JP2004141125A - 代謝工学的に改変されている真菌類およびそれを用いるステロール類の製造法 - Google Patents

代謝工学的に改変されている真菌類およびそれを用いるステロール類の製造法 Download PDF

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林 泰行
Asae Nakajima
中島 麻恵
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Abstract

【課題】チモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3Δ−オル若しくはその由来生合成化合物等のステロール類を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】ステロールC−22デサチュラーゼ、および、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性が低減化され、ステロールΔ7−リダクターゼ、および/またはステロールΔ5−デサチュラーゼが高発現化されるように代謝工学的に改変された真菌類(酵母、カビ)を培養し、培養物からステロール類を採取する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬、食品工業において有用なステロール類を製造する真菌類およびそれを用いたステロール類の製造法に関し、更に詳しくは、酵母、カビ等の真菌類を用いて、培養液からチモステロール、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物を製造する方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステロール類は動物、植物、真菌類に含まれている生命活動に必須の物質であり、細胞膜に遊離型ステロール(Free sterol)の状態で含まれるほか、一部は脂肪酸とのエステル型(Sterol ester)として貯蔵される。酵母、カビ等の真菌類ではエルゴステロール(ergosterol)が主ステロールとなっているが、エルゴステロールは紫外線を照射することによりビタミンDに変換されるので、医薬品の原料として産業上利用することができる。
【0003】
植物ではシトステロール(sitosterol)、カンペステロール(campesterol)、スチグマステロール(stigmasterol)が主ステロールであるが、これら植物由来ステロール類には抗肥満効果があることが明らかになっており、すでに食用油脂に添加して食品産業に利用されはじめている。さらに特定の植物においては、多くの種類のステロール類が配糖体として存在し、植物体ごと生薬として、あるいは抽出物が生薬成分として利用されている。
【0004】
一方、動物ではコレステロール(cholesterol)が主ステロールであるが、コレステロールは化粧品のベースオイルとして利用されるほか、誘導体のコール酸(cholic acid)、デオキシコール酸は界面活性剤として利用される。さらにデオキシコール酸の異性体であるウルソデオキシコール酸は医薬品として利用されている。またコレステロールから誘導される各種ステロイドホルモンも、医薬品として利用されている。このように、ステロール類には多岐にわたる用途があり、産業上極めて有用な物質である。
【0005】
産業上用途が広いステロールであるコレステロールおよびその類縁体の製造には、現在動物組織の抽出物を原料とし用いているが、より安価で安定的に供給可能な代替原料の製造法の開発が求められている。
真菌類のエルゴステロールや植物のシトステロール、カンペステロール、スチグマステロールなどは、その側鎖の24位にメチル基ないしはエチル基があり、さらに真菌類のエルゴステロールは母核のB環の5位および7位にそれぞれ1つ、側鎖22位に1つの二重結合を持ち、動物由来のステロールとは物性が大きく異なっている。これらの理由から真菌類のエルゴステロールは、そのままではコレステロール類縁体・誘導体原料を代替することはできない。
【0006】
動物原料の代替ステロールを真菌類で効率的に生産するためには、少なくとも(1)母核の二重結合は5位の1つのみで(図1母核1)、側鎖の22位に二重結合がなく24位にはメチル基もエチル基もない(図1側鎖AもしくはB)ステロール、(2)母核の二重結合は7位の1つのみで(図1母核2)、側鎖の22位に二重結合がなく24位にはメチル基もエチル基もない(図1側鎖AもしくはB)ステロール、又は(3)母核の二重結合は5位および7位の2つで(図1母核3)、側鎖の22位に二重結合がなく24位にはメチル基もエチル基もない(図1側鎖AもしくはB)ステロールが主ステロールとなるように蓄積させることが必要である。
【0007】
酵母、カビ等の真菌類においては、生合成酵素欠損株あるいは生合成酵素遺伝子の過剰発現によりステロール組成を変えた研究例は知られていた。例えば、酵母サッカロミセス・セレビシエでステロールC−24メチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(ERG6)を欠損させることにより、側鎖24位にメチル基を持たないステロールのみが蓄積するようにした例(Xu, S., and Nes, W. D. (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 181, 509−517)、また酵母でステロールC−22デサチュラーゼをコードする遺伝子(ERG5)を欠損させアラビドプシスのΔ7−ステロールリダクターゼを高発現するように代謝工学的に改変し、エルゴスタ−5,24−ジエノール、エルゴスタ−5−エネノール、エルゴスタ−5,22−ジエノールが蓄積するようにした例はあった(Lecain, E., Chenivesse, X., Spagnoli, R., and Pompon, D. (1996) J. Biol. Chem. 271(18), 10866−10873)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、真菌類を用いて、産業上有用な、(1)母核の二重結合は5位の1つのみで(図1母核1)、側鎖の22位に二重結合がなく24位にはメチル基もエチル基もない(図1側鎖AもしくはB)ステロール、(2)母核の二重結合は7位の1つのみで(図1母核2)、側鎖の22位に二重結合がなく24位にはメチル基もエチル基もない(図1側鎖AもしくはB)ステロール、又は(3)母核の二重結合は5位および7位の2つで(図1母核3)、側鎖の22位に二重結合がなく24位にはメチル基もエチル基もない(図1側鎖AもしくはB)ステロールが主ステロールとして生成されるように改変された例はこれまでなく、培養の容易な酵母、カビ等の真菌類微生物を用いた新規な製造菌株および該菌株を用いた上記ステロール類の製造法の開発が望まれていた。
【0009】
本発明は、従来コレステロール類縁体や誘導体の原料にはなり得なかった真菌類由来のステロール類を、代謝工学的手法を用いて改変した微生物を用いて、産業上有用なステロール類、すなわちチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルもしくはその由来生合成化合物を製造する方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、真菌類を用いた産業上有用なステロール類、すなわちチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルもしくはその由来生合成化合物を製造する方法において、代謝工学的手法により真菌類の菌株の改変を鋭意検討した結果、真菌類のステロールC−22デサチュラーゼ(C−22 sterol desaturase)(EC1.14.14.−)、および、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼ(S−adenosylmethionine:Δ24−sterol−C−methyl transferase, EC2.1.1.41)の両方の活性を低減化し、ステロールΔ7−リダクターゼ(sterolΔ7−reductase)(EC1.3.1.21)が高発現化するように代謝工学的に改変された真菌類(酵母、カビ)、または該真菌類のステロールΔ5−デサチュラーゼ(sterolΔ5−desaturase)が高発現化するように代謝工学的に改変された真菌類を培養することにより、チモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物を効率的に生産することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明により、ステロールC−22デサチュラーゼおよびステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性を低減化するように代謝工学的に改変されていることを特徴とする真菌類、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの活性を低減化し、ステロールΔ7−リダクターゼを高発現するように代謝工学的に改変されていることを特徴とする真菌類、ステロールC−22デサチュラーゼおよびステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性を低減化し、かつステロールΔ7−リダクターゼを高発現化するように代謝工学的に改変されていることを特徴とする真菌類、および、上記いずれかの真菌類のステロールΔ5−デサチュラーゼを高発現化するように代謝工学的に改変されていることを特徴とする真菌類が提供される。
