JP2004180410A - サーボ・モータ - Google Patents
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Abstract
【課題】高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流のために生ずるモータ出力のトルク・リップル問題を解決する。
【解決手段】スター型、デルタ型のコイル結線方式とは相違し、U,V,W各相のコイルが互いに干渉し合わない非干渉結線方式を採用する。それぞれのコイル電流を独立して制御することができるので、各相のコイルに高調波を含む電流を流すことができる。したがって、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにすることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】スター型、デルタ型のコイル結線方式とは相違し、U,V,W各相のコイルが互いに干渉し合わない非干渉結線方式を採用する。それぞれのコイル電流を独立して制御することができるので、各相のコイルに高調波を含む電流を流すことができる。したがって、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにすることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロボットや汎用組立機器、ロボット・ハンド機器、その他の多軸制御装置などのような多軸駆動系の機械装置に対して適用されるサーボ・モータに係り、特に、固定子側が複数相のコイルで構成される永久磁石型の同期形サーボ・モータに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、最大限のトルクを発生し小型化を実現するサーボ・モータに係り、特に、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流のために生ずるモータ出力のトルク・リップル問題を解決し効率的に駆動するサーボ・モータに関する。
【0003】
【従来の技術】
電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置のことを「ロボット」という。ロボットの語源は、スラブ語の”ROBOTA(奴隷機械)”に由来すると言われている。わが国では、ロボットが普及し始めたのは1960年代末からであるが、その多くは、工場における生産作業の自動化・無人化などを目的としたマニピュレータや搬送ロボットなどの産業用ロボット(industrial robot)であった。
【0004】
アーム式ロボットのように、ある特定の場所に植設して用いるような据置きタイプのロボットは、部品の組立・選別作業など固定的・局所的な作業空間でのみ活動する。これに対し、移動式のロボットは、作業空間は非限定的であり、所定の経路上または無経路上を自在に移動して、所定の若しくは任意の人的作業を代行したり、ヒトやイヌあるいはその他の生命体に置き換わる種々の幅広いサービスを提供したりすることができる。なかでも脚式の移動ロボットは、クローラ式やタイヤ式のロボットに比し不安定で姿勢制御や歩行制御が難しくなるが、階段や梯子の昇降や障害物の乗り越えや、整地・不整地の区別を問わない柔軟な歩行・走行動作を実現できるという点で優れている。
【0005】
最近では、イヌやネコのように4足歩行の動物の身体メカニズムやその動作を模したペット型ロボット、あるいは、ヒトのような2足直立歩行を行う動物の身体メカニズムや動作をモデルにしてデザインされた「人間形」若しくは「人間型」と呼ばれるロボット(humanoid robot)など、脚式移動ロボットに関する研究開発が進展し、実用化への期待も高まってきている。
【0006】
この種の脚式移動ロボットは、一般に、多数の関節自由度を備え、関節の動きをアクチュエータ・モータで実現するようになっている。また、各モータの回転位置、回転量などを取り出して、サーボ制御を行なうことにより、所望の動作パターンを再現するとともに、姿勢制御を行うようになっている。
【0007】
ロボットの関節自由度を実現するためにサーボ・モータを用いるのが一般的である。これは、取扱いが容易で、小型且つ高トルクで、しかも応答性に優れているという理由に依拠する。特に、ACサーボ・モータは、ブラシがなく、メンテナンス・フリーであることから、無人化された作業空間で稼動することが望まれるような自動機械、例えば自由歩行を行う脚式ロボットの関節アクチュエータなどに適用することができる。ACサーボ・モータは、回転子(ロータ)側に永久磁石を、固定子(ステータ)側に複数相(例えば3相)のコイルを配置して、正弦波磁束分布と正弦波電流により回転子に対して回転トルクを発生させるようになっている。
【0008】
脚式移動ロボットは一般に多数の関節で構成されている。したがって、関節自由度を構成するサーボ・モータを小型且つ高性能に設計・製作しなければならない。例えば、脚式移動ロボットの関節アクチュエータとして適用することができる、ギア直結型で且つサーボ制御系をワンチップ化してモータ・ユニットに内蔵したタイプの小型ACサーボ・モータなどが既に存在する(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0009】
ACサーボ・モータは、例えばU,V,Wの3相からなる各固定子コイルに所定の位相差を持って正弦波電流を流して、正弦波の磁束分布を発生させることによって、マグネットからなる回転子に回転トルクを与えることができる。従来、同期式のACサーボ・モータのコイルには、図9に示すように、各コイルの一端を接続したスター型結線や、図10に示すように、各コイルの両端をそれぞれ接続してなるデルタ型結線が適用されてきた。勿論、これらスター型やデルタ型のコイル結線は、ACサーボ・モータ以外に、DCブラシレス・モータにも適用することができる。一般に、スター型結線は高電圧の電源に適した結線であり、また、デルタ型結線は低電圧の電源に適した結線で使用されている(但し、永久磁石式ACモータでは、デルタ型結線はあまり使用されない。高速回転時には永久磁石による高調波電流がコイル内でループ状に流れて効率が劣化するためである)。
