JP2004159654A - 抗体およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ウロテンシンIIが関与する疾患等の治療剤、予防剤、診断薬の開発に有用な新規抗体および該抗体を用いたウロテンシンIIの定量法などの提供。
【解決手段】 動物由来の特定なアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体、該抗体を用いたウロテンシンIIの定量方法、および該抗体を含有してなる医薬等。
【選択図】 なし

Description

本発明は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに結合特異性を有する抗体に関する。更に詳しくは、抗原抗体反応に基づく上記ポリペプチドまたはその誘導体の定量法の開発、上記ポリペプチドまたはその誘導体が関与する疾患の診断および予防・治療剤の開発などに有用な抗体に関する。
ヒトなど哺乳動物においては、心機能や血圧などの心循環器系の調節にアンジオテンシンII、ブラディキニンおよびエンドセリンなどの種々の内在性生理活性ペプチドが関与していることが知られている。最近、これらのペプチドに加えて新たにウロテンシンIIの心循環器系に対する関与が明らかとなり、新規の心循環器系作用ペプチドとして注目されている。ウロテンシンIIは、当初、魚類の尾部下垂体から見出されたペプチドであり、魚類においては心循環調節、浸透圧調節あるいは脂質代謝などに関与することが知られていたが、一方で、魚類のウロテンシンIIがラットなど哺乳動物に対して静脈内投与による血圧低下作用あるいは血管標本に対する収縮あるいは弛緩活性を示すこと、また、標識したウロテンシンIIに対する特異的結合がラット血管より調製された膜画分に確認されたことから、哺乳動物においてもウロテンシンIIのホモログが存在して内在性のペプチドとして機能し、さらにその特異的受容体が存在することが予想されていた(J. Exp. Zool.、275巻、226-238頁、1996年)。そして、その予想どおり、ウロテンシンIIの前駆体遺伝子が魚類以外にカエル、さらには哺乳動物であるマウス、ラットおよびヒトにも存在することが示された(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95巻、15803-15808頁、1998年、FEBS Lett.、457巻、28-32頁、1999年、特許文献1 WO 01/04298号公報)。また、前駆体遺伝子からプロセスされた成熟ペプチドとしてのウロテンシンIIがブタ脊髄から精製・単離され、哺乳動物においても実際にウロテンシンIIがペプチドとして存在することも示された(Biochem. Biophys. Res. Commun.、265巻、123-129頁、1999年、特許文献2 WO 00/32627号公報)。さらに、リガンド未知のオーファン受容体であるヒトおよびラットGPR14 (SENR)(Genomics、29巻、335-344頁、1995年、Bichem. Biophys. Res. Commun.、209巻、752-759頁、1995年)がウロテンシンIIの機能的な受容体であることが、GPR14受容体蛋白質を発現させた動物細胞にリガンド候補としてウロテンシンIIを投与して反応性を見出したり(WO 01/04298号公報、Nature、401巻、282-286頁、1999年、Biochem. Biophys. Res. Commun.、266巻、174-178頁、1999年、Nature Cell Biol.、1巻、383-385頁、1999年)、あるいは、受容体発現細胞の反応性を指標として動物組織抽出物からリガンド活性物質であるウロテンシンIIを精製すること(Biochem. Biophys. Res. Commun.、265巻、123-129頁、1999年、WO 00/3262号公報)によって明らかにされた。
ウロテンシンIIが極めて強力な血管収縮活性を示すことは、哺乳動物におけるホモログペプチドおよび受容体の発見に先んじて、ハゼウロテンシンIIおよびラット胸部大動脈を用いて見出されていた(Am. J. Phys.、21巻、R361-R366頁、1987年、Eur. J. Pharmacol.、149巻、61-66頁、1988年)が、ヒトウロテンシンIIを用いても確認された(Nature、401巻、282-286頁、1999年)。さらに、ウロテンシンIIをサルに静脈投与すると全身性の血管収縮により血流量が減少し、また、冠血管の収縮によって心不全に陥ることが示された(Nature、401巻、282-286頁、1999年)。これらのことからウロテンシンIIが新たな心循環器系関連ペプチドとして心疾患などの発症に関与している可能性が予想された。しかし、その後、単離ヒト血管を用いた検討によってウロテンシンIIがヒト血管に対しては、冠血管あるいは微小血管において必ずしも顕著な収縮作用を示さず、ヒト循環器系に対する作用はあまり大きなものではないことが示された(Br. J. Pharmacol.、131巻、441-446頁、2000年、Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol.、280巻、H925-H928頁、2001年、Circulation、103巻、1378-1381頁、2001年)。ヒトにウロテンシンIIを投与した実験では、前腕部の血流が減少したという報告(Br. J. Pharmacol.、135巻、25-27頁、2002年)および血流に影響を与えなかったという報告(Cardiovasc. Res.、53巻、341-347頁、2002年)の両者がある。最近、低酸素状態に置くことによって肺性高血圧および右室肥大を呈したラットにおいてウロテンシンIIおよびその受容体の右室での発現が亢進していること(Heart Vessels、16巻、64-68頁、2002年)およびヒトにおいても鬱血性心不全患者の心筋でウロテンシンIIの発現が亢進していることが報告された(Lancet、359巻、1990-1997頁、2002年)。さらに、培養ラット心筋細胞においてウロテンシンIIが肥大作用を示す(FEBS Lett.、508巻、57-60頁、2001年)ことから、ウロテンシンIIが心肥大の発症に関与し、心不全の原因となっている可能性が示唆された。なお、心不全患者の血中ウロテンシンII濃度が増加していることも報告されている(Lancet、360巻、545-546頁、2002年)。さらには、腎不全患者などの血中あるいは尿中ウロテンシンII濃度が増加していることが報告され(Lancet、358巻、810-811頁、2001年、J. Hypertention、19巻、2185-2190頁、2001年)、腎機能に対するウロテンシンIIの関与が示唆された。また、GPR14が脳の中脳橋被蓋野のコリン作動性ニューロンと共存すること(Brain Res.、923巻、120-127頁、2001年)、そして、ラットを用いた実験によりウロテンシンIIの脳室内投与によって行動量が増加したり、不安が亢進されることが報告(Psychopharmacology、155巻、426-433頁、2001年、特許文献3 WO 02/14513号公報)されており、何らかの中枢作用が存在することも示唆された。
WO 01/04298号公報 WO 00/32627号公報 WO 02/14513号公報
ウロテンシンIIの生理作用または疾患に対する関与についてのさらなる検討が必要とされており、ウロテンシンIIを簡便かつ高感度に検出・定量する測定系が切望されていた。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ウロテンシンIIを認識する複数のモノクローナル抗体を作製し、該抗体を用いるウロテンシンIIの優れた測定法を開発した。そして、さらに研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体、
(2)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5または配列番号:6で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する上記(1)記載の抗体、
(3)配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有するペプチドに特異的に反応する上記(1)記載の抗体、
(4)C端側の部分ペプチドが、(i)配列番号:1の第5番目〜第10番目のアミノ酸配列、(ii)配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4もしくは配列番号:6の第6番目〜第11番目のアミノ酸配列、(iii)配列番号:5の第8番目〜第13番目のアミノ酸配列、(iv)配列番号:7の第2番目〜第7番目のアミノ酸配列、または(v)配列番号:8の第8番目〜第13番目のアミノ酸配列を有するペプチドである上記(1)記載の抗体、
(5)モノクローナル抗体である上記(1)記載の抗体、
(6)標識化された上記(1)記載の抗体、
(7)中和抗体である上記(1)記載の抗体、
(8)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の活性を中和する上記(7)記載の抗体、
(9)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5または配列番号:6で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の活性を中和する上記(7)記載の抗体、
(10)AUII5−6−10(FERM BP−8221)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生され得るAUII5−6−10aで標示される上記(5)記載の抗体、
(11)AUII103−5−41(FERM BP−8220)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生され得るAUII103−5−41aで標示される上記(5)記載の抗体、
(12)上記(5)記載の抗体を産生するハイブリドーマ細胞、
(13)AUII103−5−41(FERM BP−8220)で標示される上記(12)記載のハイブリドーマ細胞、
(14)AUII5−6−10(FERM BP−8221)で標示される上記(12)記載のハイブリドーマ細胞、
