JP2004175749A - ドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】ドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤を提供する。
【解決手段】肺サーファクタント分泌促進剤を有効成分とするドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤。
【選択図】なし
【解決手段】肺サーファクタント分泌促進剤を有効成分とするドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
涙液はムチン層、水層、油層の3層からなる厚さ7〜10μmの薄膜である。涙液の98%は水層で、その最表層を覆う油層は厚さ約0.1μmと非常に薄い。油層は、眼瞼の瞼板内に存在するマイボーム腺より供給される脂質を主成分としており、表面張力を減少させて涙液の均一な分布を助長するとともに、涙液の過度の蒸発や下眼瞼縁からの涙液の溢出を防止している。マイボーム腺から分泌される涙液油層には非極性脂質(ワックスエステルやコレステロールエステル、トリグリセライド、炭水化物等)と極性脂質(リン脂質)が含まれており、リン脂質は涙液水層と非極性脂質との境界形成に関与している。油層と水層の境界では、リン脂質は疎水基側を油層の非極性脂質に向け、親水基側を水層面に向けていると考えられている。このように、リン脂質が存在するために水層の上を油層が広がることが出来ると考えられている(非特許文献1参照)。
油層の質的あるいは量的異常は涙液の蒸発亢進型ドライアイの原因となる。油層の異常は融点の変化によるマイボーム腺開口部の閉塞や、涙液油層の不安定化を招く。このため涙液三層構造が破綻し、涙液水層が非常に蒸発し易くなるため様々な角結膜上皮障害を引き起こす。脂質組成の変化には主要成分であるワックスエステル・ステロールエステルの比率の変化や脂肪酸の炭素鎖・分鎖・飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸の比率、遊離脂肪酸の変化や刺激性、細菌の持つリパーゼの影響等、様々な報告がある。リン脂質の異常は乾性角結膜炎患で認められており(非特許文献2参照)、蒸発過剰型角結膜疾患の発症に重大な影響を及ぼす可能性が考えられる。
以上のような油層の質的あるいは量的異常に対して、ヒマシ油を含む油性点眼液を点眼することによりマイボーム腺機能不全の患者の症状が改善したとの報告があるが、対症療法であり、ヒマシ油の室温での安定性に問題があるとされている(非特許文献3参照)。また、マイボーム腺の発生分化を調節していることが知られるアンドロゲンの点眼や全身投与が試みられているが、その効果は明瞭でない(非特許文献4参照)。すなわち、涙液油層の異常に対して、いまだ治療法が確立していないのが現状である。
一方、動物の肺には、肺サーファクタント(肺表面活性物質)と称するリン脂質を主成分とする生理活性物質が存在する。肺サーファクタントは、主に肺胞のII型上皮細胞より合成、分泌され、肺胞領域のみならず、気道全域にわたって内壁を覆うかたちで存在している。肺サーファクタントは、肺胞の表面張力を低下させ、肺胞の虚脱を防ぐ作用を有することが知られている。この作用は、呼吸機能を維持するうえで重要な機能である(非特許文献5参照)。肺サ−ファクタントは、その他に、細菌ウイルスによる感染、あるいは気道の炎症や喘息発作を引き起こす大気汚染や抗原に対する防御機構、さらに、気道壁の潤滑化、粘液線毛輸送の賦活化など、気道内異物の排泄などにおいても重要な役割を持つことが知られている。以上のように肺サーファクタントは、気道系においてさまざまな生理機能を有することから、肺サーファクタントの質の変化および量の減少が、多くの呼吸器疾患の発症や悪化に関係している。したがって、肺サーファクタントの分泌を促進することにより、新生児あるいは成人の呼吸窮迫症候群、急性・慢性気管支炎、喘息や慢性呼吸不全などを治療あるいは予防することが可能であると考えられる。
従来、このような肺サーファクタントの分泌を促進する物質には、去痰剤として市販されている塩酸アンブロキソール(非特許文献6参照)や塩酸ブロムヘキシン(非特許文献7参照)があり、その他に、特許文献1〜特許文献5に開示されている。しかしながら、これらの文献には涙液分泌促進を示唆する記載は一切認められない。
【0003】
【特許文献1】
特許2534421号公報
【特許文献2】
特開平5−1040号公報
【特許文献3】
特開平6−41072号公報
【特許文献4】
特開平6−199854号公報
【特許文献5】
特開平11−124369号公報
【非特許文献1】
Greiner JV et al., Curr. Eye Res., 15:371−5, 1996
【非特許文献2】
Shine WE & McCulley JP, Arch. Ophthalmol., 116:849−52, 1998
【非特許文献3】
Goto E et al., Ophthalmology, 109:2030−2035, 2002
【非特許文献4】
Sullivan DA et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 41:3732−3742, 2000
