JP2004159847A - ポンプ装置 - Google Patents

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Yoshihiro Taniyama
賀浩 谷山
Kazunori Shioda
和則 塩田
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Abstract

【課題】小型軽量で、エネルギー損失による発熱や流路閉塞のおそれのない、生体内等への適用に適したポンプ装置を提供する。
【解決手段】ケーシング10内に可動床20と、この可動床20を上下に連続的に往復駆動させる駆動部301を備え、可動床20の往復駆動により被搬送流体を吸入し吐出するポンプ装置において、駆動部301は、微小管31とキネシン32、微小管31とダイニン、あるいはII型ミオシンとアクチンの化学作用により発生する動力により可動床20が往復駆動するように構成されている。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小な管内の液体の搬送に有用なポンプ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポンプ装置は、各種生産設備や機械機器の動力として幅広く利用されてきたが、最近では材料や加工技術等の周辺技術の向上に伴い、小型化・高精密化が図られ、人工心肺等の人工臓器をはじめ、その用途はさらに多方面へと広がりつつある。そして、このような用途の拡大とともに、小型化・高精密化に対する要求もさらに一段と高まってきている。
【0003】
ところで、従来のポンプ装置は、その多くが電気エネルギーや熱エネルギーを利用するものであるが、例えば、人工心臓や心臓補助装置に用いられる血液ポンプには、遠心力や磁気エネルギーを利用するものが使用されており(例えば、特許文献1、2等参照)、そのエネルギー源は多岐にわたっている。
【0004】
しかしながら、いずれのエネルギー源も、それを供給するための供給路の設置が不可欠であり、このため、従来のポンプ装置ではその小型化に限度があった。
そのうえ、ポンプ装置の接続先が負荷変動が予測される構成である場合、その変動に対応するため、エネルギー供給量を調整する制御機構あるいは制御装置が必要となり、小型化への障壁がさらに高くなる。
【0005】
また、電気エネルギーをはじめ従来のエネルギー源の多くは、エネルギー変換効率が100%を大きく下回るため、エネルギー損失が発生し、発熱を伴うことがあり、人工臓器等の生体へ供する装置に利用した場合、蛋白質の熱変性を惹き起こすおそれがあった。
【0006】
さらに、ポンプ装置には、被搬送流体を吸入、吐出するための流路が設けられるが、血液等の粘性の高い流体を搬送する場合、長期使用において流路中に閉塞部が発生するおそれがあった。
【0007】
なお、これらのエネルギー損失に伴う発熱や流路の閉塞の問題を回避する方法も提案されているが、構成が複雑となる難点がある(例えば、特許文献3、4参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−76393号公報(第2−3頁)
【特許文献2】
特開平11−241695号公報(第2−14頁)
【特許文献3】
特開2001−327595(第4−6頁)
【特許文献4】
特開2001−252351(第3−4頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来の事情に対処してなされたもので、従来のエネルギー源に因らない新しいエネルギー源を利用したポンプ装置であって、従来に比べより小型化、軽量化を図ることができるとともに、従来のようなエネルギー損失による発熱や流路閉塞のおそれもない、生体内等への適用に適したポンプ装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のポンプ装置は、ケーシング内に可動床と、この可動床を上下に連続的に往復駆動させる駆動部を備え、前記駆動部による前記可動床の往復駆動により被搬送流体を吸入し吐出するポンプ装置において、前記駆動部は、微小管およびキネシン、ダイニン等の微小管依存性モータタンパク、あるいはII型ミオシンおよびアクチン、を含むとともに、これらの化学作用により発生する動力により前記可動床が往復駆動するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成のポンプ装置においては、微小管と微小管依存性モータタンパク、あるいはII型ミオシンとアクチン、という極めて微小な要素によって発生する動力を利用するものであるため、従来のポンプ装置よりはるかに小型化および軽量化を図ることができる。また、その動力源はアデノシン三リン酸(以下、ATPと記す。)の加水分解による化学エネルギーであり、100%に近いエネルギー変換効率が得られるため、エネルギー損失による発熱のおそれもない。
