JP2004159638A - trans−11−,cis−13−共役二重結合をもつ脂肪酸の合成に関与する遺伝子およびその利用 - Google Patents

trans−11−,cis−13−共役二重結合をもつ脂肪酸の合成に関与する遺伝子およびその利用 Download PDF

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淳子 村瀬
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Abstract

【課題】Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成することに関与する遺伝子をクローニングすること。
【解決手段】下記の何れかの塩基配列を有する遺伝子の提供。(A)特定のアミノ酸配列をコードする塩基配列;(B)(A)と異なる特定の塩基配列;(C)それぞれの塩基配列において、1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列;または(D)該(A)と異なる特定の塩基配列またはその相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するタンパク質をコードする塩基配列:
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の合成に関与する遺伝子、当該遺伝子を含むベクター及び形質転換体、並びにそれらの利用法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
一般に共役脂肪酸類のうち、ジエン型脂肪酸類、特には共役リノール酸については種々の薬効があることが知られている(池田郁男、日本油化学会誌、第48巻、第10号、21―28頁、1999年)。しかしながら、トリエン型脂肪酸類については、エレオステアリン酸がガン培養組織に対する抗腫瘍作用を有すること (Cancer Lett 2000 Feb 1;148(2):173-9)、また、トリエン型脂肪酸類を含むキササゲ、ザクロ、キリ種子油が腫瘍細胞に対して致死活性を示すこと(日本農芸化学会誌、74巻、70ページ、2000年;Lipids Vol.36, No.5, 477-482, 2001)が知られているのみである。
【0003】
一方、植物体内中で、リノール酸からトリエン型脂肪酸類を製造するメカニズムとしては、ある種の不飽和化酵素であるコンジュゲースによるメカニズムが知られているが、多くの植物では、共役化しないトリエン型脂肪酸であるリノレン酸を生成する不飽和化酵素のみが存在し、トリエン型共役脂肪酸を生成するコンジュゲースを併せ持つ植物は非常に数が少ない。なお、ここで言うコンジュゲースとは、脂肪酸に共役不飽和結合を導入する酵素を意味する。
【0004】
コンジュゲース遺伝子に関する報告としては、国際公開WO00/11176号公報に、特定の配列及びそれらと45%以上の相同性を有する配列が共役2重結合の生成機能を有することが記載されており、具体的には、エレオステアリン酸(18:3Δ9cis,11trans,13trans、以下「18:3(9c、11t、13t)」と示す。)とパリナリン酸(18:4(9c、11t、13t、15c))の合成に関与する遺伝子が報告されている。また、トリエン型共役脂肪酸の一つであるカレンディック酸(18:3(8t、10t、12c))の合成に関与する遺伝子も報告されている(J.Biol.Chem.vol. 276, No4, pp.2637-2643,2001;AF310155 AF310156;国際公開WO01/12800;Plant Physiology, February 2001, Vol.125, pp.847-855; AF343064)。しかしながら、上記以外の共役トリエン型脂肪酸類を製造する遺伝子については報告がない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、共役トリエン型脂肪酸類の合成に関与する遺伝子としては、エレオステアリン酸とパリナリン酸とカレンディック酸の合成に関与する酵素遺伝子が単離されているのみである。植物種子に蓄積することが知られているその他の共役トリエン型脂肪酸(例えばプニカ酸、18:3(9c、11t、13c))はいずれもそれらの種子に含まれている量の比率が少ない、あるいは、種子から回収できる油の量が少ないため、また十分な量の種子を得ることが難しいなどの理由により産業への利用がほとんど進んでいない。また、プニカ酸の合成に関与する遺伝子のクローニングも報告されていない。
【0006】
従って、本発明は、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成することに関与する遺伝子をクローニングすることを解決すべき課題とした。さらに本発明は、当該遺伝子を植物に導入することによりプニカ酸などのtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を生成かつ蓄積させ、このような共役脂肪酸の産業的利用を図ることを解決すべき課題とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明らは、種子中にプニカ酸を蓄積することが知られているザクロからプニカ酸の合成に関与する酵素遺伝子を単離することを目的として鋭意検討した結果、ザクロにコンジュゲースが存在することを見出し、その遺伝子を単離し、塩基配列を決定した。さらに、本発明者らは、単離した遺伝子を酵母および植物に導入して発現させ、これらの形質転換体における脂肪酸を分析し、プニカ酸が生成されていることを確認した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0008】
即ち、本発明によれば、下記の何れかの塩基配列を有する遺伝子が提供される。
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(C)配列番号2に記載の塩基配列;
(D)配列番号2に記載の塩基配列において1から複数個の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するタンパク質をコードする塩基配列;または
(E)配列番号2に記載の塩基配列またはその相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するタンパク質をコードする塩基配列:
【0009】
本発明の別の側面によれば、下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質が提供される。
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列;または
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するアミノ酸配列:
【0010】
好ましくは、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力は、リノール酸からプニカ酸を合成する能力である。
【0011】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明の遺伝子を含むベクターが提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の遺伝子またはベクターを有する形質転換宿主細胞が提供される。
好ましくは、形質転換宿主細胞は、形質転換植物細胞である。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明のタンパク質を用いる、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸から、trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を製造する方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の形質転換宿主細胞を培養し、該形質転換宿主細胞が産生するtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を回収することを特徴とする、trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の製造方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の遺伝子またはベクターを用いて宿主を形質転換し、形質転換していない宿主細胞よりもtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の生産量が増大している形質転換宿主細胞を選抜することを特徴とする、宿主細胞におけるtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の生産量を増大させる方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、配列番号3または配列番号4に記載の塩基配列を有するプライマーと、配列番号5に記載の塩基配列を有するプライマーとの組み合わせからなるプライマーセットが提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、配列番号6または配列番号8に記載の塩基配列を有するプライマーと、配列番号7または配列番号9に記載の塩基配列を有するプライマーとの組み合わせからなるプライマーセットが提供される。
【0015】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した(A)〜(E)の何れかの塩基配列中の連続した5〜100塩基と同じ配列を有するセンスオリゴヌクレオチド、当該センスヌクレオチドと相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び、当該センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドのオリゴヌクレオチド誘導体から成る群から選ばれるオリゴヌクレオチドが提供される。
【0016】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の形質転換植物細胞から得られる種子が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の種子から得られる種子油が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の側面によれば、(a)Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力をもつタンパク質をコードする遺伝子で宿主細胞を形質転換し、(b)該遺伝子を発現するために適切な条件で宿主細胞を生育させ、(c)trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量の増加した宿主細胞を選択する工程を含む、宿主細胞におけるtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量を増加させる方法が提供される。
【0018】
本発明のさらに別の側面によれば、(a)上記した本発明のタンパク質をコードする遺伝子で宿主細胞を形質転換し、(b)該遺伝子を発現するために適切な条件で宿主細胞を生育させ、(c) trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量の増加した宿主細胞を選択する工程を含む、宿主細胞におけるtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量を増加させる方法が提供される。
【0019】
本発明のさらに別の側面によれば、(a)Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力をもつタンパク質をコードする遺伝子で植物細胞を形質転換し、(b)得られた形質転換植物細胞から稔性のある植物体を生育させ、(c)得られた稔性のある植物体から後代種子を得、該後代種子からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量が増加したものを選択し、(d)得られた後代種子からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量が増加した油脂を取得する工程を含む、種子油の製造方法が提供される。
【0020】
本発明のさらに別の側面によれば、(a)上記した本発明のタンパク質をコードする遺伝子で植物細胞を形質転換し、(b)得られた形質転換植物細胞から稔性のある植物体を生育させ、(c)得られた稔性のある植物体から後代種子を得、該後代種子からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量が増加したものを選択し、(d)得られた後代種子からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量が増加した油脂を取得する工程を含む、種子油の製造方法が提供される。
【0021】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の種子油の製造方法で得られる種子油が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の種子またはその処理物、あるいは本発明の種子油またはその処理物を含む機能性健康飲食品が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の種子またはその処理物、あるいは本発明の種子油またはその処理物を含有する動物飼料が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、cis-9-,trans-11-,cis-13-ヘキサデカトリエン酸(hexadecatrienoic acid)、及び、cis-11-,trans-13-,cis-15-エイコサトリエン酸(eicosatrienoic acid)が提供される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様及び実施方法について詳細に説明する。
(1)本発明の遺伝子及びタンパク質
本発明は、下記の何れかの塩基配列を有する遺伝子に関する。
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(C)配列番号2に記載の塩基配列;
(D)配列番号2に記載の塩基配列において1から複数個の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するタンパク質をコードする塩基配列;または
