JP2004176885A - 水素貯蔵容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】内層材と外層材との間に水素が滞留することによって、外層材と内層材との間に発生する水素脆化や剥離を防止すること。
【解決手段】水素を含む気体を内部に貯蔵して該気体からの内圧に耐える外層材2と、外層材2の内周面を覆うように設けられ、耐水素性を有する材料によって形成された内層材3とを備える水素貯蔵容器1において、内層材3と外層材2との間には、外部へと導かれる流路を設けた構成とした。また、流路を、螺旋状とした。また、滞留した水素を排除する流体が外部へ流れるように、流路に流体を供給する流体供給手段を設ける構成とした。
【選択図】 図1
【解決手段】水素を含む気体を内部に貯蔵して該気体からの内圧に耐える外層材2と、外層材2の内周面を覆うように設けられ、耐水素性を有する材料によって形成された内層材3とを備える水素貯蔵容器1において、内層材3と外層材2との間には、外部へと導かれる流路を設けた構成とした。また、流路を、螺旋状とした。また、滞留した水素を排除する流体が外部へ流れるように、流路に流体を供給する流体供給手段を設ける構成とした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素を含む気体を貯蔵する水素貯蔵容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素ステーションでの水素の貯蔵や燃料電池での水素の貯蔵には、水素貯蔵容器が使用される。
水素貯蔵容器には、外層材と内層材の二層構造により形成されたものと、外層材の内面にライニングを施したものとがある。
前者の、外層材と内層材の二層構造により形成された水素貯蔵容器においては、内層材と外層材と両端に設けられた蓋とによって構成されている。内層材は、外層材の内周面を覆うように配置されている。内層材と両端に設けられた蓋とによって閉じた空間が形成され、この空間に水素が貯蔵されている。
【0003】
外層材は円筒状とされており、炭素鋼や低合金鋼によって形成されている。外層材の軸方向における両端にはねじ部が形成されている。外層材は、内圧に耐え得るように、内層材よりもはるかに厚く製造されている。
内層材は円筒状であり、オーステナイト系ステンレス鋼によって形成されている。
【0004】
蓋は円柱状とされており、側部にはねじ部が形成されている。外層材に形成されたねじ部と蓋に形成されたねじ部とが螺合することによって、外層材に対して蓋が固定されている。蓋と内層材とはOリングやCリング等のシール材によって気密に取り付けられている。また、一方の蓋には水素ガス導入口が設けられている。
【0005】
上記のように構成された水素貯蔵容器においては、内部に圧縮された水素が封入されて圧力容器として機能する。
【0006】
外層材は、強度を有しかつ廉価であるということから炭素鋼や低合金鋼によって形成されている。しかし、炭素鋼や低合金鋼は水素と接触すると水素脆化や侵食が起こる。
水素脆化とは、鉄鋼材料の結晶の間隙に水素原子が侵入し、結晶内部で水素原子が結合して水素分子となり水素の体積が増加するので結晶内部で破壊が起こることである。
侵食とは、炭素鋼内部に侵入した水素原子と炭素鋼内の炭素とが次のような化学反応を起こして炭素鋼が脱炭されて、強度、靭性、延性が低下することである。
【0007】
Fe3C+4H→ CH4+3Fe
【0008】
そのため、外層材と水素とが接触しないように、内層材が外層材の内周面を覆うように設けられている。内層材のオーステナイト系ステンレス鋼は耐水素性が高いのでこの内層材で水素の漏れを防ぎ外層材まで到達しないようになっている。
【0009】
一方、水素雰囲気で使用される圧力容器に関しては、内層材であるステンレス鋼内のNi、Crの含有量を調節して耐食、耐剥離割れ性に優れた圧力容器を提供することが報告されている(例えば特許文献1参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特公平6−30831号公報 (第3−7頁、第1図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の水素貯蔵容器においては、内部の水素が内層材を透過して内層材と外層材との間に滞留してしまうために、水素と外層材とが接触して水素脆化や剥離を引き起こすといった問題があった。
剥離とは、ステンレス鋼によって形成された内層材と炭素鋼によって形成された外層材とで構成された二層構造の容器で起こる現象である。水素は、内層材を透過し外層材内部に入り込んで拡散する。その後、外層材側から内層材側への拡散においては、内層材内部の拡散速度が外層材内部の拡散速度に比べて著しく低いので、水素が外層材と内層材との間に滞留し、ついには剥離割れを引き起こす恐れがある。