(15)上記(12)記載のハイブリドーマ細胞を生体内または生体外で培養し、その体液または培養物から上記(5)記載の抗体を採取することを特徴とする上記(5)記載の抗体の製造法、
(16)上記(1)記載の抗体を含有してなる医薬、
(17)中枢神経疾患、精神疾患、循環器疾患、心疾患、腎臓疾患または泌尿器系疾患の予防・治療剤である上記(16)記載の医薬、
(17a)精神疾患の予防・治療剤である上記(16)記載の医薬、
(18)上記(1)記載の抗体を含有してなる診断薬、
(19)中枢神経疾患、精神疾患、循環器疾患、心疾患、腎臓疾患または泌尿器系疾患の診断薬である上記(18)記載の診断薬、
(19a)精神疾患の診断薬である上記(18)記載の診断薬、
(20)上記(1)記載の抗体を用いることを特徴とする配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の定量法、
(21)上記(1)記載の抗体、被検液および標識化された配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の割合を測定することを特徴とする、被検液中の配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の定量法、
(22)上記(1)記載の抗体を用いることを特徴とする配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体が関与する疾患の診断法、
(23)哺乳動物に対して、上記(1)記載の抗体の有効量を投与することを特徴とする中枢神経疾患、精神疾患、循環器疾患、心疾患、腎臓疾患または泌尿器系疾患の予防・治療法、
(24)中枢神経疾患、精神疾患、循環器疾患、心疾患、腎臓疾患または泌尿器系疾患の予防・治療剤を製造するための上記(1)記載の抗体の使用などを提供する。
本発明の抗体は、本発明のペプチドが関与する疾患等の治療剤、予防剤、診断薬の開発に有用である。本発明の抗体を含むハイブリドーマ細胞を用いることにより、本発明の抗体は工業的に生産することが可能である。また、本発明の抗体を含有してなる医薬(特に診断薬)は、本発明のペプチドが関与する疾患〔例、中枢神経疾患(例、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、ピック病、ハンチントン病、老人性痴呆、脳血管性痴呆など)、精神疾患(例、不安、鬱病、不眠症、統合失調症、恐怖症など)、循環器疾患(例、高血圧症、低血圧症など)、心疾患(例、心不全、不整脈、QT延長症候群、拡張型うっ血性心筋症、肥大型心筋症、肺高血圧など)、腎臓疾患(例、腎炎、腎不全、間室性腎疾患など)、泌尿器系疾患(例、頻尿、尿失禁など)など〕の診断等に有用である。
本発明の抗体は、本発明のペプチドの中和作用を有することより、例えば中枢神経疾患(例、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、ピック病、ハンチントン病、老人性痴呆、脳血管性痴呆など)、精神疾患(例、不安、鬱病、不眠症、統合失調症、恐怖症など)、循環器疾患(例、高血圧症、低血圧症など)、心疾患(例、心不全、不整脈、QT延長症候群、拡張型うっ血性心筋症、肥大型心筋症、肺高血圧など)、腎臓疾患(例、腎炎、腎不全、間室性腎疾患など)、泌尿器系疾患(例、頻尿、尿失禁など)などの予防・治療剤として有用である。
本発明の抗体を用いることにより、本発明のペプチドの量を高い感度で測定することができる。このため、本発明の定量法は、本発明のペプチドが関与する疾患〔例、中枢神経疾患(例、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、ピック病、ハンチントン病、老人性痴呆、脳血管性痴呆など)、精神疾患(例、不安、鬱病、不眠症、統合失調症、恐怖症など)、循環器疾患(例、高血圧症、低血圧症など)、心疾患(例、心不全、不整脈、QT延長症候群、拡張型うっ血性心筋症、肥大型心筋症、肺高血圧など)、腎臓疾患(例、腎炎、腎不全、間室性腎疾患など)、泌尿器系疾患(例、頻尿、尿失禁など)など〕の診断、予防または治療に有用である。本発明の抗体を用いることにより、ヒト、ブタ、ウシ、ラット、マウスまたはハゼ等由来の本発明のペプチドの量を高い感度で測定することができるため、本発明の抗体は、本発明のペプチドが関与する疾患の診断薬、予防・治療剤、試薬等として有用である。
本明細書におけるタンパク質(ポリペプチド)は、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチドをはじめとする、本発明で用いられるタンパク質は、C末端がカルボキシル基、カルボキシレート、アミドまたはエステルの何れであってもよい。
配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその誘導体を、以下、本発明のペプチドと称することもある。さらに、配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその誘導体も、本発明のペプチドに含まれる。
上記誘導体としては、例えば、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列の一部のアミノ酸残基が、置換可能な基によって置換されたもの、アミノ酸残基の一部が欠失したもの、アミノ酸残基などが付加・挿入されたものなどが挙げられる。
配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの誘導体の例としては、(i)上記アミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜5個、好ましくは1または2個)のアミノ酸が欠失したもの、(ii)上記アミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜5個、好ましくは1または2個)のアミノ酸が付加したもの、(iii)上記アミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜5個、好ましくは1または2個)のアミノ酸が挿入されたもの、または(iv)上記アミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜5個、好ましくは1または2個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたものが挙げられる。
さらに、上記誘導体としては、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドにおいて、その一部のアミノ酸残基が置換可能な基(例、Cys、水酸基など)によって置換されたもの、その一部のアミノ酸残基が欠失し、かつ一部のアミノ酸残基が置換可能な基(例、Cys、水酸基など)によって置換されたものなども挙げられる。
本発明のペプチドのC端側の部分ペプチドとしては、例えば、(i)配列番号:1の第5番目〜第10番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(ii)配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4または配列番号:6の第6番目〜第11番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(iii)配列番号:5の第8番目〜第13番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(iv)配列番号:7の第2番目〜第7番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(v)配列番号:8の第8番目〜第13番目のアミノ酸配列を有するペプチド、および(vi)これらのペプチドの一部のアミノ酸残基(例、1個)が置換可能な基によって置換されたものなどが挙げられる。
本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドとしては、例えば、(i)配列番号:1の第1番目〜第5番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(ii)配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4または配列番号:6の第1番目〜第6番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(iii)配列番号:5の第1番目〜第8番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(iv)配列番号:8の第1番目〜第8番目のアミノ酸配列を有するペプチド、および(v)これらのポリペプチドの一部のアミノ酸残基(例、1個)が置換可能な基によって置換されたものなどが挙げられる。
本発明のペプチドのC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体は、本発明のペプチドのC端側の部分ペプチドに特異的に反応するものであればよく、(i)配列番号:1の第5番目〜第10番目、第4番目〜第11番目のアミノ酸配列を有するペプチド、
(ii)配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4または配列番号:6の第6番目〜第11番目、第5番目〜第12番目のアミノ酸配列を有するペプチド、
(iii)配列番号:5の第8番目〜第13番目、第7番目〜第14番目のアミノ酸配列を有するペプチド、
(iv)配列番号:7の第2番目〜第7番目のアミノ酸配列を有するペプチド、
(v)配列番号:8の第8番目〜第13番目、第7番目〜第14番目のアミノ酸配列を有するペプチド、および
(vi)これらのポリペプチドの一部のアミノ酸残基(例、1個)が置換可能な基によって置換されたものなどに特異的に反応する抗体が挙げられる。
本発明のペプチドのC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体としては、モノクローナル抗体がより好ましい。好ましい例としては、AUII5−6−10(FERM BP−8221)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生され得るAUII5−6−10aで標示されるモノクローナル抗体、AUII103−5−41(FERM BP−8220)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生され得るAUII103−5−41aで標示されるモノクローナル抗体などが挙げられる。
