JP2004177181A - 温度センサの製造方法及び温度センサ - Google Patents
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Abstract
【構成】温度によって電気的特性が変化するサーミスタ素子2を収納した筒状の金属チューブ3を、フランジ4の貫通孔46の最小内径よりも小径の金属チューブ本体部34側からフランジ4に挿入して、金属チューブ後端部33とフランジ4とを圧入固定する。これにより、フランジ4に金属チューブ3を挿入し易い。また、金属チューブ3にフランジ4を圧入する際に、金属チューブ3のうち実際に圧入に寄与する部分は、フランジ4の貫通孔46の最小内径よりも大径である金属チューブ後端部33のみである。これにより、圧入長さを短くすることができ、座屈等の金属チューブの変形を抑えることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物などの半導体からなるサーミスタや金属抵抗体等を感温素子として備える温度センサに関する。更に詳しくは、自動車の排気ガス浄化装置の触媒コンバータ内部や排気管内等といった被測定流体(例えば、排気ガス)が流通する流通路内に素子を配置し、被測定流体の温度検出を行う温度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、感温素子であるサーミスタ素子を収納し、軸線方向に延びる金属チューブ(金属ケース)と、該金属チューブを挿入するための貫通孔(貫通穴)を有し、金属チューブの外周面を取り囲むように配置されたフランジ(取付ナット)とを備え、該フランジが金属チューブに圧入固定されるとともに、溶接される構造の温度センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような温度センサは、排気ガス流通路内を流れる排気ガスの温度を感温素子によって検出するための排気温センサとして用いられている。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−340822号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
温度センサでは、薄肉部材である金属チューブと厚肉部材であるフランジとを圧入により固定する。しかし、従来の温度センサでは、金属チューブ略全体の外径とフランジの貫通孔の内径とが略同一であるため、圧入長さ(金属チューブ外周面とフランジ貫通孔内周面との当接部であって、軸線方向における長さ)が長い。そのため、金属チューブにフランジを圧入する際に、金属チューブが座屈する等の問題があった。
【0005】
本発明は、上述した従来の問題点を解決するものであり、金属チューブにフランジを圧入する際に、金属チューブの変形を防止することができる温度センサの製造方法及び温度センサを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明の温度センサの製造方法は、先端側が閉塞した軸線方向に延びる筒状の金属チューブと、金属チューブの内部に収納され、温度によって電気的特性が変化する素子と、金属チューブを挿入するための貫通孔を有し、金属チューブの外周面を取り囲むように配置されたフランジと、を備える温度センサの製造方法において、外径が貫通孔の最小内径よりも大径の金属チューブ後端部と、金属チューブ後端部の先端側に位置し、貫通孔の最小内径よりも小径の金属チューブ本体部と、を有した金属チューブを、該金属チューブの先端側からフランジを挿入し、金属チューブ後端部にフランジを圧入固定することを特徴とする。
【0007】
本発明の温度センサの製造方法では、金属チューブをフランジの貫通孔の最小内径よりも小径の金属チューブ本体部側からフランジに挿入して、金属チューブ後端部とフランジとを圧入固定している。従って、フランジに金属チューブを挿入し易い。また、金属チューブにフランジを圧入する際に、金属チューブのうち実際に圧入に寄与する部分は、フランジの貫通孔の最小内径よりも大径である金属チューブ後端部のみである。これにより、圧入長さを短くすることができ、座屈等の金属チューブの変形を抑えることができる。更に、圧入長さが短いことから、従来よりも圧入荷重を低減することができ、金属チューブの変形を更に抑えることができる。
【0008】
