JP2004157092A - Squidの温度制御装置および方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】SQUID(11、21)自体が超伝導転移温度以下で優れた温度センサになり得ることに着目し、SQUIDの制御回路をDC結合とし、変調方式を採用することにより、SQUIDの出力自体を温度センサとしても動作させる。この方法は、SQUIDからの出力を磁束によるものか、温度によるものか区別する必要があるが、DC結合の変調方式により解決するものである。
SQUIDをその近傍に配置したヒータ(45、77)により過熱して温度制御するSQUIDの温度制御装置(43,73)であって、前記SQUID自体を温度センサとして使用する温度制御装置である。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気測定等に使用される超伝導量子干渉素子(SQUID;super−conducting quantum interference device)の温度制御に関する発明であり、より詳しくはSQUID自体を温度センサーとして使用して、温度制御を行う装置および方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超伝導量子干渉素子、即ちSQUID、は通常超高感度の磁束計として使用されており、超伝導リングには磁束が磁束量子の単位で出入りするという特徴を利用して、地磁気の5000万分に1以下の磁場を検出することができる。このためSQUIDは従来の磁気センサと比較して3桁以上の感度を有する。かかるSQUIDは磁束計としての使用される他、例えば微小変位形、微小電流計、微小電圧計等にも使用されているが、これらの場合においても測定量は一度磁束に変換して検出される。
【0003】
SQUIDを例えばヘリウム冷凍機等の冷凍機を用いて冷却し稼動させる方法は、例えば液体窒素や液体ヘリウムなどの冷媒を使わずにSQUIDの使用が可能なので、取り扱いが容易で実用上優れた方法である。例えば、高温超伝導材料を使用するSQUIDの場合は、一般には液体窒素の使用も可能なように、液体窒素温度(77K)に最適化されている。この場合の温度偏差は±2ケルビン以下が要求されている。SQUIDを安定に動作させ、高いパフォーマンスを発揮させるためには、温度の制御が特に重要である。冷凍機の能力を制御することのみによって温度制御を行う方法も稀に使用されている。しかし、冷凍機を使用した場合の冷却温度は、冷凍機の圧縮機の温度と冷凍能力に依存するため、温度を極めて正確に維持しつつSQUIDを安定に動作させることは難しい。
【0004】
このため従来の温度制御技術においては、図7に示すように、ヘリウム冷凍機等の冷凍機102を用いてSQUID101の周囲を動作温度以下に低温度化し、SQUID101の近傍に配置したヒータ105および温度センサ103と温度制御部104とを組み合わせて、SQUID101を所望の一定温度に制御する温度制御法が用いられている。温度センサとしては一般に例えば銅コンスタンタンまたはクロメルアルメル等からなる熱電対または白金等からなる抵抗温度計が使用される。この場合、ヒータ105および温度センサ103はSQUID101に隣接して配置し、温度センサの出力を導線にて温度制御部104の入力に接続し、温度制御部104の出力によりヒータ105の加熱条件を制御してSQUID101の温度を所定の温度に制御する。
【0005】
【非特許文献1】
D.Koelle, R.Kleiner, F.Ludwing, E.Dantsker, J.Clarke, ”High Transition Temperature Superconducting Quantum Interference Devices”, Rev.Mod.Phys.71,631(1999).
