JP2004166691A - Hi7t213遺伝子導入動物および新規なhi7t213タンパク質およびそのdna - Google Patents

Hi7t213遺伝子導入動物および新規なhi7t213タンパク質およびそのdna Download PDF

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Yoshihiko Kaisei
善彦 改正
Takuya Watanabe
卓也 渡辺
Yoshitaka Yasuhara
吉高 安原
Ikuo Mori
郁生 森
Shigehisa Taketomi
滋久 武冨
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Abstract

【課題】HI7T213遺伝子導入非ヒト哺乳動物および新規なHI7T213タンパク質、該タンパク質をコードするDNA並びにそれらの用途を提供する。
【解決手段】白内障などの疾患の病態モデル動物として利用することができ、これらの病態機序の解明および疾患の治療方法の検討、ならびに予防および/または治療薬のスクリーニングを行うことが可能な遺伝子導入非ヒト哺乳動物、また該遺伝子導入非ヒト哺乳動物を用いたスクリーニング法ならびにHI7T213タンパク質、形質転換体によるHI7T213タンパク質の製造方法、その抗体、該タンパク質をコードするDNAを提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、HI7T213遺伝子導入非ヒト哺乳動物、および新規なHI7T213タンパク質、該タンパク質をコードするDNA並びにそれらの用途等に関するものである。
生体のホメオスタシスの維持、生殖、個体の発達、代謝、成長、神経系、循環器系、免疫系、消化器系、代謝系の調節、感覚受容などの重要な機能調節は、様々なホルモンや神経伝達物質のような内在性因子あるいは光や匂いなどの感覚刺激をこれらに対して生体が備えている細胞膜に存在する特異的なレセプターを介して細胞が受容し、それに応じた反応をすることによって行われている。このような機能調節に与るホルモンや神経伝達物質のレセプターの多くはguanine nucleotide-binding protein(以下、Gタンパク質と略称する場合がある)と共役しており、このGタンパク質の活性化によって細胞内にシグナルを伝達して様々な機能を発現させることを特徴とする。また、これらのレセプタータンパク質は共通して7個の膜貫通領域を有する。これらのことからこうしたレセプターはGタンパク質共役型レセプターあるいは7回膜貫通型レセプターと総称される。このように生体機能の調節には様々なホルモンや神経伝達物質およびそれに対するレセプタータンパク質が存在して相互作用し、重要な役割を果たしていることがわかっているが、未知の作用物質(ホルモンや神経伝達物質など)およびそれに対するレセプターが存在するかどうかについてはいまだ不明なことが多い。
近年、ヒトゲノムDNAあるいは各種ヒト組織由来のcDNAのランダムな配列決定による配列情報の蓄積および遺伝子解析技術の急速な進歩によってヒトの遺伝子が加速度的に解明されてきている。それにともない、機能未知のタンパク質をコードすると予想される多くの遺伝子の存在が明らかになっている。Gタンパク質共役型レセプターは、7個の膜貫通領域を有するのみでなく、その核酸あるいはアミノ酸に多くの共通配列が存在するためそのようなタンパク質の中から明確にGタンパク質共役型レセプターとして区分することができる。一方でこうした構造の類似性を利用したポリメラーゼ・チェーン・リアクション(Polymerase Chain Reaction:以下、PCRと略称する)法によってもこうしたGタンパク質共役型レセプター遺伝子が得られている。このようにしてこれまでに得られたGタンパク質共役型レセプターのうちには既知のレセプターとの構造の相同性が高いサブタイプであって容易にそのリガンドを予測することが可能な場合もあるが、ほとんどの場合その内在性リガンドは予測不能であり、これらのレセプターは対応するリガンドが見いだされていない。このことからこれらのレセプターはオーファンレセプターと呼ばれている。このようなオーファンレセプターの未同定の内因性リガンドは、リガンドが知られていなかったために十分な解析がなされていなかった生物現象に関与している可能性がある。そして、このようなリガンドが重要な生理作用や病態と関連している場合には、そのレセプターアゴニストあるいはアンタゴニストの開発が革新的な医薬品の創製に結びつくことが期待される(Stadel, J. et al.、TiPS、18巻、430-437頁、1997年、Marchese, A.
et al.、TiPS、20巻、370-375頁、1999年、Civelli, O. et al.、Brain Res.、848巻、63-65頁、1999年)。しかし、これまで実際にオーファンGタンパク質共役型レセプターのリガンドを同定した例はそれほど多くない。
最近、幾つかのグループによってこうしたオーファンレセプターのリガンド探索の試みがなされ、新たな生理活性ペプチドであるリガンドの単離・構造決定が報告されている。ReinsheidらおよびMeunierらは独立に、動物細胞にオーファンGタンパク質共役型レセプターLC132あるいはORL1をコードするcDNAを導入してレセプターを発現させ、その応答を指標としてorphanin FQあるいはnociceptinと名付けられた新規ペプチドをブタ脳あるいはラット脳の抽出物より単離し、配列を決定した(Reinsheid, R. K. et al.、Science、270巻、792-794頁、1995年、Meunier, J.-C. et al.、Nature、377巻、532-535頁、1995年)。このペプチドは痛覚に関与していることが報告されたが、さらに、レセプターのノックアウトマウスの研究により記憶に関与していることが明らかにされた(Manabe, T. et al.、Nature、394巻、577-581頁、1998年)。
その後これまでに上記と同様な方法によりPrRP(prolactin releasing peptide)、orexin、apelin、ghrelinおよびGALP(galanin-like peptide)などの新規ペプチドがオーファンGタンパク質共役型レセプターのリガンドとして単離された(Hinuma, S. et al.、Nature、393巻、272-276頁、1998年、Sakurai, T. et al.、Cell、92巻、573-585頁、1998年、Tatemoto, K. et al.、Bichem. Biophys. Res. Commun.、251巻、471-476頁、1998年、Kojima, M. et al.、Nature、402巻、656-660頁、1999年、Ohtaki, T. et al.、J. Biol. Chem.、274巻、37041-37045頁、1999年)。
一方、これまで明らかでなかった生理活性ペプチドのレセプターが同様な方法によって解明される場合もある。腸管収縮に関与するmotilinのレセプターがGPR38であることが明らかにされた(Feighner, S. D. et al.、Science、284巻、2184-2188頁、1999年)ほか、SLC−1がメラニン凝集ホルモン(MCH)のレセプターとして同定され(Chambers, J. et al.、Nature、400巻、261-265頁、1999年、Saito, Y. et al.、Nature、400巻、265-269頁、1999年、Shimomura, Y. et al.、Biochem. Biophys. Res. Commun.、261巻、622-626頁、1999年、Lembo, P. M. C. et al.、Nature Cell Biol.、1巻、267-271頁、1999年、Bachner, D. et al.、FEBS Lett.、457巻、522-524頁、1999年)、またGPR14(SENR)がurotensin IIのレセプターであることが報告された(Ames, R. S. et al.、Nature、401巻、282-286頁、1999年、Mori, M. et al.、Biochem. Biophys. Res. Commun.、265巻、123-129頁、1999年、Nothacker, H.-P. et al.、Nature Cell Biol.、1巻、383-385頁、1999年、Liu, Q. et al.、Biochem. Biophys. Res. Commun.、266巻、174-178頁、1999年)。MCHはそのノックアウトマウスが羸痩の表現型を示すことから肥満に関与することが示されていたが(Shimada, M. et al.、Nature、396巻、670-674頁、1998年)、そのレセプターが明らかにされたことにより抗肥満薬としての可能性を有するレセプターアンタゴニストの探索が可能となった。また、urotensin IIはサルに静脈内投与することによって心虚血を惹起することから心循環系に強力な作用を示すことも報告されている(Ames, R. S. et al.、Nature、401巻、282-286頁、1999年)。
このように、オーファンレセプターおよびそのリガンドは新たな生理作用に関与する場合が多く、その解明は新たな医薬品開発に結びつくことが期待される。しかし、オーファンレセプターのリガンド探索においては多くの困難さが伴い、これまでに数多くのオーファンレセプターの存在が明らかにされながらそのリガンドが明らかにされたレセプターはごく一部に過ぎない。
オーファンレセプターの1つとして、hHI7T213が知られている(配列番号:1および配列番号:3;特開2000−166576号公報(特許文献1))。また、オーファンレセプターとしてMrgX3(ヒト型)、MrgA4(マウス型)、MrgA6(マウス型)が知られており(Nature Neuroscience, 5, 201-209 (2002)(非特許文献1)、Cell、106、619―632(2001)(非特許文献2))、このMrgX3はhHI7T213(配列番号:1)と同一のアミノ酸配列を有している。さらに、hHI7T213はガン遺伝子masともアミノ酸レベルで約30%の相同性を有している。
特開2000−166576号 Nature Neuroscience, 5, 201-209 (2002) Cell、106、619−632(2001)
新たな遺伝子導入(トランスジェニック)動物は、いろいろな疾患の予防や治療に役立つ新たな医薬品の開発を可能にする。
したがって、本発明の分野では、HI7T213遺伝子導入非ヒト動物(以下、トランスジェニック動物と称することもある)を見出し、がん、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏などの疾患モデル動物を大量に生産する方法の開発が望まれていた。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、外来性のHI7T213を発現させた新規なトランスジェニックマウスを作製したところ、白内障、粗毛、皮膚発疹、落屑などの表現型を示すことを見出した。さらに、本発明者らは、公知のMrgA4と一部のアミノ酸が異なる新規なマウス由来HI7T213(配列番号:5)をそれぞれコードする新規なcDANをクローニングすることに成功した。本発明者は、これらの知見を基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は
[1]外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子を組み込んだDNAを有する非ヒト哺乳動物またはその(生体の)一部、
[2]非ヒト哺乳動物がラットである上記[1]記載の動物またはその一部、
[3]外来性HI7T213遺伝子が配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を有するHI7T213をコードする遺伝子である上記[1]記載の動物またはその一部、
[4]外来性HI7T213遺伝子が配列番号:3で表されるアミノ酸配列からなるヒト由来HI7T213をコードする遺伝子である上記[1]記載の動物またはその一部、
[5](1)白内障を発症している、
(2)粗毛を発症している、
(3)一過性の皮膚発疹または落屑が認められる、
(4)眼球において、水晶体線維の融解/変性が認められる、
(5)眼球において水晶体線維の異常が認められる、
(6)水晶体前極での水晶体上皮の重層化がみられる、
(7)腎臓で好塩基性尿細管が増加している、
(8)腎臓で細胞障害が起きている、
(9)尿細管細胞の増殖促進活性が高い、
(10)若齢期の皮膚において、表皮肥厚と錯角化が認められる、
(11)増殖関連抗原であるPCNA陽性細胞が表皮基底層および毛穴付近に認められる、
(12)ケラチン6遺伝子発現細胞の増加またはPCNA陽性細胞の増加が認められる、
(13)細胞増殖促進活性が亢進している、
(14)ケラチン14、ケラチン10またはロリクリンの発現亢進を伴う表皮分化異常が認められる、
(15)ケラチン6陽性部位において表皮自由神経終末が豊富である、
(16)表皮異常部位での神経栄養因子群の発現が増強している、および
(17)増殖促進活性に伴う分化異常、
から選ばれる少なくとも一つの表現型を示す上記[1]から[4]記載の動物またはその一部、
[6]上記[1]から[4]のいずれかに記載の動物またはその一部に被験物質を適用し、HI7T213アゴニスト活性またはHI7T213アンタゴニスト活性を検定することを特徴とするHI7T213アゴニストまたはHI7T213アンタゴニストのスクリーニング方法、
[7]上記[6]記載のスクリーニング方法により得られうるHI7T213アゴニスト、
[8]上記[6]記載のスクリーニング方法により得られうるHI7T213アゴニストを含有してなる創傷、脊髄損傷または無痛覚症の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤、
[9]上記[1]から[5]のいずれかに記載の動物またはその一部に被験物質を適用し、上記[5]記載の表現型またはがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛もしくは痛覚過敏の改善効果を検定することを特徴とする、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療のために用いられる物質のスクリーニング方法、
[10]上記[9]記載のスクリーニング方法を用いて得られる、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療のために用いられる物質、
[11]上記[9]記載のスクリーニング方法を用いて得られる物質を含有してなる、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療用医薬、
[12]哺乳動物に対して、上記[6]記載のスクリーニング方法を用いて得られるHI7T213アゴニストの有効量を投与することを特徴とする創傷、脊髄損傷または無痛覚症の予防および/または治療法、あるいは腎再生方法、
[13]創傷、脊髄損傷または無痛覚症の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤を製造するための、上記[6]記載のスクリーニング方法を用いて得られるHI7T213アゴニストの使用、
[14]創傷、脊髄損傷または無痛覚症の予防および/または治療、あるいは腎再生のために用いられる物質をスクリーニングするための上記[1]から[4]のいずれかに記載の動物またはその一部の使用、
[15]哺乳動物に対して、上記[9]記載のスクリーニング方法を用いて得られる物質の有効量を投与することを特徴とするがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療法、
[16]がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤を製造するための、上記[9]記載のスクリーニング方法を用いて得られる物質の使用、
[17]がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療のために用いられる物質をスクリーニングするための上記[1]から[5]のいずれかに記載の動物またはその一部の使用、
[18]外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子を導入した受精卵、
[19]外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子を含有し、非ヒト哺乳動物において該遺伝子を発現し得るベクター、
[20]外来性HI7T213遺伝子が配列番号:3で表されるアミノ酸配列からなるヒト由来HI7T213をコードする遺伝子である上記[19]記載のベクター、
[21]さらにニワトリアクチンプロモーターを含むCAGプロモーター、ウサギグロビンポリA付加シグナルを含む領域、SV40複製開始領域、アンピシリン耐性遺伝子およびネオマイシン耐性遺伝子を含有する上記[19]記載のベクター、
[22]pCAG213−1で表示される上記[19]記載のベクター、
[23]上記[19]記載のベクターで形質転換された形質転換体、
[24]形質転換体が大腸菌JM109/pCAG213−1(FERM BP−8207)である上記[23]記載の形質転換体、
[25]配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とするGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩、
[26]配列番号:5で表されるアミノ酸配列からなる上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩、
[27]上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質の部分ペプチドまたはその塩、
[28]上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
[29]DNAである上記[28]記載のポリヌクレオチド、
[30]配列番号:6で表される塩基配列からなるDNA、
[31]上記[28]記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
[32]上記[31]記載の組換えベクターで形質転換させた形質転換体、
[33]上記[32]記載の形質転換体を培養し、上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドを生成せしめることを特徴とする上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の製造法、
[34]上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる医薬、
[35]上記[28]記載のポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
[36]配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩を含有してなる創傷、脊髄損傷または無痛覚症の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤、
[37]配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる創傷、脊髄損傷または無痛覚症の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤、
[38]配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる創傷、脊髄損傷、無痛覚症、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の診断剤、
[39]上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
[40]上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質のシグナル伝達を不活性化する中和抗体である上記[39]記載の抗体、
[41]上記[39]記載の抗体を含有してなる医薬、
[42]配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなるがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤、
[43]配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる創傷、脊髄損傷、無痛覚症、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の診断剤、
[44]上記[28]記載のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチド、
[45]上記[44]記載のポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
[46]配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチドを含有してなるがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤、
[47]上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とするリガンドと該Gタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
[48]上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とするリガンドと該Gタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
[49]上記[47]記載のスクリーニング方法または上記[48]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、リガンドと該Gタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、
[50]上記[49]記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
[51]配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドまたはアゴニストを含有してなる創傷、脊髄損傷または無痛覚症の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤、
[52]配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニストを含有してなるがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤、
[53]上記[29]記載のDNAを用いることを特徴とする上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる物質のスクリーニング方法、
[54]上記[29]記載のDNAを含有することを特徴とする上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる物質のスクリーニング用キット、
[55]上記[53]記載のスクリーニング方法または上記[54]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、上記[25]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる物質、
[56]配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる物質を含有してなる創傷、脊髄損傷または無痛覚症の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤、
[57]配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる物質を含有してなるがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤、
[58] 哺乳動物に対して、(i)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩、(ii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、(iii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドまたはアゴニスト、または(iv)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の発現量を増加させる物質の有効量を投与することを特徴とする創傷、脊髄損傷または無痛覚症の予防および/または治療法、あるいは腎再生方法、
[59] 哺乳動物に対して、(i)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、(ii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチド、(iii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または(iv)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の発現量を減少させる物質の有効量を投与することを特徴とするがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療法、
[60] 創傷、脊髄損傷または無痛覚症の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤を製造するための、(i)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩、(ii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、(iii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドまたはアゴニスト、または(iv)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の発現量を増加させる物質の使用、
