JP2004175954A - 封止用樹脂組成物および半導体封止装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】特にアンチモン、ビスマス、ハイドロタルサイト類等の金属化合物を含有しない新規な環状化合物の使用により成形性、信頼性のよい、封止用樹脂組成物および半導体封止装置を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)次式で示される環状化合物および
(但し、式中、R,R′は水素、アルキル基、アリール基を、Xは−O−、−S−、−CH2 −を、nは3〜8の整数をそれぞれ表す)
(D)無機充填剤を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、(C)の環状化合物を0.05〜10重量%、また(D)無機充填剤を40〜95重量%の割合でそれぞれ含有してなる封止用樹脂組成物であり、また、この封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体チップを封止してなる半導体封止装置である。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)次式で示される環状化合物および
(但し、式中、R,R′は水素、アルキル基、アリール基を、Xは−O−、−S−、−CH2 −を、nは3〜8の整数をそれぞれ表す)
(D)無機充填剤を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、(C)の環状化合物を0.05〜10重量%、また(D)無機充填剤を40〜95重量%の割合でそれぞれ含有してなる封止用樹脂組成物であり、また、この封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体チップを封止してなる半導体封止装置である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゼオライトおよびアンチモンやビスマスやハイドロタルサイト類等の金属化合物を添加することなしに、イオン性不純物を捕捉固定することに優れ、また成形性、信頼性にも優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体封止装置を、高温多湿下で長時間使用していると故障することがある。これは、封止用樹脂組成物中に侵入した水分と、封止用樹脂組成物の一つであるエポキシ樹脂製造過程において微量のナトリウムや塩素などの不純物イオンが含まれており、これらが要因となってアルミ等の配線の腐食やチップの性能低下のために起こることが解っている。この防止のためには、封止用樹脂組成物の耐湿信頼性の向上が重要となり、チップやリードと封止樹脂との界面、さらに封止用樹脂組成物中の充填剤と樹脂の界面に空隙部を作らないように相互の接着力を強化させたり、また封止用樹脂組成物そのものの高純度化により特性不良を低減させてきた。処方としては、前者の場合、シラン系の表面処理剤を用いることで金型からの離型性を損なうことなく接着性を向上させてきた。また後者の場合は、封止用樹脂組成物中の原材料自体の高純度化を行いながら、イオン性不純物を捕捉固定するイオン交換体の添加で腐食を防止してきた。添加するイオン交換体としては、アンチモンやビスマスやハイドロタルサイト類等の金属化合物が主であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、十分なイオン性不純物を捕捉固定するためには、相当量の添加が必要となり、封止装置の成形性の劣化が大きくなる。特にハイドロタルサイト類の添加は樹脂組成物の吸水率を上げるために、表面実装用の半導体封止装置に適用した場合に、急激な温度上昇を伴う実装信頼性の低下を招く恐れがある。また、アンチモン化合物は劇物に指定されていて、ビスマスもまたアンチモンに似た毒性を有するために環境への悪影響が指摘され始めている。このために環境への悪影響がなく、また成形性や実装時信頼性の劣化が少なく、イオン性不純物の捕捉固定効果のある添加剤が求められ、それらを原材料とし、成形性、信頼性に優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置が強く要望されてきた。
【0004】
本発明は、上記の問題を解決し、上記要望に応えるためになされたもので、アンチモンやビスマスやハイドロタルサイト類等の金属化合物系のイオン交換体を含有せずに、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物を捕捉固定し、成形性、信頼性に優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、樹脂組成物中に環状化合物を適当な比率で配合することによって、良好な成形性とともにイオン性不純物の捕捉固定が十分になされ、半導体装置の信頼性が向上し、上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0006】
即ち、本発明は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂、
(C)下記一般式で示される環状化合物および
【化3】
(但し、式中、R,R′は水素、アルキル基またはアリール基を、−O−、−S−S−または−CH2 −を、nは3〜8の整数をそれぞれ表す)
(D)無機充填剤
を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、前記(C)の環状化合物を0.05〜10重量%、また前記(D)無機充填剤を40〜95重量%の割合でそれぞれ含有してなることを特徴とする封止用樹脂組成物であり、また、この封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体チップを封止してなることを特徴とする半導体封止装置である。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明に用いる(A)エポキシ樹脂としては、その分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物である限り、分子構造および分子量など特に制限はなく、一般に封止用材料として使用されるものを広く包含することができる。例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、ビスフェノール型、ジシクロペンタジエン型、スチルベン型、ナフタレン型、トリフェノールメタン型等の芳香族系、またはシクロヘキサン誘導体等脂肪族系等のエポキシ樹脂であり、また、次の一般式で挙げられる化合物である。
