JP2004161731A - 生体関連物質用固定化剤 - Google Patents

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輝行 長棟
Koichi Kato
耕一 加藤
Masashige Shinkai
政重 新海
Shigeru Kitano
茂 北野
Toru Yasukochi
徹 安河内
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Abstract

【課題】生体細胞や生体組織に障害を与えることなく簡便に生体関連物質と生体細胞や生体組織の固定化を行うことのできる固定化剤およびその固定化方法を提供する。
【解決手段】下記の特徴:
(1)1つの末端に炭素数15〜23の不飽和脂肪族炭化水素基を1個以上含有し、
(2)分子中にポリオキシアルキレン鎖を含む部分を1個以上有し、および
(3)反応性官能基を上記(1)とは異なる末端に1個以上有する
を有する両親媒性化合物を1〜100重量%含有することを特徴とする生体関連物質用固定化剤。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体関連物質と生体組織や生体細胞との接着や固定化に好適な固定化剤に関する。さらに詳しくは、本発明は生体細胞や生体組織などと非共有結合でしかも可逆的に結合可能なユニットと生理活性物質、プローブ、生体適合材料等の生体関連物質と非可逆的に結合可能なユニットを合わせ持つ固定化剤に関する。また、本発明は、生体関連物質を生体細胞や生体組織と簡便な操作で固定化可能とする処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体細胞や生体組織への薬剤や生体材料の固定化には、通常イソシアネート基を持つ重合性化学物、ポバールなどの粘着性高分子化合物が用いられている。特に細胞への薬剤の固定化については、合成高分子によって細胞膜表面を修飾し、細胞を無個性化させる研究がさかんに行われている。また、フィブリンなどの生体物質を固定化剤として使用する研究も行われている。
しかしながら、重合性化合物を用いる方法では、可逆的な反応ではないので、固定化後に必要が無くなったときにはがすことが困難であり、また重合性モノマーの毒性により細胞がダメージを受ける場合もある。また、粘着性高分子を用いる方法では、粘着性のコントロールが困難であり、体内などの水分がある部位での固定化が困難である場合が多く、必要が無くなった場合にはがすことが困難になる場合も多い。さらにフィブリンなどの生体物質を糊として使うケースでは、感染症などの問題が危惧されている。
また、細胞を直接固定化する方法としては以下の方法が提唱されている。
細胞表面に存在する官能基に対して生体適合性ポリマーを反応させ、共有結合により表面を修飾する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。また、GPI−anchored proteinを用いた細胞表面の修飾方法が報告されている(例えば、非特許文献1)。さらに水溶性高分子としてポリアクリルアミドを用いて、その高分子末端の反応性基と膜タンパクあるいは糖鎖とを反応させる工程を含む細胞表面の修飾方法、リガンドと細胞膜上のレセプターとの結合を介して細胞表面を修飾する方法、および疎水性アンカーを用いて細胞表面を修飾する方法が開示されている(例えば、非特許文献2および非特許文献3)。
【0003】
このように、細胞膜タンパクおよび糖鎖に高分子末端の反応性基を用いて結合させることにより細胞表面に各種の生理活性物質の固定化を行う方法はいくつか知られているが、このような化学的固定化を直接細胞膜上に行うことは、細胞表面物質の性質を変化させ、細胞に障害を与えるおそれがある。また、GPI−anchored proteinを用いる方法では、GPI−anchored proteinそのものの入手が困難であり、適用範囲が限られるという問題がある。さらに、疎水性アンカーを用いる方法はポリアクリルアミド鎖のみを表面に固定化するものであり、細胞の凝集の抑制は達成できるものの、修飾後の安定性が悪く、細胞膜表面にポリアクリルアミド鎖を固定化できることについての実証もない。また、この方法では生理活性物質を細胞表面に固定化することは不可能である。
【0004】
さらに、炭化水素基を含有するキレート化合物を用い、キレート化合物を細胞膜にアンカーリングした後、このキレート化合物に生理活性物質をイオン結合させる方法が開示されている(例えば非特許文献4)。しかしながら、この方法では、生理活性物質と細胞膜との結合がイオン結合であるため、結合が塩濃度あるいはpHによって影響を受けやすく不安定であり、細胞への適用範囲も限られるという問題がある。また、このキレート化合物は親水性基を含有しないために親油性が強く、細胞への添加は困難であることから、リポソーム化によって細胞融合により細胞に取り込ませる手段等が採られているが、この手段による細胞膜への生理活性物質の固定化は簡便ではない。
以上のように、細胞に傷害を与えることなく、その細胞膜に生理活性物質などを固定化する方法は知られていない。
【0005】
また、従来前記の固定化剤は、いろいろな用途に使用されているが、いずれの場合も問題が生じていた。
たとえば、人工骨や人工歯根などの固相単体では表面で生体細胞を増殖させる必要があるが、固相担体上へ生きたまま細胞を留まらせておくには接着細胞しか利用できない。さらに接着細胞を担体に固定させるには、前記の固定化剤では固定を行うのに数時間必要である。この時間を短縮するためにより強力な固定化剤を用いると細胞にダメージを与え、その後細胞増殖に悪影響を与える場合がある。また接着細胞は固相単体に固定するためには、培養液や生理食塩水中で細胞を固相上に振りかけて、重力を利用して細胞を固相表面に到達させる方法が一般的であるが、このことは重力方向下方の面にしか細胞を固定できないことを示している。このような固相はその用途から三次元的な形状であることが多いため、均一に細胞を固定化することが出来ない問題点があり製品の均質化の妨げになっている。
また、このような固定化剤は組織培養における細胞の培養マトリクスへの固定化にも使用されている。しかしながら、通常マトリクスへ幹細胞を固定化するのには、固定化する時間に長時間かかるという問題があり、特定の位置に固定化することが困難であった。また、このような組織培養はほとんど二次元的な培養基材の上で行われているため、人工血管や神経組織などの複雑な形状の組織を培養することは困難であったのが実状である。
化粧品、貼布剤などの用途では、薬剤や薬剤含有シートを皮膚や粘膜表面に固定化する必要があるが、従来の粘着性高分子や重合性固定化剤を使用した場合、表面に水分があると接着しにくく、また接着強度が強すぎると使用後に取り外す際に表皮細胞を一緒に剥ぎ取るなどのダメージを与えるなどの問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特表2000−507849号公報
【非特許文献1】
The FASEB Journal, 10,p.574-586, 1996年
【非特許文献2】
Polymer Preprints, Japan, 47, 10,p.2499-2500, 1998年
【非特許文献3】
蛋白質・核酸・酵素, 45, 11,p.1859-1864, 2000年
【非特許文献4】
The Journal of Immunology,p.2433-2443, 2000年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これまで、生体関連物質である生体適合性材料や生理活性物質またはプローブなどを簡便に生体組織や生体細胞に損傷を与えることなく固定化することは困難であった。しかもいったん固定化した生体関連物質は脱離することが困難であるか脱離時に生体組織や細胞にダメージを与えるケースが多かった。また、生体適合性材料表面に生体組織や生体細胞を損傷なく固定化することも困難であった。