また、本発明の温度センサの製造方法では、フランジの貫通孔は、内径が略一定の先端側貫通孔と、先端側貫通孔の後端側に位置し、後端側ほど内径が大きい形状の後端側貫通孔と、からなり、後端側貫通孔側から金属チューブ後端部を圧入することを特徴とする。
【0009】
本発明の温度センサの製造方法では、後端側ほど内径が大きい形状を有した後端側貫通孔側から金属チューブ後端部を圧入している。従って、圧入荷重を低減することができ、金属チューブの変形を更に抑えることができる。ここで、後端側貫通孔の形状は、圧入のし易さを考慮すると、テーパ形状やアール形状であることが好ましい。また、後端側貫通孔の最大内径は、金属チューブ後端部の外径よりも大きいことが好ましい。
【0010】
また、本発明の温度センサの製造方法では、軸線方向において、金属チューブ後端部と先端側貫通孔との圧入長さ(金属チューブ後端部の外周面と先端側貫通孔の内周面との当接面であって、軸線方向における長さ)は、先端側貫通孔の長さよりも小さい。これにより、圧入長さが短くなり、圧入荷重を更に低減することができる。
【0011】
また、本発明の温度センサの製造方法では、フランジは、軸線方向に延びる鞘部と、鞘部の先端側に位置し、径方向外側に向かって突出する突出部と、を有し、金属チューブ後端部は鞘部に圧入固定される。
【0012】
温度センサでは、フランジと金属チューブ後端部とが圧入された圧入部を介して、フランジに熱が伝導する熱引きの問題がある。この熱引きが顕著になると、応答性の悪化、温度測定精度の低下を招くことになる。本発明の製造方法により得られる温度センサでは、フランジと金属チューブ後端部とが圧入固定により一体とされるが、この圧入固定は、フランジのうちで排気ガス通路等の被測定流体が流通する流通路内に臨む部分(具体的には突出部の先端側)ではなく、突出部の後端側に位置する鞘部において行われるものである。これにより、温度センサを被測定流体が流通する流通管に装着したときに、フランジと金属チューブ後端部との圧入部が流通路内に配置されることがない。換言すれば、フランジと金属チューブ後端部との圧入部が、排気ガス等の被測定流体に晒されない位置に設けられる。その結果、流通路内において、感熱部(温度センサであって、自動車の排気管内等に配置されるサーミスタ側の部位)から圧入部を介してフランジに至る伝熱経路が形成されることはなく、感熱部からフランジ等への熱引きの度合いを従来に比して抑えられ、センサ自身の応答性の向上、温度測定精度の低下防止の効果が得られる。
【0013】
また、本発明の温度センサの製造方法では、金属チューブ後端部は、鞘部であって先端側貫通孔が形成されている領域に、周方向にわたって溶接される。
【0014】
温度センサを自動車の排気ガス温度を検出するために使用した場合、200〜1000℃程度の高温環境下での使用に供されるが故に、金属チューブの外面はもとより内面が酸化されて、素子が収納される空間内の酸素濃度が著しく低下し、素子の表面が還元される等の理由で同素子に特性変化が生じることがある。そして、この酸化は特に金属チューブ後端部とフランジとの溶接部分の外面及び内面において生じ易く、この溶接部が流通路内に臨むフランジの先端側に形成される場合は、溶接部自身が高温環境下に直接晒されることになるので、酸化が助長されることになる。これに対し、本発明の製造方法により得られる温度センサでは、金属チューブ後端部とフランジとの溶接を、フランジの内で流通路内に臨む先端側の突出部ではなく、突出部の後端側に位置する鞘部に行っており、溶接部での酸化の発生が抑えられ、耐久性に優れた温度センサとすることができる。更に、金属チューブ自身がフランジの鞘部に溶接される構造であるため、上述したように溶接部が被測定流体に晒されることがなくなり、被測定流体に対する気密の信頼性を向上させることができる。
【0015】
