JP2004173054A - 分散補償器及び分散補償システム - Google Patents
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Abstract
【課題】分散と分散スロープを同時に補償し、正確な分散補償を行う。
【解決手段】光ファイバー2を射出した光を、一軸方向に集光させてファブリペロー干渉計5に入射させ、この干渉計5で波長によって射出角度を変化させX軸方向に分布させる。更に集光レンズ6でY−Z面とX−Z面とで異なる焦点位置A、A′で結像させ、凹面回折格子7で反射させて波長によって偏向角を異ならせ、反射ミラー8の反射面8aで反射させる。反射面8aをY−Z面とX−Z面とで異なる自由曲面に形成して波長毎の反射位置をずらし、波長毎に光路長差を持たせて分散と分散スロープを補償する。集光レンズ6をアナモルフィックレンズとしてX−Z面内のパワーをY−Z面内のパワーより大きくして凹面回折格子での反射光の非点収差を補正する。
【選択図】 図1
【解決手段】光ファイバー2を射出した光を、一軸方向に集光させてファブリペロー干渉計5に入射させ、この干渉計5で波長によって射出角度を変化させX軸方向に分布させる。更に集光レンズ6でY−Z面とX−Z面とで異なる焦点位置A、A′で結像させ、凹面回折格子7で反射させて波長によって偏向角を異ならせ、反射ミラー8の反射面8aで反射させる。反射面8aをY−Z面とX−Z面とで異なる自由曲面に形成して波長毎の反射位置をずらし、波長毎に光路長差を持たせて分散と分散スロープを補償する。集光レンズ6をアナモルフィックレンズとしてX−Z面内のパワーをY−Z面内のパワーより大きくして凹面回折格子での反射光の非点収差を補正する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光通信に用いられる光ファイバー等の光伝達素子内で光の伝送中に発生する分散による光信号の劣化を補償する分散補償器及び分散補償システムに関し、特に光伝達素子内で発生する波長分散および分散スローブを補償することのできる分散補償器及び分散補償システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
インターネットの急速な拡大による通信トラフィックの増大に応じ、光通信システムの大容量化の必要性が増している。従来、通信の大容量化は電子回路の速度向上に伴う伝送スピードの高速化によっていたが、近年、通信トラフィックの増大の要求は電子回路の高速度化を超えるレベルであり、波長分割多重化技術(WDM;Wavelength Division Maltiplexing)による並列化の併用が不可欠となってきた。
現在、商用化されている光伝送速度は10Gb/sが限界であるが、化合物半導体を用いた電子デバイスの進歩によって次第に40Gb/sでの伝送が実験室レベルで実現している。伝送する媒体に関しては、10Gb/sを起える高速伝送では、媒質中の光の伝播速度が光の波長や偏波状態によって変化する、分散による伝送パルス幅の広がりが深刻な問題であり、光の伝送するシステム全体において分散をゼロに近づけることが必要である,
波長分散に関しては、ファイバーの零分散波長を伝送波長に近づける分散シフトファイバーを用いてファイバー自体の分散を減少させる技術、光ファイバー(通常シングルモードファイバー:SMF)と逆の特性を持った分散補償ファイバー(DCF:Dispersion Compensation Fiber)を一定間隔で配置する分散制御技術が一般的に用いられてきた。
一方、40Gb/sの速度になると、分散制御に対する要求が非常に厳しく、温度変化に伴う光ファイバーの分散の変化をダイナミックに補正する必要が生じてきた。
【0003】
これらの要求のためには、ファイバーブラッググレーティング(FBG)や、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)が提案されている。VIPAを用いた分散補償器として、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。この分散補償器は、光ファイバーから射出した光をコリメートした後に集光させ、その焦点位置に配置したVIPAを通過させることで波長毎に判別可能な光速を生成して平行光とする。そして、この平行光を集光させて焦点位置に配設させた反射ミラーで反射させ、同一の光学系を逆方向に走行させることで光ファイバーに戻すようにしている。
この分散補償器によれば、VIPAから出力された光を反射ミラーの異なる点に集光させ、その際に反射ミラーの反射面の形状を変化させておくことで、波長毎に光路差を生じさせることができ、異なる波長毎に異なる距離を伝播することで波長分散を補償するようにしている。
ところで、光ファイバーによる光通信の劣化特性には、分散と同時に分散スロープが存在するが、上記の分散補償器では、波長分散と共に起こる分散スロープまでは改善できないという欠点がある。
この分散スロープを補償する手段として下記特許文献2に開示された分散補償器が提案されている。この特許文献2では、VIPAと回折格子を用いて分散及び分散スロープを同時に補償する補償器を提案している。
【0004】
【特許文献1】
特表2000−511655公報
【特許文献2】
米国特許第6301048号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この分散補償器においては、回折格子を備えて回折格子から射出した光を反射ミラーで反射するように構成しているが、VIPA以外に1枚または2枚の回折格子とレンズとを用いて光を通過させる構成となっているため、光が走行する光学素子の界面が4枚以上となってしまう。そのため、それぞれの光学素子における吸収や界面における光の損失が大きくなり、装置全体の挿入損失が大きいものになる不具合が生じている。
また、各波長に対して最適な光路差を生成させる表面形状となるよう反射ミラーを調整する必要があるので、反射ミラーを可動ステージで移動させる場合にはスペースが必要となる。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、波長分散と分散スロープを補償できて挿入損失が少ない分散補償器を提供することを目的とする。
本発明の更なる目的は、補償する分散量及び分散スロープ量を可変にするにあたり大きなスペースを必要としない分散補償器と分散補償システムを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による分散補償器は、光を伝送するための光伝達素子を射出した光の波長によって射出する角度を変化させる角分散素子と、該角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーと波長分散方向に直交する面内のパワーとが異なっていて集光作用を有する光学素子と、少なくとも凹面形状の反射面を有していて回折作用を有する回折光学素子と、全光学系における焦点位置近傍に配備され且つ光が波長に応じて分散する方向に形状が変化する反射面を有する反射ミラーとを備えたことを特徴とする。
本発明は、光ファイバー等の光伝達素子を伝送して変調された光を取り出し、角分散素子と回折光学素子とによって、互いに直交する等、交差する方向においてそれぞれ波長によって射出角を異ならせて反射ミラーの反射面で反射させることで、光伝達素子のもつ分散及び分散スロープによる光信号の劣化を補償する。特に、凹面形状の反射面を有していて回折作用を発揮する回折光学素子で発生する非点収差をパワーを異ならせた光学素子で補正し、反射ミラー上に集光させることができる。しかも回折光学素子を配設したことで、挿入損失を小さくできると共に部品点数が少なく装置の小型化を実現できる。また波長多重分割技術(WDM)を用いた光通信システムにおいて、分散補償と同時に分散スロープを補償することを実現し、補償する分散量と分散スロープ量とにかかわらず、挿入損失が少ない光学系を得られる。
【0008】
本発明において、角分散素子としては、入射される光の波長によって射出する光の射出角が異なるものであればよい。例えば、光学伝達素子から射出した光は、一軸方向にのみ集光した光となって角分散素子に入射され、一軸方向にのみ集光した光が集光した方向を含む面内方向にのみ波長によって射出角の異なる光として射出する。この波長によって射出角の異なる射出光は、角分散素子による波長分散方向を含む面内の反射位置の異なる反射面を有する反射ミラーで反射されて光路を逆方向に戻る。反射ミラーのこの反射面が、例えば分散値に対応した光路長差を有する自由曲面形状であると、反射位置による全光路長の差を持たせることができる。それゆえ、波長による群遅延差は光路長差を持たせることで補償することができる。
角分散素子の分散量が小さければ、反射ミラーまでの距離を長くする必要があるため装置の大型化を招く。そうでなければ波長分離できず、分散補償することが困難となるため、角分散素子の分散量はある程度大きいものが好ましい。
【0009】
他方、角分散素子から射出した光はある波長を1つだけ取り出すと略平行光となっており、この光を回折光学素子に入射させる。そして回折光学素子にて反射した光は波長によって射出角の異なった収束する回折光となり、反射ミラーの反射面上の反射点に集光する。
また回折光学素子は、角分散素子の波長分散方向を含む面内の焦点位置と波長分散方向に直交する面内の焦点位置とが異なる非点収差を生じる。集光用の光学素子はこの非点収差を補正するための手段であり、波長分散方向を含む面内のパワーと波長分散方向に直交する面内のパワーとが異なっていることで、回折光学素子で発生する非点収差を補正することができ、それぞれ反射ミラー上に集光してスポットを形成させることで、精度の良い分散補償を行うことができる。
反射ミラーは、角分散素子による波長分散方向と直交する面内においては、回折光学素子から射出して波長によって射出角の異なる光線を反射することで分散スロープを補償する反射面形状を有している。この反射面は角分散素子による波長分散方向を含む面内とは異なった断面形状で、角分散素子による波長分散方向と直交する面内での、回折光学素子からの波長によって射出角の異なる射出光の反射位置が異なる面である。
【0010】
また本発明による分散補償器は、光を伝送するための光伝達素子を射出した光の波長によって射出する角度を変化させる角分散素子と、該角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーと波長分散方向に直交する面内のパワーとが異なっていて集光作用を有する光学素子と、該光学素子を射出した光を好ましくは焦点位置近傍で偏向させる光偏向器と、少なくとも凹面形状の反射面を有していて回折作用を有する回折光学素子と、全光学系における焦点位置近傍に配備され且つ光が波長に応じて分散する方向に形状が変化する反射面を有する反射ミラーとを備えたことを特徴とする。
本発明においても、角分散素子と回折光学素子とによって、互いに直交する等、交差する方向においてそれぞれ波長によって射出角を異ならせて反射ミラーの反射面で反射させることで、光伝達素子のもつ分散及び分散スロープによる光信号の劣化を補償する。
【0011】
特に本発明においても、回折光学素子は、波長分散方向を含む面内の焦点位置と波長分散方向に直交する面内の焦点位置とが異なる非点収差が生じる。この非点収差を補正するために集光用の光学素子が、角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーと波長分散方向と直交する面内のパワーとを異ならせていることによって、回折光学素子で発生する非点収差を補正することができ、反射ミラー上にスポットを形成し、正確な分散補償を行うことができる。
しかも、光束の方向を曲げる光偏向器によって光学素子を通過した光束を走査させ、回折光学素子に入射する位置を変えることができる。そのため、回折光学素子の回折周期を変化したものに構成しておくと、回折光学素子の分散値を変化させることができ、分散スロープ値を可変にすることが可能となる。
尚、光偏向器を角分散素子による波長分散方向に直交する面内と波長分散方向を含む面内とのいずれか一方の1軸または両方の2軸で回転可能としてもよく、装置を大型化することなく大きなスペースを必要とせずに分散や分散スロープを可変にできる。
【0012】
また、光学素子は、角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーが波長分散方向に直交する面内のパワーより大きいものであってもよい。
この光学素子は、角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーφmと波長分散方向に直交する面内のパワーφnとを有していて、φm >φnであることが重要である。
即ち、回折光学素子、例えば凹面回折格子で反射する光の互いに直交する面内における焦点位置の差についていえば、基本的に、回折格子の回折溝に平行な面内の焦点位置Phと回折溝に垂直な面内の焦点位置Psとは図11に示すような関係になる。焦点位置Phの方が焦点位置Psよりも凹面形状の反射面から遠くに位置する。この非点収差を補正するため、光学素子における角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーφmと波長分散方向に直交する面内のパワーφnとが、φm>φnの関係を有するように形成する。これによって、二次結像点である焦点位置PhとPsの位置を一致させることができ、非点収差を補正できる。
このような光学素子は、角分散素子と回折光学素子の間に配置された少なくとも1面のアナモルフィック面を含む光学部材であってもよく、或いは回転非対称な自由曲面を含む光学部材であってもよい。このような光学部材はレンズ、例えばアナモルフィックレンズであれば効果的に非点収差を補正でき、1面の自由曲面を含む自由曲面レンズとすれば非点収差を補正できると共にその他の収差補正も行うことができる。また凹面鏡、例えばアナモルフィック凹面鏡であれば、効果的に非点収差を補正でき、しかも反射面を有するために光路を折り返すことによる装置の小型化を同時に達成でき、挿入損失を更に低減できる。
【0013】
また、光学素子によって形成された波長分散方向に直交する面内の焦点位置と反射ミラーの反射面は、回折光学素子の凹面形状の反射面の曲率半径を直径とする円周上に位置するようにしてもよい。
波長分散方向に直交する面内の1次像位置、回折光学素子の反射点及び反射ミラーの反射面は1つの円周上にあり、その円の直径は回折光学素子の曲率半径であることが重要である。これらの幾何学的な位置関係はローランド円と呼ばれ、回折光学素子が回折効果と結像性能を同時に満たす。この回折光学素子は単体で分光作用と結像作用を持ち、一次像位置をローランド円上に設けているので、回折光学素子で分光された回折像は格子定数、波長、次数をどう選択しても、必ず同じローランド円上に生じ、しかも非点収差以外は実用的に無収差とみなせる。
従って、従来の透過型の回折光学素子を反射型の回折光学素子に替えることにより、界面が少なく透過による光の吸収が低減され且つ収差を少なくして反射ミラーへ向けて集光できるので、装置全体の挿入損失が小さく高精度の分散補償と分散スロープ補償を行うことができる。また非点収差を生じる波長分散方向を含む面内の焦点位置も集光用の光学素子によって集光位置を補正されることになるから、波長分散方向に直交する面内の焦点位置と共に反射ミラーの反射面で結像する。
【0014】
回折光学素子の回折格子はブレーズ角を有していてもよい。