このように、本発明のペプチドのC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体は、本発明のペプチドのC端側の特定のアミノ酸配列を認識することにより、本発明のペプチドと反応することができる。
本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体は、本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドに特異的に反応するものであればよい。このような抗体としては、(i)配列番号:1の第1番目〜第5番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(ii)配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4または配列番号:6の第1番目〜第6番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(iii)配列番号:5の第1番目〜第8番目のアミノ酸配列を有するペプチド、(iv)配列番号:8の第1番目〜第8番目のアミノ酸配列を有するペプチド、および(v)これらのポリペプチドの一部のアミノ酸残基(例、1個)が置換可能な基によって置換されたものなどに特異的に反応する抗体が挙げられる。
本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体としては、モノクローナル抗体がより好ましい。このような抗体としては、さらに本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドに特異的に反応するが、C端側の部分ペプチドには反応しない抗体がより好ましい。
このように、本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体は、上記本発明のペプチドのN端側の特定のアミノ酸配列を認識することにより、本発明のペプチドと反応することができる。
以下に、本発明の抗体の抗原の調製法、および該抗体の製造法について説明する。
(1)抗原の調製
本発明の抗体を調製するために使用される抗原としては、例えば本発明のペプチド、本発明のペプチドと同一の抗原決定基を1種あるいは2種以上有する合成ペプチドなど何れのものも使用することができる(以下、これらを単に本発明の抗原と称することもある)。
本発明のペプチドは、(a)哺乳動物(例、ヒト、ウシ、ラット、マウス、ブタ、サルなど)、魚類(例、ハゼなど)などの組織または細胞から公知の方法あるいはそれに準ずる方法を用いて調製、(b)ペプチド・シンセサイザー等を使用する公知のペプチド合成方法で化学的に合成、または(c)本発明のペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって製造することができる。
(a)該哺乳動物または魚類の組織または細胞から本発明の抗原を調製する場合は、その組織または細胞をホモジナイズした後、酸、またはアルコールなどで抽出を行い、得られた抽出液を、塩析、透析、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離し、本発明の抗原を調製できる。
(b)本発明の抗原を化学的に合成する場合に用いられる、合成ペプチドとしては、例えば天然より精製した本発明の抗原と同一の構造を有するものや、本発明のペプチドなどのアミノ酸配列において2個以上、好ましくは3個以上のアミノ酸からなる任意の箇所のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を1種あるいは2種以上含有するペプチドなどが挙げられる。
(c)DNAを含有する形質転換体を用いて該本発明のペプチドを製造する場合、該DNAは、公知のクローニング方法(例えば、Molecular Cloning(2nd ed.;J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法など)に従って作成することができる。該クローニング方法としては、(1)本発明のペプチドのアミノ酸配列に基づきデザインしたDNAプローブまたはDNAプライマーを用い、cDNAライブラリーからハイブリダイゼーション法により該本発明のペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を得る方法、または(2)該本発明のペプチドのアミノ酸配列に基づきデザインしたDNAプライマーを用い、PCR法により該本発明のペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を得る方法などが挙げられる。
本発明の抗原としてのペプチドは、(1)公知のペプチドの合成法に従って、または(2)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを適当なペプチダーゼで切断することによって調製することができる。
ペプチドの合成法としては、例えば固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、該ペプチドを構成し得る部分ペプチド、またはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としてはたとえば、以下の(i)または(ii)に記載された方法等が挙げられる。
(i)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York (1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、The Peptide, Academic Press, New York (1965年)
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて該ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
ペプチドのアミド体は、アミド形成に適した市販のペプチド合成用樹脂を用いて得ることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などが挙げられる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするペプチドの配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、目的のペプチドを取得する。あるいはクロロトリチル樹脂、オキシム樹脂、4−ヒドロキシ安息香酸系樹脂等を用い、部分的に保護したペプチドを取り出し、更に常套手段で保護基を除去し目的のペプチドを得ることもできる。
上記した保護されたアミノ酸の縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、カルボジイミド類が好ましく用いられる。このようなカルボジイミド類としてはDCC、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが挙げられる。各種活性化試薬による活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBtなど)とともに保護されたアミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護されたアミノ酸の活性化を行ったのちに樹脂に添加することができる。保護されたアミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。そのような溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジンなどの三級アミン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが保護されたアミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒として用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜約50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常約1.5ないし約4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化して、後の反応に影響を及ぼさないようにすることができる。
原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが挙げられる。カルボキシル基の保護基としては、たとえばC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C7-14アラルキル基の他、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシル基およびベンジルオキシカルボニルヒドラジド、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどが挙げられる。