また、上記課題を解決するためになされた本発明の温度センサは、先端側が閉塞した軸線方向に延びる筒状の金属チューブと、金属チューブの内部に収納され、温度によって電気的特性が変化する素子と、金属チューブを挿入するための貫通孔を有し、金属チューブの外周面を取り囲むように配置されたフランジと、を備える温度センサにおいて、金属チューブは、その外径が貫通孔の最小内径よりも大径の金属チューブ後端部と、金属チューブ後端部の先端側に位置し、貫通孔の最小内径よりも小径の金属チューブ本体部と、を有し、軸線方向において、金属チューブ後端部と貫通孔との圧入長さが貫通孔の長さよりも小さくなるように、金属チューブ後端部がフランジに圧入固定されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の温度センサでは、金属チューブが、その外径がフランジの貫通孔の最小内径よりも大径の金属チューブ後端部と、該金属チューブ後端部の先端側に位置し、貫通孔の最小内径よりも小径の金属チューブ本体部とを有している。そして、軸線方向における金属チューブ後端部と貫通孔との圧入長さが、貫通孔の長さよりも小さくなるように、金属チューブ後端部がフランジに圧入固定されている構造となっている。これにより、金属チューブにフランジを圧入する際に、金属チューブのうち実際に圧入に寄与する部分は、フランジの貫通孔の最小内径よりも大径の金属チューブ後端部のみである。従って、圧入長さを短くすることができ、座屈等の金属チューブの変形を抑えることができる。また、圧入長さが短いことから、従来よりも圧入荷重を低減することができ、金属チューブの変形を更に抑えることができる。
【0017】
また、温度センサでは、応答性向上のために、サーミスタが収納される金属チューブ本体部の外径を小径化することが行われている。従来の温度センサでは、金属チューブの小径化に伴い金属チューブ全体が小径化し、そのために、圧入工程時等に金属チューブの取り扱い性が低下することがあった。また、金属チューブの小径化に合わせて、新たなフランジを用意しなければならず、コストアップとなる。これに対し、本発明の温度センサでは、フランジが圧入される金属チューブ後端部の外径はそのままで、金属チューブ本体部の外径のみを変更すれば良い。従って、フランジの圧入作業性の低下を抑えることができる。また、金属チューブ本体部が小径化される毎に、新たなフランジを用意する必要もなく、低コスト化を実現することができる。
【0018】
更に、温度センサでは、フランジと金属チューブ後端部とが圧入された圧入部を介して、フランジに熱が伝導する熱引きの問題がある。この熱引きが顕著になると、応答性の悪化、温度測定精度の低下を招くことになる。本発明の温度センサでは、軸線方向における金属チューブ後端部と貫通孔との圧入長さが、貫通孔の長さよりも小さくなるように、金属チューブ後端部がフランジに圧入固定されている構造となっている。従って、従来の温度センサに比べて、圧入長さが短いため、感熱部(温度センサであって、自動車の排気管内等に配置されるサーミスタ側の部位)からフランジへの熱引きを低減することができ、応答性の向上、温度測定精度の低下防止の効果が得られる。
【0019】
また、金属チューブの径方向において、金属チューブ本体部の外周面と先端側貫通孔の内周面との間に空間が形成されるように、金属チューブ後端部がフランジに圧入固定されていることが好ましい。このような構造にすることで、感熱部からフランジに至る伝熱経路を長くすることができ、感熱部に最も近いフランジの先端部からの熱引きが低減され、更に応答性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の温度センサでは、フランジの貫通孔が、内径が略一定の先端側貫通孔と、先端側貫通孔の後端側に位置し、後端側ほど内径が大きい形状の後端側貫通孔と、からなり、前記金属チューブ後端部の外径は上記先端側貫通孔の内径よりも大径である。
【0021】
本発明の温度センサでは、フランジの貫通孔のうち、後端側貫通孔が後端側ほど内径の大きい形状となっている。従って、フランジを金属チューブ後端部に圧入固定する際、後端側貫通孔から先端側貫通孔に向けて、金属チューブを先端側から挿入すれば、圧入荷重を更に低減することができ、座屈等の金属チューブの変形を抑えることができる。
【0022】
また、フランジの後端部貫通孔が後端側ほど内径の大きい形状であるから、圧入長さが短くなると共に、後端部貫通孔の内周面と金属チューブ後端部の外周面との間に空間が形成される。これにより、熱引きを更に低減することができ、応答性の向上、温度測定精度の低下防止の効果が得られる。
【0023】
また、本発明の温度センサでは、フランジは、軸線方向に延びる鞘部と、鞘部の先端側に位置し、径方向外側に向かって突出する突出部と、を有し、金属チューブ後端部は、鞘部に圧入固定されている。
【0024】
