JP2004142955A - 金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価でかつ金属化合物の分散性の高い金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法を提供する。
【解決手段】ピッチ及び有機基を有する金属化合物を有機系溶媒の超臨界流体中で混合した後に、得られた混合物から該溶媒を除去することを特徴とする金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法、および該製造方法により得られる金属/炭素複合材料の前駆体。
【選択図】 無
【解決手段】ピッチ及び有機基を有する金属化合物を有機系溶媒の超臨界流体中で混合した後に、得られた混合物から該溶媒を除去することを特徴とする金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法、および該製造方法により得られる金属/炭素複合材料の前駆体。
【選択図】 無
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、安価でかつ分散性に優れた金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カーボンへの遷移金属ナノおよびミクロ微粒子の導入は、微粒子が炭素層面により被覆されているために酸化されず一定の性質を保持すること、またナノ及びミクロンサイズの微粒子はバルク金属と異なる性質を示すことが知られている。このような遷移金属微粒子を内包したカーボン材料は触媒や電子素子などの用途があり、様々な形状の遷移金属微粒子内包炭素材料が調製されている。
【0003】
カーボン球殻あるいはカーボンチューブに遷移金属を内包した炭素材料は、遷移金属を含んだ炭素電極のアーク放電により得られる。鉄イオンのグラファイトへの打ち込みや、塩化鉄などの金属塩黒鉛層間化合物の熱分解により、グラファイトマトリックス中に遷移金属微粒子を分散させることも行われている。
【0004】
また金属化合物を混合した有機物不活性ガス中で熱処理することにより、炭素化と金属への還元を行い容易に炭素/金属複合材料を得ることが出来る。同様に、ポリアミック酸からポリイミドを調製し炭素−金属複合材料の前駆体を製造し、それを炭素化したナノあるいはサブミクロン・サイズの遷移金属微粒子の分散した炭素材料の製造方法が報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、いずれの場合も原料コストや生産コストが高いことから実用的な方法とはいえない。
【0006】
また、ピッチ系材料を炭素前駆体とした炭素/金属複合材料の製造法に関して、金属の分散状態が良好な炭素/金属複合材料は未だ報告されていない。
【0007】
【非特許文献1】
羽鳥浩章、外5名,「ニッケル化合物含有ポリイミドの炭素化挙動」,炭素,平成11年,第189号,p.165−170
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の従来技術の問題点に鑑み、安価でかつ金属化合物の分散性の高い金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述の目的を達成するために鋭意検討した結果、ピッチ及び有機基を有する金属化合物を有機溶媒の超臨界流体中で混合させることにより、安価かつ分散性の高い金属/炭素複合材料の前駆体が製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明はピッチ及び有機基を有する金属化合物を有機系溶媒の超臨界流体中で混合した後に、得られた混合物から該溶媒を除去することを特徴とする金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法、および該製造方法により得られる金属/炭素複合材料の前駆体に関する発明である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるピッチは、ピッチの原料として、木材や石炭の乾留の際に得られる液状物質(タール)、オイルサンド、オイルシェール等から得られる油分、原油の蒸留あるいは熱分解の残査油等があり、これらを熱処理により重合したもので常温で固体状のものが例示されるが、特に限定はされない。
【0012】
本発明で使用されるピッチは、等方性であるか、あるいは炭素に対する水素の原子比が0.5〜1.0、全炭素中のナフテン系炭素が7質量%以上含まれ、光学異方性相を80〜100質量%含有するメソフェーズピッチであることが好ましい。上記のピッチを使用することにより、金属/炭素複合材料の前駆体中における金属化合物の分散性が高いという特徴が得られる。