【非特許文献2】
R.Hohmann, H.−J.Krause, H.Soltner, Y.Zhang, C.A.Copetti, H.Bousack, A.I,Braginski, M.I.Faley, ”HTS SQUID System with Joule−Thomson Cryocooler for Eddy Current Nondestructive Evaluation of Aircraft Structures”,IEEE Trans Appl.Supercond.,7,3702,(1997)
【非特許文献3】
D.F.He, X.H.Zeng, H.−J.Krause, H.Solter, Ruders and Y.Zhang, “Radio frequency SQUIDs operating at 77K with 1GHz lumped−element tank circuits”,Appl.Phys. Lett. Vol.72, pp969−971, 1998
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、温度制御のために通常の温度センサ103を用いる方法は、例え温度センサ103とSQUID101とを可能な限り隣接して配置したとしても、温度センサ103とSQUID101本体との間に少なくとも一定の間隔が存在するため、正確にSQUID本体の温度を測定することはできない。さらに、温度センサによる測定行為そのものが、例えば測定対象である微小な磁束等に影響を及ぼすこともある。また、冷凍機の能力を制御して温度を安定化させることはより難しい。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、SQUID自体が超伝導転移温度以下で優れた温度センサになり得ることに着目し、SQUIDの制御回路をDC結合とし、変調方式を採用することにより、SQUIDの出力自体を温度センサーとしても動作させるものである。この方法は、SQUIDからの出力を磁束によるものか、温度によるものか区別する必要があるが、DC結合の変調方式により解決するものである。
本発明は、SQUIDをその近傍に配置したヒータにより過熱して温度制御するSQUIDの温度制御装置であって、前記SQUID自体を温度センサとして使用する温度制御装置である。
【0008】
また、本発明は、前記SQUIDの出力がプリアンプを介して前記ヒータの温度を制御する温度制御回路に接続される温度制御装置であり、または、前記温度制御回路は前記SQUIDの出力を基準のDC電圧と比較する比較手段を有する温度制御装置であり、または前記プリアンプの出力がローパスフィルタを介して前記比較手段に入力される温度制御装置であり、または前記SQUIDはdcSQUIDまたはrfSQUIDのいずれかである温度制御装置である。
【0009】
本発明は、SQUIDをその近傍に配置したヒータにより過熱して温度制御する前記SQUIDを用いる磁束計であって、前記SQUIDとプリアンプを介して接続されている磁束測定部と、前記SQUID自体を温度センサとして使用する温度制御回路とを有する磁束計である。
【0010】
また、本発明は、前記磁束測定部は前記SQUIDと共に磁束−ロックループを形成する磁束計であり、または前記SQUIDの出力が前記プリアンプを介して前記温度制御回路に接続される磁束計であり、または前記SQUIDはdcSQUIDまたはrfSQUIDのいずれかである磁束計である。
【0011】
本発明はSQUIDをその近傍に配置したヒータにより過熱して温度制御する前記SQUIDを用いる磁束計であって、測定される磁束は交流信号による磁束変調手段を有する磁束測定部により測定され、温度制御は前記SQUID自体を温度センサとして使用する温度制御回路により行なわれる磁束計である。
【0012】
本発明は、SQUIDをその近傍に配置したヒータにより過熱して温度制御するSQUIDの温度制御方法であって、前記SQUID自体を温度センサとして使用するため、前記SQUIDの出力電圧を検出するステップを有する温度制御方法である。
【0013】
そして、本発明はさらに前記出力電圧を増幅するステップと、増幅された前記出力電圧を基準のDC電圧と比較するステップを有する温度制御方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。SQUIDには直流で動作するdcSQUIDと無線周波数で動作するrfSQUIDがある。
【0015】