本発明の課題は、生体細胞や生体組織に障害を与えることなく簡便に生体関連物質と生体細胞や生体組織の固定化を行うことができ、しかも脱離も容易な固定化剤を提供することにある。本発明の別の課題は、生体細胞や生体組織に障害を与えることなく簡便に生体組織や生体細胞に固定化を行うことができ、しかも脱離も容易な生体関連物質、その処理方法および利用方法を提供することにある。また、本発明の別の課題は生体関連物質の表面に簡便に生体組織や生体細胞を脱離可能な形で固定化する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、同一分子中に不飽和脂肪族炭化水素基とポリオキシアルキレン鎖および反応性官能基を持つ固定化剤が、生体材料、薬剤等の官能基と反応性官能基により共有結合で結合し、不飽和脂肪族炭化水素基が生体細胞や生体組織と非共有結合で可逆的に結合できしかも細胞に傷害を与えることなく極めて効率的に固定化を行うことができることを見出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下に示す発明である。
(A) 下記の特徴:
(1)1つの末端に炭素数15〜23の不飽和脂肪族炭化水素基を1個以上含有し、
(2)分子中にポリオキシアルキレン鎖を含む部分を1個以上有し、および
(3)反応性官能基を上記(1)とは異なる末端に1個以上有する
を有する両親媒性化合物を1〜100重量%含有することを特徴とする生体関連物質用固定化剤。
(B) 両親媒性化合物が下式の式(1)で表される前記(A)記載の生体関連物質用固定化剤。
【0010】
【化3】
Figure 2004161731
【0011】
(式中、Zは2〜10の水酸基をもつ化合物の残基、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基とオキシアルキレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していても良く、R1は水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基、R2は炭素数15〜23の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する化合物の残基、Xはコハク酸イミド基、マレイミド基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、グリシジル基、p−ニトロフェニル基またはチオール基を含有する基、aは0あるいは1、m1、m2、m3はオキシエチレン基の平均付加モル数、n1、n2、n3は炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、かつ、m1、m2、m3、n1、n2、n3およびk1、k2、k3は下記の条件を満足する数である。
0≦m1、m2、m3、n1、n2、n3≦500、3≦m1+m2+m3≦500でありかつ、3≦m1+m2+m3+n1+n2+n3≦500、0.5≦(m1+m2+m3)/(m1+m2+m3+n1+n2+n3)≦1、0≦k1≦8、1≦k2≦4、1≦k3≦4でありかつ、2≦k1+k2+k3≦10)
(C) R2が下記式(2)で表されるリン酸基含有化合物の残基である前記(B)記載の生体関連物質用固定化剤。
【0012】
【化4】
Figure 2004161731
【0013】
(R3およびR4は炭素数15〜23の不飽和炭化水素基、R5は炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、bは0あるいは1である。)
(D) R2の脂肪族炭化水素基がオレイル基または炭素数17の不飽和脂肪族炭化水素基を1個以上有する化合物の残基である前記(B)または(C)記載の生体関連物質用固定化剤。
(E) 生体関連物質が表面に官能基を持つ生体適合性材料であり、生体適合性材料の表面の官能基とこれと反応可能な官能基を持つ前記(A)〜(D)記載のの固定化剤の反応性官能基とを反応させることを特徴とする生体適合性材料の表面処理方法。
【0014】
(F) 生体関連物質が表面に官能基を持つ生体適合性材料であり、生体適合性材料の表面の官能基とこれと反応可能な官能基を持つ前記(A)〜(D)記載の固定化剤の反応性官能基とを反応させる工程を行った後、生体組織あるいは生体細胞を固定化させる工程を行うことを特徴とする生体適合性材料の表面処理方法。
(G) 前記(E)または(F)記載の方法で処理した生体適合材料を含むことを特徴とする再生医療材料。
(H) 前記(G)記載の再生医療材料からなる人工皮膚。
(I) 前記(G)記載の再生医療材料からなる人工血管。
(J) 前記(G)記載の再生医療材料で表面処理を行った人工骨。
(K) 前記(G)記載の再生医療材料で表面処理を行った人工歯根。
(L) 前記(E)または(F)記載の方法で処理した生体適合性材料を含むことを特徴とする医用外用剤。
(M) 前記(E)または(F)記載の方法で処理した生体適合性材料を含むことを特徴とする化粧料。
(N) 前記(E)または(F)記載の方法で処理した生体適合材料を用いることを特徴とする細胞または生体組織の培養方法。
(O) 前記(E)または(F)記載の方法で両面を処理したシート状生体適合性材料を含むことを特徴とする生体組織間あるいは生体組織と生体細胞の結合方法。
【0015】
(P) 生体関連物質が官能基を持つ生理活性物質であり、前記(A)〜(D)記載固定化剤の反応性官能基と生理活性物質の官能基を反応させることを特徴とする生理活性物質の処理方法。
(Q) 生体関連物質が官能基を持つプローブであり、前記(A)〜(D)記載固定化剤の反応性官能基とプローブの官能基を反応させることを特徴とするプローブの処理方法。
(R)前記(P)記載の方法で処理した生理活性物質を含むことを特徴とする医用材料。
(S) 前記(P)記載の方法で処理した生理活性物質を含むことを特徴とする化粧料。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明において、生体関連物質の固定化剤である両親媒性化合物は、下記の特徴:
(1)1つの末端に脂肪族炭化水素基を1個以上含有し、
(2)分子中に親水性基を含む部分を1個以上有し、および
(3)生体関連物質と共有結合しうる反応性官能基を上記(1)とは異なる末端に1個以上有する
を有する化合物である。
【0017】
本発明の生体関連物質は、生体適合性材料、生理活性物質またはプローブが挙げられる。
本発明の生体適合性材料は、本発明の固定化剤の反応性官能基と共有結合可能な官能基を少なくとも一つ有するものであれば特に限定されず、合成高分子、天然高分子などいかなるものを用いても良い。共有結合可能な官能基としては、例えば、アミノ基、水酸基、チオール基、カルボキシル基、マレイミド基、アルデヒド基、水酸基などを挙げることができる。このような生体適合性材料としては例えば、コラーゲンや変性コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン、アルブミンなどが挙げられ、これらは1種または2種以上の混合物してもよい。またポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成高分子にこれらの材料を配合してもよい。またこれらの生体適合性材料はシート状やその他の形に成型しても、不織布やその他の成型材料にこれらの材料を含浸あるいは塗布して用いても良い。本発明で用いられる「生体適合性材料」の用語は生体内あるいは生体外で利用可能な材料を含めて最も広義に解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
