JP2004175590A - 人工水晶の育成方法、及び人工水晶 - Google Patents
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Abstract
【課題】線状欠陥密度の低い人工水晶の育成方法、及び線状欠陥密度の低い人工水晶を提供する。
【解決手段】上記の目的を達成する為に本発明は、水熱法で製造する人工水晶の育成方法において、育成する人工水晶に想定される濃度の不純物を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して育成される水晶の格子定数と種結晶の格子定数との差を小さくする。
【選択図】図1
【解決手段】上記の目的を達成する為に本発明は、水熱法で製造する人工水晶の育成方法において、育成する人工水晶に想定される濃度の不純物を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して育成される水晶の格子定数と種結晶の格子定数との差を小さくする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、線状欠陥密度の低い人工水晶の育成方法、及び線状欠陥密度の低い人工水晶に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、人工水晶の電子工業的な利用はデバイスの小型化の要求に伴いフォトリソ技術等の微細加工技術が幅広く応用されるようになり、これに従って人工水晶の線状欠陥密度が重要な品質要因になっている。線状欠陥はウェハーのエッチング加工時にエッチチャンネルと呼ばれる針状の細孔を形成する要因となる欠陥であり、最終製品の特性や歩留まり及び機械的強度に大きな影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
一般に人工水晶はオートクレーブと呼ばれる耐圧容器を炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で充填した容器内で、高温高圧状態下において育成される。これは水熱育成法と呼ばれ、耐圧容器内には高温部と低温部とが設けられており、高温部と低温部とで温度差をつけることによって高温部で溶解した水晶原料が低温部で過飽和溶液になり、水晶の種結晶上に結晶を析出することを利用した結晶成長方法である。
【0004】
工業的に利用される人工水晶のほとんどが人工水晶から切出した種結晶を用いて育成される。この場合、良く管理された条件下で育成されれば種結晶の表面から新たに発生する線状欠陥は極小に抑えることができる。
しかしながら、線状欠陥が存在する種結晶を用いて育成させる場合には種結晶の線状欠陥を引き継いで結晶成長するために、育成世代を重ねるにつれて線状欠陥密度が高くなる。従って、人工水晶を種結晶に用いる場合には、成長領域中に線状欠陥が新たに発生しないように育成させることが非常に重要である。
【0005】
成長領域中に線状欠陥が新たに発生する原因としては、種結晶の格子定数と成長領域の格子定数との差、種表面に付着した異物および成長中に取り込まれた異物が挙げられる。上記異物の混入を防いで低線状欠陥密度の人工水晶を育成する方法は特許(特公昭57−49520)に記載がある。
【特許文献1】
特公昭57−49520号公報
【特許文献2】
特開2002−114594号公報
【非特許文献1】
Journal of Crystal Growth 33 (1976) Page 311〜 Page 323
【非特許文献2】
28th Anv. Frequency Control Symposium (1974) Page 117〜 Page 124
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
先述のように、現状の人工水晶育成法は人工水晶から切出した種結晶を育成させており、種結晶中の線状欠陥は成長領域に引き継がれる。そのために種結晶より線状欠陥密度の低い人工水晶を育成させることは原理上不可能であり、育成世代を重ねるにつれて線状欠陥密度が高くなるといった問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような技術的背景のもとでなされたものであり、種結晶の格子定数と成長領域の格子定数との差に着目して、育成する人工水晶に想定される濃度の不純物を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して低線状欠陥密度人工水晶の育成を実現させるもので、従がってその目的は、従来の方法より線状欠陥密度の低い人工水晶の育成方法、及び低線状欠陥密度の人工水晶を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、水熱法で製造する人工水晶の育成方法において、育成する人工水晶に想定される濃度の、特にAl(アルミニウム)といった不純物を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して育成される水晶の格子定数と種結晶の格子定数との差を小さくすることにより種表面から発生する線状欠陥を防いで、線状欠陥密度の低い人工水晶を得ることを特徴とする。
