JP2004163385A - バイオセンサおよびバイオセンサの製造方法 - Google Patents

バイオセンサおよびバイオセンサの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の電解重合膜を利用したバイオセンサでは、妨害成分による影響を受けやすく、または長期的な使用安定性が低い。その結果、測定精度が低下し、センサの寿命が短くなる。
【解決手段】過酸化水素電極を支持体上に有し、前記電極の作用極表面に電解重合膜を形成したバイオセンサにおいて、電解重合膜を形成する前または形成した後、少なくとも作用極の周辺領域を含む表面をシランカップリング剤によるシラン化処理を行なってから、少なくとも作用極およびその周辺領域を覆うように形成された酵素膜を含むことを特徴とすることにより、少なくとも酵素膜がシランカップリング剤により支持体表面に密着されているので、妨害成分が高濃度に共存してもその影響を受けずセンサの安定性が高く、高い測定精度および長いセンサ使用寿命を実現した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多くの成分が混在する媒体から特定の成分を検出し測定するバイオセンサ、特に電流検出型電気化学的バイオセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
過酸化水素電極と酸化還元酵素とを組み合わせた酵素電極はもっとも多く採用されているバイオセンサのタイプの一つである。電流測定型トランスデューサの一種である過酸化水素電極は、過酸化水素の他に、尿酸やアスコルビン酸などの還元性物質(以下、妨害成分という)に対しても応答し電流が発生する。このような妨害成分が共存する試料を測定対象とする場合、その影響を押さえる必要がある。電極表面又はその近辺に共存妨害成分を排除し過酸化水素を選択的に或いは優先的に透過させる選択透過膜を設けることがもっともよく利用される手法である。
【0003】
ポリピロール膜を始めとする電解重合膜はそのモノマーから電極上に直接膜を形成することができ、膜形成条件などの調整により低分子物質に対してサイズ排除的な選択透過性がある(例えば、非特許文献1参照)ことから、これらの電解重合膜を利用したバイオセンサが提案されている。
【0004】
例えば、ピロールと酵素を含む溶液を電解液として電極(作用極)上にポリピロールー酵素複合膜を形成したセンサが検討されている(例えば、非特許文献2参照)。グルコース酸化酵素(GOD)を利用したグルコースセンサを例としてその構造を図14に概念的に示す。ポリピロール22−GOD24からなる複合膜20の表面に接した試料に含まれるグルコースが複合膜20に拡散し、GOD24によって過酸化水素に変換される。生成された過酸化水素は複合膜20を透過して電極1表面に達するが、過酸化水素よりも分子量の大きい妨害成分、例えばアスコルビン酸は、複合膜20のサイズ排除作用により大部分が電極表面への到達が阻止される。その結果、センサの標的成分(グルコース)に対する特異性があるとされる。 また、ピロールの代わりに反応性置換基を持つピロール誘導体を使用するセンサが検討された(例えば、非特許文献3参照)。この場合、酵素が共有結合等を通して膜に固定されている。
【0005】
さらに、ポリピロール膜を形成してから、酵素膜をその上に設ける2重膜構造を有するセンサが提案されている(例えば、非特許文献4参照)。図15にその構造を示す。すなわち、酵素を含まないポリピロール膜26とGOD膜28を作用極1の表面に順序積層する。その製造方法を簡単に述べると、まず、硝酸洗浄などにより清浄化された白金電極(直径4mmのディスク)の表面に、定電位(Ag/AgClに対して0.7V)電解法によりポリピロール膜26を形成する。続いて形成された膜26を同電位で過酸化し、乾燥後酵素(GOD)と牛血清アルブミン(BSA)とを含む溶液を膜26の上に適用し乾燥させることによりGOD膜28を形成する。
【0006】
【非特許文献1】J. Electroanal. Chem, 273(1989)231-242
【非特許文献2】Fresenius J. Anal. Chem., 342(1992)729-733
【非特許文献3】Anal. Sci., 15(1989)1175-1176
【非特許文献4】Biosensors & Bioelectronics, 13(1998)103-112
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の技術においては、次のような問題が生じている。図14に示す構造を有するセンサでは、センサの感度が低くさらに妨害成分よる影響を受けやすい。その理由として、例えば被測定成分であるグルコースがアスコルビン酸や尿酸などの妨害成分と同程度の分子サイズを持つため、膜の中に浸透せず、反応が膜の表面に集中することにより、反応量が少なく感度が低くなる。ある程度の感度を維持するために膜を薄くすると、妨害成分の透過性が高くなって妨害成分よる影響を受けやすくなるため、このタイプのセンサは尿など共存妨害成分が高濃度に存在する試料の測定には適さない。
【0008】
