JP2004175890A - 導電性ポリエステルシート用基材シートおよびそれからなる導電性ポリエステルシート並びに電子部品用包装容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル(A)を主体とし、これと、主たる酸成分がテレフタル酸、グリコ−ル成分が95〜20モル%のエチレングリコ−ルおよび5〜80モル%の1、4−シクロヘキサンジメタノ−ルから構成されるポリエステル(B)と、を配合したポリエステル組成物からなる導電性ポリエステルシート用基材シートであって、前記基材シートの極限粘度が0.60デシリットル/グラム以上、共重合されたジエチレングリコール含有量が1.0〜5.0モル%であることを特徴とする導電性ポリエステルシート用基材シート。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、LSI、コンデンサー等の電子部品を収納運搬及び実装工程を補助するために使用されるキャリヤテープやトレー等の製造に使用される導電性ポリエステルシート用基材シートおよびそれからなる導電性ポリエステルシートに関するものであり、特に衝撃強度に優れ、熱安定性、耐溶剤性および成形性にも優れた導電性ポリエステルシート用基材シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性に優れているので、特にジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器や、包装用フイルム、オーディオ・ビデオ用フイルム等の素材として最適であり、大量に使用されている。
【0003】
ポリエステルシートやフイルムは、表面抵抗値が約1015Ωで帯電しやすく、電子材料、磁気記録媒体などの素材として用いる際、異物吸着などの問題を引き起こす。
【0004】
また、近年、電子部品の表面実装化が大きく進んできており、それに伴って表面実装技術も大幅に進歩し、より高性能でより小型なチップ型電子部品が開発され、それらの需要が急増しており、これらを搬送、保管する包装形態の1つとしてエンボスキャリヤテープが用いられている。チップ型電子部品はエンボスキャリヤテープの各ポケットに収納され、蓋体であるカバーテープでシールされた後、リールに巻き取られた状態で保管、搬送され、表面実装機のカセットフィーダーへ装着される。次に収納されているチップ型電子部品の回路基板への組付けはエンボスキャリヤテープを順々に送り出しながらカバーテープを剥離してチップ型電子部品を自動的にピックアップして回路基板の所定の場所へ自動的に配置するという方法で行われている。この工程ではチップ型電子部品とエンボスキャリヤテープのポケット内部面との摩擦による静電気やカバーテープを剥がす工程において発生する静電気によってエンボスキャリヤテープが帯電する為にチップ型電子部品がポケットより取り出すことが出来なかったり、静電気破壊が発生するという問題があり、それらを解決する為にエンボスキャリヤテープに導電性を付与して静電気の蓄積を防止することが必要とされ、カーボンブラック等の導電性フィラーを樹脂に練り込んだタイプのシートや導電性フィラーを含むコート組成物をシート表面に塗布したシート等を真空、圧空及びプレス成形によって成形した導電性エンボスキャリヤテープが用いられている。
【0005】
キャリアテープ用材料としては紙や熱可塑性プラスチックがあるが、紙は機械強度の問題から近年使用されなくなり、熱可塑性プラスチックがその素材として用いられるようになってきた。熱可塑性プラスチックとしては、従来、ポリ塩化ビニル系樹脂やポリスチレン系樹脂が挙げられるが、ポリ塩化ビニル系樹脂は成形性も良好で力学的物性も特に問題はないが、燃焼時のダイオキシン発生などの環境問題があり、またポリスチレン系樹脂は成形性良好で価格も安いが、衝撃強度などの力学的物性に問題がある。
上記の理由から、環境問題にも、力学的物性にもバランスのとれたポリエステル系樹脂が最近注目されるようになり、使用量が増加している。
【0006】
ポリエステル系樹脂の導電性付与方法としては、カーボンブラックをポリエステル系樹脂に練り込んでシート化する練り込み方式か、あるいはカーボンブラックを含有するコート剤をポリエステル系樹脂からなる基材シートの両面にコーティングするコート方式が一般的である。
【0007】
練り込み方式では、ポリエステル系樹脂はカーボンブラックの分散がかなり困難であることや、カーボンブラックを練り込むことによって脆くなるため、耐折強度、衝撃強度などの機械的強度が低下する他、シート表面の外観もあまり良好なものは得られない。
【0008】
一方、コート方式では、コート方法やコート条件によっては、コート剤中の有機溶媒によりポリエステルシート表面にクレイジングが発生し、このために衝撃強度などの機械的特性が低下し問題となり、解決が望まれている。
【0009】
前記の問題を解決するために、熱可塑性樹脂にカーボンブラックの一定範囲量を練りこんだプラスチックシート層の少なくとも片面にカーボンブラック含有導電塗料を塗布した導電層を形成させたシートからなる導電エンボスキャリアーテープが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このようなシートを使用したポリエステル樹脂製キャリアーテープでも、電子部品を収納後の輸送時に於いて衝撃力がかかる場合や電子部品の実装工程に於いて割れが発生するという欠点があり、解決が望まれている。
【0010】
また前記の問題を解決するために、帯電防止性を有する飽和ポリエステル樹脂組成物からなる基材シートの片面にカーボンブラックを含む導電性塗料のコーティング層を設けた導電性ポリエステル系樹脂シートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、このようなシートでも、導電性コート層と基材シートの接着性が悪く、キャリアーテープ成形時に剥離が起こるという欠点があり、解決が望まれている。
【0011】
さらにまた、非晶性ポリエステル樹脂基材シートに導電性粉末と熱可塑性樹脂を固形成分とする導電性塗膜が形成された導電性合成樹脂シートが開示されているが、非晶性樹脂は一般的に耐熱性が悪いため導電性塗膜形成時の生産性が悪く、また高価であるなどの欠点がある(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−323932号公報
【特許文献2】
特開2000−15764号公報
【特許文献3】
特開2000−263728号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の導電性ポリエステルシートの有する問題点を解決し、内容物である電子部品の保護のために十分な導電性性能と十分な機械的強度を有し、しかも低コストの導電性ポリエステルシートを与える基材シート、それからなる導電性ポリエステルシートやこれを成形して得たキャリアテープ等の電子部品用包装容器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の導電性ポリエステルシート用基材シートは、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル(A)を主体とし、これと、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル(A)を主体とし、これと、主たる酸成分がテレフタル酸、グリコ−ル成分が95〜20モル%のエチレングリコ−ルおよび5〜80モル%の1、4−シクロヘキサンジメタノ−ルから構成されるポリエステル(B)と、を配合したポリエステル組成物からなる導電性ポリエステルシート用基材シートであって、前記基材シートの極限粘度が0.60デシリットル/グラム以上、共重合されたジエチレングリコール含有量が1.0〜5.0モル%であることを特徴とする導電性ポリエステルシート用基材シートである。
