JP2004175848A - 脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】水相の硝酸性窒素を高選択性で且つ低コストで低減できる脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】好気性条件下において60〜100%の分解率、嫌気性条件下において60〜100%の分解率を示す生分解性樹脂を含有する生分解樹脂成形体である。脱窒作用を有し、水相に配置される。
嫌気性環境を形成できる孔部を有する。水酸化カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムなどのpH調整剤を含有する。
ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリスチレン、AS樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂及びABS樹脂などの熱可塑性樹脂を含有する。
【選択図】 なし
【解決手段】好気性条件下において60〜100%の分解率、嫌気性条件下において60〜100%の分解率を示す生分解性樹脂を含有する生分解樹脂成形体である。脱窒作用を有し、水相に配置される。
嫌気性環境を形成できる孔部を有する。水酸化カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムなどのpH調整剤を含有する。
ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリスチレン、AS樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂及びABS樹脂などの熱可塑性樹脂を含有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、好気性条件下においても嫌気性条件下においても分解する所定の生分解性樹脂を用いた生分解性樹脂成形体に係り、更に詳細には、水相の硝酸性窒素濃度を低減するのに有用な生分解性樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機・無機肥料の使用、生活排水や工場排水の浸透、産業廃棄物などの投棄によって、硝酸塩や亜硝酸塩などの硝酸性窒素が水相に多く存在するようになっており、河川、湖沼、海洋の汚染が進行している。
かかる硝酸性窒素は、人体内で還元されて窒息症状のメトヘモグロビン血症を引き起こす原因物質となったり、発癌性の疑いがあるN−ニトロソ化合物を生成する物質となることが知られている。
これに対し、従来は、特開2001−300509号公報や特開平11−128902号公報に記載されているように、イオン交換法、逆浸透膜処理法、電気透析法、及び生物学的脱窒法などによって硝酸性窒素を除去していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の硝酸性窒素除去方法においては、以下のような問題点があった。
(1)イオン交換法
イオン交換法は、R−Cl型の強塩基性陰イオン交換樹脂を用いる方法であるが、硫酸イオンも樹脂に捕捉してしまうことがあり、イオン交換樹脂の再生に高塩素濃度の再生水による処理を必要とし、処理コストが高い。
【0004】
(2)逆浸透膜処理方法
逆浸透膜処理方法は、半透膜を用い機械的な圧力をかけて再生水を得る方法であるが、コストが高く、また硝酸イオン以外のイオンも同時に除去されてしまうので、硝酸のみを選択的に除去することが困難である。
【0005】
(3)電気透析法
電気透析法は、透析膜を用い荷電下で硝酸を分離する方法だが、対象水の塩分濃度が高いと電力消費量が大きく、塩分濃度が低いと電気抵抗が大きくなるため、最適な塩分濃度範囲を設定することが困難であるばかりか、逆浸透膜処理方法と同様に硝酸除去の選択性に劣る。
【0006】
(4)生物学的脱窒法
生物学脱窒法は、例えばシュードモナスデニトリフィカンス(Pseudomonas denitrificans)などの従属栄養性脱窒菌を用いる方法であり、脱窒に当たり水素供与体となる有機炭素源が必要とされる。
従来、有機炭素源としてメタノールが使用されており、この場合は次の反応に従って脱窒が進行する。
2CH3OH+2NO3 −→2CO2+4H2O+H2↑
よって、反応に十分なメタノールが存在すれば、硝酸は高い選択性をもって除去されるが、メタノールは水溶性であるため、脱窒反応に利用されなかった余剰メタノールが流出して二次汚染を生ずる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水相の硝酸性窒素を高選択性で且つ低コストで低減できる脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、所定の生分解性樹脂を用いることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体は、生分解性樹脂を有効成分とし、水相の脱窒菌による脱窒反応を起こして、水相の硝酸性窒素濃度を低減することを特徴とする。
更に、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の更に他の好適形態は、上記生分解性樹脂は、好気性条件下において60〜100%の分解率、嫌気性条件下において60〜100%の分解率を示すことを特徴とする。
また、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の好適形態は、嫌気性環境を形成できる孔部を有することを特徴とする。
更にまた、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の他の好適形態は、pH調整剤を更に含有することを特徴とする。
