JP2004168797A - 植物性ろうそくの成型性改善剤 - Google Patents

植物性ろうそくの成型性改善剤 Download PDF

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Abstract

【課題】植物性ろうそくを成型する際の固化状態の悪化やひび割れを防止する、いわゆる成型性を改善することのできるグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステル、又はこれを含むことにより成型性が改善された植物性ろうそく用油脂及びこの油脂を用いて製造されたろうそくを提供することを目的とする。
【解決手段】植物性ろうそくの成型性改善剤として、炭素数8〜22の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸から1種又は2種以上選ばれたものよりなるグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることを特徴とし、本発明の成型性改善剤を添加することにより植物性ろうそくの成型性を改善することができる。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は植物性ろうそくに対して成型性改善効果のあるグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルに関するものであり、更に詳しくは本発明の成型性改善剤を添加することで、植物油を原料として使用しても、均一な状態で使用性が良く、製造時の成型性が改善される植物性ろうそく用油脂及びこの油脂を用いて製造されるろうそくに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ろうそくとしてはステアリン酸を主成分としたもの、木ろう、密ろう、カルナウバろう、モンタンろうなどの天然ろうが原料となっていたが、これら天然のろうは高価であり、また均質のものが得られにくいほか、安定に入手できないという欠点があった。その後、安価でより成型性の優れた石油系パラフィンワックスが用いられるようになった。
【0003】
しかしながら、石油系パラフィンワックスを用いたろうそくは、成型時の離型性が悪い、燃焼時に黒煙、排気ガス、異様な臭いを発するという欠点がある。そこで、鉱油を添加する方法(特許文献1参照。)、アルキル基の炭素数が2〜5のアレキレングリコールを添加する方法 (特許文献2参照。) などが開示されている。しかし、これらの方法を用いても離型性は改善されるが、特有の黒煙、臭いの問題は残されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−237481号公報
【特許文献2】
特開平11−269389号公報
【0005】
また、パラフィンワックスは石油から得られるため、環境面においても石油枯渇問題、環境破壊問題等、数多くの問題を抱えているのが現状である。
【0006】
そこで、最近、ろうそく用の油脂として、天然ろうやパラフィンワックスの代わりに、植物油から得られる硬化油を使用する方法が注目されてきた。この植物硬化油は、植物油から液状油を分別した後の副産物として得られることが多く、安価であり、大量供給することが可能である。更に、植物油を用いたろうそくは、パラフィンワックスを用いたろうそくに特有な燃焼時の黒煙、排気ガス、異臭等の欠点を解消し、現状のろうそくが抱える石油枯渇問題、環境破壊問題等、数多くの問題に対応することができる。
【0007】
しかし、上記の植物硬化油のみではろうそくに成型する際、油脂の固化状態が悪く、粗大結晶の発生により表面が粗くなり、更にひび割れが生じるなど、パラフィンワックス等に比べて一般的なろうそくの形に成型することは難しいという問題を抱えている。植物硬化油を用いたろうそくの製造法としては、凝固油にマーガリンを混合する方法(特許文献3参照。)が開示されている。しかし、この方法では天然ろうやパラフィンワックスなどを用いたろうそくに特有の黒煙や臭いを低減させることはできるが、ろうそくの表面が粗くなるなど、植物性ろうそくの成型性に関する問題は残されたままである。
【0008】
【特許文献3】
特開平6−145692号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は植物性ろうそくを成型する際の固化状態の悪化やひび割れを防止する、いわゆる成型性を改善することのできるグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを提供することを目的とする。また、本発明は上記成型性改善剤を含むことにより、成型性が改善された植物性ろうそく用油脂及びこの油脂を用いて製造された植物性ろうそくを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを植物性ろうそく用油脂に添加することによって、上記の課題を解決することができるという知見を見いだした。
【0011】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、その要旨は、上記グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、炭素数8〜22の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸より1種又は2種以上選ばれたものよりなることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の内容としては、上記グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを使用した植物性ろうそく用油脂及びこの油脂を用いて製造された植物性ろうそくを含んでいる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明におけるグリセリン脂肪酸エステルは脂肪酸モノグリセリドや脂肪酸ジグリセリドなど一般的にグリセリン脂肪酸エステルの範疇に入るものであれば特に限定はされない。また、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルに使用するポリグリセリンは、水酸基価から算出した平均重合度が2以上であればよいが、好ましくは2〜20の範囲である。グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルは単独であるいは複数を組み合わせて使用しても良い。
【0014】
本発明におけるグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、炭素数8〜22の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸より1種又は2種以上選ばれたものであり、好ましくは炭素数14〜18の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸より1種又は2種以上選ばれたものが良い。
【0015】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリン及びポリグリセリンに対する脂肪酸のエステル化率は特に限定するものではないが、好ましくは20%以上である。エステル化率が20%未満であれば、油脂との相溶性が低下するため好ましくない。