一方、図15に示す2重膜構造を有するセンサでは、酵素膜が基質に対して透過性があり、十分な反応量が確保できることから、センサの感度と選択性の両立ができる。しかし、膜26と作用極1との間または酵素膜28と膜26との間の付着力が弱く、使用条件によっては膜が剥離する恐れがあるので、特に長期的な使用安定性が低いことが課題である。
【0009】
かかる現状を鑑み、本発明は妨害成分による影響を受け難く、安定性の高い電解重合膜を持つ高感度のバイオセンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及びその作用・効果】
上記課題を解決するために請求項1によれば、本発明によるバイオセンサは、過酸化水素電極を支持体上に有し、前記電極の作用極表面に電解重合膜を形成したバイオセンサであって、電解重合膜を形成する前または形成した後、少なくとも作用極の周辺領域を含む表面を活性化改質処理を行なってから、少なくとも作用極およびその周辺領域を覆うように形成された酵素膜を含むことを特徴としている。これにより、少なくとも酵素膜が活性化改質された支持体表面に密着されており、さらに必要に応じて電解重合膜と作用極との間、または電解重合膜と酵素膜との間も密着されるので、センサの安定性が高い。
【0011】
請求項2に記載のバイオセンサは、請求項1に記載の本発明によるバイオセンサにおいて、活性化改質処理をシランカップリング剤によるシラン化処理とした。シラン化処理は表面に反応性官能基を導入するなどの活性化処理方法の中でもっともマイルドで効果的な処理方法である。
【0012】
請求項3に記載のバイオセンサは、請求項2に記載の本発明によるバイオセンサにおいて、表面活性化改質は電解重合膜を形成する前に行われることを特徴とした。これにより表面活性化改質処理の電解重合膜に与える影響を抑えることができる。
【0013】
請求項4に記載のバイオセンサは、請求項1ないし3に記載の本発明によるバイオセンサにおいて、電解重合膜はピロールまたはその誘導体からなる膜とした。ピロールまたはその誘導体からなる膜は少なくとも形成された時点において導電性があるので、十分な妨害成分排除力を有する厚さの膜が簡単に形成できる。
【0014】
請求項5によれば、本発明によるバイオセンサの製造方法は、過酸化水素電極を支持体上に有し、前記電極の作用極表面に電解重合膜を形成したバイオセンサの製造方法であって、電解重合膜を形成する前または形成した後、少なくとも作用極の周辺領域を含む表面をシランカップリング剤によるシラン化処理を行ない、続いて少なくとも作用極およびその周辺領域を覆うように酵素膜を形成する工程が含まれることを特徴とする。
【0015】
請求項6は、請求項5に記載のバイオセンサの製造方法において、ピロールまたはその誘導体からなる前記電解重合膜を、定電流電解法によって形成することにより、所定の厚さを有する膜を再現性よく製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下図面などを用いて本発明を更に詳細に説明する。
本発明によるバイオセンサは、図2に示す基本構造を有する。過酸化水素電極の作用極1を含む支持体6の表面に、電解重合膜2および酵素膜3が順に積層されている。電解重合膜2は作用極の表面のみを被覆し、酵素膜3は電解重合膜2よりも被覆面積が大きく、電解重合膜2を完全に覆い隠し、さらにその周辺領域をも被覆するように形成されている。ここでいう作用極の周辺領域は、作用極1の外周から一定距離以内の範囲を指す。その大きさの下限は、酵素膜と支持体表面との間に必要な付着力が実現されれば、特に限定されないが、一般的な好ましい例として作用極1の外周からの距離が1〜5mmの範囲が挙げられる。また、周辺領域の大きさの上限は特に限定されないが、上記下限を満たす範囲で、センサ製造のしやすさコストなどの状況を勘案して適宜決定される。
【0017】
活性層4が少なくとも電解重合膜2で覆われた作用極1の周辺領域の支持体表面と酵素膜との間に存在し、酵素膜3が活性層4により支持体上に密着されている。図示していないが、必要または差し支えない場合、活性層4は作用極1の上部(すなわち、作用極1または電解重合膜2の表面)に存在してもよい。本発明による活性層4、電解重合膜2を形成する前または後、少なくとも作用極1の周辺領域を含む表面を活性化処理によってできた、未処理の表面に比べて酵素膜と基体との付着力を向上される活性点を有する表面層をさす。したがって、支持体6表面と酵素膜3との間の密着性を向上させる役割を果たす限り、必ずしも連続した層になっている必要がない。
【0018】
表面の活性化改質処理の方法についてすでに確立されている数多くの方法から諸般状況を勘案して適宜選択してよい。一般的表面(主に支持体の表面、場合によっては電極または伝教重合膜の表面をも含む)自体の一部を改質させる、および別の物質を基体表面に付ける、との二つの手法に大別されることができる。
【0019】
前者の例としてプラズマ処理等によって、表面の部分を反応性に富む材質に変更する方法が挙げられる。この場合、活性層4は表面の一部から変換したものであることから、活性層4も基体の一部としてみることができる。
【0020】
後者の例としてシランカップリング剤等による処理によって表面にシラン化物質を付着させる方法が挙げられる。この場合、活性層4は新たに表面に追加されたものであり、表面と酵素膜との間にを密着させるリンカー層としてみることができる。