(E)配列番号2に記載の塩基配列またはその相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するタンパク質をコードする塩基配列:
【0024】
本発明はまた、下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質に関する。
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列;または
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するアミノ酸配列:
【0025】
本明細書において、「1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列」とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の数のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列のことを言う。
本明細書において「1から複数個の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列」とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の数の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列のことを言う。
【0026】
本明細書において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味し、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSCの組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989. 以後 "モレキュラークローニング第2版" と略す)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0027】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げらる。ここで言う一定以上の相同性とは、例えば70%以上、好ましくは80%上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上である。
【0028】
本明細書で言う「Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有する」とは、その遺伝子を宿主において発現させることによりΔ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸が合成されることを意味する。具体例の一つとしては、非共役ジエン類からプニカ酸を合成する能力が挙げられ、特に好ましい具体例としては、リノール酸からプニカ酸を合成する能力が挙げられる。
【0029】
宿主の種類は特に限定されないが、好ましくは、細菌、酵母または植物などが挙げられる。遺伝子を宿主において発現させることによりΔ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸が合成されるとは、より具体的には、本発明の遺伝子を有さない宿主よりも当該遺伝子を有する宿主の方がtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の生産量が増大していることを言う。
【0030】
本発明の遺伝子の取得方法は特に限定されない。本明細書中に開示した配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列または塩基配列の情報に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いて当該遺伝子が存在することが予測されるcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより目的の遺伝子を単離することができる。
【0031】
具体的には、プニカ酸が種子中に存在することが知られており、本発明の遺伝子が単離されたPunica granatum(ザクロ)、または、プニカ酸が存在することが知られているTrichosanthes kirilowii(キカラスウリ)、Cyclanthera explodens(バクダンウリ)、Cayaponia africana (和名不明)等のような本発明の遺伝子が発現している適当な植物起源より、常法に従ってcDNAライブラリーを調製する。次いで、当該ライブラリーから、本発明の遺伝子に特有の適当なプローブを用いて所望クローンを選抜する。
【0032】
上記において、cDNAの起源としては、上記植物由来の各種の細胞または組織を例示することができるが、好ましくは未熟種子胚である。
また、これらからの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニングなどはいずれも常法に従って実施することができる。
本発明の遺伝子をcDNAライブラリーからスクリーニングする方法は、例えば、モレキュラークローニング第2版,8.3-8.86,1989に記載の方法等、当業者により常用される方法を挙げることができる。
【0033】
本発明の遺伝子のスクリーニングの際に用いるプローブとしては、本発明の遺伝子の塩基配列に関する情報をもとにして化学合成されたDNAを一般的に使用できるが、すでに取得された本発明の遺伝子やその断片を使用してもよい。また、本発明の遺伝子の塩基配列情報に基づき設定したセンスプライマー、アンチセンスプライマーをスクリーニング用プローブとして用いることもできる。このようなプライマーは、本発明の遺伝子の塩基配列の中から任意の部分を用いることができるが、PCRで増幅される断片のサイズや他のコンジュゲース遺伝子との相同性の観点から、配列番号3または配列番号4に記載の塩基配列を有するプライマーと配列番号5に記載の塩基配列を有するプライマーとを組み合わせて使用することが好ましい。
【0034】
本明細書の配列表で使用している表記の説明を以下に記載する。
kはGまたはTを示す。
mはAまたはCを示す。
nは任意の塩基(AまたはCまたはGまたはT)を示す。
rはAまたはGを示す。
sはCまたはGを示す。
wはAまたはTを示す。
yはCまたはTを示す。
【0035】
また、1つのアミノ酸を複数の塩基配列がコードしていることを考慮すると、用いるプライマーはその縮重を考慮したプライマーであることが望ましい。
なお、配列番号3、配列番号4または配列番号5に記載の塩基配列などのような所望の塩基配列を有するプライマーはDNA合成機を用いて容易に合成するとができる。
【0036】
前記プローブとして用いられるヌクレオチド配列は、本発明の遺伝子に対応する部分ヌクレオチド配列であって、少なくとも15個以上の連続した塩基、好ましくは20個以上の連続した塩基、より好ましくは30個以上の連続した塩基、もっとも好ましくは50個以上の連続した塩基を有するものが挙げられる。あるいは前記配列を有する陽性クローンそれ自体をプローブとして用いることもできる。
【0037】
本発明の遺伝子の取得に際しては、PCR法によるDNA/RNA増幅法を利用することもできる。すなわちRNAを鋳型に逆転写酵素によりcDNAを合成する。このcDNAに対して適当なプライマーセットを用いてPCRを行い目的の遺伝子配列の部分断片を得る(RT−PCR法)。得られた部分断片の塩基配列情報をもとに、さらに5’ならびに3’−RACE法により目的遺伝子の全塩基配列を明らかにしたのち、遺伝子の3’および5’末端の塩基配列を有するプライマーを合成し、遺伝子の全長を単離することができる。かかるPCR法に際して使用されるプライマーは、本発明によって明らかにされた本発明の遺伝子の配列情報に基づいて適時設定でき、これは常法に従って合成できる。なお、増幅させたDNA/RNA断片の単離精製は、例えばゲル電気泳動法などの常法に従うことができる。
また、上記方法で得られる本発明の遺伝子あるいは各種DNA断片は、常法に従って、その塩基配列を決定することができる。
【0038】
このようにして得られる本発明の遺伝子は、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸からなるタンパク質のコードを有する塩基配列を有する遺伝子を挙げることができるが、これに限定されるわけではなく、当該遺伝子の相同物も包含される。
ここで遺伝子の相同物とは、本発明の遺伝子(またはその遺伝子産物)と配列相同性を有し、上記構造的特徴、および上記したようなその生物学的機能の類似性により一つの遺伝子ファミリーと認識される一連の関連遺伝子を意味し、該遺伝子の対立遺伝子も当然含まれる。
【0039】
本発明の遺伝子は、かかる特定の塩基配列を有する遺伝子に限らず、各アミノ酸残基に対して任意のコドンを組み合わせ、選択した塩基配列を有することも可能である。コドンの選択は、常法に従うことができ、例えば利用する宿主のコドン使用頻度などを考慮することができる。また、本発明の遺伝子は、前記の通り、配列番号2に示される塩基配列またはその相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAをも包含する。このようなDNAは、配列番号2に示される塩基配列を有するDNAと一定以上の相同性を有するDNAである。
【0040】
上記した一定以上の相同性を有するDNAとは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含んでいるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは配列番号2で示される塩基配列と少なくとも50%以上の同一性、好ましくは少なくとも80%以上の同一性、より好ましくは少なくとも90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドおよびその相補鎖ポリヌクレオチドを言う。
【0041】
かかる遺伝子としては、例えば、0.1%SDSを含む0.2×SSC中50℃または0.1%SDSを含む1×SSC中60℃のストリンジェントな条件下で配列番号2に記載した塩基配列またはその相補配列を有するDNAとハイブリダイズする塩基配列を有する遺伝子を例示することもできる。
【0042】
また、本発明の遺伝子のうち、特に(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列;及び
(D)配列番号2に記載の塩基配列において1から複数個の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する遺伝子は、化学合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することができる。具体的には、配列番号2に記載の塩基配列を有するDNAを利用し、これらDNAに変異を導入することにより変異遺伝子を取得することができる。
【0043】
変異遺伝子を得るための方法として、例えばランダム突然変異体、標的のある突然変異体、合成遺伝子を用いた方法など(新遺伝子工学ハンドブック、実験医学 別冊、羊土社、1996参照)等の公知の方法を用いることができる。
具体的には、配列番号2の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、モレキュラークローニング第2版等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0044】
なお、本発明の遺伝子は、例えば当該遺伝子の一部または全部の塩基配列を利用することにより、すでにプニカ酸の存在が確認されている植物体または植物体の部分組織における本発明の遺伝子の存在と発現の有無についても特徴的に検出することができる。さらに、本発明の遺伝子は、現段階ではプニカ酸の存在が確認されていない植物体や植物体の部分組織における本発明の遺伝子の存在と発現の有無の確認にも用いることができる。
【0045】
(2)本発明のtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の合成に関与する遺伝子を含むベクター
本発明の遺伝子は適当なベクター中に組み込んで組み換えベクターとして使用することができる。ベクターの種類は発現ベクターでも非発現ベクターでもよく、目的に応じて選ぶことができる。
クローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自律複製できるものが好ましく、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる、大腸菌の発現用ベクターをクローニングベクターとして用いてもよい。具体的には、ZAP Express〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 58 (1992)〕、pBluescrlpt II SK(+)〔Nuclelc Acids Research, 17, 9494(1989)〕、Lambda ZAP II(ストラタジーン社製)、λgt10、λgt11〔DNA Cloning, A Practical Approach, 1, 49(1985)〕、λTriplEx(クロンテック社製)、λExCell(ファルマシア社製)、pT7T318U(ファルマシア社製)、pcD2〔Mo1. Cen. Bio1., 3, 280 (1983)〕、pMW218(和光純薬社製)、pUC118(宝バイオ社製)、pGEM-3Z(プロメガ社製)、pGEM-T Easy(プロメガ社製)、pCR2.1(インビトロジェン社製)、pEG400〔J.Bac., 172, 2392 (1990)〕、pQE-30 (QIAGEN社製)等をあげることができる。
【0046】
発現ベクターは宿主との組み合わせを考えて選択することができ、好ましくは宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込みが可能で、本発明の遺伝子を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌を宿主細胞として用いる場合は、DNAを発現させるための発現ベクターは該細菌中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、上記DNAおよび転写終結配列より構成された組換えベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0047】
