JP2004176731A - 配管保温制御方法およびそのための装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃焼設備の環境変動に追随できる効果的な低温腐食の回避方法(防食方法)、およびこうした方法を実施するために有用な装置を提供する。
【解決手段】燃焼設備からの排ガスが流過する金属配管内の低温腐食を防止するための配管保温制御方法であって、前記金属配管と同じ材質で構成された複数の測定用金属管を絶縁物を介して連結すると共に、連結された測定用金属管の両端を絶縁物で仕切っておき、前記測定用金属管内を排ガスが流過したときの測定用金属管相互のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスの値に基づいて前記金属配管の温度制御を行う。
【選択図】 図2
【解決手段】燃焼設備からの排ガスが流過する金属配管内の低温腐食を防止するための配管保温制御方法であって、前記金属配管と同じ材質で構成された複数の測定用金属管を絶縁物を介して連結すると共に、連結された測定用金属管の両端を絶縁物で仕切っておき、前記測定用金属管内を排ガスが流過したときの測定用金属管相互のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスの値に基づいて前記金属配管の温度制御を行う。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼設備からの排ガスが流過する金属配管内における低温腐食を防止するための配管保温制御方法、およびこうした方法を実施するための有用な装置構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
重油や石炭を燃料とするボイラーやごみ焼却炉等の燃焼設備では、200〜300℃程度以下となる低温部材で酸凝縮を原因とする腐食(酸露点腐食)によって穴あき等の損傷が起こることが知られている。このような酸露点腐食を回避する手段としては、燃焼設備からの排ガスの露点を測定し、この排ガスが流過する配管等の低温部をヒータで加温し、低温部温度を露点以上に保持することが一般的に行われている(例えば、非特許文献1参照)。また排ガスの露点を正確に測定する技術として、常に新しい固形付着物下での露点を測定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の様な酸露点腐食が発生し易い部位に用いる耐食性材料も様々開発されている。こうした耐食性材料として、例えばコルテン鋼(商品名:U.S.Steel社製)に代表される低合金鋼(耐候性鋼)や添加元素を最適化したステンレス鋼(例えば、特許文献2参照)等が既に開発されている。また通常の炭素鋼の表面に高耐食金属(自溶性合金)を被覆して耐食性を向上させた耐硫酸露点腐食性伝熱管も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
一方、燃焼炉や排ガス配管等において化学物質を添加することにより低温腐食因子を低減する技術も提案されている。また重油ボイラーで添加される化学物質(防食剤)としては、アンモニアやマグネシウム化合物等が知られている(前記非特許文献1)。また都市ごみ焼却炉では、遊離硫酸、アンモニウム硫酸塩化物および硫酸マグネシウムなどの防食添加剤を使用する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
【非特許文献1】
経営開発センター企画編集,各種腐食事例と最新防食設計施工技術総合資料集,p.408,p.411
【特許文献1】
特開平10−148604号公報 特許請求の範囲
【特許文献2】
特開平11−106872号公報 特許請求の範囲
【特許文献3】
特開平9−31576号公報 特許請求の範囲
【特許文献4】
特開平9−241664号公報 特許請求の範囲
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記各種技術のうち露点を測定する方法では、露点に影響を与えるSやCl等の燃料中の成分や燃焼条件が一定にはならないので、露点は運転時には経時的に変動することになる。特に、ごみ焼却炉では燃料となるごみは不均質であり、SやCl含有量の時間変動はかなり大きいので、露点の変動も相当大きくなる。従って、或る一定の測定時間内で得られた露点を基にして配管の加温温度を決定しても、実際の露点がそれを上回り、腐食損傷に至ることが多いのが実状である。
【0007】
また、或る一定の測定時間内で得られた露点より高い温度に配管を加温すれば酸露点腐食は防止できるが、塩化亜鉛などの低融点化合物が配管に付着していると、それが溶融して溶融塩腐食が発生し配管の損傷に至る場合もある。こうしたことから、露点を測定して配管温度をそれ以上に保持する技術では、低温部の腐食損傷をある程度低減できるが、安全上満足できる対策にはならない。
【0008】
低合金鋼やステンレス鋼等の耐食材料の使用は、排ガスや付着物の条件次第で効果が得られる場合と得られない場合がある。燃焼設備では上述のように燃料や燃焼条件の変動による環境変化があるため、耐食性材料の使用だけで完全に低温腐食を防止することは困難である。また或る配管系統の一部に異なる材質の部材を用いることは、異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)の発生も懸念される。更に、高耐食性の金属被覆では、ピンホールや割れなどの欠陥部で下地炭素鋼の腐食を著しく加速することがある。特に、燃焼設備では、起動および停止による熱衝撃により金属被覆の割れや剥離が生じることがあるので、金属被覆の適用は敬遠されているのが実状である。
【0009】
一方、マグネシウムやアンモニウム化合物などの防食添加剤は、添加量が不足すると防食効果が得られず、多すぎるとかえって腐食を促進するという事態を招くことがある。この防食添加剤の適正量は燃料中のSやClに依存することになるが、これらの含有量は上述のように変動する。こうしたことから、燃焼設備では防食添加剤の適正添加量が変動するので、これらによる効果的な防食は期待できない。
【0010】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、燃焼設備の環境変動に追随できる効果的な低温腐食の回避方法(防食方法)、およびこうした方法を実施するために有用な装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決できる技術の開発を目指して様々な角度から検討した。その結果、配管内の温度変化による腐食速度は、絶縁物で隔離された2つの領域管のインピーダンスと相関関係があり、このインピーダンスの変動を把握することによって、配管内の腐食速度を把握することができることが判明し、これらのデータに基づけば配管温度がより綿密に制御できて低温腐食を効果的に防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明に係る配管保温制御方法とは、燃焼設備からの排ガスが流過する金属配管内の低温腐食を防止するための配管保温制御方法であって、前記金属配管と同じ材質で構成された複数の測定用金属管を絶縁物を介して連結すると共に、連結された測定用金属管の両端側を絶縁物で仕切っておき、前記測定用金属管内を排ガスが流過したときの測定用金属管相互のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスの値に基づいて前記金属配管の温度制御を行う点に要旨を有するものである。
【0013】
この配管保温制御方法においては、排ガスが接触する金属管表面(内面)の酸凝縮状態を正確に検知するという観点から、絶縁物を介して隣接する測定用金属管相互のインピーダンスを測定することが好ましい。また測定用金属管間の幅も小さい方が好ましい。
【0014】
上記方法における温度制御の具体的な手順としては、インピーダンスと腐食速度の関係に基づいて、腐食速度が予め定めた値以下となるインピーダンスの限界値を予め求めておき、インピーダンスが限界値に達したときの測定用金属管の温度を測定し、インピーダンスが限界値を下回ったときに、測定用金属管の加熱を開始すると共に、金属配管の温度を測定し、測定された金属配管の温度が測定用金属管の温度を下回るときに、金属配管の加熱を開始することが挙げられる。