【0012】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明の真菌類を培養し、培養物からチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物を採取することを特徴とするチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物(図1で側鎖Bの場合)の製造方法、および、上記した本発明の真菌類またはその処理物を、チモステロール、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルまたはコレスタ−5,7,24−トリエン−3β−オルに接触させて、デスモステロールを生成蓄積させ、これを採取することを特徴とするデスモステロールの製造方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の製造方法で得られたステロール類を、ステロールΔ24−リダクターゼに接触させることによりステロール類の24(25)位の二重結合を還元することを特徴とする、ステロール類(図1で側鎖Aの場合)の製造方法、および、上記した本発明の製造方法で得られたステロール類の側鎖二重結合を水酸化することにより25−ヒドロキシステロール、又は、24,25−ジヒドロキシステロールの製造方法、および、該誘導体の1α位を水酸化し、B環を開環し、最終的に25−ヒドロキシビタミンD類、1α,25−ジヒドロキシビタミンD類、25−ヒドロキシコレカルシフェロール、1α,25−ジヒドロキシコレカルシフェロール等の活性型ビタミンD類に変換することを特徴とする、活性型ビタミンD類の製造方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明はステロールC−22デサチュラーゼ、および、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性を低減化し、ステロールΔ7−リダクターゼを高発現するように代謝工学的に改変(図2参照)された真菌類(酵母、カビ)、または該真菌類のステロールΔ5−デサチュラーゼを高発現するように代謝工学的に改変された真菌類を培養し、培養物からチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物を採取することを特徴とするチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物の製造方法を提供する。
【0015】
コレスタ−7,24−ジエン−3β−オル由来生合成化合物とは、真菌類生物内でコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルから生合成可能な化合物のことであり、具体的には、コレスタ−5,7,24−トリエン−3β−オル、デスモステロール、あるいは、コレステロール等が挙げられる。
宿主微生物として用いる真菌類としては、中間体としてチモステロールを経由しエルゴステロールを主ステロールとして生産する(図2参照)真菌類であればいかなる真菌類でも良い。とりわけ、サッカロミセス属、デバリオマイセス属、または、トルロプシス属、または、ピキア属に属する酵母であることが好ましく、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、デバリオマイセス・ニルソニ(Debaryomyces nilssonii)、トルロプシス・コリキュロサ(Tolulopsis colliculosa)、ピキア・ファリノサ(Pichia farinosa)が挙げられる(Kaneko,H.ら(1976) Lipids 11(12)、837−844)。
【0016】
これらの中で、代謝工学的手法が用いやすいことからサッカロミセス属が好適である。さらに、サッカロミセス属は、his3、leu2、trp1、ura3などの栄養要求性の遺伝型であることが望ましく、例えば、サッカロミセス・セレビシエ KA311A株(MATa his3 leu2 trp1 ura3)(Irie, K., Takase, M., Lee, K. S., Levin, D. E., Araki, H., Matsumoto, K., and Oshima, Y. (1993) Mol. Cell. Biol. 13, 307−3083)やサッカロミセス・セレビシエ YPH500株 (MATα ade2 his3 leu2 lys2 trp1 ura3)(Stratagene社製)を挙げることができる。
尚、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) KA311A株(MATa his3 leu2 trp1 ura3)は、独立行政法人産業総合研究所特許生物寄託センターに受託番号:FERM P−19053として寄託されている。
【0017】
本発明においてステロールC−22デサチュラーゼは、各種ステロール類の側鎖の22(23)位に二重結合を導入する能力を有する酵素であり、具体的には、例えばコレスタ−5,7,24−トリエノールをコレスタ−5,7,22,24−テトラエノールに、エルゴスタ−5,7−ジエノールをエルゴスタ−5,7,22−トリエノールに、エルゴスタ−5,24(25)−ジエノールをエルゴスタ−5,22,24(25)−トリエノールに、エルゴスタ−5,7,24(25)−トリエノールをエルゴスタ−5,7,22,24(25)−テトラエノールに変換する能力を有する酵素を指す。
【0018】
また、本発明におけるステロールC−24メチルトランスフェラーゼは、S−アデノシルメチオニンから各種ステロール類の24位にメチル基を転移させる能力、さらには転移により付加されたメチル基にさらにメチル基を転移させる能力を有する酵素であり、具体的には、例えばチモステロールをフェコステロールに変換する能力を有する酵素を指す。
【0019】
また、これら酵素をコードする遺伝子は、既に単離され塩基配列が決定されているものもあり、例えば、ステロールC−22デサチュラーゼとしては、サッカロミセス・セレビシエ由来の遺伝子が報告されており(Venkatramesh, M., Guo,D., Jia, Z., Nes, W.D. (1996) Biochem. Biophys. Acta 1299, 313−324)、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼとしては、サッカロミセス・セレビシエ由来の遺伝子が報告されている(Skaggs, B.A., Alexander, J.F., Pierson, C.A., Schweitzer, K.S., Chun, K.T., Koegel, C., Barbuch, R., and Bard, M. (1996) Gene 169, 105−109)。
【0020】
ステロールC−22デサチュラーゼ、および、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性低減化方法としては、エチルメタンスルホン酸(EMS)、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)などの化学物質あるいはUVなどの変異源処理によって得られた両酵素遺伝子の欠損突然変異株を交配する方法、両遺伝子の転写をアンチセンス遺伝子の導入によりおさえる方法、両遺伝子の転写産物をRNAi技術によって抑制する方法、両酵素の特異的阻害剤で酵素活性を抑える方法などを用いることができる。
【0021】
真菌類においては、ステロールC−22デサチュラーゼおよびステロールC−24メチルトランスフェラーゼをそれぞれコードしている遺伝子断片中に、HIS3、LEU2、TRP1、URA3などの栄養要求性遺伝子DNAないしはカナマイシンやオーレオバシジンなどの抗生物質や抗真菌薬に対する耐性遺伝子が挿入された遺伝子断片、あるいはその遺伝子断片がさらにベクターに挿入されたプラスミドを作成し、相同組換えにより宿主染色体中の該遺伝子を破壊する方法が好適に用いられる。
【0022】
例えば、サッカロミセス・セレビシエにおいては、ステロールC−22デサチュラーゼをコードする遺伝子(ERG5)を含むDNA断片、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(ERG6)を含むDNA断片を制限酵素切断ないしはポリメラーゼチェーンリアクション法(以下これを「PCR」と略称することがある)によって得てベクターに組み込んで中間ベクターpERG5およびpERG6を作成する。この中間ベクターをERG5遺伝子およびERG6遺伝子の遺伝子内部にある任意の制限酵素部位で2つに切断し、酵母のHIS3、LEU2、TRP1、URA3などの栄養要求性遺伝子cDNAのいずれか1つを2つの中間ベクター同士で重ならないように選択し挿入することにより遺伝子破壊用ベクターないしはそれをPCRで増幅して得られる遺伝子破壊用DNA断片を作成する。次いでこの遺伝子破壊用ベクターないしは遺伝子破壊用DNA断片を酵母に遺伝子導入することで相同組換えを誘発し、目的遺伝子を破壊することができる。
【0023】
酵母において、遺伝子破壊用ベクター作成ないしは遺伝子破壊用DNA断片作成に用いるベクター系としては、pUC系(Yanisch−Perron, C., Vieira, J. and Messing, J. (1985) Gene 33(1), 103−119)やpBluescript系(Short, J. M., Fernandez, J. M., Sorge, J. A. and Huse, W. D. (1988) Nucleic Acids Res. 16(15), 7583−7600、Alting−Mees, M. A. and Short, J. M. (1989) NucleicAcids Res. 17(22), 9494)などがあげられる。これらのベクターは市販されており容易に入手可能である。