【0009】
前述の育成方法で得た人工水晶から種結晶を切出せば、育成世代を重ねるにつれて増加する線状欠陥を最小限に抑えることができる。
【0010】
工業的に利用される人工水晶はほとんどが人工水晶から切出した種結晶を育成させているが、種結晶中の線状欠陥は成長領域に引き継がれ、また育成中に異物の混入などで新たに線状欠陥が発生するために、種結晶より線状欠陥密度の低い人工水晶を育成させることは原理上不可能である。従って、育成世代を重ねるにつれ線状欠陥密度が高くなってしまうといった問題があった。
【0011】
育成世代を重ねても低線状欠陥密度の人工水晶得るためには、線状欠陥密度の小さな種結晶を用いて、新たに線状欠陥が発生しないようにすれば良い。例えば特開 2002−114594(回転Y板)で水熱法により製造する人工水晶において、Z軸から−Y軸に向かってX軸の回りに8.5°<θ<38°、38°<θ<90°および、Z軸から+Y軸に向かってX軸の回りに0°<θ<38°、38°<θ<90°で回転された角度からなるグループから選択された角度で水晶から切出された種結晶を用いることにより、人工水晶の成長領域の線状欠陥に影響を及ぼす種結晶部における線状欠陥密度を低くすることを利用して、従来のZ板を種結晶として用いる場合よりも線状欠陥密度の低い人工水晶を得ている。
【0012】
例えば特公昭57−49520では、基本成長面が重力ベクトルの方向に対して90°〜45°の角度になるように種結晶を設ける際に同時に結晶支持具として用いられる異質な材料から成る板状の物質によって前記の種結晶の上部基本成長面を遮断することにより、異物の混入を防いで新たに線状欠陥が発生しないようにしている。上記の種結晶の下部基本成長面に成長した結晶は線状欠陥密度の低い人工水晶である。
【0013】
本発明は、線状欠陥密度の低い人工水晶育成方法、及びこの線状欠陥密度の低い人工水晶育成方法を用いて得られる人工水晶を提供するもので、特に種表面から新たに発生する線状欠陥を防ぐことにより、育成世代を重ねても線状欠陥密度を最小限に抑えた人工水晶育成に関するものである。
【0014】
すなわち、本発明は育成する人工水晶に想定される濃度の不純物を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して育成される水晶の格子定数と種結晶の格子定数との差を小さくすることにより、種表面から発生する線状欠陥を最小限にすることを目的としたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の一形態について説明する。
なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
【0016】
大型オートクレーブで製造される工業用人工水晶において、水晶中の線状欠陥は種結晶に起因するものがほとんどである。種結晶は育成された人工水晶から切出されるために、種結晶中に線状欠陥がある場合には、種結晶中の線状欠陥は成長領域に引き継がれ、また育成中に異物の混入などで新たに線状欠陥が発生するために、世代を重ねるにつれ線状欠陥が増加するという問題がある。
【0017】
従って、新たに種表面から線状欠陥を発生させないことが重要であり、前述の線状欠陥の発生原因としては、種表面に付着した異物および種結晶と成長部の格子定数差によるミスフィットが挙げられる。しかしながら、異物も格子定数差によるミスフィットも必ずしも線状欠陥発生の原因となるわけではなく、その関係は未だ不明確であった。
【0018】
そこで前記の不明確な点を明らかにすることを目的として、異物と格子定数差によるミスフィットが線状欠陥に及ぼす影響を以下のように実施調査を行った。
【0019】
育成は工業用大型オートクレーブ(4.2m3、直径600mm、高さ15m)を用いてZ寸法が22mmから26mmに成長する通常のZ板の成長条件で行った。
評価方法は線状欠陥の観察にはX線トポグラフィーを、種表面の異物観察には光学顕微鏡を用いた。
【0020】
本実施調査では異物と格子定数差によるミスフィットと線状欠陥の関係を調べる為に、種結晶とその配置に後述されるような方法をとった。この方法について以下に図を用いて説明する。
【0021】
人工水晶は図1に示すように結晶中に複数の領域を持つが、各領域で不純物含有量が異なり、不純物含有量は領域Z<+X<−X<Sの順で多くなる。図1カッコ内に示す数値は、代表的な不純物であるAl(アルミ二ウム)の測定値である。また表1は、本実施調査で用いた種結晶に含まれるZ、+X、S、−X領域の格子定数を測定した結果である。非特許文献1及び2において、Z領域を基準とすると格子定数差は領域Z<+X<−X<Sの順で大きくなり、また不純物含有量が多いほど格子定数が大きくなると報告されているが、図1及び表1の測定結果においても前述の非特許文献の報告と一致している。
