置換後、2kgfcm−2に加圧し、撹拌しながら90℃で2時間保持した。冷却後、窒素を大気中に放出させてオートクレーブ内部を常圧に戻した。
【0095】
得られた反応混合物は、約10.0gであり、グリコール酸メチル14.7重量%、グリコール酸2−ヒドロキシエチル0.5重量%、シュウ酸ジメチル0.1重量%、グリコール酸1.0重量%、ギ酸メチル1.3重量%、水7.0重量%、エチレングリコール3.6重量%およびメタノール71.8重量%が含まれていた。
【0096】
酸触媒とともに反応させることにより、グリコール酸メチルが増加し、グリコール酸2−ヒドロキシエチルが減少した。
【0097】
実施例2
スルホン基を有するH型陽イオン交換樹脂(DOWEX HCR−W1)を酸触媒として更に添加した以外は、実施例1の第一工程と同様にして、エチレングリコール、メタノールおよび酸素を液相において反応させた。240分間反応させた後、担持型金属触媒および酸触媒を濾別除去して、反応液を得た。
【0098】
得られた反応液には、グリコール酸メチル14.8重量%、グリコール酸2−ヒドロキシエチル0.7重量%、シュウ酸ジメチル0.1重量%、ギ酸メチル2.2重量%、グリコール酸0.8重量%、水7.4重量%、未反応のエチレングリコール3.2重量%およびメタノール70.8重量%が含まれていた。
【0099】
実施例1の第一工程において得られた反応液と比較すると、グリコール酸メチルの含有率が高くなり、グリコール酸2−ヒドロキシエチルの含有率が低下した。即ち、酸触媒を用いることで、グリコール酸メチルが増加するとともに、グリコール酸2−ヒドロキシエチルが減少した。
【0100】
実施例1と2から明らかなように、担持型金属触媒と酸触媒を用いることにより、所望とするグリコール酸メチルの選択性が向上した。また、高純度のα−ヒドロキシカルボン酸を用いる場合に比べて、低コストでグリコール酸メチルを製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
α−ヒドロキシカルボン酸エステルは、ポリグリコール酸などの各種の合成樹脂の原料となる重合用モノマーなどとして工業的に重要な化合物である。従来、α−ヒドロキシカルボン酸エステルは、α−ヒドロキシカルボン酸とアルコールとを反応させてエステル化することにより製造される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、工業用グレードのα−ヒドロキシカルボン酸は、水溶液であるうえに純度が低いので、従来の方法では、高純度のα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得ることが困難である。また、高純度のα−ヒドロキシカルボン酸を用いた場合には、原料が高価であるので、経済性よくα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得ることができない。
【0004】
従って、本発明の主な目的は、より低コストで高純度のα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以前、かかる従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を金属を担体に担持してなる触媒の存在下において反応させる方法を見出した。
【0006】
しかしながら、この方法であっても、α−ヒドロキシカルボン酸エステルの選択率を改善する余地がある。
【0007】
そこで、本発明者は、従来技術の問題点を解決し且つ収率を改善するために更に鋭意研究を重ねた結果、1,2−ジオールと1級アルコールと酸素とを反応させる際に、金属を担体に担持してなる触媒および酸触媒を用いると上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記のα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法に係るものである。
1.1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法において、(a)金属を担体に担持してなる触媒および(b)酸触媒を使用することを特徴とする製造方法。
2.1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法において、
(1)金属を担体に担持してなる触媒の存在下、1,2−ジオールと1級アルコールとを酸素酸化させてα−ヒドロキシカルボン酸エステル及びα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルを含む反応混合物を得る第一工程、及び
(2)第一工程において得られた反応混合物と酸触媒の存在下、α−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルと1級アルコールとをエステル交換反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得る第二工程
を有することを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
3.(a)金属を担体に担持してなる触媒および(b)酸触媒の共存下、1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させる上記1に記載の製造方法。
4.1級アルコールが、メタノールであり、酸触媒が、H型陽イオン交換樹脂である上記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5.第二工程に先立って、反応混合物中のα−ヒドロキシカルボン酸エステルの一部又は全部を除去する工程を有する上記2に記載の製造方法。
6.1,2−ジオールが、エチレングリコールである上記1〜5の何れかに記載の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法において、(a)金属を担体に担持してなる触媒(以下、「担持型金属触媒」ということがある)および(b)酸触媒を使用することを特徴とする製造方法に係る。
【0010】
1.担持型金属触媒
(1)触媒活性成分
本発明においては、活性成分である金属が担体に担持された触媒、即ち担持型金属触媒を用いる。
【0011】
活性成分である金属は、特に制限されないが、好ましくは貴金属であり、例えば、金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などを例示することができ、金、パラジウム、ルテニウムなどがより好ましい。
【0012】
