JP2004151059A - 赤外線検知素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い抵抗温度係数(|TCR|)を実現しながら抵抗率をできるだけ小さくすることにより、高感度化および高解像化を達成し、なおかつ小型化も可能な、例えば非冷却赤外線カメラに有効に用いられ得る赤外線検知素子を提供すること。
【解決手段】赤外線の入射光を吸収することにより温度が変化し、その温度変化によって抵抗値が変化する半導体薄膜を赤外線検知膜7として備えた赤外線検知素子1において、前記赤外線検知膜7が、主に、A−Cu−O−N系膜 (式中、Aはアルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上を表し、且つ、A、Cu、O、およびNのモル比をそれぞれa、b、cおよびdとした場合、a≧0、b>0、c>0およびd>0である)である。
【選択図】 図1
【解決手段】赤外線の入射光を吸収することにより温度が変化し、その温度変化によって抵抗値が変化する半導体薄膜を赤外線検知膜7として備えた赤外線検知素子1において、前記赤外線検知膜7が、主に、A−Cu−O−N系膜 (式中、Aはアルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上を表し、且つ、A、Cu、O、およびNのモル比をそれぞれa、b、cおよびdとした場合、a≧0、b>0、c>0およびd>0である)である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室温付近で赤外線の入射光を吸収することにより温度が変化し、その温度変化によって抵抗値が比較的大きく変化する半導体薄膜を赤外線検知膜(ボロメータ)とする、ボロメーター方式の赤外線検知素子に関するものである。本発明の赤外線検知素子は、冷却せずに赤外線の検知が可能な非冷却赤外線検知素子であり、例えば非冷却赤外線カメラ等に好適に利用され得る。
【0002】
【従来の技術】
現在、持ち運びが便利でありかつ鮮明な遠方画像が得られる、小型化、高感度化、高解像度化された非冷却赤外線カメラが求められている。カメラを小型化するには、画素サイズ、および赤外線検知素子を微細化する必要があるが、単に素子を微細化するだけでは赤外線の吸収効率が落ちて、カメラの感度が落ちてしまう。
また、カメラを高感度化、高解像化するためには、赤外検知素子の赤外線検知膜、即ちボロメータのTCRを高めると同時に、感度低下要因となっているノイズを低減することが有効である。なお、TCRとは、抵抗変化の温度依存性の指標である抵抗温度係数であり、その絶対値(|TCR|)が大きいほど、高い検出感度が得られる。
【0003】
現在のボロメーターとしては、半導体の酸化バナジウム(VOx)薄膜が実用化されている。VOx薄膜の室温における|TCR|は2.0%/K程度と低く、この材料を用いる限り、飛躍的な感度向上は望めない。
また、20℃における|TCR|が2.0%/K〜3.9%/Kであるボロメーターを有する赤外線検知素子が提案されている。このボロメーターは、(1)バリウム、ストロンチウム、およびカルシウムから選択された1または2以上の元素、(2)イットリウム、ランタン、および希土類元素から選択された1または2以上の元素、(3)銅、および(4)酸素からなる、結晶性または多結晶性もしくは非晶質の酸化物半導体である。更に具体的には、この酸化物半導体は、Y−Ba−Cu−O系(以降 YBCOと略す)であり、Y:Ba:Cu:O=1:1.2〜2.1:3:7〜9の組成を有している(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特表平11−500578号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献1のボロメーターは、室温での高い|TCR|、すなわち3%/K以上の|TCR|が得られるが、高い|TCR|を得る条件では、ボロメーターの抵抗率(ρ)も大きくなるという問題点がある。またボロメーターの使用温度が低くなると、半導体の抵抗が一層高くなり、ボロメーターに接続している電極間抵抗が増加し、電気回路上の許容値を超えてしまい、赤外線の検知ができなくなってしまうという欠点もある。なお、電極間抵抗を小さくするためには、櫛形電極を採用すると同時に、更に電極間距離を狭めることが有効であるが、電極パターンが微細化すると、汎用の装置では十分な加工精度が得られず、歩留まりが悪くなるという問題点がある。
したがって本発明の目的は、前記のような問題点を解決し、高い抵抗温度係数(|TCR|)を実現しながら抵抗率をできるだけ小さくすることにより、高感度化および高解像化を達成し、なおかつ小型化も可能な、例えば非冷却赤外線カメラに有効に用いられ得る赤外線検知素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、赤外線の入射光を吸収することにより温度が変化し、その温度変化によって抵抗値が変化する半導体薄膜を赤外線検知膜として備えた赤外線検知素子において、前記赤外線検知膜が、主に、A−Cu−O−N系膜 (式中、Aはアルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上を表し、且つ、A、Cu、O、およびNのモル比をそれぞれa、b、cおよびdとした場合、a≧0、b>0、c>0およびd>0である)であることを特徴とする赤外線検知素子を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における赤外線検知素子の断面図である。図2は、本発明の実施の形態1における赤外線検知素子の斜視図である。図2においては、赤外線検知膜7の下部に配している配線5および電極6の形状がわかるように一部透視図となっている。
