JP2004160814A - バリア性フィルムおよびその製造法 - Google Patents

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茂樹 松井
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Abstract

【課題】膜厚を所定の厚さに保ちつつ、酸素ガスや水蒸気ガス等に対する高いバリア性を有し、さらに、透明性をもち印刷加工、ラミネート加工、製袋加工等の後加工適性に優れ、かつ、電子レンジ適性も有するバリア性フィルムおよびその製造法を提供することを目的とする。
【解決手段】基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜がSi原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなっており、更に、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収を有するガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜を有し、前記有機蒸着膜は酸無水物とその加水分解物との混合物からなる膜、および、酸無水物の加水分解からなる膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルムに関する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バリア性フィルムおよびその製造法に関し、更に詳しくは、ガスバリア性に優れた酸化珪素膜を有し、例えば、飲食品や医薬品等の包装材料や電子デバイス等のパッケージ材料として主に用いられるバリア性フィルムおよびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガスバリア性フィルムは、主に、内容物の品質を変化させる原因となる酸素や水蒸気等の影響を防ぐために、食品や医薬品等の包装材料として用いられたり、更に、液晶表示パネルやEL表示パネル等に形成されている素子が、酸素や水蒸気に触れて性能劣化するのを避けるために、電子デバイス等のパッケージ材料として用いられている。
また、近年においては、従来ガラス等を用いていた部分の代替えとし、フレキシブル性や耐衝撃性を持たせる等の理由から、ガスバリア性フィルムが用いられる場合もある。
【0003】
このようなガスバリア性フ7ルムは、プラスチックフィルムを基材として、その片面または両面にガスバリア層を形成する構成をとるのが一般的である。
そして、当該ガスバリア性フィルムは、化学気相成長法(CVD法)、物理気相成長法(PVD法)、スパッタリング法等の様々な方法で形成されているが、何れの方法を用いた場合であっても、従来のガスバリア性フィルムは、2cc/m/day程度の酸素透過率(OTR)や、2g/m/day程度の水蒸気透過率(WVTR)を有するにすぎず、より高いガスバリア性を必要とする用途に使用される場合には、未だ不十分なものであった。
【0004】
ガスバリア性を有する膜を高分子樹脂基材上に乾式成膜する方法として、プラズマCVD法等の乾式成膜法を用いて酸化珪素膜(シリカ膜)や酸化アルミニウム膜(アルミナ膜)を形成する方法が知られている。
特に、プラズマCVD法は、高分子樹脂基材に熱的ダメージを与えることなく、ガスバリア性と屈曲性に優れた酸化珪素膜や酸化アルミニウム膜を形成できるという利点がある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
また、通常、ガスバリア膜は、蒸着バリア層の膜厚増加に伴いガスバリア性は向上する。
しかしなが、近年においては、膜厚が増して膜の内部応力が緩和するのに伴い、バリア膜にクラックが発生し、却ってガス透過率が大きくなってしまうことを指摘している(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−176326号公報(請求項)
【特許文献2】
特開平11−309815号公報(請求項)
【特許文献3】
特開2000−6301号公報(請求項)
【非特許文献1】
Society of Vacuum Cotersにおいて、J.T.Feltsら〔34th Annual Technical Conference Proceedings(1991),p.99−104〕
【非特許文献2】
J.E.Klemberg−Sapiehaら〔36th Annual Technical Conference Proceedings(1993),p.445−449〕
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしなが、基材上に物理気相成長法や化学気相成長法等を用いて酸化アルミニウム、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を設けた構成からなるバリア性フィルムにおいて、その無機酸化物の蒸着膜は、表面が不活性であるため、蒸着膜に直接印刷を行うと、蒸着膜に対するインキの密着性が低く、印刷模様の欠け、脱落等が発生するという問題がある。
また、印刷後に、印刷模様がある面に他の基材等をラミネート加工して包装用積層材を製造しても、得られた包装用積層材は層間剥離等を生じやすく、実用に供し得ないという問題がある。
また、印刷加工適性をもたせるために、例えば、ポリエステル系樹脂等をビヒクルの主成分とするプライマー剤を調製し、これを無機酸化物の蒸着膜上に予め塗布してプライマー層を設けることも可能であるが、無機酸化物の蒸着膜は非可撓性のガラス質であり、衝撃やテンション等に対して弱い脆い膜であり、プライマー剤の塗布加工において、無機酸化物の蒸着膜にクラックが発生し、バリア性の低下を来たすという問題がある。
さらに、上述の無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性フィルムにおいては、成膜直後の無機酸化物の蒸着膜は、十分なバリア性を有するにもかかわらず、真空チャンバー内において無機酸化物の蒸着膜がガイドロール等のガイド部材に接触するために、傷やクラックが発生し、酸素ガスおよび水蒸気ガス等に対するバリア性が低下するという問題もある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、膜厚を所定の厚さに保ちつつ、酸素ガスや水蒸気ガス等に対する高いバリア性を有し、さらに、透明性をもち印刷加工、ラミネート加工、製袋加工等の後加工適性に優れ、かつ、電子レンジ適性も有するバリア性フィルムと、充填包装適性、保存適性および後加工適性に優れる積層材と、上記のバリアフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1および請求項2に記載するように、基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜がSi原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなっており、更に、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収を有するガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜を有し、前記有機蒸着膜は酸無水物とその加水分解物との混合物からなる膜、および、酸無水物の加水分解からなる膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム、あるいは、基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜がSi原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなっており、更に、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収を有するガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜と該有機蒸着膜上に設けられたプライマ−層を有し、前記有機蒸着膜はポリエチレン膜および酸無水物膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルムを提供する。
【0010】
この発明によれば、ガスバリア膜として作用する酸化珪素膜の成分割合とIR吸収とからなる特性を、上記の範囲内に制御したことによって、極めてガスバリア性に優れたガスバリア性フィルムとすることができる。
こうした特性を有する酸化珪素膜は、緻密で不純物の少ないSiO2 ライクな膜となる。
また、上記の発明にかかるガスバリア性フィルムにおいて、前記酸化珪素膜は、屈折率が1.45〜1.48であることが好ましい。
ガスバリア膜として作用する酸化珪素膜の屈折率を、上記の範囲内に制御することによって、ガスバリア性をより一層向上させることができるからである。
更に、上記の発明では、有機蒸着膜が、ガスバリア性に優れた有機珪素膜からなるガスバリア層を保護し、更にまた、有機蒸着膜あるいはプライマー層が印刷インキに対する高い密着性を発現する作用をなし、このバリア性フィルムを用いた積層材は、上記の各特性に加えヒートシール性樹脂層による後加工適性が付与されるものである。
【0011】
また、本発明は、請求項4および請求項5に記載するように、基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜の表面に形成されるグレイン間の距離が5〜40nmであるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜を有し、前記有機蒸着膜は酸無水物とその加水分解物との混合物からなる膜、および、酸無水物の加水分解からなる膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム、あるいは、基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜の表面に形成されるグレイン間の距離が5〜40nmであるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜と該有機蒸着膜上に設けられたプライマ−層を有し、前記有機蒸着膜はポリエチレン膜および酸無水物膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルムを提供する。
【0012】
上記の発明によれば、ガスバリア膜として作用する蒸着膜の表面に形成されているグレイン間の距離を上記の範囲内に制御したことによって、ガスの透過できる領域を小さくすることができ、極めてガスバリア性に優れたガスバリア性フィルムとすることができる。
また、上記の発明では、有機蒸着膜が、ガスバリア性に優れた有機珪素膜からなるガスバリア層を保護し、更にまた、有機蒸着膜あるいはプライマー層が印刷インキに対する高い密着性を発現する作用をなし、このバリア性フィルムを用いた積層材は、上記の各特性に加えヒートシール性樹脂層による後加工適性が付与されるものである。
【0013】
また、本発明は、請求項6および請求項7に記載するように、基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜は電子スピン共鳴法による測定によって観察されるE’センタ−の密度が5×1015spins/cm以上であるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜を有 し、前記有機蒸着膜は酸無水物とその加水分解物との混合物からなる膜、および、酸無水物の加水分解からなる膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム、あるいは、基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜は電子スピン共鳴法による測定によって観察されるE’センタ−の密度が5×1015spins/cm以上であるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜と該 有機蒸着膜上に設けられたプライマ−層を有し、前記有機蒸着膜はポリエチレン膜および酸無水物膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルムを提供する。
【0014】
上記の発明によれば、E’センター、つまり不対電子をもつ珪素原子を有する酸化珪素膜は、膜が密に歪んだ構造をとっているため、極めてガスバリア性に優れたガスバリア性フィルムとすることができる。
また、上記の発明では、有機蒸着膜が、ガスバリア性に優れた有機珪素膜からなるガスバリア層を保護し、更にまた、有機蒸着膜あるいはプライマー層が印刷インキに対する高い密着性を発現する作用をなし、このバリア性フィルムを用いた積層材は、上記の各特性に加えヒートシール性樹脂層による後加工適性が付与されるものである。
上記の発明においては、前記のE’センターの密度が5×1015spins/cm以上であることが好ましい。
また、上記の発明において、E’センターの密度が5×1015spins/cm以上である酸化珪素膜は、確実に膜の構造が密にゆがんだ構造をとっているといえ、この構造を有するガスバリア性フィルムはその性能が非常に優れているからである。
【0015】