本発明の分散補償器においては、回折光学素子は例えば凹面回折格子であり、この凹面回折格子における回折において、一次回折光のみを用いるようにできれば、損失を小さくすることができるため、ブレーズ角を有する回折格子を用いることが望ましい。このときのブレーズ波長は分散補償器に挿入する入力光の中心波長であることが望ましい。角分散素子として回折格子を用いる場合でも、同様にその回折格子はブレーズ角を有する面を有していてもよく、この場合も同一の作用効果を得られる。
また、回折光学素子は凹面回折格子であり、この凹面回折格子の格子ピッチは凹面形状の反射面上の領域によって異なっていてもよい。例えば、凹面回折格子の格子ピッチは凹面形状の反射面上の角分散素子による波長分散方向を含む面内の領域で相違していてもよい。そして/或いは、凹面回折格子の格子ピッチは凹面形状の反射面上の角分散素子による波長分散方向に直交する面内の領域で相違していてもよい。
回折光学素子の格子ピッチを、凹面形状の反射面上の分周した領域毎に異なるように形成すると、段階的に格子周期が異なるものになり、角分散値を変えることで、補償する分散値や分散スロープ値を可変にすることができる。
【0015】
また、光学素子によって形成された波長分散方向に直交する面内の焦点位置と反射ミラーの反射面は、回折光学素子の凹面形状の反射面の曲率半径を直径とする円周上に位置する関係を保ちながら相対移動するようにしてもよい。
そのため、光が回折光学素子に入射する位置に関わらず、回折光学素子による焦点位置は常に反射ミラーの反射面上の1点に形成される。
また、回折光学素子は凹面形状の反射面の曲率中心を支点として回転するようにしてもよい。
回折光学素子は凹面形状の反射面の曲率中心を支点として回転することで、格子ピッチを変更しても、光学素子の焦点位置(一次結像点)、回折光学素子、反射ミラーの反射面が幾何学的にはローランド円上にあるため、回折光学素子の反射点はいつも反射面上の1点になり、高精度な補償を実現できる。
【0016】
また、反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向に直交する面内においてパワーを有していてもよい。
反射ミラーの反射面は、回折光学素子で回折された光の波長による反射角の変化に伴って光路長を変化させ、必要な補償をする分散スロープ値にすることができる。
反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向を含む面内においてパワーを有している。
反射ミラーの反射面は、角分散素子による射出角の異なる光の光路長を変化させて、必要な補償をする分散値にすることができる。
反射ミラーの反射面は回転非対称な自由曲面であってもよい。
反射ミラーの反射面は、補償する分散量または分散スロープ量にあわせた曲面形状になり、より高精度な補償が可能となる。
【0017】
また、反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向を含む面内において入射光軸に対して傾斜した面を有していてもよい。
反射ミラーの反射面を傾斜した面とすることで、回折光学素子で回折された光の波長による反射角の変化に伴って光路長を変化させる効果があり、しかも形状が単純なために製造コストが低い。
また、反射ミラーの反射面は入射光軸に対して略垂直な方向に移動可能にしてもよい。
補償する分散値及び分散スロープ値によって反射面の反射位置を変更する場合、反射面は光軸に対して略垂直な方向に移動することで反射率の変化を抑えることができる。
また、反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向に直交する面内において移動可能であってもよく、補償する分散値を可変にすることができる。そして/或いは、反射ミラーの反射面は角分散素子による波長分散方向を含む面内において移動可能であってもよく、補償する分散スロープ値を可変にすることができる。
尚、角分散素子として、干渉計、ファブリペロー干渉計、エタロン、VIPA、回折格子、或いはプリズム等を用いてもよい。
また、角分散素子が回折格子である場合、ブレーズ角を有する面を備えていることが好ましい。
【0018】
本発明による分散補償システムは、上述した本発明のいずれかに記載の分散補償器と、該分散補償器から射出された光を監視して光の分散情報と分散スロープ情報の少なくとも一方を含む信号を出力する信号モニタと、該信号モニタから出力された信号に基づいて分散量及び分散スロープ量の少なくとも一方を減らすよう反射ミラーの移動を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、分散補償器により波長分散と分散スロープの少なくとも一方を補償された光の分散情報や分散スロープ情報が信号モニタから出力され、その情報に基づく制御装置の作動により反射ミラーの移動位置が制御される。従って、光伝送素子の長さ等が決定された状態で波長分散量や分散スロープ量の少なくとも一方が決定し、それによって適正な補償が得られるような反射ミラーの位置が決定された場合であっても、他の要因によって波長分散量または分散スロープ量が変動した場合には、その都度、補償されることになる。
また分散補償システムにおいて、波長分散量や分散スロープ量の少なくとも一方を自動調整するために、反射ミラーに代えて、光偏向器の偏向角を制御するようにしてもよい。或いは回折光学素子の位置を制御するようにしてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を参照して説明する。
図1乃至図4は本発明の第一の実施の形態を示すもので、図1は実施の形態による分散補償器の構成を示す図で、(a)はY−Z面内から見た光学系の構成図、(b)はX−Z面内から見た光学系の構成図、図2は図1(b)におけるファブリペロー干渉計を通過する光の波長分散を説明する部分拡大図、図3は凹面回折格子の反射面の一例の部分拡大断面図、図4は反射ミラーの反射面形状を示す図である。
尚、図1を含む各図において、XYZ座標系は、紙面に沿って右側を正方向とするZ座標を配した直交座標系である。図1(a)はY−Z面、図1(b)はX−Z面における光学系を示している。しかしながら全ての図面において、X座標とY座標とを入れ換えても分散補償器1の光学系を縦に配置するか横に配置するかの違いにすぎず、いずれの座標系を採用しても本発明の本質に変わりはない。また各図において示された光路は、特定の波長の光のみを抽出して描いたものである。
図1に示す分散補償器1は、光通信システムにおいて光ファイバー(光伝達素子)を伝送された光について波長分散と分散スロープを補償するものであり、光ファイバー2から射出された光を平行光にするコリメータレンズ3と、X−Z面内でのみ正のパワーを有していて平行光を一軸方向即ちX−Z面内でのみ集光させるシリンドリカルレンズ4と、シリンドリカルレンズ4による集光位置近傍に配設されたファブリペロー干渉計5(角分散素子)と、ファブリペロー干渉計5内で波長毎に分散して射出された略平行光束を焦点位置A、A′で集光させる集光レンズ6(光学素子)と、焦点位置A、A′で集光した光束が拡散して波長毎に回折角を異ならせて反射させる凹面回折格子7(回折光学素子)と、この反射光が集光する反射面8aで反射させて上述した往光路を逆行させる反射ミラー8とを有している。
これらの構成は分散補償器1の光学系の基本構成である。
【0020】
分散補償器1の光学系のうち、ファブリペロー干渉計5について図2により説明する。
ファブリペロー干渉計5は媒質が例えば屈折率nで略板状をなす光学ガラス10であり、その両面に第一反射膜11aと第二反射膜11bとが略平行に配設されている。光の入射側に位置する第一反射膜11aは略100%の反射率を有する反射面とされ、射出側に位置する第二反射膜11bは第一反射膜11aより小さい反射率即ち例えば95%程度で略100%より小さい反射率を有する反射面とされている。ファブリペロー干渉計5はVIPAと同一と考えてよく、この干渉計5に代えてVIPAを配設してもよい。
第一反射膜11aのうち、シリンドリカルレンズ4からの収束光が入射する入射窓12の部分は切除されており、入射窓12では入射光の透過率はほぼ100%に近く設定されている。そのために、収束光が入射角θで入射窓12からファプリペロー干渉計5の光学ガラス10内に入射すると、好ましくは第二反射膜11b上で一軸方向に焦点を結び、図2に示すように、第一及び第二反射膜11a、11b間で繰り返し反射して多重反射する。入射光の多重反射によって自己干渉を生じさせ、それにより射出光を生じさせる。射出光は連続する波長領域内の他の波長を有する入射光について形成された射出光と空間的に判別可能である。射出光は波長毎に射出する角度に違いが生じ、互いに干渉する。
図1、2において、ファブリペロー干渉計5から射出する光は波長毎にX−Z面内に分散されている。本明細書では、このX−Z面を、角分散素子による波長分散方向を含む面といい、Y−Z面を角分散素子による波長分散方向に直交する面という。
ファブリペロー干渉計5から射出した光は略平行光束と考えることができ、通常の平行光として取り扱うことができる。
【0021】
ここで、ファブリペロー干渉計5(またはVIPA)について、光学ガラス10の間隔(厚さ)をtとすると、第二反射膜11bを透過して射出する多重透過光の隣り合った光の光路長差L=2ntcosθとなる。干渉によるm次の明るい縞の波長をλとすると、mλ=2ntcosθで与えられる。この式を波長λで微分すると、角分散Dfは
Df=dθ/dλ=m/2ntcosθ=1/λ・cotθとなる。
この角分散によって、入射された光の波長の違いによって射出する角度が異なる略平行光が形成される。また、厚さtの媒質について光学ガラス10に代えて空気を採用し、媒質を挟んで第一及び第二反射膜11a、11bを配設して構成されていても、当然、同様の効果が得られる。この場合、媒質内での光路が空気であるため温度による影響を受けにくい状態となる。
また射出光で形成する干渉縞について述べる。
次数の重なり合わない領域を自由スペクトル領域(free spectral range)△λRという。m次の干渉縞が、mλ=2ntcosθを満足する方向θにできているとき、(m+1)次の干渉縞は(θ−△θ)方向にできる。すなわち、
(m+1)λ=2ntcos(θ−△θ)となる。
ここで、仮に(θ−△θ)方向に波長(λ+△λ)のm次の光が干渉縞を作ったとすると、次式が成り立つ。
m(λ+△λ)=2ntcos(θ−△θ)
上式は、波長λの干渉縞の次数が1だけ異なるときの方向の違い△θRを与える。
△λR=dλ/dθ△θR=λ2/2ntcosθ≒λ2/2nt
すなわち、自由スペクトル領域△λRは、ntが小さいほど大きい。例えば波長1550nmで、t=0.8mm、n=1.65の場合には、△λR≒1nmとなり、この波長幅において射出角の変化する出力光が繰り返し得られることになる。
【0022】
ファブリペロー干渉計5を通過した光は略平行光束となり、集光レンズ6を通過する。集光レンズ6は例えばアナモルフィックレンズである。この集光レンズ6は角分散素子による波長分散方向を含む面(X−Z面)内のパワーφmと、角分散素子による波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内のパワーφnとが相違しており、φm>φnに設定されている。そのため、集光レンズ6を通過した光束は、角分散素子による波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内ではA点で焦点を結び、角分散素子による波長分散方向を含む面(X−Z面)内ではA点より焦点距離の短いA′点で焦点を結ぶ。
本実施の形態では、1次焦点位置であるA、A′が異なる位置であり、焦点位置Aに対して焦点位置A′の焦点距離を調整して設定することによって、後述の凹面回折格子7で発生する角分散素子による波長分散方向を含む面(X−Z面)内での非点収差を補正して、反射ミラー8の反射面8a上の一点に焦点を結ばせることができることになる。
この焦点位置Aの近傍にスリット13を配設することで、不要光を排除できる。
【0023】
凹面回折格子7は、曲率を有し、格子溝kまた格子突起部が形成された反射型回折格子である。即ち、凹面回折格子7の反射面7aは、角分散素子(ファブリペロー干渉計5)による光の波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)で曲率半径Rの円弧を描く凹曲面からなる凹面を形成している。反射面7aは角分散素子による波長分散方向を含む面内(X−Z面内)では自由曲面を形成している。そして角分散素子による波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)において回折作用を有するように格子溝(または格子突起部)kがX軸方向に形成されている。即ち、Y−Z面内において反射面7a上の複数の格子溝kはX軸方向に略平行に延びて配列されている。
尚、図3は凹面回折格子7の一例を示すもので、凹面回折格子7の凹面状反射面7aに形成した格子溝kの形が、格子溝kの延びる方向に直交する断面視で、図のように階段状になっているEehelette回折格子の場合には、入射角iと回折角βの間にi±β=2α(αは回折格子面と長い溝面とのなす角)の関係、すなわち溝面に対して鏡面反射の条件にあるような波長の光に対しては、その方向に最も強く回折を起こし、他の次数にはほとんど回折されない。この方向は入射角iによって異なるが、i=βの場合には回折格子の式からmλ0=ω(sini+sinβ)=2ωsinαとなって波長が決まってしまう。m=1のときのλ0をブレーズ波長、αをブレーズ角という。
【0024】
溝面に対する鏡面反射のとき回折強度最大の条件は、ある波長λ0だけに対して成り立つが、幾何学的な反射でないから、λ0を中心としたかなり広い波長域に対しても成り立つ。m、λ0を一定とすると、格子ピッチωを小さくし、αを大きくすると分解能を高くすることが可能となる。
本発明の分散補償器においては、角分散素子として回折格子を用いる場合にも、凹面回折格子7における回折においても一次回折光のみを用いるようにできれば、損失を小さくすることができるため、ブレーズ角を有する回折格子を用いることは望ましい。このときのブレーズ波長は分散補償器に挿入する入力光の中心波長であることが望ましい。
また回折光学素子として、凹面回折格子7に限定されることなく、レーザ光の干渉を利用したホログラフィック格子、HOE(ホログラフィック光学素子)等であってもよい。
【0025】
ここで、図11(a)、(b)に、非点収差補正がされない場合に、後述するローランド円C上の一次結像点である焦点位置に設けたスリット13からの入射光Paが凹面回折格子7の反射面7aで反射して集光する二次結像点の位置が一般的にどうなるかを示す。回折格子の格子溝(回折溝)に直交する面(Y−Z面)内での焦点位置Psと、回折格子の格子溝(回折溝)に平行な面(X−Z面)内での焦点位置Phとに示される関係にある。図から明らかなように、X−Z面内での焦点位置PhはY−Z面内での焦点位置Psよりも反射面7aから遠くに位置するため、非点収差を生じる。
この非点収差を補正するために、上述のように集光レンズ6の角分散素子による波長分散方向を含む面(X−Z面)内のパワーφmと、角分散素子による波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内のパワーφnとを、φm>φnに設定した。これによって、焦点位置PhとPsを一致させて非点収差を補正するようにしている。
【0026】
反射ミラー8の反射面8aは、座標系が反射面で変換され光軸方向をZ軸とすると、互いに直交するY−Z面方向とX−Z面方向とでそれぞれ波長によって射出角の異なる光線を反射させて分散補償と分散スロープ補償とを同時に行う曲面形状を有しており、そのために例えばY−Z面方向とX−Z面方向とで形状の異なる自由曲面を形成している。一例をいえば、図1(a)で、反射面8aはE−E線断面視で凸曲面形状が形成され(図4(a)参照)、F−F線断面視で凹曲面形状が形成され(図4(b)参照)、両者間で断面形状が滑らかに連続して変化する自由曲面になる。
