【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性樹脂や耐熱性繊維などの原料として有用な3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法に関する。さらに詳しく言えば、3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅触媒存在下で反応させて得られる粗3,3’−ジアミノベンジジンを精製する工程を含む3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐熱性樹脂や耐熱性繊維の原料として用いられる3,3’−ジアミノベンジジンは、金属化合物等の不純物の含有量は出来るだけ少ないことが要求される。
3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法としては、ベンジジンを出発原料とし、アセチル化によりアミノ基を保護しニトロ化した後脱アセチル化し、ニトロ基を還元することにより得る方法、3,3’−ジクロロベンジジンのアンモノリシスにより3,3’−ジアミノベンジジンを得る方法が知られている。
しかし、ベンジジンを出発物質として使用する方法は、原料ベンジジンの強い毒性のため工業的製造方法としては好ましくない。
【0003】
3,3’−ジクロロベンジジンのアンモノリシスによる方法として、銅化合物を触媒に用いる方法が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3等)。この方法では、触媒として銅化合物を用いており、3,3’−ジアミノベンジジンと銅化合物が容易に反応して生成する不溶性の錯化合物と3,3’−ジアミノベンジジンを分離することが必要であるが、従来粗3,3’−ジアミノベンジジンから銅化合物を分離し3,3’−ジアミノベンジジンを効率よく取り出すことは困難であった。
【0004】
例えば、特許文献1〜3には、3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアと銅系触媒を用いた3,3’−ジアミノベンジジンの合成方法について記載されているが、精製法としては目的物を単に水またはアルコールで抽出する方法、さらに粗3,3’−ジアミノベンジジンを塩酸塩として分離した後アルカリによって中和する方法について記載されているのみであり、銅化合物の分離、精製については記載がない。また、この方法では、銅化合物を十分に分離することができない。
【0005】
なお、特許文献2には、添付図面に触媒として使用する銅と原料の3,3’−ジクロロベンジジンのモル比が収率に大きな影響を与えることが記載されている。すなわち、3,3’−ジクロロベンジジンに対する銅(化合物)のモル比が0から0.1に増えると収率が高くなり、0.1付近で最高の収率(90%)となる。しかし、0.1を超えて銅の使用量を増加させていくと、0.5の時の収率は50%、2.0の時の収率は0%となると記載している。このことから推測すると、銅を多く使用すると3,3’−ジアミノベンジジンと銅が錯体を形成するため収率が大きく低下すると考えられる。
【0006】
3,3’−ジアミノベンジジンを精製する方法として、さまざまな方法が提案されている。
例えば、特許文献4、特許文献5には反応系から粗3,3’−ジアミノベンジジンをろ過等により分離し、アンモニア水及び水により洗浄して大部分の銅成分を除去した後、水溶性還元剤の存在下に活性炭と処理をする方法が開示されている。しかし、これらの方法では洗浄のために多量のアンモニア水を使用する必要があるほか、吸着剤が多量の廃棄物となるため工業的に有利ではない。
【0007】
また、特許文献6にも、反応系から粗3,3’−ジアミノベンジジンをろ過等により分離し、アンモニア水及び水により洗浄して大部分の銅成分を除去することが記載されているが、洗浄のために多量のアンモニア水を使用するため工業的に有利ではない点については上記と同様である。さらに、洗浄後、ヒドラジン及び吸着剤(活性炭)を用い処理する必要があり、操作が煩雑である。
【0008】
【特許文献1】
特公昭49−11212号公報
【特許文献2】
特公昭49−11213号公報
【特許文献3】
米国特許第3865876号明細書
【特許文献4】
特開昭57−171942号公報
【特許文献5】
特開平06−48998号公報
【特許文献6】
特開昭60−158146号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題の一つは、3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅触媒存在下で反応させて3,3’−ジアミノベンジジンを製造する方法において、銅成分を実質的に含まない3,3’−ジアミノベンジジンを簡便に製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題に鑑み、粗3,3’−ジアミノベンジジンから銅化合物を除去する方法について鋭意研究した結果、本発明者らは3,3’−ジアミノベンジジンと銅化合物を含む反応混合物を、2価の硫黄化合物と共に処理する簡便な操作により、粗3,3’−ジアミノベンジジンから銅成分を除去することができることを見出した。
また、本発明者らは3,3’−ジアミノベンジジンの塩酸塩の水に対する溶解度がその他の塩の水に対する溶解度よりも極端に大きいことを確認し、前記硫黄化合物と銅化合物が反応して生成する硫化銅と、3,3’−ジアミノベンジジンとを分離する方法として、3,3’−ジアミノベンジジンを塩酸酸性水溶液に溶解させて硫化銅の沈澱を分離する方法が有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
