JP2004138575A - クロマトグラフィー用担体、前処理用担体及びキット - Google Patents
クロマトグラフィー用担体、前処理用担体及びキット Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004138575A JP2004138575A JP2002305625A JP2002305625A JP2004138575A JP 2004138575 A JP2004138575 A JP 2004138575A JP 2002305625 A JP2002305625 A JP 2002305625A JP 2002305625 A JP2002305625 A JP 2002305625A JP 2004138575 A JP2004138575 A JP 2004138575A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- carrier
- chromatography
- carboxylic acid
- pretreatment
- carrier material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B01—PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
- B01J—CHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
- B01J20/00—Solid sorbent compositions or filter aid compositions; Sorbents for chromatography; Processes for preparing, regenerating or reactivating thereof
- B01J20/281—Sorbents specially adapted for preparative, analytical or investigative chromatography
- B01J20/286—Phases chemically bonded to a substrate, e.g. to silica or to polymers
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B82—NANOTECHNOLOGY
- B82Y—SPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
- B82Y30/00—Nanotechnology for materials or surface science, e.g. nanocomposites
Abstract
【課題】アルカリ条件下でもオクタデシル基などの疎水性場が脱離することなく、分解されないため、分離性能が低下することなく、担体寿命が長く、簡便かつ短時間で製造が可能であり、従って製造コストが低いクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体:及びその製造用キットを提供すること。
【解決手段】カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物からなる担体材料、又は前記金属化合物を被覆してなる担体材料の表面に、カルボン酸化合物を結合させてなるクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体;及び、カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物からなる担体材料、又は前記金属化合物を被覆してなる担体材料と、該カルボン酸化合物とを含むクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体製造用キット。
【解決手段】カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物からなる担体材料、又は前記金属化合物を被覆してなる担体材料の表面に、カルボン酸化合物を結合させてなるクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体;及び、カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物からなる担体材料、又は前記金属化合物を被覆してなる担体材料と、該カルボン酸化合物とを含むクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体製造用キット。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロマトグラフィーに用いることが出来る担体又は前処理用担体に関し、さらに詳細には、酸化アルミニウム、酸化銀などの金属化合物で表面を被覆した担体材料の表面、又は酸化アルミニウム、酸化銀などの金属化合物からなる担体材料の表面にカルボン酸化合物を結合させてなるクロマトグラフィー用担体、前処理用担体及び該クロマトグラフィー用担体又は前処理用担体製造用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、多孔質シリカ表面上の水酸基などの官能基にモノクロロジメチルオクタデシルシランなどを化学的に結合させている。この反応により生じた結合は、アルカリ性溶離液で分解を受け、担体表面からオクタデシル基が容易に脱離する。そのために、溶離液としてpHが8以上の溶離液を使用することは困難である。
pHが8以上の溶離液を使用する場合には、担体の材料として、架橋型高分子化合物を用いることなどが行われているが、シリカ系の担体と比較して高価格で分離性能が劣る。