セリンおよびスレオニンの水酸基は、たとえばエステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては例えばアセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが挙げられる。また、エーテル化に適する基としては、たとえばベンジル基、テトラヒドロピラニル基、ターシャリーブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、たとえばBzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが挙げられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、Bom、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが挙げられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、たとえば対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(たとえば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル]などが挙げられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、たとえば対応するリン酸アミドが挙げられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、たとえばPd−黒またはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども挙げられる。上記酸処理による脱離反応は一般に−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においてはアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護および保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。
ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、まず、カルボキシル末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化し、その後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後に、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(またはアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる方法が挙げられる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ペプチドを得ることができる。この粗ペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のペプチドのアミド体を得ることができる。
ペプチドのエステル体を得るにはカルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ペプチドのアミド体と同様にして所望のペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明の抗原は、不溶化したものを直接免疫することもできる。また、本発明の抗原を適当な担体に結合または吸着させた複合体を免疫してもよい。該担体(キャリアー)と本発明の抗原(ハプテン)との混合比は、担体に結合あるいは吸着させた本発明の抗原に対して抗体が効率よくできれば、どのようなものをどのような比率で結合あるいは吸着させてもよく、通常ハプテンに対する抗体の作製にあたり常用されている高分子担体を重量比でハプテン1に対し0.1〜100の割合で使用することができる。このような高分子担体としては、天然の高分子担体や合成の高分子担体が挙げられる。天然の高分子担体としては、例えばウシ、ウサギ、ヒトなどの哺乳動物の血清アルブミンや例えばウシ、ウサギなどの哺乳動物のチログロブリン、例えばウシ、ウサギ、ヒト、ヒツジなどの哺乳動物のヘモグロビン、KHLヘモシアニンなどが用いられる。
合成の高分子担体としては、例えばポリアミノ酸類、ポリスチレン類、ポリアクリル類、ポリビニル類、ポリプロピレン類などの重合物または供重合物などの各種ラテックスなどを用いることができる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができる。縮合剤としては、例えば、チロシン、ヒスチジン、トリプトファンを架橋するビスジアゾ化ベンジジンなどのジアゾニウム化合物、アミノ基同士を架橋するグルタルアルデビトなどのジアルデヒド化合物、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、チオール基同士を架橋するN,N'-o-フェニレンジマレイミドなどのジマレイミド化合物、アミノ基とチオール基を架橋するマレイミド活性エステル化合物、アミノ基とカルボキシル基とを架橋するカルボジイミド化合物などが好都合に用いられる。また、アミノ基同士を架橋する際にも、一方のアミノ基にジチオピリジル基を有する活性エステル試薬(例えば、SPDPなど)を反応させた後還元することによりチオール基を導入し、他方のアミノ基にマレイミド活性エステル試薬によりマレイミド基を導入後、両者を反応させることもできる。
(2)モノクローナル抗体の作製
本発明の抗原は、温血動物に対して、例えば腹腔内注入、静脈注入、皮下注射などの投与方法によって、抗体産生が可能な部位にそれ自体単独であるいは担体、希釈剤と共に投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。温血動物としては、例えばサル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどがあげられるが、モノクローナル抗体作製にはマウスが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体の作製に際しては、本発明の抗原を免疫された温血動物、たとえばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、本発明のペプチドのモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。血清中の本発明のペプチドの抗体価の測定は、例えば後記の標識化した本発明のペプチドと抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することによりなされる。融合操作は既知の方法、例えばケーラーとミルスタインの方法(Nature、256巻、495頁、1975年)に従い実施できる。融合促進剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられ、好ましくはPEGなどが用いられる。骨髄腫細胞としてはたとえばNS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などがあげられ、P3U1などが好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄細胞数との好ましい比率は、通常1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、通常20〜40℃、好ましくは30〜37℃で通常1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
本発明の抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば本発明のペプチドまたはそれらの部分ペプチドを直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した本発明のモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識した本発明のペプチドを加え、固相に結合した本発明のモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。本発明のモノクローナル抗体のスクリーニング、育種は、通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加して、10〜20%牛胎児血清を含む動物細胞用培地(例、RPMI1640)で行われる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の本発明の抗体の抗体価の測定と同様にして測定できる。
本発明のペプチドに対するモノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法(例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法など)に従って行われる。
以上のようにして、ハイブリドーマ細胞を温血動物の生体内または生体外で培養し、その体液または培養物から抗体を採取することによって、本発明の抗体を製造することができる。
本発明の抗体は、本発明のペプチドを感度良く定量することができる。
以下に、本発明のペプチドの定量法(免疫測定法)、本発明の抗体含有医薬など、本発明の抗体の用途について、詳細に説明する。
(1)本発明のペプチドの定量法
本発明の抗体を用いることにより、本発明のペプチドの測定あるいは組織染色などによる検出を行なうことができる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また抗体分子のF(ab')2、Fab'またはFab画分などを用いてもよい。
本発明の抗体を用いる測定法は、特に制限されるものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、本発明のペプチド量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製し算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。
このような測定法としては、例えば、サンドイッチ法、競合法、イムノメトリック法、ネフロメトリーなどが用いられるが、感度、特異性の点で後述する競合法が好ましい。
1)競合法
競合法は、本発明の抗体、被検液および標識化された本発明のペプチドとを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明のペプチドの割合を測定することにより、被検液中の本発明のペプチドを定量する定量法である。
競合法による被検液中の本発明のペプチドの定量は、例えば、固相化法を用いて行うことが好ましい。
固相化法の具体例としては、抗マウスIgG抗体を固相化抗体として用い、この固相化抗体の存在するプレートに、
(a)(i)本発明の抗体(例、AUII5-6-10aまたはAUII103-5-41aで標示されるモノクローナル抗体など)、(ii)ビオチンで標識化された本発明のペプチド、および(iii)被検液を反応させ、HRP(西洋ワサビパーオキシダーゼ)で標識化されたアビジンを加え、反応後、固相上のHRP活性を測定し、本発明のペプチドを定量する方法、または