本実施の形態の赤外線検知素子1は、シリコン基板2上に、赤外線反射膜3、支持膜4、赤外線検知膜7、絶縁膜8、赤外線吸収膜9および保護膜10がこの順で形成されている。また図2に示すように支持膜4は、シリコン基板2から上方に伸びる支持脚11により固定され、シリコン基板2および支持膜4間に空隙部が形成されている。また、支持膜4と赤外線検知膜7との間には、配線5および電極6が設けられている。
【0008】
次に本実施の形態の赤外線検知素子1の製造方法について説明する。
まず、シリコン基板2上に赤外線の吸収を高めるための赤外線反射膜3を形成する。本実施の形態では赤外線反射膜3の材料として窒化バナジウムを用い、スパッタ法により厚さを約10μmとした。なお、赤外線反射膜3の材料としては上記の他に、窒化チタン、ニッケル・クロム等が例示される。次に、シリコン基板2上に、支持膜4および支持脚11形成用の酸化シリコンをプラズマCVD法により付着させた。なお、基板支持脚11は、シリコン基板2上に付着した酸化シリコンの一部をシリコン犠牲層とみなし、最終工程でこのシリコン犠牲層をエッチングすることにより所望の形状に形成され得る。これにより、シリコン基板2と支持膜4と間に空隙部が設けられ、両者間に熱が伝わりにくい構造となる。続いて、配線5として熱伝導率の比較的小さいTiNを用い、これを支持膜4上に設けた。また配線5は、支持脚11を介してシリコン基板2に埋め込まれた電気回路(図示せず)に接続した。
次に、配線5の上部に電気的に接続するように電極6を設けた。電極6は、図2に示すように、電極間抵抗を少しでも低減する目的から、櫛形にした。櫛型の、サイズは、幅51μm、電極間1.3μmとした。なお、本発明の赤外線検知素子は、下記でも説明するように、抵抗率(ρ)が低いことから電極の形状を必ずしも櫛形にする必要はない。したがって、素子の小型化が達成される。
更に、基板2および電極6に跨って、赤外線検知膜7を堆積させた。赤外線検知膜7は、シリコン基板2を250℃に加熱し、Ca:Cu=1:1の酸化物焼結体ターゲットを用い、スパッタガスをAr、O2、およびN2の混合ガスとし、チャンバー内のガス圧を0.1mTorrから20mTorrの範囲に保持して、スパッタリングにより形成した。スパッタガスの混合比は、O2:N2=1:1として、スパッタガスのO2とN2のモル分率の和を0.5〜20まで変えて、製造工程におけるスパッタガス中のO2とN2のモル分率の和の異なる複数個の赤外線検知素子を作製した。このように例えばスパッタガスの混合比を適宜設定することにより、所望の赤外線検知素子の抵抗率(ρ)および|TCR|が得られる。
次に、赤外線検知膜7の上部に、プラズマCVD法により、絶縁膜のSiNx膜を2回成膜した。1回目の絶縁膜の成膜の時点で、赤外線検知膜7と絶縁膜8をイオンミリング法で同時に所望の形状にパターンニングし、赤外線検知膜7の電気抵抗を測定した。O2とN2のモル分率の和を変化させることで、赤外線検知膜のρを変化させ得ることが確認された。続いて1回目の成膜により形成された絶縁膜上に、2回目の成膜を行った。こうして、図1に示すように、絶縁膜8を形成した。
さらに絶縁膜8の上部に、赤外線を吸収しやすいVNからなる赤外線吸収膜9を設け、赤外線吸収膜9上に、SiNx膜からなる保護膜10を設けた。
このようにして得られた本実施の形態の赤外線検知素子1は、赤外線検知膜7が赤外線を吸収し、温度変化によりその抵抗値が変化し、この抵抗値変化を赤外線検知膜7の下部にある電極5の両端からバイアス電圧を印加して検出できるようになっている。
【0009】
なお参考例1として、赤外線検知膜の成膜において、スパッタガスをArおよびO2の混合ガスとした以外は、実施の形態1と同様に赤外線検知素子を形成した。スパッタガスのO2モル分率を0.5〜20まで変えて、製造工程におけるスパッタガス中のO2のモル分率の異なる複数個の赤外線検知素子を作製した。
また参考例2として、赤外線検知膜の成膜において、スパッタガスをArおよびN2の混合ガスとした以外は、実施の形態1と同様に赤外線検知素子を形成した。スパッタガスのN2モル分率を0.5〜10まで変えて、製造工程におけるスパッタガス中のN2モル分率の異なる複数個の赤外線検知素子を作製した。赤外線検知膜のパターニング直後に赤外線検知膜の抵抗を測定したところ、参考例2の全赤外線検知素子の抵抗は、2MΩより高くなっており、抵抗測定ができなかった。
参考例2は、赤外線検知膜の窒化が進みすぎると、急激に抵抗上昇が起きることを示唆するものであり、膜中には最適な酸素と窒素の割合が存在するものと考えられる。
【0010】
図3は、実施の形態1および参考例1で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。図3において、曲線12は本発明の実施の形態1における|TCR|とρとの関係を、曲線13は参考例1のρと|TCR|との関係を示している。曲線13と曲線14の重なっている部分は、Ar100%を表し、矢印は、Ar以外のガスの分圧を増加させた方向を表している。これより、本発明の実施の形態1は、参考例1に比べ、同じ|TCR|の値に対するρが小さいことは、明らかである。
【0011】
実施の形態2.