また、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の好適形態は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、AS樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂及びABS樹脂から成る群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を更に含有することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体について詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
上述のように、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体は、生分解性樹脂を有効成分とする。
ここで、このような生分解性樹脂は、水相の嫌気性条件下で水素分を徐放するので、嫌気性条件下で脱窒反応を起こす脱窒菌の水素源として有用であり、かかる脱窒反応により、水中に含まれる硝酸イオンや亜硝酸イオンが還元浄化され、水中の硝酸性窒素濃度が低減する。
なお、このような生分解性樹脂は、脱窒菌の水素源として利用された後、水相の好気性条件の環境中にも放出されることもあるため、場合によっては河川、湖沼、海洋等に流出され、生分解性樹脂自体が環境汚染の原因になることが考えられるので、好気性条件下でも生分解することが好ましい。
【0011】
また、本発明で使用される生分解性樹脂は生分解性を有していればよく、特に限定されるものではない。具体的には、ポリヒドロキシブチレート/バリレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリエステルカーボネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン及びポリ(2−オキセタノン)、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン及び天然ゴム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールポリエチレングリコール及びポリリンゴ酸などが挙げられる。
【0012】
更に、市販されている生分解性樹脂としては、例えば、昭和高分子社製の商品名ビオノーレ、日本合成化学工業社製の商品名マタービー、島津製作所社製の商品名ラクティ、三菱ガス化学社製の商品名ユーペック、カーギルダウ社製の商品名ネーチャーワークス、三井東圧化学社製の商品名レイシア、ダイセル化学工業社製の商品名セルグリーン及び商品名プラセル、モンサント社製の商品名バイオポール、BASF社製の商品名エコフレックス、デュポン社製の商品名バイオマックス、イーストマンケミカル社製の商品名イースターバイオ、日本触媒社製の商品名ルナーレ、チッソ社製の商品名ノボンなどが挙げられる。
なお、本発明においては、上述の如き生分解性樹脂を2種類以上ブレンドして用いることができ、この場合、2種類以上の樹脂組成物として使用してもよいし、2種類以上を使用の際に混ぜてもよい。
【0013】
本発明に係る水中での使用において、これら生分解性樹脂が有すべき好適条件としては、▲1▼嫌気下で脱窒反応を受け易いこと、▲2▼多量に散布して生分解性樹脂が余剰となっても分解され易いこと、を挙げることができる。従って、上述の如く、嫌気下での生分解性に優れていることが好ましいが、更に好ましくは嫌気下と好気下のいずれの条件下でも生分解性に優れていることが望ましい。
【0014】
以上の観点から、本発明では、生分解性樹脂として、好気性条件下において60〜100%の分解率、嫌気性条件下において60〜100%の分解率を示すものを好適に使用することができる。
ここで、本明細書において、「好気性条件下での生分解率」とは、ISO14851、ISO14852、ISO14855及び化審法の生分解性試験(MITI法)のいずれかの試験法で試験したときの生分解率を表し、「嫌気性条件下での生分解率」とは、ISO14853(近日中に成立予定)、ISO15985(近日中に成立予定)及びASTM D.5511−94のいずれかの試験法で試験したときの生分解率を表すものとする。
なお、好気性条件下では、任意の形状での生分解性樹脂において、いずれかの試験方法により60〜100%の分解率を示すものが好ましく、70〜100%のものが更に好ましい。また、好気性条件下での上記分解率に達するまでの期間としては、6ヶ月以内が好ましく、更に好ましくは3ヶ月以内、より好ましくは4週間以内である。
【0015】
一方、生分解性樹脂には、加工性や経済性、大量に入手できることなども要求され、これらの点からは、上述の生分解性樹脂の中でも、脂肪族ポリエステルが好ましく、更に好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分と炭素数2〜4の脂肪族グリコール成分から得られる脂肪族ポリエステルである。
また、生分解性の点からは、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネートが更に好ましい。嫌気下、好気下のいずれでも分解され、活性汚泥中でも良好な生分解性を示すポリエチレンサクシネートは特に好適である。
【0016】
更に、上述の如き生分解性樹脂の分子量は、数平均で1000〜1000000であるが、好ましくは5000〜200000、更に好ましくは10000〜100000である。
数平均分子量が1000より小さい場合は、樹脂成形体を作成した場合に得られる成形体の強度が不十分となり、1000000より大きい場合は、加工性が不十分となることがある。
更に、微生物による分解を受け易く、水質改善の効果を発揮し易いのは分子量が小さい生分解性樹脂であることから、数平均分子量が10000〜30000ものが更に好ましい。