【0010】
固定子側では、各相のコイルを所定の位相差を以って配置し、各コイルへの供給電流(以下、「コイル電流」とする)を制御して各相毎に所定の位相差を持つ正弦波磁束分布を形成することにより、回転子に対して回転トルクを発生させる。スター型結線並びにデルタ型結線において各相のコイルU,V,Wに流れる電流Iu,Iv,Iwを供給するための電流制御回路の構成を、図11に示しておく。但し、スター型やデルタ型などのコイル結線方式では、下式に示すようなキルヒホッフの法則(各相に流れる電流の総和はゼロになる)に拘束される。
【0011】
【数1】
【0012】
一般に、コイルに高電圧を印加することにより、サーボ・モータの出力トルクを増大させることができるしかしながら、脚式移動ロボットなどに搭載されるサーボ・モータにおいては、小型化という要請のため、低電圧で駆動させなければならず、高電圧化による高トルク化を実現することができない。
【0013】
このような場合、各相のコイルに大電流を流すことによりトルク増大を図ることが考えられるが、サーボ・モータの各コイルがスター型やデルタ型などの結線方式では、キルヒホッフの法則に拘束されるため、最大電流を超えるコイル電流を供給することができず、高トルク化を実現することができない。
【0014】
電流制御回路は、図示しない中央制御部からの電流軸電流指令(又はトルク指令)IOに基づいて3相変換−進相制御を行ない、同期式ACサーボ・モータの各相コイルU,V,Wへの電流指令Iu、Iv、Iwを生成し、これら電流指令に基づいて各トランジスタ(図11を参照のこと)をPWM方式にてスイッチング制御する。
【0015】
一般的なコイル電流制御として180度通電方式が知られ、下式の通りとなる。そして、こうした電流波形(図12を参照のこと)が各相のコイルに与えられる。
【0016】
【数2】
【0017】
この場合、回転子マグネットに与えられる磁束φu、φv、φwも、同様にコイル電流に対して変化する。
【0018】
【数3】
【0019】
そして、このときの磁束の総和はゼロとなる。
【0020】
【数4】
【0021】
最大電流が制約される永久磁石型・同期形のサーボ・アクチュエータにおいては、最大限のトルクを効率的に取り出すためには、回転子マグネットが理想的な磁束特性に着磁されていることが要求される。
【0022】
しかしながら、実際には、理想的な波形の磁束を形成することは困難である。特に小型化モータにおいては、内部マグネットの磁束密度が高くなり、飽和近くまで磁束を扱うようになると、各相の磁束成分に高調波の歪みが含まれるようになる。このため、上式に示した磁束φu、φv、φwは、以下に示すように高調波を含んだ波形となる。
【0023】
【数5】
【0024】
このような場合、磁束の総和はゼロとはならない。このため、コイルには巡回電流が発生し、モータの発熱の原因となる。
【0025】
【数6】
【0026】
図13には、U相の理想の磁束と現実の磁束の差を示している。また、図14には、U、V、W各相の関係とその総和の磁束の関係を示している。また、図15には、磁束の周波数分布を示している。上式及び図15から分かるように、現実の磁束は、基本波φO以外に、第3高調波φ3、第5高調波φ5、第7高調波φ7…のような高調波成分が含まれている。
【0027】
従来は、基本波だけを用いてモータの電流制御を行なっていた。このため、モータ出力のトルク・リップルの問題や回転効率低下の問題を招来していた。
【0028】
また、[数5]に示すような磁束に対し、[数2]に示すような電流指令を与えると、本来の磁束のうち基本波の磁束だけがトルクとなり、第3以降の高調波の磁束はトルクに作用することはない。また、こうした高調波の磁束は、モータのトルク・リップルの原因になる。
【0029】
【特許文献1】
特開2000−299970号公報
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、固定子側が複数相のコイルで構成される永久磁石型の優れた同期形サーボ・モータを提供することにある。
【0031】
本発明のさらなる目的は、最大限のトルクを発生し小型化を実現することができる、永久磁石型の優れた同期形サーボ・モータを提供することにある。
【0032】
本発明のさらなる目的は、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流のために生ずるモータ出力のトルク・リップル問題を解決し効率的に駆動することができる、永久磁石型の優れた同期形サーボ・モータを提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、永久磁石型の回転子と固定子側に複数相のコイルで構成されるサーボ・モータであって、各相のコイル間でコイル電流が干渉し合わない形態で結線するコイル結線手段と、各相のコイル毎に独立した電流制御手段とを備えるサーボ・モータである。
【0034】
本発明によれば、非干渉結線方式で固定子コイルを構成することにより、電流制御手段は、それぞれのコイル電流を独立して制御することができるので、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流を考慮して、各相コイルに高調波を含む電流を流すことができる。すなわち、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにすることができる。
【0035】
したがって、本発明によれば、永久磁石型同期形サーボ・モータのコイル電流制御を回転子マグネットの磁束の高調波成分も含めた電流波形を生成するように行なうことで、従来利用されなかった磁束の高調波成分を加えたトルクの向上を実現し、トルク・リップルの問題を解決することができる。
【0036】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0038】
本実施形態に係る永久磁石式同期ACサーボ・モータは、図9及び図10に示したようなスター型、デルタ型のコイル結線方式とは相違し、U,V,W各相のコイルが互いに干渉し合わない結線方式(以下では、これを「非干渉結線方式」と呼ぶ)を採用する。