【0024】
かくして構築される遺伝子破壊用DNA断片若しくは遺伝子破壊用ベクターの具体例として、ERG5遺伝子の内部371bpを欠失させ、この欠失部分にTRP1遺伝子が挿入されているDNA断片(erg5::TRP1)若しくは該DNA断片を有するプラスミドpSK−erg5::TRP1、ERG6遺伝子の内部476bpを欠失させ、この欠失部分にHIS3遺伝子が挿入されているDNA断片(erg6::HIS3)若しくは該DNA断片を有するプラスミドpUC−erg6::HIS3等が挙げられる。
【0025】
遺伝子導入の方法としては、例えば、電気穿孔法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法があげられるが、酢酸リチウム法が特に好ましい。酵母における遺伝子破壊の確認は、特定の栄養要求性遺伝子が挿入された遺伝子部分が相同組換えにより酵母ゲノム中に組み込まれるために、宿主株が持っていた複数の栄養要求性のうち該当する栄養要求性が消失することで知ることができる。さらにERG5およびERG6遺伝子の5’末端と3’末端にそれぞれ設定したPCRプライマーを用いて、遺伝子破壊操作を受けた酵母株から抽出した染色体DNAを鋳型としてPCRを行い、PCR断片の長さが挿入した栄養要求性遺伝子の長さだけ大きくなっていることを確認することにより遺伝子破壊の確認を行うことができる。
【0026】
かくして得られる遺伝子破壊株の具体例としては、遺伝子破壊用ベクターpSK−erg5::TRP1のerg5::TRP1断片でERG5遺伝子を破壊した、サッカロミセス・セレビシエKAΔ5−5株、さらに該Δ5−5株のERG6遺伝子をpUC−erg6::HIS3のerg6::HIS3断片で破壊したKAΔ5Δ6−1株、KAΔ5Δ6−4株、KAΔ5Δ6−5株等が挙げられる。
ステロールC−22デサチュラーゼ、および、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性が低減化された宿主微生物に、さらにステロールΔ7−リダクターゼおよび/またはステロールΔ5−デサチュラーゼが高発現化されるように代謝工学的に改変することができる。
【0027】
この改変に用いるステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子としては、人、マウスなどの動物由来の遺伝子、およびシロイヌナズナ(Lecain, E., Chenivesse, X., Spagnoli, R., and Pompon, D. (1996) J. Biol. Chem. 271(18), 10866−10873)、イネ、トマト、大豆などの植物由来遺伝子を挙げることができる。
また、この改変に用いるステロールΔ5−デサチュラーゼとしては、酵母由来の遺伝子(Arthington, B.A., Bennett, L.G., Skatrud, P.L., Guynn, C.J., Barbuch, R.J., Ulbright, C.E., and Bard, M. (1991) Gene 102(1), 39−44)、ヒトなどの動物由来の遺伝子(Matushima, M., Inazawa, J., Takahashi, E., Suzumori, K., and Nakamura, Y. (1996) Cytogenet. Cell Genet. 74(4), 252−254)、およびシロイヌナズナ(Gachotte, D., Husselstein, T., Bard, M., Lacroute, F., and Benveniste, P. (1996) Plant J. 9(3), 391−398)、イネ、トマト、大豆などの植物由来遺伝子を挙げることができる。
これらの遺伝子を真菌類で高発現させるためには、染色体組込型プラスミドのうち多コピーが染色体に組み込まれるベクターを用いる方法(Sakai, A., Ozawa, F., Higashizaki, T., Shimizu, Y., and Hishinuma, F. (1991) Bio/Technol. 9, 1382−1385)および非組み込み型プラスミドのうち2μmプラスミド由来のpAURベクター(タカラバイオ社製)やpESCベクター(STRATAGENE社製)などの多コピー型を用いる方法が好適である。
【0028】
好ましくはフォスフォグリセレートキナーゼ遺伝子あるいはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子などの恒常的プロモーターないしはGAL1GAL10(Johnston, M. and Davis, R. W. (1984) Mol. Cell. Biol. 4(8), 1440−1448)などの誘導型プロモーター(例えば、STRATAGENE社製)の下流にステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子またはステロールΔ5−デサチュラーゼをつないで2μmプラスミドなどの多コピー型プラスミドのマルチクローニングサイトに挿入した発現ベクターを構築し、それを宿主となる真菌類の二重遺伝子破壊株に導入する方法が好適である。
【0029】
さらに好ましくは、サッカロミセス・セレビシエのerg5 erg6二重遺伝子破壊株にアラビドプシスのmRNAからPCRを用いて取得したステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子を酵母のアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター下流につなぎ、LEU2遺伝子をつないだ2μmプラスミドに挿入して発現ベクターを構築する方法、および酵母の染色体からPCRを用いて取得したステロールΔ5−デサチュラーゼ遺伝子を酵母のアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター下流につなぎ、URA3遺伝子をつないだ2μmプラスミドに挿入して発現ベクターを構築する方法が好適である。
【0030】
かくして構築される発現ベクターの具体例として、シロイヌナズナ由来のステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子を改変型2μmベクターpADNSΔEへ組み込むことにより構築されるプラスミドpAD−Δ7、およびサッカロミセス・セレビシエ由来のステロールΔ5−デサチュラーゼ遺伝子(ERG3)を改変型2μmベクターpAD−URAへ組み込むことにより構築されるプラスミドpAU−ERG3が挙げられる。
遺伝子導入の方法としては、電気穿孔法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等があげられるが、中でも酢酸リチウム法が特に好ましい。遺伝子導入は、例えばシロイヌナズナのステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子cDNAの5’末端と3’末端に設定したプライマー、あるいは酵母のステロールΔ5−デサチュラーゼ遺伝子cDNAの5’末端と3’末端に設定したプライマーを用い、形質転換処理した二重遺伝子破壊株から抽出したDNAを鋳型としてPCRを行うことで確認できる。
【0031】
かくして得られるerg5 erg6二重遺伝子破壊株にステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子を導入した菌株の例としては、KAΔ5Δ6−4株に、プラスミドpAD−Δ7を導入したpAD−Δ7/ KAΔ5Δ6−4株を挙げることができる。このようにして改変された菌株は、(1)ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの活性を低減化することにより、フェコステロールを経てエルゴステロールを合成する流れを止め、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルの合成方向へ導き、(2)Δ7−ステロールリダクターゼを高発現化することにより、中間産物であるコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルおよびコレスタ−5,7,24−トリエン−3β−オル等を効率よくデスモステロールまで導き、さらに、(3)ステロールC−22デサチュラーゼの活性を低減化することにより、生成したコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルおよびコレスタ−5,7,24−トリエン−3β−オル、デスモステロール等のステロールの22位が不飽和化されることを防ぐことができる。
