JP2004154255A - 手術用観察装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被検体の観察像を観察可能な観察手段(鏡体4)を有する手術用観察装置において、被検体を走行する神経の情報を抽出して取得する神経情報取得手段(神経画像記録部11)と、神経に加えられた刺激を検出する神経検出手段(神経モニター12)と、神経検出手段の検出結果に基づいて神経情報取得手段からの神経の情報を基に刺激が加えられた神経の画像を生成し観察手段(鏡体4)により観察可能に表示する表示手段(モニター24L,24R)とを有する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、手術用観察装置に関し、特に、視野内表示手段を有する手術用顕微鏡システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、手術の高度化に伴い、手術用顕微鏡を用いた手術(いわゆるマイクロサージャリー)において、顕微鏡像だけでなく手術に使用する様々な装置等の画像を同時に観察したいという要望が高くなっている。
【0003】
このような手術用顕微鏡の例として、後述する特許文献1には顕微鏡視野内にCTやMRIの術前画像を基に構築されるナビゲーション装置の画像を表示したり、神経モニターの波形を表示する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−11022号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した特開2002−11022号公報を含む従来技術では、術者は神経モニターの波形を視野内で観察できるだけであり、手術時のどの操作が被検体の何処を走行している神経に刺激を与えているかは、術者個人の経験からしか判断することができなかったので、的確な処置を行なうために確認作業がわずらわしく、手術の長時間化を招いていた。
【0006】
また、神経画像を顕微鏡像に重畳する場合でも、その表示は神経モニターの反応とはリンクしておらず、また手動によりON/OFFが行われていたため、その操作は手術の流れを止める非常に煩わしいものであった。
【0007】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、的確な処置が行なえるとともに、煩わしい切換え操作が無く、表示が手術の邪魔にならない手術用観察装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、被検体の観察像を観察可能な観察手段を有する手術用観察装置において、被検体を走行する神経の情報を抽出して取得する神経情報取得手段と、前記神経に加えられた刺激を検出する神経検出手段と、前記神経検出手段の検出結果に基づいて前記神経情報取得手段からの前記神経の情報を基に前記刺激が加えられた神経の画像を生成し前記観察手段により観察可能に表示する表示手段とを有する。
【0009】
また、第2の発明は、被検体の観察像を観察可能な観察手段を有する手術用観察装置において、被検体を走行する神経の情報を抽出して取得する神経情報取得手段と、刺激が加えられた前記神経を検出する神経検出手段と、前記神経情報取得手段により取得された神経の情報から前記神経検出手段により検出された神経に対応した神経の情報を選定する神経情報選定手段と、前記神経情報選定手段により選定された神経の情報に基づいて前記刺激が加えられた神経の画像を生成し前記観察手段により観察可能に表示する表示手段とを有する。
【0010】
また、第3の発明は、第1または第2の発明に係る手術用観察装置に関わり、前記表示手段は前記観察手段により観察される前記被検体の観察像の前記神経が対応する位置に重なるように前記神経の画像を表示する。
【0011】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る手術用顕微鏡システムの全体構成図である。図2は手術用顕微鏡の鏡体部分を示す構成図である。図3(a)、図3(b)は本実施形態の視野内の画像を示す作用図である。図4は本実施形態の動作フローを示す図である。
【0012】
(構成)