【0018】
本発明の生理活性物質は特に限定されないが、例えば、酵素阻害剤やレセプター・アンタゴニスト、アゴニストなどの医薬の有効成分である化合物のほか、ヒアルロン酸などの保湿成分、色素、ビタミンなどの化粧品配合成分のほか、アミノ酸、オリゴペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、膜タンパク質、糖タンパク質、単糖類、多糖類、ビタミン類など、低分子物質から高分子物質まで種々の物質を用いることができる。好ましい生理活性物質として、例えば、抗原、抗体、接着分子、レセプター、増殖因子などのサイトカイン等が挙げられる。本明細書において用いられる「生理活性物質」の用語は、少なくとも1つの生体反応を惹起できる物質であり、生体内や生体外の利用にとらわれず最も広義に解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
本発明においてはプローブなどの標識化合物を用いることもできる、例えば、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、酵素基質、金属イオンなどの検出のためのプローブを用いることができ、蛍光プローブ、発光プローブ、磁性プローブ、放射性プローブ、および金コロイド等の微粒子プローブ等が用いられる。利用可能なプローブは上記の物質を対象としたものおよび上記の検出手段を備えたプローブに限定されることはない。
本発明の生体関連物質用固定化剤の固定化の対象となる生体組織または生体細胞は、細胞膜を持っているものであれば生体関連物質用固定化剤と非共有結合で固定化されるので特に限定されないが、例えば、生体組織としては、表皮や粘膜、臓器、含組織などが挙げられ、特に粘膜や臓器などの組織に有効である。また生体細胞としては前述組織の構成細胞やES細胞、免疫細胞、赤血球、骨芽細胞、骨芽前駆細胞、間葉系幹細胞、骨髄細胞、骨髄前駆細胞、髄鞘細胞、乏突起膠細胞、大腸菌やその他の菌体などが挙げられる。
【0019】
本発明のポリオキシアルキレン鎖はオキシアルキレン基が2個以上結合したものであり、オキシエチレン基を50%以上含むオキシアルキレン鎖である。好ましくは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。
不飽和脂肪族炭化水素基としては合成または天然の不飽和脂肪族炭化水素由来の基でもよく、好ましくは炭素数15〜23の不飽和の直鎖または分枝の脂肪族炭化水素基(本明細書において「不飽和」という場合には分子または官能基に存在する二重結合または三重結合の数は特に限定されず、二重結合および三重結合を組み合わせて含んでいてもよい)、さらに好ましくは炭素数16〜18の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する基であり、より好ましくはオレイル基または炭素数17の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する基である。この炭化水素基は1種単独であってもよいし、2種以上が組み合わされていてもよい。2種以上を組み合わせる場合には、その組み合わせ方に制限はない。
両親媒性化合物中の反応性官能基は、好ましくはポリオキシアルキレン鎖の末端に配置される。反応性官能基としては、生体関連物質のアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基、マレイミド基、水酸基などの官能基と反応しうるものならいかなる反応性官能基を用いてもよい。例えば、コハク酸イミド基、マレイミド基、アミノ基、カルボキシル基、p−ニトロフェニル基、アルデヒド基、グリシジル基、チオール基等が挙げられる。
たとえば、生体関連物質の官能基がアミノ基の場合、これと反応可能な反応性官能基としてはコハク酸イミド基、カルボキシル基、p−ニトロフェニル基、アルデヒド基、グリシジル基が選択可能であり、生体関連物質の官能基がカルボキシル基の場合、これと反応可能な反応性官能基としては、アミノ基、チオール基が挙げられる。また、生体関連物質の官能基としてマレイミド基の場合、これと反応可能な反応性官能基としてはチオール基が挙げられ、生体関連物質の官能基がチオール基の場合、反応性官能基としてはマレイミド基、コハク酸イミド基が挙げられる。これらの組み合わせは特に限定されず、生体関連物質の官能基と固定化剤の反応性官能基は、通常の化学反応で反応可能な組み合わせであればいかなる組み合わせでも使用可能である。
【0020】
本発明の固定化剤として用いる両親媒性化合物としては、式(1)で表される化合物を用いることができる。
Zは2〜10個の水酸基を有する化合物の残基であり、2〜10個の水酸基を有する化合物としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリンおよびオクタグリセリンなどを挙げることができる。Zとしては好ましくは2〜8の水酸基を有する化合物の残基を用いることができる。
【0021】
AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。分子内にはnの数だけオキシアルキレン基が存在するが、このオキシアルキレン基は1種単独であってもよく、あるいは2種以上が組み合わされていてもよい。2種以上が組み合わされる場合には、その組み合わせ方に制限はなく、ブロック状であってもランダム状であってもよい。
【0022】
式(1)においてn1、n2、n3はオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、m1、m2、m3はオキシエチレン基の平均付加モル数を示している。n1、n2、n3、m1、m2およびm3はそれぞれ0〜500であり、オキシエチレン基とオキシアルキレン基の総和であるm1+m2+m3+n1+n2+n3は3〜500の範囲であり、好ましくは10〜300、より好ましくは20〜200である。
また、オキシエチレン基の総和であるm1+m2+m3は3〜500の範囲であり、好ましくは10〜300、特に好ましくは20〜200である。また、オキシエチレン基の総和であるm1+m2+m3とオキシアルキレン基の総和であるn1+n2+n3との比率は、0.5≦(m1+m2+m3)/(m1+m2+m3+n1+n2+n3)≦1を満足する必要がある。オキシエチレン基が少ないと水溶性が不足し十分な生体親和性が得られないことがある。オキシエチレン基の付加モル数は、例えばR1あるいはR2の疎水性基との親水性と疎水性のバランスによって決めることが可能である。好ましくは0.75≦(m1+m2+m3)/(m1+m2+m3+n1+n2+n3)≦1、特に好ましくは0.9≦(m1+m2+m3)/(m1+m2+m3+n1+n2+n3)≦1である。
k2が2以上であるか、あるいはR2がリン脂質化合物残基である場合には、疎水性を示す脂肪族炭化水素基が2鎖以上存在し、オキシエチレン基の平均付加モル数m1+m2+m3が20〜300であることが好ましく、特に好ましくは30〜200であることがさらに好ましい。
前記式(1)で示されるk1+k2+k3の値はZの分岐数に対応しており、2〜10、好ましくは2〜4の整数である。k1+k2+k3の値が2より小さい場合には、一末端に脂肪族炭化水素基である疎水性基、他の一末端に反応性官能基を有する化合物が得られないため、生体組織や細胞と生体関連物質を固定化することができなくなる。また、k1+k2+k3の値が10より大きい場合には、分子の三次元的な広がりが大きく嵩高くなるために、立体障害により安定な固定化を行うことができない場合がある。