【0039】
図1には、本実施形態に係る非干渉結線方式を採用したACサーボ・モータ用3相コイルの構成を概念的に示している。同図に示すように、U,V,W各相のコイルには、キルヒホッフの法則(前述)などによって互いに拘束されることのない駆動電流Iu、Iv、Iwがそれぞれ通過するようになっている。
【0040】
また、図2には、図1に示すような非干渉結線方式の3相コイルに流す電流Iu、Iv、Iwを供給するための電流回路の構成を示している。各トランジスタのベース端子には、U,V,W各相に専用の独立したPWM変換回路(後述)の制御信号が入力されており、各相のコイルに対して個別に電流指令を与える構成となっている。
【0041】
図9〜図10に示したような従来の3相コイルのスター型若しくはデルタ型の結線方式、並びに、図11に示すような3相コイルの電流制御方式によれば、トランジスタなどの素子数を抑えて安価に構成することができるものの、電流指令に制限が生じる(前述)。
【0042】
これに対し、図1〜図2に示すような3相コイルの結線方式並びに電流制御方式を採用した場合、U,V,W各相のコイルに対する電流Iu、Iv、Iwを、互いの干渉なく完全に独立して制御することができるので、すべてのコイルに対して同時に最大電流を流すことができる。すなわち、指令の大きさを最大に与えることができる。
【0043】
また、このような非干渉結線方式を採用して、それぞれのコイル電流を独立して制御することができるので、各相のコイルに高調波を含む電流を流すことができる。図3には、本実施形態に係るコイル電流波形(但し、単相)とモータ・トルクの関係を従来例(図16を参照のこと)と比較して示している。
【0044】
図3からも分かるように、非干渉結線方式で固定子コイルを構成することにより、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流を考慮して、各相コイルに高調波を含む電流を流すことができる。すなわち、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにすることができる。
【0045】
図4には、本実施形態に係る同期式ACサーボ・モータの各相のコイルに対する供給する電流を制御する電流制御回路10の構成を模式的に示している。図示の電流制御回路10は、図3に示した電流回路を構成する各トランジスタのスイッチング動作をPWM制御する。
【0046】
既に述べたように、同期式ACサーボ・モータ20は、固定子側にU,V,Wという3相のコイル21を備え、各コイルU,V,Wにそれぞれ電流Id1−u,Id1−v,Id1−wが通過することによって生じる磁界によって、永久磁石で構成された回転子22が回転する。そして、この回転子22の回転位置は回転位置検出回路23によって磁極位置θとして検出されて、電流制御回路10側にフィードバックされる。
【0047】
電流制御回路10は、図示しない中央制御部からの電流軸電流指令(又はトルク指令)を同期式ACサーボ・モータの各相コイルU,V,Wに流す電流指令に変換する3相変換回路11と、各相コイルU,V,Wへの電流指令を基に各相コイルU,V,Wを独立して電流制御する3個のPWM変換回路12−1,12−2,12−3とで構成される。
【0048】
3相変換回路11は、図示しない中央制御部からの電流軸電流指令(又はトルク指令)IOを入力すると、これを同期式ACサーボ・モータ20の3相コイルU,V,Wに流す電流Iref_u( IO,θ m),Iref_v( IO,θ m),Iref_w( IO,θ m)に3相変換する。より具体的には、以下の式に従って各相U,V,Wに流す電流Iref_u( IO,θ m),Iref_v( IO,θ m),Iref_w( IO,θ m)を計算する。但し、θmは磁極位置であり、固定子側のコイルU相の極の位置をゼロ度とした回転位置と定義する。
【0049】
【数7】
【0050】
ここで、係数I3、I5、…は回転子マグネットの磁束の高調波成分の大きさの比率により決定される一定の定数A0、A1、…となる。
【0051】
【数8】
【0052】
ここで、A0、A1、…は、上記の式[数5]の磁束の関係から導き出され、下式の関係となる。
【0053】
【数9】
【0054】
ここで、φi(i=3,5,7,…)は、回転子マグネットを着磁・磁化した後、磁束測定することにより得られ、3相変換回路11に与えられる。実際の3相変換回路11は、上式[数9]を演算する方法を備えるか、又は、電流波形テーブルを記憶するROMを備え、その値を参照するように構成される。
【0055】
図5には、3相変換回路11によってそれぞれのコイルU,V,Wへの電流指令Iref_u,Iref_v,Iref_wの例を示している。同図に示すような新しい通電方式により、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流を考慮して、各相コイルに高調波を含む電流を流すことができる。この結果、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにすることができる。
【0056】
各PWM変換回路12−1,12−2,12−3は、電流指令回路12からの各相コイルU,V,Wへの電流指令Iref_u( IO,θ m),Iref_v( IO,θ m),Iref_w( IO,θ m)を基に、各相コイルU,V,Wへの通過電流Id1_u,Id1_v,Id1_wをそれぞれ独立して制御するための、図2に示したそれぞれ対応するトランジスタのスイッチング制御信号を生成する。
【0057】
図6には、U相コイルの通過電流を制御するためのPWM変換回路12−1の構成を模式的に示している。なお、他の相V,Wコイルに関するPWM変換回路12−2及び12−3については図示しないが、これらの構成並びに動作特性は、PWM変換回路12−1と同様であると理解されたい。
【0058】
図6に示すように、PWM変換回路12−1は、ラッチ回路15と、ダウン・カウンタ回路16と、トランジスタ・スイッチング回路17とで構成される。
【0059】