細菌用の発現ベクターとしては、例えば、pBTrP2、pBTac1、pBTac2(いずれもべ一リンガーマンハイム社より市販)、pKK233-2(Pharmacia社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX-1(Promega社製)、pQE-8(QIAGEN社製)、pQE-30(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58-110600)、pKYP200〔Agrc.Biol.Chem., 48, 669(1984)〕、PLSA1〔Agrc. Blo1. Chem., 53, 277(1989)〕、pGEL1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)〕、pBluescript II SK(+)、pBluescript II SK(-)(Stratagene社製)、pTrS30(FERMBP-5407)、pTrS32(FERM BP-5408)、pGEX(Pharmacia社製)、pRSET、pTrcHis、pTrcHis2(いずれもInvitrogen社製)、pET-3(Novagen社製)、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pUC18〔Gene, 33, 103(1985)〕、pUC19〔Gene, 33, 103(1985)〕、pSTV28(宝バイオ社製)、pSTV29(宝バイオ社製)、pUC118(宝バイオ社製)、pPA1(特開昭63-233798)、pEG400〔J. Bacterio1., 172, 2392(1990)〕等を例示することができる。細菌用のプロモーターとしては、例えば、trpプロモーター(P trp)、lacプロモーター(P lac)、trcプロモーター(P trc)、T7プロモーター(P T7)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SP01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーター等を挙げることができる。
【0048】
酵母用の発現ベクターとして、例えば、pYES2(インビトロジェン社製)、pESC、 pESP(いずれもストラタジーン社製)、pAUR (宝バイオ社製)、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、Ycp5O(ATCC37419)、pHS19、pHS15等を例示することができる。酵母用のプロモーターとしては、例えば、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーター等のプロモーターを挙げることができる。
【0049】
動物細胞用の発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107〔特開平3-22979; Cytotechnology, 3, 133,(1990)〕、pAS3-3(特開平2-227075)、pCDM8〔Nature, 329, 840,(1987)〕、pcDNAI/AmP(Invitrogen社製)、pREP4(Invitrogen社製)、pAGE103〔J.Blochem., 101, 1307(1987)〕、pAGE210等を例示することができる。動物細胞用のプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等を挙げることができる。
【0050】
植物細胞用の発現ベクターとしては、例えば、pIG121-Hm〔Plant Cell Report, 15, 809-814(1995)〕、pBI121〔EMBO J. 6, 3901-3907(1987)〕等を例示することができ、植物細胞用のプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター〔Mol.Gen.Genet (1990) 220, 389-392〕等が挙げられるが、これらの詳細は本明細書中以後にも説明する。
【0051】
(3)本発明の遺伝子を有する形質転換体
本発明の遺伝子を有する形質転換体(即ち、形質転換宿主細胞)は、上記した組み換えベクター(好ましくは発現ベクター)を宿主に導入することにより作製することができる。
細菌の宿主細胞の具体例としては、Escherichia属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Bacillus属、Microbacterium属、Serratia属、Pseudomonas属、Agrobacterium属、Alicyclobacillus属、Anabaena属、Anacystis属、Arthrobacter属、Azobacter属、Chromatium属、Erwinia属、Methylobacterium属、Phormidium属、Rhodobacter属、Rhodopseudomonas属、Rhodospiri11um属、Scenedesmun属、Streptomyces属、Synnecoccus属、Zymomonas属等に属する微生物をあげることができる。細菌宿主へ組換えベクターを導入する方法としては、例えば、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法やプロトプラスト法等を挙げることができる。
【0052】
酵母宿主の具体例としては、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリュイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pu11ulans)、シュワニオミセス・アルビウス(Schwanniomyces a11uvius)等を挙げることができる。
酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
【0053】
動物細胞宿主としては、Hela細胞、ナマルバ細胞、COS1細胞、COS7細胞、CHO細胞等を挙げることができる。
動物細胞への組み換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入できるいかなる方法も用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
【0054】
また、植物細胞に形質転換する場合には、その宿主としては、その形質転換体の使用目的(例えば、プニカ酸などのtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の大量生産)に応じて任意に選択できる。
本発明によれば、上記遺伝子を用いて植物体を形質転換することにより、植物体内中にtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を蓄積させることが可能となる。
本発明の遺伝子を導入することができる植物の種類は特には限定されないが、例えばナタネ、ダイズ、ヒマワリ、パーム椰子などの油量作物;例えばイネ、トウモロコシ、コムギなどの禾穀類;例えばキャベツ、レタスなどの各種の野菜類;樹木類あるいは花卉などが例示される。
【0055】
本明細書において、形質転換植物源としては、種子、芽生え、苗、カルス、培養細胞、植物体などが挙げられ、例えば、ナタネの場合には芽生えまたはプロトプラスト;ダイズの場合には芽生え、カルスまたは培養細胞;ヒマワリの場合には芽生え;パーム椰子の場合にはカルスまたは培養細胞;イネの場合には、芽生え、カルス、培養細胞またはプロトプラスト;トウモロコシには、芽生え、苗、カルス、培養細胞またはプロトプラスト;コムギの場合には、芽生え、カルスまたは培養細胞;キャベツの場合には、芽生え、カルス、培養細胞またはプロトプラスト;レタスの場合には、芽生え、カルス、培養細胞またはプロトプラスト等と言ったように、当業者が通常行うように、対象植物によって適宜好ましい部位を選択して行えばよい。
【0056】
植物への形質転換法は常法に従って行うことができ、例えば、アグロバクテリウムによる方法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム法、ポリエチレングリコール法、パーティクルガン法などを用いた細胞へのDNA直接導入法を挙げることができる。組み込む発現カセットは公知のプラスミドを用い、常法により作製することができる。
本発明の遺伝子を植物体に形質転換するためのベクターは、脂質を合成している組織で発現可能なプロモーターを含むことが好ましい。例えば種子特異的に発現するもの、または葉で発現するプロモーターなどである。種子特異的発現には、ナピン、クルシフェリン、グルテリン、プロラミン、グリシンなど種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子のプロモーター、あるいは、脂質合成に関与する酵素を含めたタンパク質や脂質を蓄積するオイルボディーを構成するタンパク質をコードする遺伝子のプロモーター、例えばアセチルCoA結合タンパク質やオレオシンをコードする遺伝子のプロモーターを用いることができる。葉での発現には、例えばカリフラワーモザイクウィルスの35Sタンパク質をコードする遺伝子やRubisco small subunitをコードする遺伝子のプロモーターなどを用いることができる。
ターミネーターには、ノパリンシンセターゼのターミネーターなどを含むものである。
【0057】
また、これらのベクターは、上記遺伝子を植物に導入する方法によって2種類のものが考えられる。例えば、アグロバクテリウムを介して遺伝子導入する場合には、形質転換された植物を選抜するための選抜マーカー、例えばカナマイシン抵抗性遺伝子やハイグロマイシン抵抗性遺伝子などと、25bpのボーダー配列を含むバイナリーベクターを、一方物理的に遺伝子導入する場合には、上記の抵抗性遺伝子を含む大腸菌由来のプラスミド、例えばpUCなどのベクターを用いる。
種子中の脂肪酸含量は常法により測定する。たとえば、葉や種子を材料としてBrowseらの方法(Anal. Biochem. 152,141-145,1985)に従って脂肪酸のメチルエステルを調製し、ヘキサンで抽出した後、ガスクロマトグラフィーで分析できる(Plan Physiol. Biochem. 30,425-434,1992)。
【0058】
さらに、上記した方法により作製される形質転換植物細胞から得られる種子、並びに上記種子から得られる種子油も本発明の範囲内に含まれる。
種子からの種子油の抽出は公知の方法で行うことができる。原料となる植物種子の由来は特に限定されないが、ザクロ科(Punicaceae)、キク科(Compositae)、トウダイグサ科(Euphordiaceae)、ウリ科(Cucuritaceae)、ノウゼンカズラ科(Bignoniaceae)、ツリフネソウ科(Balsaminaceae)、イネ科(Gramineae)、ゴマ科(Pedaliaceae)、マメ科(Leguminosae)、アブラナ科(Cruciferae)、アオイ科(Malraceae)、ヤシ科(Palmae)に属する植物種子などが挙げられる。
【0059】
(4)trans-11-,cis-13-共役二重結合をもつ脂肪酸の合成に関与する本発明の酵素タンパク質の産生
trans-11-,cis-13-共役二重結合をもつ脂肪酸の合成に関与する本発明の遺伝子を有する形質転換宿主細胞を培養し、培養物中にtrans-11-,cis-13-共役二重結合をもつ脂肪酸の合成に関与する酵素タンパク質を生成蓄積させ、該培養物より該タンパク質を採取することにより、本発明のタンパク質を取得することができる。
【0060】
本発明の遺伝子を有する形質転換宿主細胞を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
本発明の形質転換宿主細胞が大腸菌等の原核生物、酵母菌等の真核生物である場合、これら微生物を培養する培地は、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換宿主細胞の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。培養は、振盪培養または深部通気撹拌培養などの好気的条件下で行うことが好ましく、培養温度は通常15〜40℃であり、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリン、テトラサイクリン、オーレオバシジン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0061】
動物細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPM11640培地〔The Journal of the American Medical Association, 199, 519 (1967)〕、EagleのMEM培地〔Science, 122, 501 (1952)〕、DMEM培地〔Virology, 8, 396(1959)〕、199培地〔Proceeding of the Society forthe Biological Medicine, 73, 1(1950)〕またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5〜10%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0062】
植物細胞を宿主細胞として得られた形質転換宿主細胞を培養する培地としては、MS培地、R2P培地等、その植物種に応じて通常用いられる培地が用いられる。培養は、通常pH6〜8、15〜35℃等の条件下で1〜21日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0063】
形質転換宿主細胞の培養物から、trans-11-,cis-13-共役二重結合をもつ脂肪酸の合成に関与する酵素タンパク質を単離精製するには、通常のタンパク質の単離、精製法を用いればよい。
例えば、本発明のタンパク質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース、DIAION HPA-75(三菱化学社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0064】
また、該タンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈殿画分より、通常の方法により該タンパク質を回収後、該タンパク質の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。該可溶化液を、タンパク質変性剤を含まないあるいはタンパク質変性剤の濃度がタンパク質が変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、該タンパク質を正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
【0065】
