JP2004182618A - 骨粗鬆症治療剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】骨生成促進効果に優れ、かつ安全性及び安定性が高く、骨粗鬆症の治療薬等として人体に適用可能な骨粗鬆症治療剤を提供することを目的とした。
【解決手段】分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を有効成分とする骨粗鬆症治療剤。該酸性キシロオリゴ糖は、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜15.0であることが好ましく、ウロン酸はグルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸が好ましい。この酸性オリゴ糖はリグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理する工程から得ることが経済的である。
【選択図】 なし
【解決手段】分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を有効成分とする骨粗鬆症治療剤。該酸性キシロオリゴ糖は、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜15.0であることが好ましく、ウロン酸はグルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸が好ましい。この酸性オリゴ糖はリグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理する工程から得ることが経済的である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、医薬部外品及び医薬品分野に於いて使用される新規な骨粗鬆症治療剤に関する。より詳細には、優れた生理活性を有し、しかも安全性の高い骨粗鬆症治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
高齢化社会の到来に伴い、骨粗鬆症の問題がクローズアップされている。一般的に、骨量は青壮年期に最大値となった後、老化に伴い男女ともに減少してゆく。特に閉経後の女性の骨量は速やかに減少し、一生のうちに骨の半分近くを失うとされている。男性でも60歳過ぎから徐々に増え、70歳以上では10人に4人が骨粗鬆症になると言われている。現在、日本には1,000万人以上の骨粗鬆症患者がいると推定されており、その70%が女性である。また、患者数は増加傾向にある。
【0003】
骨粗鬆症の90%以上は原発性と言われ、明らかな発症原因は分かっていない。しかし、閉経後や、病気で子宮や卵巣を切除した女性の骨量減少が激しいことから、女性ホルモンとの関係が重要であることが分かっている。そのため、ホルモン補充療法や女性ホルモン類似物質が治療に使われ、骨代謝の調節ホルモンであるカルシトニンや、骨吸収を抑制する薬剤であるビスフォスフォネート等が治療薬として用いられているが、骨のカルシウム量を劇的に上げるような治療方法はいまだ見出されていない。
【0004】
骨粗鬆症の治療のためには、高カルシウム食やビタミンKが重要視されているが、これは普段の食生活での予防的な考えに基づいている。従って治療効果が高く、家庭でも手軽に摂取でき、様々な食品に応用できる、安全で効果の高い骨粗鬆症治療剤が期待されている。(非特許文献1、非特許文献2参照)
【0005】
すでに、カルシウムの吸収を助ける成分として、ガラクトオリゴ糖やフラクトオリゴ糖が知られており(非特許文献3参照)、ガラクトオリゴ糖(特許文献1,2参照)や、フラクトオリゴ糖などの難消化性少糖類を有効成分とするカルシウム吸収促進剤(特許文献3参照)が提案されている。また、ラクチュロースオリゴ糖を有効成分とするミネラル吸収促進剤(特許文献4参照)や、ラクトシュクロース(特許文献5参照)、N−アセチルノイラミン酸結合オリゴ糖(特許文献6参照)、トレハロースを有効成分とする抗骨粗鬆症剤(特許文献7参照)について報告があるが、一旦進行した骨粗鬆症を改善、治癒できるデータはない。更に、酸性キシロオリゴ糖に該効果があるという報告もない。
【0006】
オリゴ糖以外ではペプチドを有効成分とするもの(例えば特許文献8、特許文献9参照)、植物抽出物を用いるもの(例えば特許文献10、11、12参照)、ビタミンKを強化した食品(例えば特許文献13,14参照)など多数の報告がある。
【0007】
なお、酸性キシロオリゴ糖の生理効果に関しては、水耕栽培に於けるスギ挿穂の発根促進効果の記載(非特許文献4参照)があるが、骨粗鬆症治療剤に関する開示はなされていない。
【0008】
【非特許文献1】
日本臨床社発行、「骨粗鬆症」(日本臨床増刊号)p1−6,(2002年)
【非特許文献2】
Medical Practice Vol.19,No.10,1609−1615 (2002)
【非特許文献3】
日本栄養・食料学会誌、44巻、P287−291、1991年
【非特許文献4】
セルラーゼ研究会発行、セルラーゼ研究会報第16巻、2001年6月14日発行、P17−26
【特許文献1】
特開平4−134031
【特許文献2】
特開平6−205654
【特許文献3】
特開平7−252156
【特許文献4】
特開平6−205653
【特許文献5】
特開平7−33668
【特許文献6】
特開平7−316177
【特許文献7】
特開2000−38343
【特許文献8】
特開平5−000965
【特許文献9】
特開平5−178758
【特許文献10】
特開平6−340542
【特許文献11】
特開平6−183985
【特許文献12】
特開2000−053576
【特許文献13】
特開平11−196820
【特許文献14】
特開平10−056959
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明に於いては、骨生成促進効果に優れ、かつ安全性及び安定性が高く、骨粗鬆症の治療薬等として人体に適用可能な骨粗鬆症治療剤を提供することを目的とした。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の事情に鑑み、キシロオリゴ糖の有効利用並びに骨粗鬆症治療効果の高い骨粗鬆症治療剤について研究した結果、特にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖に高い骨粗鬆症治療作用を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は以下の構成を採用する。即ち、本発明の第1は、「キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を有効成分とする骨粗鬆症治療剤」である。