【0015】
この場合において、前記基材シートがポリエステル(A)とポリエステル(B)とを99:1〜80:20の重量比で含有するものであることができる。
【0016】
この場合において、前記ポリエステル基材シートの環状オリゴマーの含有量が0.70重量%以下であることができる。
【0017】
ここで、ポリエステルは一般に種々の重合度の環状オリゴマーを含有しているが、本発明でいう環状オリゴマーとは、エチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステルから由来する環状3量体のことである。
【0018】
この場合において、前記基材シートの引張衝撃強度が、20KJ/m2以上であることができる。
【0019】
この場合において、上記の基材シートの少なくとも片面に、カーボンブラックを含有する導電性組成物からなるコート層を設けたことを特徴とする導電性ポリエステルシートである。
【0020】
この場合において、上記の導電性ポリエステルシートを用いてなる電子部品用包装容器であり、前記電子部品用包装容器が、エンボスキャリヤーテープであることを特徴とする電子部品用包装容器である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の導電性ポリエステルシート用基材シートおよびそれからなる導電性ポリエステルシートの実施の形態を具体的に説明する。
【0022】
本発明に係る主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステル(A)は、エチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステル、好ましくはエチレンテレフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステル、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を95モル%以上含む線状ポリエステル、即ち、ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称)である。
【0023】
本発明に係る前記ポリエステル(A)の共重合に使用されるジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニールー4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0024】
本発明に係る前記ポリエステル(A)の共重合に使用されるグリコールとしては、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0025】
さらにポリエステル(A)が実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0026】
また本発明に係るポリエステル(B)は、主たる酸成分が芳香族ジカルボン酸、グリコ−ル成分が95〜20モル%のエチレングリコ−ルおよび5〜80モル%の1、4−シクロヘキサンジメタノ−ルから構成されるポリエステルであり、グリコ−ル成分中の1、4−シクロヘキサンジメタノ−ルの割合は、好ましくは10〜70モル%である。CHDMのトランス体/シス体のモル比率は任意でよいが、一般的には40/60〜80/20のものが用いられる。
また、これら以外のモノマー成分として、他のジカルボン酸成分や他のグリコ−ル成分を少量用いてもよい。
【0027】
本発明では、ポリエステル(B)は芳香族ジカルボン酸が85モル%以上、さらには90モル%以上、特には95モル%以上であることが好ましい。なお、芳香族ジカルボン酸の中でもテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸が80モル%以上、さらには90モル%以上、特には95モル%以上であることが好ましい。
【0028】
前記ポリエステルに共重合される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。また、これらの酸成分の量は、生成するポリエステルの全ジカルボン酸成分に対して通常10モル%以下である。
【0029】
前記ポリエステルに共重合される共重合成分としてのグリコ−ルとしては、ジエチレングリコ−ル、1,3−トリメチレングリコ−ル、2,4−ジメチルー2−エチルヘキサンー1,3−ジオール、2,2−ジメチルー1,3−プロパンジオール、2−エチルー2−ブチルー1,3−プロパンジオール、テトラメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ダイマーグリコール等の脂肪族グリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ル、レゾルシノ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルS、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ルなどが挙げられる。また、これらのグリコ−ル成分の量は、生成するポリエステルの全グリコ−ル成分に対して通常15モル%以下である。
【0030】
さらに、ポリエステル(A)と同様に、前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコ−ル成分としてグリセリン、ペンタエリスリト−ルを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0031】
上記のポリエステル(A)およびポリエステル(B)は、従来公知の製造方法によって製造することが出来る。即ち、ポリエステル(A)については、代表例としてPETについて説明する。テレフタール酸とエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒としてGe、Sb、Ti、またはAlの化合物のうち少なくとも一つの化合物および安定剤としてリン酸系化合物、亜リン酸系化合物、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物のうち少なくとも一つのリン化合物を用いて、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、エステル交換触媒としてマグネシウム化合物、カルシウム化合物、コバルト化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物などの化合物のうち少なくとも一つの化合物を用いてテレフタル酸ジメチルとエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、前記の重縮合触媒や前記のリン化合物から選ばれた安定剤を用いて減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造することができる。さらに、環状オリゴマーやアセトアルデヒドを減少させると同時に極限粘度を上げるために不活性気流雰囲気下で固相重合を行ってもよい。