[61] がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤を製造するための、(i)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、(ii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチド、(iii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または(iv)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の発現量を減少させる物質の使用、
などを提供するものである。
本発明の遺伝子導入非ヒト哺乳動物は、白内障などの疾患の予防薬あるいは治療薬の評価、HI7T213遺伝子異常患者の遺伝子治療用実験などに用いることができ、本発明の遺伝子導入非ヒト哺乳動物から採取した細胞などを培養し、HI7T213阻害薬の評価に用いることができる。
本発明の遺伝子導入動物は、例えば、非ヒト哺乳動物の受精卵や、未受精卵、精子およびその前駆細胞(始原生殖細胞、卵原細胞、卵母細胞、卵細胞、精原細胞、精母細胞、精細胞等)などに、好ましくは受精卵の胚発生の初期段階(さらに好ましくは8細胞期以前)において、リン酸カルシウム共沈殿法、電気穿孔(エレクトロポレーション)法、リポフェクション法、凝集法、顕微注入(マイクロインジェクション)法、遺伝子銃(パーティクルガン)法、DEAE−デキストラン法などの遺伝子導入法によって、目的とする外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子を目的とする細胞などに導入することにより作出される。また、該遺伝子導入法により、非ヒト哺乳動物の体細胞、組織、臓器などに目的とするDNAを導入し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、この細胞を上述の胚(もしくは生殖)細胞と公知の細胞融合法を用いて融合させることにより遺伝子導入動物を作出することもできる。あるいは、ノックアウト動物を作製する場合と同様に、非ヒト哺乳動物の胚性幹細胞(ES細胞)に上記の遺伝子導入法を用いて目的とするDNAを導入し、予め該DNAが安定に組み込まれたクローンを選択した後に、該ES細胞を胚盤胞に注入するかあるいはES細胞塊と8細胞期胚とを凝集させてキメラマウスを作製し、生殖系列に導入遺伝子が伝達されたものを選択することによっても遺伝子導入動物を得ることが可能である。
また、このようにして作製された遺伝子導入動物の(生体の)一部(例えば、(i)外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子を組み込んだDNAを有する細胞、組織、臓器など、(ii)これらに由来する細胞または組織を培養し、必要に応じ、継代したものなど、(iii)該遺伝子導入動物から単離し得る各種タンパク質またはDNAなど)も、本発明の「外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子を組み込んだDNAを有する非ヒト哺乳動物の一部」として、本発明の「外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子を組み込んだDNAを有する非ヒト哺乳動物」と同様の目的に用いることが出来る。
遺伝子導入動物の一部である組織としては、特に限定されないが、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、脾臓、肺、副腎、精巣、卵巣、眼球などが好ましい。
遺伝子導入動物の一部である細胞としては、特に限定されないが、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、脾臓、肺、副腎、精巣、卵巣、眼球などの細胞が好ましい。
本発明で対象とし得る「非ヒト哺乳動物」としては、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなどが挙げられる。好ましくは、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウスまたはラットであり、なかでも齧歯目(Rodentia)が好ましく、とりわけラット(Wistar、SDなど)、特にWistar系統のラットが疾患モデル動物として最も好ましい対象動物である。他に鳥類動物として、ニワトリなども本発明で対象する「非ヒト哺乳動物」と同様の目的に用いることが出来る。
対象となる非ヒト哺乳動物に導入する外来性HI7T213遺伝子としては、例えば、ヒト、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなどの哺乳動物由来のHI7T213遺伝子を用いることができる。
外来性HI7T213遺伝子とは、遺伝子導入対象動物が有する内在性の遺伝子とは異なる遺伝子であり、具体的には前記の哺乳動物から単離・精製したHI7T213遺伝子または合成したHI7T213遺伝子などが用いられる。
本発明の外来性HI7T213遺伝子の変異遺伝子としては、本発明のDNAに変異(例えば、突然変異、部位特異的突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じた遺伝子が挙げられる。より具体的には、該塩基の付加、欠損、他の塩基への置換の結果、HI7T213を構成するアミノ酸配列において、1ないし30個、好ましくは1ないし10個、さらに好ましくは1ないし5個、より好ましくは1または2個のアミノ酸に置換、付加または欠損が生じるように変異させることが好ましく、HI7T213の機能を失わない変異であれば何れの変異であってもよい。
具体的には、外来性HI7T213遺伝子としては、例えば、後述するHI7T213をコードする遺伝子が用いられるが、より具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するヒトHI7T213をコードするDNA(配列番号:2)、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するヒトHI7T213をコードするDNA(配列番号:4)、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有するマウスHI7T213をコードするDNA(配列番号:6)、配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するマウスHI7T213をコードするDNA(配列番号:8)などが用いられる。
本発明における外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子(以下、単にHI7T213遺伝子と称することもある)は、導入または発現の対象とする非ヒト哺乳動物と同種あるいは異種、どちらの哺乳動物由来のものであってもよいが、異種の哺乳動物由来のものであることが好ましい。該遺伝子を対象動物に導入するにあたっては、当該遺伝子を対象となる動物の細胞で発現させうるプロモーターの下流に連結した遺伝子コンストラクト(例、ベクターなど)として用いるのが一般に有利である。具体的には、ヒトのHI7T213遺伝子を導入させる場合、ヒトHI7T213遺伝子と相同性が高いHI7T213遺伝子を有する各種哺乳動物(ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど(好ましくはラットなど))に由来し、ヒトのHI7T213遺伝子を発現させうる各種プロモーターの下流に、該遺伝子を連結したベクターを、対象となる非ヒト哺乳動物の受精卵(例えばラット受精卵)へマイクロインジェクションすることによって、目的とするヒトHI7T213遺伝子を高発現する遺伝子導入非ヒト哺乳動物を作出できる。
HI7T213遺伝子の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウイルスなどのレトロウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられ、特に大腸菌由来のプラスミドが好ましい。
外来性HI7T213遺伝子の遺伝子発現調節を行うプロモーターとしては、例えば、ウイルス(サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルスなど)に由来する遺伝子のプロモーター、各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)および鳥類(ニワトリなど)に由来する遺伝子(例えば、アルブミン、エンドセリン、オステオカルシン、筋クレアチンキナーゼ、I型およびII型コラーゲン、サイクリックAMP依存タンパクキナーゼβIサブユニット、心房ナトリウム利尿性因子、ドーパミンβ−水酸化酵素、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロテイナーゼ1組織インヒビター、平滑筋αアクチン、ポリペプチド鎖伸長因子1α(EF1−α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン塩基性タンパク質、血清アミロイドPコンポーネント、レニンなど)のプロモーターなどが挙げられ、なかでもニワトリアクチンプロモーターを含むCAGプロモーターなどを用いることができる。
さらに好ましくは、目的とする疾患モデルに応じて、標的組織で外来性HI7T213遺伝子を特異的もしくは高発現させ得るプロモーター(例:肝臓で高発現可能な血清アミロイドPコンポーネント(SAP)、アルブミン、トランスフェリン、アンチトロンビンIII、α1−アンチトリプシンなどの遺伝子プロモーター;心臓で高発現可能なαおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2などの遺伝子プロモーター;腎臓で高発現可能なPTH/PTHrPレセプターなどの遺伝子プロモーター;副腎で高発現可能なACTHレセプターなどの遺伝子プロモーター;消化管で高発現可能な脂肪酸結合タンパク質などの遺伝子プロモーター;脳で高発現可能なミエリン塩基性タンパク質、グリア線維性酸性タンパク質などの遺伝子プロモーター等)を適宜選択することができる。例えば、本発明の遺伝子導入動物が腎疾患モデルである場合、腎臓で高発現可能なプロモーターを用いることが好ましい。
上記ベクターは、遺伝子導入哺乳動物において、目的とするmRNAの転写を終結する配列(ポリA、一般にターミネーターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来、各種哺乳動物および鳥類由来の各遺伝子の配列を用いて遺伝子発現を操作することが出来る。好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネーターなどが用いられる。その他、目的の遺伝子をさらに高発現させる目的で、各遺伝子のスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核遺伝子のイントロンの一部を、プロモーター領域の5'上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3'下流に連結することも目的により可能である。
また、上記のベクターは、導入遺伝子が安定に組み込まれたクローンを選択するための選択マーカー遺伝子(例:ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性などの薬剤耐性遺伝子)をさらに含むことが好ましい。さらに、相同組換えにより宿主染色体の特定の部位に導入遺伝子を組み込むこと(即ち、ノックイン動物の作製)を意図する場合には、上記のベクターは、ランダムな挿入を排除するために、標的部位と相同なDNA配列の外側に単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ遺伝子やジフテリア毒素遺伝子をネガティブ選択マーカー遺伝子としてさらに含むことが好ましい。これらの実施態様については後で詳述する。
HI7T213の翻訳領域は、ヒトや各種非ヒト哺乳動物(ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)の肝臓、腎臓、繊維芽細胞などに由来するDNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーに由来するゲノムDNAの全てあるいは一部を原料として用い、あるいはヒトや各種非ヒト哺乳動物の肝臓、腎臓、繊維芽細胞に由来するRNAから公知の方法により調製された相補DNAを原料として用いて、取得することが出来る。また、上記の細胞あるいは組織などから得られたHI7T213の翻訳領域を用いて、点突然変異誘発法などにより変異した翻訳領域を作製することもできる。これらは何れも遺伝子導入動物に利用可能な材料である。
以上の翻訳領域は、導入動物において発現しうる遺伝子コンストラクト(例、ベクターなど)として前記のプロモーターの下流(好ましくは、転写終結部位の上流)に連結させる通常の遺伝子工学的手法により、HI7T213遺伝子を組み込んだDNAを作製することができる。
具体的には、ニワトリアクチンプロモーターを含むCAGプロモーター、ウサギグロビンポリA付加シグナルを含む領域、SV40複製開始領域、アンピシリン耐性遺伝子およびネオマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドpCXN2に、HI7T213遺伝子を挿入したpCAG213−1(後述する実施例1)などが用いられる。
好ましい一実施態様においては、上記のようにして得られる外来性HI7T213をコードするDNAを含む発現ベクターは、マイクロインジェクション法により対象となる非ヒト哺乳動物の初期胚に導入される。
対象非ヒト哺乳動物の初期胚は、同種の非ヒト哺乳動物の雌雄を交配させて得られる体内受精卵を採取するか、あるいは同種の非ヒト哺乳動物の雌雄からそれぞれ採取した卵と精子を体外受精させることにより得ることができる。
用いる非ヒト哺乳動物の齢や飼育条件等は動物種によってそれぞれ異なるが、例えばマウス(好ましくはC57BL/6J(B6)などの近交系マウス、B6と他の近交系とのF1など)を用いる場合は、雌が約4〜約6週齢、雄が約2〜約8月齢程度のものが好ましく、また、約12時間明期条件(例えば7:00−19:00)で約1週間飼育したものが好ましい。
体内受精は自然交配によってもよいが、性周期の調節と1個体から多数の初期胚を得ることを目的として、雌非ヒト哺乳動物に性腺刺激ホルモンを投与して過剰排卵を誘起した後、雄非ヒト哺乳動物と交配させる方法が好ましい。雌非ヒト哺乳動物の排卵誘発法としては、例えば初めに卵胞刺激ホルモン(妊馬血清性性腺刺激ホルモン、一般にPMSGと略する)、次いで黄体形成ホルモン(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、一般にhCGと略する)を、例えば腹腔内注射などにより投与する方法が好ましいが、好ましいホルモンの投与量、投与間隔は非ヒト哺乳動物の種類によりそれぞれ異なる。例えば、非ヒト哺乳動物がマウス(好ましくはC57BL/6J(B6)などの近交系マウス、B6と他の近交系とのF1など)の場合は、通常、卵胞刺激ホルモン投与後、約48時間後に黄体形成ホルモンを投与し、直ちに雄マウスと交配させることにより受精卵を得る方法が好ましく、卵胞刺激ホルモンの投与量は約20〜約50IU/個体、好ましくは約30IU/個体、黄体形成ホルモンの投与量は約0〜約10IU/個体、好ましくは約5IU/個体である。
一定時間経過後、膣栓の検査等により交配を確認した雌非ヒト哺乳動物の腹腔を開き、卵管から受精卵を取り出して胚培養用培地(例:M16培地、修正Whitten培地、BWW培地、M2培地、WM−HEPES培地、BWW−HEPES培地等)中で洗って卵丘細胞を除き、微小滴培養法等により5%炭酸ガス/95%大気下でDNA顕微注入まで培養する。直ちに顕微注入を行わない場合、採取した受精卵を緩慢法または超急速法等で凍結保存することも可能である。
一方、体外受精の場合は、採卵用雌非ヒト哺乳動物(体内受精の場合と同様のものが好ましく用いられる)に上記と同様に卵胞刺激ホルモンおよび黄体形成ホルモンを投与して排卵を誘発させた後、卵子を採取して受精用培地(例:TYH培地中で体外受精時まで微小滴培養法等により5%炭酸ガス/95%大気下で培養する。他方、同種の雄非ヒト哺乳動物(体内受精の場合と同様のものが好ましく用いられる)から精巣上体尾部を取り出し、精子塊を採取して受精用培地中で前培養する。前培養終了後の精子を卵子を含む受精用培地に添加し、微小滴培養法等により5%炭酸ガス/95%大気下で培養した後、2個の前核を有する受精卵を顕微鏡下で選抜する。直ちにDNAの顕微注入を行わない場合は、得られた受精卵を緩慢法または超急速法等で凍結保存することも可能である。
受精卵へのDNAの顕微注入は、マイクロマニピュレーター等の公知の装置を用いて常法に従って実施することができる。簡潔に言えば、胚培養用培地の微小滴中に入れた受精卵をホールディングピペットで吸引して固定し、インジェクションピペットを用いてDNA溶液を雄性もしくは雌性前核、好ましくは雄性前核内に直接注入する。導入遺伝子はCsCl密度勾配超遠心等で高度に精製したものを用いることが好ましい。また、導入遺伝子は制限酵素を用いてベクター部分を切断し、直鎖状にしておくことが好ましい。
DNA導入後の受精卵は胚培養用培地中で微小滴培養法等により5%炭酸ガス/95%大気下で1細胞期から胚盤胞期まで培養した後、偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動物の卵管または子宮内に移植される。受胚用雌非ヒト哺乳動物は移植される初期胚が由来する動物と同種のものであればよく、例えば、マウス初期胚を移植する場合は、ICR系の雌マウス(好ましくは約8〜約10週齢)などが好ましく用いられる。受胚用雌非ヒト哺乳動物を偽妊娠状態にする方法としては、例えば、同種の精管切除(結紮)雄非ヒト哺乳動物(例えば、マウスの場合、ICR系の雄マウス(好ましくは約2月齢以上))と交配させて、膣栓の存在が確認されたものを選択する方法が知られている。
受胚用雌は自然排卵のものを用いてもよいし、あるいは精管切除(結紮)雄との交配に先立って、黄体形成ホルモン放出ホルモン(一般にLHRHと略する)もしくはその類縁体を投与し、受精能を誘起させたものを用いてもよい。LHRH類縁体としては、例えば、[3,5-DiI-Tyr5]-LH-RH、[Gln8]-LH-RH、[D-Ala6]-LH-RH、[des-Gly10]-LH-RH、[D-His(Bzl)6]-LH-RHおよびそれらのEthylamideなどが挙げられる。LHRHもしくはその類縁体の投与量、ならびにその投与後に雄非ヒト哺乳動物と交配させる時期は、非ヒト哺乳動物の種類によりそれぞれ異なる。例えば、非ヒト哺乳動物がマウス(好ましくはICR系のマウスなど)の場合には、通常、LHRHもしくはその類縁体を投与した後、約4日目に雄マウスと交配させることが好ましく、LHRHあるいはその類縁体の投与量は、通常、約10〜60μg/個体、好ましくは約40μg/個体である。
通常、移植される初期胚が桑実胚期以後の場合は受胚用雌の子宮に、それより前(例えば、1細胞期から8細胞期胚)であれば卵管に胚移植される。受胚用雌は、移植胚の発生段階に応じて偽妊娠からある日数が経過したものが適宜使用される。例えばマウスの場合、2細胞期胚を移植するには偽妊娠後約0.5日の雌マウスが、胚盤胞期胚を移植するには偽妊娠後約2.5日の雌マウスが好ましい。受胚用雌を麻酔(好ましくはAvertin等が使用される)後、切開して卵巣を引き出し、胚培養用培地に懸濁した初期胚(約5〜約10個)を胚移植用ピペットを用いて、卵管腹腔口もしくは子宮角の卵管接合部付近に注入する。
移植胚が首尾よく着床し受胚雌が妊娠すれば、自然分娩もしくは帝王切開により仔非ヒト哺乳動物が得られる。自然分娩した受胚雌にはそのまま哺乳を継続させればよく、帝王切開により出産した場合は、産仔は別途用意した哺乳用雌(例えばマウスの場合、通常に交配・分娩した雌マウス(好ましくはICR系の雌マウス等))に哺乳させることができる。
受精卵細胞段階における外来性HI7T213をコードする遺伝子の導入は、導入遺伝子が対象非ヒト哺乳動物の生殖系列細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。導入遺伝子が染色体DNAに組み込まれているか否かは、例えば、産仔の尾部より分離抽出した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーションまたはPCR法によりスクリーニングすることにより検定することができる。上記のようにして得られる仔非ヒト哺乳動物(F0)の生殖系列細胞において外来性HI7T213をコードする遺伝子が存在することは、その後代(F1)の動物全てが、その生殖系列細胞および体細胞のすべてに外来性HI7T213をコードする遺伝子が存在することを意味する。
通常、F0動物は相同染色体の一方にのみ導入遺伝子を有するヘテロ接合体として得られる。また、個々のF0個体は相同組換えによらない限り異なる染色体上にランダムに挿入される。相同染色体の両方に外来性HI7T213をコードする遺伝子を有するホモ接合体を得るためには、F0動物と非トランスジェニック動物とを交雑してF1動物を作出し、相同染色体の一方にのみ導入遺伝子を有するヘテロ接合体の兄妹同士を交雑すればよい。1遺伝子座にのみ導入遺伝子が組み込まれていれば、得られるF2動物の1/4がホモ接合体となる。
別の好ましい一実施態様においては、外来性HI7T213をコードする遺伝子を含む発現ベクターは、エレクトロポレーション法等の公知の遺伝子導入法により対象となる非ヒト哺乳動物の胚性幹細胞(ES細胞)に導入される。
ES細胞は胚盤胞期の受精卵の内部細胞塊(ICM)に由来し、インビトロで未分化状態を保ったまま培養維持できる細胞をいう。ICMの細胞は将来、胚本体を形成する細胞であり、生殖細胞を含むすべての組織の基になる幹細胞である。ES細胞としては、既に樹立された細胞株ものを用いてもよく、また、EvansとKaufmanの方法(Nature、第292巻、154頁、1981年)に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスES細胞の場合、現在、一般的には129系マウス由来のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で、例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)から樹立されるES細胞なども良好に用いることができる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これ由来のES細胞は疾患モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスと戻し交雑することでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
ES細胞の調製は、例えば以下のようにして行うことができる。交配後の雌非ヒト哺乳動物[例えばマウス(好ましくはC57BL/6J(B6)などの近交系マウス、B6と他の近交系とのF1など)を用いる場合は、約2月齢以上の雄マウスと交配させた約8〜約10週齢程度の雌マウス(妊娠約3.5日)が好ましく用いられる]の子宮から胚盤胞期胚を採取して(あるいは桑実胚期以前の初期胚を卵管から採取した後、胚培養用培地中で上記と同様にして胚盤胞期まで培養してもよい)、適当なフィーダー細胞(例えばマウスの場合、マウス胎仔から調製される初代繊維芽細胞や公知のSTO繊維芽細胞株等)層上で培養すると、胚盤胞の一部の細胞が集合して将来胚に分化するICMを形成する。この内部細胞塊をトリプシン処理して単細胞を解離させ、適切な細胞密度を保ち、培地交換を行いながら、解離と継代を繰り返すことによりES細胞が得られる。
ES細胞は雌雄いずれを用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行うことが望ましい。ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行うことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとして、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、細胞株樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞への遺伝子導入の後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られるES細胞株は、未分化幹細胞の性質を維持するために注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上で、分化抑制因子として知られるLIF(1〜10,000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス/95%空気または5%酸素/5%炭酸ガス/90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001〜0.5%トリプシン/0.1〜5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1〜3日毎に行うが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, Nature、第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、Journal of embryology and experimental morphology、第87巻、27頁、1985年〕、本発明の外来性HI7T213をコードする遺伝子を導入されたES細胞を分化させて得られる外来性HI7T213発現非ヒト哺乳動物細胞は、インビトロにおける外来性HI7T213の細胞生物学的検討において有用である。
ES細胞への遺伝子導入には、リン酸カルシウム共沈殿法、電気穿孔(エレクトロポレーション)法、リポフェクション法、レトロウイルス感染法、凝集法、顕微注入(マイクロインジェクション)法、遺伝子銃(パーティクルガン)法、DEAE−デキストラン法などのいずれも用いることができるが、簡便に多数の細胞を処理できること等の点からエレクトロポレーション法が一般的に選択されている。エレクトロポレーションには通常の動物細胞への遺伝子導入に使用されている条件をそのまま用いればよく、例えば、対数増殖期にあるES細胞をトリプシン処理して単一細胞に分散させた後、106〜108細胞/mlとなるように培地に懸濁してキュベットに移し、外来性HI7T213をコードするDNAを含むベクターを10〜100μg添加し、200〜600V/cmの電気パルスを印加することにより行うことができる。