【0012】
本発明の第2は、前記第1発明において、該酸性キシロオリゴ糖はキシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜15.0であることを特徴とする骨粗鬆症治療剤である。
【0013】
本発明の第3は、前記第1または第2の発明において、前記酸性キシロオリゴ糖が、「リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離して得たもの」であることを特徴とする骨粗鬆症治療剤である。
【0014】
本発明の第4は、前記第1〜第3の発明において、ウロン酸がグルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸であることを特徴とする骨粗鬆症治療剤である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について詳述する。キシロオリゴ糖とは、キシロースの2量体であるキシロビオース、3量体であるキシロトリオース、あるいは4量体〜20量体程度のキシロースの重合体を言う。本発明で使用する酸性キシロオリゴ糖とは、キシロオリゴ糖1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を有するものを言う。
また、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であっても良い。一般的には、天然物から製造するために、このような組成物として得られることが多く、以下、主として酸性キシロオリゴ糖組成物について説明する。
該組成物は、平均重合度で示す数値は正規分布をとる酸性キシロオリゴ糖のキシロース鎖長の平均値で、2.0〜15.0が好ましく、8.0〜11.0がより好ましい。キシロース鎖長の上限と下限との差は10以下が好ましく、2〜8がより好ましい。ウロン酸は天然では、ペクチン、ペクチン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸等の種々の生理活性を持つ多糖の構成成分として知られている。本発明におけるウロン酸としては特に限定されないが、グルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸が好ましい。
【0016】
上記のような酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることが出来れば、その製法は特に限定されないが、(1)木材からキシランを抽出し、それを酵素的に分解する方法(前記非特許文献4参照)と、(2)リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離する方法が挙げられる。
特に、(2)の方法が5〜10量体のように比較的高い重合度のものを大量に安価に製造することが可能である点で好ましく、以下にその概要を示す。
【0017】
酸性オリゴ糖組成物は、化学パルプ由来のリグノセルロース材料を原料とし、加水分解工程、濃縮工程、希酸処理工程、精製工程を経て得ることができる。加水分解工程では、希酸処理、高温高圧の水蒸気(蒸煮・爆砕)処理もしくは、ヘミセルラーゼによってリグノセルロース中のキシランを選択的に加水分解し、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体として得る。濃縮工程では逆浸透膜等により、キシロオリゴ糖−リグニン様物質複合体が濃縮され、低重合度のオリゴ糖や低分子の夾雑物などを除去することができる。濃縮工程は逆浸透膜を用いることが好ましいが、限外濾過膜、塩析、透析などでも可能である。得られた濃縮液の希酸処理工程により、複合体からリグニン様物質が遊離し、酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖を含む希酸処理液を得ることができる。この時、複合体から切り離されたリグニン様物質は酸性下で縮合し沈殿するのでセラミックフィルターや濾紙などを用いたろ過等により除去することができる。希酸処理工程では、酸による加水分解を用いることが好ましいが、リグニン分解酵素などを用いた酵素分解などでも可能である。
【0018】
精製工程は、限外濾過工程、脱色工程、吸着工程からなる。一部のリグニン様物質は可溶性高分子として溶液中に残存するが、限外濾過工程で除去され、着色物質等の夾雑物は活性炭を用いた脱色工程によってそのほとんどが取り除かれる。限外濾過工程は限外濾過膜を用いることが好ましいが、逆浸透膜、塩析、透析などでも可能である。こうして得られた糖液中には酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖が溶解している。イオン交換樹脂を用いた吸着工程により、この糖液から酸性キシロオリゴ糖のみを取り出すことができる。糖液をまず強陽イオン交換樹脂にて処理し、糖液中の金属イオンを除去する。ついで強陰イオン交換樹脂を用いて糖液中の硫酸イオンなどを除去する。この工程では、硫酸イオンの除去と同時に弱酸である有機酸の一部と着色成分の除去も同時に行っている。強陰イオン交換樹脂で処理された糖液はもう一度強陽イオン交換樹脂で処理し更に金属イオンを除去する。最後に弱陰イオン交換樹脂で処理し、酸性キシロオリゴ糖を樹脂に吸着させる。
【0019】
樹脂に吸着した酸性オリゴ糖を、低濃度の塩(NaCl、CaCl2、KCl、MgCl2など)によって溶出させることにより、夾雑物を含まない酸性キシロオリゴ糖溶液を得ることができる。この溶液を、例えば、スプレードライや凍結乾燥処理により、白色の酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末を得ることができる。
【0020】