また、かくして得られるerg5 erg6二重遺伝子破壊株にステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子およびステロールΔ5−デサチュラーゼ遺伝子を導入した菌株の例としては、KAΔ5Δ6−4株に、プラスミドpAD−Δ7およびpAU−ERG3を導入したE3−4.1株を挙げることができる。このようにして改変された菌株は、(1)ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの活性を低減化することにより、フェコステロールを経てエルゴステロールを合成する流れを止め、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルの合成方向へ導き、(2)ステロールΔ5−デサチュラーゼを高発現化することにより、中間産物であるコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルをコレスタ−5,7,24−トリエン−3β−オルへより効率良く変換し、(3)Δ7−ステロールリダクターゼを高発現化することにより、中間産物であるコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルおよびコレスタ−5,7,24−トリエン−3β−オル等を効率よくデスモステロールまで導き、さらに、(4)ステロールC−22デサチュラーゼの活性を低減化することにより、生成したコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルおよびコレスタ−5,7,24−トリエン−3β−オル、デスモステロール等のステロールの22位が不飽和化されることを防ぐことができる。
【0032】
ステロールC−22デサチュラーゼ、および、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性を低減化し、Δ7−ステロールリダクターゼを高発現化するように代謝工学的に改変された真菌類、または該真菌類のステロールΔ5−デサチュラーゼを高発現化するように代謝工学的に改変された真菌類によるチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物の生産は、発酵法によるエルゴステロールの製造に用いられる方法と同様の方法により行うことができる。すなわち、上記生産株を炭素源、窒素源、無機塩、アミノ酸、ビタミンなどを含有する培地中、好気条件下、温度、pHなどを調整しつつ培養を行えば、真菌類菌体中にチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物が蓄積するのでこれを採取する。
【0033】
炭素源としては、例えばグルコース、グリセロール、フルクトース、シュークロース、マルトース、マンノース、澱粉、澱粉加水分解液、糖蜜、などの炭水化物、ピルビン酸、メバロン酸などの各種有機酸が使用できる。さらに真菌類の資化性によって、炭化水素、アルコールなども用いられる。特に廃糖蜜は好適にもちいられる。
【0034】
窒素源としては、例えばアンモニア、または塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの各種無機塩および有機アンモニウム塩類あるいはペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物など種々のものが使用可能である。
無機塩としては、例えばリン酸第一水素カリウム、リン酸水素第二カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウムなどを使用する。ビタミン、アミノ酸としては、使用する真菌類の種類によってことなるが、必要に応じ添加する。また使用する菌株が、栄養要求性を示す場合は、その要求物質を添加する。さらに培地には、チモステロール、あるいは、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オル、あるいは、コレスタ−5,7,24−トリエン−3β−オルを加えて菌株ないしはその処理物に接触させることで、チモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物を蓄積させても良い。
【0035】
培養は使用する菌株に応じて適切な条件で行うが、通常は、震盪培養または通気攪拌培養などの好気的条件下に行う。生産株として、サッカロミセス・セレビシエを用いる場合は、培養温度は20〜40℃が好適であり、培地のpHは弱酸性付近に維持する事が望ましい。培養期間は通常1〜5日間で菌体中にチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物が蓄積する。
【0036】
培養終了後のステロールの抽出は一般に生物組織からステロール類を抽出する方法により行うことができる。具体的には、例えば、菌体を海砂とともにそのままアセトン中で破砕し酢酸エチルで抽出するか、又は、2MのNaOHを含む50%エタノール中で2時間煮沸し鹸化したのちヘプタンないしはクロロホルム/メタノール/水(体積比86:16:1)混液で抽出し、薄層クロマトグラフィーにかけステロール画分を掻き取って、窒素気流下で乾燥させメタノール/クロロホルム混液に溶解することで総ステロールを菌体から抽出する。
【0037】
次いでステロールの種類の同定は、薄層クロマトグラフィーで分離抽出したステロール画分を、それ自体公知の適当な溶媒およびカラムの組み合わせでガスクロマトグラフィーないしは高速液体クロマトグラフィーにかけて、現れるピークの保持時間を標準試料の保持時間と比較することで行うことができる。また、同定された各種ステロールの総ステロール中にしめる割合は各ピークの面積から算出することができる。さらに、これらの主要なステロールのピークが目的化合物であることの確認は、マススペクトロメトリーを用いて、分子量および開裂パターンを調べることで行うことができる。また、GC−MSあるいはHPLC−MSを用いることによりさらに効率よく抽出されたステロール類を同定することができる。
【0038】
また、本発明の真菌類またはその処理物を、チモステロール、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルまたはコレスタ−5,7,24−トリエン−3β−オルに接触させて、デスモステロールを生成蓄積させることができる。真菌類は培養した菌体をそのまま用いてもよいし、得られた菌体を超音波破砕、フレンチプレス若しくはホモジェナイザー等の機械的破壊法、又はリゾチームを用いた酵素的破壊法等によって処理したものを用いても良い。接触させる際には反応液にグルコース、シュークロース、フルクトース等の炭素源をエネルギー源として添加し、収量が向上する場合はそれらの炭素源を適宜添加することも可能である。その他溶液には界面活性剤、有機物及び無機物等を必要により添加することもできる。
【0039】
得られたチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物は各種医薬等の中間体となりうる。例えば、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オル由来生合成化合物であるデスモステロールは、その側鎖24(25)位の二重結合を化学的にあるいは還元酵素によって生物学的に還元することでコレステロールを生産することができる。具体的には、例えば、ヒトでその遺伝子が単離されているステロールΔ24−リダクターゼ(SterolΔ24−reductase)とデスモステロールとを、酵素反応が起こりうる適当な条件下で接触させることにより24(25)位の二重結合が還元され、コレステロールが生成する。
【0040】
すなわち、例えばフォスフォグリセレートキナーゼ遺伝子あるいはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子などの恒常的プロモーターないしはGAL1GAL10などの誘導型プロモーターの下流にヒトのステロールΔ24−リダクターゼをコードする遺伝子(Waterham, H.R., Koster, J., Romeijn, G.J., Hennkam, R.C.M., Vreken, P., Andersson, H.C., FitzPatrick, D.R., Kelly, I., and Wanders, R.J.(2001) Am.J.Hum.Genet. 69, 685−694)を連結して発現ベクターを作成し、ステロールC−22デサチュラーゼ、および、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性を低減化しステロールΔ7−リダクターゼを高発現化するように代謝工学的に改変された真菌類、例えば前記pAD−Δ7/ KAΔ5Δ6−4株、あるいはステロールC−22デサチュラーゼ、および、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性を低減化しステロールΔ7−リダクターゼおよびステロールΔ5−デサチュラーゼを高発現化するように代謝工学的に改変された真菌類、例えば前記E3−4.1株に遺伝子導入し発現させることでコレステロールを産生する形質転換株を作製することができる。得られた形質転換株はデスモステロールの生産に用いたと同様の方法で培養し、ステロールを抽出することでコレステロールを得ることができる。
【0041】
また、デスモステロールのような側鎖二重結合を持つステロイドは、この二重結合を利用してHg(OAc)次いでNaBH処理することで25−ヒドロキシステロールに、あるいはOsOで酸化するかepoxide化後酸処理で24,25−ジヒドロキシステロールに誘導できる。ついでBarton法(Barton, D.H.R., Hesse, R.H., Pechet, M.M., Rizzardo, E. (1973) J.Am.Chem.Soc. 95, 2748)によりこれらの誘導体の1α位を水酸化し、UV照射によりB環を開環し熱異性化することで、最終的に25−ヒドロキシビタミンD類、1α,25−ジヒドロキシビタミンD類、25−ヒドロキシコレカルシフェロール、1α,25−ジヒドロキシコレカルシフェロール等の活性型ビタミンD類に変換することができる(池川信夫、竹下徹、「有機合成化学」、(1979)第37巻、第9号、755−771頁参照)。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1 サッカロミセス・セレビシエ  KA311A 株の ERG5 および ERG6 遺伝子の二重遺伝子破壊株の作成