本発明において用いる触媒は、上記の貴金属を必須成分として含み、更に、活性成分として、第4周期から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族および6B族並びに第4周期の8族からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有することができる。以下、これらの元素を第二元素ということがある。第二元素の具体例として、例えばZn, Cd, Hgなどの2B族;Ga, In, Tlなどの3B族;Ge, Sn, Pbなどの4B族;As, Sb, Biなどの5B族;Se, Te, Poなどの6B族;Fe, Co, Niなどの8族などを例示することができる。本発明において用いる触媒としては、第二元素として少なくともPbを含む触媒が好ましい。例えば、Au, PdおよびRuからなる群から選択される少なくとも1種の活性成分およびPbを含む金属微粒子が担体上に担持された触媒を好適に用いることができる。
【0013】
活性成分である金属は、上記貴金属を単独で含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。2種以上の貴金属を含む場合には、本発明の効果が得られる限り、一部又は全部が合金、金属間化合物等を形成していても良い。
【0014】
また、活性成分である金属が、貴金属と第二元素とを含む場合には、本発明の効果が得られる限り、一部又は全部が合金、金属間化合物等を形成していても良い。貴金属および第二元素は、通常微粒子として担体に担持されている。本発明において用いる触媒は、本発明の効果を妨げない範囲内で貴金属および第二元素以外の他の元素または不純物が含まれていても良い。
【0015】
活性成分である金属粒子の粒子径は、所定の触媒活性が得られる限り限定的ではないが、平均粒子径は、通常10nm以下程度、好ましくは6nm以下程度、より好ましくは5nm以下程度、特に好ましくは1〜5nm程度である。この範囲内に設定すれば、より確実に優れた触媒活性を得ることができる。平均粒子径の下限値は特に制限されないが、物理的安定性の見地より約1nm程度とすれば良い。
【0016】
なお、本発明における金属粒子の平均粒子径は、担体上の金属粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)による観察により任意に選んだ120個のうち、(1)大きい順に上から10個及び(2)小さい順に下から10個の合計20個を除いた100個の粒子径の算術平均値を示す。また、金属粒子の粒子径分布の極大値が1〜6nm程度、特に1〜5nm程度の範囲にあることが好ましい。粒子径の分布は狭い方が好ましく、上記120個の粒子径の標準偏差(Standard Deviation)が2以下程度、特に1.5以下程度であることが好ましい。
【0017】
触媒における金属活性成分の担持量は、最終製品の用途、担体の種類等に応じて適宜決定すれば良いが、通常は担体100重量部に対して0.01〜20重量部程度、特に0.1〜10重量部とすることが好ましい。
【0018】
(2)担体
担体としては、従来から触媒担体として用いられているものを使用することができ、特に限定されない。例えば、市販品を使用することができる。また、公知の製法によって得られるものも使用できる。例えば、金属酸化物(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等)、複合金属酸化物(シリカ・アルミナ、チタニア・シリカ、シリカ・マグネシア等)、ゼオライト(ZSM−5等)、メソポーラスシリケート(MCM−41等)などの無機酸化物;天然鉱物(粘土、珪藻土、軽石等);炭素材料(活性炭、黒鉛等)の各種担体を挙げることができ、これらの中では無機酸化物が好ましい。
【0019】
本発明では、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Sn、Pb、La及びCeの少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる無機酸化物担体を好ましく用いることができる。上記酸化物は、単体元素の酸化物が2以上混合された混合酸化物であっても良いし、あるいは複酸化物(又は複合酸化物)であっても良い。無機酸化物担体としては、Si、Al、TiおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物が好ましい。
【0020】
担体の製法も限定されず、公知の製法を用いることができる。例えば、含浸法、共沈法、イオン交換法、気相蒸着法、混練法、水熱合成法等が挙げられる。
【0021】
例えば、上記の無機酸化物担体は、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Sn、Pb、La及びCeの少なくとも1種を含む水溶性化合物の水溶液をシリカに含浸させた後、得られた含浸体を焼成する方法などによって得られる。かかる無機酸化物担体は、触媒活性成分である微粒子をより確実に担持できるとともに、微粒子との相乗的な作用によっていっそう高い触媒活性を得ることができる。
【0022】
上記の担体の製法で用いられる化合物は限定されない。例えば、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物等の無機化合物、カルボン酸塩、アルコキサイド、アセチルアセトナート等の有機化合物が挙げられる。
【0023】
上記の水溶性化合物も、水溶性であれば限定的でない。例えば、硫酸チタニル、硝酸ジルコニル、硝酸亜鉛、硝酸ランタン、硝酸鉄、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム等の無機酸塩;チタンn−ブトキシド、チタンアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、酢酸鉛、酢酸マグネシウム等の有機酸塩を挙げることができる。これらの塩は無水物又は水和物のいずれであっても良い。また、上記水溶液の濃度は、用いる水溶性化合物の種類等に応じて適宜設定できる。
【0024】
上記水溶液をシリカに含浸させる量は限定的ではないが、通常はシリカ100重量部に対して1〜20重量部程度となるようにすれば良い。
【0025】
本発明では、無機酸化物担体は多孔質であることが好ましく、特にその比表面積(BET法)が50m2/g以上程度のものが好ましく、100m2/g以上程度であることがより好ましく、100〜800m2/g程度のものが特に好ましい。担体の形状・大きさは限定的でなく、最終製品の用途等に応じて適宜決定すれば良い。
【0026】
2.担持型金属触媒の製造方法
担持型金属触媒の製造方法は、上記のような担持体が得られる限りその制限はない。例えば、所望の金属及びその化合物の少なくとも1種を含む担体を熱処理することによって得ることができる。金属の化合物は、水酸化物、塩化物、カルボン酸塩、硝酸塩、アルコキサイド、アセチルアトナート塩等のいずれであっても良い。
【0027】
また、担体に2種以上の金属を担持させる場合、担持させる順序も限定的でなく、いずれが先であっても良いし、また同時であっても良い。すなわち、(A)貴金属を担体に担持した後、第二元素を担持する方法、(B)第二元素を担体に担持した後、貴金属を担持する方法、(C)貴金属と第二元素とを同時に担体に担持する方法のいずれであってもよい。以下、各方法について説明する。
【0028】
方法(A)
