JP2004180988A - 心臓治療装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】迷走神経刺激に基づく心臓治療装置において、頻拍リスクイベントの検出に応答して神経刺激波形様式を制御する。
【解決手段】心臓の自発的イベントを検出する心臓イベント検出手段3,5と、心臓イベント検出手段3,5に接続して、検出した心臓イベントの中から頻拍リスクイベントを検出するリスクイベント検出手段7を備え、制御手段2は、所定の関係に基づいて、検出した頻拍リスクイベントに対応した神経刺激特性を波形特性規定手段9)に設定し、神経パルス発生手段8によって迷走神経刺激を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】心臓の自発的イベントを検出する心臓イベント検出手段3,5と、心臓イベント検出手段3,5に接続して、検出した心臓イベントの中から頻拍リスクイベントを検出するリスクイベント検出手段7を備え、制御手段2は、所定の関係に基づいて、検出した頻拍リスクイベントに対応した神経刺激特性を波形特性規定手段9)に設定し、神経パルス発生手段8によって迷走神経刺激を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、器質的心疾患患者における心臓突然死を防止するために、迷走神経を刺激する心臓治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
突然死の中で特に心臓病に起因するものを心臓突然死といい、その数は国内で年間約5万人にのぼる。心臓突然死の直接的な原因は、致死的不整脈と呼ばれる、血行動態の破綻をきたす心室頻拍や心室細動の発生である。
【0003】
心室が発作的に異常に早く拍動する心室頻拍や、心室を構成する個々の筋繊維がばらばらに興奮を始めて心室全体として小刻みに震えているだけの心室細動が発生すると、心臓のポンプ機能が低下あるいは消失し、必要な血液を全身に送り出すことができなくなる。このため、脳血流の減少に伴う意識消失をきたし、直ちに適切な処置を施さなければ死に至ることもある。心室頻拍や心室細動は、心筋梗塞や心筋症などの器質的心疾患患者に多く発生する。
【0004】
心臓突然死を予防するために、一般的に抗不整脈薬が用いられる。特に左室機能の低下した器質的心疾患症例では、β遮断薬やβ遮断作用を持った第III群抗不整脈薬が、生命予後改善の観点から有効であることが米国における循環器トライアルによって確認されつつある。β遮断薬は、その薬理作用によって主に心拍数を低下させる作用を具備しており、早い心臓の拍動を抑えるには有効である。
【0005】
このように心拍数を低下させることによって、心室頻拍や心室細動を誘発する心室性期外収縮や遅延後脱分極等の頻拍リスクイベントの発生を低減させることができ、更に、心拍数の低下に伴う心筋の酸素消費量の減少によって、心筋障害部位での酸欠状態が改善し、頻拍リスクイベントが発生した場合の心筋の酸欠状態を予防し、心室頻拍や心室細動の発生や新たな心筋梗塞の再発を防止することができると考えられている。
【0006】
また、交感神経が刺激されてその活動が活性化すると、致死的不整脈発生の可能性が高まることが知られている。交感神経は一般的に、肉体的ストレス、あるいは精神的ストレスによって刺激される。β遮断薬は、交感神経に直接作用してその活動を鎮静化させるために、致死的不整脈の予防に有効であると考えられている。
【0007】
一般に交感神経の信号活動が高まると心活動(心拍数及び心拍出量)が高まり、迷走神経(副交感神経)の信号活動が高まると心活動が低下する拮抗作用によって、迷走神経の電気刺激がβ遮断作用と同様な作用を発揮することが知られている。この原理に基づいて、頻脈性不整脈を検知した場合に迷走神経を電気刺激することにより、頻脈性不整脈を予防、あるいは停止する手法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−38625号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、薬物療法において心拍数を低値に保つためには、投与するβ遮断薬の量と患者の心拍数との関係を予め求め、この関係に基づいて、所望の心拍数となるように投薬量と投薬時間間隔を決定する必要がある。そして、投薬量と心拍数の関係は、患者の自律神経の緊張状態によって常に変化するため、薬剤の血中濃度や心拍数の測定を絶えず行って薬剤を投与する時間や容量を調整しなければならず、非常に繁雑で、厳密に心拍数を低値に制御することは実質的に困難であるという問題があった。更に、薬剤の飲みすぎ、飲み忘れ等も考えられ、投薬により心拍数を低値に抑えることは難しい状況であった。
【0010】
