JP2004148377A - 仕上圧延方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ワークロールをロール軸方向にシフト可能としたロールシフト圧延機が複数台タンデムに配設されてなる仕上圧延機における仕上圧延方法に関する。
【解決手段】前記仕上圧延機の内、前段側のロールシフト圧延機のワークロールとしてCVCロールを適用して板クラウン制御を行い、かつ、後段側のロールシフト圧延機のワークロールのロールシフト位置を、圧延サイクルにおける圧延順毎の最適な組合せとなるように遺伝アルゴリズムに基づいて決定し仕上圧延する。
【選択図】 図1
【解決手段】前記仕上圧延機の内、前段側のロールシフト圧延機のワークロールとしてCVCロールを適用して板クラウン制御を行い、かつ、後段側のロールシフト圧延機のワークロールのロールシフト位置を、圧延サイクルにおける圧延順毎の最適な組合せとなるように遺伝アルゴリズムに基づいて決定し仕上圧延する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロールシフト圧延機を複数台タンデムに配設してなる仕上圧延機における仕上圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱延鋼板等の板材の圧延では、所要の粗圧延の後、図6に示すような仕上圧延機2で仕上圧延が行われる。通常、仕上圧延では、複数の圧延機(図6では、F1〜F7の7基)をタンデムに配置し、被圧延材である熱延鋼板1(以下、板材とも呼ぶ)を仕上圧延し、所望の板厚、板形状となるように仕上る。F1〜F7の各圧延機は、それぞれ、上下1組のワークロール3と上下1組のバックアップロール4から構成される。なお、仕上圧延機によっては、更に上下1組の中間ロールを配置し、6つのロールで構成する場合もある。
【0003】
板圧延においては、被圧延材である板材とワークロールの接触によって摩擦が生じ、ロールの接触部が磨耗していく。また、特に熱間圧延においては、高温の被圧延材がロールと接触するため、ロールの接触部に熱膨張が生じる。そのため、圧延の進行とともにロールの幅方向のプロフィールが平坦でなくなり、ロールは変形していく。
【0004】
そして、この磨耗と熱膨張が外乱要因となって、被圧延材の品質不良(クラウン・プロフィール異常、形状不良等)が発生し、また、ロール原単位の悪化の原因ともなっている。
そのため、図7に示すように圧延用の上下ワークロール3a、3bを被圧延材1の圧延1本毎に数mmずつ幅方向にシフトして圧延するワークロールシフト方法が実用化されている。
【0005】
従来のワークロールシフト方法は、例えば特許文献1、特許文献2に記載のように、ワークロールを周期的にシフトするサイクリックシフト方法が一般に適用されてきた。
一方、近年、ワークロールにボトル形状のロールカーブを付与し、ワークロールシフトを行うことで、上下ワークロール間の幅方向のギャップを変化させて板のクラウンを積極的に作り込むCVC(Continuous Variable Crown )技術が採用されるようになってきている。図8に示すように、上下のワークロールとして、ボトル形状のロールカーブを有する上CVCロール3cと下CVCロール3dを採用し、それらのロールをシフトさせて被圧延材1の板クラウンを積極的に作り込むものである。
【0006】
CVC技術は、上下のCVCロールをロール軸方向の相反する方向にシフトさせることでロールバレル位置方向のロールギャップを変化させ、板材のクラウン形状制御を行う技術である。
一般的に、CVC技術を適用する圧延機には、そのメインとなるCVCロールのシフト制御機構の他にも、ロールベンディング装置、ロールレベリング装置、クーラントによるロール幅方向冷却装置等が併設されており、それらによって総合的なクラウン形状制御を行う。また、板クラウンを制御した板材のクラウン形状を検出する手段として、圧延機出側に幅方向の板厚プロフィール測定装置や板形状測定装置が設置される。ただし、ここでは、それらの詳細についての説明は省略する。
【0007】
図9に模式的に示すように、上下1対のCVCロールは、横に倒したボトル状のロール、すなわち、上CVCロール3cと下CVCロール3dとを点対称となるようにして構成することを特徴とする。ここで、図9においては、被圧延材の記載を省略し、簡略化して記載している。
図10(a)、(b)に示すように、上下のCVCロールのロール径プロフィールは3次関数曲線の形状とされる。一方、上下CVCロールの隙間となるギャップ相当量(g)は、上下CVCロールを点対象に配することから、その3次の項が相殺され、図10(c)に示すようにロールバレル位置方向に対し2次曲線の分布となるのである。
【0008】
すなわち、CVCロールシフト制御においては、上下CVCロールが点対称であることを前提として、そのロールを上下逆方向にシフトさせることで2次曲線の分布となるギャップを制御し、被圧延材のクラウン形状制御を行い、その板クラウンを自在に作り込むことを可能とする。
特許文献3では、上記技術を組合せ、サイクリックシフト方式のワークロールシフトを仕上圧延機後段側に適用し、CVCロールシフト制御を前段側に適用することで、もともとロール磨耗の少ない前段側の圧延機で板クラウンを積極的に作り込み、ロール磨耗の大きい後段側圧延機でのロールの偏磨耗を解消してスケジュールフリー圧延を実現するとしている。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−154823号公報