【0009】
【化4】
(但し、式中、nは0または1以上の整数を表す)
これらのエポキシ樹脂は、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0010】
本発明に用いる(B)フェノール樹脂としては、前記(A)のエポキシ樹脂と反応し得るフェノール性水酸基を2個以上有するものであれば、特に制限するものではない。具体的な化合物としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノール類、カテコール、レゾルシン、ナフトール類やジシクロペンタジエン変性、テルペン変性等のフェノール樹脂であり、また、次の一般式で示される化合物である。
【0011】
【化5】
(但し、式中、nは0または1以上の整数を表す)
【化6】
(但し、式中、nは0または1以上の整数を表す)
これらの樹脂は、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0012】
フェノール樹脂の配合割合は、前述したエポキシ樹脂のエポキシ基(a)とフェノール樹脂の水酸基(b)との当量比[(a)/(b)]が0.1〜10の範囲内であることが望ましい。当量比が0.1未満もしくは10を超えると、耐熱性、成形作業性および硬化物の電気特性が悪くなり、いずれの場合も好ましくない。従って上記の範囲内に限定するのがよい。
【0013】
本発明に用いる(C)の環状化合物は、次式に示されるものである。
【0014】
【化7】
(但し、式中、R,R′は水素、アルキル基またはアリール基をは−O−、−S−S−または−CH2 −を、nは3〜8の整数をそれぞれ表す)
上記環状化合物の配合割合は、全体の樹脂組成物に対して0.05〜10重量%割合に含有することが望ましい。その割合が0.05重量%未満では、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物の捕捉固定効果が十分に得られず、また、10重量%を超えると、封止用樹脂組成物の硬化等に悪影響を与え、実用に適さず好ましくない。
【0015】
本発明に用いる(D)の無機充填剤としては、シリカ粉末、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、酸化チタン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ガラス繊維等が挙げられ、これらは、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。これらのなかでも、特にシリカ粉末やアルミナ粉末が好ましく、よく使用されている。無機充填剤の配合割合は、全体の樹脂組成物に対して40〜95重量%の割合で含有することが望ましい。その割合が40重量%未満では、耐熱性、半田耐熱性、機械的特性および成形性が悪くなり、また、95重量%を超えると、流動性が悪くカサバリが大きくなり成形性に劣り実用に適さない。
【0016】
本発明の封止用樹脂組成物は、前述した(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)環状化合物および(D)無機充填剤を必須成分とするが、本発明の目的に反しない限度において、また必要に応じて、例えば、臭素化エポキシ樹脂に代表される臭素系難燃剤、リン酸エステルに代表されるリン系難燃剤、水酸化金属化合物、ホウ酸亜鉛等の難燃剤、酸化アンチモン化合物に代表される難燃助剤、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪族の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン類等の離型剤、エラストマー等の低応力化成分、カーボンブラック等の着色剤、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、有機チタネート、アルミニウムアルコレート等のカップリング剤等の無機充填剤の処理剤、種々の硬化促進剤などを適宜、添加配合することができる。
【0017】
本発明の封止用樹脂組成物を成形材料として調製する場合の一般的な方法としては、前述した(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)環状化合物および(D)無機充填剤、その他の成分を配合し、ミキサー等によって十分均一に混合した後、さらに熱ロールによる溶融混合処理、またはニーダ等による混練処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。こうして得られた成形材料は、半導体封止をはじめとする電子部品あるいは電気部品の封止、被覆、絶縁等に適用すれば、優れた特性と信頼性を付与させることができる。
【0018】
本発明の半導体封止装置は、上記のようにして得られた封止用樹脂を用いて、半導体チップを封止することにより容易に製造することができる。封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形があるが、射出成形、圧縮成形および注型などによる封止も可能である。封止用樹脂組成物は封止成形の際の加熱によって硬化し、最終的にはこの組成物の硬化物によって封止された半導体封止装置が得られる。加熱による硬化は、150℃以上に加熱して後硬化させることが望ましい。封止を行う半導体装置としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、コンデンサ等で特に限定されるものではない。
【0019】
【作用】
本発明の封止用樹脂組成物および半導体封止装置は、樹脂成分として上記の環状化合物を用いたことにより、目的とする特性が得られるものである。即ち、上記の環状化合物を適当な比率で配合することにより、十分な成形性を保ちながら、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物の捕捉固定に優れた効果を付与し、その化合物の安定性から半導体封止装置において信頼性を向上させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の実施例および比較例において「%」とあるは「重量%」を意味する。
【0021】