更に、本発明は、請求項8および請求項9に記載するように、基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜は2341±4cm−1にCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収のピ−クがあるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜を有し、前記有機蒸着膜は酸無水物とその加水分解物との混合物からなる膜、および、酸無水物の加水分解からなる膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム、あるいは、基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜は2341±4cm−1にCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収のピ−クがあるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜と該 有機蒸着膜上に設けられたプライマ −層を有し、前記有機蒸着膜はポリエチレン膜および酸無水物膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルムを提供する。
【0016】
上記の発明によれば、ガスバリア膜として作用する酸化珪素膜のIR吸収からなる特性を上記のように制御したことにより、極めてガスバリア性に優れたガスバリア性フィルムとすることができる。
また、上記の発明では、有機蒸着膜が、ガスバリア性に優れた有機珪素膜からなるガスバリア層を保護し、更にまた、有機蒸着膜あるいはプライマー層が印刷インキに対する高い密着性を発現する作用をなし、このバリア性フィルムを用いた積層材は、上記の各特性に加えヒートシール性樹脂層による後加工適性が付与されるものである。
【0017】
なお、本発明において、上記の請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載の発明においては、酸素透過率が0.5cc/m/day以下で、水蒸気透過率が0.5g/m/day以下であることが好ましい。
なお、本発明において、酸素透過率および水蒸気透過率を上記の範囲内とすることにより、内容物の品質を変化させる原因となる酸素と水蒸気を殆ど透過させないので、高いガスバリア性が要求される用途に好ましく用いることができるからである。
更に、上記の請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載の発明においては、前記の有機珪素膜の厚さが、5〜300nmの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、5〜300nmという極めて薄い蒸着膜を形成した場合であっても、優れたガスバリア性を発揮することができ、有機珪素膜にクラックが入りづらくすることができるからである。
さらに、上記範囲の厚さで蒸着膜を形成したガスバリア性フィルムは透明性や外観等を損なうことがなく、またフィルムのカールの増大を抑制することもできるため生産性においても好ましいからである。
【0018】
更に、本発明においては、請求項11に記載するように、基材上に、少なくとも有機珪素化合物ガスと酸素原子を含むガスを原料ガスとして用い、真空チャンバ−内でプラズマ化学気相成長法により酸化珪素膜を成膜する工程であって、前記有機珪素化合物ガスの成分が炭素−珪素結合を分子内に有さない化合物からなり、かつ、前記有機珪素化合物ガスと酸素原子を含むガスとの流量比を、前記有機珪素化合物ガスを1とする場合、酸素原子を含むガス3〜50の範囲内として酸化珪素膜からなるガスバリア層を成膜し、次いで、上記のガスバリア層が、真空チャンバ−内のガイド部材に接触する前に、蒸着源として、酸無水物と該酸無水物1モルに対し0.001〜0.5モルの範囲の触媒とを用いて、上記のガスバリア層の上に、有機蒸着膜を蒸着により形成することを特徴とするバリア性フィルムの製造法を提供する。
【0019】
更に、本発明においては、請求項12に記載するように、上記のバリア性フィルムの製造法において、酸化珪素膜からなるガスバリア層を成膜した後、上記のガスバリア層が、真空チャンバ−内のガイド部材に接触する前に、蒸着源として、ポリエチレン、および、酸無水物のいずれかを用いて、上記のガスバリア層の上に、有機蒸着膜を蒸着により形成することを特徴とするバリア性フィルムの製造法を提供する。
また、本発明においては、請求項13に記載するように、上記のバリア性フィルムの製造法において、有機蒸着膜を蒸着により形成した後、酸無水物の加水分解促進処理を行うことを特徴とするバリア性フィルムの製造法を提供する。
更にまた、本発明においては、請求項14に記載するように、上記のバリア性フィルムの製造法において、有機蒸着膜を蒸着により形成した後、該有機蒸着膜の上に、プライマ−層を形成することを特徴とするバリア性フィルムの製造法を提供する。
【0020】
上記のバリア性フィルムの製造法において、上記で酸化珪素膜を形成した後、さらに加熱処理する製造方法を採用することにより、よりガスバリア性の良好なガスバリア性フィルムとすることができる。
さらに、本発明においては、上記のいずれかの請求項に記載のガスバリア性フィルムにおける少なくとも一方側の表面にヒートシール性樹脂層を設けることにより、包装用材料等とする積層材を提供することができる。
このような積層材を用いると、上記積層材のヒートシール性樹脂層を熱融着して製袋または製函することにより、種々の形態からなる包装容器を得ることができ、この包装容器はガスバリア性に優れいることから、食品や医薬品、さらには電子デバイス等の包装材料として好適に用いることができる。
【0021】
また、本発明においては、上記のいずれかの請求項に記載のガスバリア性フィルムにおける少なくとも一方側の表面に導電性層が形成する積層材を提供することができる。
このような積層材を用いると、上記導電性層上に画像表示層を形成することにより画像表示媒体とすることができる。
この画像表示媒体は、基材として用いられる基材がガスバリア性および可撓性に優れたものであるので、耐候性、耐衝撃性に優れたものとすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のバリア性フィルムおよびその製造法について図面を用いて具体的に説明する。
【0023】
図1は、本発明のバリア性フィルムについてその層構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本発明のバリア性フィルム1は、基材2と、当該基材2の両面または片面に形成された酸化珪素膜3からなるガスバリア層4と、有機蒸着膜5とから構成されている。
以下、本発明について、基材、酸化珪素膜からなるガスバリア層、有機蒸着膜、さらには、本発明のバリア性フィルムの製造法に分けて、それぞれ説明する。
【0024】
A.基材
まず、本発明のバリア性フィルムを構成する基材について説明する。
本発明のバリア性フィルムにおける基材は、上述したバリア性を有する酸化珪素膜からなるガスバリア層を保持することができるフィルムであれば特に限定されるものではなく、いかなるフィルムをも用いることができる。
【0025】
具体的には、下記の樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。
・エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、
・環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、
・ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、
・ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、
・ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、
・ポリイミド(PI)樹脂、
・ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、
・ポリサルホン(PS)樹脂、
・ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、
・ポリカーボネート(PC)樹脂、
・ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、
・ポリアリレート(PAR)樹脂、
・エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂、
・ポリ塩化ビニル系樹脂、
・ポリスチレン系樹脂、
・ポリ(メタ)アクリル系樹脂、
・その他等の樹脂を用いることができる。
【0026】
また、上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物によりなる樹脂組成物や、前記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂およびこれらの混合物等を用いることも可能である。
さらに、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものを基材フィルムとして用いることも可能である。
前記に挙げた樹脂等を用いた本発明の基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0027】
本発明の基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。
また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。
この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0028】
また、本発明の基材においては、蒸着膜を形成する前にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理などの表面処理を行ってもよい。
さらに、本発明の基材の表面には、蒸着膜との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。
このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。
そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。
上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0029】
基材は、ロール状に巻き上げられた長尺品が便利である。
基材の厚さは、得られるバリア性フィルムの用途によって異なるので一概には規定できないが、一般的な包装材料やパッケージ材料用の基材として用いる場合には、3〜188μmが好ましい。
【0030】
B.酸化珪素膜からなるガスバリア層
本発明は、この酸化珪素膜からなるガスバリア層にその特徴の一つを有するものであり、その特性により4つの実施態様に分けることができる。以下、それぞれ説明する。
【0031】
1.第1実施態様
本実施態様における酸化珪素膜からなるガスバリア層は、好ましくは、プラズマCVD法によって形成された酸化珪素膜であり、この酸化珪素膜は、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなり、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収があるガスバリア層からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明の特徴は、ガスバリア層として作用する酸化珪素膜の成分割合とIR吸収とからなる各特性を、上記の範囲内に制御したことによって、極めて優れたガスバリア性を発揮させたことにある。
【0032】
上記酸化珪素膜は、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなり、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収を有するガスバリア層からなるように形成される。
さらに、このとき、1.45〜1.48の屈折率を有するように形成することがより好ましい。
このような特性の酸化珪素膜を備えるガスバリア性フィルムは、極めて優れたガスバリア性を発揮する。
【0033】
Si、O、Cの各成分割合を、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下にするには、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節して上記の範囲内に制御することができる。
特に、Cの混入を抑制するように制御することが好ましい。
例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整することによって、SiOライクな膜にしてCの混入を抑制したり、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力を大きくすることによって、Si−C結合の切断を容易にして膜中へのCの混入を抑制することができる。
なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。