【非特許文献5】
Dobbs LG, Annual Rev. of Med., 40:431−446, 1989
【非特許文献6】
メルクインデックス第13版、67ページ、401.Ambroxolの項
【非特許文献7】
メルクインデックス 第13版、228ページ、1412.Bromhexineの項
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、涙液分泌を促進させることにより、ドライアイおよびドライアイを伴なう疾病の治療剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、涙液分泌促進作用によるドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療について鋭意探究を重ねた結果、肺サーファクタントの分泌を促進する物質が涙液分泌を促進すること、特に、上記特許文献1の特許2534421号公報に開示されるトリメトキシベンゼン誘導体が優れた涙液分泌促進作用を有することを見出し、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
【0006】
(1)肺サーファクタント分泌促進剤を含有するドライアイまたはドライアイを伴なう疾病の治療剤、
(2)肺サーファクタント分泌促進剤が一般式(I):
【化4】
(式中、R1,R2およびR3は、同一または異なって、低級アルキル基を示し;Aは、式:
【化5】
または
で表される基を示し;R4およびR5は、同一または異なって、低級アルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、あるいはR4とR5は隣接する窒素原子と一体となり、ピロリジニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基または4位が低級アルキル基で置換されていてもよいピペラジノ基を形成してもよい。)
で表される化合物、製薬学的に許容されるその塩、その光学活性体またはその溶媒和物である上記(1)記載の治療剤、
(3)一般式(I)において、R4およびR5が同一または異なって低級アルキル基である上記(2)記載の治療剤、
(4)一般式(I)において、R4およびR5が共にメチル基である上記(2)または(3)記載の治療剤、
(5)一般式(I)において、Aが式:
【化6】
で表される基であり、R1、R2、R3、R4およびR5がメチル基である上記(2)記載の治療剤、
(6)治療剤が眼局所投与剤である上記(1)〜(5)のいずれか1項記載の治療剤、
(7)局所投与剤が点眼剤である上記(6)記載の治療剤、
等を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の治療剤に用いる肺サーファクタント分泌促進剤としては、上記特許文献1の特許2534421号公報に開示される一般式(I)で表されるトリメトキシベンゼン誘導体が好ましい。
上記一般式(I)の定義において、「低級」なる語は、特に断らない限り、炭素数が1〜6個の直鎖または分枝鎖の炭素鎖を意味する。
したがって、「低級アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基等が挙げられる。
「アリール基」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。「アラルキル基」としては、上記「低級アルキル基」の任意の水素原子が上記「アリール基」で置換された基、例えば、アリール基がフェニル基の場合、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、1−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、2−メチル−3−フェニルプロピル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルペンチル基、ベンズヒドリル基、トリチル基などが挙げられる。
【0008】
式(I)で表される化合物中、R4およびR5が低級アルキル基、とりわけメチル基である場合が好適である。特に、Aが式:
【化7】
で表される基であり、R1、R2、R3、R4およびR5がメチル基である化合物、すなわち、1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−尿素が好ましい。
一般式(I)で表される化合物の製薬学的に許容される塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸等との酸付加塩が挙げられる。また、これらの塩には、その溶媒和物も含まれる。
一般式(I)で表される化合物は、Aが式:
【化8】
で表される基であるときは、その炭素原子が不斉炭素原子となり光学異性体が存在する。これらの異性体は、自体公知の方法によって単離、精製でき、本発明においては、それらの各異性体の混合物、単離されたものいずれでも使用することができる。