なお、特許文献4及び5に記載の方法で使用する水溶性還元剤は、具体的には、ナトリウムジチオニット(Na2S2O4)やナトリウムスルフィット(Na2SO3)であるが、これらの還元剤と本発明で使用する2価の硫黄化合物とはその作用機構が明らかに異なる。これらの還元剤はアミノ基のニトロソ基やニトロ基への酸化反応を押さえて、着色を抑える効果があると思われるものの、触媒として使用した銅化合物と不溶性の銅塩を生成しないため、3,3’−ジアミノベンジジンと銅成分の分離には効果がないと考えられる。
【0012】
すなわち、本発明は下記の構成よりなる。
(1)3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅触媒存在下で反応させる工程、及び得られた粗3,3’−ジアミノベンジジンを2価の硫黄化合物で処理する工程を含むことを特徴とする3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法。
(2)2価の硫黄化合物による処理工程に続いて、前記工程で生成した硫化銅を3,3’−ジアミノベンジジンと硫化銅の塩酸酸性水溶液に対する溶解度差により分離し除去する工程を含む前記1に記載の3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法。
(3)2価の硫黄化合物による処理工程が、3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅触媒存在下で反応させて得られた反応溶液に直接2価の硫黄化合物を添加して反応させる工程である前記1または2に記載の3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法。
(4)2価の硫黄化合物による処理工程が、3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅触媒存在下で反応させて得られた反応溶液から固体成分を分離し、この固体成分を水に懸濁した後、2価の硫黄化合物を添加して反応させる工程である前記1または2に記載の3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法。
(5)硫化銅除去工程が、2価の硫黄化合物による処理工程で得られた固体成分を塩酸酸性水溶液で処理し、それに溶解しない固体成分を除工程である前記2に記載の3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法。
(6)3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅触媒存在下で反応させて得られた3,3’−ジアミノベンジジンを含む反応混合物に2価の硫黄化合物を接触させ、生成した固体成分をろ別し、得られた湿潤固体を塩酸酸性水溶液で処理し、溶解しない固体成分を除いた後、液相を塩基性化合物で中和して3,3’−ジアミノベンジジンを沈澱させ回収することを特徴とする3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法。
(7)2価の硫黄化合物が、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化アンモニウム及び硫化水素から選択される前記1乃至6のいずれかに記載の3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法。
(8)塩基性化合物が、アンモニア水である前記6または7に記載の3,3’−ジアミノベンジジンの製造方法。
(9)3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅触媒存在下で反応させて得られる粗3,3’−ジアミノベンジジンを、2価の硫黄化合物で処理し、生成した硫化銅を3,3’−ジアミノベンジジンと硫化銅の塩酸酸性水溶液に対する溶解度差により分離除去し、3,3’−ジアミノベンジジン塩酸塩酸水溶液を塩基性化合物で中和して3,3’−ジアミノベンジジンを沈澱させ回収することを特徴とする3,3’−ジアミノベンジジンの精製方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の方法は、3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅触媒存在下で反応させて得られた粗3,3’−ジアミノベンジジンを、2価の硫黄化合物を用いて処理することを特徴とする。2価の硫黄化合物を用いて処理することにより、反応系内に存在する銅成分が不溶性の硫化銅に変換されて、3,3’−ジアミノベンジジンとの分離が容易に行なわれる。
また、2価の硫黄化合物の処理により生成した不溶性の硫化銅と3,3’−ジアミノベンジジンとは、それらの塩酸酸性水溶液への溶解度の差を利用して分離することができる。具体的には、3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅触媒存在下で反応させて得られた粗3,3’−ジアミノベンジジンに2価の硫黄化合物を接触させ、ろ過により取りだした湿潤固体を、塩酸酸性水溶液で処理して、溶解しない固体を除いた後、液相を塩基性化合物で中和して沈澱を得、この沈澱を水洗し乾燥することにより、実質的に銅成分を含有しない3,3’−ジクロロベンジジンを得ることができる。