導入遺伝子が組み込まれたES細胞は、単一細胞をフィーダー細胞上で培養して得られるコロニーから分離抽出した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーションまたはPCR法によりスクリーニングすることによっても検定することができるが、ES細胞を用いるトランスジェニック系の最大の長所は、薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子の発現を指標として細胞段階で形質転換体を選択できることである。したがって、ここで使用される導入ベクターは、外来性HI7T213をコードする遺伝子を含む発現カセットに加えて、薬剤耐性遺伝子(例:ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt)遺伝子など)やレポーター遺伝子(例:β−ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子など)等の選択マーカー遺伝子をさらに含むことが望ましい。例えば、選択マーカー遺伝子としてnptII遺伝子を含むベクターを用いた場合、遺伝子導入処理後のES細胞をG418などのネオマイシン系抗生物質を含有する培地中で培養し、出現した耐性コロニーをそれぞれ培養プレートに移してトリプシン処理、培地交換を繰り返した後、一部を培養用として残し、残りをPCRもしくはサザンハイブリダイゼーションにかけて導入遺伝子の存在を確認する。
導入遺伝子の組込みが確認されたES細胞を同種の非ヒト哺乳動物由来の胚内に戻すと、宿主胚のICMに組み込まれてキメラ胚が形成される。これを仮親(受胚用雌)に移植してさらに発生を続けさせることにより、キメラトランスジェニック動物が得られる。キメラ動物の中でES細胞が将来卵や精子に分化する始原生殖細胞の形成に寄与した場合には、生殖系列キメラが得られることとなり、これを交配することにより導入遺伝子が遺伝的に固定された遺伝子導入非ヒト哺乳動物を作出することができる。
キメラ胚の作製方法としては、桑実胚期までの初期胚同士を接着させて集合させる方法(集合キメラ法)と、胚盤胞の割腔内に細胞を顕微注入する方法(注入キメラ法)とがあるが、ES細胞によるキメラ胚の作製においては従来より後者が広く行なわれているが、最近では、8細胞期胚の透明帯内へのES細胞の注入により集合キメラを作る方法や、マイクロマニピュレーターが不要で操作が容易な方法として、ES細胞塊と透明帯を除去した8細胞期胚とを共培養して凝集させることによって集合キメラを作製する方法も行われている。
いずれの場合も、宿主胚は受精卵への遺伝子導入における採卵用雌として使用され得る非ヒト哺乳動物から同様にして採取することができるが、例えばマウスの場合、キメラマウス形成へのES細胞の寄与率を毛色(コートカラー)で判定し得るように、ES細胞の由来する系統とは毛色の異なる系統のマウスから宿主胚を採取することが好ましい。例えば、ES細胞が129系マウス(毛色:アグーチ)由来であれば、採卵用雌としてC57BL/6マウス(毛色:ブラック)やICRマウス(毛色:アルビノ)を用い、ES細胞がC57B/6もしくはDBF1マウス(毛色:ブラック)由来やTT2細胞(C57B/6とCBAとのF1(毛色:アグーチ)由来)であれば、採卵用雌としてICRマウスやBALB/cマウス(毛色:アルビノ)を用いることができる。
また、生殖系列キメラ形成能はES細胞と宿主胚との組み合わせに大きく依存するので、生殖系列キメラ形成能の高い組み合わせを選択することがより好ましい。例えばマウスの場合、129系統由来のES細胞に対してはC57B/6系統由来の宿主胚等を用いることが好ましく、C57B/6系統由来のES細胞に対してはBALB/c系統由来の宿主胚等が好ましい。
採卵用雌マウスは約4〜6週齢程度が好ましく、交配用の雄マウスとしては約2〜約8月齢程度の同系統のものが好ましい。交配は自然交配によってもよいが、好ましくは性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン、次いで黄体形成ホルモン)を投与して過剰排卵を誘起した後に行なわれる。
胚盤注入法による場合は、胚盤胞期胚(例えばマウスの場合、交配後約3.5日)を採卵用雌の子宮から採取し(あるいは桑実胚期以前の初期胚を卵管から採取した後、上述の胚培養用培地中で胚盤胞期まで培養してもよい)、マイクロマニピュレーターを用いて胚盤胞の割腔内に外来性HI7T213をコードするDNAが導入されたES細胞(約10〜約15個)を注入した後、偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動物の子宮内に移植する。受胚用雌非ヒト哺乳動物は受精卵への遺伝子導入における受胚用雌として使用され得る非ヒト哺乳動物を同様に用いることができる。
共培養法による場合は、8細胞期胚および桑実胚(例えばマウスの場合、交配後約2.5日)を採卵用雌の卵管および子宮から採取して(あるいは8細胞期以前の初期胚を卵管から採取した後、上述の胚培養用培地中で8細胞期または桑実胚期まで培養してもよい)酸性タイロード液中で透明帯を溶解した後、ミネラルオイルを重層した胚培養用培地の微小滴中に外来性HI7T213をコードするDNAが導入されたES細胞塊(細胞数約10〜約15個)を入れ、さらに上記8細胞期胚または桑実胚(好ましくは2個)を入れて一晩共培養する。得られた桑実胚または胚盤胞を上記と同様にして受胚用雌非ヒト哺乳動物の子宮内に移植する。
移植胚が首尾よく着床し受胚雌が妊娠すれば、自然分娩もしくは帝王切開によりキメラ非ヒト哺乳動物が得られる。自然分娩した受胚雌にはそのまま哺乳を継続させればよく、帝王切開により出産した場合は、産仔は別途用意した哺乳用雌(通常に交配・分娩した雌非ヒト哺乳動物)に哺乳させることができる。
生殖系列キメラの選択は、まずES細胞の雌雄が予め判別されている場合はES細胞と同じ性別のキメラマウスを選択し(通常は雄性ES細胞が使用されるので、雄キメラマウスが選択される)、次いで毛色等の表現型からES細胞の寄与率が高いキメラマウス(例えば、50%以上)を選択する。例えば、129系マウス由来の雄性ES細胞であるD3細胞とC57B/6マウス由来の宿主胚とのキメラ胚から得られるキメラマウスの場合、アグーチの毛色の占める割合の高い雄マウスを選択するのが好ましい。選択されたキメラ非ヒト哺乳動物が生殖系列キメラであるか否かの確認は、適当な系統の同種動物との交雑により得られるF1動物の表現型に基づいて行なうことができる。例えば、上記キメラマウスの場合、アグーチはブラックに対して優性であるので、雌C57B/6マウスと交雑すると、選択された雄マウスが生殖系列キメラであれば得られるF1の毛色はアグーチとなる。
上記のようにして得られる外来性HI7T213をコードする遺伝子が導入された生殖系列キメラ非ヒト哺乳動物(ファウンダー)は、通常、相同染色体の一方にのみ導入遺伝子を有するヘテロ接合体として得られる。また、個々のファウンダーは相同組換えによらない限り異なる染色体上にランダムに挿入される。相同染色体の両方に外来性HI7T213をコードする遺伝子を有するホモ接合体を得るためには、上記のようにして得られるF1動物のうち相同染色体の一方にのみ導入遺伝子を有するヘテロ接合体の兄妹同士を交雑すればよい。ヘテロ接合体の選択は、例えばF1動物の尾部より分離抽出した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーションまたはPCR法によりスクリーニングすることにより検定することができる。1遺伝子座にのみ導入遺伝子が組み込まれていれば、得られるF2動物の1/4がホモ接合体となる。
本発明の遺伝子導入動物は、外来性HI7T213に対する被験物質の作用を定量的に測定可能な程度に外来性HI7T213の発現量が確保される限り、内因性HI7T213の発現については特に制限はない。しかしながら、本発明の遺伝子導入動物を外来性HI7T213だけでなく内因性HI7T213にも作用し得る薬剤の評価にも使用する場合は、内因性HI7T213の発現を不活性化することが望ましい。内因性HI7T213の発現が不活性化された本発明の遺伝子導入動物は、公知の方法(例えば、Lee S.S.ら、Mol. Cell. Biol.、第15巻、第3012頁、1995年を参照)により選択されるHI7T213遺伝子がノックアウトされたES細胞、あるいは該ES細胞から上記の方法に従って作出されるHI7T213ノックアウト動物由来の初期胚もしくはES細胞に、上記の方法に従って外来性HI7T213をコードする遺伝子を導入することによって得ることができる。HI7T213遺伝子をノックアウトする具体的な手段としては、対象非ヒト哺乳動物由来のHI7T213遺伝子を常法に従って単離し、例えば、そのエクソン部分に他のDNA断片(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子、lacZ遺伝子、cat遺伝子等のレポーター遺伝子等)を挿入することによりエクソンの機能を破壊するか(この場合、前述のように導入遺伝子の組込みは薬剤耐性やレポーター遺伝子の発現を指標として選択され得る)、Cre−loxP系やFlp−frt系を用いてHI7T213遺伝子の全部または一部を切り出して該遺伝子を欠失させるか、タンパク質コード領域内へ終止コドンを挿入して完全なタンパク質の翻訳を不能にするか、あるいは転写領域内部へ遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、ポリA付加シグナルなど)を挿入して、完全なmRNAの合成を不能にすることによって、結果的に遺伝子を不活性化するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、相同組換えにより対象非ヒト哺乳動物のHI7T213遺伝子座に組み込ませる方法が好ましく挙げられる。
通常、哺乳動物における遺伝子組換えは大部分が非相同的であり、導入されたDNAは染色体の任意の位置にランダムに挿入される。したがって、薬剤耐性やレポーター遺伝子の発現を検出するなどの選択によっては相同組換えにより標的となる内因性HI7T213遺伝子にターゲッティングされたクローンのみを効率よく選択することができず、選択されたすべてのクローンについてサザン法もしくはPCR法による組み込み部位の確認が必要となる。そこで、ターゲッティングベクターの標的配列に相同な領域の外側に、例えば、ガンシクロビル感受性を付与する単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSV−tk)遺伝子を連結しておけば、該ベクターがランダムに挿入された細胞はHSV−tk遺伝子を有するため、ガンシクロビル含有培地では生育できないが、相同組換えにより内因性HI7T213遺伝子座にターゲッティングされた細胞はHSV−tk遺伝子を有しないので、ガンシクロビル耐性となり選択される。あるいは、HSV−tk遺伝子の代わりに、例えばジフテリア毒素遺伝子を連結すれば、該ベクターがランダムに挿入された細胞は自身の産生する該毒素によって死滅するので、薬剤非存在下で相同組換え体を選択することもできる。
あるいは、内因性HI7T213の発現が不活性化された本発明の遺伝子導入動物は、相同組換えを用いた遺伝子ターゲッティングにより外来性HI7T213遺伝子をコードするDNAで内因性HI7T213遺伝子を置換したノックイン動物であってもよい。
ノックイン動物はノックアウト動物と基本的に同様の手法に従って作製することができる。例えば、対象非ヒト哺乳動物由来のHI7T213遺伝子のエクソンを適当な制限酵素を用いて切除し、代わりに外来性HI7T213遺伝子の対応する領域を挿入することにより得られるDNAを含むターゲティングベクターを、上記の方法に従って対象非ヒト哺乳動物由来のES細胞に導入し、相同組換えにより該動物の内因性HI7T213遺伝子座に外来性HI7T213をコードする遺伝子が組み込まれたES細胞クローンを選択すればよい。クローン選択はPCR法やサザン法を用いて行うこともできるが、例えば、ターゲッティングベクターのHI7T213遺伝子の3'非翻訳領域などにネオマイシン耐性遺伝子等のポジティブ選択用マーカー遺伝子を挿入し、さらに標的配列と相同な領域の外側にHSV−tk遺伝子やジフテリア毒素遺伝子等のネガティブ選択用マーカー遺伝子を挿入すれば、薬剤耐性を指標にして相同組換え体を選択することができる。
また、ポジティブ選択用マーカー遺伝子が導入された外来性HI7T213の発現を妨げる場合があるので、ポジティブ選択用マーカー遺伝子の両端にloxP配列もしくはfrt配列を配したターゲッティングベクターを用い、相同組換え体選択後の適当な時期にCreもしくはFlpリコンビナーゼまたは該リコンビナーゼ発現ベクター(例:アデノウイルスベクターなど)を作用させることにより、ポジティブ選択用マーカー遺伝子を切り出すことが好ましい。あるいは、Cre−loxP系やFlp−frt系を用いる代わりに、ポジティブ選択用マーカー遺伝子の両端に標的配列と相同な配列を同方向に繰り返して配置し、該配列間での遺伝子内組換えを利用してポジティブ選択用マーカー遺伝子を切り出してもよい。
また、本発明の遺伝子導入動物は、HI7T213の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を有する疾患モデルであってもよい。
「HI7T213の活性調節が関与する疾患」とは、HI7T213活性の異常に起因するかもしくは結果的にHI7T213活性の異常を生じる疾患だけでなく、HI7T213活性を調節することにより予防および/または治療効果が得られ得る疾患をも含めた概念として把握されるべきである。例えば、HI7T213を活性化することにより予防および/または治療可能な疾患として創傷、脊髄損傷または無痛覚症などが、HI7T213を阻害することにより予防および/または治療可能な疾患として、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏などがそれぞれ挙げられる。
「他の遺伝子改変」とは、外来性HI7T213をコードする遺伝子が導入される以外の遺伝子改変を意味し、自然突然変異により内因性遺伝子が改変された自然発症疾患モデル動物、他の遺伝子をさらに導入されたトランスジェニック動物、内因性遺伝子を不活化されたノックアウト動物(挿入突然変異等による遺伝子破壊のほか、アンチセンスDNAや中和抗体をコードするDNAの導入により遺伝子発現が検出不可能もしくは無視し得る程度にまで低下したトランスジェニック動物を含む)、変異内因性遺伝子が導入されたドミナントネガティブ変異体などが含まれる。したがって、内因性HI7T213遺伝子の改変もまた、本発明における「他の遺伝子改変」に該当する。
「HI7T213の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を有する疾患モデル」としては、例えば、高脂血症もしくは動脈硬化症モデルとしてWHHLウサギ(低比重リポタンパクレセプター(LDLR)に変異を有する;Watanabe Y.、Atherosclerosis、第36巻、第261頁、1980年)、SHLM(apoE欠損変異を有する自然発症マウス;Matsushima Y.ら、Mamm. Genome、第10巻、第352頁、1999年)、LDLRノックアウトマウス(Ishibashi S.ら、J. Clin. Invest.、第92巻、第883頁、1993年)、apoEノックアウトマウス(Piedrahita J.A.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻、第4471頁、1992年)、ヒトapoB導入マウス(Callow M.J.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第91巻、第2130頁、1994年)等が、虚血性心疾患モデルとしてCD55/CD59ダブルトランスジェニックマウス(Cowan P.J.ら、 Xenotransplantation、第5巻、第184-90頁、1998年)等が、脳出血もしくは脳梗塞モデルとしてCuZn-スーパーオキシドディスムターゼ トランスジェニックマウス(Saito A.ら、Stroke、第2巻、1652頁、2001年)等が、皮膚炎モデルとしてinterleukin 1トランスジェニックマウス(Groves R.W. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA第92巻、11874頁、1995年)等が、免疫不全モデルとしてCD19ノックアウトマウス(Spielman J.ら、Immunity、第3巻、39頁、1995年)等が、低血糖モデルとしてSPC2ノックアウトマウス(Furuta M. ら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第94巻、6646頁、1997年)等が、脂肪肝モデルとしてob/obマウス(Herberg L.及びColeman D.L.、Metabolism、第26巻、第59頁、1977年)、KKマウス(Nakamura M.及びYamada K.、Diabetologia、第3巻、第212頁、1967頁)、FLSマウス(Soga M.ら、Lab. Anim. Sci.、第49巻、第269頁、1999年)、糖尿病モデルとしてNODマウス(Makino S.ら、Exp. Anim.、第29巻、第1頁、1980年)、BBラット(Crisa L.ら、Diabetes Metab. Rev.、第8巻、第4頁、1992年)、ob/obマウス、db/dbマウス(Hummel L.ら、Science、第153巻、第1127頁、1966年)、KKマウス、GKラット(Goto Y.ら、Tohoku J. Exp. Med.、第119巻、第85頁、1976年)、Zucker fattyラット(Zucker L.M.ら、Ann. NY Acad. Sci.、第131巻、第447頁、1965年)、OLETFラット(Kawano K.ら、Diabetes、第41巻、第1422頁、1992年)等が、肥満モデルとしてob/obマウス、db/dbマウス、KKマウス、Zucker fattyラット、OLETFラット等が、アルツハイマー病モデルとして変異アミロイド前駆体タンパク質遺伝子導入マウス等が、貧血性低酸素症モデルとしてbeta SAD (beta S-Antilles-D Punjab)トランスジェニックマウス(Trudel M.ら、 EMBO J、第10巻、3157頁、1991年)等が、性腺障害モデルとしてSteroidogenic factor 1ノックアウトマウス(Zhao L.ら、Development、第128巻、147頁、2001年)等が、肝臓癌モデルとしてp53ノックアウトマウス(Kemp C.J. Molecular Carcinogenesis, 第12巻、132頁、1995年)等が、乳癌モデルとしてc−neuトランスジェニックマウス(Rao G.N.ら、Breast Cancer Res Treat, 第48巻、265頁、1998年)等が、子宮内膜炎モデルとしてperforin/Fas-ligandダブルノックアウトマウス(Spielman J.ら、J Immunol. , 第161巻、7063頁、1998年)等が挙げられる。
これらの「他の遺伝子改変を有する」疾患モデル非ヒト哺乳動物は、例えば、米国のJackson研究所などから購入可能であるか、あるいは周知の遺伝子改変技術を用いて容易に作出することができる。
本発明の非ヒト哺乳動物は、「HI7T213の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変」に加えて、同一もしくは他の疾患モデルを作製し得る非遺伝的処理を施されていてもよい。「非遺伝的処理」とは対象非ヒト哺乳動物における遺伝子改変を生じさせない処理を意味する。このような処理としては、例えば、高脂肪食負荷処理、糖負荷処理、飢餓処理、血管結紮/再灌流等が挙げられる。
外来性HI7T213をコードする遺伝子を導入された非ヒト哺乳動物に、HI7T213の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を導入する方法は特に制限はなく、例えば、外来性HI7T213をコードする遺伝子を導入された非ヒト哺乳動物と、HI7T213の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を有する同種の疾患モデル非ヒト哺乳動物とを交雑する方法;HI7T213の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を有する疾患モデル非ヒト哺乳動物の初期胚やES細胞に、上述の方法により外来性HI7T213をコードする遺伝子を導入してトランスジェニック動物を得る方法;外来性HI7T213をコードする遺伝子を導入された非ヒト哺乳動物の初期胚やES細胞に、上述の方法により、あるいはノックアウト技術により、HI7T213の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を導入する方法等が挙げられる。また、HI7T213の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変が外来遺伝子やドミナント変異遺伝子の導入による場合、野生型非ヒト哺乳動物の初期胚やES細胞に、該外来遺伝子等と外来性HI7T213をコードする遺伝子とを同時にもしくは順次導入してトランスジェニック動物を得てもよい。さらに、HI7T213の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変が内因性遺伝子の破壊による場合は、外来性HI7T213をコードする遺伝子を破壊すべき内因性遺伝子にターゲッティングされ得るようにデザインして野生型非ヒト哺乳動物のES細胞に導入してもよい。この場合、ターゲッティングベクターは、内因性HI7T213遺伝子を破壊されるべき内因性遺伝子に置き換える以外は、上記のノックイン動物の作製に関して例示したものが好ましく使用され得る。
外来性HI7T213をコードする遺伝子を導入された非ヒト哺乳動物と、HI7T213の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を有する同種の疾患モデル非ヒト哺乳動物とを交雑する場合、ホモ接合体同士を交雑することが望ましい。例えば、外来性HI7T213をコードする遺伝子が1遺伝子座に組み込まれたホモ接合体と、apoEホモ欠損高脂血症(動脈硬化)モデルとを交雑して得られるF1は両遺伝子についてヘテロである。このF1同士を兄妹交配して得られるF2個体の1/16は外来性HI7T213ホモ導入・apoEホモ欠損となる。
上記のようにして得られる本発明の非ヒト哺乳動物は、内因性HI7T213に加えて(あるいはそれに代えて)外来性HI7T213を発現するので、外来性HI7T213に対してアゴニストまたはアンタゴニスト活性を有するが、内因性HI7T213に対しては活性を有しない外来性HI7T213特異的アゴニストまたはアンタゴニストについて、その薬効をインビボで評価することを可能にする。
また、本発明の非ヒト哺乳動物が外来性HI7T213遺伝子を過剰発現している場合、以下の少なくとも1つの表現型を有している。
(1)白内障、粗毛を発症している。
(2)一過性の皮膚発疹、落屑が認められる。
(3)眼球においては、水晶体線維の融解/変性が認められる。眼球において水晶体線維の異常が認められ、中には水晶体前極での水晶体上皮の重層化がみられる。すなわち、白内障を発症している。
(4)腎臓で好塩基性尿細管増加の所見が認められる。腎臓で細胞障害が起きている。尿細管細胞の増殖促進活性が高い。
(5)若齢期の皮膚において、表皮肥厚と錯角化が認められる。
(6)増殖関連抗原であるPCNA陽性細胞が表皮基底層および毛穴付近に認められる。
(7)keratin 6遺伝子発現細胞の増加、PCNA陽性細胞の増加が認められる。
細胞増殖促進活性が亢進している。
(8)keratin 14、keratin 10、ロリクリンの発現亢進を伴う表皮分化異常が認められる。
(9)Keratin6陽性部位において表皮自由神経終末が豊富である。
(10)表皮異常部位での神経栄養因子群の発現が増強している。
(11)増殖促進活性に伴う分化異常。
本発明の非ヒト哺乳動物は、上記のような極めてユニークな特徴を有しているので、以下に示す有用な用途を有している。
(1)本発明の非ヒト哺乳動物は、外来性HI7T213遺伝子が高発現させられているので、HI7T213アゴニストまたはHI7T213アンタゴニストの評価のために用いることができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の非ヒト哺乳動物またはその一部に被験物質を適用し、HI7T213アゴニスト活性またはHI7T213アンタゴニスト活性を検定することを特徴とするHI7T213アゴニストまたはHI7T213アンタゴニストのスクリーニング方法、
(ii)本発明の非ヒト哺乳動物またはその一部に被験物質を適用し、創傷、脊髄損傷または無痛覚症などの疾患の改善効果または腎再生効果を検定することを特徴とする、上記疾患の予防および/または治療のために用いられるHI7T213アゴニストのスクリーニング方法を提供する。
HI7T213アゴニストの候補化合物は、例えば、HI7T213との結合実験により選定することができる。
具体的には、本発明のスクリーニング方法では、本発明の非ヒト哺乳動物に被検物質を投与する。被験物質としては、公知の合成化合物、ペプチド、タンパク質、DNAライブラリーなどの他に、例えば哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)の組織抽出物、細胞培養上清などが用いられる。
HI7T213アゴニスト活性としては、創傷、脊髄損傷または無痛覚症などの疾患の改善作用、あるいは腎再生作用が挙げられる。
本発明の非ヒト哺乳動物が本来的に有するHI7T213による上記作用の変動は無視してよい。
具体的には、本発明のスクリーニング方法は、本発明の非ヒト哺乳動物に傷をつけたり、脊髄を損傷させた後、被検物質を投与する。そして、被検物質を投与しない場合に比べて、被検物質を投与した場合の創傷や脊髄損傷などの症状が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上改善された場合、該被検物質を上記の疾患に対して予防および/または治療効果を有する物質として選択することができる。
一方、HI7T213アンタゴニスト活性としては、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの疾患の改善作用が挙げられる。
具体的には、本発明のスクリーニング方法は、本発明の非ヒト哺乳動物に上記疾患を発症させた後、被検物質を投与する。そして、被検物質を投与しない場合に比べて、被検物質を投与した場合のがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏など症状が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上改善された場合、該被検物質を上記の疾患に対して予防および/または治療効果を有する物質として選択することができる。