【0022】
図2は本実施調査で用いた種結晶である。異なる領域を含むように種結晶を切り出せば、種結晶に含まれる領域によって格子定数が異なるので成長部との境界に格子定数差によるミスフィットが生じる。
【0023】
上記種結晶の配置は、通常主面が重力方向と平行なところ、図3のように斜めに傾けた。この方法で育成すると、特公昭57−49520にあるように、上片面に多く異物が付着するのに対し、下片面には殆ど異物が付着しない結果となった。
【0024】
ここで前述の付着する異物は、組成がオートクレーブから供給される Fe,原料のシリカ、育成溶液からの不純物から構成される、水晶以外の副生成鉱物である。オートクレーブの内壁は育成環境中で副生成物により覆われており、剥離したものが対流に乗って結晶内に取り込まれる。
【0025】
本実施調査例の結果を説明する。まず始めにX線トポグラフィーによる観察結果を図4に示す。サンプルは成長した水晶をY軸と垂直に切断したものを使用した。厚さは1.0mmで(110)反射により観察した。
【0026】
図4に種結晶、種結晶中の+X領域、S領域、Z領域、−X領域、成長部の+X領域、S領域、−X領域、Z領域を示した。図4において、種結晶より向かって左側が斜めに吊るした時の上片面(丸で囲み上と表示)、右側が下片面(丸で囲み下と表示)になる。図4より、上片面の種表面に異物が多く付着していることがわかる。このとき、異物の付き方は領域には関係しない。異物の付着が少ない側では種表面から発生している線状欠陥量は種の領域によらず一様で、種結晶と成長部間の格子定数差に関係していないのに対して、異物の付着が多い側は線状欠陥量が領域S>−X>+X>Zの順になっていた。これは成長部(Z領域)との格子定数差の関係に一致する。
【0027】
以上の結果より、線状欠陥は格子定数差と異物の相乗効果で発生することがわかった。上記の結果は“種結晶と成長結晶の格子定数差によるミスフィット”または“異物”どちらかひとつでも欠ければ、線状欠陥は種表面から新たに発生しないことを示す。
【0028】
異物を除去する方法としての文献は、先述の特許文献1の特公昭57−49520がある。しかし本発明は“種結晶と成長結晶の格子格子定数差によるミスフィット”に着目して線状欠陥の低い人工水晶を得るものである。
【0029】
現在人工水晶の製品として用いているのはZ領域であるので種結晶はZ領域から切出したものを使用している。これは以前に他の領域が混ざった種結晶から人工水晶を育成させて大量に線状欠陥が発生した事実によるものであったが、これらについても前述の実施調査によって、その大量線状欠陥発生の原理が明らかになった。
【0030】
従って、新たに種表面から線状欠陥を発生させない為には、育成において成長結晶に想定される濃度の不純物(主にAlアルミニウム)を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して育成される水晶の格子定数と種結晶の格子定数との差を小さくすることが非常に有効である。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、種表面からの線状欠陥の発生を防止することが出来る。
【0032】
本発明により、線状欠陥密度の低い人工水晶が得られ、人工水晶の生産歩留まりを大幅に改善することが出きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】人工水晶中の各領域を示す図であり、カッコ内は吸光光度法によりその領域に含まれるAl(アルミニウム)の量を測定した結果をppm値(図中の括弧内の数値)で示しているものである
【図2】本発明に至った実施調査に用いた種結晶の図である。同一種結晶板上に、+X、S、Z、−Xの異なる領域が含まれている。
【図3】本発明に至った実施調査についての種結晶の配置状態を示す図である。この方法により育成すると先述の特許文献1の特公昭57−49520にあるように、上片面に多く異物が付着するのに対し、下片面には殆ど異物が付着しない。
【図4】本発明に至った実験についてのX線トポグラフである。また、丸で囲み上と表示している異物の付着が多い側では、種結晶の領域により成長領域との格子定数差に関係して線状欠陥の発生量が増えている。一方、丸で囲み下と表示している異物の付着が少ない側では、種表面から発生している線状欠陥量は種の領域によらず一様であり、種結晶と成長部間の格子定数差に関係していないことを示している。
【表1】本実施調査で用いた種結晶に含まれる各領域を4結晶ボンド法により測定した格子定数(C軸)と、Z領域を基準とした格子定数差を表わすものである。
【符号の説明】
1 種結晶
2 異物
【発明の属する技術分野】