【0012】
また、水素脆化や剥離が生じることによって水素貯蔵容器に水素を封入した際の圧力により水素貯蔵容器が破壊し、圧力容器として機能できなくなる恐れがあった。
【0013】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、内層材と外層材との間に水素が滞留することによって、内層材と外層材との間に発生する水素脆化や剥離を防止することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための手段として、次のような構成を採用する。
すなわち本発明に係る請求項1記載の水素貯蔵容器は、水素を含む気体を内部に貯蔵して該気体からの内圧に耐える外層材と、該外層材の内周面を覆うように設けられ、耐水素性を有する材料によって形成された内層材とを備える水素貯蔵容器において、前記内層材と前記外層材との間には、外部へと導かれる流路が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、内層材と外層材との間に流路を設けたことにより、内層材と外層材との間に滞留した水素が流路へ流れ込み、その後この流路を通って水素貯蔵容器の外部へ排除される。
ここで、「水素を含む気体」とは、主として水素を含む場合のみならず、純水素も包含するものである。
【0016】
請求項2記載の水素貯蔵容器は、請求項1記載の水素貯蔵容器において、前記流路は、螺旋状であることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、流路を螺旋状としたことにより、水素貯蔵容器全体に渡って流路が形成されることになる。また、このように流路が全体に行き渡るので、内層材と外層材との間に滞留した水素が水素貯蔵容器全体に渡って排除される。
また、流路を螺旋状としたことにより、流路が軸方向に対して略垂直に形成されるので、内圧に対して応力集中が生じ難い。
【0018】
請求項3に記載の水素貯蔵容器は、請求項1または2記載の水素貯蔵容器において、流体が外部へ流れるように前記流路に流体を供給する流体供給手段を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、流路に流体を流すことで、滞留する水素が強制的に排除される。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に係る水素貯蔵容器の第1の実施形態を、図1ないし図2に示して説明する。
水素貯蔵容器1は、図1に示すように、外層材2と、外層材2の内周面を覆うように配置された内層材3と、外層材2及び内層材3の軸方向における両端部を塞ぐように配置された蓋4とを備えている。
【0021】
外層材2は円筒状とされており、水素貯蔵容器1の外周面を取り囲んでいる。また、外層材2は、強度を有しかつ廉価であるということから炭素鋼や低合金鋼により形成されており、90MPaの内圧に耐え得るように設計されている。外層材の軸方向における両端部付近には、ねじ部5Aが形成されている。
【0022】
内層材3は、外層材2の内周面を覆うように配置されており、円筒状とされている。また、オーステナイト系ステンレス鋼によって形成されていて、単価が高いために外層材2と比べてはるかに薄肉に形成されている。
【0023】
蓋4は、円柱状であり水素貯蔵容器1の軸方向両端を塞いでいる。一方の蓋4には水素を封入するための水素導入口6が設けられている。蓋4の側部にはねじ部5Bが形成されている。
外層材2、内層材3及び蓋4によって内部空間7が閉じられている。内部空間7には水素が封入されている。内層材3は、外層材2の内周部に配置されていて、外層材2と蓋4とは、それぞれのねじ部5Aとねじ部5Bとの螺合によって締結されている。
内層材3の軸方向の長さは、一方のねじ部3による螺合部分の内側端部から、もう一方のねじ部3による螺合部分の内側端部までである。内層材3と蓋4とが重なっている部分にはOリング8が設けられていて、内部空間7の気密性が保たれている。
【0024】
本実施形態における水素貯蔵容器1の各部の寸法は、軸長が3mとされており、外層材2の外径が500mmで内層材の内径が340mmとされている。内層材3の厚みは5〜10mmとされている。
【0025】
内層材3の外周部には流路9が設けられている。図2(a)のA部分の拡大図を図2(b)に示す。流路9は、外層材2と内層材3との間に形成されており、内層材3の外周面に設けられている。流路9は、軸方向に対して螺旋状に延びていて、水素貯蔵容器1の全体に渡って流路9が配置されている。螺旋状の流路9のピッチは5〜10mmである。この図では、流路9の断面が二つのみ示されているが、実際は内層材3の一方の端部から他方の端部まで多数の断面が形成されている。また、流路は全て繋がっていて、一本の流路9である。また、蓋4の一方には、流路9に通じる流体導入口10が設けてある。また、水素貯蔵容器1の外部には流体供給手段が設けられ、流体導入口10に通じている。