また、特許文献1記載の心臓治療装置では、頻脈性不整脈を検知した場合にはその内容に関わらず、同一の神経刺激を行うこととなる。しかしながら、過度な迷走神経への電気刺激が繰り返されると、心収縮力を低下させ、特に左室機能の低下した器質的心疾患患者では心機能を増悪させる問題がある。また、心臓以外の他臓器への影響、例えば、胃酸、インスリン、グルカゴンの過度な分泌や、喘息既往のある患者に対しては喘息発作の誘発といった副作用の問題が顕著となる可能性がある。逆に迷走神経への刺激が弱いと十分な効果が得られないという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、心臓の状況に基づいて、迷走神経刺激の刺激波形を制御し、常に適切な迷走神経刺激を与える心臓治療器を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の心臓治療装置は、迷走神経を刺激する神経刺激信号を発生する神経刺激発生手段と、前記神経刺激発生手段が発生する刺激波形の特性を制御する波形特性規定手段と、心臓のイベントを検出する心臓イベント検出手段と、前記心臓イベント検出手段に接続して頻拍リスクイベントを検出するリスクイベント検出手段と、頻拍リスクイベントの種類と神経刺激の波形特性との関係を保持し、前記関係に基づいて、検出した頻拍リスクイベントに対応した刺激波形特性を前記波形特性規定手段に設定する制御手段からなることを特徴とする。
【0013】
ここで、迷走神経の電気刺激によって発揮される副交感神経興奮の強さは、電気刺激の刺激波形によって異なる。請求項1に記載の心臓治療装置によれば、心室頻拍や心室細動を誘発する危険性の高い頻拍リスクイベントが発生した場合には、強い副交感神経興奮を発生する刺激波形が与えられ、通常しばしば経験するであろう単なる心拍数低下を目的とした場合には弱い副交感神経興奮を発生する刺激波形が与えられ、状況に応じた適切な神経刺激を行うことができる。
【0014】
また、請求項2に記載の心臓治療装置は、請求項1に記載の心臓治療装置において、前記頻拍リスクイベントが心拍数の増加を含むことを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の心臓治療装置は、前記頻拍リスクイベントが期外収縮を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の心臓治療装置は、前記頻拍リスクイベントが心臓の早期後脱分極を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の心臓治療装置は、前記頻拍リスクイベントが心臓の遅延後脱分極を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の心臓治療装置は、前記刺激波形特性が単発パルス刺激を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の心臓治療装置は、前記刺激波形特性がバースト刺激を含むことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による心臓治療装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書において、心臓の「イベント」とは、刺激起因、自発にかかわらず、心臓(心房及び/又は心室)で発生した収縮現象を含むものである。
【0021】
図1は、一実施形態として本発明をデュアルチャンバペースメーカに適用した心臓治療装置1の構成図である。図1において、心臓治療装置1は、制御手段2、心臓の右心房の収縮(心房イベント)を検出する心房イベント検出手段3、右心房を刺激するパルスを発生する心房パルス発生手段4、心臓の右心室の収縮(心室イベント)を検出する心室イベント検出手段5、右心室を刺激するパルスを発生する心室パルス発生手段6、心房イベント検出手段3と心室イベント検出手段5の出力を解析して心臓の頻拍リスクイベントを検出するリスクイベント検出手段7、迷走神経を刺激する神経刺激信号を発生する神経パルス発生手段8、神経パルス発生手段8の発生する神経刺激の波形特性を規定する波形特性規定手段9および外部と情報を送受信するテレメトリ手段10によって構成される。
【0022】
心房イベント検出手段3と心房パルス発生手段4は、心臓11内の右心房12に挿入、留置された心房電極リード13に接続され、心室イベント検出手段5と心室パルス発生手段6は、心臓11内の右心室14に挿入、留置された心室電極リード15に接続されている。
【0023】
心房イベント検出手段3は、心房電極リード13を介して取得した心房心電図情報を基に心房イベントを検出し、検出した心房イベントを制御手段2およびリスクイベント検出手段7に送る。心房パルス発生手段4は、心房パルスを発生し、心房電極リード13を介して右心房12を刺激する。心室イベント検出手段5は、心室電極リード15を介して取得した心室心電図情報を基に心室イベントを検出し、検出した心室イベントを制御手段2およびリスクイベント検出手段7に送る。心室パルス発生手段6は、心室パルスを発生し、心室電極リード15を介して心臓11内の右心室14を刺激する。
【0024】
神経パルス発生手段8は、神経パルスを発生し、迷走神経17に接続固定された神経電極リード16に接続されており、神経刺激リード16を介して迷走神経17を刺激する。神経刺激リード16先端の神経刺激電極160は、通常は迷走神経17に巻きつけるようにして配置される。神経刺激電極160を巻きつける領域としては、頚部領域かあるいは外側頚動脈の右中央位置が好適である。また、神経刺激電極160は、血管内にカテーテル状の神経刺激リード16を留置することによって、血管壁に隣接した迷走神経17を刺激するよう配置することも可能である。配置領域としては、鎖骨下静脈内が好適である。
【0025】
リスクイベント検出手段7は、送られた心房イベントと心室イベントから頻拍リスクイベントを検出し、頻拍リスクイベントを制御手段2の神経パルス制御手段21に送る。制御手段2は、送られた心房イベント、心室イベントおよび頻拍リスクイベントを基に、心房パルス発生手段4、心室パルス発生手段6および神経パルス発生手段8による刺激パルスの発生を制御する。また、制御手段2は、送られた頻拍リスクイベント情報を基に波形特性規定手段9に刺激波形特性を設定する。