一般式(I)で表される化合物は、上記した特許2534421号公報の記載に従って製造できる。例えば、対応するブチルニトリル化合物の加水分解、あるいは対応するエチレンジアミン化合物とイソシアン酸またはそのアルカリ金属置換体を反応させることにより製造できる。上記した好適な1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−尿素は、特許2534421号の実施例13に従って製造できる。
【0009】
本発明のドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤は、例えば、涙液減少症、眼乾燥症、マイボーム腺機能不全、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、スティーブンス−ジョンソン症候群、VDT(Visual Display Terminal)作業に関連したドライアイ等のドライアイの治療に用いられる。さらに、角結膜上皮障害、角膜上皮糜爛、角膜潰瘍、眼瞼縁炎、眼類天疱瘡、春季カタル、アレルギー性結膜炎などドライアイを伴なう疾病の治療剤としても有用である。
【0010】
本発明の治療剤は、それ自体公知の薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤などと混合し、自体公知の方法に従って、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、注射剤、点眼剤、眼軟膏剤などの各種の経口、非経口用の剤形の医薬または獣医薬組成物とすることができ、特に局所投与用の剤形、好ましくは、点眼剤、眼軟膏剤として用いることが望ましい。
点眼剤には、例えば、水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液、可溶化点眼液などの水性点眼剤、非水性点眼液、非水性懸濁点眼液などの非水性点眼剤が包含され、とりわけ、水性点眼剤が好ましい。
水性点眼剤には、通常用いられる各種の添加剤、例えば、緩衝剤(例、リン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、アミノ酸など)、等張化剤(例、ソルビトール、グルコース、マンニトールなどの糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、塩化ナトリウムなどの塩類など)、保存剤または防腐剤(例、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチルやパラオキシ安息香酸エチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸またはその塩、チメロサール、クロロブタノールなど)、溶解補助剤または安定化剤(例、シクロデキストリン類およびその誘導体、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子、ポリソルベート80(Tween 80)などの界面活性剤など)、pH調整剤(例、塩酸、酢酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなど)、増粘剤(例、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩など)、キレート剤(例、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウムなど)などを適宜配合できる。
眼軟膏剤には、精製ラノリン、ワセリン、プラスチベース、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどのような自体公知の軟膏基剤が用いられる。
【0011】
本発明のドライアイまたはドライアイを伴なう疾病の予防治療剤は、ドライアイに罹患した、またはそのおそれのある哺乳動物(例、ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、サルなど)に投与することができる。投与ルートや投与量は、症状、患者の年齢、体重などによっても異なるが、例えば、成人に点眼剤として用いる場合、一般式(I)の遊離の化合物として、約0.001〜5(w/v)%、好ましくは、約0.01〜3(w/v)%程度含有する水性点眼剤として、症状に応じて1回量1〜数滴を1日1〜8回投与することが望ましい。
眼軟膏剤として用いる場合、一般式(I)の遊離の化合物として、約0.001〜5(w/w)%、好ましくは、約0.01〜3(w/w)%程度含有する眼軟膏剤を、症状に応じて1日1〜4回投与することが望ましい。
本発明のドライアイまたはドライアイを伴なう疾病の予防治療剤には、本発明の目的に反しない限り、さらに他のドライアイまたはドライアイを伴なう疾病の予防治療剤、例えば、メチルセルロース、コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸等の粘弾性物質を含有した人工涙液の1種または2種以上を適宜加えてもよい。
【0012】
【実施例】
つぎに製剤例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の例において、1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−尿素を化合物1と称する。
製剤例1
点眼剤
成 分 量
化合物1 1.0g