【0023】
前記式(1)において、k1はポリアルキレンオキシドの分岐した末端の残基が水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基である残基の合計数であり、0〜8の範囲の整数である。
前記式(1)において、k2はポリアルキレンオキシドの末端の残基に炭素数15〜23の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する化合物の残基の合計数であり、1〜4の範囲の整数であり、好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜2である。k2が0の場合は細胞や組織と可逆的に非共有結合で結合することができず、5以上の場合は、嵩高く生態膜に固定剤を結合されない場合がある。不飽和脂肪族炭化水素基は、細胞膜と非共有結合で結合するが、アルブミン等のたんぱく質水溶液で取り外すことが可能である。k2の数が少ないとアルブミン等のタンパク水溶液での除去速度が速く、k2の数が多くなると除去速度が遅くなる。k2の数はその使用の目的によって適宜選択することができる。
【0024】
前記式(1)においてaは0または1であり、aが0の場合には、R2で表される不飽和脂肪族炭化水素基を含有する化合物の残基がポリアルキレンオキシド残基の末端にエーテル結合していることを意味し、aが1の場合はR2で表される不飽和脂肪族炭化水素基を含有する化合物の残基がポリアルキレンオキシド残基の末端にカルボニル基を介してエステル結合していることを意味している。
前記式(1)において、k3はXで示される反応性官能基を含有する基が末端残基に結合したポリアルキレンオキシド鎖の合計数であり、1〜4の範囲の整数であり、好ましくは1〜3である。k3が2以上の場合は、Xに含有される反応性官能基は1種または2種以上でもよい。2種以上の場合は同種あるいは異種の材料と結合させ、細胞や組織の生体膜に導入することができる。
【0025】
前記式(1)においてR1は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であり、好ましくは水素原子またはメチル基である。k2が1以上の場合には、R2の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する化合物の残基が式(1)の化合物の疎水性基として作用する。
前記式(1)において、R2は炭素数15〜23の不飽和の直鎖または分枝の脂肪族炭化水素基を含有する化合物の残基である。好ましくはオレイル基、炭素数17の不飽和の直鎖または分枝の脂肪族炭化水素基、あるいは炭素数15〜23の不飽和の直鎖または分枝の脂肪族炭化水素基を1個以上有するリン酸基含有化合物の残基である。
2の具体例としては、aが0の場合、オレイル基、リノレイル基、アラキドニル基、エルカイル基などのは不飽和の直鎖または分枝の炭化水素基が挙げられる。炭素数15〜23の不飽和脂肪族炭化水素基を有するリン脂質残基、より好ましくは炭素数17の不飽和の直鎖の脂肪族炭化水素基を有するリン脂質残基を有するリン脂質残基である。リン脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン等が挙げられる。
また、aが1の場合、R2は通常R2COとして脂肪酸に由来するアシル基を用いることができる。R2COの具体例としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、エルカ酸などの不飽和の直鎖または分枝の脂肪酸由来のアシル基を挙げることができ、好ましくはオレイン酸由来のアシル基である。
【0026】
前記式(1)において、Xはコハク酸イミド基、マレイミド基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、グリシジル基、p−ニトロフェニル基またはチオール基等の反応性官能基を含有する基である。ポリアルキレンオキシド残基の末端へのXの結合様式については特に限定はなくJMS-REV. MACROMOL. CHEM. PHYS., C25(3), 325-372(1985)等に報告されているような一般的な結合様式を用いることができるが、上記反応官能基を簡便に導入するためには2価の炭化水素基、エステルあるいはアミド結合を介して導入を行うことが好ましい。この目的に用いられる2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖の2価の炭化水素基、ヘキシレン基、フェニレン基等の2価の環状炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基である。エステル結合としては、モノカルボン酸またはジカルボン酸由来のエステル結合でもよいが、ジカルボン酸としてはコハク酸、グルタル酸、およびマレイン酸等が挙げられ、アミド結合としてはエチルアミドおよびプロピルアミド等由来のアミド結合が挙げられる。
【0027】
前記式(2)は炭素数15〜23の不飽和の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基を1個以上有するリン酸基含有化合物残基、すなわちホスファチジルエタノールアミン含有残基である。k2の基数を増やさず、細胞または組織を強く固定化する場合には、R2が式(2)で示される炭素数15〜23の不飽和の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基を1個以上有するリン酸基含有化合物残基を用いることが好ましい。
前記式(2)において、R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数15〜23の不飽和の直鎖または分枝の脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数17の不飽和脂肪族炭化水素基である。R3およびR4は通常R3COおよびR4COとして脂肪酸に由来するアシル基を用いることができる。R3COおよびR4COの具体的なものとしては、例えば、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、エルカ酸などの不飽和の直鎖または分岐の脂肪酸由来のアシル基を挙げることができ、より好ましくはオレイン酸由来のアシル基である。
3およびR4は同一であっても異なっていてもよい。R3およびR4の炭素数がそれぞれ23を越える場合、疎水性が強く柔軟性が小さいため細胞や組織などの生体膜への結合が困難になる場合があり、また炭素数が15より少ない場合には、細胞膜への結合後、疎水性が弱いために細胞膜から抜け落ちる場合がある。R2が式(2)で示されるリン脂質含有化合物の残基の場合には、アシル基が2本あるために細胞膜の修飾後の安定性が一本鎖より高く、細胞膜にアンカーリングした状態で分子の脱落が生じにくい。
前記式(2)において、R5は炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、直鎖状、分枝状、環状、またはそれらの組み合わせのいずれでもよく、飽和または不飽和のいずれでもよい。具体的には−CH2CH2−、−(CH2)3−、または−(CH2)4−基などが挙げられる。
bは0または1を示す。
【0028】
本発明の固定化剤として用いる両親媒性化合物が1個以上の不斉炭素を有する場合には、両親媒性化合物として、任意の光学活性体またはジアステレオ異性体などの純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などの任意の物質を用いることができる。また、オレフィン性の二重結合を含む場合には、純粋な形態のE体またはZ体、あるいはそれらの混合物のいずれを用いてもよい。