手術用顕微鏡1は、架台2と、架台2に取り付けられた6自由度を有するアーム3と、アーム3の先端に取り付けられた観察手段としての鏡体4と、架台2に取り付けられたフットスイッチ(以下、FS)5と、FS5の操作入力に応じて鏡体4の図示しない光学系駆動部を駆動する架台2に内蔵された図示しない駆動制御部と、から構成されている。
【0013】
鏡体4にはナビゲーション用のセンサー6が取り付けられている。同様に患者Pの頭部にはナビゲーション用のボーンマーカー7が取り付けられている。
【0014】
図1に示すように、手術室には、前記センサー6とボーンマーカー7が同時に撮影できる位置に観察位置検出手段としてのデジタイザ8が設置されている。デジタイザ8は、詳述しない撮像素子を所定間隔で2個配置し、3角測量の原理でセンサー6やボーンマーカー7の相対的な3次元空間位置を判別する装置である。
【0015】
デジタイザ8はナビゲーション用のワークステーション(以下、WS)9に接続されている。また、WS9には術前画像記録部10、神経画像記録部11、神経モニター12、画像生成手段13が各々接続されている。
【0016】
神経モニター12には、ディスプレイ14が接続されている。また、神経モニター12には神経モニター用のプローブ15が接続されており、プローブ15の他端は患者Pの頭部の所定位置に取り付けられている。
【0017】
鏡体4には図2に示すように、対物レンズ16、左右一対のズーム光学系17R、17L、左右一対の結像レンズ18R、18L、左右一対の接眼レンズ19R、19Lが内蔵されており、立体拡大観察光学系を構成している。
【0018】
一対のズーム光学系17R、17Lにはモーター20が設けられており、架台2に内蔵された図示しない駆動系制御部により駆動制御される。また、一対のズーム光学系17R、17Lにはエンコーダー21が取り付けられており、ズーム光学系17R、17Lの図示しない移動レンズの位置、すなわち観察倍率を検出する。エンコーダー21はWS9に接続されている。
【0019】
一対のズーム光学系17R、17Lと一対の結像レンズ18R、18Lの間には、一対のビームスプリッター22R、22Lが挿入されている。前記した立体観察光学系の光軸方向は、このビームスプリッター22R、22Lの透過方向に一致しており、この透過方向と直交する反射方向には左右一対のレンズ23R、23L及び左右一対のモニター24R、24Lが設けられている。
【0020】
すなわち、モニター24R、24Lに投影された像は、ビームスプリッター22R、22Lにて立体観察光学系の光学像と重ね合わされ、接眼レンズ19R、19Lを介して術者はモニター像と光学像を同時に観察できるように構成されている。
【0021】
一対のモニター24R、24Lは、画像生成手段13に接続されている。
【0022】
(作用)
以下に上記した構成の作用を図4のフローチャートを参照して詳細に説明する。術者は先ず、術前画像記録部10からCTやMRI等の術前画像をWS9に読み出し、この術前画像から3次元再構築像を生成する(ステップS1)。WS9は、生成した3次元再構築像から神経のみの画像を抽出し、神経の種類ごと(I番神経、II番神経、…)に3次元画像化する。この神経のみの3次元画像は、その種類ごとに神経情報取得手段としての神経画像記録部11に保存される(ステップS2)。
【0023】
次に術者は、鏡体4をアーム3を用いて移動し、術部の所望の位置へ設置する。術者はFS5を操作することにより図示しない駆動制御部に信号を送り、該駆動制御部はモーター20へ駆動信号を出力してズーム光学系17R,17Lを所望の観察倍率に設定し、術部の観察及び処置を実施する。観察倍率の情報はエンコーダー21にて検出され、WS9へ伝達されている。また、本実施形態では固定焦点の対物レンズ16を用いているが、この焦点距離情報はあらかじめWS9に設定されている。
【0024】
デジタイザ8は詳述しない2つの撮像手段によりセンサー6及びボーンマーカー7を撮像しており、各センサー6及びボーンマーカー7の配列によりボーンマーカー7の位置に対するセンサー6の相対位置を検出する。ボーンマーカー7の位置は、術前に撮影された術前画像にも記録されており、その配列とデジタイザ8で撮影した像の配列を比較することにより、術前画像(3次元再構築像)と実際の術部の座標を一致させる。
【0025】