【0032】
前記のエステル化反応、エステル交換反応や溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、これらの反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は、連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0033】
またポリエステル(B)は、テレフタル酸、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」と称することがある)及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒として前記の金属化合物および安定剤として前記のリン化合物を用いて、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、エステル交換触媒として前記の金属化合物を用いてテレフタル酸ジメチル、エチレングリコール、CHDM及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、前記の重縮合触媒や前記のリン化合物を用いて減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造することができる。
【0034】
重縮合触媒として用いられるGe化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。Ge化合物を使用する場合、その使用量は熱可塑性ポリエステル中のGe残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
【0035】
重縮合触媒として用いられるSb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマー中のSb残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
【0036】
重縮合触媒として用いられるTi化合物としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネートおよびそれらの部分加水分解物、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマー中のTi残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
【0037】
重縮合触媒として用いられるAl化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムiso−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso−プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。Al化合物は、生成ポリマー中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0038】
本発明に係るポリエステル(A)の極限粘度は0.63デシリットル/グラム以上、さらには0.65デシリットル/グラム以上、特には0.70デシリットル/グラム以上が好ましく、また、2.00デシリットル/グラム以下、さらには1.50デシリットル/グラム以下、特には1.00デシリットル/グラム以下の範囲であることが望ましい。極限粘度が0.63デシリットル/グラム未満では、導電性ポリエステルシート用基材シートの極限粘度が0.60デシリットル/グラムを保持することが非常に難しく、後記する様に得られた基材シートの引張衝撃強度特性が極端に低下し問題となることがある。また、2.00デシリットル/グラムを越えるポリエステルを得るには長時間の固相重合反応によるしかなく、コストアップにつながり、経済性で問題となることがる。
【0039】
また本発明に係るポリエステル(B)の極限粘度は、0.45デシリットル/グラム以上、さらには0.50デシリットル/グラム以上、特には0.55デシリットル/グラム以上が好ましく、また、1.50デシリットル/グラム以下、さらには1.20デシリットル/グラム以下、特には1.00デシリットル/グラム以下の範囲であることが望ましい。極限粘度が0.45デシリットル/グラム未満では、チップ化が困難であり、また前記基材シートの機械的特性、特に耐衝撃性が劣り問題となる。1.50デシリットル/グラムを越える場合は重合時の分解が顕著となり色相その他の品質や経済性で問題となる。
【0040】
本発明に係るポリエステル(A)および(B)のチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.0〜5mm、好ましくは1.3〜4.5mm、さらに好ましくは1.5〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜40mg/個の範囲が実用的である。
【0041】
本発明の導電性ポリエステルシート用基材シートは、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル(A)を主成分として、これと、主たる酸成分がテレフタル酸、グリコ−ル成分が95〜20モル%のエチレングリコ−ルおよび5〜80モル%の1、4−シクロヘキサンジメタノ−ルから構成されるポリエステル(B)と、を配合したポリエステル組成物からなる導電性ポリエステルシート用基材シートであって、前記基材シートの極限粘度が0.60デシリットル/グラム以上、共重合されたジエチレングリコール含有量が1.0〜5.0モル%であることを特徴とする導電性ポリエステルシート用基材シートである。
【0042】
本発明の導電性ポリエステルシート用基材シートは、前記ポリエステル(A)に前記ポリエステル(B)を配合したポリエステル組成物からなる基材シートであり、ポリエステル(B)を配合することによって、後記するようにアンカーコート層や導電層との接着性が改良され、従来から使用されているPETシートのみから構成される導電性PETシートを用いる際に生じるキャリアーテープ成形時の導電層の剥離の発生や亀裂の発生により導電性が低下するという欠点が解決できる。またポリエステル(B)を配合することによって、キャリアテープ成形時に基材シートが結晶化しにくくなると同時に延伸性が改良されるため成形ポケット部がより均一な厚みに延伸されるので、導電層もより均一な厚みになると推定され、成形により前記導電性PETシートの導電性が低下するという欠点も解決できる。また、ポリエステル(B)を配合することによって、基材シートの機械的特性、特に引張衝撃特性が大幅に改良され、特にキャリアーテープ用導電性シート用の基材シートとして利用した場合には、電子部品を高速度で実装する工程においてシートに働く種々の外力に抵抗できる機械的特性を保持しているために、従来から使用されている導電性PETシート製エンボスキャリアーテープを用いる際に発生する割れや引裂きなどの問題が解決できるのである。さらにまた、電子部品を実装したキャリアーテープは輸送時や保管時に思わぬ外力がかかる場合があり、本発明の基材シートからの導電性シートを用いると、この際にも割れ発生が防止でき、電子部品を無傷の状態でユーザーに届けることが可能となるのである。
【0043】