【0012】
また、本発明のポンプ装置は、配管内をアデノシン三リン酸を含む流体を搬送するポンプ装置であって、前記配管内に対向配置された一対の可動壁と、前記一対の可動壁を配管内壁に該内壁とのクリアランスが配管の上流側が下流側より大きくなるように支持しつつ配管の径方向に連続的に往復駆動させる駆動部を有するポンプ装置において、前記駆動部は、微小管およびキネシン、ダイニン等の微小管依存性モータタンパク、あるいはII型ミオシンおよびアクチン、を含むとともに、これらの化学作用により発生する動力により前記可動壁が往復駆動するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成のポンプ装置は、アデノシン三リン酸を含む流体の搬送に有用であり、前述した効果に加え、配管内に配設することができるため、ポンプ装置を設置するためのスペースを不要とすることができるとともに、粘性の高い流体の搬送に伴う閉塞部の発生も抑制することができる。
【0014】
さらに、本発明のポンプ装置は、軟質弾性材料からなる配管の外周または内周に配設され前記配管に断続的な押圧力を加える駆動部を備え、前記駆動部による断続的な押圧力によって前記配管内部の液体を搬送するポンプ装置において、前記駆動部は、微小管およびキネシン、ダイニン等の微小管依存性モータタンパク、あるいはII型ミオシンおよびアクチン、を含むとともに、これらの化学作用により発生する動力により前記配管に断続的な押圧力を加えるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
上記構成のポンプ装置は、軟質弾性材料からなる配管内の流体の搬送に有用であり、可動床や可動壁のような部材を必要としないため、装置構造がより簡素化されるとともに、設置に要するスペースも不要もしくは減らすことができる。また、粘性の高い流体による閉塞のおそれも低減することができる。
【0016】
なお、特に、上記各ポンプ装置において、微小管とダイニンを駆動部における動力発生の単位要素とした場合には、ダイニンがATPの濃度により微小管上を移動する最大速度が変化するため、駆動部内のATPの濃度を変化させることにより、容易に可動床の速度を変化させ、搬送量を可変とすることができる。
【0017】
また、上記各ポンプ装置において、II型ミオシンとアクチンを駆動部における動力発生の単位要素とした場合には、II型ミオシンがアクチン上を移動する速度が、キネシンやダイニンが微小管上を移動する速度に比べ非常に大きいため、搬送量の大きいポンプ装置を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明のポンプ装置の第1の実施形態を示す斜視図、図2はその断面構造を概略的に示す図である。また、図3は、図2のA−A矢視断面図である。
【0020】
本実施形態のポンプ装置101は、図示を省略したが、ATPを含有しほぼ生理的イオン強度に保たれた水溶液を満たした容器あるいは同様の条件の水溶液を含む生体内に配置されて使用されるものであり、図1乃至図3に示すように、円筒状のケーシング10と、このケーシング10内に上下動自在に内挿された可動床20と、この可動床20を上下に連続的に往復駆動させる駆動部301を備えている。ケーシング10の上部には被搬送流体の吸入口11および吐出口12が開口しており、それぞれ被搬送流体が流れる配管40a、40bに液密に接続されている。
【0021】
駆動部301は、可動床20の下面に固定された複数対のチューブリンからなる微小管31と、可動床20の下面に対向するケーシング10の内面に、対をなす微小管31に対応して固定された複数のキネシン32により構成されており、対をなす微小管31a、31bは、図4に拡大して示すように、互いに極性を反転させて可動床20に固定され、他方、キネシン32は、N末端側の頭部がそれぞれ対応する微小管31a、31bに接するように固定されている。また、駆動部301を囲むケーシング10の壁には、外部のATPを含有しほぼ生理的イオン強度に保たれた水溶液が自在に出入りできるような孔(図示なし)が設けられている。
