JP2004163661A - 銀塩光熱写真ドライイメージング材料とその製造方法、画像記録方法及び画像形成方法 - Google Patents
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- Non-Silver Salt Photosensitive Materials And Non-Silver Salt Photography (AREA)
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Abstract
【課題】本発明の目的は、高感度、低カブリで、かつ最高濃度が高く、良好な銀色調が得られる銀塩光熱写真ドライイメージング材料とその製造方法、画像記録方法及び画像形成方法を提供することにある。
【解決手段】非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、平均粒子径として2mm以上、10mm以下に解砕された状態で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、平均粒子径として2mm以上、10mm以下に解砕された状態で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高感度、低カブリで、かつ最高濃度が高く、良好な銀色調が得られる銀塩光熱写真ドライイメージング材料とその製造方法、画像記録方法及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療や印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が、作業性の上で問題となっており、近年では、環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。
【0003】
そこで、熱を加えるだけで画像形成ができる銀塩光熱写真ドライイメージング材料が実用化され、上記分野で急速に普及してきている。
【0004】
更に、近年、レーザーイメージャーのコンパクト化や処理の迅速化とともにレーザーイメージャーやレーザーイメージセッタにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像形成することができる写真技術用途の光熱写真材料に関する技術が必要とされている。
【0005】
上記技術としては、例えば、米国特許第3,152,904号、同第3,487,075号、及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.第48頁,1991)等に記載されているように、支持体上に非感光性カルボン酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子及び還元剤を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料(以下、感光材料ともいう)が知られている。この銀塩光熱写真ドライイメージング材料では、溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便で環境を損なわないシステムをユーザーに提供することができる。
【0006】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いる銀供給体である有機銀塩の調製方法としては、様々な方法が知られている。例えば、特開昭49−93310号、特開昭49−94619号及び特開昭53−68702号に記載されている水と水難溶性溶媒の共存液中で有機銀塩を調製する方法、特開昭57−186745号、特開昭47−9432号及び米国特許第3,700,458号に記載されている有機溶媒中で有機銀塩を調製する方法、特開昭53−31611号、特開昭54−4117号、特開昭54−46709号及び米国特許第5,434,043号に記載されている水溶液中で有機銀塩を調製する方法等が挙げられる。
【0007】
しかしながら、これまで知られている銀塩光熱写真ドライイメージング材料で用いる有機銀塩組成物の製造方法においては、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の所望の性能を満足させるために有効な解砕工程や乾燥工程の詳細な条件に関しては、十分に示されていないのが現状である。
【0008】
例えば、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の解砕工程、乾燥工程に関する提案(例えば、特許文献1及び2参照。)や、乾燥工程に関する提案(例えば、特許文献3参照。)がなされてはいるが、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の所望の性能を満たすまでには至っていないのが現状である。
【0009】
また一方で、銀塩光熱写真ドライイメージング材料のいわば永遠のテーマとして、より一層の高画質化が要望されており、とりわけ医療用画像の分野では正確な診断を可能とするための高画質化が切望されている。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−121248号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献2】
特開2001−356446号公報(特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献3】
米国特許第5,434,043号明細書
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高感度、低カブリで、かつ最高濃度が高く、良好な銀色調が得られる銀塩光熱写真ドライイメージング材料とその製造方法、画像記録方法及び画像形成方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の手段により達成される。
【0015】
1.非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、平均粒子径として2mm以上、10mm以下に解砕された状態で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0016】
2.非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、風速2m/s以下の乾燥風で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0017】
3.前記非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、風速2m/s以下の乾燥風で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする前記1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0018】
4.非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、乾燥温度が45℃以下である乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0019】
5.前記非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、乾燥温度が45℃以下で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0020】
6.前記1〜5項のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法で製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0021】
7.感光層が、前記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物を含有することを特徴とする前記6項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0022】
8.非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子の結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物の存在下で形成されたことを特徴とする前記6または7項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0023】
9.前記結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物が、ゼラチンまたはポリビニルアルコールであることを特徴とする前記8項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0024】
10.前記結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物が、分岐脂肪族カルボン酸または脂肪族不飽和カルボン酸であることを特徴とする前記8項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0025】
11.結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物が、炭素数10以下のアルコール類であることを特徴とする前記8項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0026】
12.結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物が、ポリマーラテックスであることを特徴とする前記8項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0027】
13.前記6〜12項のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に画像を記録する画像記録方法であって、走査レーザー光が縦マルチであるレーザー光走査露光機を用いて露光を行うことを特徴とする画像記録方法。
【0028】
14.前記6〜12項のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を、80℃以上、200℃以下の温度で加熱することにより画像形成することを特徴とする画像形成方法。
【0029】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、一般的な銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造工程及び本発明で使用する用語について簡単に説明する。
【0030】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造工程においては、ベヘン酸等の有機脂肪酸(A)のアルカリ溶液に、予め形成されたハロゲン化銀乳剤(B)及び硝酸銀水溶液を加えて有機銀塩分散物(C)を調製する。有機銀塩分散物(C)に水を加えて攪拌し、静置した後浮上物を分離して脱塩する。必要によりこれを数回繰り返す。その後、遠心分離機等により脱水し、スラリー状またはウェットケーキ状の有機銀塩組成物(D)を得て、これを乾燥し、乾燥済の有機銀塩組成物または乾燥済み粉末(E)を得る。乾燥済の有機銀塩組成物または乾燥済み粉末(E)にバインダー及び有機溶剤を加えて攪拌した後、ホモジナオザー等で分散して感光性有機銀塩分散物(F)を得る。この感光性有機銀塩分散物(F)に増感色素、還元剤、カブリ防止剤、色調剤等の各種添加剤を加えて調液した後、支持体上に塗布・乾燥して光熱写真ドライイメージング材料(G)を得る。本発明では、上記工程のうち、本発明は、有機銀塩組成物(D)の解砕、整粒、乾燥、分散の工程に関係するものである。
【0031】
次いで、本発明に用いられる光熱写真ドライイメージング材料の製造方法の詳細について説明する。本発明では、特定の有機銀粒子の状態及び特定の乾燥温度において、有機銀組成物の乾燥を行う製造方法を用いることにより、高画質でありながら、銀塩光熱写真ドライイメージング材料を長期保存したときに生ずるカブリが少なく、かつ、熱現像後の銀画像安定性に優れた銀塩光熱写真ドライイメージング材料とその製造方法、画像記録方法及び画像形成方法を提供することができるようになった。
【0032】
本発明においては、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、平均粒子径として2mm以上、10mm以下に解砕された状態で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことが特徴であり、好ましくは平均粒子径が4mm以上、10mm以下であり、より好ましくは平均粒子径が6mm以上、10mm以下である。
【0033】
本発明で用いることのできる非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子の解砕装置としては、特に限定はなく、あらゆる解砕装置を使用することができ、例えば、転動ミル、振動ミル、ローラーミル、インパクトミル等が挙げられるが、特に、インパクトミルが好ましく用いられる。
【0034】
また、本発明においては、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、風速2m/s以下の乾燥風で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことが特徴であり、好ましくは0.1m/s以上、1.5m/sであり、更に好ましくは0.1m/s以上、1.0m/sである。
【0035】
上記条件を満足するための乾燥機としては、対流伝熱タイプの乾燥機であれば、特に限定はなく使用することができ、例えば、バンド平行流乾燥機、箱型通気流/平行流式乾燥機、多段円盤式乾燥機、気流乾燥機、流動層乾燥機等が挙げられる。本発明においては、特に、流動層乾燥機が好ましく用いられる。
【0036】
また、本発明においては、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、乾燥温度が45℃以下である乾燥工程を経て製造されたことが特徴であり、好ましくは35〜42℃であり、更に好ましくは35〜40℃である。
【0037】
上記条件を満足するための乾燥機としては、特に制限はなく、あらゆる乾燥機を使用することができ、例えば、真空乾燥機、凍結乾燥機、箱形通気流/平行流式乾燥機、気流式乾燥機、噴霧乾燥機を使用することができる。
【0038】
以下に、本発明で好ましく用いることのできる乾燥機の具体例について説明する。本発明においては乾燥は、生産性、過乾燥の防止の観点から、2回以上行っても良い。また、乾燥時における有機銀塩組成物の状態により任意に乾燥温度及び風速を変更しても良い。
【0039】
図1は、本発明で用いることのできる流動層乾燥機の一例を示す断面図である。
【0040】
図1において、1は給気風入口、2は原料投入口を表す。予め設定された温度に制御された給気風が給気風入口1より図示されていないファンを用いて送風される。給気風は、乾燥室3及びバグフィルター4を通過した後、排気口5より排出される。有機銀塩を含有する原料は、原料投入口2より乾燥室3に投入され、目皿板6からの給気風により乾燥室3内において、攪拌、流動しながら乾燥される。その際、乾燥中に生じた微紛はバグフィルター4に捕獲され、機械的振動及び/または空気もしくは窒素等の適当なパルスジェットにより払い落とされて再乾燥される。また、乾燥時の有機銀組成物の状態の変化により、乾燥途中に給気風及び乾燥温度を随時変更することができる。乾燥終了後、ドライ粉末は製品排出部7より回収される。図1で記載の構成からなる流動層乾燥機の具体例としては、(株)大川原製作所製スリットフローが挙げられる。
【0041】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層が、前記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物を含有することにより、本発明の効果をより一層発揮することができ好ましい。
【0042】
以下、本発明で好ましく用いられる前記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物について説明する。
【0043】
前記一般式(1)において、Zは−S−基または−C(R33)(R33′)−基を表し、R33、R33′は、各々水素原子または置換基を表す。R33、R33′の表す置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロヘキシル等の各基)、アルケニル基(例えば、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、イソヘキセニル、シクロヘキセニル、ブテニリデン、イソペンチリデン等の各基)、アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニリデン等の各基)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等の各基)、ヘテロ環基(例えば、フリル、チエニル、ピリジル、テトラヒドロフラニル等の各基)等の他、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、スルホニルオキシ、ニトロ、アミノ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、スルホニル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルフアモイル、シアノ、スルホ等の各基が挙げられる。R33、R33′として好ましくは、水素原子またはアルキル基である。
【0044】
R31、R32、R31′、R32′は各々置換基を表すが、置換基としては、上述のR33、R33′の表す置換基と同様な基が挙げられる。R31、R32、R31′、R32′として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基等であるが、アルキル基が更に好ましい。アルキル基上の置換基としては、前述のR33、R33′の表す置換基と同様な基が挙げられる。R31、R32、R31′、R32′として更に好ましくは、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、1−メチル−シクロヘキシル等の3級アルキル基である。
【0045】
X31、X31′は、各々水素原子または置換基を表すが、置換基としては、前述のR33、R33′の表す置換基と同様な基が挙げられる。
【0046】
以下、一般式(1)で表されるビスフェノール化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化2】
【0048】
【化3】
【0049】
一般式(1)で表される化合物の銀イオン還元剤に対する添加量比(一般式(1)で表される化合物/銀イオン還元剤(モル比))は、0.001〜0.2の範囲であり、好ましくは0.005〜0.1の範囲である。
【0050】
次いで、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に関する各構成要素について、その詳細を説明する。
【0051】
本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩は、還元可能な銀源であり、炭素数10〜30、好ましくは15〜25の脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。好適な銀塩の例としては例えば、没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩が挙げられる。これらの銀塩のうち、好ましくはベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀が挙げられる。また、本発明においては、脂肪族カルボン酸銀塩が2種以上混合されていることが、現像性を高めることにより、高濃度、高コントラストの銀画像を得られる点で好ましく、例えば、2種以上の脂肪族カルボン酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
【0052】
本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を調製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを混合して脂肪族カルボン酸銀塩の結晶を調製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。本発明で使用するアルカリ金属塩の種類としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの混合であることが好ましく、比率としては1:95〜95:5の範囲であることが好ましく、特に10:90〜75:25の範囲であることが好ましい。脂肪族カルボン酸と反応して脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩となったときに上記の範囲で使用することで、反応液の粘度を良好な状態に制御できるため好ましい。
【0053】
本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩粒子は、遊離カルボン酸と銀塩の混合物であり、本発明に係る感光性乳剤は、脂肪族カルボン酸を該脂肪族カルボン酸銀塩粒子に対して3mol%以上、10mol%以下含有することが特徴の一つであり、好ましくは4mol%以上、8mol%以下含有することである。
【0054】
本発明において、脂肪族カルボン酸の具体的な測定方法としては、下記の方法に従って、全脂肪族カルボン酸量、遊離脂肪族カルボン酸量をそれぞれ求め、その比から脂肪族カルボン酸量を計算して求めることができる。
【0055】
〔全脂肪族カルボン酸量の定量〕
1)試料約10mg(感光材料から剥離するときは、剥離した質量)を正確に秤量し、200mlナス型フラスコに入れる
2)メタノール15mlと4mol/L塩酸3mlとを加え、1分間超音波分散機を用いて分散する
3)テフロン(R)製沸石を入れ、60分間リフラックスする
4)冷却後、冷却管の上からメタノール5mlを加え、冷却管に付着したものをナス型フラスコに洗い入れる。これを2回繰り返す
5)得られた反応液を酢酸エチルで抽出する(酢酸エチル100ml、水70mlを加えて分液抽出を2回行う)
6)常温で30分間真空乾燥する
7)10mlメスフラスコに、内部標準として、ベンズアントロン約100mgをトルエンに溶解し、トルエンで100mlに定容したベンズアントロン溶液を1ml入れる
8)試料をトルエンに溶かして7)のメスフラスコに入れ、トルエンで定容する
9)下記の測定条件にてGC測定を行い、全脂肪族カルボン酸量を定量する
装置:HP−5890+HP−ケミステーション
カラム:HP−1 30m×0.32mm×0.25μm(HP製)
注入口:250℃
検出器:280℃
オーブン:250℃一定
キャリアガス:He
ヘッド圧:80kPa
〔遊離脂肪族カルボン酸量の定量〕
1)試料約20mgを正確に秤量し、200mlナス型フラスコに入れ、メタノール10mlを加えて、1分間超音波分散を行う(遊離有機カルボン酸が抽出される)
2)それをろ過して、ろ液を200mlナス型フラスコに入れ、乾固する(遊離有機カルボン酸が分離される)
3)メタノール15mlと4mol/L塩酸3mlを加え、1分間超音波分散を行う
4)テフロン(R)製沸騰石を入れ、60分間リフラックスする
5)得られた反応液に水60ml、酢酸エチル60mlを加えて、有機カルボン酸のメチルエステル化物を酢酸エチル相に抽出する。酢酸エチル抽出は2回行う
6)酢酸エチル相を乾固し、30分間真空乾燥する
7)10mlのメスフラスコにベンズアントロン溶液(内部標準:約100mgのベンズアントロンをトルエンに溶かし、100mlに定容したもの)1mlを入れる
8)6)をトルエンで溶かして、7)のメスフラスコに入れ、トルエンで定容する
9)下記測定条件にてGC測定を行い、遊離脂肪族カルボン酸量を定量する
本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩は、平均円相当径が0.05μm以上、0.8μmで、かつ平均厚さが0.005μm以上、0.07μm以下であることが好ましく、特に好ましくは平均円相当径が0.2μm以上、0.5μmで、平均厚さが0.01μm以上、0.05μm以下である。すなわち、本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩としては、平板状粒子であることが好ましい。
【0056】
脂肪族カルボン酸銀塩として、平均円相当径が0.05μm以下では透明性には優れるが、画像保存性が悪く、また平均粒径が0.8μm以上では失透が激しい。また、平均厚さが0.005μm以下では、表面積が大きく現像時の銀イオン供給が急激に行われ、特に、低濃度部では銀画像に使われずに、膜中に残存する銀イオンが多量に存在する結果、画像保存性が著しく劣化する。平均厚さが0.07μm以上では、表面積が小さくなり、画像安定性は向上するが、現像時の銀供給が遅く、特に高濃度部での現像銀形状の不均一を招き、その結果、最高濃度が低くなりやすい。
【0057】
本発明において、上記の平均円相当径を求めるには、分散した脂肪族カルボン酸銀塩を希釈してカーボン支持膜付きグリッド上に分散し、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子製、2000FX型)を用いて、直接倍率5000倍にて撮影を行う。次いで、スキャナーにてネガ画像をデジタル画像として取り込み、適当な画像処理ソフトを用いて粒径(円相当径)を300個以上測定し、その平均粒径を算出する。
【0058】
平均厚さを求めるには、下記に示すようなTEM(透過型電子顕微鏡)を用いた方法により算出することができる。
【0059】
はじめに、支持体上に塗布された感光層を接着剤により適当なホルダーに貼り付け、支持体面と垂直な方向にダイヤモンドナイフを用いて、厚さ0.1〜0.2μmの超薄切片を作製する。作製された超薄切片を、銅メッシュに支持させ、グロー放電により親水化されたカーボン膜上に移し、液体窒素により−130℃以下に冷却しながら透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率5,000倍〜40,000倍にて明視野像を観察し、画像はフィルム、イメージングプレート、CCDカメラなどに素早く記録する。この際、観察される視野としては、切片に破れや弛みがない部分を適宜選択することが好ましい。
【0060】
カーボン膜としては、極薄いコロジオン、ホルムバールなど有機膜に支持されたものを使用することが好ましく、更に好ましくは、岩塩基板上に形成し基板を溶解除去して得るか、または、上記有機膜を有機溶媒、イオンエッチングにより除去して得られたカーボン単独の膜である。TEMの加速電圧としては、80〜400kVが好ましく、特に好ましくは80〜200kVである。
【0061】
その他、電子顕微鏡観察技法及び試料作製技法の詳細については、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/医学・生物学電子顕微鏡観察法」(丸善)、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/電子顕微鏡生物試料作製法」(丸善)をそれぞれ参考にすることができる。
【0062】
適当な媒体に記録されたTEM画像は、画像1枚あたり少なくとも1024画素×1024画素、好ましくは2048画素×2048画素以上に分解し、コンピュータによる画像処理を行う。画像処理を行うためには、フィルムに記録されたアナログ画像はスキャナなどでデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じ施すことが好ましい。その後、ヒストグラムを作製し、2値化処理によって脂肪族カルボン酸銀に相当する箇所を抽出する。
【0063】
上記抽出した脂肪族カルボン酸銀塩粒子の厚さを、300個以上適当なソフトでマニュアル測定し、平均値を求める。
【0064】
前記の平板形状を有する脂肪族カルボン酸銀塩粒子を得る方法としては、特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/または該ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つ事や、ソープに対する有機酸の割合、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすることなどが有効である。
【0065】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子の結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物の存在下で形成されることが好ましい。
【0066】
本発明において、脂肪族カルボン酸銀粒子に対する結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物とは、脂肪族カルボン酸銀粒子の製造工程において、当該化合物を共存させた条件下で脂肪族カルボン酸銀を製造したときに、共存させない条件下で製造したときより小粒径化及び/または単分散化する機能、効果を有する化合物をいう。
【0067】
本発明においては、結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物が、ゼラチンまたはポリビニルアルコールであること、不飽和結合を有する分岐カルボン酸であること、炭素数10以下のアルコール類であること、あるいはポリマーラテックスであることが好ましい。
【0068】
具体的には、炭素数が10以下の一価アルコール類、好ましくは第2級アルコール、第3級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ポリエチレングリコールなどポリエーテル類、グリセリンが挙げられる。好ましい添加量としては、脂肪族カルボン酸銀に対して10〜200質量%である。
【0069】
また、イソヘプタン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキジン酸、イソベヘン酸、イソヘキサコ酸など、それぞれ異性体を含む分岐脂肪族カルボン酸も好ましい。この場合、好ましい側鎖として、炭素数4以下のアルキル基またはアルケニル基が挙げられる。また、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モロクチン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、セラコレン酸などの脂肪族不飽和カルボン酸が挙げられる。好ましい添加量は、脂肪族カルボン酸銀の0.5〜10mol%である。
【0070】
また、グルコシド、ガラクトシド、フルクトシドなどの配糖体類、トレハロース、スクロースなどトレハロース型二糖類、グリコーゲン、デキストリン、デキストラン、アルギン酸など多糖類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、ソルビタン、ソルビット、酢酸エチル、酢酸メチル、ジメチルホルムアミドなど水溶性有機溶媒、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンなどの水溶性ポリマー類も好ましい化合物として挙げられる。好ましい添加量としては脂肪族カルボン酸銀に対して0.1〜20質量%である。
【0071】
また、炭素数が10以下のアルコールが好ましくは、第二級アルコール、第三級アルコールは、仕込み工程での脂肪族カルボン酸ナトリウムの溶解度を上げることにより減粘し、攪拌効率を上げることで単分散で、かつ小粒径化する。
【0072】
また、分岐脂肪族カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸は、脂肪族カルボン酸銀が結晶化する際にメイン成分である直鎖脂肪族カルボン酸銀よりも立体障害性が高く、結晶格子の乱れが大きくなるため大きな結晶は生成せず、結果的に小粒径化する。更に、ポリマーラテックスは有機銀形成時に存在することで物理的に結晶成長を阻害し小粒径化する。
【0073】
本発明に係る平板状脂肪族カルボン酸銀塩粒子は、必要に応じバインダーや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザなどで分散粉砕することが好ましい。上記予備分散にはアンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
【0074】
また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミルなどを用いることが可能であり、高圧ホモジナイザとしては壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプなど様々なタイプを用いることができる。
【0075】
メディア分散時に使用されるセラミックスビーズに用いられるセラミックスとしては、例えば、Al2O3、BaTiO3、SrTiO3、MgO、ZrO、BeO、Cr2O3、SiO2、SiO2−Al2O3、Cr2O3−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al2O3(スピネル)、SiC、TiO2、K2O、Na2O、BaO、PbO、B2O3、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、BeAl2O4、Y3Al5O12、ZrO2−Y2O3(立方晶ジルコニア)、3BeO−Al2O3−6SiO2(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、Si2O−nH2O、チッカ珪素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ(これらジルコニアを含有するセラミックスを、以下ジルコニアと略す)が特に好ましく用いられる。
【0076】
本発明に係る平板状脂肪族カルボン酸銀塩粒子を分散する際に用いられる装置類において、該脂肪族カルボン酸銀塩粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素などのセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、中でも、ジルコニアを用いることが好ましい。
【0077】
上記分散を行う際、バインダー濃度は脂肪族カルボン酸銀質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。また、本分散の好ましい運転条件としては、例えば、高圧ホモジナイザを分散手段として用いる場合には、30MPa〜100MPa、運転回数は2回以上が好ましい運転条件として挙げられる。また、メディア分散機を分散手段として用いる場合には、周速が6m/秒から13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
【0078】
以下、さらに本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を構成する化合物や構成要件の説明を行う。
【0079】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子(単に、ハロゲン化銀粒子とも言う)について説明する。
【0080】
本発明でいう感光性ハロゲン化銀粒子とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に光吸収することができ、または人為的に物理化学的な方法により可視光ないし赤外光を吸収することができ、かつ紫外光領域から赤外光領域の光波長範囲内の何れかの領域の光を吸収した時に、当該ハロゲン化銀結晶内及び/または結晶表面において、物理化学的変化が起こり得るように処理製造されたハロゲン化銀結晶粒子を言う。
【0081】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子自体は、P.Glafkides著:Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊,1967年)、G.F.Duffin著:Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊,1966年)、V.L.Zelikman et al著:Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊,1964年)等に記載された方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等の何れでもよく、また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等の何れを用いてもよいが、上記方法の中でも形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する、いわゆるコントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れであってもよい。
【0082】
粒子形成は、通常、ハロゲン化銀種粒子(核)の生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、また、核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよい。粒子形成条件であるpAg、pH等をコントロールして粒子形成を行うコントロールドダブルジェット法が、粒子形状やサイズのコントロールが容易にできる点で好ましい。例えば、核生成と粒子成長を分離して行う方法を行う場合には、先ず可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩をゼラチン水溶液中で均一、急速に混合して核(種粒子)を生成(核生成工程)した後、コントロールされたpAg、pH等の条件下で、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を供給しつつ、粒子成長させる粒子成長工程により、ハロゲン化銀粒子を調製する。ハロゲン化銀粒子を形成した後、脱塩工程により不要な塩類等をヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により除くことで所望のハロゲン化銀乳剤を得ることができる。
【0083】
ハロゲン化銀粒子は、画像形成後の白濁や色調変動(黄色味)を低く抑えるため、あるいは良好な画質を得るため、平均粒径が小さい方が好ましく、平均粒径としては、0.02μm未満の粒子を計測の対象外とした時の値として、0.035〜0.055μmが好ましい。尚、ここで言う粒径とは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さを言う。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には、主表面の投影面積と同面積の円像に換算した時の直径を言う。
【0084】
ハロゲン化銀粒子は、単分散であることが好ましい。ここで言う単分散とは、下式で求められる粒径の変動係数が30%以下であることを言う。好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
【0085】
粒径の変動係数(%)=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
ハロゲン化銀粒子の形状としては、立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子などを挙げることができるが、これらの内、特に、立方体、八面体、14面体、平板状銀粒子が好ましい。
【0086】
平板状粒子を用いる場合の平均アスペクト比(平均粒径/厚さ)は、好ましくは1.5〜100、より好ましくは2〜50が良い。これらの平板粒子の調製方法は、例えば、米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
【0087】
ハロゲン化銀粒子表面の晶癖については、特に制限はないが、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着反応において、晶癖(面)選択性を有する分光増感色素を使用する場合には、その選択性に適応する晶癖を相対的に高い割合で有するハロゲン化銀粒子を使用することが好ましい。例えば、ミラー指数〔100〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子表面において、〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。尚、ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani:J.Imaging Sci.,29,165(1985年)により求めることができる。