化学パルプ由来のリグノセルロースを原料とし、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体とした酸性キシロオリゴ糖組成物の上記製造法のメリットは、経済性とキシロースの平均重合度の高い酸性キシロオリゴ糖組成物が容易に得られる点にある。平均重合度は、例えば、希酸処理条件を調節するか、再度ヘミセルラーゼで処理することによって変えることが可能である。また、弱陰イオン交換樹脂溶出時に用いる溶出液の塩濃度を変化させることによって、1分子あたりに結合するウロン酸残基の数が異なる酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることもできる。さらに、適当なキシラナーゼ、ヘミセルラーゼを作用させることによってウロン酸結合部位が末端に限定された酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることも可能である。
【0021】
このようにして得られた酸性キシロオリゴ糖組成物は、通常水に溶解して骨粗鬆症治療剤に含有させることができるが、必要に応じ、キシロオリゴ糖組成物以外の成分、例えばグルコース、マルトース、フルクトース、スクロース、ソルビトール、キシリトールなどの糖質、L−ロイシン、L−リジン、L−バリン、L−アラニンなどのアミノ酸、塩酸チアミンや塩酸ピリドキシン、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミドなどのビタミン類、また通常の骨粗鬆症の治療に使われる乳酸カルシウムや、リン酸水素カルシウムなどのカルシウム剤、またビタミンDやビタミンKなどを同時に含有させることが出来る。またレシチンなどを用いたマイクロカプセルに含有させても良い。骨粗鬆症治療剤に於ける酸性キシロオリゴ糖または、酸性キシロオリゴ糖組成物の含有率としては、0.001〜20%(以下全て質量%)の範囲で使用することができるが、0.01〜10%がより好ましい。
【0022】
本発明の酸性キシロオリゴ糖組成物を配合した骨粗鬆症治療剤は、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、粉末剤、飲料などの形態をとることが出来る。また更に、他の食品に配合したり、そのまま食することも可能である。配合する場合の配合割合については特に制限はないが、摂取が過剰となるとおなかが緩くなる場合があるので、1日10g以下、好ましくは1g程度とすべきである。
【0023】
【実施例】
以下、本発明について実施例により詳説する。本発明はこれにより限定されるものではない。まず、各測定法の概要を示す。
<測定法の概要>
(1) 全糖量の定量:
全糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製し、フェノール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(2) 還元糖量の定量:
還元糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、ソモジ−ネルソン法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(3) ウロン酸量の定量:
ウロン酸は検量線をD−グルクロン酸(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、カルバゾール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(4) 平均重合度の決定法:
サンプル糖液を50℃に保ち15,000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液の全糖量を還元糖量(共にキシロース換算)で割って平均重合度を求めた。
(5) 酸性キシロオリゴ糖の分析方法:
オリゴ糖鎖の分布はイオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、分析用カラム:Carbo Pac PA−10)を用いて分析した。分離溶媒には100mM NaOH溶液を用い、溶出溶媒には前述の分離溶媒に酢酸ナトリウムを500mMとなるように添加し、溶液比で、分離溶媒:溶出溶媒=10:0〜4:6となるような直線勾配を組み分離した。得られたクロマトグラムより、キシロース鎖長の上限と下限との差を求めた。
(6) オリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数の決定法
サンプル糖液を50℃に保ち15000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液のウロン酸量(D−グルクロン酸換算)を還元糖量(キシロース換算)で割ってオリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数を求めた。
(7) 酵素力価の定義:
酵素として用いたキシラナーゼの活性測定にはカバキシラン(シグマ社製)を用いた。酵素力価の定義はキシラナーゼがキシランを分解することで得られる還元糖の還元力をDNS法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)を用いて測定し、1分間に1マイクロモルのキシロースに相当する還元力を生成させる酵素量を1ユニットとした。
【0024】
<酸性および中性キシロオリゴ糖組成物の調製例>
<調製例1;酸性キシロオリゴ糖UX10の調製>
混合広葉樹チップ(国内産広葉樹70%、ユーカリ30%)を原料として、クラフト蒸解及び酸素脱リグニン工程により、酸素脱リグニンパルプスラリー(カッパー価9.6、パルプ粘度25.1cps)を得た。スラリーからパルプを濾別、洗浄した後、パルプ濃度10%、pH8に調製したパルプスラリーを用いて以下のキシラナーゼによる酵素処理を行った。
【0025】
バチルスsp.S−2113株(独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター、寄託菌株FERM BP−5264)の生産するキシラナーゼを1単位/パルプgとなるように添加した後、60℃で120分間処理した。その後、ろ過によりパルプ残渣を除去し、酵素処理液1050Lを得た。
【0026】
次に、得られた酵素処理液を濃縮工程、希酸処理工程、精製工程の順に供した。