本発明のタンパク質あるいはその糖修飾体等の誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清に該タンパク質あるいはその糖鎖付加体等の誘導体を回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
【0066】
また、本発明のタンパク質を、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、桑和貿易(米国Advanced Chem Tech社製)、パーキンエルマージャバン(米国Perkin-Elmer社製)、ファルマシアバイオテク(スウェーデンPharmacia Biotech社製)、アロカ(米国Protein Technology Instrument社製)、クラボウ(米国Synthecell-Vega社製〉、日本パーセプティブ・リミテッド(米国PerSeptive社製)、島津製作所等のペプチド合成機を利用し合成することもできる。
【0067】
(5)本発明の遺伝子を用いる、trans-11-,cis-13-共役二重結合をもつ脂肪酸の製造方法、trans-11-,cis-13-共役二重結合をもつ脂肪酸の生産量を増大させる方法、並びに種子油の製造方法
本発明は、上記した本発明の酵素タンパク質を用いて、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を製造する方法に関する。
具体的には、上記方法で単離された酵素タンパク質を、必要に応じて、ポリアクリルアミドゲルやカラギナーゲンゲル等に代表される担体に通常の固定化技術で固定化し、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸を含有する溶液に作用させ、trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を製造する方法等、酵素反応を利用した通常の合成反応による製造方法や、上記した本発明の形質転換宿主細胞を培養し、該形質転換宿主細胞が産生するtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を回収することを特徴とする、trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の製造方法が挙げられる。
【0068】
上記した通り本発明の遺伝子を有する形質転換宿主細胞では、形質転換していない宿主よりもtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の生産量が増大している。このような形質転換宿主細胞を選択して、該形質転換体が産生するtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を回収することにより、trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を比較的容易に大量に入手することが可能になる。
【0069】
即ち、本発明は、(a)Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力をもつタンパク質をコードする遺伝子で宿主細胞を形質転換し、(b)該遺伝子を発現するために適切な条件で宿主細胞を生育させ、(c)trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量の増加した宿主細胞を選択する工程を含む、宿主細胞におけるtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量を増加させる方法も提供する。
本明細書で言う「Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力をもつタンパク質をコードする遺伝子」としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列、または配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するアミノ酸配列の何れかを有するタンパク質をコードする遺伝子を使用することができるが、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力をもつタンパク質をコードする限りは、上記以外のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子を使用することもできる。
【0070】
本明細書において、trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の誘導体とは、trans-11-,cis-13-共役二重結合からエロンゲースによってC鎖が2つあるいはその倍数増加したものを意味し、例えば、プニカ酸から生成するcis-11-,trans-13-,cis-15-エイコサトリエン酸が挙げられる。
【0071】
trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を回収する方法は特に限定されず、このような脂肪酸を媒体から回収するための通常の方法を使用することができる。
例えば、形質転換植物の場合、本発明の形質転換体の種子または植物体全体をすりつぶしたり、それらを圧搾することにより脂肪酸を含む油溶性成分を抽出することができる。
種子からの脂肪酸を含む油溶性成分の抽出にあたっては、種子全体から抽出してもよいが、例えばイネ等の場合、種子を胚成分、胚乳成分、胡粉層(糠層)を含む部分等に分け抽出することも可能である。特に、胡粉層(糠層)を含む部分は、油溶性成分が多量に存在し、少量からでも効率よく脂肪酸を含む油溶性成分を抽出することができる。
これらは、含油量が多い場合はフィルタープレスや遠心分離により油分を回収してそのまま植物油成分として、化粧品等に添加して用いてもよいし、含油量が少ない場合や食品などに使用する場合にはヘキサン等の有機溶媒を用いて抽出した後、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭の精製を施すことができる。
また、必要に応じて、脂肪酸を含む油溶性成分をカラムクロマトグラフィー等を用いて分離精製し、目的とするトリエン型脂肪酸成分のみを単離し、医薬品等として用いてもよい。
【0072】
即ち、本発明は、(a)Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力をもつタンパク質をコードする遺伝子で植物細胞を形質転換し、(b)得られた形質転換植物細胞から稔性のある植物体を生育させ、(c)得られた稔性のある植物体から後代種子を得、該後代種子からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量が増加したものを選択し、(d)得られた後代種子からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量が増加した油脂を取得する工程を含む、種子油の製造方法、並びに当該製造方法により製造される種子油をも提供する。
【0073】
(6)プライマーセット
配列番号3または配列番号4に記載の塩基配列を有するプライマーと、配列番号5に記載の塩基配列を有するプライマーとの組み合わせからなるプライマーセット、並びに配列番号6または配列番号8に記載の塩基配列を有するプライマーと、配列番号7または配列番号9に記載の塩基配列を有するプライマーとの組み合わせからなるプライマーセットは、本発明の遺伝子を合成・増幅するのに有用であり、本発明の範囲内のものである。これらのプライマーは、市販のDNA合成機などを用いることにより常法により合成することができる。
【0074】
(7)本発明のオリゴヌクレオチド
上記(1)に記載の方法で取得した本発明の遺伝子またはその断片を用いて、DNA合成機などを用いる常法により、本発明の遺伝子の一部の配列を有するアンチセンス・オリゴヌクレオチド、センス・オリゴヌクレオチド等のオリゴヌクレオチドを調製することができる。
【0075】
該オリゴヌクレオチドとしては、上記遺伝子の塩基配列中の連続した5〜100塩基と同じ配列を有するDNAまたは該DNAと相補的な配列を有するDNAを挙げることができる。具体例としては、配列番号1に記載の塩基配列中の連続した5〜100塩基と同じ配列を有するDNAまたは該DNAと相補的な配列を有するDNAを挙げることができる。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーとして用いる場合には、両者の融解温度(Tm)および塩基数が極端に変わることのない上記のオリゴヌクレオチドが好ましい。また、配列の長さは、一般的には5〜100塩基であり、好ましくは10〜60塩基であり、より好ましくは15〜50塩基である。
【0076】
また、これらオリゴヌクレオチドの誘導体も本発明のオリゴヌクレオチドとして利用することができる。該オリゴヌクレオチド誘導体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスフォアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、あるいはオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等をあげることができる。
【0077】
(8)機能性健康飲食品および動物飼料
本発明によれば、本発明の遺伝子を利用して製造した種子、種子油あるいはその処理物を含有する機能性健康飲食品、並びに本発明の遺伝子を利用して製造した種子、種子油あるいはその処理物を含有する動物飼料が提供される。
本発明の遺伝子を利用して製造した種子油は、trans-11-,cis-13-共役二重結合をもつ脂肪酸(例えば、プニカ酸など)の含量が増大していることを特徴とする。このような種子油を摂取することにより、ヒト又は動物において、内臓脂肪低減及び内臓脂肪蓄積抑制、脂質代謝異常の予防又は改善、糖代謝異常の予防又は改善、並びに癌の予防又は治療効果などの作用効果が発揮されることが知られている(特開2000−355538号公報)。
【0078】
従って、本発明の遺伝子を利用して製造した種子、種子油またはその処理物を用いて機能性健康飲食品を製造することができる。
本発明では、前記種子または種子油を、そのまま利用することもできるが、脂肪酸又はその誘導体の形に加工して用いてもよい。脂肪酸への加工方法は、上記種子油を必要に応じて前処理した後、加水分解して脂肪酸を得、それを精製するといった方法が好ましい。種子油の前処理方法としては、融点以上の温度で放置して比重の大きなものを沈降除去したり、比重の軽いものを遠心分離除去するといった物理的な方法、又は原料油脂に硫酸又はリン酸を加えて加熱攪拌し、タンパク質、有機色素類を分解し、中和、洗浄により除去したり、活性白土を加えて加熱処理し、分解物、着色物質、樹脂状物質等を吸着除去するといった化学的な方法が挙げられる。また、加水分解の具体例としては、油脂を水酸化カリウム等のアルカリでケン化する方法、酸化亜鉛、酸化カルシウム、又は酸化マグネシウムを触媒として用いて中圧条件下で分解する中圧触媒分解法、又は高圧下連続的に分解する連続高圧分解法等の化学的な方法、リパーゼや微生物を用いる生物学的な加水分解法等が挙げられる。脂肪酸の分離精製法としては、バッチ式、半連続式、連続式蒸留装置、又は精密蒸留装置を用いて目的とする脂肪酸を蒸留精製する方法、過飽和状態の溶液又は溶融体を目的とする脂肪酸に応じて適切な温度に冷却し、結晶を生成させ、生成した結晶を、圧搾法、Solexol法(米国特許第2293674号、1942)、Emersol法(米国特許第2421157号、1974)、Henkel法(W.Steinら、J.Am.Oil Chem. Soc.、45、471、1968)等の方法で分取する方法が挙げられる。
【0079】
本発明の種子、種子油またはその処理物は、単独または他の物質を適宜配合することにより、機能性健康飲食品とすることができる。機能性健康飲食品における本発明の種子、種子油またはその処理物の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.01〜99重量%、更に好ましくは0.1〜90重量%である。また、所望に応じて、機能性健康飲食品として許容される各種の担体及び/又は添加剤を添加配合してもよい。
【0080】
担体の具体例としては、キャリアー担体、エクステンダー剤、希釈剤、増量剤、分散剤、ブドウ糖、乳糖等の賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)等の結合剤、水、エタノール、植物油等の溶媒、溶解補助剤、重曹等の緩衝剤、溶解促進剤、ナトリウムCMC、HPMC、カンテン、ゼラチン等のゲル化剤、ナトリウムCMC、ナトリウムアルギネート等の懸濁化剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0081】
添加剤の具体例としては、グルタミンソーダ、イノシン酸等の可食性、嗜好性を向上させるための調味料、バニラ、ミント、ローズマリー、リナロール、天然香料等の香料、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンE、パントテン酸、ニコチン酸等のビタミン類、ステビア等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸等の有機酸、着色料、湿気防止剤、ファイバー、電解質、ミネラル、栄養素、抗酸化剤、保存剤、芳香剤、湿潤剤、茶抽出物、コーヒー抽出物、ココア抽出物、オレンジ、グレープ、アップル、モモ、パイナップル、ナシ、プラム、サクランボ、パパイア、トマト、メロン、イチゴ、ラズベリー等のフルーツ抽出物等の天然植物抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明の機能性健康飲食品の種類は特に限定されないが、具体例としては、コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶等の茶飲料類、豆乳、青汁、果物ジュース、野菜ジュース等の果実野菜飲料類、ヨーグルト等の乳酸菌飲料類、牛乳等の乳飲料類、コーラ等の炭酸飲料類、及び各種のスポーツドリンク類等の他、パン類のベーカリー製品、米飯、麺類、豆腐等の大豆加工食品、ソーセージやハム等の魚畜肉加工食品、ケーキ、クッキー、饅頭、煎餅、アイスクリーム、プデイング、羊羹、キャンデイー、チョコレート等の菓子類、バター、ヨーグルト、チーズ等の乳製品、マーガリン、ショートニング等の加工油脂食品、マヨネーズ、ドレッシング、醤油、味噌、ソース等の調味料、コンニャク、漬け物類等が挙げられる。
【0083】
本発明の機能性健康飲食品は、健康維持、健康増進、体力増強効果を示す飲食品として利用することができる。具体的には、肥満状態の改善又は肥満抑制、蓄積した脂肪、特に内臓脂肪の低減、脂肪蓄積抑制、特に内臓脂肪蓄積の抑制、高脂血症傾向・高コレステロール血症傾向等の脂質代謝異常の改善、糖尿病傾向・食後の高血糖傾向等の糖代謝異常の改善、高血圧傾向の改善、動脈内膜肥厚亢進の抑制等の効果を発揮する食品として、又は癌治療時の治療食品として用いることができる。