【0029】
本発明による生体関連物質用固定化剤を用いる材料の表面処理方法は、下記の工程(1)材料表面の官能基と上記の固定化剤を反応させる工程;および工程(2)前記工程(1)で得られた反応生成物に非共有結合により細胞または組織などの生体膜に結合させる工程により行うことができる。
前記工程(1)の反応工程で用いる溶媒の種類は、反応に関与しない溶媒であれば特に制限されないが、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、グッドの緩衝液等の緩衝液あるいはその等張液、あるいは有機溶剤または上記の水性媒体と有機溶剤との混合物などを用いることができ、これらは単独溶媒系でも混合溶媒系でもどちらでもよい。生体関連物質などの固定化する対象物質が変性ないし失活することがないように、反応に関与しないアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤を使用することが好ましい。反応温度は、生体関連物質が変性しない温度であれば特に限定されないが、例えば、0〜100℃、さらに0〜40℃が好ましい。反応時間は通常は1分〜48時間程度であり、0.5〜3時間が好ましい。反応後は、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液などで洗浄、あるいは限外ろ過等により未反応固定化剤を除去して次の工程に進むことが好ましいが、反応生成物の精製を行わずに工程(2)に用いてもよい。
【0030】
工程(2)においては、工程(1)で得られた表面処理した材料に生体細胞またはその培養細胞または生体組織を燐酸緩衝液あるいは無血清培地に分散させたものを添加、あるいは生体細胞またはその培養細胞または生体組織分散液に表面処理した材料を含浸させることによって生体細胞、その培養細胞または生体組織を固定化することができる。工程(1)で得られた表面処理材料と生体細胞、その培養細胞または生体組織との結合は通常は0〜40℃で行い、1秒間〜120分間、好ましくは25〜37℃で10秒間〜20分間行う。この工程において、工程(1)で得られた反応生成物以外の添加剤を添加してもよい。材料表面に生体細胞、その培養細胞または生体組織を固定化した後、未固定細胞または組織を等張液を添加して洗浄することが好ましい。用いる等張液としては細胞または組織に傷害を与えない溶媒であれば特に限定されないが、リン酸緩衝液生理食塩水、細胞培養液等の等張液を用いることができる。
本発明の固定化剤により固定化した生体細胞、その培養細胞または生体組織は、アルブミンなどのタンパク質溶液を流すことによって簡単に材料表面から除去することができる。タンパク質溶液の濃度はタンパク質溶液濃度が高ければ短時間で除去でき、タンパク質濃度が低ければ除去に時間がかかることになる。
【0031】
本発明の生体関連物質用固定化剤は対象となる生体関連物質の表面の官能基に合わせて、穏和な条件で反応する反応性官能基を適宜選択することができる。
たとえば対象となる物質の表面にアミノ基がある場合、反応性官能基はコハク酸イミド基、カルボキシル基、アルデヒド基、グリシジル基、p−ニトロフェニル基等を含有する基が使用できる。これらは、対象となる物質の溶解性、安定性等の物性によって、適宜選択することができる。
対象となる物質の表面にカルボキシル基がある場合、反応性官能基はアミノ基、チオール基などを含有する基を持つ固定化剤が使用できる。
対象となる物質の表面にチオール基がある場合は反応性官能基としてマレイミド基、コハク酸イミド基を含有する基を持つ固定化剤が使用でき、逆に対象となる物質の表面にマレイミド基がある場合は反応性官能基としてチオール基を含有する基を持つ固定化剤を使用することができる。
対象となる物質の表面の官能基と固定化剤の反応性官能基との反応方法は、「蛋白質の化学修飾(上/下)」(大野素徳、学会出版センター、1981)等で示されている酵素等のタンパク質と反応性化合物との反応方法が適用できるほか、公知な方法を用いることができる。
【0032】
また本発明においては対象となる生体関連物質の表面を本発明の固定化剤を用いて前述工程(1)により処理すれば、得られた対象となる物質の表面には組織等の生体膜と可逆的に非共有結合で反応する基をもつので、処理した対象となる物質は生体に乗せるだけで随時密着固定化される。またこのようにして得られた対象となる物質は生体組織に固定化後も、アルブミン等のタンパク水溶液に含浸させるだけで容易に除去できるので剥離時に細胞または組織にダメージを与えることが無く有用である。
また、本発明による固定化剤を用いる生理活性物質の処理方法は、前述の工程(1)をとればよく、得られた化合物はふりかけるだけで非共有結合により細胞または組織の生体膜と可逆的に結合することができるようになる。
【0033】
本発明の固定化剤は下記の用途に好適に使用することができる。
人工骨の表面処理、人工歯根の表面処理、人工皮膚の表面処理、人工血管の表面処理、組織培養による人工血管の製造、組織培養による人工皮膚の培養、これらおよびその他の材料を利用した再生医療用材料、創傷被覆などの医用外用剤、臓器移植時の臓器の免疫性低下処理剤、保湿パックなどの化粧品、また鼻腔や口腔内、肺などの粘膜用あるいは眼用医薬品や化粧品等に使用することができる。
これらの固定化剤の使用方法としては、生体適合性材料あるいは生理活性物質あるいはプローブを固定化剤で処理したのち、粘膜や創傷部位の生体組織あるいは臓器等に噴霧または貼布または塗布することによって固定化する方法と、生体適合性材料を固定化剤で処理した後、目的に合わせた細胞または組織を生体適合性材料に固定化し培養する、あるいは必要に応じて培養してから粘膜や創傷部位に噴霧または塗布または貼布するなどの方法が挙げられる。これらの使用方法は目的に応じて変更可能であり特に限定されるものではない。
【0034】
本発明の固定化剤を人工骨の表面処理に使用する場合、通常、人工骨はヒドロキシアパタイト、リン酸3カルシウム、チタン、これらの混合物などの骨代替物マトリクスからなり、穏和な条件で反応可能な反応性活性基を持っていないので、最初にマトリクス表面にコラーゲン、アルブミンなどのアミノ基を持つ高分子水溶液を塗布し、マトリクス表面にアミノ基などの官能基を持つポリマー層を固着化させて本発明の固定化剤を使用する。
本発明の固定化剤は作成するポリマー層の物性や官能基の種類によって適宜選択される。
たとえば作成したポリマー層がコラーゲンなどのアミノ基を持つ水溶性高分子の場合、ポリマー層を作成したマトリクスをpH7〜10の緩衝液に浸し、本発明の固定化剤を4〜30℃で原体のまま、あるいはアセトン等の水と相溶性の有機溶剤に溶かして添加し、0.5〜2時間程度攪拌して反応させることができる。ついでマトリクス表面から未反応の固定化剤をイオン交換水等で洗い流した後、骨芽細胞、骨芽前駆細胞、間葉系幹細胞、骨髄細胞、骨髄前駆細胞等の1種または2種以上を燐酸緩衝液あるいは無血清培地に分散させた溶液を、マトリクス表面に振りかけて放置する、あるいは分散させた溶液にマトリクスを含浸させて放置することによって細胞が表面に固定化される。本発明の固定化剤では細胞の接着は極めて短時間におこるので、放置時間は1〜10分程度で十分であるがこれより長時間放置させても問題は無い。放置後、未固定の細胞を生理食塩水等の流水ですすぎ流して、移植に用いる。また、細胞固定後、骨の形成が認められるまで適当な培養条件で培養してから移植しても良い。
人工骨は、本発明の目的に応じたものであれば、制限無く用いることができる。好ましくは、通常用いられるヒドロキシアパタイト、リン酸3カルシウム、チタンまたはこれらの混合物である。
【0035】