【0013】
本発明で使用されるピッチがフッ化水素および三フッ化ホウ素を触媒として縮合多環芳香族化合物を含有する物質を重合して得られたメソフェーズピッチであることがより好ましい。メソフェーズピッチの製法は、従来の熱重合でも可能であるが、フッ化水素および三フッ化ホウ素を触媒として重合したものが溶媒への溶解性が高く特に適している。
【0014】
上記メソフェーズピッチの原料としては、縮合多環芳香族化合物およびこれらの混合物ないしこれらを含有する物質であって、種々の石油留分、石油加工工程の残査及び石炭タール留分等も含まれる。縮合多環芳香族化合物としては、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、アズレン、アントラセン、フェナントレン、アセナフテン、クリセン、ピレン、テトラセン、テトラフェン、トリフェニレン、アセアントレン、アセアントリレン等の炭化水素やキノリン、イソキノリン、アザフェナントレン、フェナントロリン、アザアントラセン等の複素環含有芳香族化合物が例示される。
メソフェーズピッチに関しては、特にメチルナフタレンを原料とすることが好ましい。上記原料のピッチを使用することにより、前駆体中における金属化合物の分散性が更に高くなる。また、ピッチが比較的安価であることから、金属/炭素複合材料の前駆体が安価に製造できるという特徴が得られる。
【0015】
本発明で使用される有機基を有する金属化合物は、金属と有機基が金属―炭素の直接結合により結びついた有機金属化合物や金属と炭素が酸素、窒素、硫黄原子などを隔てて結合している化合物を指すものである。
【0016】
本発明では、有機基を有する金属化合物に含有する金属が遷移金属であることが好ましく、遷移金属の種類により、炭化若しくは黒鉛化後の金属/炭素複合材料に多種多様な特性を与えることができる。また、有機基を有する金属化合物が金属錯体を形成していてもよい。特に限定はされないが、芳香族系配位子を有する金属化合物が例えばフェロセン、ニッケロセン等のメタロセン、フタロシアニン、ポルフィリン等の配位子を有する金属錯体、パラジウム、ルテニウム等の8,9,10族金属を有する有機金属錯体などが特に望ましい。上記金属錯体は本発明で使用する有機系溶媒に可溶であるため、金属/炭素複合材料の前駆体中の金属化合物の分散性が向上する。
【0017】
前記金属化合物は、芳香環を含む有機基を有する金属化合物であることが好ましい。上記金属化合物を使用することにより前記有機系溶媒への溶解性が増加するため、金属化合物は、前記前駆体中での分散性がより一層高まる。
【0018】
本発明の金属/炭素複合材料の前駆体を得るには、まず、ピッチ及び有機基を有する金属化合物を有機系溶媒の超臨界流体中で混合させる。ここで、ピッチの質量に対する、前記金属化合物における金属成分の質量の割合が1〜20質量%であることが好ましい。上記配合割合にすることにより、金属化合物の添加効果を失うことなく、金属化合物の分散性がより一層高まる。
ここでいう超臨界流体とは、臨界温度および臨界圧力を超えた温度及び圧力下の流体である。
【0019】
ここで超臨界流体として使用できる流体は有機系溶媒である。ここでいう溶媒とは、金属化合物を溶解する常温・常圧で液体の有機化合物である。
【0020】
例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、アニリンなどの芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、デカリン等の脂環族炭化水素系溶媒、ピリジン、キノリン、ピロール、チオフェン等の複素環化合物系溶媒が挙げられるが特に限定はされない。この中でも、芳香族系溶媒または複素環化合物系溶媒はピッチの溶解性が高いため好ましい。また、上記記載の溶媒を2種以上混合させて使用してもよい。
【0021】
本発明で使用する有機系溶媒の臨界温度は、ピッチの軟化点以上であることが望ましい。それにより前記前駆体中の金属化合物の分散性が高まる。
【0022】
上記の混合物から、蒸発(エバポレーション)等により有機溶媒を除去することにより、本発明の金属/炭素複合材料の前駆体が得られる。該前駆体を、公知の方法で熱処理して炭化あるいは黒鉛化することにより、金属が高度に分散した金属/炭素複合材料を得ることができる。
【0023】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0024】