上記(A)の方法は、貴金属を担体に担持した後、第二元素を担持する方法である。まず、貴金属が担持されてなる貴金属担持体を製造する。貴金属担持体の製法は限定的でなく、例えば、共沈法、イオン交換法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の従来の方法を適用でき、イオン交換法、析出沈殿法、含浸法等が好ましい。
【0029】
イオン交換法を用いる場合には、例えば貴金属のカチオン性錯塩を含む水溶液に担体を共存させ、貴金属のカチオン性錯体を担体表面上にカチオンとして結合担持させた後、焼成および/または還元処理などを経て貴金属担持体を得ることができる。貴金属のカチオン性錯体をイオン交換により担体表面上に担持させる場合には、上記水溶液の貴金属錯塩濃度、温度、pHなどの諸条件を適宜制御すればよい。また、焼成および/または還元処理に先立って、貴金属のカチオン性錯体を担体表面上にカチオンとして結合担持させた担体について、水洗、乾燥などを施してもよい。
【0030】
析出沈殿法を用いる場合には、例えば貴金属化合物を含む水溶液に担体を共存させ、貴金属含有沈殿物を担体表面上に析出沈殿させた後、貴金属含有沈殿物が析出した担体を焼成することによって貴金属担持体を得ることができる。貴金属含有沈殿物を担体表面上に析出沈殿させる場合には、上記水溶液の貴金属濃度、温度、pH等の諸条件を適宜制御すれば良い。また、貴金属含有沈殿物が析出した担体について、必要に応じて、焼成に先立って水洗、乾燥等を施しても良い。
【0031】
含浸法を用いる場合には、例えば貴金属化合物を含む溶液に担体を共存させ、貴金属化合物を担体表面上に吸着させた後、焼成および/または還元処理などを経て貴金属担持体を得ることができる。貴金属化合物を担体表面上に吸着させる場合には、上記溶液の貴金属化合物濃度、温度、pHなどの諸条件を適宜制御すればよい。また、貴金属化合物を担体表面上に吸着させた担体について、焼成および/または還元処理に先だって、洗浄、乾燥などを施してもよい。
【0032】
上記貴金属化合物は、水または有機溶媒に溶解する化合物であれば特に限定されない。例えば、金化合物としては、テトラクロロ金(III)酸「H〔AuCl4〕」、テトラクロロ金(III)酸ナトリウム「Na〔AuCl4〕」、ジシアノ金(I)酸カリウム「K〔Au(CN)2〕」、ジエチルアミン金(III)三塩化物「(C2H5)2NH〔AuCl3〕」等の錯体;シアン化金(I)等が挙げられる。これらの化合物は少なくとも1種を用いることができる。パラジウム化合物としては、酸化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、テトラアンミンパラジウム水酸塩、パラジウムアセチルアセトナート、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウムなどを例示することができる。ルテニウム化合物としては、例えば、酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、硝酸ルテニウム、テトラアンミンルテニウム塩化物、テトラアンミンルテニウム硝酸塩、テトラアンミンルテニウム水酸塩、ルテニウムアセチルアセトナート、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを例示できる。
【0033】
上記水溶液の貴金属濃度は、用いる化合物の種類等によって異なるが、通常は0.1〜100mmol/L程度とすれば良い。また、上記水溶液のpHは、通常5〜10程度、好ましくは6〜9程度に設定すれば良い。上記pHは、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等のアルカリにより調節することができる。また、必要により、塩酸等の酸を使用することもできる。これらのアルカリ又は酸は、必要により水溶液の形態で使用しても良い。
【0034】
貴金属担持体を製造する際の焼成は、例えば以下のようにして行うことができる。必要に応じて、焼成に先立って予め所定温度に加熱して乾燥しても良い。乾燥温度は、通常150℃未満程度とすれば良い。焼成温度は、通常150〜800℃程度、好ましくは200〜700℃程度、より好ましくは250〜600℃程度とすれば良い。焼成雰囲気は空気(大気)中又は酸化性雰囲気中でも良いし、あるいは窒素、アルゴンガス、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中、水素ガス、一酸化炭素等の還元性雰囲気中のいずれであっても良い。また、焼成時間は、焼成温度、固形分の大きさ等に応じて適宜決定すれば良い。かかる焼成によって、貴金属が担体表面に強固に固定された所定の貴金属担持体を得ることができる。上記の方法などにより得られた貴金属担持体は、以下に述べるように更に第二元素を担持してから触媒として用いてもよいが、貴金属担持体のままでも、本発明では触媒として用いることができる。
【0035】
次に、第二元素及びその化合物の少なくとも1種を貴金属担持体に担持した後、熱処理することにより貴金属と第二元素とを複合化させる。
【0036】
上記の担持方法は限定的でなく、従来方法に従って行うことができる。例えば、含浸法、イオン交換法、気相蒸着法等が挙げられる。このうち、含浸法が好適に使用できる。例えば、第二元素を含む化合物が溶解した溶液と上記貴金属担持体との混合物を調製した後、当該混合物から回収された固形分を熱処理することにより好適に第二元素を担持することができる。
【0037】
第二元素を含む化合物としては、特に限定されないが、例えば、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、塩化物等の無機化合物、ギ酸塩、酢酸塩、β−ジケトン化合物、アルコキサイド等の有機化合物を例示することができる。より具体的には、酢酸鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硝酸ビスマス、ゲルマニウム(III)ブトキシド、ニッケルビスマスアセチルアセトナート、酢酸鉄等を挙げることができる。
【0038】
第二元素を含む化合物が溶解した溶液は、第二元素を含む化合物及びそれが溶解する溶媒の組合せを用いることにより調製できる。溶媒としては特に限定はないが、水、有機溶媒等を用いることができる。有機溶媒としては、例えばアルコール、ケトン、芳香族炭化水素、カルボン酸エステル、ニトリル等を挙げることができる。特に、水及びアルコール(特にメタノール及びエタノール)の少なくとも1種を用いることが好ましい。従って、上記組合せは、水又はアルコールに溶解する上記化合物を用いることが好ましい。例えば、第二元素としてPbを用いる場合は、酢酸鉛(水和物でも良い。)をメタノールに溶解させた溶液を好適に用いることができる。
【0039】
第二元素を含む化合物が溶解した溶液の第二元素濃度は、上記化合物の種類、溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、通常は0.01〜10mmol/L程度にすれば良い。
【0040】