この範囲の成分組成を有する酸化珪素膜は、Si−C結合が少ないので、SiOライクな均質膜となり、極めて優れたガスバリア性を発揮する。
こうした成分割合は、Si、O、Cの各成分を定量的に測定できる装置であればよく、代表的な測定装置としては、ESCA(Electron spectroscopy for chemical analysis)や、RBS(Rutherford back scattering)や、オージェ電子分光法によって測定された結果によって評価される。
【0034】
Oの成分割合が170未満となる場合は、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、結果的にCの成分割合が大きくなる。
その結果、膜中に多くのSi−C結合を有し、SiOライクな均質膜ではなくなって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。
なお、O原子数は化学量論的に200を超えにくい。
また、Cの成分割合が30を超える場合は、Oの成分割合が170未満となる場合と同じ条件、すなわち(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、膜中にSi−C結合がそのまま残る。
その結果、SiOライクな均質膜ではなくなって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。
一方、Cの成分割合の下限は特に規定しないが、実際の成膜工程上の下限値として10に規定することができる。
なお、Cの成分割合を10未満とすることは現実問題として容易ではないが、Cの成分割合が10未満であってもよく、SiOライクな均質膜が得られる。
【0035】
IR測定において、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づく吸収があるようにするには、酸化珪素膜をできるだけSiOライクな均質膜とするように、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節して上記の範囲内に制御することができる。
例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整したり、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力を大きくしてSi−C結合の切断を容易にすることによって、SiOライクな膜とすることができる。
なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。
こうしたIR吸収が現れる酸化珪素膜は、SiOライクな均質膜特有のSi−O結合を有するので、極めて優れたガスバリア性を発揮する。
IR吸収は、IR測定用の赤外分光光度計で測定して評価される。
好ましくは、赤外分光光度計にATR(多重反射)測定装置を取り付けて赤外吸収スペクトルを測定する。
このとき、プリズムにはゲルマニウム結晶を用い、入射角45度で測定することが好ましい。
【0036】
この範囲にIR吸収がない場合は、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、結果的にCの成分割合が大きくなる。
その結果、膜中にSi−C結合を有することとなって、SiOライクな均質膜特有のSi−O結合が相対的に少なくなり、上記範囲内にIR吸収が現れない。
そうして得られた酸化珪素膜は、酸素透過率と水蒸気透過率が大きく、十分なガスバリア性を発揮することができない。
【0037】
酸化珪素膜の屈折率を1.45〜1.48にするには、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節することによって上記範囲内に制御することができる。
例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整して制御することができる。
なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。この範囲の屈折率を有する酸化珪素膜は、緻密で不純物の少ないSiOライクな膜となり、極めて優れたガスバリア性を発揮する。
こうした屈折率は、光学分光器によって測定された透過率と反射率とを測定し、光学干渉法を用いて633nmでの屈折率で評価したものである。
【0038】
屈折率が1.45未満となる場合は、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比が上記の範囲外となる場合や、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さく、低密度で疎な酸化珪素膜が得られる場合にしばしば見られ、成膜された酸化珪素膜が疎になって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。
一方、屈折率が1.48を超える場合は、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比が上記の範囲外となる場合や、C(炭素)等の不純物質が混入した場合にしばしば見られ、成膜された酸化珪素膜が疎になって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。
【0039】
上述した各特性を有する酸化珪素膜を、5〜300nmの厚さという薄い厚さで形成したガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性を発揮することができ、酸化珪素膜にクラックが入りづらい。
酸化珪素膜の厚さが5nm未満の場合は、酸化珪素膜が基材の全面を覆うことができないことがあり、ガスバリア性を向上させることができない。
一方、酸化珪素膜の厚さが300nmを超えると、クラックが入りやくすなること、透明性や外観が低下すること、フィルムのカールが増大すること、さらに、量産し難く生産性が低下してコストが増大すること、等の不具合が起こり易くなる。
【0040】
また、本発明のバリア性フィルムを包装材料等、フレキシブル性が要求される用途として用いる場合には、形成される酸化珪素膜の機械的特性や用途を勘案し、その厚さを5〜30nmとすることがより好ましい。
酸化珪素膜の厚さを5〜30nmとすることによって、軟包装材料としてのフレキシブル性を持たせることができ、フィルムを曲げた際のクラックの発生を防ぐことができる。
また、本発明のバリア性フィルムが比較的薄さを要求されない用途、例えば、フィルム液晶ディスプレイ用ガスバリア膜、フィルム有機ELディスプレイ用ガスバリア膜またはフィルム太陽電池用ガスバリア膜等の用途に用いられる場合には、ガスバリア性が優先して要求されるので、前述の5〜30nmの範囲よりも厚めにすることが好ましく、その厚さを30〜200nmとすることが生産性等も考慮した場合により好ましい。
【0041】
本発明のバリア性フィルムを上記の用途に用いることにより、同程度のガスバリア性を有する従来品よりもさらに薄膜化が可能となる。
【0042】
上記、本実施態様の酸化珪素膜は、上記の基材の片面または両面に、特に限定されるものではないが、プラズマCVD法によって形成されることが好ましい。プラズマCVD法は、一定圧力の原料ガスを放電させてプラズマ状態にし、そのプラズマ中で生成された活性粒子によって基材表面での化学反応を促進して形成する方法である。
このプラズマCVD法は、高分子樹脂に熱的ダメージが加わらない程度の低温(およそ−10〜200℃程度の範囲)で所望の材料を成膜でき、さらに原料ガスの種類・流量、成膜圧力、投入電力等によって得られる膜の種類や物性を制御できるという利点がある。
【0043】
酸化珪素膜は、プラズマCVD装置の反応室内に、有機珪素化合物ガスと酸素ガスとの混合ガスを所定の流量で供給すると共に、電極に直流電力または低周波から高周波の範囲内での一定周波数を持つ電力を印加してプラズマを発生させ、そのプラズマ中で有機珪素化合物ガスと、酸素原子を有するガス、中でも酸素ガスとが反応することによって基材上に形成される。
使用されるプラズマCVD装置のタイプは特に限定されず、種々のタイプのプラズマCVD装置を用いることができる。
通常は、長尺の高分子樹脂フィルムを基材として用い、それを搬送させながら連続的に酸化珪素膜を形成することができる連続成膜可能な装置が好ましく用いられる。
【0044】
なお、本実施態様において、酸化珪素膜は透明であるが、各種の用途に供するために、基材やその他積層材料のうち、透明性が劣る層を任意に積層させることは自由であり、最終製品として求められるガスバリア性フィルムの透明性およびその程度は、各種の用途によって異なる。
例えば、本実施態様の酸化珪素膜を用いたガスバリアフィルムを包装材料として用いる場合には、内容物を光線から保護するために、有色インキ等で印刷して遮光性を出してもかまわない。
その他帯電防止剤やフィラー等、ガスバリアフィルム全体の透明性を悪くする要因がある添加物を練り混んだ層を積層したり、透明性がない金属箔等を積層したりすることができる。
ただし、フィルム液晶ディスプレイ用ガスバリア膜、フィルム有機ELディスプレイ用ガスバリア膜またはフィルム太陽電池用ガスバリア膜等の用途に用いられる場合には、ガスバリアフィルム全体の透明性が要求されるので、本実施態様における酸化珪素膜の透明性による効果が大である。
【0045】
2.第2実施態様
次に、第2実施態様について説明する。本実施態様における酸化珪素膜3からなるガスバリア層4は、図2および図3に示すように、基材2の両面または片面に形成されており、当該酸化珪素膜3からなるガスバリア層4の表面に形成されているグレイン3a間の距離Lが5〜40nmであるところに特徴を有しているものである。
【0046】
グレイン3aの部分は、酸化珪素膜3からなるガスバリア層4の中でも結晶性が高い部分であり、ガスや水蒸気が透過し難くいという性質を有している。
したがって、グレイン間の距離Lを上記の範囲とすることにより、酸化珪素膜3からなるガスバリア層4においてガス等の透過できる領域(グレイン以外の部分)が小さくなるため、バリア性を向上することができる。
当該グレイン間の距離Lが上記の範囲、つまり、5〜40nmである場合には、良好なバリア性を有する蒸着膜とすることができ、グレイン間の距離Lの更に好ましい範囲は、10〜30nmである。
【0047】
ここで、酸化珪素膜3からなるガスバリア層4の表面に形成されているグレイン3aについて説明する。
グレインとは、蒸着膜の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観測することにより得られるAFM画像の断面を所定の高さで区切り、2値化した場合に島状になって現れる部分をいう。
つまり、酸化珪素膜3からなるガスバリア層4の表面には凹凸が形成されており、当該凹凸を分かりやすくするために原子間力顕微鏡を用いて観測、画像処理をし、当該処理により島状、つまり、凸部になった部分のことである。
【0048】
また、グレイン間の距離Lとは、グレインのピーク(凸部の頂点部分)から、当該グレインと隣接するグレインのピークまでの距離のことをいう。
当該グレイン間の距離Lにより、単位長さ当たりどの程度の大きさのグレイン(凸部)が存在するかが分かり、酸化珪素膜からなるガスバリア層表面に形成されているグレインの密度をも理解することができる。
【0049】
本実施態様における酸化珪素膜として用いることが可能な膜種としては、透明膜であっても、不透明膜であってもよく、特に限定するものではない。
【0050】
なお、本発明においては、酸化珪素膜からなるガスバリア層以外のものとしては、例えば、その蒸着膜を透明膜とする場合の膜種として、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、酸化珪素、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ,酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウム、等を挙げることができる。また、ITO膜なども本実施態様の蒸着膜として用いることができる。
【0051】
一方、不透明膜とする場合の膜種としては、アルミニウム、シリコン等を挙げることができ、また金属は、全て、本実施態様の蒸着膜として用いることができる。
【0052】
本実施態様においては、中でも酸化珪素膜からなるガスバリア層が製造の容易性および用途の汎用性等の観点から最も好ましい材料である。
なお、本実施態様の酸化珪素膜の膜厚に関しては、上記第1実施態様における酸化珪素膜の膜厚における記載と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0053】
上記蒸着膜の製造方法としては、プラズマCVD法、PVD法(イオンプレーティング法等)またはスパッタ法により成膜することが好ましい。
プラズマCVD法により本発明のガスバリアフィルムを製造した場合には、当該フィルムは全体として柔軟性を有しており、様々な用途に用いることができるからである。
【0054】
また、PVD法(例えば、イオンプレーティング法)により本発明のガスバリアフィルムを製造した場合には、生産性が高いため、本発明のガスバリアフィルムの利用価値を向上することができるからである。
さらにスパッタ法は、従来からガスバリア性の高い膜を形成するのに適しており、したがって本発明においても好適に用いることができる。
本発明においては、中でもプラズマCVD法により形成されることが好ましいものである。
【0055】
