JP2004163379A - 糖尿病の診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な糖尿病診断方法の提供。
【解決手段】血中レチノイン酸濃度を指標とすることを特徴とする糖尿病の診断方法。
【選択図】なし
【解決手段】血中レチノイン酸濃度を指標とすることを特徴とする糖尿病の診断方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、ヒトの糖尿病の診断に有用な診断方法に関する。
【従来の技術】今日、世界中で少なくとも3000万人の糖尿病患者がおり、現在、急速な人口の高齢化に伴い、その患者数は増加している。そして、今後、さらなる患者数増が確実視されている。この傾向は、日本においても例外ではなく、現在、約700万人が糖尿病に罹患しており、その数は、数年後には、1000万人に達するであろうと考えられている。
【0002】
臨床的に現在行われている糖尿病および前糖尿病状態の診断方法は、空腹時の血糖値測定と75g経口糖負荷試験における糖負荷後1時間および/または2時間の血糖値測定によって行われるが、1回の診断について血液を複数回採取する必要があるため、被験者に苦痛を与えるものである。また、糖尿病の重症度の診断にはHbA1c(グルコヘモグロビン)濃度が広く用いられている。HbA1cはヘモグロビンが血中のグルコースと非酵素的に結合したもので、血中のグルコース濃度に依存して生成するため、検査時点以前の1−2か月間の血糖値を反映し、一時的な生理状態に左右されない。そのため糖尿病の重症度を正確に表し、血糖コントロールの良い指標となるため、糖尿病の治療において欠かせない指標となっている。
【0003】
糖尿病の治療においては病期の判断が重要であるが、上記の方法を含む臨床的所見によって総合的に病期の判断がなされるものであり、十分な客観性を有しているとは言いがたく、新たな指標に基づく診断方法が望まれている。
糖尿病は代謝疾患の一種で、慢性高血糖を特徴とするが、そのほかにも糖代謝、脂質代謝、蛋白代謝等に特徴的な異常がある。
【0004】
例えば、I型糖尿病においては、レチノールの血中濃度が健常人よりも低下する傾向が認められる(例えば、非特許文献1、2参照)。これに対してII型糖尿病においてはレチノールの血中濃度が健常人よりも上昇する傾向が認められることが知られている(例えば非特許文献3、4参照)。しかし、レチノールの血中濃度と糖尿病およびその合併症との関係は明らかではない。
【0005】
近年、脂肪の分解に関与している細胞内小器官のひとつであるペルオキシゾームを、増殖作用を有する化合物によって活性化させる核内レセプターとしてperoxisome proliferator activated receptor(PPAR)が同定された。このPPARはretinoid X receptor(RXR)と二量体を形成して遺伝子の転写因子として作用することが知られている(例えば、非特許文献5参照)。PPARにはα、β、γの3種のサブタイプが知られているが、特にPPARγは脂肪細胞の分化に重要な役割を果たしており、さらに糖尿病患者のインシュリン感受性を上昇させる作用を有していることが明らかとなっている。PPARγの生体内での生理的リガンドは未だ不明であるが、RXRについてはレチノールの代謝産物の一つである9−シス−レチノイン酸が生理的リガンドと考えられている。また、同じくレチノールの代謝産物の一つであるオールトランスレチノイン酸は脂肪細胞の分化を阻害する因子と考えられている(例えば、非特許文献6、7参照)。
【非特許文献1】Tohoku journal of experimental medicine,1986年,第149巻,p.133−143。
【非特許文献2】The American journal of clinical nutrition,1989年,第50巻,p.329−331。
【非特許文献3】International journal for vitamin and nutrition research = Journal international de vitaminologie etde nutrition,1991年,第61巻,p.328−333。
【非特許文献4】American journal of the medicalsciences. N.S.,1995年,第310巻,p.177−182。
【非特許文献5】Nature,2000年,第405巻,p.421−424。
【非特許文献6】Differetiation,1982年,第23巻,p.164−169。