【0015】
またインピーダンスが限界値を上回ったときに、測定用金属管の加熱を終了すると共に、金属配管の温度を測定し、金属配管の温度が測定用金属管の温度を上回るときに、金属配管の加熱を終了するようにすれば良い。
【0016】
一方、上記目的を達成し得た本発明の装置とは、燃焼設備からの排ガスが流過する金属配管内の低温腐食を防止するための配管保温制御装置であって、前記金属配管と同じ材質で構成された複数の測定用金属管が絶縁物を介して連結され、且つ連結された測定用金属管の両端側を絶縁物で仕切られた測定用金属管群と、前記測定用金属管内を排ガスが流過したときの測定用金属管相互のインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定手段と、前記測定用金属管群を加熱するための加熱手段、および測定用金属管群の温度を測定するための温度計と、前記金属配管を加熱する加熱手段、および金属配管の温度を測定するための温度計とを備え、インピーダンスと腐食速度の関係に基づいて、腐食速度が予め定めた値以下となるインピーダンスの限界値を予め求めておき、インピーダンスが限界値に達したときの測定用金属管の温度を測定し、インピーダンスが限界値を下回ったときに、測定用金属管の加熱を開始すると共に、金属配管の温度を測定し、測定された金属配管の温度が測定用金属管の温度を下回るときに、金属配管の加熱を開始する様に構成されたことを特徴とする。
【0017】
この装置においては、インピーダンスが限界値を上回ったときに、測定用金属管の加熱を終了すると共に、金属配管の温度を測定し、金属配管の温度が測定用金属管の温度を上回るときに、金属配管の加熱を終了するように構成されている。
【0018】
また金属配管の長手方向に複数の独立した加熱手段と温度計が配置され、各温度計によって測定される金属配管温度と前記測定用金属管の温度とを順次比較し、加熱手段が配置された各配管部分の温度を制御する様に構成することもでき、前記前記測定用金属管群は、金属配管に直列または並列して設置して構成することもできる。
【0019】
【発明の実施の形態および実施例】
本発明が完成され経緯に沿って本発明の構成および作用効果について、順次説明する。本発明者らは、次のような予備試験を行った。
【0020】
予備試験
(a)試験方法
予備試験はごみ焼却施設(流動床式焼却炉、処理能力:40トン/日)で実施した。図1はごみ焼却施設における試験システムの概略説明図である。燃焼炉1からの排ガスは空気予熱器2およびバグフィルター3を介して煙突4から排出されるのであるが、図1に示した構成では、最も酸露点腐食が発生し易い空気予熱器出側の排ガス配管5に分岐させて、管状電極、ヒータ(加熱手段)、インピーダンス測定装置(インピーダンス測定手段)、温度計としての熱電気対を備えた温度制御装置および循環ファンを含む試験システムを設けたものである。
【0021】
管状電極部分の詳細を図2に示すが、2個のSS400製炭素鋼管状電極A,B(外径:34mm、厚さ:4.5mm、長さ:50mm)を絶縁リング(アルミナ製、厚さ:0.2mm)を挟んで、フランジで連結したものである。また管状電極A,Bの両端も前記絶縁リング(アルミナ製、厚さ:0.2mm)で仕切られており、この両端には、管状電極A,Bと同じ外径:34mm、厚さ:4.5mmのSS400製鋼管(分岐管)が接続されている。また前記排ガス配管5には、管状電極A,Bと同じ外径:34mm、厚さ:4.5mmのSS400製鋼管を用いた。尚、図2に示した構成では、管状電極A,Bは2つ設けたものを示したが、管状電極の数は2つに限らず、それ以上の数の管状電極を連結して電極群を構成しても良い。但し、管状電極内に排ガスを流過させたときのインピーダンスは、排ガスが接触する金属管表面(内面)の酸凝縮状態を正確に検知するという観点から、隣接する管状電極相互(例えば前記図2に示した管状電極A,B相互)で測定することが好ましい。
【0022】
前記管状電極A,Bの外周面には、加温用のリボンヒータおよび保温材(例えば、ガラスウール)を巻いてある。インピーダンス測定装置は、ポテンショスタットおよび周波数応答解析器(図示せず)から構成される。循環ファンは燃焼排ガスおよび焼却飛灰を循環させて、本管(配管)へ戻すためのものである。
【0023】
このような試験システムを、図1に示す位置の排ガス配管5に1m間隔で6個取り付けて、予備試験を行った。まず、市販の露点計(白金電極製)を用いて排ガスの露点の時間変化を1時間測定したところ、露点は128℃〜135℃の間で変動していた。そこで、6個の試験システムに含まれる管状電極A,Bの金属温度を下記表1に示すように120℃から145℃の間で6段階に設定した。
【0024】
金属温度が安定してから、管状電極AとBの間の電気化学インピーダンスを3時間毎に測定した。インピーダンスの測定条件は、周波数範囲を0.01Hzから10000Hzとし、印加する交流電圧の振幅(負側ピークから正側ピークまでの電圧差)を10mVとした。試験期間は腐食量に応じて30日または363日とした。試験終了後に管状電極AおよびBの長さ方向の中心部において中心軸に垂直方向に切断し、その断面の光学顕微鏡観察により減肉量の最大値を測定した。
【0025】
(b)試験結果
得られた電気化学インピーダンスの一例として、管状電極A,Bの温度を130℃に設定した場合(下記表1のNo.3)の試験開始から24時間後の測定結果を図3に示す。尚、図3中の数字は測定周波数(Hz)である。電気化学インピーダンスは、図3に示すように複素平面にプロットすると1つの半円状の軌跡となった。他の測定結果でもこれと同様に1つの半円状のインピーダンス軌跡が認められたが、半円の大きさは異なる結果であった。多くの学術文献(例えば、水流徹:電気化学,vol.62, No.4, p.309, 1994年)で解説されているように、このようなインピーダンス軌跡は2つの電気抵抗(R1,R2)と電気容量(C)を用いた電気回路(図4)と等価であり、高周波数側および低周波数側で実軸と交わる点がそれぞれR1およびR2に相当するものとなる。高周波数側のインピーダンスR1は管状電極内面に存在する電解質溶液の電気抵抗に対応することが知られている。
【0026】
予備試験結果を表1に一括して示す。尚、R2,aveは試験期間内のR2の平均値である。R2,aveの逆数と腐食速度との関係は図5に示すようになり、低周波数側のインピーダンスであるR2が電極の腐食速度に対応していることが明らかになった。但し、電極温度145℃(No.6)の腐食減肉はほとんど認められなかったので、腐食速度とR2,aveの逆数との相関曲線を求めるときにはこれを除外した。
【0027】
【表1】
【0028】
電極温度を140℃に設定したNo.5の試験開始より10日間のR1およびR2の経時変化を図6(a)、(b)に夫々示す。燃焼排ガスの露点は成分に依存し、SOxやH2O濃度が高くなると露点は上昇することが知られている。排ガス成分の変動により露点が設定した電極温度を上回ると、電極表面で硫酸凝縮が起こる。その結果、電極表面の電解質溶液抵抗R1が低下する。すなわち硫酸が凝縮すると、R2が小さくなり電極の腐食反応速度が大きくなって腐食が進んでいることが分かる。
【0029】
低温腐食の回避方法
(a)腐食のモニタリング方法
図5に示したように、インピーダンス測定で得られるR2は腐食速度に対応することから、R2をモニターすることにより配管の腐食状況を知ることができる。R2は理論的には周波数0におけるインピーダンス値であるが、周波数が小さくなると測定に要する時間が長くなる。排ガス成分の時間変動によってインピーダンス測定中に露点が変化すると、腐食状況が変化して正確な腐食速度の測定ができない場合がある。よって、測定時間の観点からはR2の測定周波数は可能な限り高い方がよい。予備試験結果(図3)からすれば、R2の測定周波数は0.1〜0.01Hzが好適であり、周波数依存性の変化を考慮すると0.01Hz程度が推奨される。
【0030】
図7には予備試験におけるNo.5のR1とR2との相関関係を示す。R1とR2には強い相関性はないが、R1が低下するとR2も低下する傾向が概ね認められる。これは、ガス中のSOxやHClに起因する酸凝縮が起こった状態(R1が低くなった状態)で腐食は進行する(R2が小さくなる)ためと考えられる。従って、R1をモニターすることにより腐食発生の有無を監視することも可能である。