3相変換回路11から電流指令データIref_u( IO,θ m)が与えられると、ラッチ回路15は、一定周期のPWMクロック(図示の例では20KHz)によりそのデータがラッチされる。電流指令データIref_u( IO,θ m)が負の値の場合には、その絶対値がラッチされる。
【0060】
このラッチされたデータは、ダウン・カウンタ回路16のカウンタ・クロック(図示の例では10MHz)によりゼロ値になるまで1ずつ減少する。そして、ダウン・カウンタ回路16のカウンタがゼロでなければ、ZD出力はH(ハイ)を出力する。このようにして、電流指令データIref_u( IO,θ m)に比例したパルス幅を持つPWMパルス信号が正確に出力される。
【0061】
したがって、電流指令データの最大値は、PWMクロック周期をカウンタ・クロック周期で分周した値となる。図6に示す例では、PWMクロックが20KHzで、カウンタ・クロックが10MHzであるから、電流指令データの最大値は500となる。これは、正の電流の分解能であるから、正負の電流の最大の分解能は1000となり、約10ビットの電流分解能となる。
【0062】
図7には、トランジスタ・スイッチング回路17の内部構成を示している。同図に示すように、トランジスタ・スイッチング回路17は、電流指令データIdref_uの正負に応じてPWMパルス信号の出力先をA又はBのいずれか一方に切り換えるスイッチ17Aと、4個のベース・ドライブ回路17B,17C,17D,17Eで構成されている。各ベース・ドライブ回路17B,17C,17D,17Eの出力は、U相コイルへの電流回路(図2を参照のこと)の各トランジスタQ1,Q4,Q3,Q2のベース端子に接続されており、これらドライブ回路の出力に応じてU相コイルへの通過電流を制御することができる。
【0063】
電流指令データIref_u( IO,θ m)が正の値であるときは、PWMパルス信号は、トランジスタQ1及びQ4のベース・ドライブを駆動する。
【0064】
また、電流指令データIref_u( IO,θ m)が負の値であるときは、PWMパルス信号は、トランジスタQ2及びQ3のベース・ドライブを駆動する。
【0065】
また、電流指令データIref_u( IO,θ m)がゼロ値であるときは、PWMパルス信号はゼロとなり、いずれのベース・ドライブも駆動しない。
【0066】
PWM変換回路12によるPWM信号タイミング・チャートを図8に示しておく。
【0067】
上述したような電流制御回路10によれば、U,V,Wの各相コイルへの通過電流をそれぞれ独立して制御することができるので、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流を考慮して、各相コイルに高調波を含む電流を流すことができる。この結果、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにすることができる。
【0068】
[追補]
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0069】
【発明の効果】
以上詳記したように、本発明によれば、最大限のトルクを発生し小型化を実現することができる、永久磁石型の優れた同期形サーボ・モータを提供することができる。
【0070】
また、本発明によれば、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流のために生ずるモータ出力のトルク・リップル問題を解決し効率的に駆動することができる、永久磁石型の優れた同期形サーボ・モータを提供することができる。
【0071】
本発明によれば、永久磁石型同期形サーボ・モータのコイル電流制御を回転子マグネットの磁束の高調波成分も含めた電流波形を生成するように行なうことで、従来利用されなかった磁束の高調波成分を加えたトルクの向上を実現し、トルク・リップルの問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る非干渉結線方式を採用したACサーボ・モータ用3相コイルの構成を概念的に示した図である。
【図2】図1に示すような非干渉結線方式の3相コイルに流す電流Iu,Iv,Iwを供給するための電流回路の構成を示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係るコイル電流波形(但し、単相)とモータ・トルクの関係を従来例(図16を参照のこと)と比較して示したチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る同期式ACサーボ・モータの各相のコイルに対する供給する電流を制御する電流制御回路10の構成を模式的に示した図である。
【図5】3相変換回路11によってそれぞれのコイルU,V,Wへ与えられる電流指令Iref_u,Iref_v,Iref_wの例を示した図である。
【図6】U相コイルの通過電流を制御するためのPWM変換回路12−1の構成を模式的に示した図である。
【図7】トランジスタ・スイッチング回路17の内部構成を示した図である。
【図8】PWM変換回路12によるPWM信号タイミング・チャートを示した図である。
【図9】3相サーボ・モータのスター型結線(従来例)を示した図である。
【図10】3相サーボ・モータのデルタ型結線(従来例)を示した図である。
【図11】スター型結線並びにデルタ型結線において各相のコイルU,V,Wに流れる電流Iu,Iv,Iwを供給するための電流制御回路の構成(従来例)を示した図である。
【図12】180度通電方式による各相のコイル電流波形を示したチャートである。
【図13】U相の理想の磁束と現実の磁束の差を示した図である。
【図14】U、V、W各相の関係とその総和の磁束の関係を示した図である。
【図15】磁束の周波数分布を示した図である。
【図16】コイル電流とトルク・リップルの関係(従来例)を示した図である。
【符号の説明】
10…電流制御回路
11…3相変換回路
12PWM変換回路
20…同期式ACサーボ・モータ
21…コイル
22…モータ回転子
