JP2004167444A - 沿岸地域の浄化方法 - Google Patents

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  • Investigation Of Foundation Soil And Reinforcement Of Foundation Soil By Compacting Or Drainage (AREA)
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Abstract

【課題】地下水の汲み上げによる地盤沈下の懸念がなく、かつ、油や有機溶剤等の汚染物質の海洋や河川などへの拡散を確実に防ぐことのできる沿岸地域の浄化方法を提供する。
【解決手段】護岸12近傍に注水溝1を設け、この注水溝1に海洋11から汲み上げた海水を注水して護岸12近傍の地下水位Sを上昇させて上記注水溝1近傍の地下水を逆流させるとともに、地下水位Sが最も低くなる、上記注水により形成されるセパレート流線Zと地下水流の自由水位面との境界近傍に複数個の回収井4を設け、この回収井4から上記地下水表面に集められた油分Pを油回収装置6により回収して上記汚染された土壌・地下水を浄化するようにした。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚染物質で汚染された沿岸地域の土壌とこの土壌中を流れる地下水を浄化する方法に関するもので、特に、水よりも比重の軽い油や有機溶剤などにより汚染された沿岸地域を浄化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
海洋や湖、あるいは、大型河川等の沿岸地帯には、油槽所や石油精製工場、大規模工場等が多くあることから、上記工場から漏れ出した油や有機溶剤による土壌及び地下水の汚染が広がっている。特に、水よりも比重の軽い油や有機溶剤などの汚染物質は、降雨などにより地下水に達し、護岸を通過するなどして海洋や湖、あるいは、河川等を汚染する可能性がある。例えば、図4(a),(b)に示すように、上記のような工場の敷地10内から漏れ出した油分Pは、長期的には、陸側から海洋11側へ流れる地下水流の水位(以下、地下水位という)Sに沿って、海洋11に接する護岸12付近に集まることから、上記護岸12付近では、潮汐により上記油分Pの繰り返しの流入出が生じたり、上記油分Pが上記護岸12の隙間等から海洋11に漏洩・流出して、海洋に油膜Qが発生する可能性がある。また、護岸12に使用される護岸鋼矢板等の根入れは、通常、難透水性地盤13までは行わないので、護岸12に沿った上記油分Pが拡散したり、集積した上記油分Pの濃度が高くなると、護岸12の側部や下部から上記油分Pが海洋11へ流出する可能性もある。加えて、浄化機能は当然ながら期待できない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
こういった場合に特に有効な対策は現在のところ見出されていない。
工場閉鎖の場合には、掘削除去やバイオメディエーション、地下水揚水、土壌洗浄等の方法により上記敷地10内の土壌・地下水を浄化することが考えられるが、この場合でも敷地10が広大であるため、相当なコストが必要になる。
一方、操業中であれば掘削除去は困難であるため、地下水揚水、あるいは、遮水壁と覆土による封じ込め等の対策が考えられる。図5は、敷地10全体を難透水性地盤13まで達する遮水壁14(ここでは、護岸12も含む)で囲った場合の概念図である。この場合、工場の操業中であれば、覆土(遮水:アスファルト等)が困難であるため、逆に、降雨により地下水位Sが上昇し、地表面への汚染物質の流出リスクや護岸12からの漏洩リスクが高まることになる。また、遮水壁14を難透水性地盤13まで根入れすることからかなりのコストがかかることになる。
なお、上記遮水壁14を途中で止めることも考えられるが、その場合には、地下水全体の流れは上記図4の場合と変わらないので、護岸12下部からの油分Pが流出する。
【0004】