【0088】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、粒子形成時に平均分子量5万以下の低分子量ゼラチンを用いて調製することが好ましいが、特に、ハロゲン化銀粒子の核形成時に用いることが好ましい。低分子量ゼラチンは、平均分子量5万以下のものであり、好ましくは2000〜40000、更に好ましくは5000〜25000である。ゼラチンの平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。低分子量ゼラチンは、通常用いられる平均分子量10万程度のゼラチン水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸またはアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下または加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
【0089】
核形成時の分散媒(ゼラチン等)の濃度は、5質量%以下が好ましく、0.05〜3.0質量%の低濃度で行うのがより有効である。
【0090】
ハロゲン化銀粒子は、粒子形成時に下記一般式(A)で表されるポリエチレンオキシド化合物を用いることが好ましい。
【0091】
一般式(A)
YO(CH2CH2O)m〔CH(CH3)CH2O〕p(CH2CH2O)nY式中、Yは水素原子、−SO3Mまたは−CO−B−COOMを表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基または炭素原子数5以下のアルキル基で置換されたアンモニウム基を表し、Bは有機2塩基性酸を形成する鎖状または環状の基を表す。m及びnは、各々0〜50を、pは1〜100を表す。
【0092】
上記一般式(A)で表されるポリエチレンオキシド化合物は、ハロゲン化銀写真感光材料を製造するに際し、ゼラチン水溶液を製造する工程、ゼラチン溶液に水溶性ハロゲン化物及び水溶性銀塩を添加する工程、乳剤を支持体上に塗布する工程等、乳剤原料を撹拌したり、移動したりする場合の著しい発泡に対する消泡剤として好ましく用いられて来たものであり、消泡剤として用いる技術は、例えば、特開昭44−9497号に記載されている。上記ポリエチレンオキシド化合物は、核形成時の消泡剤としても機能する。上記一般式(A)で表されるポリエチレンオキシド化合物は、銀に対して1質量%以下で用いるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量%で用いる。
【0093】
上記のポリエチレンオキシド化合物は、核形成時に存在していればよく、核形成前の分散媒中に予め加えておくのが好ましいが、核形成中に添加してもよいし、核形成時に使用する銀塩水溶液やハライド水溶液に添加して用いてもよい。好ましくは、ハライド水溶液もしくは両方の水溶液に0.01〜2.0質量%で添加して用いることである。また、核形成工程の少なくとも50%に亘る時間で存在せしめるのが好ましく、更に好ましくは70%以上に亘る時間で存在せしめる。このポリエチレンオキシド化合物は、粉末で添加しても、メタノール等の溶媒に溶かして添加してもよい。
【0094】
核形成時の温度は、5〜60℃、好ましくは15〜50℃であり、一定の温度であっても、昇温パターン(例えば、核形成開始時の温度が25℃で、核形成中徐々に温度を挙げ、核形成終了時の温度が40℃である様な場合)や、その逆のパターンであっても前記温度範囲内で制御するのが好ましい。
【0095】
核形成に用いる銀塩水溶液及びハライド水溶液の濃度は、3.5mol/L以下が好ましく、更には0.01〜2.5mol/Lの低濃度域で使用されるのが好ましい。核形成時の銀イオンの添加速度は、反応液1リットル当たり1.5×10−3〜3.0×10−1モル/minが好ましく、更に好ましくは3.0×10−3〜8.0×10−2モル/minである。
【0096】
核形成時のpHは、1.7〜10の範囲に設定できるが、アルカリ側のpHでは形成する核の粒径分布を広げるため、好ましくはpH2〜6である。また、核形成時のpBrは0.05〜3.0程度、好ましくは1.0〜2.5、更には1.5〜2.0がより好ましい。
【0097】
ハロゲン化銀粒子は如何なる方法で感光層に添加されてもよく、この時ハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)に近接するように配置するのが好ましい。
【0098】
本発明に係るハロゲン化銀は、予め調製しておき、これを脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製するための溶液に添加するのが、ハロゲン化銀調製工程と脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製工程を分離して扱えるので製造コントロール上も好ましいが、英国特許第1,447,454号に記載される様に、脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製する際にハライドイオン等のハロゲン成分を脂肪族カルボン酸銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで脂肪族カルボン酸銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させることもできる。また、脂肪族カルボン酸銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製することも可能である。即ち、予め調製された脂肪族カルボン酸銀塩の溶液もしくは分散液、または脂肪族カルボン酸銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、脂肪族カルボン酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。
【0099】
ハロゲン化銀粒子形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例については、例えば、米国特許第4,009,039号、同第3,457,075号、同第4,003,749号、英国特許第1,498,956号及び特開昭53−27027号、同53−25420号に詳説される金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム等の無機ハロゲン化物、例えば、トリメチルフェニルアンモニウムブロマイド、セチルエチルジメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイドの様なオニウムハライド類、例えばヨードフォルム、ブロモフォルム、四塩化炭素、2−ブロム−2−メチルプロパン等のハロゲン化炭化水素類、N−ブロム琥珀酸イミド、N−ブロムフタルイミド、N−ブロムアセトアミド等のN−ハロゲン化合物、その他、例えば塩化トリフェニルメチル、臭化トリフェニルメチル、2−ブロム酢酸、2−ブロムエタノール、ジクロロベンゾフェノン等がある。この様にハロゲン化銀を有機酸銀とハロゲンイオンとの反応により有機酸銀塩中の銀の一部または全部をハロゲン化銀に変換することによって調製することもできる。また、別途調製したハロゲン化銀に脂肪族カルボン酸銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。
【0100】
これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル、好ましくは0.03〜0.5モル使用するのが好ましい。
【0101】
ハロゲン化銀粒子には、元素周期律表の6〜11族に属する遷移金属のイオンを含有することが好ましい。上記金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。これらは1種類でも同種あるいは異種の金属錯体を2種以上併用してもよい。これらの金属イオンは金属塩をそのままハロゲン化銀に導入してもよいが、金属錯体または錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。好ましい含有率は、銀1モルに対し1×10−9〜1×10−2モルの範囲が好ましく、1×10−8〜1×10−4モルの範囲がより好ましい。本発明においては、遷移金属錯体または錯体イオンは下記一般式(B)で表されるものが好ましい。
【0102】
一般式(B)
〔ML6〕m
式中、Mは元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(弗素、塩素、臭素、沃素の各イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また、異なってもよい。
【0103】
これらの金属のイオンまたは錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載される様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0104】
これらの金属化合物は、水あるいは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物と塩化ナトリウム、塩化カリウムとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合される時、第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物と塩化ナトリウム、塩化カリウムとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0105】
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子は、ヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、脱塩しないで用いることもできる。
【0106】
(カブリ防止剤及び画像安定化剤)
以下、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることのできるカブリ防止及び画像安定化剤について説明する。
【0107】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、還元剤として前記一般式(1)で表されるようなビスフェノール類の還元剤が主に用いられるので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されていることが好ましい。好ましくは無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物である。
【0108】
従って、これらの機能を有する化合物であれば如何なる化合物でもよいが、複数の原子からなる有機フリーラジカルが好ましい。上述のような機能を有し、かつ銀塩光熱写真ドライイメージング材料に格別の弊害を生じることのない化合物であれば如何なる構造を持った化合物でもよい。
【0109】
また、これらのフリーラジカルを発生する化合物としては、発生するフリーラジカルに、還元剤と反応し不活性化するに充分な時間接触できる位の安定性を持たせるために炭素環式、または複素環式の芳香族基を有するものが好ましい。
【0110】
これらの化合物の代表的なものとして、以下に挙げるビイミダゾリル化合物、ヨードニウム化合物を挙げることができる。
【0111】
ビイミダゾリル化合物としては、下記一般式(2)により表されるものが挙げられる。
【0112】
【化4】
【0113】
一般式(2)において、R1、R2及びR3(同一でも異なってもよい)は各々、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、スルホニル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基またはアミノ基を示す。これらの内、より好適な置換基はアリール基、アルケニル基及びシアノ基である。
【0114】
上記のビイミダゾリル化合物は、例えば、米国特許第3,734,733号及び英国特許第1,271,177号に記載されている製造方法及びそれに準じた方法により製造することができる。置換基の詳細及び好ましい具体例は、例えば特開2000−321711号に記載されており、それを参考にすることができる。
【0115】
また、同様に好適な化合物として、下記一般式(3)で示されるヨードニウム化合物を挙げることができる。
【0116】
【化5】
【0117】
一般式(3)において、Q1は5〜7員環を完成するのに必要な原子を包含し、かつ該必要な原子は炭素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる。R11、R12及びR13(同一でも異なってもよい)は各々、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、スルホニル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基またはアミノ基を示す。これらの内、より好適な置換基はアリール基、アルケニル基及びシアノ基である。尚、R11、R12及びR13の何れか二つが互いに結合して環を形成してもよい。
【0118】
R14はカルボキシレート基またはO−を示す。mは0または1を表す。R13がスルホ基またはカルボキシル基の時、mは0で、かつR14はO−である。
【0119】
X−はアニオン性対イオンであり、好適な例としてはCH3COO−、CH3SO3 −及びPF6 −である。
【0120】
これらの内、特に好ましい化合物は、下記一般式(4)で表される。
【0121】
【化6】
【0122】
一般式(4)において、R11、R12、R13、R14、X−及びmは、前記一般式(3)と同義であり、Yは炭素原子(−CH=;ベンゼン環)または窒素原子(−N=;ピリジン環)を表す。
【0123】
上記のヨードニウム化合物は、Org.Syn.,1961及びFieser著:Advanced Organic Chemistry(Reinhold,N.Y.,1961)に記載される製造方法及びそれに準じた方法によって合成できる。置換基の詳細及び好ましい具体例は、例えば、特開2000−321711(前出)に記載されている。
【0124】
上記の一般式(2)及び(3)で表される化合物の添加量は、1×10−3〜1×10−1モル/m2、好ましくは5×10−3〜5×10−2モル/m2である。尚、当該化合物は、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の如何なる構成層中にも含有させることができるが、還元剤の近傍に含有させることが好ましい。
【0125】
また、還元剤を不活性化し、還元剤が脂肪族カルボン酸銀塩を銀に還元できないようにする化合物としては、反応活性種がハロゲン原子でないものが好ましいが、ハロゲン原子を活性種として放出する化合物も、ハロゲン原子でない活性種を放出する化合物と併用することができる。ハロゲン原子を活性種として放出できる化合物も、多くのものが知られており、併用により良好な効果が得られる。
【0126】
これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、下記一般式(5)で表される化合物がある。
【0127】
【化7】
【0128】
一般式(5)において、Q2はアリール基または複素環基を表す。X1、X2及びX3は各々、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基またはアリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。Yは−C(=O)−、−SO−または−SO2−を表す。Q2で表されるアリール基は、単環でも縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環または2環のアリール基で、より好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、更に好ましくはフェニル基である。Q2で表される複素環基は、N、OまたはSの少なくとも一つの原子を含む3〜10員の飽和もしくは不飽和の複素環基であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0129】
置換基の詳細は、特開2001−263350号公報の段落「0100」〜「0103」に記載されている。
【0130】
これらの化合物の添加量は、実質的にハロゲン化銀の生成によるプリントアウト銀の増加が問題にならない範囲が好ましく、前記活性ハロゲンラジカルを生成しない化合物に対する比率で最大150%以下、更に好ましくは100%以下であることが好ましい。
【0131】
尚、銀塩光熱写真ドライイメージング材料中には、上記の化合物の他に、従来カブリ防止剤として知られている化合物を含んでもよく、また上記の化合物と同様な反応活性種を生成することができる化合物であっても、カブリ防止機構が異なる化合物であってもよい。例えば、米国特許第3,589,903号、同第3,874,946号、同第4,546,075号、同第4,452,885号、同第4,756,999号、特開昭59−57234号、特開平9−288328号、同9−90550号に記載される化合物が挙げられる。更に、その他のカブリ防止剤としては、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同第605,981号、同第631,176号に開示されている化合物が挙げられる。
【0132】
(銀イオン還元剤)
本発明においては、銀イオン還元剤(単に還元剤ということもある)として、例えば、米国特許第3,589,903号、同第4,021,249号、英国特許第1,486,148号の各明細書及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号、特公昭51−35727号の各公報に記載されたポリフェノール化合物、あるいは2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル等の米国特許第3,672,904号明細書に記載されたビスナフトール類、更に、4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等の米国特許第3,801,321号明細書に記載されているようなスルホンアミドフェノールまたはスルホンアミドナフトール類を用いることができる。
【0133】
しかしながら、本発明においては、銀イオン還元剤としては、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0134】
【化8】
【0135】
以下、一般式(6)で表される化合物について詳述する。
一般式(6)において、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、3〜10員の非芳香族環状基、または5〜6の芳香族環状基を表す。但し、R11とR12が同時に水素原子となることはない。R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表し、Qはベンゼン環上に置換可能な基を表し、nは0〜2の整数を表す。Qが複数の場合、各々のQは同じでも異なっていても良い。
【0136】
一般式(6)において、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、3〜10員の非芳香族環状基または5〜6員の芳香族環状基を表すが、3〜10員の非芳香族環状基として具体的に3員環としては、シクロプロピル、アジリジル、オキシラニル、4員環としてはシクロブチル、シクロブテニル、オキセタニル、アゼチジニル、5員環としてはシクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、テトラヒドロチエニル、6員環としてはシクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、テトラヒドロピラニル、ピラニル、ピペリジニル、ジオキサニル、テトラヒドロチオピラニル、ノルカラニル、ノルピナニル、ノルボルニル、7員環としてはシクロヘプチル、シクロヘプチニル、シクロヘプタジエニル、8員環としてはシクロオクタニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、シクロオクタトリエニル、9員環としてはシクロノナニル、シクロノネニル、シクロノナジエニル、シクロノナトリエニル、10員環としてはシクロデカニル、シクロデケニル、シクロデカジエニル、シクロデカトリエニル等の各基が挙げられる。
【0137】
好ましくは3〜6員環であり、より好ましくは5〜6員環であり、最も好ましくは6員環であり、その中でもヘテロ原子を含まない炭化水素環が好ましい。該環はスピロ原子を通じて他の環とスピロ結合を形成してもよいし、芳香族環を含む他の環と如何様にも縮環してよい。また環上には任意の置換基を有することができる。該置換基として具体的には、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)、アルケニル基(例えば、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、1−シクロアルケニル基、2−シクロアルケニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1−プロピニル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アルキルカルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、ウレイド基(例えば、メチルアミノカルボニルアミノ基等)、アルキルスルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−モルホリノカルボニル基等)、スルファモイル基(スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルフォリノスルファモイル基等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基等)、アルキルアミノ基(例えばアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等)、スルホ基、ホスフォノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルホニルアミノカルボニル基、エタンスルホニルアミノカルボニル基等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセトアミドスルホニル基、メトキシアセトアミドスルホニル基等)、アルキニルアミノカルボニル基(例えば、アセトアミドカルボニル基、メトキシアセトアミドカルボニル基等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルフィニルアミノカルボニル基、エタンスルフィニルアミノカルボニル基等)等が挙げられる。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なっていても良い。特に好ましい置換基はアルキル基である。
【0138】
次に、R11及びR12で表される5〜6員の芳香族環状基において、芳香族炭素環としては、単環でも縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等)が挙げられるが、好ましく用いられるのは、ベンゼン環である。また、芳香族ヘテロ環として好ましくは縮合環を有していてもよい5〜6員の芳香族ヘテロ環である。更に好ましくは縮合環を有していてもよい5員の芳香族ヘテロ環である。このようなヘテロ環として、好ましくはイミダゾール、ピラゾール、チオフェン、フラン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、さらに好ましくはイミダゾール、ピラゾール、チオフェン、フラン、ピロール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾールであり、特に好ましくはチオフェン、フラン、チアゾールである。上記環は芳香族環を含む他の環と如何様にも縮環してよい。また、環上には任意の置換基を有することができる。該置換基としては前述した3〜10員の非芳香族環状基上の置換基と同じものを挙げることができる。
【0139】
R11及びR12の最も好ましい組み合わせは、R11が5員の芳香族へテロ環基であり、R12が水素原子である。
【0140】
R13及びR14は各々水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表すが、アルキル基として具体的には炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1−メチルシクロヘキシル基、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、1−シクロアルケニル基、2−シクロアルケニル基、エチニル基、1−プロピニル基等が挙げられる。R13として好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。さらに好ましくはメチル基、t−ブチル基、1−メチルシクロヘキシル基であり、もっとも好ましくはt−ブチル基、1−メチルシクロヘキシル基である。R14として好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基等が挙げられる。さらに好ましくは、メチル基、2−ヒドロキシエチル基である。R13及びR14で表されるアリール基として具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。R13及びR14で表される複素環基として具体的には、ピリジン基、キノリン基、イソキノリン基、イミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、テトラゾール基等の芳香族ヘテロ環基やピペリジノ基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロピラニル基等の非芳香族ヘテロ環基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していても良く、該置換基としては前述の環上の置換基をあげることができる。
【0141】
R13及びR14の最も好ましい組み合わせは、R13が第3級アルキル基(例えば、t−ブチル基、1−メチルシクロヘキシル基等)であり、R14が第1級アルキル基(例えば、メチル基、2−ヒドロキシエチル基等)である。
【0142】
Qはベンゼン環上に置換可能な基を表すが、具体的には炭素数1〜25のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロオクチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリール基(例えば、フェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アミド基(例えば、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブタンアミド基、ヘキサンアミド基、ベンズアミド基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等を挙げることができる。また、これらの基は更にこれらの基で置換されていてもよい。nは0〜2の整数を表すが、最も好ましくはnが0の場合である。Qが複数の場合、各々のQは同じでも異なっていても良い。
【0143】
以下に、一般式(6)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
【化9】
【0145】
【化10】
【0146】
【化11】
【0147】
【化12】
【0148】
【化13】
【0149】
【化14】
【0150】
【化15】
【0151】
本発明の光熱写真ドライイメージング材料に使用される銀イオン還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤に一様ではないが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05〜10モルであり、好ましくは0.1〜3モルである。上記の添加量の範囲内において、銀イオン還元剤は2種以上併用されてもよく、また前記の異なる化学構造を有する還元剤と併せて用いることもできる。本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光性ハロゲン化銀、有機銀塩粒子及び溶媒からなる感光乳剤溶液に添加、混合して塗布することが、停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
【0152】
(感光性ハロゲン化銀の化学増感及び分光増感等)
感光性ハロゲン化銀には化学増感を施すことができる。例えば、特開2001−249928号及び特開2001−250866号公報に記載される方法等に従って、硫黄、セレン、テルルなどのカルコゲンを放出する化合物や、金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物の利用により、化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。特に、カルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されるのが好ましい。これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤は、ハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
【0153】
これらの有機増感剤としては、例えば、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、同11−218874号等に開示されている種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらの内カルコゲン原子が炭素原子またはリン原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0154】
有機増感剤としてのカルコゲン化合物の使用量は、使用するカルコゲン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学増感を施す際の反応環境などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−8〜1×10−2モルが好ましく、より好ましくは1×10−7〜1×10−3モルを用いる。化学増感環境としては、特に制限はないが、感光性ハロゲン化銀粒子上のカルコゲン化銀または銀核を消滅あるいはそれらの大きさを減少させ得る化合物の存在下において、また、特に銀核を酸化し得る酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いてカルコゲン増感を施すことが好ましく、該増感条件として、pAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHは4〜10が好ましく、より好ましくは5〜8、また、温度としては30℃以下で増感を施すことが好ましい。
【0155】
従って、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、感光性ハロゲン化銀が、該粒子上の銀核を酸化し得る酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いて、温度30℃以下において化学増感を施され、かつ脂肪族カルボン酸銀塩と混合して分散され、脱水及び乾燥された感光性乳剤を用いることが好ましい。
【0156】
また、これらの有機増感剤を用いた化学増感は、分光増感色素またはハロゲン化銀粒子に対して吸着性を有するヘテロ原子含有化合物の存在下で行われることが好ましい。ハロゲン化銀に吸着性を有する化合物の存在下に化学増感を行うことで、化学増感中心核の分散化を防ぐことができ、高感度、低カブリを達成できる。分光増感色素については後述するが、ハロゲン化銀に吸着性を有するヘテロ原子含有化合物とは、例えば、特開平3−24537号公報に記載される含窒素複素環化合物が好ましい例として挙げられる。含窒素複素環化合物において、複素環としてはピラゾール、ピリミジン、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ピリダジン、1,2,3−トリアジン等の各環、これらの環が2〜3個結合した環、例えばトリアゾロトリアゾール、ジアザインデン、トリアザインデン、ペンタアザインデン等の各環を挙げることができる。単環の複素環と芳香族環の縮合した複素環、例えばフタラジン、ベンズゾミダゾール、インダゾール、ベンゾチアゾール等の各環も適用できる。
【0157】
これらの中で好ましいのはアザインデン環であり、かつ置換基としてヒドロキシル基を有するアザインデン化合物、例えばヒドロキシトリアザインデン、テトラヒドロキシアザインデン、ヒドロキシペンタアザインデン誘導体等が更に好ましい。
【0158】
上記複素環には、ヒドロキシル基以外の置換基を有してもよい。置換基としては、例えばアルキル基、置換アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基などが挙げられる。
【0159】
これら含複素環化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の大きさや組成その他の条件等に応じて広い範囲に亘って変化するが、大凡の量はハロゲン化銀1モル当たり1×10−6〜1モルの範囲であり、好ましくは1×10−4〜1×10−1モルの範囲である。
【0160】
感光性ハロゲン化銀には、金イオンなどの貴金属イオンを放出する化合物を利用して貴金属増感を施すことができる。金増感剤として、例えば、塩化金酸塩や有機金化合物が利用できる。
【0161】
また、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることができ、還元増感の貝体的な化合物としては、アスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1錫、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0162】
化学増感を施されるハロゲン化銀は、有機銀塩の存在下で形成されたのでも、有機銀塩の存在しない条件下で形成されたものでも、また、両者が混合されたものでもよい。
【0163】
感光性ハロゲン化銀には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素として、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。例えば、特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号等に記載された増感色素が使用できる。
【0164】
有用な増感色素は、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)17643の23頁IV−A項(1978年12月)、同18431の437頁X項(1978年8月)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に、各種レーザイメージャーやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましい。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0165】
有用なシアニン色素は、例えばチアゾリン、オキサゾリン、ピロリン、ピリジン、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール及びイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン、ローダニン、オキサゾリジンジオン、チアゾリンジオン、バルビツール酸、チアゾリノン、マロノニトリル及びピラゾロン核などの酸性核も含む。
【0166】
本発明においては、特に赤外に分光感度を有する増感色素を用いることもできる。好ましく用いられる赤外分光増感色素としては、例えば、米国特許第4,536,473号、同第4,515,888号、同第4,959,294号等に開示される赤外分光増感色素が挙げられる。
【0167】
赤外分光増感色素については、ベンズゾゾール環のベンゼン環上にスルフィニル基が置換されていることを特徴とした長鎖のポリメチン色素が特に好ましい。
【0168】
上記の赤外増感色素は、例えば、エフ・エム・ハーマー著:The Chemistry of Heterocyclic Compounds第18巻,The Cyanine Dyes and Related Compounds(A.Weissberger ed.Interscience社刊,New York 1964年)に記載の方法によって容易に合成できる。
【0169】
これらの赤外増感色素の添加時期は、ハロゲン化銀調製後のいずれの時点でもよい。添加方法としては、例えば、溶剤に添加して添加する方法、あるいは微粒子状に分散したいわゆる固体分散状態でハロゲン化銀粒子あるいはハロゲン化銀粒子/脂肪族カルボン酸銀塩粒子を含有する感光性乳剤に添加できる。また、前記のハロゲン化銀粒子に対し吸着性を有するヘテロ原子含有化合物と同様に、化学増感に先立ってハロゲン化銀粒子に添加し吸着させた後、化学増感を施すこともでき、これにより化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。
【0170】
上記の分光増感色素は、単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。
【0171】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられる感光性ハロゲン化銀、脂肪族カルボン酸銀塩を含有する乳剤は、増感色素と共に、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されていてもよい。
【0172】
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質は、RD17643(1978年12月発行)23頁IVのJ項、あるいは特公平9−25500号、特公昭43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されているが、強色増感剤としては、下記で表される複素芳香族メルカプト化合物がまたはメルカプト誘導体化合物が好ましい。
【0173】
Ar−SM
式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム、またはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン、またはキナゾリン環である。しかしながら、他の複素芳香環も含まれる。
【0174】
尚、脂肪族カルボン酸銀塩及び/またはハロゲン化銀粒子乳剤の分散物中に含有させた時に、実質的に上記のメルカプト化合物を生成するメルカプト誘導体化合物も含まれる。特に下記で表されるメルカプト誘導体化合物が、好ましい例として挙げられる。
【0175】
Ar−S−S−Ar
式中のArは上記で表されたメルカプト化合物の場合と同義である。
【0176】
上記の複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)から成る群から選ばれる置換基を有し得る。
【0177】
上記の強色増感剤の他に、特開2001−215652号公報に開示される下記一般式(7)で表される化合物と大環状化合物を強色増感剤として使用できる。
【0178】
【化16】
【0179】