(b)(i)本発明の抗体(例、AUII5-6-10aまたはAUII103-5-41aで標示されるモノクローナル抗体など)、(ii)HRPで標識化された本発明のペプチド、および(iii)被検液を添加し、反応後、固相に吸着したHRP活性を測定し、本発明のペプチドを定量する方法などが挙げられる。
2)サンドイッチ法
サンドイッチ法は、担体上に不溶化した本発明の抗体、標識化された本発明の抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のペプチドを定量する定量法である。
サンドイッチ法として、好ましくは、
(i)担体上に不溶化した本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体、標識化された本発明のペプチドのC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体(好ましくは、AUII5-6-10aまたはAUII103-5-41aで標示されるモノクローナル抗体)および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のペプチドの定量法、
(ii)担体上に不溶化した本発明のペプチドのC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体(好ましくは、AUII5-6-10aまたはAUII103-5-41aで標示されるモノクローナル抗体)、標識化された本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のペプチドの定量法などが挙げられる。
サンドイッチ法においては、不溶化した本発明のペプチドのC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体または本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体に被検液を反応(1次反応)させ、さらに標識化された本発明のペプチドのC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体または本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体を反応(2次反応)させた後、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより、被検液中の本発明のペプチド量を定量することができる。1次反応と2次反応は同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は、前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。サンドイッチ法による本発明のペプチドの測定法においては、例えば、1次反応で用いられる抗体が本発明のペプチドのC端側の部分ペプチドを認識する場合は、2次反応で用いられる抗体はC端側の部分ペプチド以外(即ち、N端側)を認識する抗体が好ましく、1次反応で用いられる抗体が本発明のペプチドのN端側の部分ペプチドを認識する場合は、2次反応で用いられる抗体は、N端側の部分ペプチド以外(即ち、C端側)を認識する抗体が好ましく用いられる。
3)イムノメトリック法
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化された本発明の抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは被検液中の抗原と過剰量の標識化された本発明の抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化された本発明の抗体を固相に結合させた後、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
4)ネフロメトリー
ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
上記1)〜4)の定量法において、標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、特に限定されるものではないが、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、特に限定されるものではないが、例えば[125I]、[131I]、[3H]、[14C]などが好ましい。上記酵素としては、特に限定されるものではないが、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えばβ−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが挙げられる。上記蛍光物質としては、特に限定されるものではないが、例えばフルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが挙げられる。上記発光物質としては、特に限定されるものではないが、例えばルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが挙げられる。さらに、抗体と標識剤との結合には、ビオチン−アビジン系の化合物を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、例えばアガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、例えばポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコンなどの合成樹脂あるいはガラスなどが挙げられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のペプチドの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる(例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)など参照)。以上のように、本発明の抗体は、本発明のペプチドを感度良く定量することができ、本発明のペプチドの生理機能の解明および本発明のペプチドが関与する疾患・症状の予防・治療や診断に有用である。
本発明のペプチドは、血管平滑筋収縮作用、心筋肥大作用、不安亢進作用などの作用を有する。
本発明の抗体を用いて体液中(血液、血漿、血清、尿など)に含まれる本発明のペプチドの量を測定することにより、本発明のペプチドが関与する疾患〔例、中枢神経疾患(例、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、ピック病、ハンチントン病、老人性痴呆、脳血管性痴呆など)、精神疾患(例、不安、鬱病、不眠症、統合失調症、恐怖症など)、循環器疾患(例、高血圧症、低血圧症など)、心疾患(例、心不全、不整脈、QT延長症候群、拡張型うっ血性心筋症、肥大型心筋症、肺高血圧など)、腎臓疾患(例、腎炎、腎不全、間室性腎疾患など)、泌尿器系疾患(例、頻尿、尿失禁など)など〕などを診断することができる。また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明のペプチドを検出するためにも使用することができる。また、本発明のペプチドを精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のペプチドの検出、被検細胞内における本発明のペプチドの挙動の分析などのために使用することもできる。
(2)本発明の抗体を含有してなる医薬
本発明の抗体は、本発明のペプチドの中和作用を有し、本発明のペプチドの示す血管平滑筋収縮作用、心筋肥大作用、不安亢進作用などの作用を阻害する作用を有することより、例えば、本発明のペプチドが関与する疾患〔例、中枢神経疾患(例、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、ピック病、ハンチントン病、老人性痴呆、脳血管性痴呆など)、精神疾患(例、不安、鬱病、不眠症、統合失調症、恐怖症など)、循環器疾患(例、高血圧症、低血圧症など)、心疾患(例、心不全、不整脈、QT延長症候群、拡張型うっ血性心筋症、肥大型心筋症、肺高血圧など)、腎臓疾患(例、腎炎、腎不全、間室性腎疾患など)、泌尿器系疾患(例、頻尿、尿失禁など)など〕などの予防・治療剤または診断薬などの医薬として使用することができる。
本発明の抗体を含有してなる予防・治療剤は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して非経口的または経口的に投与することができる。
本発明の抗体は、それ自体を投与しても良いし、または適当な医薬組成物として投与しても良い。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明の抗体およびその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであっても良い。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明の抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤(例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil))等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されても良い。
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。抗体の含有量としては、投薬単位剤形当たり通常5〜500mg程度、とりわけ注射剤では5〜100mg程度、その他の剤形では10〜250mg程度の上記抗体が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