【0022】
ここで駆動部301を構成するキネシンおよび微小管について説明する。
【0023】
キネシンは、ダイニンとともに、ATPに依存して微小管上をマイナス端からプラス端へ、あるいはプラス端からマイナス端へと一方向に移動するモータタンパクであり、ヒト由来のキネシン(ヒトキネシン)をはじめ複数種の存在が確認されている。本発明においては、いかなる種類のキネシンを使用してもよいが、本ポンプ装置101を人体内に適用する場合には、図5に模式的に示すような2本の重鎖Hと複数の軽鎖(図示なし)からなるヒトキネシンの使用が好ましい。
また、キネシンは、単量体でも重合体でもよい。重合体は、キネシン単量体を複数個、N末端の方向を揃えて糸状に会合させることにより形成することができる。図6は、重合過程にあるヒトキネシン(a)と、重合後のヒトキネシン重合体(b)を模式的に示したもので、hはキネシンの頭部を示し、tはその尾部を示している。
【0024】
また、微小管は、図7に示すように、αとβの2種類のチューブリンサブユニットS1、S2のダイマー(チューブリン)をらせん状に重合して形成された円筒状の構造体である。
【0025】
キネシン32のケーシング10への固定は、図8に示すように、キネシン32のC末端側にビオチンPを結合させ、同様にビオチンPを結合したケーシング10とアビジンPを介して結合させる方法が用いられている。一方、微小管31も、キネシン32の場合と同様、微小管31の端末と可動床20にそれぞれビオチンPを付加し、これらをアビジンPを介して結合することにより、可動床20に固定されている。なお、このため、ケーシング10および可動床20の少なくとも微小管31あるいはキネシン32が結合される部分は、ビオチンPを結合可能な材料、例えばタンパクにより形成されている。微小管31あるいはキネシン32が結合される部分以外は、特にその材料が限定されるものではないが、生体に埋め込んで使用する人工臓器等の用途に使用する場合には、生体適応性を有するものを使用することが望ましい。
【0026】
このように構成されるポンプ装置101を、その少なくとも駆動部301部分が、ATPを含有しほぼ生理的イオン強度に保たれた水溶液内に位置するように置くと、キネシン32がATPの加水分解によるエネルギーを受けて、これと接する微小管31a、31bの一方の微小管31a上をマイナス端側からプラス端側へ移動し、プラス端側に達したところで、他方の微小管31b上をマイナス端側からプラス端側へ移動することを繰り返し、これに伴い、微小管31a、31bを固定した可動床20も、上昇および下降を繰り返す。キネシン32が微小管31上を移動する際、図10に示すように、微小管31はキネシン32の周囲を回転するため、可動床20は僅かに振動しながら上昇し下降する。可動床20が僅かに振動しながら上昇するとき、ケーシング10内の被搬送流体は正圧を受け下流側へと押し出され、続いて、可動床20が下降するとケーシング10内の被搬送流体は負圧を受け、上流側より被搬送流体がケーシング10内に吸入され、これが繰り返され、被搬送流体は、図2の矢印で示すように、上流側から下流側へと搬送される。
【0027】
このように本実施形態においては、微小管やキネシンという極めて微小な構成要素により発生する動力を利用するものであるため、従来に比べ大幅な小型化、軽量化を図ることができるとともに、その動力源はATPの加水分解による化学エネルギーであるため、100%に近いエネルギー変換効率が得られ、エネルギー損失による発熱のおそれもない。
【0028】
なお、本発明においては、キネシン32あるいはキネシン重合体を可動床20に固定し、微小管31をケーシング10に固定するようにしてもよい。
【0029】
また、キネシン32あるいはキネシン重合体に代えて、ダイニンを用いてもよい。ダイニンは、微小管上をプラス端側からマイナス端側へ移動するという違いはあるものの、キネシン32あるいはキネシン重合体の場合と同様のポンプ駆動力を得ることができる。そのうえ、ダイニンと微小管との反応は、ミカエリス・メンラン型反応に反し、ATPの濃度により微小管上を移動する最大速度が変化する性質を有するため、駆動部301内のATPの濃度を変化させることにより、容易に可動床の速度を変化させ、被搬送流体の搬送量を可変とすることができる。
【0030】
さらに、本発明においては、微小管31およびキネシン32に代えて、筋肉の収縮単位を構成するII型ミオシンとアクチンで駆動部301を構成するようにしてもよい。