WS9は、前記ボーンマーカー7の位置に対するセンサー6の相対位置も検出している。したがって、WS9は術前画像(3次元再構築像)に対するセンサー6の相対位置を検出する。センサー6は鏡体4に取り付けられているため、WS9は鏡体4の術部及び術前画像に対する相対位置を検出している。また、WS9には鏡体4の対物レンズ16の焦点距離、観察倍率が伝達されているので、その立体拡大観察光学系が観察する左右の観察像が術前画像(3次元再構築像)においてどの部分に相当しているかを検出することができる。これにより、神経画像記録部11に記録された神経画像と前記立体拡大観察光学系にて観察される光学像の空間座標を一致させることができる(ステップS3)。
【0026】
術者はこの状態で術部の処置を行う。図3(a)は、このときの光学観察像を示している。図3(a)において、手術用顕微鏡の視野25には脳実質100に腫瘍101が発生しており、神経26が腫瘍101に内包されている状態を示す。27は術部の処置を行う処置具である。また、103は血管である。
【0027】
術者は術前画像等を参考にして注意深く腫瘍101部分の処置を実施するが、腫瘍101に内包された神経26を刺激してしまうことがある。神経26に伝えられた刺激はプローブ15を介して神経検出手段としての神経モニター12に伝達される。神経モニター12は刺激があると刺激を受けた神経を特定し、その刺激の強さを波形の形でディスプレイ14に表示する。
【0028】
神経への刺激が所定の閾値を超えると、神経モニター12は特定の神経への刺激があったと判断し(ステップS4)、刺激を受けた神経の種類をWS9に伝達する。例えば神経モニター12が顔面神経への閾値以上の刺激を受けたことを検出した場合、WS9にその旨が伝えられ、神経像選定手段としてのWS9は神経画像記録部11から顔面神経の3次元画像を取り出す。顔面神経の3次元画像は鏡体4の観察像との空間的マッチングが取れているから、前記3次元画像に対して立体観察光学系と一致する左右視差を有した2方向とその観察倍率情報が付加され、画像生成手段13に伝達される(ステップS5)。
【0029】
画像生成手段13は、左右視差を有した2種類の2次元画像を生成し(ステップS6)、右眼用2次元画像を第1の表示手段としてのモニター24Rへ、左眼用2次元画像を第2の表示手段としてのモニター24Lへ伝達する(ステップS7)。モニター24R、24Lに伝達された各2次元画像は、左右一対のレンズ24R、24Lを介してビームスプリッター22R、22Lにて立体観察光学系の立体光学像と合成される。術者は接眼レンズ19R、19Lを介して立体光学像に再構築された立体神経画像が重畳された像を観察する。図3(b)は、このときの鏡体4の視野25のようすを示している。図3(b)において、28が重畳された立体神経画像である。
【0030】
この表示により、術者は腫瘍101に内包された顔面神経26を処置具27で刺激をしてしまったこと、及び顔面神経26が走行している部分を認識できるため、適切な処置を行うことができる。重畳された立体神経画像は、神経への刺激が無くなってから所定時間経過すると自動的に消され(表示の終了)、視野は図3(a)に示す画像に戻る(ステップS8)。
【0031】
(効果)
第1実施形態によれば、術者は処置によって神経を刺激してしまったことを即座に認識できるうえ、肉眼で見えない神経走行位置を参照できるため、素早く適切な処置を実施でき、手術の効率が非常に高くなるという効果を有する。
【0032】
[第2実施形態]
図5は第2実施形態に係る鏡体4の拡大構成図である。図6はデジタルカメラ取付け部の拡大図である。第1実施形態と同じ部分は同じ番号を付与して説明を省略する。
【0033】
(構成)
図5に示すように、ズーム光学系17R、17Lとビームスプリッター22R、22Lの間にはビームスプリッター30R、30Lが設けられている。ビームスプリッター30R、30Lは、ズーム光学系17R、17Lから射出した光束がビームスプリッター30R、30Lに入射すると50%がビームスプリッター22R、22L方向に透過し、50%がレンズ31R、31L方向に反射されるように取り付けられている。
【0034】