本発明の抗体を含有する予防・治療剤または診断薬(医薬)の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルート等によっても異なるが、例えば、成人の肥大型心筋症の治療のために使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与(例、皮下投与)および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明の明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。アミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL−体を示すものとする。
PAM :フェニルアセタミドメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
Fmoc :9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロ−ベンジルオキシカルボニル
Bг−Z :2−ブロモーベンジルオキシカルボニル
Bzl :ベンジル
Cl−Bzl:2−クロロ−ベンジル
OcHex :シクロヘキシルエステル
OBzl :ベンジルエステル
Tos :p−トルエンスルホニル
HONB :N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
HOBt :1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOOBt :3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン
MeBzl :4−メチルベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Bum :t−ブトキシメチル
Trt :トリチル
DNP :ジニトロフェニル
TFA :トリフルオロ酢酸
DMF :N,N−ジメチルフォルムアミド
DCM :ジクロロメタン
DCC :N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド
BHA :ベンズヒドリルアミン
pMBHA :p−メチルベンズヒドリルアミン
CHO :ホルミル
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
本明細書において用いられる配列番号は、以下のペプチドのアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:1〕
ヒトウロテンシンIIのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
ブタウロテンシンII−1のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
ブタウロテンシンII−2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
ウシウロテンシンIIのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
ラットウロテンシンIIのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕
ハゼウロテンシンIIのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:7〕
以下に示す参考例1で得られたヒトウロテンシンII関連ペプチド(URP)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
マウスウロテンシンIIのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:9〕
配列番号:1の第5番目〜第10番目のアミノ酸配列を示す。(配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4もしくは配列番号:6の第6番目〜第11番目のアミノ酸配列、配列番号:5の第8番目〜第13番目のアミノ酸配列、配列番号:7の第2番目〜第7番目のアミノ酸配列、または配列番号:8の第8番目〜第13番目のアミノ酸配列)
後述の実施例1で得られたハイブリドーマ細胞AUII5-6-10は、平成14(2002)年10月22日から、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566)、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号FERM BP-8221として寄託されている。
後述の実施例1で得られたハイブリドーマ細胞AUII103-5-41は、平成14(2002)年10月22日から、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566)、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号FERM BP-8220として寄託されている。
なお、各ハイブリドーマ細胞から得られる抗体については細胞名の後に「a」を付けた形で表す。
以下に、参考例および実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
参考例1
ヒトウロテンシンII関連ペプチド(URP)(配列番号:7)の製造
市販のBoc-Val-OCH2-PAM樹脂(0.77 mmole/g resin)0.5 mmole 分をペプチド合成機ACT-90(Advanced Chemtech社)の反応槽に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Cys(MeBzl)、Boc-Tyr(Br-Z)、Boc-Lys(Cl-Z)、Boc-Trp(CHO)、Boc-Phe、Boc-Cys(MeBzl)、Boc-Alaを順に導入して目的の保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂0.32 gをp-クレゾール2 ml、1,4-ブタンジチオール1.5 mlと共に無水弗化水素20 ml中0℃60分撹袢した後、弗化水素を減圧留去し、残留物にジエチルエーテルを加えて沈殿を濾過した。この沈殿に50%酢酸水を加えて抽出し、不溶部分を除き、抽出液を十分に濃縮後50%酢酸水で充填したセファデックス(登録商標)G-25カラム(2.0 x 80 cm)に付した。同溶媒で展開して主要画分を集め、凍結乾燥して粗SHペプチド118 mgを得た。このうち50 mgを6 M尿素水溶液100 mlに溶解し、蒸留数400 mlを加えて希釈の後、アンモニア水を用いてpH8に調整し、緩やかに空気を吹込みながら攪拌した。反応をHPLCで追跡し、SH体ペプチドのピークがすべてSS体に変化したことを確認した後、酢酸を加えて溶液のpHを3に調整した。LiChroprep(登録商標) RP-18を充填した逆相クロマトカラム(2.6 x 60 cm)に付し、0.1% TFA水200ml、続いて0.1% TFA含有20%アセとにトリル水200 mlで洗浄した。次に0.1% TFA含有20%アセトニトリル水300mlと0.1% TFA含有50%アセトニトリル水300 mlを用いた線型勾配溶出を行ない、主要画分を集めて凍結乾燥し、白色粉末7.9 mgを得た。
ESI-MS:M+ 1017.1 (理論値 1017.2)
HPLC溶出時間:9.9分
カラム条件
カラム:Wakosil-II 5C18HG 4.6 x 100mm
溶離液:A液: 0.1% TFA-水、B液: 0.1% TFA含有アセトニトリルを用い、A/B: 80/20〜60/40へ直線型濃度勾配溶出(10分)
流速:1.0ml/分
実施例1
(1)免疫原の作製および免疫
ヒトウロテンシンII(配列番号:1)、ブタウロテンシンII-1(配列番号:2)、ブタウロテンシンII-2(配列番号:3)、ウシウロテンシンII(配列番号:4)およびラットウロテンシンII(配列番号:5)とC末端側の構造(Cys-Phe-Trp-Lys-Tyr-Cys)が一致するハゼ(goby, long-jawed mudsucker, Gillichthys mirabilis)ウロテンシンII(ペニンスラ社よりの購入品、配列番号:6)を抗原としてウロテンシンIIのC末側を認識する抗体を作製した。
抗原作製のため、1mgのハゼウロテンシンIIペプチドと4mgのウシチログロブリン(BTG)を30mgのECDI(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、同仁化学)により結合させた後、生成したハゼウロテンシンII-BTG複合体を含む反応液を0.15M塩化ナトリウム水溶液に対して透析した。透析内液とフロイントの完全アジュバントを混ぜ、これを抗原として1頭当たりハゼウロテンシンII 20μg相当をBalb/Cマウス(雌、6〜8週齢)に初回免疫した。初回免疫からおよそ4週間後、複合体とフロイントの不完全アジュバントを混ぜ、これを抗原として2回目の免疫をした。抗体価が上昇するまで、2週間おきにハゼウロテンシンII-BTG複合体とフロイントの不完全アジュバント混合物を免疫した。
(2)ビオチン標識抗原の作製
ハゼウロテンシンIIにビオチンを結合させ、酵素免疫測定法(EIA)の標識体とした。すなわち、ハゼウロテンシンII 2nmolを0.1mlの50mMリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、ビオチンN-ヒドロキシスクシンイミドエステル 20nmolを加えて室温で1時間反応させた。この反応により、N末のアラニンのα-アミノ基においてビオチン化されたハゼウロテンシンIIまたは9残基目のリジンのε-アミノ基においてビオチン化されたハゼウロテンシンIIおよびこれら両者においてビオチン化されたハゼウロテンシンIIが生成するが、HPLCによって分画し、N末のアラニン残基のみがビオチン化されたハゼウロテンシンII([N-ビオチニル-Ala1]ハゼウロテンシンII、以下、ビオチン標識化ハゼウロテンシンIIと記載する)を得た。N末のアラニン残基のみがビオチン化されたハゼウロテンシンIIの構造は、質量分析においてビオチン1分子が結合して分子量が増加したこと、およびエドマン法によるN末端アミノ酸配列分析において、N末のアラニン残基のα−アミノ基がビオチン化されたためにイソチオシアン酸フェニルとの反応が進行せず、アラニン残基のフェニルチオヒダントイン誘導体が全く検出されなかったことによって確認された。
(3)抗体価の測定