塩化ナトリウム 0.9g
リン酸2水素ナトリウム・2水和物 0.1g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
0.1N塩酸 適量(pH7.2)
精製水 全量100mL
精製水約80mLに塩化ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム・2水和物、塩化ベンザルコニウムおよび化合物1を添加し溶解させた後、0.1N塩酸を加えpHを7.2に調整する。精製水を加え全量100mLとし、点眼剤を調製する。
【0013】
試験例1
ウサギ涙液油層に及ぼす影響
正常白色ウサギに化合物1の溶液を点眼し、ドライアイ観察装置による涙液表層の観察と涙液量の測定を行なった。
被験化合物溶液の調製
リン酸2水素ナトリウム・2水和物(0.01g)および塩化ナトリウム(0.09g)に精製水を加え、全量を10mLとした。さらに適量の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7.0に調整し、これを基剤とした。基剤に化合物1を溶解し(1w/v%)、適量の塩酸水溶液を加えてpH7.0に調整し、被験化合物溶液を調製した。
ドライアイ観察装置による涙液表層の観察
日本白色ウサギに被験化合物溶液を1回50μL点眼投与し、点眼前、点眼10分、30分、60分、120分、180分後の涙液表層(角膜中央部)の鏡面反射像をドライアイ観察装置(DR−1、興和株式会社)を用いて観察した。対照として、基剤を同様に投与し観察した。本装置はスペキュラーの手法を応用して涙液表面からの反射光を観察する装置であり、光の干渉原理を応用して涙液油層の厚みを知ることができる(Yokoi N et al., Am. J. Ophthalmol., 122:818−24, 1996; 武久葉子 あたらしい眼科 14:1605−12, 1997)。その原理は光源から出た光が涙液に入射すると、涙液油層薄膜の表面からの反射光と裏面からの反射光との光路差によって干渉色が出現するというものである。油層の厚みは干渉色によって推測することができ、油層の厚さが薄い場合に干渉色は灰色を呈し、厚みを増すにつれて黄色、茶色、青色の順に干渉色が変化する。涙液のスペキュラー像はカラービデオプリンタ(U−230、ソニー)で印刷し、表1の涙液油層所見の分類に従って、干渉縞の有無とパターンおよび占有面積について観察し、採点評価を行なった。この所見は、涙液油層の厚さが増し、また、その範囲が広くなるほど高いスコアとなるように分類されている。
涙液量測定
日本白色ウサギに被験化合物溶液を、対照群には基剤を各々1回50μL点眼投与し、点眼前、点眼10分、20分、30分、60分、120分後の涙液量をシルマー法にて測定した。すなわち、涙液量測定5分前に0.4w/v%塩酸オキシブプロカイン(ベノキシール点眼液、参天製薬)10μLを点眼して局所麻酔を施した。濾紙を用いて下眼瞼結膜嚢内の涙液を拭き取った後、シルメル試験紙(昭和薬品化工)を使って、1分間の涙液分泌量を測定した。
結果
被験化合物溶液を点眼すると、10分後に多彩な干渉色を認め、120分後まで多彩な干渉色が認められたが、180分後には点眼前と同じような色調に戻った。このような涙液油層所見の経時的変化を表1の分類に従い干渉縞のパターン及び占有面積について採点評価を行なった結果を図1に示した。縦軸は表1に従ったスコアを、横軸は時間経過(分)を示す。点眼30分後から120分後にかけて多彩な干渉色所見が広範囲に認められ、干渉縞のパターンおよび占有面積ともに基剤点眼の対照群と比較して有意に高値を示した(n=4、平均値±標準誤差、*;p<0.05、**;p<0.01、経時測定データ多重比較)。
涙液油層の増加のみならず、涙液水層が減少するのに相関して、油層の伸びが不均一になり、多彩な干渉色が観察されると報告されている。そのため、被験化合物溶液点眼による涙液水層への影響を検討するため涙液量を測定した。その結果は図2に示したように(縦軸は涙液量(シルマー値:mm/分)を、横軸は時間経過(分)を示す。n=4、平均値±標準誤差)、被験化合物による涙液量の変化は認められなかった。したがって、涙液表層の観察結果は被験化合物の点眼が涙液油層を増加させたことを示すと考えられた。
【0014】
【表1】
【0015】
【発明の効果】
以上記載したごとく、本発明によれば、優れた涙液分泌促進作用を有するドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1a】涙液油層所見のパターンについての経時的変化の評点結果を示すグラフである。
【図1b】涙液油層所見の占有面積についての経時的変化の評点結果を示すグラフである。
【図2】涙液量の経時的変化測定結果を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