レンズ31R、31Lの後段にはデジタルカメラ32R、32Lが設けられている。レンズ31R、31Lの焦点位置にはデジタルカメラ32R、32Lの撮像素子33R、33Lが設けられている。また、デジタルカメラ32R、32Lには赤外線受光部34R、34Lが設けられている。デジタルカメラ32R、32Lは、赤外線受光部34R、34Lに所定の赤外線パルス信号を受光すると、図示しない撮影制御部が動作し撮影が行われる。赤外線受光部34R、34Lは、鏡体4に対向する方向に設けられている。また、鏡体4の対向する位置には赤外線発光部35R、35Lが設けられている。赤外線発光部35R、35Lは、架台2に内蔵されたレリーズ信号出力部36に接続されている。レリーズ信号出力部36はFS5に接続されている。
【0035】
デジタルカメラ32R、32Lの撮像素子33R、33Lは、画像保存手段37に接続されている。画像保存手段37は画像比較手段38に接続されている。
画像比較手段38はWS9に接続されている。
【0036】
また、画像生成手段13とモニター24R、24Lの間には輝度調整手段39が設けられている。輝度調整手段39には神経モニター12が接続されている。
【0037】
デジタルカメラ32R、32Lは、レンズ31R、31Lを内蔵した光学アダプタ40R、40Lにて鏡体4に接続されている。鏡体4には部材41R、41Lが設けられており、鏡体4に設けられた赤外線発光部35R、35L及びデジタルカメラ32R、32Lに設けられた赤外線受光部34R、34Lの間に図示しない滅菌カバー(以下、ドレープ)が赤外線経路を塞がないように構成されている。
【0038】
図6は、上記したデジタルカメラ32Rについての取付け部を拡大したようすを示している。
【0039】
(作用)
術者は手術前に鏡体4に図示しないドレープを装着する。ドレープは光学アダプタ40R、40L及び部材41R、41Lにより赤外線発光部35R、35Lと赤外線受光部34R、34Lの経路を塞ぐことがない。従って、術者がFS5の図示しない撮影スイッチを押すことにより、レリーズ信号出力部36からレリーズ信号が赤外線発光部35R、35Lに送られる。赤外線発光部35R、35Lは所定の発光パターンで発光し、その赤外線信号はデジタルカメラ32R、32Lの赤外線受光部34R、34Lに受光される。これにより、デジタルカメラ32R、32Lは、その撮像素子33R、33Lに結像されている観察像を撮影し、画像データを画像保存手段37へ出力する。画像保存手段37に保存された画像は、術後に画像ファイルとして使用することができる。
【0040】
また、画像保存手段37に保存された左右一対のデジタルカメラ32R、32Lで撮影された画像は、画像比較手段38に送られる。画像比較手段38では、WS9から術前画像の3次元再構築像とデジタイザ8で検出した観察位置(撮影位置)情報が送られてきており、その3次元再構築像と画像保存手段37から送られてきた撮影画像との比較を行う。比較は、撮影範囲の特徴部位(本実施形態では、脳実質の表面を走行する血管)の形状比較をパターンマッチング法にて実施する。
【0041】
すなわち、3次元再構築像とデジタルカメラ32R、32Lによる撮影画像において血管の走行にズレが生じていれば、ブレインシフト(開頭時の髄液流出により脳が術前画像撮影時に対して歪んだ形状となる状態)や処置による変位を来たしていると判断する。従って、このズレ量を演算して、他の組織のズレ量を算出し、術前画像(3次元再構築像)に反映させる。修正された術前画像は、術前画像記録部10に保存され、またこれをもとに生成される神経画像(神経画像記録部11に保存されている)も修正が加えられる。
【0042】
ここで、神経に刺激があると、第一実施形態と同様に画像生成手段13は両眼の視差に対応した神経画像を生成し輝度調整手段39に伝達する。輝度調整手段39は、神経の刺激量を神経モニター12から受信し、それに応じた輝度に画像を加工し、モニター24R、24Lに出力する。この加工は、刺激が強い場合は明るく、刺激が中程度の場合は輝度を中程度に、刺激が低い場合は暗く、行われる。これにより、術者は観察視野内に神経画像を重畳して観察する。
【0043】
なお、輝度調整手段による輝度の変更の代わりに、神経の刺激に応じて神経像の色を変化させたり、表示を点滅させたりすることにより表示を変化させるようにしても良い。
【0044】
(効果)