直流で動作するdcSQUIDにおいては、図1(A)に示されているように、超伝導材料で作成したループ11の途中に2つのジョセフソン接合12が設けられている。例えば、高温超伝導材料を使用したSQUIDの場合には、典型的な超伝導ループは厚さが1μm以下の薄膜で形成されている。
【0016】
SQUIDは磁界を検出するための最も敏感なセンサである。SQUIDの基本的な構造は、幅が例えば3μの1個または2個の超伝導的に弱い接合、即ちジョセフソン接合12、を有する、例えば厚さが0.2μmのSQUIDリング11によって形成されている。
【0017】
図1(A)は直流で動作するdcSQUIDを示しており、SQUIDリング11の相対する側部に2つのジョセフソン接合12を有する。この場合dcSQUIDは直流電源(図示せず)からの電流入力部13を通して、直流電流(Ib)によってバイアスされている。また、直流電流(Ib)に低周波電流を重畳した(Ib+低周波数電流)によってバイアスされる場合もある。
【0018】
一方図2(A)に示す交流で動作するrfSQUIDのSQUIDリング21は、1個のジョセフソン接合22を有し、このリング21は図2(A)に示すように、rfコイル23およびコンデンサ24を含むタンク回路25との誘導的結合によって生ずる無線周波数電流によってバイアスされる。タンク回路25はrfSQUIDへの電力供給部26のコイル27と誘導的に結合されており、コイル27には電流入力部28から交流電流Irfが供給される。
【0019】
図1(B)および図2(B)は、それぞれdcSQUIDおよびrfSQUIDのIV曲線16、17および29、30を示している。図1(B)に示すようにdcSQUIDのIV曲線は、SQUIDのリング11を貫くように適用される外部磁束(図1bにおいてはnΦ0および(n+1/2)Φ0)によって変化する。(B)の場合、バイアス電流Ibが一定で磁束がnΦ0から(n+1/2)Φ0に変化すると、出力電圧はΔV変化する。このように、dcSQUIDが臨界電流よりもほんの少し大きい一定の電流によりバイアスされている場合、dcSQUIDの電圧はリングを貫く内部磁束Φの変化に従って変化する。dcSQUIDにおいて出力電圧Vは磁束の増加により周期的に変化しその周期はΦ0である。なおΦ0は磁束量子である。このような現象は、図1(A)のリング11における2つの分枝Aおよび分枝Bをそれぞれ流れる電流間に現れる量子論的干渉効果の結果生ずるものである。ここで、nはSQUIDに入る磁束の本数を示す。
【0020】
rfSQUIDの場合のIV曲線は図2(B)に示すように脈動しながら増加する。しかし磁束(Φ)と出力電圧Vとの関係は図2(C)に示すようにdcSQUIDの場合と同様に周期的に変化する。
【0021】
SQUIDを用いた磁束計においては、一般的に公知のいわゆる零−検出回路(zero−detector)が使用される。零−検出回路は、外部磁界が変化した場合、SQUIDリングの磁束変化を打ち消すような電流を流してSQUIDに入る磁束の変化を零にするように動作させる回路であり、磁束を打ち消すために流した電流により磁界の変化を検出する検出器である。この場合SQUID中の磁束は、リングからの出力電圧を積分回路を介して戻るように結合することにより、磁束の変化を補償することにより一定に即ち零に保たれる。このように、SQUIDは磁束−ロックループ、即ちFLL(Flux Locked Loop)内で動作することになる。FLLを使用することにより、積分器49の出力電圧は適用された磁束の変化に比例する。
【0022】
図3に示すように、dcSQUIDの臨界電流IcおよびIV曲線は、温度Tにより変化する。低温においてIcはより大きくなる。図3において、T1はT2より温度が低く、このため、T1での臨界電流Ic1はT2での臨界電流Ic2よりも大きい。dcSQUIDが一定電流Ibによりバイアスされている場合、SQUIDのdc出力電圧Vsは温度がT1からT2に変化するとV1からV2に変化する。
従って、他の環境条件に変化がなければdcSQUIDのdc電圧Vsから、SQUIDの温度の変化を知ることができる。
【0023】
図4(A)は温度により変化するdcSQUIDの臨界電流Icを示す。臨界電流Icは絶対温度の変化により、ほぼ直線的に変化する。図4(B)はdcSQUIDが一定電流580μAでバイアスされている場合の温度と出力電圧の関係を示す。図4(B)はdcSQUIDの出力電圧Vsが絶対温度の変化によりほぼ直線的に変化する状態を示す。
【0024】