【0014】
本発明で用いる粗3,3’−ジアミノベンジジンとは、3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅系触媒の存在下に反応させる方法によって得られた反応溶液の状態のもの、あるいはこの反応溶液を固液分離(ろ過等)することにより3,3’−ジアミノベンジジンを含む固体成分を分離した状態、さらにはこの固体成分を水等に懸濁させた状態のものをいう。
【0015】
3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅系触媒の存在下に反応させる方法は公知の方法に従って行なうことができる。
この反応の原料として用いる3,3’−ジクロロベンジジンは、工業的に入手可能な3,3’−ジクロロベンジジン2塩酸塩の含水品状態のものを使用することができる。また、o−クロロニトロベンゼンをベンジジン転移させるなど公知の方法により製造することもできる。
また、3,3’−ジクロロベンジジンは、アンモニアと反応しないベンゼン環上の置換基を有していても良い。
【0016】
3,3’−ジクロロベンジジンからの3,3’−ジアミノベンジジンの合成条件は、3,3’−ジクロロベンジジン2塩酸塩含水品とアンモニアを、銅触媒(銅化合物)と共に加圧容器中に混合し、所定温度で所定時間反応させる。
【0017】
アンモニアとしては、液化ガス及び水溶液のいずれも使用することができる。また、アンモニアの使用量は特に限定されないが、原料の3,3’−ジクロロベンジジンに対して少なくとも2倍モル使用すれば良く、通常10〜1000倍使用する。工業的には20〜100倍モル使用することが好ましい。アンモニアの使用量が少ないと反応速度が遅く、使用量が多いと生産性が低くなるため、工業的に有利ではない。
【0018】
また、銅化合物としては、塩化第一銅、塩化第二銅、硫酸銅、酸化銅、金属銅、水酸化銅などを使用することができ、あるいはそれらの組合せでも良い。銅化合物の使用量は特に限定しないが、3,3’−ジクロロベンジジンに対して0.001〜1.0倍モル使用することができる。触媒の使用量が少ないと反応速度が遅く、使用量が多いと収率が低下する。
【0019】
反応温度は、100〜350℃で行うことができるが、150〜250℃が好ましい。150℃未満だと、反応速度が十分でないため生産性が悪く、250℃を超えると、3−アミノベンジジンやベンジジンなどの副生成物が多くなる。
【0020】
反応圧力は、アンモニアの使用量や反応に使用する溶媒に対するアンモニアの溶解度にもよるが、0.2〜30MPaで行うことができる。通常は1〜10MPaで行う。
【0021】
この反応は、反応の進行と共に消費されるアンモニアを追加しながら行うことができる。アンモニアの追加は、加圧状態で反応器に導入する方法で行うことができる。
【0022】
また、この反応では溶媒を使用することもできる。アンモニアを水溶液として用いる場合の水だけでも良いが、アンモニアやジアミノベンジジンと反応しないような溶媒を用いることができる。具体的には、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素化合物や、メタノール、エタノール、プロピレングリコールなどのアルコール化合物等を使用することができる。
【0023】
また、本発明に用いられる2価の硫黄化合物としては、銅化合物と反応して、硫化銅を生成する硫黄化合物であれば特に限定せず使用することができ、具体的には、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化アンモニウム、硫化水素などの硫黄化合物を用いることができる。これらの硫黄化合物の使用量は、特に限定されないが、反応に使用した銅化合物と当量以上の硫黄化合物を用いることが好ましく、2倍当量以上使用することがさらに好ましい。
【0024】
硫黄化合物と接触させる方法としては、反応終了後の反応溶液に直接硫黄化合物を添加する方法と、反応終了後の反応溶液から、ろ過等により3,3’−ジアミノベンジジンを含む反応混合物(固体成分)を取り出した後、硫黄化合物を反応させる方法のいずれの方法も使用できる。
【0025】
反応終了後の反応溶液に添加する方法では、反応終了後の反応溶液に2価の硫黄化合物を投入し、3,3’−ジアミノベンジジンと共に硫化銅を沈澱させ、得られた湿潤固体を取りだし、塩酸酸性水溶液で接触処理することにより、3,3’−ジアミノベンジジン塩酸塩の水溶液と硫化銅の固体を分離し、3,3’−ジアミノベンジジン塩酸塩を中和することにより3,3’−ジアミノベンジジンを得る。
【0026】
また、反応溶液から3,3’−ジアミノベンジジンを主成分として含む反応混合物を取り出した後に硫黄化合物と接触処理する方法では、反応終了後の反応溶液から、ろ過等により3,3’−ジアミノベンジジンを主成分として含む反応混合物を湿潤固体として取り出して水に懸濁させ、ついで2価の硫黄化合物を投入し反応させた後、塩酸酸性水溶液で接触処理することにより3,3’−ジアミノベンジジン塩酸塩の水溶液と硫化銅の固体を分離する。
【0027】
これらの中でも、より簡便な硫黄化合物を反応終了後の反応溶液に添加する方法が好ましい。
【0028】
硫黄化合物で処理する温度は特に限定されないが、使用する溶媒の融点以上、沸点以下が好ましく、20〜150℃がさらに好ましい。また、硫黄化合物との接触処理時間は、硫黄化合物の使用量にもよるが、通常、1〜10時間で反応は完結する。
【0029】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例1:
100mlの電磁撹拌機付きSUS製オートクレーブに、3,3’−ジクロロベンジジン2塩酸塩(和歌山精化工業株式会社製、商品名「ジクロジン−H」、含水品91wt%)8.6g(0.024モル)、CuCl 0.25g(0.0025モル)、Cu 0.06g(0.0009モル)、塩化アンモニウム 0.06g(0.0011モル)、28%アンモニア水 36.6g(0.603モル)を加え、オートクレーブを閉じた後、空間部分の空気を窒素加圧−放出を3回繰り返すことにより窒素で置換した。
オートクレーブに、液化アンモニア 5.25g(0.309モル)を圧入し、200℃で18時間反応させた。反応圧力は3.2MPaであった。
反応終了後、室温に冷却してからオートクレーブを開封し、硫化ナトリウム0.54g(0.0069モル)を加え、120℃で1時間加熱処理を行った。オートクレーブを冷却後、反応混合物から沈澱物をろ過により取り出し、約100gの水を加えてスラリーとした。このスラリーに濃塩酸を反応器内のpHが2となるまで添加した。大部分の沈澱が溶解し、濃紫色の溶液となったが、一部黒色の沈澱が溶け残った。この沈澱をろ過により取り除き、ろ液に28%アンモニア水をpHが11になるまで添加した。生成した白紫色の沈澱をろ過により取りだし、水洗、乾燥して3,3’−ジアミノベンジジンを得た(乾燥物重量4.4g、収率86%)。この乾燥物中の銅の含有量は10ppm以下であった。
【0031】
実施例2:
硫化ナトリウムの代わりに硫化アンモニウム 0.47g(0.0069モル)を使用した以外は実施例1と同様の方法により3,3’−ジアミノベンジジンを得た(乾燥物重量4.3g、収率84%)。この乾燥物中の銅の含有量は10ppm以下であった。
【0032】
実施例3:
実施例1と同様の方法で3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアの反応を行った。反応終了後、室温に冷却してからオートクレーブを開封し、反応混合物から沈澱物をろ過により取り出し、約100gの水を加えてスラリーとした。このスラリーに、硫化ナトリウム 0.54g(0.0069モル)を加え、100℃で1時間加熱処理を行った。反応器を冷却後、濃塩酸を反応器内のpHが2となるまで添加した。大部分の沈澱が溶解し、濃紫色の溶液となったが、一部黒色の沈澱が溶け残った。この沈澱をろ過により取り除き、ろ液に28%アンモニア水をpHが11になるまで添加した。生成した白紫色の沈澱をろ過により取りだし、水洗、乾燥して3,3’−ジアミノベンジジンを得た(乾燥物重量4.0g、収率78%)。この乾燥物中の銅の含有量は10ppm以下であった。
【0033】
比較例1:
硫化ナトリウムを使用せず、120℃での加熱処理を行わない以外は、実施例1と同様の方法で3,3’−ジアミノベンジジンを得た(乾燥物重量3.4g、収率66%)。この乾燥物中の銅の含有量は0.2%であった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、3,3’−ジクロロベンジジンとアンモニアを銅系触媒の存在下に反応させて得られた粗3,3’−ジアミノベンジジンを2価の硫黄化合物と処理する簡便な方法で精製することができ、銅含有量の極めて少ない3,3’−ジアミノベンジジンを得ることができる。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a method for producing 3,3′-diaminobenzidine, which is useful as a raw material for heat-resistant resins and heat-resistant fibers. More specifically, the present invention relates to a method for producing 3,3'-diaminobenzidine, which comprises a step of purifying crude 3,3'-diaminobenzidine obtained by reacting 3,3'-dichlorobenzidine with ammonia in the presence of a copper catalyst. .
[0002]
[Prior art]
3,3′-Diaminobenzidine used as a raw material for heat-resistant resin and heat-resistant fiber is required to have as low an impurity content as possible, such as a metal compound.
As a method for producing 3,3′-diaminobenzidine, a method is used in which benzidine is used as a starting material, the amino group is protected by acetylation, nitrated, deacetylated, and the nitro group is reduced to obtain 3,3′-diaminobenzidine. A method for obtaining 3,3′-diaminobenzidine by ammonolysis of dichlorobenzidine is known.