濃縮工程では、逆浸透膜(日東電工(株)製、RO NTR−7410)を用いて濃縮液(40倍濃縮)を調製した。希酸処理工程では、得られた濃縮液のpHを3.5に調整した後、121℃で60分間加熱処理し、リグニンなどの高分子夾雑物の沈殿を形成させた。さらに、この沈殿をセラミックフィルターろ過で取り除くことにより、希酸処理溶液を得た。
【0027】
精製工程では、限外濾過・脱色工程、吸着工程の順に供した。限外濾過・脱色工程では、希酸処理溶液を限外濾過膜(オスモニクス社製、分画分子量8000)を通過させた後、活性炭(和光純薬(株)製)770gの添加及びセラミックフィルターろ過により脱色処理液を得た。吸着工程では、脱色処理液を強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)、強陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PA408)、強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)各100kgを充填したカラムに順次通過させた後、弱陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製WA30)100kgを充填したカラムに供した。この弱陰イオン交換樹脂充填カラムから75mM NaCl溶液によって溶出した溶液をスプレードライ処理することによって、酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量353g、回収率13.1%)を得た。前述の測定方法により、平均重合度10.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は10、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。よって以下、この酸性キシロオリゴ糖組成物をUX10とする。
【0028】
<調製例2;酸性キシロオリゴ糖UX5の調製>
調整例1と同様にして得られた希酸処理液1160mlに、スミチームX28mgを添加し、40℃で20時間反応させた。活性炭9.8gの添加及び加熱処理(70℃、1時間)により酵素を失活させた後、セラミックフィルターで活性炭を除去した。スミチームX処理液を調整例1と同様の精製工程を経て、酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量21.3g、回収率22.2%)を得た。前述の測定方法により、平均重合度4.8、キシロース鎖長の上限と下限との差は9、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物である事が分かった。以下、この酸性キシロオリゴ糖組成物をUX5とする。
【0029】
<調製例3;酸性キシロオリゴ糖UX2の調製>
調製例1より得られたUX10の10%水溶液100mlに、スミチームX50mgを添加し、60℃、20時間反応後、弱アニオン交換樹脂(WA30)10gを充填したカラムに供した。カラムを水洗した後、75mM NaCl溶液によって溶出した溶液を凍結乾燥する事によって、酸性キシロオリゴ糖粉末(全糖量2.1g、回収率21%)を得た。前述の測定方法により、平均重合度2.3,キシロース鎖長の上限と下限の差は2,酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。以下、この酸性オリゴ糖をUX2とする。
【0030】
<調製例4;中性キシロオリゴ糖X5の調製>
調整例2と同様にして、スミチームX処理液を得た後、その溶液1100mlを強陽イオン交換樹脂(PK218)、強陰イオン交換樹脂(PK408)、強陽イオン交換樹脂(PK218)、弱陰イオン交換樹脂(WA30)各100gを充填したカラムを順次通過させた。カラムを通過した画分を凍結乾燥することによって、ウロン酸側鎖を持たない中性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量49.7g、回収率54.7%)が得られた。前述の測定方法により、X5は平均重合度4.8、キシロース鎖長の上限と下限との差は6、ウロン酸残基を含まない糖組成化合物であった。以下、この中性キシロオリゴ糖組成物をX5とする。
【0031】
次に、得られた酸性キシロオリゴ糖および中性オリゴ糖を用いて行った、ラット骨粗鬆症治療試験の方法及び結果を示す。
【0032】
使用動物:日本チャールズリバーより5週齡のSD系雌性ラットを購入し、温度23±1℃、湿度55%±5%に設定した飼育室で、金属性ケージに個別飼いした。後に示す組成の飼料を自作し、3日間予備飼育した後、1群12匹のラットをカルシウムフリー食(CF)で3週間飼育した。なお、コントロールとして普通食(CN)で飼育した群も設定した。このようにして擬似的に骨密度の低下した状態を作り出し、各種オリゴ糖+CNの飼料で4週間飼育した。このとき、オリゴ糖を含んでいない群も設定した。各群の飼料組成を表1に示す。飼育4週後に頚椎脱臼法で屠殺し、大腿骨を取り出し生理食塩水に漬けて実験まで冷凍保存した。
【0033】
【表1】
【0034】
<試験例1>大腿骨の骨密度測定は次のように実施した。使用装置:動物研究用pQCT骨密度測定装置(XCT Research SA+, Stratec Medizintecnik GmbH, Rforzhein Germany)。測定方法:pQCT法(peripheral Quantitative Computed Tomography)
各実験区の結果を図1に示す。なお、骨には髄質骨と呼ばれる中心部分と、周囲を取り囲んでいる皮質骨と呼ばれる部分があり、骨の強度は、ほぼ皮質骨の強度と等しいとされているため、ここでは皮質骨密度(図の縦軸、mg/cm3)を示した。
【0035】
<試験例2>大腿骨の破壊強度測定は次のように実施した。
骨3点曲げ試験はマルトー社製骨強度測定装置 MZ−500Sを用いた。3点曲げパラメータは測定時間30秒、最大荷重50kgfにて行なった。測定結果を図2に示す。図の縦軸Zは大腿骨の破壊強度である。
【0036】
【発明の効果】