【非特許文献7】Molecular and cellular biology,1997年,第17巻,p.1552−1561。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、糖尿病の診断に有用な新規の因子を見出すことであり、これを用いた臨床的に有用な糖尿病診断方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、血中レチノイン酸濃度を指標とすることを特徴とする糖尿病の診断方法である。
【0009】
さらに、該レチノイン酸がオールトランスレチノイン酸であることを特徴とする糖尿病診断方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】レチノールの活性代謝物であるレチノン酸は生体内で重要な役割にもかかわらず、血中レチノン酸濃度と糖尿病の関係についてはなんらの検討もなされてこなかった。本発明者らは血中レチノイン酸濃度と糖尿病の病態に一定の関係が見られることを突き止め、血中レチノイン酸濃度の測定することを特徴とする糖尿病の診断方法を完成した。すなわち、糖尿病患者の血中のレチノイン酸濃度を測定することにより、糖尿病の進行の程度および重症度が予測でき、治療方法の選択に有用な情報を得ることができる。
糖尿病の進行の程度とHbA1c濃度との相関関係はよく知られている。レチノイン酸濃度とHbA1c濃度が相関することから、レチノイン酸濃度が糖尿病の進行の程度と相関することが明らかとなった。こうしてレチノイン酸濃度の測定による糖尿病の進行程度を診断する新規で有用な本発明の診断方法が完成された。
血中のレチノイン酸濃度の測定方法としては、当業者にとってはいろいろな方法が考えられる。高速液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)、または、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による方法が簡便、高感度、かつ高精度であり好ましい。ガスクロマトグラフィー−マススペクトロメトリー(GC−MS)による測定も測定サンプルの誘導体化が不可欠ではあるが、高感度かつ高精度である。また、抗原抗体反応を用いる蛍光分析も実用的である。
【0011】
HPLCによる血中レチノイン酸濃度の測定に際しては、測定対象となる血液を適当な方法によって前処理してから測定を行うことも可能である。前処理を行うことによって、より高感度かつ、より高精度な測定が可能となり好ましい。前処理においては、遠心分離、有機溶剤等による除蛋白、有機溶剤による抽出、酸または塩基による振分け、アミノプロピルカラムの利用等の既知の方法を任意に組み合わせることができる。
【0012】
HPLCに用いるカラム担体としては順相系、逆相系いずれでも用いることができるが、ODSカラム等の逆相系の方が分離が良好であり好ましい。
【0013】
HPLCにおける検出方法としては、既知の検出方法のいずれでもよいが、紫外線の吸収、または蛍光測定による方法が簡便かつ高感度であり好ましい。また、レチノイン酸を誘導体化することで、吸収強度、吸収波長、および蛍光強度等を変化させることで選択性および感度を向上させることもできる。
【0014】
以下に本発明における血中レチノイン酸濃度の測定による糖尿病の診断方法について具体例により詳細に説明するが、本発明は具体例に限定されるものではない。
【0015】
【実施例】
(1)血清の調製
積水化学インセパック(凝固促進剤(トロンビン)、血清分離剤入り)に血液約10mlを採取し、室温で1時間程度放置後4℃で3000rpm、10分間遠心し血清をポリプロピレンチューブに移した。そのうち1mlを用いて以下に述べる抽出方法によって直ちに抽出、または−20℃で数日保存後抽出した。
【0016】
(2)抽出操作
以下の操作においてはサンプルを遮光条件下にて取り扱った。血清1mlをアルゴンガス置換した10mlのネジキャップ付褐色試験管にとり、エタノール2mlを加えボルテックス後、室温で1800rpm、5分間遠心分離した。上清をあらかじめ100mM酢酸アンモニウム水溶液(pH4.5)2mlを入れアルゴンガス置換した10mlのスリ付試験管に移した。そこにn−ヘキサン/酢酸エチル(9/1)5mlを加え、激しく振り混ぜた後室温で1800rpm、3分間遠心分離し、試験管をドライアイスを入れたアセトンに漬け水層を凍らせた。有機層をn−ヘキサン/酢酸エチル(9/1)2mlでコンディショニングしたアミノプロピルカラム(ISOLUTE NH2、500mg/3ml、International Sorbent Technology、UK)にのせ、n−ヘキサン/酢酸エチル(9/1)2ml、クロロホルム/2−プロパノール(2/1)2mlで2回、ジエチルエーテル1mlで順次洗浄した後、3%酢酸を含むジエチルエーテル2mlでレチノイン酸を溶出させた。この画分をアルゴンガス気流下で濃縮、乾燥した。ここにエタノール50μlを加えて溶解し、HPLCにて分析した。