赤外線検知膜の成膜にY:Ba:Cu=1:2:3(モル比)の酸化物焼結体ターゲットを用いたこと、および基板温度を100℃としたこと以外は、実施の形態1と全く同様に、赤外線検知素子を作製した。実施の形態1と同様に、赤外線検知膜のパターニング直後において、赤外線検知膜の抵抗を測定したところ、スパッタガス中のO2とN2のモル分率の和を変えることで、赤外線検知膜のρが変化していることが判った。
なお、参考例3として、赤外線検知膜の成膜において、Y:Ba:Cu=1:2:3(モル比)の酸化物焼結体ターゲットを用いたこと、および基板温度を100℃とした以外は、参考例1と全く同様に赤外線検知素子を作製した。
【0012】
本発明の実施の形態2および参考例3で得られた赤外線検知素子のρと|TCR|との関係を調べた。図4は、実施の形態2および参考例3で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。図4において、曲線14は実施の形態2における|TCR|とρとの関係を、曲線15は参考例3の|TCR|とρとの関係を示している。曲線15と曲線16の重なっている部分は、Ar100%を表し、矢印は、Ar以外のガスの分圧を増加させた方向を表している。この結果から、実施の形態2は、参考例3に比べ、同じ|TCR|の値に対するρが小さいことは、明らかである。
【0013】
実施の形態3.
赤外線検知膜の成膜において、CuOの焼結体ターゲットを用いたこと、および基板温度を100℃とした以外は、実施の形態1と全く同様に、赤外線検知素子を作製した。
参考例4として、赤外線検知膜の成膜において、CuOの焼結体ターゲットを用いたこと、および基板温度を100℃とした以外は、参考例1と全く同様に赤外線検知素子を作製した。
図5は、実施の形態3および参考例4で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。図5において、曲線16は実施の形態3における|TCR|とρとの関係を、曲線17は参考例4の|TCR|とρとの関係を示している。曲線16と曲線17の重なっている部分は、Ar100%を表し、矢印は、Ar以外のガスの分圧を増加させた方向を表している。この結果から、実施の形態3は、参考例4に比べ、同じ|TCR|の値に対するρが小さいことは、明らかである。
【0014】
更に、本発明の実施の形態3および参考例4と同じ条件で、熱酸化膜(SiO2)付きSi基板上に各赤外線検知膜を成膜し、得られた膜についてX線回折により結晶性を調べた。参考例4では、基板に対する配向はなく、CuOに帰属する(111)面の回折ピークが僅かに確認されたが、実施の形態3ではブロードな非晶質のパターンが得られた。
次に、参考例5として、赤外線検知膜の成膜時の基板温度を400℃とした以外は、本発明の実施の形態2と全く同様に赤外線検知素子を作製した。
参考例5、実施の形態1、実施の形態2、および実施の形態3の赤外線検知素子の電極間に3.5Vを印加し、周波数100Hzのノイズ電圧を測定した。
この結果、参考例5の赤外線検知素子のノイズ電圧は、3500nV/(Hz)1/2であったのに対し、実施の形態1、実施の形態2、および実施の形態3の赤外線検知素子では、それぞれ、140nV/(Hz)1/2、150nV/(Hz)1/2、および190nV/(Hz)1/2であり、ノイズの小さい良好な値が得られた。
また、前記参考例5で、ノイズが大きくなった原因を調べるため、赤外線検知膜の微細組織を原子間力顕微鏡を用いて観察した。参考例5では、赤外線検知膜が数100nmを越える粗大粒子から形成されていることが判った。一方、実施の形態1、実施の形態2、および実施の形態3では、赤外線検知膜が数10nm程度の微細な粒子により緻密に形成されていることが判った。参考例5では赤外線検知膜が粗大粒子よりなるために、電極との接触状態が悪く、ノイズが高くなったものと考えられる。
更に、実施の形態2および参考例5と同じ条件で、熱酸化膜(SiO2)付きSi基板上に、赤外線検知膜をそれぞれ成膜し、得られた膜についてX線回折により結晶性を調べた。参考例5では、基板に対する配向はなく、CuOとCu3Nに帰属する(111)面の回折ピークが確認された。実施の形態2ではブロードな非晶質のパターンが得られた。これらの分析結果より、結晶化が起こると、下地に対し結晶配向が起きない場合、著しく粒子が成長することにより、電極との密着性が悪くなり、ノイズ電圧が高くなると考えられる。また、赤外線検知膜が非晶質であれば、下地を選ばずに、ノイズが抑制できることが判った。