尚、実施例、比較例中、三菱瓦斯化学製 ナフタレン原料メソフェーズピッチAR―HP品(軟化点290℃)を「N−AR」、メチルナフタレンを原料とし、フッ化水素、三フッ化ホウ素を触媒として重合したメソフェーズピッチ(軟化点240℃)を「MN−AR」、呉羽化学工業製等方性ピッチ(軟化点210℃)を「KP」、新日鐵化学製異方性ピッチ(軟化点269℃)を「SP」、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを「PdCom」、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムを「RuCom」、フタロシアニン銅を「PhCu」、超臨界トルエン流体を「scトルエン」、超臨界ベンゼン流体を「scベンゼン」、超臨界キシレン流体を「scキシレン」と略記する。
【0025】
表1に使用した溶媒の臨界温度及び臨界圧力を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
また、サンプルの結晶状態は以下の方法で評価した。
評価方法:
実施例等で作製したサンプルを乳鉢上で粉末状にすりつぶし、得られた粉末をX線回折測定装置により、各種金属化合物の結晶の面形(002)における平均面間隔(d002)のX線散乱光の強度を測定した。結晶のX線回折散乱強度は結晶子寸法が小さくなるに従い減少する。すなわち、金属化合物の結晶の分散状態が良好であるほど結晶構造に由来するX線回折散乱強度は小さくなる。よって、金属化合物の分散状態はX線回折散乱強度の強さで表わされる。
評価装置:理学電機株式会社 ミニフレックス
X線 :Cu/Kα1/30kV/15mA
散乱スリット : 4.2deg
受光スリット : 0.3 mm
【数1】
【0028】
実施例1
オートクレーブ中にトルエン80g、フェロセン1.675g(Fe;5質量%)及びN−AR粉末10gを仕込み、350℃、5.0MPaの超臨界トルエン流体中で2時間保持した。その後、得られた溶液をエバポレーションし、乾燥させることにより金属/炭素複合材料の前駆体を得た。
該前駆体サンプルを乳鉢上で粉末状にすりつぶし、得られた粉末をX線回折測定装置により、各種金属化合物の結晶の面形(002)における平均面間隔(d002)のX線散乱光の強度を測定した。測定結果を表2に示す。
尚、超臨界溶媒中で行った場合、表2中の溶媒には“sc”という接頭文字を添えて示した。また、金属化合物の添加量は、金属化合物中金属成分のAR中の含有量を質量%で示した。
【0029】
実施例2〜10
実施例1と同様にオートクレーブ中に表2に記載の各種ピッチ、各種金属化合物、各種溶媒を所定量仕込み、350℃,5.0MPaで2時間保持した。 その後、得られた各種溶液をエバポレーションし、乾燥させることにより金属/炭素複合材料の前駆体を得た。
実施例1と同様に金属化合物の結晶の面形(002)における平均面間隔(d002)のX線散乱光の強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0030】
比較例1、2
有機溶媒中での混合を行ったピッチと各種金属化合物の複合材料における金属化合物の分散状態を評価するため、ピッチと金属化合物の粉末を乳鉢で混合した試料との比較を行った。N−AR10gとフェロセン1.675g(Fe;5質量%)を混合した試料(比較例1)及びMN−AR10gとフェロセン1.675g(Fe;5質量%)を混合した試料(比較例2)について実施例と同様に金属化合物の結晶の面形(002)における平均面間隔(d002)のX線散乱光の強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
本発明は金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法に関し、安価でかつ金属化合物の分散性の高い金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法を提供するもので、炭素化若しくは黒鉛化を行って得られた金属/炭素複合材料は、ガス吸蔵材料、ガス分離膜、導電材料、磁性材料、有機合成触媒などに有用な材料として用いることができ、本発明の工業的意義は大きい。
【発明の属する技術分野】
本発明は、安価でかつ分散性に優れた金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カーボンへの遷移金属ナノおよびミクロ微粒子の導入は、微粒子が炭素層面により被覆されているために酸化されず一定の性質を保持すること、またナノ及びミクロンサイズの微粒子はバルク金属と異なる性質を示すことが知られている。このような遷移金属微粒子を内包したカーボン材料は触媒や電子素子などの用途があり、様々な形状の遷移金属微粒子内包炭素材料が調製されている。