【0021】
これらの活性層の中で、シラン化処理によるシラン化層は処理がマイルドな条件で行なうことができ、色んな表面に簡単に形成できることから、より好ましい。以下、シラン化処理によってできた活性層4を有する実施例中心、本発明を詳細に説明する。
【0022】
図1に示す第1実施例のバイオセンサは、シランカップリング剤からなる活性化層4は、電解重合膜が形成される前に、作用極1およびその周辺領域の支持体表面6の上に形成されている。支持体6は、ガラスやセラミック、プラスチップなどの絶縁基板またはフィルムからなる。過酸化水素電極は、スクリーン印刷や蒸着などの方法で支持体6の表面に形成されたものが例として挙げられる。
【0023】
図5にセラミック基板上にスクリーン印刷で形成された、作用極1、参照極7、および対極8からなる過酸化水素電極の例を示す。それぞれの電極にリード線があり、ポテンシオスタットなどの電気回路に接続できるようになっている。作用極および対極の材料として、周知の電極材料、例えば、白金、金、およびカーボンが用いられる。以下支持体6およびその上に形成された過酸化水素電極を合わせて基体10という。基体10は支持体6と過酸化水素電極の一部(例えば作用極)をも指す。
【0024】
シランカップリング剤の種類は支持体6および酵素膜3の材質など、状況を勘案して適宜選択されてよいが、一般的好ましい例としてアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、アルケン基、ハロゲン基、ビニル基などの反応性官能基を含むものが望ましく、最も望ましくはアミノ基およびエポキシ基を含むシランカップリング剤である。
【0025】
具体的なシランカップリング剤の例を挙げれば、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメチルシラン、3ー(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3ーアミノプロピルトリメトキシシラン、3ーアミノプロピルトリエトキシシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、クロロメチルトリメチルシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチルクロロシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、メチルクロロシラン、エトキシジメチルビニルシラン、エチルジクロロシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメチルシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルビニルジクロロシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、およびトリメチルビニルシランからなる群から選択される物質が挙げられる。中でも、3ーアミノプロピルトリエトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがそれぞれ基板表面にアミノ基またはエポキシ基を効率的に導入する安価のシラン化剤として最も好ましい。
【0026】
本実施例においては、作用極1の表面にもシランカップリング剤が結合しているので、その表面におけるシランカップリング剤からなる活性層4の存在が電解重合膜2の形成を妨げることがないことを確認する必要がある。白金などの金属表面はガラスやセラミックなどからなる支持体表面に比べて、シランカップリング剤が結合するのに必要な水酸基などの官能基が少ないことから、シランカップリング剤の存在量が支持体表面に比べて少ないので電解重合膜2の形成に影響はないと考えられる。むしろ作用極表面に存在するシランカップリング剤が電解重合膜2と電極との付着力を強める働きがある。
【0027】
電解重合膜2はそのモノマーから直接電解重合より作用極1の表面に形成され、作用極表面(図1のように作用極が周辺支持体より突出している場合、その側面を含む)のみ覆う。電解重合膜2を合成する材料としてピロール、アニリン、フェニレンジアミン、フェノール、トルイジンが好ましい例として挙げられる。中でも膜が形成しても抵抗が上がらず、一定の厚さを有する膜を簡単に合成できるピロールがもっとも望ましい。ポリピロール膜のもう一つの特徴として一定の疎水性を有し、水溶液中において膜としての安定性がよいことが挙げられる。
【0028】
電解重合膜2の厚みは、膜の種類、要求されるセンサ性能(感度、妨害成分排除性能など)などを勘案して適宜決定されて良い。ここで感度を単位濃度の被測定成分に対する出力として定義し、妨害成分排除性能の指標として妨害成分と被測定成分に対するそれぞれの感度の比率(選択比)として定義すると、一般的に膜厚と感度および選択比との間に、図6に示す関係が成り立つ。すなわち、膜厚が増大するに伴って、感度と選択比がともに低下するが、選択比の低下度合いがだんだん小さくなり、一定の厚さ以上になると、ほとんど低下しなくなるのに対して、感度が持続的に低下する。実際には被測定試料から予想される共存妨害成分の量(濃度)から達成されるべき選択比の上限値を設定し、選択比がその上限値以下になるように、膜厚を決定される。なお、作用極表面の凹凸などにより、膜厚を直接評価することが困難または精度に欠けるような場合、単位電極面積当たりの電解量(単位は例えばmC/cm)を膜厚のパラメーターとして用いてよい。なお、電解量で表わす場合、膜密度、モノマーのサイズ(分子量)、および重合時発生する単体ユニット当たりの電子数によって、膜厚への換算係数が異なるが、同種類の膜がある一定条件で形成された場合、電解量と膜厚との間にほぼ直線的な関係が成り立つ。一般的な膜厚の好ましい範囲として、0.1〜5μmが例として挙げられる。