(1)酵母染色体DNAの調製
サッカロミセス・セレビシエ KA311A株(受託番号:FERM P−19053)をYPD液体培地(1% 酵母エキス、2% ポリペプトン、2% グルコース)10mlに植菌し、30℃で16時間、振とう培養をおこなった。培養液から菌体を集菌し、STES緩衝液(0.1M NaCl、0.01M トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(以下「トリス」と略す)、0.001M エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(以下「EDTA」と略す)、0.1% ラウリル硫酸ナトリウム、pH7.5)0.1mlに懸濁後、石英砂を細胞と同体積加えた。サンプルを30秒間ボルテックスミキサーで撹拌した後、1分間氷上に静置した。この操作を3回繰り返した。フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(体積比25:24:1)を0.1ml加えて、同様に30秒間の撹拌と1分間の氷上静置を2回繰り返した。
微量用遠心機により二層に分離させ、水層を回収した。等容積のクロロホルムを加えて撹拌した後、同様に微量用遠心機により二層に分離させ、水層を回収した。10分の1容の3M 酢酸ナトリウム溶液(pH5.2)、2.5倍容の99% エタノールを加えてDNAを沈殿回収後、0.05mlのTE緩衝液(0.01M トリス、0.001M EDTA、pH7.5)に溶解した。
【0043】
(2)遺伝子破壊用の酵母ERG5、ERG6遺伝子断片の調製
サッカロミセス・セレビシエ由来ステロールC−22デサチュラーゼをコードする遺伝子(ERG5)を含むDNA断片、ステロールC−24メチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(ERG6)を含むDNA断片は、上記(1)で取得したサッカロミセス・セレビシエ KA311A株の染色体DNAを鋳型にしてPCRにて合成、単離した。以下にその方法の詳細を示す。
【0044】
ERG5遺伝子断片のPCRによる合成には、フォワードプライマーERG5−5A(配列番号1)、リバースプライマーERG5−3A(配列番号2)を用いた。このプライマーの組み合わせでERG5の蛋白質コード領域を含み、開始コドンの4塩基前から終始コドンの3塩基後までを増幅することができる。また、5’側に制限酵素BamH I、Sac Iの認識配列を、3’側にKpn Iの認識配列を含んだ形で合成することができる。
【0045】
ERG6遺伝子断片のPCRによる合成には、フォワードプライマーERG6−5B(配列番号3)、リバースプライマーERG6−3B(配列番号4)を用いた。このプライマーの組み合わせでERG6の蛋白質コード領域を含み、開始コドンの11塩基前から終始コドンの12塩基後までを増幅することができる。また、5’側にに制限酵素BamH I、Pst Iの認識配列を、3’側にEcoR Iの認識配列を含んだ形で合成することができる。PCRはTaq ポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、▲1▼94℃、2分、▲2▼94℃、1分、▲3▼55℃、2分、▲4▼72℃、4分、▲2▼から▲4▼の反応を30回繰り返し、▲5▼72℃、4分間反応させた後、4℃で冷却の条件で反応を行った。次に、PCR産物をアガロースゲル電気泳動し、約1.11kbpのERG5遺伝子断片および約1.2kbpのERG6遺伝子断片を確認した。
【0046】
(3)遺伝子破壊用組換え体プラスミドpSK−erg5::TRP1、pUC−erg6::HIS3の調製
pBluescript II SK+(東洋紡社製)を制限酵素Sac I(タカラバイオ社製、以下、特に記載のない限り、制限酵素はタカラバイオ社製である)およびKpn Iで切断したものと、PCR合成したERG5遺伝子断片をSac IおよびKpn Iで切断したものとをTaKaRa DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)により連結した。これをエッシェリシア・コリINVαF’(インビトロジェン社製)に形質転換し、50mg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、2% 寒天、0.005N NaOH)上に生育したコロニーからアルカリ−SDS法でプラスミドを抽出した。アガロースゲル電気泳動により、制限酵素Sac IおよびKpn Iによる切断で約2.9kbpと1.1kbpの断片が確認でき、且つPst IおよびSca Iによる切断で約2.57kbpと1.32kbpの断片が確認できたものを目的のプラスミドとし、pSK−ERG5と名付けた。
【0047】
次に、pSK−ERG5をBgl IIおよびHinc IIで切断し、ERG5遺伝子の内部371bpを欠失させた。この欠失部分に、プラスミドpSK−TRP1をBamH IおよびHincIIで切断して得た約0.91kbpの酵母トリプトファン合成系の遺伝子であるTRP1遺伝子断片をTaKaRa DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)により和合連結させた。なお、pSK−TRP1は、TRP1遺伝子を含むプラスミドpJJ281(Jones, S. and Prakash,L. (1990) Yeast 6, 363−366の記載に準じて調製)をSac IおよびBgl IIで切断して得た約0.87kbpのTRP1遺伝子断片を、pBluescript II SK+をSac IおよびBamHIで切断したものと和合連結させたプラスミドである。
pSK−ERG5とTRP1遺伝子断片との和合連結物を上記と同様にエッシェリシア・コリINVαF’に形質転換し、得られたコロニーからプラスミド抽出をおこなった。アガロースゲル電気泳動により、制限酵素EcoR Iによる切断で約3.68kbpと0.86kbpの断片が確認でき、且つSac IおよびKpn Iによる切断で約2.9kbpと1.63kbpの断片が確認できたものを目的のプラスミドとし、pSK−erg5::TRP1と名付けた(図3)。
【0048】
pUC−erg6::HIS3に関しても、pSK−erg5::TRP1の作成と同様に、まずpUC19(タカラバイオ社製)をPst IおよびEcoR Iで切断したものと、PCR合成したERG6遺伝子断片をPst IおよびEcoR Iで切断したものとをTaKaRa DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)により連結した。連結物をエッシェリシア・コリINVαF’に形質転換し、得られたコロニーからプラスミド抽出をおこなった。アガロースゲル電気泳動により、制限酵素Pst IおよびEcoR Iによる切断で約2.66kbpと1.2kbpの断片が確認でき、且つSca Iによる切断で約1.8kbpの断片が確認できたものを目的のプラスミドとし、pUC−ERG6Bと名付けた。
【0049】
次に、pUC−ERG6BをNspV(東洋紡社製)およびXba Iで切断し、ERG6遺伝子の内部473bpを欠失させた。この欠失部分に、pUC18−HIS3から酵母ヒスチジン合成系の遺伝子であるHIS3遺伝子断片をCla IおよびXba Iで切断して得た約1.53kbpのDNA断片をTaKaRa DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)により和合連結させた。
【0050】
なお、pUC18−HIS3は以下の方法で作成した。プラスミドpYehis2(Kasunic, D.A. and Kushner, S. R. (1980) Gene 12, 1−10の記載に準じて調製)を鋳型として、フォワードプライマーHIS3−5B(配列番号5)、リバースプライマーHIS3−3A(配列番号6)を用いてPCRによるHIS3遺伝子合成をおこなった。このプライマーの組み合わせでHIS3の蛋白質コード領域とプロモーター、ターミネーター領域を含む配列を増幅することができる。具体的には、プロモーター領域として蛋白質コード領域の470bp上流から、ターミネーター領域として蛋白質コード領域の390bp下流を含む配列である。また、5’側に制限酵素BamH Iの認識配列を、3’側にEcoR I、Cla Iの認識配列を含んだ形で合成することができる。HIS3遺伝子のPCRはPyrobest DNA ポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、上記(2)と同じ温度条件で反応をおこなった。
【0051】
PCR合成したHIS3遺伝子断片をEcoR IおよびBamH Iで切断したものと、pUC18(タカラバイオ社製)をEcoR IおよびBamH Iで切断したものとをTaKaRa DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)により連結し、上記と同様にエッシェリシア・コリINVαF’に形質転換し、得られたコロニーからプラスミド抽出をおこなった。アガロースゲル電気泳動により、制限酵素EcoR IおよびBamH Iによる切断で約2.66kbpと1.53kbpの断片が確認でき、且つPst Iによる切断で約2.99kbpと1.20kbpの断片が確認できたものを目的のプラスミドとした。
【0052】