実施例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200,軟化点74℃)13%、ビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(臭素含有率48%,エポキシ当量400,軟化点70℃)2.5%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105,軟化点87℃)9%、前記化7に示した環状化合物(R=t−Bu、R′=−H、X=S)0.5%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス類0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、およびエポキシシランカップリング1%を配合して常温で混合し、さらに90〜95℃で混練し、これを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0022】
この成形材料を175℃に加熱した金型内にトランスファー注入し、硬化させて成形品(封止品)を成形した。この成形品についてイオン性不純物測定、耐湿性特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0023】
実施例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200,軟化点70℃)10%に、ビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(臭素含有率48%,エポキシ当量400,軟化点70℃)2.5%、ノボラック型フェノールアラルキル樹脂(フェノール当量175,軟化点71℃)11%、前記化7に示した環状化合物(R=t−Bu、R′=−H、X=S)0.4%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)73%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス類0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、およびエポキシシランカップリング1%を配合して常温で混合し、さらに90〜95℃で混練し、これを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0024】
この成形材料について、実施例1におけると同様に、成形品を得るとともにイオン性不純物測定、耐湿性特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0025】
実施例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200,軟化点65℃)9%に、ビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(臭素含有率48%,エポキシ当量400,軟化点70℃)2%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105,軟化点70℃)5%、前記化7に示した環状化合物(R=t−Bu、R′=−H、X=S)0.3%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)80%、三酸化アンチモン1.5%、カルナバワックス類0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.2%、およびエポキシシランカップリング1%を配合して常温で混合し、さらに90〜95℃で混練し、これを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0026】
この成形材料について、実施例1におけると同様に、成形品を得るとともにイオン性不純物測定、耐湿性特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0027】
比較例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200,軟化点70℃)13%に、ビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(臭素含有率48%,エポキシ当量400,軟化点70℃)2%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105,軟化点80℃)9%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、アンチモン系イオン交換体のIXE−600(東亜合成社製、商品名)0.3%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス類0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、およびエポキシシランカップリング1%を配合して常温で混合し、さらに90〜95℃で混練し、これを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0028】
この成形材料について、実施例1におけると同様に、成形品を得るとともにイオン性不純物測定、耐湿性特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0029】
比較例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200,軟化点74℃)15%に、ビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(臭素含有率48%,エポキシ当量400,軟化点70℃)2%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105,軟化点70℃)10%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス類0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、およびエポキシシランカップリング1%を配合して常温で混合し、さらに90〜95℃で混練し、これを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0030】
この成形材料について、実施例1におけると同様に、成形品を得るとともにイオン性不純物測定、耐湿性特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0031】
【表1】