本発明の基材シートは、前記ポリエステル(A)と前記ポリエステル(B)とを配合したポリエステル組成物を後記するように溶融押出法によって製造するが、条件によっては押出機での溶融時にポリエステル(A)とポリエステル(B)とがお互いにエステル交換反応を起こすことが判った。そしてエステル交換反応の程度は、用いるポリエステルの触媒種や含有量、ポリエステルの重合度、溶融温度や溶融時間などの押出条件、押出機の種類などによって変化することも判った。導電性ポリエステルシート用基材シートの機械的特性や導電層の接着性などの特性は、エステル交換がある程度進行したほうが改善されるということが判って来ている。
【0044】
また本発明の基材シートは、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを99:1〜80:20の重量比で含有することが好ましく、この比は好ましくは97:3〜、さらに好ましくは95:5〜であり、また、〜85:15、さらに好ましくは〜90:10の範囲であることが望ましい。
【0045】
ポリエステル(B)の配合量が1重量%以下の場合は、基材シートとアンカーコート層や導電層との接着性が悪く、キャリアーテープ成形時に導電層が剥離するという問題が生じる場合がある。またこの基材シートからのキャリアーテープに電子部品を高速度で実装する工程などにおいてPETシート製キャリアーテープと同様に前記のとうり割れなどの問題が発生する場合がある。また20%を越える場合には、シートの耐熱性が低下し、導電層やアンカーコート層をコーティングする際の乾燥温度が上げられないために、前記コート層からの溶剤の除去に時間がかかり、結果として生産性が悪くなりコスト高になる場合がある。また溶剤によるクレージングが発生し易くなり、導電性シートの引張衝撃強度特性が低下するという問題も生じる場合がある。
【0046】
本発明の導電性ポリエステルシート用基材シートの極限粘度は、好ましくは0.65デシリットル/グラム以上、より好ましくは0.70デシリットル/グラム以上、さらに好ましくは0.75デシリットル/グラム以上、最も好ましくは0.80デシリットル/グラム以上である。得られた基材シートの極限粘度が0.60デシリットル/グラム未満の場合は、引張衝撃強度が20KJ/m2に達しない場合があり、前記基材シートから得られたエンボスキャリアーテープに電子部品を実装する工程や電子部品を収納後の輸送工程などに於いて衝撃力がかかる場合に割れが発生し、問題となる場合がある。特に、高速実装時にエンボスキャリアーテープが破断してしまうという大きな欠点がある。基材シートの極限粘度の上限値は1.5デシリットル/グラム程度で、これ以上の基材シートを得ようとすると溶融粘度が高いために一般的な製膜設備ではシート製膜が難しくなり、また前記のとうり原料ポリエステル(A)の生産が経済性で問題となる場合がある。
【0047】
本発明の導電性ポリエステルシート用基材シートのDEG含有量は、好ましくは1.1モル%以上、また、好ましくは4.0モル%以下、さらに好ましくは3.0モル%以下の範囲である。DEG含有量が1.0モル%未満の場合は、得られる基材シートと後記するアンカーコート層との接着性が弱くなり、キャリアーテープ製造時に剥がれたりすることがあり、問題である。また、DEG含有量が5.0モル%を超える場合は、アンカーコート層や導電層をコートする際に基材シート表面に溶剤によるクレージングが発生し易くなり、このため導電性ポリエステルシートの引張衝撃強度特性が低下したり、またキャリアーテープなどの成形時に割れが発生したりして問題となることがある。
【0048】
本発明の導電性ポリエステルシート用基材シートは、前記のポリエステル(A)を主成分として、これとポリエステル(B)を配合したポリエステル組成物を用いて、単軸押出機や二軸押出機による従来からのTダイ押出法により溶融し、ダイスから押出して所定の幅、厚さの未延伸シートとして得ることができる。この際、ポリエステル(A)およびポリエステル(B)は真空乾燥機や脱湿気体による乾燥機を用いて水分を50〜100ppm以下に乾燥することが必要である。
【0049】
本発明のポリエステル基材シートの極限粘度を0.60デシリットル/グラム以上にするには、溶融製膜時の極限粘度の低下を考慮しながら、ポリエステル(B)の極限粘度およびその配合量によってポリエステル(A)の極限粘度を適宜設定することが重要である。
【0050】
また本発明のポリエステル基材シートのDEG含有量を1.0〜5.0モル%にするには、ポリエステル(A)及びポリエステル(B)のDEG含有量が、この範囲に入るそれぞれのポリマーを使用することが必要である。
【0051】
本発明に係るポリエステル(A)およびポリエステル(B)のDEG含有量を前記の範囲に調節する製造方法としては、共重合成分として所定量のジエチレングリコールを反応系に添加して共重合させる方法やエステル化法による場合はエステル化時にDEG生成抑制剤を適量用いる方法などの方法を採用することができる。
【0052】
本発明に係るポリエステルのDEG含量を制御するために、エステル化工程に塩基性化合物、たとえば、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等の第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等を加えることが出来る。
【0053】
本発明のポリエステル基材シート中の環状オリゴマーの含有量は、約0.70重量%以下、好ましくは0.65重量%以下、より好ましくは0.60重量%以下、さらに好ましくは0.50重量%以下、最も好ましくは0.40重量%以下である。環状オリゴマーの含有量が0.70重量%を越える場合には、得られる基材シートと後記する導電性コート層またはアンカーコート層との接着性が弱くなり、キャリヤーテープ製造時に剥がれたりすることがあり、問題である。
【0054】
また、環状オリゴマーの含有量が0.70重量%を越えると、
▲1▼シート上に環状オリゴマーが析出してピンホールとなる。
▲2▼シートから脱落したオリゴマーが塗工液に混入し、これがグラビアロールの目詰まりを引き起こし、塗工ムラが発生する
▲3▼導電層上に環状オリゴマーが析出し、これが部品に付着してハンダ付け不良のトラブルを引き起こす
などの問題が生じやすい。なお、導電層上にまでオリゴマーが析出するのは、導電層等の塗工溶媒によりシート中の環状オリゴマーがシート中を移動しやすくなったり、乾燥時の加熱工程が影響していることも原因として考えられる。
本発明のポリエステル基材シートの環状オリゴマーの含有量を0.70重量%以下に維持するためには、少なくとも約0.68重量%以下、好ましくは0.60重量%以下、さらに好ましくは0.50重量%以下、最も好ましくは0.40重量%以下のポリエステル(A)を用いて基材シートを得ることが好ましい。なお、ポリエステル(A)の環状オリゴマーを0.68重量%以下に低減するための方法としては、前記した固相重合法、加熱処理法などを採用することができる。また、基材シートの成型時にオリゴマーが増加するため、シート成型時には、ポリエステルの乾燥を十分に行なう、成形温度を必要以上に高温にしない、溶融時間を短くするなどの点に留意する必要がある。
なお、オリゴマー量は現実的な生産の面からは0.05重量%以上であることが好ましい。
【0055】
本発明のポリエステル基材シートの引張衝撃強度は、20KJ/m2以上、好ましくは23KJ/m2以上、さらに好ましくは25KJ/m2以上、もっとも好ましくは30KJ/m2以上であることが望ましい。