pUC−ERG6BとHIS3遺伝子断片との和合連結物を上記と同様にエッシェリシア・コリINVαF’に形質転換し、得られたコロニーからプラスミド抽出をおこなった。アガロースゲル電気泳動により、制限酵素Pst Iによる切断で約3.96kbpと0.93kbpの断片が確認でき、且つHind IIIおよびXba Iによる切断で約2.81kbpと1.12kbpと0.77kbpと0.19kbpの断片が確認できたものを目的のプラスミドとし、pUC−erg6::HIS3と名付けた(図3)。
【0053】
(4)遺伝子破壊用断片erg5::TRP1の導入によるERG5遺伝子破壊株KAΔ5−5株の作成
上記(3)で作成したプラスミドpSK−erg5::TRP1をSac IおよびKpn Iで切断し、アガロースゲルから約1.63kbpのDNA断片(erg5::TRP1)をGENE CLEAN II KIT(フナコシ社製)により抽出した。このDNA断片をサッカロミセス・セレビシエKA311A株(MATa his3 leu2 trp1 ura3)に酢酸リチウム法(Ito, H., Fukuda,Y., Murata, K. and Kimura, A. (1983) J. Bacteriol. 153(1), 163−168)で形質転換し、各20mg/mlのL−ヒスチジン、L−ロイシン、ウラシルを含むSD寒天培地(0.17% YEAST NITROGEN BASE w/o AMINO ACIDS(DIFCO社製)、2% グルコース、2% 寒天)に播き、30℃で3日から5日間培養した。
【0054】
寒天培地上で生育してきたトリプトファン非要求性のコロニーをYPD液体培地(1% 酵母エキス、2% ポリペプトン、2% グルコース)5mlに植菌し、30℃で16時間、振とう培養をおこなった。この培養液から上記(1)で述べた方法で染色体DNAを抽出した。これを鋳型としてフォワードプライマーERG5−5AとリバースプライマーERG5−3Aの組み合わせでPCRを行い、ERG5遺伝子座上での相同組換えの有無を調べた。PCRは上記(2)で述べた条件でおこなった。比較対照として、KA311A株の染色体DNA、プラスミドpSK−ERG5、pSK−erg5::TRP1を鋳型にして、同様にPCRをおこなった。
PCR産物をアガロースゲル電気泳動で解析した結果、KAΔ5−5と名付けた形質転換体はpSK−erg5::TRP1と同じ約1.63kbpのDNA断片が検出された(図4参照)。従って、KAΔ5−5株は相同組換えによりERG5遺伝子が破壊されたことが確認できた。
【0055】
(5)KAΔ5−5株への遺伝子破壊用断片erg6::HIS3の導入による二重遺伝子破壊株KAΔ5Δ6−1, KAΔ5Δ6−4, KAΔ5Δ6−5株の作成
上記(3)で作成したプラスミドpUC−erg6::HIS3をSca IおよびEcoR Iで切断し、アガロースゲルから約2.09kbpのDNA断片(erg6::HIS3)をGENE CLEAN II KIT(フナコシ社製)により抽出した。このDNA断片を上記(4)で作成したKAΔ5−5株に酢酸リチウム法(Ito, H., Fukuda, Y., Murata, K. and Kimura, A. (1983) J. Bacteriol. 153(1), 163−168)で形質転換し、各20mg/mlのL−ロイシン、ウラシルを含むSD寒天培地に播き、30℃で5日から7日間培養した。
【0056】
寒天培地上で生育してきたヒスチジンおよびトリプトファン非要求性のコロニーをYPD液体培地(1% 酵母エキス、2% ポリペプトン、2% グルコース)5mlに植菌し、30℃で16時間、振とう培養をおこない、上記(4)と同様に染色体DNAを抽出した。これを鋳型としてフォワードプライマーERG6−5BとリバースプライマーERG6−3Bの組み合わせでPCRを行い、ERG6遺伝子座上での相同組換えの有無を調べた。PCRは上記(2)で述べた条件でおこなった。比較対照として、KA311A株、KAΔ5−5株の染色体DNA、プラスミドpUC−ERG6、pUC−erg6::HIS3を鋳型にして、同様にPCRをおこなった。
【0057】
PCR産物をアガロースゲル電気泳動で解析した結果、KAΔ5Δ6−1、KAΔ5Δ6−4、KAΔ5Δ6−5と名付けた形質転換体はpUC−erg6::HIS3と同じ約2.23kbpのDNA断片が検出された(図4参照)。従って、KAΔ5Δ6−1、KAΔ5Δ6−4、KAΔ5Δ6−5株は相同組換えによりERG6遺伝子が破壊されたことが確認できた。
【0058】
実施例2  erg5 erg6 二重変異株へのシロイヌナズナ由来ステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子の導入
(1)シロイヌナズナ全RNAからのステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子cDNAの調製
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana, cv, Columbia)をパーライトとバーミキュライトの1:1混合土上で発芽させ、23℃、短日条件で弱光下4週間生育させ、花芽を形成させた。この植物体全体を取り、フェノール/SDSとLiClを用いる方法(Chirgwin, J.M., Przybyla, A.E., MacDonald, R.J. (1979) Biochemistry 18, 5294−5299)で全RNAを抽出した。
【0059】
次いで、First−strand cDNA合成キット(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用い、3’側プライマーとしては45塩基からなる合成オリゴマー(配列番号7)を用いてFirst−strand cDNAを合成した。このFirst−strand cDNAを鋳型として、5’側プライマーとしては57塩基からなる合成オリゴマー(配列番号8)を、3’側プライマーとしては前述の45塩基からなる合成オリゴマーを用い、開始コドンから終止コドンまでを含み5’端に制限酵素Not Iサイトを、3’端に制限酵素EcoR Iサイトを持つ二重鎖cDNA断片Δ7−1を合成した。First−strand合成反応の溶液組成および反応条件は全てcDNA合成キットのプロトコルに従って行った。二重鎖合成反応に関しては、反応液組成はcDNA合成キットのプロトコルに従い、PCR反応は最初に94℃で1分反応させたあと、94℃30秒、60℃2分、72℃2分のサイクルを35回行い、72℃で10分反応させることで行った。
【0060】
(2)ステロールΔ7−リダクターゼcDNAを含む酵母用発現ベクターpAD−Δ7の調製
PCR合成したステロールΔ7−リダクターゼcDNA断片Δ7−1をTAクローニングキット with INVαF’ E.coli(インビトロジェン社製)を用いてクローン化し、プラスミドpCR−Δ7を作成した。
【0061】
pCR−Δ7をNot Iで切断後、EcoR Iによる部分切断をおこない、約1.2kbpのDNA断片を得た。酵母導入用ベクターには、酵母用マーカー遺伝子としてロイシン合成系のLEU2遺伝子、大腸菌用マーカー遺伝子としてアンピシリン耐性遺伝子を含み、外来遺伝子を酵母細胞内で構成的に発現させるためのアルコールデヒドロゲナーゼ1遺伝子(ADH1)のプロモーター、ターミネーター領域を含む2μmベクターpADNS(Colicelli, J., Birchmeier, C., Michaeli, T., O’Neill, K., Riggs, M. and Wigler, M. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A. 86(10), 3599−3603の記載に準じて調製)を改変したpADNSΔE (Sugiyama, M. and Nikawa, J. (2001) J. Bacteriol. 183(17), 4985−4993の記載に準じて調製) を用いた。
【0062】
pADNSΔEをNot I およびEcoR Iで切断したものと、上記1.2kbpのDNA断片とをTaKaRa DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)により連結し、上記と同様にエッシェリシア・コリINVαF’に形質転換し、得られたコロニーからプラスミド抽出をおこなった。アガロースゲル電気泳動により、制限酵素EcoR Iによる切断で約8.8 kbpと0.43kbpの断片が確認でき、且つCla Iによる切断で約5.4 kbpと3.9 kbpの断片が確認できたものを目的のプラスミドとし、このプラスミドをpAD−Δ7と名付けた(図4)。
【0063】
(3)二重遺伝子破壊株KAΔ5Δ6−4へのプラスミドpAD−Δ7の導入
上記(2)で作成したプラスミドpAD−Δ7を実施例1で作成したKAΔ5Δ6−4株に酢酸リチウム法(Ito, H., Fukuda, Y., Murata, K. and Kimura, A. (1983) J. Bacteriol. 153(1), 163−168)で形質転換し、20mg/mlのウラシルを含むSD寒天培地に播き、30℃で3日から5日間培養した。プラスミドが確実に導入されていることを調べるために、生育してきたコロニーを再度20mg/mlのウラシルを含むSD寒天培地に移し、ロイシン非要求性を確認し、プラスミドpAD−Δ7が導入された二重遺伝子破壊株KAΔ5Δ6−4(pAD−Δ7/KAΔ5Δ6−4)を得た。
【0064】
実施例3 親株、二重遺伝子破壊株、遺伝子導入株の YPD 培地における増殖速度の比較
親株(KA311A株)、二重遺伝子破壊株(KAΔ5Δ6−4株)、遺伝子導入株(pAD−Δ7/KAΔ5Δ6−4株)の増殖を比較するために、各株をSD培地で2日間前培養を行い、YPD液体培地にOD600が約0.3になるよう植菌した。30℃で培養を行い、培養開始6時間までは2時間毎に、6時間から12時間までは1.5時間毎に、その後は24時間、30時間、36時間、48時間後に、分光光度計(UV−1600, 島津)でOD600値を測定した。図4に示すように、二重遺伝子破壊株は親株よりも増殖が劣っていたが、シロイヌナズナ由来ステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子を導入した組換え酵母は親株と同程度に増殖することが確認できた(図5)。