ハゼウロテンシンIIを免疫中のマウス抗血清中の抗体価を以下の方法により測定した。抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートを作製するため、まず抗マウスイムノグロブリン抗体(IgG画分、カッペル社製)を10μg/ml含む50mM炭酸緩衝液(pH9.6)を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。次に、プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄したのち、ウェルの余剰の結合部位をふさぐため25%ブロックエース(雪印乳業社製)を含むPBSを200μlずつ分注し、4℃で少なくとも24時間処理した。
上記、抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートの各ウェルにバッファーC(1% BSA、0.4M NaCl、および2mM EDTAを含む0.02Mリン酸緩衝液、pH7.0)で希釈したマウス抗ハゼウロテンシンII抗血清 100μlを加え、4℃で16時間反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、上記(2)で作製したビオチン標識化ハゼウロテンシンII(バッファーCで200倍希釈)100μlを加え、室温で6時間反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、各ウェルにバッファーCで10000倍に希釈したHRP(西洋ワサビパーオキシダーゼ)標識アビジン溶液 100μlを加え、室温で2時間反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、固相上の酵素活性をTMBマイクロウェルパーオキシダーゼ基質システム(KIRKEGAARD & PERRY LAB, INC.、フナコシ薬品)100μlを加え室温で10分間反応させることにより測定した。反応を、1M リン酸 100μlを加えて停止させたのち、450nmの吸収をプレートリーダー(BICHROMATIC、大日本製薬社製)で測定した。
結果を〔図1〕に示す。
免疫した8匹のマウスのうち5匹にハゼウロテンシンIIのC末端部分に対する抗体価の上昇が認められた。
(4)モノクローナル抗ウロテンシンII抗体の作製
比較的高い抗体価を示したマウスに対して200〜300μgの免疫原を生理食塩水0.25〜0.3mlに溶解させたものを静脈内に接種することにより最終免疫を行なった。最終免疫3〜4日後のマウスから脾臓を摘出し、ステンレスメッシュで圧迫、ろ過し、イーグルズ・ミニマム・エッセンシャルメデイウム(MEM)に浮遊させ、脾臓細胞浮遊液を得た。細胞融合に用いる細胞として、BALB/Cマウス由来ミエローマ細胞P3-X63.Ag8.U1(P3U1)を用いた(カレント トピックス イン マイクロバイオロジー アンド イムノロジー、81巻、1頁、1978年)。細胞融合は、原報(ネイチャー、256巻、495頁、1975年)に準じて行なった。すなわち、脾臓細胞およびP3U1を、それぞれ血清を含有しないMEMで3度洗浄し、脾臓細胞とP3U1数の比率を5:1になるよう混合して、800回転で15分間遠心を行なって細胞を沈澱させた。上清を充分に除去した後、沈殿を軽くほぐし、45%ポリエチレングリコール(PEG)6000(コッホライト社製)を0.3ml加え、37℃温水槽中で7分間静置して融合を行なった。融合後細胞に毎分2mlの割合でMEMを添加し、合計15mlのMEMを加えた後600回転15分間遠心して上清を除去した。この細胞沈殿物を10%牛胎児血清を含有するGITメデイウム(和光純薬)(GIT-10% FCS)にP3U1が1ml当り2×105個になるように浮遊させ、24穴マルチディッシュ(リンブロ社製)に1ウェル1mlずつ120ウェルに播種した。播種後、細胞を37℃で5%炭酸ガスインキュベーター中で培養した。24時間後HAT(ヒポキサンチン1×10-4M、アミノプテリン4×10-7M、チミジン1.6×10-3M)を含んだGIT-10% FCS培地(HAT培地)を1ウェル当り1mlずつ添加することにより、HAT選択培養を開始した。HAT選択培養は、培養開始3、6、9日後に旧液を1ml捨てたあと、1mlのHAT培地を添加することにより継続した。ハイブリドーマの増殖は、細胞融合後9〜14日で認められ、培養液が黄変したとき(約1×106セル/ml)、上清を採取し、上記(3)に記載の方法に従って抗体価を測定した。この時、ハイブリドーマ培養上清中の抗体とビオチン標識化ハゼウロテンシンIIの結合の特異性を確認するために、この結合が1μMのブタウロテンシンII-1により阻害されるか否かを調べた。
ハゼウロテンシンIIを免疫したマウス由来ハイブリドーマのスクリーニングの典型例として、マウスNo.6(図1参照)を用いて得られた結果を〔図2〕に示す。
No.5およびNo.103ハイブリドーマ培養上清中の抗体は、特異的にウロテンシンIIに結合することが示され、No.5およびNo.103の計2種類のハイブリドーマを選択した。
次に、これらのハイブリドーマを限界希釈法によるクローニングに付した。クローニングに際しては、フィーダー細胞としてBALB/Cマウスの胸腺細胞をウェル当り5×105個になるように加えた。クローニングの結果、No.5-6-10およびNo.103-5-41の2種類のクローンを抗体産生量の高いハイブリドーマとして選択した。No.5-6-10およびNo.103-5-41をそれぞれAUII5-6-10およびAUII103-5-41と命名する。
クローニング後、ハイブリドーマをあらかじめミネラルオイル0.5mlを腹腔内投与されたマウス(BALB/C)に1〜3×106セル/匹を腹腔内投与したのち、6〜20日後に抗体含有腹水を採取した。
モノクローナル抗体は得られた腹水よりプロテイン-Aカラムにより精製した。即ち、 腹水6〜20mlを等量の結合緩衝液(3.5M NaCl、0.05%NaN3を含む1.5Mグリシン、pH9.0)で希釈したのち、あらかじめ結合緩衝液で平衡化したリコンビナントプロテイン-A-アガロース(Repligen社製)カラムに供し、特異抗体を溶離緩衝液(0.05%NaN3を含む0.1Mクエン酸緩衝液、pH3.0)で溶出した。溶出液はPBSに対して4℃、2日間透析したのち、0.22μmのフィルター(ミリポア社製)により除菌濾過し4℃あるいは-80℃で保存した。モノクローナル抗体のクラス・サブクラスの決定に際しては、精製モノクローナル抗体結合固相を用いるエンザイム−リンクトイムノソーベントアッセイ(ELISA)法を行なった。すなわち、抗体2μg/mlを含む0.1M炭酸緩衝液、pH9.6溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。上記(3)で述べた方法に従って、ウェルの余剰の結合部位をブロックエースでふさいだのち、アイソタイプタイピングキット(Mouse-TyperTM Sub-Isotyping Kit、バイオラッド社製)を用いるELISAによって固相化抗体のクラス、サブクラスを調べた。上記2種類のハイブリドーマ(No.5-6-10およびNo.103-5-41)の産生する抗体のクラスはともにIgG1であった。
実施例2
競合法による酵素免疫測定法
ハゼウロテンシンIIを免疫原として作製した2種類のハイブリドーマNo.5-6-10およびNo.103-5-41のそれぞれ産生するモノクローナル抗体(AUII5-6-10aおよびAUII103-5-41a)の反応特異性を以下の方法により調べた。
上記実施例1(3)記載の抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートに、バッファーC(1% BSA、0.4M NaCl、および2mM EDTAを含む0.02Mリン酸緩衝液、pH7.0)で486倍希釈されたAUII5-6-10ハイブリドーマ培養上清またはバッファーCで54倍希釈されたAUII103-5-41ハイブリドーマ培養上清希釈液33μl、バッファーCにより調製された各種濃度のヒト、ブタ-1、ウシ、ラットおよびハゼウロテンシンII溶液33μl、および上記実施例1(2)記載のビオチン標識化ハゼウロテンシンII(バッファーCで8333倍希釈)を33μl加え、4℃で16時間反応させた。反応後、PBSで洗浄したのち、各ウェルにバッファーCで10000倍に希釈したHRP標識アビジン溶液100μlを加え、室温で3時間反応させた。反応後、PBSで洗浄したのち、固相上の酵素活性を上記実施例1(3)記載の方法により測定した。
これらハイブリドーマ培養上清(AUII5-6-10およびAUII103-5-41)を用いた競合法-EIAの結果を〔図3〕および〔図4〕に示す。
図3に示すように、AUII5-6-10aは、ヒト、ブタ−1、ウシ、ラットおよびハゼウロテンシンIIのいずれのペプチドに対しても同程度の反応性を有することがわかった。このことから、AUII5-6-10aは、これらのペプチドに共通な部分構造であるCys-Phe-Trp-Lys-Tyr-Cys配列を認識すると考えられる。AUII5-6-10aのヒトウロテンシンIIの結合阻害曲線から、(B/B0)=0.5を与えるヒトウロテンシンII濃度は、1.2nMであった。
一方、図4に示すように、AUII103-5-41aは、ブタ-1、ウシおよびラットウロテンシンIIに比べて、ヒトおよびハゼウロテンシンIIに対して高い反応性を示した。AUII103-5-41aのヒトウロテンシンIIに対する反応性((B/B0)=0.5を与える抗原濃度:0.68nM)は、ブタウロテンシンII-1に対する反応性((B/B0)=0.5を与える抗原濃度:17.4nM)の約0.04倍であった。このことから、AUII103-5-41aは、ヒトおよびハゼウロテンシンIIに共通な部分構造であるAsp-Cys-Phe-Trp-Lys-Tyr-Cys配列を認識することが考えられる。
これら2種類のハイブリドーマ培養上清の(B/B0)=0.5を与えるヒトウロテンシンIIの濃度は、0.5〜2.0nMの範囲にあり、これら2種類のハイブリドーマ培養上清を用いる競合法-EIAはともに高感度であり、約0.2nM[(B/B0)=0.9]のヒトウロテンシンIIが検出可能であった。
実施例3
モノクローナル抗体AUII5-6-10aによるヒト、ブタ-1、ウシ、ラットおよびハゼウロテンシンIIの生物活性の中和作用