However, the method using benzidine as a starting material is not preferable as an industrial production method due to the strong toxicity of the starting material benzidine.
[0003]
As a method based on ammonolysis of 3,3′-dichlorobenzidine, a method using a copper compound as a catalyst is known (Patent Document 1, Patent Document 2, Patent Document 3, etc.). In this method, a copper compound is used as a catalyst, and it is necessary to separate 3,3′-diaminobenzidine from an insoluble complex compound generated by a reaction between 3,3′-diaminobenzidine and the copper compound easily. However, conventionally, it has been difficult to separate a copper compound from crude 3,3'-diaminobenzidine and to efficiently extract 3,3'-diaminobenzidine.
[0004]
For example, Patent Documents 1 to 3 disclose a method for synthesizing 3,3′-diaminobenzidine using 3,3′-dichlorobenzidine, ammonia and a copper-based catalyst. It merely describes a method of extracting with water or alcohol, and a method of separating crude 3,3′-diaminobenzidine as a hydrochloride salt and then neutralizing the same with an alkali. Separation and purification of copper compounds are described. Absent. Further, this method cannot sufficiently separate the copper compound.
[0005]
Patent Document 2 discloses that the molar ratio of copper used as a catalyst to 3,3′-dichlorobenzidine as a raw material greatly affects the yield in the accompanying drawings. That is, when the molar ratio of copper (compound) to 3,3′-dichlorobenzidine increases from 0 to 0.1, the yield increases, and near 0.1, the highest yield (90%). However, it is described that when the amount of copper used is increased beyond 0.1, the yield at 0.5 becomes 50% and the yield at 2.0 becomes 0%. From this, it is considered that when a large amount of copper is used, the yield is greatly reduced because 3,3′-diaminobenzidine and copper form a complex.
[0006]
Various methods have been proposed as methods for purifying 3,3'-diaminobenzidine.
For example, Patent Literatures 4 and 5 disclose crude 3,3′-diaminobenzidine from a reaction system by filtration or the like, wash with ammonia water and water to remove most copper components, and then perform water-soluble reduction. A method of treating with activated carbon in the presence of an agent is disclosed. However, these methods are not industrially advantageous because a large amount of ammonia water must be used for washing and the adsorbent becomes a large amount of waste.
[0007]
Patent Document 6 also describes that crude 3,3′-diaminobenzidine is separated from the reaction system by filtration or the like, and washed with ammonia water and water to remove most copper components. This is similar to the above in that a large amount of aqueous ammonia is used for washing, which is not industrially advantageous. Furthermore, after washing, it is necessary to treat with hydrazine and an adsorbent (activated carbon), and the operation is complicated.
[0008]
[Patent Document 1]
JP-B-49-11212 [Patent Document 2]
JP-B-49-11213 [Patent Document 3]
US Pat. No. 3,865,876 [Patent Document 4]
JP-A-57-171942 [Patent Document 5]
JP 06-48998 A [Patent Document 6]
JP-A-60-158146
[Problems to be solved by the invention]
An object of the present invention is to provide a method for producing 3,3′-diaminobenzidine by reacting 3,3′-dichlorobenzidine and ammonia in the presence of a copper catalyst, and to include 3,3′-diaminobenzidine substantially free of a copper component. It is to provide a method for easily producing 3'-diaminobenzidine.
[0010]
[Means for Solving the Problems]
In view of the above problems, as a result of intensive studies on a method of removing a copper compound from crude 3,3'-diaminobenzidine, the present inventors have found that a reaction mixture containing 3,3'-diaminobenzidine and a copper compound can be converted into a divalent reaction mixture. It has been found that a copper component can be removed from crude 3,3′-diaminobenzidine by a simple operation of treating with a sulfur compound.
In addition, the present inventors have confirmed that the solubility of 3,3′-diaminobenzidine hydrochloride in water is extremely higher than the solubility of other salts in water, and that the sulfur compound and the copper compound react to form As a method of separating copper sulfide and 3,3′-diaminobenzidine, a method of dissolving 3,3′-diaminobenzidine in an aqueous hydrochloric acid solution and separating a precipitate of copper sulfide was found to be effective, The present invention has been completed.