図1から明らかなように、本発明で得られる酸性キシロオリゴ糖組成物を含有した骨粗鬆症治療剤は、一旦減少した骨のカルシウム濃度を増加させ、骨密度及び骨強度を増進するため、特に骨粗鬆症の治療に極めて有用である。また、オリゴ糖であるため、食品や医薬品などへの応用は容易であり、工業的に大量に安価に製造することができ、同一の製品が安定して生産でき、保存性が良いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】皮質骨密度の回復に及ぼすオリゴ糖の影響を示す図。
【図2】大腿骨破壊強度に及ぼすオリゴ糖の影響を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、医薬部外品及び医薬品分野に於いて使用される新規な骨粗鬆症治療剤に関する。より詳細には、優れた生理活性を有し、しかも安全性の高い骨粗鬆症治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
高齢化社会の到来に伴い、骨粗鬆症の問題がクローズアップされている。一般的に、骨量は青壮年期に最大値となった後、老化に伴い男女ともに減少してゆく。特に閉経後の女性の骨量は速やかに減少し、一生のうちに骨の半分近くを失うとされている。男性でも60歳過ぎから徐々に増え、70歳以上では10人に4人が骨粗鬆症になると言われている。現在、日本には1,000万人以上の骨粗鬆症患者がいると推定されており、その70%が女性である。また、患者数は増加傾向にある。
【0003】
骨粗鬆症の90%以上は原発性と言われ、明らかな発症原因は分かっていない。しかし、閉経後や、病気で子宮や卵巣を切除した女性の骨量減少が激しいことから、女性ホルモンとの関係が重要であることが分かっている。そのため、ホルモン補充療法や女性ホルモン類似物質が治療に使われ、骨代謝の調節ホルモンであるカルシトニンや、骨吸収を抑制する薬剤であるビスフォスフォネート等が治療薬として用いられているが、骨のカルシウム量を劇的に上げるような治療方法はいまだ見出されていない。
【0004】
骨粗鬆症の治療のためには、高カルシウム食やビタミンKが重要視されているが、これは普段の食生活での予防的な考えに基づいている。従って治療効果が高く、家庭でも手軽に摂取でき、様々な食品に応用できる、安全で効果の高い骨粗鬆症治療剤が期待されている。(非特許文献1、非特許文献2参照)
【0005】
すでに、カルシウムの吸収を助ける成分として、ガラクトオリゴ糖やフラクトオリゴ糖が知られており(非特許文献3参照)、ガラクトオリゴ糖(特許文献1,2参照)や、フラクトオリゴ糖などの難消化性少糖類を有効成分とするカルシウム吸収促進剤(特許文献3参照)が提案されている。また、ラクチュロースオリゴ糖を有効成分とするミネラル吸収促進剤(特許文献4参照)や、ラクトシュクロース(特許文献5参照)、N−アセチルノイラミン酸結合オリゴ糖(特許文献6参照)、トレハロースを有効成分とする抗骨粗鬆症剤(特許文献7参照)について報告があるが、一旦進行した骨粗鬆症を改善、治癒できるデータはない。更に、酸性キシロオリゴ糖に該効果があるという報告もない。
【0006】
オリゴ糖以外ではペプチドを有効成分とするもの(例えば特許文献8、特許文献9参照)、植物抽出物を用いるもの(例えば特許文献10、11、12参照)、ビタミンKを強化した食品(例えば特許文献13,14参照)など多数の報告がある。
【0007】
なお、酸性キシロオリゴ糖の生理効果に関しては、水耕栽培に於けるスギ挿穂の発根促進効果の記載(非特許文献4参照)があるが、骨粗鬆症治療剤に関する開示はなされていない。
【0008】
【非特許文献1】
日本臨床社発行、「骨粗鬆症」(日本臨床増刊号)p1−6,(2002年)
【非特許文献2】
Medical Practice Vol.19,No.10,1609−1615 (2002)
【非特許文献3】
日本栄養・食料学会誌、44巻、P287−291、1991年
【非特許文献4】
セルラーゼ研究会発行、セルラーゼ研究会報第16巻、2001年6月14日発行、P17−26
【特許文献1】
特開平4−134031
【特許文献2】
特開平6−205654
【特許文献3】
特開平7−252156
【特許文献4】
特開平6−205653
【特許文献5】
特開平7−33668
【特許文献6】
特開平7−316177
【特許文献7】
特開2000−38343
【特許文献8】
特開平5−000965
【特許文献9】
特開平5−178758
【特許文献10】
特開平6−340542
【特許文献11】
特開平6−183985
【特許文献12】
特開2000−053576
【特許文献13】
特開平11−196820
【特許文献14】
特開平10−056959
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明に於いては、骨生成促進効果に優れ、かつ安全性及び安定性が高く、骨粗鬆症の治療薬等として人体に適用可能な骨粗鬆症治療剤を提供することを目的とした。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の事情に鑑み、キシロオリゴ糖の有効利用並びに骨粗鬆症治療効果の高い骨粗鬆症治療剤について研究した結果、特にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖に高い骨粗鬆症治療作用を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は以下の構成を採用する。即ち、本発明の第1は、「キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を有効成分とする骨粗鬆症治療剤」である。
【0012】
本発明の第2は、前記第1発明において、該酸性キシロオリゴ糖はキシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜15.0であることを特徴とする骨粗鬆症治療剤である。
【0013】
本発明の第3は、前記第1または第2の発明において、前記酸性キシロオリゴ糖が、「リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離して得たもの」であることを特徴とする骨粗鬆症治療剤である。
【0014】