更に、実施の形態1、実施の形態2、および実施の形態3の赤外線検知膜中における元素Nの存在を確認する実験を行った。熱酸化膜(SiO2)付きSi基板上に、各実施の形態と同じ条件で、赤外線検知膜をそれぞれ成膜した。
得られた膜について、X線回折により結晶性を調べたところ、全ての膜において、CuO、もしくはCu3Nの結晶、もしくはそれ以外の結晶による回折ピークは観測されず、非晶質の膜であることが判った。
更に、これらの膜について、膜の分解蒸発を避ける為、1気圧のArガス気流中で、700℃まで温度を上げて結晶化を行ったところ、CuO、およびCu3Nに帰属する(111)面の回折ピークが確認できた。ただし、CuOのピーク強度の方が、Cu3Nのピーク強度よりも強く現れた。このことより、少量の窒素が、本発明の赤外線検知膜の性能に寄与していることが判った。
【0015】
本発明の実施の形態では、赤外線検知膜であるA−Cu−O−N系膜(式中、Aはアルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上を表し、且つ、A、Cu、O、およびNのモル比をそれぞれa、b、cおよびdとした場合、a≧0、b>0、c>0およびd>0である)について、一部のアルカリ土類金属、Yについて記載したが、この他のアルカリ土類金属、希土類元素、それらの組み合わせについても、実施の形態で示した効果が得られていることを本発明者らは見出している。
また、A(アルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上)のモル比aと、Cuのモル比bとが、0≦a≦2bであり、0.5a<c+d≦1.5+2a(cはOのモル比、dは窒素のモル比)を満たす時に、凡そ2.5%/以上の高いTCRが得られることを本発明者らは見出している。
さらに、cとdとの割合を変えることで、抵抗率を加減することができ、a、bと多少の兼ね合いもあるが、概ねc>dであり、且つd/(c+d)>0.05である時に、殆どTCRを低下させることなく、抵抗率を低減できる効果が得られている。参考例2で示したように、dがcよりも大きくなると、かえって抵抗率が大きくなり、また、d/(c+d)が0.05よりも小さくなると、効果の発現が乏しいことが判った。
また、本発明の実施の形態では、赤外線検知膜の成膜において、スパッタ装置を使用しているが、この他の方法、レーザーアブレーション、CVD、EB等であっても、N2系、NH3系ガスを供給しながら、膜形成を行うことで、A−Cu−O−N系膜を得ることができ、ρが小さく、|TCR|が高い特性が得られた。
【0016】
【発明の効果】
本発明は、赤外線の入射光を吸収することにより温度が変化し、その温度変化によって抵抗値が変化する半導体薄膜を赤外線検知膜として備えた赤外線検知素子において、前記赤外線検知膜が、主に、A−Cu−O−N系膜 (式中、Aはアルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上を表し、且つ、A、Cu、O、およびNのモル比をそれぞれa、b、cおよびdとした場合、a≧0、b>0、c>0およびd>0である)であることを特徴とする赤外線検知素子であるので、高い抵抗温度係数(|TCR|)を実現しながら抵抗率をできるだけ小さくすることにより、高感度化および高解像化を達成し、なおかつ小型化も可能な、例えば非冷却赤外線カメラに有効に用いられ得る赤外線検知素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における赤外線検知素子の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における赤外線検知素子の斜視図である。
【図3】実施の形態1および参考例1で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。
【図4】実施の形態2および参考例3で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。
【図5】実施の形態3および参考例4で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 赤外線検知素子、2 シリコン基板、3 赤外線反射膜、4 支持膜、5配線、6 電極、7 赤外線検知膜、8 絶縁膜、9 赤外線吸収膜、10 保護膜、11 支持脚。
【発明の属する技術分野】
本発明は、室温付近で赤外線の入射光を吸収することにより温度が変化し、その温度変化によって抵抗値が比較的大きく変化する半導体薄膜を赤外線検知膜(ボロメータ)とする、ボロメーター方式の赤外線検知素子に関するものである。本発明の赤外線検知素子は、冷却せずに赤外線の検知が可能な非冷却赤外線検知素子であり、例えば非冷却赤外線カメラ等に好適に利用され得る。