従って、dcSQUIDの出力電圧Vsの検出により、dcSQUID本体の温度または温度変化を検出することができる。従って、dcSQUIDの出力電圧と所定の基準電圧との差分を用いてdcSQUIDの近傍に設けたヒータ45の加熱を制御することにより、dcSQUIDの温度を一定に制御することが可能である。ヒータとしては従来からこの技術分野において使用されてきたものを使用することができる。例えば、絶縁基板上に形成されたNiCr、Pt、W等の金属薄膜を使用することも可能であるが、特に薄膜に限定されるものではない。
【0025】
上記原理に基づきdcSQUIDの温度制御を実現するためには、特別のdcSQUID読出し回路が必要とされる。図5はdcSQUIDを使用する場合の読出し回路42および温度制御回路43のブロック図を示す。
【0026】
通常のdcSQUIDに関しては2種類の結合、即ちトランス結合とDC結合が存在する。しかし、トランス結合においては、dcSQUIDのDC信号はトランスを通過しないため、本発明の温度制御には使用されない。本発明のDC結合においてはdcSQUIDのDC信号もまた増幅される。温度制御回路において、DC電圧はdcSQUIDの動作温度を調整するために使用される。
【0027】
図5はdcSQUIDを用いた場合の磁束計の温度制御における一実施の形態を示す。図5に示す実施の形態においては、dcSQUIDの読み出しにはSQUID自体41によるセンサとプリアンプ46との結合が使用される。図5に示す本発明による温度制御装置は、少なくともSQUID部65、SQUIDの読み出し回路42、そして温度制御回路43により構成される。読み出し回路65は外部磁束を検出し、温度制御回路43はSQUID自体の温度を検出することによりヒータ45の加熱条件を制御し、SQUID自体を一定温度に維持する。
【0028】
SQUID部65は、SQUIDリング41、SQUIDリング41に設けられた2つのジョセフソン接合63、64、そして超伝導リング41と磁気的に結合するフィードバックコイル44を含む。そして超伝導リング41は入力部67からバイアス回路(図示せず)により電流Ibが常時バイアスされている。
【0029】
SQUID読み出し回路42は、SQUID部65と組合わされて、読み出し部62に外部磁束に対応する出力信号を出力する。即ちSQUID読み出し回路42は、SQUID部からの出力を増幅するプリアンブ46、プリアンブ46と直列に接続された増幅器47を含む。典型的には、プリアンブ46の増幅率は約1000倍、増幅器47の増幅率は約100倍が望ましい。さらに、読み出し回路42は発振器52、乗算機能を有する位相検出器48、フィードバック抵抗54、抵抗51、56、増幅器49および積分コンデンサ50を含み、増幅器49と積分コンデンサ50によって積分器66が形成されている。読み出し部62はさらに抵抗54フィードバック路57を介してコイル44と接続されている。
【0030】
発振器52は典型的には数10kHzの周波数で発振する。発振器52からの変調用の交流電流は、抵抗56およびライン55を介してフィードバックコイル44に伝えられ、dcSQUID部65の出力における温度による効果と外部磁場による効果を分離するために、コイル44を介して磁界を生成し、外部磁場(外部磁場の変化分)の変調を行う。発振器52はまた位相検出器48と接続されている。
【0031】
SQIUD部のSQUIDリング41を超伝導状態に転移させると、図1(C)に示すように、SQUlDからの出力はSQUIDリング11と鎖交する磁束に対してΦ。を周期として電圧変化する。SQUIDの動作点が例えば図1(C)のA点に設定されている場合、発振器52から出力される例えば数10kHzの変調信号を基に、SQUIDリング11には変調フィードバックコイル44を介して、変調信号に対応する数10kHzの正弦波の変調磁束が加えられる。外部磁束が変動すると、SQUID65の出力における動作点が移動し(例えばA‘点)、出力電圧の位相は変化する。
【0032】
これら外部磁束の増減に対応して位相の変化した出力信号を、プリアンプ46でおよそ1000倍大きさに増幅した後、さらに増幅器47によりおよそ100倍に増幅し、乗算器48および発振器52により位相検波する。位相検出器48は発振器52の位相に対し所定の角度だけ位相のずれた(一般には同期した)信号のみを出力するので、その出力を積分器66により積分することによって、磁界の変化をDC電圧に変換することができ、外部磁束の変化に対応した変化量を得ることができる。
【0033】
この変化量をフィードバック抵抗54を介して変調フィードバックコイル44によってSQUIDリング41に帰還させる。このフィードバック電流が帰還抵抗54を流れることによって発生する電圧が外部磁界の変化量を示す。この電圧を取り出すことにより磁束の変化量を計測することができる。