【0003】
カーボン球殻あるいはカーボンチューブに遷移金属を内包した炭素材料は、遷移金属を含んだ炭素電極のアーク放電により得られる。鉄イオンのグラファイトへの打ち込みや、塩化鉄などの金属塩黒鉛層間化合物の熱分解により、グラファイトマトリックス中に遷移金属微粒子を分散させることも行われている。
【0004】
また金属化合物を混合した有機物不活性ガス中で熱処理することにより、炭素化と金属への還元を行い容易に炭素/金属複合材料を得ることが出来る。同様に、ポリアミック酸からポリイミドを調製し炭素−金属複合材料の前駆体を製造し、それを炭素化したナノあるいはサブミクロン・サイズの遷移金属微粒子の分散した炭素材料の製造方法が報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、いずれの場合も原料コストや生産コストが高いことから実用的な方法とはいえない。
【0006】
また、ピッチ系材料を炭素前駆体とした炭素/金属複合材料の製造法に関して、金属の分散状態が良好な炭素/金属複合材料は未だ報告されていない。
【0007】
【非特許文献1】
羽鳥浩章、外5名,「ニッケル化合物含有ポリイミドの炭素化挙動」,炭素,平成11年,第189号,p.165−170
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の従来技術の問題点に鑑み、安価でかつ金属化合物の分散性の高い金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述の目的を達成するために鋭意検討した結果、ピッチ及び有機基を有する金属化合物を有機溶媒の超臨界流体中で混合させることにより、安価かつ分散性の高い金属/炭素複合材料の前駆体が製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明はピッチ及び有機基を有する金属化合物を有機系溶媒の超臨界流体中で混合した後に、得られた混合物から該溶媒を除去することを特徴とする金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法、および該製造方法により得られる金属/炭素複合材料の前駆体に関する発明である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるピッチは、ピッチの原料として、木材や石炭の乾留の際に得られる液状物質(タール)、オイルサンド、オイルシェール等から得られる油分、原油の蒸留あるいは熱分解の残査油等があり、これらを熱処理により重合したもので常温で固体状のものが例示されるが、特に限定はされない。
【0012】
本発明で使用されるピッチは、等方性であるか、あるいは炭素に対する水素の原子比が0.5〜1.0、全炭素中のナフテン系炭素が7質量%以上含まれ、光学異方性相を80〜100質量%含有するメソフェーズピッチであることが好ましい。上記のピッチを使用することにより、金属/炭素複合材料の前駆体中における金属化合物の分散性が高いという特徴が得られる。
【0013】
本発明で使用されるピッチがフッ化水素および三フッ化ホウ素を触媒として縮合多環芳香族化合物を含有する物質を重合して得られたメソフェーズピッチであることがより好ましい。メソフェーズピッチの製法は、従来の熱重合でも可能であるが、フッ化水素および三フッ化ホウ素を触媒として重合したものが溶媒への溶解性が高く特に適している。
【0014】
上記メソフェーズピッチの原料としては、縮合多環芳香族化合物およびこれらの混合物ないしこれらを含有する物質であって、種々の石油留分、石油加工工程の残査及び石炭タール留分等も含まれる。縮合多環芳香族化合物としては、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、アズレン、アントラセン、フェナントレン、アセナフテン、クリセン、ピレン、テトラセン、テトラフェン、トリフェニレン、アセアントレン、アセアントリレン等の炭化水素やキノリン、イソキノリン、アザフェナントレン、フェナントロリン、アザアントラセン等の複素環含有芳香族化合物が例示される。
メソフェーズピッチに関しては、特にメチルナフタレンを原料とすることが好ましい。上記原料のピッチを使用することにより、前駆体中における金属化合物の分散性が更に高くなる。また、ピッチが比較的安価であることから、金属/炭素複合材料の前駆体が安価に製造できるという特徴が得られる。
【0015】
本発明で使用される有機基を有する金属化合物は、金属と有機基が金属―炭素の直接結合により結びついた有機金属化合物や金属と炭素が酸素、窒素、硫黄原子などを隔てて結合している化合物を指すものである。