【0002】
【従来の技術】
現在、持ち運びが便利でありかつ鮮明な遠方画像が得られる、小型化、高感度化、高解像度化された非冷却赤外線カメラが求められている。カメラを小型化するには、画素サイズ、および赤外線検知素子を微細化する必要があるが、単に素子を微細化するだけでは赤外線の吸収効率が落ちて、カメラの感度が落ちてしまう。
また、カメラを高感度化、高解像化するためには、赤外検知素子の赤外線検知膜、即ちボロメータのTCRを高めると同時に、感度低下要因となっているノイズを低減することが有効である。なお、TCRとは、抵抗変化の温度依存性の指標である抵抗温度係数であり、その絶対値(|TCR|)が大きいほど、高い検出感度が得られる。
【0003】
現在のボロメーターとしては、半導体の酸化バナジウム(VOx)薄膜が実用化されている。VOx薄膜の室温における|TCR|は2.0%/K程度と低く、この材料を用いる限り、飛躍的な感度向上は望めない。
また、20℃における|TCR|が2.0%/K〜3.9%/Kであるボロメーターを有する赤外線検知素子が提案されている。このボロメーターは、(1)バリウム、ストロンチウム、およびカルシウムから選択された1または2以上の元素、(2)イットリウム、ランタン、および希土類元素から選択された1または2以上の元素、(3)銅、および(4)酸素からなる、結晶性または多結晶性もしくは非晶質の酸化物半導体である。更に具体的には、この酸化物半導体は、Y−Ba−Cu−O系(以降 YBCOと略す)であり、Y:Ba:Cu:O=1:1.2〜2.1:3:7〜9の組成を有している(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特表平11−500578号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献1のボロメーターは、室温での高い|TCR|、すなわち3%/K以上の|TCR|が得られるが、高い|TCR|を得る条件では、ボロメーターの抵抗率(ρ)も大きくなるという問題点がある。またボロメーターの使用温度が低くなると、半導体の抵抗が一層高くなり、ボロメーターに接続している電極間抵抗が増加し、電気回路上の許容値を超えてしまい、赤外線の検知ができなくなってしまうという欠点もある。なお、電極間抵抗を小さくするためには、櫛形電極を採用すると同時に、更に電極間距離を狭めることが有効であるが、電極パターンが微細化すると、汎用の装置では十分な加工精度が得られず、歩留まりが悪くなるという問題点がある。
したがって本発明の目的は、前記のような問題点を解決し、高い抵抗温度係数(|TCR|)を実現しながら抵抗率をできるだけ小さくすることにより、高感度化および高解像化を達成し、なおかつ小型化も可能な、例えば非冷却赤外線カメラに有効に用いられ得る赤外線検知素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、赤外線の入射光を吸収することにより温度が変化し、その温度変化によって抵抗値が変化する半導体薄膜を赤外線検知膜として備えた赤外線検知素子において、前記赤外線検知膜が、主に、A−Cu−O−N系膜 (式中、Aはアルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上を表し、且つ、A、Cu、O、およびNのモル比をそれぞれa、b、cおよびdとした場合、a≧0、b>0、c>0およびd>0である)であることを特徴とする赤外線検知素子を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における赤外線検知素子の断面図である。図2は、本発明の実施の形態1における赤外線検知素子の斜視図である。図2においては、赤外線検知膜7の下部に配している配線5および電極6の形状がわかるように一部透視図となっている。
本実施の形態の赤外線検知素子1は、シリコン基板2上に、赤外線反射膜3、支持膜4、赤外線検知膜7、絶縁膜8、赤外線吸収膜9および保護膜10がこの順で形成されている。また図2に示すように支持膜4は、シリコン基板2から上方に伸びる支持脚11により固定され、シリコン基板2および支持膜4間に空隙部が形成されている。また、支持膜4と赤外線検知膜7との間には、配線5および電極6が設けられている。
【0008】
次に本実施の形態の赤外線検知素子1の製造方法について説明する。