【0034】
即ち、外部磁界の増減に対応してSQUIDリング41内の磁束Φが増減すると、増減に対応したSQUID部65の出力信号が生じ、位相検出器48、発振器52そして積分器66によって、外部磁界の増減に対応するDC電圧が生成できる。このDC出力電圧に対応する電流がフィードバック抵抗54を介してフィードバック路53からフィードバックコイル44に流れて制御磁束を生成する。この制御磁束は、SQUIDリング41と交差する外部磁束を打ち消して常に同じ動作点に固定するように制御される。このため、超伝導リング41内の磁束は常に一定に保たれる。
【0035】
検出された外部磁束の変化分は積分器によって加算されるので外部磁束の大きさに比例した電流が出力として得られる。かかる回路は一般にFLL回路と呼ばれており、磁束がロックされた状態からの外部磁界の変化量を、フィードバック電流が流れることによって発生する出力電圧から読み出すことができる。
【0036】
従って、外部磁束による変化量は、高周波信号の位相ずれとして表れるので、交流成分を処理することにより測定することができる。
【0037】
一方、温度変化による出力変化分は高周波成分を除くことによって得ることができる。従って、その典型的な実施の形態を示す温度制御回路43は、プリアンプ46の出力と接続される入力部68を有し、高周波成分を遮断するローパスフィルタ60、温度設定の基準となるDC電圧源59、そして一方の入力がローパスフィルタ60に他方の入力がDC電圧源59と接続され、その差分に応じてヒータ45への入力電流を制御する積分器58を用いて形成することができる。積分器58の出力はライン61を介してヒータ45に接続される。なお、温度制御回路43は、温度センサとしても使用されるSQUIDからの出力信号から高周波成分を除いてSQUIDの温度変化を検出し、検出された温度を設定温度と比較して、ヒータに適切な電流を供給可能なものであれば良く、図5に示す温度制御回路43に特に限定されるものではない。
【0038】
以下にこの温度制御回路43の動作を述べる。SQUID部65の温度が設定温度より低くなると、dcSQUID部65の出力電圧dcSQUID部65の出力電圧を増幅するプリアンプ46のDC電圧は、DC電圧源59が規定する基準のdc電圧より低くなる。その結果、プリアンプ46のDC電圧と基準のdc電圧の差分を積分する積分器(integrator)の出力電圧はより高くなる。その結果、ヒータ45はより大きなパワーを生成し、SQUID部65の温度を高くする。逆にSQUID部65の温度が設定温度より高くなると、dcSQUID部65の出力電圧に対応するプリアンプ46のDC電圧と基準のdc電圧の差が小さくなる。その結果、ヒータ45のパワーは小さくなる。この方法によって、dcSQUID部65の温度を安定化することができ、動作温度は温度制御ユニットのDC電圧によって制御することが可能となる。
【0039】
SQUIDがロックされた状態の場合、即ち補償する電流を流すことにより、外部磁束に関係する出力電圧を零または一定の状態にした場合、SQUID部65からのDC電圧は温度によってのみ変化することになる。SQUID部65がロックされた状態の場合、超伝導リング41を通過する磁束は一定に保たれる(例えば磁束が零の状態等)ので、SQUID部のDC電圧はSQUID部65に適用される外部磁束によっては変化しない。
【0040】
この方法は一般に測定の安定度が高いといわれているrfSQUIDについて使用することも可能である。図6はrfSQUIDに関するブロック図であり、rfSQUIDを用いた本発明に係る温度制御装置の一実施の形態を示す。図6に示すようにこの温度制御装置は、dcSQUIDの場合と同様に、SQUID部96、SQUIDの読み出し回路72、そして温度制御回路73を用いて構成される。基本的な動作原理はdcSQUIDと同様である。
【0041】
SQUID部96は、1個のジョセフソン接合97を有するSQUIDリング41、SQUIDリング71と磁気的に結合する帰還コイル74を含む。そしてSQUIDリング71は誘導的に結合されたタンク回路76によりバイアスされている。タンク回路76はさらに読み出し回路72と結合するコイル75と誘導的に結合されている。
【0042】
rfSQUIDの読み出し回路72は、コイル75およびタンク回路76を介してSQUID部96を制御し、読み出し部84に外部磁束に対応する出力信号出力を出力する。読み出し部84は抵抗88、ライン89、91を介してコイル74と接続されている。SQUID読み出し回路72は、SQUIDリング71に臨界電流よりも少し大きい所定のバイアス電流を供給するための電力源となるRF発振器85を有し、方向性結合器78を介してSQUID部96のコイル75に所定のRF電流を供給する。RF発振器85は一般に例えば数10MHz〜数100MHzの高周波信号を発生する。