【0031】
(b)装置構成
図8は、本発明を実施するための装置構成例を示す概略説明図であり、図9は他の構成例を示す概略説明図である。図8に示した構成では、インピーダンス測定用の電極(管状電極)を前記予備試験(前記図1)と同様に、排ガス配管5に分岐管を設けて設置したものである。また図9に示した構成では、インピーダンス測定用の電極(管状電極)を排ガス配管5自体に設置したものである。排ガス配管5自体にインピーダンス測定用電極を設ける場合には、例えば図10に示すように絶縁リングを挟んで設置することができる。尚、排ガス配管には排ガスの予熱確保および急激な温度変化を防止するため、ガラスウールなどの保温材を巻くことが好ましい。
【0032】
排ガス温度は、空気予熱器付近などの上流域では高く、煙突付近の下流域では低いので、適切な温度に保持するために要する電力は部位によって異なる。よって、配管加温のためのヒータHn(n=1〜N)は、図8若しくは図9のようにいくつかに分割して設置することが好ましい。
【0033】
低温腐食が問題となる概ね200〜300℃以下の低温領域では、露点に支配的である排ガス中のSOx濃度は上流ほど高いので、排ガスの露点も上流ほど高い。よってインピーダンス測定用電極は上流側に設置した方が安全側の管理ができる。しかしながら、上述のように排ガス温度は上流域では高いので、上流域の配管自体にインピーダンス測定用電極を設置した場合には電極部が露点を下回らず、露点腐食が発生していない配管温度として認識される基準温度(T0)が高くなり過ぎることがある。こうした事態は、露点腐食は発生しないが、配管に付着した低融点化合物の溶融による腐食が発生することがあるので、好ましくはない。また、下流域の低温部での配管加熱に要する電力が非常に多くなる(オーバースペック)ことから、省エネルギーの観点からも好ましくない。よって配管自体にインピーダンス測定用電極を設置する場合には、ある程度下流であることが推奨される。図8、9に示した構成では、インピーダンス測定からのデータを温度制御装置Xに送り、このデータをさらに温度制御装置Y送り、この温度制御装置Yからのデータに基づいて、ヒータHn(n=1〜N)の温度を制御する構成を示したものである。
【0034】
本発明では、インピーダンス測定用電極(前記管状電極A,B)の設置を一箇所に限定するものではなく、複数設置することも可能である。例えば排ガス配管の温度制御を適当な部位(例えば、燃焼飛灰濃度が変化する集塵機前後など)で上流側と下流側に2分割して、それぞれにインピーダンス測定装置を設けて互いに独立して温度制御を行うこともできる。
【0035】
(c)制御方法
図11は腐食モニターおよび配管温度管理状況を示す概念図である。上述のように、経時的に測定されるR1あるいはR2が腐食発生の有無あるいは腐食速度に対応しているので、これらの値が限界値R**を下回った場合に低温腐食が発生していると判断される。このとき、加熱ヒータのスイッチを入れてから実際に配管温度が上昇するまでにある程度時間がかかることを考慮して、限界値としてはR**よりやや高いR*を取ることが推奨される。R**の具体的な値としては、例えばR1であれば前記図7からして0.1Ω・m2程度、R2であれば腐食速度0.1mm/yに相当する0.25Ω・m2程度が推奨される。R*は適用する配管における加温時の昇温特性を考慮して決定すべきである。
【0036】
腐食モニターと温度管理手順のフローチャートを図12に示す。まずステップS1では、R1あるいはR2を測定し、ステップS2においてR1あるいはR2の値が前記限界値R*を下回るかどうかを判断する。そして、R1あるいはR2が限界値R*を下回った場合には、電極部分の加熱ヒータH0をONにして加熱し、電極温度を上昇させる(ステップS3)。またR1あるいはR2が限界値R*を上回った場合には、ステップS4に移って電極部分の加熱ヒータH0をOFFの状態のままにしておく(或は、加熱ヒータH0をOFFにして加熱を終了する)。
【0037】
次いで、熱電対T0〜TNの温度T(T0)〜T(TN)を測定し(ステップS5)、この温度と管状電極の温度T(T0)[基準温度]と比較する。焼却設備の配管は部位によって温度が異なるので、低温腐食は温度が基準温度T(T0)よりも高い部位では起こっておらず、T(T0)よりも低い部位で起こっている。よって、T(Tn)<T(T0)である部分のヒータHnをONにして加温する(ステップS7)。T(Tn)<T(T0)である部分がない場合には、ステップS8に移りヒータHnをOFFnの状態にしておく(或は、加熱ヒータH0をOFFにして加熱を終了する)。
【0038】
上記ステップS6〜7を繰り返すことによって(ステップS9)、配管温度を露点以上に保持して低温腐食を回避することができる。また、所定の回数の繰り返しを行った後は、ステップS1に戻る。尚、図12の繰り返し数kは任意の正数を選ぶことができる。また露点変動に対する追随性の観点からすれば、R1あるいはR2の測定およびTnの測定間隔はより小さい方が良い。
【0039】
ごみ焼却施設での腐食試験
予備試験を行ったごみ焼却施設において腐食試験を実施し、各種の防食対策の効果の確認を行った。下記表2に示す防食対策をNo.7からNo.11まで逐次実施し、超音波探傷法による試験前後の肉厚測定より排ガス配管の腐食減肉量を求めた。
【0040】
肉厚測定を行った排ガス配管は、外径:1100〜1300mm、厚さ:4.5〜6.0mmの炭素鋼(SS400)である。試験時間は6ケ月間(180±2日)とし、配管の腐食減肉量は、図13の▲印で示すように0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12時の位置で測定した。但し、防食対策を実施しなかったNo.7については腐食速度が大きいので、試験時間は1ケ月間とし、6ケ月間の腐食減肉量に換算した。No.8〜No.11防食対策の詳細は以下に示す通りである。
【0041】
(No.8)
No.7の防食対策なしでの腐食試験後に、露点を経時的に測定(1時間)したところ、露点は最高132℃であった。排ガス配管全域に加温のためのリボンヒータと保温のためのガラスウールシートを巻いた。リボンヒータは配管の長手方向に5m間隔で分割して、それぞれ独自に温度制御を行い、配管温度を135℃に保持した。
【0042】
(No.9)
減肉測定部の配管部材のみをフランジを介して耐露点腐食性ステンレス鋼製の配管に変更した。フランジ部には炭素鋼配管とのガルバニック腐食発生を防止するために、両者が電気的に短絡しないようにアルミナ性絶縁リングを挟んだ。用いたステンレス鋼の化学成分(重量%)は、C:0.08%,Si:0.45%,Mn:0.80%,P:0.03%,S:0.002%,O:0.002%,Ni:7.9%,Cr:18.1%,N:0.01%,Cu:0.32%,Mo:0.21%,残部Feである。なお、減肉測定部位以外(耐露点腐食性ステンレス鋼配管に変更しなかった部位)には、配管腐食を低減するためにガラスウール製保温材を巻いて保温した。
【0043】
(No.10)
No.9においてステンレス鋼に変更した減肉量測定部位を炭素鋼(SS400、新品)に交換して試験を行った。このNo.10は、本発明の配管温度管理方法である。空気予熱器出口から約5m下流の排ガス配管にインピーダンス測定用電極を含む分岐管を設けて試験を行った(前記図8参照)。インピーダンス測定用電極である炭素鋼管状電極などの試験設備は、予備試験で用いたのと全く同じものである。排ガス配管の本管には、全域に加温用リボンヒータおよび保温用ガラスウールシートを巻き付けた。リボンヒータは配管の長手方向に3〜5m間隔で20本に分割して、それぞれ独立に温度制御を行った。このときの温度管理手順は前記図12のフローチャートに示す通りであり、周波数10000HzにおけるインピーダンスをR1として、R1が0.20Ω・m2(=R*)を下回ったときのT0を基準としてリボンヒータ(H1〜H20)を制御した。尚、R1の測定間隔は10分毎とし、繰り返し数を決めるパラメータkは2として5分毎に図12の小ループを回した。
【0044】
(No.11)