尚、反射ミラー8の反射面8aは、例えばアナモルフィック面、トーリック面、曲面、球面、平面傾斜面でもよく、補償すべき分散量及び分散スロープ量に対応していればどのような形状でもかまわない。
本実施の形態における反射ミラー8の自由曲面は、例えば次式により表される。尚、この式のZ軸が自由曲面の軸となる。
【0027】
【数1】
【0028】
但し、数1の第1項は球面項、第2項は自由曲面項である。また球面項中、cは頂点の曲率、kはコーニック定数(円錐定数)、r=√(X2+Y2)である。
自由曲面項は、以下に示す数2のように展開することができる。但し、Cj(jは2以上の整数)は係数である。
【0029】
【数2】
【0030】
また図1(a)で示すY−Z面内で、分散補償器1において、焦点位置A、凹面回折格子7の反射面7aにおける発散光の反射点、反射ミラー8の反射面8aは、反射面7aの曲率半径Rを直径とする円Cの円周上にある。これらの幾何学的な位置関係を備えた円Cはローランド円と呼ばれ、凹面回折格子7が回折効果と結像効果を同時に満たすものとして知られている。
この凹面回折格子7は単体で分光作用と結像作用を持ち、本実施の形態のように焦点位置Aで一次像点をローランド円C上に設ければ、凹面回折格子7で分光された回折像は格子定数、波長、次数をどう選んでも、必ず同じローランド円上に生じ、しかも実用的に無収差とみなせる。
但し、上記特性は、角分散素子による波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)でのみ適用されるものである。角分散素子による波長分散方向を含む面内(X−Z面内)では、集光レンズ6のパワーφmをY−Z面内でのパワーφnより大きく設定することで非点収差を補正している。
【0031】
上述の構成によって、分散補償器1では、X−Z面内において、凹面回折格子7の反射面7aで反射した反射光はファブリベロー干渉計5からの影響で波長によって射出角の異なる収束光として反射ミラー8の自由曲面である反射面8aに集光することで、各波長による光路長差を補償し、波長分散を補償する。即ち、反射面8a上においてX軸方向に異なる位置で反射する光に与える光路長差は、光ファイバー2を伝送されてきた光の波長分散量によって定まる。そのため、これらの光の反射面8a上の反射位置を波長分散量によって定まるZ軸方向の所定位置に設定することで、波長分散量を適性に補償する光路長差を光に与えることができ、正分散または負分散のどちらに対しても補償できる。
尚、補償する分散量を可変にする場合には、光が反射ミラー8に入射する位置を分散量によって変化させる必要がある。この場合には、図1(a)の矢印で示すように、角分散素子による波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)で反射ミラー8を移動させて反射点を自由曲面からなる反射面8aに対して相対移動させればよい。
【0032】
また分散スロープ補償について述べれば、Y−Z面内では、凹面回折格子7の反射面7aは曲率半径Rを有しY−Z面内に格子溝(位相部)kを有する1次元の回折格子であるために、格子溝kで反射した光は、波長によって射出角の異なる収束光(回折光)となり、反射ミラー8の自由曲面である反射面8aの反射点に集光することで、各波長による分散スロープを補償する。反射面8a上においてY軸方向に異なる位置で反射する光に与える光路長差は、光ファイバー2を伝送されてきた光の各波長の分散スロープ量によって定まる。そのため、これらの光の反射面8a上の反射位置を各波長の分散スロープ量によって定まるY軸方向の所定位置に設定することで、分散スロープ量を適性に補償する光路長差を光に与えることができる。
尚、補償する分散スロープ量を可変にする場合には、図1(b)の矢印で示すようにY−Z面に直交するX軸方向に反射ミラー8を移動させて反射点を自由曲面からなる反射面8aに対して相対移動させればよい。
【0033】
本実施の形態による分散補償器1は上述の構成を備えており、次に作用を説明する。
光通信システムにおいて、長距離に及ぶ光ファイバー2内を伝送されてきた光信号は、波長分散と分散スロープが生じ、群遅延が生じている。図1において、光ファイバー2から射出された光は、光ファイバー2のNAで決まる発散角で広がりながら分散補償器1内に進む。
そして分散補償器1のコリメータレンズ3で平行光とされた光束はシリンドリカルレンズ4によって一軸方向(図1ではX−Z面内)にのみ集光しつつファブリペロー干渉計5に入射窓12から入射角度θを以て入射し、ガラス面10内を進んで第二反射膜11bで集光する。
ファブリペロー干渉計5内では、入射光は第一及び第二反射膜11a、11b間で多重反射を起こし、波長毎に干渉した光が第二反射膜11bから射出する角度に違いを生じて射出光となる。射出光は連続する波長領域内の他の波長を有する入射光について形成された射出光と空間的に判別可能である。そして互いに干渉する複数の射出光がファブリペロー干渉計5から出射し、略平行光束となる。
【0034】
この光束は集光レンズ6を通過して収束光となる。ここで、集光レンズ6は角分散素子の波長分散方向を含む面(X−Z面)内と波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内とでパワーφm、φnを異にしているため、X−Z面内とY−Z面内とで一次焦点位置が異なる。Y−Z面内ではローランド円C上の焦点位置Aで焦点を結び、X−Z面内では焦点位置Aよりも集光レンズ6に近い焦点位置A′で焦点を結ぶ。
そして、スリット13で不要光を排除された光束は再び発散光となって進み、凹面回折格子7に入射する。凹面回折格子7の反射面7aで反射した光は波長によって射出角の異なる回折光として収束し、角分散素子の波長分散方向を含む面(X−Z面)内と波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内とで焦点位置が一致し、反射ミラー8の反射面8a上の一点で集光する。そのため、直交する方向のパワーが異なる集光レンズ6によって凹面回折格子7で生じる非点収差を補正することができる。
【0035】
そして、反射ミラー8の反射面8aで反射した光は凹面回折格子7,集光レンズ6、ファブリペロー干渉計5、シリンドリカルレンズ4、コリメータレンズ3を経由し、往工程の光路をたどって逆方向に進んで光ファイバー2に戻ることになる。
ここで、ファブリペロー干渉計5によって波長毎にX軸方向に分布する入射光は、X軸方向の射出角度を異ならせているために、反射ミラー8の反射面8aへの入射位置は光の波長によって決定されている。反射ミラー8の反射面8aは波長分散方向を含む面内(X−Z面内)においてX軸方向に沿って適切な自由曲面とされているから、波長毎にX軸方向に分布する入射光は、反射面8a上におけるX軸方向の反射位置に応じてファブリペロー干渉計5との間で分散値に応じた異なる光路長を与えられることになる。従って、ファブリペロー干渉計5と反射面8aとの間で、遅れている波長の光に対する光路長を短く設定し、進んでいる波長の光に対する光路長を長く設定することによって波長分散を補償し、群遅延を解消できることになる。
【0036】
一方、角分散素子による波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)においては、ローランド円C上の焦点位置A(一次結像点)で焦点を結んだ光は、発散しつつ凹面回折格子7の反射面7aで波長によって射出角の異なる回折光となって反射し、反射ミラー8の反射面8aの集光点で反射される。凹面回折格子7の反射面7aにはX軸方向に格子溝kが所定ピッチで形成されているために波長毎に射出角を異ならせて角度分散させることができ、各波長の分散スロープに応じて反射ミラー8の反射面8a上のY−Z面内の異なる位置に集光させて反射させることになる。
この反射面8aは、角分散素子による波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)において、上述したX−Z面内の自由曲面とは異なる形状の自由曲面に形成されているために、各波長毎に光路長差を与えられることになる。そのために、凹面回折格子7の凹曲面状の反射面7aと反射ミラー8の反射面8aとの間で、各波長の分散スロープを補償できる。
ファブリペロー干渉計5によって補償できる分散値は通常一定であるために分散スロープまでは補償できないが、この光の方向と直交する方向で凹面回折格子7によって分散スロープを同時に補償することができる。
【0037】
上述のように本実施の形態による分散補償器1によれば、波長多重分割技術(WDM)を用いた光通信システムにおいて、波長分散と分散スロープを同時に補償できる。しかもローランド円Cの関係を採用することで凹面回折格子7単体で回折と集光を同時に満たすことができて光学系の構成が簡単でコンパクトであり、補償する波長分散量と分散スロープ量に関わらず、ファブリペロー干渉計5から光が通過する光学系素子の界面が3枚であり、挿入損失の変化が少ないという利点がある。また凹面回折格子7で反射させることで生じる非点収差を、互いに直交する方面内でパワーの異なる集光レンズ6を配設したことで補正することができ、反射ミラー8上にスポットを形成して正確な分散補償を行うことができる。
【0038】
以下、本発明の別の実施の形態や変形例について添付図面により説明するが、上述の第一の実施の形態と同一または同様の部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
反射ミラー8の反射面8aは数1で規定する自由曲面に限定されることなく、他の形状、例えば精度の高い分散補償や分散プローブ補償を要求されない場合には、反射面8aのX−Z面内の形状とY−Z面内の形状の一方または両方を図4(c)に示すような平面状の傾斜面としてもよい。この場合、反射面8aを入射光軸に対して直交する方向にY−Z面内やX−Z面内を移動可能とすれば、分散値や分散スロープを調整することができる。
また図5は第一の実施の形態による分散補償器1の変形例であり、この分散補償器1Aでは、集光レンズ6とその焦点位置A、A′との間に光路を偏向する第二反射ミラー14(光偏向器)が配設されており、集光レンズ6を射出した収束光が集光する前に第二反射ミラー14によって光路を偏向されて焦点位置A、A′で結像した後で発散して凹面回折格子7に入射するようになっている。図5に示す例では、集光レンズ6から射出された光束の光軸をY−Z面内で略90°折り曲げるように構成されている。
この分散補償器1Aでは装置の全長を短く設定できる。
【0039】
また、さらなる変形例として、第二反射ミラー14に代えて反射型回折格子(光偏向器)を設けても良く、この場合、分散補償器1Aでは反射型回折格子は直交する2軸を中心にY−Z面内及びX−Z面内(Z軸回り)で回転可能としてもよい。この場合、分散補償器1Aでは、集光レンズ6で集光された光はY−Z面内では反射型回折格子で反射してローランド円上で焦点位置Aとして結像し、X−Z面内では集光レンズ6と焦点位置Aとの間で焦点位置A′として結像する。その後、その光束は発散しつつ凹面回折格子7に向かうことになる。ここで反射型回折格子を回転可能とすることにより、焦点位置Aは厳密にはローランド円C上から外れることになるが、そのズレ量は条件を適切に設定することにより微小となり実質上無視することができる。
この反射型回折格子で角分散素子による波長分散効果を増大させるためには、X−Z面内のみの回折効果を与えるためにY軸方向にのみ格子溝(格子突起)kを形成する。また反射型回折格子によって凹面回折格子7の分散効果を増強させるためには、X軸方向にのみ格子溝(格子突起)を形成すればよい。また反射型回折格子によって、角分散素子と凹面回折格子7の両方の分散効果を増強させる場合には、2次元の回折格子を構成する必要があり、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに格子溝(格子突起)を形成すればよい。
尚、上述した反射型回折格子は、後述する第三の実施の形態の図8に示す分散補償器16の光学系における第三反射ミラー20の反射面上に配設してもよい。この場合にも、反射型回折格子の格子溝(格子突起)を形成する方向をX軸方向とY軸方向の一方または両方に形成することで同様の作用効果を奏することになる。
【0040】
次に本発明の第二の実施の形態による分散補償器17を図6により説明する。
図6(a)、(b)において、光ファイバー2からファブリペロー干渉計5までの構成は図1に示す分散補償器1と同一であるために省略されており、集光レンズ16から反射ミラー8までの構成に関してのみ説明する。
図6において、集光レンズ16は自由曲面レンズであり、集光レンズ16を通過した光束の進行方向に回転ミラー15(光偏向器)、凹面回折格子7、反射ミラー8が順次配設されている。しかも凹面回折格子7の凹面状の反射面7aの曲率半径Rを直径とするローランド円Cの円周上に、回転ミラー15と反射ミラー8の反射面8aとが位置することになる。
そして、集光レンズ16を通過した収束光は、角分散素子の波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内では、その焦点位置Bが回転ミラー15の反射点即ちローランド円上に位置するように設定する。角分散素子の波長分散方向を含む面(X−Z面)内では、(Y−Z面)内の焦点位置Bよりも集光レンズ16側に焦点位置B′が位置するようになっている。そのため、集光レンズ16は、X−Z面内でのパワーφmがY−Z面内でのパワーφnより大きい。
凹面回折格子7で反射する光は、角分散素子の波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内では略収差の発生がなく、ローランド円上に焦点を結ぶ。これに対し、角分散素子の波長分散方向を含む面(X−Z面)内では、(Y−Z面)内の焦点位置よりも遠くに焦点を結ぶことになり、非点収差が発生する。そのため本実施の形態では、集光レンズ16を上述した自由曲面レンズに構成することで、この非点収差を補正することができることは第一の実施の形態による集光レンズ6と同一である。
尚、焦点位置Bの近傍にスリット13を配置しておくことで不要光を排除できる。
【0041】
次に、回転ミラー15は焦点位置BにおいてY−Z面内でX軸回りに回転可能であると共にX−Z面内でZ軸(図6(b)で光軸に重なる軸)回りに回転可能とされ、直交する2軸で回転可能とされている。そのため、回転ミラー15によって入射光をY−Z面内とX−Z面内とで偏向できるため、走査面となる凹面回折格子7上の反射する部分を選択できる。
一方、図7に示すように、凹面回折格子7はY−Z面内における凹面状の反射面7aで複数の格子溝(または格子突起部)kがX軸方向に平行に配列されている。しかも凹面状の反射面7aはその延在方向に複数領域、例えば6領域に分割されており、各分割領域D1、D2、…、D6相互間で格子溝(格子突起部)kの配列ピッチがそれぞれ異なるように形成されて回折定数を変化させている。これによって回転ミラー15をY−Z面内で回転させて光の偏向角を調整することで、凹面回折格子7における各波長の回折角を適宜選択することができる。そのため、選択された任意の分割領域D1、D2、…で光を反射させることで回折角を変更し、反射ミラー8の自由曲面による反射面8aに対する集光反射位置を変化できる。従って、光路長差を調整できて、種々の分散に対して補償することが可能になる。