【0056】
ポリエステルの基材シートの引張衝撃強度を20KJ/m2にする方法としては、ポリエステル基材シートの極限粘度を0.60デシリットル/グラム以上にすること、ポリエステル(B)を1重量%以上ブレンドすることおよび前記基材シートのDEG含有量を5.0モル%以下にすること、等を適宜用いる。
【0057】
ポリエステル基材シートの引張衝撃強度が20KJ/m2未満の場合は、導電層を塗布した後の耐衝撃性が低くなり、キャリアテープなどの加工時、電子部品実装時などに於いて割れが発生する場合がある。
【0058】
通常、ポリエステルの基材シートに導電層を塗布する際は有機溶媒を用いるが、この有機溶媒により基材の表面にクラックが入ったりして、耐衝撃性が低下するが、この低下を見越して、基材としては高い耐衝撃性を確保する必要がある。
【0059】
また本発明に係るポリエステル組成物には、さらにポリエステル・ポリエーテルエラストマーやポリエステル・ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性ポリエステルエラストマー、主として芳香族ジカルボン酸とダイマー酸およびエチレングリコールからなる柔軟性ポリエステル、主として芳香族ジカルボン酸およびエチレングリコールやブチレングリコール、ダイマーグリコール等からなる柔軟ポリエステル、ポリプロピレンテレフタレートなどを本発明の目的とする特性を損なわない範囲で添加することができる。
【0060】
また本発明に係るポリエステル組成物には、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を本発明の目的とする特性を損なわない範囲で適宜添加することができる。
【0061】
また本発明のポリエステル基材シートは、前記ポリエステル組成物からなる単層シートであっても二種以上のポリエステルを積層した多層シートであってもよい。多層シートの場合は、いずれの構成する層においてもその極限粘度は、0.60デシリットル/グラム以上であることが望ましい。
本発明のポリエステル基材シートの厚さは、使用目的によっても異なるが一般に0.1〜1.5mmの範囲である。
【0062】
本発明に係るポリエステル組成物よりなる基材シートの少なくとも片面には、カーボンブラックを含む導電性組成物からなるコート剤がコーティングされる。前記ポリエステル基材シートと導電性組成物層との間に充分な密着強度が得られない場合は、基材シート塗布面にコロナ処理を行ったり、別のアンカーコート剤でプライマー処理等を行っても差し支えない。また、導電性ポリエステルシートの保護、電子部品用包装容器を製造する際などでの導電性シートの滑り性の向上、あるいはブロッキング防止などのために前記導電性組成物からなる層の上にトップコート層を設けることが好ましい。
【0063】
本発明において用いられる導電性コート剤は、樹脂、カーボンブラックを主成分とする導電性物質、分散剤、有機溶剤などを主成分として含有する。
樹脂としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂等が用いられ用いられ、公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
【0064】
導電性カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。特に好ましいカーボンブラックとしては、ライオン社製ケッチェンブラックEC、キャボット社製バルカンXC−72、電気化学工業社デンカブラックなどが挙げられ、その他、ナフサなどの炭化水素を水素及び酸素の存在下で部分酸化して、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを製造する際に副生するカーボンブラック、あるいはこれを酸化または還元処理したカーボンブラックなどが好ましい。
導電性カーボンブラックの平均粒子径が0.08mm未満のものが好ましく使用される。
またアルカリ金属化合物を添加することで、さらに電気特性を向上させることができる。特に好ましいアルカリ金属化合物としては、リチウム化合物であり、例えばLiCl、LiBr、Lil、LiSCN、LiBF4 、LiAsF6 、LiClO4 、LiCF3SO3 、LiC6 F12SO3 、LiHgl2 、LiAlH4 、LiBH4 、Li2 CO3などの無機化合物のほか、カルボキシル基、フェノール基、スルホン酸基、リン酸基、亜リン酸基などの酸基を有する有機化合物のリチウム塩を用いることができ、これらの例としてラウリル酸リチウム、ステアリン酸リチウム、ロジン酸リチウムなどが挙げられる。これらのリチウム化合物のうち、好ましくはLiClである。リチウム化合物の配合量は、リチウム原子換算で10〜50,000ppm、好ましくは50〜10,000ppm、さらに好ましくは100〜1,000ppmである。
【0065】
副次的に用いられる導電性物質としては、白艶華、酸化錫で被覆した酸化チタン粒子、ニッケル、銅、ステンレス、アルミ、酸化スズ、亜鉛、銀、金属コートガラス粉または金属コートガラスビーズ、酸化亜鉛ウィスカー、金属コート酸化亜鉛ウィスカーなどの導電性化合物などが用いられる。
【0066】
本発明に用いられるカーボンブラック用の分散剤としては、カルボン酸アマイド系が用いられるが、その中でも下記一般式(1)で示されるテトラアミド化合物を含有するカルボン酸アマイド系が好ましく、テトラアミド化合物を少なくとも10重量%以上含有するカルボン酸アマイド系がより好ましい。
R4−CONH−R2−HNOC−R1−CONH−R3−HNOC−R5 (1)
(上記一般式(1)において、R1 は二価の有機基、R2 およびR3 はそれぞれ同じかまたは異なる二価の有機基、R4 およびR5 はそれぞれ同じかまたは異なる一価の有機基で表されるテトラアミド化合物である。)
【0067】
上記一般式(1)で表されるテトラアミド化合物としては、例えばエチレンジアミン−ステアリン酸−セバシン酸重縮合物、エチレンジアミン−ステアリン酸−アジピン酸重縮合物及びメタキシレンジアミン−ステアリン酸−セバシン酸重縮合物等が挙げられる。本発明に用いられるカルボン酸アマイド中には、下記一般式(2)で示される化合物を含んでいてもよい。
R7−CONH−R6−HNOC−R8 (2)
上記一般式(2)において、R6 は二価の有機基、R7 およびR8 はそれぞれ同じかまたは異なる一価の有機基で表されるジアミド化合物である。
【0068】
上記一般式(2)で表されるジアミド化合物としては、例えばエチレン−ビス−ステアリン酸アミド、エチレン−ビス−パルミチン酸アミド及びエチレン−ビス−オレイン酸アミド等が挙げられる。
【0069】
また有機溶剤としては、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0070】
各主成分の含有量は樹脂分が1〜50重量%、カーボンブラックが1〜15重量%、及び溶剤が35〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0071】
導電性コート剤は、後記する方法によって基材シート、または基材シート上のアンカーコート層の上にコートされるが、表面抵抗値が1×106Ω以下のような高導電性を要求される場合には、導電性コート層の上にさらに少なくとも一層の導電性組成物をコートすることが好ましい。この場合、一層目と二層目の導電性コート剤の組成は、同じであってもまた異なっていてもよい。
【0072】