本発明は、線状欠陥密度の低い人工水晶の育成方法、及び線状欠陥密度の低い人工水晶に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、人工水晶の電子工業的な利用はデバイスの小型化の要求に伴いフォトリソ技術等の微細加工技術が幅広く応用されるようになり、これに従って人工水晶の線状欠陥密度が重要な品質要因になっている。線状欠陥はウェハーのエッチング加工時にエッチチャンネルと呼ばれる針状の細孔を形成する要因となる欠陥であり、最終製品の特性や歩留まり及び機械的強度に大きな影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
一般に人工水晶はオートクレーブと呼ばれる耐圧容器を炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で充填した容器内で、高温高圧状態下において育成される。これは水熱育成法と呼ばれ、耐圧容器内には高温部と低温部とが設けられており、高温部と低温部とで温度差をつけることによって高温部で溶解した水晶原料が低温部で過飽和溶液になり、水晶の種結晶上に結晶を析出することを利用した結晶成長方法である。
【0004】
工業的に利用される人工水晶のほとんどが人工水晶から切出した種結晶を用いて育成される。この場合、良く管理された条件下で育成されれば種結晶の表面から新たに発生する線状欠陥は極小に抑えることができる。
しかしながら、線状欠陥が存在する種結晶を用いて育成させる場合には種結晶の線状欠陥を引き継いで結晶成長するために、育成世代を重ねるにつれて線状欠陥密度が高くなる。従って、人工水晶を種結晶に用いる場合には、成長領域中に線状欠陥が新たに発生しないように育成させることが非常に重要である。
【0005】
成長領域中に線状欠陥が新たに発生する原因としては、種結晶の格子定数と成長領域の格子定数との差、種表面に付着した異物および成長中に取り込まれた異物が挙げられる。上記異物の混入を防いで低線状欠陥密度の人工水晶を育成する方法は特許(特公昭57−49520)に記載がある。
【特許文献1】
特公昭57−49520号公報
【特許文献2】
特開2002−114594号公報
【非特許文献1】
Journal of Crystal Growth 33 (1976) Page 311〜 Page 323
【非特許文献2】
28th Anv. Frequency Control Symposium (1974) Page 117〜 Page 124
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
先述のように、現状の人工水晶育成法は人工水晶から切出した種結晶を育成させており、種結晶中の線状欠陥は成長領域に引き継がれる。そのために種結晶より線状欠陥密度の低い人工水晶を育成させることは原理上不可能であり、育成世代を重ねるにつれて線状欠陥密度が高くなるといった問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような技術的背景のもとでなされたものであり、種結晶の格子定数と成長領域の格子定数との差に着目して、育成する人工水晶に想定される濃度の不純物を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して低線状欠陥密度人工水晶の育成を実現させるもので、従がってその目的は、従来の方法より線状欠陥密度の低い人工水晶の育成方法、及び低線状欠陥密度の人工水晶を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、水熱法で製造する人工水晶の育成方法において、育成する人工水晶に想定される濃度の、特にAl(アルミニウム)といった不純物を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して育成される水晶の格子定数と種結晶の格子定数との差を小さくすることにより種表面から発生する線状欠陥を防いで、線状欠陥密度の低い人工水晶を得ることを特徴とする。
【0009】
前述の育成方法で得た人工水晶から種結晶を切出せば、育成世代を重ねるにつれて増加する線状欠陥を最小限に抑えることができる。
【0010】
工業的に利用される人工水晶はほとんどが人工水晶から切出した種結晶を育成させているが、種結晶中の線状欠陥は成長領域に引き継がれ、また育成中に異物の混入などで新たに線状欠陥が発生するために、種結晶より線状欠陥密度の低い人工水晶を育成させることは原理上不可能である。従って、育成世代を重ねるにつれ線状欠陥密度が高くなってしまうといった問題があった。
【0011】
育成世代を重ねても低線状欠陥密度の人工水晶得るためには、線状欠陥密度の小さな種結晶を用いて、新たに線状欠陥が発生しないようにすれば良い。例えば特開 2002−114594(回転Y板)で水熱法により製造する人工水晶において、Z軸から−Y軸に向かってX軸の回りに8.5°<θ<38°、38°<θ<90°および、Z軸から+Y軸に向かってX軸の回りに0°<θ<38°、38°<θ<90°で回転された角度からなるグループから選択された角度で水晶から切出された種結晶を用いることにより、人工水晶の成長領域の線状欠陥に影響を及ぼす種結晶部における線状欠陥密度を低くすることを利用して、従来のZ板を種結晶として用いる場合よりも線状欠陥密度の低い人工水晶を得ている。