本発明の第4は、前記第1〜第3の発明において、ウロン酸がグルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸であることを特徴とする骨粗鬆症治療剤である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について詳述する。キシロオリゴ糖とは、キシロースの2量体であるキシロビオース、3量体であるキシロトリオース、あるいは4量体〜20量体程度のキシロースの重合体を言う。本発明で使用する酸性キシロオリゴ糖とは、キシロオリゴ糖1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を有するものを言う。
また、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であっても良い。一般的には、天然物から製造するために、このような組成物として得られることが多く、以下、主として酸性キシロオリゴ糖組成物について説明する。
該組成物は、平均重合度で示す数値は正規分布をとる酸性キシロオリゴ糖のキシロース鎖長の平均値で、2.0〜15.0が好ましく、8.0〜11.0がより好ましい。キシロース鎖長の上限と下限との差は10以下が好ましく、2〜8がより好ましい。ウロン酸は天然では、ペクチン、ペクチン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸等の種々の生理活性を持つ多糖の構成成分として知られている。本発明におけるウロン酸としては特に限定されないが、グルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸が好ましい。
【0016】
上記のような酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることが出来れば、その製法は特に限定されないが、(1)木材からキシランを抽出し、それを酵素的に分解する方法(前記非特許文献4参照)と、(2)リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離する方法が挙げられる。
特に、(2)の方法が5〜10量体のように比較的高い重合度のものを大量に安価に製造することが可能である点で好ましく、以下にその概要を示す。
【0017】
酸性オリゴ糖組成物は、化学パルプ由来のリグノセルロース材料を原料とし、加水分解工程、濃縮工程、希酸処理工程、精製工程を経て得ることができる。加水分解工程では、希酸処理、高温高圧の水蒸気(蒸煮・爆砕)処理もしくは、ヘミセルラーゼによってリグノセルロース中のキシランを選択的に加水分解し、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体として得る。濃縮工程では逆浸透膜等により、キシロオリゴ糖−リグニン様物質複合体が濃縮され、低重合度のオリゴ糖や低分子の夾雑物などを除去することができる。濃縮工程は逆浸透膜を用いることが好ましいが、限外濾過膜、塩析、透析などでも可能である。得られた濃縮液の希酸処理工程により、複合体からリグニン様物質が遊離し、酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖を含む希酸処理液を得ることができる。この時、複合体から切り離されたリグニン様物質は酸性下で縮合し沈殿するのでセラミックフィルターや濾紙などを用いたろ過等により除去することができる。希酸処理工程では、酸による加水分解を用いることが好ましいが、リグニン分解酵素などを用いた酵素分解などでも可能である。
【0018】
精製工程は、限外濾過工程、脱色工程、吸着工程からなる。一部のリグニン様物質は可溶性高分子として溶液中に残存するが、限外濾過工程で除去され、着色物質等の夾雑物は活性炭を用いた脱色工程によってそのほとんどが取り除かれる。限外濾過工程は限外濾過膜を用いることが好ましいが、逆浸透膜、塩析、透析などでも可能である。こうして得られた糖液中には酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖が溶解している。イオン交換樹脂を用いた吸着工程により、この糖液から酸性キシロオリゴ糖のみを取り出すことができる。糖液をまず強陽イオン交換樹脂にて処理し、糖液中の金属イオンを除去する。ついで強陰イオン交換樹脂を用いて糖液中の硫酸イオンなどを除去する。この工程では、硫酸イオンの除去と同時に弱酸である有機酸の一部と着色成分の除去も同時に行っている。強陰イオン交換樹脂で処理された糖液はもう一度強陽イオン交換樹脂で処理し更に金属イオンを除去する。最後に弱陰イオン交換樹脂で処理し、酸性キシロオリゴ糖を樹脂に吸着させる。
【0019】
樹脂に吸着した酸性オリゴ糖を、低濃度の塩(NaCl、CaCl2、KCl、MgCl2など)によって溶出させることにより、夾雑物を含まない酸性キシロオリゴ糖溶液を得ることができる。この溶液を、例えば、スプレードライや凍結乾燥処理により、白色の酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末を得ることができる。
【0020】
化学パルプ由来のリグノセルロースを原料とし、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体とした酸性キシロオリゴ糖組成物の上記製造法のメリットは、経済性とキシロースの平均重合度の高い酸性キシロオリゴ糖組成物が容易に得られる点にある。平均重合度は、例えば、希酸処理条件を調節するか、再度ヘミセルラーゼで処理することによって変えることが可能である。また、弱陰イオン交換樹脂溶出時に用いる溶出液の塩濃度を変化させることによって、1分子あたりに結合するウロン酸残基の数が異なる酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることもできる。さらに、適当なキシラナーゼ、ヘミセルラーゼを作用させることによってウロン酸結合部位が末端に限定された酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることも可能である。
【0021】
このようにして得られた酸性キシロオリゴ糖組成物は、通常水に溶解して骨粗鬆症治療剤に含有させることができるが、必要に応じ、キシロオリゴ糖組成物以外の成分、例えばグルコース、マルトース、フルクトース、スクロース、ソルビトール、キシリトールなどの糖質、L−ロイシン、L−リジン、L−バリン、L−アラニンなどのアミノ酸、塩酸チアミンや塩酸ピリドキシン、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミドなどのビタミン類、また通常の骨粗鬆症の治療に使われる乳酸カルシウムや、リン酸水素カルシウムなどのカルシウム剤、またビタミンDやビタミンKなどを同時に含有させることが出来る。またレシチンなどを用いたマイクロカプセルに含有させても良い。骨粗鬆症治療剤に於ける酸性キシロオリゴ糖または、酸性キシロオリゴ糖組成物の含有率としては、0.001〜20%(以下全て質量%)の範囲で使用することができるが、0.01〜10%がより好ましい。