導電性組成物からなるコート層の厚みは、0.5〜30μmであることが好ましい。
【0073】
また、本名発明において用いられるアンカーコート剤は、前述のように、基材シートへの導電性コート剤の密着性向上と導電性コート剤中の有機溶剤から保護するために、基材シートの表面に最初に施しておくことが好ましい。
【0074】
アンカーコート剤としては、樹脂、硬化剤、カーボンブラックを主成分とする導電性物質、分散剤、有機溶剤などを主成分として含有する。
【0075】
樹脂としては、基材シートとの接着力が大きく、キャリヤテープの熱成形時に基材シートと共に延伸されるため、延伸性のある樹脂から選択するのが好ましいく、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が用いられる。この中でも、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂と硬化剤からなるコート剤が用いられる。必要によりそれぞれ単独、または併用して使用することができる。
【0076】
導電性カーボンブラックとしては、前記と同じものを用いることができる。
また分散剤としては、前記と同じものを用いることができる。
【0077】
また有機溶剤としては、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0078】
各主成分の含有量は樹脂分が1〜50重量%、カーボンブラックが1〜15重量%、及び溶剤が35〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0079】
本発明の導電性ポリエステルシートにおいては、アンカーコート剤としては、樹脂、硬化剤を主剤とし、カーボンブラックを含有するコート剤が最適である。
【0080】
本発明の硬化剤としては、アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0081】
アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂とは、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどの炭素原子数1〜4のアルコールによってアルキルエーテル化されたホルムアルデヒドあるいはパラホルムアルデヒドなどと尿素、N,N−エチレン尿素、ジシアンジアミド、アミノトリアジン等との縮合生成物であり、メトキシ化メチロール−N,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが、加工性の面から好ましいのは、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、またはメトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミンであり、それぞれ単独、または併用して使用することができる。
【0082】
エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1、4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0083】
さらにイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0084】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1、3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0085】
これらの硬化剤には、その種類に応じて選択された公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
【0086】
アンカーコート層の厚みは、通常、0.01〜10μmとする。
また本発明においては、導電性組成物コート層の上にさらにトップコート層を形成しておくことが好ましい。
【0087】
またトップコート層は、樹脂、無機粒子や不活性粒子、ワックスおよび有機溶剤からなるトップコート剤をなど導電性コート層の上に塗布する。
【0088】
樹脂としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂等が用いられ、必要により公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
【0089】
無機粒子としては、酸化ケイ素、タルク、マイカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等、また不活性粒子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子等などが挙げられる。
【0090】
ワックスとしては、天然ワックスや炭化水素系ワックスが用いられる。天然ワックスとしては、ラノリン等の動物性ワックス、ひまし油水添ワックス等の植物性ワッスクス、モンタンロウ等の鉱物性ワックスが挙げられる。
また炭化水素系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられる。
【0091】
有機溶剤としては、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0092】
各主成分の含有量は樹脂分が1〜50重量%、粒子分やワックス分が0.1〜10重量%及び溶剤が35〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0093】
本発明の導電性ポリエステルシートにおいては、トップコート剤としてはアクリル系樹脂を主剤とするコート剤が最も好ましく、必要により公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
【0094】
アクリル系樹脂の具体例としては、たとえば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジグリシジルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸などから選ばれた少なくとも一種からなるアクリル系樹脂、あるいは、これらの単量体と、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビリニデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン、二重結合含有ポリエステル樹脂等から選ばれる少なくとも1種以上のエチレン性不飽和単量体との共重合体などが挙げられる。
【0095】
これらの樹脂は、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基を含有、変性しても良い。
【0096】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単位を含有するアクリルは、水酸基は水酸基含有不飽和単量体を共重合して(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に導入できる。水酸基含有不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、たとえば、エチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコールまたはエポキシ化合物と、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体等を挙げることができる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選ばれる少なくとも1種以上を重合して水酸基含有有機樹脂を製造することができる。