【0012】
例えば特公昭57−49520では、基本成長面が重力ベクトルの方向に対して90°〜45°の角度になるように種結晶を設ける際に同時に結晶支持具として用いられる異質な材料から成る板状の物質によって前記の種結晶の上部基本成長面を遮断することにより、異物の混入を防いで新たに線状欠陥が発生しないようにしている。上記の種結晶の下部基本成長面に成長した結晶は線状欠陥密度の低い人工水晶である。
【0013】
本発明は、線状欠陥密度の低い人工水晶育成方法、及びこの線状欠陥密度の低い人工水晶育成方法を用いて得られる人工水晶を提供するもので、特に種表面から新たに発生する線状欠陥を防ぐことにより、育成世代を重ねても線状欠陥密度を最小限に抑えた人工水晶育成に関するものである。
【0014】
すなわち、本発明は育成する人工水晶に想定される濃度の不純物を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して育成される水晶の格子定数と種結晶の格子定数との差を小さくすることにより、種表面から発生する線状欠陥を最小限にすることを目的としたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の一形態について説明する。
なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
【0016】
大型オートクレーブで製造される工業用人工水晶において、水晶中の線状欠陥は種結晶に起因するものがほとんどである。種結晶は育成された人工水晶から切出されるために、種結晶中に線状欠陥がある場合には、種結晶中の線状欠陥は成長領域に引き継がれ、また育成中に異物の混入などで新たに線状欠陥が発生するために、世代を重ねるにつれ線状欠陥が増加するという問題がある。
【0017】
従って、新たに種表面から線状欠陥を発生させないことが重要であり、前述の線状欠陥の発生原因としては、種表面に付着した異物および種結晶と成長部の格子定数差によるミスフィットが挙げられる。しかしながら、異物も格子定数差によるミスフィットも必ずしも線状欠陥発生の原因となるわけではなく、その関係は未だ不明確であった。
【0018】
そこで前記の不明確な点を明らかにすることを目的として、異物と格子定数差によるミスフィットが線状欠陥に及ぼす影響を以下のように実施調査を行った。
【0019】
育成は工業用大型オートクレーブ(4.2m3、直径600mm、高さ15m)を用いてZ寸法が22mmから26mmに成長する通常のZ板の成長条件で行った。
評価方法は線状欠陥の観察にはX線トポグラフィーを、種表面の異物観察には光学顕微鏡を用いた。
【0020】
本実施調査では異物と格子定数差によるミスフィットと線状欠陥の関係を調べる為に、種結晶とその配置に後述されるような方法をとった。この方法について以下に図を用いて説明する。
【0021】
人工水晶は図1に示すように結晶中に複数の領域を持つが、各領域で不純物含有量が異なり、不純物含有量は領域Z<+X<−X<Sの順で多くなる。図1カッコ内に示す数値は、代表的な不純物であるAl(アルミ二ウム)の測定値である。また表1は、本実施調査で用いた種結晶に含まれるZ、+X、S、−X領域の格子定数を測定した結果である。非特許文献1及び2において、Z領域を基準とすると格子定数差は領域Z<+X<−X<Sの順で大きくなり、また不純物含有量が多いほど格子定数が大きくなると報告されているが、図1及び表1の測定結果においても前述の非特許文献の報告と一致している。
【0022】
図2は本実施調査で用いた種結晶である。異なる領域を含むように種結晶を切り出せば、種結晶に含まれる領域によって格子定数が異なるので成長部との境界に格子定数差によるミスフィットが生じる。
【0023】
上記種結晶の配置は、通常主面が重力方向と平行なところ、図3のように斜めに傾けた。この方法で育成すると、特公昭57−49520にあるように、上片面に多く異物が付着するのに対し、下片面には殆ど異物が付着しない結果となった。
【0024】
ここで前述の付着する異物は、組成がオートクレーブから供給される Fe,原料のシリカ、育成溶液からの不純物から構成される、水晶以外の副生成鉱物である。オートクレーブの内壁は育成環境中で副生成物により覆われており、剥離したものが対流に乗って結晶内に取り込まれる。
【0025】
本実施調査例の結果を説明する。まず始めにX線トポグラフィーによる観察結果を図4に示す。サンプルは成長した水晶をY軸と垂直に切断したものを使用した。厚さは1.0mmで(110)反射により観察した。
【0026】