モノクロロジメチルオクタデシルシラン基などをシリカの水酸基に結合させる際、従来の合成法では、多いときには全体の官能基の50%にオクタデシル基が結合していない残存シラノール基が生じる。残存シラノール基は、クロマトグラフィーの分離性能に悪影響を及ぼす場合が多く、トリメチルクロロシランなどで処理することによってエンドキャッピング処理を行い、除去することが一般的であるが、それでも立体障害などが原因で完全に除去することは困難である。
【0003】
従来のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、多孔質シリカ表面上の水酸基などの官能基にモノクロロジメチルオクタデシルシランなどを化学的に結合させる際、モノクロロジメチルオクタデシルシランやトリメチルクロロシラン等の高価な試薬を使用し、なおかつ環境負荷の大きいトルエンなどの有機溶媒を使用し、高温、長時間という非常に高コストな合成法で合成している。さらに、反応は脱水条件が必須であり、特殊な装置を多数使用している。
従来のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、主として多孔質シリカを使用することが多く、酸性あるいはアルカリ性条件下でシリカの分解が起こり、クロマトグラフィー担体としての分離性能や寿命、前処理用担体としての吸着や脱塩等の性能が低下する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の多孔質シリカを担体としたクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、シリカ表面の水酸基に対してモノクロロジメチルオクタデシルシラン等の疎水性化合物を化学的に結合させている。この結合、すなわちSi−O−Si結合は、アルカリ性条件下で分解を受け、その結果、シリカ表面に結合させたオクタデシル基などの疎水性場がシリカ表面から脱離し、分離が悪くなるという欠点がある。本発明は、酸性やアルカリ性条件下でもオクタデシル基などの疎水性分離場が脱離しないクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体を開発することを課題としている。
【0005】
従来の多孔質シリカを担体としたクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、アルカリ条件下で分解し、分離及び吸着性能が低下し、担体としての寿命が短くなる問題点があった。本発明は、これらの問題点を解決することも課題としている。
従来の技術では、残存シラノール基由来の問題を解決するために、トリクロロシランなどで処理すること、すなわち、エンドキャッピング処理を行っている。エンドキャッピング処理を行うことで高品質の担体の製造が可能であるが、そのために必要な行程が多くなり、最終製品の価格は高くなってしまう。また、エンドキャッピング処理を行ったとしても、立体障害などの様々な要因が原因で未キャッピングの残存シラノール基が残ることが多い。本発明は、これらの問題点を解決することも課題としている。
【0006】
従来の技術によるモノクロロジメチルオクタデシルシランなどによる疎水性場の形成やエンドキャッピング処理は、脱水したトルエンなどの有機溶媒を使用して、110℃、5時間以上という過酷な条件下で行っている。この様な合成法では、高価な試薬の使用、環境に高負荷を与える有機溶媒の使用やその廃棄の処理費用、高温、長時間を必要とする合成条件、これらの諸条件が、最終製品を高価格にしている。本発明は、これらの問題点を改善し、安価な試薬を使用して、室温合成、短時間合成が可能な方法を開発することも課題としている。
従来のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、オクタデシル基などをシリカに結合した後、カラムに充填している。この方法では、必要時に担体の製造から行う必要があり、非効率的である。本発明は、この問題を解決することも課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、クロマトグラフィー用担体材料又は前処理用担体材料に金属化合物を被覆してなる担体材料の表面、あるいは金属化合物からなる担体材料の表面にカルボン酸化合物を反応させて結合させてなるクロマトグラフィー用担体または前処理用担体が上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物からなる担体材料、又は前記金属化合物を被覆してなる担体材料の表面に、カルボン酸化合物を結合させてなるクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体を提供するものである。
本発明はまた、カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物からなる担体材料、または前記金属化合物を被覆してなる担体材料と、該カルボン酸化合物とを含む、クロマトグラフィー用担体または前処理用担体製造用キットを提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するクロマトグラフィー用担体材料または前処理用担体材料は、クロマトグラフィーに用いることが出来る担体材料であれば特に限定されない。例えば、従来からあるシリカ、多孔質シリカ、ガラス、セルロース、セラミックス、カーボン、多孔質架橋型高分子化合物(例えば、スチレンジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリレート等)からなる担体の他、酸化アルミニウム、酸化銀等の金属酸化物を使用することが出来る。担体材料の形状は任意であり、繊維状、球状、破砕状、いずれの形状のものでも良い。繊維状の場合には、その直径は1nm〜1mm程度が適当である。球状、破砕状の担体材料ではその粒子サイズは、1nm〜1mm程度が適当である。更に、細管の内壁やマイクロチップ内の細管の内壁を担体材料として使用することも出来る。