【0029】
また、膜の形成条件により膜密度や分布などに変化があることから、膜厚だけではなく、膜形成条件も電解重合膜を形成する上で検討すべきファクターであることは言うまでもない。
【0030】
次に、酵素膜3について説明する。酵素膜3は少なくとも作用極上の電解重合膜2およびその周辺領域の支持体6を覆うように形成されている。酵素膜3は、好ましくは過酸化水素生成酵素および酵素を固定化または安定化させるための高分子を主成分とする。必要に応じてグルタルアルデヒドなどの2官能基をもつ架橋剤が含まれる。GODを利用したグルコースセンサの場合、高分子としてアルブミンなどのタンパク質、およびキトサンなどの多糖類が好ましい例としてあげられる。特にアルブミンは酵素を安定化させる働きがあることから、より望ましい。この場合、架橋剤としてグルタルアルデヒドが添加されるとよい。架橋剤は酵素膜内の酵素とアルブミンとを共有結合でつなぎ、不溶化させるだけではなく、シラン化処理された支持体表面と酵素膜との間に共有結合を形成し、酵素膜と支持体とを密着させる役割をも果たす。なお、酵素膜の具体的組成や厚みは、使用される酵素、センサに対する要求性能、および支持体処理に使用されたシランカップリング剤の種類などにより適宜決定されてよい。
【0031】
また、図2に示す実施例2は、活性層4が作用極1の表面を除いた周辺領域の表面に存在する。本実施例では、作用極1の表面にシランカップリング剤が結合していないので、前記実施例1のように、シランカップリング剤を選択する際、電解重合膜2への影響を考慮する必要がない。
【0032】
図3に示す第3実施例のバイオセンサは、作用極1周辺の支持体部では実施例1および実施例2と同様な膜構造を有するが、作用極1の表面に形成された電解重合膜2の表面にシランカップリング剤からなる活性層4が存在している。一般的に、電解重合膜2が作用極表面に密接していること、および電解重合膜2にサイズ排除作用があることから、作用極1の表面にはシランカップリング剤が存在しないか存在しても実施例1に比べてシランカップリング剤の結合量が少ない。一方、特にシランカップリング剤の分子量が小さい場合、シランカップリング剤が電解重合膜2の表面だけではなく膜内部のポリマーの表面にも結合することがある。この場合、シランカップリング剤からなるリンカーは図3に示すような表層で活性層になるだけではなく、電解重合膜2内部の空隙表面にも分布することになる。このようなケースにおいては、シランカップリング剤は酵素膜3と電解重合膜2とを付着させるリンカーとして働くと同時に、電解重合膜2の分子鎖同士を架橋させ、その強度を向上させ、膜密度をも向上させる効果がある。なお、電解重合膜の種類によってシランカップリング剤の結合量が異なる。
【0033】
したがって、本実施例においては、シランカップリング剤の材料選択および処理法を検討する際、支持体6や酵素膜3の種類や材質だけではなく、電解重合膜2の性能に対する影響も考慮対象に入れた方が良い。
【0034】
また、本発明によるバイオセンサの別の実施例として、酵素膜3の上に、さらに膜4を設けたものが挙げられる。図4にその一例を示す。図4に示す本実施例のバイオセンサは、図1に示す実施例1のバイオセンサの酵素膜3の上に、さらに膜5を設けたものである。図示しないが、図2または図3に示すバイオセンサの酵素膜3の上に、さらに膜5を設けたものであってもよい。
【0035】
酵素膜3の上に形成される膜5の役割として、酵素膜3を外部試料から保護すること、または被測定成分の酵素膜3への到達を制限し、より高濃度の試料の測定に対応すること、などが例としてあげられる。前者の例として、血液中の成分を分析するセンサが考えられる。血液中には酵素膜3の表面への付着によりセンサを劣化させるタンパク質などの高分子が多数含まれるので、膜5を設けてこれらの成分の酵素膜3への到達を阻止することによりセンサの測定精度や安定性を向上させることができる。後者の例として、尿中成分の測定や工業分野における製造プロスのオンラインモニタリングの際、被検試料を希釈せずまたは低い希釈倍率(例えば5〜10倍)で広範囲の濃度測定に対応するためのセンサが挙げられる。
【0036】
次に、本発明によるバイオセンサの製造方法について説明する。
【0037】
本発明によるバイオセンサは使用される過酸化水素電極を含む支持体、選択される膜の材料、およびセンサ構造などにより、様々な製造方法が考えられるが、好ましくは膜材料から直接基体表面に膜を形成する方法であり、以下この方法について、上記実施例に基づいて詳細に説明する。
【0038】