また、上記貴金属担持体と、第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合割合は、上記溶液の濃度、貴金属又は第二元素の所望の担持量等に応じて適宜決定することができる。
【0041】
上記貴金属担持体と、第二元素を含む化合物が溶解した溶液との混合物を調製した後、当該混合物から固形分を回収する。固形分の回収方法は限定的ではないが、例えば第二元素を含む化合物を貴金属担持体に担持されるようにすれば良い。例えば、エバポレーター等により溶媒を留去することが好ましい。
【0042】
次いで、固形分の熱処理を実施する。熱処理温度は、得られる各金属粒子が貴金属及び第二元素から構成されるような温度とすれば良い。すなわち、最終的に得られる貴金属属粒子担持体を触媒として用いた場合に貴金属と第二元素との複合化による触媒活性が発現されるように熱処理すれば良い。
【0043】
かかる熱処理温度は、第二元素の種類等によって異なるが一般的には50〜800℃程度、好ましくは100〜600℃程度とすれば良い。
【0044】
熱処理雰囲気は特に限定されず、還元性雰囲気、酸化性雰囲気、不活性雰囲気等のいずれでも良い。還元性雰囲気とするためには、例えば水素、一酸化炭素、アルコール等の還元性ガスのほか、これらの還元性ガスを窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した混合ガスを使用すれば良い。また、酸化性雰囲気とするためには、酸素、空気等を含むガスを使用すれば良い。不活性雰囲気とするためには、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを使用すれば良い。本発明では、特に還元性雰囲気とすることが望ましい。また、酸化性雰囲気で熱処理した後、還元性雰囲気で熱処理することもできる。
【0045】
また、熱処理時間は、熱処理の温度等によって適宜変更することができるが、通常10分〜24時間程度とすれば良い。
【0046】
第二元素の種類によっては、貴金属との複合化をさらに促進するために、上記熱処理に先立ってホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ギ酸等の還元剤を用いて固形分を還元処理しても良い。
【0047】
方法(B)
上記(B)の方法は、第二元素を担体に担持した後、貴金属を担持する方法である。第二元素に担持する方法は限定的でなく、例えば上記(A)と同様の方法を使用できる。すなわち、担体にまず上記(A)と同様の方法にて第二元素を担持すれば良い。第二元素の原料、担持条件等も、上記(A)で掲げたものと同様にすれば良い。
【0048】
ただし、場合によっては、その後の貴金属担持操作上好ましい付加的処理として、酸化性雰囲気下(空気又は酸素を含むガスの存在下)300〜900℃程度で焼成することにより第二元素を担体に強固に固定化することができる。
【0049】
こうして製造された第二元素担持体への貴金属の担持は、上記(A)と同様の方法にて実施できる。すなわち、イオン交換法、析出沈殿法、含浸法等により貴金属を担持した後、乾燥及び焼成を上記(A)と同様にして実施すれば良い。また、上記(A)と同様、貴金属と第二元素との複合化をより十分なものとするために、上記(A)と同様の還元性雰囲気下での熱処理を行うことが望ましい。また、必要に応じて、さらに還元剤を用いた還元処理を組み合わせることもできる。
【0050】
方法(C)
上記(C)の方法は、貴金属と第二元素とを同時に担体に担持する方法である。その方法は、両者を同時に担持できれば限定されない。例えば、共沈法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の従来の方法が使用できる。いずれの場合も、担体に貴金属を担持する際に、系内に第二元素を含む化合物を共存させることによって両者を同時に担持することができる。さらに、両者を担持したものを上記の方法(A)又は(B)と同様に熱処理及び/又は還元処理を施すことにより、貴金属及び第二元素を含む貴金属属超微粒子が担体上に担持された触媒を得ることができる。
【0051】
本発明では、イオン交換法、析出沈殿法、含浸法などを好適に使用することができる。析出沈殿法では、貴金属を含む化合物(例えば水酸化物)として析出し、沈殿を形成しやすい条件(例えば、上記化合物が水酸化物である場合、温度30〜100℃程度、pH5〜10程度、貴金属濃度0.1〜100mmol/L程度)において、第二元素を含む化合物が析出し、沈殿を形成するように制御することが望ましい。この場合、第二元素を含む水溶性化合物を出発原料として用い、その水溶液から第二元素を含む水酸化物として沈殿を形成させることが望ましい。また、沈殿形成の際に、貴金属と第二元素の各水酸化物が同時に沈殿を形成し、貴金属及び第二元素とをともに含有する水酸化物を生成することが望ましい。これらの沈殿物は、さらに熱処理及び/又は還元処理を施すことによって触媒を得ることができる。
【0052】
含浸法では、貴金属化合物及び第二元素を含む化合物が有機溶媒中に溶解した溶液に担体を加え、必要により有機溶媒の留去等を行うことにより、貴金属化合物及び第二元素を含む化合物を同時に担体上に付着させ、次いで熱処理及び/又は還元処理を施すことによって触媒を得ることができる。典型例として、金の場合について例示すると、金のアセチルアセトナート化合物(例えば、ジメチル金アセチルアセトナート)と第二元素のアセチルアセトナート化合物(例えば、ニッケルアセチルアセトナート)とを含有するメタノール溶液を担体に含浸させ、メタノールを留去した後、乾燥及び還元処理することによって、金及び第二元素を含有する金合金超微粒子(例えば、Au−Ni合金超微粒子)が担体に担持された触媒を得ることができる。
【0053】
上記の析出沈殿法又は含浸法で使用される原料化合物、操作条件等は、前記の方法(A)で示したものを適用できる。
【0054】
3.酸触媒
本発明において用いる酸触媒は、エステル交換反応に対して活性を有する酸性物質であれば特に制限されない。
【0055】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸;カルボン酸、スルホン酸などの有機酸;カルボキシル基,スルホン基などを有するH型陽イオン交換樹脂;酸性白土などの固体酸;リンタングステン酸(12タンスグストリン酸)などのヘテロポリ酸;塩化アルミニウムなどの金属塩等を例示することができる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、酪酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、安息香酸など例示することができる。スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などを例示することができる。これらの酸触媒の中では、H型陽イオン交換樹脂が好ましい。
【0056】
4.反応原料