人工歯根に使用する場合においても、ヒドロキシアパタイト、リン酸3カルシウム、チタン、これらの混合物などの人工歯根表面にコラーゲンやアルブミンなどの官能基を持つ高分子水溶液を塗布した後、本発明の固定化剤を反応させることによって、人工骨と同様の方法で表面に細胞を固定化することができる。これに用いる細胞としては歯根膜細胞、その前駆細胞などが挙げられ、1種または2種以上で固定化してから移植、または歯根膜の形成が認められるまで適当な培養条件で培養してから移植しても良い。
人工歯根は、本発明の目的に応じたものであれば、制限無く用いることができる。好ましくは、通常用いられるヒドロキシアパタイト、リン酸3カルシウム、チタンまたはこれらの混合物である。
【0036】
人工皮膚に使用する場合は、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサンなどで構成された培養基材をpH7〜10の緩衝液に浸し、本発明の固定化剤を4〜30℃で原体のまま、あるいはアセトン等の水と相溶性の有機溶剤に溶かして添加し、0.5〜2時間程度攪拌して反応させる。ついで培養基材から未反応の固定化剤をイオン交換水等で洗い流した後、表皮角化細胞、表皮真皮細胞を燐酸緩衝液、無血清培地あるいは生理食塩水に分散させた溶液を培養基材の片面あるいは両面に降りかけて培養基材上に細胞を固定化し、未固定の細胞を洗浄により除去した後、そのまま培養基材ごと移植する。用法により、人工皮膚の厚みを増すために適当な培養条件下で培養しても良い。また、多孔性の培養基材を用いることにより細胞を固定化した面とは逆の面からアルブミンなどのタンパク質の高濃度溶液を流し、固定化剤を除去することにより培養基材と人工皮膚を剥離して用いても良い。
人工皮膚は、本発明の目的に応じたものであれば、制限無く用いることができる。好ましくは、通常用いられるコラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサンまたはこれらの混合物である。
【0037】
人工血管の組織培養に用いる場合も同様の方法で作成することができる。百ミクロン〜1ミリメートル未満である細い血管の場合、キチン糸、ゼラチン糸、コラーゲン糸などの生体吸収性または溶解性繊維で構成された望む太さの糸の表面に、これまでに述べた方法と同様の方法で本発明の固定化剤を反応させ、未反応の固定化剤を除去したのち、血管内皮細胞を固定化し、未固定の細胞を除去した後、そのまま移植する。移植前に糸が溶解するまで適当な培養条件下で培養してから移植しても良い。
1ミリ〜20ミリメートルである太い血管では同様な素材で構成された人工血管または管の表面に本発明の固定化剤を同様の方法により反応させ移植する。また、これらの素材でできたシートに血管内皮細胞を固定化たのち、筒状に加工して血管を作成しても良い。
これらの血管のさらに表面に同様な素材のシートを巻き付けるか、あるいは直接本発明の固定化剤をさらに塗布し、平滑筋細胞を固定化しても良い。これらの細胞層は用いる部位によりさらに数層重ねて用いても良い。
人工血管で用いた血管内皮細胞の代わりに、キチン糸、ゼラチン糸、コラーゲン糸などの生体吸収性または溶解性繊維で構成された望む太さの糸の表面に髄鞘細胞、乏突起膠細胞を固定化すると人工神経も作成することが可能である。人工神経の場合、細胞固定化後、髄鞘ができるまで適当な培養条件下で培養し、両端に神経細胞を固定化し、適当な培養条件下で髄鞘内に神経突起を延長させることができる。
人工血管は、本発明の目的に応じたものであれば、制限無く用いることができる。好ましくは、通常用いられるコラーゲン、ゼラチン、キチンまたはこれらの混合物である。
【0038】
本発明の固定化剤は、たとえばゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサン、その他の合成高分子等から成るシートに本発明の固定化剤を反応させたものを創傷被覆する固定化剤結合シートなどの医薬用外用剤として用いることができる。このときの反応方法は前述したように、シートの構成高分子の官能基と用いる固定化剤の種類によって適宜選択される。例えば、シート構成高分子がコラーゲンなどのようにアミノ基を持つポリマーで、固定化剤がコハク酸イミド基を含有する基を持つ場合、シートをpH7〜9の緩衝液中に含浸させ、その緩衝液に本発明の固定化剤を直接あるいは水溶液、有機溶剤に希釈して0〜30℃で0.5〜2時間混合して反応させ、反応後に未反応の固定化剤を生理食塩水またはイオン交換水で洗浄除去して固定化剤結合シートを得ることができる。得られた固定化剤結合シートは乾燥後そのまま用いても良いし、抗菌剤や抗菌性ペプチド、上皮成長因子、血小板成長因子等のサイトカイン、インテグリン等の細胞接着性因子またはそれらのユニットを含むペプチド等の生理活性物質を含浸あるいは塗付して用いても良い。
また、シートとして不織布などの穏和な条件で固定化剤と反応できる官能基を持たないものを用いる場合、初めにシート表面にゼラチンやコラーゲンなどの官能基を持つ高分子を塗布してから固定化剤を反応させて固定化剤結合シートを得ることもできる。
さらに前述の固定化剤結合シートにヒアルロン酸などの保湿成分を含浸させると化粧用パック剤などの化粧料としても有用である。
【0039】
本発明の固定化剤はインシュリンや抗菌剤やサイトカインなどの生理活性物質と、前述の工程(1)により簡単に反応させることができる。このような生理活性物質−固定化剤反応物は、生体組織と塗るだけで固定化することができるので、医用材料として有用である。例えば、通常薬剤の固定化が困難である目や鼻腔内、口腔内、肺などの粘膜用治療薬として用いることができる。
また、このような処理によって得られた生理活性物質−固定化剤反応物は、10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下の微粒子になるまで微粒子化すると、薬剤を鼻腔や口腔内に噴霧吸引することにより肺粘膜から吸収させることも可能となる。生理活性物質−固定化剤反応物はそのまま、あるいはしょ糖やデンプンなどの賦形剤と混合したのちミキサー等の粉砕機によって粉砕することもできるし、あるいは必要に応じてしょ糖やデンプンなどの賦形剤と一緒に一旦水溶液にしたのちに、スプレードライやフリーズドライなどの方法によって再固形化した後粉砕しても良い。また、微粉末にする必要性が無い生理活性物質については、生理活性物質―固定化剤反応物を含む水溶液を直接鼻腔や口腔内に噴霧吸引し肺粘膜から吸収させることもできる。
【0040】
また、薬剤を固定化剤と共有結合で反応させたくない場合は以下の方法を取ることもできる。固定化剤をはじめにカチオン性あるいはアニオン性の樹脂と工程(1)により反応させ、その後樹脂に、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリンなどの交感神経興奮剤(血管収縮剤)、グリチルリチン酸二カリウムなどの抗炎症剤、ε−アミノカプロン酸などの抗プラスミン剤、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤、ビタミンB12などのビタミン、マグネシウムやカリウムなどの無機塩類を吸着させることもできる。
これらも前述の生理活性物質−固定化剤反応物と同様に目や鼻腔内、口腔内、肺などの粘膜用治療薬として有用であり、直接噴霧塗布する方法や鼻腔や口腔へ噴霧吸引して肺粘膜から吸収させる方法などで投与することができる。
また、膜たんぱく質などの免疫刺激性を低下させる生理活性物質と本発明の固定化剤を前述の方法あるいは公知の方法で反応させ、定法により精製後移植臓器など生体組織の表面に噴霧あるいは塗布、含浸させると、臓器の機能をそこなうことなく簡便に短時間で臓器表面の免疫刺激性を低くできるので、移植手術などの処理剤として有用である。