【0026】
テレメトリ手段10は、外部設定手段18との間で通信を行い、リスクイベント情報と刺激波形特性との対応関係を変更することができる。
【0027】
図1に示す心臓刺激装置1の制御手段2は、心房イベントあるいは心室イベント発生以降の時間を計測する心房刺激タイマ22と、予め設定された各患者に応じた好ましい心房イベント間の時間間隔(基本レートインターバル)を記憶するA−A記憶手段23と、予め設定された各患者に応じた心室イベント発生から心房イベント発生までの時間間隔を記憶するV−A記憶手段24とを含む。なお、ここでは心房をAで示し、心室をVで示しており、A−Aは心房−心房間、V−Aは心室−心房間のことである。
【0028】
心房イベント検出手段3で検出された心房のイベントに関する情報は、リスクイベント検出手段7に入ると共にOR回路25を介して心房刺激タイマ22に入り、心房刺激タイマ22は次に心房イベントの検出信号が来るまでの時間情報を比較手段26へ送る。比較手段26では選択手段27を介して送られたA−A記憶手段23のデータと心房刺激タイマ22からの情報を比較し、A−A記憶手段23に記憶された時間が過ぎても心房イベントが発生していない場合には、心房パルス発生手段4へパルス発生を指示する。
【0029】
心室イベント検出手段5で検出された心室のイベントに関する情報は、リスクイベント検出手段7に入ると共にA−Vタイマ28に入る。A−Vタイマ28は、心房イベント検出手段3からの信号が入ると同時にスタートし、心室イベント検出手段5からの信号が入ると同時にストップする。したがって、A−Vタイマ28は心房イベントから心室イベントまでの時間間隔を監視することができる。A−V記憶手段29は、予め設定された各患者に応じた好ましい心房イベント発生から心室イベント発生までの時間間隔を記憶しており、比較手段30によって、両者のデータを比較し、A−V記憶手段29の時間が過ぎても心室イベントが発生していない場合には、心室パルス発生手段6へパルス発生を指示する。
【0030】
ゲート回路31は、正常なレートよりも早期にイベントが発生するいわゆる期外収縮を受けて作動する。A−Vタイマ28がスタートしていない時点で、心室イベント検出手段5からの信号が入ると、心室イベントが連続して発生した、すなわち心室性期外収縮(PVC)が発生したと判断する。なお、A−Vタイマ28の動作状況は比較手段30を介して監視されている。心室性期外収縮の発生を検知すると、ゲート回路31は、選択手段27にセレクト信号を送り、選択手段27はそれを受けて、比較手段26へ送る信号をA−A記憶手段23のデータからV−A記憶手段24のデータに切り替える。また、ゲート回路31は同時に心室イベント検出手段5の情報をOR回路25へ送り、それを受けて心房刺激タイマ22は一旦リセットされ、次の心房イベント検出までの時間測定を開始する。比較手段26は、V−A記憶手段24に記憶された時間を経過しても次の心房イベントが検出されない場合に、心房パルス発生手段4にパルス発生を指示する。このパルス発生は、心房イベント検出手段3からA−Vタイマ28、比較手段30を介してゲート回路31に伝わり、これを受けてゲート回路31は選択手段27をA−A記憶手段23側へ切り替える。
【0031】
リスクイベント検出手段7は、心房イベント検出手段3と心室イベント検出手段5の出力を受けて、頻拍リスクイベントの有無を判定する。具体的には、リスクイベント検出手段7は、例えば心拍数が上昇した場合や、連続して同じイベントが発生する期外収縮が現れた場合に、頻拍リスクイベントを検出し、その種類を特定する。より詳細に説明すれば、予め定められたレート以上の心拍数増加や心拍数変動、期外収縮の連結時間(直前のイベントから期外収縮までの時間)の変動性、期外収縮波形の形状(単形性あるいは多形性)、期外収縮の連続発生回数などのパラメータが頻拍リスクイベントの判断材料として利用できる。判定された頻拍リスクイベントの種類は神経パルス制御手段21に送られ、神経パルス制御手段21は各頻拍リスクイベントに応じた好ましい波形特性の神経パルスを発生するよう、波形特性規定手段9へ指示する。
【0032】
神経刺激波形の一例として、図2に単発パルス刺激波形、図3にバーストパルス刺激波形を示す。単発パルス刺激波形は、振幅、パルス幅、ディレイ時間のパラメータによって規定される。ディレイ時間は、頻拍リスクイベントの検出から神経刺激を行うまでの時間である。ディレイ時間を零として、頻拍リスクイベントの検出と同時に神経刺激を行うことも可能である。バーストパルス刺激波形は、複数のパルス刺激を周期的に繰り返し行うもので、振幅、パルス幅、パルス数、パルス間周期、ディレイ時間のパラメータによって規定される。ディレイ時間に関しては単発パルス刺激波形の場合と同様である。
【0033】
頻拍リスクイベントと刺激波形特性の対応関係の例を表1に示す。表1では、心房心拍数過多(80回/分以上)、心房性期外収縮単発、心室性期外収縮単発、心室性期外収縮2連発、心室性期外収縮3連発以上が頻拍リスクイベントとして設定されている。例えば、80回/分以上の心房心拍数が頻拍リスクイベントとして検出されると、ディレイ時間なし、振幅3ボルト(V)、パルス幅1ミリ秒(msec)の単発パルス刺激の刺激波形特性が設定される。あるいは、単発の心室性期外収縮が頻拍リスクイベントとして検出されると、ディレイなし、振幅3V、パルス幅1msec、パルス数3、パルス間周期50msecのバーストパルス刺激の刺激波形特性が設定される。