23…回転位置検出回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロボットや汎用組立機器、ロボット・ハンド機器、その他の多軸制御装置などのような多軸駆動系の機械装置に対して適用されるサーボ・モータに係り、特に、固定子側が複数相のコイルで構成される永久磁石型の同期形サーボ・モータに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、最大限のトルクを発生し小型化を実現するサーボ・モータに係り、特に、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流のために生ずるモータ出力のトルク・リップル問題を解決し効率的に駆動するサーボ・モータに関する。
【0003】
【従来の技術】
電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置のことを「ロボット」という。ロボットの語源は、スラブ語の”ROBOTA(奴隷機械)”に由来すると言われている。わが国では、ロボットが普及し始めたのは1960年代末からであるが、その多くは、工場における生産作業の自動化・無人化などを目的としたマニピュレータや搬送ロボットなどの産業用ロボット(industrial robot)であった。
【0004】
アーム式ロボットのように、ある特定の場所に植設して用いるような据置きタイプのロボットは、部品の組立・選別作業など固定的・局所的な作業空間でのみ活動する。これに対し、移動式のロボットは、作業空間は非限定的であり、所定の経路上または無経路上を自在に移動して、所定の若しくは任意の人的作業を代行したり、ヒトやイヌあるいはその他の生命体に置き換わる種々の幅広いサービスを提供したりすることができる。なかでも脚式の移動ロボットは、クローラ式やタイヤ式のロボットに比し不安定で姿勢制御や歩行制御が難しくなるが、階段や梯子の昇降や障害物の乗り越えや、整地・不整地の区別を問わない柔軟な歩行・走行動作を実現できるという点で優れている。
【0005】
最近では、イヌやネコのように4足歩行の動物の身体メカニズムやその動作を模したペット型ロボット、あるいは、ヒトのような2足直立歩行を行う動物の身体メカニズムや動作をモデルにしてデザインされた「人間形」若しくは「人間型」と呼ばれるロボット(humanoid robot)など、脚式移動ロボットに関する研究開発が進展し、実用化への期待も高まってきている。
【0006】
この種の脚式移動ロボットは、一般に、多数の関節自由度を備え、関節の動きをアクチュエータ・モータで実現するようになっている。また、各モータの回転位置、回転量などを取り出して、サーボ制御を行なうことにより、所望の動作パターンを再現するとともに、姿勢制御を行うようになっている。
【0007】
ロボットの関節自由度を実現するためにサーボ・モータを用いるのが一般的である。これは、取扱いが容易で、小型且つ高トルクで、しかも応答性に優れているという理由に依拠する。特に、ACサーボ・モータは、ブラシがなく、メンテナンス・フリーであることから、無人化された作業空間で稼動することが望まれるような自動機械、例えば自由歩行を行う脚式ロボットの関節アクチュエータなどに適用することができる。ACサーボ・モータは、回転子(ロータ)側に永久磁石を、固定子(ステータ)側に複数相(例えば3相)のコイルを配置して、正弦波磁束分布と正弦波電流により回転子に対して回転トルクを発生させるようになっている。
【0008】
脚式移動ロボットは一般に多数の関節で構成されている。したがって、関節自由度を構成するサーボ・モータを小型且つ高性能に設計・製作しなければならない。例えば、脚式移動ロボットの関節アクチュエータとして適用することができる、ギア直結型で且つサーボ制御系をワンチップ化してモータ・ユニットに内蔵したタイプの小型ACサーボ・モータなどが既に存在する(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0009】
ACサーボ・モータは、例えばU,V,Wの3相からなる各固定子コイルに所定の位相差を持って正弦波電流を流して、正弦波の磁束分布を発生させることによって、マグネットからなる回転子に回転トルクを与えることができる。従来、同期式のACサーボ・モータのコイルには、図9に示すように、各コイルの一端を接続したスター型結線や、図10に示すように、各コイルの両端をそれぞれ接続してなるデルタ型結線が適用されてきた。勿論、これらスター型やデルタ型のコイル結線は、ACサーボ・モータ以外に、DCブラシレス・モータにも適用することができる。一般に、スター型結線は高電圧の電源に適した結線であり、また、デルタ型結線は低電圧の電源に適した結線で使用されている(但し、永久磁石式ACモータでは、デルタ型結線はあまり使用されない。高速回転時には永久磁石による高調波電流がコイル内でループ状に流れて効率が劣化するためである)。
【0010】
固定子側では、各相のコイルを所定の位相差を以って配置し、各コイルへの供給電流(以下、「コイル電流」とする)を制御して各相毎に所定の位相差を持つ正弦波磁束分布を形成することにより、回転子に対して回転トルクを発生させる。スター型結線並びにデルタ型結線において各相のコイルU,V,Wに流れる電流Iu,Iv,Iwを供給するための電流制御回路の構成を、図11に示しておく。但し、スター型やデルタ型などのコイル結線方式では、下式に示すようなキルヒホッフの法則(各相に流れる電流の総和はゼロになる)に拘束される。
【0011】
【数1】
【0012】
一般に、コイルに高電圧を印加することにより、サーボ・モータの出力トルクを増大させることができるしかしながら、脚式移動ロボットなどに搭載されるサーボ・モータにおいては、小型化という要請のため、低電圧で駆動させなければならず、高電圧化による高トルク化を実現することができない。
【0013】
このような場合、各相のコイルに大電流を流すことによりトルク増大を図ることが考えられるが、サーボ・モータの各コイルがスター型やデルタ型などの結線方式では、キルヒホッフの法則に拘束されるため、最大電流を超えるコイル電流を供給することができず、高トルク化を実現することができない。
【0014】