プラズマCVD法により作製した膜のグレイン間距離を測定するためには、後述するように、膜の表面をフッ化水素酸水溶液等を用いて、結晶性の高いグレイン部を露出させ、AFM等表面形状測定装置を用いてそれらの距離を測定することも可能である。
【0056】
また、本発明のバリア性フィルムを製造するためには、蒸着膜表面に形成されるグレイン間の距離を調整する必要があるが、上記のプラズマCVD法等により成膜する際には、蒸着膜形成材料を、エネルギーをもった状態で基材表面上に到達させ、構造的に安定で緻密な膜を形成するために投入電力を大きくすることが好ましい。
さらに、蒸着膜が形成される際に、基材表面で蒸着分子がマイグレーションをおこしやすい状態とすることによっても、構造的に安定で緻密な膜とすることが可能であるため、基板温度を高くすることも好ましい。
【0057】
3.第3実施態様
本実施態様における酸化珪素膜からなるガスバリア層は、酸化珪素膜であり、本実施態様においてはこの酸化珪素膜が、電子スピン共鳴法(ESR法)測定によって観測されるE’センターを有することを特徴とするものである。
【0058】
まず、E’センターについて説明する。
E’センターとは、不対電子のことであり、以下の[化1]は、E’センター、つまり不対電子をもつ珪素原子の構造式である。
【0059】
【化1】
Figure 2004160814
【0060】
通常の珪素原子は他の元素と共有結合するための腕を4本もっており、したがって、通常の酸化珪素膜中の珪素原子は隣接する4つの酸素原子と結合している。
しかしながら、E’センター、つまり不対電子をもつ珪素原子は、4本の腕のうち、3本の腕は酸素原子と結合しているが、4本目の腕は不対電子として存在し、酸素原子と共有結合を形成していない。
このため、E’センターをもつ珪素原子から構成される酸化珪素膜は、膜が密に歪んだ構造をとっている。
したがって、E’センターをもつ酸化珪素膜は通常の酸化珪素膜の結晶構造に比べて結晶が詰った状態となっており(珪素原子と酸素原子の結合が1つないため、その部分にも他の珪素原子や酸素原子が入り込めるため)、極めてガスバリア性に優れたガスバリア性フィルムとすることができる。
【0061】
ここで、前記電子スピン共鳴法(ESR法)測定によって観測されるE’センターの密度は、5×1015spins/cm以上であることが好ましい。
E’センターの密度が、5×1015spins/cm以上 である酸化珪素膜は、確実に膜の構造が密にゆがんだ構造をとっているからである。
また、E’センターの密度は、1×1018spins/cm以下であることが好ましい。
E’センターの密度が、大きくなるということは珪素原子と酸素原子との結合が少なくなるということであり、上記数値を越えると、結晶として膜を形成することが困難となるからである。
【0062】
次に、電子スピン共鳴法(ESR法)について説明する。
ラジカルや遷移金属イオンのように不対電子をもち、そのスピンによって磁性を示す物質を常磁性物質といい、不対電子をもたないものは反磁性物質といわれている。
ここで電子スピン共鳴法(ESR法)とは、常磁性物質の不対電子による吸収スペクトル法であり、当該電子スピン共鳴法(ESR法)により、その電子状態やそれが置かれている環境についての情報を得ることができる。
【0063】
本実施態様のバリア性フィルムを構成する酸化珪素膜を測定する際には、従来から知られている電子スピン共鳴法の何れをも用いることが可能であり、測定装置等を特に限定するものではない。
本実施態様の酸化珪素膜の膜厚に関しては、上記第1実施態様における酸化珪素膜の膜厚における記載と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0064】
上記本実施態様の酸化珪素膜は、上記第2実施態様と同様の理由により、プラズマCVD法、PVD法、またはスパッタ法により成膜することが好ましく、中でも、プラズマCVD法により形成されることが好ましい。
【0065】
また、本発明のバリア性フィルムを製造するためには、酸化ケイ素膜のE’センター密度を調整する必要があるが、上記のプラズマCVD法等により成膜する際には、プラズマ発生手段における投入電力を大きくすることが好ましい。
投入電力を大きくすることにより酸化ケイ素膜形成材料にエネルギーが与えられるため、原料となる分子を非常に活発な状態とすることができ、結合が切断される確率が増加し、E’センター(不対電子)を有する膜とすることができるからである。
【0066】
さらに、成膜する際の圧力を小さくすることも好ましい。成膜する際の圧力を小さくすることにより、酸化ケイ素膜を形成する原子(ケイ素原子と酸素原子)が衝突する確率を低下せしめることができ、よってE’センター(不対電子)を有する膜とすることができるからである。
なお、酸化珪素膜からなるガスバリア層およびガスバリア性フィルムの透明性については、上記第1実施態様で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0067】
4.第4実施態様
本実施態様における酸化珪素膜からなるガスバリア層は、好ましくはプラズマCVD法により形成された酸化珪素膜であり、本実施態様においては、この酸化珪素膜が、2341±4cm−1にCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収のピークがあることに特徴を有するものである。
【0068】
このように、上記IR吸収ピークを有していると、ガスバリア性が向上する理由については明確ではないが、以下のように考えることができる。
すなわち、IR吸収ピークを有しているということは、当該膜中にCO分子が物理吸着している、つまりガスの状態で取り込まれていると考えられる。
【0069】
従来からの酸化珪素膜は、珪素原子(Si)と酸素原子(O)との結合により構成されており、当該珪素原子と酸素原子との間には空隙が多数存在している。しかしながら、本実施態様の酸化珪素膜にあっては、前述のように、膜中にCO分子がガスの状態で取り込まれた状態、つまり、酸化珪素膜を構成する珪素原子と酸素原子との間の空隙にCO分子が詰った状態となっているため、従来からの酸化珪素膜よりも空隙が少なく、その結果、優れたガスバリア性を有していると考えられる。
【0070】
また、上記のように考えた場合には、本実施態様の酸化珪素膜中に物理吸着しているCO分子、つまり膜中に取り込まれているCO分子は、プラズマCVDにより当該酸化珪素膜を形成する際に、原料として用いられる有機珪素化合物が分解(酸化)されることにより形成されたものであると考えられる。
そして、前記CO分子は、酸化珪素膜を形成する際に同時に形成されるものであり、形成された酸化珪素膜に空隙が多い場合には、物理吸着は起こらず、ガスとしてそのまま膜中から空気中へと放出されてしまうことが当然に予想できる。
これに対し、本実施態様の酸化珪素膜においては、2341±4cm−1にCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収ピークを有していることから、当該酸化珪素膜の形成中に、いわゆる副生物として形成されたガス状のCO分子が物理吸着していることが明らかであると考えられ、このことは、本実施態様の酸化珪素膜はCO分子ガスが膜外へ発散することができないほど緻密な構造をとっていると考える根拠ともなり得るものである。
【0071】
なお、上述のように考えた場合、CO分子の伸縮振動に基づくIR吸収のピークは、通常2341cm−1に現れるが、IR測定を行う際の装置の分解能を考慮して、本発明においては2341±4cm−1とした。
【0072】
ここで、IR測定において、2341±4cm−1にCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収ピークがあるようにするには、プラズマCVDにより酸化珪素膜を形成する際のプラズマ発生手段における投入電力を大きくするとよい。
当該酸化珪素膜の原料として用いられている有機珪素化合物の分子内の結合切断を促進することができ、CO分子が形成されやすくなるからである。
また、原料となる有機珪素化合物と酸素の流量比を調整することによりCO分子を形成しやすくしてもよい。
【0073】
また、当該IR測定において、2341±4cm−1の部分に現れるCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収ピークの強度は、吸光度(Absorbance)で0.005〜0.3であることが好ましい。
上記範囲内の吸光度が確認できれば、酸化珪素膜中にガス状のCO分子が物理吸着していることが明らかだからである。
【0074】
本実施態様において、IR吸収は、IR測定用の赤外分光光度計で測定して評価される。
好ましくは、赤外分光光度計にATR(多重反射)測定装置を取り付けて赤外吸収スペクトルを測定する。このとき、プリズムにはゲルマニウム結晶を用い、入射角45度で測定することが好ましい。
【0075】
本発明の酸化珪素膜の膜厚に関しては、上記第1実施態様における酸化珪素膜の膜厚における記載と同様であるので、ここでの記載は省略する。
また、本実施態様の酸化珪素膜の製造方法は、第1実施態様の酸化珪素膜の製造方法と同様の方法により製造することができる。
更に、蒸着膜およびガスバリア性フィルムとした場合の透明性についても、第1実施態様で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0076】
5.各実施態様の組合せ
本発明においては、上記第1実施態様から第4実施態様に示される酸化珪素膜からなるガスバリア層の特性のうち、2種類以上の特性を共に有する酸化珪素膜からなるガスバリア層が用いられたバリア性フィルムであってもよい。
【0077】
C.酸化珪素膜からなるガスバリア層の製造法
本発明のバリア性フィルムは、上述したように上記4つの実施態様の酸化珪素膜からなるガスバリア層のいずれか、もしくはこれらの実施態様の複数の特徴を同時に有する酸化珪素膜からなるガスバリア層が基材上に形成されてなるものである。
この酸化珪素膜からなるガスバリア層の形成方法としては、上述したように種々の方法を用いることが可能である。
しかしながら、いずれの実施態様においても、プラズマCVD法により成膜されることが特に好ましい。
【0078】
このプラズマCVD法の好ましい成膜条件はとしては、まず成膜時の基材の温度が−20〜100℃の範囲内、好ましくは−10〜30℃の範囲内であることである。
次に、原料ガスとして有機珪素ガスおよび酸素原子を含むガスを用い、この有機珪素化合物ガスと酸素原子を含むガスとの流量比を、有機珪素化合物ガスを1とした場合に、3〜50の範囲内、好ましくは3〜10の範囲内とすることである。
そして、プラズマCVD装置のプラズマ発生手段における単位面積当たりの投入電力を大きく設定したり、マグネット等プラズマの閉じ込め空間を形成しその反応性を高めることにより、その効果がより高く得られる。
【0079】
また、本発明においては、上記原料ガスの内、有機珪素化合物ガスとしては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンを好ましく用いることができる他、テトラメチルジシロキサン、ノルマルメチルトリメトキシシラン等の従来公知のものを、一種または二種以上用いることができる。
【0080】
しかしながら、本発明においては、SiOライクな膜を形成する目的から、特に分子内に炭素−珪素結合を有さない有機珪素化合物が好適に用いられる。
具体的には、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリエトキシシラン7、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン等を挙げることができ、中でも分子内に炭素−珪素結合が存在しないテトラメトキシシラン(TMOS)およびテトラエトキシシラン(TEOS)を用いることが好ましい。
また、酸素原子を含むガスとしては、NO、酸素、CO、CO等を挙げることができるが、中でも酸素ガスが好適に用いられる。
【0081】
このように、原料ガスのうち有機珪素化合物ガスとして炭素−珪素結合を有さない有機化合物を用い、さらに上述したような開始時の基材の温度、原料ガスの流量比、さらにはプラズマ発生手段における投入電力を上述した範囲内とすることにより、よりガスバリア性の良好なバリア性フィルムが得られるのは、有機珪素化合物ガスの分解性が高くなり、膜の中に酸素原子が取り込まれやすくなり結果としてSiOライクな膜が形成されるためと考えられる。
【0082】
本発明においては、さらにこのようにして得られたガスバリアフィルムを、50℃〜200℃の範囲内で加熱処理を施すことが好ましい。
このように得られた酸化珪素膜をさらに加熱処理することにより、よりガスバリア性の良好な酸化珪素膜とすることができる。
本発明においては、この加熱処理を行う際に、加熱処理前に2341±4cm−1にCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収のピークを有する酸化珪素膜の場合(上記第4実施態様の場合)は、このCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収のピークが無くなるまで行うことが好ましい。
【0083】
このように、2341±4cm−1にCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収のピークが無くなるまで加熱するのは、膜に熱エネルギーを与えることで分子結合の振動が激しくなり、CO分子が透過できる空間が形成され、捕らえられていたCO分子が脱離し、その後CO分子が抜けた分だけ結合がよりタイトになり、いっそう緻密な膜が形成されるためと考えられ、よって、このように上記ピークが無くなるまで加熱すればさらにガスバリア性が向上するものと考えられる。