【表1】
【0034】
図4は、本実施形態におけるデュアルチャンバペースメーカのDDDモードの動作を示したフローチャートダイアグラムである。なお、ここでは、基本レート以上の心房心拍数の増加と心室性期外収縮が頻拍リスクイベントの有無を判定するイベントに設定されているものとして説明する。
【0035】
まず、心房刺激パルスの発生または心房イベントの検出によってスタートするステップS1で、選択手段27がA−A記憶手段23を選択すると共に、心房刺激タイマ22とA−Vタイマ28がリセットされスタートする(ステップS2)。次に、心室イベントが検出されたか否かが判断され(ステップS3)、心室イベントが検出された場合、すなわち、自発による心室の拍動が検出された場合はA−Vタイマ28をストップする(ステップS4)。心室イベントが検出されなかった場合は、比較手段30によりA−Vタイマ28のタイムアウトを待ち(ステップS5)、タイムアウトした場合、すなわち、A−V記憶手段29に記憶された所定の遅延時間が経過しても自発による心室の拍動が検出されなかった場合は、心室パルス発生手段6により心室刺激を行う(ステップS6)。
【0036】
次のステップS7では、心室性期外収縮(PVC)の有無を確認する。すなわち、心室刺激パルスの発生または心室イベント検出の後、続けて心室イベントが検出された場合は、心室性期外収縮が発生したと判断され、リスクイベント検出手段7により、頻拍リスクイベントであるか否かが判断される(ステップS8)。リスクイベント検出手段7は、予め定められた条件、例えば所定期間内に発生した期外収縮の回数、期外収縮の連発回数、連結時間のゆらぎ等の条件に照らし合わせ、頻拍リスクイベントであるか否かを判断する。また、頻拍リスクイベントであると判定された場合には、イベントの種類を決定して神経パルス制御手段21に送り、神経パルス制御手段21は決められたイベントの種類に合わせた神経刺激の波形特性で神経刺激パルスを発生するよう波形特性規定手段9へ指示し(ステップS9)、それを受けて、波形特性規定手段9は、神経パルス発生手段8への迷走神経刺激を指示する(ステップS10)。ゲート回路31は、ステップS7での心室イベント検出のようなA−Vタイマ28が止まった状態での心室イベント検出を受けて、選択手段27をそれまでのA−A記憶手段23側からV−A記憶手段側に切り替え(ステップS11)、同時に心房刺激タイマ22をリセットしてV−Aの計時を開始させる(ステップS12)。
【0037】
ステップS7で心室イベント(期外収縮)が検出されない場合は、心房イベント検出手段3による心房イベントの検出を待ち(ステップS13)、心房刺激タイマ22が基本レートインターバルに達するよりも早く心房イベントが検出された場合は、リスクイベント検出手段7により頻拍リスクイベントであるか否かが判定される(ステップS14)。ここでは、予め定められた条件、例えば所定レート以上での心房心拍数の所定期間継続や、所定変化率以上の心房心拍数変化等の条件からリスクイベント検出手段7が判断する。頻拍リスクイベントであると判断された場合には、リスクイベントの種類が決定され、神経パルス制御手段21は決められたイベントの種類に合わせた神経刺激の波形特性で神経刺激パルスを発生するよう波形特性規定手段9へ指示し(ステップS15)、それを受けて、波形特性規定手段9は、神経パルス発生手段8への迷走神経刺激を指示する(ステップS16)。
【0038】
ステップS13で心房イベントが検出されないまま、心房刺激タイマ22が基本レートインターバルであるA−A記憶手段23の記憶値に達する(ステップS17)と、比較手段26が心房パルス発生手段4へ心房刺激を指示する(ステップS18)。
【0039】
以上、本発明の実施形態として、デュアルチャンバペースメーカのDDDモードを例としてあげたが、本発明の形態はこれに限られるものではなく、心臓ペースメーカの全ての動作モードで適用が可能である。さらに本発明の形態は、心臓ペースメーカに限定されるものではなく、植え込み型除細動器等の心臓治療装置に迷走神経刺激機構を備えた場合にも適用が可能である。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明によれば、検出した頻拍リスクイベントに基づいて迷走神経刺激の刺激波形様式を制御することにより、発揮する副交感神経の興奮を調整し、効率的な治療を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の、デュアルチャンバペースメーカの形態での構成例を示した図である。
【図2】図2は、神経刺激波形様式としての単発パルス刺激波形を示した図である。
【図3】図3は、神経刺激波形様式としてのバーストパルス刺激波形を示した図である。
【図4】図4は、図1に示す実施形態のデュアルチャンバペースメーカのDDDモードの動作フローチャートダイアグラムである。
【符号の説明】
1…心臓治療装置
2…制御手段
3…心房イベント検出手段
4…心房パルス発生手段
5…心室イベント検出手段
6…心室パルス発生手段
7…リスクイベント検出手段
8…神経パルス発生手段
9…波形特性規定手段
10…テレメトリ手段
11…心臓
12…心房
13…心房電極リード
14…心室
15…心室電極リード
16…神経電極リード
17…迷走神経