本発明において用いる1,2−ジオールは、1位と2位に水酸基を有する限り特に限定されず、例えば、3価以上の多価アルコールであってもよい。上記1,2−ジオールの具体例として、例えば、エチレングリコール、1,2−プロプレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどの炭素数2〜10の脂肪族1,2−ジオール;グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの1位と2位に水酸基を有する炭素数3〜10の脂肪族多価アルコールなどのほか、これら1,2−ジオールの誘導体などが挙げられる。1,2−ジオールの誘導体としては、例えば、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどのハロゲンを含有する炭素数2〜10の脂肪族1,2−ジオール;2−フェニル−1,2−エタンジオールなどの芳香環を有する炭素数2〜10の脂肪族1,2−ジオールなどが挙げられる。1,2−ジオールとしては、エチレングリコールなどの炭素数2〜6程度の脂肪族ジオールを好適に使用できる。これら1,2−ジオールは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0057】
本発明において用いる1級アルコールは、1級水酸基を有する限り特に制限されず、例えば、2価以上の多価アルコールであってもよい。1級アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノールなどの炭素数1〜10の脂肪族1級アルコール;1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどの1級水酸基を有する炭素数2〜10の脂肪族多価アルコール;アリルアルコール、メタリルアルコール等の1級水酸基を有する炭素数3〜10の脂肪族不飽和アルコール;ベンジルアルコール等の芳香環を有するアルコール等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの炭素数1〜4の脂肪族1級アルコールを好適に使用でき、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの1価アルコールが特に好ましい。これら1級アルコールは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0058】
本発明の製造方法では、目的とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの種類等によって上記1,2−ジオール及び1級アルコールを適宜選択すれば良い。例えば、グリコール酸エステルを合成する場合には、1,2−ジオールとしてエチレングリコールと使用し、1級アルコールとしてメタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの1級アルコールを使用すれば良い。
【0059】
5.α−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法
本発明のα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法では、担持型金属触媒と酸触媒とを用いる。担持型金属触媒は、1,2−ジオールと1級アルコールと酸素とを反応させて、α−ヒドロキシカルボン酸エステルと水とを生成する反応において触媒として作用する。この反応の副反応として、1,2−ジオールどうしと酸素が反応しα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルが副生する反応が起こる。酸触媒は、副生成物であるα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルと1級アルコールとがエステル交換反応をし、α−ヒドロキシカルボン酸エステルが生成する反応において触媒として作用する。
【0060】
担持型金属触媒と酸触媒は、共存させて使用してもよい。例えば、両者とも反応初期から添加し、一段階反応としてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造してもよい。または、先ず、担持型金属触媒の存在下、1,2−ジオールと1級アルコールとを酸素酸化させた後に、反応混合物に酸触媒を添加してもよい。即ち、以下に示すような2工程を有する2段階反応としてもよい。
【0061】
(1)金属を担体に担持してなる触媒の存在下、1,2−ジオールと1級アルコールとを酸素酸化させてα−ヒドロキシカルボン酸エステル及びα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルを含む反応混合物を得る第一工程、及び
(2)第一工程において得られた反応混合物と酸触媒の存在下、α−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルと1級アルコールとをエステル交換反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得る第二工程。
【0062】
(1) 一段階反応について
本発明は、金属を担体に担持してなる触媒および酸触媒の存在下、1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を一段階反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法を含む。酸素(酸素ガス)は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスで希釈されていても良い。また、空気等の酸素含有ガスを用いることもできる。酸素含有ガスの反応系への供給方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。特に、液中へのバブリング等を好適に用いることができる。
【0063】
上記反応の形態としては、連続式、回分式、半回分式等のいずれであっても良く、特に限定されるものではない。担持型金属触媒は、反応形態として回分式を採用する場合には、反応装置に原料とともに一括して仕込めば良い。また、反応形態として連続式を採用する場合には、反応装置に予め担持型金属触媒を充填しておくか、あるいは反応装置に原料とともに担持型金属触媒を連続的に仕込めば良い。担持型金属触媒は、固定床、流動床、懸濁床等のいずれの形態であっても良い。また、酸触媒として、固体酸触媒を用いる場合には、担持型金属触媒と同様の方法により仕込めばよい。また、固体酸触媒以外の酸触媒は、単に添加すればよい。
【0064】
1,2−ジオールと1級アルコールとの反応割合は特に限定されないが、1,2−ジオールに対する1級アルコールのモル比は、通常1:2〜50程度であり、1:3〜20程度がより好ましい。上記範囲内とすることにより、より効率的にα−ヒドロキシカルボン酸エステルを合成することが可能になる。
【0065】