また、本発明の固定化剤を用いて生体組織を処理すれば、ポリアルキレングリコール鎖が薬剤の侵入を防止するので、特定部位に薬剤の侵入防止バリアを形成することができる。
骨膜を失った骨の表面や元々ない歯根の表面に本発明の固定化剤を直接あるいは水溶液で塗布すれば,本発明の固定化剤が生体組織の表面に短時間で固定化され、破骨細胞や造骨細胞の侵入を防ぐバリヤとして機能する。
本発明の固定化剤は、通常、両親媒性化合物単独で用いられるが、本発明の効果を妨げない他の物質を配合してもよい。本発明の固定化剤は両親媒性化合物は1〜100重量%含有するものである。
【0041】
【発明の効果】
本発明の固定化剤は、細胞や組織に障害を与えることなく効率的に生体適合性材料表面に細胞や組織を固定化することができる。
本発明の固定化剤により固定化した細胞は、アルブミンなどのタンパク質溶液を流すことによって簡単に材料表面から除去することができる。タンパク質溶液の濃度はタンパク質溶液濃度が高ければ短時間で除去でき、タンパク質濃度が低ければ除去に時間がかかることになる。
これらの固定化剤の使用方法としては、1)生体適合性材料、生理活性物質あるいはプローブを固定化剤で処理したのち、粘膜や創傷部位の生体組織あるいは臓器等に噴霧または貼布または塗布することによって固定化する方法と、2)生体適合性材料を固定化剤で処理した後目的に合わせた細胞または組織を生体適合性材料に固定化し培養する、あるいは必要に応じて培養してから粘膜や創傷部位に噴霧または塗布または貼布するなどの方法が挙げられる。
本発明による1)の利用方法では、これまでの合成高分子の粘着性による固定化や重合性モノマーによる固定化に比べると、粘膜等の水分の多い場所でも固定化がごく短時間で行え、しかも細胞にダメージを与えることなく、さらに剥離も簡便な操作で行うことができるので有利である。また、鼻腔や口腔内、肺粘膜などこれまで薬剤の固定化、あるいは臓器等への膜タンパクの固定化など固定化が困難であった部位への薬剤への固定化を可能とするものである。
また、本発明の2)の利用方法では、生体細胞や組織にダメージを与えることなく固定化が行えるので、これまで困難であった固定化後の細胞や組織の増殖を可能とするものである。このようにして固定化した細胞や組織は、そのまま組織培養の足場として用いても良いし、生体内に移植後も増殖するので人工骨や人工歯根、人工皮膚などの再生医療用材料として好適に使用できる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
本発明の固定化剤を下記の方法で製造を行った。
実施例1
活性化ポリエチレンオキシドオレイルエーテルの合成
4g(1mmol)のポリエチレンオキシドオレイルエーテル(n=90、平均分子量4400)に酢酸ナトリウムを0.1mol%添加し、無水コハク酸を0.12g(1.2mmol)加えて100℃で5時間反応を行い、その後ジメチルホルムアミドを5mL加えてN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHSI)を0.14g(1.2mmol)添加して40℃で攪拌し、0.21g(2mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミドを加えて活性化体とした。反応終了後冷イソプロピルアルコール25mLおよびヘキサン50mLを用いて晶析を行い精製し3.5gの結晶を得た。
【0043】
実施例2
ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(カルボキシメチルポリエチレンオキシド)N−サクシンイミジルエステルの合成
ビス(カルボキシメチル ポリエチレンオキシド)N−サクシンイミジルエステル3.4g(1mmol)(平均分子量3400, Shearwater製)を、50℃でトルエン(20mL)に溶解した。ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン0.78g(1.05mmol)、トリエチルアミン0.1g(1.1mmol)を上記ビス(カルボキシメチル ポリエチレンオキシド)N−サクシンイミジルエステル溶液に添加し、50℃で3時間反応を行った。
反応終了後、ヘキサン(50mL)を加え、10℃に冷却した。結晶を濾過後、さらに、酢酸エチル100mLおよびヘキサン100mLを用いて晶析を行い、結晶2.8gを得た。
【0044】
実施例3
ゼラチン(新田ゼラチン(株)製:牛骨由来;分子量100,000;等電点5)10gとイオン交換水90gを混合し、60〜80℃で加熱攪拌して完全に溶解させた。ついで、ゼラチン溶液を10cm×10cmの不織布の上に塗布して冷却し、不織布表面にゼラチンゲル層を形成させた。ゼラチン層の厚さが2mmになるまで塗布と冷却を繰り返した。
次にゲル層を形成させた不織布を4℃に冷却したpH8.5のリン酸緩衝液に浸した。実施例1で製造した固定化剤3gをジメチルスルホキシド6gに溶解させ、リン酸緩衝液液中に2回に分けて全量を添加した。同温度で1時間攪拌した後、4℃に冷却したイオン交換水で5回ゼラチン層を洗浄した。
得られた固定化剤結合−ゼラチン−不織布を0.5cm×0.5cmに切り取りテストピースとした。
比較として固定化剤結合前のゼラチン−不織布を0.5cm×0.5cmに切り取り比較用ピースを用意した。
被験者に生理食塩水で3回うがいをさせた後、直ちに二つのテストピースを口腔内の頬粘膜に貼布したところ、比較用ピースは貼布することができなかったが、本発明のテストピースは簡単に頬粘膜に貼りついた。
【0045】
実施例4
チャイニーズハムスター卵胞細胞株CHOはGlass bottom Microwell Dishes(35mm dish, Uncoated, No.0 Coverslip)容器と10%ウシ胎児血清を添加したF-12培地(F-12 Nutrient Mixture (GIBCO.BRL; Cat# 21700-075))を用い37℃、5%二酸化炭素濃度でほぼ100%コンフルエントになるまで培養した。
実施例3で得られた固定化剤結合−ゼラチン−不織布を1cm×1cmに切り取り、その上に上記培養液1mLを流し入れた。1分間静置後、生理食塩水で5回洗浄した。ついで、位相差共焦点レーザースキャンニング顕微鏡で観察したところ不織布上にチャイニーズハムスター卵細胞株CHOが観察された。
ついで、首記不織布をF-12培地中に入れ7日間培養したところ、不織布上でチャイニーズハムスター卵細胞株CHOが密生して増殖しているところが観察された。本発明の固定化剤が細胞増殖にダメージを与えていないことが確認された。
【0046】
実施例5
実施例1で得られた化合物に抗菌ペプチド(KLKLLLLLKLK-NH2)のN末端アミノ基を結合した。
抗菌ペプチド(KLKLLLLLKLK:(株)島津製作所合成品)500μgをpH6のリン酸系緩衝液500μLに溶解させたものと、実施例1で得られた化合物をリン酸系緩衝液に溶解させ、濃度を400μMに調整したものを等量混合し、室温で一時間静置した。
得られた化合物を所定の各濃度に希釈し、大腸菌(BL21(DE3)株)培養液と混合して37℃で2時間培養後、固体寒天培地に播種してコロニー数をカウントした。
結果を図1に示す。得られた化合物が反応前と同等の抗菌活性を持つことが判る。
次に得られた化合物を24 well dishで一日培養した繊維芽細胞(NIH 3T3)培養液に添加した。PBSで数回洗浄した後、大腸菌培養液を加え、37℃で2時間静置後、大腸菌懸濁液を固体寒天培地に播種してコロニー数をカウントした。
結果を図2に示す。図2より、得られた繊維芽細胞表面は大腸菌に対して充分な抗菌性を有していることが判る。このことは、抗菌ペプチドを結合した本発明の化合物が細胞表面に固定化されたことを示している。
以上の結果より、抗菌ペプチドの細胞表面に固定化することにより感染防御できることがわかる。