【0026】
上記のように構成された水素貯蔵容器1の内部に水素(純水素)を貯蔵すると、水素が内層材3を透過して内層材3と外層材2との間に水素が滞留する。
上記水素貯蔵容器1においては、内層材3の外周面に流路9を設けたことにより、外層材2と内層材3との間に滞留した水素が、内層材3の外周面に設けられた流路9へ流れ込み、その後この流路9を通って水素貯蔵容器1の外部に導かれる。このように、内層材3と外層材2との間に滞留した水素が水素貯蔵容器1の外部へ排除される。
これにより、内層材3と外層材2との間に滞留した水素によって発生する水素脆化や剥離の発生を防止できる。また、水素脆化や剥離に伴う水素貯蔵容器1の破壊を抑えることができる。
【0027】
また、流路9を螺旋状としたことにより、水素貯蔵容器1全体に渡って流路9が行き渡る。また、流路9が全体に行き渡ることで、内層材3と外層材2との間に滞留した水素が全体に渡って排除される。
【0028】
その際、螺旋状に延びた流路9の間に存在する水素は、内層材3と外層材2との間に厳密には隙間があるために、その隙間を通って水素が流路9に入り込み、流路9を通って水素が外部へ排除される。
【0029】
また、流路9を螺旋状としたことで、流路9が軸方向に対して略垂直に形成されるので、応力の大きな周方向に対して応力集中を起こし難い形状となる。応力集中を起こし難いために、より大きな内圧に対して耐えることができるので、さらに圧縮させて水素の貯蔵量を増加させることができる。また、内圧による破損を防ぐことができる。
【0030】
また、水素貯蔵容器1の外部に流体供給手段を設けたことにより、内層材3の外周面に設けた流路9に圧縮空気を流すことで、内層材3と外層材2との間に滞留した水素が強制的に排除される。
また、水素貯蔵容器1の内部が、化学反応や外部からの加熱によって高温となり、内層材3を透過する水素の量が増加して、滞留する水素量が多くなった場合には、流路9に圧縮空気を流すことによって多量の水素が確実に除去される。
【0031】
流路9は、滞留した水素を流すための最小限の深さの溝で良く、逆に、流路9を設けることによって応力集中を引き起こさないように最小限の深さとしている。
【0032】
なお、本実施形態において、封入した水素は純水素としたが、水素を含んだ混合気体としても構わない。
また、本実施形態においては、流体供給手段によって流路9に流した流体を圧縮空気としたが、流路9に流した流体と、内層材を透過した気体、内層材、あるいは外層材とが化学反応を起こさないように圧縮空気を不活性ガスとしても良い。
また、本実施形態においては、流路9を螺旋状としたが、応力集中を考慮しなければ水素貯蔵容器1の中心軸に平行な直線状としても良い。その際、周方向に対して等間隔に流路9を配置して水素貯蔵容器1の全体に渡って流路を設けるようにすることが望ましい。
また、本実施形態においては、流路9を一本の螺旋状の溝としたが、複数の溝によって形成しても良い。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る水素貯蔵容器によれば、内層材と外層材との間に流路を設けたことにより、内層材と外層材との間に滞留した水素が流路を通って水素貯蔵容器の外部へ排除されるので、内層材と外層材との間に発生する水素脆化や剥離を防止できる。また、水素脆化や剥離に伴う水素貯蔵容器の破壊を抑えることができる。
【0034】
また、本発明に係る水素貯蔵容器によれば、内層材と外層材との間に設けた流路を螺旋状としたことにより、水素貯蔵容器全体に渡って流路が行き渡るので、内層材と外層材との間に滞留した水素を水素貯蔵容器の全体に渡って排除できる。また、応力集中が起こり難いので、水素貯蔵容器がより大きな内圧から耐えることができ、さらに水素を圧縮させてより多くの水素を貯蔵させることができる。また、内圧による破損を防ぐことができる。
【0035】
また、本発明に係る水素貯蔵容器によれば、流路に流体を流す流体供給手段を設けることで、流路に流体を流して内層材と外層材との間に滞留した水素を強制的に排除するので、滞留する水素の量が多くても水素を効果的に排除できる。
また、容器内が高温となって水素の透過量が増加し、内層材と外層材との間に滞留する水素量が多くなっても水素を有効に排除できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における水素貯蔵容器の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における水素貯蔵容器の断面図の拡大図である。