【0031】
図11は、その一例を示したものであって、図2に示すポンプ装置において、駆動部301を、各一端を可動床20とこれに対向するケーシング10の内面に固定した複数のF−アクチンフィラメント33と、II型ミオシンからなりその頭部がF−アクチンフィラメント33に接するように配置された複数のミオシンフィラメント34により構成したものである。図12に、F−アクチンフィラメント33の構造を模式的に示す。図12において、33aはG−アクチンである。
また、図13は、図11のB−B矢視断面図である。さらに、図14は、F−アクチンフィラメント33の可動床20およびケーシング10への固定方法を説明する図で、キネシン32等の場合と同様、アクチンフィラメント33の末端にビオチンPを結合させる一方、可動床20およびケーシング10にもそれぞれビオチンPを結合させ、これらをアビジンPを介して結合させることによって固定されている。
【0032】
このように構成されるポンプ装置においても、図2に示すキネシン32と微小管31からなる駆動部301を備えたポンプ装置と同様、ミオシンフィラメント34がATPの加水分解によるエネルギーを受けて、これと接するF−アクチンフィラメント33上を移動することによって、可動床20が上昇および下降を繰り返す結果、被搬送流体は、矢印に示すように、上流側から下流側へと搬送される。II型ミオシンがF−アクチンフィラメント33上を移動する1ステップ当たりの距離は、キネシンあるいはダイニンが微小管上を移動する距離の約12倍と大きく、しかも、単位時間当たりのステップ数も多いため、キネシンあるいはダイニンと微小管を駆動部301の構成要素としたポンプ装置に比べ、高速かつ大容量の搬送が可能である。
【0033】
なお、図11に示すポンプ装置において、駆動部301を、F−アクチンフィラメント33とミオシンフィラメント34からなる動力発生単位をその長さ方向に複数結合させることによって、筋原繊維のような多段構成としてもよい。このように駆動部301を多段構成とすることによって、搬送速度、搬送流量をさらに増大させることが可能となる。
【0034】
以上説明した実施の形態において、被搬送流体の吸入口11および吐出口12の数やその配設位置は特に限定されるものではなく、図15に示すように、吸入口11と吐出口12が同一側に開口していてもよく、また、図16に示すように、被搬送流体が2つの吸入口11から吸入され、1つの吐出口12から吐出されるように構成されていてもよい。さらに、図17に示すように、吸入口11や吐出口12に被搬送流体の逆流を防止するための逆支弁15を設けてもよい。
【0035】
次に、本発明のポンプ装置の他の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0036】
図18は、本発明のポンプ装置の第2の実施形態を概略的に示す断面図、図19は、その要部を拡大して示す図である。
【0037】
本実施形態のポンプ装置102は、ATPを含む流体を搬送するために使用されるものであり、図18、19に示すように、ATPを含む流体を搬送するための配管40内に、一対の断面が半円状の可動壁51、52を対向配置させるとともに、これらの可動壁51、52と配管40との間に微小管31とキネシン32からなる駆動部302を形成することによって、一対の可動壁51、52が配管40内面に該内面とのクリアランスが配管40の上流側が下流側より小さくなるように支持されつつ配管40の径方向に往復駆動するように構成されている。
【0038】
すなわち、各可動壁51、52の外側面に複数のキネシン32が固定され、また、これらに対向する配管40の内面には、キネシン32に対応して複数対のチューブリンからなる微小管31が固定されている。キネシン32および微小管31は、下流側から上流側に向けてその長さが徐々に短くなっており(対をなす微小管31a、31b同士はほぼ同じ長さとされている)、対をなす微小管31a、31bは、図20に拡大して示すように、互いに極性を反転させて配管40内面に固定され、他方、キネシン32は、N末端側の頭部が微小管31a、31bに接するように各可動壁51、52に固定されている。さらに、図示を省略したが、キネシン32の可動壁51、52への固定、並びに微小管31の配管40内面への固定は、前述した第1の実施の形態の場合と同様、キネシン32のC末端と可動壁51、52、微小管31の末端と配管40内面に、それぞれビオチンPを結合させ、これらのビオチンP間をアビジンPを介して結合させることにより固定されている。