【0016】
本発明では、有機基を有する金属化合物に含有する金属が遷移金属であることが好ましく、遷移金属の種類により、炭化若しくは黒鉛化後の金属/炭素複合材料に多種多様な特性を与えることができる。また、有機基を有する金属化合物が金属錯体を形成していてもよい。特に限定はされないが、芳香族系配位子を有する金属化合物が例えばフェロセン、ニッケロセン等のメタロセン、フタロシアニン、ポルフィリン等の配位子を有する金属錯体、パラジウム、ルテニウム等の8,9,10族金属を有する有機金属錯体などが特に望ましい。上記金属錯体は本発明で使用する有機系溶媒に可溶であるため、金属/炭素複合材料の前駆体中の金属化合物の分散性が向上する。
【0017】
前記金属化合物は、芳香環を含む有機基を有する金属化合物であることが好ましい。上記金属化合物を使用することにより前記有機系溶媒への溶解性が増加するため、金属化合物は、前記前駆体中での分散性がより一層高まる。
【0018】
本発明の金属/炭素複合材料の前駆体を得るには、まず、ピッチ及び有機基を有する金属化合物を有機系溶媒の超臨界流体中で混合させる。ここで、ピッチの質量に対する、前記金属化合物における金属成分の質量の割合が1〜20質量%であることが好ましい。上記配合割合にすることにより、金属化合物の添加効果を失うことなく、金属化合物の分散性がより一層高まる。
ここでいう超臨界流体とは、臨界温度および臨界圧力を超えた温度及び圧力下の流体である。
【0019】
ここで超臨界流体として使用できる流体は有機系溶媒である。ここでいう溶媒とは、金属化合物を溶解する常温・常圧で液体の有機化合物である。
【0020】
例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、アニリンなどの芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、デカリン等の脂環族炭化水素系溶媒、ピリジン、キノリン、ピロール、チオフェン等の複素環化合物系溶媒が挙げられるが特に限定はされない。この中でも、芳香族系溶媒または複素環化合物系溶媒はピッチの溶解性が高いため好ましい。また、上記記載の溶媒を2種以上混合させて使用してもよい。
【0021】
本発明で使用する有機系溶媒の臨界温度は、ピッチの軟化点以上であることが望ましい。それにより前記前駆体中の金属化合物の分散性が高まる。
【0022】
上記の混合物から、蒸発(エバポレーション)等により有機溶媒を除去することにより、本発明の金属/炭素複合材料の前駆体が得られる。該前駆体を、公知の方法で熱処理して炭化あるいは黒鉛化することにより、金属が高度に分散した金属/炭素複合材料を得ることができる。
【0023】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0024】
尚、実施例、比較例中、三菱瓦斯化学製 ナフタレン原料メソフェーズピッチAR―HP品(軟化点290℃)を「N−AR」、メチルナフタレンを原料とし、フッ化水素、三フッ化ホウ素を触媒として重合したメソフェーズピッチ(軟化点240℃)を「MN−AR」、呉羽化学工業製等方性ピッチ(軟化点210℃)を「KP」、新日鐵化学製異方性ピッチ(軟化点269℃)を「SP」、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを「PdCom」、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムを「RuCom」、フタロシアニン銅を「PhCu」、超臨界トルエン流体を「scトルエン」、超臨界ベンゼン流体を「scベンゼン」、超臨界キシレン流体を「scキシレン」と略記する。
【0025】
表1に使用した溶媒の臨界温度及び臨界圧力を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
また、サンプルの結晶状態は以下の方法で評価した。
評価方法:
実施例等で作製したサンプルを乳鉢上で粉末状にすりつぶし、得られた粉末をX線回折測定装置により、各種金属化合物の結晶の面形(002)における平均面間隔(d002)のX線散乱光の強度を測定した。結晶のX線回折散乱強度は結晶子寸法が小さくなるに従い減少する。すなわち、金属化合物の結晶の分散状態が良好であるほど結晶構造に由来するX線回折散乱強度は小さくなる。よって、金属化合物の分散状態はX線回折散乱強度の強さで表わされる。
評価装置:理学電機株式会社 ミニフレックス
X線 :Cu/Kα1/30kV/15mA
散乱スリット : 4.2deg
受光スリット : 0.3 mm
【数1】
【0028】
実施例1