【0084】
さらに、本発明の種子、種子油あるいはその処理物は、そのまま単独で、又は可食性や嗜好性を向上するための調味料、香料等を適宜配合することにより動物飼料とすることもできる。このとき、一定の物性を保つため、乳化剤、安定剤を配合することもできる。また、これらは、工業的に生産される種々の加工飼料、ペットフードの原料素材として用いることもできる。また、本発明の種子、種子油あるいはその処理物を動物飼料に直接振りかけて用いてもよい。動物飼料における本発明の種子、種子油あるいはその処理物の含有量は特に制限されないが、動物飼料に対して固形分換算で例えば0.1〜99.5重量%、好ましくは0.5%〜90重量%の範囲である。
本発明の種子、種子油あるいはその処理物を含有する動物飼料は、家畜及び愛玩動物の肥満予防・肥満改善飼料、糖尿病予防・治療飼料、癌予防・治療飼料として用いることができる。
【0085】
(9)cis-9-,trans-11-,cis-13-ヘキサデカトリエン酸、及び、cis-11-,trans-13-,cis-15-エイコサトリエン酸
以下の実施例で示す通り本発明の遺伝子(PgFac)を導入した形質転換酵母では、新規ピーク(図1Bおよび図2B中の矢頭で示したピーク)が検出された。このピークは、GC−MS(EI)分析により16:3脂肪酸のメチルエステルであることが判明した。このピークはpYES2形質転換酵母(図1Aおよび図2A)ではみられないことから、PgFacを発現することにより、酵母中で16:2を基質に共役二重結合を含む16:3異性体(cis-9-,trans-11-,cis-13-ヘキサデカトリエン酸)が生成したと考えられる。
また、以下の実施例で示す通り本発明の遺伝子を導入したアラビドプシス形質転換体T2種子では2つの新規ピーク(図2B、矢印および矢頭)が検出された。このうちの一つのピーク(図2B、矢頭)は、GC−MS(EI)による分析の結果20:3脂肪酸のメチルエステルであることが判明した。このピークはいずれの非形質転換体の種子においてもみられなかったことから、PgFac を発現することにより、形質転換体中で共役二重結合を含む20:3脂肪酸が生成したと推察された。この20:3脂肪酸は、プニカ酸を基質として脂肪酸の鎖長の延長が起こり生成したものと考えられ、cis-11-,trans-13-,cis-15-エイコサトリエン酸であると考えられる。なお、アラビドプシスでは、不飽和化された超長鎖脂肪酸(C20以上)は、C18が不飽和化された脂肪酸から鎖長延長酵素によって生成される。例えば、18:2(9c、12c)から一反応で炭素2個分の鎖長延長反応が起こり、20:2(11c、14c)が生成することが知られている。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されることはない。
【0086】
【実施例】
(1)ザクロからのRNAの単離
トリエン型共役脂肪酸であるプニカ酸を蓄積し始めるザクロ未熟種子を採種し、全RNAを単離する材料とした。全RNAの調製は、Molecular cloningに記載の通り、塩酸グアニジン法など様々な方法があるが、本実施例ではフェノール−クロロホルム法(Arabidopsis Protocols, Methods in Mol. Biol., 82, p85-89 Humana Press)に従った。即ち、約0.6gの種皮を除いた未熟種子を乳鉢中で液体窒素を加えて良く粉砕し15mlのチューブに移した。各チューブに抽出液(0.4M LiCl、25mMEDTA、1%SDS、0.2Mトリス緩衝液(pH9.0))とジエチルピロカーボネート(DEPC)処理した水で飽和させたフェノールをそれぞれ1.8mlずつ加えた後、Vortexでよく攪拌した。それらを4℃、750gで5分間遠心分離し、浮遊物に注意して上層をそれぞれ新しい15mlのチューブに移した。これらに再度滅菌水飽和フェノールを1.8ml加え、よく攪拌した後、先と同様に遠心分離して上層をそれぞれ新しいチューブに移した。これに等量のクロロホルムを加えて攪拌し、先と同様に上層を遠心分離により回収することを3度繰り返した。回収した上層に10分の1量の3M酢酸ナトリウム、2倍量の95%エタノールを加えて−80℃で30分静置した。4℃、14,000gで10分間遠心分離して得られた沈殿を1.4mlの2M塩化リチウムを加えてよく攪拌して溶解させた後、氷上に30分以上静置し、RNAとDNAを分離させた。4℃、14,000gで10分間遠心分離して得られたRNAの沈殿を再度0.8mlの2M塩化リチウムに溶解させ、30分間氷上で静置したのち遠心によりRNAを回収し、0.8mlの滅菌水に溶解した後、10分の1量の3M酢酸ナトリウム、2倍量の95%エタノールを加えて−80℃で5分静置した後、4℃、14,000gで5分間心分離してRNAを沈殿させた。沈殿を70%エタノールで洗浄後乾燥させ、100μlの滅菌水に溶解してRNA溶液を得た。
【0087】
(2)cDNAの合成
RNAを鋳型としたcDNA合成は、逆転写酵素と目的に応じたプライマーを用いて行う。本実施例では、first strand cDNA合成はGibco BRL社製の逆転写酵素SuperScript II RNase H- Reverse transcriptaseとオリゴdTプライマーを用いて行い、次にCLONTECH社製Marathon cDNA Amplification Kitを用いてsecond-strandを合成しdouble strand cDNAを得た。具体的には、first strand cDNA合成の鋳型として上記(1)で得られたザクロ未熟種子由来の全RNA(10μg)にポリA配列部と結合するオリゴ(dT)プライマー(0.5μg)を加え、70℃で2分間処理後氷冷した。それにFirst-strand バッファー(最終濃度:50mM Tris, 3mM MgCl2, 75mM KCl, pH8.3)、dNTP混合物(最終濃度:各0.5mM)、ジチオスレイトール(最終濃度:10mM)、RNaseOUT Recombinant Ribonuclease Inhibitor(40ユニット、Gibco BRL社製)を加え混合後48℃で2分間保温し、さらに逆転写酵素(400ユニット)を加えて混合、計20μlの反応溶液を作り48℃で1時間保温し、反応終了後氷冷した。この操作により、first strand cDNAを合成した。
【0088】
次にCLONTECH社製キットを用い、先に合成したfirst strand cDNA溶液10μlに、Second-strandバッファー(最終濃度:20mM Tris, 100mM KCl, 10mM酢酸アンモニウム, 5mM MgCl2, 0.15mM β−NAD, 0.05mg/ml Bovine Serum Albumin)、dNTP混合物(最終濃度:各0.05mM)、E. coli DNAポリメラーゼI(12ユニット)、E. coli RNase H (0.5ユニット)および滅菌水を加えて40μlとし、混合した後16℃で90分間保温した。これにT4 DNA Polymeraseを10ユニット加えて混合しさらに16℃で45分間保温した後、EDTA(最終濃度:10mM)とグリコーゲン(最終濃度:0.1mg/ml)を加えて反応を終了させた。これにフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加えて攪拌し、7,000gで10分間遠心分離して回収した上清にクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を加えて攪拌し先のように遠心分離を行った。上層を回収し、1.5倍量の4M 酢酸アンモニウムを加えさらにそれらの2.5倍量の95%エタノールを加えてよく混合し、14,000gで20分間室温で遠心分離を行ない、沈殿を10μlの滅菌水に溶解してdouble strand
cDNA溶液を得た。
【0089】
(3)プライマー領域の設定
これまでに報告されているΔ12-desaturase遺伝子などのアミノ酸配列のホモロジー比較を行い共通する配列を探した。アラビドプシス(accession No. L26296)およびキンセンカの(accession No. AF343065)のΔ12不飽和化酵素遺伝子、ニガウリ(accession No. AF182521)およびホウセンカ(accession No. AF182520)のエレオステアリン酸合成コンジュゲース遺伝子配列、キンセンカのカレンディック酸合成コンジュゲース遺伝子配列(accession No. AF343064; AF310155; AF310156)、キカラスウリのコンジュゲース(特願2001−28639)のタンパク質をアライメントしてホモロジーの高い部分を探し、その中から酵素の機能にかかわらずこれらの膜局在性不飽和化酵素遺伝子群に保存されている領域を含んでおよそ500bp離れた領域になるように選び、アミノ酸配列及び核酸配列の比較から配列番号3〜5に記載する塩基配列を有する塩基の縮重を考慮したプライマーを作製した。
【0090】
(4)RT−PCR法によるプニカ酸合成酵素(コンジュゲース)cDNAの部分配列の単離
(2)で合成したfirst strand cDNA溶液をTEバッファーにて1/20稀釈した溶液1μl、配列番号3と5に記載するプライマーそれぞれ1μMおよびTakara Ex Taq DNA polymerase(宝バイオ社製)2.5ユニットをPCR反応溶液に加えて50μlとし、以下の条件でPCR反応を行った。即ち94℃で1分間加熱後、94℃30秒の変性反応、52℃1分のアニーリング反応、72℃40秒の伸長反応を1サイクルとし30サイクル繰り返し、最後に72℃10分間加熱した。反応終了後、反応液の一部を取り1%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色したところ、期待されるサイズにバンドが確認された。そこで反応液を50μlのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加えて脱タンパク処理し、上層を新しいチューブに移した。これに5μlの3M酢酸ナトリウム溶液(pH5.2)と125μlのエタノールを加えて−80℃で15分間静置した後、14,000gで10分間遠心分離してDNA断片の沈殿を得た。これを10μlの滅菌水に溶解し、0.8%アガロースゲルで生成物を電気泳動しエチジウムブロマイドで染色した後、目的のバンドサイズのものをゲルから切り出しSUPREC-01(宝バイオ社製)を用いて増幅断片を含む溶液を回収し、エタノール沈殿を行った後精製DNA断片を10μlの滅菌水に溶かした。このうち4.5μlをプラスミドベクターpGEM-T Easy(プロメガ社製) 0.5μl(25ng)と混合し、DNAライゲーションキット(宝バイオ社製)を用いて16 ℃で一晩ライゲーション反応を行った。このうち2μlを用い、Hanahanの方法(DNA cloning、vol1.p109-136、(1985))に従って大腸菌 (DH5α)の形質転換を行い、アンピシリン(50μg/ml)とX-galを含むLB培地上に形成された白色コロニーを得た。
【0091】
(5)cDNAクローンのスクリーニング
(4)で得られたクローンから無作為に6クローン選抜し、コロニーの一部を取り、配列番号4と5に記載したプライマーをそれぞれ1μM含む20μlのPCR反応液に加えて、(4)と同様の条件でPCR反応を行った。反応終了後、反応液の一部を取り1%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色したところ、期待されるサイズにバンドが確認された。そこでこれらのクローンよりプラスミドDNAを調製し、SP6プライマーを用いて挿入されているcDNAのシークエンスを解析した(ABI Prism BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit、ABI Prism 310 Genetic Analyzer:PE Applied Biosystems社製)。得られた塩基配列をGENETYX(ソフトウェア-ディベロップメント社製)を用いてアミノ酸に翻訳し比較したところ、6クローンは2つのタイプのcDNAに分類され、一方はザクロコンジュゲース遺伝子の部分配列である可能性が高いと判断した。そこで本情報に基づき、配列番号8から11に記載する該cDNAに特異的プライマーを合成し、さらに該cDNAの5'および3'領域を含むクローンの取得を以下の方法で行った。
【0092】
(6)5'および3'RACE法によるザクロコンジュゲースcDNAの単離
(2)で調製したdouble strand cDNA溶液2.5μlを用い、ライゲーションキット(宝バイオ社製)を用いて16℃で一晩反応させ、double strand cDNAの両端にアダプターを結合させた。反応液を稀釈バッファー(10mM Tricine-KOH, 0.1mM EDTA, pH8.5)で1/50〜1/250に稀釈し、これを鋳型として、5'RACEについてはアダプターに対するプライマーであるAP1と配列番号10に記載するプライマーを用い、(4)と同様のPCR反応液を調製して以下の条件でPCR反応を行った。即ち、94℃で1分間加熱後、94℃30秒の変性反応、55℃1分のアニーリング反応、72℃1分の伸張反応を1サイクルとし30サイクル繰り返し、最後に72℃10分間加熱した。3'RACEについてはAP1と配列番号12に記載するプライマーを用い、(4)と同様のPCR反応液を調製して以下の条件でPCR反応を行った。即ち、94℃で1分間加熱後、94℃30秒の変性反応、55℃1分のアニーリング反応、72℃1分30秒の伸張反応を1サイクルとし30サイクル繰り返し、最後に72℃10分間加熱した。反応液の一部を1%アガロースゲルで電気泳動したところ、それぞれ一本のバンドが検出された。そこでこれらが該cDNAを含むものであるかを確認するため、5'および3'RACEの反応産物を1μl取りnested PCRを行った。すなわち、5'RACEについては、アダプターに対するプライマーであるAP2と配列番号11に記載するプライマーを用い、先と同様の条件でPCRを行った。3'RACEについてはAP2と配列番号13に記載するプライマーを用いて先と同様の条件でPCRを行った。反応終了後それぞれ一部を取りアガロースゲルで電気泳動したところ、それぞれ期待されるサイズのバンドが検出された。そこでこれらのバンドをアガロースゲルより切り出し、(4)と同様の方法でDNA断片を精製し、pGEM-T Easyにライゲーションした後、DH5αの形質転換を行い、アンピシリン(50μg/ml)とX-galを含むLB培地上に形成された白色コロニーを得た。
【0093】