一般式(7)において、H31Arは芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、T31は脂肪族炭化水素基からなる2価の連結基または連結基を表し、J31は酸素原子、硫黄原子または窒素原子を一つ以上含む2価の連結基または連結基を表す。Ra、Rb、Rc及びRdは各々、水素原子、アシル基、脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表し、またはRaとRb、RcとRd、RaとRc或いはRbとRdの間で結合して含窒素複素環基を形成することができる。M31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンを表し、k31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンの数を表す。
【0180】
一般式(7)における置換基の詳細な説明は、上記特開2001−215652号公報の段落「0026」〜「0042」に、また、化合物例は段落「0043」〜「0046」に1〜16として記載される。
【0181】
強色増感剤は、有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む感光層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルで用いるのが好ましい。特に好ましくは、銀1モル当たり0.01〜0.5モルの量が好ましい。
【0182】
本発明においては省銀化剤を使用することが好ましい。省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物を言う。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力(カバリングパワー)を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度を言う。この省銀化剤は感光層または非感光層、更にはその何れにも存在せしめることができる。
【0183】
省銀化剤としては、下記一般式〔H〕で表されるヒドラジン誘導体、一般式〔G〕で表せるビニル化合物、一般式〔P〕で表される4級オニウム化合物等が好ましい例として挙げられる。
【0184】
【化17】
【0185】
【化18】
【0186】
一般式〔H〕において、A0は、それぞれ置換基を有してもよい脂肪族基、芳香族基、複素環基または−G0−D0基を、B0はブロッキング基を表し、A1、A2は共に水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基、スルホニル基またはオキザリル基を表す。ここで、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表し、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じでも異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基を表す。好ましいD0としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0187】
A0で表される脂肪族基は、好ましくは炭素数1〜30のものであり、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。A0で表される芳香族基は、単環または縮合環のアリール基が好ましく、複素環基としては、単環または縮合環で窒素、硫黄、酸素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む複素環基が好ましい。A0の芳香族基、複素環基及び−G0−D0基は置換基を有していてもよい。A0として、特に好ましいものはアリール基及び−G0−D0基である。
【0188】
また、A0は耐拡散基またはハロゲン化銀吸着基を、少なくとも一つ含むことが好ましい。耐拡散基としては、カプラー等の不動性写真用添加剤にて常用されるバラスト基が好ましい。ハロゲン化銀吸着促進基としては、チオ尿素、チオウレタン基、メルカプト基、チオエーテル基、チオン基、複素環基、チオアミド複素環基、メルカプト複素環基あるいは特開昭64−90439号に記載の吸着基等が挙げられる。
【0189】
B0で表されるブロッキング基として好ましくは−G0−D0基である。G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基又は−P(O)(G1D1)−基を表す、好ましいG0としては−CO−基、−COCO−基が挙げられ、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基又は−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基又は水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、好ましいD0としては水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0190】
A1、A2はともに水素原子、又は一方が水素原子で他方はアシル基(アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基等)、又はオキザリル基(エトキザリル基等)を表す。
【0191】
一般式〔H〕で表される化合物は、公知の方法により容易に合成することができる。例えば、米国特許第5,464,738号、同第5,496,695号を参考にして合成することができる。
【0192】
その他に好ましく用いることのできるヒドラジン誘導体は、米国特許第5,545,505号カラム11〜20に記載の化合物H−1〜H−29、米国特許第5,464,738号カラム9〜11に記載の化合物1〜12である。これらのヒドラジン誘導体は公知の方法で合成することができる。
【0193】
一般式〔G〕において、XとR40はシスの形で表示してあるが、XとR40がトランスの形も一般式〔G〕に含まれる。
【0194】
一般式〔G〕において、Xは電子吸引性基を表し、Wは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、チオオキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基またはインモニウム基を表す。
【0195】
R40はハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、アルケニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、アミノ基、アルキルアミノ基、環状アミノ基、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、5〜6員の複素環基、ウレイド基またはスルホンアミド基を表す。XとW、XとR40は、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0196】
更に説明すると、Xの表す電子吸引性基とは、置換基定数σpが正の値を採り得る置換基のことである。
【0197】
Xの表す電子吸引性基とは、置換基定数σpが正の値をとりうる置換基のことである。具体的には、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル等)、置換アルケニル基(シアノビニル等)、置換・未置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル、シアノアセチレニル等)、置換アリール基(シアノフェニル等)、置換・未置換のヘテロ環基(ピリジル、トリアジニル、ベンゾオキサゾリル等)、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ホルミル等)、チオアセチル基(チオアセチル、チオホルミル等)、オキサリル基(メチルオキサリル等)、オキシオキサリル基(エトキサリル等)、チオオキサリル基(エチルチオオキサリル等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル等)、カルボキシル基、チオカルボニル基(エチルチオカルボニル等)、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル等)、チオスルホニル基(エチルチオスルホニル等)、スルファモイル基、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル等)、チオスルフィニル基(メチルチオスルフィニル等)、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基(N−アセチルイミノ等)、N−スルホニルイミノ基(N−メタンスルホニルイミノ等)、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上の置換基が特に好ましい。
【0198】
Wとして表されるアルキル基としては、メチル、エチル、トリフルオロメチル等が、アルケニル基としてはビニル、ハロゲン置換ビニル、シアノビニル等が、アルキニル基としてはアセチレニル、シアノアセチレニル等が、アリール基としてはニトロフェニル、シアノフェニル、ペンタフルオロフェニル等が、ヘテロ環基としてはピリジル、ピリミジル、トリアジニル、スクシンイミド、テトラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾオキサゾリル等が挙げられる。Wとしてはσp値が正の電子吸引性基が好ましく、更にはその値が0.30以上のものが好ましい。
【0199】
上記R40の置換基の内、好ましくはヒドロキシル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はメルカプト基の有機又は無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、更に好ましくはヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基又はメルカプト基の有機又は無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、特に好ましくはヒドロキシル基、ヒドロキシル基又はメルカプト基の有機又は無機の塩が挙げられる。
【0200】
また上記X及びWの置換基の内、置換基中にチオエーテル結合を有するものが好ましい。
【0201】
一般式〔P〕において、Q3は窒素原子または燐原子を表し、R41、R42、R43及びR44は各々、水素原子または置換基を表し、X−はアニオンを表す。尚、R41〜R44は互いに連結して環を形成してもよい。
【0202】
R41〜R44で表される置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(アリル基、ブテニル基等)、アルキニル基(プロパルギル基、ブチニル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、スルホラニル基等)、アミノ基等が挙げられる。
【0203】
R41〜R44が互いに連結して形成しうる環としては、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、キヌクリジン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
【0204】
R41〜R44で表される基はヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル基、アリール基等の置換基を有してもよい。R41、R42、R43及びR44としては、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0205】
X−が表すアニオンとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等の無機及び有機のアニオンが挙げられる。
【0206】
上記4級オニウム化合物は公知の方法に従って容易に合成でき、例えば、上記テトラゾリウム化合物は、Chemical Reviews vol.55,335〜483頁に記載の方法を参考にできる。上記省銀化剤の添加量は、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し1×10−5〜1モル、好ましくは1×10−4〜5×10−1モルの範囲である。
【0207】
(バインダーと架橋剤)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に好適なバインダーは、透明または半透明で一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、澱粉、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリビニルアセタール類(ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラール等)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート、セルロースエステル類、ポリアミド類などを挙げることができる。バインダーは親水性でも非親水性でもよい。
【0208】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料の感光層に好ましいバインダーはポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。また、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非感光層に対しては、より軟化温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。尚、必要に応じて、上記のバインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0209】
このようなバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、感光層において少なくとも脂肪族カルボン酸銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと脂肪族カルボン酸銀塩との割合は15:1〜1:2の範囲が好ましい。即ち、感光層のバインダー量が1.0〜10.0g/m2であることが好ましい。1.0g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0210】
感光層のバインダーとしては、100℃以上200℃以下の温度で現像処理した後の熱転移点温度が、46〜200℃であることが好ましい。ここで熱転移点温度とは、示差走査熱量計(DSC)、例えば、EXSTAR 6000(セイコー電子社製)、DSC220C(セイコー電子工業社製)、DSC−7(パーキンエルマー社製)等を用いて、熱現像済みの感光層を単離して測定した際の吸熱ピークを指す。一般的に、高分子化合物はガラス転移温度(Tg)を有しているが、銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、感光層に用いるバインダー樹脂のTg値よりも低いところに、大きな吸熱ピークが出現する。この熱転移点温度に着目し鋭意検討を行った結果、この熱転移点温度を46〜200℃にすることにより、形成された塗膜の堅牢性が増すのみならず、感度、最大濃度、画像保存性など写真性能が大幅に向上する。
【0211】
Tgはブランドラップらによる“重合体ハンドブック”III−139〜179頁(1966年,ワイリー・アンド・サン社版)に記載の方法で求めたものであり、バインダーが共重合体樹脂である場合のTgは下記の式で求められる。
【0212】
Tg(共重合体)(℃)=v1Tg1+v2Tg2+・・・+vnTgn
式中、v1、v2・・・vnは共重合体中の単量体の質量分率を表し、Tg1、Tg2・・・Tgnは、共重合体中の各単量体から得られる単一重合体のTg(℃)を表す。上式に従って計算されたTgの精度は±5℃である。
【0213】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、支持体上に脂肪族カルボン酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤等を含有する感光層に含有するバインダーとしては、従来公知の高分子化合物を用いることができ、Tgが70〜105℃、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、重合度が約50〜1,000程度のものである。このような素材の具体例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等のエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体よりなる化合物、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0214】
これらの樹脂については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。これらの高分子化合物に、特に制限はなく、誘導される重合体のガラス転移温度(Tg)が70〜105℃の範囲にあれば、単独重合体でも共重合体でもよい。
【0215】
このようなエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体としては、アクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アリールエステル類、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、シアノアクリル酸アルキルエステル類、シアノアクリル酸アリールエステル類などを挙げることができ、それらのアルキル基、アリール基は置換されてもされなくてもよく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、クロロベンジル、オクチル、ステアリル、スルホプロピル、N−エチル−フェニルアミノエチル、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチル、ジメチルアミノフェノキシエチル、フルフリル、テトラヒドロフルフリル、フェニル、クレジル、ナフチル、2−ヒドロキシエチル、4−ヒドロキシブチル、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メトキシエチル、3−メトキシブチル、2−アセトキシエチル、2−アセトアセトキシエチル、2−エトキシエチル、2−i−プロポキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、2−ジフェニルホスホリルエチル、ω−メトキシポリエチレングリコール(付加モル数n=6)、アリル、ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩などを挙げることができる。
【0216】
その他、下記のモノマー等が使用できる。ビニルエステル類:ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等;N−置換アクリルアミド類、N−置換メタクリルアミド類及びアクリルアミド、メタクリルアミド:N−置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ヒドロキシメチル、メトキシエチル、ジメチルアミノエチル、フェニル、ジメチル、ジエチル、β−シアノエチル、N−(2−アセトアセトキシエチル)、ジアセトン等;オレフィン類:ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等;スチレン類:メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル等;ビニルエーテル類:メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなど;N−置換マレイミド類:N−置換基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ドデシル、フェニル、2−メチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2−クロルフェニル等を有するもの等;その他として、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチレンマロンニトリル、塩化ビニリデンなどを挙げることができる。
【0217】
これらの内、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。このような高分子化合物の中でも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物では、生成する脂肪族カルボン酸との相溶性に優れるため膜の柔軟化を防ぐ効果が大きく好ましい。
【0218】
アセタール基を持つ高分子化合物としては、下記一般式〔V〕で表される化合物が特に好ましい。
【0219】
【化19】
【0220】
一般式〔V〕において、R51はアルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基を表すが、好ましくはアリール基以外の基である。R52は無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基、置換アリール基、−COR53または−CONHR53を表す。R53はR51と同義である。
【0221】
R51、R52、R53で表される無置換アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6である。これらは直鎖であっても分岐していてもよく、好ましくは直鎖のアルキル基が好ましい。このような無置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられるが、特に好ましくはメチル基もしくはプロピル基である。
【0222】
無置換アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記のアルキル基、アリール基に置換可能な基としては、アルキル基(例えば、メチル基、n−プロピル基、t−アミル基、t−オクチル基、n−ノニル基、ドデシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、ニトロ基、水酸基、シアノ基、スルホ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、カルボキシ基、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基等)などが挙げられる。この置換基が2つ以上あるときは、同じでも異なっていてもよい。置換アルキル基の総炭素数は、1〜20が好ましく、置換アリール基の総炭素数は6〜20が好ましい。
【0223】
R52としては、−COR53(R53はアルキル基またはアリール基)、−CONHR53(R53はアリール基)が好ましい。a、b、cは各繰り返し単位の質量をモル(mol)%で示した値であり、aは40〜86モル%、bは0〜30モル%、cは0〜60モル%の範囲で、a+b+c=100モル%となる数を表し、特に好ましくは、aが50〜86モル%、bが5〜25モル%、cが0〜40モル%の範囲である。a、b、cの各組成比をもつ各繰り返し単位は、それぞれ同一のもののみで構成されていても、異なるもので構成されていてもよい。
【0224】
本発明で用いることのできるポリウレタン樹脂としては、構造がポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示した全てのポリウレタンについて、必要に応じ、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2(Mは水素原子またはアルカリ金属塩基を表す)、−N(R54)2、−N+(R54)3(R54は炭化水素基を表し、複数のR54は同じでも異なってもよい)、エポキシ基、−SH、−CN等から選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は1×10−1〜1×10−8モル/gであり、好ましくは1×10−2〜1×10−6モル/gである。これら極性基以外に、ポリウレタン分子末端に少なくとも1個ずつ、合計2個以上のヒドロキシル基を有することが好ましい。ヒドロキシル基は硬化剤であるポリイソシアネートと架橋して3次元の網状構造を形成するので、分子中に多数含むほど好ましい。特に、ヒドロキシル基が分子末端にある方が、硬化剤との反応性が高いので好ましい。ポリウレタンは、分子末端にヒドロキシル基を3個以上有することが好ましく、4個以上有することが特に好ましい。ポリウレタンを用いる場合は、ガラス転移温度が70〜105℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.5〜100N/mm2が好ましい。
【0225】
上記一般式〔V〕で表される高分子化合物は、「酢酸ビニル樹脂」桜田一郎編(高分子化学刊行会,1962年)等に記載の一般的な合成方法で合成することができる。
【0226】
これらの高分子化合物をバインダーとして単独で用いてもよいし、2種類以上をブレンドして用いてもよい。本発明の感光性銀塩含有層(好ましくは感光層)には上記ポリマーを主バインダーとして用いる。ここで言う主バインダーとは「感光性銀塩含有層の全バインダーの50質量%以上を上記ポリマーが占めている状態」を言う。従って、全バインダーの50質量%未満の範囲で他のポリマーをブレンドして用いてもよい。これらのポリマーとしては、本発明のポリマーが可溶となる溶媒であれば、特に制限はない。より好ましくはポリ酢酸ビニル、ポリアクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0227】
以下に、本発明に好ましく用いられる高分子化合物の構成を表1に示す。表中のTgは、セイコー電子工業社製:示差走査熱量計(DSC)により測定した値である。尚、P−9はソルーシア社製:ポリビニルブチラール樹脂B−79である。
【0228】
【表1】
【0229】
上記バインダーに対し架橋剤を用いることにより、膜付きが良くなり、現像ムラが少なくなることは知られている。
【0230】
用いられる架橋剤としては、従来ハロゲン化銀写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、特開昭50−96216号に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、イソシアネート系<ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用い得るが、本発明においては架橋剤の少なくとも1種が多官能カルボジイミド系化合物であることが好ましい。
【0231】
該カルボジイミド系架橋剤は、カルボジイミド基を少なくとも2個有している化合物及びその付加体(アダクト体)であり、より具体的には、脂肪族ジカルボジイミド類、環状基を有する脂肪族ジカルボジイミド類、ベンゼンジカルボジイミド類、ナフタレンジカルボジイミド類、ビフェニルカルボジイミド類、ジフェニルメタンジカルボジイミド類、トリフェニルメタンジカルボジイミド類、トリカルボジイミド類、テトラカルボジイミド類、及び、これらのカルボジイミド類の付加体及びこれらのカルボジイミド類と2価または3価のポリアルコール類との付加体が挙げられる。このようなカルボジイミド類は、それぞれ対応するイソシアネート類を燐触媒、例えばホスホレン化合物の存在下で第1級アミンと反応させることによって生成することができる。
【0232】
多官能カルボジイミド化合物とは、分子構造中に2個以上のカルボジイミド基またはカルボジチオイミド基を有する化合物である。更に好ましくは、多官能芳香族カルボジイミド化合物であり、分子構造中に、カルボジイミド基と芳香族基を有する化合物である。
【0233】
多官能カルボジイミド化合物としては、2官能以上カルボジイミド基を持っているものであれば何れも好ましく用いることができるが、特に好ましくは、下記一般式(CI)の構造を持つ化合物である。
【0234】
一般式(CI)
R1−J1−N=C=N−J2−(L)n−(J3−N=C=N−J4−R2)v
一般式(CI)において、R1、R2は各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等の各基であり、アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、トルエン、キシレン等の各基であり、複素環基としては、フラン、チオフェン、ジオキサン、ピリジン、ピペラジン、モルホリン等の各基であり、これらの基が連結基により結合された基であってもよい。
【0235】
J1、J4で表される連結基としては、単なる結合手でも、炭素原子を含んでもよい、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、燐原子等から形成される連結基を表し、例えば、O、S、NH、CO、COO、SO、SO2、NHCO、NHCONH、PO、PS等である。J2、J3はアルキレン基もしくはアリーレン基を表し、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン等の各アルキレン基、フェニレン、トリレン、ナフタレン等の各アリーレン基である。
【0236】
Lは(v+1)価の基を表し、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等のアルキル基、エテニル、プロペニル、ブタジエン、ペンタジエン等のアルケニル基、ベンゼン、ナフタレン、トルエン、キシレン等のアリール基、フラン、チオフェン、ジオキサン、ピリジン、ピペラジン、モルホリン等の複素環基であり、これらの基が連結基により結合された基でもよい。連結基としては、単なる結合手でも、炭素原子を含んでもよい、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、燐原子等から形成される連結基を表し、例えばO、S、NH、CO、SO、SO2、NHCO、NHCONH、PO、PS等である。vで表される1以上の整数としては、好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましく1、2または3である。
【0237】
一般式(CI)で表される架橋剤の具体例を以下に示す。
【0238】
【化20】
【0239】
【化21】
【0240】
【化22】
【0241】
多官能カルボジイミド架橋剤は、銀塩光熱写真ドライイメージング材料のどの部分に加えられてもよい。例えば、支持体、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層以上に添加することができる。
【0242】
上記架橋剤の使用量は、銀1モルに対して0.001〜2モル、好ましくは0.005〜1モルの範囲である。この範囲にあれば2種以上を併用してもよい。
【0243】
架橋剤として使用できるシラン化合物例としては、特開2001−264930号公報に記載される一般式(1)または一般式(2)で表せる化合物が挙げられる。
【0244】
架橋剤として用いることができるエポキシ化合物としては、エポキシ基を1個以上有するものであればよく、エポキシ基の数、分子量、その他に制限はない。エポキシ基はエーテル結合やイミノ結合を介してグリシジル基として分子内に含有されることが好ましい。また、エポキシ化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の何れであってもよく、分子内に存在するエポキシ基の数は通常1〜10個程度、好ましくは2〜4個である。エポキシ化合物がポリマーである場合は、ホモポリマー、コポリマーの何れであってもよく、その数平均分子量Mnの特に好ましい範囲は2000〜20000程度である。
【0245】
エポキシ化合物としては下記一般式〔9〕で表される化合物が好ましい。
【0246】
【化23】
【0247】
一般式〔9〕において、R90で表されるアルキレン基の置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシアルキル基又はアミノ基から選ばれる基であることが好ましい。またR90で表される連結基中にアミド連結部分、エーテル連結部分、チオエーテル連結部分を有していることが好ましい。X9で表される2価の連結基としては−SO2−、−SO2NH−、−S−、−O−、又は−NR91−が好ましい。ここでR91は1価の基であり、電子吸引基であることが好ましい。
【0248】
これらのエポキシ化合物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10−6〜1×10−2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10−5〜1×10−3モル/m2の範囲である。
【0249】
エポキシ化合物は、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。又、併せて支持体の感光層と反対側の任意の層に添加することができる。尚、両面に感光層が存在するタイプの感材ではいずれの層であってもよい。
【0250】
酸無水物は下記の構造式で示される酸無水物基を少なくとも1個有する化合物である。
【0251】
−CO−O−CO−
酸無水物はこのような酸無水基を1個以上有するものであればよく、酸無水基の数、分子量、その他に制限はないが、一般式〔B〕で表される化合物が好ましい。
【0252】
【化24】
【0253】
一般式〔B〕において、Zは単環又は多環系を形成するのに必要な原子群を表す。これらの環系は未置換であってもよく、置換されていてもよい。置換基の例には、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ヘキシル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、オクチルオキシ)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、トリル)、ヒドロキシル基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、フェニルスルホニル)、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、ベンゾキシ)、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、及びアミノ基が含まれる。置換基としては、ハロゲン原子を含まないものが好ましい。
【0254】
これらの酸無水物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10−6〜1×10−2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10−5〜1×10−3モル/m2の範囲である。
【0255】
本発明において酸無水物は、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。又、前記エポキシ化合物と同じ層に添加してもよい。
【0256】
(その他添加剤)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、熱現像処理にて写真画像を形成するもので、還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及び必要に応じて銀の色調を調整する色調剤を、通常、(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有していることが好ましい。
【0257】
好適な色調剤の例は、RD17029、米国特許第4,123,282号、同第3,994,732号、同第3,846,136号及び同第4,021,249号に開示されている。特に好ましい色調剤としては、フタラジノンまたはフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類の組み合わせである。
【0258】
従来、医療診断用の出力画像の色調に関しては、冷調の画像調子の方が、レントゲン写真の判読者にとって、より的確な記録画像の診断観察結果が得易いと言われている。ここで冷調な画像調子とは、純黒調もしくは黒画像が青味を帯びた青黒調であり、温調な画像調子とは、黒画像が褐色味を帯びた温黒調であることを言う。
【0259】
色調に関しての用語「より冷調」及び「より温調」は、最低濃度(Dmin)及び光学濃度D=1.0におけるJIS Z 8729で規定される色相角habにより求められる。色相角habはJIS Z 8701に規定するXYZ表色系または3刺激値X、Y、ZまたはX10、Y10、Z10からJIS Z 8729で規定されるL*a*b*表色系の色座標a*、b*を用いてhab=tan−1(b*/a*)により表現できる。
【0260】
色調に関しての用語「より冷黒調」及び「より温調」は、CIE 1976(L*u*v*)色空間、または(L*a*b*)色空間において横軸をu*またはa*、縦軸をv*またはb*としたグラフ上に、様々な写真濃度でのu*、v*またはa*、b*をプロットし、線形回帰直線(y=ax+b)を作成した際に、その線形回帰直線の傾き(a)が0.5〜1.5以内、好ましくは0.75〜1.25以内、切片bが−3以上3以内、より好ましくは−1以上1以内、重決定(R2)が、0.8000以上1.0000以下、好ましくは0.9000以上1.0000以下での範囲に調整することが診断写真の低濃度部から中濃度部、特に肺野部縦隔部における認識性に優れ、従来の湿式の銀塩感光材料同等以上の診断性を持つことを見いだした。
【0261】
この様にすることで、診断写真の低濃度部、特に肺野部縦隔部における認識性が向上する。
【0262】
本発明においては、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の表面層に(感光層側、また、支持体を挟み感光層の反対側に非感光層を設けた場合にも)、現像前の取扱いや熱現像後の画像の傷付き防止のためマット剤を含有することが好ましく、バインダーに対し質量比で0.1〜30%含有させる。
【0263】
マット剤の材質は、有機物及び無機物の何れでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレンあるいはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0264】
マット剤は平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。また、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、更に、好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となるマット剤である。
【0265】
ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
本発明において、マット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また、複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0266】
(支持体)
銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いる支持体の素材としては、各種高分子材料、ガラス、ウール布、コットン布、紙、金属(アルミニウム等)等が挙げられるが、情報記録材料としての取り扱い上は、可撓性のあるシートまたはロールに加工できるものが好適である。従って、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料における支持体としては、プラスチックフィルム(例えば、セルロースアセテート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、セルローストリアセテートまたはポリカーボネートフィルム等)が好ましく、本発明においては2軸延伸したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0267】
帯電性を改良するために、金属酸化物及び/または導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらは何れの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光層と下引の間の層等に含まれる。米国特許5,244,773号,カラム14〜20に記載された導電性化合物が好ましく用いられる。
【0268】
(層構成及び製造方法)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、支持体上に少なくとも1層の感光層を有する。支持体上に感光層のみを形成してもよいが、感光層の上に少なくとも1層の非感光層を形成するのが好ましい。例えば、感光層の上には保護層が、感光層を保護する目的で、また、支持体の反対の面には感光材料間の、あるいは感光材料ロールにおいてくっ付きを防止する為に、バックコート層が設けられるのが好ましい。