【0039】
なお、図21は、配管40内の可動壁51、52を概略的に示す斜視図である。
【0040】
このように構成されるポンプ装置102においては、キネシン32が被搬送流体に含まれるATPに依存して、これと接する微小管31a、31bの一方の微小管31a上をマイナス端側からプラス端側へ移動し、プラス端側に達したところで、他方の微小管31b上をマイナス端側からプラス端側へ移動することを繰り返し、これに伴い、可動壁51、52はそれぞれ配管40内面に対し接近および離間を繰り返す。キネシン32が微小管31上を移動する際、微小管31はキネシン32の周囲を回転するため、可動壁51、52は僅かに振動しながら接近し離間する。各可動壁51、52が僅かに振動しながら配管40内面から離間するとき、配管40内の被搬送流体は正圧を受け下流側へと押し出される。このような動作が繰り返される結果、被搬送流体は配管40内を上流側から下流側へと搬送される。
【0041】
このように本実施形態においても、微小管やキネシンという極めて微小な構成要素により発生する動力を利用するものであるため、従来に比べ大幅な小型化、軽量化を図ることができるとともに、その動力源はATPの加水分解による化学エネルギーであるため、100%に近いエネルギー変換効率が得られ、エネルギー損失による発熱のおそれもない。また、配管内に配設することができるため、ポンプ装置を設置するためのスペースを不要とすることができるとともに、粘性の高い流体の搬送に伴う閉塞部の発生も抑制することができる。
【0042】
なお、本実施形態において、キネシン32あるいはキネシン重合体を配管40の内面に固定し、微小管31を可動壁51、52に固定するようにしてもよい。
【0043】
また、断面が半円状の可動壁51、52に代えて、図22に示すような、平板状の可動壁53、54を用いるようにしてもよい。
【0044】
さらに、第1の実施の形態の場合と同様、キネシン32あるいはキネシン重合体に代えて、ダイニンを用いてもよく、キネシン32あるいはキネシン重合体の場合と同様のポンプ駆動力を得ることができるうえ、ダイニンと微小管との反応がミカエリス・メンラン型反応に反し、ATPの濃度により微小管上を移動する最大速度が変化する性質を有するため、配管40内のATPの濃度を変化させることにより、容易に可動壁51、52の駆動速度を変化させ、被搬送流体の搬送量を可変とすることができる。
【0045】
また、微小管31およびキネシン32に代えて、筋肉の収縮単位を構成するII型ミオシンとアクチンで駆動部302を構成するようにしてもよい。
【0046】
すなわち、例えば図23に示すように、駆動部302を、可動壁51、52とこれに対向する配管40の内面に固定された複数のF−アクチンフィラメント33と、II型ミオシンからなりその頭部をF−アクチンフィラメント33に接するように配置された複数のミオシンフィラメント34により構成してもよい。F−アクチンフィラメント33の可動壁51、52および配管40内面への固定方法は、前述した第1の実施の形態の場合と同様である。
【0047】
このように構成されるポンプ装置においても、図18に示すようなキネシン32と微小管31からなる駆動部302を備えたポンプ装置102と同様、ミオシンフィラメント33が被搬送流体中に含まれるATPの加水分解によるエネルギーを受けて、これと接するF−アクチンフィラメント34上を移動することによって、可動壁51、52が配管40に対し接近および離間を繰り返す結果、被搬送流体は上流側から下流側へと搬送される。II型ミオシンがF−アクチンフィラメント33上を移動する1ステップ当たりの距離は、キネシンあるいはダイニンが微小管上を移動する距離に比べはるかに大きく、しかも、単位時間当たりのステップ数も多いため、高速かつ大容量の搬送が可能である。
【0048】
図24は、本発明のポンプ装置の第3の実施形態を概略的に示す斜視図、図25は、その側面図である。
【0049】
本実施形態のポンプ装置103は、被搬送流体を搬送するための配管40が、弾性を有する軟質材料からなる場合であって、かつ、第1の実施形態と同様、ATPを含有しほぼ生理的イオン強度に保たれた水溶液を満たした容器あるいは同様の条件の水溶液を含む生体内に配置されて使用されるものであり、図24、25に示すように、被搬送流体を搬送するための配管40の外周に長さ方向に間隔をおいて設けられた複数の環状駆動ユニット60により構成されている。
【0050】