【特許文献2】
特開平11−254015 号公報
【特許文献3】
特許第2616917 号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、サイクリックシフト方法では、圧延スケジュールとは無関係に被圧延材1本毎に一定ピッチのロールシフトを行う。そのため、同一幅の連続圧延を行う圧延スケジュールに対しては非常に効果的にロールの熱膨張・ 磨耗を分散することができる。
【0011】
しかしながら、例えばコフィンスケジュールと呼ばれる圧延スケジュールが組まれた場合(図18(f)参照、詳細は後述する。)、シフト無しでも十分な熱膨張・ 磨耗分散効果が得られ、逆に、サイクリックシフトが悪影響を与えることにもなりかねない。
例えば、被圧延材の幅変化量によっては、板道近傍での熱膨張や磨耗の影響で、サイクリックシフトをしたがゆえにエッジハイスポットやエッジドロップ等のプロフィール異常をきたすことになる。
【0012】
このように、仕上圧延機後段側のワークロールシフト方式としてサイクリックシフト方式を無条件に適用することは、逆に、板品質を悪化させ、ロール原単位を低下させることにもつながることになる。
本発明は、仕上圧延機後段側の圧延機のワークロールの熱膨張・ 磨耗を効果的に分散することを可能とし、圧延スケジュールに一切左右されることなく、板品質の向上とロール原単位の低減を可能としてなる仕上圧延方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、仕上圧延機前段側へのCVC技術の適用が極めて好適であるのに対し、仕上圧延機後段側に適用する従来からのサイクリックシフト方法では、圧延スケジュール、特に、圧延幅の構成を全く考慮せずにワークロールシフト位置を単純に割り振っている点に大きな問題があることに着目した。そして、予め計画組みがなされている圧延スケジュールに基づく圧延の場合においては、その圧延スケジュールによる圧延順に対して最適なワークロールの位置を決定するための最適な方法が存在するはずであることに想到した。
【0014】
ただし、上記の圧延スケジュールにおける組合せの最適解を求めるには、すべての組合せに対して圧延結果を推定し、その結果を比較・評価することが必要である。そのため、膨大な量の計算を必要とすることから、現実的には採用不可能である。
ここで、本発明者は、少ない計算量で最適な組合せを探索することができ、局所最適解で探索が留まってしまうこともない遺伝アルゴリズム(Genetic Algorithm 、単にGAとも呼ぶ。)手法に着目し、その遺伝アルゴリズム手法を仕上圧延機後段側のワークロールシフト位置決定に適用することが好適であることに想到し、本発明に至ったのである。
【0015】
すなわち、本発明は、ワークロールをロール軸方向にシフト可能としたロールシフト圧延機が複数台タンデムに配設されてなる仕上圧延機における仕上圧延方法であって、前記仕上圧延機の内、前段側のロールシフト圧延機のワークロールとしてCVCロールを適用して板クラウン制御を行い、かつ、後段側のロールシフト圧延機のワークロールのロールシフト位置を、圧延サイクルにおける圧延順毎の最適な組合せとなるように遺伝アルゴリズムに基づいて決定し仕上圧延することを特徴とする仕上圧延方法によって上記課題を解決した。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、図3、図4に基づき、本発明に適用するGAの詳細を説明する。
GAは、生物の進化過程を模倣した工学的モデルであり、探索手法として多様かつ頑強な枠組みを有することから、組合せ最適化問題に対する好適な最適化手法であることが知られている。
【0017】
図3に示すように、GAでは、複数の固体の集まりである集団をもとに集団内でモデル化した遺伝操作を行い、環境への適応度の低い個体を淘汰し、適応度の高い個体の増殖を行う。これを1世代として、何世代かに渡っての遺伝操作を繰り返し、最も高い適応度を示す個体を最適な個体として最適化問題における解とするものである。ここで、適応度とは、各個体がそれぞれ環境に対して評価された適応度合いの評価値である。なお、最適化問題を対象とする本発明においては、評価関数値を適応度またはそれに準ずるものとして設定することになる。
【0018】
次に、図4に基づき、GAの各挙動を決定づける3つの遺伝操作、すなわち、選択(Selection )、交叉(Crossover )、突然変異(Mutation)について説明する。
選択(Selection )は、集団の中での適応度の分布に応じて交叉を行う個体の生存分布、すなわち、適合度を決定し、その生存分布に従って集団を淘汰し、再構成するものである。なお、図4では、×印の個体を淘汰している。
【0019】
交叉(Crossover )は、集団から選択した2個体間でペアを生成し、所定の交叉確率PCに従って交叉させるか否かを決定するものである。交叉させる場合、一部の染色体や遺伝子を適宜組み替え、新しい個体(子の個体)を発生させる。なお、図4では、点線で囲んだ箇所で交叉を実施している。
突然変異(Mutation)は、各個体の各遺伝子毎に所定の突然変異率PMに従って突然変異を起こさせるか否かを決定する。なお、図4では、突然変異を起こして対立する遺伝子に置き換えられた遺伝子を矢印(↓)位置で示している。
【0020】
次に、上述のGAを、最適ワークロールシフトパターンの決定問題に対して適用する本発明の具体的な手法について、図5に基づき説明する。