[0011]
The water-soluble reducing agent used in the methods described in Patent Documents 4 and 5 is specifically sodium dithionite (Na 2 S 2 O 4 ) or sodium sulfite (Na 2 SO 3 ). The action mechanisms of these reducing agents and the divalent sulfur compound used in the present invention are clearly different. Although these reducing agents are thought to have the effect of suppressing the oxidation reaction of amino groups to nitroso groups and nitro groups, thereby suppressing coloration, they do not produce insoluble copper salts with the copper compound used as a catalyst, It is considered that there is no effect in separating 3'-diaminobenzidine and the copper component.
[0012]
That is, the present invention has the following configuration.
(1) a step of reacting 3,3′-dichlorobenzidine with ammonia in the presence of a copper catalyst, and a step of treating the obtained crude 3,3′-diaminobenzidine with a divalent sulfur compound. A method for producing 3,3′-diaminobenzidine.
(2) Following the step of treating with a divalent sulfur compound, the above-mentioned 1 comprising a step of separating and removing copper sulfide formed in the above step by a difference in solubility between 3,3′-diaminobenzidine and copper sulfide in an aqueous hydrochloric acid solution. 3. The method for producing 3,3′-diaminobenzidine described in 1. above.
(3) The step of treating with a divalent sulfur compound is a step of directly adding a divalent sulfur compound to a reaction solution obtained by reacting 3,3′-dichlorobenzidine with ammonia in the presence of a copper catalyst to cause a reaction. 3. The method for producing 3,3′-diaminobenzidine according to 1 or 2 above.
(4) In the treatment step with a divalent sulfur compound, a solid component is separated from a reaction solution obtained by reacting 3,3′-dichlorobenzidine with ammonia in the presence of a copper catalyst, and the solid component is suspended in water. 3. The method for producing 3,3'-diaminobenzidine according to the above 1 or 2, which is a step of reacting by adding a divalent sulfur compound after turbidity.
(3) The 3,3 ′ according to the above (2), wherein the copper sulfide removing step is a step of treating a solid component obtained in the treatment step with a divalent sulfur compound with an aqueous hydrochloric acid solution and removing a solid component not dissolved therein. -A process for producing diaminobenzidine.
(6) A divalent sulfur compound is brought into contact with a reaction mixture containing 3,3′-diaminobenzidine obtained by reacting 3,3′-dichlorobenzidine and ammonia in the presence of a copper catalyst, and the resulting solid component is removed. Filtration and treatment of the obtained wet solid with an aqueous hydrochloric acid solution to remove solid components that do not dissolve, and then neutralizing the liquid phase with a basic compound to precipitate and recover 3,3′-diaminobenzidine. A process for producing 3,3'-diaminobenzidine.
(7) The method for producing 3,3'-diaminobenzidine according to any one of (1) to (6) above, wherein the divalent sulfur compound is selected from sodium sulfide, potassium sulfide, ammonium sulfide and hydrogen sulfide.
(8) The method for producing 3,3′-diaminobenzidine according to the above item 6 or 7, wherein the basic compound is aqueous ammonia.
(9) Crude 3,3'-diaminobenzidine obtained by reacting 3,3'-dichlorobenzidine with ammonia in the presence of a copper catalyst is treated with a divalent sulfur compound, and the resulting copper sulfide is treated with 3,3 Separation and removal of '-diaminobenzidine and copper sulfide due to differences in solubility in hydrochloric acid aqueous solution, neutralize 3,3'-diaminobenzidine hydrochloride aqueous solution with a basic compound to precipitate and recover 3,3'-diaminobenzidine. A method for purifying 3,3′-diaminobenzidine.
[0013]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
The method of the present invention is characterized in that crude 3,3'-diaminobenzidine obtained by reacting 3,3'-dichlorobenzidine with ammonia in the presence of a copper catalyst is treated with a divalent sulfur compound. And By treating with a divalent sulfur compound, the copper component present in the reaction system is converted into insoluble copper sulfide, and separation from 3,3′-diaminobenzidine is easily performed.
Further, insoluble copper sulfide and 3,3′-diaminobenzidine generated by the treatment of the divalent sulfur compound can be separated from each other by utilizing the difference in their solubility in aqueous hydrochloric acid. Specifically, a divalent sulfur compound is brought into contact with crude 3,3′-diaminobenzidine obtained by reacting 3,3′-dichlorobenzidine with ammonia in the presence of a copper catalyst, and a wet solid removed by filtration. Is treated with an aqueous hydrochloric acid solution to remove solids that do not dissolve, and then the liquid phase is neutralized with a basic compound to obtain a precipitate.The precipitate is washed with water and dried to substantially contain a copper component. 3,3'-dichlorobenzidine not obtained can be obtained.