なお、ここで「ピークが無くなる」とは、分析装置の検出限界以下の状態となることを意味するものである。
このように上記ピークが無くなるまでの具体的な加熱時間としては、温度により大幅に異なるものではあるが、50℃以上であれば約30分以上の加熱が必要である、70℃以上であれば5分以上の加熱を必要とする。
【0084】
D.有機蒸着膜
本発明のバリア性フィルムを構成する有機蒸着膜は、酸化珪素膜からなるガスバリア層を保護し、かつ、インキ密着性、接着剤密接性等を向上させて印刷加工適性、積層加工適性等を付与するものである。
このような有機蒸着膜は、酸無水物とその加水分解物との混合物からなる薄膜(加水分解物が酸無水物と分子間で架橋反応を起こし、部分的に重合して生成した無水物も含む)、あるいは、酸無水物の加水分解物からなる薄膜(加水分解物が酸無水物と分子間で架橋反応を起こし、部分的に重合して生成した無水物も含む)である。
酸無水物としては、分子量が80〜1000の範囲内であり、かつ、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が500℃以下であり、さらに、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度で熱分解しない酸無水物を使用することができ、例えば、無水ピロメリト酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ピロメリト酸ジチオ無水物等を挙げることができ、これらの1種、あるいは、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0085】
有機蒸着膜を構成する酸無水物の加水分解物は、上述のような酸無水物の加水分解物であり、例えば、酸無水物がピロメリット酸二無水物のような酸二無水物である場合、加水分解物としては、酸一無水物およびカルボン酸(ピロメリット酸)の両方を含むものである。
有機蒸着膜が、酸無水物とその加水分解物との混合物からなる薄膜である場合、有機蒸着膜における酸無水物の含有量は99.9モル%以下、好ましくは、90モル%以下とする。
酸無水物の含有量が99.9モル%を超えると、有機蒸着膜のインキ密着性等が低下して、印刷加工適性、積層加工適性等が損なわれる。
このような有機蒸着膜の厚みは、30〜500Å、好ましくは、50〜300Å程度に設定することができる。
また、有機蒸着膜は、2層以上の多層構造であってもよい。
その場合、多層構造の有機蒸着膜のうち、少なくとも酸化珪素膜からなるガスバリア層に接触する有機蒸着膜は、上述の条件を備えるような酸無水物とその加水分解物との混合物からなる薄膜、あるいは、酸無水物の加水分解物からなる薄膜である。
【0086】
一方、本発明のバリア性フィルムを構成する有機蒸着膜は、酸化珪素膜からなるガスバリア層のバリア性を損なうことなくその酸化珪素膜からなるガスバリア層を保護するためのものである。
このような有機蒸着膜は、ポリエチレン膜、あるいは、酸無水物からなる薄膜である。
有機蒸着膜を構成するポリエチレンとしては、分子量が1000〜50000の範囲のポリエチレンを用いることができる。
また、有機蒸着膜を構成する酸無水物としては、上述と同様の酸無水物を挙げることができる。
このような有機蒸着膜の厚みは、30〜500Å、好ましくは、50〜300Å程度に設定することができる。
また、有機蒸着膜は、2層以上の多層構造であってもよい。
【0087】
E.プライマー層
本発明のバリア性フィルムは、図示しないが、上記で形成した有機蒸着膜の上に、プライマー層を設け、上記の有機蒸着膜に印刷加工適性、積層加工適性等をを付与することができるものである。
このプライマー層は、例えば、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオール系、ポリエステルウレタン系、ポリアミド系、ニトロセルロース系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリ尿素系、ポリイミド系、ポリエステルポリオール系、アクリルポリオール系等の1種または2種以上をビヒクルの主成分とするプライマー剤を用いて形成できるものであり、その厚みは、使用する材料により適宜設定することが好ましいが、例えば、10〜1000nm程度の範囲で設定することができる。
【0088】
F.バリア性フィルムの製造法
次に、本発明のバリア性フィルムの製造法の一実施形態について以下に説明する。
まず、図4に示すように、本発明においては、プラズマ化学気相成長装置11の巻き取りチャンバ−12内に配置された巻き出しロ−ル13から基材2を繰り出し、次いで、該基材2を、補助ロ−ル14を介して所定の速度で、プロセスチャンバ−15内の冷却・電極ドラム16(コ−ティングドラム)周面上に搬送する。
而して、本発明においては、ガス供給装置17、18および、原料揮発供給装置19等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマ−ガス、その他等を供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調整しなから原料供給ノズル20を通してプロセスチャンバ−15内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム16周面上に搬送された基材2の上に、グロ−放電プラズマ21によってプラズマを発生させ、これを照射して、酸化珪素膜を形成し、製膜化する。
本発明においては、その際に、冷却・電極ドラム16は、チャンバ−外に配置されている電源22から所定の電力が印加されており、また、冷却・電極ドラム16の近傍には、マグネット23を配置してプラズマの発生が促進されており、次いで、上記で酸化珪素膜を形成した基材2は、巻き取りチャンバ−12中に設置された有機蒸着膜を形成するための蒸着重合装置31に、ガイドロ−ル等を介することなく移送される。
なお、図中、24は、真空ポンプを表す。
【0089】
上記で酸化珪素膜を形成した基材2は、形成された酸化珪素膜がガイドロール等に接触する前に、蒸着重合装置31に移送され、そこで有機蒸着膜が形成されるものである。
而して、本発明において、図4に示すように、蒸発重合装置31は、内部に蒸発装置33(図示例では2個)と、この近傍にハロゲンランプやニクロム線等の加熱装置32を備え、蒸発装置33内の蒸発源34を蒸発させ、開閉可能なシャッター装置35を開くことにより、搬送される基材2の酸化珪素膜からなるガスバリア層の上に有機蒸着膜を成膜できるように構成されている。
然して、上記で基材2の上に、酸化珪素膜からなるガスバリア層、および、有機蒸着膜が形成された後、ガイドロ−ル36等を介して、巻取りロ−ル37等に巻き取られて゛本発明のバリア性フィルムを製造することができる。
【0090】
本発明では、有機蒸着膜を形成するための蒸発源として、酸無水物に触媒を添加したものを使用することができる。
触媒の添加量は、酸無水物1モルに対して0.001〜0.5モルの範囲である。
触媒添加量が0.001モル未満であると、触媒添加による酸無水物の加水分解が不充分となり、有機蒸着膜のインキ密着性、積層加工適性等の向上の効果が得られない。
触媒添加量が0.5モルを超えると、例えば、触媒としてアミンを使用した場合、徐々に有機蒸着膜中にポリアミック酸が生成され、酸化珪素膜が水蒸気ガスバリア性の低下を来たすので好ましくない。
尚、生成した加水分解物は、酸無水物と分子間で架橋反応を起こし、部分的に重合して分子量の大きな無水物を生じ、この無水物は有機蒸着膜の機械的強度をより大きくする作用をなす。
蒸発源としての酸無水物は、上述と同様の酸無水物を挙げることができる。
また、触媒としては、例えば、アミンを使用することができる。
触媒として使用するアミンは、分子量が80〜1000の範囲内であり、かつ、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が500℃以下であり、さらに、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度で熱分解しない化合物を使用することができ、例えば、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルサルファイド等を挙げることができる。
【0091】
上述の製造法により、本発明のバリア性フィルムが得られ、酸化珪素膜からなるガスバリア層は形成された後、真空チャンバー内のガイド部材(ガイドロール等)に接触する前に有機蒸着膜により保護されるので、傷やクラック等の発生が防止され、また、有機蒸着膜はインキ密着性、積層加工適性等に優れ、バリア性を損なうことなく良好な印刷加工適性、積層加工適性等をバリア性フィルムに付与する。
また、本発明では、有機蒸着膜を形成するための蒸発源として、酸無水物を単独で使用することもできる。
この場合、バリア性フィルムがプラズマ化学気相成長装置から取り出された後、有機蒸着膜に対して加水分解促進処理を施すことが必要である。
加水分解促進処理としては、高湿度下での保存等を挙げることができる。
この加水分解促進処理の程度は、有機蒸着膜における酸無水物のうち1.0モル%以上が加水分解されるものとする。
加水分解の程度が不充分であると、有機蒸着膜のインキ密着性、積層加工適性等が不充分となり、良好な印刷加工適性、積層加工適性等が得られない。
【0092】
上述のように蒸発源として酸無水物を単独で使用する製造法により、本発明のバリア性フィルムが得られ、酸化珪素膜からなるガスバリア層は形成された後、真空チャンバー内のガイド部材等に接触する前に有機蒸着膜により保護されるので、傷やクラック等の発生が防止される。
また、加水分解促進処理が施されて酸無水物の加水分解物を含有した有機蒸着膜は、インキ密着性に優れ、バリア性を損なうことなく良好な印刷加工適性、積層加工適性等をバリアフィルムに付与する。
【0093】
次に、本発明のバリア性フィルムの製造法の他の実施形態を以下に説明する。図示しないが、バリア性フィルムの製造では、基材上に酸化珪素膜からなるガスバリア層を形成する工程までは、上述のバリアフィルムの酸化珪素膜からなるガスバリア層の形成と同様である。
酸化珪素膜からなるガスバリア層が形成された基材は、更に、コーティングドラムの下流側に搬送され、酸化珪素膜からなるガスバリア層がガイドロール等に接触する前に、蒸着重合装置により酸化珪素膜からなるガスバリア層上に有機蒸着膜を形成する。
この蒸着重合装置による有機蒸着膜の形成では、蒸発源としてポリエチレンおよび酸無水物のいずれかが用いられる。
蒸発源として使用するポリエチレンは、分子量が500〜5000程度のものが好ましく、酸無水物は、上述と同様の酸無水物を挙げることができる。
【0094】
次いで、酸化珪素膜からなるガスバリア層と有機蒸着膜が形成された基材をプラズマ化学気相成長装置から取り出し、有機蒸着膜上にプライマー層を形成する。
このプライマー層は、例えば、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオール系、ポリエステルウレタン系、ポリアミド系、ニトロセルロース系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリ尿素系、ポリイミド系、ポリエステルポリオール系、アクリルポリオール系等の1種または2種以上の組み合わせをビヒクルの主成分とするプライマー剤を用いて、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート等のコーティング法でコーティングし、その後、溶剤や希釈剤等を乾燥除去して形成することができる。
使用する材料等により形成方法は適宜選択することができる。
このようなプライマー層の形成では、酸化珪素膜からなるガスバリア層は有機蒸着膜により保護されているので、傷やクラックの発生が防止される。
上述の製造方法により、本発明のバリア性フィルムが得られ、酸化珪素膜からなるガスバリア層は形成された後、真空チャンバー内のガイド部材等に接触する前に有機蒸着膜により保護されるので、傷やクラック等の発生が防止される。
また、プライマー層はインキ密着性に優れ、酸化珪素膜からなるガスバリア層のバリア性を損なうことなく良好な印刷加工適性、積層加工適性等をバリア性フィルムに付与する。
【0095】
G.ガスバリアフィルム
本発明のバリア性フィルムは、酸素透過率が0.5cc/m/day以下で水蒸気透過率が0.5g/m/day以下、より好ましくは酸素透過率が0.1cc/m/day以下で水蒸気透過率が0.1g/m/day以下の極めて優れたガスバリア性を発揮する。
本発明のバリア性フィルムは、内容物の品質を変化させる原因となる酸素と水蒸気をほとんど透過させないので、高いガスバリア性が要求される用途、例えば食品や医薬品等の包装材料や電子デバイス等のパッケージ材料用に好ましく用いることができる。
また、その高度なガスバリア性および耐衝撃性を共に有する点から、例えば各種ディスプレイ用の基材として用いることが可能である。
また、太陽電池のカバーフィルム等にも用いることができる。
【0096】
H.積層材
上述した本発明のバリア性フィルムにさらに他の基材等を任意に積層して、種々の層構成からなる積層材を製造することにより、上述したような種々の用途にバリア性フィルムを展開することが可能となる。
次に、本発明のバリアフィルムを用いた積層材についてその一例を挙げて説明する。