ワークロールシフトパターンの初期シフト位置を0とし、最初からi本目の圧延におけるシフト位置をSi とすると、Si は、
Si = Si−1 +ki *SP ・・・ (1)
となる。ここで、SP は、単位シフト量(シフトピッチ量)であり、ki は、シフト量の自由度を示す変数である。
【0021】
なお、ロールシフトには、以下の制約があるものとする。
▲1▼ シフト位置には、リミットが存在する。
−SL ≦ Si ≦ SL ・・・ (2)
但し、SL は、シフトリミットである。
▲2▼ 1 回のシフト量には制限が設けられている。
【0022】
ki = −m、・・・ 、−1、0、1、・・・ 、m ・・・ (3)
但し、mは、自然数である。
そして、上記の定式化に対し、圧延スケジュールに基づき圧延するシートバー(被圧延材)の本数をn本とすると、ワークロールシフトパターンに相当するGAでの個体は、
(k1 、k2 、k3 、・・・ 、ki 、・・・ 、kn )
の並びで表現することができる。図5は、そのシフトパターンの一例を示している。なお、以上のように、組合せ最適化を行いたいパターンをGAで取り扱う個体の遺伝子型に変換することをコード化するという。また、逆の操作をデコード化するという。
【0023】
以上のように定式化を行った後、図2に示すように、GAによるシフト設定計算フローに基づく最適ワークロールシフトパターンの決定を行うのである。
以下、図2のフローに基づいて説明する。
なお、igeneは現世代を示し、NGは最終世代を示す。
初期設定(110 )では、初期集団として、NP個の個体をランダムに発生させる。なお、この内の1個体として、サイクリックシフトを示す個体を発生させておく。これは、後述の評価関数値がよくならなかった場合の保証となる。
【0024】
次に、120 に示すループ処理で最終世代まで1世代毎にループを行い、順次、適応計算と評価(130 )を実施する。
ここでは、NP個の個体についてデコード化を行い、それぞれの評価関数値を求め、その世代での最適個体を取り出す。最終世代(NG)の場合は、その時の最適個体を最終的な最適解とする。また、得られた評価関数値をGAにおける適応度に変換し、次世代の遺伝操作の準備を行う。
【0025】
評価関数値の計算は、ロールの磨耗負荷計算、サーマルクラウン計算などをベースにロールプロフィールを推定することで行うよく知られた評価手法の1つである。本発明では、この評価関数値の計算方法を特に限定するものではなく、ここでの詳細の説明を省略する。
次に、140 に示す判定処理で、現世代igeneが最終世代(NG)かどうかの判定を行い、最終世代の場合には、シフト位置設定計算終了(150 )とする。
【0026】
最終でない場合は、個別のGA処理(遺伝子操作)を実行する。
まず、選択(160 )は、適応度に依存して行うものである。本発明では、適応度の分布に基づいて各個体が選択される期待値を計算し、ある個体が選択されるたびにその個体の期待値を小さくすることで各個体の選択を実現している。なお、期待値は、
(その個体の適応度)÷(その個体が属する集団の平均適応度)、
の計算式から計算する。
【0027】
また、一番適応度の高い個体は無条件で次世代に残すエリート保存方式を併せて採用することを好適とする。この場合、その個体は、後述する交叉も突然変異も受けないものとする。
交叉(170 )は、集団から選択した2個体間でペアを生成し、所定の交叉確率PCに従って交叉させるか否かを決定するものである。ここでは、更に、交叉ポイントを2ヶ所選択し、交叉ポイントで挟まれた部分を交差する2点交叉を採用する。
【0028】
突然変異(180 )は、所定の突然変異率PMに従ってランダムに選んだ遺伝子を対立遺伝子に置き換える処理である。
なお、上述のGAの4つのパラメータ(NP、NG、PC、PM)については、設計者が試行錯誤的に決定する必要があり、実操業に即したチューニング処理を必要とする。
【0029】
本発明では、仕上圧延機の前段側に既に説明したCVC技術を採用して板クラウンの作り込みを行い、一方、後段側にGAを採用してロールシフト位置の決定を行うようにした。その結果、圧延スケジュールに一切左右されることなく、板形状と板品質の向上と、ロール原単位の低減を両立させた仕上圧延方法を実現することができた。
【0030】
なお、仕上圧延機をF1〜F7の7段の圧延機とした場合、前記のCVC技術を適用する前段側をF1〜F3、あるいは、F1〜F4とする。一方、GAに基づくロールシフト位置決定を適用する後段側をF4〜F7、あるいは、F5〜F7とすることを好適とする。
【0031】
【実施例】
以下に示す板幅構成の圧延スケジュールサイクルについて実機シミュレーションを行い、仕上圧延機後段側に適用するロールシフト方式について、本発明の検証を実施した。
(サイクル1)
幅1200mmの板を40本圧延後、幅900mm の板を40本圧延する。すなわち、幅変更は、途中で幅広から幅狭に1回のみ起こる。
(サイクル2)
幅900mm の板を40本圧延後、幅1200mmの板を40本圧延する。すなわち、幅戻りが1回起こる。
(サイクル3)
幅1200mmの板から圧延を開始し、最初の11本で幅1500mmになるまで幅を増やし、それ以降69本は10mmずつ幅を減らし、最後は800mm の板を圧延する。
【0032】
なお、このようなパターンを特にコフィンスケジュールという。
(サイクル4)
80本の圧延において、幅戻りが頻繁に発生する(図21(f)参照)。