*1:トランスファー成形によって成形品を作り、175℃,8時間放置した後、成形品を粉砕し熱水抽出し、イオンクロマトアナライザー及び原子吸光光度計を用いて、イオン性不純物濃度測定を行った。
【0032】
*2:2本のアルミ配線を有するシリコン製チップ(テスト素子)を銅フレームに接着し、成形材料を用いて175℃で低圧トランスファー成形機にて成形し、上記チップをSOP−14に封止した。封止したテスト素子を半田槽(260℃)に10秒間浸漬させ、その後プレッシャークッカー試験(125℃,100%RH)を行い、各時間において回路のオープン不良を測定した。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明および表1から明らかなように、本発明の封止用樹脂組成物および半導体封止装置は、成形性を低下させることなしにイオン性不純物濃度を低減させることに優れ、その結果、電極の腐食による断線不良を著しく低減することができ、長期にわたる信頼性を保証することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゼオライトおよびアンチモンやビスマスやハイドロタルサイト類等の金属化合物を添加することなしに、イオン性不純物を捕捉固定することに優れ、また成形性、信頼性にも優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体封止装置を、高温多湿下で長時間使用していると故障することがある。これは、封止用樹脂組成物中に侵入した水分と、封止用樹脂組成物の一つであるエポキシ樹脂製造過程において微量のナトリウムや塩素などの不純物イオンが含まれており、これらが要因となってアルミ等の配線の腐食やチップの性能低下のために起こることが解っている。この防止のためには、封止用樹脂組成物の耐湿信頼性の向上が重要となり、チップやリードと封止樹脂との界面、さらに封止用樹脂組成物中の充填剤と樹脂の界面に空隙部を作らないように相互の接着力を強化させたり、また封止用樹脂組成物そのものの高純度化により特性不良を低減させてきた。処方としては、前者の場合、シラン系の表面処理剤を用いることで金型からの離型性を損なうことなく接着性を向上させてきた。また後者の場合は、封止用樹脂組成物中の原材料自体の高純度化を行いながら、イオン性不純物を捕捉固定するイオン交換体の添加で腐食を防止してきた。添加するイオン交換体としては、アンチモンやビスマスやハイドロタルサイト類等の金属化合物が主であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、十分なイオン性不純物を捕捉固定するためには、相当量の添加が必要となり、封止装置の成形性の劣化が大きくなる。特にハイドロタルサイト類の添加は樹脂組成物の吸水率を上げるために、表面実装用の半導体封止装置に適用した場合に、急激な温度上昇を伴う実装信頼性の低下を招く恐れがある。また、アンチモン化合物は劇物に指定されていて、ビスマスもまたアンチモンに似た毒性を有するために環境への悪影響が指摘され始めている。このために環境への悪影響がなく、また成形性や実装時信頼性の劣化が少なく、イオン性不純物の捕捉固定効果のある添加剤が求められ、それらを原材料とし、成形性、信頼性に優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置が強く要望されてきた。
【0004】
本発明は、上記の問題を解決し、上記要望に応えるためになされたもので、アンチモンやビスマスやハイドロタルサイト類等の金属化合物系のイオン交換体を含有せずに、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物を捕捉固定し、成形性、信頼性に優れた封止用樹脂組成物および半導体封止装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、樹脂組成物中に環状化合物を適当な比率で配合することによって、良好な成形性とともにイオン性不純物の捕捉固定が十分になされ、半導体装置の信頼性が向上し、上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0006】
即ち、本発明は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂、
(C)下記一般式で示される環状化合物および
【化3】
(但し、式中、R,R′は水素、アルキル基またはアリール基を、−O−、−S−S−または−CH2 −を、nは3〜8の整数をそれぞれ表す)
(D)無機充填剤
を必須成分とし、樹脂組成物全体に対して、前記(C)の環状化合物を0.05〜10重量%、また前記(D)無機充填剤を40〜95重量%の割合でそれぞれ含有してなることを特徴とする封止用樹脂組成物であり、また、この封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体チップを封止してなることを特徴とする半導体封止装置である。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明に用いる(A)エポキシ樹脂としては、その分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物である限り、分子構造および分子量など特に制限はなく、一般に封止用材料として使用されるものを広く包含することができる。例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、ビスフェノール型、ジシクロペンタジエン型、スチルベン型、ナフタレン型、トリフェノールメタン型等の芳香族系、またはシクロヘキサン誘導体等脂肪族系等のエポキシ樹脂であり、また、次の一般式で挙げられる化合物である。
【0009】
【化4】
(但し、式中、nは0または1以上の整数を表す)
これらのエポキシ樹脂は、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0010】
本発明に用いる(B)フェノール樹脂としては、前記(A)のエポキシ樹脂と反応し得るフェノール性水酸基を2個以上有するものであれば、特に制限するものではない。具体的な化合物としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノール類、カテコール、レゾルシン、ナフトール類やジシクロペンタジエン変性、テルペン変性等のフェノール樹脂であり、また、次の一般式で示される化合物である。
【0011】
【化5】
(但し、式中、nは0または1以上の整数を表す)
【化6】
(但し、式中、nは0または1以上の整数を表す)