【0017】
本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体は、上述のような生分解性樹脂を有効成分とするものであるが、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムから成る群より選ばれた少なくとも1種のpH調整剤を更に含有することが可能である。
かかるpH調整剤は、水中のpHを6〜9に調整することができ、脱窒反応を促進する機能を果たす。
また、樹脂成形体を作成する際には、成形性向上などの観点から、他の樹脂と混合使用することも可能である。
【0018】
また、この脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の形状は、特に限定されるものではなく、粒状や塊状、成形体、孔部を有する成形体、発泡体、フィルム、シート状、繊維及び不織布などにすることができる。
【0019】
本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の使用方法は、嫌気性条件下における脱窒菌との接触だけが確保されれば特に限定されるものではなく、代表的には、河川、湖沼、海洋への直接投入、工場や各事業所の排水処理施設への投入・設置があげられる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を若干の実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0021】
(実施例1及び2、比較例1及び2)
3リットルの容器に窒素分(硝酸カリウム)1000mg/リットル、燐分(燐酸)2mg/リットル、水酸化ナトリウムでpHを7.5に調整した水溶液1リットルを調製した。
これに脱窒菌を固定化したセルロース担体(タイホー工業製、5mm×5mm×5mmの担体)400ミリリットルを加え、更に所定量の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体(φ2〜3mm、長さ2〜3mmのペレット;実施例1は数平均分子量20000のポリエチレンサクシネート、実施例2は数平均分子量80000のポリエチレンサクシネート)、若しくはポリエチレン成形体(φ2〜3mm、長さ2〜3mmのペレット;比較例1)を加え、又は加えずに(比較例2)、所定時間ごとに水溶液中の硝酸性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度をイオンクロマトグラフィーで測定し、脱窒効果を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、試験期間中、容器は密閉し25℃の恒温室に保存し、硫酸でpH7.5に調整した。試験期間中の水溶液の酸化還元電位は−1〜160mVであった。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、所定の生分解性樹脂を用いることとしたため、水中の亜硝酸性窒素を高選択性で且つ低コストで低減できる脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、好気性条件下においても嫌気性条件下においても分解する所定の生分解性樹脂を用いた生分解性樹脂成形体に係り、更に詳細には、水相の硝酸性窒素濃度を低減するのに有用な生分解性樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機・無機肥料の使用、生活排水や工場排水の浸透、産業廃棄物などの投棄によって、硝酸塩や亜硝酸塩などの硝酸性窒素が水相に多く存在するようになっており、河川、湖沼、海洋の汚染が進行している。
かかる硝酸性窒素は、人体内で還元されて窒息症状のメトヘモグロビン血症を引き起こす原因物質となったり、発癌性の疑いがあるN−ニトロソ化合物を生成する物質となることが知られている。
これに対し、従来は、特開2001−300509号公報や特開平11−128902号公報に記載されているように、イオン交換法、逆浸透膜処理法、電気透析法、及び生物学的脱窒法などによって硝酸性窒素を除去していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の硝酸性窒素除去方法においては、以下のような問題点があった。
(1)イオン交換法
イオン交換法は、R−Cl型の強塩基性陰イオン交換樹脂を用いる方法であるが、硫酸イオンも樹脂に捕捉してしまうことがあり、イオン交換樹脂の再生に高塩素濃度の再生水による処理を必要とし、処理コストが高い。
【0004】
(2)逆浸透膜処理方法
逆浸透膜処理方法は、半透膜を用い機械的な圧力をかけて再生水を得る方法であるが、コストが高く、また硝酸イオン以外のイオンも同時に除去されてしまうので、硝酸のみを選択的に除去することが困難である。
【0005】
(3)電気透析法
電気透析法は、透析膜を用い荷電下で硝酸を分離する方法だが、対象水の塩分濃度が高いと電力消費量が大きく、塩分濃度が低いと電気抵抗が大きくなるため、最適な塩分濃度範囲を設定することが困難であるばかりか、逆浸透膜処理方法と同様に硝酸除去の選択性に劣る。
【0006】
(4)生物学的脱窒法
生物学脱窒法は、例えばシュードモナスデニトリフィカンス(Pseudomonas denitrificans)などの従属栄養性脱窒菌を用いる方法であり、脱窒に当たり水素供与体となる有機炭素源が必要とされる。
従来、有機炭素源としてメタノールが使用されており、この場合は次の反応に従って脱窒が進行する。
2CH3OH+2NO3 −→2CO2+4H2O+H2↑