デジタルカメラの撮影動作を行う赤外線発光部、赤外線受光部及び赤外線の経路をドレープ等の障害物が塞ぐことが無いため、ドレープ等を装着する場合に余計な気を遣う必要が無いため、作業効率が向上する。
【0045】
また、撮影画像と術前画像をパターンマッチングによりズレ量を算出して術前画像の補正を行うため、視野内に重畳する術前画像のイメージがブレインシフトや処置による変位でズレることがなく、正確な表示が可能となる。
【0046】
更に、刺激の強さを明るさによって視野内に識別可能に表示するため、処置による刺激の強さが感覚的に把握でき、適切な対応が可能となる。
【0047】
[第3実施形態]
(構成)
第1、第2実施形態では、受動的な神経モニターによる例を挙げたが、本実施形態においては、能動的な神経モニター、具体的には耳から音声刺激を意図的に加え、その刺激を伝達する聴神経系にセンサーを設けて聴力に異常が無いか確認を行う、聴性脳幹反応モニター(以下、ABRモニター)(図7)を用いた例を示す。
【0048】
図7に示すように、ABRモニター42にはディスプレイ43とスイッチ44が接続されている。また、ABRモニター42には左右の耳に刺激を伝える刺激伝達プローブ45R、45Lが接続されている。更にABRモニター42には、脳幹反応を受信するプローブ46が取り付けられている。
【0049】
(作用)
以下に上記した構成の作用を図8のフローチャートを参照して説明する。ステップS1からS3、ステップS6からS8については図4と同様であるのでここでの説明は省略する。
【0050】
次に、術者が聴力に異常が無いか確認するために、聴神経系刺激のためのSW44を押すと(ステップS14)、ABRモニター42は音声刺激の発振を行う。音声刺激は刺激伝達プローブ45R、45Lを介して患者Pの左右の耳に伝達される(ステップS15)。音声刺激の結果、その脳幹反応がプローブ46にて受信されABRモニター42にて反応解析が行われる(ステップS16)。解析結果は、ディスプレイ43に表示される。術者は、この表示を見ることにより、聴力が温存されているか否か、また聴神経系の何処の部分に異常が発生しているかを確認することができる。
【0051】
また、ABRモニター42は、聴神経系の何処まで正常に脳幹反応が発生しているかをWS9に伝達する(ステップS18、S19)。WS9は神経画像記録部11から聴神経の画像を抽出し、画像生成手段13に伝達する。画像生成手段13は、正常に脳幹反応が発生している部分までを明るく、脳幹反応に異常が認められる部分から先を暗く、聴神経画像を加工して、鏡体4のモニター24R、24Lに伝達する。例えば、反応がある場合、画像生成手段13は、聴神経画像を青色に着色し(ステップS20)、反応がない場合には、聴神経画像を緑色に着色する(ステップS21)。これにより、術者は聴神経の走行状態と、正常範囲、異常範囲を認識しながら手術を実施する。
【0052】
(効果)
術者は、聴神経の走行状態に加え、脳幹反応の正常範囲と異常範囲を視覚的に識別しながら手術が行えるため、手術効率が向上する。
【0053】
また、神経に異常が認められた時だけでなく、術者が必要な場合に神経の状態を表示できるため、使い勝手が良い、という効果も有する。
【0054】
なお、上記した第1から第3実施形態では、手術用観察装置として手術用顕微鏡を例に説明したが、これに限定されることはなく、例えば、光学内視鏡または超音波内視鏡にも適用することができる。
【0055】
(付記)
1. 術部を観察する鏡体部と、
この鏡体部の観察視野内に画像を表示する視野内表示装置と、
前記鏡体部の観察位置を検出するナビゲーション装置と、
患者の神経状態を観察する神経モニターと、
前記神経モニターの所定の神経における反応を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果及びナビゲーション装置による観察位置情報から、診断画像をもとに神経の走行状態を示す画像を生成する画像生成手段と、
該画像生成手段で生成された画像を前記視野内表示装置に表示する表示制御部と、
を具備することを特徴とする手術用顕微鏡システム。
【0056】
2. 前記表示制御部は、神経の反応の変化により表示を開始し、反応停止から所定時間経過後に表示を停止する表示制御アルゴリズムを有することを特徴とする1.記載の手術用顕微鏡システム。
【0057】