【0017】
(3)HPLC分析
HPLC分析は島津製作所製LC−10ASポンプに紫外線検出器(島津製作所、SPD−10A)とインテグレータ(島津製作所、CR−8A)を接続して行った。カラムはCOSMOSIL 4C18−AR−II(250x4.6mm、5μm、ナカライテスク製)を室温にて用いた。
【0018】
移動相としては、溶媒A:アセトニトリル/メタノール/2%酢酸(60/16/24、v/v/v)および溶媒B:アセトニトリルを用い、グラジエント組成(溶媒Bの含有量)、0%(0−8分)、0−60%(8−14分)、60−70%(14−16分)、70%(16−38分)にて、流速0.6ml/分にて溶出した。検出は345nmにて行った。
【0019】
(4)レチノイン酸の定量
検量線はレチノイン酸標品を血清に添加、回収して作成した。分散係数は10%以下で良好な直線性(R2>0.999)が得られた。レチノイン酸の抽出効率は80%と推定され、定量限界(LOQ)および検出限界(LOD)はそれぞれ、オールトランスレチノイン酸の場合:0.27ng/ml、0.08ng/ml、13−シスレチノイン酸の場合:0.44ng/ml、0.13ng/ml、9−シスレチノイン酸の場合:0.22ng/ml、0.07ng/mlと推定された。
【0020】
(5)生化学的検査
血糖値:採血直後に小型血糖測定機(電極:グルテストセンサー)により測定した。
【0021】
HbA1c、TC(総コレステロール)、HDLC(HDLコレステロール)、TG(トリグリセリド)、FFA(遊離脂肪酸)の定量についてはSRL,Inc.に依頼した。
【0022】
【測定例1】
健常者4名について血中レチノイン酸濃度の日内変動を3時間おきに4回測定した結果を表1に、健常者6名について血中レチノイン酸濃度の日間変動を3週間にわたって4回測定した結果を表2に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【測定例2】
健常者18名、II型糖尿病患者13名についての血中レチノイン酸濃度の測定結果を表3、表4に示した。
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【発明の効果】表1および表2より、変動係数を比較するとレチノイン酸の血中濃度の日内および日間変動は、血中グルコース、総コレステロールおよびHDLコレステロールの血中濃度と同程度に安定している。一方、トリグリセリドと遊離脂肪酸の濃度変動はレチノイン酸の濃度変動よりも大きい。すなわち、レチノイン酸の血中濃度変動は、日内および日間ともに低く抑えられており、疾病診断の指標として有用である。
【0029】
さらに、表3より、II型糖尿病患者の血中レチノイン酸濃度は、健常者よりも低い傾向がある。しかし、これはII型糖尿病患者群と健常者群の年齢構成の差異によることを否定できない。他の脂肪類の指標には年齢構成による差異は認められない。
【0030】
表4より、糖尿病の指標として用いられているHbA1c濃度とレチノイン酸の血中濃度には相関が認められる。すなわち、一般にHbA1c濃度は糖尿病の進行程度および重症度と関係があるとされていることから、レチノイン酸濃度が糖尿病の進行程度および重症度と関連することがわかる。ここでHbA1c濃度は総コレステロールと相関が認められるが年齢とは相関が認められない。
【0031】
また、レチノイン酸の血中濃度と他の血中脂肪指標とは特に相関が認められない。
以上の結果より、血中レチノイン酸濃度は、これまでに知られていない新たな糖尿病診断の指標として有用であることが明らかとなった。
【発明が属する技術分野】本発明は、ヒトの糖尿病の診断に有用な診断方法に関する。
【従来の技術】今日、世界中で少なくとも3000万人の糖尿病患者がおり、現在、急速な人口の高齢化に伴い、その患者数は増加している。そして、今後、さらなる患者数増が確実視されている。この傾向は、日本においても例外ではなく、現在、約700万人が糖尿病に罹患しており、その数は、数年後には、1000万人に達するであろうと考えられている。
【0002】
臨床的に現在行われている糖尿病および前糖尿病状態の診断方法は、空腹時の血糖値測定と75g経口糖負荷試験における糖負荷後1時間および/または2時間の血糖値測定によって行われるが、1回の診断について血液を複数回採取する必要があるため、被験者に苦痛を与えるものである。また、糖尿病の重症度の診断にはHbA1c(グルコヘモグロビン)濃度が広く用いられている。HbA1cはヘモグロビンが血中のグルコースと非酵素的に結合したもので、血中のグルコース濃度に依存して生成するため、検査時点以前の1−2か月間の血糖値を反映し、一時的な生理状態に左右されない。そのため糖尿病の重症度を正確に表し、血糖コントロールの良い指標となるため、糖尿病の治療において欠かせない指標となっている。