No.11も本発明の配管温度管理方法である。煙突入口から約10m上流の排ガス配管本管にインピーダンス測定用電極を設けて試験を行った(前記図9および図10参照)。インピーダンス測定用電極である炭素鋼管状電極の長さは500mmとした。排ガス配管の本管の加温用リボンヒータは、No.10と同様であり、配管の長手方向に3〜5m間隔で20本に分割して、それぞれ独立に温度制御を行った。温度管理方法は,周波数0.01HzにおけるインピーダンスをR2として、R2が0.50Ω・m2(=R*)を下回ったときのT0を基準としてリボンヒータ(H1〜H20)を制御した。なお、R2の測定は10分毎に行い、繰り返し数を決めるパラメータkは1とした。
【0045】
試験結果
これらの腐食試験結果を、下記表2に併記する。防食対策を施さない場合には(No.7)、6ケ月間で2.4〜3.0mmもの腐食減肉が認められ、激しい腐食が起こっていることが分かる。またNo.8のように、従来の測定された露点以上に配管温度を維持することにより腐食減肉はある程度低減できるが、厚さ:4.5mmの配管では2年程度で貫通する腐食速度であり、防食効果としては不十分である。No.9に示した耐露点腐食性ステンレス鋼では、局所的に減肉量の大きい部位が認められた。
【0046】
これらに対して、本発明の温度管理を行った場合の配管減肉量は、用いた超音波探傷装置の測定限界である0.1mm以下とほとんど腐食が進行していないことが確認された。分岐管よりも本管でのインピーダンス測定を基準とした方が防食効果はやや高い結果であった。
【0047】
【表2】
【0048】
重油ボイラーでの腐食試験
図14に系統略図を示す重油ボイラー(容量:300MW)において腐食試験を実施して、各種の防食対策の効果検証を行った。下記表3に示す防食対策をNo.12からNo.16まで逐次実施し、上記ごみ焼却施設での腐食試験と同様の方法で排ガス配管の腐食減肉量を求めた。肉厚測定を行った排ガス配管は、外径:1300〜1500mm、厚さ:4.5〜6.0mmの炭素鋼(SS400)である。試験時間はすべて6ケ月間(180±2日)である。No.12〜No.16の防食対策の詳細は以下に示す通りである。
【0049】
(No.12)
全ての排ガス配管をガラスウール製のシートを巻いて保温した(ヒータによる加温なし)。
【0050】
(No.13)
ガラスウール製のシートを巻いて排ガス配管を保温し、さらに空気予熱器出口のマンホールより防食剤を注入した。注入した添加剤はアンモニア(NH3)であり、注入量は重油投入量の0.1vol%とした。
【0051】
(No.14)
減肉測定部の配管部材のみをフランジを介して耐露点腐食鋼(低合金鋼)製の配管に変更した。フランジ部には炭素鋼配管とのガルバニック腐食発生を防止するために、両者が電気的に短絡しないようにアルミナ性絶縁リングを挟んだ。用いた低合金鋼の化学成分(重量%)は、C:0.10%,Si:0.42%,Mn:0.35%,P:0.08%,S:0.02%,Ni:0.82%,Cr:0.81%,Cu:0.28%,残部Feである。なお、配管は全てガラスウール製のシートを巻いて保温した。
【0052】
(No.15)
No.14で材質変更を行った減肉量測定部位を炭素鋼(SS400、新品)に交換して試験を行った。このNo.15は本発明の配管温度管理方法である。煙突入口から約3m上流の排ガス配管に、No.10と同じインピーダンス測定用電極を含む分岐管を設けて試験を行った(前記図8参照)。排ガス配管の本管の加温用リボンヒータは、No.10と同様であり、配管の長手方向に3〜5m間隔で30本に分割して、それぞれ独立に温度制御を行った。このときの温度管理方法は図12のフローチャートに示す通りであり、周波数0.01HzにおけるインピーダンスをR2として、R2が0.50Ω・m2(=R*)を下回ったときの温度T0を基準としてリボンヒータ(H1〜H30)を制御した。尚、R2の測定は5分毎に行い、繰り返し数を決めるパラメータkは1とした。
【0053】
(No.16)
電気集塵機入口から約5m上流(A)および脱硫装置出口から約3m下流(B)の排ガス配管本管の2カ所にインピーダンス測定用電極配管および測定装置を設けて試験を行った(前記図9および図10参照)。このときのインピーダンス測定用電極である炭素鋼管状電極の長さは500mmとした。排ガス配管の本管の加温用リボンヒータは、No.10と同様であり、配管の長手方向に3〜5m間隔で20本に分割して、それぞれ独立に温度制御を行った。脱硫装置より上流側のヒータはインピーダンス測定装置(A)の、脱硫装置より下流側のヒータはインピーダンス測定装置(B)の測定結果を基準として温度制御を行った。温度管理方法は,周波数1000HzにおけるインピーダンスをR1として、R1が0.20Ω・m2(=R*)を下回ったときの温度T0を基準としてリボンヒータ(H1〜H30)を制御した。R1の測定は10分毎に行い、繰り返し数を決めるパラメータkは1とした。
【0054】
試験結果
腐食試験結果を、下記表3に一括して示す。本試験に用いた重油ボイラーでは、過去に防食対策を施さない低温部で6mm/y程度の腐食速度で腐食損傷が起こったことがある。No.12〜No.14の従来の防食対策を実施することにより、ある程度の腐食低減効果は得られることが分かる。しかしながら、これらの防食対策ではまだ不十分である。これらに対して、No.15およびNo.16のように本発明の温度管理を行った場合には、配管減肉量は非常に小さく、優れた防食効果が得られていることが分かる。No.15では、インピーダンス測定位置付近(煙突入口)での防食効果は高いが、インピーダンス測定位置から離れた部位(電気集塵機)では非常に微小な腐食が発生した。しかし、No.16のようにインピーダンス測定装置を2カ所に設置して温度管理を行うことにより、いずれの部位でも超音波探傷装置の測定限界である0.1mm未満と非常に高い防食効果が得られることが確認できた。
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、燃焼設備の環境変動に追随できる効果的な低温腐食の回避方法(防食方法)、およびこうした方法を実施するために有用な装置が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ごみ焼却施設における試験システムの概略説明図である。
【図2】管状電極部分の詳細を示す説明図である。
【図3】予備試験によって得られたインピーダンス軌跡の例を示すグラフである。
【図4】図3に示したインピーダンス軌跡を示す電気的等価回路である。
【図5】R2,aveの逆数と腐食速度との関係を示すグラフである。
【図6】電極温度を140℃に設定したNo.5の試験開始より10日間のR1およびR2の経時変化を示したグラフである。
【図7】予備試験におけるNo.5のR1とR2との相関関係を示すグラフである。
【図8】本発明を実施するための装置構成例を示す概略説明図である。
【図9】本発明を実施するための他の装置構成例を示す概略説明図である。
【図10】配管自体に管状電極を設置する場合における管状電極部分の詳細を示す説明図である。
【図11】腐食モニターおよび配管温度管理状況を示す概念図である。
【図12】腐食モニターと温度管理手順のフローチャートである。
【図13】腐食減肉量を測定した位置を示す断面図である。
【図14】腐食試験を行った重油ボイラーの系統略図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼設備からの排ガスが流過する金属配管内における低温腐食を防止するための配管保温制御方法、およびこうした方法を実施するための有用な装置構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
重油や石炭を燃料とするボイラーやごみ焼却炉等の燃焼設備では、200〜300℃程度以下となる低温部材で酸凝縮を原因とする腐食(酸露点腐食)によって穴あき等の損傷が起こることが知られている。このような酸露点腐食を回避する手段としては、燃焼設備からの排ガスの露点を測定し、この排ガスが流過する配管等の低温部をヒータで加温し、低温部温度を露点以上に保持することが一般的に行われている(例えば、非特許文献1参照)。また排ガスの露点を正確に測定する技術として、常に新しい固形付着物下での露点を測定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の様な酸露点腐食が発生し易い部位に用いる耐食性材料も様々開発されている。こうした耐食性材料として、例えばコルテン鋼(商品名:U.S.Steel社製)に代表される低合金鋼(耐候性鋼)や添加元素を最適化したステンレス鋼(例えば、特許文献2参照)等が既に開発されている。また通常の炭素鋼の表面に高耐食金属(自溶性合金)を被覆して耐食性を向上させた耐硫酸露点腐食性伝熱管も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