まず、基体10を準備する。基体10の形状は問わないが、好ましくは平らな絶縁基板上に作用極を含む過酸化水素電極系を形成したものであり、絶縁基板としてはガラス板、シリコンウェハー、セラミック板、プラスチック板またはフィルムなどを用いる。
【0039】
絶縁基板上の過酸化水素電極系は作用極が含まれれば良いが、センサの製造コストおよびセンサを利用した測定システムの簡素化の視点から、過酸化水素電極をパターン化して基板上に形成されたものが好ましく、その一例として図5に示す様にセラミック基板上にスクリーン印刷技術で3極系の基体を作成する。
【0040】
次に表面活性化改質処理または電解重合膜2の形成に移るが、必要に応じて基体10表面の洗浄および活性化の目的で基体10を前処理する。洗浄に際しては水や酸を用いることができるが、特に酸による洗浄は汚れの除去と同時に、基体10の表面の活性化が図れるので、好ましい。酸種の好ましい例としては硝酸、硫酸、塩酸などの強酸、または、リン酸、ぎ酸、クエン酸、酢酸などの弱酸が挙げられる。尚、酸洗浄後の基体10は水で洗浄する必要がある。
【0041】
洗浄を完了した基体10は必要に応じて乾燥させる。乾燥条件は特に限定されないが、好ましい乾燥温度として20〜80℃、乾燥時間として5〜120分が挙げられる。なお、次の工程が水溶液を用いて表面処理する工程の場合、乾燥を省略することが出来る。
【0042】
次の製造工程は製造されるセンサの構造および表面の活性化改質処理の方法により多少異なる。実施例1に示す構造を有するセンサの場合、基体10をシラン化処理してから電解重合膜2を形成する。実施例1に示す構造を有するセンサは、シランカップリング剤による処理と電解重合膜2の形成とをどちらを先に行なってもよい。一方、実施例3に示す構造を有するセンサの場合、電解重合膜2を形成してから、電解重合膜2を含む基体10をシラン化処理する。
【0043】
ここでまずそれぞれのセンサの製造工程をフローチャートに基づいて説明し、次に各工程について詳細に説明する。
【0044】
実施例1に示す構造を有するセンサは、図7に示すフローにしたがって製造する。すなわち、前処理の後、基板のシラン化処理を行ない、続いて電解重合膜2を形成し、その上に酵素膜3を順序形成する。なお、点線で囲まれた工程は省略してもよい工程を示す(以下同)。
【0045】
実施例2に示す構造を有するセンサは、図8または図9に示すフローにしたがって製造する。図8に示す工程は、前処理の後、必要に応じて作用極の表面をマスクしてからシラン化処理を行い、続いてマスクを除去し電解重合膜2を形成する。最後に酵素膜3を形成する。一方、図9に示すフローは、前処理の後、電解重合膜2を形成する。続いて電解重合膜2の表面をマスクしてからシラン化処理を行い、シラン化処理の後マスクを除去する。最後に酵素膜3を形成する。図8において、作用極表面のマスクおよびその後の除去処理は省略してもよいケースとして、作用極の表面にシラン化処理を行なってもシランカップリング剤が付かないか実質的に付かないケースが例としてあげられる。なお、この場合、センサの製造工程は前記実施例1の構造を有するセンサの製造と同じ工程になる。
【0046】
また、実施例3に示す構造を有するセンサは、図10に示すフローにしたがって製造する。すなわち、前処理の後、電解重合膜2を形成し、続いて基板のシラン化処理を行ない、最後に酵素膜3を形成する。
【0047】
次に、上記製造フローにおける各工程について詳細に説明する。なお、センサの構造または製造方法により順序や工程数に違いがあるが、同じ名称の付いた工程は、フローによらず処理方法が基本的に同じなので、工程別でまとめて説明する。
【0048】
1)作用極1または電解重合膜2の表面のマスクおよびマスク除去:この処理は作用極1または電解重合膜2の表面を被覆し、シラン化処理においてこれらの表面をシランカップリング剤から隔離し、マスクされた部分にシランカップリング剤が結合または吸着しないようにすることが目的である。上記目的が達成されれば、具体的な方法には特に制限がない。一般的な好ましい方法として、フォトレジストなどを用いた半導体製造工程で汎用される方法、およびフィルムやパッキンなどの張り付けによる方法、などが例としてあげられる。複数のセンサを有する基板の場合、パターン化されたマスク方法を用いればよい。なお、電解重合膜2の表面をマスクする際、マスク処理による電解重合膜2への影響を考慮する必要があることは言うまでもない。
【0049】
2)シラン化処理:まず、支持体種類や酵素膜、電解重合膜などの状況を勘案してシランカップリング剤を選択し、選択されたランカップリング剤を適当な溶媒で一定濃度に希釈したシラン化溶液を作成する。続いて基体10(センサの構造または製造方法によってシランカップリング処理前における作用極表面の状態が異なるが、ここでは便宜上基体10と呼ぶ)の表面をシランカップリング剤溶液に接触させる。表面にシランカップリング剤溶液と接触させる方法として、基体10をシランカップリング剤溶液に浸す方法、またはスピンコーターなどの成膜装置で表面にシラン化溶液を塗布する方法が例としてあげられる。次に必要に応じて基体10を洗浄する。洗浄することによって化学的に結合されていないまたは強く吸着されていない余分なシランカップリング剤が取り除かれる。なお、洗浄しなくてもセンサ性能への影響が許容範囲内であれば、洗浄工程を省略して良い。
【0050】