【0097】
また、前記の各種コート剤には、前記の主成分以外に、導電性シートの成形性、ブロッキング性、導電性に影響を及ぼさない範囲で、1種以上の添加剤を適宜混合してもよい。使用する添加剤としては、特に制限はなく、たとえば、一般に使用される各種レベリング剤、染料、顔料、顔料分散剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、耐光安定剤、金属不活性化剤、過酸化物分解剤、充填剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、防食剤、防錆剤、乳化剤、鋳型脱色剤、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、静電防止剤などを挙げることができる。
トップコート層の厚みは、0.01〜10μmであることが好ましい。
【0098】
これらのアンカーコート剤、導電性コート剤およびトップコート剤の基材シートへの塗布方法としては、従来公知の浸漬法、スプレ−法、グラビヤコート法、ロールコート法等で実施すればよいが、良好な導電性及び均一なコート層膜厚を得るためには、グラビヤコート法を用いることが望ましい。
【0099】
前記のようにして得られた導電性ポリエステルシートの導電性組成物コート層側の表面抵抗値は、1×107Ω未満、好ましくは1×106Ω未満、さらに好ましくは1×105Ω未満である。また表面抵抗値の下限値は1×102Ωであり、これ未満の場合は電気を通してしまい問題である。
【0100】
また導電性ポリエステルシートからなるキャリアテープは、比較的高価な電子部品を入れることが多いためにその部品の状態を監視するために画像処理をすることが多い。画像処理を行う場合にキャリアテープ表面に光沢があると光の反射により画像処理にエラーが出やすい。したがって、導電性コート層側の表面光沢度は40%以下、好ましくは30%以下である。表面光沢度を40%以下にする方法としては、マット加工する方法や粒子状物含有導電性コート剤を最表面層にコートする方法などが挙げられる。
【0101】
本発明の導電性ポリエステルシートは、LSI、コンデンサー等の電子部品を収納運搬及び実装工程を補助するために使用されるキャリヤテープやトレー等の電子部品用包装容器に用いられる。
【0102】
本発明の導電性ポリエステルシートを用いた電子部品包装用キャリアテープの作製方法としては特に限定しないが、従来よりキャリアテープの成形方法として用いられている真空成形法、圧空成形法、プレス成形法等により作製される。また、該キャリアテープを用いて電子部品を包装した包装体の作製方法も特に限定しないが、テーピングマシンによりキャリアテープの成形ポケット部分に電子部品を挿入し、カバーテープでシールすることにより作製される。
【0103】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0104】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0105】
(2)ポリエステルのジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量]という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0106】
(3)ポリエステルの環状オリゴマーの含有量
試料をヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液に溶解し、さらにクロロフォルムを加えて希釈する。これにメタノールを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミドで定容とし、液体クロマトグラフ法より環状オリゴマーを定量した。ここで、ポリエステルが含有している環状オリゴマーのうちで最も含有量が多い環状オリゴマー(PETの場合は、環状3量体)を測定する。
【0107】
(4)シートの引張衝撃強度
ASTM−D−1822の方法によって測定する。
【0108】
(5)表面抵抗値
JIS K6911の方法にしたがって、20±2℃、65±5%RHの雰囲気下で測定する。
測定器は、三菱化学(株)のハイレスタMCP−HT450。
【0109】
(6)導電性ポリエステルシートの剥離試験
コート層表面に接着させたセロテープ(R)をコート面から剥す時に、コート面が基材シートから剥離するかどうかで以下のように評価した。
コート面が剥離せず、セロテープ(R)に全く付着しない。 :○
コート面が僅かに剥離し、セロテープ(R)に付着する。 :△
コート面が完全に剥離し、セロテープ(R)に付着する。 :×
【0110】
(7)ピンホール
導電シートを光源に透かせて観察し、ピンホールの有無を観察した。
【0111】
(8)真空成形後の密着性、導電性テスト
上記方法で得たシートを絞り率約25%の条件で真空成形した。このサンプルを前記(5)、(6)の測定方法で表面抵抗、密着性を測定した。
【0112】
(9)ポリエステル基材シートの製膜
脱湿空気を用いた乾燥機で乾燥したPET(ポリエステル(A))およびポリエステル(B)を吸湿しない条件下で所定量混合し、ベント式単軸シート製膜機で樹脂温度290℃で溶融押出し、厚さ0.3mm、幅640mmの単層PETシートを得た。
比較例ではPETのみを用いてシート製膜した。
【0113】
(10)コート法
先ず、グラビア印刷機(中島精器エンジニアリング製 GX−II型)を用いて、下記アンカーコート剤を基材シートに印刷し、約80℃で加熱処理してアンカーコート層を形成する。
次いで、印刷版としてグラビアダイレクトべた版(線画部;1インチ当たり175線、セルの深さ35μm)を使用し、グラビア印刷機(中島精器エンジニアリング製 GX−II型)を用いて、下記の導電性コート剤を版上で回転させ、コート剤バット中の溶剤を飛散させながらコート剤粘度を上げ印刷時にスクリーン目が出る状態を探し、印刷速度70m/分で上記基材シート上にべた印刷した。このときの導電性コート剤の粘度はザーンカップ法(3号)で27秒であった。次いで、導電性コート剤の印刷層を80℃で熱硬化し、第1層目の導電性コート剤層を形成した。この第1層上に位相をずらして、同様にして第2層目をそれぞれ行った。このとき、第2層目印刷時の導電性コート剤の粘度は23秒であった。
次いで、第2層目の積層を終えた導電性コート層上に、下記のトップコート剤を上記の導電性コート剤の場合と同様のグラビア印刷法により印刷し、トップコート層を形成させて、本発明の導電性ポリエステルシートを得た。
アンカーコート剤:大阪インキ製造製のOYT−UDA黒
導電性コート剤: 大阪インキ製造製の導電性コート剤、OYT−EC
トップコート剤:大阪インキ製造製のトップコート剤OYT−MTメジウムB
【0114】
(実施例1)
固相重合により得られた、極限粘度1.00デシリットル/グラム、環状オリゴマ−含有量0.32重量%、DEG含有量1.3モル%のPET100重量部とイーストマンケミカル社製のKodar PETG6763(極限粘度0.78デシリットル/グラム、共重合したCHDM含有量=30モル%、DEG含有量=5モル%)5重量部を用いて、前記(9)の方法により製膜し基材シートを得た。