【0003】
糖尿病の治療においては病期の判断が重要であるが、上記の方法を含む臨床的所見によって総合的に病期の判断がなされるものであり、十分な客観性を有しているとは言いがたく、新たな指標に基づく診断方法が望まれている。
糖尿病は代謝疾患の一種で、慢性高血糖を特徴とするが、そのほかにも糖代謝、脂質代謝、蛋白代謝等に特徴的な異常がある。
【0004】
例えば、I型糖尿病においては、レチノールの血中濃度が健常人よりも低下する傾向が認められる(例えば、非特許文献1、2参照)。これに対してII型糖尿病においてはレチノールの血中濃度が健常人よりも上昇する傾向が認められることが知られている(例えば非特許文献3、4参照)。しかし、レチノールの血中濃度と糖尿病およびその合併症との関係は明らかではない。
【0005】
近年、脂肪の分解に関与している細胞内小器官のひとつであるペルオキシゾームを、増殖作用を有する化合物によって活性化させる核内レセプターとしてperoxisome proliferator activated receptor(PPAR)が同定された。このPPARはretinoid X receptor(RXR)と二量体を形成して遺伝子の転写因子として作用することが知られている(例えば、非特許文献5参照)。PPARにはα、β、γの3種のサブタイプが知られているが、特にPPARγは脂肪細胞の分化に重要な役割を果たしており、さらに糖尿病患者のインシュリン感受性を上昇させる作用を有していることが明らかとなっている。PPARγの生体内での生理的リガンドは未だ不明であるが、RXRについてはレチノールの代謝産物の一つである9−シス−レチノイン酸が生理的リガンドと考えられている。また、同じくレチノールの代謝産物の一つであるオールトランスレチノイン酸は脂肪細胞の分化を阻害する因子と考えられている(例えば、非特許文献6、7参照)。
【非特許文献1】Tohoku journal of experimental medicine,1986年,第149巻,p.133−143。
【非特許文献2】The American journal of clinical nutrition,1989年,第50巻,p.329−331。
【非特許文献3】International journal for vitamin and nutrition research = Journal international de vitaminologie etde nutrition,1991年,第61巻,p.328−333。
【非特許文献4】American journal of the medicalsciences. N.S.,1995年,第310巻,p.177−182。
【非特許文献5】Nature,2000年,第405巻,p.421−424。
【非特許文献6】Differetiation,1982年,第23巻,p.164−169。
【非特許文献7】Molecular and cellular biology,1997年,第17巻,p.1552−1561。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、糖尿病の診断に有用な新規の因子を見出すことであり、これを用いた臨床的に有用な糖尿病診断方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、血中レチノイン酸濃度を指標とすることを特徴とする糖尿病の診断方法である。
【0009】
さらに、該レチノイン酸がオールトランスレチノイン酸であることを特徴とする糖尿病診断方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】レチノールの活性代謝物であるレチノン酸は生体内で重要な役割にもかかわらず、血中レチノン酸濃度と糖尿病の関係についてはなんらの検討もなされてこなかった。本発明者らは血中レチノイン酸濃度と糖尿病の病態に一定の関係が見られることを突き止め、血中レチノイン酸濃度の測定することを特徴とする糖尿病の診断方法を完成した。すなわち、糖尿病患者の血中のレチノイン酸濃度を測定することにより、糖尿病の進行の程度および重症度が予測でき、治療方法の選択に有用な情報を得ることができる。
糖尿病の進行の程度とHbA1c濃度との相関関係はよく知られている。レチノイン酸濃度とHbA1c濃度が相関することから、レチノイン酸濃度が糖尿病の進行の程度と相関することが明らかとなった。こうしてレチノイン酸濃度の測定による糖尿病の進行程度を診断する新規で有用な本発明の診断方法が完成された。