また、図6に示すように、下流側の護岸12付近に集水井15を設けて揚水する方法も考えられる。この場合には、油分Pの海岸側への流出を避けるとともに、土壌及び地下水の浄化機能も有するが、このような機能を持たせるためには、集水井15の水位を常に海水面から下げる(Δh)必要がある。
しかしながら、上記集水井15は、海洋11に近い位置に設けられるため、海洋11からの海水の流入もあり、揚水量が相当量になることや、地下水位の低下による地盤沈下の問題がある。更には、上記揚水した大量の汚染水の処理や井戸の目詰まり等の課題があるだけでなく、油溜りが護岸12近傍にあるため、海洋11へ油分Pが流出する可能性も残るといった問題点がある。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、地下水の汲み上げによる地盤沈下の懸念がなく、かつ、油や有機溶剤等の汚染物質の海洋や河川などへの拡散を確実に防ぐことのできる沿岸地域の浄化方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の沿岸地域の浄化方法は、汚染物質で汚染された沿岸地域の土壌とこの土壌中を流れる地下水とを浄化する際に、上記沿岸地域に設けられた護岸近傍に注水井または注水溝を設けて、この注水井または注水溝に注水するとともに、上記注水井または注水溝の地下水流上流側で、かつ、上記注水により形成される分離流線と地下水流の自由水位面との境界近傍に回収井または回収溝を設け、この回収井または回収溝から上記境界近傍の地下水表面に集まった、水よりも比重の軽い汚染物質を回収して上記汚染された土壌・地下水を浄化するようにしたことを特徴とするもので、これにより、地下水を汲み上げることなく、上記汚染物質を効率よく回収することができるとともに、上記汚染物質の海洋への拡散を確実に防ぐことが可能となる。また、上記回収井または回収溝と、上記注水井または注水溝との間に残留している上記汚染物質も回収することができるので、上記沿岸地域を確実に浄化することができる。
【0007】
請求項2に記載の沿岸地域の浄化方法は、上記護岸に沿って配列された複数の回収井を設けて、上記汚染物質を回収するようにしたものである。
請求項3に記載の沿岸地域の浄化方法は、上記回収井の上記注水井または注水溝側、あるいは、上記回収井間に、上記注水井または注水溝に対向するように遮水カーテンを設けて、上記回収井近傍に上記汚染物質が集まりやすいようにしたものである。
【0008】
請求項4に記載の沿岸地域の浄化方法は、上記護岸から陸路側に延長する、上記汚染された領域を囲む、上記地下水流の上流側が開放された遮水壁を設けたもので、これにより、汚染物質の拡散を防ぐことができるので、上記汚染物質を確実に回収することが可能となる。
また、請求項5に記載の沿岸地域の浄化方法は、海洋や湖あるいは河川等の涵養源から汲み上げた水を上記注水溝内に注水するようにしたもので、これにより、簡便な方法で上記注水井または注水溝直下の地下水位を上昇させることが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本実施の形態に係わる沿岸地域の浄化方法を示す模式図で、図2は回収井4近傍の詳細を示す図である。各図において、1は海洋11に面する沿岸地域に設けられた護岸12近傍に、上記護岸12に沿って設けられた注水溝、2は海洋11から海水を汲み上げて上記注水溝1に注水する海洋ポンプ、3,3は上記護岸12に垂直な方向に延長する、互いに並行する遮水壁で、この遮水壁3,3と上記護岸12とにより、油分Pで汚染された領域(ここでは、敷地10)を囲むようにしている。4は上記注水溝1の地下水流上流側で、上記注水溝1への注水により形成されるセパレート流線(分離流線)Zと地下水流の自由水位面との境界近傍に設けられた複数の回収井、5は上記回収井4間に、上記護岸12に対向するように設けられた遮水カーテン、6は回収井4内の地下水面上に配置された油回収装置、7は地下水位Sを観測するための観測井である。なお、本例では、上記油回収装置6として、ポンプを備えた装置本体6aが複数個の浮き6bにより水面上に保持された、水面上に浮遊した油分P,pのみを汲み上げて回収する周知の油回収装置を用いている。