これらの樹脂は、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0012】
フェノール樹脂の配合割合は、前述したエポキシ樹脂のエポキシ基(a)とフェノール樹脂の水酸基(b)との当量比[(a)/(b)]が0.1〜10の範囲内であることが望ましい。当量比が0.1未満もしくは10を超えると、耐熱性、成形作業性および硬化物の電気特性が悪くなり、いずれの場合も好ましくない。従って上記の範囲内に限定するのがよい。
【0013】
本発明に用いる(C)の環状化合物は、次式に示されるものである。
【0014】
【化7】
(但し、式中、R,R′は水素、アルキル基またはアリール基をは−O−、−S−S−または−CH2 −を、nは3〜8の整数をそれぞれ表す)
上記環状化合物の配合割合は、全体の樹脂組成物に対して0.05〜10重量%割合に含有することが望ましい。その割合が0.05重量%未満では、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物の捕捉固定効果が十分に得られず、また、10重量%を超えると、封止用樹脂組成物の硬化等に悪影響を与え、実用に適さず好ましくない。
【0015】
本発明に用いる(D)の無機充填剤としては、シリカ粉末、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、酸化チタン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ガラス繊維等が挙げられ、これらは、単独もしくは2種類以上混合して用いることができる。これらのなかでも、特にシリカ粉末やアルミナ粉末が好ましく、よく使用されている。無機充填剤の配合割合は、全体の樹脂組成物に対して40〜95重量%の割合で含有することが望ましい。その割合が40重量%未満では、耐熱性、半田耐熱性、機械的特性および成形性が悪くなり、また、95重量%を超えると、流動性が悪くカサバリが大きくなり成形性に劣り実用に適さない。
【0016】
本発明の封止用樹脂組成物は、前述した(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)環状化合物および(D)無機充填剤を必須成分とするが、本発明の目的に反しない限度において、また必要に応じて、例えば、臭素化エポキシ樹脂に代表される臭素系難燃剤、リン酸エステルに代表されるリン系難燃剤、水酸化金属化合物、ホウ酸亜鉛等の難燃剤、酸化アンチモン化合物に代表される難燃助剤、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪族の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン類等の離型剤、エラストマー等の低応力化成分、カーボンブラック等の着色剤、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、有機チタネート、アルミニウムアルコレート等のカップリング剤等の無機充填剤の処理剤、種々の硬化促進剤などを適宜、添加配合することができる。
【0017】
本発明の封止用樹脂組成物を成形材料として調製する場合の一般的な方法としては、前述した(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)環状化合物および(D)無機充填剤、その他の成分を配合し、ミキサー等によって十分均一に混合した後、さらに熱ロールによる溶融混合処理、またはニーダ等による混練処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。こうして得られた成形材料は、半導体封止をはじめとする電子部品あるいは電気部品の封止、被覆、絶縁等に適用すれば、優れた特性と信頼性を付与させることができる。
【0018】
本発明の半導体封止装置は、上記のようにして得られた封止用樹脂を用いて、半導体チップを封止することにより容易に製造することができる。封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形があるが、射出成形、圧縮成形および注型などによる封止も可能である。封止用樹脂組成物は封止成形の際の加熱によって硬化し、最終的にはこの組成物の硬化物によって封止された半導体封止装置が得られる。加熱による硬化は、150℃以上に加熱して後硬化させることが望ましい。封止を行う半導体装置としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、コンデンサ等で特に限定されるものではない。
【0019】
【作用】
本発明の封止用樹脂組成物および半導体封止装置は、樹脂成分として上記の環状化合物を用いたことにより、目的とする特性が得られるものである。即ち、上記の環状化合物を適当な比率で配合することにより、十分な成形性を保ちながら、封止用樹脂組成物中のイオン性不純物の捕捉固定に優れた効果を付与し、その化合物の安定性から半導体封止装置において信頼性を向上させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の実施例および比較例において「%」とあるは「重量%」を意味する。
【0021】
実施例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200,軟化点74℃)13%、ビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(臭素含有率48%,エポキシ当量400,軟化点70℃)2.5%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105,軟化点87℃)9%、前記化7に示した環状化合物(R=t−Bu、R′=−H、X=S)0.5%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス類0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、およびエポキシシランカップリング1%を配合して常温で混合し、さらに90〜95℃で混練し、これを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0022】
この成形材料を175℃に加熱した金型内にトランスファー注入し、硬化させて成形品(封止品)を成形した。この成形品についてイオン性不純物測定、耐湿性特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0023】