[0014]
The crude 3,3′-diaminobenzidine used in the present invention is a reaction solution obtained by a method of reacting 3,3′-dichlorobenzidine and ammonia in the presence of a copper-based catalyst, or a reaction solution obtained by the method. Is a state in which a solid component containing 3,3′-diaminobenzidine is separated by solid-liquid separation (filtration or the like), and a state in which this solid component is suspended in water or the like.
[0015]
The method of reacting 3,3′-dichlorobenzidine and ammonia in the presence of a copper-based catalyst can be performed according to a known method.
As the 3,3'-dichlorobenzidine used as a raw material for this reaction, a commercially available 3,3'-dichlorobenzidine dihydrochloride in a water-containing state can be used. Further, it can also be produced by a known method such as a method of transferring o-chloronitrobenzene to benzidine.
Further, 3,3′-dichlorobenzidine may have a substituent on a benzene ring that does not react with ammonia.
[0016]
The conditions for synthesizing 3,3'-diaminobenzidine from 3,3'-dichlorobenzidine are as follows: 3,3'-dichlorobenzidine dihydrochloride hydrate and ammonia are mixed together with a copper catalyst (copper compound) in a pressure vessel. Then, the reaction is performed at a predetermined temperature for a predetermined time.
[0017]
As ammonia, either a liquefied gas or an aqueous solution can be used. The amount of ammonia to be used is not particularly limited, but it may be used at least twice as much as 3,3'-dichlorobenzidine as a raw material, and usually used 10 to 1,000 times. Industrially, it is preferable to use 20 to 100 times mol. If the amount of ammonia is small, the reaction rate is low, and if the amount is large, the productivity is low, which is not industrially advantageous.
[0018]
Further, as the copper compound, cuprous chloride, cupric chloride, copper sulfate, copper oxide, metallic copper, copper hydroxide, or the like can be used, or a combination thereof may be used. Although the amount of the copper compound used is not particularly limited, it can be used in an amount of 0.001 to 1.0 times mol of 3,3′-dichlorobenzidine. When the amount of the catalyst used is small, the reaction rate is low, and when the amount used is large, the yield decreases.
[0019]
The reaction can be carried out at a temperature of 100 to 350 ° C, preferably 150 to 250 ° C. If the temperature is lower than 150 ° C., the reaction rate is insufficient and productivity is poor. If the temperature exceeds 250 ° C., by-products such as 3-aminobenzidine and benzidine increase.
[0020]
The reaction pressure may be from 0.2 to 30 MPa, depending on the amount of ammonia used and the solubility of ammonia in the solvent used for the reaction. Usually, it is performed at 1 to 10 MPa.
[0021]
This reaction can be performed while adding ammonia consumed as the reaction proceeds. Ammonia can be added by a method in which the ammonia is introduced into the reactor in a pressurized state.
[0022]
In this reaction, a solvent can also be used. When using ammonia as an aqueous solution, water alone may be used, but a solvent that does not react with ammonia or diaminobenzidine can be used. Specifically, hydrocarbon compounds such as benzene and toluene, and alcohol compounds such as methanol, ethanol and propylene glycol can be used.
[0023]
The divalent sulfur compound used in the present invention can be used without particular limitation as long as it is a sulfur compound that reacts with a copper compound to form copper sulfide. Specifically, sodium disulfide, Sulfur compounds such as potassium sulfide, ammonium sulfide, and hydrogen sulfide can be used. The use amount of these sulfur compounds is not particularly limited, but it is preferable to use sulfur compounds in an amount equal to or more than the copper compound used in the reaction, and it is more preferable to use two or more equivalents.
[0024]
As a method of bringing the sulfur compound into contact with the reaction solution, a method of directly adding the sulfur compound to the reaction solution after the reaction is completed, and a method of filtering a reaction mixture containing 3,3′-diaminobenzidine (solid component) from the reaction solution after the reaction is completed. ) And then reacting with a sulfur compound can be used.
[0025]
In the method of adding to the reaction solution after the completion of the reaction, a divalent sulfur compound is added to the reaction solution after the completion of the reaction, copper sulfide is precipitated together with 3,3′-diaminobenzidine, and the obtained wet solid is taken out. An aqueous solution of 3,3′-diaminobenzidine hydrochloride and a solid of copper sulfide are separated by contact treatment with an aqueous hydrochloric acid solution, and 3,3′-diaminobenzidine hydrochloride is neutralized to neutralize 3,3′-diaminobenzidine hydrochloride. Obtain diaminobenzidine.