【0009】
カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物以外の担体材料を使用する場合には、担体材料表面にカルボン酸化合物と反応しうる金属化合物を被覆する。担体材料を金属化合物で被覆する方法は特に限定されない。例えば、化学蒸気堆積(CVD)法、スパッタコーティング法、電気的に被覆する方法、ゾルゲル法等の方法を適宜使用できる。金属化合物の被覆量又は厚さは、クロマトグラフィー用担体又は前処理用担体として十分な性質を発揮すれば良く、特に限定されないが、1mg/m2〜2000g/m2程度、又は厚さ0.05nm〜10μm程度が適当である。
【0010】
カルボン酸化合物としては、金属化合物に結合できるものであれば良く、特に限定されないが、脂肪酸が良く、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、また、枝分かれ構造をしていても良い。特に炭素原子数1〜40の脂肪酸が好ましく、具体的には、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。
また本発明に使用されるカルボン酸化合物は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの官能基を一種又は二種以上有していても良い。官能基の数は1つでも2つ以上でも良い。これらの官能基はクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体の目的とする性質に合わせて適宜選択することができる。
【0011】
カルボン酸化合物を溶解させる溶媒は、カルボン酸化合物を溶解しうるものであれば良く、例えば、アセトン、クロロホルム、アセトニトリル、メタノール、エタノールなどを用いることが出来る。これらのうち、炭素原子数が18以下の脂肪酸を使用する場合は、エタノール又はアセトンが、炭素原子数が19以上の脂肪酸を使用する場合は、クロロホルムが好ましい。
カルボン酸化合物による反応は、例えば、カルボン酸化合物を上記溶媒に溶解して0.01〜10質量%溶液を調製し、この溶液に担体材料を分散させ、攪拌した後、未反応のカルボン酸化合物を除去し、乾燥すればよい。
【0012】
以下、本発明の特徴について説明する。
本発明では、従来の技術で一般的に使用されるシリカ担体材料に上記特定の処理を施したものを使用し、無処理のシリカ担体材料をそのまま使用してはいないので、従来のクロマトグラフィー用担体で問題とされていた残存シラノール基の問題が全く発生しない。また、エンドキャッピング処理を行う必要性も全くない。
オクタデシル基などの分離場の担体材料への結合は、カルボン酸化合物と酸化アルミニウム、酸化銀等の金属化合物との反応を用いている。この反応は自己組織化膜を作成する一般的な方法と同じである。自己組織化膜はカルボン酸化合物のカルボキシル基と金属化合物との間の直接的な結合とともに、アルキル鎖間の疎水性相互作用によって安定化しているので非常に強固な膜である。
本発明者は、このような強固な自己組織化膜の作成法をクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体の分離場に応用することで、非常に強固な、これまでにないクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体の作成が可能ではないかと考え、この考えに基づいて、金属化合物とカルボン酸化合物との反応を利用した結果、従来のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体の持つ上記問題点が解決しうることを見出し本発明を完成したものである。
【0013】
逆相クロマトグラフィー用の担体を合成する際に使用されるモノクロロジメチルオクタデシルシランなどは非常に高価である。本発明では、この問題点を解決するために、非常に安価なカルボン酸化合物を分離場として用いている。また、従来の技術で担体を合成する際に使用する溶媒は、乾燥トルエンなどであり、廃棄などの際には環境に対する負荷が非常に大きい。本発明では、カルボン酸化合物が金属化合物と結合を形成する際の反応に使用する溶媒としてエタノール、アセトンを主として用いることによって、この課題を解決している。
また、従来の担体の合成法では、モノクロロジメチルオクタデシルシラン等を用いたシリカへの分離場の結合は、水が存在しているとモノクロロジメチルオクタデシルシランの分解が起こるので、脱水条件下で行う必要があった。本発明による方法では水の存在は合成に影響をほとんど与えないので厳密な脱水条件下で行う必要性はなく、簡便に合成することが出来る。
【0014】
カルボン酸化合物による自己組織化膜の形成は、二種以上のカルボン酸化合物を用いることによって、ナノサイズの表面形態を有した自己組織化膜を作成することが可能である。本発明において、二種以上のカルボン酸化合物を併用することにより、一種類のカルボン酸化合物では得られない特異的な分離が可能になる。例えば、カルボン酸化合物として、オクタン酸と8−ヒドロキシ−1−オクタン酸を使用する事により、担体の極性を自由自在に設定することが可能となる。
【0015】
金属化合物又は金属化合物を被覆した担体材料を予めカラムに充填し、必要なときに必要な種類のカルボン酸化合物をこのカラムに流し込んで、カラム内でカルボン酸化合物と金属化合物とを反応させることも出来る。これは、本発明で利用しているカルボン酸化合物と金属化合物との反応が非常に早く、室温下で反応し、特殊な反応装置を必要としないからである。こうすることにより、充填効率を著しく向上させることができ、また、目的に合わせてカルボン酸化合物を選択し、最適の担体をその場で調製することが出来る。