図5は、本発明のバリアフィルムを用いた積層材についてその一例の層構成を示す概略断面図である。
図5において積層材41は、基材2の一方の面に、酸化珪素膜3からなるガスバリア層4と有機蒸着膜5を積層して備えたバリア性フィルム1と、このバリアフィルム1の有機蒸着膜5上に形成したヒートシール性樹脂層42とを備えている層構成からなるものである。
尚、図示例では、ヒートシール性樹脂層42が有機蒸着膜5上に設けられているが、また、基材2および有機蒸着膜5の双方に設けてもよい。
【0097】
上記において、積層材を構成するヒートシール性樹脂層に用いるヒートシール性樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得る樹脂であればいずれのものでも使用することがてきる。
具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を使用することができる。
ヒートシール性樹脂層は、上述のようなヒートシール性樹脂を塗布して形成してもよく、また、上述のようなヒートシール性樹脂からなるフィルムないしシートをラミネートして形成してもよい。
このようなヒートシール性樹脂層の厚みは、5〜300μm、好ましくは10〜100μmの範囲内で設定することができる。
【0098】
本発明の積層材は、アンカーコート剤層および/または接着剤層を介して上記のヒートシール性樹脂層を設けてもよい。
本発明の積層材に使用するアンカーコート剤層は、例えば、アルキルチタネート等の有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、その他の水性または油性の各種アンカーコート剤を使用して形成することができる。
アンカーコート剤層の形成は、上記のようなアンカーコート剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート等の公知のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去して行うことができる。
上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0099】
また、積層材に使用する接着剤層は、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等を使用して形成することができる。
上記のラミネート用接着剤の組成系は、溶剤型、水性型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、さらに、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいすれの形態でもよい。
接着剤層の形成は、上記のようなラミネート用接着剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デッブコート、スプレイコート、その他のコーティング法、あるいは、印刷法により成膜し、溶剤、希釈剤等を乾燥除去して行うことができる。上記のラミネート用接着剤の塗布量としては0.1〜10g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0100】
また、本発明の積層材は、例えば、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靭であり、かつ耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシートからなる基材を積層したものであってもよい。
具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等の強籾な樹脂の延伸(一軸ないし二軸)または未延伸のフィルムないしシートを基材として使用することができる。
このような基材の厚みは、5〜100μm、好ましくは10〜50μm程度が望ましい。
また、本発明においては、上記の基材に、例えば、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を通常の印刷法で表刷り印刷あるいは裏刷り印刷が施されていてもよい。
このような文字等は、積層材を構成するバリア性フィルムを介して視認することができる。
【0101】
さらに、本発明の積層材は、上記の基材と併用、あるいは、単独で、紙基材を積層したものであってもよい。
使用する紙基材としては、積層材に賦型性、耐屈曲性、剛性等を付与するものであり、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙等を挙げることができる。
このような紙基材は、坪量が80〜600g/m、好ましくは、100〜450g/m程度のものを使用することが望ましい。
【0102】
また、本発明の積層材は、上記の基材や紙基材と併用、あるいは、単独で、例えば、水蒸気、水等のバリア性を有する低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等の樹脂のフィルムないしシート、あるいは、酸素、水蒸気等に対するバリア性を有するポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等の樹脂のフィルムないしシート、樹脂に顔料等の着色剤、その他、所望の添加剤を加えて混練してフィルム化してなる遮光性を有する各種の着色樹脂のフィルムないしシート等を使用することができる。
これらの材料は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができ、厚みは任意であるが、通常、5〜300μm、好ましくは10〜100μm程度である。
【0103】
さらに、包装用容器の用途に本発明の積層材が使用される場合、通常、包装用容器は物理的にも化学的にも過酷な条件におかれることから、積層材にも厳しい包装適性が要求される。具体的には、変形防止強度、落下衝撃強度、耐ピンホール性、耐熱性、密封性、品質保全性、作業性、衛生性、その他等の種々の条件が要求され、このため、本発明の積層材には、上記のような諸条件を充足する材料を任意に選択して、基材フィルム、上記の基材、あるいは、他の構成部材として使用することができる。
具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ一樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース等の公知の樹脂のフィルムまたはシートから任意に選択して使用することができる。
その他、例えば、セロハン等のフィルム、合成紙等も使用することができる。上記のフィルムまたはシートは、未延伸、一軸あるいは二軸方向に延伸されたもの等のいずれも使用することができる。
また、その厚さは、任意であるが、数μmから300μm程度の範囲から選択して使用することができ、積層位置は特に制限はない。
また、本発明において、上記のフィルムやシートは、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
【0104】
上述の積層材のような本発明の積層材は、通常の包装材料をラミネートする方法、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、共押し出しインフレーション法等を用いて製造することができる。
尚、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができ、また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系等のラミネート用接着剤等の公知の接着剤等を使用することができる。
【0105】
また、本発明の積層材は、構成するいずれかの層間に所望の印刷模様層を備えるものであってもよい。
この印刷模様層は、通常のインキビヒクルの1種または2種以上を主成分とし、これに、必要に応じて可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤等の添加剤の1種または2種以上を任意に添加し、さらに、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調製し、次いで、このインキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷等の印刷方式を使用し、文字、図形、記号、模様等からなる所望の印刷模様を印刷して、形成することができる。
【0106】
次に、本発明の積層材を用いて熱融着により製袋または製函して製造する包装用容器について説明する。
例えば、包装用容器が軟包装袋の場合、本発明の積層材のヒートシール性樹脂層の面を対向させて折り重ねるか、あるいは、本発明の積層材二枚を重ね合わせ、その周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、その他等のヒートシール形態により熱融着してシール部を形成するこにより、種々の形態の包装用容器を製造することができる。
上記において、熱融着は、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
その他の包装用容器として、例えば、自立性包装袋(スタンデイングパウチ)等も可能であり、さらに、本発明の積層材を使用してチューブ容器等も製造することができる。
尚、本発明においては、上記のような包装用容器に、例えば、ワンピースタイプ、ツウーピースタイプ、その他の注出ロ、あるいは開閉用ジッパー等を任意に取り付けることができる。
【0107】
また、包装用容器が紙基材を含む液体充填用紙容器の場合、本発明の積層材として、紙基材を積層した積層材を製造し、この積層材から所望の容器を製造するためのブランク板を作製し、このブランク板を使用して胴部、底部、頭部等を形成することにより、例えば、ブリックタイプ、フラットタイプあるいはゲーベルトップタイプの液体充填用紙容器等を製造することができる。
また、その形状は、角形容器、丸形等の円筒状の缶等、いずれの形状でも製造することができる。
【0108】
本発明の積層材を用いて製造した包装用容器は、種々の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、ケミカルカイロ等の雑貨品、その他等の種々の物品に使用されるものである。
【0109】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
基材として、シ−ト状の二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製、E5100、厚さ12μm)を準備し、プラズマCVD装置のチャンバー内の下部電極にコロナ処理面を上側(成膜表面)として装着した。
次に、CVD装置のチャンバー内を、油回転ポンプおよびターボ分子ポンプにより、到達真空度3.0×10−5Torr(4.0×10−3Pa)まで減圧した。
次に、下部電極に90KHzの周波数を有する電力(投入電力150W)を印加した。
そして、原料ガスとして、テトラメトキシシラン(TMOS)ガス(信越化学工業株式会社製、KBM−04)および酸素ガス(太陽東洋酸素株式会社製、純度99.9999%以上)を準備した。
次いで、チャンバー内の電極近傍に設けられたガス導入口から、TMOSガスを10sccm、酸素ガスを100sccmを導入し、真空ポンプとチャンバーとの間にあるバルブの開閉度を制御することにより、成膜チャンバー内圧力を0.25Torr(33.325Pa)に保ち、二軸延伸ポリエステルフィルムの上に蒸着膜としての酸化珪素膜からなるガスバリア層の成膜を行った。
ここで、sccmは、standard cubic cm per minuteの略である。
膜厚が100nmになるまで成膜を行った。
次いで、上記で酸化珪素膜からなるガスバリア層を形成した二軸延伸ポリエステルフィルムをコーティングドラムの下流側に隣接する蒸着重合装置内に搬送し、酸化珪素膜からなるガスバリア層の上に下記の条件で有機蒸着膜(厚み15nm)を形成した。
この有機蒸着膜の形成では、蒸着源として、ピロメリット酸二無水物1モルに4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを下記の表1に示されるモル数添加したものを用いて、6種の有機蒸着膜を形成し、本発明のバリア性フィルム(試料1〜6)を作製した。
(蒸着重合条件)
・蒸発源:ピロメリット酸二無水物と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルの混合物
・加熱温度:ピロメリット酸二無水物=200℃
4,4′−ジアミノジフェニルエーテルの混合物=90℃
このように作製したバリア性フィルムの有機蒸着膜上に、グラビア印刷インキ組成物を使用し、グラビア印刷方式により所望の印刷模様を形成し、乾燥後、粘着テープ〔ニチバン株式会社製セロハンテープ(15mm幅)〕を印刷模様面に貼り付け、90°方向に剥離した時の粘着テープへの印刷模様の付着を観察し、下記の基準でインキ密着性を判定して、結果を下記の表1に示した。
(インキ密着性の評価基準)
○:印刷模様の付着が見られず良好
×:印刷模様の付着がわずかにみられる
××:印刷模様の大部分が粘着テープに付着する
また、上記の印刷を行った後のバリア性フィルムについて、下記の測定方法により酸素透過率および水蒸気透過率を測定し、結果を下記の表1に示した。
(酸素透過率の測定方法)