18…外部設定手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、器質的心疾患患者における心臓突然死を防止するために、迷走神経を刺激する心臓治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
突然死の中で特に心臓病に起因するものを心臓突然死といい、その数は国内で年間約5万人にのぼる。心臓突然死の直接的な原因は、致死的不整脈と呼ばれる、血行動態の破綻をきたす心室頻拍や心室細動の発生である。
【0003】
心室が発作的に異常に早く拍動する心室頻拍や、心室を構成する個々の筋繊維がばらばらに興奮を始めて心室全体として小刻みに震えているだけの心室細動が発生すると、心臓のポンプ機能が低下あるいは消失し、必要な血液を全身に送り出すことができなくなる。このため、脳血流の減少に伴う意識消失をきたし、直ちに適切な処置を施さなければ死に至ることもある。心室頻拍や心室細動は、心筋梗塞や心筋症などの器質的心疾患患者に多く発生する。
【0004】
心臓突然死を予防するために、一般的に抗不整脈薬が用いられる。特に左室機能の低下した器質的心疾患症例では、β遮断薬やβ遮断作用を持った第III群抗不整脈薬が、生命予後改善の観点から有効であることが米国における循環器トライアルによって確認されつつある。β遮断薬は、その薬理作用によって主に心拍数を低下させる作用を具備しており、早い心臓の拍動を抑えるには有効である。
【0005】
このように心拍数を低下させることによって、心室頻拍や心室細動を誘発する心室性期外収縮や遅延後脱分極等の頻拍リスクイベントの発生を低減させることができ、更に、心拍数の低下に伴う心筋の酸素消費量の減少によって、心筋障害部位での酸欠状態が改善し、頻拍リスクイベントが発生した場合の心筋の酸欠状態を予防し、心室頻拍や心室細動の発生や新たな心筋梗塞の再発を防止することができると考えられている。
【0006】
また、交感神経が刺激されてその活動が活性化すると、致死的不整脈発生の可能性が高まることが知られている。交感神経は一般的に、肉体的ストレス、あるいは精神的ストレスによって刺激される。β遮断薬は、交感神経に直接作用してその活動を鎮静化させるために、致死的不整脈の予防に有効であると考えられている。
【0007】
一般に交感神経の信号活動が高まると心活動(心拍数及び心拍出量)が高まり、迷走神経(副交感神経)の信号活動が高まると心活動が低下する拮抗作用によって、迷走神経の電気刺激がβ遮断作用と同様な作用を発揮することが知られている。この原理に基づいて、頻脈性不整脈を検知した場合に迷走神経を電気刺激することにより、頻脈性不整脈を予防、あるいは停止する手法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−38625号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、薬物療法において心拍数を低値に保つためには、投与するβ遮断薬の量と患者の心拍数との関係を予め求め、この関係に基づいて、所望の心拍数となるように投薬量と投薬時間間隔を決定する必要がある。そして、投薬量と心拍数の関係は、患者の自律神経の緊張状態によって常に変化するため、薬剤の血中濃度や心拍数の測定を絶えず行って薬剤を投与する時間や容量を調整しなければならず、非常に繁雑で、厳密に心拍数を低値に制御することは実質的に困難であるという問題があった。更に、薬剤の飲みすぎ、飲み忘れ等も考えられ、投薬により心拍数を低値に抑えることは難しい状況であった。
【0010】
また、特許文献1記載の心臓治療装置では、頻脈性不整脈を検知した場合にはその内容に関わらず、同一の神経刺激を行うこととなる。しかしながら、過度な迷走神経への電気刺激が繰り返されると、心収縮力を低下させ、特に左室機能の低下した器質的心疾患患者では心機能を増悪させる問題がある。また、心臓以外の他臓器への影響、例えば、胃酸、インスリン、グルカゴンの過度な分泌や、喘息既往のある患者に対しては喘息発作の誘発といった副作用の問題が顕著となる可能性がある。逆に迷走神経への刺激が弱いと十分な効果が得られないという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、心臓の状況に基づいて、迷走神経刺激の刺激波形を制御し、常に適切な迷走神経刺激を与える心臓治療器を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の心臓治療装置は、迷走神経を刺激する神経刺激信号を発生する神経刺激発生手段と、前記神経刺激発生手段が発生する刺激波形の特性を制御する波形特性規定手段と、心臓のイベントを検出する心臓イベント検出手段と、前記心臓イベント検出手段に接続して頻拍リスクイベントを検出するリスクイベント検出手段と、頻拍リスクイベントの種類と神経刺激の波形特性との関係を保持し、前記関係に基づいて、検出した頻拍リスクイベントに対応した刺激波形特性を前記波形特性規定手段に設定する制御手段からなることを特徴とする。
【0013】
ここで、迷走神経の電気刺激によって発揮される副交感神経興奮の強さは、電気刺激の刺激波形によって異なる。請求項1に記載の心臓治療装置によれば、心室頻拍や心室細動を誘発する危険性の高い頻拍リスクイベントが発生した場合には、強い副交感神経興奮を発生する刺激波形が与えられ、通常しばしば経験するであろう単なる心拍数低下を目的とした場合には弱い副交感神経興奮を発生する刺激波形が与えられ、状況に応じた適切な神経刺激を行うことができる。
【0014】