【符号の説明】
1 水素貯蔵容器
2 外層材
3 内層材
9 流路
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素を含む気体を貯蔵する水素貯蔵容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素ステーションでの水素の貯蔵や燃料電池での水素の貯蔵には、水素貯蔵容器が使用される。
水素貯蔵容器には、外層材と内層材の二層構造により形成されたものと、外層材の内面にライニングを施したものとがある。
前者の、外層材と内層材の二層構造により形成された水素貯蔵容器においては、内層材と外層材と両端に設けられた蓋とによって構成されている。内層材は、外層材の内周面を覆うように配置されている。内層材と両端に設けられた蓋とによって閉じた空間が形成され、この空間に水素が貯蔵されている。
【0003】
外層材は円筒状とされており、炭素鋼や低合金鋼によって形成されている。外層材の軸方向における両端にはねじ部が形成されている。外層材は、内圧に耐え得るように、内層材よりもはるかに厚く製造されている。
内層材は円筒状であり、オーステナイト系ステンレス鋼によって形成されている。
【0004】
蓋は円柱状とされており、側部にはねじ部が形成されている。外層材に形成されたねじ部と蓋に形成されたねじ部とが螺合することによって、外層材に対して蓋が固定されている。蓋と内層材とはOリングやCリング等のシール材によって気密に取り付けられている。また、一方の蓋には水素ガス導入口が設けられている。
【0005】
上記のように構成された水素貯蔵容器においては、内部に圧縮された水素が封入されて圧力容器として機能する。
【0006】
外層材は、強度を有しかつ廉価であるということから炭素鋼や低合金鋼によって形成されている。しかし、炭素鋼や低合金鋼は水素と接触すると水素脆化や侵食が起こる。
水素脆化とは、鉄鋼材料の結晶の間隙に水素原子が侵入し、結晶内部で水素原子が結合して水素分子となり水素の体積が増加するので結晶内部で破壊が起こることである。
侵食とは、炭素鋼内部に侵入した水素原子と炭素鋼内の炭素とが次のような化学反応を起こして炭素鋼が脱炭されて、強度、靭性、延性が低下することである。
【0007】
Fe3C+4H→ CH4+3Fe
【0008】
そのため、外層材と水素とが接触しないように、内層材が外層材の内周面を覆うように設けられている。内層材のオーステナイト系ステンレス鋼は耐水素性が高いのでこの内層材で水素の漏れを防ぎ外層材まで到達しないようになっている。
【0009】
一方、水素雰囲気で使用される圧力容器に関しては、内層材であるステンレス鋼内のNi、Crの含有量を調節して耐食、耐剥離割れ性に優れた圧力容器を提供することが報告されている(例えば特許文献1参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特公平6−30831号公報 (第3−7頁、第1図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の水素貯蔵容器においては、内部の水素が内層材を透過して内層材と外層材との間に滞留してしまうために、水素と外層材とが接触して水素脆化や剥離を引き起こすといった問題があった。
剥離とは、ステンレス鋼によって形成された内層材と炭素鋼によって形成された外層材とで構成された二層構造の容器で起こる現象である。水素は、内層材を透過し外層材内部に入り込んで拡散する。その後、外層材側から内層材側への拡散においては、内層材内部の拡散速度が外層材内部の拡散速度に比べて著しく低いので、水素が外層材と内層材との間に滞留し、ついには剥離割れを引き起こす恐れがある。
【0012】
また、水素脆化や剥離が生じることによって水素貯蔵容器に水素を封入した際の圧力により水素貯蔵容器が破壊し、圧力容器として機能できなくなる恐れがあった。
【0013】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、内層材と外層材との間に水素が滞留することによって、内層材と外層材との間に発生する水素脆化や剥離を防止することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための手段として、次のような構成を採用する。