このようにして選択されたHI7T213アゴニストは、安全で低毒性な創傷、脊髄損傷、無痛覚症などの疾患の予防および/または治療薬、あるいは腎再生薬として使用することができる。
一方、選択されたHI7T213アンタゴニストは、安全で低毒性な、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの予防および/または治療薬として使用することができる。
HI7T213アゴニストまたはHI7T213アンタゴニストは塩を形成していてもよく、HI7T213アゴニストまたはHI7T213アンタゴニストの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
選択されたHI7T213アゴニストまたはHI7T213アンタゴニストは、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、予防および/または治療用医薬として選択された物質を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
また、選択された物質がDNAである場合、当該DNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは温血動物に投与することができる。当該DNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは非ヒト温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、など)に対して投与することができる。
選択された物質の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、創傷の治療目的でHI7T213アゴニストを経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき当該物質を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、当該物質の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、創傷の治療目的で注射剤の形で成人(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき当該物質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を患部に注射することにより投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
(2)また、本発明の非ヒト哺乳動物は、外来性HI7T213遺伝子が高発現させられており、上記した表現型またはがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの疾患を発症している場合がある。
したがって、本発明の非ヒト哺乳動物は、上記表現型の改善薬、上記疾患の予防薬あるいは治療薬の評価のために用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明の非ヒト哺乳動物またはその一部に被験物質を適用し、上記表現型または疾患の改善効果を検定することを特徴とする、上記疾患の予防および/または治療のために用いられる物質のスクリーニング方法を提供する。
具体的には、本発明のスクリーニング方法では、本発明の非ヒト哺乳動物に被検物質を投与する。被験物質としては、公知の合成化合物、ペプチド、タンパク質、DNAライブラリーなどの他に、例えば哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)の組織抽出物、細胞培養上清などが用いられる。
本発明のスクリーニング方法において、被検物質の投与により、上記表現型またはがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの疾患の改善効果があると判定された場合(例えば、上記表現型または疾患が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上改善された場合)、その被検物質はこれらの疾患の予防および/または治療用医薬として選択することができる。
本発明のスクリーニング方法において選択される物質は、例えば、HI7T213アンタゴニスト、HI7T213の発現を阻害(抑制)する物質、HI7T213プロモーターのプロモーター活性を阻害(抑制)する物質などである。
選択された物質は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、予防および/または治療用医薬として選択された物質を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
また、選択された物質がDNAである場合、当該DNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは温血動物に投与することができる。当該DNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは非ヒト温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、など)に対して投与することができる。
選択された物質の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、白内障の治療目的で経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき当該物質を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、当該物質の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、白内障の治療目的で注射剤の形で成人(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき当該物質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を患部に注射することにより投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
さらに、本発明の非ヒト哺乳動物は、HI7T213遺伝子異常患者の遺伝子治療用実験に用いることができる。
以上の本発明の遺伝子導入哺乳動物を、組織培養のための細胞源として使用することも可能である。また例えば、本発明の遺伝子導入マウスの組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、あるいは遺伝子により発現されたタンパク組織を分析することにより、核内レセプターの複雑な作用の転写因子との関連性について解析することもできる。あるいは、遺伝子を有する組織の細胞を、標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、例えば脂肪組織を形成する細胞などの一般に培養が困難な組織に由来する細胞の機能を研究することもできる。さらに、その細胞を用いることにより、例えば細胞の機能を高めるような薬剤の選択も可能である。また、高発現細胞株があれば、そこから、HI7T213を大量に単離精製すること、ならびにその抗体を作製することも可能である。
本発明で用いられるGタンパク質共役型レセプタータンパク質(以下、HI7T213と略記する場合がある)は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質である。
HI7T213は、例えば、ヒトや非ヒト哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよく、また合成タンパク質であってもよい。
配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と約76%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
本発明の配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、ぞれぞれ配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
実質的に同質の活性としては、例えば、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後に記載するスクリーニング方法に従って測定することができる。
また、HI7T213としては、a)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、b)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、c)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、またはd)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質なども用いられる。
本明細書におけるHI7T213は、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するHI7T213をはじめとするHI7T213は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO-)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
HI7T213がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のHI7T213に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、HI7T213には、上記したタンパク質において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明のHI7T213の具体例としては、例えば、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるヒト由来HI7T213、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列からなるヒト由来HI7T213、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるマウス由来HI7T213、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列からなるマウス由来HI7T213などが用いられる。このうち、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるマウス由来HI7T213は新規なレセプタータンパク質である。
HI7T213の部分ペプチド(以下、部分ペプチドと略記する場合がある)としては、上記したHI7T213の部分ペプチドであれば何れのものであってもよいが、例えば、HI7T213のタンパク質分子のうち、細胞膜の外に露出している部位であって、実質的に同質のレセプター結合活性を有するものなどが用いられる。
具体的には、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列を有するHI7T213の部分ペプチドとしては、疎水性プロット解析において細胞外領域(親水性(Hydrophilic)部位)であると分析された部分を含むペプチドである。また、疎水性(Hydrophobic)部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
本発明の部分ペプチドのアミノ酸の数は、上記した本発明のレセプタータンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましい。
実質的に同一のアミノ酸配列とは、これらアミノ酸配列と約76%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を示す。
アミノ酸配列の相同性は、前記と同様の相同性計算アルゴリズムNCBI BLASTを用い、同様の条件にて計算することができる。
ここで、「実質的に同質のレセプター活性」とは、上記と同意義を示す。「実質的に同質のレセプター活性」の測定は上記と同様に行なうことができる。
また、本発明の部分ペプチドは、上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明の部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO-)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明の部分ペプチドには、上記したHI7T213と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明のHI7T213またはその部分ペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のHI7T213またはその塩は、上記したヒトや哺乳動物の細胞または組織から公知のレセプタータンパク質の精製方法によって製造することもできるし、後に記載する本発明のHI7T213をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後に記載するタンパク質合成法またはこれに準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、得られた抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
本発明のHI7T213もしくはその部分ペプチドまたはその塩またはそのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質またはそのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
タンパク質のアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質とを製造し、この両タンパク質を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質を得ることができる。この粗タンパク質は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質のアミド体を得ることができる。
タンパク質のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質のアミド体と同様にして、所望のタンパク質のエステル体を得ることができる。
本発明のHI7T213の部分ペプチドまたはその塩は、公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明のHI7T213を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のHI7T213を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下のa)〜e)に記載された方法が挙げられる。
a)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
b)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
c)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
d)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
e)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
本発明のHI7T213をコードするポリヌクレオチドとしては、上記した本発明のHI7T213をコードする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、本発明のHI7T213をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。
本発明のHI7T213をコードするポリヌクレオチドを用いて、例えば、公知の実験医学増刊「新PCRとその応用」15(7)、1997記載の方法またはそれに準じた方法により、本発明のHI7T213のmRNAを定量することができる。
本発明のHI7T213をコードするDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞または組織由来のcDNA、上記した細胞または組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞または組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
具体的には、本発明のHI7T213をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列からなるHI7T213と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、それぞれ配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
該ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるヒト由来HI7T213(hHI7T213)をコードするDNAとしては、配列番号:2で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。配列番号:3で表わされるアミノ酸配列からなるヒト由来HI7T213(hHI7T213)をコードするDNAとしては、配列番号:4で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるマウス由来HI7T213(#11)をコードするDNAとしては、配列番号:6で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。配列番号:7で表わされるアミノ酸配列からなるマウス由来HI7T213(#8)をコードするDNAとしては、配列番号:8で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
本発明のHI7T213をコードするDNAの塩基配列の一部、または該DNAと相補的な塩基配列の一部を含有してなるポリヌクレオチドとは、下記の本発明の部分ペプチドをコードするDNAを包含するだけではなく、RNAをも包含する意味で用いられる。
本発明に従えば、GPR遺伝子の複製または発現を阻害することのできるアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化した、あるいは決定されたHI7T213をコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたポリヌクレオチド(核酸)は、HI7T213遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいはHI7T213関連RNAとの相互作用を介してHI7T213遺伝子の発現を調節・制御することができる。GPR関連RNAの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、およびGPR関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、生体内および生体外でHI7T213遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。HI7T213遺伝子の5'端ヘアピンループ、5'端6−ベースペア・リピート、5'端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳開始コドン、3'端非翻訳領域、3'端パリンドローム領域、および3'端ヘアピンループは好ましい対象領域として選択しうるが、HI7T213遺伝子内の如何なる領域もアンチセンス・ポリヌクレオチドの対象として選択しうる。
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドとの関係は、対象物と「アンチセンス」であるということができる。アンチセンス・ポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリデオキシリボヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリリボヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質、核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレート化合物(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
こうして修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al.,
Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった粗水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3'端あるいは5'端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3'端あるいは5'端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいはGタンパク質共役型レセプタータンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸は公知の各種の方法で細胞に適用できる。
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、上記した本発明の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞または組織由来のcDNA、上記した細胞または組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞または組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接RT−PCR法によって増幅することもできる。
具体的には、本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、(1)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または(2)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明の配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列を含有するHI7T213と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列ハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、前記した相同性計算アルゴリズムNCBI BLASTを用い、同様の条件にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションの方法および条件は前記と同様である。
本発明のHI7T213またはその部分ペプチド(以下、本発明のHI7T213と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のHI7T213の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のHI7T213の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、Molecular Cloning 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列の変換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))などを用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法などの公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたHI7T213をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5'末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3'末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のHI7T213の発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のHI7T213をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、CHO(dhfr-)細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のレセプタータンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のHI7T213をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60巻,160(1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120巻,517(1978)〕,HB101〔Journal of Molecular Biology,41巻,459(1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255(1983)〕,207−21〔Journal of