各環状駆動ユニット60は、図26に拡大して示すように、複数のチューブリンからなる微小管31を極性方向を一致させて環状に連結するとともに、これらに沿って複数のキネシン32をそれぞれのN末端側の頭部が各微小管31に接するように配置した構造を有し、隣接する環状駆動ユニット60同士は極性方向が反転するように配管40の外周面に固定されている。微小管31同士の結合は、図26に示すように、対向する微小管31の末端にビオチンPを結合し、これらをアビジンPを介して結合することにより行われており、また、微小管31の配管40への固定も、図27に示すように、同様に、アビジンPを介したビオチンP同士の結合により行われている。さらに、各キネシン32のC末端側も、図28に示すように、アビジンPを介したビオチンP同士の結合により配管40の外周面に固定されている。
【0051】
このように構成されるポンプ装置103においては、各環状駆動ユニット60において、各キネシン32がATPの加水分解によるエネルギーを受けて、これと接する微小管31上をマイナス端側からプラス端側へ移動する。隣り合う環状駆動ユニット60は、微小管31の極性が逆方向を向いているため、配管40を径方向に押圧する力が生ずる。一方、配管40は弾性を有するため、キネシン32の移動ステップにおいて移動力が作用しないときには、その弾性力によって配管40は元の形状に戻る。このような動作が連続的に繰り返されることによって、被搬送流体は上流側から下流側へと搬送される。
【0052】
このように本実施形態においても、微小管やキネシンという極めて微小な構成要素により発生する動力を利用するものであるため、従来に比べ大幅な小型化、軽量化を図ることができるとともに、その動力源はATPの加水分解による化学エネルギーであるため、100%に近いエネルギー変換効率が得られ、エネルギー損失による発熱のおそれもない。また、可動床や可動壁のような部材を必要としないため、装置構造がより簡素化されるとともに、設置に要するスペースを減らすことができる。また、粘性の高い流体による閉塞のおそれも低減することができる。
【0053】
なお、被搬送流体がATPを含む場合には、上記環状駆動ユニット60を配管40の内周面に固定するようにしてもよい。配管40に対し上記の場合と同様の力が断続的に作用する結果、配管40内の被搬送流体が上流側から下流側へと搬送される。この例では、ポンプ装置を設置するためのスペースが不要となる。
【0054】
本実施形態においても、第1および第2の実施の形態の場合と同様、キネシン32あるいはキネシン重合体に代えて、ダイニンを用いてもよく、キネシン32あるいはキネシン重合体の場合と同様のポンプ駆動力を得ることができるうえ、ダイニンと微小管との反応がミカエリス・メンラン型反応に反し、ATPの濃度により微小管上を移動する最大速度が変化する性質を有するため、環状駆動ユニット60に作用するATPの濃度を変化させることにより、容易に被搬送流体の搬送量を変化させることができる。
【0055】
また、図29に示すように、F−アクチンフィラメント33とII型ミオシンからなるミオシンフィラメント34を、配管40の外周に周方向の収縮力が生ずるように配置する構成としてもよい。
【0056】
このように構成されるポンプ装置においても、図24に示すポンプ装置103と同様、配管40が径方向に断続的に押圧されるため、被搬送流体は上流側から下流側へと搬送される。II型ミオシンがF−アクチンフィラメント33上を移動する1ステップ当たりの距離は、キネシンあるいはダイニンが微小管上を移動する距離に比べはるかに大きく、しかも、単位時間当たりのステップ数も多いため、高速かつ大容量の搬送が可能である。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来に比べより小型化、軽量化を図ることができるとともに、エネルギー損失による発熱も少なく、生体内等への適用に適したポンプ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポンプ装置の第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示すポンプ装置の断面構造を概略的に示す図。
【図3】図2のA−A矢視断面図。
【図4】図2の要部を拡大して示す断面図。
【図5】本発明で使用されるキネシンの一例を概略的に示す図。
【図6】(a)は重合過程にある図5に示すキネシンを概略的に示す図、(b)はその重合後の構造を模式的に示す図。
【図7】微小管の構造を概略的に示す斜視図。