一方、燃焼炉や排ガス配管等において化学物質を添加することにより低温腐食因子を低減する技術も提案されている。また重油ボイラーで添加される化学物質(防食剤)としては、アンモニアやマグネシウム化合物等が知られている(前記非特許文献1)。また都市ごみ焼却炉では、遊離硫酸、アンモニウム硫酸塩化物および硫酸マグネシウムなどの防食添加剤を使用する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
【非特許文献1】
経営開発センター企画編集,各種腐食事例と最新防食設計施工技術総合資料集,p.408,p.411
【特許文献1】
特開平10−148604号公報 特許請求の範囲
【特許文献2】
特開平11−106872号公報 特許請求の範囲
【特許文献3】
特開平9−31576号公報 特許請求の範囲
【特許文献4】
特開平9−241664号公報 特許請求の範囲
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記各種技術のうち露点を測定する方法では、露点に影響を与えるSやCl等の燃料中の成分や燃焼条件が一定にはならないので、露点は運転時には経時的に変動することになる。特に、ごみ焼却炉では燃料となるごみは不均質であり、SやCl含有量の時間変動はかなり大きいので、露点の変動も相当大きくなる。従って、或る一定の測定時間内で得られた露点を基にして配管の加温温度を決定しても、実際の露点がそれを上回り、腐食損傷に至ることが多いのが実状である。
【0007】
また、或る一定の測定時間内で得られた露点より高い温度に配管を加温すれば酸露点腐食は防止できるが、塩化亜鉛などの低融点化合物が配管に付着していると、それが溶融して溶融塩腐食が発生し配管の損傷に至る場合もある。こうしたことから、露点を測定して配管温度をそれ以上に保持する技術では、低温部の腐食損傷をある程度低減できるが、安全上満足できる対策にはならない。
【0008】
低合金鋼やステンレス鋼等の耐食材料の使用は、排ガスや付着物の条件次第で効果が得られる場合と得られない場合がある。燃焼設備では上述のように燃料や燃焼条件の変動による環境変化があるため、耐食性材料の使用だけで完全に低温腐食を防止することは困難である。また或る配管系統の一部に異なる材質の部材を用いることは、異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)の発生も懸念される。更に、高耐食性の金属被覆では、ピンホールや割れなどの欠陥部で下地炭素鋼の腐食を著しく加速することがある。特に、燃焼設備では、起動および停止による熱衝撃により金属被覆の割れや剥離が生じることがあるので、金属被覆の適用は敬遠されているのが実状である。
【0009】
一方、マグネシウムやアンモニウム化合物などの防食添加剤は、添加量が不足すると防食効果が得られず、多すぎるとかえって腐食を促進するという事態を招くことがある。この防食添加剤の適正量は燃料中のSやClに依存することになるが、これらの含有量は上述のように変動する。こうしたことから、燃焼設備では防食添加剤の適正添加量が変動するので、これらによる効果的な防食は期待できない。
【0010】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、燃焼設備の環境変動に追随できる効果的な低温腐食の回避方法(防食方法)、およびこうした方法を実施するために有用な装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決できる技術の開発を目指して様々な角度から検討した。その結果、配管内の温度変化による腐食速度は、絶縁物で隔離された2つの領域管のインピーダンスと相関関係があり、このインピーダンスの変動を把握することによって、配管内の腐食速度を把握することができることが判明し、これらのデータに基づけば配管温度がより綿密に制御できて低温腐食を効果的に防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明に係る配管保温制御方法とは、燃焼設備からの排ガスが流過する金属配管内の低温腐食を防止するための配管保温制御方法であって、前記金属配管と同じ材質で構成された複数の測定用金属管を絶縁物を介して連結すると共に、連結された測定用金属管の両端側を絶縁物で仕切っておき、前記測定用金属管内を排ガスが流過したときの測定用金属管相互のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスの値に基づいて前記金属配管の温度制御を行う点に要旨を有するものである。
【0013】
この配管保温制御方法においては、排ガスが接触する金属管表面(内面)の酸凝縮状態を正確に検知するという観点から、絶縁物を介して隣接する測定用金属管相互のインピーダンスを測定することが好ましい。また測定用金属管間の幅も小さい方が好ましい。
【0014】
上記方法における温度制御の具体的な手順としては、インピーダンスと腐食速度の関係に基づいて、腐食速度が予め定めた値以下となるインピーダンスの限界値を予め求めておき、インピーダンスが限界値に達したときの測定用金属管の温度を測定し、インピーダンスが限界値を下回ったときに、測定用金属管の加熱を開始すると共に、金属配管の温度を測定し、測定された金属配管の温度が測定用金属管の温度を下回るときに、金属配管の加熱を開始することが挙げられる。
【0015】
またインピーダンスが限界値を上回ったときに、測定用金属管の加熱を終了すると共に、金属配管の温度を測定し、金属配管の温度が測定用金属管の温度を上回るときに、金属配管の加熱を終了するようにすれば良い。
【0016】
一方、上記目的を達成し得た本発明の装置とは、燃焼設備からの排ガスが流過する金属配管内の低温腐食を防止するための配管保温制御装置であって、前記金属配管と同じ材質で構成された複数の測定用金属管が絶縁物を介して連結され、且つ連結された測定用金属管の両端側を絶縁物で仕切られた測定用金属管群と、前記測定用金属管内を排ガスが流過したときの測定用金属管相互のインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定手段と、前記測定用金属管群を加熱するための加熱手段、および測定用金属管群の温度を測定するための温度計と、前記金属配管を加熱する加熱手段、および金属配管の温度を測定するための温度計とを備え、インピーダンスと腐食速度の関係に基づいて、腐食速度が予め定めた値以下となるインピーダンスの限界値を予め求めておき、インピーダンスが限界値に達したときの測定用金属管の温度を測定し、インピーダンスが限界値を下回ったときに、測定用金属管の加熱を開始すると共に、金属配管の温度を測定し、測定された金属配管の温度が測定用金属管の温度を下回るときに、金属配管の加熱を開始する様に構成されたことを特徴とする。
【0017】
この装置においては、インピーダンスが限界値を上回ったときに、測定用金属管の加熱を終了すると共に、金属配管の温度を測定し、金属配管の温度が測定用金属管の温度を上回るときに、金属配管の加熱を終了するように構成されている。
【0018】
また金属配管の長手方向に複数の独立した加熱手段と温度計が配置され、各温度計によって測定される金属配管温度と前記測定用金属管の温度とを順次比較し、加熱手段が配置された各配管部分の温度を制御する様に構成することもでき、前記前記測定用金属管群は、金属配管に直列または並列して設置して構成することもできる。
【0019】
【発明の実施の形態および実施例】
本発明が完成され経緯に沿って本発明の構成および作用効果について、順次説明する。本発明者らは、次のような予備試験を行った。
【0020】
予備試験
(a)試験方法
予備試験はごみ焼却施設(流動床式焼却炉、処理能力:40トン/日)で実施した。図1はごみ焼却施設における試験システムの概略説明図である。燃焼炉1からの排ガスは空気予熱器2およびバグフィルター3を介して煙突4から排出されるのであるが、図1に示した構成では、最も酸露点腐食が発生し易い空気予熱器出側の排ガス配管5に分岐させて、管状電極、ヒータ(加熱手段)、インピーダンス測定装置(インピーダンス測定手段)、温度計としての熱電気対を備えた温度制御装置および循環ファンを含む試験システムを設けたものである。