実施例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200,軟化点70℃)10%に、ビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(臭素含有率48%,エポキシ当量400,軟化点70℃)2.5%、ノボラック型フェノールアラルキル樹脂(フェノール当量175,軟化点71℃)11%、前記化7に示した環状化合物(R=t−Bu、R′=−H、X=S)0.4%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)73%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス類0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、およびエポキシシランカップリング1%を配合して常温で混合し、さらに90〜95℃で混練し、これを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0024】
この成形材料について、実施例1におけると同様に、成形品を得るとともにイオン性不純物測定、耐湿性特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0025】
実施例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200,軟化点65℃)9%に、ビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(臭素含有率48%,エポキシ当量400,軟化点70℃)2%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105,軟化点70℃)5%、前記化7に示した環状化合物(R=t−Bu、R′=−H、X=S)0.3%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)80%、三酸化アンチモン1.5%、カルナバワックス類0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.2%、およびエポキシシランカップリング1%を配合して常温で混合し、さらに90〜95℃で混練し、これを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0026】
この成形材料について、実施例1におけると同様に、成形品を得るとともにイオン性不純物測定、耐湿性特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0027】
比較例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200,軟化点70℃)13%に、ビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(臭素含有率48%,エポキシ当量400,軟化点70℃)2%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105,軟化点80℃)9%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、アンチモン系イオン交換体のIXE−600(東亜合成社製、商品名)0.3%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス類0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、およびエポキシシランカップリング1%を配合して常温で混合し、さらに90〜95℃で混練し、これを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0028】
この成形材料について、実施例1におけると同様に、成形品を得るとともにイオン性不純物測定、耐湿性特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0029】
比較例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200,軟化点74℃)15%に、ビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(臭素含有率48%,エポキシ当量400,軟化点70℃)2%、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量105,軟化点70℃)10%、溶融シリカ粉末(平均粒径20μm)71%、三酸化アンチモン2%、カルナバワックス類0.3%、カーボンブラック0.3%、トリフェニルフォスフィン0.3%、およびエポキシシランカップリング1%を配合して常温で混合し、さらに90〜95℃で混練し、これを冷却粉砕して成形材料を製造した。
【0030】
この成形材料について、実施例1におけると同様に、成形品を得るとともにイオン性不純物測定、耐湿性特性の試験を行ったのでその結果を表1に示した。
【0031】
【表1】
*1:トランスファー成形によって成形品を作り、175℃,8時間放置した後、成形品を粉砕し熱水抽出し、イオンクロマトアナライザー及び原子吸光光度計を用いて、イオン性不純物濃度測定を行った。
【0032】
*2:2本のアルミ配線を有するシリコン製チップ(テスト素子)を銅フレームに接着し、成形材料を用いて175℃で低圧トランスファー成形機にて成形し、上記チップをSOP−14に封止した。封止したテスト素子を半田槽(260℃)に10秒間浸漬させ、その後プレッシャークッカー試験(125℃,100%RH)を行い、各時間において回路のオープン不良を測定した。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明および表1から明らかなように、本発明の封止用樹脂組成物および半導体封止装置は、成形性を低下させることなしにイオン性不純物濃度を低減させることに優れ、その結果、電極の腐食による断線不良を著しく低減することができ、長期にわたる信頼性を保証することができる。
Claims (2)
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JP2002345000A JP2004175954A (ja) | 2002-11-28 | 2002-11-28 | 封止用樹脂組成物および半導体封止装置 |
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