以上の各サイクルにおいて、板長さは1000mの一定値とした。また、単位シフト量SP =10mm、シフトリミットSL =150mm 、ki のとり得る最大値m=5としている。また、NP=80、NG=100 とした。
【0033】
以上のサイクル1〜4に対し、シフトなしの場合の比較例、サイクリックシフト(以下、単にサイクリックともいう)の場合の従来例、GA適用の本発明例(以下、単にGAともいう)、のそれぞれについてワークロールシフト位置決定を行った。それぞれの評価関数値を表1と図11にまとめて示す。
【0034】
【表1】
【0035】
また、図12〜23に、各所定の圧延本数毎に板接触部のロールプロフィールとシフト位置・板エッジ位置を示す。ここで、サイクル1については図12〜14、サイクル2については図15〜17、サイクル3については図18〜20、サイクル4については図21〜23にそれぞれ示す。なお、サイクル1〜4の各図は、順に、シフトなし、サイクリック、GAの結果を示している。
【0036】
ここで、表1に示す評価関数値に着目すると、サイクル1においては、本発明のGAで、従来例のサイクリックに対し評価関数値を12%低減できている。同様に、サイクル2では24%、サイクル3では41%、サイクル4では26%低減できている。
なお、サイクル3(コフィンスケジュール)では、サイクリックよりもシフトなしの評価関数値のほうが良くなっている。これは、コフィンスケジュールがサイクルなしに適したスケジュールだからであるが、この場合でも、GAの方がシフトなしに対して評価関数値を16%低減しており、最も良い結果を得ている。
【0037】
また、特に、幅戻りのあるサイクル2と4では、GA採用による効果が大きい。サイクル2では、幅戻り時に発生したサイクリックシフトの局所的磨耗が、GAでは補償されている。また、サイクル4でも、サイクリックでは局所的に削れたり削れなかったりしてロール表面形状を悪くして、板形状不良、通板性悪化を招いているのに対し、GAでは、ロール表面が滑らかになるようにシフトされている。
【0038】
次に、仕上圧延機前段にCVCロールを適用した場合の板クラウンにおよぼす影響を示す。図24に、仕上圧延機前段にCVCロールを適用せず、仕上圧延機後段にGAを適用した場合の板クラウン分布を示す。また、図25に、仕上圧延機前段にCVCロールを適用し、仕上圧延機後段にGAを適用した場合の板クラウン分布を示す。仕上圧延機前段にCVCロールを適用した場合に板クラウンは小さくなる傾向が明らかである。
【0039】
以上のことから、仕上圧延機前段側にCVC技術を適用して板クラウンの積極的な制御を実施し、後段側でのロールシフトにGAを適用するようにした本発明によって、従来ネックとなっていた幅戻り規制を大幅に緩和することができ、圧延スケジュールに一切左右されることなく良好な仕上圧延を実現できることは明らかである。
【0040】
【発明の効果】
本発明によって、圧延スケジュールに一切左右されることのない仕上圧延を実現することができ、また、被圧延材の板クラウン・板品質の向上と、ロール原単位の低減を両立させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱間仕上圧延方法を説明する模式図である。
【図2】本発明に適用する遺伝アルゴリズム(GA)における設定計算のフロー図である。
【図3】本発明に適用する遺伝アルゴリズム(GA)の説明図である。
【図4】遺伝アルゴリズム(GA)における選択、交叉、突然変異の説明図である。
【図5】圧延機のワークロールシフト位置決定に遺伝アルゴリズム(GA)を適用する際のコード化の説明図である。
【図6】熱間仕上圧延機の構成を示す模式図である。
【図7】従来のワークロールシフトについて説明する模式図である。
【図8】CVCロールでの板クラウン制御について説明する模式図である。
【図9】本発明に適用するCVCロールの模式図である。
【図10】CVCロールについて説明するための模式図である。
【図11】仕上圧延機後段側でのワークロールシフト位置決定において、シフトなし(比較例)、サイクリックシフト適用(従来例)、GA適用(本発明例)のそれぞれの場合における評価関数値を示すグラフである。
【図12】図11のサイクル1(シフトなし)についての説明図である。
【図13】図11のサイクル1(サイクリックシフト適用)についての説明図である。
【図14】図11のサイクル1(GA適用)についての説明図である。
【図15】図11のサイクル2(シフトなし)についての説明図である。
【図16】図11のサイクル2(サイクリックシフト適用)についての説明図である。
【図17】図11のサイクル2(GA適用)についての説明図である。
【図18】図11のサイクル3(シフトなし)についての説明図である。
【図19】図11のサイクル3(サイクリックシフト適用)についての説明図である。
【図20】図11のサイクル3(GA適用)についての説明図である。
【図21】図11のサイクル4(シフトなし)についての説明図である。
【図22】図11のサイクル4(サイクリックシフト適用)についての説明図である。
【図23】図11のサイクル4(GA適用)についての説明図である。
【図24】GAのみでの板クラウン分布の一例を示すグラフである。
【図25】CVC+GAでの板クラウン分布の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 被圧延材(熱延鋼板、板材)
2 仕上圧延機
3 ワークロール
3a 上ワークロール
3b 下ワークロール
3c 上CVCロール
3d 下CVCロール
4 バックアップロール
4a 上バックアップロール