【0021】
管状電極部分の詳細を図2に示すが、2個のSS400製炭素鋼管状電極A,B(外径:34mm、厚さ:4.5mm、長さ:50mm)を絶縁リング(アルミナ製、厚さ:0.2mm)を挟んで、フランジで連結したものである。また管状電極A,Bの両端も前記絶縁リング(アルミナ製、厚さ:0.2mm)で仕切られており、この両端には、管状電極A,Bと同じ外径:34mm、厚さ:4.5mmのSS400製鋼管(分岐管)が接続されている。また前記排ガス配管5には、管状電極A,Bと同じ外径:34mm、厚さ:4.5mmのSS400製鋼管を用いた。尚、図2に示した構成では、管状電極A,Bは2つ設けたものを示したが、管状電極の数は2つに限らず、それ以上の数の管状電極を連結して電極群を構成しても良い。但し、管状電極内に排ガスを流過させたときのインピーダンスは、排ガスが接触する金属管表面(内面)の酸凝縮状態を正確に検知するという観点から、隣接する管状電極相互(例えば前記図2に示した管状電極A,B相互)で測定することが好ましい。
【0022】
前記管状電極A,Bの外周面には、加温用のリボンヒータおよび保温材(例えば、ガラスウール)を巻いてある。インピーダンス測定装置は、ポテンショスタットおよび周波数応答解析器(図示せず)から構成される。循環ファンは燃焼排ガスおよび焼却飛灰を循環させて、本管(配管)へ戻すためのものである。
【0023】
このような試験システムを、図1に示す位置の排ガス配管5に1m間隔で6個取り付けて、予備試験を行った。まず、市販の露点計(白金電極製)を用いて排ガスの露点の時間変化を1時間測定したところ、露点は128℃〜135℃の間で変動していた。そこで、6個の試験システムに含まれる管状電極A,Bの金属温度を下記表1に示すように120℃から145℃の間で6段階に設定した。
【0024】
金属温度が安定してから、管状電極AとBの間の電気化学インピーダンスを3時間毎に測定した。インピーダンスの測定条件は、周波数範囲を0.01Hzから10000Hzとし、印加する交流電圧の振幅(負側ピークから正側ピークまでの電圧差)を10mVとした。試験期間は腐食量に応じて30日または363日とした。試験終了後に管状電極AおよびBの長さ方向の中心部において中心軸に垂直方向に切断し、その断面の光学顕微鏡観察により減肉量の最大値を測定した。
【0025】
(b)試験結果
得られた電気化学インピーダンスの一例として、管状電極A,Bの温度を130℃に設定した場合(下記表1のNo.3)の試験開始から24時間後の測定結果を図3に示す。尚、図3中の数字は測定周波数(Hz)である。電気化学インピーダンスは、図3に示すように複素平面にプロットすると1つの半円状の軌跡となった。他の測定結果でもこれと同様に1つの半円状のインピーダンス軌跡が認められたが、半円の大きさは異なる結果であった。多くの学術文献(例えば、水流徹:電気化学,vol.62, No.4, p.309, 1994年)で解説されているように、このようなインピーダンス軌跡は2つの電気抵抗(R1,R2)と電気容量(C)を用いた電気回路(図4)と等価であり、高周波数側および低周波数側で実軸と交わる点がそれぞれR1およびR2に相当するものとなる。高周波数側のインピーダンスR1は管状電極内面に存在する電解質溶液の電気抵抗に対応することが知られている。
【0026】
予備試験結果を表1に一括して示す。尚、R2,aveは試験期間内のR2の平均値である。R2,aveの逆数と腐食速度との関係は図5に示すようになり、低周波数側のインピーダンスであるR2が電極の腐食速度に対応していることが明らかになった。但し、電極温度145℃(No.6)の腐食減肉はほとんど認められなかったので、腐食速度とR2,aveの逆数との相関曲線を求めるときにはこれを除外した。
【0027】
【表1】
【0028】
電極温度を140℃に設定したNo.5の試験開始より10日間のR1およびR2の経時変化を図6(a)、(b)に夫々示す。燃焼排ガスの露点は成分に依存し、SOxやH2O濃度が高くなると露点は上昇することが知られている。排ガス成分の変動により露点が設定した電極温度を上回ると、電極表面で硫酸凝縮が起こる。その結果、電極表面の電解質溶液抵抗R1が低下する。すなわち硫酸が凝縮すると、R2が小さくなり電極の腐食反応速度が大きくなって腐食が進んでいることが分かる。
【0029】
低温腐食の回避方法
(a)腐食のモニタリング方法
図5に示したように、インピーダンス測定で得られるR2は腐食速度に対応することから、R2をモニターすることにより配管の腐食状況を知ることができる。R2は理論的には周波数0におけるインピーダンス値であるが、周波数が小さくなると測定に要する時間が長くなる。排ガス成分の時間変動によってインピーダンス測定中に露点が変化すると、腐食状況が変化して正確な腐食速度の測定ができない場合がある。よって、測定時間の観点からはR2の測定周波数は可能な限り高い方がよい。予備試験結果(図3)からすれば、R2の測定周波数は0.1〜0.01Hzが好適であり、周波数依存性の変化を考慮すると0.01Hz程度が推奨される。
【0030】
図7には予備試験におけるNo.5のR1とR2との相関関係を示す。R1とR2には強い相関性はないが、R1が低下するとR2も低下する傾向が概ね認められる。これは、ガス中のSOxやHClに起因する酸凝縮が起こった状態(R1が低くなった状態)で腐食は進行する(R2が小さくなる)ためと考えられる。従って、R1をモニターすることにより腐食発生の有無を監視することも可能である。
【0031】
(b)装置構成
図8は、本発明を実施するための装置構成例を示す概略説明図であり、図9は他の構成例を示す概略説明図である。図8に示した構成では、インピーダンス測定用の電極(管状電極)を前記予備試験(前記図1)と同様に、排ガス配管5に分岐管を設けて設置したものである。また図9に示した構成では、インピーダンス測定用の電極(管状電極)を排ガス配管5自体に設置したものである。排ガス配管5自体にインピーダンス測定用電極を設ける場合には、例えば図10に示すように絶縁リングを挟んで設置することができる。尚、排ガス配管には排ガスの予熱確保および急激な温度変化を防止するため、ガラスウールなどの保温材を巻くことが好ましい。
【0032】
排ガス温度は、空気予熱器付近などの上流域では高く、煙突付近の下流域では低いので、適切な温度に保持するために要する電力は部位によって異なる。よって、配管加温のためのヒータHn(n=1〜N)は、図8若しくは図9のようにいくつかに分割して設置することが好ましい。
【0033】
低温腐食が問題となる概ね200〜300℃以下の低温領域では、露点に支配的である排ガス中のSOx濃度は上流ほど高いので、排ガスの露点も上流ほど高い。よってインピーダンス測定用電極は上流側に設置した方が安全側の管理ができる。しかしながら、上述のように排ガス温度は上流域では高いので、上流域の配管自体にインピーダンス測定用電極を設置した場合には電極部が露点を下回らず、露点腐食が発生していない配管温度として認識される基準温度(T0)が高くなり過ぎることがある。こうした事態は、露点腐食は発生しないが、配管に付着した低融点化合物の溶融による腐食が発生することがあるので、好ましくはない。また、下流域の低温部での配管加熱に要する電力が非常に多くなる(オーバースペック)ことから、省エネルギーの観点からも好ましくない。よって配管自体にインピーダンス測定用電極を設置する場合には、ある程度下流であることが推奨される。図8、9に示した構成では、インピーダンス測定からのデータを温度制御装置Xに送り、このデータをさらに温度制御装置Y送り、この温度制御装置Yからのデータに基づいて、ヒータHn(n=1〜N)の温度を制御する構成を示したものである。
【0034】
本発明では、インピーダンス測定用電極(前記管状電極A,B)の設置を一箇所に限定するものではなく、複数設置することも可能である。例えば排ガス配管の温度制御を適当な部位(例えば、燃焼飛灰濃度が変化する集塵機前後など)で上流側と下流側に2分割して、それぞれにインピーダンス測定装置を設けて互いに独立して温度制御を行うこともできる。
【0035】
(c)制御方法