Biochemistry,95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87−11A,DKD−5D、20B−12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、ヨトウガの幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM 細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、カイコ由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、Nature,315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記)、マウスL細胞,マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Molecular & General Genetics,168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology,194巻,182−187(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology, 6, 47-55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、HI7T213をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体が得られる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller), Journal of Experiments in Molecular Genetics,431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C., Nature, 195, 788(1962))に非働化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association, 199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明のHI7T213を生成せしめることができる。
上記培養物から本発明のHI7T213を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明のHI7T213を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりHI7T213の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にHI7T213が分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるHI7T213の精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的新和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られるHI7T213が遊離体で得られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するHI7T213を、精製前または精製後に適当なタンパク質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。タンパク質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する本発明のHI7T213の活性は、標識したリガンドとの結合実験および特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
本発明のHI7T213に対する抗体は、本発明のHI7T213を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明のHI7T213に対する抗体は、本発明のHI7T213を抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のHI7T213は、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化レセプタータンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0などが挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、レセプタータンパク質の抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したレセプタータンパク質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(HI7T213抗原)とキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のHI7T213に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
本発明のHI7T213、HI7T213をコードするDNA(以下、本発明のDNAと略記する場合がある)、HI7T213に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)、本発明のDNAに対するアンチセンスDNA(以下、本発明のアンチセンスDNAと略記する場合がある)は、以下の用途を有している。
(1)HI7T213またはHI7T213をコードするDNAを含有する医薬
HI7T213またはHI7T213をコードするDNAは、例えば、創傷、脊髄損傷、無痛覚症などの予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤などの医薬として使用することができる。
HI7T213またはHI7T213をコードするDNAを上述の医薬として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、必要に応じて糖衣や腸溶性被膜を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物またはその塩を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
HI7T213をコードするDNAは、(イ)HI7T213をコードするDNAを該患者に投与し発現させることによって、あるいは(ロ)細胞などにHI7T213をコードするDNAを挿入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、該患者の細胞におけるHI7T213の量を増加させ、リガンドの作用を充分に発揮させることができる。HI7T213をコードするDNAを用いる場合は、該DNAを単独またはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施にしたがって処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノール)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(たとえばポリソルベート80(TM)、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えばヒトや非ヒト温血動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、マントヒヒ、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
例えば、HI7T213またはHI7T213をコードするDNAの投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人の創傷患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、たとえば注射剤の形では成人の創傷患者(体重60kgとして)への投与においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
(2)HI7T213に対する抗体を含有する医薬
上述したように、HI7T213を高発現している動物では、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などを発症している場合があるので、HI7T213の活性を中和する作用を有する抗体は、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの予防および/または治療剤として使用することができる。
本発明の抗体(例、中和抗体)を含有する上記疾患の予防および/または治療剤は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、白内障の治療目的で成人に使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
すなわち、例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、公知の方法に従って、例えば、上記抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記抗体が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
(3)HI7T213に対する抗体を含有する診断剤
HI7T213に対する抗体は、HI7T213を特異的に認識することができるので、被検液中のHI7T213の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化されたHI7T213とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたHI7T213の割合を測定することを特徴とする被検液中のHI7T213の定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中のHI7T213の定量法を提供する。
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体がHI7T213のN端部を認識する抗体で、他方の抗体がHI7T213のC端部に反応する抗体であることが望ましい。
また、HI7T213に対するモノクローナル抗体を用いてHI7T213の定量を行うことができるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')2、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いるHI7T213の定量法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、HI7T213量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常HI7T213あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のHI7T213量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法によるHI7T213の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、HI7T213の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、HI7T213のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のHI7T213の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」」)))
Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、本発明のHI7T213を感度良く定量することができる。
さらには、本発明の抗体を用いてHI7T213の濃度を定量することによって、HI7T213の濃度の減少が検出された場合、例えば、HI7T213の機能不全に関連する疾患、例えば創傷、脊髄損傷、無痛覚症である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、HI7T213の濃度の増加が検出された場合には、例えば、HI7T213の過剰発現に起因する疾患、例えば、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
(4)遺伝子診断剤
HI7T213をコードするDNAは、例えば、プローブとして使用することにより、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)におけるHI7T213をコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
HI7T213をコードするDNAまたはそれに対するアンチセンス・ポリヌクレオチドを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(Genomics,第5巻,874〜879頁(1989年)、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションによりHI7T213の発現減少が検出された場合は、創傷、脊髄損傷、無痛覚症などの疾患である可能性が高い、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションによりHI7T213の発現過多が検出された場合は、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの疾患である可能性が高い、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
(5)アンチセンスDNAを含有するDNA
HI7T213をコードするDNAに対するアンチセンスDNAは、HI7T213の発現を抑制することができるので、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの予防および/または治療剤として使用することができる。
上記アンチセンスDNAを上記の予防および/または治療剤として使用する場合は、該アンチセンスDNAを、HI7T213をコードするDNAと同様にして製剤化することができる。
このようにして得られる製剤は低毒性であり、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。
なお、該アンチセンスDNAは、そのままで、あるいは摂取促進用の補助剤などの生理学的に認められる担体とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することもできる。
該アンチセンスDNAの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、例えば、白内障の治療の目的でアンチセンスDNAを臓器(例、肝臓、肺、心臓、腎臓など)に局所投与する場合、成人(体重60kg)に対して、一日あたり約0.1〜100 mgである。
さらに、HI7T213をコードするRNAの一部とそれに相補的なRNAとを含有する二重鎖RNA(RNAi;RNA interference法)、HI7T213をコードするRNAの一部を含有するリボザイムなどは、上記アンチセンスDNAと同様に、HI7T213をコードするDNAの発現を抑制することができ、生体内におけるリガンドまたはHI7T213をコードするDNAの機能を抑制することができる。
したがって、該二重鎖RNAまたはリボザイムは、HI7T213の発現を抑制することができるので、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの予防および/または治療剤として使用することができる。
二重鎖RNAは、公知の方法(例、Nature, 411巻, 494頁, 2001年)に準じて、本発明のDNAの配列を基に設計して製造することができる。
リボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine, 7巻, 221頁, 2001年)に準じて、HI7T213のDNAの配列を基に設計して製造することができる。例えば、HI7T213をコードするRNAの一部に公知のリボザイムを連結することによって製造することができる。HI7T213をコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得るHI7T213のRNA上の切断部位に近接した部分(RNA断片)が挙げられる。
上記の二重鎖RNAまたはリボザイムを上記予防および/または治療剤として使用する場合、アンチセンスDNAと同様にして製剤化し、投与することができる。
(6)スクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、
(6A−1)(i)リガンドおよび(ii)HI7T213(以下、部分ペプチドも含む)を用いることを特徴とするリガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質のスクリーニング方法、
(6A−2)HI7T213をコードするDNAを用いることを特徴とするHI7T213の発現量を調節する物質のスクリーニング方法である。
まず、リガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質のスクリーニング方法について説明する。
HI7T213を用いるか、または組換え型HI7T213の発現系を構築し、該発現系を用いたレセプター結合アッセイ系を用いることによって、リガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質をスクリーニングすることができる。
このような物質には、HI7T213を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を有する物質(すなわち、HI7T213アゴニスト)と該細胞刺激活性を有しない物質(すなわち、HI7T213アンタゴニスト)などが含まれる。「リガンドとHI7T213との結合性を変化させる」とは、リガンドとHI7T213との結合を阻害する場合と、リガンドとHI7T213との結合を促進する場合の両方を包含するものである。
すなわち、本発明は、(i)HI7T213にリガンドを接触させた場合と(ii)HI7T213にリガンドおよび試験化合物を接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするリガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)HI7T213にリガンドを接触させた場合と(ii)HI7T213にリガンドおよび試験化合物を接触させた場合における、例えばHI7T213に対するリガンドの結合量、細胞刺激活性などを測定して、比較する。
本発明のスクリーニング方法は、具体的には、
(i)標識したリガンドをHI7T213に接触させた場合と、標識したリガンドおよび試験化合物をHI7T213に接触させた場合における、標識したリガンドのHI7T213に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするリガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質のスクリーニング方法、
(ii)標識したリガンドをHI7T213を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、標識したリガンドおよび試験化合物をHI7T213を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、標識したリガンドの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするリガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質のスクリーニング方法、(iii)標識したリガンドを、HI7T213をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したHI7T213に接触させた場合と、標識したリガンドおよび試験化合物をHI7T213をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したHI7T213に接触させた場合における、標識したリガンドの該HI7T213に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするリガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質のスクリーニング方法、
(iv)HI7T213を活性化する化合物(例えば、リガンド、アゴニスト)をHI7T213を含有する細胞に接触させた場合と、HI7T213を活性化する化合物および試験化合物をHI7T213を含有する細胞に接触させた場合における、HI7T213を介した細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定し、比較することを特徴とするリガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質のスクリーニング方法、および
(v)HI7T213を活性化する化合物(例えば、リガンド、アゴニスト)をHI7T213をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したHI7T213に接触させた場合と、HI7T213を活性化する化合物および試験化合物をHI7T213をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したHI7T213に接触させた場合における、HI7T213を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定し、比較することを特徴とするリガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質のスクリーニング方法などである。
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いるHI7T213としては、前記したHI7T213を含有するものであれば何れのものであってもよいが、ヒトや非ヒト温血動物の臓器の膜画分などが好適である。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させたHI7T213などが適している。
本発明のスクリーニング方法において、HI7T213を含有する細胞または該細胞膜画分などを用いる場合、後述の調製法に従えばよい。
HI7T213を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法は公知の方法に従って行うことができる。
HI7T213を含有する細胞としては、HI7T213を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、前述の大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。
膜画分としては、細胞を破砕した後、公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1分〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したHI7T213と細胞由来のリン脂質や膜タンパク質などの膜成分が多く含まれる。
該HI7T213を含有する細胞や膜画分中のHI7T213の量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
リガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質をスクリーニングする前記の(i)〜(iii)を実施するためには、適当なHI7T213画分と、標識したリガンドが用いられる。HI7T213画分としては、天然型のHI7T213画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型HI7T213画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性などを示す。
標識したリガンドとしては、標識したリガンド、標識したリガンドアナログ化合物などが用いられる。例えば〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識されたリガンドなどを利用することができる。
具体的には、リガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質のスクリーニングを行うには、まずHI7T213を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりレセプター標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとHI7T213との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるHI7T213やリガンドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01ml〜10mlの該HI7T213溶液に、一定量(5000cpm〜500000cpm)の標識したリガンドを添加し、同時に10-4〜10-1μMの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識のリガンドを加えた反応チューブも用意する。反応は約0℃から約50℃、望ましくは約4℃から約37℃で約20分から約24時間、望ましくは約30分から約3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B0)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B0−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
リガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質をスクリーニングする前記の(iv)〜(v)の方法を実施するためには、HI7T213を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。具体的には、まず、HI7T213を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行うにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当なHI7T213を発現した細胞が必要である。本発明のHI7T213を発現した細胞としては、前述の組換え型HI7T213発現細胞株などが望ましい。
試験化合物としては、例えばペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。試験化合物は塩を形成していてもよく、試験化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
リガンドとHI7T213との結合性を変化させる物質のスクリーニング用キットは、HI7T213、HI7T213を含有する細胞または該細胞の膜画分、および(または)リガンドを含有するものである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
(i)測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
(ii)HI7T213標品
HI7T213を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
(iii)標識リガンド
3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識したリガンド
適当な溶媒または緩衝液に溶解したものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
(iv)リガンド標準液
リガンドを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
2.測定法
(i)12穴組織培養用プレートにて培養したHI7T213を発現させた細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
(ii)10-3〜10-10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識したリガンドを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物のかわりに10-3Mのリガンドを5μl加えておく。
(iii)反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識リガンドを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
(iv)液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式〔数1〕で求める。
[数1]
PMB=[(B−NSB)/(B0−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の値
NSB:Non-specific Binding(非特異的結合量)
B0 :最大結合量
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる物質は、リガンドとHI7T213との結合を変化させる(結合を阻害または促進する)物質であり、具体的にはHI7T213を介して細胞刺激活性を有する物質(いわゆるHI7T213アゴニスト)または該刺激活性を有しない物質(いわゆるHI7T213アンタゴニスト)である。
該物質は、前記した試験化合物から選ばれるペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。 HI7T213アゴニストであるか、アンタゴニストであるかの具体的な評価方法は以下の(i)〜(iv)に従えばよい。
(i)例えば、前記(i)〜(iii)のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、リガンドとHI7T213との結合性を変化させる(特に、結合を阻害する)物質を得た後、該物質が上記したHI7T213を介する細胞刺激活性を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性を有する物質はHI7T213アゴニストであり、該活性を有しない物質はHI7T213アンタゴニストである。
(ii)(a)試験化合物をHI7T213を含有する細胞に接触させ、上記HI7T213を介した細胞刺激活性を測定する。細胞刺激活性を有する物質はHI7T213アゴニストである。
(b)HI7T213を活性化する化合物(例えば、リガンドなど)をHI7T213を含有する細胞に接触させた場合と、HI7T213を活性化する化合物および試験化合物をHI7T213を含有する細胞に接触させた場合における、HI7T213を介した細胞刺激活性を測定し、比較する。HI7T213を活性化する化合物による細胞刺激活性を減少させ得る物質はHI7T213アンタゴニストである。
(iii)(a)本発明の非ヒト哺乳動物またはその一部に試験化合物を適用し、HI7T213アゴニスト活性を検定する。アゴニスト活性を有する物質はHI7T213アゴニストである。
(b)本発明の非ヒト哺乳動物またはその一部に試験化合物を適用し、創傷、脊髄損傷または無痛覚症などの疾患の改善効果または腎再生効果を検定する。該疾患の改善効果または腎再生効果が認められた物質はHI7T213アゴニストである。
(iv)上記した表現型またはがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの疾患を発症している本発明の非ヒト哺乳動物またはその一部に試験化合物を適用し、上記表現型または疾患の改善効果を検定する。上記表現型または疾患の改善効果が認められた物質はHI7T213アンタゴニストである。
該HI7T213アゴニストは、HI7T213に対するリガンドと同様に、HI7T213を活性化することができるので、安全で低毒性な、創傷、脊髄損傷、無痛覚症などの予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤などの医薬として有用である。
逆に、HI7T213アンタゴニストは、リガンドによるHI7T213の活性化を抑制することができるので、安全で低毒性な、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの予防および/または治療剤などの医薬として有用である。
上記のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる物質(例、アゴニスト、アンタゴニスト)は塩を形成していてもよく、例えば、薬学的に許容可能な塩などが用いられる。具体的には、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などがあげられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩あげられる。
無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などとの塩があげられる。
有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸などとの塩があげられる。
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルチニンなどとの塩があげられ、酸性アミノ酸との好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩があげられる。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる物質を上述の医薬として使用する場合、上記のHI7T213を含有する医薬組成物と同様に製剤化することができる。
例えば、HI7T213アゴニストの投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人の創傷患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、たとえば注射剤の形では成人の創傷患者(体重60kgとして)への投与においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
一方、HI7T213アンタゴニストの投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人の白内障患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、たとえば注射剤の形では成人の白内障患者(体重60kgとして)への投与においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
次に、HI7T213の発現量を調節する物質のスクリーニング方法について説明する。
本発明のスクリーニング方法は、具体的には、(i)HI7T213を発現し得る細胞または組織を、試験化合物の存在下および非存在下で培養した場合における、それぞれのHI7T213の発現量またはリガンドをコードするmRNA量を測定し、比較することを特徴とするHI7T213の発現を促進または阻害する物質のスクリーニング方法である。
HI7T213を発現し得る細胞または組織としては、ヒトや非ヒト温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サル等)の細胞(例えば、神経細胞、内分泌細胞、神経内分泌細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、肝細胞、脾細胞、メサンギウム細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、樹状細胞)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞等)、もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、唾液腺、末梢血、前立腺、睾丸(精巣)、卵巣、胎盤、子宮、骨、軟骨、関節、骨格筋等を用いても良い。その際、株化細胞、初代培養系を用いてもよい。また、前記したHI7T213をコードするDNAを含有する組換えベクターで形質転換された形質変換体を使用してもよい。
HI7T213を発現し得る細胞の培養方法は、前記した形質変換体の培養法と同様である。
試験化合物としては、前記の試験化合物の他、DNAライブラリーなどを用いることができる。
HI7T213の発現量は抗体などを用いて免疫化学的方法などの公知の方法により測定することもできるし、リガンドをコードするmRNAをノザンハイブリダイゼーション法、RT−PCRやTaqMan PCR法を用いて、公知の方法により測定することもできる。
mRNAの発現量の比較をハイブリダイゼーション法によって行うには、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法等に従って行なうことができる。
具体的には、HI7T213をコードするmRNAの量の測定は、公知の方法に従って細胞から抽出したRNAと、HI7T213をコードするDNAもしくはその一部または本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドとを接触させ、HI7T213をコードするDNAもしくはその一部または本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドと結合したmRNAの量を測定することによって行われる。HI7T213をコードするDNAもしくはその一部または本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドを、例えば放射性同位元素、色素などで標識することによって、HI7T213をコードするDNAもしくはその一部または本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドに結合したmRNAの量が容易に測定できる。放射性同位元素としては、例えば32P、3Hなどが用いられ、色素としては、例えばfluorescein、FAM(PE Biosystems社製)、JOE(PE Biosystems社製)、TAMRA(PE Biosystems社製)、ROX(PE Biosystems社製)、Cy5(Amersham社製)、Cy3(Amersham社製)などの蛍光色素が用いられる。
また、mRNAの量は、細胞から抽出したRNAを逆転写酵素によってcDNAに変換した後、HI7T213をコードするDNAもしくはその一部または本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドをプライマーとして用いるPCRによって、増幅されるcDNAの量を測定することによって行うことができる。
このように、HI7T213をコードするmRNAの量を増加させる試験化合物を、HI7T213の発現を促進する活性を有する物質として選択することができ、また、HI7T213をコードするmRNAの量を減少させる試験化合物をHI7T213の発現を阻害する活性を有する物質として選択することができる。
さらに、本発明は、
(ii)HI7T213をコードする遺伝子のプロモーター領域またはエンハンサー領域の下流にレポーター遺伝子を連結した組換えDNAで形質転換した形質転換体を試験化合物の存在下および非存在下で培養した場合における、それぞれのレポーター活性を測定し、比較することを特徴とする当該プロモーター活性を促進または阻害する物質のスクリーニング方法を提供する。
レポーター遺伝子としては、例えば、lacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、成長因子、β−グルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼ、Green fluorescent protein(GFP)、β−ラクタマーゼなどが用いられる。
レポーター遺伝子産物(例、mRNA、タンパク質)の量を公知の方法を用いて測定することによって、レポーター遺伝子産物の量を増加させる試験化合物を本発明のHI7T213のプロモーターもしくはエンハンサーの活性を制御(特に促進)する作用を有する物質、すなわちHI7T213の発現を促進する活性を有する物質として選択できる。逆に、レポーター遺伝子産物の量を減少させる試験化合物をHI7T213のプロモーターもしくはエンハンサーの活性を制御(特に阻害)する作用を有する物質、すなわちHI7T213の発現を阻害する活性を有する物質として選択することができる。
試験化合物としては、前記と同様のものが使用される。
形質転換体の培養は、前記の形質転換体と同様にして行うことができる。
レポーター遺伝子のベクター構築やアッセイ法は公知の技術に従うことができる(例えば、Molecular Biotechnology 13, 29-43, 1999)。
HI7T213の発現を促進する活性(発現量を増加させる活性)を有する物質は、創傷、脊髄損傷、無痛覚症などの予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤などの医薬として使用することができる。
HI7T213の発現を阻害する活性(発現量を減少させる活性)を有する物質は、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの予防および/または治療剤などの医薬として使用することができる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる物質は、前記した試験化合物から選ばれた物質である。 本発明のスクリーニング方法を用いて得られる物質の塩としては、前記したアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法を用いて得られる物質の塩と同様のものが用いられる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる物質を上述の予防および/または治療剤として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、前記したリガンドを含有する医薬組成物と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは非ヒト温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
該物質の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、創傷の治療目的でHI7T213の発現量を促進する物質を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kg当たり)においては、一日につき該物質を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該物質の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、創傷の治療目的でHI7T213の発現量を促進する物質を注射剤の形で通常成人(体重60kg当たり)に投与する場合、一日につき該物質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
一方、例えば、白内障の治療目的でHI7T213の発現量を阻害する物質を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kg当たり)においては、一日につき該物質を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該物質の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、白内障の治療目的でHI7T213の発現量を阻害する物質を注射剤の形で通常成人(60kg当たり)に投与する場合、一日につき該物質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
これらの医薬は前記したHI7T213を含有する医薬と同様に製剤化して、使用することができる。
(7)ノックアウト動物
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(i)本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(ii)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第(i)項記載の胚幹細胞、
(iii)ネオマイシン耐性である第(i)項記載の胚幹細胞、
(iv)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(i)項記載の胚幹細胞、
(v)ゲッ歯動物がマウスである第(iv)項記載の胚幹細胞、
(vi)本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
(vii)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第(vi)項記載の非ヒト哺乳動物、
(viii)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(vi)項記載の非ヒト哺乳動物、(ix)ゲッ歯動物がマウスである第(viii)項記載の非ヒト哺乳動物、および
(x)第(vii)項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしている本発明のHI7T213の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のHI7T213の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエクソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエクソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ遺伝子、cat遺伝子を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエクソンの機能を破壊するか、あるいはエクソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、ポリA付加シグナルなど)を挿入し、完全なmRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知のEvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、Journal of embryology and experimental morphology、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のHI7T213の細胞生物学的検討において有用である。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のペプチドのヘテロ発現不全個体であり、本発明のペプチドのヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のペプチドのホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のペプチドにより誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のペプチドの生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
(7a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して予防および/または治療効果を有する物質のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して予防および/または治療効果を有する物質のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病、例えば、創傷、脊髄損傷、無痛覚症などに対して予防および/または治療効果、あるいは腎再生効果を有する物質のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の予防および/または治療効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の創傷、脊髄損傷、無痛覚症などの症状が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上改善された場合、該試験化合物を上記の疾患に対して予防および/または治療効果を有する物質として選択することができる。
具体的には、該試験化合物を例えば、創傷、脊髄損傷、無痛覚症などの予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤などの医薬として使用することができる。
該スクリーニング方法を用いて得られる物質は、上記した試験化合物から選ばれた物質であり、HI7T213の欠損や損傷などによって引き起こされる疾患に対して予防および/または治療効果を有するので、該疾患に対する安全で低毒性な予防および/または治療剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた物質から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた物質は塩を形成していてもよく、該物質の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた物質を含有する医薬は、前記したHI7T213を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該物質の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、創傷の治療目的で該物質を経口投与する場合、一般的に成人患者(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該物質の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、創傷の治療目的で該物質を注射剤の形で通常成人患者(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該物質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
(7b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する物質をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する物質のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、lacZ遺伝子、可溶性アルカリホスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、本発明のペプチドをコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のlacZ遺伝子で置換している場合、本来、本発明のペプチドの発現する組織で、本発明のペプチドの代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に本発明のHI7T213の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、本発明のHI7T213欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる物質は、上記した試験化合物から選ばれた物質であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する物質である。
該スクリーニング方法で得られた物質は塩を形成していてもよく、該物質の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する物質は、HI7T213の発現を促進し、HI7T213の機能を促進することができるので、例えば、創傷、脊髄損傷、無痛覚症などの予防および/または治療剤あるいは腎再生剤などの医薬として使用することができる。