すなわち本発明に係る請求項1記載の水素貯蔵容器は、水素を含む気体を内部に貯蔵して該気体からの内圧に耐える外層材と、該外層材の内周面を覆うように設けられ、耐水素性を有する材料によって形成された内層材とを備える水素貯蔵容器において、前記内層材と前記外層材との間には、外部へと導かれる流路が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、内層材と外層材との間に流路を設けたことにより、内層材と外層材との間に滞留した水素が流路へ流れ込み、その後この流路を通って水素貯蔵容器の外部へ排除される。
ここで、「水素を含む気体」とは、主として水素を含む場合のみならず、純水素も包含するものである。
【0016】
請求項2記載の水素貯蔵容器は、請求項1記載の水素貯蔵容器において、前記流路は、螺旋状であることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、流路を螺旋状としたことにより、水素貯蔵容器全体に渡って流路が形成されることになる。また、このように流路が全体に行き渡るので、内層材と外層材との間に滞留した水素が水素貯蔵容器全体に渡って排除される。
また、流路を螺旋状としたことにより、流路が軸方向に対して略垂直に形成されるので、内圧に対して応力集中が生じ難い。
【0018】
請求項3に記載の水素貯蔵容器は、請求項1または2記載の水素貯蔵容器において、流体が外部へ流れるように前記流路に流体を供給する流体供給手段を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、流路に流体を流すことで、滞留する水素が強制的に排除される。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に係る水素貯蔵容器の第1の実施形態を、図1ないし図2に示して説明する。
水素貯蔵容器1は、図1に示すように、外層材2と、外層材2の内周面を覆うように配置された内層材3と、外層材2及び内層材3の軸方向における両端部を塞ぐように配置された蓋4とを備えている。
【0021】
外層材2は円筒状とされており、水素貯蔵容器1の外周面を取り囲んでいる。また、外層材2は、強度を有しかつ廉価であるということから炭素鋼や低合金鋼により形成されており、90MPaの内圧に耐え得るように設計されている。外層材の軸方向における両端部付近には、ねじ部5Aが形成されている。
【0022】
内層材3は、外層材2の内周面を覆うように配置されており、円筒状とされている。また、オーステナイト系ステンレス鋼によって形成されていて、単価が高いために外層材2と比べてはるかに薄肉に形成されている。
【0023】
蓋4は、円柱状であり水素貯蔵容器1の軸方向両端を塞いでいる。一方の蓋4には水素を封入するための水素導入口6が設けられている。蓋4の側部にはねじ部5Bが形成されている。
外層材2、内層材3及び蓋4によって内部空間7が閉じられている。内部空間7には水素が封入されている。内層材3は、外層材2の内周部に配置されていて、外層材2と蓋4とは、それぞれのねじ部5Aとねじ部5Bとの螺合によって締結されている。
内層材3の軸方向の長さは、一方のねじ部3による螺合部分の内側端部から、もう一方のねじ部3による螺合部分の内側端部までである。内層材3と蓋4とが重なっている部分にはOリング8が設けられていて、内部空間7の気密性が保たれている。
【0024】
本実施形態における水素貯蔵容器1の各部の寸法は、軸長が3mとされており、外層材2の外径が500mmで内層材の内径が340mmとされている。内層材3の厚みは5〜10mmとされている。
【0025】
内層材3の外周部には流路9が設けられている。図2(a)のA部分の拡大図を図2(b)に示す。流路9は、外層材2と内層材3との間に形成されており、内層材3の外周面に設けられている。流路9は、軸方向に対して螺旋状に延びていて、水素貯蔵容器1の全体に渡って流路9が配置されている。螺旋状の流路9のピッチは5〜10mmである。この図では、流路9の断面が二つのみ示されているが、実際は内層材3の一方の端部から他方の端部まで多数の断面が形成されている。また、流路は全て繋がっていて、一本の流路9である。また、蓋4の一方には、流路9に通じる流体導入口10が設けてある。また、水素貯蔵容器1の外部には流体供給手段が設けられ、流体導入口10に通じている。
【0026】
上記のように構成された水素貯蔵容器1の内部に水素(純水素)を貯蔵すると、水素が内層材3を透過して内層材3と外層材2との間に水素が滞留する。
上記水素貯蔵容器1においては、内層材3の外周面に流路9を設けたことにより、外層材2と内層材3との間に滞留した水素が、内層材3の外周面に設けられた流路9へ流れ込み、その後この流路9を通って水素貯蔵容器1の外部に導かれる。このように、内層材3と外層材2との間に滞留した水素が水素貯蔵容器1の外部へ排除される。
これにより、内層材3と外層材2との間に滞留した水素によって発生する水素脆化や剥離の発生を防止できる。また、水素脆化や剥離に伴う水素貯蔵容器1の破壊を抑えることができる。