電流制御回路は、図示しない中央制御部からの電流軸電流指令(又はトルク指令)IOに基づいて3相変換−進相制御を行ない、同期式ACサーボ・モータの各相コイルU,V,Wへの電流指令Iu、Iv、Iwを生成し、これら電流指令に基づいて各トランジスタ(図11を参照のこと)をPWM方式にてスイッチング制御する。
【0015】
一般的なコイル電流制御として180度通電方式が知られ、下式の通りとなる。そして、こうした電流波形(図12を参照のこと)が各相のコイルに与えられる。
【0016】
【数2】
【0017】
この場合、回転子マグネットに与えられる磁束φu、φv、φwも、同様にコイル電流に対して変化する。
【0018】
【数3】
【0019】
そして、このときの磁束の総和はゼロとなる。
【0020】
【数4】
【0021】
最大電流が制約される永久磁石型・同期形のサーボ・アクチュエータにおいては、最大限のトルクを効率的に取り出すためには、回転子マグネットが理想的な磁束特性に着磁されていることが要求される。
【0022】
しかしながら、実際には、理想的な波形の磁束を形成することは困難である。特に小型化モータにおいては、内部マグネットの磁束密度が高くなり、飽和近くまで磁束を扱うようになると、各相の磁束成分に高調波の歪みが含まれるようになる。このため、上式に示した磁束φu、φv、φwは、以下に示すように高調波を含んだ波形となる。
【0023】
【数5】
【0024】
このような場合、磁束の総和はゼロとはならない。このため、コイルには巡回電流が発生し、モータの発熱の原因となる。
【0025】
【数6】
【0026】
図13には、U相の理想の磁束と現実の磁束の差を示している。また、図14には、U、V、W各相の関係とその総和の磁束の関係を示している。また、図15には、磁束の周波数分布を示している。上式及び図15から分かるように、現実の磁束は、基本波φO以外に、第3高調波φ3、第5高調波φ5、第7高調波φ7…のような高調波成分が含まれている。
【0027】
従来は、基本波だけを用いてモータの電流制御を行なっていた。このため、モータ出力のトルク・リップルの問題や回転効率低下の問題を招来していた。
【0028】
また、[数5]に示すような磁束に対し、[数2]に示すような電流指令を与えると、本来の磁束のうち基本波の磁束だけがトルクとなり、第3以降の高調波の磁束はトルクに作用することはない。また、こうした高調波の磁束は、モータのトルク・リップルの原因になる。
【0029】
【特許文献1】
特開2000−299970号公報
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、固定子側が複数相のコイルで構成される永久磁石型の優れた同期形サーボ・モータを提供することにある。
【0031】
本発明のさらなる目的は、最大限のトルクを発生し小型化を実現することができる、永久磁石型の優れた同期形サーボ・モータを提供することにある。
【0032】
本発明のさらなる目的は、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流のために生ずるモータ出力のトルク・リップル問題を解決し効率的に駆動することができる、永久磁石型の優れた同期形サーボ・モータを提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、永久磁石型の回転子と固定子側に複数相のコイルで構成されるサーボ・モータであって、各相のコイル間でコイル電流が干渉し合わない形態で結線するコイル結線手段と、各相のコイル毎に独立した電流制御手段とを備えるサーボ・モータである。
【0034】
本発明によれば、非干渉結線方式で固定子コイルを構成することにより、電流制御手段は、それぞれのコイル電流を独立して制御することができるので、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流を考慮して、各相コイルに高調波を含む電流を流すことができる。すなわち、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにすることができる。
【0035】
したがって、本発明によれば、永久磁石型同期形サーボ・モータのコイル電流制御を回転子マグネットの磁束の高調波成分も含めた電流波形を生成するように行なうことで、従来利用されなかった磁束の高調波成分を加えたトルクの向上を実現し、トルク・リップルの問題を解決することができる。
【0036】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0038】
本実施形態に係る永久磁石式同期ACサーボ・モータは、図9及び図10に示したようなスター型、デルタ型のコイル結線方式とは相違し、U,V,W各相のコイルが互いに干渉し合わない結線方式(以下では、これを「非干渉結線方式」と呼ぶ)を採用する。
【0039】
図1には、本実施形態に係る非干渉結線方式を採用したACサーボ・モータ用3相コイルの構成を概念的に示している。同図に示すように、U,V,W各相のコイルには、キルヒホッフの法則(前述)などによって互いに拘束されることのない駆動電流Iu、Iv、Iwがそれぞれ通過するようになっている。
【0040】
また、図2には、図1に示すような非干渉結線方式の3相コイルに流す電流Iu、Iv、Iwを供給するための電流回路の構成を示している。各トランジスタのベース端子には、U,V,W各相に専用の独立したPWM変換回路(後述)の制御信号が入力されており、各相のコイルに対して個別に電流指令を与える構成となっている。
【0041】
図9〜図10に示したような従来の3相コイルのスター型若しくはデルタ型の結線方式、並びに、図11に示すような3相コイルの電流制御方式によれば、トランジスタなどの素子数を抑えて安価に構成することができるものの、電流指令に制限が生じる(前述)。
【0042】
これに対し、図1〜図2に示すような3相コイルの結線方式並びに電流制御方式を採用した場合、U,V,W各相のコイルに対する電流Iu、Iv、Iwを、互いの干渉なく完全に独立して制御することができるので、すべてのコイルに対して同時に最大電流を流すことができる。すなわち、指令の大きさを最大に与えることができる。
【0043】