酸素ガス透過率測定装置(米国 モダンコントロール社製 MOCON OX−TRAN)を用いて、温度23℃、湿度90%RHで測定した。
(水蒸気透過率の測定方法)
水蒸気透過率測定装置(米国 モダンコントロール社製 MOCON PERMATRAN−W 3/31)を用いて、温度38℃、湿度100%RHで測定した。
また、有機蒸着膜の成分を赤外分光分析(IR)装置を用いて測定し、有機蒸着膜における酸無水物(ピロメリット酸二無水物)の含有量を算出して下記の表1に示した。
さらに、上記のバリア性フィルムの印刷模様面を含む有機蒸着膜上に、2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤をグラビアロールコート法により塗布(塗布量4.0g/m(乾燥状態))して接着剤層を形成した。
その後、上記の 接着剤層上に、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを、そのコロナ処理面を対向させて重ね合わせ、両者をドライラミネート積層して、積層材を製造した。
この積層材のラミネート強度を下記の測定方法により測定し、結果を下記表1に示した。
(ラミネート強度の測定方法)
積層材を15mm幅の短冊状に切断し、テンシロン引っ張り試験器(東洋精機株式会社製)でT字剥離(剥離速度50mm/分)を行って測定した。
次に、上記の積層材を2枚準備し、その無延伸ポリプロピレンフィルム面を対向させて重ね合わせ、外周周辺の端部を三方ヒートシールしてシール部を形成することによって、上方に開口部を有するような三方シール型のプラスチック袋を製造した。
このプラスチック袋内に内容物としてハムを充填し、開口部をヒートシールして充填包装製品とし、この充填包装製品を30℃で7日間放置した後の内容物の品質を検査して、結果を下記の表1に示した。
(保存品質の評価基準)
○:良好
×:臭味がある
【0110】
Figure 2004160814
Figure 2004160814
上記の表1において、酸素透過度の単位は、〔cc/m・day・atm〕であり、水蒸気透過度の単位は、〔g/m・day〕であり、ラミネ−ト強度の単位は、〔g/15mm幅〕であり、有機蒸着膜中の酸無水物の含有量の単位は、〔モル%〕である。
【0111】
上記の表1に示されるように、試料1〜3のバリア性フィルムは、インキ密着性が良好で印刷加工適性に優れ、また、酸素透過率、水蒸気透過率とも極めて低く、優れたバリア性を有するものであった。
さらに、試料1〜3の積層材を用いた包装用容器の充填包装適性は良好であり、放置後の内容物の品質は良好であった。
これに対して、試料4のバリア性フィルムは、有機蒸着膜のインキ密着性が悪く、このバリア性フィルムを用いた積層材ではラミネート強度の低下がみられ、三方シール型のプラスチック袋は実用に供し得ないものであった。
また、試料5、試料6のバリア性フィルムでは、有機蒸着膜のインキ密着性は良好であるが、水蒸気バリア性の低下がみられ、これらのバリアフィルムを用いた積層材では、プラスチック袋容器としたときの品質維持適性が悪いものであった。
【0112】
実施例2
基材として、ロ−ル状の二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製、E5100、厚さ12μm)を準備し、これを巻取り機構を備えたプラズマCVD装置のチャンバー内に装着した。
次に、CVD装置のチャンバー内を、油回転ポンプおよびターボ分子ポンプにより、到達真空度3.0×10−5Torr(4.0×10−3Pa)まで減圧した。
また、原料ガスとして、テトラメトキシシラン(TMOS)ガス(信越化学工業株式会社製、KBM04)および酸素ガス(太陽東洋酸素株式会社製、純度99.9999%以上)を準備した。
次に、コ−ティングドラムの近傍に、コ−ティングドラムと対向する1枚の電極を配置し、このコ−ティングドラムと電極とのとの間に、周波数40kHzの高周波電力(投入電力3.0kW)を印加した。
そして、チャンバー内の電極近傍に設けられたガス導入口から、TMOSガスを50sccm、酸素ガスを500sccmで導入し、真空ポンプとチャンバーとの間にあるバルブの開閉度を制御することにより、成膜時のチャンバー内圧力を5×10−2Torr(6.7Pa)に保ち、二軸延伸ポリエステルフィルムの上に蒸着膜としての酸化珪素膜からなるガスバリア層の成膜を行った。
ここで、sccmは、standard cubic cm per minuteの略である。
二軸延伸ポリエステルフィルムの走行速度は、酸化珪素膜からなるガスバリア層の膜厚が100nmになるように設定した。
次いで、上記で酸化珪素膜からなるガスバリア層を形成した二軸延伸ポリエステルフィルムをコーティングドラムの下流側に隣接する蒸着重合装置内に搬送し、酸化珪素膜からなるガスバリア層の上に、下記の条件で有機蒸着膜(厚み15nm)を形成した。
この有機蒸着膜の形成では、蒸着源として、ピロメリット酸二無水物を使用した。
(蒸着重合条件)
・蒸発源:ピロメリット酸二無水物
・加熱温度:200℃
次に、上述のように酸化珪素膜からなるガスバリア層と有機蒸着膜が形成された二軸延伸ポリエステルフィルムをプラズマCVD装置から取り出し、温度40℃、湿度90%のチャンバーを有する加水分解促進装置中を通過させて加水分解促進処理を施した。
この加水分解促進処理では、二軸延伸ポリエステルフィルムの搬送速度を調整することによって、下記の表2に示されるようにチャンバー内通過時間(加湿時間)を変化させて、4種のバリア性フィルム(試料A〜D)を作製した。
このように作製したバリア性フィルムの有機蒸着膜上に、上記の実施例1と同様にして、印刷模様を形成し、インキ密着性を判定して、結果を下記の表2に示した。
また、上記の印刷を行った後のバリア性フィルムについて、上記の実施例1と同様にして、酸素透過率および水蒸気透過率を測定し、結果を下記の表2に示した。
さらに、有機蒸着膜の成分を上記の実施例1と同様に測定し、有機蒸着膜における酸無水物(ピロメリット酸二無水物)の含有量を算出して下記の表2に示した。
また、印刷を行ったバリア性フィルムを用いて、上記の実施例1と同様にして、積層材を製造し、ラミネート強度を上記の実施例1と同様にして測定し、結果を下記表2に示した。
また、この積層材を用いて、三方シール型のプラスチック袋を製造した。
このプラスチック袋内に内容物としてハムを充填し、開口部をヒートシールして充填包装製品とし、充填包装製品を30℃で7日間放置した後の内容物の品質を上記の実施例1と同様に検査して、結果を下記の表2に示した。
【0113】
Figure 2004160814
上記の表1において、酸素透過度の単位は、〔cc/m・day・atm〕であり、水蒸気透過度の単位は、〔g/m・day〕であり、ラミネ−ト強度の単位は、〔g/15mm幅〕であり、有機蒸着膜中の酸無水物の含有量の単位は、〔モル%〕である。
【0114】
上記の表2に示されるように、試料A〜Cのバリア性フィルムは、インキ密着性が良好で印刷加工適性に優れ、また、酸素透過率、水蒸気透過率とも極めて低く、優れたバリア性を有するものであった。
さらに、試料A〜Cの積層材を用いた包装用容器の充填包装適性は良好であり、放置後の内容物の品質は良好であった。
これに対して、試料Dのバリア性フィルムは、有機蒸着膜のインキ密着性が悪く、このバリア性フィルムを用いた積層材ではラミネート強度の低下がみられ、実用に供し得ないものであった。
【0115】
実施例3
基材として、ロ−ル状の二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製、E5100、厚さ12μm)を準備し、これを巻取り機構を備えたプラズマCVD装置のチャンバー内に装着した。
次に、CVD装置のチャンバー内を、油回転ポンプおよびターボ分子ポンプにより、到達真空度3.0×10−5Torr(4.0×10−3Pa)まで減圧した。
また、原料ガスとして、テトラメトキシシラン(TMOS)ガス(信越化学工業株式会社製、KBM04)および酸素ガス(太陽東洋酸素株式会社製、純度99.9999%以上)を準備した。
次に、コ−ティングドラムの近傍に、コ−ティングドラムと対向する1枚の電極を配置し、このコ−ティングドラムと電極とのとの間に、周波数40kHzの高周波電力(投入電力3.0kW)を印加した。
そして、チャンバー内の電極近傍に設けられたガス導入口から、TMOSガスを50sccm、酸素ガスを500sccmで導入し、真空ポンプとチャンバーとの間にあるバルブの開閉度を制御することにより、成膜時のチャンバー内圧力を5×10−2Torr(6.7Pa)に保ち、二軸延伸ポリエステルフィルムの上に蒸着膜としての酸化珪素膜からなるガスバリア層の成膜を行った。
ここで、sccmは、standard cubic cm per minuteの略である。
二軸延伸ポリエステルフィルムの走行速度は、酸化珪素膜からなるガスバリア層の膜厚が10nmになるように設定した。
次いで、上記で酸化珪素膜からなるガスバリア層を形成した二軸延伸ポリエステルフィルムをコーティングドラムの下流側に隣接する蒸着重合装置内に搬送し、酸化珪素膜からなるガスバリア層の上に下記の条件で有機蒸着膜(厚み10nm)を形成した。
この有機蒸着膜の形成では、蒸着源として、ポリエチレンを使用した。
(蒸着重合条件)
・蒸発源:ポリエチレン(分子量1000)
・加熱温度:180℃
次に、上述のように酸化珪素膜からなるガスバリア層と有機蒸着膜が形成された二軸延伸ポリエステルフィルムを、プラズマCVD装置から取り出し、下記組成のプライマー層用塗工液をグラビアリバース法により塗布(塗布量0.4g/m(乾燥状態))し、乾燥(100 ℃)した。
これにより、有機蒸着膜上にプライマー層(厚み0.5μm)を形成して、本発明のバリア性フィルムを製造した。
(プライマー層用塗工液の組成)
・ポリエステル(東洋紡績(株)製バイロン#500)… 50重量部
・ポリエステル(東洋紡績(株)製バイロン#280)… 50重量部
・メチルエチルケトン/トルエン(重量比1/1) … 100重量部
・イソシアネート硬化剤 … 1重量部
(ザ・インクテック(株)製XEL硬化剤D)
このように作製したバリア性フィルムのプライマー層上に、上記の実施例1と同様にして、印刷模様を形成し、インキ密着性を判定したところ、インキ密着性が良好で印刷加工適性に優れるものであった。
また、上記の印刷を行った後のバリア性フィルムについて、上記の実施例1と同様にして、酸素透過率および水蒸気透過率を測定したところ、酸素透過率が2.0cc/m・day・atm、水蒸気透過率が2.0cc/m・dayであり、優れたバリア性を有するものであった。
さらに、印刷を行ったバリア性フィルムを用いて、上記の実施例1と同様にして、積層材を製造した。
この積層材のラミネート強度を上記の実施例1と同様にして測定した結果、700g以上/15mm幅であり、良好なラミネート強度を示した。
また、この積層材を用いて、三方シール型のプラスチック袋を製造した。
このプラスチック袋内に内容物としてハムを充填し、開口部をヒートシールして充填包装製品とし、充填包装製品を30℃で7日間放置した後の内容物の品質を検査したところ、包装用容器の充填包装適性は良好であり、放置後の内容物の品質は良好であった。
これに対して、有機蒸着膜上にプライマー層を形成しない他は、上記のバリア性フィルムと同様にして作製した比較のバリア性フィルムは、有機蒸着膜のインキ密着性が悪く、このバリア性フィルムを用いた積層材では、上記の実施例1と同様に測定したラミネート強度が150g/15mm幅であり、実用に供し得ないものであった。
【0116】
次に、上記の実施例1〜3で成膜した酸化珪素膜からなるガスバリア層について、下記に示すデ−タ−を測定した。
【0117】
(評価方法)
酸化珪素膜の成分は、ESCA(英国、VG Scientific社製、ESCA LAB220i−XL)によって測定した。
X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度、300K〜1McpsとなるモノクロAlX線源、および直径約1mmφのスリットを使用した。
測定は、測定に供した試料面に対して法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行った。
測定後の解析は、上述のESCA装置に付属されたソフトウエアEclipseバージョン2.1(英国、VG Scientific社製)を使用し、Si:2p、C:1s、O:1sのバインディングエネルギー(Binding Energy)に相当するピークを用いて行った。
このとき、各ピークに対し、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1に対して、Si=0.817、O=2.930)を行い、原子数比を求めた。得られた原子数比について、Si原子数を100とし、他の成分であるOとCの原子数を算出して成分割合として評価した。
【0118】
IR測定は、ATR(多重反射)測定装置(日本分光株式会社製、ATR−300/H)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光株式会社製、Herschel FT/IR−610)によって測定した。
赤外吸収スペクトルは、プリズムとしてゲルマニウム結晶を用い、入射角45度で測定した。
【0119】
酸化珪素膜の屈折率は、光学分光器(島津製作所株式会社製、UV−3100PC)によって測定した。
得られた透過率と反射率との測定結果から、光学干渉法を用いて633nmにおける屈折率で評価した。
【0120】
(原子間力顕微鏡によるグレイン間の距離の測定法)