血中のレチノイン酸濃度の測定方法としては、当業者にとってはいろいろな方法が考えられる。高速液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)、または、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による方法が簡便、高感度、かつ高精度であり好ましい。ガスクロマトグラフィー−マススペクトロメトリー(GC−MS)による測定も測定サンプルの誘導体化が不可欠ではあるが、高感度かつ高精度である。また、抗原抗体反応を用いる蛍光分析も実用的である。
【0011】
HPLCによる血中レチノイン酸濃度の測定に際しては、測定対象となる血液を適当な方法によって前処理してから測定を行うことも可能である。前処理を行うことによって、より高感度かつ、より高精度な測定が可能となり好ましい。前処理においては、遠心分離、有機溶剤等による除蛋白、有機溶剤による抽出、酸または塩基による振分け、アミノプロピルカラムの利用等の既知の方法を任意に組み合わせることができる。
【0012】
HPLCに用いるカラム担体としては順相系、逆相系いずれでも用いることができるが、ODSカラム等の逆相系の方が分離が良好であり好ましい。
【0013】
HPLCにおける検出方法としては、既知の検出方法のいずれでもよいが、紫外線の吸収、または蛍光測定による方法が簡便かつ高感度であり好ましい。また、レチノイン酸を誘導体化することで、吸収強度、吸収波長、および蛍光強度等を変化させることで選択性および感度を向上させることもできる。
【0014】
以下に本発明における血中レチノイン酸濃度の測定による糖尿病の診断方法について具体例により詳細に説明するが、本発明は具体例に限定されるものではない。
【0015】
【実施例】
(1)血清の調製
積水化学インセパック(凝固促進剤(トロンビン)、血清分離剤入り)に血液約10mlを採取し、室温で1時間程度放置後4℃で3000rpm、10分間遠心し血清をポリプロピレンチューブに移した。そのうち1mlを用いて以下に述べる抽出方法によって直ちに抽出、または−20℃で数日保存後抽出した。
【0016】
(2)抽出操作
以下の操作においてはサンプルを遮光条件下にて取り扱った。血清1mlをアルゴンガス置換した10mlのネジキャップ付褐色試験管にとり、エタノール2mlを加えボルテックス後、室温で1800rpm、5分間遠心分離した。上清をあらかじめ100mM酢酸アンモニウム水溶液(pH4.5)2mlを入れアルゴンガス置換した10mlのスリ付試験管に移した。そこにn−ヘキサン/酢酸エチル(9/1)5mlを加え、激しく振り混ぜた後室温で1800rpm、3分間遠心分離し、試験管をドライアイスを入れたアセトンに漬け水層を凍らせた。有機層をn−ヘキサン/酢酸エチル(9/1)2mlでコンディショニングしたアミノプロピルカラム(ISOLUTE NH2、500mg/3ml、International Sorbent Technology、UK)にのせ、n−ヘキサン/酢酸エチル(9/1)2ml、クロロホルム/2−プロパノール(2/1)2mlで2回、ジエチルエーテル1mlで順次洗浄した後、3%酢酸を含むジエチルエーテル2mlでレチノイン酸を溶出させた。この画分をアルゴンガス気流下で濃縮、乾燥した。ここにエタノール50μlを加えて溶解し、HPLCにて分析した。
【0017】
(3)HPLC分析
HPLC分析は島津製作所製LC−10ASポンプに紫外線検出器(島津製作所、SPD−10A)とインテグレータ(島津製作所、CR−8A)を接続して行った。カラムはCOSMOSIL 4C18−AR−II(250x4.6mm、5μm、ナカライテスク製)を室温にて用いた。
【0018】
移動相としては、溶媒A:アセトニトリル/メタノール/2%酢酸(60/16/24、v/v/v)および溶媒B:アセトニトリルを用い、グラジエント組成(溶媒Bの含有量)、0%(0−8分)、0−60%(8−14分)、60−70%(14−16分)、70%(16−38分)にて、流速0.6ml/分にて溶出した。検出は345nmにて行った。
【0019】
(4)レチノイン酸の定量
検量線はレチノイン酸標品を血清に添加、回収して作成した。分散係数は10%以下で良好な直線性(R2>0.999)が得られた。レチノイン酸の抽出効率は80%と推定され、定量限界(LOQ)および検出限界(LOD)はそれぞれ、オールトランスレチノイン酸の場合:0.27ng/ml、0.08ng/ml、13−シスレチノイン酸の場合:0.44ng/ml、0.13ng/ml、9−シスレチノイン酸の場合:0.22ng/ml、0.07ng/mlと推定された。
【0020】
(5)生化学的検査