オートクレーブ中にトルエン80g、フェロセン1.675g(Fe;5質量%)及びN−AR粉末10gを仕込み、350℃、5.0MPaの超臨界トルエン流体中で2時間保持した。その後、得られた溶液をエバポレーションし、乾燥させることにより金属/炭素複合材料の前駆体を得た。
該前駆体サンプルを乳鉢上で粉末状にすりつぶし、得られた粉末をX線回折測定装置により、各種金属化合物の結晶の面形(002)における平均面間隔(d002)のX線散乱光の強度を測定した。測定結果を表2に示す。
尚、超臨界溶媒中で行った場合、表2中の溶媒には“sc”という接頭文字を添えて示した。また、金属化合物の添加量は、金属化合物中金属成分のAR中の含有量を質量%で示した。
【0029】
実施例2〜10
実施例1と同様にオートクレーブ中に表2に記載の各種ピッチ、各種金属化合物、各種溶媒を所定量仕込み、350℃,5.0MPaで2時間保持した。 その後、得られた各種溶液をエバポレーションし、乾燥させることにより金属/炭素複合材料の前駆体を得た。
実施例1と同様に金属化合物の結晶の面形(002)における平均面間隔(d002)のX線散乱光の強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0030】
比較例1、2
有機溶媒中での混合を行ったピッチと各種金属化合物の複合材料における金属化合物の分散状態を評価するため、ピッチと金属化合物の粉末を乳鉢で混合した試料との比較を行った。N−AR10gとフェロセン1.675g(Fe;5質量%)を混合した試料(比較例1)及びMN−AR10gとフェロセン1.675g(Fe;5質量%)を混合した試料(比較例2)について実施例と同様に金属化合物の結晶の面形(002)における平均面間隔(d002)のX線散乱光の強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
本発明は金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法に関し、安価でかつ金属化合物の分散性の高い金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法を提供するもので、炭素化若しくは黒鉛化を行って得られた金属/炭素複合材料は、ガス吸蔵材料、ガス分離膜、導電材料、磁性材料、有機合成触媒などに有用な材料として用いることができ、本発明の工業的意義は大きい。
Claims (8)
- ピッチ及び有機基を有する金属化合物を有機系溶媒の超臨界流体中で混合した後に、得られた混合物から該溶媒を除去することを特徴とする金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法。
- 前記ピッチがフッ化水素および三フッ化ホウ素を触媒として、縮合多環芳香族化合物を含有する物質を重合して得られたメソフェーズピッチである請求項1に記載の金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法。
- ピッチの質量に対する、前記金属化合物における金属成分の質量割合が1〜20質量%である請求項1または2に記載の金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法。
- 前記金属化合物に含有される金属が遷移金属である請求項1〜3のいずれかに記載の金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法。
- 前記金属化合物が、金属錯体である請求項1〜4のいずれかに記載の金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法。
- 前記金属化合物が、芳香環を含む有機基を有する金属化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法。
- 前記有機系溶媒が、芳香族炭化水素溶媒または複素環化合物溶媒である請求項1〜6のいずれかに記載の金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で得られる金属/炭素複合材料の前駆体。
Priority Applications (1)
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JP2002306081A JP2004142955A (ja) | 2002-10-21 | 2002-10-21 | 金属/炭素複合材料の前駆体の製造方法 |
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