【0016】
本発明において「クロマトグラフィー」とは、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、イオン対クロマトグラフィー等の液体クロマトグラフィーの他、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等を意味する。これらのクロマトグラフィー用担体は、用いるカルボン酸化合物の種類を変えたり、併用するカルボン酸化合物の組み合わせやその使用比率などを変えることにより、種々のものが製造できる。
本発明において「前処理」とは、対象物質の吸着、脱着、濃縮、不要物質の除去脱塩などの処理を意味する。
【0017】
【発明の効果】
本発明では、金属化合物あるいは金属化合物で被覆した担体材料をクロマトグラフィー用担体材料として用いているので、分離ピークのテーリングの原因となる残存シラノール基が全く存在しないため、テーリングのないシャープな分離ピークを得ることが出来る。
また、本発明のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体の製造には、オクタデシル化などの分離層を反応させるための脱水系有機溶媒、高温、長時間反応などの過酷な反応条件を必要とせず、溶媒としてアセトン、クロロホルムを使用することができ、室温、短時間の穏和な反応条件でオクタデシル化などの処理を施した分離層が導入されたクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体を製造することが出来る。
更に、残存シラノール基が全く存在しないので、これを除去するためのエンドキャッピング処理を行う必要がなく、合成に必要な有機溶媒を使用しないので環境に対する負荷が小さくなるとともに、クロマトグラフィー用担体又は前処理用担体の製造に要する時間も大幅に短縮できる。
【0018】
逆相クロマトグラフィー用担体や逆相用充填剤を充填した前処理用担体の場合には、ステアリン酸をカルボン酸化合物として用いることが最も一般的であるが、種々の鎖長を持ったカルボン酸化合物や分枝したカルボン酸化合物、カルボキシル基とともに他の官能基を持ったカルボン酸化合物などを使用することにより、使用用途に合わせてクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体を製造することが出来る。
更に、官能基を有するカルボン酸化合物の場合、その官能基にタンパク質などを結合させアフィニティークロマトグラフィーなどに応用することも容易である。
また、マイクロチップの内部の細管内を金属化合物の薄膜で覆い、その上にカルボン酸化合物を反応させれば、容易にクロマトグラフィーをチップ上に集積することが可能となる。
【0019】
カルボン酸化合物を自己組織化膜の作成に使用した場合、二種類以上の異なるカルボン酸化合物を使用するとナノサイズレベルの特異な表面構造を有した膜が生成する。本発明でも、二種類以上のカルボン酸化合物を用いて自己組織化膜を作製し、特異的な表面構造を形成させることによって、これまでにない特異な分離性能を得ることが出来る。
本発明による手法を用いると、金属化合物又は金属化合物で被覆した担体材料を予めカラムに充填し、必要となった際に、必要な種類のカルボン酸化合物をカラム内で担体材料と反応させて、その場でクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体を製造することが出来、極めて高効率で多品種少量生産が可能となる。
【0020】
【実施例】
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
5×10−4モルの脂肪酸(トリコサン酸、アラキン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、カプリン酸)を10mLのアセトンに溶解させた。これとアルミナ担体材料(300メッシュ、粒径約45μm、1.5g)とを混合し、室温下、3時間攪拌した。反応終了後、反応させた担体をアセトンで数回洗浄した。
乾燥後、カラム長5cm、内径4.6mmのカラムに上記脂肪酸化アルミナ担体を約0.7g、充填圧100kgf/cm2、圧送液水120mLで充填した。充填後、メタノールを溶離液として、1mL/分でカラムを10分間洗浄した後、これを、紫外可視検出器SPD−6AV(株式会社島津製作所、京都府)を備えた高速液体クロマトグラフィー装置LC−9A(株式会社島津製作所、京都府)に取り付け、ウラシル、ベンゼン、ナフタレン、ジフェニルを含む50%メタノール溶液をサンプルとし、溶離液として60%メタノール水を使用し、流速1mL/分で溶離し、検出波長254nmで検出した。
図1に示すように、4本のピークに分離した。脂肪酸を結合していないアルミナ粒子を調製し、同様の手法で分析したがピークは一本となった。
【0021】
実施例2
1.25×10−4モルのトリコサン酸と3.75×10−4モルのパルミチン酸とを10mLのアセトンに溶解させた。これとアルミナ担体材料(300メッシュ、粒径約45μm、1.5g)とを混合し、室温下、3時間攪拌した。反応終了後、反応させた担体をアセトンで数回洗浄した。乾燥後、カラム長5cm、内径4.6mmのカラムに上記脂肪酸化アルミナ担体を約0.7g、充填圧100kgf/cm2、圧送液水120mLで充填した。充填後、メタノールを溶離液として、1mL/分でカラムを10分間洗浄した後、紫外可視検出器SPD−6AVを備えた高速液体クロマトグラフィー装置LC−9Aに取り付け、ウラシル、ナフタレン、ジフェニルを含む50%メタノール溶液をサンプルとし、溶離液として50%メタノール水を使用し、流速1mL/分で溶離し、検出波長254nmで検出した。図2に示すように、3本のピークに分離した。ステアリン酸を結合していないアルミナ粒子を調製し、同様の手法で分析したがピークは一本となった。