また回転ミラー15をX−Z面内でZ軸回りに回転させることで、ファブリペロー干渉計5で波長分散させた入射光について凹面回折格子7で反射する部分を選択することができ、これによって要求される分散スロープ補償量を選択できる。
【0042】
尚、反射ミラー8の反射面8aはY−Z面内とX−Z面内とでそれぞれ異形状の自由曲面を形成することは第一の実施の形態と同一であるが、本実施の形態においては、回転ミラー15を2軸回りにそれぞれ回転可能とすることで、凹面回折格子7の反射面7aで反射する波長の入射領域を選択できるから、反射ミラー8は固定配置できる。この場合、X−Z面内で凹面回折格子7の反射面7aのX軸方向両側領域の曲率を(中央領域より)大きく設定することで、反射面7aにおける反射光を確実に反射ミラー8の反射面8aに集光させて分散補償を行える。
また、回転ミラー15の反射面として、平面ミラーに代えて反射型回折格子を用いてもよい。
ファブリペロー干渉計5等の角分散素子または凹面回折格子7で得られる角分散が少ない場合には角分散効果を増加することができ、有効に作用する。この反射型回折格子が角分散素子の分散効果を増加させる場合には、X−Z面内のみの回折効果を与えるためにY軸方向にのみ回折溝を形成する。一方、反射型回折格子が凹面回折格子7の分散効果を増強させる場合には、Y−Z面内のみの回折効果を与えるためにX軸方向にのみ回折溝を形成すればよい。また、反射型回折格子が角分散素子、凹面回折格子7のどちらの分散効果も増強させる場合には、2次元の回折格子とする必要がありX,Y軸方向それぞれに回折溝を形成するものとなる。
【0043】
次に本発明の第三の実施の形態を図8により説明する。
図8に示す分散補償器18の光学系において、光の進行方向に光ファイバー2、コリメータレンズ3、シリンドリカルレンズ4、ファブリペロー干渉計5の配列構成については、上述の実施の形態によるものと同一である。尚、干渉計としてファブリペロー干渉計5に代えてファブリペローエタロン(エタロン)を配設してもよく、エタロンはファブリペロー干渉計5と同様の構成を有しており、波長によって射出角度を変化させてX軸方向に波長に応じて分布させた光を出射させて略平行光束として走行させることになる。
ファブリペロー干渉計5から射出した平行光は、自由曲面で形成された第三反射ミラー20で反射されて収束光となる。第三反射ミラー20は集光用の光学素子を構成し、図に示す例では反射面20aが凹曲面を形成しており、光路を凹面回折格子7の反射面7aに向けて折り曲げると共に集光させる正のパワーを有している。しかも、この反射光は反射面20aが自由曲面であるために、Y−Z面内では集光して焦点位置Dで一次結像点を形成し、X−Z面内では焦点位置Dよりも第三反射ミラー20に近い位置で集光して焦点位置D′で一次結像点を形成することになる。これによって凹面回折格子7の反射面7aで発生する非点収差を補正し、反射ミラー8の反射面8a上で1点に焦点を結ぶようにすることは、上述の各実施の形態と同一である。
【0044】
またY−Z面内での焦点位置D、凹面回折格子7の反射面7a、反射ミラー8の反射面8aは凹面回折格子7の曲率半径Rを直径とするローランド円Cの円周上にある。また焦点位置D近傍に不要光を排除するスリット13を設けても良い。
更に本実施の形態による分散補償器18では、凹面回折格子7は図7に示すようにY−Z面内で凹面状の反射面7aの延在方向に複数の分割領域D1、D2…間で相互に各複数の格子溝(格子突起)kのピッチがそれぞれ変化している。しかも、凹面回折格子7は反射面7aの曲率中心である点Tを支点として回転可能とされている。
そのため、凹面回折格子7を支点Tを中心に回転運動させることで、固定保持された反射ミラー8の反射面8aに結像する反射光について第三反射ミラー20から反射する光の凹面回折格子7における波長分散領域を選択することができる。そのため、要求される様々な分散スロープに対して補償することが可能になる。この場合、反射ミラー8の反射面8aは上述した他の実施形態と同様に自由曲面を含む曲面として、広い波長域に対する分散スロープ補償を行うことができる。
【0045】
尚、角分散素子として、ファブリペロー干渉計5やエタロンに限定されることなく他の干渉計や回折格子やプリズム等を採用してもよい。
例えば、角分散素子が回折格子の場合について説明する。
回折格子において、回折格子ピッチをω、入射角i、回折角θgとすると、回折の式は
ω(sinθg+sini)=mλ (mは回折次数)
である。ここで角分散は、波長△λ異なるスペクトルが角度でどれだけ離れるかをあらわす量であり、角分散Dgとすると、上式を波長λで微分して、
Dg=dθ/dλ=m/ωcosθg
となる。したがって、もしも分散量を大きくしたい場合には、ωを小さくすればよい。
また、角分散素子に用いることのできる回折格子は、上述したEchelette回折格子のような形状に限らず、溝状の線を引いた格子、階段格子、正弦波格子、台形格子等でもよく、また、レーザ光の干渉を利用したホログラフィック格子、HOE(ホログラフィック光学素子)であってもよい。
【0046】
また角分散素子はプリズムであってもよい。
図9に示すように分散補償器22の光学系において、上述の実施の形態による角分散素子に代えてプリズム23を用いた場合、角分散Dpは、次式であらわされる。
Dp=dθ/dλ=2sin(φ/2)/(1−n2sin2(φ/2))1/2・dn/dλ
ただし、θpはふれ角、φはブリズムの頂角、dn/dλは材料の分散である。
角分散Dpは上式からわかるように、プリズムの頂角φ、材料の屈折率n及び分散dn/dλで決まる。頂角φは用いる材料に応じて最適角があって、これは種々の頂角に対する角分散Dpの大小と、利用されるエネルギーの大小を比較して決められる。一般に屈折率nの小さい材料のプリズム角は大きくしたほうがよい。したがって角分散Dpは屈折率nとsin(φ/2)の積の大きいほどよいことになる。
【0047】
次に本発明による分散補償システム30について、図10により説明する。
本実施の形態による分散補償システム30は、図10に示すように、例えば第一の実施の形態による分散補償器1と、この分散補償器1から射出された光を監視する信号モニタ31と、信号モニタ31からの出力に基づいて反射ミラー8のY−Z面内及びX−Z面内での移動位置を制御する制御装置32とを備えている。
尚、この分散補償システム30において、サーキュレータ33が光ファイバー2と分散補償器1との間に配設され、光ファイバー2から射出された光と分散補償器1から戻る光とを分けて分散補償器1から戻る光を取り出すようになっている。またサーキュレータ33と信号モニタ31との間に分光器34が設けられており、サーキュレータ33から出力されて分散補償された光の一部を取り出して信号モニタ31にフィードバックしている。
信号モニタ31は、分散補償器1から出力され分散補償された光を入力することで、この光を分析することによって波長分散量のような分散情報と分散スロープ量のような分散スロープ情報とを含む信号S1を抽出することができるようになっている。制御装置32では信号モニタ31から出力された信号S1に基づいて波長分散と分散スロープとを補償するように反射ミラー8に対する移動指令信号S2を出力するようになっている。
【0048】
上述の構成を備えた分散補償システム30によれば、分散補償器1の作動により、光ファイバー2を伝送されてきた光の波長分散と分散スロープが補償されると波長分散量と分散スロープ量がゼロになるので、制御装置32から反射ミラー8への移動指令信号S2もゼロになり、反射ミラー8はそのときの移動位置に保持される。すなわち、光ファイバー2を伝送されている光の波長分散と分散スロープが一定して生じている場合には、一旦補償が完了するとその状態に維持されることになる。
しかしながら、温度や振動のような光ファイバー2の配設されている環境や、光ファイバー2内を伝送されてくる光信号の周波数帯域が変化した場合には、光信号内に含まれる波長分散量や分散スロープ量も変化する。このような場合には、分散補償器1を出力した補償済みの光信号内に、新たにどの程度の波長分散と分散スロープが発生したのかという各情報を含む信号S1が信号モニタ31から出力される。
そして制御装置32は、この信号S1の大きさに応じた距離だけ、反射ミラー8をY−Z面内または/及びX−Z面内を移動させるよう制御する。すなわち、反射ミラー8の位置と、そのときに選択される反射ミラー8の反射面8a形状に応じた分散補償量と分散スロープ補償量とを予め対応づけておくだけで、波長分散と分散スロープが常に最小限に抑えられるように自動調整されることになる。
【0049】
このように本実施の形態による分散補償システム30によれば、波長分散量と分散スロープ量とが最小限となるように自動調整されるので、将来的に光信号の伝送速度が増大して波長分散量と分散スロープ量とが、温度や振動のような外的要因により変動しやすくなった場合においても、光信号の損失を制御することができるという効果がある。
尚、上述の実施の形態による分散補償システム30では、反射ミラー8をY−Z面内及びX−Z面内を移動可能として波長分散量と分散スロープ量とを補償するようにしたが、いずれか一方の面内に移動させて波長分散量と分散スロープ量の一方のみを補償するようにしてもよい。
また分散補償システム30において、反射ミラー8に代えて、分散補償器1Aにおける第二反射ミラー14やこのミラー14に代えて設けた反射型回折格子、分散補償器14における回転ミラー15、分散補償器18における第三回転ミラー20等を光偏向器として採用して回転可能に配備してもよい。
或いは分散補償器18における凹面回折格子7を移動させることで分散スロープ量等を最小にするよう自動調整してもよい。
【0050】
【発明の効果】
上述のように本発明による分散補償器によれば、波長分散と分散スロープを同時に補償できると共に、回折光学素子で回折と集光を同時に満たすことができて部品点数が少なく装置の小型化を実現でき、補償する波長分散量と分散スロープ量に関わらず挿入損失の変化が少ないという効果を奏する。しかも回折光学素子を採用することで非点収差が発生しても、集光用の光学素子によって補正することができ、正確な分散補償を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態による分散補償器の光学系を示すもので、(a)はY−Z面内から見た分散補償器の構成図、(b)はX−Z面内から見た分散補償器の構成図である。
【図2】図1(b)におけるファブリペロー干渉計を通過する光の波長分散を説明する部分拡大図である。
【図3】凹面回折格子の反射面におけるブレーズ角を示す部分拡断面大図である。
【図4】反射ミラーの断面図であり、(a)は図1(a)におけるE−E線断面図、(b)は同じくF−F線断面図、(c)は反射ミラーの変形例についての断面図である。
【図5】第一の実施の形態による分散補償器の変形例を示すもので、(a)はY−Z面内から見た分散補償器の構成図、(b)はX−Z面内から見た分散補償器の構成図である。
【図6】第二の実施の形態による分散補償器の部分構成を示すもので、(a)はY−Z面内から見た分散補償器の要部構成図、(b)はX−Z面内から見た分散補償器の要部構成図である。
【図7】図6(a)に示す凹面回折格子の拡大図である。
【図8】第三の実施の形態による分散補償器を示すもので、(a)はY−Z面内から見た分散補償器の構成図、(b)はX−Z面内から見た分散補償器の部分構成図である。
【図9】ファブリペロー干渉計に代えてプリズムを用いた分散補償器を示す図で、(a)はY−Z面内から見た分散補償器の構成図、(b)はX−Z面内から見た分散補償器の部分構成図である。
【図10】本発明の実施の形態による分散補償システムを示すブロック図である。
【図11】ローランド円上の一点からスリットを通して入射する入射光に対して凹面回折格子の反射面で反射して収束する光の基本的光路を示すもので、(a)はY−Z面内から見た図、(b)はX−Z面内から見た図である。
【符号の説明】
1、1A、17、18、22 分散補償器
5 ファブリペロー干渉計(角分散素子)
6、16 集光レンズ(光学素子)
7 凹面回折格子(回折光学素子)
8 反射ミラー
14 第二反射ミラー(光偏向器)
15 回転ミラー(光偏向器)
20 第三反射ミラー(光学素子)
30 分散補償システム
k 格子溝
【発明の属する技術分野】
この発明は、光通信に用いられる光ファイバー等の光伝達素子内で光の伝送中に発生する分散による光信号の劣化を補償する分散補償器及び分散補償システムに関し、特に光伝達素子内で発生する波長分散および分散スローブを補償することのできる分散補償器及び分散補償システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
インターネットの急速な拡大による通信トラフィックの増大に応じ、光通信システムの大容量化の必要性が増している。従来、通信の大容量化は電子回路の速度向上に伴う伝送スピードの高速化によっていたが、近年、通信トラフィックの増大の要求は電子回路の高速度化を超えるレベルであり、波長分割多重化技術(WDM;Wavelength Division Maltiplexing)による並列化の併用が不可欠となってきた。
現在、商用化されている光伝送速度は10Gb/sが限界であるが、化合物半導体を用いた電子デバイスの進歩によって次第に40Gb/sでの伝送が実験室レベルで実現している。伝送する媒体に関しては、10Gb/sを起える高速伝送では、媒質中の光の伝播速度が光の波長や偏波状態によって変化する、分散による伝送パルス幅の広がりが深刻な問題であり、光の伝送するシステム全体において分散をゼロに近づけることが必要である,
波長分散に関しては、ファイバーの零分散波長を伝送波長に近づける分散シフトファイバーを用いてファイバー自体の分散を減少させる技術、光ファイバー(通常シングルモードファイバー:SMF)と逆の特性を持った分散補償ファイバー(DCF:Dispersion Compensation Fiber)を一定間隔で配置する分散制御技術が一般的に用いられてきた。
一方、40Gb/sの速度になると、分散制御に対する要求が非常に厳しく、温度変化に伴う光ファイバーの分散の変化をダイナミックに補正する必要が生じてきた。
【0003】
これらの要求のためには、ファイバーブラッググレーティング(FBG)や、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)が提案されている。VIPAを用いた分散補償器として、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。この分散補償器は、光ファイバーから射出した光をコリメートした後に集光させ、その焦点位置に配置したVIPAを通過させることで波長毎に判別可能な光速を生成して平行光とする。そして、この平行光を集光させて焦点位置に配設させた反射ミラーで反射させ、同一の光学系を逆方向に走行させることで光ファイバーに戻すようにしている。
この分散補償器によれば、VIPAから出力された光を反射ミラーの異なる点に集光させ、その際に反射ミラーの反射面の形状を変化させておくことで、波長毎に光路差を生じさせることができ、異なる波長毎に異なる距離を伝播することで波長分散を補償するようにしている。
ところで、光ファイバーによる光通信の劣化特性には、分散と同時に分散スロープが存在するが、上記の分散補償器では、波長分散と共に起こる分散スロープまでは改善できないという欠点がある。
この分散スロープを補償する手段として下記特許文献2に開示された分散補償器が提案されている。この特許文献2では、VIPAと回折格子を用いて分散及び分散スロープを同時に補償する補償器を提案している。
【0004】
【特許文献1】
特表2000−511655公報
【特許文献2】