4b 下バックアップロール
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロールシフト圧延機を複数台タンデムに配設してなる仕上圧延機における仕上圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱延鋼板等の板材の圧延では、所要の粗圧延の後、図6に示すような仕上圧延機2で仕上圧延が行われる。通常、仕上圧延では、複数の圧延機(図6では、F1〜F7の7基)をタンデムに配置し、被圧延材である熱延鋼板1(以下、板材とも呼ぶ)を仕上圧延し、所望の板厚、板形状となるように仕上る。F1〜F7の各圧延機は、それぞれ、上下1組のワークロール3と上下1組のバックアップロール4から構成される。なお、仕上圧延機によっては、更に上下1組の中間ロールを配置し、6つのロールで構成する場合もある。
【0003】
板圧延においては、被圧延材である板材とワークロールの接触によって摩擦が生じ、ロールの接触部が磨耗していく。また、特に熱間圧延においては、高温の被圧延材がロールと接触するため、ロールの接触部に熱膨張が生じる。そのため、圧延の進行とともにロールの幅方向のプロフィールが平坦でなくなり、ロールは変形していく。
【0004】
そして、この磨耗と熱膨張が外乱要因となって、被圧延材の品質不良(クラウン・プロフィール異常、形状不良等)が発生し、また、ロール原単位の悪化の原因ともなっている。
そのため、図7に示すように圧延用の上下ワークロール3a、3bを被圧延材1の圧延1本毎に数mmずつ幅方向にシフトして圧延するワークロールシフト方法が実用化されている。
【0005】
従来のワークロールシフト方法は、例えば特許文献1、特許文献2に記載のように、ワークロールを周期的にシフトするサイクリックシフト方法が一般に適用されてきた。
一方、近年、ワークロールにボトル形状のロールカーブを付与し、ワークロールシフトを行うことで、上下ワークロール間の幅方向のギャップを変化させて板のクラウンを積極的に作り込むCVC(Continuous Variable Crown )技術が採用されるようになってきている。図8に示すように、上下のワークロールとして、ボトル形状のロールカーブを有する上CVCロール3cと下CVCロール3dを採用し、それらのロールをシフトさせて被圧延材1の板クラウンを積極的に作り込むものである。
【0006】
CVC技術は、上下のCVCロールをロール軸方向の相反する方向にシフトさせることでロールバレル位置方向のロールギャップを変化させ、板材のクラウン形状制御を行う技術である。
一般的に、CVC技術を適用する圧延機には、そのメインとなるCVCロールのシフト制御機構の他にも、ロールベンディング装置、ロールレベリング装置、クーラントによるロール幅方向冷却装置等が併設されており、それらによって総合的なクラウン形状制御を行う。また、板クラウンを制御した板材のクラウン形状を検出する手段として、圧延機出側に幅方向の板厚プロフィール測定装置や板形状測定装置が設置される。ただし、ここでは、それらの詳細についての説明は省略する。
【0007】
図9に模式的に示すように、上下1対のCVCロールは、横に倒したボトル状のロール、すなわち、上CVCロール3cと下CVCロール3dとを点対称となるようにして構成することを特徴とする。ここで、図9においては、被圧延材の記載を省略し、簡略化して記載している。
図10(a)、(b)に示すように、上下のCVCロールのロール径プロフィールは3次関数曲線の形状とされる。一方、上下CVCロールの隙間となるギャップ相当量(g)は、上下CVCロールを点対象に配することから、その3次の項が相殺され、図10(c)に示すようにロールバレル位置方向に対し2次曲線の分布となるのである。
【0008】
すなわち、CVCロールシフト制御においては、上下CVCロールが点対称であることを前提として、そのロールを上下逆方向にシフトさせることで2次曲線の分布となるギャップを制御し、被圧延材のクラウン形状制御を行い、その板クラウンを自在に作り込むことを可能とする。
特許文献3では、上記技術を組合せ、サイクリックシフト方式のワークロールシフトを仕上圧延機後段側に適用し、CVCロールシフト制御を前段側に適用することで、もともとロール磨耗の少ない前段側の圧延機で板クラウンを積極的に作り込み、ロール磨耗の大きい後段側圧延機でのロールの偏磨耗を解消してスケジュールフリー圧延を実現するとしている。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−154823号公報
【特許文献2】
特開平11−254015 号公報
【特許文献3】
特許第2616917 号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、サイクリックシフト方法では、圧延スケジュールとは無関係に被圧延材1本毎に一定ピッチのロールシフトを行う。そのため、同一幅の連続圧延を行う圧延スケジュールに対しては非常に効果的にロールの熱膨張・ 磨耗を分散することができる。
【0011】
しかしながら、例えばコフィンスケジュールと呼ばれる圧延スケジュールが組まれた場合(図18(f)参照、詳細は後述する。)、シフト無しでも十分な熱膨張・ 磨耗分散効果が得られ、逆に、サイクリックシフトが悪影響を与えることにもなりかねない。
例えば、被圧延材の幅変化量によっては、板道近傍での熱膨張や磨耗の影響で、サイクリックシフトをしたがゆえにエッジハイスポットやエッジドロップ等のプロフィール異常をきたすことになる。