また、請求項2に記載の心臓治療装置は、請求項1に記載の心臓治療装置において、前記頻拍リスクイベントが心拍数の増加を含むことを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の心臓治療装置は、前記頻拍リスクイベントが期外収縮を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の心臓治療装置は、前記頻拍リスクイベントが心臓の早期後脱分極を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の心臓治療装置は、前記頻拍リスクイベントが心臓の遅延後脱分極を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の心臓治療装置は、前記刺激波形特性が単発パルス刺激を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の心臓治療装置は、前記刺激波形特性がバースト刺激を含むことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による心臓治療装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書において、心臓の「イベント」とは、刺激起因、自発にかかわらず、心臓(心房及び/又は心室)で発生した収縮現象を含むものである。
【0021】
図1は、一実施形態として本発明をデュアルチャンバペースメーカに適用した心臓治療装置1の構成図である。図1において、心臓治療装置1は、制御手段2、心臓の右心房の収縮(心房イベント)を検出する心房イベント検出手段3、右心房を刺激するパルスを発生する心房パルス発生手段4、心臓の右心室の収縮(心室イベント)を検出する心室イベント検出手段5、右心室を刺激するパルスを発生する心室パルス発生手段6、心房イベント検出手段3と心室イベント検出手段5の出力を解析して心臓の頻拍リスクイベントを検出するリスクイベント検出手段7、迷走神経を刺激する神経刺激信号を発生する神経パルス発生手段8、神経パルス発生手段8の発生する神経刺激の波形特性を規定する波形特性規定手段9および外部と情報を送受信するテレメトリ手段10によって構成される。
【0022】
心房イベント検出手段3と心房パルス発生手段4は、心臓11内の右心房12に挿入、留置された心房電極リード13に接続され、心室イベント検出手段5と心室パルス発生手段6は、心臓11内の右心室14に挿入、留置された心室電極リード15に接続されている。
【0023】
心房イベント検出手段3は、心房電極リード13を介して取得した心房心電図情報を基に心房イベントを検出し、検出した心房イベントを制御手段2およびリスクイベント検出手段7に送る。心房パルス発生手段4は、心房パルスを発生し、心房電極リード13を介して右心房12を刺激する。心室イベント検出手段5は、心室電極リード15を介して取得した心室心電図情報を基に心室イベントを検出し、検出した心室イベントを制御手段2およびリスクイベント検出手段7に送る。心室パルス発生手段6は、心室パルスを発生し、心室電極リード15を介して心臓11内の右心室14を刺激する。
【0024】
神経パルス発生手段8は、神経パルスを発生し、迷走神経17に接続固定された神経電極リード16に接続されており、神経刺激リード16を介して迷走神経17を刺激する。神経刺激リード16先端の神経刺激電極160は、通常は迷走神経17に巻きつけるようにして配置される。神経刺激電極160を巻きつける領域としては、頚部領域かあるいは外側頚動脈の右中央位置が好適である。また、神経刺激電極160は、血管内にカテーテル状の神経刺激リード16を留置することによって、血管壁に隣接した迷走神経17を刺激するよう配置することも可能である。配置領域としては、鎖骨下静脈内が好適である。
【0025】
リスクイベント検出手段7は、送られた心房イベントと心室イベントから頻拍リスクイベントを検出し、頻拍リスクイベントを制御手段2の神経パルス制御手段21に送る。制御手段2は、送られた心房イベント、心室イベントおよび頻拍リスクイベントを基に、心房パルス発生手段4、心室パルス発生手段6および神経パルス発生手段8による刺激パルスの発生を制御する。また、制御手段2は、送られた頻拍リスクイベント情報を基に波形特性規定手段9に刺激波形特性を設定する。
【0026】
テレメトリ手段10は、外部設定手段18との間で通信を行い、リスクイベント情報と刺激波形特性との対応関係を変更することができる。
【0027】
図1に示す心臓刺激装置1の制御手段2は、心房イベントあるいは心室イベント発生以降の時間を計測する心房刺激タイマ22と、予め設定された各患者に応じた好ましい心房イベント間の時間間隔(基本レートインターバル)を記憶するA−A記憶手段23と、予め設定された各患者に応じた心室イベント発生から心房イベント発生までの時間間隔を記憶するV−A記憶手段24とを含む。なお、ここでは心房をAで示し、心室をVで示しており、A−Aは心房−心房間、V−Aは心室−心房間のことである。
【0028】
心房イベント検出手段3で検出された心房のイベントに関する情報は、リスクイベント検出手段7に入ると共にOR回路25を介して心房刺激タイマ22に入り、心房刺激タイマ22は次に心房イベントの検出信号が来るまでの時間情報を比較手段26へ送る。比較手段26では選択手段27を介して送られたA−A記憶手段23のデータと心房刺激タイマ22からの情報を比較し、A−A記憶手段23に記憶された時間が過ぎても心房イベントが発生していない場合には、心房パルス発生手段4へパルス発生を指示する。