米国特許第6301048号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この分散補償器においては、回折格子を備えて回折格子から射出した光を反射ミラーで反射するように構成しているが、VIPA以外に1枚または2枚の回折格子とレンズとを用いて光を通過させる構成となっているため、光が走行する光学素子の界面が4枚以上となってしまう。そのため、それぞれの光学素子における吸収や界面における光の損失が大きくなり、装置全体の挿入損失が大きいものになる不具合が生じている。
また、各波長に対して最適な光路差を生成させる表面形状となるよう反射ミラーを調整する必要があるので、反射ミラーを可動ステージで移動させる場合にはスペースが必要となる。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、波長分散と分散スロープを補償できて挿入損失が少ない分散補償器を提供することを目的とする。
本発明の更なる目的は、補償する分散量及び分散スロープ量を可変にするにあたり大きなスペースを必要としない分散補償器と分散補償システムを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による分散補償器は、光を伝送するための光伝達素子を射出した光の波長によって射出する角度を変化させる角分散素子と、該角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーと波長分散方向に直交する面内のパワーとが異なっていて集光作用を有する光学素子と、少なくとも凹面形状の反射面を有していて回折作用を有する回折光学素子と、全光学系における焦点位置近傍に配備され且つ光が波長に応じて分散する方向に形状が変化する反射面を有する反射ミラーとを備えたことを特徴とする。
本発明は、光ファイバー等の光伝達素子を伝送して変調された光を取り出し、角分散素子と回折光学素子とによって、互いに直交する等、交差する方向においてそれぞれ波長によって射出角を異ならせて反射ミラーの反射面で反射させることで、光伝達素子のもつ分散及び分散スロープによる光信号の劣化を補償する。特に、凹面形状の反射面を有していて回折作用を発揮する回折光学素子で発生する非点収差をパワーを異ならせた光学素子で補正し、反射ミラー上に集光させることができる。しかも回折光学素子を配設したことで、挿入損失を小さくできると共に部品点数が少なく装置の小型化を実現できる。また波長多重分割技術(WDM)を用いた光通信システムにおいて、分散補償と同時に分散スロープを補償することを実現し、補償する分散量と分散スロープ量とにかかわらず、挿入損失が少ない光学系を得られる。
【0008】
本発明において、角分散素子としては、入射される光の波長によって射出する光の射出角が異なるものであればよい。例えば、光学伝達素子から射出した光は、一軸方向にのみ集光した光となって角分散素子に入射され、一軸方向にのみ集光した光が集光した方向を含む面内方向にのみ波長によって射出角の異なる光として射出する。この波長によって射出角の異なる射出光は、角分散素子による波長分散方向を含む面内の反射位置の異なる反射面を有する反射ミラーで反射されて光路を逆方向に戻る。反射ミラーのこの反射面が、例えば分散値に対応した光路長差を有する自由曲面形状であると、反射位置による全光路長の差を持たせることができる。それゆえ、波長による群遅延差は光路長差を持たせることで補償することができる。
角分散素子の分散量が小さければ、反射ミラーまでの距離を長くする必要があるため装置の大型化を招く。そうでなければ波長分離できず、分散補償することが困難となるため、角分散素子の分散量はある程度大きいものが好ましい。
【0009】
他方、角分散素子から射出した光はある波長を1つだけ取り出すと略平行光となっており、この光を回折光学素子に入射させる。そして回折光学素子にて反射した光は波長によって射出角の異なった収束する回折光となり、反射ミラーの反射面上の反射点に集光する。
また回折光学素子は、角分散素子の波長分散方向を含む面内の焦点位置と波長分散方向に直交する面内の焦点位置とが異なる非点収差を生じる。集光用の光学素子はこの非点収差を補正するための手段であり、波長分散方向を含む面内のパワーと波長分散方向に直交する面内のパワーとが異なっていることで、回折光学素子で発生する非点収差を補正することができ、それぞれ反射ミラー上に集光してスポットを形成させることで、精度の良い分散補償を行うことができる。
反射ミラーは、角分散素子による波長分散方向と直交する面内においては、回折光学素子から射出して波長によって射出角の異なる光線を反射することで分散スロープを補償する反射面形状を有している。この反射面は角分散素子による波長分散方向を含む面内とは異なった断面形状で、角分散素子による波長分散方向と直交する面内での、回折光学素子からの波長によって射出角の異なる射出光の反射位置が異なる面である。
【0010】
また本発明による分散補償器は、光を伝送するための光伝達素子を射出した光の波長によって射出する角度を変化させる角分散素子と、該角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーと波長分散方向に直交する面内のパワーとが異なっていて集光作用を有する光学素子と、該光学素子を射出した光を好ましくは焦点位置近傍で偏向させる光偏向器と、少なくとも凹面形状の反射面を有していて回折作用を有する回折光学素子と、全光学系における焦点位置近傍に配備され且つ光が波長に応じて分散する方向に形状が変化する反射面を有する反射ミラーとを備えたことを特徴とする。
本発明においても、角分散素子と回折光学素子とによって、互いに直交する等、交差する方向においてそれぞれ波長によって射出角を異ならせて反射ミラーの反射面で反射させることで、光伝達素子のもつ分散及び分散スロープによる光信号の劣化を補償する。
【0011】
特に本発明においても、回折光学素子は、波長分散方向を含む面内の焦点位置と波長分散方向に直交する面内の焦点位置とが異なる非点収差が生じる。この非点収差を補正するために集光用の光学素子が、角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーと波長分散方向と直交する面内のパワーとを異ならせていることによって、回折光学素子で発生する非点収差を補正することができ、反射ミラー上にスポットを形成し、正確な分散補償を行うことができる。
しかも、光束の方向を曲げる光偏向器によって光学素子を通過した光束を走査させ、回折光学素子に入射する位置を変えることができる。そのため、回折光学素子の回折周期を変化したものに構成しておくと、回折光学素子の分散値を変化させることができ、分散スロープ値を可変にすることが可能となる。
尚、光偏向器を角分散素子による波長分散方向に直交する面内と波長分散方向を含む面内とのいずれか一方の1軸または両方の2軸で回転可能としてもよく、装置を大型化することなく大きなスペースを必要とせずに分散や分散スロープを可変にできる。
【0012】
また、光学素子は、角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーが波長分散方向に直交する面内のパワーより大きいものであってもよい。
この光学素子は、角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーφmと波長分散方向に直交する面内のパワーφnとを有していて、φm >φnであることが重要である。
即ち、回折光学素子、例えば凹面回折格子で反射する光の互いに直交する面内における焦点位置の差についていえば、基本的に、回折格子の回折溝に平行な面内の焦点位置Phと回折溝に垂直な面内の焦点位置Psとは図11に示すような関係になる。焦点位置Phの方が焦点位置Psよりも凹面形状の反射面から遠くに位置する。この非点収差を補正するため、光学素子における角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーφmと波長分散方向に直交する面内のパワーφnとが、φm>φnの関係を有するように形成する。これによって、二次結像点である焦点位置PhとPsの位置を一致させることができ、非点収差を補正できる。
このような光学素子は、角分散素子と回折光学素子の間に配置された少なくとも1面のアナモルフィック面を含む光学部材であってもよく、或いは回転非対称な自由曲面を含む光学部材であってもよい。このような光学部材はレンズ、例えばアナモルフィックレンズであれば効果的に非点収差を補正でき、1面の自由曲面を含む自由曲面レンズとすれば非点収差を補正できると共にその他の収差補正も行うことができる。また凹面鏡、例えばアナモルフィック凹面鏡であれば、効果的に非点収差を補正でき、しかも反射面を有するために光路を折り返すことによる装置の小型化を同時に達成でき、挿入損失を更に低減できる。
【0013】
また、光学素子によって形成された波長分散方向に直交する面内の焦点位置と反射ミラーの反射面は、回折光学素子の凹面形状の反射面の曲率半径を直径とする円周上に位置するようにしてもよい。
波長分散方向に直交する面内の1次像位置、回折光学素子の反射点及び反射ミラーの反射面は1つの円周上にあり、その円の直径は回折光学素子の曲率半径であることが重要である。これらの幾何学的な位置関係はローランド円と呼ばれ、回折光学素子が回折効果と結像性能を同時に満たす。この回折光学素子は単体で分光作用と結像作用を持ち、一次像位置をローランド円上に設けているので、回折光学素子で分光された回折像は格子定数、波長、次数をどう選択しても、必ず同じローランド円上に生じ、しかも非点収差以外は実用的に無収差とみなせる。
従って、従来の透過型の回折光学素子を反射型の回折光学素子に替えることにより、界面が少なく透過による光の吸収が低減され且つ収差を少なくして反射ミラーへ向けて集光できるので、装置全体の挿入損失が小さく高精度の分散補償と分散スロープ補償を行うことができる。また非点収差を生じる波長分散方向を含む面内の焦点位置も集光用の光学素子によって集光位置を補正されることになるから、波長分散方向に直交する面内の焦点位置と共に反射ミラーの反射面で結像する。
【0014】
回折光学素子の回折格子はブレーズ角を有していてもよい。
本発明の分散補償器においては、回折光学素子は例えば凹面回折格子であり、この凹面回折格子における回折において、一次回折光のみを用いるようにできれば、損失を小さくすることができるため、ブレーズ角を有する回折格子を用いることが望ましい。このときのブレーズ波長は分散補償器に挿入する入力光の中心波長であることが望ましい。角分散素子として回折格子を用いる場合でも、同様にその回折格子はブレーズ角を有する面を有していてもよく、この場合も同一の作用効果を得られる。
また、回折光学素子は凹面回折格子であり、この凹面回折格子の格子ピッチは凹面形状の反射面上の領域によって異なっていてもよい。例えば、凹面回折格子の格子ピッチは凹面形状の反射面上の角分散素子による波長分散方向を含む面内の領域で相違していてもよい。そして/或いは、凹面回折格子の格子ピッチは凹面形状の反射面上の角分散素子による波長分散方向に直交する面内の領域で相違していてもよい。
回折光学素子の格子ピッチを、凹面形状の反射面上の分周した領域毎に異なるように形成すると、段階的に格子周期が異なるものになり、角分散値を変えることで、補償する分散値や分散スロープ値を可変にすることができる。
【0015】
また、光学素子によって形成された波長分散方向に直交する面内の焦点位置と反射ミラーの反射面は、回折光学素子の凹面形状の反射面の曲率半径を直径とする円周上に位置する関係を保ちながら相対移動するようにしてもよい。
そのため、光が回折光学素子に入射する位置に関わらず、回折光学素子による焦点位置は常に反射ミラーの反射面上の1点に形成される。
また、回折光学素子は凹面形状の反射面の曲率中心を支点として回転するようにしてもよい。
回折光学素子は凹面形状の反射面の曲率中心を支点として回転することで、格子ピッチを変更しても、光学素子の焦点位置(一次結像点)、回折光学素子、反射ミラーの反射面が幾何学的にはローランド円上にあるため、回折光学素子の反射点はいつも反射面上の1点になり、高精度な補償を実現できる。
【0016】
また、反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向に直交する面内においてパワーを有していてもよい。
反射ミラーの反射面は、回折光学素子で回折された光の波長による反射角の変化に伴って光路長を変化させ、必要な補償をする分散スロープ値にすることができる。
反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向を含む面内においてパワーを有している。
反射ミラーの反射面は、角分散素子による射出角の異なる光の光路長を変化させて、必要な補償をする分散値にすることができる。
反射ミラーの反射面は回転非対称な自由曲面であってもよい。
反射ミラーの反射面は、補償する分散量または分散スロープ量にあわせた曲面形状になり、より高精度な補償が可能となる。
【0017】
また、反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向を含む面内において入射光軸に対して傾斜した面を有していてもよい。
反射ミラーの反射面を傾斜した面とすることで、回折光学素子で回折された光の波長による反射角の変化に伴って光路長を変化させる効果があり、しかも形状が単純なために製造コストが低い。
また、反射ミラーの反射面は入射光軸に対して略垂直な方向に移動可能にしてもよい。
補償する分散値及び分散スロープ値によって反射面の反射位置を変更する場合、反射面は光軸に対して略垂直な方向に移動することで反射率の変化を抑えることができる。
また、反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向に直交する面内において移動可能であってもよく、補償する分散値を可変にすることができる。そして/或いは、反射ミラーの反射面は角分散素子による波長分散方向を含む面内において移動可能であってもよく、補償する分散スロープ値を可変にすることができる。
尚、角分散素子として、干渉計、ファブリペロー干渉計、エタロン、VIPA、回折格子、或いはプリズム等を用いてもよい。
また、角分散素子が回折格子である場合、ブレーズ角を有する面を備えていることが好ましい。
【0018】
本発明による分散補償システムは、上述した本発明のいずれかに記載の分散補償器と、該分散補償器から射出された光を監視して光の分散情報と分散スロープ情報の少なくとも一方を含む信号を出力する信号モニタと、該信号モニタから出力された信号に基づいて分散量及び分散スロープ量の少なくとも一方を減らすよう反射ミラーの移動を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、分散補償器により波長分散と分散スロープの少なくとも一方を補償された光の分散情報や分散スロープ情報が信号モニタから出力され、その情報に基づく制御装置の作動により反射ミラーの移動位置が制御される。従って、光伝送素子の長さ等が決定された状態で波長分散量や分散スロープ量の少なくとも一方が決定し、それによって適正な補償が得られるような反射ミラーの位置が決定された場合であっても、他の要因によって波長分散量または分散スロープ量が変動した場合には、その都度、補償されることになる。
また分散補償システムにおいて、波長分散量や分散スロープ量の少なくとも一方を自動調整するために、反射ミラーに代えて、光偏向器の偏向角を制御するようにしてもよい。或いは回折光学素子の位置を制御するようにしてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を参照して説明する。