【0012】
このように、仕上圧延機後段側のワークロールシフト方式としてサイクリックシフト方式を無条件に適用することは、逆に、板品質を悪化させ、ロール原単位を低下させることにもつながることになる。
本発明は、仕上圧延機後段側の圧延機のワークロールの熱膨張・ 磨耗を効果的に分散することを可能とし、圧延スケジュールに一切左右されることなく、板品質の向上とロール原単位の低減を可能としてなる仕上圧延方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、仕上圧延機前段側へのCVC技術の適用が極めて好適であるのに対し、仕上圧延機後段側に適用する従来からのサイクリックシフト方法では、圧延スケジュール、特に、圧延幅の構成を全く考慮せずにワークロールシフト位置を単純に割り振っている点に大きな問題があることに着目した。そして、予め計画組みがなされている圧延スケジュールに基づく圧延の場合においては、その圧延スケジュールによる圧延順に対して最適なワークロールの位置を決定するための最適な方法が存在するはずであることに想到した。
【0014】
ただし、上記の圧延スケジュールにおける組合せの最適解を求めるには、すべての組合せに対して圧延結果を推定し、その結果を比較・評価することが必要である。そのため、膨大な量の計算を必要とすることから、現実的には採用不可能である。
ここで、本発明者は、少ない計算量で最適な組合せを探索することができ、局所最適解で探索が留まってしまうこともない遺伝アルゴリズム(Genetic Algorithm 、単にGAとも呼ぶ。)手法に着目し、その遺伝アルゴリズム手法を仕上圧延機後段側のワークロールシフト位置決定に適用することが好適であることに想到し、本発明に至ったのである。
【0015】
すなわち、本発明は、ワークロールをロール軸方向にシフト可能としたロールシフト圧延機が複数台タンデムに配設されてなる仕上圧延機における仕上圧延方法であって、前記仕上圧延機の内、前段側のロールシフト圧延機のワークロールとしてCVCロールを適用して板クラウン制御を行い、かつ、後段側のロールシフト圧延機のワークロールのロールシフト位置を、圧延サイクルにおける圧延順毎の最適な組合せとなるように遺伝アルゴリズムに基づいて決定し仕上圧延することを特徴とする仕上圧延方法によって上記課題を解決した。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、図3、図4に基づき、本発明に適用するGAの詳細を説明する。
GAは、生物の進化過程を模倣した工学的モデルであり、探索手法として多様かつ頑強な枠組みを有することから、組合せ最適化問題に対する好適な最適化手法であることが知られている。
【0017】
図3に示すように、GAでは、複数の固体の集まりである集団をもとに集団内でモデル化した遺伝操作を行い、環境への適応度の低い個体を淘汰し、適応度の高い個体の増殖を行う。これを1世代として、何世代かに渡っての遺伝操作を繰り返し、最も高い適応度を示す個体を最適な個体として最適化問題における解とするものである。ここで、適応度とは、各個体がそれぞれ環境に対して評価された適応度合いの評価値である。なお、最適化問題を対象とする本発明においては、評価関数値を適応度またはそれに準ずるものとして設定することになる。
【0018】
次に、図4に基づき、GAの各挙動を決定づける3つの遺伝操作、すなわち、選択(Selection )、交叉(Crossover )、突然変異(Mutation)について説明する。
選択(Selection )は、集団の中での適応度の分布に応じて交叉を行う個体の生存分布、すなわち、適合度を決定し、その生存分布に従って集団を淘汰し、再構成するものである。なお、図4では、×印の個体を淘汰している。
【0019】
交叉(Crossover )は、集団から選択した2個体間でペアを生成し、所定の交叉確率PCに従って交叉させるか否かを決定するものである。交叉させる場合、一部の染色体や遺伝子を適宜組み替え、新しい個体(子の個体)を発生させる。なお、図4では、点線で囲んだ箇所で交叉を実施している。
突然変異(Mutation)は、各個体の各遺伝子毎に所定の突然変異率PMに従って突然変異を起こさせるか否かを決定する。なお、図4では、突然変異を起こして対立する遺伝子に置き換えられた遺伝子を矢印(↓)位置で示している。
【0020】
次に、上述のGAを、最適ワークロールシフトパターンの決定問題に対して適用する本発明の具体的な手法について、図5に基づき説明する。
ワークロールシフトパターンの初期シフト位置を0とし、最初からi本目の圧延におけるシフト位置をSi とすると、Si は、
Si = Si−1 +ki *SP ・・・ (1)
となる。ここで、SP は、単位シフト量(シフトピッチ量)であり、ki は、シフト量の自由度を示す変数である。
【0021】
なお、ロールシフトには、以下の制約があるものとする。
▲1▼ シフト位置には、リミットが存在する。
−SL ≦ Si ≦ SL ・・・ (2)
但し、SL は、シフトリミットである。
▲2▼ 1 回のシフト量には制限が設けられている。
【0022】
ki = −m、・・・ 、−1、0、1、・・・ 、m ・・・ (3)
但し、mは、自然数である。
そして、上記の定式化に対し、圧延スケジュールに基づき圧延するシートバー(被圧延材)の本数をn本とすると、ワークロールシフトパターンに相当するGAでの個体は、
(k1 、k2 、k3 、・・・ 、ki 、・・・ 、kn )