【0047】
実施例6
実施例2で得られた化合物にフルオレセイン(和光純薬工業(株)製)のN末端アミノ基を結合し、100μMに調整した。
3.8mg(11μmol)のフルオレセイン (Aldrich社製;isomerI)を0.1mLのクロロホルムに溶解し、トリエチルアミン0.11mg(11μmol)を加えてフルオレセイン溶液とし、そこに実施例2で得られたジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(カルボキシルポリエチレンオキシド)N−サクシンイミジルエステル42mg(10μmol)を1mLのクロロホルムに溶解して添加し、40℃にて2時間攪拌反応した。反応後反応液を15℃に冷却してろ過した後、ヘキサン2mLを添加して晶析を行って精製した後、乾燥して結晶35mgを得た。得られた結晶をリン酸緩衝液生理食塩水溶液にて100μMに調整し、フルオレセイン結合ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン誘導体を得た。
対象として、メトキシポリエチレングリコールサクシジミルサクシネート(製品名SUNBRIGHT ME-050SC:日本油脂(株)製、分子量5000)とフルオレセイン (Aldrich社製;isomerI)とを用い、実施例6と同様にして100μMのフルオレセイン−ポリエチレンオキシドメチルエーテル(PEG-Fluorescein)溶液を得た。
それぞれ10μLをヌードマウス大腿筋の表層より3mmの部位に注射器を用いて注入し、蛍光を蛍光実体顕微鏡(ライカ製)で観察した。
結果を図3に示す。右側がPEG-Fluorescein溶液(対象)を用いた評価結果であり、左側がフルオレセイン結合ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン誘導体を用いた評価結果である。上から表面状態の写真、注入直後、30分後、60分後、90分後、120分後、180分後の蛍光写真である。
PEG-Fluoresceinは20分で蛍光が消失したのに対し、フルオレセインと結合した実施例2の化合物は180分後も蛍光が観察された。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の化合物と抗菌ペプチド反応物の抗菌試験結果
【図2】実施例1の化合物と抗菌ペプチド反応物を固定化した細胞の抗菌試験結果
【図3】実施例2の化合物と蛍光物質との反応物のマウス筋肉内での経時変化試験結果

Claims (19)

  1. 下記の特徴:
    (1)1つの末端に炭素数15〜23の不飽和脂肪族炭化水素基を1個以上含有し、
    (2)分子中にポリオキシアルキレン鎖を含む部分を1個以上有し、および
    (3)反応性官能基を上記(1)とは異なる末端に1個以上有する
    を有する両親媒性化合物を1〜100重量%含有することを特徴とする生体関連物質用固定化剤。
  2. 両親媒性化合物が下式の式(1)で表される請求項1記載の生体関連物質用固定化剤。
    Figure 2004161731
    (式中、Zは2〜10の水酸基をもつ化合物の残基、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基とオキシアルキレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していても良く、R1は水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基、R2は炭素数15〜23の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する化合物の残基、Xはコハク酸イミド基、マレイミド基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、グリシジル基、p−ニトロフェニル基またはチオール基を含有する基、aは0あるいは1、m1、m2、m3はオキシエチレン基の平均付加モル数、n1、n2、n3は炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、かつ、m1、m2、m3、n1、n2、n3およびk1、k2、k3は下記の条件を満足する数である。
    0≦m1、m2、m3、n1、n2、n3≦500、3≦m1+m2+m3≦500でありかつ、3≦m1+m2+m3+n1+n2+n3≦500、0.5≦(m1+m2+m3)/(m1+m2+m3+n1+n2+n3)≦1、0≦k1≦8、1≦k2≦4、1≦k3≦4でありかつ、2≦k1+k2+k3≦10)
  3. 2が下記式(2)で表されるリン酸基含有化合物の残基である請求項2記載の生体関連物質用固定化剤。
    Figure 2004161731
    (R3およびR4は炭素数15〜23の不飽和炭化水素基、R5は炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、bは0あるいは1である。)
  4. 2の脂肪族炭化水素基がオレイル基または炭素数17の不飽和脂肪族炭化水素基を1個以上有する化合物の残基である請求項2または請求項3記載の生体関連物質用固定化剤。
  5. 生体関連物質が表面に官能基を持つ生体適合性材料であり、生体適合性材料の表面の官能基とこれと反応可能な官能基を持つ請求項1〜請求項4のいずれかに記載の固定化剤の反応性官能基とを反応させることを特徴とする生体適合性材料の表面処理方法。
  6. 生体関連物質が表面に官能基を持つ生体適合性材料であり、生体適合性材料の表面の官能基とこれと反応可能な官能基を持つ請求項1〜請求項4のいずれかに記載の固定化剤の反応性官能基とを反応させる工程を行った後、生体組織あるいは生体細胞を固定化させる工程を行うことを特徴とする生体適合性材料の表面処理方法。
  7. 請求項5または請求項6記載の方法で処理した生体適合材料を含むことを特徴とする再生医療材料。
  8. 請求項7記載の再生医療材料からなる人工皮膚。
  9. 請求項7記載の再生医療材料からなる人工血管。
  10. 請求項7記載の再生医療材料で表面処理を行った人工骨。
  11. 請求項7記載の再生医療材料で表面処理を行った人工歯根。
  12. 請求項5または請求項6記載の方法で処理した生体適合性材料を含むことを特徴とする医用外用剤。
  13. 請求項5または請求項6記載の方法で処理した生体適合性材料を含むことを特徴とする化粧料。
  14. 請求項5または請求項6記載の方法で処理した生体適合材料を用いることを特徴とする細胞または生体組織の培養方法。
  15. 請求項5または請求項6記載の方法で両面を処理したシート状生体適合性材料を含むことを特徴とする生体組織間あるいは生体組織と生体細胞の結合方法。
  16. 生体関連物質が官能基を持つ生理活性物質であり、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の固定化剤の反応性官能基と生理活性物質の官能基を反応させることを特徴とする生理活性物質の処理方法。
  17. 生体関連物質が官能基を持つプローブであり、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の固定化剤の反応性官能基とプローブの官能基を反応させることを特徴とするプローブの処理方法。
  18. 請求項16記載の方法で処理した生理活性物質を含むことを特徴とする医用材料。
  19. 請求項16記載の方法で処理した生理活性物質を含むことを特徴とする化粧料。
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