[0026]
In the method of taking out a reaction mixture containing 3,3′-diaminobenzidine as a main component from the reaction solution and then contacting the reaction mixture with a sulfur compound, the reaction solution after completion of the reaction is filtered from the reaction solution to obtain 3,3′-diaminobenzidine by filtration or the like. The reaction mixture containing as a main component is taken out as a wet solid, suspended in water, then charged with a divalent sulfur compound and reacted, and then contacted with an aqueous hydrochloric acid solution to give 3,3′-diaminobenzidine hydrochloride. Separate the aqueous salt solution and the solid copper sulfide.
[0027]
Among these, the method of adding a simpler sulfur compound to the reaction solution after the reaction is preferable.
[0028]
The temperature for the treatment with the sulfur compound is not particularly limited, but is preferably from the melting point to the boiling point of the solvent used, and more preferably from 20 to 150 ° C. In addition, although the contact treatment time with the sulfur compound depends on the amount of the sulfur compound used, the reaction is usually completed in 1 to 10 hours.
[0029]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described specifically with reference to Examples, but the present invention is not limited to the following Examples.
[0030]
Example 1
In a 100 ml SUS autoclave equipped with a magnetic stirrer, 8.6 g (0.024) of 3,3′-dichlorobenzidine dihydrochloride (trade name “diclozine-H”, manufactured by Wakayama Seika Kogyo Co., Ltd., water content 91 wt%) Mol), CuCl 0.25 g (0.0025 mol), Cu 0.06 g (0.0009 mol), ammonium chloride 0.06 g (0.0011 mol), 28% aqueous ammonia 36.6 g (0.603 mol) After closing the autoclave, the air in the space was replaced with nitrogen by repeating nitrogen pressurization and release three times.
5.25 g (0.309 mol) of liquefied ammonia was injected into the autoclave and reacted at 200 ° C. for 18 hours. The reaction pressure was 3.2 MPa.
After the completion of the reaction, the mixture was cooled to room temperature, the autoclave was opened, 0.54 g (0.0069 mol) of sodium sulfide was added, and the mixture was heated at 120 ° C. for 1 hour. After cooling the autoclave, the precipitate was removed from the reaction mixture by filtration, and about 100 g of water was added to form a slurry. Concentrated hydrochloric acid was added to the slurry until the pH in the reactor became 2. Most of the precipitate dissolved to give a dark purple solution, but a part of the black precipitate remained dissolved. The precipitate was removed by filtration, and 28% aqueous ammonia was added to the filtrate until the pH reached 11. The resulting white purple precipitate was collected by filtration, washed with water and dried to obtain 3,3′-diaminobenzidine (dry matter weight 4.4 g, yield 86%). The content of copper in this dried product was 10 ppm or less.
[0031]
Example 2:
3,3'-Diaminobenzidine was obtained in the same manner as in Example 1 except that 0.47 g (0.0069 mol) of ammonium sulfide was used instead of sodium sulfide (4.3 g of dried product, yield of 84). %). The content of copper in this dried product was 10 ppm or less.
[0032]
Example 3
A reaction between 3,3′-dichlorobenzidine and ammonia was performed in the same manner as in Example 1. After completion of the reaction, the reaction mixture was cooled to room temperature, and the autoclave was opened. The precipitate was removed from the reaction mixture by filtration, and about 100 g of water was added to obtain a slurry. 0.54 g (0.0069 mol) of sodium sulfide was added to this slurry, and heat treatment was performed at 100 ° C. for 1 hour. After cooling the reactor, concentrated hydrochloric acid was added until the pH in the reactor was 2. Most of the precipitate dissolved to give a dark purple solution, but a part of the black precipitate remained dissolved. The precipitate was removed by filtration, and 28% aqueous ammonia was added to the filtrate until the pH reached 11. The resulting white purple precipitate was collected by filtration, washed with water and dried to obtain 3,3′-diaminobenzidine (dry matter weight 4.0 g, yield 78%). The content of copper in this dried product was 10 ppm or less.
[0033]
Comparative Example 1:
3,3′-Diaminobenzidine was obtained in the same manner as in Example 1 except that sodium sulfide was not used and heat treatment at 120 ° C. was not performed (dry matter weight 3.4 g, yield 66%). . The content of copper in this dried product was 0.2%.
[0034]
【The invention's effect】
According to the method of the present invention, a simple method of treating crude 3,3′-diaminobenzidine obtained by reacting 3,3′-dichlorobenzidine and ammonia in the presence of a copper-based catalyst with a divalent sulfur compound. 3,3'-diaminobenzidine having a very low copper content can be obtained.