【0115】
これを前記(10)の方法でコート処理し、導電性シートを得た。表1に記載したように、基材シートの極限粘度は0.85デシリットル/グラム、環状オリゴマ−含有量0.38重量%、DEG含有量は1.5モル%、引張衝撃強度は35KJ/m2と高く、コート処理後の導電性シートの表面抵抗値は1×104Ω、またセロテープ(R)剥離試験は「○」と問題なかった。
【0116】
本実施例の導電性ポリエステルシートを用いて、前記(8)の方法により評価した真空成形後の表面抵抗値は5×104Ω、またセロテープ(R)剥離試験は「○」と特に問題はなかった。また、キャリアテープ用成形機で圧空成形によりキャリアテープを作製したが、特に問題はなく良好なキャリアテープが得られた。さらに得られたキャリアテープを用いて、テーピングマシンにより、成形ポケット部に電子部品としてICを挿入してカバーテープでシールしたところ、特に問題なく電子部品用容器を作製できた。
【0117】
(実施例2)
固相重合により得られた、極限粘度1.00デシリットル/グラム、環状オリゴマ−含有量0.31重量%、DEG含有量2.0モル%のPET100重量部と前記のイーストマンケミカル社製のKodar PETG6763、10重量部を用いて、実施例1と同様にし製膜し基材シートを得た。
【0118】
実施例1と同様にしてコート処理し、導電性シートを得た。表1に記載したように、基材シートの極限粘度は0.85デシリットル/グラム、環状オリゴマ−含有量0.38重量%、DEG含有量は2.3モル%、引張衝撃強度は41KJ/m2と高く、コート処理後の導電性シートの表面抵抗値は1×104Ω、またセロテープ(R)剥離試験は「○」と問題なかった。
【0119】
本実施例の導電性ポリエステルシートを用いて、実施例1と同様にして前記(8)の方法により評価した真空成形後の表面抵抗値は3×104Ω、またセロテープ(R)剥離試験は「○」と特に問題はなかった。また、キャリアテープ用成形機で圧空成形によりキャリアテープを作製したが、特に問題はなく良好なキャリアテープが得られた。さらに得られたキャリアテープを用いて、テーピングマシンにより、成形ポケット部に電子部品としてICを挿入してカバーテープでシールしたところ、特に問題なく電子部品用容器を作製できた。
【0120】
(実施例3)
固相重合により得られた、極限粘度1.00デシリットル/グラム、環状オリゴマ−含有量0.32重量%、DEG含有量1.3モル%のPET100重量部とイーストマンケミカル社製のKodar PETG6763、20重量部を用いて、実施例1と同様にし製膜し基材シートを得た。
【0121】
実施例1と同様にしてコート処理し、導電性シートを得た。表1に記載したように、基材シートの極限粘度は0.85デシリットル/グラム、環状オリゴマ−含有量0.38重量%、DEG含有量は1.5モル%、引張衝撃強度は46KJ/m2と高く、コート処理後の導電性シートの表面抵抗値は1×104Ω、またセロテープ(R)剥離試験は「○」と問題なかった。
【0122】
本実施例の導電性ポリエステルシートを用いて、実施例1と同様にして前記(8)の方法により評価した真空成形後の表面抵抗値は2×104Ω、またセロテープ(R)剥離試験は「○」と特に問題はなかった。また、キャリアテープ用成形機で圧空成形によりキャリアテープを作製したが、特に問題はなく良好なキャリアテープが得られた。さらに得られたキャリアテープを用いて、テーピングマシンにより、成形ポケット部に電子部品としてICを挿入してカバーテープでシールしたところ、特に問題なく電子部品用容器を作製できた。
【0123】
(比較例1)
溶融重縮合のみで得られた、極限粘度0.59デシリットル/グラム、環状オリゴマ−含有量1.1重量%、DEG含有量1.3モル%のPETを用いた基材シートを前記(10)記載の方法で処理し、導電性シートを得た。表1に記載したように、基材シートの極限粘度は0.53デシリットル/グラム、環状オリゴマ−含有量1.2重量%、DEG含有量は1.3モル%、引張衝撃強度は10KJ/m2とかなり低く、コート処理後の導電性シートの表面抵抗値は1×104Ωと問題なかったが、セロテープ(R)剥離試験は「×」、またピンホールも少量認められ問題であった。
【0124】
本実施例の導電性ポリエステルシートを用いて、実施例1と同様にして前記(8)の方法により評価した真空成形後の表面抵抗値は1×109Ω、またセロテープ(R)剥離試験は「×」と悪くなっていた。また、本導電性ポリエステルシートを用いて、実施例1と同様の方法でキャリアーテープを作成し、得られたキャリアテープを用いて、テーピングマシンにより、成形ポケット部に電子部品としてICを挿入する実装試験を行なったが、前記ポケット部に割れが生じ、またコート層が簡単に剥がれ製品としての歩留まりが非常に悪く問題であった。
【0125】
(比較例2)
溶融重縮合のみで得られた、極限粘度0.58デシリットル/グラム、環状オリゴマ−含有量1.1重量%、DEG含有量10.6モル%のPETとイーストマンケミカル社製のKodar PETG6763、10重量部を用いて、実施例1と同様にし製膜し基材シートを得た。
【0126】
表1に記載したように、基材シートの極限粘度は0.53デシリットル/グラム、環状オリゴマ−含有量1.2重量%、DEG含有量は10.0モル%、引張衝撃強度は16KJ/m2と低く、コート処理後の導電性シートの表面抵抗値は1×104Ω、セロテープ(R)剥離試験は「○」と問題なかったが、ピンホールが少量認められ問題であった。
【0127】
本実施例の導電性ポリエステルシートを用いて、実施例1と同様にして前記(8)の方法により評価した真空成形後の表面抵抗値は1×108Ω、またセロテープ(R)剥離試験は「×」と悪くなっていた。また、本導電性ポリエステルシートを用いて、実施例1と同様の方法でキャリアーテープを作成し、得られたキャリアテープを用いて、テーピングマシンにより、成形ポケット部に電子部品としてICを挿入する実装試験を行なったが、前記ポケット部に割れが生じ、またコート層が簡単に剥がれ製品としての歩留まりが非常に悪く問題であった。
【0128】
【表1】
【0129】
【発明の効果】
本発明による導電性ポリエステルシート用基材シートは、カーボンブラックを練り込むことによって生ずる耐折強度、衝撃強度などの機械的強度の低下がなく、これより得られた導電性ポリエステルシートからなる電子部品用包装容器の内容物である電子部品の保護のために十分な導電性性能と十分な機械的強度を有し、しかも低コストの導電性ポリエステルシートを与える基材シートとして最適である。
Claims (1)
- エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル(A)を主体とし、これと、主たる酸成分がテレフタル酸、グリコ−ル成分が95〜20モル%のエチレングリコ−ルおよび5〜80モル%の1、4−シクロヘキサンジメタノ−ルから構成されるポリエステル(B)と、を配合したポリエステル組成物からなる導電性ポリエステルシート用基材シートであって、前記基材シートの極限粘度が0.60デシリットル/グラム以上、共重合されたジエチレングリコール含有量が1.0〜5.0モル%であることを特徴とする導電性ポリエステルシート用基材シート。
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