【0065】
以上の結果より、ERG5、ERG6遺伝子の二重破壊により二重遺伝子破壊株は若干の生育の低下が認められたものの死には至らないことから、遺伝子破壊を起因とするステロール組成の変化、即ち、細胞中に含まれる主ステロールがエルゴステロールからコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルに変わることによる酵母の生育への影響は比較的小さいものと推定された。さらに、同二重遺伝子破壊株にステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子を導入することにより生育の低下が回復することが明らかになった。
【0066】
実施例4 親株、二重遺伝子破壊株、遺伝子導入株の生産するステロール類の 分析
erg5 erg6遺伝子二重破壊株(KAΔ5Δ6−4株)、およびステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子を導入した二重遺伝子破壊株(pAD−Δ7/KAΔ5Δ6−4株)をあらかじめSD培地で2日培養し、種菌を作成したのち、YPD液体培地に全量接種して30℃で2日培養した。酵母培養液を4℃、3000rpmで遠心分離し、10〜13gの酵母菌体を回収した。酵母菌体の2〜3倍量(20〜40ml)の70%アセトン水溶液を加えて海砂とともに乳鉢中で磨砕した。磨砕液を3重のミラクロスで濾過したのち、ミラクロス上の固形物に再度70%アセトン水溶液を加えてよく混ぜ30分間超音波をかけ再度濾過して、最初の濾液と一緒にした。この濾液を室温で減圧濃縮機にかけて液量が1ml位になるまでアセトンを飛ばした。
【0067】
この試料に酢酸エチルを加え脂質を再抽出し、濃縮した後、ヘキサン−ジエチルエーテル−酢酸(体積比80:20:1)の溶媒系を用いたシリカゲル薄層クロマトグラフィーにかけ、ローダミン6Gや2’,7’−ジクロロフルオロセインなどで発色させた。発色程度を指標としてステロール画分を掻き取り、クロロホルム:メタノール:エーテル(体積比1:1:1)溶出溶媒で抽出し、0.5mgをガスクロマトグラフィーあるいは、GC/MSにかけステロールの分析を行った。
【0068】
標準試料としては、デスモステロール、および、エルゴステロールを用いて、その保持時間とサンプルのクロマトグラムに現れるピークの保持時間を比較したところ、二重破壊株酵母からの抽出サンプルでは、図6aに示すとおりコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルの保持時間と考えられる位置に主ピークが現れた。また、デスモステロールの保持時間と一致する位置にもピークが現れた。
【0069】
さらにGC/MS分析の結果、すなわち分子量および開裂パターンから、組換え酵母の主ステロールは確かにデスモステロールであることが確認できた(図7a)。さらに、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルと考えられたピークに関しても、GC/MS分析の結果から、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルであることが明らかになった(図7b)。
【0070】
これらのピークの面積計算をおこなったところ、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルは全ステロールの60%、デスモステロールは全ステロールの10%を占めていることがわかった。このことより、酵母のERG5、ERG6遺伝子の二重破壊により、酵母におけるエルゴステロール方向への合成を停止させ、チモステロールからコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル合成の方向にステロールの代謝経路を変えることが可能であることが明らかになった。
【0071】
一方、ステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子を導入した二重破壊株からの抽出サンプルでは、図6bに示すとおりデスモステロールの保持時間と一致する位置に主ピークが現れた。また、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルの保持時間と考えられる位置にもピークが現れた。これらのピークの面積計算をおこなったところ、デスモステロールは全ステロールの71%、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルは全ステロールの20%を占めていることがわかった。このことより、二重遺伝子破壊株へのステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子の導入により、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルの大部分が、デスモステロールに変換されることが明らかになった。
【0072】
実施例5 ステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子を導入した erg5 erg6 二重遺伝子破壊株へのステロールΔ5−デサチュラーゼ遺伝子の導入
(1)酵母染色体DNAからのステロールΔ5−デサチュラーゼ遺伝子の断片の調製
ステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子を導入したERG5 ERG6二重遺伝子破壊株pAD−Δ7/KAΔ5Δ6−4株中に存在する約20%のコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルを全てデスモステロールに変換させる目的で、ステロールΔ5−デサチュラーゼを過剰発現させるために、サッカロミセス・セレビシエ由来ステロールΔ5−デサチュラーゼをコードする遺伝子(ERG3)を含む遺伝子断片をPCRにより合成、単離した。
鋳型DNAとして実施例1(1)で取得したKA311A株の染色体DNAを用い、フォワードプライマーERG3−5A(配列番号9)、リバースプライマーERG3−3A(配列番号10)により、Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社)を用いて、実施例1(2)の反応条件でPCRを行った。これら2つのプライマーにより、ERG3遺伝子の開始コドンから終始コドンまでを含む1098bpを増幅することができる。また、5’側に制限酵素Hind IIIの認識配列を、3’側にNot Iの認識配列を含んだ形で合成することができる。ERG3遺伝子断片合成の確認は、アガロースゲル電気泳動で行った。
【0073】
(2)ステロールΔ5−デサチュラーゼ遺伝子過剰発現ベクターpAU−ERG3の調製
PCR合成したERG3遺伝子断片をTAクローニングキット with INVαF’ E. coli(インビトロジェン社製)を用いてクローン化し、プラスミドpCR−ERG3を作成した。
酵母用ベクターとして、酵母用マーカー遺伝子にウラシル合成系のURA3遺伝子を、大腸菌用マーカー遺伝子にアンピシリン耐性遺伝子を含むpAD−URAを用いた。このベクターは、多コピー型酵母−大腸菌シャトルベクターpRS426 (Christianson, T. W., Sikorski, R. S., Dante, M., Shero, J. H. and Hieter, P. (1992) Gene 110(1), 119−122)をSac IとKpn Iで切断したのち、DNA polymerase I(タカラバイオ社製)で平滑化した部分に、pADNSΔEのADH1プロモーター/マルチクローニングサイト/ADH1ターミネーターをBamH Iで切断しDNA polymerase I(タカラバイオ社製)で平滑化した約2kbpの断片をTaKaRa DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)で連結して作成したものである。
pCR−ERG3をHind IIIで切断して得た約1.17kbpの断片と、pAD−URAをHind IIIで切断した後Alkaline Phosphatase (E. coli C75)(タカラバイオ社製)で処理したものとをTaKaRa DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)で連結し、上記と同様にエッシェリシア・コリINVαF’に形質転換し、得られたコロニーからプラスミド抽出を行った。アガロースゲル電気泳動により、制限酵素Hind IIIによる切断で約1.17kbpと7.66kbpの断片が確認でき、且つPst Iによる切断で約4.18kbpと4.66kbpの断片が確認できたものを目的のプラスミドとし、これをpAU−ERG3と名付けた(図8)。
【0074】
(3)プラスミドpAD−Δ7を導入したerg5 erg6二重遺伝子破壊株(pAD−Δ7/KAΔ5Δ6−4株)へのプラスミドpAU−ERG3の導入