【0027】
また、流路9を螺旋状としたことにより、水素貯蔵容器1全体に渡って流路9が行き渡る。また、流路9が全体に行き渡ることで、内層材3と外層材2との間に滞留した水素が全体に渡って排除される。
【0028】
その際、螺旋状に延びた流路9の間に存在する水素は、内層材3と外層材2との間に厳密には隙間があるために、その隙間を通って水素が流路9に入り込み、流路9を通って水素が外部へ排除される。
【0029】
また、流路9を螺旋状としたことで、流路9が軸方向に対して略垂直に形成されるので、応力の大きな周方向に対して応力集中を起こし難い形状となる。応力集中を起こし難いために、より大きな内圧に対して耐えることができるので、さらに圧縮させて水素の貯蔵量を増加させることができる。また、内圧による破損を防ぐことができる。
【0030】
また、水素貯蔵容器1の外部に流体供給手段を設けたことにより、内層材3の外周面に設けた流路9に圧縮空気を流すことで、内層材3と外層材2との間に滞留した水素が強制的に排除される。
また、水素貯蔵容器1の内部が、化学反応や外部からの加熱によって高温となり、内層材3を透過する水素の量が増加して、滞留する水素量が多くなった場合には、流路9に圧縮空気を流すことによって多量の水素が確実に除去される。
【0031】
流路9は、滞留した水素を流すための最小限の深さの溝で良く、逆に、流路9を設けることによって応力集中を引き起こさないように最小限の深さとしている。
【0032】
なお、本実施形態において、封入した水素は純水素としたが、水素を含んだ混合気体としても構わない。
また、本実施形態においては、流体供給手段によって流路9に流した流体を圧縮空気としたが、流路9に流した流体と、内層材を透過した気体、内層材、あるいは外層材とが化学反応を起こさないように圧縮空気を不活性ガスとしても良い。
また、本実施形態においては、流路9を螺旋状としたが、応力集中を考慮しなければ水素貯蔵容器1の中心軸に平行な直線状としても良い。その際、周方向に対して等間隔に流路9を配置して水素貯蔵容器1の全体に渡って流路を設けるようにすることが望ましい。
また、本実施形態においては、流路9を一本の螺旋状の溝としたが、複数の溝によって形成しても良い。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る水素貯蔵容器によれば、内層材と外層材との間に流路を設けたことにより、内層材と外層材との間に滞留した水素が流路を通って水素貯蔵容器の外部へ排除されるので、内層材と外層材との間に発生する水素脆化や剥離を防止できる。また、水素脆化や剥離に伴う水素貯蔵容器の破壊を抑えることができる。
【0034】
また、本発明に係る水素貯蔵容器によれば、内層材と外層材との間に設けた流路を螺旋状としたことにより、水素貯蔵容器全体に渡って流路が行き渡るので、内層材と外層材との間に滞留した水素を水素貯蔵容器の全体に渡って排除できる。また、応力集中が起こり難いので、水素貯蔵容器がより大きな内圧から耐えることができ、さらに水素を圧縮させてより多くの水素を貯蔵させることができる。また、内圧による破損を防ぐことができる。
【0035】
また、本発明に係る水素貯蔵容器によれば、流路に流体を流す流体供給手段を設けることで、流路に流体を流して内層材と外層材との間に滞留した水素を強制的に排除するので、滞留する水素の量が多くても水素を効果的に排除できる。
また、容器内が高温となって水素の透過量が増加し、内層材と外層材との間に滞留する水素量が多くなっても水素を有効に排除できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における水素貯蔵容器の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における水素貯蔵容器の断面図の拡大図である。
【符号の説明】
1 水素貯蔵容器
2 外層材
3 内層材
9 流路
Claims (3)
- 水素を含む気体を内部に貯蔵して該気体からの内圧に耐える外層材と、該外層材の内周面を覆うように設けられ、耐水素性を有する材料によって形成された内層材とを備える水素貯蔵容器において、
前記内層材と前記外層材との間には、外部へと導かれる流路が設けられていることを特徴とする水素貯蔵容器。 - 前記流路は、螺旋状であることを特徴とする請求項1記載の水素貯蔵容器。
- 流体が外部へ流れるように前記流路に流体を供給する流体供給手段を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の水素貯蔵容器。
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