図1乃至図4は本発明の第一の実施の形態を示すもので、図1は実施の形態による分散補償器の構成を示す図で、(a)はY−Z面内から見た光学系の構成図、(b)はX−Z面内から見た光学系の構成図、図2は図1(b)におけるファブリペロー干渉計を通過する光の波長分散を説明する部分拡大図、図3は凹面回折格子の反射面の一例の部分拡大断面図、図4は反射ミラーの反射面形状を示す図である。
尚、図1を含む各図において、XYZ座標系は、紙面に沿って右側を正方向とするZ座標を配した直交座標系である。図1(a)はY−Z面、図1(b)はX−Z面における光学系を示している。しかしながら全ての図面において、X座標とY座標とを入れ換えても分散補償器1の光学系を縦に配置するか横に配置するかの違いにすぎず、いずれの座標系を採用しても本発明の本質に変わりはない。また各図において示された光路は、特定の波長の光のみを抽出して描いたものである。
図1に示す分散補償器1は、光通信システムにおいて光ファイバー(光伝達素子)を伝送された光について波長分散と分散スロープを補償するものであり、光ファイバー2から射出された光を平行光にするコリメータレンズ3と、X−Z面内でのみ正のパワーを有していて平行光を一軸方向即ちX−Z面内でのみ集光させるシリンドリカルレンズ4と、シリンドリカルレンズ4による集光位置近傍に配設されたファブリペロー干渉計5(角分散素子)と、ファブリペロー干渉計5内で波長毎に分散して射出された略平行光束を焦点位置A、A′で集光させる集光レンズ6(光学素子)と、焦点位置A、A′で集光した光束が拡散して波長毎に回折角を異ならせて反射させる凹面回折格子7(回折光学素子)と、この反射光が集光する反射面8aで反射させて上述した往光路を逆行させる反射ミラー8とを有している。
これらの構成は分散補償器1の光学系の基本構成である。
【0020】
分散補償器1の光学系のうち、ファブリペロー干渉計5について図2により説明する。
ファブリペロー干渉計5は媒質が例えば屈折率nで略板状をなす光学ガラス10であり、その両面に第一反射膜11aと第二反射膜11bとが略平行に配設されている。光の入射側に位置する第一反射膜11aは略100%の反射率を有する反射面とされ、射出側に位置する第二反射膜11bは第一反射膜11aより小さい反射率即ち例えば95%程度で略100%より小さい反射率を有する反射面とされている。ファブリペロー干渉計5はVIPAと同一と考えてよく、この干渉計5に代えてVIPAを配設してもよい。
第一反射膜11aのうち、シリンドリカルレンズ4からの収束光が入射する入射窓12の部分は切除されており、入射窓12では入射光の透過率はほぼ100%に近く設定されている。そのために、収束光が入射角θで入射窓12からファプリペロー干渉計5の光学ガラス10内に入射すると、好ましくは第二反射膜11b上で一軸方向に焦点を結び、図2に示すように、第一及び第二反射膜11a、11b間で繰り返し反射して多重反射する。入射光の多重反射によって自己干渉を生じさせ、それにより射出光を生じさせる。射出光は連続する波長領域内の他の波長を有する入射光について形成された射出光と空間的に判別可能である。射出光は波長毎に射出する角度に違いが生じ、互いに干渉する。
図1、2において、ファブリペロー干渉計5から射出する光は波長毎にX−Z面内に分散されている。本明細書では、このX−Z面を、角分散素子による波長分散方向を含む面といい、Y−Z面を角分散素子による波長分散方向に直交する面という。
ファブリペロー干渉計5から射出した光は略平行光束と考えることができ、通常の平行光として取り扱うことができる。
【0021】
ここで、ファブリペロー干渉計5(またはVIPA)について、光学ガラス10の間隔(厚さ)をtとすると、第二反射膜11bを透過して射出する多重透過光の隣り合った光の光路長差L=2ntcosθとなる。干渉によるm次の明るい縞の波長をλとすると、mλ=2ntcosθで与えられる。この式を波長λで微分すると、角分散Dfは
Df=dθ/dλ=m/2ntcosθ=1/λ・cotθとなる。
この角分散によって、入射された光の波長の違いによって射出する角度が異なる略平行光が形成される。また、厚さtの媒質について光学ガラス10に代えて空気を採用し、媒質を挟んで第一及び第二反射膜11a、11bを配設して構成されていても、当然、同様の効果が得られる。この場合、媒質内での光路が空気であるため温度による影響を受けにくい状態となる。
また射出光で形成する干渉縞について述べる。
次数の重なり合わない領域を自由スペクトル領域(free spectral range)△λRという。m次の干渉縞が、mλ=2ntcosθを満足する方向θにできているとき、(m+1)次の干渉縞は(θ−△θ)方向にできる。すなわち、
(m+1)λ=2ntcos(θ−△θ)となる。
ここで、仮に(θ−△θ)方向に波長(λ+△λ)のm次の光が干渉縞を作ったとすると、次式が成り立つ。
m(λ+△λ)=2ntcos(θ−△θ)
上式は、波長λの干渉縞の次数が1だけ異なるときの方向の違い△θRを与える。
△λR=dλ/dθ△θR=λ2/2ntcosθ≒λ2/2nt
すなわち、自由スペクトル領域△λRは、ntが小さいほど大きい。例えば波長1550nmで、t=0.8mm、n=1.65の場合には、△λR≒1nmとなり、この波長幅において射出角の変化する出力光が繰り返し得られることになる。
【0022】
ファブリペロー干渉計5を通過した光は略平行光束となり、集光レンズ6を通過する。集光レンズ6は例えばアナモルフィックレンズである。この集光レンズ6は角分散素子による波長分散方向を含む面(X−Z面)内のパワーφmと、角分散素子による波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内のパワーφnとが相違しており、φm>φnに設定されている。そのため、集光レンズ6を通過した光束は、角分散素子による波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内ではA点で焦点を結び、角分散素子による波長分散方向を含む面(X−Z面)内ではA点より焦点距離の短いA′点で焦点を結ぶ。
本実施の形態では、1次焦点位置であるA、A′が異なる位置であり、焦点位置Aに対して焦点位置A′の焦点距離を調整して設定することによって、後述の凹面回折格子7で発生する角分散素子による波長分散方向を含む面(X−Z面)内での非点収差を補正して、反射ミラー8の反射面8a上の一点に焦点を結ばせることができることになる。
この焦点位置Aの近傍にスリット13を配設することで、不要光を排除できる。
【0023】
凹面回折格子7は、曲率を有し、格子溝kまた格子突起部が形成された反射型回折格子である。即ち、凹面回折格子7の反射面7aは、角分散素子(ファブリペロー干渉計5)による光の波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)で曲率半径Rの円弧を描く凹曲面からなる凹面を形成している。反射面7aは角分散素子による波長分散方向を含む面内(X−Z面内)では自由曲面を形成している。そして角分散素子による波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)において回折作用を有するように格子溝(または格子突起部)kがX軸方向に形成されている。即ち、Y−Z面内において反射面7a上の複数の格子溝kはX軸方向に略平行に延びて配列されている。
尚、図3は凹面回折格子7の一例を示すもので、凹面回折格子7の凹面状反射面7aに形成した格子溝kの形が、格子溝kの延びる方向に直交する断面視で、図のように階段状になっているEehelette回折格子の場合には、入射角iと回折角βの間にi±β=2α(αは回折格子面と長い溝面とのなす角)の関係、すなわち溝面に対して鏡面反射の条件にあるような波長の光に対しては、その方向に最も強く回折を起こし、他の次数にはほとんど回折されない。この方向は入射角iによって異なるが、i=βの場合には回折格子の式からmλ0=ω(sini+sinβ)=2ωsinαとなって波長が決まってしまう。m=1のときのλ0をブレーズ波長、αをブレーズ角という。
【0024】
溝面に対する鏡面反射のとき回折強度最大の条件は、ある波長λ0だけに対して成り立つが、幾何学的な反射でないから、λ0を中心としたかなり広い波長域に対しても成り立つ。m、λ0を一定とすると、格子ピッチωを小さくし、αを大きくすると分解能を高くすることが可能となる。
本発明の分散補償器においては、角分散素子として回折格子を用いる場合にも、凹面回折格子7における回折においても一次回折光のみを用いるようにできれば、損失を小さくすることができるため、ブレーズ角を有する回折格子を用いることは望ましい。このときのブレーズ波長は分散補償器に挿入する入力光の中心波長であることが望ましい。
また回折光学素子として、凹面回折格子7に限定されることなく、レーザ光の干渉を利用したホログラフィック格子、HOE(ホログラフィック光学素子)等であってもよい。
【0025】
ここで、図11(a)、(b)に、非点収差補正がされない場合に、後述するローランド円C上の一次結像点である焦点位置に設けたスリット13からの入射光Paが凹面回折格子7の反射面7aで反射して集光する二次結像点の位置が一般的にどうなるかを示す。回折格子の格子溝(回折溝)に直交する面(Y−Z面)内での焦点位置Psと、回折格子の格子溝(回折溝)に平行な面(X−Z面)内での焦点位置Phとに示される関係にある。図から明らかなように、X−Z面内での焦点位置PhはY−Z面内での焦点位置Psよりも反射面7aから遠くに位置するため、非点収差を生じる。
この非点収差を補正するために、上述のように集光レンズ6の角分散素子による波長分散方向を含む面(X−Z面)内のパワーφmと、角分散素子による波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内のパワーφnとを、φm>φnに設定した。これによって、焦点位置PhとPsを一致させて非点収差を補正するようにしている。
【0026】
反射ミラー8の反射面8aは、座標系が反射面で変換され光軸方向をZ軸とすると、互いに直交するY−Z面方向とX−Z面方向とでそれぞれ波長によって射出角の異なる光線を反射させて分散補償と分散スロープ補償とを同時に行う曲面形状を有しており、そのために例えばY−Z面方向とX−Z面方向とで形状の異なる自由曲面を形成している。一例をいえば、図1(a)で、反射面8aはE−E線断面視で凸曲面形状が形成され(図4(a)参照)、F−F線断面視で凹曲面形状が形成され(図4(b)参照)、両者間で断面形状が滑らかに連続して変化する自由曲面になる。
尚、反射ミラー8の反射面8aは、例えばアナモルフィック面、トーリック面、曲面、球面、平面傾斜面でもよく、補償すべき分散量及び分散スロープ量に対応していればどのような形状でもかまわない。
本実施の形態における反射ミラー8の自由曲面は、例えば次式により表される。尚、この式のZ軸が自由曲面の軸となる。
【0027】
【数1】
【0028】
但し、数1の第1項は球面項、第2項は自由曲面項である。また球面項中、cは頂点の曲率、kはコーニック定数(円錐定数)、r=√(X2+Y2)である。
自由曲面項は、以下に示す数2のように展開することができる。但し、Cj(jは2以上の整数)は係数である。
【0029】
【数2】
【0030】
また図1(a)で示すY−Z面内で、分散補償器1において、焦点位置A、凹面回折格子7の反射面7aにおける発散光の反射点、反射ミラー8の反射面8aは、反射面7aの曲率半径Rを直径とする円Cの円周上にある。これらの幾何学的な位置関係を備えた円Cはローランド円と呼ばれ、凹面回折格子7が回折効果と結像効果を同時に満たすものとして知られている。
この凹面回折格子7は単体で分光作用と結像作用を持ち、本実施の形態のように焦点位置Aで一次像点をローランド円C上に設ければ、凹面回折格子7で分光された回折像は格子定数、波長、次数をどう選んでも、必ず同じローランド円上に生じ、しかも実用的に無収差とみなせる。
但し、上記特性は、角分散素子による波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)でのみ適用されるものである。角分散素子による波長分散方向を含む面内(X−Z面内)では、集光レンズ6のパワーφmをY−Z面内でのパワーφnより大きく設定することで非点収差を補正している。
【0031】
上述の構成によって、分散補償器1では、X−Z面内において、凹面回折格子7の反射面7aで反射した反射光はファブリベロー干渉計5からの影響で波長によって射出角の異なる収束光として反射ミラー8の自由曲面である反射面8aに集光することで、各波長による光路長差を補償し、波長分散を補償する。即ち、反射面8a上においてX軸方向に異なる位置で反射する光に与える光路長差は、光ファイバー2を伝送されてきた光の波長分散量によって定まる。そのため、これらの光の反射面8a上の反射位置を波長分散量によって定まるZ軸方向の所定位置に設定することで、波長分散量を適性に補償する光路長差を光に与えることができ、正分散または負分散のどちらに対しても補償できる。
尚、補償する分散量を可変にする場合には、光が反射ミラー8に入射する位置を分散量によって変化させる必要がある。この場合には、図1(a)の矢印で示すように、角分散素子による波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)で反射ミラー8を移動させて反射点を自由曲面からなる反射面8aに対して相対移動させればよい。
【0032】
また分散スロープ補償について述べれば、Y−Z面内では、凹面回折格子7の反射面7aは曲率半径Rを有しY−Z面内に格子溝(位相部)kを有する1次元の回折格子であるために、格子溝kで反射した光は、波長によって射出角の異なる収束光(回折光)となり、反射ミラー8の自由曲面である反射面8aの反射点に集光することで、各波長による分散スロープを補償する。反射面8a上においてY軸方向に異なる位置で反射する光に与える光路長差は、光ファイバー2を伝送されてきた光の各波長の分散スロープ量によって定まる。そのため、これらの光の反射面8a上の反射位置を各波長の分散スロープ量によって定まるY軸方向の所定位置に設定することで、分散スロープ量を適性に補償する光路長差を光に与えることができる。
尚、補償する分散スロープ量を可変にする場合には、図1(b)の矢印で示すようにY−Z面に直交するX軸方向に反射ミラー8を移動させて反射点を自由曲面からなる反射面8aに対して相対移動させればよい。
【0033】
本実施の形態による分散補償器1は上述の構成を備えており、次に作用を説明する。
光通信システムにおいて、長距離に及ぶ光ファイバー2内を伝送されてきた光信号は、波長分散と分散スロープが生じ、群遅延が生じている。図1において、光ファイバー2から射出された光は、光ファイバー2のNAで決まる発散角で広がりながら分散補償器1内に進む。
そして分散補償器1のコリメータレンズ3で平行光とされた光束はシリンドリカルレンズ4によって一軸方向(図1ではX−Z面内)にのみ集光しつつファブリペロー干渉計5に入射窓12から入射角度θを以て入射し、ガラス面10内を進んで第二反射膜11bで集光する。
ファブリペロー干渉計5内では、入射光は第一及び第二反射膜11a、11b間で多重反射を起こし、波長毎に干渉した光が第二反射膜11bから射出する角度に違いを生じて射出光となる。射出光は連続する波長領域内の他の波長を有する入射光について形成された射出光と空間的に判別可能である。そして互いに干渉する複数の射出光がファブリペロー干渉計5から出射し、略平行光束となる。
【0034】