3. 前記画像生成手段は、前記検出部の検出結果に応じて画像を加工する画像加工アルゴリズムを有することを特徴とする1.記載の手術用顕微鏡システム。
【0058】
4. 前記画像加工アルゴリズムは、神経の反応が大きいときは画像を明るく、反応が小さいときは画像を暗くするアルゴリズムであることを特徴とする3.記載の手術用顕微鏡システム。
【0059】
5. 前記画像生成手段は、前記診断画像と術部を撮影した撮影画像との特徴部分を比較してそのズレ量を演算する演算手段と、該演算手段の演算結果から、生成する神経画像の補正を行う画像補正手段と、を含むことを特徴とする1.記載の手術用顕微鏡システム。
【0060】
6. 前記視野内表示手段は、顕微鏡光学像に画像を重畳表示する重畳表示手段であることを特徴とする1.記載の手術用顕微鏡システム。
【0061】
7. 前記画像生成手段が生成する画像は、診断画像から生成した3次元再構築像から神経部分のみを抽出し、この神経部分のみの3次元再構築像を、手術用顕微鏡の左右観察光軸と等しい方向及び等しい観察倍率で観察した場合に得られる両眼視差を有した左右眼用の2種類の2次元画像であることを特徴とする1.記載の手術用顕微鏡システム。
【0062】
8. 術部を立体観察する観察光学系と、
術部を撮影する撮影用光路と、
を有する手術用顕微鏡システムにおいて、
前記撮影用光路に取り付けられ、所定のパルス信号を第1の無線インターフェースにて受信することで撮影動作を行う撮影手段と、
本撮影手段の撮影を行うための入力手段と、
前記入力手段の入力操作に応じて、手術用顕微鏡の鏡体部に設けられた第2の無線インターフェースから所定のパルス信号を出力する信号出力部と、
を有することを特徴とする手術用顕微鏡システム。
【0063】
9. 前記撮影手段はデジタルカメラであることを特徴とする付記8記載の手術用顕微鏡システム。
【0064】
10. 前記第1の無線インターフェースと、前記第2の無線インターフェースは、略対向した位置に設けられていることを特徴とする付記8記載の手術用顕微鏡システム。
【0065】
11. 前記第1の無線インターフェースと、前記第2の無線インターフェースとの間に通信を阻害する異物の侵入を防止する保護部材を有することを特徴とする付記8.記載の手術用顕微鏡システム。
【0066】
12. 前記第1の無線インターフェース及び第2の無線インターフェースは、赤外線インターフェースであることを特徴とする付記8.記載の手術用顕微鏡システム。
【0067】
なお、付記1.〜付記7.記載の発明に対する「従来の技術」及び「発明が解決しようとする課題」は、本明細書の最初に記載した通りである。また、付記8.〜付記12.記載の発明に対する「従来の技術」及び「発明が解決しようとする課題」は、以下の通りである。
【0068】
「近年、画像の記録のデジタル化が進んでいる。従来手術用顕微鏡の手術画像記録はアナログ記録(動画はUマチック、VHS、8mm、ベータカム等、静止画は35mm銀塩フィルム)が一般的であった。しかし、最近では記録済み画像の保存性(スペース、画質劣化)や学会発表時等の画像加工の利便性から、静止画をデジタルカメラで記録したいという要望が強くなっている。
【0069】
一方、デジタルカメラは35mm銀塩カメラと異なり、フィルムサイズの制約が無いためボディーの小型化が進んでいる。手術用顕微鏡は販売台数が限られているため、専用のデジタルカメラを作ろうとすると非常に高価になってしまう。
従って、市販のデジタルカメラに小改良を加えて手術用顕微鏡に取り付けることが、安価に提供するためには必要である。
【0070】
しかし、最近のデジタルカメラは小型化を優先するために有線によるレリーズ機能を有していない場合が多く、シャッターボタンを押すか、赤外線リモコンによってレリーズを行わなければならない。手術中に手術用顕微鏡鏡体に取り付けられたシャッターボタンを押すのは、拡大観察している顕微鏡においては画像ブレを誘発してしまう。また、赤外線リモコンによるレリーズでは、手術用顕微鏡が滅菌カバーにて覆われているため、滅菌カバーの装着状態によっては正しくリモコンが効かない場合がある。
【0071】
本発明は、上記事情に鑑みたもので、手術用顕微鏡に取り付けられたデジタルカメラを容易かつ確実に撮影でき、かつ安価な手術用観察装置を提供することを目的とする。」