図4に種結晶、種結晶中の+X領域、S領域、Z領域、−X領域、成長部の+X領域、S領域、−X領域、Z領域を示した。図4において、種結晶より向かって左側が斜めに吊るした時の上片面(丸で囲み上と表示)、右側が下片面(丸で囲み下と表示)になる。図4より、上片面の種表面に異物が多く付着していることがわかる。このとき、異物の付き方は領域には関係しない。異物の付着が少ない側では種表面から発生している線状欠陥量は種の領域によらず一様で、種結晶と成長部間の格子定数差に関係していないのに対して、異物の付着が多い側は線状欠陥量が領域S>−X>+X>Zの順になっていた。これは成長部(Z領域)との格子定数差の関係に一致する。
【0027】
以上の結果より、線状欠陥は格子定数差と異物の相乗効果で発生することがわかった。上記の結果は“種結晶と成長結晶の格子定数差によるミスフィット”または“異物”どちらかひとつでも欠ければ、線状欠陥は種表面から新たに発生しないことを示す。
【0028】
異物を除去する方法としての文献は、先述の特許文献1の特公昭57−49520がある。しかし本発明は“種結晶と成長結晶の格子格子定数差によるミスフィット”に着目して線状欠陥の低い人工水晶を得るものである。
【0029】
現在人工水晶の製品として用いているのはZ領域であるので種結晶はZ領域から切出したものを使用している。これは以前に他の領域が混ざった種結晶から人工水晶を育成させて大量に線状欠陥が発生した事実によるものであったが、これらについても前述の実施調査によって、その大量線状欠陥発生の原理が明らかになった。
【0030】
従って、新たに種表面から線状欠陥を発生させない為には、育成において成長結晶に想定される濃度の不純物(主にAlアルミニウム)を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して育成される水晶の格子定数と種結晶の格子定数との差を小さくすることが非常に有効である。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、種表面からの線状欠陥の発生を防止することが出来る。
【0032】
本発明により、線状欠陥密度の低い人工水晶が得られ、人工水晶の生産歩留まりを大幅に改善することが出きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】人工水晶中の各領域を示す図であり、カッコ内は吸光光度法によりその領域に含まれるAl(アルミニウム)の量を測定した結果をppm値(図中の括弧内の数値)で示しているものである
【図2】本発明に至った実施調査に用いた種結晶の図である。同一種結晶板上に、+X、S、Z、−Xの異なる領域が含まれている。
【図3】本発明に至った実施調査についての種結晶の配置状態を示す図である。この方法により育成すると先述の特許文献1の特公昭57−49520にあるように、上片面に多く異物が付着するのに対し、下片面には殆ど異物が付着しない。
【図4】本発明に至った実験についてのX線トポグラフである。また、丸で囲み上と表示している異物の付着が多い側では、種結晶の領域により成長領域との格子定数差に関係して線状欠陥の発生量が増えている。一方、丸で囲み下と表示している異物の付着が少ない側では、種表面から発生している線状欠陥量は種の領域によらず一様であり、種結晶と成長部間の格子定数差に関係していないことを示している。
【表1】本実施調査で用いた種結晶に含まれる各領域を4結晶ボンド法により測定した格子定数(C軸)と、Z領域を基準とした格子定数差を表わすものである。
【符号の説明】
1 種結晶
2 異物
Claims (2)
- 水熱法で製造する人工水晶の育成方法において、育成される人工水晶に想定される濃度の不純物を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して育成される水晶の格子定数と、種結晶の格子定数との差を小さくすることにより育成される線状欠陥密度の低い人工水晶の育成方法。
- 水熱法で製造する人工水晶の育成方法において、育成される人工水晶に想定される濃度の不純物を含む種結晶を用いることで、育成環境を考慮して育成される水晶の格子定数と、種結晶の格子定数との差を小さくすることにより育成される線状欠陥密度の低い人工水晶。
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JP2007057389A (ja) * | 2005-08-24 | 2007-03-08 | Kyocera Kinseki Corp | 圧力センサ素子及び圧電振動子 |
CN100335683C (zh) * | 2005-05-20 | 2007-09-05 | 淄博宇峰实业有限责任公司 | 水热法生产大尺寸人造光学石英晶体的方法 |
JP2008088009A (ja) * | 2006-09-29 | 2008-04-17 | Nippon Dempa Kogyo Co Ltd | 人工水晶の製造方法及び人工水晶 |
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