本発明の温度センサでは、フランジと金属チューブ後端部とが圧入固定により一体とされるが、この圧入固定は、フランジのうちで排気ガス通路等の被測定流体が流通する流通路内に臨む部分(具体的には突出部の先端側)ではなく、突出部の後端側に位置する鞘部において行われるものである。これにより、温度センサを被測定流体が流通する流通管に装着したときに、フランジと金属チューブ後端部との圧入部が流通路内に配置されることがない。換言すれば、フランジと金属チューブ後端部との圧入部が、排気ガス等の被測定流体に晒されない位置に設けられる。その結果、流通路内において、感熱部(温度センサであって、自動車の排気管内等に配置されるサーミスタ側の部位)から圧入部を介してフランジに至る伝熱経路が形成されることはなく、感熱部からフランジ等への熱引きの度合いを従来に比して抑えられ、センサ自身の応答性の向上、温度測定精度の低下防止の効果が得られる。
【0025】
また、本発明の温度センサでは、金属チューブ後端部は、鞘部であって先端側貫通孔が形成されている領域に、周方向にわたって溶接されている。
【0026】
温度センサを自動車の排気ガス温度を検出するために使用した場合、200〜1000℃程度の高温環境下での使用に供されるが故に、金属チューブの外面はもとより内面が酸化されて、素子が収納される空間内の酸素濃度が著しく低下し、素子の表面が還元される等の理由で同素子に特性変化が生じることがある。そして、この酸化は特に金属チューブ後端部とフランジとの溶接部分の外面及び内面において生じ易く、この溶接部が流通路内に臨むフランジの先端側に形成される場合は、溶接部自身が高温環境下に直接晒されることになるので、酸化が助長されることになる。これに対し、本発明の温度センサでは、金属チューブ後端部とフランジとの溶接を、フランジの内で流通路内に臨む先端側の突出部ではなく、突出部の後端側に位置する鞘部に行っており、溶接部での酸化の発生が抑えられ、耐久性に優れた温度センサとすることができる。更に、金属チューブ自身がフランジの鞘部に溶接される構造であるため、上述したように溶接部が被測定流体に晒されることがなくなり、被測定流体に対する気密の信頼性を向上させることができる。
【0027】
なお、本発明の温度センサでは、フランジを構成する鞘部は、先端側に位置する先端側段部と該先端側段部よりも小さい外径を有する後端側段部とを備える二段形状をなし、金属チューブ後端部は、鞘部の後端側段部に溶接されていると良い。
【0028】
金属チューブ後端部とフランジの鞘部との溶接部を同鞘部の周方向にわたって十分な溶接強度を有する状態で形成するには、溶接条件を高めに設定したり、溶接条件を変更せずに鞘部の肉厚を薄肉化して溶接を行うことが考えられる。しかし、単純に溶接条件を高めるとコストアップに繋がり、逆に鞘部全体の肉厚を薄くすると鞘部自身の機械的強度が低下するおそれがある。そこで、本発明では、フランジの鞘部を、先端側段部とそれよりも小径の後端側段部の二段形状に形成し、金属チューブ後端部を鞘部の後端側段部に溶接している。つまり、鞘部の内で溶接に供される部分の肉厚が薄くなる形状としている。それにより、鞘部と金属チューブ後端部との溶接を良好に行え両者の溶接強度を良好に確保しつつ、鞘部ひいてはフランジの機械的強度についても確保することができる。なお、鞘部の後端側を先端側よりも小径に形成することは、後端側を先端側よりも大径に形成するのに比して加工の面から容易であり望ましい。
【0029】
また、本発明では、金属チューブ後端部とフランジの鞘部との溶接は、特に限定されず、例えば、レーザ溶接、プラズマ溶接(例えば、アルゴン溶接等)、電子ビーム溶接等を挙げることができる。溶接強度の確保とコスト面との兼ね合いを考慮すると、レーザ溶接、或いは、アルゴン溶接が好ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態である温度センサ1について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の温度センサ1の構造を示す断面図である。また、図2は、図1の温度センサ1のフランジ4周辺部を拡大して示す部分断面図である。この温度センサ1は、サーミスタ素子2を感温素子として用いたものであり、同センサ1を自動車の排気管に装着することにより、サーミスタ素子2を排気ガスが流れる排気管内に配置させて、排気ガスの温度検出に使用するものである。
【0031】