3)電解重合膜2の形成:電解重合膜2は重合膜のモノマーから電気化学的に作用極2の表面にその場で形成されることが望ましい。まず、モノマーが含まれる電解液を調整する。次に基体を、少なくとも作用極と対極が電解液に接触するように適当な電解系にセットする。電解系は基体上の作用極の他に、対極と参照極とを備える。対極と参照極は基体上のものを使用するか、電解系に別途設けたものを使用する。電解系に別途設けた対極と参照極を使用する場合、電解液のオーミック抵抗による影響を押さえるために、作用極と対極および参照極との間の距離を小さくし、また三者の位置関係が常に一定になるようにすることが望ましい。
【0051】
具体的な電解方法として、作用極と参照極との間に一定の電位が印加される定電位電解法、および対極と作用極との間に一定の電流を流す定電流電解法、あるいは印加電位または電流を一定のパターンで変化(走査)させる、例えばサイクリックボルタンメトリー法、などが例として挙げられる。ポリフェノールやポリフェニレンジアミンなど、膜の絶縁性が強く、その成長とともに抵抗が急激に増大する場合は、サイクリックボルタンメトリーなど、電位または電流を走査させる方法が定電位または定電流法よりも厚い膜を形成することができる。一方、ポリピロールなど、膜が形成されても抵抗があまり増大されない場合、方法の簡便さから、定電位または定電流法で形成することが望ましい。
【0052】
いずれの方法においても、膜厚は電解量により制御する。電解量は電流曲線の時間積分で求める。定電流電解の場合は電解時間で電解量を求めることができるので、工程管理が他の方法に比べて簡単である。具体的にはどの方法を採用するか、各方法による膜形成の比較等によって決定されることが望ましい。以下ポリピロールを例に、電解方法の実験検討を例示する。
【0053】
電解重合によるポリピロールの形成は、図11に示すスキームで行われる。反応式1)は電解開始反応であり、反応式2)は二量化反応である。反応式3の脱プロトン化反応により二量体が合成される。反応式4)で二量体がさらに酸化される。反応式5)と反応式6)はさらなる電解反応および重合反応を表わしている。ポリピロール電解重合反応の特徴の一つとして、単体の酸化よりも二量体の酸化が容易であり、さらに高度重合されたポリマーの酸化が二量体のそれよりも容易であることが挙げられる。この場合、例えば一定電位で合成を行なうと、最初は重合がゆっくり開始し、ある程度反応が進んだら、重合が加速的に進んでいくことを意味する。定電位で重合させると、例えば図12に示す電流―時間曲線をたどる。すなわち、最初の電解電流が低く、反応の進行に伴い増大する。その後拡散抵抗やオーミック抵抗などにより増加速度が低下し、最終的にあるレベルで安定するか低下に転じる。
【0054】
しかし、この電流曲線の再現性を取ることが困難である。表1には0.65V(Ag/AgCl)の定電位電解で、同条件で3回(センサ3個)の重合を行なった場合、10秒、30秒、60秒、120秒、300秒経過した時点の電流値を記したものである。基体は図5に示すセラミック支持体に3極式過酸化水素電極が形成されたものであり、シラン化処理はされていない。作用極の面積は約3mmであった。電解重合時の対極と参照極は支持体上のものを利用した。また、基体はフローセルに装着され、窒素雰囲気に保たれている電解液(pH6.8の10mMのリン酸緩衝液に0.4Mのピロールと50mMの塩化カリウムを溶解したもの)を一定速度でフローセルに循環送液した。室温は約25℃に設定した。
【0055】
表1から、同じ条件で行われた3つの電解重合反応の電解電流が著しく異なることが分かる。これは電解重合速度、すなわち膜成長速度の制御が困難であることを意味する。
【0056】
表1 定電位電解における電解電流値の変化(単位:μA)
Figure 2004163385
【0057】
一方、電解電流を一定にした定電流電解の場合、図13に示す電位−時間曲線をたどる。すなわち、最初の電位が高く、電解の進行にしたがって一定のレベルまで低下し、その後安定する。定電位電解とは異なり、この場合の電位―時間曲線がかなり安定していることが本発明者によって明らかにされた。表2に200μAの定電流電解における電位の経時変化を示す。電解系、基体および溶液その他のその条件は表1に示す定電位電解と同様であった。
【0058】
表2 定電流電解における電解電位値の変化(単位:V)
Figure 2004163385
【0059】
表2から、定電位電解における電解電位が30秒前後で安定値に達し、再現性が非常によいことが分かる。これは電解重合速度、すなわち膜成長速度を一定にした場合、重合反応の条件が再現性よく制御できることを意味する。
【0060】
以上のことから、ポリピロール電解重合膜を形成するに当たって、重合速度および重合条件の制御しやすさから、定電流電解法による形成がもっとも望ましい。
【0061】
電解重合後、膜を含む基体10を洗浄し次の工程に移行する。ポリピロールやポリアニリンなどの形成されたままの状態では導電性を有する膜に対しては、さらに酸化処理を行なう。これらの膜は、酸化処理せずセンサとして試料を測定すると、高いベース電流により、特に初期では測定できないか精度が悪くなる。一般的な処理方法として、電極活成分を含まない電解液(例えば、塩化カリウムを含むリン酸緩衝液)中において、作用極に一定の電位を印加した定電位酸化で行なう。酸化処理はベース電流が実際の試料測定に際してベース電流が測定精度に影響を与えないレベルになるまで行なうことが望ましい。具体的な酸化時間は膜厚や電極の状態および印加電位によって異なるが、200−1200mC/cm2のポリピロールの場合、0.6−0.7V(Ag/AgCl)の印加電位では約1ないし6時間が一般的な妥当な処理時間である。