担持型金属触媒および酸触媒の使用量は、原料である1,2−ジオールまたは1級アルコールの種類、触媒の種類、反応条件等に応じて適宜決定すれば良い。酸触媒の使用量の上限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常10重量部程度であり、好ましくは5重量部程度である。酸触媒の使用量の下限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常0.1重量部程度であり、好ましくは0.5重量部程度である。担持型金属触媒の使用量の上限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常30重量部程度であり、好ましくは15重量部程度である。担持型金属触媒の使用量の下限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常0.2重量部程度であり、好ましくは1重量部程度である。なお、溶媒を用いる場合には、反応混合物の重量に溶媒の重量を含めるものとする。
【0066】
反応時間は特に限定されるものではなく、通常は反応時間又は滞留時間(反応器内滞留液量/液供給量)として、設定した条件などにより適宜設定することができる。反応時間又は滞留時間の上限は、通常20時間程度、好ましくは10時間程度である。反応時間又は滞留時間の下限は、通常0.5時間程度、好ましくは1時間程度である。
【0067】
反応温度、反応圧力等の諸条件は、原料である1,2−ジオールまたは1級アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜決定すれば良い。反応温度の上限は、通常180℃程度、好ましくは150℃程度、より好ましくは120℃程度である。反応温度の下限は、通常0℃程度、好ましくは20℃程度、より好ましくは50℃程度とすれば良い。この範囲内の温度に設定することにより、いっそう効率的に反応を進行させることができる。反応圧力は、減圧、常圧又は加圧のいずれであっても良い。反応圧力(ゲージ圧)の上限は、通常5MPa程度であり、2MPa程度が好適である。反応圧力(ゲージ圧)の下限は、通常0.05MPa程度であり、0.1MPa程度が好適である。反応器流出ガスの酸素濃度が爆発範囲(5.5%)を超えないように全圧を設定すれば良い。また、反応系のpHは、副生成物抑制等の見地よりpH2〜9程度とすることが望ましい。pH調節のために、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物(カルボン酸塩)を反応系への添加剤として使用することもできる。
【0068】
1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素の反応は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒を用いることにより、目的とするカルボン酸エステルを効率良く製造できる場合がある。使用できる溶媒としては、原料である1,2−ジオールまたは1級アルコールを溶解し、反応条件下で自ら反応しにくいものであれば限定的でなく、原料アルコールの種類、反応条件等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、水のほか、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン含有化合物等を挙げることができる。溶媒の使用量は、溶媒の種類、アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
【0069】
1,2−ジオールと1級アルコールとの反応後は、反応系から触媒を分離した後、生成したα−ヒドロキシカルボン酸エステルを公知の分離精製手段等を用いて回収すれば良い。触媒の分離方法は公知の方法に従えば良い。例えば、酸触媒として固体酸触媒を用いる場合には、金属担持触媒とともに、ろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて触媒を分離することができる。酸触媒として固体酸触媒以外の酸触媒を用いる場合には、例えば、予め金属担持触媒をろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて分離した後、中和処理し、塩として酸触媒をろ過分離することができる。中和処理に用いる塩基性物質は、特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを例示できる。
【0070】
(2) 二段階反応について
本発明の製造方法は、以下のような二工程を含む二段階反応であってもよい。
(1)金属を担体に担持してなる触媒の存在下、1,2−ジオールと1級アルコールとを酸素酸化させてα−ヒドロキシカルボン酸エステル及びα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルを含む反応混合物を得る第一工程、及び
(2)第一工程において得られた反応混合物と酸触媒の存在下、α−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルと1級アルコールとをエステル交換反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得る第二工程。
【0071】
▲1▼第一工程
上記第一工程の反応条件は、上述の(1)一段階反応と同様の条件としてよい。但し、1,2−ジオールと1級アルコールとの反応割合については、反応初期から上述した反応割合となるよう1,2−ジオールと1級アルコールとを仕込んでも良く、または、第二工程に先立って、1級アルコールを追加してもよい。第二工程に先立って1級アルコールを追加する場合には、1級アルコールの仕込量と添加量との合計が、上記の反応割合となればよい。
【0072】
担持型金属触媒の使用量の上限は、担持型金属触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常30重量部程度であり、好ましくは15重量部程度である。担持型金属触媒の使用量の下限は、担持型金属触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常0.2重量部程度であり、好ましくは1重量部程度である。なお、溶媒を用いる場合には、反応混合物の重量に溶媒の重量を含めるものとする。
【0073】
第一工程において得られた反応混合物を、第二工程において用いる。第一工程において得られた反応混合物には、α−ヒドロキシカルボン酸エステルが含まれる。第二工程に先立って反応混合物中のα−ヒドロキシカルボン酸エステルの一部又は全部を除去してから、第二工程に用いてもよい。また、第一工程において得られた反応混合物には、担持型金属触媒も含まれる。第二工程に先立って、反応混合物中の担持型金属触媒の一部又は全部を除去してから、第二工程に用いてもよい。
【0074】
▲2▼第二工程
第二工程は、不活性ガス雰囲気下、酸素雰囲気下などにおいて反応させることができる。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウムなどの希ガス、窒素などを例示することができる。
【0075】