一方、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する物質は、HI7T213の発現を阻害し、HI7T213の機能を阻害することができるので、例えば、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛、痛覚過敏などの予防および/または治療剤などの医薬として使用することができる。
さらに、上記スクリーニングで得られた物質から誘導される物質も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた物質を含有する医薬は、前記したリガンドを含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該物質の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、創傷の治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する物質を経口投与する場合、一般的に成人患者(体重60kgとして)においては、一日につき該物質を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該物質の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、創傷の治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する物質を注射剤の形で通常成人患者(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該物質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
一方、例えば、白内障の治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する物質を経口投与する場合、一般的に成人患者(体重60kgとして)においては、一日につき該物質を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該物質の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、白内障の治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する物質を注射剤の形で通常成人患者(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該物質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する物質をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防および/または治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、本発明のHI7T213のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々のタンパクをコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのペプチドを合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、本発明のペプチドそのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
本発明の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕ヒトHI7T213のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕ヒトHI7T213(hHI7T213)をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕ヒトHI7T213のアミノ酸配列を示し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第169番目のAspがAsnに変わったアミノ酸配列である。
〔配列番号:4〕ヒトHI7T213(hHI7T213)をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕マウスHI7T213(#11)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕マウスHI7T213(#11)をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕マウスHI7T213(#8)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕マウスHI7T213(#8)をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕後述の実施例1で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕後述の実施例1で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕後述の実施例1で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕後述の実施例1で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕後述の実施例2で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕後述の実施例2で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕後述の実施例4で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕後述の実施例4で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕後述の実施例6で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:18〕後述の実施例6で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:19〕後述の実施例6で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:20〕後述の実施例8で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:21〕後述の実施例8で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:22〕後述の実施例8で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:23〕後述の実施例15で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:24〕後述の実施例15で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:25〕後述の実施例15で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:26〕後述の実施例15で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:27〕後述の実施例15で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:28〕後述の実施例15で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:29〕後述の実施例15で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:30〕後述の実施例15で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:31〕後述の実施例15で行われたPCR法に用いられたプライマーの塩基配列を示す。
本願明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を次に挙げる。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェノール
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−
1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキ
シイミド
DCC :N、N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド
後述の実施例2で得られた形質転換体Escherichia coli JM109/pCAG213−1は2002年10月15日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−8207として寄託されている。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
マウス型hHI7T213遺伝子の組織における発現
マウス型hHI7T213遺伝子を取得するため、hHI7T213遺伝子をプローブとして、マウスゲノムライブラリー(129/SvJ、東洋紡)に対して、プラークハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後は、最終0.5xSSCの塩濃度で65℃にて洗浄し、単一プラーク(#8 配列番号:8、#11 配列番号:6)を得た。得られた遺伝子のうち、#8遺伝子(mMrgA6に相当)と#11遺伝子(mMrgA4に類似)について、各組織における内在の遺伝子発現を調べた(図1)。
C57BL/6マウス(日本チャールズリバー)各組織について、RT−PCRサザンハイブリダイゼーションを行った。即ち、脊髄後根神経節、脳、小腸、筋肉、心臓、皮質、腎臓、肝臓、脾臓、精巣の各組織より全RNAを調製し、逆転写酵素処理を行った。次に、#8と#11に共通のアミノ酸配列(CLSV(M/L)CPIWYおよびLVF(L/F)LCGLP)をもとにしたプライマーセット(PIWY primer: TGCCTGTCTGT(C/A)CT(G/A)TGCCC(C/T)ATCTGGTAT(配列番号:9)およびCGLP primer: GGGCAA(C/T)CC(G/A)CAGAGGA(G/A)AAAAACCAAAA(配列番号:10))によりPCRを行った反応物を電気泳動後、メンブレンフィルターに移した。トランスファーしたフィルターに対して、両因子にそれぞれ特有のアミノ酸配列(#8: TKYEDDYG、#11: GPKYVIDS)に相当するオリゴDNA(#8 probe: TACCAAATATGAAGATGACTATGG(配列番号:11)、#11 probe: GGTCCCAAATATGTAATTGACTCT(配列番号:12))をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行い、両因子が発現している組織を調べた。このとき、プローブの標識にはOligo dT tailing kit(ロッシュ)を用い、ハイブリダイゼーション後の洗浄は2xSSC溶液にて42℃で行った。#8遺伝子は若齢期より脳で発現が認められ、成熟期脳および精巣で明瞭に発現していた。それに対し、#11遺伝子も若齢期より脊髄後根神経節で明瞭な発現が認められ、他にも成熟期脳、筋肉、心臓、および精巣で発現していた。
以上の成績から、マウスにおけるMrg遺伝子群の中には、脊髄後根神経節以外にも発現している事実が判明した。
トランスジェニックラット作出用発現ベクターの構築
トランスジェニックラット作出用発現ベクター、pCAG213-1を常法に基づいて構築した(図2)。
本プラスミドはhHI7T213遺伝子をコードするDNA断片(配列番号:4)がpCXN2のEcoRIサイトに挿入されたものである。hHI7T213遺伝子の作製、および、プラスミドpCXN2の内容は下記の(1)、(2)に示した。
(1)hHI7T213遺伝子:ヒト由来hHI7T213遺伝子(配列番号:4、特開平2000−166576号公報)をコードするDNAに対して、TTGAATTCGCCACCATGGATTCAACCATCCCAGTCT(配列番号:13)および、TTGAATTCTTATCACTGCTCCAATCTGCTTCCCGACAGCT(配列番号:14)のプライマーを用いて、PCR法を行い、得られた断片をEcoRIで切断した970bp断片。
(2)pCXN2:ニワトリアクチンプロモーターを含むCAGプロモーター(1700bp)、ウサギグロビンポリA付加シグナルを含む領域(700bp)、SV40複製開始領域、アンピシリン耐性遺伝子、およびネオマイシン耐性遺伝子を有する全長5900bpのプラスミド。
pCAG213-1を大腸菌JM109に形質転換して大腸菌JM109/pCAG213−1を得た。トランスジェニックラット作出の際には、pCAG213−1をSalIおよびPvuIで切断した後、BamHIの部分消化により目的とする3370bpの断片を得た。
hHI7T213を導入したトランスジェニックラットの作製
採卵用雌ラット(Wistar系統、9週齢)に30IUのPMSGを腹腔内投与 し、12時間明期/12時間暗期の飼育室で2日間飼育後、5IUのhCG を腹腔内投与して雄ラット(Wistar系統、12週齢)と交配させた。別途、自 然発情している受胚用雌ラット(Wistar系統、9から13週齢)を精管結紮雄ラッ ト(Wistar系統、10週齢以上)と交配させた。翌日、膣栓形成により交尾を確認 した採卵用雌ラットの腹腔を開いて卵管を取り出し、20%FCSを含むHER培地( HAM−F12粉末培地(大日本製薬)3.180g、RPMI−1640粉末培地( 大日本製薬)1.040g、MEM Eagle粉末培地(大日本製薬)0.950g 、NaHCO3(和光純薬)0.780g、Penicillin-G(GIBCO BRL) 50000UおよびStreptomycin(GIBCO BRL)50000Uを500mlの 蒸留水に溶解)中、実体顕微鏡下にピンセットで受精卵を取り出した。卵丘細胞がとれ た受精卵をピペットで吸い上げ、ミネラルオイルで覆われた20%FCSを含むHER 培地のドロップ中に入れて、インジェクションするまでの間37℃、5% CO2下 で培養した。
受精卵をミネラルオイルで覆われた20%FCSを含むPBSのドロップ中に入れて ホールディングピペットで吸引固定した。実施例2で調製したインジェクション断片溶 液(10μg/ml)をインジェクションピペットに吸引し、実体顕微鏡下にインジェ クションピペットを受精卵の雄性前核に突き刺し、インジェクション断片を注入した。 インジェクション終了後、受精卵をミネラルオイルで覆われた20%FCSを含むHE R培地のドロップ中に入れて、受胚用雌への移植までの間37℃、5% CO2下 で培養した。
膣栓形成により偽妊娠状態を確認した受胚用雌ラットをネンブタールで麻酔後、後背 部を切開して脂肪塊をピンセットで摘まんで引き出し、クレンメで固定した。実体顕微 鏡下に卵巣嚢をピンセットで引き裂き、8〜13個の受精卵をトランスファーピペット を用いて卵管開口部に注入した。卵巣と卵管を体内に戻して切り口を縫合した後、12 時間明期/12時間暗期の飼育室で飼育を続けた。胚移植を0日として22日後に 仔ラット(F0)が産まれた。仔ラットへの導入遺伝子の伝達は、尾部を1cm 程度ハサミで切り取り、該組織抽出液から常法によりDNAを単離してPCR法により 確認した。
導入遺伝子の伝達が確認されたF0個体は、生殖可能になった段階でWistar ラットと交配させて産仔(F1)を得た。上記と同様に導入遺伝子の伝達を確認し 、導入遺伝子を有するF1個体同士を兄妹交配させ、導入遺伝子に関してホモ接合 体を得た。
トランスジェニックラットの遺伝子解析
4週齢に達した出産仔の尾からB.Hoganら(Manupulating The Mouse Embryo 、1986、Cold Spring Harvor Laboratories)の方法で採取したDNAを用 いて、hHI7T213遺伝子(実施例2)の塩基配列を基に設計したプライマー( 5'-TGAGCTTCACGGGGCTGACGTGCATCGTTT-3'(配列番号:15))、および5'-TTGGCAC TGCTGTTAAGAGCGGACAGGAAA-3'(配列番号:16))を用いてPCRを行った。合計 168個体の産仔ラットを解析した結果、720bpのPCR断片の検出できたPC R陽性個体は6個体であった。
これら6個体のPCR陽性個体のゲノムDNAをサザンハイブリダイゼーション法に より解析した。すなわち、5μgのDNAをEcoRIで完全に切断し、1.0% アガロースゲル電気泳動後、ナイロンフィルターへ移した。このフィルターを、実施例 2で得られたhHI7T213遺伝子を含むDNA断片をDIG RNAラベリングキ ット(ロッシュ・ダイアグノスティックス社製)で標識したプローブと一晩ハイブリダ イズし、2xSSC、0.1%SDSにて室温で2回洗浄し、次に0.1xSSC 、0.1%SDSにて68℃で2回洗浄した。検出にはDIG蛍光検出キット(ロッシ ュ・ダイアグノスティックス社製)を用いた。その結果、これら6個体は、全てhHI 7T213由来の970bpの断片が確認され、hHI7T213遺伝子の導入が確 認された。また、導入された遺伝子のコピー数は13M系統が30コピー、82F 系統が1コピー以下、90F系統が1コピー以下、92M系統が1コピー以 下、96M系統が5コピー、148M系統が1コピーであることが確認さ れた。
ヘテロザイゴートのトランスジェニックラット取得
実施例4で得られた系統(第1世代(F0))が12週齢に達した時、Wistar (日本クレア)系統ラットと交配し、第2世代(F1)の取得を試みた。4週齢 に達した時、実施例4に記載の方法でPCRを行い、ヘテロザイゴートを選抜し、実施 例5に用いたが、第2世代が取得されたのは、13M、96M、148M の3系統のみであった。
トランスジェニックラット各系統のhHI7T213mRNAのTaqMan解析
実施例5で得た8週齢のトランスジェニックラット(F1)から摘出した脳 、心臓、腎臓、約500mgをISOGEN(ニッポンジーン社製)中でホモジナイズ し、常法によりtotal RNAを抽出した。total RNA 5μgを使用し 、First strand cDNA synthesis kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製) を用いてプロトコールに従ってcDNA合成を行い、テンプレートとした。TaqMan 解析のプライマーとして、hHI7T213遺伝子の検出には、Forward primer( 5'-TCCTGTCCGCTCTTAACAGCA-3'(配列番号:17))、Reverse primer(5' -TTTTGACGCTGCCTAAAGGAG-3'(配列番号:18))、およびFAM標識TaqMan p rimer(5'-TGCCAACCCCATCATTTACTTCTTCGTG-3'(配列番号:19))のプライマ ーセットを用いてTaqMan解析(TaqMan7700、Applied Biochemicals)を行 った。内部標準であるG3PDHの検出には、rodent G3PDH セット(Applied B iochemicals)を用いた。また、陰性コントロールとして、実施例5で行われたPCR により野生型と判断された個体を用いた。hHI7T213遺伝子発現は13M、 96M、148M系のすべての臓器で認められた(図3)。96Mと13 Mとは発現様式は同じであるが、発現量は96Mの方が多いと考えられた。そ れに対し、148Mの発現量は、13Mおよび96Mに比べて少なく、発 現様式も異なっていたことから、挿入場所による影響が示唆された。
トランスジェニックラットの特徴観察
実施例5で取得された13Mおよび96MのF1個体では白内障、粗毛を発症 する個体がみられたが、その頻度と程度は96Mにおいて高かった。それに対して、 遺伝子発現量が低い148Mでは異常は認められなかった。また、96Mでは生後 7日齢付近をピークとして一過性の皮膚発疹、および落屑が認められた(図4)。落 屑を生じる個体は産仔の50%以上であったが、各個体における落屑の程度にはばら つきがあった(図4a-b)。以上の成績より、hHI7T213遺伝子過剰発現ラ ットの表現型の典型例は13Mと96Mであると考えられ、症状が明確であること から、以後の解析には主に96Mを用いた。
トランスジェニックラットにおけるhHI7T213遺伝子の組織分布
各組織におけるhHI7T213遺伝子発現量の測定を実施例6と同様にして行った 。即ち、96Mの11週齢のトランスジェニックラット(F1)について、 脳、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、網膜、水晶体、皮膚、小腸、胃、筋肉、肺から実施例 6で示したようにtotal RNAを調製し、TaqMan解析を行った。このとき、 G3PDHまたはアクチン遺伝子を内部標準に用いた。G3PDHの検出には、rodent G3PDH セット(Applied Biochemicals)を用い、アクチン遺伝子の検出にはFo rward primer
(5'-CGTGAAAAGATGACCCAGATCA-3'(配列番号:18))、 Reverse primer (5’-ACACAGCCTGGATGGCTACGTA-3’(配列番号:19))、VIC標識 TaqMan primer (5'-TTTGAGACCTTCAACACCCCAGCCA-3’(配列番号:20))を用 いた。いずれの臓器からもhHI7T213遺伝子発現が認められたが、発現量は心臓 、腎臓、水晶体、皮膚、および、筋肉で多い傾向にあった(図5)。
トランスジェニックラットの病理解析とhHI7T213遺伝子発現
5週齢ラットの主要臓器において、病理検索とhHI7T213遺伝子発現につ いて調べた。病理解析は以下のように行った。ラットの肝臓、腎臓、心臓、脾臓、肺、 副腎、精巣、卵巣、および、眼球を摘出し、10%中性緩衝ホルマリン液にて固定し た後、常法に従い、パラフィン包埋を行い、4 μmの厚さで薄切した。次に、 ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標本を作製後、鏡検した。眼球の固定には Davidson固定液中30分の処理を、10%中性緩衝ホルマリン液処理の前に加え た。hHI7T213遺伝子発現はIn situ hybridization法により調べた。この とき、DIGで標識したリボプローブの作製は以下のように行った。hHI7T21 3遺伝子を含む1.0 kbpの断片を挿入したプラスミドpCRScript 213-2を作製 し、5'突出の制限酵素で切断後、T3ポリメラーゼ(アンチセンスプローブと しては、XhoI切断を行った)またはT7ポリメラーゼ(センスプローブとしては 、NotI切断を行った)で転写した。ハイブリダイゼーションには、厚さ25μ mの凍結切片、または厚さ4μmのパラフィン切片を用いた。切片を4%パ ラホルマリン-0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.4)にて固定した後、Proteinase K(1μg/ml、ロッシュ、37℃10分)処理、0.2 M HCl処理 10分、アセチル化処理10分の工程を行った。プローブを添加して、55℃にて 一晩ハイブリダイゼーション後、2xSSCを含む50%ホルムアミド液にて55 ℃で洗浄後、5μg/mlのRNaseA(ニッポンジーン)処理を行い、最終濃度 0.4xSSCにて55℃で洗浄した。シグナルの検出には、抗DIG-AP抗体(ロッ シュ)処理後、BCIPおよびNBA(Promega)にて一晩暗箱中で発色させた 。必要に応じ、エオジン(和光)またはNuclear fast red(フナコシ)を 用いて対比染色を行った。
病理検査の結果、肝臓、心臓、脾臓、肺、副腎、精巣、卵巣では異常は認められなか った(表1)。
Figure 2004166691

眼球においては、水晶体線維の融解/変性が認められ、典型的な白内障と診断さ れた(図6a-d)。また、腎臓では好塩基性尿細管増加の所見が得られ、腎臓で細 胞障害が起きたこと、または、尿細管細胞の増殖促進活性が高いことが示唆された(図 7a-b)。さらに、若齢個体の眼球および皮膚について上記と同様に病理検索を行 ったところ、生後3日齢から7日齢では、眼球においても5週齢時と同様 な水晶体線維の異常が認められ(図6e-j)、中には水晶体前極での水晶体上皮の 重層化がみられる個体もあり(図6g,h)、白内障は若齢から発症していることが わかった。また、若齢期の皮膚においては、表皮肥厚と錯角化の所見が得られた(図8 a,c,e,g)。これら異常のみられた臓器におけるhHI7T213遺伝子発現を in situ hybridizationにより調べたところ、眼球においては、胎生12日齢にお いて、将来水晶体線維となる部位での発現がみられた(図6k,l)。腎臓において は糸球体よりはむしろ尿細管または髄質に発現がみられ(図7c-e)、皮膚におい ては表皮および毛穴付近に発現がみられた(図8b,d,f,h)。これらの発現部位は いずれも組織学的異常部位とおおむね一致していた。
トランスジェニックラットにおける白内障とhHI7T213遺伝子発現量
hHI7T213遺伝子発現と表現型異常との関連を明確にするため、hHI7T 213遺伝子発現量と表現型異常の相関について調べた。即ち、96Mおよび13 Mについて、実施例8と同様にしてTawMan解析により、実施例9に用いた個体 におけるhHI7T213遺伝子発現を調べ、白内障の程度と比較した。その結果を 図9に示す。
13Mに比べ、水晶体線維の融解/変性の程度の高い96Mの方が、筋肉 および皮膚におけるhHI7T213遺伝子発現量が多かった。また、同一系統内で は、白内障の程度の高い個体の方が、hHI7T213遺伝子発現が相対的に高い傾 向にあった。以上の成績から、hHI7T213遺伝子高発現とトランスジェニック ラットにみられる表現型異常とは相関している可能性が考えられた。
トランスジェニックラットにみられる表皮分化異常
抗keratin6抗体(フナコシ)、抗keratin14抗体(コスモバイオ)、抗 keratin10抗体(DAKO)、抗loricrin抗体(フナコシ)、抗PCNA抗体 を用いた免疫組織染色は下記の様に行った。即ち、パラフィン切片に対してキシレン 系列、アルコール系列により脱パラフィン化を行った後、antigen unmasking solu tion(フナコシ)750 ml中にて電子レンジで沸騰後、さらに7分間沸騰を 続けた。1時間以上かけて室温に戻した後、100%アセトン処理5分に よる処理を行った。ベクタステインキット(フナコシ)の定法により、ブロッキング 、各種一次抗体、二次抗体、3% H2O2-PBS(5分)、ABC試薬処理後 、DAB染色液により発色反応(10分以内、フナコシ)を行った。必要に応じ 、Nuclear fast red(フナコシ)またはヘマトキシリンで対比染色した。抗ke ratin14抗体、抗keratin10抗体、抗loricrin抗体染色には、連続切片を 用いた。その結果を図10に示す。