【0062】
なお、酸化処理工程は、電解重合膜2を形成した直後ではなく、その後工程の後(例えば酵素膜3の形成後)で行なっても良い。
【0063】
4)酵素膜3の形成:酵素膜3の成膜法は選定される材料および予定構造などを勘案して周知の膜形成法から選定して適宜決定すれば良いが、好ましい成膜方法の例として、酵素膜の材料を一定濃度に調整した溶液(原液)を、電解重合膜2が形成された作用極表面を含めた領域に層状に展開し、その後溶媒を蒸発させ、酵素膜3を形成する方法が挙げられる。
【0064】
原液の調整に用いられる溶媒として水が好ましいが、材料の性質等を勘案して有機溶媒を含ませても良い。また、原液の濃度は膜2の材料、溶液粘度、目標膜厚、塗布方法など、種々の条件を勘案して決定すれば良く、特に限定されないが、膜厚を調整する重要ファクターのひとつとして位置づけるとよい。
【0065】
原液を基体10の表面に層状に展開して酵素膜3を成膜する方法の好ましい例として、基体10が静止した状態での滴下塗布、流延塗布、及びスピンコーターなどの成膜装置による回転塗布、膜原液と接触させた後で基体10を引き上げる方法等が挙げられる。回転塗布法や引き上げ法は薄い酵素膜を有するセンサを大量に製造するのに適しているが、生産量が少ない場合、またはセンサ寿命を確保するために一定量以上の酵素量を作用極の表面に担持させる必要がある場合には、一般的に高価である酵素を節約するために、作用極を中心とする表面に酵素原液をドロップして乾燥させる方法が好ましい。この方法によれば、酵素膜3が作用極及びその周辺領域のみ一定の厚さをもって被覆するので、酵素のロスが無く、酵素使用量を最小限に押さえ安価に製造することができる。被覆される周辺領域の範囲は、原液の使用量および/またはドロップされた直後の液滴操作により調整される。
【0066】
以上、酵素膜3まで成膜したバイオセンサの製造方法について説明したが、更に図4に示す様に酵素膜3の表面に膜5を必要とする場合、後工程で続けて膜5を成膜すれば良い。
【0067】
最後に、本発明によって製造したグルコースセンサ(実施例1および実施例3のバイオセンサ)の評価結果について紹介する。
実施例1のセンサは図7に示す工程で製造した。その方法を下記詳細に説明する。
1)前処理:図5に示す電極基体(白金作用極のサイズは1.7×1.8mm)を、脱イオン水に浸して、超音波洗浄機で5分間洗浄した後、取り出した室温で乾燥させた。
シラン化処理:3―アミノプロピルトリエトキシシランでの1%水溶液に前記超音波処理で処理した基体を入れて、30分間保持した後、脱イオン水で洗浄し室温で乾燥させた。
【0068】
2)電解重合膜の形成:50mMの塩化カリウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)を、窒素で5分間パージしてから、ピロールを0.4Mまで添加し、電解液を調整した。次に前記シラン化処理した基体をフローセルに装着し、電解液をポンプで循環送液しながら、200μA、90秒間の定電流電解でポリピロール膜を形成した。なお、膜形成の間、電解液の貯蔵容器には窒素によるパージを行なった。膜形成後、ピロールを含まない同成分の電解液を置換送液し、Ag/AgCl参照極に対して0.6Vの定電位をベース電流が50nA以下になるまで印加した。
【0069】
3)酵素膜の形成:グルコースオキシダーゼ(2290 units/ml)と牛血清アルブミン(5 mg/ml)、およびグルタルアルデヒド(0.2%)からなる混合液を、マイクロピペットで10μlを作用極を中心に滴下し、室温で乾燥した。
実施例3のセンサは図10に示す工程で製造した。各工程での処理方法は上記実施例1のそれと同様である。
比較例のセンサはシラン化処理工程を省いて上記実施例1と同様な方法で製造した。
【0070】
製造した3種類のセンサをフローセルに装着し、図16に示すフローインジェクション評価装置でセンサ性能(グルコース(GLC)および典型的な妨害成分であるアスコルビン酸(ASA)に対する応答)を測定した。なお、図示しないが、フローセルの作用極の表面おける流路の断面サイズは高さ0.7mm、幅6mmである。また、セルは装置に付属しているソケットに差し込むように脱着可能な形でセットされる。
【0071】
測定条件を以下に示す。
・キャリア液:33mMのリン酸二水素カリウムとリン酸一水素ナトリウム、50mMの塩化カリウムを含む緩衝溶液。pH6.8。
・流速:1.0ml/min
・サンプル注入量:10μl
・サンプラーのサンプルインジェクターからセンサまでのチューブ長が120cm、チューブ内径が0.8mm。
【0072】
測定結果を表3に示す。表にあるASA/GLCはアスコルビン酸とグルコースとの感度比であり、値が低いほど、センサがASAの妨害作用を受け難く、グルコース測定の正確度が高いことを意味する。
表3 センサの初期性能
Figure 2004163385