金属チューブ3は、鋼板の深絞り加工により先端側31が閉塞した軸線方向に延びる筒状形状をなしており、その先端側31の内部にサーミスタ素子2が収納されている。この金属チューブ3は、後述するフランジ4の先端側貫通孔47の内径よりも大径の金属チューブ後端部33と、この金属チューブ後端部33の先端側に位置し、フランジの先端側貫通孔47の内径よりも小径の金属チューブ本体部34とを有している。なお、金属チューブ後端部33と金属チューブ本体部34との間には、テーパ形状の金属チューブ変径部が形成されている。また、金属チューブ3は、後述するようにステンレス合金から形成されている。そして、金属チューブ3の内部であってサーミスタ素子2の周囲には、セメント10が充填されており、これにより使用時の振動等によるサーミスタ素子2の揺動が防止される。また、金属チューブ3の内部であってサーミスタ素子2の先端側には、酸化ニッケル製のペレット14が配置されている。このペレット14は、万一、金属チューブ3の内部の酸素濃度が低下したときに、そのペレット14から酸素を放出させて酸素濃度の低下を抑えるためのものである。更に、金属チューブ3の後端側32は開放されており、金属チューブ後端部33はステンレス合金製のフランジ4の貫通孔46に挿通されている。
【0032】
フランジ4は、ステンレス合金により形成されており、軸線方向に延びる鞘部42と、この鞘部42の先端側に位置し、径方向外側に向かって突出する突出部41とを有している。突出部41は、鞘部42よりも大きな外径を有している。
更に、突出部41は、環状に形成されると共に、先端側に図示しない排気管の取付部のテーパ部に対応したテーパ形状を有しており、この座面45が上記取付部のテーパ部に密着することで、排気ガスが排気管外部へ漏出するのを防止するようになっている。また、鞘部42は環状に形成される一方、先端側に位置する先端側段部44と先端側段部44よりも小さい外径を有する後端側段部43とを備える二段形状をなしている。更に、フランジ4は、軸線方向に貫通した貫通孔46を有しており、この貫通孔46に金属チューブ3が挿入される。この貫通孔46は、内径が略一定の先端側貫通孔47と、先端側貫通孔47の後端側に位置し、後端側ほど内径が大きいテーパ形状の後端側貫通孔48とからなっている。また、後端側貫通孔48の最大内径は、金属チューブ後端部33の外径よりも大径となっている。
【0033】
金属チューブ3は、自身の先端側31からフランジ4の後端側貫通孔48に挿入され、金属チューブ後端部33の外周面と、鞘部42の後端側段部43に対応する領域に位置する先端側貫通孔47の内周面とが、圧入固定されている。そして、金属チューブ後端部33の外周面と先端側貫通孔47の内周面との重なり合う部分が、周方向にわたってレーザ溶接されている。このレーザ溶接がなされることにより、図1に示すように、鞘部42の後端側段部43と金属チューブ後端部33とに跨る溶接部W1が形成され、金属チューブ3がフランジ4に対して強固に固定される。なお、軸線方向において、金属チューブ後端部と先端側貫通孔47の圧入長さは、先端側貫通孔47の長さよりも小さくなっている。また、フランジの先端側において、金属チューブ本体部34の外周面と先端側貫通孔47の内周面との間には、空間が形成されている。
【0034】
このように、金属チューブ後端部33をフランジ4の鞘部42に圧入しつつ、鞘部42の後端側段部43にレーザ溶接を行うことによって、フランジ4と金属チューブ3との溶接強度に優れると共に、フランジ4と金属チューブ3との密着強度に優れる温度センサ1とすることができる。従って、自動車等の振動の激しい環境下において温度センサ1が強い振動を受けても、金属チューブ3自体が振れ難く、金属チューブ3の折損等を抑制することができる。また、排気ガスに対する気密の信頼性を向上させることができる。
【0035】
フランジ4の周囲には、六角ナット部51及びネジ部52を有するナット5が回動自在に嵌挿されている。温度センサ1は、排気管の取付部にフランジ4の突出部41の座面45を当接させ、ナット5により固定される。また、フランジ4のうちで鞘部42の先端側段部44の径方向外側には、筒状の継手6が気密状態で接合されている。具体的には、鞘部42の先端側段部44の外周面に継手6の内周面が重なり合うように、同継手6が鞘部42の先端側段部44に圧入され、継手6と先端側段部44とを周方向にわたってレーザ溶接している。このレーザ溶接がなされることにより、図1に示すように、鞘部42の先端側段部44と金属チューブ3とに跨る溶接部W2が形成される。
【0036】