【0022】
実施例3
アルミナ担体材料(300メッシュ、粒径約45μm、約0.7g)を、カラム長5cm、内径4.6mmのカラムに、充填圧100kgf/cm2、圧送液水120mLで充填した。このカラムを紫外可視検出器SPD−6AVを備えた高速液体クロマトグラフィー装置LC−9Aに取り付け、5×10−4モルのパルミチン酸を10mLのアセトンに溶解した溶液5.6mLを流速1mL/分で導入し、カラム内のアルミナ担体と反応させた。反応後、メタノールを溶離液として、1mL/分でカラムを10分間洗浄した後、ウラシル、ベンゼン、ナフタレン、ジフェニルを含む50%メタノール溶液をサンプルとし、溶離液として60%メタノール水を使用し、流速1mL/分で溶離し、検出波長254nmで検出した。図3に示すように、4本のピークに分離した。
【0023】
実施例4
5×10−4モルのステアリン酸を10mLのアセトンに溶解させた。これとアルミナ担体材料(300メッシュ、粒径約45μm、1.5g)とを混合し、室温下、3時間攪拌した。反応終了後、反応させた担体をアセトンで数回洗浄した。10mLの0.1mM、10mMの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、ステアリン酸結合アルミナ担体と室温で1時間攪拌しながら混合した。混合後、担体を乾燥し、カラム長5cm、内径4.6mmのカラムに水酸化ナトリウム水溶液で処理したステアリン酸化アルミナ担体を約0.7g、充填圧100kgf/cm2、圧送液水120mLで充填した。充填後、メタノールを溶離液として、1mL/分でカラムを10分間洗浄した後、紫外可視検出器SPD−6AVを備えた高速液体クロマトグラフィー装置LC−9Aに取り付け、ウラシル、ナフタレン、ジフェニルを含む50%メタノール溶液をサンプルとし、溶離液として60%メタノール水を使用し、流速1mL/分で溶離し、検出波長254nmで検出した。図4に示すように、3本のピークに分離した。また、水酸化ナトリウムで処理してもしなくても分離はそれほど変わらなかった。
【0024】
実施例5
5×10−4モルのパルミチン酸を10mLのアセトンに溶解させた。これとアルミナ担体材料(300メッシュ、粒径約45μm、1.5g)とを混合し、室温下、3時間攪拌した。反応終了後、反応させた担体をアセトンで数回洗浄した。乾燥後、カラム長1cm、内径4.6mmのカラムにパルミチン酸化アルミナ担体を0.15g充填した。充填後、メタノールを溶離液として、1mL/分でカラムを10分間洗浄した後、高速液体クロマトグラフィー装置LC−9Aに取り付けた。100mLのフタル酸ジエチル水溶液(4.6×10−7M)を流速1mL/分で流し、フタル酸ジエチルを吸着させた。1mLのメタノールを溶媒として脱着させ、吸着前後で、紫外可視分光光時計UV−1600(株式会社島津製作所、京都府)で230nmを観測波長として吸光度を測定した。その結果、吸着率はほぼ100%であり、脱着率は40%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】種々のカルボン酸化合物で修飾したアルミナ担体を充填したカラムで、ウラシル(a)、ベンゼン(b)、ナフタレン(c)、ジフェニル(d)を含む試料を分離した際のクロマトグラムを示す。
【図2】トリコサン酸およびパルミチン酸の1:3混合カルボン酸を反応させたアルミナ担体を充填したカラムで、ウラシル、ナフタレン、ジフェニルを含む試料を分離した際のクロマトグラムを示す。
【図3】アルミナ担体を充填後パルミチン酸と反応させたカラムで、ウラシル、ベンゼン、ナフタレン、ジフェニルを含む試料を分離した際のクロマトグラム
【図4】ステアリン酸を反応させたアルミナ担体をアルカリ処理後、充填したカラムで、ウラシル(a)、ナフタレン(b)、ジフェニル(c)を含む試料を分離した際のクロマトグラムを示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロマトグラフィーに用いることが出来る担体又は前処理用担体に関し、さらに詳細には、酸化アルミニウム、酸化銀などの金属化合物で表面を被覆した担体材料の表面、又は酸化アルミニウム、酸化銀などの金属化合物からなる担体材料の表面にカルボン酸化合物を結合させてなるクロマトグラフィー用担体、前処理用担体及び該クロマトグラフィー用担体又は前処理用担体製造用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、多孔質シリカ表面上の水酸基などの官能基にモノクロロジメチルオクタデシルシランなどを化学的に結合させている。この反応により生じた結合は、アルカリ性溶離液で分解を受け、担体表面からオクタデシル基が容易に脱離する。そのために、溶離液としてpHが8以上の溶離液を使用することは困難である。
pHが8以上の溶離液を使用する場合には、担体の材料として、架橋型高分子化合物を用いることなどが行われているが、シリカ系の担体と比較して高価格で分離性能が劣る。
モノクロロジメチルオクタデシルシラン基などをシリカの水酸基に結合させる際、従来の合成法では、多いときには全体の官能基の50%にオクタデシル基が結合していない残存シラノール基が生じる。残存シラノール基は、クロマトグラフィーの分離性能に悪影響を及ぼす場合が多く、トリメチルクロロシランなどで処理することによってエンドキャッピング処理を行い、除去することが一般的であるが、それでも立体障害などが原因で完全に除去することは困難である。
【0003】
従来のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、多孔質シリカ表面上の水酸基などの官能基にモノクロロジメチルオクタデシルシランなどを化学的に結合させる際、モノクロロジメチルオクタデシルシランやトリメチルクロロシラン等の高価な試薬を使用し、なおかつ環境負荷の大きいトルエンなどの有機溶媒を使用し、高温、長時間という非常に高コストな合成法で合成している。さらに、反応は脱水条件が必須であり、特殊な装置を多数使用している。