【0029】
心室イベント検出手段5で検出された心室のイベントに関する情報は、リスクイベント検出手段7に入ると共にA−Vタイマ28に入る。A−Vタイマ28は、心房イベント検出手段3からの信号が入ると同時にスタートし、心室イベント検出手段5からの信号が入ると同時にストップする。したがって、A−Vタイマ28は心房イベントから心室イベントまでの時間間隔を監視することができる。A−V記憶手段29は、予め設定された各患者に応じた好ましい心房イベント発生から心室イベント発生までの時間間隔を記憶しており、比較手段30によって、両者のデータを比較し、A−V記憶手段29の時間が過ぎても心室イベントが発生していない場合には、心室パルス発生手段6へパルス発生を指示する。
【0030】
ゲート回路31は、正常なレートよりも早期にイベントが発生するいわゆる期外収縮を受けて作動する。A−Vタイマ28がスタートしていない時点で、心室イベント検出手段5からの信号が入ると、心室イベントが連続して発生した、すなわち心室性期外収縮(PVC)が発生したと判断する。なお、A−Vタイマ28の動作状況は比較手段30を介して監視されている。心室性期外収縮の発生を検知すると、ゲート回路31は、選択手段27にセレクト信号を送り、選択手段27はそれを受けて、比較手段26へ送る信号をA−A記憶手段23のデータからV−A記憶手段24のデータに切り替える。また、ゲート回路31は同時に心室イベント検出手段5の情報をOR回路25へ送り、それを受けて心房刺激タイマ22は一旦リセットされ、次の心房イベント検出までの時間測定を開始する。比較手段26は、V−A記憶手段24に記憶された時間を経過しても次の心房イベントが検出されない場合に、心房パルス発生手段4にパルス発生を指示する。このパルス発生は、心房イベント検出手段3からA−Vタイマ28、比較手段30を介してゲート回路31に伝わり、これを受けてゲート回路31は選択手段27をA−A記憶手段23側へ切り替える。
【0031】
リスクイベント検出手段7は、心房イベント検出手段3と心室イベント検出手段5の出力を受けて、頻拍リスクイベントの有無を判定する。具体的には、リスクイベント検出手段7は、例えば心拍数が上昇した場合や、連続して同じイベントが発生する期外収縮が現れた場合に、頻拍リスクイベントを検出し、その種類を特定する。より詳細に説明すれば、予め定められたレート以上の心拍数増加や心拍数変動、期外収縮の連結時間(直前のイベントから期外収縮までの時間)の変動性、期外収縮波形の形状(単形性あるいは多形性)、期外収縮の連続発生回数などのパラメータが頻拍リスクイベントの判断材料として利用できる。判定された頻拍リスクイベントの種類は神経パルス制御手段21に送られ、神経パルス制御手段21は各頻拍リスクイベントに応じた好ましい波形特性の神経パルスを発生するよう、波形特性規定手段9へ指示する。
【0032】
神経刺激波形の一例として、図2に単発パルス刺激波形、図3にバーストパルス刺激波形を示す。単発パルス刺激波形は、振幅、パルス幅、ディレイ時間のパラメータによって規定される。ディレイ時間は、頻拍リスクイベントの検出から神経刺激を行うまでの時間である。ディレイ時間を零として、頻拍リスクイベントの検出と同時に神経刺激を行うことも可能である。バーストパルス刺激波形は、複数のパルス刺激を周期的に繰り返し行うもので、振幅、パルス幅、パルス数、パルス間周期、ディレイ時間のパラメータによって規定される。ディレイ時間に関しては単発パルス刺激波形の場合と同様である。
【0033】
頻拍リスクイベントと刺激波形特性の対応関係の例を表1に示す。表1では、心房心拍数過多(80回/分以上)、心房性期外収縮単発、心室性期外収縮単発、心室性期外収縮2連発、心室性期外収縮3連発以上が頻拍リスクイベントとして設定されている。例えば、80回/分以上の心房心拍数が頻拍リスクイベントとして検出されると、ディレイ時間なし、振幅3ボルト(V)、パルス幅1ミリ秒(msec)の単発パルス刺激の刺激波形特性が設定される。あるいは、単発の心室性期外収縮が頻拍リスクイベントとして検出されると、ディレイなし、振幅3V、パルス幅1msec、パルス数3、パルス間周期50msecのバーストパルス刺激の刺激波形特性が設定される。
【表1】
【0034】
図4は、本実施形態におけるデュアルチャンバペースメーカのDDDモードの動作を示したフローチャートダイアグラムである。なお、ここでは、基本レート以上の心房心拍数の増加と心室性期外収縮が頻拍リスクイベントの有無を判定するイベントに設定されているものとして説明する。
【0035】
まず、心房刺激パルスの発生または心房イベントの検出によってスタートするステップS1で、選択手段27がA−A記憶手段23を選択すると共に、心房刺激タイマ22とA−Vタイマ28がリセットされスタートする(ステップS2)。次に、心室イベントが検出されたか否かが判断され(ステップS3)、心室イベントが検出された場合、すなわち、自発による心室の拍動が検出された場合はA−Vタイマ28をストップする(ステップS4)。心室イベントが検出されなかった場合は、比較手段30によりA−Vタイマ28のタイムアウトを待ち(ステップS5)、タイムアウトした場合、すなわち、A−V記憶手段29に記憶された所定の遅延時間が経過しても自発による心室の拍動が検出されなかった場合は、心室パルス発生手段6により心室刺激を行う(ステップS6)。
【0036】