金属チューブ3、フランジ4及び継手6の内部には、一対の金属芯線7を内包するシース部材8が配置される。金属チューブ3の内部においてシース部材8の先端側から突出する金属芯線7には、サーミスタ素子2がPt/Rh合金線9を介して接続される。この合金線9は、サーミスタ素子2と同時に焼成されるものである。合金線9及び金属芯線7は互いに抵抗溶接される。なお、シース部材8は、詳細は図示しないが、SUS310Sからなる金属製の外筒と、SUS310S等からなる導電性の一対の金属芯線7と、外筒と各金属芯線7の間を絶縁し、金属芯線7を保持する絶縁粉末とから構成される。
【0037】
継手6の内部にてシース部材8の後端側へ突き出す金属芯線7は、加締め端子11を介して一対の外部回路(例えば車両のECU等)接続用のリード線12が接続される。なお、一対の金属芯線7及び一対の加締め端子11は絶縁チューブ15により互いに絶縁される。リード線12は、ステンレス合金製の導線を絶縁性の被覆材にて被覆したものである。これらリード線12は、耐熱ゴム製の補助リング13に内包される。補助リング13が継手6の上から丸加締め或いは六角加締めされることにより、両者13、6が気密性を保ちながら互いに接合される。これにより、サーミスタ素子2が、金属チューブ3、フランジ4及び継手6を金属包囲部材として形成される閉空間に収容されることになる。そして、サーミスタ素子2の出力は、シース部材8の金属芯線7からリード線12により、図示しない外部回路に取り出され、排気ガスの温度が検出される。
【0038】
ここで、本実施の形態の温度センサ1にあっては、外部からリード線12の内側の空隙を介して大気が継手6の内部に入り込むと、その大気は、継手6、金属チューブ3及びフランジ4の内部が閉空間に形成される関係上、金属チューブ3内まで入り込むことになる。従って、温度センサ1では、リード線12の内部から金属チューブ3内までの通気が確保されることになり、サーミスタ素子2を収納する金属チューブ3が酸化した場合にも、同金属チューブ3内の酸素濃度の低下が抑えられ、サーミスタ素子2の特性変化を抑制することができる。
【0039】
なお、この温度センサ1は1000℃にも達する高温環境下で使用されるため、各々の構成部材は十分な耐熱性を有している必要がある。そのため、金属チューブ3、フランジ4及び金属芯線7は、Feを主成分とし、C、Si、Mn、P、S、Ni及びCrを含有する耐熱合金であるSUS310Sにより形成されている。また、継手6は、SUS304に形成されている。
【0040】
続いて、上述した本実施の形態の温度センサ1の製造方法について説明する。
まず、SUS310Sの金属体に対して冷間鍛造又は/及び切削加工を施し、先端側貫通孔47及び後端側貫通孔48からなる貫通孔46と、先端側段部44と後端側段部46とを有する二段形状をなす鞘部42と、この鞘部42の先端側に位置し、径方向外側に向かって突出する突出部41とを有するフランジ4を形成する。なお、フランジ4の後端側貫通孔48は、フランジ4の形成と同時に形成されても良く、フランジ4を冷間鍛造した後、切削加工することで形成しても良い。また、別途平らなSUS310S鋼板を準備し、この鋼板をダイス型の所定位置にセットした上で、ポンチを用いて深絞り加工することで金属チューブ3全体を形成する。この深絞り加工により、先端側31が閉塞した筒状をなし、上述の金属チューブ本体部、金属チューブ変径部、金属チューブ後端部を有した金属チューブ3が形成される。
【0041】
次に、金属チューブ3とフランジ4とを圧入固定する。具体的には、金属チューブ3を、自身の先端側31からフランジ4の後端側貫通孔48に挿入する。そして、金属チューブ後端部33の外周面と、鞘部42の後端側段部43に対応する領域に位置する先端側貫通孔47の内周面とを、圧入固定する。この圧入工程時において、本実施の形態では、フランジ4の後端側貫通孔48の内周面に金属チューブ後端部33先端側外周面が当接すると、後端側貫通孔48内周面のテーパ形状によるセンターリング効果で、金属チューブ3とフランジ4との軸芯が一致する方向に導かれる。そのため、両者の芯ずれを抑制した形で、両者の圧入を行うことができる。また、上記後端側貫通孔48内周面がテーパ形状であるため、フランジ4の貫通孔46内への金属チューブ後端部33圧入開始当初における摩擦抵抗を少なくすることができ、圧入荷重を低減することができる。従って、座屈等の金属チューブの変形を抑えることができる。また、金属チューブ3にはテーパ形状の金属チューブ変径部が形成されているので、テーパ形状を有した後端側貫通孔48と相まって、更に圧入荷重が低減され、金属チューブの変形を更に抑えることができる。