従来のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、主として多孔質シリカを使用することが多く、酸性あるいはアルカリ性条件下でシリカの分解が起こり、クロマトグラフィー担体としての分離性能や寿命、前処理用担体としての吸着や脱塩等の性能が低下する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の多孔質シリカを担体としたクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、シリカ表面の水酸基に対してモノクロロジメチルオクタデシルシラン等の疎水性化合物を化学的に結合させている。この結合、すなわちSi−O−Si結合は、アルカリ性条件下で分解を受け、その結果、シリカ表面に結合させたオクタデシル基などの疎水性場がシリカ表面から脱離し、分離が悪くなるという欠点がある。本発明は、酸性やアルカリ性条件下でもオクタデシル基などの疎水性分離場が脱離しないクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体を開発することを課題としている。
【0005】
従来の多孔質シリカを担体としたクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、アルカリ条件下で分解し、分離及び吸着性能が低下し、担体としての寿命が短くなる問題点があった。本発明は、これらの問題点を解決することも課題としている。
従来の技術では、残存シラノール基由来の問題を解決するために、トリクロロシランなどで処理すること、すなわち、エンドキャッピング処理を行っている。エンドキャッピング処理を行うことで高品質の担体の製造が可能であるが、そのために必要な行程が多くなり、最終製品の価格は高くなってしまう。また、エンドキャッピング処理を行ったとしても、立体障害などの様々な要因が原因で未キャッピングの残存シラノール基が残ることが多い。本発明は、これらの問題点を解決することも課題としている。
【0006】
従来の技術によるモノクロロジメチルオクタデシルシランなどによる疎水性場の形成やエンドキャッピング処理は、脱水したトルエンなどの有機溶媒を使用して、110℃、5時間以上という過酷な条件下で行っている。この様な合成法では、高価な試薬の使用、環境に高負荷を与える有機溶媒の使用やその廃棄の処理費用、高温、長時間を必要とする合成条件、これらの諸条件が、最終製品を高価格にしている。本発明は、これらの問題点を改善し、安価な試薬を使用して、室温合成、短時間合成が可能な方法を開発することも課題としている。
従来のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体は、オクタデシル基などをシリカに結合した後、カラムに充填している。この方法では、必要時に担体の製造から行う必要があり、非効率的である。本発明は、この問題を解決することも課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、クロマトグラフィー用担体材料又は前処理用担体材料に金属化合物を被覆してなる担体材料の表面、あるいは金属化合物からなる担体材料の表面にカルボン酸化合物を反応させて結合させてなるクロマトグラフィー用担体または前処理用担体が上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物からなる担体材料、又は前記金属化合物を被覆してなる担体材料の表面に、カルボン酸化合物を結合させてなるクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体を提供するものである。
本発明はまた、カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物からなる担体材料、または前記金属化合物を被覆してなる担体材料と、該カルボン酸化合物とを含む、クロマトグラフィー用担体または前処理用担体製造用キットを提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するクロマトグラフィー用担体材料または前処理用担体材料は、クロマトグラフィーに用いることが出来る担体材料であれば特に限定されない。例えば、従来からあるシリカ、多孔質シリカ、ガラス、セルロース、セラミックス、カーボン、多孔質架橋型高分子化合物(例えば、スチレンジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリレート等)からなる担体の他、酸化アルミニウム、酸化銀等の金属酸化物を使用することが出来る。担体材料の形状は任意であり、繊維状、球状、破砕状、いずれの形状のものでも良い。繊維状の場合には、その直径は1nm〜1mm程度が適当である。球状、破砕状の担体材料ではその粒子サイズは、1nm〜1mm程度が適当である。更に、細管の内壁やマイクロチップ内の細管の内壁を担体材料として使用することも出来る。
【0009】
カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物以外の担体材料を使用する場合には、担体材料表面にカルボン酸化合物と反応しうる金属化合物を被覆する。担体材料を金属化合物で被覆する方法は特に限定されない。例えば、化学蒸気堆積(CVD)法、スパッタコーティング法、電気的に被覆する方法、ゾルゲル法等の方法を適宜使用できる。金属化合物の被覆量又は厚さは、クロマトグラフィー用担体又は前処理用担体として十分な性質を発揮すれば良く、特に限定されないが、1mg/m2〜2000g/m2程度、又は厚さ0.05nm〜10μm程度が適当である。