また、このような非干渉結線方式を採用して、それぞれのコイル電流を独立して制御することができるので、各相のコイルに高調波を含む電流を流すことができる。図3には、本実施形態に係るコイル電流波形(但し、単相)とモータ・トルクの関係を従来例(図16を参照のこと)と比較して示している。
【0044】
図3からも分かるように、非干渉結線方式で固定子コイルを構成することにより、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流を考慮して、各相コイルに高調波を含む電流を流すことができる。すなわち、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにすることができる。
【0045】
図4には、本実施形態に係る同期式ACサーボ・モータの各相のコイルに対する供給する電流を制御する電流制御回路10の構成を模式的に示している。図示の電流制御回路10は、図3に示した電流回路を構成する各トランジスタのスイッチング動作をPWM制御する。
【0046】
既に述べたように、同期式ACサーボ・モータ20は、固定子側にU,V,Wという3相のコイル21を備え、各コイルU,V,Wにそれぞれ電流Id1−u,Id1−v,Id1−wが通過することによって生じる磁界によって、永久磁石で構成された回転子22が回転する。そして、この回転子22の回転位置は回転位置検出回路23によって磁極位置θとして検出されて、電流制御回路10側にフィードバックされる。
【0047】
電流制御回路10は、図示しない中央制御部からの電流軸電流指令(又はトルク指令)を同期式ACサーボ・モータの各相コイルU,V,Wに流す電流指令に変換する3相変換回路11と、各相コイルU,V,Wへの電流指令を基に各相コイルU,V,Wを独立して電流制御する3個のPWM変換回路12−1,12−2,12−3とで構成される。
【0048】
3相変換回路11は、図示しない中央制御部からの電流軸電流指令(又はトルク指令)IOを入力すると、これを同期式ACサーボ・モータ20の3相コイルU,V,Wに流す電流Iref_u( IO,θ m),Iref_v( IO,θ m),Iref_w( IO,θ m)に3相変換する。より具体的には、以下の式に従って各相U,V,Wに流す電流Iref_u( IO,θ m),Iref_v( IO,θ m),Iref_w( IO,θ m)を計算する。但し、θmは磁極位置であり、固定子側のコイルU相の極の位置をゼロ度とした回転位置と定義する。
【0049】
【数7】
【0050】
ここで、係数I3、I5、…は回転子マグネットの磁束の高調波成分の大きさの比率により決定される一定の定数A0、A1、…となる。
【0051】
【数8】
【0052】
ここで、A0、A1、…は、上記の式[数5]の磁束の関係から導き出され、下式の関係となる。
【0053】
【数9】
【0054】
ここで、φi(i=3,5,7,…)は、回転子マグネットを着磁・磁化した後、磁束測定することにより得られ、3相変換回路11に与えられる。実際の3相変換回路11は、上式[数9]を演算する方法を備えるか、又は、電流波形テーブルを記憶するROMを備え、その値を参照するように構成される。
【0055】
図5には、3相変換回路11によってそれぞれのコイルU,V,Wへの電流指令Iref_u,Iref_v,Iref_wの例を示している。同図に示すような新しい通電方式により、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流を考慮して、各相コイルに高調波を含む電流を流すことができる。この結果、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにすることができる。
【0056】
各PWM変換回路12−1,12−2,12−3は、電流指令回路12からの各相コイルU,V,Wへの電流指令Iref_u( IO,θ m),Iref_v( IO,θ m),Iref_w( IO,θ m)を基に、各相コイルU,V,Wへの通過電流Id1_u,Id1_v,Id1_wをそれぞれ独立して制御するための、図2に示したそれぞれ対応するトランジスタのスイッチング制御信号を生成する。
【0057】
図6には、U相コイルの通過電流を制御するためのPWM変換回路12−1の構成を模式的に示している。なお、他の相V,Wコイルに関するPWM変換回路12−2及び12−3については図示しないが、これらの構成並びに動作特性は、PWM変換回路12−1と同様であると理解されたい。
【0058】
図6に示すように、PWM変換回路12−1は、ラッチ回路15と、ダウン・カウンタ回路16と、トランジスタ・スイッチング回路17とで構成される。
【0059】
3相変換回路11から電流指令データIref_u( IO,θ m)が与えられると、ラッチ回路15は、一定周期のPWMクロック(図示の例では20KHz)によりそのデータがラッチされる。電流指令データIref_u( IO,θ m)が負の値の場合には、その絶対値がラッチされる。
【0060】
このラッチされたデータは、ダウン・カウンタ回路16のカウンタ・クロック(図示の例では10MHz)によりゼロ値になるまで1ずつ減少する。そして、ダウン・カウンタ回路16のカウンタがゼロでなければ、ZD出力はH(ハイ)を出力する。このようにして、電流指令データIref_u( IO,θ m)に比例したパルス幅を持つPWMパルス信号が正確に出力される。
【0061】
したがって、電流指令データの最大値は、PWMクロック周期をカウンタ・クロック周期で分周した値となる。図6に示す例では、PWMクロックが20KHzで、カウンタ・クロックが10MHzであるから、電流指令データの最大値は500となる。これは、正の電流の分解能であるから、正負の電流の最大の分解能は1000となり、約10ビットの電流分解能となる。
【0062】
図7には、トランジスタ・スイッチング回路17の内部構成を示している。同図に示すように、トランジスタ・スイッチング回路17は、電流指令データIdref_uの正負に応じてPWMパルス信号の出力先をA又はBのいずれか一方に切り換えるスイッチ17Aと、4個のベース・ドライブ回路17B,17C,17D,17Eで構成されている。各ベース・ドライブ回路17B,17C,17D,17Eの出力は、U相コイルへの電流回路(図2を参照のこと)の各トランジスタQ1,Q4,Q3,Q2のベース端子に接続されており、これらドライブ回路の出力に応じてU相コイルへの通過電流を制御することができる。