【0042】
そして、金属チューブ3とフランジ4とを圧入した後、金属チューブ後端部33の外周面と先端側貫通孔47の内周面との重なり合う部分を、周方向にわたってレーザ溶接する。ついで、金属チューブ3内に所定量の未固化状態のセメント10と、ペレット14とを充填し、シース部材8の金属芯線7の先端部とサーミスタ素子2の電極とを接続した組立体を、サーミスタ素子2側から該金属チューブ3の内部に挿入する。その後、セメント10を固化させる。ついで、公知の手法により、加締め端子11を用いてシース部材8の金属芯線7の後端部とリード線12とを接続する。その後、筒状の継手6を、鞘部42の先端側段部44の径方向外側に圧入して、継手6と先端側段部44を周方向にわたってレーザ溶接する。そして、補助リング13やナット5等を適宜組み付ける。このようにして、温度センサ1が完成する。
【0043】
以上に説明したように、本実施の形態の温度センサ1は、フランジ4の先端側貫通孔47の最小内径よりも小径の金属チューブ本体部33側からフランジ4に挿入して、金属チューブ後端部33とフランジ4とを圧入固定している。従って、フランジ4に金属チューブ3を挿入し易い。また、軸線方向における金属チューブ後端部33と先端側貫通孔47との圧入長さが、先端側貫通孔47の長さよりも小さくなるように、金属チューブ後端部33がフランジ4に圧入固定されるので、圧入長さを短くすることができ、座屈等の金属チューブの変形を抑えることができる。更に、フランジの貫通孔のうち、後端側貫通孔48が後端側ほど内径の大きいテーパ形状となっているので、圧入荷重を低減することができ、座屈等の金属チューブの変形を更に抑えることができる。
【0044】
また、本実施の形態の温度センサ1は、従来に比べて圧入長さが短いため、感熱部からフランジへの熱引きを低減することができ、応答性の向上、温度測定精度の低下防止の効果が得られる。更に、フランジ4の後端部貫通孔48がテーパ形状であるので、後端部貫通孔48の内周面と金属チューブ後端部33の外周面との間に空間が形成されると共に、金属チューブ本体部33の外周面と先端側貫通孔47の内周面との間にも空間が形成されている。このため、フランジからの熱引きが更に低減され、更なる応答性の向上、温度測定精度の低下を抑制できる。
【0045】
更に、本実施の形態の温度センサ1は、金属チューブ3とフランジ4とがレーザ溶接により一体に接合されるが、レーザ溶接により形成される溶接部W1は、フランジ4のうちで排気管内に臨む先端側の突出部41ではなく、後端側に位置する鞘部42に形成される。これにより、排気管内において、温度センサ1の感熱部(フランジ4の座面よりもサーミスタ素子2側の部位)から溶接部を介してフランジ4に至る伝熱経路が形成されず、感熱部からフランジ4等への熱引きの度合いを従来に比して抑えることができる。その結果、応答性向上、温度測定精度の低下防止の効果を得ることができると共に、継手6の温度上昇を抑えて補助リング13の信頼性を維持することができる。
【0046】
また、金属チューブ3とフランジ4との溶接部W1が排気管内に晒されないことから、溶接部の内面にて生じ易い酸化を有効に抑制することができ、ひいてはサーミスタ素子2が特性変化することを抑制することができる一方、排気ガスに対する気密の信頼性を向上させることができる。
【0047】
更に、金属チューブ3全体が、SUS310S鋼板の深絞り加工により形成されている。従って、金属チューブ3の先端部に酸化しやすい溶接部を有しないため、耐久性、信頼性に優れた温度センサ1とすることができる。
【0048】
なお、本発明においては、上述した具体的な実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施形態とすることができる。