【0022】
本発明の酸性キシロオリゴ糖組成物を配合した骨粗鬆症治療剤は、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、粉末剤、飲料などの形態をとることが出来る。また更に、他の食品に配合したり、そのまま食することも可能である。配合する場合の配合割合については特に制限はないが、摂取が過剰となるとおなかが緩くなる場合があるので、1日10g以下、好ましくは1g程度とすべきである。
【0023】
【実施例】
以下、本発明について実施例により詳説する。本発明はこれにより限定されるものではない。まず、各測定法の概要を示す。
<測定法の概要>
(1) 全糖量の定量:
全糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製し、フェノール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(2) 還元糖量の定量:
還元糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、ソモジ−ネルソン法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(3) ウロン酸量の定量:
ウロン酸は検量線をD−グルクロン酸(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、カルバゾール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(4) 平均重合度の決定法:
サンプル糖液を50℃に保ち15,000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液の全糖量を還元糖量(共にキシロース換算)で割って平均重合度を求めた。
(5) 酸性キシロオリゴ糖の分析方法:
オリゴ糖鎖の分布はイオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、分析用カラム:Carbo Pac PA−10)を用いて分析した。分離溶媒には100mM NaOH溶液を用い、溶出溶媒には前述の分離溶媒に酢酸ナトリウムを500mMとなるように添加し、溶液比で、分離溶媒:溶出溶媒=10:0〜4:6となるような直線勾配を組み分離した。得られたクロマトグラムより、キシロース鎖長の上限と下限との差を求めた。
(6) オリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数の決定法
サンプル糖液を50℃に保ち15000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液のウロン酸量(D−グルクロン酸換算)を還元糖量(キシロース換算)で割ってオリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数を求めた。
(7) 酵素力価の定義:
酵素として用いたキシラナーゼの活性測定にはカバキシラン(シグマ社製)を用いた。酵素力価の定義はキシラナーゼがキシランを分解することで得られる還元糖の還元力をDNS法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)を用いて測定し、1分間に1マイクロモルのキシロースに相当する還元力を生成させる酵素量を1ユニットとした。
【0024】
<酸性および中性キシロオリゴ糖組成物の調製例>
<調製例1;酸性キシロオリゴ糖UX10の調製>
混合広葉樹チップ(国内産広葉樹70%、ユーカリ30%)を原料として、クラフト蒸解及び酸素脱リグニン工程により、酸素脱リグニンパルプスラリー(カッパー価9.6、パルプ粘度25.1cps)を得た。スラリーからパルプを濾別、洗浄した後、パルプ濃度10%、pH8に調製したパルプスラリーを用いて以下のキシラナーゼによる酵素処理を行った。
【0025】
バチルスsp.S−2113株(独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター、寄託菌株FERM BP−5264)の生産するキシラナーゼを1単位/パルプgとなるように添加した後、60℃で120分間処理した。その後、ろ過によりパルプ残渣を除去し、酵素処理液1050Lを得た。
【0026】
次に、得られた酵素処理液を濃縮工程、希酸処理工程、精製工程の順に供した。
濃縮工程では、逆浸透膜(日東電工(株)製、RO NTR−7410)を用いて濃縮液(40倍濃縮)を調製した。希酸処理工程では、得られた濃縮液のpHを3.5に調整した後、121℃で60分間加熱処理し、リグニンなどの高分子夾雑物の沈殿を形成させた。さらに、この沈殿をセラミックフィルターろ過で取り除くことにより、希酸処理溶液を得た。
【0027】
精製工程では、限外濾過・脱色工程、吸着工程の順に供した。限外濾過・脱色工程では、希酸処理溶液を限外濾過膜(オスモニクス社製、分画分子量8000)を通過させた後、活性炭(和光純薬(株)製)770gの添加及びセラミックフィルターろ過により脱色処理液を得た。吸着工程では、脱色処理液を強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)、強陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PA408)、強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)各100kgを充填したカラムに順次通過させた後、弱陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製WA30)100kgを充填したカラムに供した。この弱陰イオン交換樹脂充填カラムから75mM NaCl溶液によって溶出した溶液をスプレードライ処理することによって、酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量353g、回収率13.1%)を得た。前述の測定方法により、平均重合度10.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は10、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。よって以下、この酸性キシロオリゴ糖組成物をUX10とする。