まず、シリコン基板2上に赤外線の吸収を高めるための赤外線反射膜3を形成する。本実施の形態では赤外線反射膜3の材料として窒化バナジウムを用い、スパッタ法により厚さを約10μmとした。なお、赤外線反射膜3の材料としては上記の他に、窒化チタン、ニッケル・クロム等が例示される。次に、シリコン基板2上に、支持膜4および支持脚11形成用の酸化シリコンをプラズマCVD法により付着させた。なお、基板支持脚11は、シリコン基板2上に付着した酸化シリコンの一部をシリコン犠牲層とみなし、最終工程でこのシリコン犠牲層をエッチングすることにより所望の形状に形成され得る。これにより、シリコン基板2と支持膜4と間に空隙部が設けられ、両者間に熱が伝わりにくい構造となる。続いて、配線5として熱伝導率の比較的小さいTiNを用い、これを支持膜4上に設けた。また配線5は、支持脚11を介してシリコン基板2に埋め込まれた電気回路(図示せず)に接続した。
次に、配線5の上部に電気的に接続するように電極6を設けた。電極6は、図2に示すように、電極間抵抗を少しでも低減する目的から、櫛形にした。櫛型の、サイズは、幅51μm、電極間1.3μmとした。なお、本発明の赤外線検知素子は、下記でも説明するように、抵抗率(ρ)が低いことから電極の形状を必ずしも櫛形にする必要はない。したがって、素子の小型化が達成される。
更に、基板2および電極6に跨って、赤外線検知膜7を堆積させた。赤外線検知膜7は、シリコン基板2を250℃に加熱し、Ca:Cu=1:1の酸化物焼結体ターゲットを用い、スパッタガスをAr、O2、およびN2の混合ガスとし、チャンバー内のガス圧を0.1mTorrから20mTorrの範囲に保持して、スパッタリングにより形成した。スパッタガスの混合比は、O2:N2=1:1として、スパッタガスのO2とN2のモル分率の和を0.5〜20まで変えて、製造工程におけるスパッタガス中のO2とN2のモル分率の和の異なる複数個の赤外線検知素子を作製した。このように例えばスパッタガスの混合比を適宜設定することにより、所望の赤外線検知素子の抵抗率(ρ)および|TCR|が得られる。
次に、赤外線検知膜7の上部に、プラズマCVD法により、絶縁膜のSiNx膜を2回成膜した。1回目の絶縁膜の成膜の時点で、赤外線検知膜7と絶縁膜8をイオンミリング法で同時に所望の形状にパターンニングし、赤外線検知膜7の電気抵抗を測定した。O2とN2のモル分率の和を変化させることで、赤外線検知膜のρを変化させ得ることが確認された。続いて1回目の成膜により形成された絶縁膜上に、2回目の成膜を行った。こうして、図1に示すように、絶縁膜8を形成した。
さらに絶縁膜8の上部に、赤外線を吸収しやすいVNからなる赤外線吸収膜9を設け、赤外線吸収膜9上に、SiNx膜からなる保護膜10を設けた。
このようにして得られた本実施の形態の赤外線検知素子1は、赤外線検知膜7が赤外線を吸収し、温度変化によりその抵抗値が変化し、この抵抗値変化を赤外線検知膜7の下部にある電極5の両端からバイアス電圧を印加して検出できるようになっている。
【0009】
なお参考例1として、赤外線検知膜の成膜において、スパッタガスをArおよびO2の混合ガスとした以外は、実施の形態1と同様に赤外線検知素子を形成した。スパッタガスのO2モル分率を0.5〜20まで変えて、製造工程におけるスパッタガス中のO2のモル分率の異なる複数個の赤外線検知素子を作製した。
また参考例2として、赤外線検知膜の成膜において、スパッタガスをArおよびN2の混合ガスとした以外は、実施の形態1と同様に赤外線検知素子を形成した。スパッタガスのN2モル分率を0.5〜10まで変えて、製造工程におけるスパッタガス中のN2モル分率の異なる複数個の赤外線検知素子を作製した。赤外線検知膜のパターニング直後に赤外線検知膜の抵抗を測定したところ、参考例2の全赤外線検知素子の抵抗は、2MΩより高くなっており、抵抗測定ができなかった。
参考例2は、赤外線検知膜の窒化が進みすぎると、急激に抵抗上昇が起きることを示唆するものであり、膜中には最適な酸素と窒素の割合が存在するものと考えられる。
【0010】
図3は、実施の形態1および参考例1で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。図3において、曲線12は本発明の実施の形態1における|TCR|とρとの関係を、曲線13は参考例1のρと|TCR|との関係を示している。曲線13と曲線14の重なっている部分は、Ar100%を表し、矢印は、Ar以外のガスの分圧を増加させた方向を表している。これより、本発明の実施の形態1は、参考例1に比べ、同じ|TCR|の値に対するρが小さいことは、明らかである。
【0011】
実施の形態2.