【0016】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルの使用量は、通常油脂に対し0.01重量%〜50重量%が好ましく、0.1重量%〜30重量%が特に好ましい。0.01重量%以下であれば本発明の効果が期待しがたく、50重量%であればグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルが主成分となり本発明の意図にそぐわないため好ましくない。
【0017】
本発明における植物性ろうそく用油脂とは植物由来のものであれば特に制限はないが、脱臭工程前の脱色油のほか、抽出油、原油、脱酸油、脱ガム油、脱ロウ油等の工程油及び精製油も用いることができる。植物油としては、大豆油、大豆胚芽油、菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糖油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、藻類油、中鎖トリグリセライド、ジグリセライド、品質改良によって低飽和化されたこれらの油脂及びこれらの水素添加油脂、分別油脂、混合油脂が含まれるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の植物性ろうそくとは植物由来の油脂を主成分としたろうそくであれば特に限定するものではなく、どのような形態のものであってもかまわない。
【0019】
本発明の植物性ろうそく用油脂を用いた植物性ろうそくの製造法は特に限定するものではなく、具体例としてはモールディング法、ディッピング法、ローリング法、プレス法等が挙げられる。また、2つ以上の製造法を併用してもよい。また、油脂の性状に影響を与えない限りにおいて、他の添加剤を添加しても良い。他の添加剤の具体例としては、潤滑油等の鉱油、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油ワックス、木ろう、密ろう、モンタンろう、カルナバろう、米ぬかろう、キャンデリラろう、ライスワックス、ホホバ油、ラノリン等の動植物ろう、ポリエチレンワックス、フィシャートプシーワックス、エステルワックス等の合成ワックス、酸化パラフィンワックス、酸化マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化オレフィン等の酸化ワックス、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、分子量200〜12000程度の直鎖ポリエチレン、メルトインデックス1〜70程度のポリエチレン、メルトインデックス2〜50程度のエチレン−酢酸ビニル供重合物またはこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。尚、原料として用いたポリグリセリン#750、#500、#310、ジグリセリンS(いずれも阪本薬品工業(株)製)の平均重合度は、水酸基価から算出し、各々10、6、4,2である。
【0021】
(実施例1)
グリセリン(阪本薬品工業(株)製)を100gとステアリン酸310.0gを反応容器に入れ、触媒及び窒素気流下、245℃で反応させ、エステル化率33%のグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0022】
(実施例2)
ポリグリセリン#750を100gとミリスチン酸164.2g、ステアリン酸204.5gから成る混合脂肪酸を反応容器に入れ、触媒及び窒素気流下、245℃で反応させ、エステル化率93%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0023】
(実施例3)
ポリグリセリン#500を100gとステアリン酸409.0gを反応容器に入れ、触媒及び窒素気流下、245℃で反応させ、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0024】
(実施例4)
ジグリセリンSを100gとステアリン酸341.9gとオレイン酸169.8gから成る混合脂肪酸を反応容器に入れ、触媒及び窒素気流下、245℃で反応させ、エステル化率75%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0025】
(実施例5)
ポリグリセリン#310を100gとラウリン酸367.7gを反応容器に入れ、触媒及び窒素気流下、245℃で反応させ、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0026】
(比較例1)
ポリグリセリン#750を100gとステアリン酸34.1gを反応容器に入れ、触媒及び窒素気流下、245℃で反応させ、エステル化率8%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0027】
(試験例)
パーム硬化油95重量部に対し、実施例1〜5、比較例1で得られた脂肪酸モノグリセリド又はポリグリセリン脂肪酸エステルを5重量部加え、80℃で十分加温溶解した。その後、直径3cm、高さ5cmの円筒容器に移し、40℃の恒温槽中に放置して油脂の結晶化を観察し、その固化状態を評価した。試験例の評価結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 2004168797
【0029】
表1から明らかなように、本発明のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを添加した植物性ろうそく用油脂は、表面状態が滑らかであり、ひび割れもなく、成型性改善効果に優れていた。
【0030】
【発明の効果】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することにより、植物油を原料として使用しても、均一な状態で使用性が良く、ろうそくを成型する際の固化状態の悪化やひび割れを防止することができ、成型性に優れた植物性ろうそくを製造することができる。

Claims (4)

  1. 植物性ろうそくの成型性を改善する効果を持つグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルからなる成型性改善剤。
  2. 構成脂肪酸が炭素数8〜22の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸から1種又は2種以上選ばれたものよりなるグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることを特徴とする請求項1記載の植物性ろうそくの成型性改善剤。
  3. 請求項1及び2記載のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する植物性ろうそく用油脂。
  4. 請求項3記載の植物性ろうそく用油脂を用いて製造した植物性ろうそく。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007106935A (ja) * 2005-10-14 2007-04-26 Sakamoto Yakuhin Kogyo Co Ltd 油脂用増粘剤
JP2010090382A (ja) * 2008-09-10 2010-04-22 Pegasus Candle Kk ローソク用ワックスとその製造方法及び該ワックスを使用したローソク
JP2010185015A (ja) * 2009-02-12 2010-08-26 Ashibe Kogei:Kk ろうそくおよびろうそくの製造方法

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