【0269】
これらの保護層やバックコート層に用いるバインダーとしては、熱現像層よりもガラス転位点が高く、擦傷や、変形の生じ難いポリマー、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが、前記のバインダーの中から選ばれる。尚、階調調整等のために、感光層を支持体の一方の側に2層以上、または支持体の両側に1層以上設置してもよい。
【0270】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料には、感光層を透過する光の量または波長分布を制御するために感光層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料または顔料を含有させることが好ましい。用いられる染料としては、感光材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。例えば、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特開2001−83655号に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料、またスクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、またはピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
【0271】
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシル基は解離していてもよい。なお、染料としては、特開平8−201959号に記載の化合物も好ましい。
【0272】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば感光層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。
【0273】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらの内、より好ましくはエクストルージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストルージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きと共に塗布する場合についても同様である。
【0274】
なお、塗布銀量は、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の目的に応じた適量を選ぶことが好ましいが、本発明においては、0.5〜1.5g/m2であることが好ましい。より好ましくは0.6〜1.4g/m2であり、更に1.0〜1.3g/m2が特に好ましい。当該塗布銀量の内、ハロゲン化銀に由来するものは全銀質量に対して2〜18%を占めることが好ましく、更には3〜15%がより好ましい。
【0275】
また、本発明において、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子の塗布密度は1×1014〜1×1018個/m2が好ましい。更には、1×1015〜1×1017個/m2が好ましい。
【0276】
更に脂肪族カルボン酸銀塩の塗布密度は、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子1個当たり1×10−17〜1×10−15g、更には1×10−16〜1×10−14gが好ましい。このような範囲内の条件において塗布した場合には、一定塗布銀量当たりの銀画像の光学的最高濃度、即ち、銀被覆量(カバーリング・パワー)及び銀画像の色調等の観点から好ましい結果が得られる。
【0277】
(画像形成装置)
本発明において、現像条件は、使用する機器、装置、或いは手段に依存して変化するが、典型的には、適した高温において像様に露光した銀塩光熱写真ドライイメージング材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(80〜200℃、好ましくは100〜200℃)で十分な時間(一般に1秒〜2分間)、銀塩光熱写真ドライイメージング材料を加熱することにより現像できる。加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、また、200℃を超すとバインダーが溶融し、ローラへの転写など、画像そのものだけでなく、搬送性や現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで脂肪族カルボン酸銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の一切の供給なしに進行する。
【0278】
加熱する機器、装置、手段は、ホットプレート、アイロン、ホットローラ、炭素または白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。より好ましくは、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理することが、均一な加熱を行う上で、また、熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
【0279】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光は、当該材料に付与した感色性に対し、適切な光源を用いることが望ましい。例えば、当該材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm、820nm)がより好ましく用いられる。
【0280】
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。
【0281】
第1の好ましい方法として、感光材料の露光面と走査レーザ光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ走査中に最も垂直に近い角度として、好ましくは55〜88°、より好ましくは60〜86°、更に好ましくは65〜84°、最も好ましくは70〜82°であることを言う。
【0282】
レーザ光が、感光材料に走査される時の感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。尚、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザ走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等の如き反射光による画質劣化を減ずることができる。
【0283】
第2の方法として、本発明における露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことが好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。
【0284】
縦マルチ化するには、合波による戻り光を利用する、高周波重畳を掛ける等の方法がよい。尚、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、通常、露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になると良い。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0285】
尚、上述した第1、第2の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He・Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He・Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;In・Ga・Pレーザ、Al・Ga・Asレーザ、Ga・As・Pレーザ、In・Ga・Asレーザ、In・As・Pレーザ、Cd・Sn・P2レーザ、Ga・Sbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でも、メンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。尚、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、銀塩光熱写真ドライイメージング材料を走査される時、該材料の露光面でのビームスポット径は、一般に、短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は、銀塩光熱写真ドライイメージング材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【0286】
本発明に係る熱現像処理装置の構成としては、フィルムトレイで代表されるフィルム供給部、レーザ画像記録部、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の全面に均一で安定した熱を供給する熱現像部、フィルム供給部からレーザ記録を経て、熱現像により画像形成された銀塩光熱写真ドライイメージング材料を装置外に排出するまでの搬送部から構成される。この態様の熱現像処理装置の一例を示す断面構成図を、図2に示す。
【0287】
熱現像装置100は、シート状の銀塩光熱写真ドライイメージング材料(単にフィルムともいう)を1枚ずつ給送する給送部110、給送されたフィルムFを露光する露光部120、露光されたフィルムFを現像する現像部130、現像を停止させる冷却部150と集積部160とを有し、151は冷却ローラ対、152は冷却ファンである。給送部からフィルムFを供給するための供給ローラ対140、現像部にフィルムを送るための供給ローラ対144、各部間でフィルムFを円滑に移送するための搬送ローラ対141,142,143等複数のローラ対からなっている。熱現像部はフィルムFを現像する加熱手段として、外周にほぼ密着して保持しつつ加熱可能な複数の対向ローラ2を有するヒートドラム1と現像したフィルムFを剥離し冷却部に送るための剥離爪6等からなる。
【0288】
なお、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の搬送速度は20〜200mm/secが好ましい範囲である。また、冷却部での冷却速度は3〜20℃が好ましい。
【0289】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0290】
実施例1
《支持体の作製》
濃度0.170に青色着色した175μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムベースの片方の面に、0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを、乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。更に、もう一方の面に、同様に0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Bを用いて下引層bを、乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗設した。その後、複数のロール群からなるフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃にて15分熱処理を行った。
【0291】
(下引塗布液A)
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(30/20/25/25%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)270g、界面活性剤(UL−1)0.6g及びメチルセルロース0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(サイロイド350:富士シリシア社製)1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation社製:Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて下引塗布液Aとした。
【0292】
(下引塗布液B)
下記コロイド状酸化錫分散液37.5g、ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(20/30/25/25%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)3.7g、ブチルアクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(40/20/40%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)14.8gと界面活性剤(UL−1)0.1gを混合し、水で1000mlに仕上げて下引塗布液Bとした。
【0293】
〈コロイド状酸化錫分散液の調製〉
塩化第2錫水和物65gを、水/エタノール混合溶液2000mlに溶解して均一溶液を調製した。次いで、これを煮沸し、共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸溜水にて数回水洗した。沈殿物を洗浄した蒸溜水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈殿物に蒸溜水を添加し、全量を2000mlとする。更に、30%アンモニア水を40ml添加し、水溶液を加温して、容量が470mlになるまで濃縮してコロイド状酸化錫分散液を調製した。
【0294】
【化25】
【0295】
《バック面側塗布》
メチルエチルケトン(MEK)830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB381−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社製:VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に溶解した液に、0.30gの赤外染料1、弗素系活性剤−1の4.5gと弗素系活性剤(ジェムコ社製:エフトップEF−105)1.5gを添加し、更にメタノール43.2gを添加し、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、MEKに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ粒子(富士シリシア社製:サイリシア450)を75g添加、攪拌してバック面側用の塗布液を調製した。
【0296】
【化26】
【0297】
弗素系活性剤−1:C9F17O(CH2CH2O)22C9F17
このように調製したバック面塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになるように押出しコーターにて、下引層bを塗布した面上に、塗布して乾燥を行った。乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0298】
《感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
溶液(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
活性剤A(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
溶液(B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
溶液(C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
溶液(D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム(1%水溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
溶液(E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
溶液(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
溶液(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
溶液(H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
活性剤A:HO(CH2CH2O)n〔CH(CH3)CH2O〕17(CH2CH2O)mH (m+n=5〜7)
特公昭58−58288号に記載の混合攪拌機を用いて、溶液(A1)に、溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度30℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を、水溶液(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、温度30℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加えて攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加して乳剤を得た。
【0299】
この乳剤は平均粒子サイズ0.040μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0300】
次に、上記乳剤に硫黄増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)240mlを加え、更にこの増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、55℃にて120分間攪拌して化学増感を施した。これを感光性ハロゲン化銀乳剤Aとする。
【0301】
【化27】
【0302】
《脂肪族カルボン酸銀塩Aの調製》
4720mlの純水にベヘン酸121.8g、アラキジン酸75.6g、ステアリン酸51.3g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。該脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0303】
次に1mol/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Aを調製した。
【0304】
《脂肪族カルボン酸銀塩Bの調製》
上記脂肪族カルボン酸銀塩Aの調製において、濃硝酸の量を5.6ml、1mol/Lの硝酸銀調液を727.2mlに変更した以外は同様にして、ウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Bを調製した。
【0305】
《脂肪族カルボン酸銀塩Cの調製》
上記脂肪族カルボン酸銀塩Aの調製において、濃硝酸の量を3.4ml、1mol/Lの硝酸銀調液を758.8mlにした以外は同様にして、ウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Cを調製した。
【0306】
《脂肪族カルボン酸銀塩Dの調製》
上記脂肪族カルボン酸銀塩Aの調製において、濃硝酸の量を2.3ml、1mol/Lの硝酸銀調液を776.4mlにした以外は同様にして、ウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Dを調製した。
【0307】
《脂肪族カルボン酸銀の解砕》
前記ウェットケーキ状脂肪族カルボン酸銀塩A〜Dを、湿式・乾式整流機コーミル(パウレック社製)を用いて穴径の異なるメッシュで解砕を行い、粉末脂肪族カルボン酸銀塩A11、A12、B11、B12、C11、C12、D11を調製した。解砕に使用したメッシュ径を表2に示す。
【0308】
《脂肪族カルボン酸銀塩の乾燥》
解砕後の各粉末脂肪族カルボン酸銀塩を、(株)大川原製作所製スリットフローを用いて、風速2.2m/s、温度50℃の条件で行い、水分率が0.15%以下まで乾燥して、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A11、A12、B11、B12、C11、C12、D11を調製した。
【0309】
《予備分散液の調製》
ポリビニルブチラール粉末(ソルーシア社製、Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A11を500g徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液A11を調製した。
【0310】
上記予備分散液A11の調製において、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A11に代えて、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩をA12〜D11を用いた以外は同様にして、予備分散液A12〜D11を調製した。
【0311】
《感光性乳剤分散液調製》
上記調製した予備分散液A11を、ポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行なうことにより感光性乳剤分散液A11を調製した。
【0312】
上記感光性乳剤分散液A11の調製において、予備分散液A11に代えて、予備分散液A12〜D11を用いた以外は同様にして、感光性乳剤分散液A12〜D11を調製した。
【0313】
《安定剤液の調製》
1.0gの安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0314】
《赤外増感色素液Aの調製》
19.2mgの赤外増感色素−1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤−2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールを、31.3mlのMEKに暗所にて溶解し、赤外増感色素液Aを調製した。
【0315】
《添加液aの調製》
現像剤として一般式(6)で表される例示化合物6−7を27.98g、1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料1をMEKの110gに溶解し、添加液aとした。
【0316】
《添加液bの調製》
3.56gのカブリ防止剤−2、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し、添加液bとした。
【0317】
【化28】
【0318】
《感光層塗布液の調製》
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液A11の50gとMEKの15.11gとを攪拌しながら21℃に保温し、カブリ防止剤−1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。更に臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して20分攪拌した。続いて、安定剤液167mlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分攪拌した。13℃に保温したまま、バインダー樹脂としてポリマーP−9を13.31g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。更に攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液A11を得た。
【0319】
次いで、上記感光層塗布液A11の調製において、感光性乳剤分散液A11に代えて、前記調製した感光性乳剤分散液A12〜D11を用いた以外は同様にして、感光層塗布液A12〜D11を調製した。
【0320】
《表面保護層塗布液の調製》
MEK865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製:パラロイドA−21)を4.5g、ベンゾトリアゾールを1.0g、弗素系活性剤(ジェムコ社製:エフトップEF−105)1.0gを添加し溶解した。次に、下記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0321】
(マット剤分散液の調製)
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、7.5gのCAB171−15)をMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30min分散してマット剤分散液を調製した。
【0322】
《感光材料の作製》
感光層塗布液A11と表面保護層塗布液を、公知のエクストルージョン型コーターを用いて、同時重層塗布を行った。塗布は、感光層が塗布銀量1.7g/m2、表面保護層が乾燥膜厚で2.5μmになるように行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて10分間乾燥を行い、感光材料101を作製した。
【0323】
上記感光材料101の作製において、感光層塗布液A11に代えて感光層塗布液A12〜D11を用いた以外は同様にして、感光材料102〜107を作製した。
【0324】
《露光及び現像処理》
上記のように作製した各感光材料の感光層塗設面側から、高周波重畳にて波長800nm〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザを露光源とした露光機によりレーザ走査によるウェッジ露光を与えた。この際に、感光材料の露光面と露光レーザ光の角度を75度として画像を形成した。なお、当該角度を90度とした場合に比べムラが少なく、かつ予想外に鮮鋭性等が良好な画像が得らることを別途確認できた。その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、感光材料の保護層とドラム表面が接触するようにして、110℃で15秒熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0325】
《画像評価》
得られた画像の評価は、濃度計により濃度測定を行い、横軸:露光量、縦軸:光学濃度からなる特性曲線を作成し、未露光部分よりも1.0高い濃度を与える露光量の比の逆数を感度と定義し、各々の感光材料の感度および最大濃度(Dmax)を求め、得られた結果を表2に示す。なお、感度及び最大濃度は、感光材料101の感度および最大濃度を100とする相対値で表示した。
【0326】
【表2】
【0327】
表2より明らかなように、本発明で規定する解砕条件で調製した粉末脂肪族カルボン酸銀塩を用いた本発明の感光材料は、比較例に対して高感度で、かつ最高濃度が高いことが分かる。
【0328】
実施例2
《脂肪族カルボン酸銀の解砕》
実施例1と同様にウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩A〜Dを解砕し、粉末脂肪族カルボン酸銀塩A2、B2、C2、D2を作製した。解砕に使用するメッシュ径は1.143mmを使用した。なお、各粉末脂肪族カルボン酸銀塩の平均粒子径は1.1mmであった。
【0329】
《脂肪族カルボン酸銀の乾燥》
粉末脂肪族カルボン酸銀塩A2〜D2を、(株)大川原製作所製スリットフローを用いて、乾燥温度を50℃、表3に記載の風速条件で、水分率が0.15%以下まで乾燥して、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A21、A22、B21、B22、C21、C22、D21を調製した。
【0330】
《感光材料の作製》
実施例1に記載の感光材料101の作製において、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A11に代えて、上記調製した乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A21、A22、B21、B22、C21、C22、D21を用いた以外は同様にして、感光材料201〜207を作製した。
【0331】
《露光、現像処理及び評価》
上記作製した感光材料201〜207について、実施例1に記載の方法と同様にして、露光、現像処理及び感度、最大濃度の評価を行い、得られた結果を表3に示す。なお、感度及び最大濃度は、感光材料201の感度および最大濃度を100とする相対値で表示した。
【0332】
【表3】
【0333】
表3より明らかなように、本発明で規定する乾燥条件で調製した粉末脂肪族カルボン酸銀塩を用いた本発明の感光材料は、比較例に対して高感度で、かつ最高濃度が高いことが分かる。
【0334】
実施例3
《脂肪族カルボン酸銀の乾燥》
実施例2で調製した粉末脂肪族カルボン酸銀塩A2〜D2を、(株)大川原製作所製スリットフローを用いて、風速2.2m/sにおいて、乾燥温度を表4に記載の条件で、水分率が0.15%以下まで乾燥して、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A31、A32、B31、B32、C31、C32、D31を調製した。
【0335】
《感光材料の作製》
実施例1に記載の感光材料101の作製において、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A11に代えて、上記調製した乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A31、A32、A32、B31、B32、C31、C32、D31を用いた以外は同様にして、感光材料301〜307を作製した。
【0336】
《露光、現像処理及び評価》
上記作製した感光材料301〜307について、実施例1に記載の方法と同様にして、露光、現像処理及びカブリ濃度(Dmin)の評価を行い、得られた結果を表4に示す。なお、カブリ濃度は、未露光部分の濃度(最小濃度)を測定した。
【0337】
【表4】
【0338】
表4より明らかなように、本発明で規定する乾燥条件(乾燥温度)で調製した粉末脂肪族カルボン酸銀塩を用いた本発明の感光材料は、比較例に対してカブリ濃度が低いことが分かる。
【0339】
実施例4
《肪族カルボン酸銀塩Eの調製》
4720mlの純水に、ベヘン酸121.8g、アラキジン酸75.6g、ステアリン酸51.3g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸3.4mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、t−ブチルアルコール347mlを添加し20分間攪拌した後、45.3gの実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0340】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液758.8mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Eを調製した。
【0341】
《脂肪族カルボン酸銀塩Fの調製》
4720mlの純水にベヘン酸121.8g、アラキジン酸56.9g、ステアリン酸51.3g、パルミチン酸2.3g、iso−アラキジン酸17.0gを80℃で溶解した。次に1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸3.4mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0342】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液758.8mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Fを調製した。
【0343】
《脂肪族カルボン酸銀塩Gの調製》
4720mlの純水にベヘン酸121.8g、アラキジン酸75.6g、ステアリン酸45.2g、パルミチン酸2.3g、オレイン酸6.0gを80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸3.4mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0344】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液758.8mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Gを調製した。
【0345】
《脂肪族カルボン酸銀塩Hの調製》
4720mlの純水にベヘン酸121.8g、アラキジン酸75.6g、ステアリン酸51.3g、パルミチン酸2.3g及びポリビニルアルコール1.5g(クラレ社製PVA−205)を80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸3.4mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0346】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液758.8mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Hを調製した。
【0347】
《脂肪族カルボン酸銀塩Iの調製》
4720mlの純水にベヘン酸121.8g、アラキジン酸75.6g、ステアリン酸51.3g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸3.4mlを加えた後n−ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%および2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)50gを添加し、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0348】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液758.8mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Iを調製した。
【0349】
《脂肪族カルボン酸銀の解砕》
実施例1と同様に、上記調製したウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩E〜Iをメッシュ径6.350mmで解砕し、粉末脂肪族カルボン酸銀塩E〜Iを作製した。
【0350】
《脂肪族カルボン酸銀塩の乾燥》
実施例1と同様に、粉末脂肪族カルボン酸銀塩E〜Iを乾燥した。乾燥条件は風速0.1m/s、温度35℃で行い、乾燥済粉末脂肪族カルボン酸銀塩E〜Iを作製した。
【0351】
《予備分散液の調製》
実施例1に記載の予備分散液A11の調製において、乾燥済粉末脂肪族カルボン酸銀塩乾燥粉体A11を、乾燥済粉末脂肪族カルボン酸銀塩E〜Iに変更した以外は同様にして予備分散液E〜Iを調製した。
【0352】
《感光性乳剤分散液の調製》
実施例1に記載の感光性乳剤分散液A11の調製において、予備分散液A11に代えて、予備分散液E〜Iを用いた以外は同様にして、感光性乳剤分散液E〜Iを調製した。
【0353】
《感光層塗布液の調製》
実施例1に記載の感光層塗布液の調製方法において、上記調製した感光性乳剤分散液E〜Iを用いて、更に本発明に係る一般式(1)の例示化合物1−1を、30mg/m2となる量を添加液aに加えた以外は同様にして、感光層塗布液E〜Iを調製した。
【0354】
また、実施例3で調製した感光性乳剤分散液A32、D31を用いて、表5に記載のように、本発明に係る一般式(1)の例示化合物1−1を、30mg/m2となる量を添加液aに加えた感光層塗布液A52、B52と、未添加の感光層塗布液A51、B51を調製した。
【0355】
《感光材料の作製》
実施例1に記載の方法と同様にして、上記調製した感光層塗布液A51、A52、B51、B52及び感光層塗布液E〜Iを用いて、感光材料401〜409を作製した。
【0356】
《露光、現像処理及び評価》
上記作製した感光材料401〜409について、実施例1、3に記載の方法と同様にして、露光、現像処理及び感度、カブリ濃度、最大濃度の評価と下記の方法に従って画像色調評価を行い、得られた結果を表5に示す。なお、感度及び最大濃度は、感光材料401の感度および最大濃度を100とする相対値で表示した。
【0357】
(現像後試料の画像色調評価)
上記現像処理済みの各試料のウエッジ濃度部を、CM−3600d(ミノルタ株式会社製)で測定し、u*、v*及びa*、b*を算出した。測定条件は、光源としてF7光源、視野角を10°として透過測定モードで測定を行った。横軸をu*またはa*、縦軸をv*またはb*としたグラフ上に、測定したu*、v*またはa*、b*をプロットし、線形回帰直線を求めて重決定R2、切片および傾きを求めた。
【0358】
上記線形回帰で求められる各特性値として、診断時に目が疲れない好ましい色調は、程良い黄色である。具体的には、上記測定した特性値として、下記の条件であることが好ましい。
【0359】
角度及び傾き:角度として45度に近づくほど、あるいは傾き(tanθ)として1.0に近いほど、低濃度部〜高濃度部の色調のバランスが好ましいことを表す
切片:+3〜−3の範囲が好ましく、より好ましくは+2〜−2の範囲であるR2乗値:1.0に近いほど、低濃度〜高濃度での色変動や色バラツキが少なく、信頼性、精度が高いことを表す
【0360】
【表5】
【0361】
表5より明らかなように、本発明の感光材料は、比較例に対して、低カブリ、高感度で、最大濃度が高いことが分かる。また、CIEで規定される色度図上の特性も、良好な銀色調を有していることが分かる。
【0362】
【発明の効果】
本発明により、高感度、低カブリで、かつ最高濃度が高く、良好な銀色調が得られる銀塩光熱写真ドライイメージング材料とその製造方法、画像記録方法及び画像形成方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いることのできる流動層乾燥機の一例を示す断面図である。
【図2】本発明で用いることのできる熱現像処理装置の一例を示す断面構成図である。
【符号の説明】
1 給気風入口
2 原料投入口
3 乾燥室
4 バグフィルター
5 排気口
6 目皿板
7 製品排出部
A ヒートドラム
B 対向ローラ
D 剥離爪
F フィルム
100 熱現像装置
110 給送部
120 露光部
130 現像部
140,144 供給ローラ対
141,142,143 搬送ローラ対
150 冷却部
151 冷却ローラ対
152 冷却ファン
160 集積部
【発明の属する技術分野】
本発明は、高感度、低カブリで、かつ最高濃度が高く、良好な銀色調が得られる銀塩光熱写真ドライイメージング材料とその製造方法、画像記録方法及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療や印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が、作業性の上で問題となっており、近年では、環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。
【0003】
そこで、熱を加えるだけで画像形成ができる銀塩光熱写真ドライイメージング材料が実用化され、上記分野で急速に普及してきている。
【0004】
更に、近年、レーザーイメージャーのコンパクト化や処理の迅速化とともにレーザーイメージャーやレーザーイメージセッタにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像形成することができる写真技術用途の光熱写真材料に関する技術が必要とされている。
【0005】
上記技術としては、例えば、米国特許第3,152,904号、同第3,487,075号、及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.第48頁,1991)等に記載されているように、支持体上に非感光性カルボン酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子及び還元剤を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料(以下、感光材料ともいう)が知られている。この銀塩光熱写真ドライイメージング材料では、溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便で環境を損なわないシステムをユーザーに提供することができる。