【0010】
カルボン酸化合物としては、金属化合物に結合できるものであれば良く、特に限定されないが、脂肪酸が良く、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、また、枝分かれ構造をしていても良い。特に炭素原子数1〜40の脂肪酸が好ましく、具体的には、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。
また本発明に使用されるカルボン酸化合物は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの官能基を一種又は二種以上有していても良い。官能基の数は1つでも2つ以上でも良い。これらの官能基はクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体の目的とする性質に合わせて適宜選択することができる。
【0011】
カルボン酸化合物を溶解させる溶媒は、カルボン酸化合物を溶解しうるものであれば良く、例えば、アセトン、クロロホルム、アセトニトリル、メタノール、エタノールなどを用いることが出来る。これらのうち、炭素原子数が18以下の脂肪酸を使用する場合は、エタノール又はアセトンが、炭素原子数が19以上の脂肪酸を使用する場合は、クロロホルムが好ましい。
カルボン酸化合物による反応は、例えば、カルボン酸化合物を上記溶媒に溶解して0.01〜10質量%溶液を調製し、この溶液に担体材料を分散させ、攪拌した後、未反応のカルボン酸化合物を除去し、乾燥すればよい。
【0012】
以下、本発明の特徴について説明する。
本発明では、従来の技術で一般的に使用されるシリカ担体材料に上記特定の処理を施したものを使用し、無処理のシリカ担体材料をそのまま使用してはいないので、従来のクロマトグラフィー用担体で問題とされていた残存シラノール基の問題が全く発生しない。また、エンドキャッピング処理を行う必要性も全くない。
オクタデシル基などの分離場の担体材料への結合は、カルボン酸化合物と酸化アルミニウム、酸化銀等の金属化合物との反応を用いている。この反応は自己組織化膜を作成する一般的な方法と同じである。自己組織化膜はカルボン酸化合物のカルボキシル基と金属化合物との間の直接的な結合とともに、アルキル鎖間の疎水性相互作用によって安定化しているので非常に強固な膜である。
本発明者は、このような強固な自己組織化膜の作成法をクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体の分離場に応用することで、非常に強固な、これまでにないクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体の作成が可能ではないかと考え、この考えに基づいて、金属化合物とカルボン酸化合物との反応を利用した結果、従来のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体の持つ上記問題点が解決しうることを見出し本発明を完成したものである。
【0013】
逆相クロマトグラフィー用の担体を合成する際に使用されるモノクロロジメチルオクタデシルシランなどは非常に高価である。本発明では、この問題点を解決するために、非常に安価なカルボン酸化合物を分離場として用いている。また、従来の技術で担体を合成する際に使用する溶媒は、乾燥トルエンなどであり、廃棄などの際には環境に対する負荷が非常に大きい。本発明では、カルボン酸化合物が金属化合物と結合を形成する際の反応に使用する溶媒としてエタノール、アセトンを主として用いることによって、この課題を解決している。
また、従来の担体の合成法では、モノクロロジメチルオクタデシルシラン等を用いたシリカへの分離場の結合は、水が存在しているとモノクロロジメチルオクタデシルシランの分解が起こるので、脱水条件下で行う必要があった。本発明による方法では水の存在は合成に影響をほとんど与えないので厳密な脱水条件下で行う必要性はなく、簡便に合成することが出来る。
【0014】
カルボン酸化合物による自己組織化膜の形成は、二種以上のカルボン酸化合物を用いることによって、ナノサイズの表面形態を有した自己組織化膜を作成することが可能である。本発明において、二種以上のカルボン酸化合物を併用することにより、一種類のカルボン酸化合物では得られない特異的な分離が可能になる。例えば、カルボン酸化合物として、オクタン酸と8−ヒドロキシ−1−オクタン酸を使用する事により、担体の極性を自由自在に設定することが可能となる。
【0015】
金属化合物又は金属化合物を被覆した担体材料を予めカラムに充填し、必要なときに必要な種類のカルボン酸化合物をこのカラムに流し込んで、カラム内でカルボン酸化合物と金属化合物とを反応させることも出来る。これは、本発明で利用しているカルボン酸化合物と金属化合物との反応が非常に早く、室温下で反応し、特殊な反応装置を必要としないからである。こうすることにより、充填効率を著しく向上させることができ、また、目的に合わせてカルボン酸化合物を選択し、最適の担体をその場で調製することが出来る。
【0016】
本発明において「クロマトグラフィー」とは、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、イオン対クロマトグラフィー等の液体クロマトグラフィーの他、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等を意味する。これらのクロマトグラフィー用担体は、用いるカルボン酸化合物の種類を変えたり、併用するカルボン酸化合物の組み合わせやその使用比率などを変えることにより、種々のものが製造できる。
本発明において「前処理」とは、対象物質の吸着、脱着、濃縮、不要物質の除去脱塩などの処理を意味する。