測定終了後、送液をしながら、センサセルをソケットから繰り返して抜き差しした。抜き差しによってセンサセル内部が陽圧と陰圧が交互にになり、センサ膜に強い剥離作用が加わるので、抜き差し操作はセンサ膜の付着力を評価することになる。抜き差し後、再びセンサ性能を評価した。その結果を表4に示す。
【0073】表4 抜き差し操作後のセンサ性能
Figure 2004163385
【0074】
表3から、3種類のセンサの初期選択比(ASA/GLC)に大差がないが、グルコース感度については実施例1では顕著に高かった。一方、比較例では感度が低い上、センサ間のバラツキも大きかった。実施例3よりも実施例1の方は感度が高いことは、シラン化剤により電解重合膜2が改質され、過酸化水素に対する透過性が低下したことのより説明できる。すなわち、シラン化剤が電極表面に存在するよりも電解重合膜の表面に存在する方がセンサ感度を低下させる度合いが高いことを意味する。別の可能性として、実施例3ではシラン化剤が電解重合膜の表面だけではなく、膜の中または作用極の表面にも存在していることが考えられる。一方、比較例では、シラン化剤からなる層が存在しないので、この考えから、比較例の低感度が説明できない。比較例の低感度と高バラツキは、センサの酵素膜が電極表面から浮いたことにより説明できる。すわなち、比較例では酵素膜の基体付着力が弱い。この考えは表4の結果から支持される。表4から、抜き差し操作によって、実施例ではセンサの感度が低下せず、選択比がほとんど変化しないか(実施例1)小幅に上昇した(実施例3)一方、比較例のセンサは顕著の感度低下と選択比上昇が観察された。実際にセンサをセルから取り出して観察したところ、比較例では酵素膜の剥離と部分流失が観察されたが、実施例では観察されなかった。
【0075】
以上の結果から、本発明によるセンサは、従来の技術によるセンサに比べて、酵素膜の基体との付着力が向上され、センサの安定性が高いことがわかる。また、安定性の面では、電解重合膜の形成前にシラン化処理を行なうタイプのセンサは、電解重合膜を形成した後シラン化処理を行なうタイプのセンサよりも好ましいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるバイオセンサの構造図である。
【図2】本発明によるバイオセンサの基本構造図である。
【図3】本発明による他例のバイオセンサの構造図である。
【図4】本発明による他例のバイオセンサの構造図である。
【図5】過酸化水素電極をセラミック基板上に作成した基体を示す図である。
【図6】電解重合膜の膜厚とセンサの感度および選択比との関係をを示す図である。
【図7】本発明によるバイオセンサの製造工程を示す図である。
【図8】本発明による他例のバイオセンサの製造工程を示す図である。
【図9】本発明による他例のバイオセンサの製造工程を示す図である。
【図10】本発明による他例のバイオセンサの製造工程を示す図である。
【図11】ピロールの電解重合の反応スキームを示す図である。
【図12】ピロールの定電位電解重合における電流−時間曲線を示す図である。
【図13】ピロールの定電流電解重合における電位−時間曲線を示す図である。
【図14】従来のバイオセンサの構造図である。
【図15】従来の別のバイオセンサの構造図である。
【図16】バイオセンサを評価するフローインジェクション評価装置の概略図である。
【符号の説明】
1…作用極
2…電解重合膜
3…酵素膜
4…活性層
5…膜5
6…支持体
7…参照極
8…対極
10…基体
20…ポリピロール−GOD複合膜
22…ポリピロール
24…GOD
26…ポリピロール膜
28…GOD膜

Claims (6)

  1. 過酸化水素電極を支持体上に有し、前記電極の作用極表面に電解重合膜を形成したバイオセンサであって、電解重合膜を形成する前または形成した後、少なくとも作用極の周辺領域を含む表面を活性化改質処理を行なってから、少なくとも作用極およびその周辺領域を覆うように形成された酵素膜を含むことを特徴とするバイオセンサ。
  2. 前記活性化改質処理はシランカップリング剤によるシラン化処理であることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ。
  3. 前記シラン化処理は電解重合膜を形成する前に行われることを特徴とする、請求項2に記載のバイオセンサ
  4. 前記電解重合膜はピロールまたはその誘導体からなる膜である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバイオセンサ。
  5. 過酸化水素電極を支持体上に有し、前記電極の作用極表面に電解重合膜を形成したバイオセンサの製造方法であって、電解重合膜を形成する前または形成した後、少なくとも作用極およびその周辺領域を含む表面をシランカップリング剤によるシラン化処理を行ない、続いて少なくとも作用極およびその周辺領域を覆うように酵素膜を形成する工程が含まれることを特徴とするバイオセンサの製造方法。
  6. 前記電解重合膜はピロールまたはその誘導体からなる膜であり、定電流電解法によって形成されることを特徴とする、請求項3に記載のバイオセンサの製造方法。
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