7日齢の対照ラットでは創傷、増殖時関連の表皮タンパク質であるkeratin 6遺伝子発現細胞はほとんどみられず、増殖関連抗原であるPCNA陽性細胞は表 皮基底層および毛穴付近にのみ認められた(図10d-f)。それに対して、7 日齢トランスジェニックラットのhHI7T213遺伝子発現が多い表皮部位では 、keratin 6遺伝子発現細胞の増加、および、PCNA陽性細胞の増加がみられ た(図10j-l)。従って、hHI7T213遺伝子が高発現した表皮では、細 胞増殖促進活性が亢進していることが示唆された。
次に、表皮の分化状態を調べるため、基底細胞層で発現するkeratin 14 、有 棘細胞層で発現するkeratin 10、および、顆粒細胞層で発現するloricrin遺 伝子の発現を調べた。NonTgではkeratin 14、keratin 10、および、 loricrin陽性細胞には異常がみられなかったのに対し(図10a-c)、hHI 7T213遺伝子発現が多い表皮部位では、keratin14、keratin10、およ び、loricrin陽性細胞が増加していた(図10g-i)。
以上の成績より、表皮肥厚はkeratin14、 keratin10、 および、 loricrin陽性細胞の増加と関連していることが示唆された。keratin6および keratin14陽性の増殖性細胞の増加に伴い、表皮基底層細胞のターンオーバー時間 が短縮し、その結果、脱核化に要する時間が不十分となり、核が残存した状態である 錯角化がみられ、落屑として観察されたと考えられる。
トランスジェニックラットにみられる表皮自由神経終末
ウサギ抗PGP9.5抗体、およびマウス抗keratin6抗体を用いた二重免疫組織 化学により表皮自由神経終末を調べた。二次抗体には、Alexa488標識抗ウサギ二 次抗体、およびCy3標識抗マウス二次抗体を用いた。即ち、厚さ25μmの新鮮 凍結切片に対して、antigen unmasking solution(フナコシ)750ml中に て電子レンジで沸騰後、さらに1分間沸騰を続けた。1時間以上かけて室温 に戻した後、100%アセトン5分による処理を行った。切片に対して、ブロッ キング、一次抗体、二次抗体処理を行った後、レーザー顕微鏡(LSM510、Zeis s)にて観察した。その結果を図11に示す。
7日齢の対照ラット(図11a-c)では、keratin 6陽性はほとんど 観察されず、自由神経終末も表皮に多く認められた。それに対して、keratin 6 陽性の多い7日齢トランスジェニックラット(図11d-f)では、表皮自由 神経終末が、対照ラットに比してかなり豊富であった。また、表皮のみならず、表皮 下でも自由神経終末が対照ラットに比して豊富であった(図11g-i)。
脊髄神経節でのhHI7T213遺伝子の発現解析
hHI7T213遺伝子は脊髄神経節の自由神経終末を有する神経細胞の一部に発現していることが報告されており、実施例12でみられた豊富な自由神経終末は本来hHI7T213遺伝子が発現している脊髄神経細胞での外来遺伝子過剰発現に基づく作用増強の結果であることも考えられる。この点を明らかにするため、始めにトランスジェニックラットの脊髄神経節での導入遺伝子の発現を調べた。耐性18日齢のNonTgとトランスジェニックラットから脊髄神経節、皮膚、眼球、および腎臓を摘出し、ISOGEN(ニッポンジーン社製)中でホモジナイズし、常法によりtotal RNAを抽出した。脊髄神経節の場合にはtotal RNA 0.1 μgを使用し、皮膚、眼球、および腎臓の場合には、total RNA 1 μgを使用して、First strand cDNA synthesis kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いてプロトコールに従ってcDNA合成を行い、テンプレートとした。TaqMan解析(TaqMan7700、Applied Biochemicals)のプライマーは実施例6に示した。即ち、hHI7T213遺伝子の検出には、Forward primer(5’-TCCTGTCCGCTCTTAACAGCA-3’(配列番号:17))、Reverse primer(5’-TTTTGACGCTGCCTAAAGGAG-3'(配列番号:18))、およびFAM標識TaqMan primer(5'-TGCCAACCCCATCATTTACTTCTTCGTG-3'(配列番号:19))のプライマーセットを用い、内部標準のG3PDHの検出には、rodent G3PDH セット(Applied Biochemicals)を用いた。図12に示すように脊髄神経節、皮膚、眼球、および腎臓いずれもhHI7T213遺伝子が発現していた。
トランスジェニックラットのCGRP陽性神経終末
実施例13より、hHI7T213遺伝子がトランスジェニックラットの脊髄神経節でも発現していたことから、自由神経終末が豊富であるのは導入遺伝子高発現による作用増強の可能性が考えられる。脊髄神経節での高発現に基づく作用増強に起因するなら、表皮いずれにおいても自由神経終末のみが特異的に豊富になり、かつ、CGRP陽性神経線維のような他種類の神経線維には変化がないことが予想される。この点を明らかにするため、自由神経終末以外の神経線維分布を調べるため、CGRP染色を合わせて行った。このとき、トランスジェニックラット皮膚は、外見上正常な検体、および異常を示す検体の両方で比較を行い、変化が脊髄神経節に起因するのか、異常のある表皮に限定されるのかを明らかにすることも合わせて行った。
一次抗体は、ウサギ抗CGRP抗体、ウサギ抗PGP9.5抗体、およびマウス抗keratin6抗体を用い、二次抗体には、Alexa488標識抗ウサギ二次抗体、およびCy3標識抗マウス二次抗体を用いた。厚さ25μmの新鮮凍結切片に対して、antigen unmasking solution(フナコシ)750ml中にて電子レンジで沸騰後、さらに1分間沸騰を続けた。1時間以上かけて室温に戻した後、100%アセトン5分による処理を行った。切片に対して、ブロッキング、一次抗体、二次抗体処理を行った後、レーザー顕微鏡(LSM510、Zeiss)にて観察した。
7日齢の外見上正常なトランスジェニックラット皮膚では、keratin 6陽性像はいずれもNonTgと同様であり、異常は認められなかった。(図12a-f)。それに対して、異常なトランスジェニックラット皮膚では、keratin 6陽性像、PGP9.5陽性線維共に、NonTgに比してかなり豊富であり、同時にCGRP陽性線維も豊富であった(図12g-i)。上記の成績から、トランスジェニックラットで神経終末が豊富になる現象は表皮異常部位に限局しており、かつ、PGP9.5陽性線維を含む自由神経終末に特異的なことではないことも判明した。従って、トランスジェニックラットにおける皮膚異常はhHI7T213遺伝子が脊髄神経節で過剰発現していることに起因するのではなく、異常のある表皮側から何らかの誘導因子である神経栄養因子が出ていることに起因する可能性が示唆された。
表皮異常部位での神経栄養因子群の発現増強
実施例14で異常のあるトランスジェニックラット皮膚では、神経栄養因子が産生されている可能性が示唆されたため、表皮におけるNGF、BDNF遺伝子の発現量を調べた。NonTg、外見上正常なトランスジェニックラット、及び異常のあるトランスジェニックラットの皮膚を摘出し、ISOGEN(ニッポンジーン社製)中でホモジナイズし、常法によりtotal RNAを抽出した。total RNA 5 μgを使用して、First strand cDNA synthesis kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いてプロトコールに従ってcDNA合成を行い、テンプレートとした。TaqMan解析(TaqMan7700、Applied Biochemicals)のプライマーには以下を用いた。hHI7T213遺伝子の検出には、Forward primer(5'-TCCTGTCCGCTCTTAACAGCA-3'(配列番号:17))、Reverse primer(5'-TTTTGACGCTGCCTAAAGGAG-3'(配列番号:18))、およびFAM標識TaqMan primer(5'-TGCCAACCCCATCATTTACTTCTTCGTG-3'(配列番号:19))を、NGF遺伝子の検出には、Forward primer(5'-AGCCCACTGGACTAAACTTCAGC-3' (配列番号:23))、Reverse primer(5'- GGGCACTGCGGGCTC -3' (配列番号:24))、およびFAM標識TaqMan primer(5'-TTCCCTTGACACAGCCCTCCGC-3' (配列番号:25))を、BDNF遺伝子の検出には、Forward primer(5'-GGTGATGCTCAGCAGTCAAGT-3' (配列番号:26))、Reverse primer(5'-CGAACCCTCATAGACATGTTTG-3' (配列番号:27))、およびFAM標識TaqMan primer(5'-TTTGGAGCCTCCTCTGCTCTTTCTGC-3' (配列番号:28))プライマーセットを用い、内部標準のアクチン遺伝子の検出には、Forward primer(5'-CGTGAAAAGATGACCCAGATCA -3' (配列番号:29))、Reverse primer(5'- GCACAGCCTGGATGGCTA -3' (配列番号:30))、およびVIC標識TaqMan primer(5'-TTTGAGACCTTCAACACCCCAGCCA-3' (配列番号:31))を用いた。図14aに示されるように、トランスジェニックラットにおいては、異常のある皮膚でのhHI7T213遺伝子発現量は正常な皮膚での発現量よりも有意に高かった。また、NGFおよびBDNF遺伝子発現量はNonTgと正常なトランスジェニックラットの皮膚での発現量の間には差がなかったのに対し、異常なトランスジェニックラットの皮膚では、有意に発現量が多かった(図14b,c)。以上の成績から、表皮分化異常を伴うトランスジェニックラット皮膚ではNGFおよびBDNFといった神経栄養因子群の発現量が増加したため、PGP9.5陽性神経線維が豊富になったと考えられた。
マウスの各組織における内在性hHI7T213遺伝子の発現を示す。上部パネルは#8遺伝子の発現を、下部パネルは#11遺伝子の発現をそれぞれ表す。P0、E18、Ad、D、B、I、M、H、C、K、L、SおよびTはそれぞれ、新生仔マウス、18日齢胎児マウス、成体マウス、脊髄後根神経節、脳、小腸、筋肉、心臓、皮質、腎臓、肝臓、脾臓および精巣を表す。 トランスジェニックラット作出用発現ベクターpCAG213−1の構築図である。 トランスジェニックラット各系統におけるhHI7T213遺伝子の発現を示す。Non Tgは非トランスジェニックラットを用いた実験であり、Br、He、Kiはそれぞれ、脳、心臓、腎臓を表す。グラフのエラーバーは標準誤差を表す。 トランスジェニックラット96Mの特徴を示す。(a)左側がトランスジェニックラット、右側が非トランスジェニックラットである。矢印は落屑を示す。(b)5日齢のトランスジェニックラットの結果を示す。(c)9日齢の非トランスジェニックラットの結果を示す。(d)9日齢のトランスジェニックラットの結果を示す。 トランスジェニックラット96MにおけるhHI7T213遺伝子の組織分布を示す。Br、He、Ki、Sp、Li、Re、Le、Sk、In、MuおよびLuはそれぞれ、脳、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、網膜、水晶体、小腸、筋肉および肺を表す。 トランスジェニックラット96Mの水晶体の病理解析の結果を示す。対照としての非トランスジェニックラットの結果を左側パネル(a、c、e、f、i、k)に、96Mの結果を右側パネル(b、d、g、h、j、l)に表す。5W(a−d)は5週齢、P3(e−j)は3日齢、E12(k、l)は胎生12日齢を示す。 腎臓における病理解析とhHI7T213遺伝子発現の結果を示す。aおよびbはそれぞれ、5週齡の非トランスジェニックラットおよびトランスジェニックラットのヘマトキシリン/エオシン染色(H & E staining)の結果を、cからeは3日齡の非トランスジェニックラット(c)およびトランスジェニックラット(dおよびe)の腎臓におけるhHI7T213遺伝子のin situ ハイブリダイゼーションの結果を表す。 トランスジェニックラットにおける表皮肥厚および錯角化の観察結果を示す。(a、b、e、f)および(c、d、g、h)はそれぞれ、非トランスジェニックラットおよびトランスジェニックラットを用いた結果を表す。(a、c、e、g)はヘマトキシリン/エオシン染色の結果を、また、(b、d、f、h)はhHI7T213遺伝子のin situ ハイブリダイゼーションの結果を表す。(a−d)は3日齢、(e−h)は7日齢を示す。 トランスジェニックラット96Mおよび13Mの筋肉および皮膚におけるhHI7T213遺伝子の発現量を示す。個体番号は表1に対応する。 トランスジェニックラット96Mの7日齢における表皮分化異常の観察結果を示す。(aからf)および(gからl)はそれぞれ、非トランスジェニックラットおよびトランスジェニックラットを用いた結果を表す。各種抗体染色およびhHI7T213遺伝子のin situハイブリダオゼーション(f、l)は上に表記した。 トランスジェニックラット96Mの7日齢における表皮自由神経終末の観察結果を示す。Keratin6およびPGP9.5はそれぞれ、マウス抗ケラチン6抗体およびウサギ抗PGP9.5抗体を用いていることを示す。また、Non(a−c)は対照ラット(非トランスジェニックラット)、Tg(d−i)はトランスジェニックラットを表し、表皮の境界を点線で示した。 トランスジェニックラット96Mの胎生18日齢におけるhHI7T213遺伝子の発現を示す。Non Tgは非トランスジェニックラットを用いた実験であり、D、S、E、Kはそれぞれ、脊髄神経節、皮膚、眼球、腎臓を表す。 トランスジェニックラット96Mの生後7日齢における神経終末の観察結果を示す。Keratin6、PGP9.5、CGRPはそれぞれ、マウス抗ケラチン6抗体、ウサギ抗PGP9.5抗体、およびウサギ抗CGRP抗体を用いていることを示す。また、NonTg(a-c)は対照ラット(非トランスジェニックラット)、Tg-Norは外見上正常なトランスジェニックラットの皮膚を、Tg-Abは異常な皮膚を示す。 トランスジェニックラット96Mの生後7日齢におけるhHI7T213遺伝子、NGF遺伝子、およびBDNF遺伝子の発現を示す。NonTg(a-c)は対照ラット(非トランスジェニックラット)、Tg-Norは外見上正常なトランスジェニックラットの皮膚を、Tg-Abは異常な皮膚を示す。値はn=4の平均値であり、SEはエラーバーを示す(t-TEST:**はp<0.01、***はp<0.001)。

Claims (40)

  1. 外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子を組み込んだDNAを有する非ヒト哺乳動物またはその一部。
  2. 非ヒト哺乳動物がラットである請求項1記載の動物またはその一部。
  3. 外来性HI7T213遺伝子が配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を有するHI7T213をコードする遺伝子である請求項1記載の動物またはその一部。
  4. 外来性HI7T213遺伝子が配列番号:3で表されるアミノ酸配列からなるヒト由来HI7T213をコードする遺伝子である請求項1記載の動物またはその一部。
  5. (1)白内障を発症している、
    (2)粗毛を発症している、
    (3)一過性の皮膚発疹または落屑が認められる、
    (4)眼球において、水晶体線維の融解/変性が認められる、
    (5)眼球において水晶体線維の異常が認められる、
    (6)水晶体前極での水晶体上皮の重層化がみられる、
    (7)腎臓で好塩基性尿細管が増加している、
    (8)腎臓で細胞障害が起きている、
    (9)尿細管細胞の増殖促進活性が高い、
    (10)若齢期の皮膚において、表皮肥厚と錯角化が認められる、
    (11)増殖関連抗原であるPCNA陽性細胞が表皮基底層および毛穴付近に認められる、
    (12)ケラチン6遺伝子発現細胞の増加またはPCNA陽性細胞の増加が認められる、
    (13)細胞増殖促進活性が亢進している、
    (14)ケラチン14、ケラチン10またはロリクリンの発現亢進を伴う表皮分化異常が認められる、
    (15)ケラチン6陽性部位において表皮自由神経終末が豊富である、
    (16)表皮異常部位での神経栄養因子群の発現が増強している、および
    (17)増殖促進活性に伴う分化異常、
    から選ばれる少なくとも一つの表現型を示す請求項1から4記載の動物またはその一部。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載の動物またはその一部に被験物質を適用し、HI7T213アゴニスト活性またはHI7T213アンタゴニスト活性を検定することを特徴とするHI7T213アゴニストまたはHI7T213アンタゴニストのスクリーニング方法。
  7. 請求項1から5のいずれかに記載の動物またはその一部に被験物質を適用し、請求項5記載の表現型またはがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛もしくは痛覚過敏の改善効果を検定することを特徴とする、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療のために用いられる物質のスクリーニング方法。
  8. 創傷または脊髄損傷の予防および/または治療、あるいは腎再生のために用いられる物質をスクリーニングするための請求項1から4のいずれかに記載の動物またはその一部の使用。
  9. がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療のために用いられる物質をスクリーニングするための請求項1から5のいずれかに記載の動物またはその一部の使用。
  10. 外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子を導入した受精卵。
  11. 外来性HI7T213遺伝子またはその変異遺伝子を含有し、非ヒト哺乳動物において該遺伝子を発現し得るベクター。
  12. 外来性HI7T213遺伝子が配列番号:3で表されるアミノ酸配列からなるヒト由来HI7T213をコードする遺伝子である請求項11記載のベクター。
  13. pCAG213−1で表示される請求項11記載のベクター。
  14. 請求項11記載のベクターで形質転換された形質転換体。
  15. 形質転換体が大腸菌JM109/pCAG213−1(FERM BP−8207)である請求項14記載の形質転換体。
  16. 配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とするGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩。
  17. 配列番号:5で表されるアミノ酸配列からなる請求項16記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩。
  18. 請求項16記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
  19. DNAである請求項18記載のポリヌクレオチド。
  20. 配列番号:6で表される塩基配列からなるDNA。
  21. 請求項18記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
  22. 請求項21記載の組換えベクターで形質転換させた形質転換体。
  23. 請求項22記載の形質転換体を培養し、請求項16記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドを生成せしめることを特徴とする請求項16記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の製造法。
  24. 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩を含有してなる創傷または脊髄損傷の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤。
  25. 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる創傷または脊髄損傷の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤。
  26. 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる創傷、脊髄損傷、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の診断剤。
  27. 請求項16記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体。
  28. 請求項16記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質のシグナル伝達を不活性化する中和抗体である請求項27記載の抗体。
  29. 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなるがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤。
  30. 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる創傷、脊髄損傷、がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の診断剤。
  31. 請求項18記載のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチド。
  32. 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチドを含有してなるがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤。
  33. 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドまたはアゴニストを含有してなる創傷または脊髄損傷の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤。
  34. 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニストを含有してなるがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤。
  35. 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる物質を含有してなる創傷または脊髄損傷の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤。
  36. 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる物質を含有してなるがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤。
  37. 哺乳動物に対して、(i)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩、(ii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、(iii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドまたはアゴニスト、または(iv)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の発現量を増加させる物質の有効量を投与することを特徴とする創傷または脊髄損傷の予防および/または治療法、あるいは腎再生方法。
  38. 哺乳動物に対して、(i)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、(ii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチド、(iii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または(iv)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の発現量を減少させる物質の有効量を投与することを特徴とするがん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療法。
  39. 創傷または脊髄損傷の予防および/または治療剤、あるいは腎再生剤を製造するための、(i)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩、(ii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、(iii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドまたはアゴニスト、または(iv)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の発現量を増加させる物質の使用。
  40. がん、腎障害、白内障、皮膚炎、慢性疼痛または痛覚過敏の予防および/または治療剤を製造するための、(i)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、(ii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチド、(iii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または(iv)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の発現量を減少させる物質の使用。
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