この光束は集光レンズ6を通過して収束光となる。ここで、集光レンズ6は角分散素子の波長分散方向を含む面(X−Z面)内と波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内とでパワーφm、φnを異にしているため、X−Z面内とY−Z面内とで一次焦点位置が異なる。Y−Z面内ではローランド円C上の焦点位置Aで焦点を結び、X−Z面内では焦点位置Aよりも集光レンズ6に近い焦点位置A′で焦点を結ぶ。
そして、スリット13で不要光を排除された光束は再び発散光となって進み、凹面回折格子7に入射する。凹面回折格子7の反射面7aで反射した光は波長によって射出角の異なる回折光として収束し、角分散素子の波長分散方向を含む面(X−Z面)内と波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内とで焦点位置が一致し、反射ミラー8の反射面8a上の一点で集光する。そのため、直交する方向のパワーが異なる集光レンズ6によって凹面回折格子7で生じる非点収差を補正することができる。
【0035】
そして、反射ミラー8の反射面8aで反射した光は凹面回折格子7,集光レンズ6、ファブリペロー干渉計5、シリンドリカルレンズ4、コリメータレンズ3を経由し、往工程の光路をたどって逆方向に進んで光ファイバー2に戻ることになる。
ここで、ファブリペロー干渉計5によって波長毎にX軸方向に分布する入射光は、X軸方向の射出角度を異ならせているために、反射ミラー8の反射面8aへの入射位置は光の波長によって決定されている。反射ミラー8の反射面8aは波長分散方向を含む面内(X−Z面内)においてX軸方向に沿って適切な自由曲面とされているから、波長毎にX軸方向に分布する入射光は、反射面8a上におけるX軸方向の反射位置に応じてファブリペロー干渉計5との間で分散値に応じた異なる光路長を与えられることになる。従って、ファブリペロー干渉計5と反射面8aとの間で、遅れている波長の光に対する光路長を短く設定し、進んでいる波長の光に対する光路長を長く設定することによって波長分散を補償し、群遅延を解消できることになる。
【0036】
一方、角分散素子による波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)においては、ローランド円C上の焦点位置A(一次結像点)で焦点を結んだ光は、発散しつつ凹面回折格子7の反射面7aで波長によって射出角の異なる回折光となって反射し、反射ミラー8の反射面8aの集光点で反射される。凹面回折格子7の反射面7aにはX軸方向に格子溝kが所定ピッチで形成されているために波長毎に射出角を異ならせて角度分散させることができ、各波長の分散スロープに応じて反射ミラー8の反射面8a上のY−Z面内の異なる位置に集光させて反射させることになる。
この反射面8aは、角分散素子による波長分散方向に直交する面内(Y−Z面内)において、上述したX−Z面内の自由曲面とは異なる形状の自由曲面に形成されているために、各波長毎に光路長差を与えられることになる。そのために、凹面回折格子7の凹曲面状の反射面7aと反射ミラー8の反射面8aとの間で、各波長の分散スロープを補償できる。
ファブリペロー干渉計5によって補償できる分散値は通常一定であるために分散スロープまでは補償できないが、この光の方向と直交する方向で凹面回折格子7によって分散スロープを同時に補償することができる。
【0037】
上述のように本実施の形態による分散補償器1によれば、波長多重分割技術(WDM)を用いた光通信システムにおいて、波長分散と分散スロープを同時に補償できる。しかもローランド円Cの関係を採用することで凹面回折格子7単体で回折と集光を同時に満たすことができて光学系の構成が簡単でコンパクトであり、補償する波長分散量と分散スロープ量に関わらず、ファブリペロー干渉計5から光が通過する光学系素子の界面が3枚であり、挿入損失の変化が少ないという利点がある。また凹面回折格子7で反射させることで生じる非点収差を、互いに直交する方面内でパワーの異なる集光レンズ6を配設したことで補正することができ、反射ミラー8上にスポットを形成して正確な分散補償を行うことができる。
【0038】
以下、本発明の別の実施の形態や変形例について添付図面により説明するが、上述の第一の実施の形態と同一または同様の部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
反射ミラー8の反射面8aは数1で規定する自由曲面に限定されることなく、他の形状、例えば精度の高い分散補償や分散プローブ補償を要求されない場合には、反射面8aのX−Z面内の形状とY−Z面内の形状の一方または両方を図4(c)に示すような平面状の傾斜面としてもよい。この場合、反射面8aを入射光軸に対して直交する方向にY−Z面内やX−Z面内を移動可能とすれば、分散値や分散スロープを調整することができる。
また図5は第一の実施の形態による分散補償器1の変形例であり、この分散補償器1Aでは、集光レンズ6とその焦点位置A、A′との間に光路を偏向する第二反射ミラー14(光偏向器)が配設されており、集光レンズ6を射出した収束光が集光する前に第二反射ミラー14によって光路を偏向されて焦点位置A、A′で結像した後で発散して凹面回折格子7に入射するようになっている。図5に示す例では、集光レンズ6から射出された光束の光軸をY−Z面内で略90°折り曲げるように構成されている。
この分散補償器1Aでは装置の全長を短く設定できる。
【0039】
また、さらなる変形例として、第二反射ミラー14に代えて反射型回折格子(光偏向器)を設けても良く、この場合、分散補償器1Aでは反射型回折格子は直交する2軸を中心にY−Z面内及びX−Z面内(Z軸回り)で回転可能としてもよい。この場合、分散補償器1Aでは、集光レンズ6で集光された光はY−Z面内では反射型回折格子で反射してローランド円上で焦点位置Aとして結像し、X−Z面内では集光レンズ6と焦点位置Aとの間で焦点位置A′として結像する。その後、その光束は発散しつつ凹面回折格子7に向かうことになる。ここで反射型回折格子を回転可能とすることにより、焦点位置Aは厳密にはローランド円C上から外れることになるが、そのズレ量は条件を適切に設定することにより微小となり実質上無視することができる。
この反射型回折格子で角分散素子による波長分散効果を増大させるためには、X−Z面内のみの回折効果を与えるためにY軸方向にのみ格子溝(格子突起)kを形成する。また反射型回折格子によって凹面回折格子7の分散効果を増強させるためには、X軸方向にのみ格子溝(格子突起)を形成すればよい。また反射型回折格子によって、角分散素子と凹面回折格子7の両方の分散効果を増強させる場合には、2次元の回折格子を構成する必要があり、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに格子溝(格子突起)を形成すればよい。
尚、上述した反射型回折格子は、後述する第三の実施の形態の図8に示す分散補償器16の光学系における第三反射ミラー20の反射面上に配設してもよい。この場合にも、反射型回折格子の格子溝(格子突起)を形成する方向をX軸方向とY軸方向の一方または両方に形成することで同様の作用効果を奏することになる。
【0040】
次に本発明の第二の実施の形態による分散補償器17を図6により説明する。
図6(a)、(b)において、光ファイバー2からファブリペロー干渉計5までの構成は図1に示す分散補償器1と同一であるために省略されており、集光レンズ16から反射ミラー8までの構成に関してのみ説明する。
図6において、集光レンズ16は自由曲面レンズであり、集光レンズ16を通過した光束の進行方向に回転ミラー15(光偏向器)、凹面回折格子7、反射ミラー8が順次配設されている。しかも凹面回折格子7の凹面状の反射面7aの曲率半径Rを直径とするローランド円Cの円周上に、回転ミラー15と反射ミラー8の反射面8aとが位置することになる。
そして、集光レンズ16を通過した収束光は、角分散素子の波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内では、その焦点位置Bが回転ミラー15の反射点即ちローランド円上に位置するように設定する。角分散素子の波長分散方向を含む面(X−Z面)内では、(Y−Z面)内の焦点位置Bよりも集光レンズ16側に焦点位置B′が位置するようになっている。そのため、集光レンズ16は、X−Z面内でのパワーφmがY−Z面内でのパワーφnより大きい。
凹面回折格子7で反射する光は、角分散素子の波長分散方向に直交する面(Y−Z面)内では略収差の発生がなく、ローランド円上に焦点を結ぶ。これに対し、角分散素子の波長分散方向を含む面(X−Z面)内では、(Y−Z面)内の焦点位置よりも遠くに焦点を結ぶことになり、非点収差が発生する。そのため本実施の形態では、集光レンズ16を上述した自由曲面レンズに構成することで、この非点収差を補正することができることは第一の実施の形態による集光レンズ6と同一である。
尚、焦点位置Bの近傍にスリット13を配置しておくことで不要光を排除できる。
【0041】
次に、回転ミラー15は焦点位置BにおいてY−Z面内でX軸回りに回転可能であると共にX−Z面内でZ軸(図6(b)で光軸に重なる軸)回りに回転可能とされ、直交する2軸で回転可能とされている。そのため、回転ミラー15によって入射光をY−Z面内とX−Z面内とで偏向できるため、走査面となる凹面回折格子7上の反射する部分を選択できる。
一方、図7に示すように、凹面回折格子7はY−Z面内における凹面状の反射面7aで複数の格子溝(または格子突起部)kがX軸方向に平行に配列されている。しかも凹面状の反射面7aはその延在方向に複数領域、例えば6領域に分割されており、各分割領域D1、D2、…、D6相互間で格子溝(格子突起部)kの配列ピッチがそれぞれ異なるように形成されて回折定数を変化させている。これによって回転ミラー15をY−Z面内で回転させて光の偏向角を調整することで、凹面回折格子7における各波長の回折角を適宜選択することができる。そのため、選択された任意の分割領域D1、D2、…で光を反射させることで回折角を変更し、反射ミラー8の自由曲面による反射面8aに対する集光反射位置を変化できる。従って、光路長差を調整できて、種々の分散に対して補償することが可能になる。
また回転ミラー15をX−Z面内でZ軸回りに回転させることで、ファブリペロー干渉計5で波長分散させた入射光について凹面回折格子7で反射する部分を選択することができ、これによって要求される分散スロープ補償量を選択できる。
【0042】
尚、反射ミラー8の反射面8aはY−Z面内とX−Z面内とでそれぞれ異形状の自由曲面を形成することは第一の実施の形態と同一であるが、本実施の形態においては、回転ミラー15を2軸回りにそれぞれ回転可能とすることで、凹面回折格子7の反射面7aで反射する波長の入射領域を選択できるから、反射ミラー8は固定配置できる。この場合、X−Z面内で凹面回折格子7の反射面7aのX軸方向両側領域の曲率を(中央領域より)大きく設定することで、反射面7aにおける反射光を確実に反射ミラー8の反射面8aに集光させて分散補償を行える。
また、回転ミラー15の反射面として、平面ミラーに代えて反射型回折格子を用いてもよい。
ファブリペロー干渉計5等の角分散素子または凹面回折格子7で得られる角分散が少ない場合には角分散効果を増加することができ、有効に作用する。この反射型回折格子が角分散素子の分散効果を増加させる場合には、X−Z面内のみの回折効果を与えるためにY軸方向にのみ回折溝を形成する。一方、反射型回折格子が凹面回折格子7の分散効果を増強させる場合には、Y−Z面内のみの回折効果を与えるためにX軸方向にのみ回折溝を形成すればよい。また、反射型回折格子が角分散素子、凹面回折格子7のどちらの分散効果も増強させる場合には、2次元の回折格子とする必要がありX,Y軸方向それぞれに回折溝を形成するものとなる。
【0043】
次に本発明の第三の実施の形態を図8により説明する。
図8に示す分散補償器18の光学系において、光の進行方向に光ファイバー2、コリメータレンズ3、シリンドリカルレンズ4、ファブリペロー干渉計5の配列構成については、上述の実施の形態によるものと同一である。尚、干渉計としてファブリペロー干渉計5に代えてファブリペローエタロン(エタロン)を配設してもよく、エタロンはファブリペロー干渉計5と同様の構成を有しており、波長によって射出角度を変化させてX軸方向に波長に応じて分布させた光を出射させて略平行光束として走行させることになる。
ファブリペロー干渉計5から射出した平行光は、自由曲面で形成された第三反射ミラー20で反射されて収束光となる。第三反射ミラー20は集光用の光学素子を構成し、図に示す例では反射面20aが凹曲面を形成しており、光路を凹面回折格子7の反射面7aに向けて折り曲げると共に集光させる正のパワーを有している。しかも、この反射光は反射面20aが自由曲面であるために、Y−Z面内では集光して焦点位置Dで一次結像点を形成し、X−Z面内では焦点位置Dよりも第三反射ミラー20に近い位置で集光して焦点位置D′で一次結像点を形成することになる。これによって凹面回折格子7の反射面7aで発生する非点収差を補正し、反射ミラー8の反射面8a上で1点に焦点を結ぶようにすることは、上述の各実施の形態と同一である。
【0044】
またY−Z面内での焦点位置D、凹面回折格子7の反射面7a、反射ミラー8の反射面8aは凹面回折格子7の曲率半径Rを直径とするローランド円Cの円周上にある。また焦点位置D近傍に不要光を排除するスリット13を設けても良い。
更に本実施の形態による分散補償器18では、凹面回折格子7は図7に示すようにY−Z面内で凹面状の反射面7aの延在方向に複数の分割領域D1、D2…間で相互に各複数の格子溝(格子突起)kのピッチがそれぞれ変化している。しかも、凹面回折格子7は反射面7aの曲率中心である点Tを支点として回転可能とされている。
そのため、凹面回折格子7を支点Tを中心に回転運動させることで、固定保持された反射ミラー8の反射面8aに結像する反射光について第三反射ミラー20から反射する光の凹面回折格子7における波長分散領域を選択することができる。そのため、要求される様々な分散スロープに対して補償することが可能になる。この場合、反射ミラー8の反射面8aは上述した他の実施形態と同様に自由曲面を含む曲面として、広い波長域に対する分散スロープ補償を行うことができる。
【0045】
尚、角分散素子として、ファブリペロー干渉計5やエタロンに限定されることなく他の干渉計や回折格子やプリズム等を採用してもよい。
例えば、角分散素子が回折格子の場合について説明する。
回折格子において、回折格子ピッチをω、入射角i、回折角θgとすると、回折の式は
ω(sinθg+sini)=mλ (mは回折次数)
である。ここで角分散は、波長△λ異なるスペクトルが角度でどれだけ離れるかをあらわす量であり、角分散Dgとすると、上式を波長λで微分して、
Dg=dθ/dλ=m/ωcosθg
となる。したがって、もしも分散量を大きくしたい場合には、ωを小さくすればよい。
また、角分散素子に用いることのできる回折格子は、上述したEchelette回折格子のような形状に限らず、溝状の線を引いた格子、階段格子、正弦波格子、台形格子等でもよく、また、レーザ光の干渉を利用したホログラフィック格子、HOE(ホログラフィック光学素子)であってもよい。
【0046】
また角分散素子はプリズムであってもよい。
図9に示すように分散補償器22の光学系において、上述の実施の形態による角分散素子に代えてプリズム23を用いた場合、角分散Dpは、次式であらわされる。
Dp=dθ/dλ=2sin(φ/2)/(1−n2sin2(φ/2))1/2・dn/dλ
ただし、θpはふれ角、φはブリズムの頂角、dn/dλは材料の分散である。