【0006】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いる銀供給体である有機銀塩の調製方法としては、様々な方法が知られている。例えば、特開昭49−93310号、特開昭49−94619号及び特開昭53−68702号に記載されている水と水難溶性溶媒の共存液中で有機銀塩を調製する方法、特開昭57−186745号、特開昭47−9432号及び米国特許第3,700,458号に記載されている有機溶媒中で有機銀塩を調製する方法、特開昭53−31611号、特開昭54−4117号、特開昭54−46709号及び米国特許第5,434,043号に記載されている水溶液中で有機銀塩を調製する方法等が挙げられる。
【0007】
しかしながら、これまで知られている銀塩光熱写真ドライイメージング材料で用いる有機銀塩組成物の製造方法においては、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の所望の性能を満足させるために有効な解砕工程や乾燥工程の詳細な条件に関しては、十分に示されていないのが現状である。
【0008】
例えば、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の解砕工程、乾燥工程に関する提案(例えば、特許文献1及び2参照。)や、乾燥工程に関する提案(例えば、特許文献3参照。)がなされてはいるが、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の所望の性能を満たすまでには至っていないのが現状である。
【0009】
また一方で、銀塩光熱写真ドライイメージング材料のいわば永遠のテーマとして、より一層の高画質化が要望されており、とりわけ医療用画像の分野では正確な診断を可能とするための高画質化が切望されている。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−121248号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献2】
特開2001−356446号公報(特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献3】
米国特許第5,434,043号明細書
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高感度、低カブリで、かつ最高濃度が高く、良好な銀色調が得られる銀塩光熱写真ドライイメージング材料とその製造方法、画像記録方法及び画像形成方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の手段により達成される。
【0015】
1.非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、平均粒子径として2mm以上、10mm以下に解砕された状態で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0016】
2.非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、風速2m/s以下の乾燥風で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0017】
3.前記非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、風速2m/s以下の乾燥風で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする前記1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0018】
4.非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、乾燥温度が45℃以下である乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0019】
5.前記非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、乾燥温度が45℃以下で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
【0020】
6.前記1〜5項のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法で製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0021】
7.感光層が、前記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物を含有することを特徴とする前記6項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0022】
8.非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子の結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物の存在下で形成されたことを特徴とする前記6または7項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0023】
9.前記結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物が、ゼラチンまたはポリビニルアルコールであることを特徴とする前記8項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0024】
10.前記結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物が、分岐脂肪族カルボン酸または脂肪族不飽和カルボン酸であることを特徴とする前記8項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0025】
11.結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物が、炭素数10以下のアルコール類であることを特徴とする前記8項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0026】
12.結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物が、ポリマーラテックスであることを特徴とする前記8項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0027】
13.前記6〜12項のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に画像を記録する画像記録方法であって、走査レーザー光が縦マルチであるレーザー光走査露光機を用いて露光を行うことを特徴とする画像記録方法。
【0028】
14.前記6〜12項のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を、80℃以上、200℃以下の温度で加熱することにより画像形成することを特徴とする画像形成方法。
【0029】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、一般的な銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造工程及び本発明で使用する用語について簡単に説明する。
【0030】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造工程においては、ベヘン酸等の有機脂肪酸(A)のアルカリ溶液に、予め形成されたハロゲン化銀乳剤(B)及び硝酸銀水溶液を加えて有機銀塩分散物(C)を調製する。有機銀塩分散物(C)に水を加えて攪拌し、静置した後浮上物を分離して脱塩する。必要によりこれを数回繰り返す。その後、遠心分離機等により脱水し、スラリー状またはウェットケーキ状の有機銀塩組成物(D)を得て、これを乾燥し、乾燥済の有機銀塩組成物または乾燥済み粉末(E)を得る。乾燥済の有機銀塩組成物または乾燥済み粉末(E)にバインダー及び有機溶剤を加えて攪拌した後、ホモジナオザー等で分散して感光性有機銀塩分散物(F)を得る。この感光性有機銀塩分散物(F)に増感色素、還元剤、カブリ防止剤、色調剤等の各種添加剤を加えて調液した後、支持体上に塗布・乾燥して光熱写真ドライイメージング材料(G)を得る。本発明では、上記工程のうち、本発明は、有機銀塩組成物(D)の解砕、整粒、乾燥、分散の工程に関係するものである。
【0031】
次いで、本発明に用いられる光熱写真ドライイメージング材料の製造方法の詳細について説明する。本発明では、特定の有機銀粒子の状態及び特定の乾燥温度において、有機銀組成物の乾燥を行う製造方法を用いることにより、高画質でありながら、銀塩光熱写真ドライイメージング材料を長期保存したときに生ずるカブリが少なく、かつ、熱現像後の銀画像安定性に優れた銀塩光熱写真ドライイメージング材料とその製造方法、画像記録方法及び画像形成方法を提供することができるようになった。
【0032】
本発明においては、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、平均粒子径として2mm以上、10mm以下に解砕された状態で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことが特徴であり、好ましくは平均粒子径が4mm以上、10mm以下であり、より好ましくは平均粒子径が6mm以上、10mm以下である。
【0033】
本発明で用いることのできる非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子の解砕装置としては、特に限定はなく、あらゆる解砕装置を使用することができ、例えば、転動ミル、振動ミル、ローラーミル、インパクトミル等が挙げられるが、特に、インパクトミルが好ましく用いられる。
【0034】
また、本発明においては、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、風速2m/s以下の乾燥風で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことが特徴であり、好ましくは0.1m/s以上、1.5m/sであり、更に好ましくは0.1m/s以上、1.0m/sである。
【0035】
上記条件を満足するための乾燥機としては、対流伝熱タイプの乾燥機であれば、特に限定はなく使用することができ、例えば、バンド平行流乾燥機、箱型通気流/平行流式乾燥機、多段円盤式乾燥機、気流乾燥機、流動層乾燥機等が挙げられる。本発明においては、特に、流動層乾燥機が好ましく用いられる。
【0036】
また、本発明においては、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、乾燥温度が45℃以下である乾燥工程を経て製造されたことが特徴であり、好ましくは35〜42℃であり、更に好ましくは35〜40℃である。
【0037】
上記条件を満足するための乾燥機としては、特に制限はなく、あらゆる乾燥機を使用することができ、例えば、真空乾燥機、凍結乾燥機、箱形通気流/平行流式乾燥機、気流式乾燥機、噴霧乾燥機を使用することができる。
【0038】
以下に、本発明で好ましく用いることのできる乾燥機の具体例について説明する。本発明においては乾燥は、生産性、過乾燥の防止の観点から、2回以上行っても良い。また、乾燥時における有機銀塩組成物の状態により任意に乾燥温度及び風速を変更しても良い。
【0039】
図1は、本発明で用いることのできる流動層乾燥機の一例を示す断面図である。
【0040】
図1において、1は給気風入口、2は原料投入口を表す。予め設定された温度に制御された給気風が給気風入口1より図示されていないファンを用いて送風される。給気風は、乾燥室3及びバグフィルター4を通過した後、排気口5より排出される。有機銀塩を含有する原料は、原料投入口2より乾燥室3に投入され、目皿板6からの給気風により乾燥室3内において、攪拌、流動しながら乾燥される。その際、乾燥中に生じた微紛はバグフィルター4に捕獲され、機械的振動及び/または空気もしくは窒素等の適当なパルスジェットにより払い落とされて再乾燥される。また、乾燥時の有機銀組成物の状態の変化により、乾燥途中に給気風及び乾燥温度を随時変更することができる。乾燥終了後、ドライ粉末は製品排出部7より回収される。図1で記載の構成からなる流動層乾燥機の具体例としては、(株)大川原製作所製スリットフローが挙げられる。
【0041】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層が、前記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物を含有することにより、本発明の効果をより一層発揮することができ好ましい。
【0042】
以下、本発明で好ましく用いられる前記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物について説明する。
【0043】
前記一般式(1)において、Zは−S−基または−C(R33)(R33′)−基を表し、R33、R33′は、各々水素原子または置換基を表す。R33、R33′の表す置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロヘキシル等の各基)、アルケニル基(例えば、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、イソヘキセニル、シクロヘキセニル、ブテニリデン、イソペンチリデン等の各基)、アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニリデン等の各基)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等の各基)、ヘテロ環基(例えば、フリル、チエニル、ピリジル、テトラヒドロフラニル等の各基)等の他、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、スルホニルオキシ、ニトロ、アミノ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、スルホニル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルフアモイル、シアノ、スルホ等の各基が挙げられる。R33、R33′として好ましくは、水素原子またはアルキル基である。
【0044】
R31、R32、R31′、R32′は各々置換基を表すが、置換基としては、上述のR33、R33′の表す置換基と同様な基が挙げられる。R31、R32、R31′、R32′として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基等であるが、アルキル基が更に好ましい。アルキル基上の置換基としては、前述のR33、R33′の表す置換基と同様な基が挙げられる。R31、R32、R31′、R32′として更に好ましくは、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、1−メチル−シクロヘキシル等の3級アルキル基である。
【0045】
X31、X31′は、各々水素原子または置換基を表すが、置換基としては、前述のR33、R33′の表す置換基と同様な基が挙げられる。
【0046】
以下、一般式(1)で表されるビスフェノール化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化2】
【0048】
【化3】
【0049】
一般式(1)で表される化合物の銀イオン還元剤に対する添加量比(一般式(1)で表される化合物/銀イオン還元剤(モル比))は、0.001〜0.2の範囲であり、好ましくは0.005〜0.1の範囲である。
【0050】
次いで、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に関する各構成要素について、その詳細を説明する。
【0051】
本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩は、還元可能な銀源であり、炭素数10〜30、好ましくは15〜25の脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。好適な銀塩の例としては例えば、没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩が挙げられる。これらの銀塩のうち、好ましくはベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀が挙げられる。また、本発明においては、脂肪族カルボン酸銀塩が2種以上混合されていることが、現像性を高めることにより、高濃度、高コントラストの銀画像を得られる点で好ましく、例えば、2種以上の脂肪族カルボン酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
【0052】
本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を調製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを混合して脂肪族カルボン酸銀塩の結晶を調製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。本発明で使用するアルカリ金属塩の種類としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの混合であることが好ましく、比率としては1:95〜95:5の範囲であることが好ましく、特に10:90〜75:25の範囲であることが好ましい。脂肪族カルボン酸と反応して脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩となったときに上記の範囲で使用することで、反応液の粘度を良好な状態に制御できるため好ましい。
【0053】
本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩粒子は、遊離カルボン酸と銀塩の混合物であり、本発明に係る感光性乳剤は、脂肪族カルボン酸を該脂肪族カルボン酸銀塩粒子に対して3mol%以上、10mol%以下含有することが特徴の一つであり、好ましくは4mol%以上、8mol%以下含有することである。
【0054】
本発明において、脂肪族カルボン酸の具体的な測定方法としては、下記の方法に従って、全脂肪族カルボン酸量、遊離脂肪族カルボン酸量をそれぞれ求め、その比から脂肪族カルボン酸量を計算して求めることができる。
【0055】
〔全脂肪族カルボン酸量の定量〕
1)試料約10mg(感光材料から剥離するときは、剥離した質量)を正確に秤量し、200mlナス型フラスコに入れる
2)メタノール15mlと4mol/L塩酸3mlとを加え、1分間超音波分散機を用いて分散する
3)テフロン(R)製沸石を入れ、60分間リフラックスする
4)冷却後、冷却管の上からメタノール5mlを加え、冷却管に付着したものをナス型フラスコに洗い入れる。これを2回繰り返す
5)得られた反応液を酢酸エチルで抽出する(酢酸エチル100ml、水70mlを加えて分液抽出を2回行う)
6)常温で30分間真空乾燥する
7)10mlメスフラスコに、内部標準として、ベンズアントロン約100mgをトルエンに溶解し、トルエンで100mlに定容したベンズアントロン溶液を1ml入れる
8)試料をトルエンに溶かして7)のメスフラスコに入れ、トルエンで定容する
9)下記の測定条件にてGC測定を行い、全脂肪族カルボン酸量を定量する
装置:HP−5890+HP−ケミステーション
カラム:HP−1 30m×0.32mm×0.25μm(HP製)
注入口:250℃
検出器:280℃
オーブン:250℃一定
キャリアガス:He
ヘッド圧:80kPa
〔遊離脂肪族カルボン酸量の定量〕
1)試料約20mgを正確に秤量し、200mlナス型フラスコに入れ、メタノール10mlを加えて、1分間超音波分散を行う(遊離有機カルボン酸が抽出される)
2)それをろ過して、ろ液を200mlナス型フラスコに入れ、乾固する(遊離有機カルボン酸が分離される)
3)メタノール15mlと4mol/L塩酸3mlを加え、1分間超音波分散を行う
4)テフロン(R)製沸騰石を入れ、60分間リフラックスする
5)得られた反応液に水60ml、酢酸エチル60mlを加えて、有機カルボン酸のメチルエステル化物を酢酸エチル相に抽出する。酢酸エチル抽出は2回行う
6)酢酸エチル相を乾固し、30分間真空乾燥する
7)10mlのメスフラスコにベンズアントロン溶液(内部標準:約100mgのベンズアントロンをトルエンに溶かし、100mlに定容したもの)1mlを入れる
8)6)をトルエンで溶かして、7)のメスフラスコに入れ、トルエンで定容する
9)下記測定条件にてGC測定を行い、遊離脂肪族カルボン酸量を定量する
本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩は、平均円相当径が0.05μm以上、0.8μmで、かつ平均厚さが0.005μm以上、0.07μm以下であることが好ましく、特に好ましくは平均円相当径が0.2μm以上、0.5μmで、平均厚さが0.01μm以上、0.05μm以下である。すなわち、本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩としては、平板状粒子であることが好ましい。
【0056】
脂肪族カルボン酸銀塩として、平均円相当径が0.05μm以下では透明性には優れるが、画像保存性が悪く、また平均粒径が0.8μm以上では失透が激しい。また、平均厚さが0.005μm以下では、表面積が大きく現像時の銀イオン供給が急激に行われ、特に、低濃度部では銀画像に使われずに、膜中に残存する銀イオンが多量に存在する結果、画像保存性が著しく劣化する。平均厚さが0.07μm以上では、表面積が小さくなり、画像安定性は向上するが、現像時の銀供給が遅く、特に高濃度部での現像銀形状の不均一を招き、その結果、最高濃度が低くなりやすい。
【0057】
本発明において、上記の平均円相当径を求めるには、分散した脂肪族カルボン酸銀塩を希釈してカーボン支持膜付きグリッド上に分散し、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子製、2000FX型)を用いて、直接倍率5000倍にて撮影を行う。次いで、スキャナーにてネガ画像をデジタル画像として取り込み、適当な画像処理ソフトを用いて粒径(円相当径)を300個以上測定し、その平均粒径を算出する。
【0058】
平均厚さを求めるには、下記に示すようなTEM(透過型電子顕微鏡)を用いた方法により算出することができる。
【0059】
はじめに、支持体上に塗布された感光層を接着剤により適当なホルダーに貼り付け、支持体面と垂直な方向にダイヤモンドナイフを用いて、厚さ0.1〜0.2μmの超薄切片を作製する。作製された超薄切片を、銅メッシュに支持させ、グロー放電により親水化されたカーボン膜上に移し、液体窒素により−130℃以下に冷却しながら透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率5,000倍〜40,000倍にて明視野像を観察し、画像はフィルム、イメージングプレート、CCDカメラなどに素早く記録する。この際、観察される視野としては、切片に破れや弛みがない部分を適宜選択することが好ましい。
【0060】
カーボン膜としては、極薄いコロジオン、ホルムバールなど有機膜に支持されたものを使用することが好ましく、更に好ましくは、岩塩基板上に形成し基板を溶解除去して得るか、または、上記有機膜を有機溶媒、イオンエッチングにより除去して得られたカーボン単独の膜である。TEMの加速電圧としては、80〜400kVが好ましく、特に好ましくは80〜200kVである。
【0061】
その他、電子顕微鏡観察技法及び試料作製技法の詳細については、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/医学・生物学電子顕微鏡観察法」(丸善)、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/電子顕微鏡生物試料作製法」(丸善)をそれぞれ参考にすることができる。
【0062】
適当な媒体に記録されたTEM画像は、画像1枚あたり少なくとも1024画素×1024画素、好ましくは2048画素×2048画素以上に分解し、コンピュータによる画像処理を行う。画像処理を行うためには、フィルムに記録されたアナログ画像はスキャナなどでデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じ施すことが好ましい。その後、ヒストグラムを作製し、2値化処理によって脂肪族カルボン酸銀に相当する箇所を抽出する。
【0063】
上記抽出した脂肪族カルボン酸銀塩粒子の厚さを、300個以上適当なソフトでマニュアル測定し、平均値を求める。
【0064】
前記の平板形状を有する脂肪族カルボン酸銀塩粒子を得る方法としては、特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/または該ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つ事や、ソープに対する有機酸の割合、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすることなどが有効である。
【0065】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子の結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物の存在下で形成されることが好ましい。
【0066】
本発明において、脂肪族カルボン酸銀粒子に対する結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物とは、脂肪族カルボン酸銀粒子の製造工程において、当該化合物を共存させた条件下で脂肪族カルボン酸銀を製造したときに、共存させない条件下で製造したときより小粒径化及び/または単分散化する機能、効果を有する化合物をいう。
【0067】
本発明においては、結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物が、ゼラチンまたはポリビニルアルコールであること、不飽和結合を有する分岐カルボン酸であること、炭素数10以下のアルコール類であること、あるいはポリマーラテックスであることが好ましい。
【0068】
具体的には、炭素数が10以下の一価アルコール類、好ましくは第2級アルコール、第3級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ポリエチレングリコールなどポリエーテル類、グリセリンが挙げられる。好ましい添加量としては、脂肪族カルボン酸銀に対して10〜200質量%である。
【0069】
また、イソヘプタン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキジン酸、イソベヘン酸、イソヘキサコ酸など、それぞれ異性体を含む分岐脂肪族カルボン酸も好ましい。この場合、好ましい側鎖として、炭素数4以下のアルキル基またはアルケニル基が挙げられる。また、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モロクチン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、セラコレン酸などの脂肪族不飽和カルボン酸が挙げられる。好ましい添加量は、脂肪族カルボン酸銀の0.5〜10mol%である。
【0070】
また、グルコシド、ガラクトシド、フルクトシドなどの配糖体類、トレハロース、スクロースなどトレハロース型二糖類、グリコーゲン、デキストリン、デキストラン、アルギン酸など多糖類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、ソルビタン、ソルビット、酢酸エチル、酢酸メチル、ジメチルホルムアミドなど水溶性有機溶媒、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンなどの水溶性ポリマー類も好ましい化合物として挙げられる。好ましい添加量としては脂肪族カルボン酸銀に対して0.1〜20質量%である。
【0071】
また、炭素数が10以下のアルコールが好ましくは、第二級アルコール、第三級アルコールは、仕込み工程での脂肪族カルボン酸ナトリウムの溶解度を上げることにより減粘し、攪拌効率を上げることで単分散で、かつ小粒径化する。
【0072】
また、分岐脂肪族カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸は、脂肪族カルボン酸銀が結晶化する際にメイン成分である直鎖脂肪族カルボン酸銀よりも立体障害性が高く、結晶格子の乱れが大きくなるため大きな結晶は生成せず、結果的に小粒径化する。更に、ポリマーラテックスは有機銀形成時に存在することで物理的に結晶成長を阻害し小粒径化する。
【0073】
本発明に係る平板状脂肪族カルボン酸銀塩粒子は、必要に応じバインダーや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザなどで分散粉砕することが好ましい。上記予備分散にはアンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
【0074】
また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミルなどを用いることが可能であり、高圧ホモジナイザとしては壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプなど様々なタイプを用いることができる。
【0075】
メディア分散時に使用されるセラミックスビーズに用いられるセラミックスとしては、例えば、Al2O3、BaTiO3、SrTiO3、MgO、ZrO、BeO、Cr2O3、SiO2、SiO2−Al2O3、Cr2O3−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al2O3(スピネル)、SiC、TiO2、K2O、Na2O、BaO、PbO、B2O3、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、BeAl2O4、Y3Al5O12、ZrO2−Y2O3(立方晶ジルコニア)、3BeO−Al2O3−6SiO2(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、Si2O−nH2O、チッカ珪素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ(これらジルコニアを含有するセラミックスを、以下ジルコニアと略す)が特に好ましく用いられる。
【0076】
本発明に係る平板状脂肪族カルボン酸銀塩粒子を分散する際に用いられる装置類において、該脂肪族カルボン酸銀塩粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素などのセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、中でも、ジルコニアを用いることが好ましい。
【0077】
上記分散を行う際、バインダー濃度は脂肪族カルボン酸銀質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。また、本分散の好ましい運転条件としては、例えば、高圧ホモジナイザを分散手段として用いる場合には、30MPa〜100MPa、運転回数は2回以上が好ましい運転条件として挙げられる。また、メディア分散機を分散手段として用いる場合には、周速が6m/秒から13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
【0078】
以下、さらに本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を構成する化合物や構成要件の説明を行う。
【0079】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子(単に、ハロゲン化銀粒子とも言う)について説明する。
【0080】
本発明でいう感光性ハロゲン化銀粒子とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に光吸収することができ、または人為的に物理化学的な方法により可視光ないし赤外光を吸収することができ、かつ紫外光領域から赤外光領域の光波長範囲内の何れかの領域の光を吸収した時に、当該ハロゲン化銀結晶内及び/または結晶表面において、物理化学的変化が起こり得るように処理製造されたハロゲン化銀結晶粒子を言う。
【0081】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子自体は、P.Glafkides著:Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊,1967年)、G.F.Duffin著:Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊,1966年)、V.L.Zelikman et al著:Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊,1964年)等に記載された方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等の何れでもよく、また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等の何れを用いてもよいが、上記方法の中でも形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する、いわゆるコントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れであってもよい。
【0082】
粒子形成は、通常、ハロゲン化銀種粒子(核)の生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、また、核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよい。粒子形成条件であるpAg、pH等をコントロールして粒子形成を行うコントロールドダブルジェット法が、粒子形状やサイズのコントロールが容易にできる点で好ましい。例えば、核生成と粒子成長を分離して行う方法を行う場合には、先ず可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩をゼラチン水溶液中で均一、急速に混合して核(種粒子)を生成(核生成工程)した後、コントロールされたpAg、pH等の条件下で、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を供給しつつ、粒子成長させる粒子成長工程により、ハロゲン化銀粒子を調製する。ハロゲン化銀粒子を形成した後、脱塩工程により不要な塩類等をヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により除くことで所望のハロゲン化銀乳剤を得ることができる。
【0083】
ハロゲン化銀粒子は、画像形成後の白濁や色調変動(黄色味)を低く抑えるため、あるいは良好な画質を得るため、平均粒径が小さい方が好ましく、平均粒径としては、0.02μm未満の粒子を計測の対象外とした時の値として、0.035〜0.055μmが好ましい。尚、ここで言う粒径とは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さを言う。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には、主表面の投影面積と同面積の円像に換算した時の直径を言う。
【0084】
ハロゲン化銀粒子は、単分散であることが好ましい。ここで言う単分散とは、下式で求められる粒径の変動係数が30%以下であることを言う。好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
【0085】
粒径の変動係数(%)=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
ハロゲン化銀粒子の形状としては、立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子などを挙げることができるが、これらの内、特に、立方体、八面体、14面体、平板状銀粒子が好ましい。
【0086】
平板状粒子を用いる場合の平均アスペクト比(平均粒径/厚さ)は、好ましくは1.5〜100、より好ましくは2〜50が良い。これらの平板粒子の調製方法は、例えば、米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
【0087】
ハロゲン化銀粒子表面の晶癖については、特に制限はないが、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着反応において、晶癖(面)選択性を有する分光増感色素を使用する場合には、その選択性に適応する晶癖を相対的に高い割合で有するハロゲン化銀粒子を使用することが好ましい。例えば、ミラー指数〔100〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子表面において、〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。尚、ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani:J.Imaging Sci.,29,165(1985年)により求めることができる。
【0088】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、粒子形成時に平均分子量5万以下の低分子量ゼラチンを用いて調製することが好ましいが、特に、ハロゲン化銀粒子の核形成時に用いることが好ましい。低分子量ゼラチンは、平均分子量5万以下のものであり、好ましくは2000〜40000、更に好ましくは5000〜25000である。ゼラチンの平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。低分子量ゼラチンは、通常用いられる平均分子量10万程度のゼラチン水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸またはアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下または加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
【0089】
核形成時の分散媒(ゼラチン等)の濃度は、5質量%以下が好ましく、0.05〜3.0質量%の低濃度で行うのがより有効である。
【0090】
ハロゲン化銀粒子は、粒子形成時に下記一般式(A)で表されるポリエチレンオキシド化合物を用いることが好ましい。
【0091】
一般式(A)
YO(CH2CH2O)m〔CH(CH3)CH2O〕p(CH2CH2O)nY式中、Yは水素原子、−SO3Mまたは−CO−B−COOMを表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基または炭素原子数5以下のアルキル基で置換されたアンモニウム基を表し、Bは有機2塩基性酸を形成する鎖状または環状の基を表す。m及びnは、各々0〜50を、pは1〜100を表す。
【0092】
上記一般式(A)で表されるポリエチレンオキシド化合物は、ハロゲン化銀写真感光材料を製造するに際し、ゼラチン水溶液を製造する工程、ゼラチン溶液に水溶性ハロゲン化物及び水溶性銀塩を添加する工程、乳剤を支持体上に塗布する工程等、乳剤原料を撹拌したり、移動したりする場合の著しい発泡に対する消泡剤として好ましく用いられて来たものであり、消泡剤として用いる技術は、例えば、特開昭44−9497号に記載されている。上記ポリエチレンオキシド化合物は、核形成時の消泡剤としても機能する。上記一般式(A)で表されるポリエチレンオキシド化合物は、銀に対して1質量%以下で用いるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量%で用いる。
【0093】