の並びで表現することができる。図5は、そのシフトパターンの一例を示している。なお、以上のように、組合せ最適化を行いたいパターンをGAで取り扱う個体の遺伝子型に変換することをコード化するという。また、逆の操作をデコード化するという。
【0023】
以上のように定式化を行った後、図2に示すように、GAによるシフト設定計算フローに基づく最適ワークロールシフトパターンの決定を行うのである。
以下、図2のフローに基づいて説明する。
なお、igeneは現世代を示し、NGは最終世代を示す。
初期設定(110 )では、初期集団として、NP個の個体をランダムに発生させる。なお、この内の1個体として、サイクリックシフトを示す個体を発生させておく。これは、後述の評価関数値がよくならなかった場合の保証となる。
【0024】
次に、120 に示すループ処理で最終世代まで1世代毎にループを行い、順次、適応計算と評価(130 )を実施する。
ここでは、NP個の個体についてデコード化を行い、それぞれの評価関数値を求め、その世代での最適個体を取り出す。最終世代(NG)の場合は、その時の最適個体を最終的な最適解とする。また、得られた評価関数値をGAにおける適応度に変換し、次世代の遺伝操作の準備を行う。
【0025】
評価関数値の計算は、ロールの磨耗負荷計算、サーマルクラウン計算などをベースにロールプロフィールを推定することで行うよく知られた評価手法の1つである。本発明では、この評価関数値の計算方法を特に限定するものではなく、ここでの詳細の説明を省略する。
次に、140 に示す判定処理で、現世代igeneが最終世代(NG)かどうかの判定を行い、最終世代の場合には、シフト位置設定計算終了(150 )とする。
【0026】
最終でない場合は、個別のGA処理(遺伝子操作)を実行する。
まず、選択(160 )は、適応度に依存して行うものである。本発明では、適応度の分布に基づいて各個体が選択される期待値を計算し、ある個体が選択されるたびにその個体の期待値を小さくすることで各個体の選択を実現している。なお、期待値は、
(その個体の適応度)÷(その個体が属する集団の平均適応度)、
の計算式から計算する。
【0027】
また、一番適応度の高い個体は無条件で次世代に残すエリート保存方式を併せて採用することを好適とする。この場合、その個体は、後述する交叉も突然変異も受けないものとする。
交叉(170 )は、集団から選択した2個体間でペアを生成し、所定の交叉確率PCに従って交叉させるか否かを決定するものである。ここでは、更に、交叉ポイントを2ヶ所選択し、交叉ポイントで挟まれた部分を交差する2点交叉を採用する。
【0028】
突然変異(180 )は、所定の突然変異率PMに従ってランダムに選んだ遺伝子を対立遺伝子に置き換える処理である。
なお、上述のGAの4つのパラメータ(NP、NG、PC、PM)については、設計者が試行錯誤的に決定する必要があり、実操業に即したチューニング処理を必要とする。
【0029】
本発明では、仕上圧延機の前段側に既に説明したCVC技術を採用して板クラウンの作り込みを行い、一方、後段側にGAを採用してロールシフト位置の決定を行うようにした。その結果、圧延スケジュールに一切左右されることなく、板形状と板品質の向上と、ロール原単位の低減を両立させた仕上圧延方法を実現することができた。
【0030】
なお、仕上圧延機をF1〜F7の7段の圧延機とした場合、前記のCVC技術を適用する前段側をF1〜F3、あるいは、F1〜F4とする。一方、GAに基づくロールシフト位置決定を適用する後段側をF4〜F7、あるいは、F5〜F7とすることを好適とする。
【0031】
【実施例】
以下に示す板幅構成の圧延スケジュールサイクルについて実機シミュレーションを行い、仕上圧延機後段側に適用するロールシフト方式について、本発明の検証を実施した。
(サイクル1)
幅1200mmの板を40本圧延後、幅900mm の板を40本圧延する。すなわち、幅変更は、途中で幅広から幅狭に1回のみ起こる。
(サイクル2)
幅900mm の板を40本圧延後、幅1200mmの板を40本圧延する。すなわち、幅戻りが1回起こる。
(サイクル3)
幅1200mmの板から圧延を開始し、最初の11本で幅1500mmになるまで幅を増やし、それ以降69本は10mmずつ幅を減らし、最後は800mm の板を圧延する。
【0032】
なお、このようなパターンを特にコフィンスケジュールという。
(サイクル4)
80本の圧延において、幅戻りが頻繁に発生する(図21(f)参照)。
以上の各サイクルにおいて、板長さは1000mの一定値とした。また、単位シフト量SP =10mm、シフトリミットSL =150mm 、ki のとり得る最大値m=5としている。また、NP=80、NG=100 とした。
【0033】
以上のサイクル1〜4に対し、シフトなしの場合の比較例、サイクリックシフト(以下、単にサイクリックともいう)の場合の従来例、GA適用の本発明例(以下、単にGAともいう)、のそれぞれについてワークロールシフト位置決定を行った。それぞれの評価関数値を表1と図11にまとめて示す。
【0034】
【表1】
【0035】
また、図12〜23に、各所定の圧延本数毎に板接触部のロールプロフィールとシフト位置・板エッジ位置を示す。ここで、サイクル1については図12〜14、サイクル2については図15〜17、サイクル3については図18〜20、サイクル4については図21〜23にそれぞれ示す。なお、サイクル1〜4の各図は、順に、シフトなし、サイクリック、GAの結果を示している。
【0036】