第二工程の反応形態としては、連続式、回分式、半回分式等のいずれであっても良く、特に限定されるものではない。反応形態として回分式を採用する場合には、反応装置に原料とともに一括して仕込めば良い。また、反応形態として連続式を採用し、酸触媒として固体酸触媒を用いる場合には、反応装置に予め固体酸触媒を充填しておくか、あるいは反応装置に原料とともに固体酸触媒を連続的に仕込めば良い。固体酸触媒は、固定床、流動床、懸濁床等のいずれの形態であっても良い。固体酸触媒以外の酸触媒は、単に添加すればよい。
【0076】
酸触媒の使用量は、原料である1,2−ジオールまたは1級アルコールの種類、触媒の種類、反応条件等に応じて適宜決定すれば良い。酸触媒の使用量の上限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常10重量部程度であり、好ましくは5重量部程度である。酸触媒の使用量の下限は、担持型金属触媒および酸触媒を除く反応混合物全体を100重量部とした時に、通常0.1重量部程度であり、好ましくは0.5重量部程度である。なお、溶媒を用いる場合には、反応混合物の重量に溶媒の重量を含めるものとする。
【0077】
第二工程の反応時間は特に限定されるものではなく、通常は反応時間又は滞留時間(反応器内滞留液量/液供給量)として、設定した条件などにより適宜設定することができる。反応時間又は滞留時間の上限は、通常20時間程度、好ましくは10時間程度である。反応時間又は滞留時間の下限は、通常0.5時間程度、好ましくは1時間程度である。
【0078】
反応温度、反応圧力等の諸条件は、原料である1,2−ジオールまたは1級アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜決定すれば良い。反応温度の上限は、通常180℃程度、好ましくは150℃程度、より好ましくは120℃程度である。反応温度の下限は、通常0℃程度、好ましくは20℃程度、より好ましくは50℃程度とすれば良い。この範囲内の温度に設定することにより、いっそう効率的に反応を進行させることができる。反応圧力は、減圧、常圧又は加圧のいずれであっても良い。反応圧力(ゲージ圧)の上限は、通常5MPa程度であり、2MPa程度が好適である。反応圧力(ゲージ圧)の下限は、通常0.05MPa程度であり、0.1MPa程度が好適である。反応器流出ガスの酸素濃度が爆発範囲(5.5%)を超えないように全圧を設定すれば良い。また、反応系のpHは、副生成物抑制等の見地よりpH2〜9程度とすることが望ましい。pH調節のために、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物(カルボン酸塩)を反応系への添加剤として使用することもできる。
【0079】
第二工程の反応は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒を用いることにより、目的とするカルボン酸エステルを効率良く製造できる場合がある。使用できる溶媒としては、1,2−ジオールまたは1級アルコールを溶解し、反応条件下で自ら反応しにくいものであれば限定的でなく、原料アルコールの種類、反応条件等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、水のほか、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン含有化合物等を挙げることができる。溶媒の使用量は、溶媒の種類、アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
【0080】
エステル交換反応の反応後は、反応系から触媒を分離した後、生成したカルボン酸エステルを公知の分離精製手段等を用いて回収すれば良い。触媒の分離方法は公知の方法に従えば良い。例えば、酸触媒として固体酸触媒を用いる場合には、ろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて触媒を分離することができる。第一工程において得られた反応混合物に金属担持触媒が含まれる場合には、この時、固体酸触媒と同時に分離すればよい。酸触媒として固体酸触媒以外の酸触媒を用いる場合には、例えば、予め金属担持触媒をろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて分離した後、中和処理し、塩として酸触媒をろ過分離することができる。中和処理に用いる塩基性物質は、特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを例示できる。
【0081】
本発明の製造方法において、例えば1,2−ジオールとしてエチレングリコールを使用し、1級アルコールとして1級アルコール(好ましくは炭素数1〜4の1級アルコール)を用いると、グリコール酸エステルを製造することができる。反応後得られた溶液には、主生成物としてグリコール酸エステルが含まれ、場合によっては、未反応の原料である1級アルコールおよびエチレングリコールが含まれる。更に、反応溶液には、副生成物として、水が含まれ、場合によっては、1級アルコール由来のカルボン酸エステル(例えば1級アルコールとしてメタノールを使用した場合には、ギ酸メチルなど)、シュウ酸エステル、加水分解生成物であるグリコール酸、シュウ酸、シュウ酸モノエステルなどが含まれる。
【0082】
このような反応溶液から目的物であるグリコール酸エステルを単離する方法として、先ず1級アルコールおよび水を留去した後、グリコール酸エステルを蒸留により分離する方法を容易に実施可能な方法として例示できる。グリコール酸エステルを蒸留すると、未反応のエチレングリコールは、蒸留ボトムに含まれる。この時回収された1級アルコールおよびグリコール酸エステルを含む蒸留ボトムは、グリコール酸エステルを製造する時の原料として再利用することができる。
【0083】
触媒を分離した後などに、グリコール酸エステルを蒸留することにより、より高純度のグリコール酸エステルを高収率で分離精製することができる。グリコール酸エステルの蒸留に先立って、1級アルコールおよび水を留去しておくことが、通常好ましい。グリコール酸エステルの蒸留は、公知の方法を用いることができ、例えば、バッチ式蒸留装置として、仕込み釜、精留部、コンデンサー部などを備えた還流を行える通常の装置を用いることができる。
【0084】
上記の方法などにより水およびアルコールを留去し、更に蒸留することにより得られたグリコール酸エステルであっても、未反応原料の1級アルコールとエチレングリコール、更に生成水を含有する場合がある。前記グリコール酸に含まれる1級アルコールは、通常1重量%以下程度であり、精製条件によっては0.2重量%以下程度とすることができる。また、エチレングリコールの含有量は、通常1重量%以下程度であり、精製条件によっては1000重量ppm以下程度とすることができる。水の含有量は、通常1重量%以下程度であり、精製条件によっては0.2重量%以下程度とすることができる。なお、シュウ酸エステルの含有量は、通常0.1重量%以上、より具体的には0.1〜2重量%程度である。