また、本例では、上記遮水壁3,3を難透水性地盤13まで根入れせずに、海水面より数m程度下まで延長するに留めている。なお、上記遮水カーテン5は、セパレート流線Zの効果の補助的な役割、すなわち、地下水表面に浮遊する油分Pを上記回収井4近傍に集める役割をするもので、鋼矢板あるいはシート等を、干潮時の海水面に対して2〜3m程度の深さに設置したものが用いられる。
【0010】
次に、本発明による沿岸地域の浄化方法について、油汚染等の浄化方法を例にして説明する。
護岸12付近においては、地下水の流れは陸側から海洋へ流出する流れとなっているので、地下水位Sは常に海洋側の方が低い。そこで、護岸12近傍に所定の深さの注水溝1を形成し、海洋ポンプ2により海洋11から海水を汲み上げて上記注水溝1に注水することにより、護岸12近傍の地下水位Sを上昇させる。これにより、上記注水溝1の地下水流の陸側の水面近傍には、海洋側から陸側へ向かう逆方向の流速ベクトルが発生し、上記地下水流の水面近傍の地下水は陸側に逆流した後、セパレート流線Zに沿って還流し、護岸12の下部を通って海洋11に流入するとともに、このセパレート流線Zと地下水流の自由水位面との境界近傍に設けられた上記回収井4の近傍では、地下水位Sが最も低くなる。
したがって、地下水流の上流側からの油分Pは上記境界付近に設けられた回収井4近傍に集まるとともに、上記回収井4と注水溝1との間に残留していた油分pも、上記地下水の逆流に伴って上記回収井4近傍に集まり、上記回収井4近傍には油溜りMが形成される。したがって、ポンプを備えた本体が水面上にあり、主に、水面上に浮遊した油分P,pのみを回収する上記油回収装置6により、上記回収井4内の上記油分P,pを汲み上げることにより、強制的な揚水を行うことなく、上記油分P,pを効率的に回収することができる。
【0011】
上記回収井4としては、例えば、図3(a),(b)に示すように、地下水流の上流側に網状のフィルタ4Fを備え、3方をコンクリート等で補強したピット状のものを形成することにより、地下水流の上流側からの油分Pを確実に捕獲することができる。この場合には、護岸12側の油分pは、上記回収井4の護岸12側に集まり、徐々に回収井4の下部からの上流側に移動し、上記油分Pとともに、上記ピット内に集められ回収される。
なお、本例では、上記観測井7の水位レベルをh1、回収井4の水位レベルをh2、海洋11の海水面の水位レベルをh3(h1<h2<h3)とし、上記回収井4の水位レベルh2が、h2=(h3−h1)/k+h1(k;1以上の定数)となるように、上記注水溝1への注水量と上記回収井4からの汲上量とを調整している。これにより、確実に、かつ、効率的に上記油分Pを回収することが可能となる。
【0012】
このように、本実施の形態では、沿岸地域に設けられた護岸12近傍に注水溝1を設け、この注水溝1に海洋11から汲み上げた海水を注水して護岸12近傍の地下水位Sを上昇させて上記注水溝1近傍の地下水を逆流させるとともに、地下水位Sが最も低くなる、上記注水により形成されるセパレート流線Zと地下水流の自由水位面との境界近傍に複数個の回収井4を設け、この回収井4から上記地下水表面に集められた油分Pを油回収装置6により回収して上記汚染された土壌・地下水を浄化するようにしたので、地下水を汲み上げることなく、上記油分Pを回収することができる。したがって、地下水位の低下による地盤沈下を懸念することなく、上記油分Pを回収することができるとともに、上記油分Pの海洋への拡散を確実に防ぐことができるので、上記沿岸地域を確実に浄化することができる。
また、本例では、上記遮水壁3,3を難透水性地盤13まで根入する必要がないので、遮水壁3,3の施工も容易であるという利点を有する。
【0013】
なお、上記実施の形態では、油分Pの回収方法について説明したが、回収する汚染物質はこれに限るものではなく、水よりも比重の軽い有機溶剤などについても、上記と同様の方法で回収することが可能である。