血糖値:採血直後に小型血糖測定機(電極:グルテストセンサー)により測定した。
【0021】
HbA1c、TC(総コレステロール)、HDLC(HDLコレステロール)、TG(トリグリセリド)、FFA(遊離脂肪酸)の定量についてはSRL,Inc.に依頼した。
【0022】
【測定例1】
健常者4名について血中レチノイン酸濃度の日内変動を3時間おきに4回測定した結果を表1に、健常者6名について血中レチノイン酸濃度の日間変動を3週間にわたって4回測定した結果を表2に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【測定例2】
健常者18名、II型糖尿病患者13名についての血中レチノイン酸濃度の測定結果を表3、表4に示した。
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【発明の効果】表1および表2より、変動係数を比較するとレチノイン酸の血中濃度の日内および日間変動は、血中グルコース、総コレステロールおよびHDLコレステロールの血中濃度と同程度に安定している。一方、トリグリセリドと遊離脂肪酸の濃度変動はレチノイン酸の濃度変動よりも大きい。すなわち、レチノイン酸の血中濃度変動は、日内および日間ともに低く抑えられており、疾病診断の指標として有用である。
【0029】
さらに、表3より、II型糖尿病患者の血中レチノイン酸濃度は、健常者よりも低い傾向がある。しかし、これはII型糖尿病患者群と健常者群の年齢構成の差異によることを否定できない。他の脂肪類の指標には年齢構成による差異は認められない。
【0030】
表4より、糖尿病の指標として用いられているHbA1c濃度とレチノイン酸の血中濃度には相関が認められる。すなわち、一般にHbA1c濃度は糖尿病の進行程度および重症度と関係があるとされていることから、レチノイン酸濃度が糖尿病の進行程度および重症度と関連することがわかる。ここでHbA1c濃度は総コレステロールと相関が認められるが年齢とは相関が認められない。
【0031】
また、レチノイン酸の血中濃度と他の血中脂肪指標とは特に相関が認められない。
以上の結果より、血中レチノイン酸濃度は、これまでに知られていない新たな糖尿病診断の指標として有用であることが明らかとなった。
Claims (2)
- 血中レチノイン酸濃度を指標とすることを特徴とする糖尿病の診断方法。
- 該レチノイン酸がオールトランスレチノイン酸であることを特徴とする請求項1記載の糖尿病診断方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002361471A JP2004163379A (ja) | 2002-11-11 | 2002-11-11 | 糖尿病の診断方法 |
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JP2002361471A JP2004163379A (ja) | 2002-11-11 | 2002-11-11 | 糖尿病の診断方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004163379A true JP2004163379A (ja) | 2004-06-10 |
Family
ID=32809743
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JP2002361471A Withdrawn JP2004163379A (ja) | 2002-11-11 | 2002-11-11 | 糖尿病の診断方法 |
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---|---|
JP (1) | JP2004163379A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005070413A1 (ja) * | 2004-01-23 | 2005-08-04 | Japan Science And Technology Agency | レチノイン酸を含有する糖尿病治療薬 |
-
2002
- 2002-11-11 JP JP2002361471A patent/JP2004163379A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005070413A1 (ja) * | 2004-01-23 | 2005-08-04 | Japan Science And Technology Agency | レチノイン酸を含有する糖尿病治療薬 |
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