ここで、表1に示す評価関数値に着目すると、サイクル1においては、本発明のGAで、従来例のサイクリックに対し評価関数値を12%低減できている。同様に、サイクル2では24%、サイクル3では41%、サイクル4では26%低減できている。
なお、サイクル3(コフィンスケジュール)では、サイクリックよりもシフトなしの評価関数値のほうが良くなっている。これは、コフィンスケジュールがサイクルなしに適したスケジュールだからであるが、この場合でも、GAの方がシフトなしに対して評価関数値を16%低減しており、最も良い結果を得ている。
【0037】
また、特に、幅戻りのあるサイクル2と4では、GA採用による効果が大きい。サイクル2では、幅戻り時に発生したサイクリックシフトの局所的磨耗が、GAでは補償されている。また、サイクル4でも、サイクリックでは局所的に削れたり削れなかったりしてロール表面形状を悪くして、板形状不良、通板性悪化を招いているのに対し、GAでは、ロール表面が滑らかになるようにシフトされている。
【0038】
次に、仕上圧延機前段にCVCロールを適用した場合の板クラウンにおよぼす影響を示す。図24に、仕上圧延機前段にCVCロールを適用せず、仕上圧延機後段にGAを適用した場合の板クラウン分布を示す。また、図25に、仕上圧延機前段にCVCロールを適用し、仕上圧延機後段にGAを適用した場合の板クラウン分布を示す。仕上圧延機前段にCVCロールを適用した場合に板クラウンは小さくなる傾向が明らかである。
【0039】
以上のことから、仕上圧延機前段側にCVC技術を適用して板クラウンの積極的な制御を実施し、後段側でのロールシフトにGAを適用するようにした本発明によって、従来ネックとなっていた幅戻り規制を大幅に緩和することができ、圧延スケジュールに一切左右されることなく良好な仕上圧延を実現できることは明らかである。
【0040】
【発明の効果】
本発明によって、圧延スケジュールに一切左右されることのない仕上圧延を実現することができ、また、被圧延材の板クラウン・板品質の向上と、ロール原単位の低減を両立させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱間仕上圧延方法を説明する模式図である。
【図2】本発明に適用する遺伝アルゴリズム(GA)における設定計算のフロー図である。
【図3】本発明に適用する遺伝アルゴリズム(GA)の説明図である。
【図4】遺伝アルゴリズム(GA)における選択、交叉、突然変異の説明図である。
【図5】圧延機のワークロールシフト位置決定に遺伝アルゴリズム(GA)を適用する際のコード化の説明図である。
【図6】熱間仕上圧延機の構成を示す模式図である。
【図7】従来のワークロールシフトについて説明する模式図である。
【図8】CVCロールでの板クラウン制御について説明する模式図である。
【図9】本発明に適用するCVCロールの模式図である。
【図10】CVCロールについて説明するための模式図である。
【図11】仕上圧延機後段側でのワークロールシフト位置決定において、シフトなし(比較例)、サイクリックシフト適用(従来例)、GA適用(本発明例)のそれぞれの場合における評価関数値を示すグラフである。
【図12】図11のサイクル1(シフトなし)についての説明図である。
【図13】図11のサイクル1(サイクリックシフト適用)についての説明図である。
【図14】図11のサイクル1(GA適用)についての説明図である。
【図15】図11のサイクル2(シフトなし)についての説明図である。
【図16】図11のサイクル2(サイクリックシフト適用)についての説明図である。
【図17】図11のサイクル2(GA適用)についての説明図である。
【図18】図11のサイクル3(シフトなし)についての説明図である。
【図19】図11のサイクル3(サイクリックシフト適用)についての説明図である。
【図20】図11のサイクル3(GA適用)についての説明図である。
【図21】図11のサイクル4(シフトなし)についての説明図である。
【図22】図11のサイクル4(サイクリックシフト適用)についての説明図である。
【図23】図11のサイクル4(GA適用)についての説明図である。
【図24】GAのみでの板クラウン分布の一例を示すグラフである。
【図25】CVC+GAでの板クラウン分布の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 被圧延材(熱延鋼板、板材)
2 仕上圧延機
3 ワークロール
3a 上ワークロール
3b 下ワークロール
3c 上CVCロール
3d 下CVCロール
4 バックアップロール
4a 上バックアップロール
4b 下バックアップロール
Claims (1)
- ワークロールをロール軸方向にシフト可能としたロールシフト圧延機が複数台タンデムに配設されてなる仕上圧延機における仕上圧延方法であって、
前記仕上圧延機の内、前段側のロールシフト圧延機のワークロールとしてCVCロールを適用して板クラウン制御を行い、かつ、
後段側のロールシフト圧延機のワークロールのロールシフト位置を、圧延サイクルにおける圧延順毎の最適な組合せとなるように遺伝アルゴリズムに基づいて決定し仕上圧延することを特徴とする仕上圧延方法。
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- 2002-10-31 JP JP2002317462A patent/JP2004148377A/ja active Pending
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