【0085】
また、本発明において得られたグリコール酸エステルには、ホルムアルデヒドおよび塩素はいずれも実質的に含まれない。本発明では、ホルムアルデヒドおよび塩素はいずれも原料として使用せず、また、反応においてもほとんど生成しないからである。本発明によると、ホルムアルデヒドおよび塩素の含有量が、いずれも1重量ppm以下程度、好ましくは100重量ppb以下程度、更に好ましくは10重量ppb以下程度のグリコール酸エステルを提供できる。
【0086】
本発明の製造方法で得られるα−ヒドロキシカルボン酸エステルは、従来技術で得られるα−ヒドロキシカルボン酸エステルと同様の用途に使用することができる。特に、ポリグリコール酸の原料となる重合用モノマーとして好適に用いることができる。
【0087】
【発明の効果】
本発明の方法によると、高い選択率でα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得ることができる。
【0088】
本発明により得られたα−ヒドロキシカルボン酸エステルは、通常、蒸留などの容易な方法で精製することができる。従って、本発明の方法によると、低コストでα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造することができる。
【0089】
本発明の製造方法によると、不純物としてホルムアルデヒドおよび塩素を実質的に含まないグリコール酸エステルを得ることができる。
【0090】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。但し、本発明の範囲は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
【0091】
なお、実施例における物性の測定等は、次のような方法で実施した。
(1)金属微粒子の担持量
蛍光X線分析により測定した。
(2)金属微粒子の平均粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)(装置名「HF−2000」日立製作所、加速電圧200kV)で粒子径を観察し、付属のX線分析装置により粒子の成分分析を行った。
(3)反応生成物の定量
ガスクロマトグラフィー及び/又は液体クロマトグラフィーにより、反応液中の反応生成物の成分を定量分析した。
【0092】
実施例1
第一工程
エチレングリコール(2.2g)、メタノール(11.9g)および酸素を、担持型金属触媒の存在下、液相において反応させた。担持型金属触媒は、シリカ上に20重量%の酸化チタンを担持したチタニア・シリカ担体に、金を前記担体の5重量%担持させた触媒を使用した。触媒に担持された金の平均粒子径は、3nmであった。240分間反応させた後、担持型金属触媒を濾別除去して、反応液を得た。
【0093】
得られた反応液には、グリコール酸メチル14.2重量%、グリコール酸2−ヒドロキシエチル1.4重量%、シュウ酸ジメチル0.1重量%、ギ酸メチル1.7重量%、グリコール酸0.6重量%、水7.1重量%、未反応のエチレングリコール3.2重量%およびメタノール71.7重量%が含まれていた。
【0094】
第二工程
第一工程において得られた反応液10.0gに、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸0.03gを添加し、オートクレーブ内において密閉し、窒素置換後、2kgfcm−2に加圧し、撹拌しながら90℃で2時間保持した。冷却後、窒素を大気中に放出させてオートクレーブ内部を常圧に戻した。
【0095】
得られた反応混合物は、約10.0gであり、グリコール酸メチル14.7重量%、グリコール酸2−ヒドロキシエチル0.5重量%、シュウ酸ジメチル0.1重量%、グリコール酸1.0重量%、ギ酸メチル1.3重量%、水7.0重量%、エチレングリコール3.6重量%およびメタノール71.8重量%が含まれていた。
【0096】
酸触媒とともに反応させることにより、グリコール酸メチルが増加し、グリコール酸2−ヒドロキシエチルが減少した。
【0097】
実施例2
スルホン基を有するH型陽イオン交換樹脂(DOWEX HCR−W1)を酸触媒として更に添加した以外は、実施例1の第一工程と同様にして、エチレングリコール、メタノールおよび酸素を液相において反応させた。240分間反応させた後、担持型金属触媒および酸触媒を濾別除去して、反応液を得た。
【0098】
得られた反応液には、グリコール酸メチル14.8重量%、グリコール酸2−ヒドロキシエチル0.7重量%、シュウ酸ジメチル0.1重量%、ギ酸メチル2.2重量%、グリコール酸0.8重量%、水7.4重量%、未反応のエチレングリコール3.2重量%およびメタノール70.8重量%が含まれていた。
【0099】
実施例1の第一工程において得られた反応液と比較すると、グリコール酸メチルの含有率が高くなり、グリコール酸2−ヒドロキシエチルの含有率が低下した。即ち、酸触媒を用いることで、グリコール酸メチルが増加するとともに、グリコール酸2−ヒドロキシエチルが減少した。
【0100】
実施例1と2から明らかなように、担持型金属触媒と酸触媒を用いることにより、所望とするグリコール酸メチルの選択性が向上した。また、高純度のα−ヒドロキシカルボン酸を用いる場合に比べて、低コストでグリコール酸メチルを製造することができる。
Claims (4)
- 1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法において、(a)金属を担体に担持してなる触媒および(b)酸触媒を使用することを特徴とする製造方法。
- 1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させてα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法において、
(1)金属を担体に担持してなる触媒の存在下、1,2−ジオールと1級アルコールとを酸素酸化させてα−ヒドロキシカルボン酸エステル及びα−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルを含む反応混合物を得る第一工程、及び
(2)第一工程において得られた反応混合物と酸触媒の存在下、α−ヒドロキシカルボン酸α−ヒドロキシアルキルエステルと1級アルコールとをエステル交換反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得る第二工程
を有することを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。 - (a)金属を担体に担持してなる触媒および(b)酸触媒の共存下、1,2−ジオール、1級アルコールおよび酸素を反応させる請求項1に記載の製造方法。
- 1級アルコールが、メタノールであり、酸触媒が、H型陽イオン交換樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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