上記(2)で作成したプラスミドpAU−ERG3を実施例2で作成したpAD−Δ7/KAΔ5Δ6−4株に酢酸リチウム法(Ito, H., Fukuda, Y., Murata, K. and Kimura, A. (1983) J. Bacteriol. 153(1), 163−168)で形質転換し、SD寒天培地に播き、30℃で3日から5日間培養した。プラスミドが確実に導入されていることを調べるために、生育してきたコロニーを再度SD寒天培地に移し、ウラシル非要求性を確認し、プラスミドpAD−Δ7およびpAU−ERG3が導入されたerg5 erg6二重遺伝子破壊株E3−4.1(pAD−Δ7, pAU−ERG3/KAΔ5Δ6−4)を得た。
【0075】
実施例6 ステロールΔ5−デサチュラーゼ遺伝子過剰発現株 E3−4.1 の生産するステロール類の分析
実施例4と同様に、ステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子およびステロールΔ5−デサチュラーゼ遺伝子が過剰発現されたerg5 erg6二重遺伝子破壊株E3−4.1(pAD−Δ7, pAU−ERG3/KAΔ5Δ6−4)を培養し、約10gの酵母菌体を回収した。菌体の2〜3倍量(20〜30ml)のクロロホルムを加えて海砂とともに乳鉢中で磨砕した。磨砕液を10分間超音波にかけたのち、デカンテーションによりクロロホルム層を回収し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。
この試料を0.5mlのクロロホルムに溶解し、ヘキサン−ジエチルエーテル−酢酸(体積比80:26:1)の溶媒系を用いたシリカゲル薄層クロマトグラフィーをおこない、リンモリブデン酸で発色させた。ステロール画分を掻き取り、2−3mlのアセトンで溶出し、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。1mlのクロロホルムに再溶解したのち、含まれるシリカゲル等を除くため、試料をメンブレンフィルターで濾過した。さらに窒素ガス充填により溶媒を除去し、0.02mlのアセトンに溶解し、その十分の一量をガスクロマトグラフィー(SHIMADZU CG−14B、島津製作所製)にかけステロールの分析をおこなった。
標準試料としては、デスモステロール、エルゴステロール、コレステロール、および化学合成したコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルを用いて、その保持時間とサンプルのクロマトグラムに現れるピークの保持時間を比較した。その結果、図9cに示すとおりデスモステロールの保持時間と一致する位置に主ピークが現れたが、図9bのpAD−Δ7/KAΔ5Δ6−4株で見られたコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルの保持時間と考えられる位置のピークはほとんど消失していた。図9c中のピークの面積計算をおこなったところ、デスモステロールは全ステロールの90%を占めていることがわかった。このことより、ステロールΔ7−リダクターゼ遺伝子を導入したerg5 erg6二重遺伝子破壊株に更にステロールΔ5−デサチュラーゼ(ERG3)遺伝子を過剰発現させることにより、変換されずに残っていたコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルがほとんど全てデスモステロールに変換されたことが明らかになった。
【0076】
【配列表】
Figure 2004141125
【0077】
Figure 2004141125
【0078】
Figure 2004141125
【0079】
Figure 2004141125
【0080】
Figure 2004141125
【0081】
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【0082】
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【0083】
Figure 2004141125
【0084】
Figure 2004141125
【0085】
Figure 2004141125
【0086】
Figure 2004141125

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により真菌類で生産されるステロール類の化学構造を示す図である。
【図2】代謝工学的に改変された酵母によるデスモステロールの生合成経路を示す図である。
【図3】本発明に用いたプラスミドベクターpSK−erg5::TRP1、pUC−erg6::HIS3及びpAD−Δ7の構成を示す図である。
【図4】サッカロミセス・セレビシエ染色体上のERG5およびERG6遺伝子の遺伝子破壊の結果を示す電気泳動写真である。図中、レーン1はpSK−ERG5、2はpSK−erg5::TRP1、3は親株KA311A、4はKAΔ5−5、5は二重遺伝子破壊株KAΔ5Δ6−1、6は二重遺伝子破壊株KAΔ5Δ6−4、7は二重遺伝子破壊株KAΔ5Δ6−5、8はpUC−ERG6、9はpUC−erg6::HIS3、11はKAΔ5−5、12は二重遺伝子破壊株KAΔ5Δ6−1、13は二重遺伝子破壊株KAΔ5Δ6−4、14は二重遺伝子破壊株 KAΔ5Δ6−5を示す。
【図5】サッカロミセス・セレビシエの親株、遺伝子破壊株、遺伝子導入株のYPD培地における増殖速度の比較を示す図である。図中、「KA311A」は親株、「Disruptant」はerg5 erg6二重遺伝子破壊株(KAΔ5Δ6−4)、「Δ7−red」はシロイヌナズナ由来ステロール Δ7−リダクターゼ遺伝子を導入したerg5 erg6二重遺伝子破壊株(pAD−Δ7/KAΔ5Δ6−4)を示す。
【図6】ガスクロマトグラフィーによるステロール類の分析結果を示す図である。図中、a)はKAΔ5Δ6−4株の生産するステロール類の分析結果を示し、b)はpAD−Δ7/KAΔ5Δ6−4株の生産するステロール類の分析結果を示す。
【図7】MSスペクトルによるステロール類生産の検出結果を示す図である。図中、a)はデスモステロールに相当するピークのMSスペクトルを示し、b)はコレスタ−7,24−ジエン−3β−オルに相当するピークのMSスペクトルを示す。
【図8】本発明に用いたプラスミドベクターpAU−ERG3の構成を示す図である。
【図9】ガスクロマトグラフィーによるステロール類の分析結果を示す図である。図中、a)はKAΔ5Δ6−4株の生産するステロール類の分析結果を示し、b)はpAD−Δ7/KAΔ5Δ6−4株の生産するステロール類の分析結果を示し、c)はE3−4.1株(pAD−Δ7, pAU−ERG3/KAΔ5Δ6−4)の生産するステロール類の分析結果を示す。

Claims (13)

  1. ステロールC−22デサチュラーゼおよびステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性を低減化するように代謝工学的に改変されていることを特徴とする真菌類。
  2. ステロールC−24メチルトランスフェラーゼの活性を低減化し、ステロールΔ7−リダクターゼを高発現するように代謝工学的に改変されていることを特徴とする真菌類。
  3. ステロールC−22デサチュラーゼおよびステロールC−24メチルトランスフェラーゼの両方の活性を低減化し、かつステロールΔ7−リダクターゼを高発現化するように代謝工学的に改変されていることを特徴とする真菌類。
  4. ステロールΔ5−デサチュラーゼを高発現化するように代謝工学的に改変されている請求項1〜3のいずれかに記載の真菌類。
  5. 代謝工学的に改変されている真菌類が、サッカロミセス属、デバリオマイセス属、トルロプシス属、または、ピキア属に属する酵母である請求項1〜4のいずれかに記載の真菌類。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の真菌類を培地中で培養し、培養物からチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物を採取することを特徴とするチモステロールまたはコレスタ−7,24−ジエン−3β−オル若しくはその由来生合成化合物の製造方法。
  7. コレスタ−7,24−ジエン−3β−オル由来生合成化合物が、デスモステロールである請求項6に記載の方法。
  8. 培地が、炭素源として糖質またはアルコールを含むものである請求項6または7に記載の方法。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載の真菌類またはその処理物を、チモステロール、コレスタ−7,24−ジエン−3β−オルまたはコレスタ−5,7,24−トリエン−3β−オルに接触させて、デスモステロールを生成蓄積させ、これを採取することを特徴とするデモステロールの製造方法。
  10. 請求項6〜9のいずれかに記載の方法で得られたステロール類を、ステロールΔ24−リダクターゼに接触させることによりステロール類の24(25)位の二重結合を還元することを特徴とする、ステロール類の製造方法。
  11. 製造するステロール類が、コレステロールである請求項10に記載の製造方法。
  12. 請求項6〜9のいずれかに記載の方法で得られたステロール類の側鎖二重結合を水酸化することにより25−ヒドロキシステロール、又は24,25−ジヒドロキシステロールに変換することを特徴とする、25−ヒドロキシステロール、又は、24,25−ジヒドロキシステロールの製造方法。
  13. 請求項12に記載の方法で得られた25−ヒドロキシステロール、又は24,25−ジヒドロキシステロールの1α位を水酸化し、B環を開環し、最終的に25−ヒドロキシビタミンD類、1α,25−ジヒドロキシビタミンD類、25−ヒドロキシコレカルシフェロール、又は、1α,25−ジヒドロキシコレカルシフェロールを含む活性型ビタミンD類に変換することを特徴とする、活性型ビタミンD類の製造方法。
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