AUII5-6-10aによるヒト、ブタ-1、ウシ、ラットおよびハゼウロテンシンIIに対する中和活性を、ラットGPR14レセプター発現CHO細胞(WO 00/32627に記載のラットSENR発現CHO細胞と同一の細胞)を用いたアラキドン酸代謝物放出活性測定系により測定した。
AUII5-6-10aを各種濃度(1、3、10、30、100および300nM)に希釈し、ヒト、ブタ−1、ウシ、ラットおよびハゼウロテンシンII(各10nM)と室温で1時間インキュベーション後、残存活性を、ラットGPR14レセプター発現CHO細胞を使用して測定した。
アラキドン酸代謝物放出活性の測定は、ラットGPR14レセプター発現CHO細胞を、24 well plateに0.5 x 105 cells/wellの細胞密度でまき、24時間培養後、[3H]アラキドン酸を0.5μCi/wellとなるように添加した。[3H]アラキドン酸添加24時間後、細胞を、0.1% BSAを含むMEMで洗浄後、上述の各濃度のモノクローナル抗体とヒト、ブタ−1、ウシ、ラットおよびハゼウロテンシンII混和溶液を500μl/wellで添加した。37℃で1時間インキュベーションした後に、反応液500μl中400μlをシンチレーター4mlに加え、反応液中に遊離された[3H]アラキドン酸代謝物の量をシンチレーション・カウンターによりモニターした。
結果を〔図5〕に示す。
AUII5-6-10aは、ヒト、ブタ−1、ウシ、ラットおよびハゼウロテンシンIIの活性を3倍量または10倍量(モル比)で100%抑制した。
以上のことから、AUII5-6-10aは、ヒト、ブタ-1、ウシ、ラットおよびハゼウロテンシンIIのアラキドン酸代謝物放出活性を中和することが明らかである。
実施例4
ホールボード試験系におけるAUII5-6-10aの抗不安様作用
ICR(CD-1)マウス(9-10週齢、36-38g、雄性、日本チャールス・リバー)をジエチルエーテルで軽く麻酔し、マウスIgG(イムノグロブリンG)(Sigma、10mg/ml PBS、5μl)またはAUII5-6-10a(10mg/ml PBS、5μl)を右側脳室に投与した。脳室内投与には二段針(松本製作所)を使用した。30分後に覚醒したマウスを拘束ケージ(夏目製作所)に入れ、拘束ストレスを1時間負荷した。対照動物は飼育ケージ内で1時間自由に行動させた。その後、5分間の自発的行動量と覗き込み行動量を測定した。測定には自発的運動量測定システム(室町機械)を使用した。マウスの覗き込み行動は、立ち上がりセンサー(MRX-110TX-RX)をケージの下部側面に取り付け、穴(直径3.8cm、4個)をあけた板をセンサーより5mm上に上部から吊り下げるようにして内側に固定した装置を用いて測定した。覗き込みの回数は、板の上に置かれたマウスが覗き込み行動によって穴から頭部を突き出して設置されたセンサーを遮った回数で表した。同時に、上部に取り付けられたSUPERMEXセンサー(PYS-001、受動型赤外線センサー)で自発的行動量を測定した。自発的行動量はマウスがセンサーを横切った回数で表した。実験は15時から18時の間に行なった。
結果を以下に示す(図6)。
マウスIgG投与(無拘束):70.5±4.2回(n=21)
マウスIgG投与(拘束ストレス負荷):51.1±5.3回(n=19)、p<0.01
AUII5-6-10a投与(拘束ストレス負荷):64.6±3.6回(n=21)、p<0.05
これより、1時間の拘束ストレス負荷により、マウスの覗き込み行動は有意に減少したことがわかり、さらに、AUII5-6-10aの脳室内投与は拘束ストレスにより減少した覗き込み行動を有意に回復させたことがわかる。
なお、このときマウスの自発的行動量に変化は見られなかった〔マウスIgG投与(無拘束):621.5±20.4回、マウスIgG投与(拘束ストレス負荷):611.2±29.6回、AUII5-6-10a投与(拘束ストレス負荷):649.7±20.1回〕。
以上より、AUII5-6-10aの脳室内投与は、拘束ストレスによって惹起されたマウスの覗き込み行動の減少によって示される不安様行動を自発的行動に影響を与えずに抑制することがわかる。
ハゼウロテンシンIIを免疫したマウスの抗体価をビオチン標識化ハゼウロテンシンIIおよびHRP標識アビジンを用いて調べた結果を示す。図中、□はマウスNo.1を、■はマウスNo.2を、○はマウスNo.3を、●はマウスNo.4を、△はマウスNo.5を、▲はマウスNo.6を、◇はマウスNo.7を、◆はマウスNo.8を、×は非免疫マウスを表す。 ハゼウロテンシンIIを免疫したマウスを用いた場合の細胞融合後のハイブリドーマのスクリーニングの典型例を示す。図中、□はブタウロテンシンII−1非添加を、■はブタウロテンシンII−1添加を表す。 AUII5−6−10aのヒトウロテンシンII(−□−)、ブタウロテンシンII−1(−○−)、ウシウロテンシンII(−△−)、ラットウロテンシンII(−◇−)およびハゼウロテンシンII(−×−)に対する反応性をビオチン標識化ハゼウロテンシンIIおよびHRP標識アビジンを用いる競合法−EIAで調べた結果を示す。 AUII103−5−41aのヒトウロテンシンII(−□−)、ブタウロテンシンII−1(−○−)、ウシウロテンシンII(−△−)、ラットウロテンシンII(−◇−)およびハゼウロテンシンII(−×−)に対する反応性をビオチン標識化ハゼウロテンシンIIおよびHRP標識アビジンを用いる競合法−EIAで調べた結果を示す。 AUII5−6−10aのヒトウロテンシンII(−□−)、ブタウロテンシンII−1(−○−)、ウシウロテンシンII(−△−)、ラットウロテンシンII(−◇−)およびハゼウロテンシンII(−×−)のラットGPR14レセプター発現CHO細胞からのアラキドン酸代謝物放出活性に対する中和作用の結果を示す。 脳室内投与したAUII5−6−10aの不安様行動に対する抑制作用を示す。図中、横軸のAはマウスIgG投与(無拘束)群を、BはマウスIgG投与(拘束ストレス負荷)群を、CはAUII5-6-10a投与(拘束ストレス負荷)群を、縦軸は覗き込み回数をそれぞれ表す。

Claims (24)

  1. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体。
  2. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5または配列番号:6で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する請求項1記載の抗体。
  3. 配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有するペプチドに特異的に反応する請求項1記載の抗体。
  4. C端側の部分ペプチドが、(i)配列番号:1の第5番目〜第10番目のアミノ酸配列、(ii)配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4もしくは配列番号:6の第6番目〜第11番目のアミノ酸配列、(iii)配列番号:5の第8番目〜第13番目のアミノ酸配列、(iv)配列番号:7の第2番目〜第7番目のアミノ酸配列、または(v)配列番号:8の第8番目〜第13番目のアミノ酸配列を有するペプチドである請求項1記載の抗体。
  5. モノクローナル抗体である請求項1記載の抗体。
  6. 標識化された請求項1記載の抗体。
  7. 中和抗体である請求項1記載の抗体。
  8. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の活性を中和する請求項7記載の抗体。
  9. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5または配列番号:6で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の活性を中和する請求項7記載の抗体。
  10. AUII5−6−10(FERM BP−8221)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生され得るAUII5−6−10aで標示される請求項5記載の抗体。
  11. AUII103−5−41(FERM BP−8220)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生され得るAUII103−5−41aで標示される請求項5記載の抗体。
  12. 請求項5記載の抗体を産生するハイブリドーマ細胞。
  13. AUII103−5−41(FERM BP−8220)で標示される請求項12記載のハイブリドーマ細胞。
  14. AUII5−6−10(FERM BP−8221)で標示される請求項12記載のハイブリドーマ細胞。
  15. 請求項12記載のハイブリドーマ細胞を生体内または生体外で培養し、その体液または培養物から請求項5記載の抗体を採取することを特徴とする請求項5記載の抗体の製造法。
  16. 請求項1記載の抗体を含有してなる医薬。
  17. 中枢神経疾患、精神疾患、循環器疾患、心疾患、腎臓疾患または泌尿器系疾患の予防・治療剤である請求項16記載の医薬。
  18. 請求項1記載の抗体を含有してなる診断薬。
  19. 中枢神経疾患、精神疾患、循環器疾患、心疾患、腎臓疾患または泌尿器系疾患の診断薬である請求項18記載の診断薬。
  20. 請求項1記載の抗体を用いることを特徴とする配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の定量法。
  21. 請求項1記載の抗体、被検液および標識化された配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の割合を測定することを特徴とする、被検液中の配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の定量法。
  22. 請求項1記載の抗体を用いることを特徴とする配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体が関与する疾患の診断法。
  23. 哺乳動物に対して、請求項1記載の抗体の有効量を投与することを特徴とする中枢神経疾患、精神疾患、循環器疾患、心疾患、腎臓疾患または泌尿器系疾患の予防・治療法。
  24. 中枢神経疾患、精神疾患、循環器疾患、心疾患、腎臓疾患または泌尿器系疾患の予防・治療剤を製造するための請求項1記載の抗体の使用。
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