(6)で得られたクローンからクローンより無作為に複数のクローンを選び、コロニーの一部を取り、20μlの反応液に加えて(6)で行ったnested PCRと同様の条件でPCR反応を行った。反応終了後、反応液の一部を取り1%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色後、期待されるサイズにバンドが確認されたクローンを複数選び、それらよりプラスミドDNAを調製し、T7およびSP6プライマーを用いて挿入されているcDNAのシークエンスを行った。得られた塩基配列をGENETYX(ソフトウェア-ディベロップメント社製)を用いてアミノ酸に翻訳し比較したところ、いずれも該cDNAの5'または3'末端部分配列を含むものであることが確認された。
【0094】
(7)ザクロコンジュゲース全長cDNAの単離
(6)で得られたコンジュゲースcDNAの5'および3'末端領域の塩基配列情報に基づき、ザクロコンジュゲースcDNAの全長を単離するためのプライマーセットを2セット作成した。1つ目のセットの5'プライマーは、配列番号6に記載するザクロコンジュゲースの翻訳開始コドンATGを含む25塩基の5'側に、EcoRV/XbaIサイトを付加したもの、3'プライマーは、配列番号7に示すコンジュゲース遺伝子の翻訳停止コドンTGAより下流7−33塩基に相補的な配列の5'側に、SacIサイトを付加したものである。2つ目のセットは、ザクロコンジュゲースcDNAの5'非翻訳領域に対応した、配列番号8に記載する5'プライマーと、同3'非翻訳領域に対応する、配列番号9に記載するものである。(2)で調製したdoublestrand cDNA溶液をTEバッファーで1/30に稀釈し、この稀釈液2.5または5μlと上記プライマーセットのいずれかについて5'および3'プライマーそれぞれ1μMを用いて、Pyrobest DNA polymerase(宝バイオ社製)5ユニットを含む50μlのPCR反応液をそれぞれ2サンプルずつ調製して以下の条件でPCRを行った。即ち、94℃で1分間加熱後、94℃30秒の変性反応、55℃1分のアニーリング反応、72℃2分30秒の伸張反応を1サイクルとし25サイクル繰り返し、最後に72℃10分間加熱した。この反応産物にさらにTakara Ex Taqを5ユニット加えて72℃10分間加熱した。反応液の一部を取り1%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色したところ、4サンプルともに期待されるサイズにバンドが確認された。そこで(4)と同様の方法で増幅DNA断片を精製し、それぞれpGEM-T Easyにライゲーションした後DH5αの形質転換を行い、アンピシリン(50μg/ml)とX-galを含むLB培地上に形成された白色コロニーを得た。
【0095】
得られたクローンから無作為にそれぞれ1クローン選抜し、コロニーの一部を取り、20μlの反応液に加えて(7)で行ったPCRと同様の条件でPCR反応を行った。反応終了後、反応液の一部を取り1%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色後、期待されるサイズにバンドが確認されたクローンをそれぞれ2つ選び、それらよりプラスミドDNAを調製し、遺伝子特異的なプライマーを用いて挿入されているcDNAのシークエンスを行った。得られた塩基配列をGENETYX(ソフトウェア-ディベロップメント社製)を用いてアミノ酸に翻訳し比較したところ、いずれも該cDNAの全長を含むものであることが確認された。
【0096】
(8)ザクロコンジュゲースcDNAの構造解析
単離されたコンジュゲースcDNA(PgFac)は1374bpで395個のアミノ酸をコードしていた。単離されたコンジュゲースcDNAのコードするアミノ酸配列を配列番号1に記載し、塩基配列を配列番号2に記載する。
データベースとのホモロジー比較より機能の解析されている遺伝子の中ではニガウリのコンジュゲースcDNAと62%、ホウセンカのコンジュゲースcDNAと60%、キンセンカのコンジュゲースcDNAと57%、キカラスウリのコンジュゲースcDNAとは64%のホモロジーを持っていた。PgFacのアミノ酸配列を、既存のコンジュゲースと比較したところ、ニガウリのものと56%、ホウセンカのものと56%、キンセンカのものと46%、キカラスウリのものと56%のホモロジーを持ち、これらに保存されている領域を含んでいたことから、該遺伝子がコンジュゲースであると推察された。
【0097】
(9)ザクロコンジュゲースcDNAを含む酵母タンパク質発現シャトルベクターの構築
(7)で得られたザクロコンジュゲース全長cDNAを含むプラスミドDNAを、制限酵素EcoRVおよびSacIで切断し、該cDNA断片を(4)と同様な方法で精製しプラスミドベクターpBluescript II SK+(STRATAGENE社製)にライゲーション後、DH5αの形質転換を行い、アンピシリン(50μg/ml)とX-galを含むLB培地上に形成された白色コロニーを得た。該cDNA断片を含むコロニーよりプラスミドDNAを抽出し、制限酵素HindIIIおよびSacIで切断した。該cDNAを含む断片を先と同様の方法で精製し、タンパク質発現型シャトルベクターpYES2のHindIII-SacIサイトにライゲーション後、DH5αの形質転換を行い、アンピシリン(50μg/ml)を含むLB培地上に形成されたコロニーを得た。これら形質転換体よりプラスミドDNAを抽出し、該cDNAを含むもの(pYES2/PgFac)を選び以下の酵母形質転換に用いた。
【0098】
(10)酵母の形質転換体の作製
Saccharomyces cerevisiae D452-2株を用い、S.c. EasyComp Transformation Kit(インビトロジェン社製)の方法に従い酵母コンピテントセルを調製し、形質転換を行った。即ち、酵母をYPD寒天培地(1% yeast extract、2% peptone、2% D-glucose、2% Agar)にストリークして28℃で2日間培養しコロニーを得た。シングルコロニーを10mlのYPD培地(1% yeast extract、2% peptone、2% D-glucose)に移し、28℃で一晩振とう培養した後、培養液をYPD培地で稀釈しOD600が0.2-0.4の培養液を10ml作製した。これをさらにOD600が0.6-1.0になるまで28℃で振とう培養した後、500gで5分間室温で遠心して細胞を回収し、10mlの洗浄液に懸濁した。同様な条件で再び遠心分離を行い回収した細胞に1mlのリチウム溶液を加えて懸濁した後、50μlずつに分注して-80℃で保存した。
【0099】
50μlの酵母コンピテントセルを室温で溶解し、pYES2、または(9)で得たザクロコンジュゲースcDNAを含むプラスミドDNA(pYES2/PgFac)1μgを加えて混合した。これにTransformation solutionを500μl加えてよく混合し、15分ごとに攪拌しながら30℃で1時間保温した後、YPD培地を1ml加えて30℃で1時間振とう培養し、室温にて3000gで5分間遠心して細胞を回収した。細胞を250μlのSC最少培地(-Ura/ 2% glucose)に懸濁後、同寒天培地上にまき30℃で3-4日間培養した。生育したコロニーを6個選び、その一部をSC最少培地(-Ura/ 2% glucose)3mlに移し、28℃で一晩培養した。これに滅菌したグリセロール(最終濃度:15%)を加えてよく混合し、-80℃で保存した。一方、培養液の一部をSC最少培地(-Ura/ 2% glucose)寒天培地上にまき30℃で2日間培養し、コロニーの一部を取り、配列番号6および7に記載するプライマーそれぞれ1μMを含むPCR反応液20μlに加えて(7)と同様の条件でPCRを行ったところ、pYES2/PgFacの形質転換により得られたコロニーはいずれもザクロコンジュゲースcDNAを含む形質転換体であることを確認した。
【0100】
(11)酵母形質転換体の脂肪酸分析
(10)で作製した酵母形質転換体を、SC最少培地(-Ura/ 2% glucose)3mlに移し、28℃で一晩培養した。遠心により集めた細胞を滅菌水で洗浄したのち、SC−Gal最少培地(-Ura/ 2% galactose)に懸濁し、これを0.1%(W/V)Tergitol type NP-40 (Sigma社)と0.3mMリノール酸を含むまたは含まないSC-Gal最少培地(-Ura/ 2% galactose)50mlにOD600が0.2になるように加えて、20℃、200rpmで3日間振とう培養した後、さらに15℃で3日間培養した。全酵母培養液をガラス管に移した後1700g、5分間遠心して酵母を沈殿させ、これに1%(W/V)Tergitol type NP-40(Sigma社)40mlを加えVortexで懸濁した後、2000gで10分間遠心して再び沈殿させ酵母を洗浄した。得られた沈殿を再度Tergitol洗浄した後、40mlの滅菌水で先と同様に3回洗浄し、洗浄した沈殿に滅菌水を25ml加えてVortexで懸濁後、5mlずつガラス管に分注し2000gで10分間遠心して再度沈殿させた。得られた沈殿を−80℃で凍結させた後4時間凍結乾燥し、それに0.5Mナトリウムメトキシド/メタノールをガラス管あたり1 ml(計5ml)加えて50℃1時間メチル化反応を行った。このとき場合によって内部標準として試料にペンタデカン酸(C15:0)メチルを50nmolを加えてメチル化反応を行った。反応液を室温に戻した後、7.5mlの0.9MNaClと5mlのヘキサンを加えて懸濁した後1700g、5分間遠心して上清を真空乾燥させた。これにより抽出された脂肪酸メチルエステルに20μlのヘキサンを加えて溶解させ、内1μlをGC18A(Shimadzu社)でガスクロマトグラフィー(GC)分析をおこなった。この場合、TC-70、60mx0.25mm、ID0.25μmのキャピラリーカラム(GL Science社)を用い、150℃から240℃に3℃/分で昇温後、240℃で6分間恒温分析を行った。
【0101】
形質転換酵母を、0.3mMリノール酸を含むまたは含まない培地で培養したのちその全脂肪酸をGCにより分析したところ、pYES2/PgFac形質転換酵母ではpYES2形質転換酵母の場合にはみられない新たなピークが検出された(図1および図2)。このうちにプニカ酸由来のものがあるかどうかを調べるために、プニカ酸を蓄積するザクロ種子の脂肪酸をGC分析し比較を行った。ザクロ種子3粒の堅い外皮を取り除いた後、氷上で冷却した乳鉢、乳棒で完全にすりつぶし、それに1 mlの0.5 Mナトリウムメトキシド/メタノールを加えて乳棒で攪拌懸濁した後ガラス管に移した。これを50℃で1時間メチル化反応した後、1.5mlの0.9MNaClと1mlのヘキサンを加えて攪拌抽出し、2000g、5分間遠心して上清を真空乾燥させた。これにより抽出された脂肪酸メチルエステルに20μlのヘキサンを加えて溶解させ、内1μlを先と同様GC分析を行い、ザクロ種子に含まれるプニカ酸メチルエステル(図1Cおよび図2C、矢印)の検出時間を調べた結果、pYES2/PgFac形質転換酵母に新たに生じたピーク(図1Bおよび図2B、矢印)と一致した。また、ザクロ種子の脂肪酸GCサンプルと先の酵母の脂肪酸GCサンプルを混合したものをGC分析して、ザクロ種子に含まれるプニカ酸メチルエステルのピークと矢印で示す酵母のピークが同じ時間に検出されることを確認した。さらに、図1Bおよび図2Bにある矢印で示すピークについて、EIモードにより、Agilent 6890 Seriesガスクロマトグラフ、日本電子JMS-600H MSroute 質量分析計、および(11)に記載のカラムを用いてGC−MS分析を行った。GC−MS(EI)分析の結果、m/z=292のM+イオンピークが出現したこと、また同様な手法により分析した18:3(9c、12c、15c)メチルエステル標品のスペクトルと出現ピークおよびその強度比が類似したことから、これらピークは18:3脂肪酸のメチルエステルと結論した。以上の結果より、PgFacを発現させた酵母中でプニカ酸が生成したことが示され、これによりPgFacがプニカ酸合成に関わるコンジュゲースであることを明らかにした。また、リノール酸を添加しない培地で培養したpYES2/PgFac形質転換酵母において、同様に培養したpYES2形質転換酵母(図2A)にはみられないピークがいくつか検出された(図2B)。このうち2つのピークは、検出時間ならびに上記と同様に行ったGC−MS(EI)分析の結果から、それぞれ16:2(9c、12c)、18:2(9c、12c)のメチルエステルであることが判明し(図2B)、PgFacはコンジュゲース活性とΔ12不飽和化酵素活性を併せ持つ酵素と考えられた。一方、図1Bおよび図2B中の矢頭で示したピークは、上記と同様にGC−MS(EI)分析を行った結果、m/z= 264のM+イオンピークが出現したこと、また同様な手法により分析した16:3(4c、7c、10c)ならびに16:3(7c、10,13c)メチルエステル標品のスペクトルと出現ピークおよびその強度比が類似したことから、16:3脂肪酸のメチルエステルと結論した(図3)。このピークはpYES2形質転換酵母(図1Aおよび図2A)ではみられないことから、PgFacを酵母で発現させることにより、PgFacのもつΔ12不飽和化酵素活性により生成した16:2(9c、12c)を基質にして、次にPgFacのもつコンジュゲース活性により共役二重結合を含む16:3(9c、11t、13c)(cis-9-, trans-11, cis-13-hexadecatrienoic acid)が生成したと推察された。なお、図1ならびに図2中の数字で表したピークは各脂肪酸のメチルエステルであり、それぞれ、16:0(パルミチン酸(palmitic acid))、16:1(9c)(パルミトレイン酸(palmitoleic acid))、16:2(9c,12c)(9,12-hexadecadienoic acid)、18:0(ステアリン酸(stearic acid))、18:1(9c)(オレイン酸(oleic acid))、18:2(9c,12c)(リノール酸(linoleic acid))、および18:3,(9c,11t,13c)(プニカ酸(punicic acid))である。最初の数値は炭素数を示し、その次の数値は不飽和結合の数を示し、不飽和結合の数の直後の括弧内の数値は該不飽和結合の位置を示し、c及びtはそれぞれシス及びトランスを示す。
以上の結果より、(6)で得られたコンジュゲース遺伝子が、Δ12位に二重結合を持つ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子であることが明らかになった。
【0102】
(12)ザクロコンジュゲースcDNAを含む植物形質転換ベクターの構築