【0063】
電流指令データIref_u( IO,θ m)が正の値であるときは、PWMパルス信号は、トランジスタQ1及びQ4のベース・ドライブを駆動する。
【0064】
また、電流指令データIref_u( IO,θ m)が負の値であるときは、PWMパルス信号は、トランジスタQ2及びQ3のベース・ドライブを駆動する。
【0065】
また、電流指令データIref_u( IO,θ m)がゼロ値であるときは、PWMパルス信号はゼロとなり、いずれのベース・ドライブも駆動しない。
【0066】
PWM変換回路12によるPWM信号タイミング・チャートを図8に示しておく。
【0067】
上述したような電流制御回路10によれば、U,V,Wの各相コイルへの通過電流をそれぞれ独立して制御することができるので、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流を考慮して、各相コイルに高調波を含む電流を流すことができる。この結果、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにすることができる。
【0068】
[追補]
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0069】
【発明の効果】
以上詳記したように、本発明によれば、最大限のトルクを発生し小型化を実現することができる、永久磁石型の優れた同期形サーボ・モータを提供することができる。
【0070】
また、本発明によれば、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流のために生ずるモータ出力のトルク・リップル問題を解決し効率的に駆動することができる、永久磁石型の優れた同期形サーボ・モータを提供することができる。
【0071】
本発明によれば、永久磁石型同期形サーボ・モータのコイル電流制御を回転子マグネットの磁束の高調波成分も含めた電流波形を生成するように行なうことで、従来利用されなかった磁束の高調波成分を加えたトルクの向上を実現し、トルク・リップルの問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る非干渉結線方式を採用したACサーボ・モータ用3相コイルの構成を概念的に示した図である。
【図2】図1に示すような非干渉結線方式の3相コイルに流す電流Iu,Iv,Iwを供給するための電流回路の構成を示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係るコイル電流波形(但し、単相)とモータ・トルクの関係を従来例(図16を参照のこと)と比較して示したチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る同期式ACサーボ・モータの各相のコイルに対する供給する電流を制御する電流制御回路10の構成を模式的に示した図である。
【図5】3相変換回路11によってそれぞれのコイルU,V,Wへ与えられる電流指令Iref_u,Iref_v,Iref_wの例を示した図である。
【図6】U相コイルの通過電流を制御するためのPWM変換回路12−1の構成を模式的に示した図である。
【図7】トランジスタ・スイッチング回路17の内部構成を示した図である。
【図8】PWM変換回路12によるPWM信号タイミング・チャートを示した図である。
【図9】3相サーボ・モータのスター型結線(従来例)を示した図である。
【図10】3相サーボ・モータのデルタ型結線(従来例)を示した図である。
【図11】スター型結線並びにデルタ型結線において各相のコイルU,V,Wに流れる電流Iu,Iv,Iwを供給するための電流制御回路の構成(従来例)を示した図である。
【図12】180度通電方式による各相のコイル電流波形を示したチャートである。
【図13】U相の理想の磁束と現実の磁束の差を示した図である。
【図14】U、V、W各相の関係とその総和の磁束の関係を示した図である。
【図15】磁束の周波数分布を示した図である。
【図16】コイル電流とトルク・リップルの関係(従来例)を示した図である。
【符号の説明】
10…電流制御回路
11…3相変換回路
12PWM変換回路
20…同期式ACサーボ・モータ
21…コイル
22…モータ回転子
23…回転位置検出回路
Claims (3)
- 永久磁石型の回転子と固定子側に複数相のコイルを備えたサーボ・モータであって、
各相のコイル間でコイル電流が干渉し合わない形態で結線するコイル結線手段と、
各相のコイル毎に独立した電流制御手段を備え、
前記電流制御手段は、高速回転時において永久磁石の磁束により流れる高調波電流を考慮して、各相コイルに高調波を含む電流を流す、
ことを特徴とするサーボ・モータ。 - 前記電流制御手段は、コイル電流を制御することにより補正トルクを発生して、磁気の歪みに起因するコギング・トルク及びトルク変動をゼロにする、
ことを特徴とする請求項1に記載のサーボ・モータ。 - 前記固定子はN相のコイルからなり、
前記電流制御手段は、電流軸電流指令又はトルク指令をN相の各コイルに流す電流に変換するN相変換部と、N相変換部からの電流指令を基にN相の各コイルを独立して電流制御するN個のPWM変換部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のサーボ・モータ。
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Cited By (2)
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-
2002
- 2002-11-26 JP JP2002342924A patent/JP2004180410A/ja active Pending
Cited By (3)
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