よって、反応に十分なメタノールが存在すれば、硝酸は高い選択性をもって除去されるが、メタノールは水溶性であるため、脱窒反応に利用されなかった余剰メタノールが流出して二次汚染を生ずる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水相の硝酸性窒素を高選択性で且つ低コストで低減できる脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、所定の生分解性樹脂を用いることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体は、生分解性樹脂を有効成分とし、水相の脱窒菌による脱窒反応を起こして、水相の硝酸性窒素濃度を低減することを特徴とする。
更に、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の更に他の好適形態は、上記生分解性樹脂は、好気性条件下において60〜100%の分解率、嫌気性条件下において60〜100%の分解率を示すことを特徴とする。
また、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の好適形態は、嫌気性環境を形成できる孔部を有することを特徴とする。
更にまた、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の他の好適形態は、pH調整剤を更に含有することを特徴とする。
また、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の好適形態は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、AS樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂及びABS樹脂から成る群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を更に含有することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体について詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
上述のように、本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体は、生分解性樹脂を有効成分とする。
ここで、このような生分解性樹脂は、水相の嫌気性条件下で水素分を徐放するので、嫌気性条件下で脱窒反応を起こす脱窒菌の水素源として有用であり、かかる脱窒反応により、水中に含まれる硝酸イオンや亜硝酸イオンが還元浄化され、水中の硝酸性窒素濃度が低減する。
なお、このような生分解性樹脂は、脱窒菌の水素源として利用された後、水相の好気性条件の環境中にも放出されることもあるため、場合によっては河川、湖沼、海洋等に流出され、生分解性樹脂自体が環境汚染の原因になることが考えられるので、好気性条件下でも生分解することが好ましい。
【0011】
また、本発明で使用される生分解性樹脂は生分解性を有していればよく、特に限定されるものではない。具体的には、ポリヒドロキシブチレート/バリレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリエステルカーボネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン及びポリ(2−オキセタノン)、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン及び天然ゴム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールポリエチレングリコール及びポリリンゴ酸などが挙げられる。
【0012】
更に、市販されている生分解性樹脂としては、例えば、昭和高分子社製の商品名ビオノーレ、日本合成化学工業社製の商品名マタービー、島津製作所社製の商品名ラクティ、三菱ガス化学社製の商品名ユーペック、カーギルダウ社製の商品名ネーチャーワークス、三井東圧化学社製の商品名レイシア、ダイセル化学工業社製の商品名セルグリーン及び商品名プラセル、モンサント社製の商品名バイオポール、BASF社製の商品名エコフレックス、デュポン社製の商品名バイオマックス、イーストマンケミカル社製の商品名イースターバイオ、日本触媒社製の商品名ルナーレ、チッソ社製の商品名ノボンなどが挙げられる。
なお、本発明においては、上述の如き生分解性樹脂を2種類以上ブレンドして用いることができ、この場合、2種類以上の樹脂組成物として使用してもよいし、2種類以上を使用の際に混ぜてもよい。
【0013】
本発明に係る水中での使用において、これら生分解性樹脂が有すべき好適条件としては、▲1▼嫌気下で脱窒反応を受け易いこと、▲2▼多量に散布して生分解性樹脂が余剰となっても分解され易いこと、を挙げることができる。従って、上述の如く、嫌気下での生分解性に優れていることが好ましいが、更に好ましくは嫌気下と好気下のいずれの条件下でも生分解性に優れていることが望ましい。
【0014】
以上の観点から、本発明では、生分解性樹脂として、好気性条件下において60〜100%の分解率、嫌気性条件下において60〜100%の分解率を示すものを好適に使用することができる。
ここで、本明細書において、「好気性条件下での生分解率」とは、ISO14851、ISO14852、ISO14855及び化審法の生分解性試験(MITI法)のいずれかの試験法で試験したときの生分解率を表し、「嫌気性条件下での生分解率」とは、ISO14853(近日中に成立予定)、ISO15985(近日中に成立予定)及びASTM D.5511−94のいずれかの試験法で試験したときの生分解率を表すものとする。
なお、好気性条件下では、任意の形状での生分解性樹脂において、いずれかの試験方法により60〜100%の分解率を示すものが好ましく、70〜100%のものが更に好ましい。また、好気性条件下での上記分解率に達するまでの期間としては、6ヶ月以内が好ましく、更に好ましくは3ヶ月以内、より好ましくは4週間以内である。