涙液はムチン層、水層、油層の3層からなる厚さ7〜10μmの薄膜である。涙液の98%は水層で、その最表層を覆う油層は厚さ約0.1μmと非常に薄い。油層は、眼瞼の瞼板内に存在するマイボーム腺より供給される脂質を主成分としており、表面張力を減少させて涙液の均一な分布を助長するとともに、涙液の過度の蒸発や下眼瞼縁からの涙液の溢出を防止している。マイボーム腺から分泌される涙液油層には非極性脂質(ワックスエステルやコレステロールエステル、トリグリセライド、炭水化物等)と極性脂質(リン脂質)が含まれており、リン脂質は涙液水層と非極性脂質との境界形成に関与している。油層と水層の境界では、リン脂質は疎水基側を油層の非極性脂質に向け、親水基側を水層面に向けていると考えられている。このように、リン脂質が存在するために水層の上を油層が広がることが出来ると考えられている(非特許文献1参照)。
油層の質的あるいは量的異常は涙液の蒸発亢進型ドライアイの原因となる。油層の異常は融点の変化によるマイボーム腺開口部の閉塞や、涙液油層の不安定化を招く。このため涙液三層構造が破綻し、涙液水層が非常に蒸発し易くなるため様々な角結膜上皮障害を引き起こす。脂質組成の変化には主要成分であるワックスエステル・ステロールエステルの比率の変化や脂肪酸の炭素鎖・分鎖・飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸の比率、遊離脂肪酸の変化や刺激性、細菌の持つリパーゼの影響等、様々な報告がある。リン脂質の異常は乾性角結膜炎患で認められており(非特許文献2参照)、蒸発過剰型角結膜疾患の発症に重大な影響を及ぼす可能性が考えられる。
以上のような油層の質的あるいは量的異常に対して、ヒマシ油を含む油性点眼液を点眼することによりマイボーム腺機能不全の患者の症状が改善したとの報告があるが、対症療法であり、ヒマシ油の室温での安定性に問題があるとされている(非特許文献3参照)。また、マイボーム腺の発生分化を調節していることが知られるアンドロゲンの点眼や全身投与が試みられているが、その効果は明瞭でない(非特許文献4参照)。すなわち、涙液油層の異常に対して、いまだ治療法が確立していないのが現状である。
一方、動物の肺には、肺サーファクタント(肺表面活性物質)と称するリン脂質を主成分とする生理活性物質が存在する。肺サーファクタントは、主に肺胞のII型上皮細胞より合成、分泌され、肺胞領域のみならず、気道全域にわたって内壁を覆うかたちで存在している。肺サーファクタントは、肺胞の表面張力を低下させ、肺胞の虚脱を防ぐ作用を有することが知られている。この作用は、呼吸機能を維持するうえで重要な機能である(非特許文献5参照)。肺サ−ファクタントは、その他に、細菌ウイルスによる感染、あるいは気道の炎症や喘息発作を引き起こす大気汚染や抗原に対する防御機構、さらに、気道壁の潤滑化、粘液線毛輸送の賦活化など、気道内異物の排泄などにおいても重要な役割を持つことが知られている。以上のように肺サーファクタントは、気道系においてさまざまな生理機能を有することから、肺サーファクタントの質の変化および量の減少が、多くの呼吸器疾患の発症や悪化に関係している。したがって、肺サーファクタントの分泌を促進することにより、新生児あるいは成人の呼吸窮迫症候群、急性・慢性気管支炎、喘息や慢性呼吸不全などを治療あるいは予防することが可能であると考えられる。
従来、このような肺サーファクタントの分泌を促進する物質には、去痰剤として市販されている塩酸アンブロキソール(非特許文献6参照)や塩酸ブロムヘキシン(非特許文献7参照)があり、その他に、特許文献1〜特許文献5に開示されている。しかしながら、これらの文献には涙液分泌促進を示唆する記載は一切認められない。
【0003】
【特許文献1】
特許2534421号公報
【特許文献2】
特開平5−1040号公報
【特許文献3】
特開平6−41072号公報
【特許文献4】
特開平6−199854号公報
【特許文献5】
特開平11−124369号公報
【非特許文献1】
Greiner JV et al., Curr. Eye Res., 15:371−5, 1996
【非特許文献2】
Shine WE & McCulley JP, Arch. Ophthalmol., 116:849−52, 1998
【非特許文献3】
Goto E et al., Ophthalmology, 109:2030−2035, 2002
【非特許文献4】
Sullivan DA et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 41:3732−3742, 2000
【非特許文献5】
Dobbs LG, Annual Rev. of Med., 40:431−446, 1989
【非特許文献6】
メルクインデックス第13版、67ページ、401.Ambroxolの項
【非特許文献7】
メルクインデックス 第13版、228ページ、1412.Bromhexineの項
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、涙液分泌を促進させることにより、ドライアイおよびドライアイを伴なう疾病の治療剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、涙液分泌促進作用によるドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療について鋭意探究を重ねた結果、肺サーファクタントの分泌を促進する物質が涙液分泌を促進すること、特に、上記特許文献1の特許2534421号公報に開示されるトリメトキシベンゼン誘導体が優れた涙液分泌促進作用を有することを見出し、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