図11は腐食モニターおよび配管温度管理状況を示す概念図である。上述のように、経時的に測定されるR1あるいはR2が腐食発生の有無あるいは腐食速度に対応しているので、これらの値が限界値R**を下回った場合に低温腐食が発生していると判断される。このとき、加熱ヒータのスイッチを入れてから実際に配管温度が上昇するまでにある程度時間がかかることを考慮して、限界値としてはR**よりやや高いR*を取ることが推奨される。R**の具体的な値としては、例えばR1であれば前記図7からして0.1Ω・m2程度、R2であれば腐食速度0.1mm/yに相当する0.25Ω・m2程度が推奨される。R*は適用する配管における加温時の昇温特性を考慮して決定すべきである。
【0036】
腐食モニターと温度管理手順のフローチャートを図12に示す。まずステップS1では、R1あるいはR2を測定し、ステップS2においてR1あるいはR2の値が前記限界値R*を下回るかどうかを判断する。そして、R1あるいはR2が限界値R*を下回った場合には、電極部分の加熱ヒータH0をONにして加熱し、電極温度を上昇させる(ステップS3)。またR1あるいはR2が限界値R*を上回った場合には、ステップS4に移って電極部分の加熱ヒータH0をOFFの状態のままにしておく(或は、加熱ヒータH0をOFFにして加熱を終了する)。
【0037】
次いで、熱電対T0〜TNの温度T(T0)〜T(TN)を測定し(ステップS5)、この温度と管状電極の温度T(T0)[基準温度]と比較する。焼却設備の配管は部位によって温度が異なるので、低温腐食は温度が基準温度T(T0)よりも高い部位では起こっておらず、T(T0)よりも低い部位で起こっている。よって、T(Tn)<T(T0)である部分のヒータHnをONにして加温する(ステップS7)。T(Tn)<T(T0)である部分がない場合には、ステップS8に移りヒータHnをOFFnの状態にしておく(或は、加熱ヒータH0をOFFにして加熱を終了する)。
【0038】
上記ステップS6〜7を繰り返すことによって(ステップS9)、配管温度を露点以上に保持して低温腐食を回避することができる。また、所定の回数の繰り返しを行った後は、ステップS1に戻る。尚、図12の繰り返し数kは任意の正数を選ぶことができる。また露点変動に対する追随性の観点からすれば、R1あるいはR2の測定およびTnの測定間隔はより小さい方が良い。
【0039】
ごみ焼却施設での腐食試験
予備試験を行ったごみ焼却施設において腐食試験を実施し、各種の防食対策の効果の確認を行った。下記表2に示す防食対策をNo.7からNo.11まで逐次実施し、超音波探傷法による試験前後の肉厚測定より排ガス配管の腐食減肉量を求めた。
【0040】
肉厚測定を行った排ガス配管は、外径:1100〜1300mm、厚さ:4.5〜6.0mmの炭素鋼(SS400)である。試験時間は6ケ月間(180±2日)とし、配管の腐食減肉量は、図13の▲印で示すように0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12時の位置で測定した。但し、防食対策を実施しなかったNo.7については腐食速度が大きいので、試験時間は1ケ月間とし、6ケ月間の腐食減肉量に換算した。No.8〜No.11防食対策の詳細は以下に示す通りである。
【0041】
(No.8)
No.7の防食対策なしでの腐食試験後に、露点を経時的に測定(1時間)したところ、露点は最高132℃であった。排ガス配管全域に加温のためのリボンヒータと保温のためのガラスウールシートを巻いた。リボンヒータは配管の長手方向に5m間隔で分割して、それぞれ独自に温度制御を行い、配管温度を135℃に保持した。
【0042】
(No.9)
減肉測定部の配管部材のみをフランジを介して耐露点腐食性ステンレス鋼製の配管に変更した。フランジ部には炭素鋼配管とのガルバニック腐食発生を防止するために、両者が電気的に短絡しないようにアルミナ性絶縁リングを挟んだ。用いたステンレス鋼の化学成分(重量%)は、C:0.08%,Si:0.45%,Mn:0.80%,P:0.03%,S:0.002%,O:0.002%,Ni:7.9%,Cr:18.1%,N:0.01%,Cu:0.32%,Mo:0.21%,残部Feである。なお、減肉測定部位以外(耐露点腐食性ステンレス鋼配管に変更しなかった部位)には、配管腐食を低減するためにガラスウール製保温材を巻いて保温した。
【0043】
(No.10)
No.9においてステンレス鋼に変更した減肉量測定部位を炭素鋼(SS400、新品)に交換して試験を行った。このNo.10は、本発明の配管温度管理方法である。空気予熱器出口から約5m下流の排ガス配管にインピーダンス測定用電極を含む分岐管を設けて試験を行った(前記図8参照)。インピーダンス測定用電極である炭素鋼管状電極などの試験設備は、予備試験で用いたのと全く同じものである。排ガス配管の本管には、全域に加温用リボンヒータおよび保温用ガラスウールシートを巻き付けた。リボンヒータは配管の長手方向に3〜5m間隔で20本に分割して、それぞれ独立に温度制御を行った。このときの温度管理手順は前記図12のフローチャートに示す通りであり、周波数10000HzにおけるインピーダンスをR1として、R1が0.20Ω・m2(=R*)を下回ったときのT0を基準としてリボンヒータ(H1〜H20)を制御した。尚、R1の測定間隔は10分毎とし、繰り返し数を決めるパラメータkは2として5分毎に図12の小ループを回した。
【0044】
(No.11)
No.11も本発明の配管温度管理方法である。煙突入口から約10m上流の排ガス配管本管にインピーダンス測定用電極を設けて試験を行った(前記図9および図10参照)。インピーダンス測定用電極である炭素鋼管状電極の長さは500mmとした。排ガス配管の本管の加温用リボンヒータは、No.10と同様であり、配管の長手方向に3〜5m間隔で20本に分割して、それぞれ独立に温度制御を行った。温度管理方法は,周波数0.01HzにおけるインピーダンスをR2として、R2が0.50Ω・m2(=R*)を下回ったときのT0を基準としてリボンヒータ(H1〜H20)を制御した。なお、R2の測定は10分毎に行い、繰り返し数を決めるパラメータkは1とした。
【0045】
試験結果
これらの腐食試験結果を、下記表2に併記する。防食対策を施さない場合には(No.7)、6ケ月間で2.4〜3.0mmもの腐食減肉が認められ、激しい腐食が起こっていることが分かる。またNo.8のように、従来の測定された露点以上に配管温度を維持することにより腐食減肉はある程度低減できるが、厚さ:4.5mmの配管では2年程度で貫通する腐食速度であり、防食効果としては不十分である。No.9に示した耐露点腐食性ステンレス鋼では、局所的に減肉量の大きい部位が認められた。
【0046】
これらに対して、本発明の温度管理を行った場合の配管減肉量は、用いた超音波探傷装置の測定限界である0.1mm以下とほとんど腐食が進行していないことが確認された。分岐管よりも本管でのインピーダンス測定を基準とした方が防食効果はやや高い結果であった。
【0047】
【表2】
【0048】
重油ボイラーでの腐食試験
図14に系統略図を示す重油ボイラー(容量:300MW)において腐食試験を実施して、各種の防食対策の効果検証を行った。下記表3に示す防食対策をNo.12からNo.16まで逐次実施し、上記ごみ焼却施設での腐食試験と同様の方法で排ガス配管の腐食減肉量を求めた。肉厚測定を行った排ガス配管は、外径:1300〜1500mm、厚さ:4.5〜6.0mmの炭素鋼(SS400)である。試験時間はすべて6ケ月間(180±2日)である。No.12〜No.16の防食対策の詳細は以下に示す通りである。
【0049】
(No.12)
全ての排ガス配管をガラスウール製のシートを巻いて保温した(ヒータによる加温なし)。
【0050】
(No.13)
ガラスウール製のシートを巻いて排ガス配管を保温し、さらに空気予熱器出口のマンホールより防食剤を注入した。注入した添加剤はアンモニア(NH3)であり、注入量は重油投入量の0.1vol%とした。
【0051】
(No.14)
減肉測定部の配管部材のみをフランジを介して耐露点腐食鋼(低合金鋼)製の配管に変更した。フランジ部には炭素鋼配管とのガルバニック腐食発生を防止するために、両者が電気的に短絡しないようにアルミナ性絶縁リングを挟んだ。用いた低合金鋼の化学成分(重量%)は、C:0.10%,Si:0.42%,Mn:0.35%,P:0.08%,S:0.02%,Ni:0.82%,Cr:0.81%,Cu:0.28%,残部Feである。なお、配管は全てガラスウール製のシートを巻いて保温した。