【図8】キネシンの固定方法を説明する図。
【図9】微小管の固定方法を説明する図。
【図10】キネシンが微小管上を移動する様子を示す図。
【図11】本発明の第1の実施形態の一変形例の断面構造を概略的に示す図。
【図12】F−アクチンフィラメントの構造を模式的に示す図。
【図13】図11のB−B矢視断面図。
【図14】F−アクチンフィラメントの固定方法を説明する図。
【図15】本発明の第1の実施形態の変形例を示す上面図。
【図16】本発明の第1の実施形態の変形例を示す上面図。
【図17】本発明の第1の実施形態の変形例の断面構造を概略的に示す図。
【図18】本発明の第2の実施形態の断面構造を概略的に示す図。
【図19】図18の要部を拡大して示す断面図。
【図20】図18の要部をさらに拡大して示す断面図。
【図21】本発明の第2の実施形態の配管内の可動壁を概略的に示す斜視図。
【図22】本発明の第2の実施形態における可動壁の他の例を示す斜視図。
【図23】本発明の第2の実施形態の変形例を示す概略断面図。
【図24】本発明の第3の実施形態を概略的に示す斜視図。
【図25】図24の側面図。
【図26】図24の要部を拡大して示す図。
【図27】微小管同士の結合方法および微小管の配管への固定方法を説明する図。
【図28】キネシンの配管への固定方法を説明する図。
【図29】本発明の第3の実施形態の変形例の要部を拡大して示す斜視図。
【符号の説明】
10……ケーシング、11……吸入口、12……吐出口、20……可動床、31,31a,31b……微小管、32……キネシン、33……F−アクチンフィラメント、34……ミオシンフィラメント、40,40a,40b……配管、51,52,53,54……可動壁、60……環状駆動ユニット、101,102,103……ポンプ装置、301,302……駆動部

Claims (9)

  1. ケーシング内に可動床と、この可動床を上下に連続的に往復駆動させる駆動部を備え、前記駆動部による前記可動床の往復駆動により被搬送流体を吸入し吐出するポンプ装置において、
    前記駆動部は、微小管および微小管依存性モータタンパクを含むとともに、これらの化学作用により発生する動力により前記可動床が往復駆動するように構成されていることを特徴とするポンプ装置。
  2. 微小管依存性モータタンパクが、キネシンまたはダイニンであることを特徴とする請求項1記載のポンプ装置。
  3. 前記駆動部は、II型ミオシンおよびアクチンを含むとともに、これらの化学作用により発生する動力により前記可動床が往復駆動するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のポンプ装置。
  4. 配管内をアデノシン三リン酸を含む流体を搬送するポンプ装置であって、
    前記配管内に対向配置された一対の可動壁と、前記一対の可動壁を配管内壁に該内壁とのクリアランスが配管の上流側が下流側より大きくなるように支持しつつ配管の径方向に連続的に往復駆動させる駆動部を有するポンプ装置において、前記駆動部は、微小管および微小管依存性モータタンパクを含むとともに、これらの化学作用により発生する動力により前記可動壁が往復駆動するように構成されていることを特徴とするポンプ装置。
  5. 微小管依存性モータタンパクが、キネシンまたはダイニンであることを特徴とする請求項4記載のポンプ装置。
  6. 前記駆動部は、II型ミオシンおよびアクチンを含むとともに、これらの化学作用により発生する動力により前記可動床が往復駆動するように構成されていることを特徴とする請求項4記載のポンプ装置。
  7. 軟質弾性材料からなる配管の外周または内周に配設され前記配管に断続的な押圧力を加える駆動部を備え、前記駆動部による断続的な押圧力によって前記配管内部の液体を搬送するポンプ装置において、
    前記駆動部は、微小管および微小管依存性モータタンパクを含むとともに、これらの化学作用により発生する動力により前記配管に断続的な押圧力を加えるように構成されていることを特徴とするポンプ装置。
  8. 微小管依存性モータタンパクが、キネシンまたはダイニンであることを特徴とする請求項7記載のポンプ装置。
  9. 前記駆動部は、II型ミオシンおよびアクチンを含むとともに、これらの化学作用により発生する動力により前記配管に捩じり力が加えられるように構成されていることを特徴とする請求項7記載のポンプ装置。
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