【0015】
一方、生分解性樹脂には、加工性や経済性、大量に入手できることなども要求され、これらの点からは、上述の生分解性樹脂の中でも、脂肪族ポリエステルが好ましく、更に好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分と炭素数2〜4の脂肪族グリコール成分から得られる脂肪族ポリエステルである。
また、生分解性の点からは、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネートが更に好ましい。嫌気下、好気下のいずれでも分解され、活性汚泥中でも良好な生分解性を示すポリエチレンサクシネートは特に好適である。
【0016】
更に、上述の如き生分解性樹脂の分子量は、数平均で1000〜1000000であるが、好ましくは5000〜200000、更に好ましくは10000〜100000である。
数平均分子量が1000より小さい場合は、樹脂成形体を作成した場合に得られる成形体の強度が不十分となり、1000000より大きい場合は、加工性が不十分となることがある。
更に、微生物による分解を受け易く、水質改善の効果を発揮し易いのは分子量が小さい生分解性樹脂であることから、数平均分子量が10000〜30000ものが更に好ましい。
【0017】
本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体は、上述のような生分解性樹脂を有効成分とするものであるが、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムから成る群より選ばれた少なくとも1種のpH調整剤を更に含有することが可能である。
かかるpH調整剤は、水中のpHを6〜9に調整することができ、脱窒反応を促進する機能を果たす。
また、樹脂成形体を作成する際には、成形性向上などの観点から、他の樹脂と混合使用することも可能である。
【0018】
また、この脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の形状は、特に限定されるものではなく、粒状や塊状、成形体、孔部を有する成形体、発泡体、フィルム、シート状、繊維及び不織布などにすることができる。
【0019】
本発明の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体の使用方法は、嫌気性条件下における脱窒菌との接触だけが確保されれば特に限定されるものではなく、代表的には、河川、湖沼、海洋への直接投入、工場や各事業所の排水処理施設への投入・設置があげられる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を若干の実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0021】
(実施例1及び2、比較例1及び2)
3リットルの容器に窒素分(硝酸カリウム)1000mg/リットル、燐分(燐酸)2mg/リットル、水酸化ナトリウムでpHを7.5に調整した水溶液1リットルを調製した。
これに脱窒菌を固定化したセルロース担体(タイホー工業製、5mm×5mm×5mmの担体)400ミリリットルを加え、更に所定量の脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体(φ2〜3mm、長さ2〜3mmのペレット;実施例1は数平均分子量20000のポリエチレンサクシネート、実施例2は数平均分子量80000のポリエチレンサクシネート)、若しくはポリエチレン成形体(φ2〜3mm、長さ2〜3mmのペレット;比較例1)を加え、又は加えずに(比較例2)、所定時間ごとに水溶液中の硝酸性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度をイオンクロマトグラフィーで測定し、脱窒効果を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、試験期間中、容器は密閉し25℃の恒温室に保存し、硫酸でpH7.5に調整した。試験期間中の水溶液の酸化還元電位は−1〜160mVであった。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、所定の生分解性樹脂を用いることとしたため、水中の亜硝酸性窒素を高選択性で且つ低コストで低減できる脱窒作用を有する生分解性樹脂成形体を提供することができる。
Claims (4)
- 好気性条件下において60〜100%の分解率、嫌気性条件下において60〜100%の分解率を示す生分解性樹脂を含有して成り、脱窒作用を有し、水相に配置されることを特徴とする生分解性樹脂成形体。
- 嫌気性環境を形成できる孔部を有することを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂成形体。
- 水酸化カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムから成る群より選ばれた少なくとも1種のpH調整剤を更に含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性樹脂成形体。
- ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリスチレン、AS樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂及びABS樹脂から成る群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を更に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の生分解性樹脂成形体。
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