例えば、金属チューブ3の先端部の厚さを他の部分よりも薄くすることにより、温度センサの応答性を更に向上させることもできる。さらに、フランジ4の突出部41よりも先端側に、同突出部41よりも外径が小径の外径を有し、金属チューブ本体部34あるいはシース部材8の外径よりも大径の内径を有する筒状部を一体に形成し、この筒状部の外周面を径方向内側に加締めることで、筒状部と金属チューブ本体部34あるいはシース部材8とを加締め固定してもよい。これにより、金属チューブ本体部34あるいはシース部材8の折損がより一層起こり難い耐震性に優れた温度センサとすることができる。また、本発明の温度センサは、排気温センサのみならず、被測定流体として水や油等の液体が流れる流通路に取り付けられる温度センサにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】サーミスタ素子を収納する金属チューブがフランジの鞘部に圧入され、この鞘部において周方向にわたってレーザ溶接されている温度センサを示す断面図である。
【図2】図1の温度センサのフランジ周辺部を拡大して示す部分断面図である。
【符号の説明】
1・・・温度センサ、2・・・サーミスタ素子、3・・・金属チューブ、33・・・金属チューブ後端部、34・・・金属チューブ本体部、4・・・フランジ、41・・・突出部、42・・・鞘部、43・・・後端側段部、44・・・先端側段部、6・・・継手、7・・・金属芯線、8・・・シース部材、12・・・リード線、W1、W2・・・溶接部
Claims (9)
- 先端側が閉塞した軸線方向に延びる筒状の金属チューブと、上記金属チューブの内部に収納され、温度によって電気的特性が変化する素子と、
上記金属チューブを挿入するための貫通孔を有し、上記金属チューブの外周面を取り囲むように配置されたフランジと、
を備える温度センサの製造方法において、
外径が上記貫通孔の最小内径よりも大径の金属チューブ後端部と、該金属チューブ後端部の先端側に位置し、上記貫通孔の最小内径よりも小径の金属チューブ本体部と、を有した金属チューブを、該金属チューブの先端側から上記フランジに挿入し、上記金属チューブ後端部に上記フランジを圧入固定することを特徴とする温度センサの製造方法。 - 前記フランジの貫通孔は、内径が略一定の先端側貫通孔と、該先端側貫通孔の後端側に位置し、後端側ほど内径が大きい形状の後端側貫通孔と、からなり、上記後端側貫通孔側から前記金属チューブ後端部を圧入することを特徴とする請求項1に記載の温度センサの製造方法。
- 前記軸線方向において、前記金属チューブ後端部と前記先端側貫通孔との圧入長さは、前記先端側貫通孔の長さよりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の温度センサの製造方法。
- 前記フランジは、前記軸線方向に延びる鞘部と、該鞘部の先端側に位置し、径方向外側に向かって突出する突出部と、を有し、前記金属チューブ後端部は上記鞘部に圧入固定されることを特徴とする請求項1から3に記載の温度センサの製造方法。
- 前記金属チューブ後端部は、前記鞘部であって前記先端側貫通孔が形成されている領域に、周方向にわたって溶接されることを特徴とする請求項4に記載の温度センサの製造方法。
- 先端側が閉塞した軸線方向に延びる筒状の金属チューブと、上記金属チューブの内部に収納され、温度によって電気的特性が変化する素子と、
上記金属チューブを挿入するための貫通孔を有し、上記金属チューブの外周面を取り囲むように配置されたフランジと、
を備える温度センサにおいて、
上記金属チューブは、その外径が上記貫通孔の最小内径よりも大径の金属チューブ後端部と、該金属チューブ後端部の先端側に位置し、上記貫通孔の最小内径よりも小径の金属チューブ本体部と、を有し、
上記軸線方向において、上記金属チューブ後端部と上記貫通孔との圧入長さが上記貫通孔の長さよりも小さくなるように、上記金属チューブ後端部が上記フランジに圧入固定されていることを特徴とする温度センサ。 - 前記フランジの貫通孔は、内径が略一定の先端側貫通孔と、該先端側貫通孔の後端側に位置し、後端側ほど内径が大きい形状の後端側貫通孔と、からなり、前記金属チューブ後端部の外径は上記先端側貫通孔の内径よりも大径であることを特徴とする請求項6に記載の温度センサ。
- 前記フランジは、前記軸線方向に延びる鞘部と、該鞘部の先端側に位置し、径方向外側に向かって突出する突出部と、を有し、前記金属チューブ後端部は上記鞘部に圧入固定されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の温度センサ。
- 前記金属チューブ後端部は、前記鞘部であって前記先端側貫通孔が形成されている領域に、周方向にわたって溶接されていることを特徴とする請求項8に記載の温度センサ。
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