【0006】
(1)肺サーファクタント分泌促進剤を含有するドライアイまたはドライアイを伴なう疾病の治療剤、
(2)肺サーファクタント分泌促進剤が一般式(I):
【化4】
(式中、R1,R2およびR3は、同一または異なって、低級アルキル基を示し;Aは、式:
【化5】
または
で表される基を示し;R4およびR5は、同一または異なって、低級アルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、あるいはR4とR5は隣接する窒素原子と一体となり、ピロリジニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基または4位が低級アルキル基で置換されていてもよいピペラジノ基を形成してもよい。)
で表される化合物、製薬学的に許容されるその塩、その光学活性体またはその溶媒和物である上記(1)記載の治療剤、
(3)一般式(I)において、R4およびR5が同一または異なって低級アルキル基である上記(2)記載の治療剤、
(4)一般式(I)において、R4およびR5が共にメチル基である上記(2)または(3)記載の治療剤、
(5)一般式(I)において、Aが式:
【化6】
で表される基であり、R1、R2、R3、R4およびR5がメチル基である上記(2)記載の治療剤、
(6)治療剤が眼局所投与剤である上記(1)〜(5)のいずれか1項記載の治療剤、
(7)局所投与剤が点眼剤である上記(6)記載の治療剤、
等を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の治療剤に用いる肺サーファクタント分泌促進剤としては、上記特許文献1の特許2534421号公報に開示される一般式(I)で表されるトリメトキシベンゼン誘導体が好ましい。
上記一般式(I)の定義において、「低級」なる語は、特に断らない限り、炭素数が1〜6個の直鎖または分枝鎖の炭素鎖を意味する。
したがって、「低級アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基等が挙げられる。
「アリール基」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。「アラルキル基」としては、上記「低級アルキル基」の任意の水素原子が上記「アリール基」で置換された基、例えば、アリール基がフェニル基の場合、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、1−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、2−メチル−3−フェニルプロピル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルペンチル基、ベンズヒドリル基、トリチル基などが挙げられる。
【0008】
式(I)で表される化合物中、R4およびR5が低級アルキル基、とりわけメチル基である場合が好適である。特に、Aが式:
【化7】
で表される基であり、R1、R2、R3、R4およびR5がメチル基である化合物、すなわち、1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−尿素が好ましい。
一般式(I)で表される化合物の製薬学的に許容される塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸等との酸付加塩が挙げられる。また、これらの塩には、その溶媒和物も含まれる。
一般式(I)で表される化合物は、Aが式:
【化8】
で表される基であるときは、その炭素原子が不斉炭素原子となり光学異性体が存在する。これらの異性体は、自体公知の方法によって単離、精製でき、本発明においては、それらの各異性体の混合物、単離されたものいずれでも使用することができる。
一般式(I)で表される化合物は、上記した特許2534421号公報の記載に従って製造できる。例えば、対応するブチルニトリル化合物の加水分解、あるいは対応するエチレンジアミン化合物とイソシアン酸またはそのアルカリ金属置換体を反応させることにより製造できる。上記した好適な1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−尿素は、特許2534421号の実施例13に従って製造できる。
【0009】
本発明のドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤は、例えば、涙液減少症、眼乾燥症、マイボーム腺機能不全、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、スティーブンス−ジョンソン症候群、VDT(Visual Display Terminal)作業に関連したドライアイ等のドライアイの治療に用いられる。さらに、角結膜上皮障害、角膜上皮糜爛、角膜潰瘍、眼瞼縁炎、眼類天疱瘡、春季カタル、アレルギー性結膜炎などドライアイを伴なう疾病の治療剤としても有用である。
【0010】