上記のポリエチレンオキシド化合物は、核形成時に存在していればよく、核形成前の分散媒中に予め加えておくのが好ましいが、核形成中に添加してもよいし、核形成時に使用する銀塩水溶液やハライド水溶液に添加して用いてもよい。好ましくは、ハライド水溶液もしくは両方の水溶液に0.01〜2.0質量%で添加して用いることである。また、核形成工程の少なくとも50%に亘る時間で存在せしめるのが好ましく、更に好ましくは70%以上に亘る時間で存在せしめる。このポリエチレンオキシド化合物は、粉末で添加しても、メタノール等の溶媒に溶かして添加してもよい。
【0094】
核形成時の温度は、5〜60℃、好ましくは15〜50℃であり、一定の温度であっても、昇温パターン(例えば、核形成開始時の温度が25℃で、核形成中徐々に温度を挙げ、核形成終了時の温度が40℃である様な場合)や、その逆のパターンであっても前記温度範囲内で制御するのが好ましい。
【0095】
核形成に用いる銀塩水溶液及びハライド水溶液の濃度は、3.5mol/L以下が好ましく、更には0.01〜2.5mol/Lの低濃度域で使用されるのが好ましい。核形成時の銀イオンの添加速度は、反応液1リットル当たり1.5×10−3〜3.0×10−1モル/minが好ましく、更に好ましくは3.0×10−3〜8.0×10−2モル/minである。
【0096】
核形成時のpHは、1.7〜10の範囲に設定できるが、アルカリ側のpHでは形成する核の粒径分布を広げるため、好ましくはpH2〜6である。また、核形成時のpBrは0.05〜3.0程度、好ましくは1.0〜2.5、更には1.5〜2.0がより好ましい。
【0097】
ハロゲン化銀粒子は如何なる方法で感光層に添加されてもよく、この時ハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)に近接するように配置するのが好ましい。
【0098】
本発明に係るハロゲン化銀は、予め調製しておき、これを脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製するための溶液に添加するのが、ハロゲン化銀調製工程と脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製工程を分離して扱えるので製造コントロール上も好ましいが、英国特許第1,447,454号に記載される様に、脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製する際にハライドイオン等のハロゲン成分を脂肪族カルボン酸銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで脂肪族カルボン酸銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させることもできる。また、脂肪族カルボン酸銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製することも可能である。即ち、予め調製された脂肪族カルボン酸銀塩の溶液もしくは分散液、または脂肪族カルボン酸銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、脂肪族カルボン酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。
【0099】
ハロゲン化銀粒子形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例については、例えば、米国特許第4,009,039号、同第3,457,075号、同第4,003,749号、英国特許第1,498,956号及び特開昭53−27027号、同53−25420号に詳説される金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム等の無機ハロゲン化物、例えば、トリメチルフェニルアンモニウムブロマイド、セチルエチルジメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイドの様なオニウムハライド類、例えばヨードフォルム、ブロモフォルム、四塩化炭素、2−ブロム−2−メチルプロパン等のハロゲン化炭化水素類、N−ブロム琥珀酸イミド、N−ブロムフタルイミド、N−ブロムアセトアミド等のN−ハロゲン化合物、その他、例えば塩化トリフェニルメチル、臭化トリフェニルメチル、2−ブロム酢酸、2−ブロムエタノール、ジクロロベンゾフェノン等がある。この様にハロゲン化銀を有機酸銀とハロゲンイオンとの反応により有機酸銀塩中の銀の一部または全部をハロゲン化銀に変換することによって調製することもできる。また、別途調製したハロゲン化銀に脂肪族カルボン酸銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。
【0100】
これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル、好ましくは0.03〜0.5モル使用するのが好ましい。
【0101】
ハロゲン化銀粒子には、元素周期律表の6〜11族に属する遷移金属のイオンを含有することが好ましい。上記金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。これらは1種類でも同種あるいは異種の金属錯体を2種以上併用してもよい。これらの金属イオンは金属塩をそのままハロゲン化銀に導入してもよいが、金属錯体または錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。好ましい含有率は、銀1モルに対し1×10−9〜1×10−2モルの範囲が好ましく、1×10−8〜1×10−4モルの範囲がより好ましい。本発明においては、遷移金属錯体または錯体イオンは下記一般式(B)で表されるものが好ましい。
【0102】
一般式(B)
〔ML6〕m
式中、Mは元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(弗素、塩素、臭素、沃素の各イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また、異なってもよい。
【0103】
これらの金属のイオンまたは錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載される様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0104】
これらの金属化合物は、水あるいは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物と塩化ナトリウム、塩化カリウムとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合される時、第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物と塩化ナトリウム、塩化カリウムとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0105】
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子は、ヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、脱塩しないで用いることもできる。
【0106】
(カブリ防止剤及び画像安定化剤)
以下、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることのできるカブリ防止及び画像安定化剤について説明する。
【0107】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、還元剤として前記一般式(1)で表されるようなビスフェノール類の還元剤が主に用いられるので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されていることが好ましい。好ましくは無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物である。
【0108】
従って、これらの機能を有する化合物であれば如何なる化合物でもよいが、複数の原子からなる有機フリーラジカルが好ましい。上述のような機能を有し、かつ銀塩光熱写真ドライイメージング材料に格別の弊害を生じることのない化合物であれば如何なる構造を持った化合物でもよい。
【0109】
また、これらのフリーラジカルを発生する化合物としては、発生するフリーラジカルに、還元剤と反応し不活性化するに充分な時間接触できる位の安定性を持たせるために炭素環式、または複素環式の芳香族基を有するものが好ましい。
【0110】
これらの化合物の代表的なものとして、以下に挙げるビイミダゾリル化合物、ヨードニウム化合物を挙げることができる。
【0111】
ビイミダゾリル化合物としては、下記一般式(2)により表されるものが挙げられる。
【0112】
【化4】
【0113】
一般式(2)において、R1、R2及びR3(同一でも異なってもよい)は各々、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、スルホニル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基またはアミノ基を示す。これらの内、より好適な置換基はアリール基、アルケニル基及びシアノ基である。
【0114】
上記のビイミダゾリル化合物は、例えば、米国特許第3,734,733号及び英国特許第1,271,177号に記載されている製造方法及びそれに準じた方法により製造することができる。置換基の詳細及び好ましい具体例は、例えば特開2000−321711号に記載されており、それを参考にすることができる。
【0115】
また、同様に好適な化合物として、下記一般式(3)で示されるヨードニウム化合物を挙げることができる。
【0116】
【化5】
【0117】
一般式(3)において、Q1は5〜7員環を完成するのに必要な原子を包含し、かつ該必要な原子は炭素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる。R11、R12及びR13(同一でも異なってもよい)は各々、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、スルホニル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基またはアミノ基を示す。これらの内、より好適な置換基はアリール基、アルケニル基及びシアノ基である。尚、R11、R12及びR13の何れか二つが互いに結合して環を形成してもよい。
【0118】
R14はカルボキシレート基またはO−を示す。mは0または1を表す。R13がスルホ基またはカルボキシル基の時、mは0で、かつR14はO−である。
【0119】
X−はアニオン性対イオンであり、好適な例としてはCH3COO−、CH3SO3 −及びPF6 −である。
【0120】
これらの内、特に好ましい化合物は、下記一般式(4)で表される。
【0121】
【化6】
【0122】
一般式(4)において、R11、R12、R13、R14、X−及びmは、前記一般式(3)と同義であり、Yは炭素原子(−CH=;ベンゼン環)または窒素原子(−N=;ピリジン環)を表す。
【0123】
上記のヨードニウム化合物は、Org.Syn.,1961及びFieser著:Advanced Organic Chemistry(Reinhold,N.Y.,1961)に記載される製造方法及びそれに準じた方法によって合成できる。置換基の詳細及び好ましい具体例は、例えば、特開2000−321711(前出)に記載されている。
【0124】
上記の一般式(2)及び(3)で表される化合物の添加量は、1×10−3〜1×10−1モル/m2、好ましくは5×10−3〜5×10−2モル/m2である。尚、当該化合物は、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の如何なる構成層中にも含有させることができるが、還元剤の近傍に含有させることが好ましい。
【0125】
また、還元剤を不活性化し、還元剤が脂肪族カルボン酸銀塩を銀に還元できないようにする化合物としては、反応活性種がハロゲン原子でないものが好ましいが、ハロゲン原子を活性種として放出する化合物も、ハロゲン原子でない活性種を放出する化合物と併用することができる。ハロゲン原子を活性種として放出できる化合物も、多くのものが知られており、併用により良好な効果が得られる。
【0126】
これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、下記一般式(5)で表される化合物がある。
【0127】
【化7】
【0128】
一般式(5)において、Q2はアリール基または複素環基を表す。X1、X2及びX3は各々、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基またはアリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。Yは−C(=O)−、−SO−または−SO2−を表す。Q2で表されるアリール基は、単環でも縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環または2環のアリール基で、より好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、更に好ましくはフェニル基である。Q2で表される複素環基は、N、OまたはSの少なくとも一つの原子を含む3〜10員の飽和もしくは不飽和の複素環基であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0129】
置換基の詳細は、特開2001−263350号公報の段落「0100」〜「0103」に記載されている。
【0130】
これらの化合物の添加量は、実質的にハロゲン化銀の生成によるプリントアウト銀の増加が問題にならない範囲が好ましく、前記活性ハロゲンラジカルを生成しない化合物に対する比率で最大150%以下、更に好ましくは100%以下であることが好ましい。
【0131】
尚、銀塩光熱写真ドライイメージング材料中には、上記の化合物の他に、従来カブリ防止剤として知られている化合物を含んでもよく、また上記の化合物と同様な反応活性種を生成することができる化合物であっても、カブリ防止機構が異なる化合物であってもよい。例えば、米国特許第3,589,903号、同第3,874,946号、同第4,546,075号、同第4,452,885号、同第4,756,999号、特開昭59−57234号、特開平9−288328号、同9−90550号に記載される化合物が挙げられる。更に、その他のカブリ防止剤としては、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同第605,981号、同第631,176号に開示されている化合物が挙げられる。
【0132】
(銀イオン還元剤)
本発明においては、銀イオン還元剤(単に還元剤ということもある)として、例えば、米国特許第3,589,903号、同第4,021,249号、英国特許第1,486,148号の各明細書及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号、特公昭51−35727号の各公報に記載されたポリフェノール化合物、あるいは2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル等の米国特許第3,672,904号明細書に記載されたビスナフトール類、更に、4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等の米国特許第3,801,321号明細書に記載されているようなスルホンアミドフェノールまたはスルホンアミドナフトール類を用いることができる。
【0133】
しかしながら、本発明においては、銀イオン還元剤としては、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0134】
【化8】
【0135】
以下、一般式(6)で表される化合物について詳述する。
一般式(6)において、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、3〜10員の非芳香族環状基、または5〜6の芳香族環状基を表す。但し、R11とR12が同時に水素原子となることはない。R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表し、Qはベンゼン環上に置換可能な基を表し、nは0〜2の整数を表す。Qが複数の場合、各々のQは同じでも異なっていても良い。
【0136】
一般式(6)において、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、3〜10員の非芳香族環状基または5〜6員の芳香族環状基を表すが、3〜10員の非芳香族環状基として具体的に3員環としては、シクロプロピル、アジリジル、オキシラニル、4員環としてはシクロブチル、シクロブテニル、オキセタニル、アゼチジニル、5員環としてはシクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、テトラヒドロチエニル、6員環としてはシクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、テトラヒドロピラニル、ピラニル、ピペリジニル、ジオキサニル、テトラヒドロチオピラニル、ノルカラニル、ノルピナニル、ノルボルニル、7員環としてはシクロヘプチル、シクロヘプチニル、シクロヘプタジエニル、8員環としてはシクロオクタニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、シクロオクタトリエニル、9員環としてはシクロノナニル、シクロノネニル、シクロノナジエニル、シクロノナトリエニル、10員環としてはシクロデカニル、シクロデケニル、シクロデカジエニル、シクロデカトリエニル等の各基が挙げられる。
【0137】
好ましくは3〜6員環であり、より好ましくは5〜6員環であり、最も好ましくは6員環であり、その中でもヘテロ原子を含まない炭化水素環が好ましい。該環はスピロ原子を通じて他の環とスピロ結合を形成してもよいし、芳香族環を含む他の環と如何様にも縮環してよい。また環上には任意の置換基を有することができる。該置換基として具体的には、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)、アルケニル基(例えば、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、1−シクロアルケニル基、2−シクロアルケニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1−プロピニル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アルキルカルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、ウレイド基(例えば、メチルアミノカルボニルアミノ基等)、アルキルスルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−モルホリノカルボニル基等)、スルファモイル基(スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルフォリノスルファモイル基等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基等)、アルキルアミノ基(例えばアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等)、スルホ基、ホスフォノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルホニルアミノカルボニル基、エタンスルホニルアミノカルボニル基等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセトアミドスルホニル基、メトキシアセトアミドスルホニル基等)、アルキニルアミノカルボニル基(例えば、アセトアミドカルボニル基、メトキシアセトアミドカルボニル基等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルフィニルアミノカルボニル基、エタンスルフィニルアミノカルボニル基等)等が挙げられる。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なっていても良い。特に好ましい置換基はアルキル基である。
【0138】
次に、R11及びR12で表される5〜6員の芳香族環状基において、芳香族炭素環としては、単環でも縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等)が挙げられるが、好ましく用いられるのは、ベンゼン環である。また、芳香族ヘテロ環として好ましくは縮合環を有していてもよい5〜6員の芳香族ヘテロ環である。更に好ましくは縮合環を有していてもよい5員の芳香族ヘテロ環である。このようなヘテロ環として、好ましくはイミダゾール、ピラゾール、チオフェン、フラン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、さらに好ましくはイミダゾール、ピラゾール、チオフェン、フラン、ピロール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾールであり、特に好ましくはチオフェン、フラン、チアゾールである。上記環は芳香族環を含む他の環と如何様にも縮環してよい。また、環上には任意の置換基を有することができる。該置換基としては前述した3〜10員の非芳香族環状基上の置換基と同じものを挙げることができる。
【0139】
R11及びR12の最も好ましい組み合わせは、R11が5員の芳香族へテロ環基であり、R12が水素原子である。
【0140】
R13及びR14は各々水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表すが、アルキル基として具体的には炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1−メチルシクロヘキシル基、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、1−シクロアルケニル基、2−シクロアルケニル基、エチニル基、1−プロピニル基等が挙げられる。R13として好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。さらに好ましくはメチル基、t−ブチル基、1−メチルシクロヘキシル基であり、もっとも好ましくはt−ブチル基、1−メチルシクロヘキシル基である。R14として好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基等が挙げられる。さらに好ましくは、メチル基、2−ヒドロキシエチル基である。R13及びR14で表されるアリール基として具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。R13及びR14で表される複素環基として具体的には、ピリジン基、キノリン基、イソキノリン基、イミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、テトラゾール基等の芳香族ヘテロ環基やピペリジノ基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロピラニル基等の非芳香族ヘテロ環基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していても良く、該置換基としては前述の環上の置換基をあげることができる。
【0141】
R13及びR14の最も好ましい組み合わせは、R13が第3級アルキル基(例えば、t−ブチル基、1−メチルシクロヘキシル基等)であり、R14が第1級アルキル基(例えば、メチル基、2−ヒドロキシエチル基等)である。
【0142】
Qはベンゼン環上に置換可能な基を表すが、具体的には炭素数1〜25のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロオクチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリール基(例えば、フェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アミド基(例えば、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブタンアミド基、ヘキサンアミド基、ベンズアミド基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等を挙げることができる。また、これらの基は更にこれらの基で置換されていてもよい。nは0〜2の整数を表すが、最も好ましくはnが0の場合である。Qが複数の場合、各々のQは同じでも異なっていても良い。
【0143】
以下に、一般式(6)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
【化9】
【0145】
【化10】
【0146】
【化11】
【0147】
【化12】
【0148】
【化13】
【0149】
【化14】
【0150】
【化15】
【0151】
本発明の光熱写真ドライイメージング材料に使用される銀イオン還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤に一様ではないが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05〜10モルであり、好ましくは0.1〜3モルである。上記の添加量の範囲内において、銀イオン還元剤は2種以上併用されてもよく、また前記の異なる化学構造を有する還元剤と併せて用いることもできる。本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光性ハロゲン化銀、有機銀塩粒子及び溶媒からなる感光乳剤溶液に添加、混合して塗布することが、停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
【0152】
(感光性ハロゲン化銀の化学増感及び分光増感等)
感光性ハロゲン化銀には化学増感を施すことができる。例えば、特開2001−249928号及び特開2001−250866号公報に記載される方法等に従って、硫黄、セレン、テルルなどのカルコゲンを放出する化合物や、金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物の利用により、化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。特に、カルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されるのが好ましい。これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤は、ハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
【0153】
これらの有機増感剤としては、例えば、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、同11−218874号等に開示されている種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらの内カルコゲン原子が炭素原子またはリン原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0154】
有機増感剤としてのカルコゲン化合物の使用量は、使用するカルコゲン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学増感を施す際の反応環境などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−8〜1×10−2モルが好ましく、より好ましくは1×10−7〜1×10−3モルを用いる。化学増感環境としては、特に制限はないが、感光性ハロゲン化銀粒子上のカルコゲン化銀または銀核を消滅あるいはそれらの大きさを減少させ得る化合物の存在下において、また、特に銀核を酸化し得る酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いてカルコゲン増感を施すことが好ましく、該増感条件として、pAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHは4〜10が好ましく、より好ましくは5〜8、また、温度としては30℃以下で増感を施すことが好ましい。
【0155】
従って、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、感光性ハロゲン化銀が、該粒子上の銀核を酸化し得る酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いて、温度30℃以下において化学増感を施され、かつ脂肪族カルボン酸銀塩と混合して分散され、脱水及び乾燥された感光性乳剤を用いることが好ましい。
【0156】
また、これらの有機増感剤を用いた化学増感は、分光増感色素またはハロゲン化銀粒子に対して吸着性を有するヘテロ原子含有化合物の存在下で行われることが好ましい。ハロゲン化銀に吸着性を有する化合物の存在下に化学増感を行うことで、化学増感中心核の分散化を防ぐことができ、高感度、低カブリを達成できる。分光増感色素については後述するが、ハロゲン化銀に吸着性を有するヘテロ原子含有化合物とは、例えば、特開平3−24537号公報に記載される含窒素複素環化合物が好ましい例として挙げられる。含窒素複素環化合物において、複素環としてはピラゾール、ピリミジン、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ピリダジン、1,2,3−トリアジン等の各環、これらの環が2〜3個結合した環、例えばトリアゾロトリアゾール、ジアザインデン、トリアザインデン、ペンタアザインデン等の各環を挙げることができる。単環の複素環と芳香族環の縮合した複素環、例えばフタラジン、ベンズゾミダゾール、インダゾール、ベンゾチアゾール等の各環も適用できる。
【0157】
これらの中で好ましいのはアザインデン環であり、かつ置換基としてヒドロキシル基を有するアザインデン化合物、例えばヒドロキシトリアザインデン、テトラヒドロキシアザインデン、ヒドロキシペンタアザインデン誘導体等が更に好ましい。
【0158】
上記複素環には、ヒドロキシル基以外の置換基を有してもよい。置換基としては、例えばアルキル基、置換アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基などが挙げられる。
【0159】
これら含複素環化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の大きさや組成その他の条件等に応じて広い範囲に亘って変化するが、大凡の量はハロゲン化銀1モル当たり1×10−6〜1モルの範囲であり、好ましくは1×10−4〜1×10−1モルの範囲である。
【0160】
感光性ハロゲン化銀には、金イオンなどの貴金属イオンを放出する化合物を利用して貴金属増感を施すことができる。金増感剤として、例えば、塩化金酸塩や有機金化合物が利用できる。
【0161】
また、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることができ、還元増感の貝体的な化合物としては、アスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1錫、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0162】
化学増感を施されるハロゲン化銀は、有機銀塩の存在下で形成されたのでも、有機銀塩の存在しない条件下で形成されたものでも、また、両者が混合されたものでもよい。
【0163】
感光性ハロゲン化銀には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素として、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。例えば、特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号等に記載された増感色素が使用できる。
【0164】
有用な増感色素は、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)17643の23頁IV−A項(1978年12月)、同18431の437頁X項(1978年8月)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に、各種レーザイメージャーやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましい。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0165】
有用なシアニン色素は、例えばチアゾリン、オキサゾリン、ピロリン、ピリジン、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール及びイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン、ローダニン、オキサゾリジンジオン、チアゾリンジオン、バルビツール酸、チアゾリノン、マロノニトリル及びピラゾロン核などの酸性核も含む。
【0166】
本発明においては、特に赤外に分光感度を有する増感色素を用いることもできる。好ましく用いられる赤外分光増感色素としては、例えば、米国特許第4,536,473号、同第4,515,888号、同第4,959,294号等に開示される赤外分光増感色素が挙げられる。
【0167】
赤外分光増感色素については、ベンズゾゾール環のベンゼン環上にスルフィニル基が置換されていることを特徴とした長鎖のポリメチン色素が特に好ましい。
【0168】
上記の赤外増感色素は、例えば、エフ・エム・ハーマー著:The Chemistry of Heterocyclic Compounds第18巻,The Cyanine Dyes and Related Compounds(A.Weissberger ed.Interscience社刊,New York 1964年)に記載の方法によって容易に合成できる。
【0169】
これらの赤外増感色素の添加時期は、ハロゲン化銀調製後のいずれの時点でもよい。添加方法としては、例えば、溶剤に添加して添加する方法、あるいは微粒子状に分散したいわゆる固体分散状態でハロゲン化銀粒子あるいはハロゲン化銀粒子/脂肪族カルボン酸銀塩粒子を含有する感光性乳剤に添加できる。また、前記のハロゲン化銀粒子に対し吸着性を有するヘテロ原子含有化合物と同様に、化学増感に先立ってハロゲン化銀粒子に添加し吸着させた後、化学増感を施すこともでき、これにより化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。
【0170】
上記の分光増感色素は、単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。
【0171】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられる感光性ハロゲン化銀、脂肪族カルボン酸銀塩を含有する乳剤は、増感色素と共に、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されていてもよい。
【0172】
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質は、RD17643(1978年12月発行)23頁IVのJ項、あるいは特公平9−25500号、特公昭43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されているが、強色増感剤としては、下記で表される複素芳香族メルカプト化合物がまたはメルカプト誘導体化合物が好ましい。
【0173】
Ar−SM
式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム、またはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン、またはキナゾリン環である。しかしながら、他の複素芳香環も含まれる。
【0174】
尚、脂肪族カルボン酸銀塩及び/またはハロゲン化銀粒子乳剤の分散物中に含有させた時に、実質的に上記のメルカプト化合物を生成するメルカプト誘導体化合物も含まれる。特に下記で表されるメルカプト誘導体化合物が、好ましい例として挙げられる。
【0175】
Ar−S−S−Ar
式中のArは上記で表されたメルカプト化合物の場合と同義である。
【0176】
上記の複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)から成る群から選ばれる置換基を有し得る。
【0177】
上記の強色増感剤の他に、特開2001−215652号公報に開示される下記一般式(7)で表される化合物と大環状化合物を強色増感剤として使用できる。
【0178】
【化16】
【0179】
一般式(7)において、H31Arは芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、T31は脂肪族炭化水素基からなる2価の連結基または連結基を表し、J31は酸素原子、硫黄原子または窒素原子を一つ以上含む2価の連結基または連結基を表す。Ra、Rb、Rc及びRdは各々、水素原子、アシル基、脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表し、またはRaとRb、RcとRd、RaとRc或いはRbとRdの間で結合して含窒素複素環基を形成することができる。M31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンを表し、k31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンの数を表す。
【0180】
一般式(7)における置換基の詳細な説明は、上記特開2001−215652号公報の段落「0026」〜「0042」に、また、化合物例は段落「0043」〜「0046」に1〜16として記載される。
【0181】
強色増感剤は、有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む感光層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルで用いるのが好ましい。特に好ましくは、銀1モル当たり0.01〜0.5モルの量が好ましい。
【0182】
本発明においては省銀化剤を使用することが好ましい。省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物を言う。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力(カバリングパワー)を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度を言う。この省銀化剤は感光層または非感光層、更にはその何れにも存在せしめることができる。
【0183】
省銀化剤としては、下記一般式〔H〕で表されるヒドラジン誘導体、一般式〔G〕で表せるビニル化合物、一般式〔P〕で表される4級オニウム化合物等が好ましい例として挙げられる。
【0184】
【化17】
【0185】
【化18】
【0186】
一般式〔H〕において、A0は、それぞれ置換基を有してもよい脂肪族基、芳香族基、複素環基または−G0−D0基を、B0はブロッキング基を表し、A1、A2は共に水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基、スルホニル基またはオキザリル基を表す。ここで、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表し、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じでも異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基を表す。好ましいD0としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0187】
A0で表される脂肪族基は、好ましくは炭素数1〜30のものであり、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。A0で表される芳香族基は、単環または縮合環のアリール基が好ましく、複素環基としては、単環または縮合環で窒素、硫黄、酸素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む複素環基が好ましい。A0の芳香族基、複素環基及び−G0−D0基は置換基を有していてもよい。A0として、特に好ましいものはアリール基及び−G0−D0基である。