【0028】
<調製例2;酸性キシロオリゴ糖UX5の調製>
調整例1と同様にして得られた希酸処理液1160mlに、スミチームX28mgを添加し、40℃で20時間反応させた。活性炭9.8gの添加及び加熱処理(70℃、1時間)により酵素を失活させた後、セラミックフィルターで活性炭を除去した。スミチームX処理液を調整例1と同様の精製工程を経て、酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量21.3g、回収率22.2%)を得た。前述の測定方法により、平均重合度4.8、キシロース鎖長の上限と下限との差は9、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物である事が分かった。以下、この酸性キシロオリゴ糖組成物をUX5とする。
【0029】
<調製例3;酸性キシロオリゴ糖UX2の調製>
調製例1より得られたUX10の10%水溶液100mlに、スミチームX50mgを添加し、60℃、20時間反応後、弱アニオン交換樹脂(WA30)10gを充填したカラムに供した。カラムを水洗した後、75mM NaCl溶液によって溶出した溶液を凍結乾燥する事によって、酸性キシロオリゴ糖粉末(全糖量2.1g、回収率21%)を得た。前述の測定方法により、平均重合度2.3,キシロース鎖長の上限と下限の差は2,酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。以下、この酸性オリゴ糖をUX2とする。
【0030】
<調製例4;中性キシロオリゴ糖X5の調製>
調整例2と同様にして、スミチームX処理液を得た後、その溶液1100mlを強陽イオン交換樹脂(PK218)、強陰イオン交換樹脂(PK408)、強陽イオン交換樹脂(PK218)、弱陰イオン交換樹脂(WA30)各100gを充填したカラムを順次通過させた。カラムを通過した画分を凍結乾燥することによって、ウロン酸側鎖を持たない中性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量49.7g、回収率54.7%)が得られた。前述の測定方法により、X5は平均重合度4.8、キシロース鎖長の上限と下限との差は6、ウロン酸残基を含まない糖組成化合物であった。以下、この中性キシロオリゴ糖組成物をX5とする。
【0031】
次に、得られた酸性キシロオリゴ糖および中性オリゴ糖を用いて行った、ラット骨粗鬆症治療試験の方法及び結果を示す。
【0032】
使用動物:日本チャールズリバーより5週齡のSD系雌性ラットを購入し、温度23±1℃、湿度55%±5%に設定した飼育室で、金属性ケージに個別飼いした。後に示す組成の飼料を自作し、3日間予備飼育した後、1群12匹のラットをカルシウムフリー食(CF)で3週間飼育した。なお、コントロールとして普通食(CN)で飼育した群も設定した。このようにして擬似的に骨密度の低下した状態を作り出し、各種オリゴ糖+CNの飼料で4週間飼育した。このとき、オリゴ糖を含んでいない群も設定した。各群の飼料組成を表1に示す。飼育4週後に頚椎脱臼法で屠殺し、大腿骨を取り出し生理食塩水に漬けて実験まで冷凍保存した。
【0033】
【表1】
【0034】
<試験例1>大腿骨の骨密度測定は次のように実施した。使用装置:動物研究用pQCT骨密度測定装置(XCT Research SA+, Stratec Medizintecnik GmbH, Rforzhein Germany)。測定方法:pQCT法(peripheral Quantitative Computed Tomography)
各実験区の結果を図1に示す。なお、骨には髄質骨と呼ばれる中心部分と、周囲を取り囲んでいる皮質骨と呼ばれる部分があり、骨の強度は、ほぼ皮質骨の強度と等しいとされているため、ここでは皮質骨密度(図の縦軸、mg/cm3)を示した。
【0035】
<試験例2>大腿骨の破壊強度測定は次のように実施した。
骨3点曲げ試験はマルトー社製骨強度測定装置 MZ−500Sを用いた。3点曲げパラメータは測定時間30秒、最大荷重50kgfにて行なった。測定結果を図2に示す。図の縦軸Zは大腿骨の破壊強度である。
【0036】
【発明の効果】
図1から明らかなように、本発明で得られる酸性キシロオリゴ糖組成物を含有した骨粗鬆症治療剤は、一旦減少した骨のカルシウム濃度を増加させ、骨密度及び骨強度を増進するため、特に骨粗鬆症の治療に極めて有用である。また、オリゴ糖であるため、食品や医薬品などへの応用は容易であり、工業的に大量に安価に製造することができ、同一の製品が安定して生産でき、保存性が良いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】皮質骨密度の回復に及ぼすオリゴ糖の影響を示す図。
【図2】大腿骨破壊強度に及ぼすオリゴ糖の影響を示す図。
Claims (4)
- キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を有効成分とする骨粗鬆症治療剤。
- 該酸性キシロオリゴ糖が、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜15.0であることを特徴とする請求項1に記載の骨粗鬆症治療剤。
- 前記酸性キシロオリゴ糖が、「リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離して得たもの」であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の骨粗鬆症治療剤。
- ウロン酸がグルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の骨粗鬆症治療剤。
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