(7)で得られたザクロコンジュゲース全長cDNAを含むプラスミドDNAを、制限酵素XbaIおよびSacIで切断し、該DNA断片を(4)と同様な方法で精製した。一方、バイナリーベクターpLAN421[Plant Cell Report, 10, 286-290 (1991)]を制限酵素XbaIとSacIで切断し、1.8kbのβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を除いた約15kbのプラスミド断片を(4)と同様な方法で調整し、これと上述の該cDNA断片をライゲーションすることにより、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター配列とアグロバクテリウムのノパリンシンターゼ(Nos)遺伝子ターミネータ配列の間に該cDNAが挿入したバイナリーベクターpKS-PgFacを作製した。また、ナタネのナピン(Napin)遺伝子プロモーター配列[The Journal of Biological Chemistry, 262, 12196-12201 (1987)]をpLAN421のGUS遺伝子に結合したバイナリーベクター[Plant Molecular Biology, 26, 1115-1124 (1994)]を制限酵素XbaIとSacIで切断し、上記と同様にGUS遺伝子を除いたプラスミド断片を、上述の該cDNA断片とライゲーションすることにより、ナピンプロモーター配列とアグロバクテリウムのノパリンシンターゼ遺伝子ターミネータ配列の間に該cDNAが挿入したバイナリーベクターpKN-PgFacを作製した。これらプラスミドを用いてDH5αの形質転換を行い、スペクチノマイシン(50μg/ml)とテトラサイクリン(12.5μg/ml)を含むLB培地上に形成されたコロニーを得た。コロニーよりpKN-PgFacおよびpKS-PgFacプラスミドDNAを精製し、これらを用いてエレクトロポーレーション法によりアグロバクテリウムEHA101株の形質転換を行い、スペクチノマイシン(50μg/ml)、テトラサイクリン(2.5μg/ml)クロラムフェニコール(25μg/ml)およびカナマイシン(50μg/ml)を含むYEB寒天培地(0.5% Peptone, 0.5% Beef extract, 0.1% Yeast extract, 0.5% sucrose, 1.5% agarose)上に形成されたコロニーを得た。コロニーの一部をとり、配列番号6および7に記載するプライマーそれぞれ1μMを含むPCR反応液20μlに加えて、(7)と同様な条件でPCRを行い反応産物の電気泳動を行ったところ、期待されるサイズのバンドが見られた。これらのことから、得られたコロニーはそれぞれpKN-PgFacまたはpKS-PgFacを含むアグロバクテリウム形質転換体であることを確認した。
【0103】
(13)アラビドプシス形質転換体の作製
アラビドプシス(Arabidopsis thariana ecotype Columbia)への形質転換は花芽へのvacuum infiltration(減圧浸潤)法にて行った。即ち、(12)に記載のpKN-PgFacまたはpKS-PgFacを含むアグロバクテリウム形質転換体をYEB培地 (0.5% Peptone, 0.5% Beef extract, 0.1% Yeast extract, 0.5%sucrose) にて増殖させ、4000 g、15分の遠心により集菌して浸潤用培地 (1/2MS-B5, 5% sucrose, 0.05% MES, 0.044μM BAP, 0.08% Silwet L-77)に再懸濁を行った。この懸濁液に、2〜10cm程度抽苔させたアラビドプシスを、減圧下(5〜10cmHg)で約15分浸潤させた。その後、通常どおり培養器中で生育、結実させ、採種した。得られた種子(T1)を滅菌し選抜マーカーであるカナマイシン(30μg/ml)を含む培地に播種し選抜を行った。
【0104】
(14)アラビドプシス形質転換体の脂肪酸分析
選抜されたT1個体についた自家受粉種子(T2)をプールして脂肪酸を抽出し、GCにより分析を行った。即ち、種子約2 mgを1 mlの0.5Mナトリウムメトキシド/メタノール液中で50℃、1時間メチル化処理した。その後、1.5 mlの0.9% NaClおよび1mlのヘキサンを加えて1分間振とう後、1000 gで5分間遠心してヘキサン層を新しい試験管に移し、真空乾燥した。この抽出物を20μlのヘキサンに溶解して内1μlをGCによる脂質分析に供した。分析はGC-18A (Shimadzu)及び、TC-70、60mx0.25mm、ID0.25μmのキャピラリーカラム(GL Science社)を用い、150℃から240℃に3℃/分で昇温後、240℃で6分間恒温分析を行った。GC分析により非形質転換体アラビドプシス種子(図4A)と形質転換体アラビドプシスT2種子(図4B)の脂肪酸組成を比較したところ、形質転換体T2種子では2つの新規ピーク(図4B、矢印および矢頭)が検出された。このうちの一つ(図4B、矢印)は、ザクロ種子の脂肪酸GCサンプルに含まれるプニカ酸メチルエステルのピーク(図4C、矢印)と同じ時間に検出された。このピークが、α-エレオステアリン酸やカレンディック酸などの他の共役リノレン酸由来のものではなく、プニカ酸由来のものであることを確認するため、ガスクロマトグラフィーによりそれらのメチルエステルを分離し、アラビドプシスより抽出した脂肪酸メチルエステルサンプルとの比較を行った(図5)。すなわち、プニカ酸を蓄積するキカラスウリ、α-エレオステアリン酸を蓄積するニガウリおよびカレンディック酸を蓄積するキンセンカそれぞれの種子より、(11)に記載の方法により脂肪酸メチルエステルを調製し、次にそれらを適当な量比で混合したサンプルを調製してGC分析を行った(図5A)。分析は前述の機器とカラムを用い、150℃から210℃に3℃/分で昇温後、210℃で13分保持し、最後に240℃に10℃/分で昇温する条件で行った。一方、PgFacを発現するアラビドプシス種子より調製したGCサンプルを上記の条件で分析した結果(図5B)、形質転換体アラビドプシス種子で新規に生成したピーク(図5B、矢印)は、図5Aのプニカ酸由来ピークと検出時間が一致した。このピーク(図4B、矢印)は、(11)に記載のGC−MS(EI)により分析を行った結果、m/z=292のM+イオンピークが出現したこと、また同様な手法により分析した18:3(9c、12c、15c)メチルエステル標品のスペクトルと出現ピークおよびその強度比が類似したことから、18:3脂肪酸のメチルエステルであると結論した。これらのことから、PgFacを発現させたアラビドプシス種子中でプニカ酸が生成したことを明らかにした。一方もう一つのピーク(図4Bおよび図5B、矢頭)は、上記と同様に行ったGC−MS(EI)分析の結果、m/z= 320のM+イオンピークが出現したこと、また同様な手法で分析した20:3(5c、8c,11c)、20:3(7c、10c、13c)、20:3(8c、11c、14c)および20:3(11c、14c、17c)などのメチルエステル標品のスペクトルと出現ピークおよびその強度比が類似したことから、20:3脂肪酸のメチルエステルであると結論した(図6)。この新規ピークは、いずれの非形質転換体の種子においてもみられなかったことから、PgFacを発現することにより、形質転換体種子中で共役二重結合を含む20:3脂肪酸が生成したと推察された。
【0105】
PgFacを発現するアラビドプシス種子中に新規に生成した20:3脂肪酸が、種子に存在する20:2(11c、14c)(11,14-eicosadienoic acid)を基質としてPgFacの働きにより生成したものであるか否かを調べるため、PgFacを発現する酵母を用いて実験を行った。すなわち、pYES2 およびpYES2/PgFacで形質転換した酵母を、20:2(11c,14c)を0.3 mM含む培地で(11)に記載の方法で培養したのち、その全脂肪酸をGCにより分析した。図7Bに示すように、pYES2/PgFac形質転換酵母では、pYES2形質転換酵母(図7A)にはみられない、16:2(9c、12c),18:2(9c、12c)、プニカ酸および16:3(9c、11t、13c)(図7B、矢頭)のメチルエステルピークが出現したが、図4B中のPgFacを発現するアラビドプシス種子に新規に生成した20:3脂肪酸のメチルエステルに対応するピークは検出されなかった。以上のことから、アラビドプシス種子に存在する20:2(11c、14c)はPgFacの基質となる可能性は低いと考えられた。そのため、PgFacを発現するアラビドプシス種子で新規に生成した20:3脂肪酸は、PgFacにより生成したプニカ酸が、アラビドプシス種子に存在する鎖長延長酵素活性によって鎖長延長され生成した、20:3(11c、13t、15c)(cis-11, trans-13, cis-15-eicosatrienoic acid)であると考えられた。
【0106】
非形質転換体6個体、pKS-PgFac形質転換体およびpKN-PgFac形質転換体それぞれ9個体について種子の脂肪酸組成を比較した(表1)。PKS-PgFacでは平均0.4%、そのうち最大のものは0.8%のプニカ酸の蓄積がみられた。一方pKN-PgFacでは平均2.3%、そのうち最大のものは4.4%のプニカ酸の蓄積がみられた。
【0107】
なお、図4、5および7中の数字で表したピークは各脂肪酸のメチルエステルであり、それぞれ、16:0(パルミチン酸(palmitic acid))、18:0(ステアリン酸(stearic acid))、18:1(9c)(オレイン酸(oleic acid))、18:2(9c,12c)(リノール酸(linoleic acid))、18:3(9c, 12c, 15c)(α−リノレン酸(α−linolenic acid))、20:0(アラキジン酸(arachidic acid))、20:1(11c)(ゴンドイン酸(gondoic acid))、20:2(11c,14c)(11,14-eicosadienoic acid)、20:3(11c, 14c, 17c)(11,14,17-eicosatrienoic acid)、22:0(ベヘン酸(behenic acid))、22:1(13c)(エルカ酸(erucic acid))、24:0(tetracosanoic acid)、24:1(15c)(15-tetracosenoic acid) および18:3(9c,11t,13c)(プニカ酸(punicic acid ))である。最初の数値は炭素数を示し、その次の数値は不飽和結合の数を示し、不飽和結合の数の直後の括弧内の数値は該不飽和結合の位置を示し、c及びtはそれぞれシス及びトランスを示す。
【0108】
【表1】
Figure 2004159638
【0109】
(15)ザクロコンジュゲースcDNAを含むイネ形質転換ベクターの構築
(7)で得られたPgFac全長cDNAを含むプラスミドDNAを、制限酵素EcoRVおよびSacIで切断し、該DNA断片を(4)と同様な方法で精製した。一方、イネ胚グロブリン遺伝子Reg2(Plant Cell Physiology, vol. 37, 612-620)の翻訳開始コドンより上流1252bpを含むプロモーター領域(rEGlb p)、GUS遺伝子ならびにノパリンシンターゼ遺伝子ターミネーター配列(Nos t)を連結したプラスミドpUC19を、制限酵素SmaIとSacIで切断し、GUS遺伝子を除いたDNA断片を(4)と同様な方法で精製し、これとPgFacを含むDNA断片をライゲーションした後、大腸菌DH5αの形質転換を行いコロニーを得た。これよりプラスミドDNAを精製し、rEGlb p、PgFacおよびNos tを含むプラスミドを得た。次にこれを制限酵素EcoRIとPstIで切断し、rEGlb p、PgFacおよびNos tを含むDNA断片を(4)と同様な方法で精製した後、pBSII sk+の対応する制限酵素部位にライゲーションし、大腸菌DH5αの形質転換を行いコロニーを得た。これよりプラスミドDNAを精製し、rEGlb p、PgFacおよびNos tを含むプラスミドを得た。次にこのプラスミドを、制限酵素SmaI、KpnIおよびXmnIで切断し、rEGlb p、PgFacおよびNos tを含むSmaI-KpnI断片を(4)と同様な方法で精製した。一方、バイナリーベクターpMM473.1[平成 9 年度産業技術開発事業新エネルギー・産業技術総合開発委託複合生物系等生物資源利用技術開発 (生物利用石油代替燃料製造技術の開発) 成果報告書、第 3 章石油代替有用資源生産技術、▲1▼熱帯油糧作物の高度利用技術、87-141、財団法人バイオインダストリー協会、1998]を制限酵素HpaIとKpnIで切断し、これと上述の該cDNA断片をライゲーションすることにより、バイナリーベクターpME-PgFacを作製した。これを用いてエレクトロポーレーション法によりアグロバクテリウムEHA101株の形質転換を行い、スペクチノマイシン(50μg/ml)、テトラサイクリン(2.5μg/ml)クロラムフェニコール(25μg/ml)およびカナマイシン(50μg/ml)を含むYEB寒天培地(0.5%Peptone, 0.5%Beef extract, 0.1%Yeast extract, 0.5%sucrose, 1.5%agarose)上に形成されたコロニーを得た。コロニーの一部をとり、配列番号6および7に記載するプライマーそれぞれ1μMを含むPCR反応液20μlに加えて、(7)と同様な条件でPCRを行い反応産物の電気泳動を行ったところ、期待されるサイズのバンドが見られた。これらのことから、得られたコロニーはpME-PgFacを含むアグロバクテリウム形質転換体であることを確認した。
【0110】
(16)イネ形質転換体の作製
イネ(Oryza sativa L.)はSpringer Lbs Manual 分子遺伝学・分子生物学的実験法 モデル植物ラボマニュアルpp108-138(岩淵雅樹、岡田清孝、島本功=編シュプリンガー・フェアラーク東京社)に報告されている方法に従って形質転換を行った。即ち、籾を取り除いたイネ種子30粒を1/2希釈アンチホルミン溶液(50(v/v)%次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素5%、和光純薬)、Tween20 数滴)中で20分間振とう滅菌し、滅菌水で3回洗浄した。これらの滅菌種子をカルス誘導培地(2N6培地=30mg/mlシュークロース、1mg/lカザミノ酸、2μg/ml 2,4-D、8mg/ml アガロース入りN6培地)上に播種して、28℃暗所で3週間培養し、更に、新しいカルス誘導培地に移植して28℃暗所で4日間培養することによりイネカルスを誘導した。(15)記載のpME-PgFacを有したアグロバクテリウムをYEB培地で増殖させた後、4000gで10分間遠心により集菌して、40μg/mlのアセトシリンゴン、50μg/mlスペクチノマイシン、50μg/mlカナマイシンを含有したAAI培地にOD600=0.18〜0.20になるように再懸濁を行った。この懸濁液に、先のイネカルスを加えて15分間室温で振とうさせた。取り出したカルスを滅菌濾紙上で風乾した後、共存培養培地(N6CO培地=30mg/mlシュークロース、10mg/mlグルコース、2μg/ml 2,4-D、40μg/mlアセトシリンゴン、6mg/mlアガロース入りN6培地)に移して25℃暗所で3日間アグロバクテリウムと共存培養した。15mg/mlハイグロマイシン、250mg/mlカルベニシリンを含む滅菌水に共存培養後のカルスを移して振とう、上清を廃棄する洗浄操作を10回繰り返して、アグロバクテリウムの除菌を行った後、滅菌濾紙上で余分な水分を除いてから選抜培地(N6SE培地=1mg/mlカザミノ酸、30mg/mlシュークロース、2μg/ml2,4-D、6mg/mlアガロース、30mg/mlハイグロマイシン、500μg/mlカルベニシリンを含むN6培地)に移して28℃暗所で3週間選抜を行った。これにより増殖したカルスを50mg/mlハイグロマイシン、500μg/mlカルベニシリン含有の新しいN6SE培地に移植して更に28℃暗所で3週間選抜を行った。次に、得られたハイグロマイシン耐性カルスを再生培地(MSRE培地=30mg/mlシュークロース、30mg/mlソルビトール、1μg/ml1-ナフタレン酢酸、2μg/ml6-ベンジルアミノプリン、8mg/mlアガロース、30μg/mlハイグロマイシン、500μg/mlカルベニシリンを含むMS培地)で培養して再生個体を得た。これら再生個体の葉からDneasy Plant Mini (Qiagen社製)を用いてDNAを抽出し、そのうち1μl、および配列番号6および7に記載するプライマーそれぞれ1μMを含むPCR反応液20μlに加えて、(7)と同様な条件でPCRを行い反応産物の電気泳動を行ったところ、期待されるサイズのバンドが見られ、形質転換体であることが確認された。これら形質転換体はワグネルポットに移植して自家受粉種子(T1種子)を採種した。