【0188】
また、A0は耐拡散基またはハロゲン化銀吸着基を、少なくとも一つ含むことが好ましい。耐拡散基としては、カプラー等の不動性写真用添加剤にて常用されるバラスト基が好ましい。ハロゲン化銀吸着促進基としては、チオ尿素、チオウレタン基、メルカプト基、チオエーテル基、チオン基、複素環基、チオアミド複素環基、メルカプト複素環基あるいは特開昭64−90439号に記載の吸着基等が挙げられる。
【0189】
B0で表されるブロッキング基として好ましくは−G0−D0基である。G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基又は−P(O)(G1D1)−基を表す、好ましいG0としては−CO−基、−COCO−基が挙げられ、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基又は−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基又は水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、好ましいD0としては水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0190】
A1、A2はともに水素原子、又は一方が水素原子で他方はアシル基(アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基等)、又はオキザリル基(エトキザリル基等)を表す。
【0191】
一般式〔H〕で表される化合物は、公知の方法により容易に合成することができる。例えば、米国特許第5,464,738号、同第5,496,695号を参考にして合成することができる。
【0192】
その他に好ましく用いることのできるヒドラジン誘導体は、米国特許第5,545,505号カラム11〜20に記載の化合物H−1〜H−29、米国特許第5,464,738号カラム9〜11に記載の化合物1〜12である。これらのヒドラジン誘導体は公知の方法で合成することができる。
【0193】
一般式〔G〕において、XとR40はシスの形で表示してあるが、XとR40がトランスの形も一般式〔G〕に含まれる。
【0194】
一般式〔G〕において、Xは電子吸引性基を表し、Wは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、チオオキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基またはインモニウム基を表す。
【0195】
R40はハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、アルケニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、アミノ基、アルキルアミノ基、環状アミノ基、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、5〜6員の複素環基、ウレイド基またはスルホンアミド基を表す。XとW、XとR40は、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0196】
更に説明すると、Xの表す電子吸引性基とは、置換基定数σpが正の値を採り得る置換基のことである。
【0197】
Xの表す電子吸引性基とは、置換基定数σpが正の値をとりうる置換基のことである。具体的には、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル等)、置換アルケニル基(シアノビニル等)、置換・未置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル、シアノアセチレニル等)、置換アリール基(シアノフェニル等)、置換・未置換のヘテロ環基(ピリジル、トリアジニル、ベンゾオキサゾリル等)、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ホルミル等)、チオアセチル基(チオアセチル、チオホルミル等)、オキサリル基(メチルオキサリル等)、オキシオキサリル基(エトキサリル等)、チオオキサリル基(エチルチオオキサリル等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル等)、カルボキシル基、チオカルボニル基(エチルチオカルボニル等)、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル等)、チオスルホニル基(エチルチオスルホニル等)、スルファモイル基、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル等)、チオスルフィニル基(メチルチオスルフィニル等)、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基(N−アセチルイミノ等)、N−スルホニルイミノ基(N−メタンスルホニルイミノ等)、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上の置換基が特に好ましい。
【0198】
Wとして表されるアルキル基としては、メチル、エチル、トリフルオロメチル等が、アルケニル基としてはビニル、ハロゲン置換ビニル、シアノビニル等が、アルキニル基としてはアセチレニル、シアノアセチレニル等が、アリール基としてはニトロフェニル、シアノフェニル、ペンタフルオロフェニル等が、ヘテロ環基としてはピリジル、ピリミジル、トリアジニル、スクシンイミド、テトラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾオキサゾリル等が挙げられる。Wとしてはσp値が正の電子吸引性基が好ましく、更にはその値が0.30以上のものが好ましい。
【0199】
上記R40の置換基の内、好ましくはヒドロキシル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はメルカプト基の有機又は無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、更に好ましくはヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基又はメルカプト基の有機又は無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、特に好ましくはヒドロキシル基、ヒドロキシル基又はメルカプト基の有機又は無機の塩が挙げられる。
【0200】
また上記X及びWの置換基の内、置換基中にチオエーテル結合を有するものが好ましい。
【0201】
一般式〔P〕において、Q3は窒素原子または燐原子を表し、R41、R42、R43及びR44は各々、水素原子または置換基を表し、X−はアニオンを表す。尚、R41〜R44は互いに連結して環を形成してもよい。
【0202】
R41〜R44で表される置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(アリル基、ブテニル基等)、アルキニル基(プロパルギル基、ブチニル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、スルホラニル基等)、アミノ基等が挙げられる。
【0203】
R41〜R44が互いに連結して形成しうる環としては、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、キヌクリジン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
【0204】
R41〜R44で表される基はヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル基、アリール基等の置換基を有してもよい。R41、R42、R43及びR44としては、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0205】
X−が表すアニオンとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等の無機及び有機のアニオンが挙げられる。
【0206】
上記4級オニウム化合物は公知の方法に従って容易に合成でき、例えば、上記テトラゾリウム化合物は、Chemical Reviews vol.55,335〜483頁に記載の方法を参考にできる。上記省銀化剤の添加量は、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し1×10−5〜1モル、好ましくは1×10−4〜5×10−1モルの範囲である。
【0207】
(バインダーと架橋剤)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に好適なバインダーは、透明または半透明で一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、澱粉、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリビニルアセタール類(ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラール等)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート、セルロースエステル類、ポリアミド類などを挙げることができる。バインダーは親水性でも非親水性でもよい。
【0208】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料の感光層に好ましいバインダーはポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。また、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非感光層に対しては、より軟化温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。尚、必要に応じて、上記のバインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0209】
このようなバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、感光層において少なくとも脂肪族カルボン酸銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと脂肪族カルボン酸銀塩との割合は15:1〜1:2の範囲が好ましい。即ち、感光層のバインダー量が1.0〜10.0g/m2であることが好ましい。1.0g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0210】
感光層のバインダーとしては、100℃以上200℃以下の温度で現像処理した後の熱転移点温度が、46〜200℃であることが好ましい。ここで熱転移点温度とは、示差走査熱量計(DSC)、例えば、EXSTAR 6000(セイコー電子社製)、DSC220C(セイコー電子工業社製)、DSC−7(パーキンエルマー社製)等を用いて、熱現像済みの感光層を単離して測定した際の吸熱ピークを指す。一般的に、高分子化合物はガラス転移温度(Tg)を有しているが、銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、感光層に用いるバインダー樹脂のTg値よりも低いところに、大きな吸熱ピークが出現する。この熱転移点温度に着目し鋭意検討を行った結果、この熱転移点温度を46〜200℃にすることにより、形成された塗膜の堅牢性が増すのみならず、感度、最大濃度、画像保存性など写真性能が大幅に向上する。
【0211】
Tgはブランドラップらによる“重合体ハンドブック”III−139〜179頁(1966年,ワイリー・アンド・サン社版)に記載の方法で求めたものであり、バインダーが共重合体樹脂である場合のTgは下記の式で求められる。
【0212】
Tg(共重合体)(℃)=v1Tg1+v2Tg2+・・・+vnTgn
式中、v1、v2・・・vnは共重合体中の単量体の質量分率を表し、Tg1、Tg2・・・Tgnは、共重合体中の各単量体から得られる単一重合体のTg(℃)を表す。上式に従って計算されたTgの精度は±5℃である。
【0213】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、支持体上に脂肪族カルボン酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤等を含有する感光層に含有するバインダーとしては、従来公知の高分子化合物を用いることができ、Tgが70〜105℃、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、重合度が約50〜1,000程度のものである。このような素材の具体例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等のエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体よりなる化合物、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0214】
これらの樹脂については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。これらの高分子化合物に、特に制限はなく、誘導される重合体のガラス転移温度(Tg)が70〜105℃の範囲にあれば、単独重合体でも共重合体でもよい。
【0215】
このようなエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体としては、アクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アリールエステル類、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、シアノアクリル酸アルキルエステル類、シアノアクリル酸アリールエステル類などを挙げることができ、それらのアルキル基、アリール基は置換されてもされなくてもよく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、クロロベンジル、オクチル、ステアリル、スルホプロピル、N−エチル−フェニルアミノエチル、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチル、ジメチルアミノフェノキシエチル、フルフリル、テトラヒドロフルフリル、フェニル、クレジル、ナフチル、2−ヒドロキシエチル、4−ヒドロキシブチル、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メトキシエチル、3−メトキシブチル、2−アセトキシエチル、2−アセトアセトキシエチル、2−エトキシエチル、2−i−プロポキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、2−ジフェニルホスホリルエチル、ω−メトキシポリエチレングリコール(付加モル数n=6)、アリル、ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩などを挙げることができる。
【0216】
その他、下記のモノマー等が使用できる。ビニルエステル類:ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等;N−置換アクリルアミド類、N−置換メタクリルアミド類及びアクリルアミド、メタクリルアミド:N−置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ヒドロキシメチル、メトキシエチル、ジメチルアミノエチル、フェニル、ジメチル、ジエチル、β−シアノエチル、N−(2−アセトアセトキシエチル)、ジアセトン等;オレフィン類:ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等;スチレン類:メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル等;ビニルエーテル類:メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなど;N−置換マレイミド類:N−置換基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ドデシル、フェニル、2−メチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2−クロルフェニル等を有するもの等;その他として、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチレンマロンニトリル、塩化ビニリデンなどを挙げることができる。
【0217】
これらの内、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。このような高分子化合物の中でも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物では、生成する脂肪族カルボン酸との相溶性に優れるため膜の柔軟化を防ぐ効果が大きく好ましい。
【0218】
アセタール基を持つ高分子化合物としては、下記一般式〔V〕で表される化合物が特に好ましい。
【0219】
【化19】
【0220】
一般式〔V〕において、R51はアルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基を表すが、好ましくはアリール基以外の基である。R52は無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基、置換アリール基、−COR53または−CONHR53を表す。R53はR51と同義である。
【0221】
R51、R52、R53で表される無置換アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6である。これらは直鎖であっても分岐していてもよく、好ましくは直鎖のアルキル基が好ましい。このような無置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられるが、特に好ましくはメチル基もしくはプロピル基である。
【0222】
無置換アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記のアルキル基、アリール基に置換可能な基としては、アルキル基(例えば、メチル基、n−プロピル基、t−アミル基、t−オクチル基、n−ノニル基、ドデシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、ニトロ基、水酸基、シアノ基、スルホ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、カルボキシ基、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基等)などが挙げられる。この置換基が2つ以上あるときは、同じでも異なっていてもよい。置換アルキル基の総炭素数は、1〜20が好ましく、置換アリール基の総炭素数は6〜20が好ましい。
【0223】
R52としては、−COR53(R53はアルキル基またはアリール基)、−CONHR53(R53はアリール基)が好ましい。a、b、cは各繰り返し単位の質量をモル(mol)%で示した値であり、aは40〜86モル%、bは0〜30モル%、cは0〜60モル%の範囲で、a+b+c=100モル%となる数を表し、特に好ましくは、aが50〜86モル%、bが5〜25モル%、cが0〜40モル%の範囲である。a、b、cの各組成比をもつ各繰り返し単位は、それぞれ同一のもののみで構成されていても、異なるもので構成されていてもよい。
【0224】
本発明で用いることのできるポリウレタン樹脂としては、構造がポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示した全てのポリウレタンについて、必要に応じ、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2(Mは水素原子またはアルカリ金属塩基を表す)、−N(R54)2、−N+(R54)3(R54は炭化水素基を表し、複数のR54は同じでも異なってもよい)、エポキシ基、−SH、−CN等から選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は1×10−1〜1×10−8モル/gであり、好ましくは1×10−2〜1×10−6モル/gである。これら極性基以外に、ポリウレタン分子末端に少なくとも1個ずつ、合計2個以上のヒドロキシル基を有することが好ましい。ヒドロキシル基は硬化剤であるポリイソシアネートと架橋して3次元の網状構造を形成するので、分子中に多数含むほど好ましい。特に、ヒドロキシル基が分子末端にある方が、硬化剤との反応性が高いので好ましい。ポリウレタンは、分子末端にヒドロキシル基を3個以上有することが好ましく、4個以上有することが特に好ましい。ポリウレタンを用いる場合は、ガラス転移温度が70〜105℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.5〜100N/mm2が好ましい。
【0225】
上記一般式〔V〕で表される高分子化合物は、「酢酸ビニル樹脂」桜田一郎編(高分子化学刊行会,1962年)等に記載の一般的な合成方法で合成することができる。
【0226】
これらの高分子化合物をバインダーとして単独で用いてもよいし、2種類以上をブレンドして用いてもよい。本発明の感光性銀塩含有層(好ましくは感光層)には上記ポリマーを主バインダーとして用いる。ここで言う主バインダーとは「感光性銀塩含有層の全バインダーの50質量%以上を上記ポリマーが占めている状態」を言う。従って、全バインダーの50質量%未満の範囲で他のポリマーをブレンドして用いてもよい。これらのポリマーとしては、本発明のポリマーが可溶となる溶媒であれば、特に制限はない。より好ましくはポリ酢酸ビニル、ポリアクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0227】
以下に、本発明に好ましく用いられる高分子化合物の構成を表1に示す。表中のTgは、セイコー電子工業社製:示差走査熱量計(DSC)により測定した値である。尚、P−9はソルーシア社製:ポリビニルブチラール樹脂B−79である。
【0228】
【表1】
【0229】
上記バインダーに対し架橋剤を用いることにより、膜付きが良くなり、現像ムラが少なくなることは知られている。
【0230】
用いられる架橋剤としては、従来ハロゲン化銀写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、特開昭50−96216号に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、イソシアネート系<ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用い得るが、本発明においては架橋剤の少なくとも1種が多官能カルボジイミド系化合物であることが好ましい。
【0231】
該カルボジイミド系架橋剤は、カルボジイミド基を少なくとも2個有している化合物及びその付加体(アダクト体)であり、より具体的には、脂肪族ジカルボジイミド類、環状基を有する脂肪族ジカルボジイミド類、ベンゼンジカルボジイミド類、ナフタレンジカルボジイミド類、ビフェニルカルボジイミド類、ジフェニルメタンジカルボジイミド類、トリフェニルメタンジカルボジイミド類、トリカルボジイミド類、テトラカルボジイミド類、及び、これらのカルボジイミド類の付加体及びこれらのカルボジイミド類と2価または3価のポリアルコール類との付加体が挙げられる。このようなカルボジイミド類は、それぞれ対応するイソシアネート類を燐触媒、例えばホスホレン化合物の存在下で第1級アミンと反応させることによって生成することができる。
【0232】
多官能カルボジイミド化合物とは、分子構造中に2個以上のカルボジイミド基またはカルボジチオイミド基を有する化合物である。更に好ましくは、多官能芳香族カルボジイミド化合物であり、分子構造中に、カルボジイミド基と芳香族基を有する化合物である。
【0233】
多官能カルボジイミド化合物としては、2官能以上カルボジイミド基を持っているものであれば何れも好ましく用いることができるが、特に好ましくは、下記一般式(CI)の構造を持つ化合物である。
【0234】
一般式(CI)
R1−J1−N=C=N−J2−(L)n−(J3−N=C=N−J4−R2)v
一般式(CI)において、R1、R2は各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等の各基であり、アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、トルエン、キシレン等の各基であり、複素環基としては、フラン、チオフェン、ジオキサン、ピリジン、ピペラジン、モルホリン等の各基であり、これらの基が連結基により結合された基であってもよい。
【0235】
J1、J4で表される連結基としては、単なる結合手でも、炭素原子を含んでもよい、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、燐原子等から形成される連結基を表し、例えば、O、S、NH、CO、COO、SO、SO2、NHCO、NHCONH、PO、PS等である。J2、J3はアルキレン基もしくはアリーレン基を表し、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン等の各アルキレン基、フェニレン、トリレン、ナフタレン等の各アリーレン基である。
【0236】
Lは(v+1)価の基を表し、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等のアルキル基、エテニル、プロペニル、ブタジエン、ペンタジエン等のアルケニル基、ベンゼン、ナフタレン、トルエン、キシレン等のアリール基、フラン、チオフェン、ジオキサン、ピリジン、ピペラジン、モルホリン等の複素環基であり、これらの基が連結基により結合された基でもよい。連結基としては、単なる結合手でも、炭素原子を含んでもよい、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、燐原子等から形成される連結基を表し、例えばO、S、NH、CO、SO、SO2、NHCO、NHCONH、PO、PS等である。vで表される1以上の整数としては、好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましく1、2または3である。
【0237】
一般式(CI)で表される架橋剤の具体例を以下に示す。
【0238】
【化20】
【0239】
【化21】
【0240】
【化22】
【0241】
多官能カルボジイミド架橋剤は、銀塩光熱写真ドライイメージング材料のどの部分に加えられてもよい。例えば、支持体、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層以上に添加することができる。
【0242】
上記架橋剤の使用量は、銀1モルに対して0.001〜2モル、好ましくは0.005〜1モルの範囲である。この範囲にあれば2種以上を併用してもよい。
【0243】
架橋剤として使用できるシラン化合物例としては、特開2001−264930号公報に記載される一般式(1)または一般式(2)で表せる化合物が挙げられる。
【0244】
架橋剤として用いることができるエポキシ化合物としては、エポキシ基を1個以上有するものであればよく、エポキシ基の数、分子量、その他に制限はない。エポキシ基はエーテル結合やイミノ結合を介してグリシジル基として分子内に含有されることが好ましい。また、エポキシ化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の何れであってもよく、分子内に存在するエポキシ基の数は通常1〜10個程度、好ましくは2〜4個である。エポキシ化合物がポリマーである場合は、ホモポリマー、コポリマーの何れであってもよく、その数平均分子量Mnの特に好ましい範囲は2000〜20000程度である。
【0245】
エポキシ化合物としては下記一般式〔9〕で表される化合物が好ましい。
【0246】
【化23】
【0247】
一般式〔9〕において、R90で表されるアルキレン基の置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシアルキル基又はアミノ基から選ばれる基であることが好ましい。またR90で表される連結基中にアミド連結部分、エーテル連結部分、チオエーテル連結部分を有していることが好ましい。X9で表される2価の連結基としては−SO2−、−SO2NH−、−S−、−O−、又は−NR91−が好ましい。ここでR91は1価の基であり、電子吸引基であることが好ましい。
【0248】
これらのエポキシ化合物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10−6〜1×10−2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10−5〜1×10−3モル/m2の範囲である。
【0249】
エポキシ化合物は、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。又、併せて支持体の感光層と反対側の任意の層に添加することができる。尚、両面に感光層が存在するタイプの感材ではいずれの層であってもよい。
【0250】
酸無水物は下記の構造式で示される酸無水物基を少なくとも1個有する化合物である。
【0251】
−CO−O−CO−
酸無水物はこのような酸無水基を1個以上有するものであればよく、酸無水基の数、分子量、その他に制限はないが、一般式〔B〕で表される化合物が好ましい。
【0252】
【化24】
【0253】
一般式〔B〕において、Zは単環又は多環系を形成するのに必要な原子群を表す。これらの環系は未置換であってもよく、置換されていてもよい。置換基の例には、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ヘキシル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、オクチルオキシ)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、トリル)、ヒドロキシル基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、フェニルスルホニル)、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、ベンゾキシ)、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、及びアミノ基が含まれる。置換基としては、ハロゲン原子を含まないものが好ましい。
【0254】
これらの酸無水物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10−6〜1×10−2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10−5〜1×10−3モル/m2の範囲である。
【0255】
本発明において酸無水物は、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。又、前記エポキシ化合物と同じ層に添加してもよい。
【0256】
(その他添加剤)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、熱現像処理にて写真画像を形成するもので、還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及び必要に応じて銀の色調を調整する色調剤を、通常、(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有していることが好ましい。
【0257】
好適な色調剤の例は、RD17029、米国特許第4,123,282号、同第3,994,732号、同第3,846,136号及び同第4,021,249号に開示されている。特に好ましい色調剤としては、フタラジノンまたはフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類の組み合わせである。
【0258】
従来、医療診断用の出力画像の色調に関しては、冷調の画像調子の方が、レントゲン写真の判読者にとって、より的確な記録画像の診断観察結果が得易いと言われている。ここで冷調な画像調子とは、純黒調もしくは黒画像が青味を帯びた青黒調であり、温調な画像調子とは、黒画像が褐色味を帯びた温黒調であることを言う。
【0259】
色調に関しての用語「より冷調」及び「より温調」は、最低濃度(Dmin)及び光学濃度D=1.0におけるJIS Z 8729で規定される色相角habにより求められる。色相角habはJIS Z 8701に規定するXYZ表色系または3刺激値X、Y、ZまたはX10、Y10、Z10からJIS Z 8729で規定されるL*a*b*表色系の色座標a*、b*を用いてhab=tan−1(b*/a*)により表現できる。
【0260】
色調に関しての用語「より冷黒調」及び「より温調」は、CIE 1976(L*u*v*)色空間、または(L*a*b*)色空間において横軸をu*またはa*、縦軸をv*またはb*としたグラフ上に、様々な写真濃度でのu*、v*またはa*、b*をプロットし、線形回帰直線(y=ax+b)を作成した際に、その線形回帰直線の傾き(a)が0.5〜1.5以内、好ましくは0.75〜1.25以内、切片bが−3以上3以内、より好ましくは−1以上1以内、重決定(R2)が、0.8000以上1.0000以下、好ましくは0.9000以上1.0000以下での範囲に調整することが診断写真の低濃度部から中濃度部、特に肺野部縦隔部における認識性に優れ、従来の湿式の銀塩感光材料同等以上の診断性を持つことを見いだした。
【0261】
この様にすることで、診断写真の低濃度部、特に肺野部縦隔部における認識性が向上する。
【0262】
本発明においては、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の表面層に(感光層側、また、支持体を挟み感光層の反対側に非感光層を設けた場合にも)、現像前の取扱いや熱現像後の画像の傷付き防止のためマット剤を含有することが好ましく、バインダーに対し質量比で0.1〜30%含有させる。
【0263】
マット剤の材質は、有機物及び無機物の何れでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレンあるいはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0264】
マット剤は平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。また、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、更に、好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となるマット剤である。
【0265】
ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
本発明において、マット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また、複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0266】
(支持体)
銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いる支持体の素材としては、各種高分子材料、ガラス、ウール布、コットン布、紙、金属(アルミニウム等)等が挙げられるが、情報記録材料としての取り扱い上は、可撓性のあるシートまたはロールに加工できるものが好適である。従って、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料における支持体としては、プラスチックフィルム(例えば、セルロースアセテート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、セルローストリアセテートまたはポリカーボネートフィルム等)が好ましく、本発明においては2軸延伸したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0267】
帯電性を改良するために、金属酸化物及び/または導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらは何れの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光層と下引の間の層等に含まれる。米国特許5,244,773号,カラム14〜20に記載された導電性化合物が好ましく用いられる。
【0268】
(層構成及び製造方法)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、支持体上に少なくとも1層の感光層を有する。支持体上に感光層のみを形成してもよいが、感光層の上に少なくとも1層の非感光層を形成するのが好ましい。例えば、感光層の上には保護層が、感光層を保護する目的で、また、支持体の反対の面には感光材料間の、あるいは感光材料ロールにおいてくっ付きを防止する為に、バックコート層が設けられるのが好ましい。
【0269】
これらの保護層やバックコート層に用いるバインダーとしては、熱現像層よりもガラス転位点が高く、擦傷や、変形の生じ難いポリマー、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが、前記のバインダーの中から選ばれる。尚、階調調整等のために、感光層を支持体の一方の側に2層以上、または支持体の両側に1層以上設置してもよい。
【0270】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料には、感光層を透過する光の量または波長分布を制御するために感光層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料または顔料を含有させることが好ましい。用いられる染料としては、感光材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。例えば、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特開2001−83655号に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料、またスクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、またはピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
【0271】
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシル基は解離していてもよい。なお、染料としては、特開平8−201959号に記載の化合物も好ましい。
【0272】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば感光層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。
【0273】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらの内、より好ましくはエクストルージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストルージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きと共に塗布する場合についても同様である。
【0274】
なお、塗布銀量は、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の目的に応じた適量を選ぶことが好ましいが、本発明においては、0.5〜1.5g/m2であることが好ましい。より好ましくは0.6〜1.4g/m2であり、更に1.0〜1.3g/m2が特に好ましい。当該塗布銀量の内、ハロゲン化銀に由来するものは全銀質量に対して2〜18%を占めることが好ましく、更には3〜15%がより好ましい。