本発明の治療剤は、それ自体公知の薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤などと混合し、自体公知の方法に従って、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、注射剤、点眼剤、眼軟膏剤などの各種の経口、非経口用の剤形の医薬または獣医薬組成物とすることができ、特に局所投与用の剤形、好ましくは、点眼剤、眼軟膏剤として用いることが望ましい。
点眼剤には、例えば、水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液、可溶化点眼液などの水性点眼剤、非水性点眼液、非水性懸濁点眼液などの非水性点眼剤が包含され、とりわけ、水性点眼剤が好ましい。
水性点眼剤には、通常用いられる各種の添加剤、例えば、緩衝剤(例、リン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、アミノ酸など)、等張化剤(例、ソルビトール、グルコース、マンニトールなどの糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、塩化ナトリウムなどの塩類など)、保存剤または防腐剤(例、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチルやパラオキシ安息香酸エチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸またはその塩、チメロサール、クロロブタノールなど)、溶解補助剤または安定化剤(例、シクロデキストリン類およびその誘導体、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子、ポリソルベート80(Tween 80)などの界面活性剤など)、pH調整剤(例、塩酸、酢酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなど)、増粘剤(例、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩など)、キレート剤(例、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウムなど)などを適宜配合できる。
眼軟膏剤には、精製ラノリン、ワセリン、プラスチベース、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどのような自体公知の軟膏基剤が用いられる。
【0011】
本発明のドライアイまたはドライアイを伴なう疾病の予防治療剤は、ドライアイに罹患した、またはそのおそれのある哺乳動物(例、ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、サルなど)に投与することができる。投与ルートや投与量は、症状、患者の年齢、体重などによっても異なるが、例えば、成人に点眼剤として用いる場合、一般式(I)の遊離の化合物として、約0.001〜5(w/v)%、好ましくは、約0.01〜3(w/v)%程度含有する水性点眼剤として、症状に応じて1回量1〜数滴を1日1〜8回投与することが望ましい。
眼軟膏剤として用いる場合、一般式(I)の遊離の化合物として、約0.001〜5(w/w)%、好ましくは、約0.01〜3(w/w)%程度含有する眼軟膏剤を、症状に応じて1日1〜4回投与することが望ましい。
本発明のドライアイまたはドライアイを伴なう疾病の予防治療剤には、本発明の目的に反しない限り、さらに他のドライアイまたはドライアイを伴なう疾病の予防治療剤、例えば、メチルセルロース、コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸等の粘弾性物質を含有した人工涙液の1種または2種以上を適宜加えてもよい。
【0012】
【実施例】
つぎに製剤例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の例において、1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−尿素を化合物1と称する。
製剤例1
点眼剤
成 分 量
化合物1 1.0g
塩化ナトリウム 0.9g
リン酸2水素ナトリウム・2水和物 0.1g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
0.1N塩酸 適量(pH7.2)
精製水 全量100mL
精製水約80mLに塩化ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム・2水和物、塩化ベンザルコニウムおよび化合物1を添加し溶解させた後、0.1N塩酸を加えpHを7.2に調整する。精製水を加え全量100mLとし、点眼剤を調製する。
【0013】
試験例1
ウサギ涙液油層に及ぼす影響
正常白色ウサギに化合物1の溶液を点眼し、ドライアイ観察装置による涙液表層の観察と涙液量の測定を行なった。
被験化合物溶液の調製
リン酸2水素ナトリウム・2水和物(0.01g)および塩化ナトリウム(0.09g)に精製水を加え、全量を10mLとした。さらに適量の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7.0に調整し、これを基剤とした。基剤に化合物1を溶解し(1w/v%)、適量の塩酸水溶液を加えてpH7.0に調整し、被験化合物溶液を調製した。