13. 被検体を走行する神経の像を取得して記録する神経像取得手段と、
前記被検体の観察像を観察可能な観察手段と、
刺激が加えられた神経を検出する神経検出手段と、
前記神経像取得手段に記録されている神経の像から前記神経検出手段により検出された神経に対応した神経像を選定する神経像選定手段と、
前記神経像選定手段により選定された神経像を前記観察手段により観察可能に表示する神経像表示手段と、
を具備することを特徴とする手術用観察装置。
【0072】
14. 前記神経像表示手段は、前記観察手段により観察される前記被検体の観察像の前記選定された神経像が対応する位置に重なるように前記選定された神経像を表示することを特徴とする13.記載の手術用観察装置。
【0073】
15. 前記神経像表示手段は、神経の反応に応じて神経像の表示を開始し所定時間後に表示を終了することを特徴とする13.記載の手術用観察装置。
【0074】
16. 前記神経像表示手段は、神経の反応に応じて神経像の表示を変化させることを特徴とする13.記載の手術用観察装置。
【0075】
17. 更に前記観察手段による被検体の観察位置を検出するための観察位置検出手段を有し、前記神経像表示手段は、前記観察位置検出手段の検出により前記被検体の観察像の前記選定された被検体の神経像が対応する位置を特定することを特徴とする14.記載の手術用観察装置。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、手術用観察装置の観察視野内に走行神経の情報を必要な場合のみ自動的に表示することが可能であるため、的確な処置が行えるのと同時に、煩わしい切換え操作が無く、表示が手術の邪魔になることも無い、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る手術用顕微鏡システムの全体構成図である。
【図2】手術用顕微鏡の鏡体部分を示す構成図である。
【図3】第1実施形態の視野内の画像を示す作用図である。
【図4】第1実施形態の動作フローを示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る鏡体4の拡大構成図である。
【図6】デジタルカメラ取付け部の拡大図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る手術用顕微鏡システムの全体構成図である。
【図8】第3実施形態の動作フローを示す図である。
【符号の説明】
1 手術用顕微鏡
2 架台
3 アーム
4 鏡体
5 FS(フットスイッチ)
6 センサー
7 ボーンマーカー
8 デジタイザ
9 WS(ワークステーション)
10 術前画像記憶部
11 神経画像記録部
12 神経モニター
13 画像生成手段
14 ディスプレイ
15 プローブ
Claims (3)
- 被検体の観察像を観察可能な観察手段を有する手術用観察装置において、
被検体を走行する神経の情報を抽出して取得する神経情報取得手段と、
前記神経に加えられた刺激を検出する神経検出手段と、
前記神経検出手段の検出結果に基づいて前記神経情報取得手段からの前記神経の情報を基に前記刺激が加えられた神経の画像を生成し前記観察手段により観察可能に表示する表示手段と、
を有することを特徴とする手術用観察装置。 - 被検体の観察像を観察可能な観察手段を有する手術用観察装置において、
被検体を走行する神経の情報を抽出して取得する神経情報取得手段と、
刺激が加えられた前記神経を検出する神経検出手段と、
前記神経情報取得手段により取得された神経の情報から前記神経検出手段により検出された神経に対応した神経の情報を選定する神経情報選定手段と、
前記神経情報選定手段により選定された神経の情報に基づいて前記刺激が加えられた神経の画像を生成し前記観察手段により観察可能に表示する表示手段と、
を有することを特徴とする手術用観察装置。 - 前記表示手段は前記観察手段により観察される前記被検体の観察像の前記神経が対応する位置に重なるように前記神経の画像を表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の手術用観察装置。
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