【0043】
SQUID部からの出力は、方向性結合器78を介してrf増幅器79に伝えられる。rf増幅器79はミクサ80に接続されRF発振器85からの出力とミキシングされる。ミクサ80からの出力が超伝導リングと交差する磁束の大きさに対応する出力を形成する。ミクサ80を用いることにより、高周波信号の振幅と位相を検出することができる。ミクサ80からの出力は増幅器81によって増幅され、位相検波器82に入力される。読み出し回路72はさらに、dcSQUID読み出し回路42と同様に機能する、低周波発振器86、乗算機能を有する位相検出器82、フィードバック抵抗87、抵抗88、積分器83が形成される。
【0044】
低周波発振器86は数10kHzの周波数で発振する。発振器86からの変調用の交流電流は抵抗87およびライン90、91を介してコイル74に供給され、rfSQUID部96の出力の温度による効果と外部磁場による効果を分離するために、コイル74を介して磁界を生成し、外部磁場の変調を行う。
【0045】
位相検出器82は低周波発振器86の周波数と同期した信号のみを出力させることにより、外部磁束の変化分に対応する変調部分の交流成分を取出す。
【0046】
積分器83の出力はフィードバック抵抗88を介してSQUID部96に戻され、フィードバックコイル74によって帰還させる。このフィードバック電流がフィードバック抵抗88を流れることによって読み出し部84に発生する電圧がSQUID部96に加えられた外部磁界の変化量を示す。そしてこの電圧を取り出すことにより電界変化量を計測することができる。低周波発振器87の出力はまた、ライン91を通ってフィードバックコイル74に接続され、外部磁束の変化を検出するための交流磁界を発生する。この部分の動作は先に記載したdcSQUIDの動作と共通する。
【0047】
温度制御回路73は増幅器81の出力と接続され、高周波成分を遮断するローパスフィルタ92、温度設定の基準となるDC電圧源93、そして一方の入力がローパスフィルタ92に他方の入力がDC電圧源93と接続され、その差分に応じてヒータ77への入力電流を制御する積分器94を有する。この部分の動作も先に記載したdcSQUIDの動作と共通する。
【0048】
上記SQUIDによる上記温度制御装置を使用した場合、SQUIDの動作温度変化は0.1ケルビン以下となり、顕著な温度安定性が得られることがわかった。そしてこの動作温度は図5および図6のDC電源電圧59、93を変化させることにより容易に調整することができる。本発明による温度制御装置を用いることにより、SQUIDシステムが朝から夕方まで8時間以上ロック状態に留まることができることがわかった。
【0049】
冷凍機を用いて低温化される高Tc−dcSQUIDシステム、および冷凍機によるSQUIDのために特に適切である、dcSQUIDおよびrfSQUIDを使用した磁束測定回路を開発した。この測定回路において、SQUIDとプリアンプの間の導線抵抗の影響を除くために、SQUIDとプリアンプ間にdc結合が使用された。冷凍機の温度変化の影響を低減するために、変調FLL(磁束ロックループ)が使用された。この冷凍機によって冷凍される読み出し電子回路による高Tc−dcSQUIDシステムは、SQUID部を長時間一定の温度に維持することが可能である。本発明においては、SQUID以外の温度センサは不要となり、かつ高精度で長時間、冷凍機の温度を安定化させることができるようになり、冷凍機を用いてSQUIDを安定して稼動させることが可能となった。
【0050】
以上本発明のいくつかの実施の形態について図示しまた説明したが、本発明の技術的範囲を逸脱せずに、種々の変形が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はdcSQUIDの基本構造を示し、(B)はそのIV特性を示し、(C)は外部磁束に対するdcSQUIDの出力電圧の変化を示す。
【図2】(A)はrfSQUIDの基本構造を示し、(B)はそのIV特性を示し、(C)は外部磁束に対するrfSQUIDの出力電圧の変化を示す。IrfとVrfは、無線線周波数信号の振幅である。
【図3】dcSQUIDのIV特性とその温度変化を示す。
【図4】(A)はdcSQUIDの温度と臨界電流の関係を示す。(B)はdcSQUIDにおける温度と出力電圧の関係を示す。