ドライアイ観察装置による涙液表層の観察
日本白色ウサギに被験化合物溶液を1回50μL点眼投与し、点眼前、点眼10分、30分、60分、120分、180分後の涙液表層(角膜中央部)の鏡面反射像をドライアイ観察装置(DR−1、興和株式会社)を用いて観察した。対照として、基剤を同様に投与し観察した。本装置はスペキュラーの手法を応用して涙液表面からの反射光を観察する装置であり、光の干渉原理を応用して涙液油層の厚みを知ることができる(Yokoi N et al., Am. J. Ophthalmol., 122:818−24, 1996; 武久葉子 あたらしい眼科 14:1605−12, 1997)。その原理は光源から出た光が涙液に入射すると、涙液油層薄膜の表面からの反射光と裏面からの反射光との光路差によって干渉色が出現するというものである。油層の厚みは干渉色によって推測することができ、油層の厚さが薄い場合に干渉色は灰色を呈し、厚みを増すにつれて黄色、茶色、青色の順に干渉色が変化する。涙液のスペキュラー像はカラービデオプリンタ(U−230、ソニー)で印刷し、表1の涙液油層所見の分類に従って、干渉縞の有無とパターンおよび占有面積について観察し、採点評価を行なった。この所見は、涙液油層の厚さが増し、また、その範囲が広くなるほど高いスコアとなるように分類されている。
涙液量測定
日本白色ウサギに被験化合物溶液を、対照群には基剤を各々1回50μL点眼投与し、点眼前、点眼10分、20分、30分、60分、120分後の涙液量をシルマー法にて測定した。すなわち、涙液量測定5分前に0.4w/v%塩酸オキシブプロカイン(ベノキシール点眼液、参天製薬)10μLを点眼して局所麻酔を施した。濾紙を用いて下眼瞼結膜嚢内の涙液を拭き取った後、シルメル試験紙(昭和薬品化工)を使って、1分間の涙液分泌量を測定した。
結果
被験化合物溶液を点眼すると、10分後に多彩な干渉色を認め、120分後まで多彩な干渉色が認められたが、180分後には点眼前と同じような色調に戻った。このような涙液油層所見の経時的変化を表1の分類に従い干渉縞のパターン及び占有面積について採点評価を行なった結果を図1に示した。縦軸は表1に従ったスコアを、横軸は時間経過(分)を示す。点眼30分後から120分後にかけて多彩な干渉色所見が広範囲に認められ、干渉縞のパターンおよび占有面積ともに基剤点眼の対照群と比較して有意に高値を示した(n=4、平均値±標準誤差、*;p<0.05、**;p<0.01、経時測定データ多重比較)。
涙液油層の増加のみならず、涙液水層が減少するのに相関して、油層の伸びが不均一になり、多彩な干渉色が観察されると報告されている。そのため、被験化合物溶液点眼による涙液水層への影響を検討するため涙液量を測定した。その結果は図2に示したように(縦軸は涙液量(シルマー値:mm/分)を、横軸は時間経過(分)を示す。n=4、平均値±標準誤差)、被験化合物による涙液量の変化は認められなかった。したがって、涙液表層の観察結果は被験化合物の点眼が涙液油層を増加させたことを示すと考えられた。
【0014】
【表1】
【0015】
【発明の効果】
以上記載したごとく、本発明によれば、優れた涙液分泌促進作用を有するドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1a】涙液油層所見のパターンについての経時的変化の評点結果を示すグラフである。
【図1b】涙液油層所見の占有面積についての経時的変化の評点結果を示すグラフである。
【図2】涙液量の経時的変化測定結果を示すグラフである。
Claims (7)
- 肺サーファクタント分泌促進剤を含有するドライアイまたはドライアイを伴なう疾病の治療剤。
- 一般式(I)において、R4およびR5が同一または異なって低級アルキル基である請求項2記載の治療剤。
- 一般式(I)において、R4およびR5が共にメチル基である請求項2または3記載の治療剤。
- 治療剤が眼局所投与剤である請求項1〜5のいずれか1項記載の治療剤。
- 局所投与剤が点眼剤である請求項6記載の治療剤。
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JP2002345623A JP2004175749A (ja) | 2002-11-28 | 2002-11-28 | ドライアイおよびドライアイを伴う疾病の治療剤 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2008143254A1 (ja) * | 2007-05-21 | 2008-11-27 | Senju Pharmaceutical Co., Ltd. | PPARδアゴニスト含有医薬 |
JP2019534335A (ja) * | 2016-11-14 | 2019-11-28 | ミングゥ・ワン | 眼表面疾患の治療のための製剤および関連方法 |
-
2002
- 2002-11-28 JP JP2002345623A patent/JP2004175749A/ja not_active Withdrawn
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