次のステップS7では、心室性期外収縮(PVC)の有無を確認する。すなわち、心室刺激パルスの発生または心室イベント検出の後、続けて心室イベントが検出された場合は、心室性期外収縮が発生したと判断され、リスクイベント検出手段7により、頻拍リスクイベントであるか否かが判断される(ステップS8)。リスクイベント検出手段7は、予め定められた条件、例えば所定期間内に発生した期外収縮の回数、期外収縮の連発回数、連結時間のゆらぎ等の条件に照らし合わせ、頻拍リスクイベントであるか否かを判断する。また、頻拍リスクイベントであると判定された場合には、イベントの種類を決定して神経パルス制御手段21に送り、神経パルス制御手段21は決められたイベントの種類に合わせた神経刺激の波形特性で神経刺激パルスを発生するよう波形特性規定手段9へ指示し(ステップS9)、それを受けて、波形特性規定手段9は、神経パルス発生手段8への迷走神経刺激を指示する(ステップS10)。ゲート回路31は、ステップS7での心室イベント検出のようなA−Vタイマ28が止まった状態での心室イベント検出を受けて、選択手段27をそれまでのA−A記憶手段23側からV−A記憶手段側に切り替え(ステップS11)、同時に心房刺激タイマ22をリセットしてV−Aの計時を開始させる(ステップS12)。
【0037】
ステップS7で心室イベント(期外収縮)が検出されない場合は、心房イベント検出手段3による心房イベントの検出を待ち(ステップS13)、心房刺激タイマ22が基本レートインターバルに達するよりも早く心房イベントが検出された場合は、リスクイベント検出手段7により頻拍リスクイベントであるか否かが判定される(ステップS14)。ここでは、予め定められた条件、例えば所定レート以上での心房心拍数の所定期間継続や、所定変化率以上の心房心拍数変化等の条件からリスクイベント検出手段7が判断する。頻拍リスクイベントであると判断された場合には、リスクイベントの種類が決定され、神経パルス制御手段21は決められたイベントの種類に合わせた神経刺激の波形特性で神経刺激パルスを発生するよう波形特性規定手段9へ指示し(ステップS15)、それを受けて、波形特性規定手段9は、神経パルス発生手段8への迷走神経刺激を指示する(ステップS16)。
【0038】
ステップS13で心房イベントが検出されないまま、心房刺激タイマ22が基本レートインターバルであるA−A記憶手段23の記憶値に達する(ステップS17)と、比較手段26が心房パルス発生手段4へ心房刺激を指示する(ステップS18)。
【0039】
以上、本発明の実施形態として、デュアルチャンバペースメーカのDDDモードを例としてあげたが、本発明の形態はこれに限られるものではなく、心臓ペースメーカの全ての動作モードで適用が可能である。さらに本発明の形態は、心臓ペースメーカに限定されるものではなく、植え込み型除細動器等の心臓治療装置に迷走神経刺激機構を備えた場合にも適用が可能である。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明によれば、検出した頻拍リスクイベントに基づいて迷走神経刺激の刺激波形様式を制御することにより、発揮する副交感神経の興奮を調整し、効率的な治療を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の、デュアルチャンバペースメーカの形態での構成例を示した図である。
【図2】図2は、神経刺激波形様式としての単発パルス刺激波形を示した図である。
【図3】図3は、神経刺激波形様式としてのバーストパルス刺激波形を示した図である。
【図4】図4は、図1に示す実施形態のデュアルチャンバペースメーカのDDDモードの動作フローチャートダイアグラムである。
【符号の説明】
1…心臓治療装置
2…制御手段
3…心房イベント検出手段
4…心房パルス発生手段
5…心室イベント検出手段
6…心室パルス発生手段
7…リスクイベント検出手段
8…神経パルス発生手段
9…波形特性規定手段
10…テレメトリ手段
11…心臓
12…心房
13…心房電極リード
14…心室
15…心室電極リード
16…神経電極リード
17…迷走神経
18…外部設定手段
Claims (7)
- 迷走神経を刺激する神経刺激信号を発生する神経刺激発生手段と、
前記神経刺激発生手段が発生する刺激波形の特性を制御する波形特性規定手段と、
心臓のイベントを検出する心臓イベント検出手段と、
前記心臓イベント検出手段に接続して頻拍リスクイベントを検出するリスクイベント検出手段と、
頻拍リスクイベントの種類と神経刺激の波形特性との関係を保持し、前記関係に基づいて、検出した頻拍リスクイベントに対応した刺激波形特性を前記波形特性規定手段に設定する制御手段からなることを特徴とする心臓治療装置。 - 前記頻拍リスクイベントが心拍数の増加を含むことを特徴とする請求項1記載の心臓治療装置。
- 前記頻拍リスクイベントが期外収縮を含むことを特徴とする請求項1記載の心臓治療装置。
- 前記頻拍リスクイベントが心臓の早期後脱分極を含むことを特徴とする請求項1記載の心臓治療装置。
- 前記頻拍リスクイベントが心臓の遅延後脱分極を含むことを特徴とする請求項1記載の心臓治療装置。
- 前記刺激波形特性が単発パルス刺激を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の心臓治療装置。
- 前記刺激波形特性がバースト刺激を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の心臓治療装置。
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