【図5】dcSQUIDを用いた場合の、磁束計とその温度制御回路のブロック図を示す。
【図6】rfSQUIDを用いた場合の、磁束計とその温度制御回路のブロック図を示す。
【図7】従来技術によるSQUIDの温度制御回路の概略をブロック図で示す。
【符号の説明】
11 … SQUIDリング
12 … ジョセフソン接合
13 … 電流入力部
14、15 … 出力部
16 … 外部磁束がnΦ0の時のdcSQUIDのI‐V曲線
17 … 外部磁束が(n+1/2)Φ0の時のdcSQUIDのI‐V曲線
18 … 磁束に対する電圧変化
21 … SQUIDリング
22 … ジョセフソン接合
23 … rfコイル
24 … コンデンサ
25 … タンク回路
26 … 電力供給部
27 … コイル
28 … 入力部
29 … 外部磁束が(n+1/2)Φ0の時のI−V曲線
30 … 外部磁束がnΦ0の時のI−V曲線
31 … rfSQUIDのI−V曲線
41 … SQUIDリング
42 … SQUIDの読み出し回路
43 … 温度制御回路
44 … フィードバックコイル
45 … ヒータ
46 … プリアンプ
47 … 増幅器
48 … 位相検出器
49 … 増幅器
50 … 積分コンデンサ
51、54、56 … 抵抗
52 … 発振器
53 … フィードバック路
55 … ライン
57 … フィードバック路
58 … 積分器
59 … DC電圧源
60 … ローパスフィルタ
61 … ライン
62 … 読み出し部
63、64 … ジョセフソン接合
65 … SQUID部
66 … 積分器
67 … 入力部
68 … 入力部
71 … SQUIDリング
72 … 読み出し回路
73 … 温度制御回路
74 … フィードバックコイル
75 … コイル
76 … タンク回路
77 … ヒータ
78 … 方向性結合器
79 … RF増幅器
80 … ミクサ
81 … 増幅器
82 … 位相検出器
83 … 積分器
84 … 読み出し部
85 … RF発振器
86 … 低周波発振器
87 … 抵抗
88 … フィードバック抵抗
89、90、91、95 … ライン
92 … ローパスフィルタ
93 … DC電源
94 … 積分器
96 … SQUID部
97 … ジョセフソン接合
101 … SQUID
102 … 冷凍機
103 … 温度センサ
104 … 温度制御部
101 … ヒータ
Claims (12)
- SQUIDをその近傍に配置したヒータにより過熱して温度制御するSQUIDの温度制御装置であって、前記SQUID自体を温度センサとして使用する温度制御装置。
- 前記SQUIDの出力がプリアンプを介して前記ヒータの温度を制御する温度制御回路に接続される請求項1記載の温度制御装置。
- 前記温度制御回路は前記SQUIDの出力を基準のDC電圧と比較する比較手段を有する請求項2記載の温度制御装置。
- 前記プリアンプの出力がローパスフィルタを介して前記比較手段に入力される請求項3に記載の温度制御装置。
- 前記SQUIDはdcSQUIDまたはrfSQUIDのいずれかである請求項1から4のいずれか1項に記載の温度制御装置。
- SQUIDをその近傍に配置したヒータにより過熱して温度制御する前記SQUIDを用いる磁束計であって、前記SQUIDとプリアンプを介して接続されている磁束測定部と、前記SQUID自体を温度センサとして使用する温度制御回路とを有する磁束計。
- 前記磁束測定部は前記SQUIDと共に磁束−ロックループを形成する請求項6記載の磁束計。
- 前記SQUIDの出力が前記プリアンプを介して前記温度制御回路に接続される請求項7記載の磁束計。
- 前記SQUIDはdcSQUIDまたはrfSQUIDのいずれかである請求項7または8記載の磁束計。
- SQUIDをその近傍に配置したヒータにより過熱して温度制御する前記SQUIDを用いる磁束計であって、測定される磁束は交流信号による磁束変調手段を有する磁束測定部により測定され、温度制御は前記SQUID自体を温度センサとして使用する温度制御回路により行なわれる磁束計。
- SQUIDをその近傍に配置したヒータにより過熱して温度制御するSQUIDの温度制御方法であって、前記SQUID自体を温度センサとして使用するため、前記SQUIDの出力電圧を検出するステップを有する温度制御方法。
- さらに前記出力電圧を増幅するステップと、
増幅された前記出力電圧を基準のDC電圧と比較するステップを有する請求項11に記載の温度制御方法。
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