赤外線検知膜の成膜にY:Ba:Cu=1:2:3(モル比)の酸化物焼結体ターゲットを用いたこと、および基板温度を100℃としたこと以外は、実施の形態1と全く同様に、赤外線検知素子を作製した。実施の形態1と同様に、赤外線検知膜のパターニング直後において、赤外線検知膜の抵抗を測定したところ、スパッタガス中のO2とN2のモル分率の和を変えることで、赤外線検知膜のρが変化していることが判った。
なお、参考例3として、赤外線検知膜の成膜において、Y:Ba:Cu=1:2:3(モル比)の酸化物焼結体ターゲットを用いたこと、および基板温度を100℃とした以外は、参考例1と全く同様に赤外線検知素子を作製した。
【0012】
本発明の実施の形態2および参考例3で得られた赤外線検知素子のρと|TCR|との関係を調べた。図4は、実施の形態2および参考例3で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。図4において、曲線14は実施の形態2における|TCR|とρとの関係を、曲線15は参考例3の|TCR|とρとの関係を示している。曲線15と曲線16の重なっている部分は、Ar100%を表し、矢印は、Ar以外のガスの分圧を増加させた方向を表している。この結果から、実施の形態2は、参考例3に比べ、同じ|TCR|の値に対するρが小さいことは、明らかである。
【0013】
実施の形態3.
赤外線検知膜の成膜において、CuOの焼結体ターゲットを用いたこと、および基板温度を100℃とした以外は、実施の形態1と全く同様に、赤外線検知素子を作製した。
参考例4として、赤外線検知膜の成膜において、CuOの焼結体ターゲットを用いたこと、および基板温度を100℃とした以外は、参考例1と全く同様に赤外線検知素子を作製した。
図5は、実施の形態3および参考例4で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。図5において、曲線16は実施の形態3における|TCR|とρとの関係を、曲線17は参考例4の|TCR|とρとの関係を示している。曲線16と曲線17の重なっている部分は、Ar100%を表し、矢印は、Ar以外のガスの分圧を増加させた方向を表している。この結果から、実施の形態3は、参考例4に比べ、同じ|TCR|の値に対するρが小さいことは、明らかである。
【0014】
更に、本発明の実施の形態3および参考例4と同じ条件で、熱酸化膜(SiO2)付きSi基板上に各赤外線検知膜を成膜し、得られた膜についてX線回折により結晶性を調べた。参考例4では、基板に対する配向はなく、CuOに帰属する(111)面の回折ピークが僅かに確認されたが、実施の形態3ではブロードな非晶質のパターンが得られた。
次に、参考例5として、赤外線検知膜の成膜時の基板温度を400℃とした以外は、本発明の実施の形態2と全く同様に赤外線検知素子を作製した。
参考例5、実施の形態1、実施の形態2、および実施の形態3の赤外線検知素子の電極間に3.5Vを印加し、周波数100Hzのノイズ電圧を測定した。
この結果、参考例5の赤外線検知素子のノイズ電圧は、3500nV/(Hz)1/2であったのに対し、実施の形態1、実施の形態2、および実施の形態3の赤外線検知素子では、それぞれ、140nV/(Hz)1/2、150nV/(Hz)1/2、および190nV/(Hz)1/2であり、ノイズの小さい良好な値が得られた。
また、前記参考例5で、ノイズが大きくなった原因を調べるため、赤外線検知膜の微細組織を原子間力顕微鏡を用いて観察した。参考例5では、赤外線検知膜が数100nmを越える粗大粒子から形成されていることが判った。一方、実施の形態1、実施の形態2、および実施の形態3では、赤外線検知膜が数10nm程度の微細な粒子により緻密に形成されていることが判った。参考例5では赤外線検知膜が粗大粒子よりなるために、電極との接触状態が悪く、ノイズが高くなったものと考えられる。
更に、実施の形態2および参考例5と同じ条件で、熱酸化膜(SiO2)付きSi基板上に、赤外線検知膜をそれぞれ成膜し、得られた膜についてX線回折により結晶性を調べた。参考例5では、基板に対する配向はなく、CuOとCu3Nに帰属する(111)面の回折ピークが確認された。実施の形態2ではブロードな非晶質のパターンが得られた。これらの分析結果より、結晶化が起こると、下地に対し結晶配向が起きない場合、著しく粒子が成長することにより、電極との密着性が悪くなり、ノイズ電圧が高くなると考えられる。また、赤外線検知膜が非晶質であれば、下地を選ばずに、ノイズが抑制できることが判った。
更に、実施の形態1、実施の形態2、および実施の形態3の赤外線検知膜中における元素Nの存在を確認する実験を行った。熱酸化膜(SiO2)付きSi基板上に、各実施の形態と同じ条件で、赤外線検知膜をそれぞれ成膜した。
得られた膜について、X線回折により結晶性を調べたところ、全ての膜において、CuO、もしくはCu3Nの結晶、もしくはそれ以外の結晶による回折ピークは観測されず、非晶質の膜であることが判った。
更に、これらの膜について、膜の分解蒸発を避ける為、1気圧のArガス気流中で、700℃まで温度を上げて結晶化を行ったところ、CuO、およびCu3Nに帰属する(111)面の回折ピークが確認できた。ただし、CuOのピーク強度の方が、Cu3Nのピーク強度よりも強く現れた。このことより、少量の窒素が、本発明の赤外線検知膜の性能に寄与していることが判った。