また、上記例では、海洋11の沿岸地域に設けられた工場の敷地10の土壌・地下水の浄化方法について説明したが、湖や河川等の沿岸地域であっても、上記と同様にして、油分Pや有機溶剤に汚染された土壌・地下水を浄化することができる。また、注水溝に注水する水としては、海洋や湖あるいは河川等の涵養源から水を汲み上げてこれを使用してもよいし、別の給水源を準備してもよい。
また、上記例では、護岸12近傍に注水溝1を形成して注水したが、上記注水溝1に代えて、1個あるいは複数個の注水井を設けてもよい。
また、上記回収井4に代えて、1本あるいは複数本の回収溝を設け、この回収溝内の地下水表面に集められた油分Pを油回収装置6により回収するようにしてもよい。なお、回収井4の個数や規模、回収溝の長さ・幅等は浄化する敷地10の大きさや地下水流の状態等により適宜決定される。
また、回収井4内の地下水中に給水ポンプを設置し、油分Pを上記地下水の表面の水とともに吸引してもよいが、本例のように、油回収装置6を用いる方が効率がよく、また、処理する汚染水の量も少なくて済む。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、沿岸地域に設けられた護岸近傍に注水井または注水溝を設けて、この注水井または注水溝に注水するとともに、上記注水により形成される分離流線と地下水流の自由水位面との境界近傍に回収井または回収溝を設け、この回収井または回収溝から上記境界近傍の地下水表面に集まった、水よりも比重の軽い汚染物質を回収して上記汚染された土壌・地下水を浄化するようにしたので、地下水を汲み上げることなく、沿岸地域を浄化することができる。したがって、地盤沈下を懸念することなく沿岸地域を浄化することができるとともに、汲み上げる汚染水の量が極めて少ないので、汚染物質の処理も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係わる沿岸地域の浄化方法を示す図である。
【図2】回収井近傍の詳細を示す図である。
【図3】回収井の一構成例を示す図である。
【図4】沿岸地域の汚染物質の拡散状態を説明するための図である。
【図5】汚染領域を遮水壁で囲った場合の汚染物質の拡散状態を示す図である。
【図6】集水井を設けた場合の汚染物質の拡散状態を示す図である。
【符号の説明】
1 注水溝、2 海洋ポンプ、3 遮水壁、4 回収井、5 遮水カーテン、6 油回収装置、7 観測井、10 敷地、11 海洋、12 護岸、13 難透水性地盤、P,p 油分、S 地下水位、Z セパレート流線。

Claims (5)

  1. 汚染物質で汚染された沿岸地域の土壌とこの土壌中を流れる地下水とを浄化する方法であって、上記沿岸地域に設けられた護岸近傍に注水井または注水溝を設けて、この注水井または注水溝に注水するとともに、上記注水井または注水溝の地下水流上流側で、かつ、上記注水により形成される分離流線と地下水流の自由水位面との境界近傍に回収井または回収溝を設け、この回収井または回収溝から上記境界近傍の地下水表面に集まった、水よりも比重の軽い汚染物質を回収して上記汚染された土壌・地下水を浄化するようにしたことを特徴とする沿岸地域の浄化方法。
  2. 上記護岸に沿って配列された複数の回収井を設けたことを特徴とする請求項1に記載の沿岸地域の浄化方法。
  3. 上記回収井の上記注水井または注水溝側、あるいは、上記回収井間に、上記注水井または注水溝に対向するように遮水カーテンを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の沿岸地域の浄化方法。
  4. 上記護岸から陸路側に延長する、上記汚染された領域を囲む、上記地下水流の上流側が開放された遮水壁を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の沿岸地域の浄化方法。
  5. 海洋や河川等の涵養源から汲み上げた水を上記注水溝内に注水するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の沿岸地域の浄化方法。
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