上述したプラズマCVD法により作製した酸化珪素膜は、未処理では表面が平滑なためグレインを直接測定することは出来ない。
したがって、まず、フッ化水素酸またはフッ化アンモニウム水溶液により表面処理をした。
当該処理は、バウンダリーは溶解するが、グレインは溶解しにくいという性質を利用してしたものであり、当該処理を行ったことにより、蒸着膜の表面に形成されたグレインを観察することが可能となった。
【0121】
そして、成膜後のサンプルを10cm×10cmサイズに切断した後、(1)23℃、 0.5%フッ化水素酸溶液に5秒間処理し、(2)6 0秒間水洗した後、(3)乾燥を行った。
【0122】
ここで、原子間力顕微鏡(以下「AFM」とする。)によるグレイン間距離測定方法を説明する。
測定には Digital Instruments社製、セイコー電子株式会社製、Topometrix社製等のAFMを使用できるが、今回は、Digital Instruments社製製のNano Scope IIIを使用した。
そして、この場合には、タッピングモードで表面形状を500nm×500nmの面積で測定したAFM像について、フラット処理を行った後、任意の断面を観察し、ピーク高さがほぼ同じ隣接する2つのグレインについて、そのピークと隣接するピークの間の距離を測定した。
また、測定においては、摩耗や汚れのない状態のカンチレバーを使用し、著しいへこみや突起のない均一な凹凸領域を測定箇所とした。
【0123】
なお、上記タッピングモードとは、Q,ZongらがSurface Science Letter 1993年 Vol.290,L688−690に説明している通りであり、ピエゾ加振器を用いて、先端に探針を付けたカンチレバーを共振周波数近傍(約50〜500MHz)で加振させ、試料表面上を断続的に軽く触れながら走査する方法であって、検出される振幅の変化量を一定に維持するように、カンチレバーの位置を凹凸方向(Z方向)に移動させ、このZ方向への移動に基づいた信号と平面方向(XY方向)の信号とによって3次元表面形状を測定する方法である。
また、上記フラット処理とは、2次元データについて、基準面に対して1次、2次または3次元の関数で傾きの補正を処理することであり、この処理により面全体のうねりを相殺した。
【0124】
〔電子スピン共鳴法(ESR法)の測定法〕
上述したプラズマCVD法により作製した酸化珪素について、電子スピン共鳴法(ESR法)によりE’センターの密度を測定した。
測定に用いた装置、および測定条件は以下の通りであった。
【0125】
(測定装置)
メイン装置:ESR350E(BRUKER社製)
付属装置:HP5351B マイクロ波周波数カウンター(HEWLETT PACKEARD社製)、ER035M ガウスメーター(BRUKER社製)、ESR910 クライオスタット(OXFORD社製)
【0126】
(測定条件)
測定温度:室温(23℃)
磁場掃引範囲:331.5〜341.5mT
変調:100kHz、0.2mT
マイクロ波:9.43GHz、0.1mW
掃引時間:83.886sec ×4回
時定数:327.68msec
データポイント:1024点
キャビティー:TM10、円筒型
【0127】
(解析方法)
g=2.0003付近にシリカ膜中のE’センターに起因するシグナルが観察された。
ESRスペクトルは通常、微分曲線として得られ、1回微分で吸収曲線、2回微分で信号強度(面積強度)が得られる。
スピン数は、不対電子数を表し、前記信号強度より2次標準試料としてイオン注入したポリエチレンフィルムを用いて求めた値である。
なお、1次標準試料には、硫酸銅5水和物を使用した。
【0128】
E’センタースピン数を、その膜厚と測定面積で規格化したものがE’センターの密度として求められる。
なお、上記の装置におけるE’センター検出限界は、5×1015spins/cmであった。
【0129】
(IR測定)
IR測定は、ATR(多重反射)測定装置(日本分光株式会社製、ATR−300/H)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光株式会社製、Herschel FT/IR−610)によって測定した。
赤外吸収スペクトルは、プリズムとしてゲルマニウム結晶を用い、入射角45度で測定した。
上記で測定した結果について下記の表3に示す。
【0130】
Figure 2004160814
Figure 2004160814
【0131】
上記の表3に示す結果より明らかなように、本発明のバリア性フィルムを構成する酸化珪素膜からなるガスバリア層は、ほぼ、請求項1〜9に記載するとおりの物性値を有するものである。
【0132】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のバリア性フィルムは、従来のように単に酸化珪素膜の厚さ等を調整しただけでなく、ガスバリア膜として作用する蒸着膜の組成、表面に形成されているグレイン間の距離、電子スピン共鳴法(ESR法)測定によって観測されるE’センターの有無、吸着されているCO分子の有無等を制御したことによって、極めてガスバリア性に優れたバリア性フィルムとすることができる。
更に、本発明のバリア性フィルムは、酸化珪素膜からなるガスバリア層の上に、更に、有機蒸着膜を設けることにより、インキ密着適性、他の基材との積層加工適性等を著しく向上させることができるものである。
【0133】
また、本発明のバリア性フィルムは、酸素透過率が0.5cc/m/day以下で水蒸気透過率が0.5g/m/day以下であり、高いガスバリア性が要求される用途、例えば、食品や医薬品等の包装材料や電子デバイス等のパッケージ材料に好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバリア性フィルムについてその層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のバリア性フィルムを構成する酸化珪素膜からなるガスバリア層の表面のグレインを示す概略断面図である。
【図3】本発明のバリア性フィルムを構成する酸化珪素膜からなるガスバリア層の表面のグレインを示す概略拡大断面図である。
【図4】プラズマCVD装置の一例を示す構成図である。
【図5】本発明のバリア性フィルムを用いた積層材についてその層構成の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 バリア性フィルム
2 基材
3 酸化珪素膜
4 ガスバリア層
5 有機蒸着膜

Claims (14)

  1. 基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜がSi原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなっており、更に、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収を有するガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜を有し、前記有機蒸着膜は酸無水物とその加水分解物との混合物からなる膜、および、酸無水物の加水分解からなる膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム。
  2. 基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜がSi原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなっており、更に、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収を有するガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜と該有機蒸着膜上に設けられたプライマ−層を有し、前記有機蒸着膜はポリエチレン膜および酸無水物膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム。
  3. 前記ガスバリア層は、屈折率1.45〜1.48からなることを特徴とする上記の請求項1〜2のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
  4. 基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜の表面に形成されるグレイン間の距離が5〜40nmであるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜を有し、前記有機蒸着膜は酸無水物とその加水分解物との混合物からなる膜、および、酸無水物の加水分解からなる膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム。
  5. 基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜の表面に形成されるグレイン間の距離が5〜40nmであるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜と該有機蒸着膜上に設けられたプライマ−層を有し、前記有機蒸着膜はポリエチレン膜および酸無水物膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム。
  6. 基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜は電子スピン共鳴法による測定によって観察されるE’センタ−の密度が5×1015spins/cm以上であるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜を有し、前記有機蒸着膜は酸無水物とその加水分解物との混合物からなる膜、および、酸無水物の加水分解からなる膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム。
  7. 基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜は電子スピン共鳴法による測定によって観察されるE’センタ−の密度が5×1015spins/cm以上であるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜と該有機蒸着膜上に設けられたプライマ−層を有し、前記有機蒸着膜はポリエチレン膜および酸無水物膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム。
  8. 基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜は2341±4cm−1にCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収のピ−クがあるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜を有し、前記有機蒸着膜は酸無水物とその加水分解物との混合物からなる膜、および、酸無水物の加水分解からなる膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム。
  9. 基材と、前記基材の片面または両面にプラズマ化学気相成長法によって形成された酸化珪素膜を有し、前記酸化珪素膜は2341±4cm−1にCO分子の伸縮振動に基づくIR吸収のピ−クがあるガスバリア層と、前記ガスバリア層上に少なくとも有機蒸着膜と該 有機蒸着膜上に設けられたプライマ−層を有し、前記有機蒸着膜はポリエチレン膜および酸無水物膜のいずれかであることを特徴とするバリア性フィルム。
  10. ガスバリア層が、膜厚5〜300nmからなることを特徴とする上記の請求項1〜9のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
  11. 基材上に、少なくとも有機珪素化合物ガスと酸素原子を含むガスを原料ガスとして用い、真空チャンバ−内でプラズマ化学気相成長法により酸化珪素膜を成膜する工程であって、前記有機珪素化合物ガスの成分が炭素−珪素結合を分子内に有さない化合物からなり、かつ、前記有機珪素化合物ガスと酸素原子を含むガスとの流量比を、前記有機珪素化合物ガスを1とする場合、酸素原子を含むガス3〜50の範囲内として酸化珪素膜からなるガスバリア層を成膜し、次いで、上記のガスバリア層が、真空チャンバ−内のガイド部材に接触する前に、蒸着源として、酸無水物と該酸無水物1モルに対し0.001〜0.5モルの範囲の触媒とを用いて、上記のガスバリア層の上に、有機蒸着膜を蒸着により形成することを特徴とするバリア性フィルムの製造法。
  12. 酸化珪素膜からなるガスバリア層を成膜した後、上記のガスバリア層が、真空チャンバ−内のガイド部材に接触する前に、蒸着源として、ポリエチレン、および、酸無水物のいずれかを用いて、上記のガスバリア層の上に、有機蒸着膜を蒸着により形成することを特徴とする上記の請求項11に記載するバリア性フィルムの製造法。
  13. 有機蒸着膜を蒸着により形成した後、酸無水物の加水分解促進処理を行うことを特徴とする上記の請求項11〜12のいずれか1項に記載するバリア性フィルムの製造法。
  14. 有機蒸着膜を蒸着により形成した後、該有機蒸着膜の上に、プライマ−層を形成することを特徴とする上記の請求項11〜13のいずれか1項に記載するバリア性フィルムの製造法。
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