角分散Dpは上式からわかるように、プリズムの頂角φ、材料の屈折率n及び分散dn/dλで決まる。頂角φは用いる材料に応じて最適角があって、これは種々の頂角に対する角分散Dpの大小と、利用されるエネルギーの大小を比較して決められる。一般に屈折率nの小さい材料のプリズム角は大きくしたほうがよい。したがって角分散Dpは屈折率nとsin(φ/2)の積の大きいほどよいことになる。
【0047】
次に本発明による分散補償システム30について、図10により説明する。
本実施の形態による分散補償システム30は、図10に示すように、例えば第一の実施の形態による分散補償器1と、この分散補償器1から射出された光を監視する信号モニタ31と、信号モニタ31からの出力に基づいて反射ミラー8のY−Z面内及びX−Z面内での移動位置を制御する制御装置32とを備えている。
尚、この分散補償システム30において、サーキュレータ33が光ファイバー2と分散補償器1との間に配設され、光ファイバー2から射出された光と分散補償器1から戻る光とを分けて分散補償器1から戻る光を取り出すようになっている。またサーキュレータ33と信号モニタ31との間に分光器34が設けられており、サーキュレータ33から出力されて分散補償された光の一部を取り出して信号モニタ31にフィードバックしている。
信号モニタ31は、分散補償器1から出力され分散補償された光を入力することで、この光を分析することによって波長分散量のような分散情報と分散スロープ量のような分散スロープ情報とを含む信号S1を抽出することができるようになっている。制御装置32では信号モニタ31から出力された信号S1に基づいて波長分散と分散スロープとを補償するように反射ミラー8に対する移動指令信号S2を出力するようになっている。
【0048】
上述の構成を備えた分散補償システム30によれば、分散補償器1の作動により、光ファイバー2を伝送されてきた光の波長分散と分散スロープが補償されると波長分散量と分散スロープ量がゼロになるので、制御装置32から反射ミラー8への移動指令信号S2もゼロになり、反射ミラー8はそのときの移動位置に保持される。すなわち、光ファイバー2を伝送されている光の波長分散と分散スロープが一定して生じている場合には、一旦補償が完了するとその状態に維持されることになる。
しかしながら、温度や振動のような光ファイバー2の配設されている環境や、光ファイバー2内を伝送されてくる光信号の周波数帯域が変化した場合には、光信号内に含まれる波長分散量や分散スロープ量も変化する。このような場合には、分散補償器1を出力した補償済みの光信号内に、新たにどの程度の波長分散と分散スロープが発生したのかという各情報を含む信号S1が信号モニタ31から出力される。
そして制御装置32は、この信号S1の大きさに応じた距離だけ、反射ミラー8をY−Z面内または/及びX−Z面内を移動させるよう制御する。すなわち、反射ミラー8の位置と、そのときに選択される反射ミラー8の反射面8a形状に応じた分散補償量と分散スロープ補償量とを予め対応づけておくだけで、波長分散と分散スロープが常に最小限に抑えられるように自動調整されることになる。
【0049】
このように本実施の形態による分散補償システム30によれば、波長分散量と分散スロープ量とが最小限となるように自動調整されるので、将来的に光信号の伝送速度が増大して波長分散量と分散スロープ量とが、温度や振動のような外的要因により変動しやすくなった場合においても、光信号の損失を制御することができるという効果がある。
尚、上述の実施の形態による分散補償システム30では、反射ミラー8をY−Z面内及びX−Z面内を移動可能として波長分散量と分散スロープ量とを補償するようにしたが、いずれか一方の面内に移動させて波長分散量と分散スロープ量の一方のみを補償するようにしてもよい。
また分散補償システム30において、反射ミラー8に代えて、分散補償器1Aにおける第二反射ミラー14やこのミラー14に代えて設けた反射型回折格子、分散補償器14における回転ミラー15、分散補償器18における第三回転ミラー20等を光偏向器として採用して回転可能に配備してもよい。
或いは分散補償器18における凹面回折格子7を移動させることで分散スロープ量等を最小にするよう自動調整してもよい。
【0050】
【発明の効果】
上述のように本発明による分散補償器によれば、波長分散と分散スロープを同時に補償できると共に、回折光学素子で回折と集光を同時に満たすことができて部品点数が少なく装置の小型化を実現でき、補償する波長分散量と分散スロープ量に関わらず挿入損失の変化が少ないという効果を奏する。しかも回折光学素子を採用することで非点収差が発生しても、集光用の光学素子によって補正することができ、正確な分散補償を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態による分散補償器の光学系を示すもので、(a)はY−Z面内から見た分散補償器の構成図、(b)はX−Z面内から見た分散補償器の構成図である。
【図2】図1(b)におけるファブリペロー干渉計を通過する光の波長分散を説明する部分拡大図である。
【図3】凹面回折格子の反射面におけるブレーズ角を示す部分拡断面大図である。
【図4】反射ミラーの断面図であり、(a)は図1(a)におけるE−E線断面図、(b)は同じくF−F線断面図、(c)は反射ミラーの変形例についての断面図である。
【図5】第一の実施の形態による分散補償器の変形例を示すもので、(a)はY−Z面内から見た分散補償器の構成図、(b)はX−Z面内から見た分散補償器の構成図である。
【図6】第二の実施の形態による分散補償器の部分構成を示すもので、(a)はY−Z面内から見た分散補償器の要部構成図、(b)はX−Z面内から見た分散補償器の要部構成図である。
【図7】図6(a)に示す凹面回折格子の拡大図である。
【図8】第三の実施の形態による分散補償器を示すもので、(a)はY−Z面内から見た分散補償器の構成図、(b)はX−Z面内から見た分散補償器の部分構成図である。
【図9】ファブリペロー干渉計に代えてプリズムを用いた分散補償器を示す図で、(a)はY−Z面内から見た分散補償器の構成図、(b)はX−Z面内から見た分散補償器の部分構成図である。
【図10】本発明の実施の形態による分散補償システムを示すブロック図である。
【図11】ローランド円上の一点からスリットを通して入射する入射光に対して凹面回折格子の反射面で反射して収束する光の基本的光路を示すもので、(a)はY−Z面内から見た図、(b)はX−Z面内から見た図である。
【符号の説明】
1、1A、17、18、22 分散補償器
5 ファブリペロー干渉計(角分散素子)
6、16 集光レンズ(光学素子)
7 凹面回折格子(回折光学素子)
8 反射ミラー
14 第二反射ミラー(光偏向器)
15 回転ミラー(光偏向器)
20 第三反射ミラー(光学素子)
30 分散補償システム
k 格子溝
Claims (30)
- 光を伝送するための光伝達素子を射出した光の波長によって射出する角度を変化させる角分散素子と、該角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーと波長分散方向に直交する面内のパワーとが異なっていて集光作用を有する光学素子と、少なくとも凹面形状の反射面を有していて回折作用を有する回折光学素子と、全光学系における焦点位置近傍に配備され且つ光が波長に応じて分散する方向に形状が変化する反射面を有する反射ミラーとを備えたことを特徴とする分散補償器。
- 光を伝送するための光伝達素子を射出した光の波長によって射出する角度を変化させる角分散素子と、該角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーと波長分散方向に直交する面内のパワーとが異なっていて集光作用を有する光学素子と、該光学素子を射出した光を偏向させる光偏向器と、少なくとも凹面形状の反射面を有していて回折作用を有する回折光学素子と、全光学系における焦点位置近傍に配備され且つ光が波長に応じて分散する方向に形状が変化する反射面を有する反射ミラーとを備えたことを特徴とする分散補償器。
- 請求項1または2記載の分散補償器において、前記光学素子は前記角分散素子の波長分散方向を含む面内のパワーが波長分散方向と直交する面内のパワーより大きいことを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の分散補償器において、前記光学素子は前記角分散素子と前記回折光学素子の間に配置された少なくとも1面のアナモルフィック面を含む光学部材であることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の分散補償器において、前記光学素子は前記角分散素子と前記回折光学素子の間に配置された少なくとも1面の回転非対称な自由曲面を含む光学部材であることを特徴とする分散補償器。
- 請求項4または5記載の分数補償器において、前記光学部材はレンズであることを特徴とする分散補償器。
- 請求項4または5記載の分散補償器において、前記光学部材は凹面鏡であることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の分散補償器において、前記光学素子によって形成された前記波長分散方向に直交する面内の焦点位置と前記反射ミラーの反射面は、前記回折光学素子の凹面形状の反射面の曲率半径を直径とする円周上に位置することを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載の分散補償器において、前記回折光学素子の回折格子はブレーズ角を有することを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至9のいずれか記載の分散補償器において、前記回折光学素子は凹面回折格子であり、前記凹面回折格子の格子ピッチは凹面形状の反射面上の領域によって相違する分散補償器。
- 請求項10に記載の分散補償器において、前記凹面回折格子の格子ピッチは凹面形状の反射面上の前記角分散素子による波長分散方向に直交する方向の領域で相違する分散補償器。
- 請求項1乃至11のいずれかに記載の分散補償器において、前記光学素子によって形成された波長分散方向に直交する面内の焦点位置と前記反射ミラーの反射面は、前記回折光学素子の凹面形状の反射面の曲率半径を直径とする円周上に位置する関係を保ちながら相対移動するようにしたことを特徴とする分散補償器。
- 請求項12記載の分散補償器において、前記回折光学素子は凹面形状の反射面の曲率中心を支点として回転するようにしたことを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至13のいずれか記載の分散補償器において、前記反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向に直交する面内においてパワーを有することを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至14のいずれか記載の分散補償器において、前記反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向を含む面内においてパワーを有することを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至15のいずれか記載の分散補償器において、前記反射ミラーの反射面は回転非対称な自由曲面であることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至16のいずれか記載の分散補償器において、前記反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向を含む面内において入射光軸に対して傾斜した面を有することを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至17のいずれか記載の分散補償器において、前記反射ミラーの反射面は入射光軸に対して略垂直な方向に移動可能であることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至18のいずれか記載の分散補償器において、前記反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向を含む面内において移動可能であることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至19のいずれか記載の分散補償器において、前記反射ミラーの反射面は少なくとも角分散素子による波長分散方向に直交する面内において移動可能であることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至20のいずれか記載の分散補償器において、前記角分散素子は干渉計であることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至20のいずれか記載の分散補償器において、前記角分散素子はファブリペロー干渉計であることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至20のいずれか記載の分散補償器において、前記角分散素子はエタロンであることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至20のいずれか記載の分散補償器において、前記角分散素子はVIPAであることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至20のいずれか記載の分散補償器において、前記角分散素子は回折格子であることを特徴とする分散補償器。
- 請求項25記載の分散補償器において、前記回折格子はブレーズ角を有する面を備えていることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至20のいずれか記載の分散補償器において、前記角分散素子はプリズムであることを特徴とする分散補償器。
- 請求項1乃至27のいずれか記載の分散補償器と、該分散補償器から射出された光を監視して光の分散情報と分散スロープ情報の少なくとも一方を含む信号を出力する信号モニタと、該信号モニタから出力された前記信号に基づいて分散量及び分散スロープ量の少なくとも一方を減らすよう前記反射ミラーの移動を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする分散補償システム。
- 請求項1乃至27のいずれか記載の分散補償器と、該分散補償器から射出された光を監視して光の分散情報と分散スロープ情報の少なくとも一方を含む信号を出力する信号モニタと、該信号モニタから出力された前記信号に基づいて分散量及び分散スロープ量の少なくとも一方を減らすよう前記回折光学素子の移動を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする分散補償システム。
- 請求項2乃至27のいずれか記載の分散補償器と、該分散補償器から射出された光を監視して光の分散情報と分散スロープ情報の少なくとも一方を含む信号を出力する信号モニタと、該信号モニタから出力された前記信号に基づいて分散量及び分散スロープ量の少なくとも一方を減らすよう前記光偏向器の偏向角を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする分散補償システム。
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2002
- 2002-11-21 JP JP2002337965A patent/JP2004173054A/ja not_active Withdrawn
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