【0275】
また、本発明において、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子の塗布密度は1×1014〜1×1018個/m2が好ましい。更には、1×1015〜1×1017個/m2が好ましい。
【0276】
更に脂肪族カルボン酸銀塩の塗布密度は、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子1個当たり1×10−17〜1×10−15g、更には1×10−16〜1×10−14gが好ましい。このような範囲内の条件において塗布した場合には、一定塗布銀量当たりの銀画像の光学的最高濃度、即ち、銀被覆量(カバーリング・パワー)及び銀画像の色調等の観点から好ましい結果が得られる。
【0277】
(画像形成装置)
本発明において、現像条件は、使用する機器、装置、或いは手段に依存して変化するが、典型的には、適した高温において像様に露光した銀塩光熱写真ドライイメージング材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(80〜200℃、好ましくは100〜200℃)で十分な時間(一般に1秒〜2分間)、銀塩光熱写真ドライイメージング材料を加熱することにより現像できる。加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、また、200℃を超すとバインダーが溶融し、ローラへの転写など、画像そのものだけでなく、搬送性や現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで脂肪族カルボン酸銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の一切の供給なしに進行する。
【0278】
加熱する機器、装置、手段は、ホットプレート、アイロン、ホットローラ、炭素または白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。より好ましくは、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理することが、均一な加熱を行う上で、また、熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
【0279】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光は、当該材料に付与した感色性に対し、適切な光源を用いることが望ましい。例えば、当該材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm、820nm)がより好ましく用いられる。
【0280】
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。
【0281】
第1の好ましい方法として、感光材料の露光面と走査レーザ光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ走査中に最も垂直に近い角度として、好ましくは55〜88°、より好ましくは60〜86°、更に好ましくは65〜84°、最も好ましくは70〜82°であることを言う。
【0282】
レーザ光が、感光材料に走査される時の感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。尚、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザ走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等の如き反射光による画質劣化を減ずることができる。
【0283】
第2の方法として、本発明における露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことが好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。
【0284】
縦マルチ化するには、合波による戻り光を利用する、高周波重畳を掛ける等の方法がよい。尚、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、通常、露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になると良い。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0285】
尚、上述した第1、第2の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He・Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He・Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;In・Ga・Pレーザ、Al・Ga・Asレーザ、Ga・As・Pレーザ、In・Ga・Asレーザ、In・As・Pレーザ、Cd・Sn・P2レーザ、Ga・Sbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でも、メンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。尚、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、銀塩光熱写真ドライイメージング材料を走査される時、該材料の露光面でのビームスポット径は、一般に、短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は、銀塩光熱写真ドライイメージング材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【0286】
本発明に係る熱現像処理装置の構成としては、フィルムトレイで代表されるフィルム供給部、レーザ画像記録部、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の全面に均一で安定した熱を供給する熱現像部、フィルム供給部からレーザ記録を経て、熱現像により画像形成された銀塩光熱写真ドライイメージング材料を装置外に排出するまでの搬送部から構成される。この態様の熱現像処理装置の一例を示す断面構成図を、図2に示す。
【0287】
熱現像装置100は、シート状の銀塩光熱写真ドライイメージング材料(単にフィルムともいう)を1枚ずつ給送する給送部110、給送されたフィルムFを露光する露光部120、露光されたフィルムFを現像する現像部130、現像を停止させる冷却部150と集積部160とを有し、151は冷却ローラ対、152は冷却ファンである。給送部からフィルムFを供給するための供給ローラ対140、現像部にフィルムを送るための供給ローラ対144、各部間でフィルムFを円滑に移送するための搬送ローラ対141,142,143等複数のローラ対からなっている。熱現像部はフィルムFを現像する加熱手段として、外周にほぼ密着して保持しつつ加熱可能な複数の対向ローラ2を有するヒートドラム1と現像したフィルムFを剥離し冷却部に送るための剥離爪6等からなる。
【0288】
なお、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の搬送速度は20〜200mm/secが好ましい範囲である。また、冷却部での冷却速度は3〜20℃が好ましい。
【0289】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0290】
実施例1
《支持体の作製》
濃度0.170に青色着色した175μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムベースの片方の面に、0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを、乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。更に、もう一方の面に、同様に0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Bを用いて下引層bを、乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗設した。その後、複数のロール群からなるフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃にて15分熱処理を行った。
【0291】
(下引塗布液A)
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(30/20/25/25%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)270g、界面活性剤(UL−1)0.6g及びメチルセルロース0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(サイロイド350:富士シリシア社製)1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation社製:Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて下引塗布液Aとした。
【0292】
(下引塗布液B)
下記コロイド状酸化錫分散液37.5g、ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(20/30/25/25%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)3.7g、ブチルアクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(40/20/40%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)14.8gと界面活性剤(UL−1)0.1gを混合し、水で1000mlに仕上げて下引塗布液Bとした。
【0293】
〈コロイド状酸化錫分散液の調製〉
塩化第2錫水和物65gを、水/エタノール混合溶液2000mlに溶解して均一溶液を調製した。次いで、これを煮沸し、共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸溜水にて数回水洗した。沈殿物を洗浄した蒸溜水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈殿物に蒸溜水を添加し、全量を2000mlとする。更に、30%アンモニア水を40ml添加し、水溶液を加温して、容量が470mlになるまで濃縮してコロイド状酸化錫分散液を調製した。
【0294】
【化25】
【0295】
《バック面側塗布》
メチルエチルケトン(MEK)830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB381−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社製:VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に溶解した液に、0.30gの赤外染料1、弗素系活性剤−1の4.5gと弗素系活性剤(ジェムコ社製:エフトップEF−105)1.5gを添加し、更にメタノール43.2gを添加し、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、MEKに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ粒子(富士シリシア社製:サイリシア450)を75g添加、攪拌してバック面側用の塗布液を調製した。
【0296】
【化26】
【0297】
弗素系活性剤−1:C9F17O(CH2CH2O)22C9F17
このように調製したバック面塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになるように押出しコーターにて、下引層bを塗布した面上に、塗布して乾燥を行った。乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0298】
《感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
溶液(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
活性剤A(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
溶液(B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
溶液(C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
溶液(D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム(1%水溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
溶液(E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
溶液(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
溶液(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
溶液(H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
活性剤A:HO(CH2CH2O)n〔CH(CH3)CH2O〕17(CH2CH2O)mH (m+n=5〜7)
特公昭58−58288号に記載の混合攪拌機を用いて、溶液(A1)に、溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度30℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を、水溶液(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、温度30℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加えて攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加して乳剤を得た。
【0299】
この乳剤は平均粒子サイズ0.040μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0300】
次に、上記乳剤に硫黄増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)240mlを加え、更にこの増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、55℃にて120分間攪拌して化学増感を施した。これを感光性ハロゲン化銀乳剤Aとする。
【0301】
【化27】
【0302】
《脂肪族カルボン酸銀塩Aの調製》
4720mlの純水にベヘン酸121.8g、アラキジン酸75.6g、ステアリン酸51.3g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。該脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0303】
次に1mol/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Aを調製した。
【0304】
《脂肪族カルボン酸銀塩Bの調製》
上記脂肪族カルボン酸銀塩Aの調製において、濃硝酸の量を5.6ml、1mol/Lの硝酸銀調液を727.2mlに変更した以外は同様にして、ウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Bを調製した。
【0305】
《脂肪族カルボン酸銀塩Cの調製》
上記脂肪族カルボン酸銀塩Aの調製において、濃硝酸の量を3.4ml、1mol/Lの硝酸銀調液を758.8mlにした以外は同様にして、ウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Cを調製した。
【0306】
《脂肪族カルボン酸銀塩Dの調製》
上記脂肪族カルボン酸銀塩Aの調製において、濃硝酸の量を2.3ml、1mol/Lの硝酸銀調液を776.4mlにした以外は同様にして、ウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Dを調製した。
【0307】
《脂肪族カルボン酸銀の解砕》
前記ウェットケーキ状脂肪族カルボン酸銀塩A〜Dを、湿式・乾式整流機コーミル(パウレック社製)を用いて穴径の異なるメッシュで解砕を行い、粉末脂肪族カルボン酸銀塩A11、A12、B11、B12、C11、C12、D11を調製した。解砕に使用したメッシュ径を表2に示す。
【0308】
《脂肪族カルボン酸銀塩の乾燥》
解砕後の各粉末脂肪族カルボン酸銀塩を、(株)大川原製作所製スリットフローを用いて、風速2.2m/s、温度50℃の条件で行い、水分率が0.15%以下まで乾燥して、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A11、A12、B11、B12、C11、C12、D11を調製した。
【0309】
《予備分散液の調製》
ポリビニルブチラール粉末(ソルーシア社製、Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A11を500g徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液A11を調製した。
【0310】
上記予備分散液A11の調製において、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A11に代えて、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩をA12〜D11を用いた以外は同様にして、予備分散液A12〜D11を調製した。
【0311】
《感光性乳剤分散液調製》
上記調製した予備分散液A11を、ポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行なうことにより感光性乳剤分散液A11を調製した。
【0312】
上記感光性乳剤分散液A11の調製において、予備分散液A11に代えて、予備分散液A12〜D11を用いた以外は同様にして、感光性乳剤分散液A12〜D11を調製した。
【0313】
《安定剤液の調製》
1.0gの安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0314】
《赤外増感色素液Aの調製》
19.2mgの赤外増感色素−1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤−2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールを、31.3mlのMEKに暗所にて溶解し、赤外増感色素液Aを調製した。
【0315】
《添加液aの調製》
現像剤として一般式(6)で表される例示化合物6−7を27.98g、1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料1をMEKの110gに溶解し、添加液aとした。
【0316】
《添加液bの調製》
3.56gのカブリ防止剤−2、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し、添加液bとした。
【0317】
【化28】
【0318】
《感光層塗布液の調製》
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液A11の50gとMEKの15.11gとを攪拌しながら21℃に保温し、カブリ防止剤−1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。更に臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して20分攪拌した。続いて、安定剤液167mlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分攪拌した。13℃に保温したまま、バインダー樹脂としてポリマーP−9を13.31g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。更に攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液A11を得た。
【0319】
次いで、上記感光層塗布液A11の調製において、感光性乳剤分散液A11に代えて、前記調製した感光性乳剤分散液A12〜D11を用いた以外は同様にして、感光層塗布液A12〜D11を調製した。
【0320】
《表面保護層塗布液の調製》
MEK865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製:パラロイドA−21)を4.5g、ベンゾトリアゾールを1.0g、弗素系活性剤(ジェムコ社製:エフトップEF−105)1.0gを添加し溶解した。次に、下記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0321】
(マット剤分散液の調製)
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、7.5gのCAB171−15)をMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30min分散してマット剤分散液を調製した。
【0322】
《感光材料の作製》
感光層塗布液A11と表面保護層塗布液を、公知のエクストルージョン型コーターを用いて、同時重層塗布を行った。塗布は、感光層が塗布銀量1.7g/m2、表面保護層が乾燥膜厚で2.5μmになるように行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて10分間乾燥を行い、感光材料101を作製した。
【0323】
上記感光材料101の作製において、感光層塗布液A11に代えて感光層塗布液A12〜D11を用いた以外は同様にして、感光材料102〜107を作製した。
【0324】
《露光及び現像処理》
上記のように作製した各感光材料の感光層塗設面側から、高周波重畳にて波長800nm〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザを露光源とした露光機によりレーザ走査によるウェッジ露光を与えた。この際に、感光材料の露光面と露光レーザ光の角度を75度として画像を形成した。なお、当該角度を90度とした場合に比べムラが少なく、かつ予想外に鮮鋭性等が良好な画像が得らることを別途確認できた。その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、感光材料の保護層とドラム表面が接触するようにして、110℃で15秒熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0325】
《画像評価》
得られた画像の評価は、濃度計により濃度測定を行い、横軸:露光量、縦軸:光学濃度からなる特性曲線を作成し、未露光部分よりも1.0高い濃度を与える露光量の比の逆数を感度と定義し、各々の感光材料の感度および最大濃度(Dmax)を求め、得られた結果を表2に示す。なお、感度及び最大濃度は、感光材料101の感度および最大濃度を100とする相対値で表示した。
【0326】
【表2】
【0327】
表2より明らかなように、本発明で規定する解砕条件で調製した粉末脂肪族カルボン酸銀塩を用いた本発明の感光材料は、比較例に対して高感度で、かつ最高濃度が高いことが分かる。
【0328】
実施例2
《脂肪族カルボン酸銀の解砕》
実施例1と同様にウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩A〜Dを解砕し、粉末脂肪族カルボン酸銀塩A2、B2、C2、D2を作製した。解砕に使用するメッシュ径は1.143mmを使用した。なお、各粉末脂肪族カルボン酸銀塩の平均粒子径は1.1mmであった。
【0329】
《脂肪族カルボン酸銀の乾燥》
粉末脂肪族カルボン酸銀塩A2〜D2を、(株)大川原製作所製スリットフローを用いて、乾燥温度を50℃、表3に記載の風速条件で、水分率が0.15%以下まで乾燥して、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A21、A22、B21、B22、C21、C22、D21を調製した。
【0330】
《感光材料の作製》
実施例1に記載の感光材料101の作製において、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A11に代えて、上記調製した乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A21、A22、B21、B22、C21、C22、D21を用いた以外は同様にして、感光材料201〜207を作製した。
【0331】
《露光、現像処理及び評価》
上記作製した感光材料201〜207について、実施例1に記載の方法と同様にして、露光、現像処理及び感度、最大濃度の評価を行い、得られた結果を表3に示す。なお、感度及び最大濃度は、感光材料201の感度および最大濃度を100とする相対値で表示した。
【0332】
【表3】
【0333】
表3より明らかなように、本発明で規定する乾燥条件で調製した粉末脂肪族カルボン酸銀塩を用いた本発明の感光材料は、比較例に対して高感度で、かつ最高濃度が高いことが分かる。
【0334】
実施例3
《脂肪族カルボン酸銀の乾燥》
実施例2で調製した粉末脂肪族カルボン酸銀塩A2〜D2を、(株)大川原製作所製スリットフローを用いて、風速2.2m/sにおいて、乾燥温度を表4に記載の条件で、水分率が0.15%以下まで乾燥して、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A31、A32、B31、B32、C31、C32、D31を調製した。
【0335】
《感光材料の作製》
実施例1に記載の感光材料101の作製において、乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A11に代えて、上記調製した乾燥粉体脂肪族カルボン酸銀塩A31、A32、A32、B31、B32、C31、C32、D31を用いた以外は同様にして、感光材料301〜307を作製した。
【0336】
《露光、現像処理及び評価》
上記作製した感光材料301〜307について、実施例1に記載の方法と同様にして、露光、現像処理及びカブリ濃度(Dmin)の評価を行い、得られた結果を表4に示す。なお、カブリ濃度は、未露光部分の濃度(最小濃度)を測定した。
【0337】
【表4】
【0338】
表4より明らかなように、本発明で規定する乾燥条件(乾燥温度)で調製した粉末脂肪族カルボン酸銀塩を用いた本発明の感光材料は、比較例に対してカブリ濃度が低いことが分かる。
【0339】
実施例4
《肪族カルボン酸銀塩Eの調製》
4720mlの純水に、ベヘン酸121.8g、アラキジン酸75.6g、ステアリン酸51.3g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸3.4mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、t−ブチルアルコール347mlを添加し20分間攪拌した後、45.3gの実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0340】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液758.8mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Eを調製した。
【0341】
《脂肪族カルボン酸銀塩Fの調製》
4720mlの純水にベヘン酸121.8g、アラキジン酸56.9g、ステアリン酸51.3g、パルミチン酸2.3g、iso−アラキジン酸17.0gを80℃で溶解した。次に1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸3.4mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0342】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液758.8mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Fを調製した。
【0343】
《脂肪族カルボン酸銀塩Gの調製》
4720mlの純水にベヘン酸121.8g、アラキジン酸75.6g、ステアリン酸45.2g、パルミチン酸2.3g、オレイン酸6.0gを80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸3.4mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0344】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液758.8mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Gを調製した。
【0345】
《脂肪族カルボン酸銀塩Hの調製》
4720mlの純水にベヘン酸121.8g、アラキジン酸75.6g、ステアリン酸51.3g、パルミチン酸2.3g及びポリビニルアルコール1.5g(クラレ社製PVA−205)を80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸3.4mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0346】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液758.8mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Hを調製した。
【0347】
《脂肪族カルボン酸銀塩Iの調製》
4720mlの純水にベヘン酸121.8g、アラキジン酸75.6g、ステアリン酸51.3g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸3.4mlを加えた後n−ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%および2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)50gを添加し、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0348】
次に、1mol/Lの硝酸銀溶液758.8mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌して脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。この作業を排水の電導度が50μS/cmになるまで、脱イオン水による水洗、排水を繰り返した。その後、遠心脱水を実施してウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩Iを調製した。
【0349】
《脂肪族カルボン酸銀の解砕》
実施例1と同様に、上記調製したウェットケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩E〜Iをメッシュ径6.350mmで解砕し、粉末脂肪族カルボン酸銀塩E〜Iを作製した。
【0350】
《脂肪族カルボン酸銀塩の乾燥》
実施例1と同様に、粉末脂肪族カルボン酸銀塩E〜Iを乾燥した。乾燥条件は風速0.1m/s、温度35℃で行い、乾燥済粉末脂肪族カルボン酸銀塩E〜Iを作製した。
【0351】
《予備分散液の調製》
実施例1に記載の予備分散液A11の調製において、乾燥済粉末脂肪族カルボン酸銀塩乾燥粉体A11を、乾燥済粉末脂肪族カルボン酸銀塩E〜Iに変更した以外は同様にして予備分散液E〜Iを調製した。
【0352】
《感光性乳剤分散液の調製》
実施例1に記載の感光性乳剤分散液A11の調製において、予備分散液A11に代えて、予備分散液E〜Iを用いた以外は同様にして、感光性乳剤分散液E〜Iを調製した。
【0353】
《感光層塗布液の調製》
実施例1に記載の感光層塗布液の調製方法において、上記調製した感光性乳剤分散液E〜Iを用いて、更に本発明に係る一般式(1)の例示化合物1−1を、30mg/m2となる量を添加液aに加えた以外は同様にして、感光層塗布液E〜Iを調製した。
【0354】
また、実施例3で調製した感光性乳剤分散液A32、D31を用いて、表5に記載のように、本発明に係る一般式(1)の例示化合物1−1を、30mg/m2となる量を添加液aに加えた感光層塗布液A52、B52と、未添加の感光層塗布液A51、B51を調製した。
【0355】
《感光材料の作製》
実施例1に記載の方法と同様にして、上記調製した感光層塗布液A51、A52、B51、B52及び感光層塗布液E〜Iを用いて、感光材料401〜409を作製した。
【0356】
《露光、現像処理及び評価》
上記作製した感光材料401〜409について、実施例1、3に記載の方法と同様にして、露光、現像処理及び感度、カブリ濃度、最大濃度の評価と下記の方法に従って画像色調評価を行い、得られた結果を表5に示す。なお、感度及び最大濃度は、感光材料401の感度および最大濃度を100とする相対値で表示した。
【0357】
(現像後試料の画像色調評価)
上記現像処理済みの各試料のウエッジ濃度部を、CM−3600d(ミノルタ株式会社製)で測定し、u*、v*及びa*、b*を算出した。測定条件は、光源としてF7光源、視野角を10°として透過測定モードで測定を行った。横軸をu*またはa*、縦軸をv*またはb*としたグラフ上に、測定したu*、v*またはa*、b*をプロットし、線形回帰直線を求めて重決定R2、切片および傾きを求めた。
【0358】
上記線形回帰で求められる各特性値として、診断時に目が疲れない好ましい色調は、程良い黄色である。具体的には、上記測定した特性値として、下記の条件であることが好ましい。
【0359】
角度及び傾き:角度として45度に近づくほど、あるいは傾き(tanθ)として1.0に近いほど、低濃度部〜高濃度部の色調のバランスが好ましいことを表す
切片:+3〜−3の範囲が好ましく、より好ましくは+2〜−2の範囲であるR2乗値:1.0に近いほど、低濃度〜高濃度での色変動や色バラツキが少なく、信頼性、精度が高いことを表す
【0360】
【表5】
【0361】
表5より明らかなように、本発明の感光材料は、比較例に対して、低カブリ、高感度で、最大濃度が高いことが分かる。また、CIEで規定される色度図上の特性も、良好な銀色調を有していることが分かる。
【0362】
【発明の効果】
本発明により、高感度、低カブリで、かつ最高濃度が高く、良好な銀色調が得られる銀塩光熱写真ドライイメージング材料とその製造方法、画像記録方法及び画像形成方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いることのできる流動層乾燥機の一例を示す断面図である。
【図2】本発明で用いることのできる熱現像処理装置の一例を示す断面構成図である。
【符号の説明】
1 給気風入口
2 原料投入口
3 乾燥室
4 バグフィルター
5 排気口
6 目皿板
7 製品排出部
A ヒートドラム
B 対向ローラ
D 剥離爪
F フィルム
100 熱現像装置
110 給送部
120 露光部
130 現像部
140,144 供給ローラ対
141,142,143 搬送ローラ対
150 冷却部
151 冷却ローラ対
152 冷却ファン
160 集積部
Claims (14)
- 非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、平均粒子径として2mm以上、10mm以下に解砕された状態で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
- 非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、風速2m/s以下の乾燥風で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
- 前記非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、風速2m/s以下の乾燥風で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする請求項1に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
- 非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子、感光性ハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸を非感光性脂肪族カルボン酸銀に対し3mol%以上、10mol%以下含有する感光性乳剤、銀イオン還元剤、バインダー及び架橋剤を含有する感光層を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法において、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、乾燥温度が45℃以下である乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
- 前記非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、乾燥温度が45℃以下で乾燥する乾燥工程を経て製造されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の製造方法で製造されたことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- 非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子が、該非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子の結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物の存在下で形成されたことを特徴とする請求項6または7に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- 前記結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物が、ゼラチンまたはポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項8に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- 前記結晶成長抑制剤または分散剤として機能する化合物が、分岐脂肪族カルボン酸または脂肪族不飽和カルボン酸であることを特徴とする請求項8に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- 結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物が、炭素数10以下のアルコール類であることを特徴とする請求項8に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- 結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物が、ポリマーラテックスであることを特徴とする請求項8に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- 請求項6〜12のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に画像を記録する画像記録方法であって、走査レーザー光が縦マルチであるレーザー光走査露光機を用いて露光を行うことを特徴とする画像記録方法。
- 請求項6〜12のいずれか1項に記載の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を、80℃以上、200℃以下の温度で加熱することにより画像形成することを特徴とする画像形成方法。
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