【0052】
(No.15)
No.14で材質変更を行った減肉量測定部位を炭素鋼(SS400、新品)に交換して試験を行った。このNo.15は本発明の配管温度管理方法である。煙突入口から約3m上流の排ガス配管に、No.10と同じインピーダンス測定用電極を含む分岐管を設けて試験を行った(前記図8参照)。排ガス配管の本管の加温用リボンヒータは、No.10と同様であり、配管の長手方向に3〜5m間隔で30本に分割して、それぞれ独立に温度制御を行った。このときの温度管理方法は図12のフローチャートに示す通りであり、周波数0.01HzにおけるインピーダンスをR2として、R2が0.50Ω・m2(=R*)を下回ったときの温度T0を基準としてリボンヒータ(H1〜H30)を制御した。尚、R2の測定は5分毎に行い、繰り返し数を決めるパラメータkは1とした。
【0053】
(No.16)
電気集塵機入口から約5m上流(A)および脱硫装置出口から約3m下流(B)の排ガス配管本管の2カ所にインピーダンス測定用電極配管および測定装置を設けて試験を行った(前記図9および図10参照)。このときのインピーダンス測定用電極である炭素鋼管状電極の長さは500mmとした。排ガス配管の本管の加温用リボンヒータは、No.10と同様であり、配管の長手方向に3〜5m間隔で20本に分割して、それぞれ独立に温度制御を行った。脱硫装置より上流側のヒータはインピーダンス測定装置(A)の、脱硫装置より下流側のヒータはインピーダンス測定装置(B)の測定結果を基準として温度制御を行った。温度管理方法は,周波数1000HzにおけるインピーダンスをR1として、R1が0.20Ω・m2(=R*)を下回ったときの温度T0を基準としてリボンヒータ(H1〜H30)を制御した。R1の測定は10分毎に行い、繰り返し数を決めるパラメータkは1とした。
【0054】
試験結果
腐食試験結果を、下記表3に一括して示す。本試験に用いた重油ボイラーでは、過去に防食対策を施さない低温部で6mm/y程度の腐食速度で腐食損傷が起こったことがある。No.12〜No.14の従来の防食対策を実施することにより、ある程度の腐食低減効果は得られることが分かる。しかしながら、これらの防食対策ではまだ不十分である。これらに対して、No.15およびNo.16のように本発明の温度管理を行った場合には、配管減肉量は非常に小さく、優れた防食効果が得られていることが分かる。No.15では、インピーダンス測定位置付近(煙突入口)での防食効果は高いが、インピーダンス測定位置から離れた部位(電気集塵機)では非常に微小な腐食が発生した。しかし、No.16のようにインピーダンス測定装置を2カ所に設置して温度管理を行うことにより、いずれの部位でも超音波探傷装置の測定限界である0.1mm未満と非常に高い防食効果が得られることが確認できた。
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、燃焼設備の環境変動に追随できる効果的な低温腐食の回避方法(防食方法)、およびこうした方法を実施するために有用な装置が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ごみ焼却施設における試験システムの概略説明図である。
【図2】管状電極部分の詳細を示す説明図である。
【図3】予備試験によって得られたインピーダンス軌跡の例を示すグラフである。
【図4】図3に示したインピーダンス軌跡を示す電気的等価回路である。
【図5】R2,aveの逆数と腐食速度との関係を示すグラフである。
【図6】電極温度を140℃に設定したNo.5の試験開始より10日間のR1およびR2の経時変化を示したグラフである。
【図7】予備試験におけるNo.5のR1とR2との相関関係を示すグラフである。
【図8】本発明を実施するための装置構成例を示す概略説明図である。
【図9】本発明を実施するための他の装置構成例を示す概略説明図である。
【図10】配管自体に管状電極を設置する場合における管状電極部分の詳細を示す説明図である。
【図11】腐食モニターおよび配管温度管理状況を示す概念図である。
【図12】腐食モニターと温度管理手順のフローチャートである。
【図13】腐食減肉量を測定した位置を示す断面図である。
【図14】腐食試験を行った重油ボイラーの系統略図である。
Claims (8)
- 燃焼設備からの排ガスが流過する金属配管内の低温腐食を防止するための配管保温制御方法であって、前記金属配管と同じ材質で構成された複数の測定用金属管を絶縁物を介して連結すると共に、連結された測定用金属管の両端を絶縁物で仕切っておき、前記測定用金属管内を排ガスが流過したときの測定用金属管相互のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスの値に基づいて前記金属配管の温度制御を行うことを特徴とする配管保温制御方法。
- 絶縁物を介して隣接する測定用金属管相互のインピーダンスを測定する請求項1に記載の配管保温制御方法。
- インピーダンスと腐食速度の関係に基づいて、腐食速度が予め定めた値以下となるインピーダンスの限界値を予め求めておき、インピーダンスが限界値に達したときの測定用金属管の温度を測定し、インピーダンスが限界値を下回ったときに、測定用金属管の加熱を開始すると共に、金属配管の温度を測定し、測定された金属配管の温度が測定用金属管の温度を下回るときに、金属配管の加熱を開始することを請求項1または2に記載の配管保温制御方法。
- インピーダンスが限界値を上回ったときに、測定用金属管の加熱を終了すると共に、金属配管の温度を測定し、金属配管の温度が測定用金属管の温度を上回るときに、金属配管の加熱を終了する請求項3に記載の配管保温制御方法。
- 燃焼設備からの排ガスが流過する金属配管内の低温腐食を防止するための配管保温制御装置であって、
前記金属配管と同じ材質で構成された複数の測定用金属管が絶縁物を介して連結され、且つ連結された測定用金属管の両端を絶縁物で仕切られた測定用金属管群と、
前記測定用金属管内を排ガスが流過したときの測定用金属管相互のインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定手段と、
前記測定用金属管群を加熱するための加熱手段、および測定用金属管群の温度を測定するための温度計と、
前記金属配管を加熱する加熱手段、および金属配管の温度を測定するための温度計とを備え、
インピーダンスと腐食速度の関係に基づいて、腐食速度が予め定めた値以下となるインピーダンスの限界値を予め求めておき、インピーダンスが限界値に達したときの測定用金属管の温度を測定し、インピーダンスが限界値を下回ったときに、測定用金属管の加熱を開始すると共に、金属配管の温度を測定し、測定された金属配管の温度が測定用金属管の温度を下回るときに、金属配管の加熱を開始する様に構成したことを特徴とする配管保温制御装置。 - インピーダンスが限界値を上回ったときに、測定用金属管の加熱を終了すると共に、金属配管の温度を測定し、金属配管の温度が測定用金属管の温度を上回るときに、金属配管の加熱を終了するように構成された請求項5に記載の配管保温制御装置。
- 金属配管の長手方向に複数の独立した加熱手段と温度計が配置され、各温度計によって測定される金属配管温度と前記測定用金属管の温度とを順次比較し、加熱手段が配置された各配管部分の温度を制御する様に構成された請求項5または6に記載の配管保温制御装置。
- 前記測定用金属管群は、金属配管に直列または並列して設置されたものである請求項5〜7のいずれかに記載の配管保温制御装置。
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JP2021148574A (ja) * | 2020-03-18 | 2021-09-27 | 株式会社ベンチャー・アカデミア | 金属製部材の減肉量の推定装置及びこれを用いた金属製部材の減肉量の推定方法 |
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- 2002-11-22 JP JP2002339848A patent/JP2004176731A/ja not_active Withdrawn
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