【0015】
本発明の実施の形態では、赤外線検知膜であるA−Cu−O−N系膜(式中、Aはアルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上を表し、且つ、A、Cu、O、およびNのモル比をそれぞれa、b、cおよびdとした場合、a≧0、b>0、c>0およびd>0である)について、一部のアルカリ土類金属、Yについて記載したが、この他のアルカリ土類金属、希土類元素、それらの組み合わせについても、実施の形態で示した効果が得られていることを本発明者らは見出している。
また、A(アルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上)のモル比aと、Cuのモル比bとが、0≦a≦2bであり、0.5a<c+d≦1.5+2a(cはOのモル比、dは窒素のモル比)を満たす時に、凡そ2.5%/以上の高いTCRが得られることを本発明者らは見出している。
さらに、cとdとの割合を変えることで、抵抗率を加減することができ、a、bと多少の兼ね合いもあるが、概ねc>dであり、且つd/(c+d)>0.05である時に、殆どTCRを低下させることなく、抵抗率を低減できる効果が得られている。参考例2で示したように、dがcよりも大きくなると、かえって抵抗率が大きくなり、また、d/(c+d)が0.05よりも小さくなると、効果の発現が乏しいことが判った。
また、本発明の実施の形態では、赤外線検知膜の成膜において、スパッタ装置を使用しているが、この他の方法、レーザーアブレーション、CVD、EB等であっても、N2系、NH3系ガスを供給しながら、膜形成を行うことで、A−Cu−O−N系膜を得ることができ、ρが小さく、|TCR|が高い特性が得られた。
【0016】
【発明の効果】
本発明は、赤外線の入射光を吸収することにより温度が変化し、その温度変化によって抵抗値が変化する半導体薄膜を赤外線検知膜として備えた赤外線検知素子において、前記赤外線検知膜が、主に、A−Cu−O−N系膜 (式中、Aはアルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上を表し、且つ、A、Cu、O、およびNのモル比をそれぞれa、b、cおよびdとした場合、a≧0、b>0、c>0およびd>0である)であることを特徴とする赤外線検知素子であるので、高い抵抗温度係数(|TCR|)を実現しながら抵抗率をできるだけ小さくすることにより、高感度化および高解像化を達成し、なおかつ小型化も可能な、例えば非冷却赤外線カメラに有効に用いられ得る赤外線検知素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における赤外線検知素子の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における赤外線検知素子の斜視図である。
【図3】実施の形態1および参考例1で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。
【図4】実施の形態2および参考例3で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。
【図5】実施の形態3および参考例4で得られた赤外線検知素子の抵抗率(ρ)と|TCR|との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 赤外線検知素子、2 シリコン基板、3 赤外線反射膜、4 支持膜、5配線、6 電極、7 赤外線検知膜、8 絶縁膜、9 赤外線吸収膜、10 保護膜、11 支持脚。
Claims (5)
- 赤外線の入射光を吸収することにより温度が変化し、その温度変化によって抵抗値が変化する半導体薄膜を赤外線検知膜として備えた赤外線検知素子において、前記赤外線検知膜が、主に、A−Cu−O−N系膜 (式中、Aはアルカリ土類金属、Yまたは希土類元素の1種以上を表し、且つ、A、Cu、O、およびNのモル比をそれぞれa、b、cおよびdとした場合、a≧0、b>0、c>0およびd>0である)であることを特徴とする赤外線検知素子。
- 前記a、b、cおよびdが、0≦a≦2b、0.5a<(c+d)≦(1.5+2a)、c>dおよびd/(c+d)>0.05であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線検知素子。
- 赤外線検知膜が非晶質であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線検知素子。
- 基板上に、赤外線反射膜、支持膜、赤外線検知膜、絶縁膜、赤外線吸収膜および保護膜がこの順で形成されてなるとともに、前記基板と前記支持膜との間に空隙部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の赤外線検知素子。
- 前記支持膜が、前記基板から上方に伸びる支持脚により固定されることにより、前記空隙部が形成されることを特徴とする請求項4に記載の赤外線検知素子。
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