【0111】
(17)イネ形質転換体の脂肪酸分析
得られたT1種子の全種子中に含まれる脂肪酸を分析する場合は、種子1粒を乳鉢および乳棒ですりつぶした後、1.5mlの0.5Mナトリウムメトキシド/メタノールを加えて懸濁し、懸濁液をガラス管に移して50℃で1時間メチル化処理した。以後、(14)に記載のアラビドプシス形質転換体の脂質分析と同様にして分析を行った。GC分析により非形質転換体種子と形質転換体T1種子の脂肪酸組成を比較したところ、形質転換体T1種子(図8B)では非形質転換体の種子(図8A)には見られない新たなピークが検出された。このピーク(図8B、矢印)はザクロ由来脂肪酸GCサンプルに含まれるプニカ酸メチルエステルのピークと同じ時間に検出されたことから、ザクロ由来コンジュゲースによりイネ種子中でプニカ酸が生成していることが明らかになった。
【0112】
非形質転換体、pME-PgFac形質転換体、それぞれ3個体について種子の脂肪酸組成を比較した(表2)。pME-PgFacでは平均3%のプニカ酸の蓄積が見られた。そのうち最大のものは4.2%だった。
【0113】
【表2】
Figure 2004159638
【0114】
また、T1種子の組織別脂肪酸組成の分析には、種子を実体顕微鏡下でメスを用いて胚および胡粉層(糠層)を含む部分と胚乳部分に分け、胚乳部分は乳鉢・乳棒ですりつぶした後、1.5mlの0.5Mナトリウムメトキシド/メタノールを加えて懸濁、ガラス管に移した。胚を含む糠層はそのままガラス管に移して、1.5mlの0.5Mナトリウムメトキシド/メタノールを加え、それ以後は全種子の場合と同様に処理して分析を行った。
【0115】
非形質転換種子およびpME-PgFac形質転換種子、それぞれ4粒について胚および糠層と胚乳部分の脂肪酸組成測定し比較した(表3)。形質転換種子では脂質を蓄積している胚および糠層では平均5.1%のプニカ酸の蓄積が見られた。一方、胚乳部分では平均3%の蓄積量だった。また、形質転換体種子ではプニカ酸の蓄積に伴い、非形質転換体種子と比較してオレイン酸含量の増加とリノール酸含量の減少が認められた。
【0116】
【表3】
Figure 2004159638
【0117】
なお、図8中の数字で表したピークは各脂肪酸のメチルエステルであり、それぞれ、16:0(パルミチン酸(palmitic acid))、18:0(ステアリン酸(stearic acid))、18:1(9c)(オレイン酸(oleic acid))、18:2(9c、12c)(リノール酸(linoleic acid))、18:3(9c、12c、15c)(リノレン酸(α-linolenic acid))、22:0(ベヘン酸)、および18:3(9c、11t、13c)(プニカ酸(punicic acid))である。最初の数値は炭素数を示し、その次の数値は不飽和結合の数を示し、不飽和結合の数の直後の括弧内の数値は該不飽和結合の位置を示し、cおよびtはそれぞれシスおよびトランスを示す。
【0118】
【発明の効果】
本発明により、プニカ酸などのtrans-11-,cis-13-共役二重結合をもつ脂肪酸の合成に関与する新規遺伝子がクローニングされた。本発明の遺伝子を利用することにより、プニカ酸などのtrans-11-,cis-13-共役二重結合をもつ脂肪酸を植物中に生成かつ蓄積させることが可能になり、これにより当該共役脂肪酸を産業的に利用することが可能になった。
【0119】
【配列表】
Figure 2004159638
Figure 2004159638
Figure 2004159638
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Figure 2004159638
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Figure 2004159638
Figure 2004159638
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、pYES2を導入した酵母(A)、pYES2/PgFacを導入した酵母(B)およびザクロ未熟種子(C)より調製した脂肪酸メチルエステルをGCにより分析した結果である。酵母はリノール酸を添加した培地で培養した。
【図2】図2は、pYES2を導入した酵母(A)、pYES2/PgFacを導入した酵母(B)およびザクロ未熟種子(C)より調製した脂肪酸メチルエステルをGCにより分析した結果である。酵母はリノール酸を添加しない培地で培養した。
【図3】図3は、図2B中の矢頭で示したピークをGC−MS(EI)分析して得られたマススペクトル(A)を、同様な手法により分析した16:3(7, 10, 13-hexadecatrienoic acid)メチルエステルのマススペクトル(B)と比較した結果である。
【図4】図4は、非形質転換体アラビドプシスの種子(A)、pKN-PgFac形質転換体アラビドプシスの種子(B)およびザクロ未熟種子(C)より調製した脂肪酸メチルエステルをGCにより分析した結果である。
【図5】図5は、プニカ酸、α-エレオステアリン酸およびカレンディック酸をそれぞれ含む、キカラスウリ、ニガウリおよびキンセンカの種子より調製した脂肪酸メチルエステルサンプルを混合したもの(A)、およびpKN-PgFac形質転換アラビドプシス種子より調製した脂肪酸メチルエステル(B)をGCにより分析した結果である。
【図6】図6は、図4B中の矢頭で示したピークをGC−MS(EI)分析して得られたマススペクトル(A)を、同様な手法により分析した20:3(7, 10, 13-eicosatrienoic acid)メチルエステルのマススペクトル(B)と比較した結果である。
【図7】図7は、pYESを導入した酵母(A)、およびpYES2/PgFacを導入した酵母(B)より調製した脂肪酸メチルエステルをGCにより分析した結果である。酵母は20:2(11c、14c)を添加した培地で培養した。
【図8】図8は、非形質転換体イネの種子(A)、pME-PgFac形質転換体イネ種子(B)より調製した脂肪酸メチルエステルをGCにより分析した結果である。

Claims (24)

  1. 下記の何れかの塩基配列を有する遺伝子。
    (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列;
    (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列;
    (C)配列番号2に記載の塩基配列;
    (D)配列番号2に記載の塩基配列において1から複数個の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するタンパク質をコードする塩基配列;または
    (E)配列番号2に記載の塩基配列またはその相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するタンパク質をコードする塩基配列:
  2. 下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質。
    (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列;または
    (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力を有するアミノ酸配列:
  3. Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力が、リノール酸からプニカ酸を合成する能力である、請求項1に記載の遺伝子
  4. Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力が、リノール酸からプニカ酸を合成する能力である、請求項2に記載のタンパク質
  5. 請求項1または3に記載の遺伝子を含むベクター。
  6. 請求項1または3に記載の遺伝子または請求項5に記載のベクターを有する形質転換宿主細胞。
  7. 形質転換植物細胞である、請求項6に記載の形質転換宿主細胞。
  8. 請求項2または4に記載のタンパク質を用いる、Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸から、trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を製造する方法。
  9. 請求項6に記載の形質転換宿主細胞を培養し、該形質転換宿主細胞が産生するtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を回収することを特徴とする、trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の製造方法。
  10. 請求項1または3に記載の遺伝子または請求項5に記載のベクターを用いて宿主を形質転換し、形質転換していない宿主細胞よりもtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の生産量が増大している形質転換宿主細胞を選抜することを特徴とする、宿主細胞におけるtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸の生産量を増大させる方法。
  11. 配列番号3または配列番号4に記載の塩基配列を有するプライマーと、配列番号5に記載の塩基配列を有するプライマーとの組み合わせからなるプライマーセット。
  12. 配列番号6または配列番号8に記載の塩基配列を有するプライマーと、配列番号7または配列番号9に記載の塩基配列を有するプライマーとの組み合わせからなるプライマーセット。
  13. 請求項1に記載の(A)〜(E)の何れかの塩基配列中の連続した5〜100塩基と同じ配列を有するセンスオリゴヌクレオチド、当該センスヌクレオチドと相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び、当該センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドのオリゴヌクレオチド誘導体から成る群から選ばれるオリゴヌクレオチド。
  14. 請求項7に記載の形質転換植物細胞から得られる種子。
  15. 請求項14に記載の種子から得られる種子油。
  16. (a)Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力をもつタンパク質をコードする遺伝子で宿主細胞を形質転換し、(b)該遺伝子を発現するために適切な条件で宿主細胞を生育させ、(c)trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量の増加した宿主細胞を選択する工程を含む、宿主細胞におけるtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量を増加させる方法。
  17. (a)請求項2または4に記載のタンパク質をコードする遺伝子で宿主細胞を形質転換し、(b)該遺伝子を発現するために適切な条件で宿主細胞を生育させ、(c) trans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量の増加した宿主細胞を選択する工程を含む、宿主細胞におけるtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量を増加させる方法。
  18. (a)Δ12位に二重結合をもつ脂肪酸からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸を合成する能力をもつタンパク質をコードする遺伝子で植物細胞を形質転換し、(b)得られた形質転換植物細胞から稔性のある植物体を生育させ、(c)得られた稔性のある植物体から後代種子を得、該後代種子からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量が増加したものを選択し、(d)得られた後代種子からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量が増加した油脂を取得する工程を含む、種子油の製造方法。
  19. (a)請求項2または4に記載のタンパク質をコードする遺伝子で植物細胞を形質転換し、(b)得られた形質転換植物細胞から稔性のある植物体を生育させ、(c)得られた稔性のある植物体から後代種子を得、該後代種子からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量が増加したものを選択し、(d)得られた後代種子からtrans-11-,cis-13-共役二重結合を持つ脂肪酸および/またはその誘導体の含有量が増加した油脂を取得する工程を含む、種子油の製造方法。
  20. 請求項18または19に記載の製造方法で得られる種子油。
  21. 請求項14に記載の種子またはその処理物、あるいは請求項15または20に記載の種子油またはその処理物を含有する機能性健康飲食品。
  22. 請求項14に記載の種子またはその処理物、あるいは請求項15または20に記載の種子油またはその処理物を含有する動物飼料。
  23. cis-9-,trans-11-,cis-13-ヘキサデカトリエン酸(hexadecatrienoic acid)。
  24. cis-11-,trans-13-,cis-15-エイコサトリエン酸(eicosatrienoic acid)。
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