【0017】
【発明の効果】
本発明では、金属化合物あるいは金属化合物で被覆した担体材料をクロマトグラフィー用担体材料として用いているので、分離ピークのテーリングの原因となる残存シラノール基が全く存在しないため、テーリングのないシャープな分離ピークを得ることが出来る。
また、本発明のクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体の製造には、オクタデシル化などの分離層を反応させるための脱水系有機溶媒、高温、長時間反応などの過酷な反応条件を必要とせず、溶媒としてアセトン、クロロホルムを使用することができ、室温、短時間の穏和な反応条件でオクタデシル化などの処理を施した分離層が導入されたクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体を製造することが出来る。
更に、残存シラノール基が全く存在しないので、これを除去するためのエンドキャッピング処理を行う必要がなく、合成に必要な有機溶媒を使用しないので環境に対する負荷が小さくなるとともに、クロマトグラフィー用担体又は前処理用担体の製造に要する時間も大幅に短縮できる。
【0018】
逆相クロマトグラフィー用担体や逆相用充填剤を充填した前処理用担体の場合には、ステアリン酸をカルボン酸化合物として用いることが最も一般的であるが、種々の鎖長を持ったカルボン酸化合物や分枝したカルボン酸化合物、カルボキシル基とともに他の官能基を持ったカルボン酸化合物などを使用することにより、使用用途に合わせてクロマトグラフィー用担体及び前処理用担体を製造することが出来る。
更に、官能基を有するカルボン酸化合物の場合、その官能基にタンパク質などを結合させアフィニティークロマトグラフィーなどに応用することも容易である。
また、マイクロチップの内部の細管内を金属化合物の薄膜で覆い、その上にカルボン酸化合物を反応させれば、容易にクロマトグラフィーをチップ上に集積することが可能となる。
【0019】
カルボン酸化合物を自己組織化膜の作成に使用した場合、二種類以上の異なるカルボン酸化合物を使用するとナノサイズレベルの特異な表面構造を有した膜が生成する。本発明でも、二種類以上のカルボン酸化合物を用いて自己組織化膜を作製し、特異的な表面構造を形成させることによって、これまでにない特異な分離性能を得ることが出来る。
本発明による手法を用いると、金属化合物又は金属化合物で被覆した担体材料を予めカラムに充填し、必要となった際に、必要な種類のカルボン酸化合物をカラム内で担体材料と反応させて、その場でクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体を製造することが出来、極めて高効率で多品種少量生産が可能となる。
【0020】
【実施例】
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
5×10−4モルの脂肪酸(トリコサン酸、アラキン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、カプリン酸)を10mLのアセトンに溶解させた。これとアルミナ担体材料(300メッシュ、粒径約45μm、1.5g)とを混合し、室温下、3時間攪拌した。反応終了後、反応させた担体をアセトンで数回洗浄した。
乾燥後、カラム長5cm、内径4.6mmのカラムに上記脂肪酸化アルミナ担体を約0.7g、充填圧100kgf/cm2、圧送液水120mLで充填した。充填後、メタノールを溶離液として、1mL/分でカラムを10分間洗浄した後、これを、紫外可視検出器SPD−6AV(株式会社島津製作所、京都府)を備えた高速液体クロマトグラフィー装置LC−9A(株式会社島津製作所、京都府)に取り付け、ウラシル、ベンゼン、ナフタレン、ジフェニルを含む50%メタノール溶液をサンプルとし、溶離液として60%メタノール水を使用し、流速1mL/分で溶離し、検出波長254nmで検出した。
図1に示すように、4本のピークに分離した。脂肪酸を結合していないアルミナ粒子を調製し、同様の手法で分析したがピークは一本となった。
【0021】
実施例2
1.25×10−4モルのトリコサン酸と3.75×10−4モルのパルミチン酸とを10mLのアセトンに溶解させた。これとアルミナ担体材料(300メッシュ、粒径約45μm、1.5g)とを混合し、室温下、3時間攪拌した。反応終了後、反応させた担体をアセトンで数回洗浄した。乾燥後、カラム長5cm、内径4.6mmのカラムに上記脂肪酸化アルミナ担体を約0.7g、充填圧100kgf/cm2、圧送液水120mLで充填した。充填後、メタノールを溶離液として、1mL/分でカラムを10分間洗浄した後、紫外可視検出器SPD−6AVを備えた高速液体クロマトグラフィー装置LC−9Aに取り付け、ウラシル、ナフタレン、ジフェニルを含む50%メタノール溶液をサンプルとし、溶離液として50%メタノール水を使用し、流速1mL/分で溶離し、検出波長254nmで検出した。図2に示すように、3本のピークに分離した。ステアリン酸を結合していないアルミナ粒子を調製し、同様の手法で分析したがピークは一本となった。
【0022】
実施例3
アルミナ担体材料(300メッシュ、粒径約45μm、約0.7g)を、カラム長5cm、内径4.6mmのカラムに、充填圧100kgf/cm2、圧送液水120mLで充填した。このカラムを紫外可視検出器SPD−6AVを備えた高速液体クロマトグラフィー装置LC−9Aに取り付け、5×10−4モルのパルミチン酸を10mLのアセトンに溶解した溶液5.6mLを流速1mL/分で導入し、カラム内のアルミナ担体と反応させた。反応後、メタノールを溶離液として、1mL/分でカラムを10分間洗浄した後、ウラシル、ベンゼン、ナフタレン、ジフェニルを含む50%メタノール溶液をサンプルとし、溶離液として60%メタノール水を使用し、流速1mL/分で溶離し、検出波長254nmで検出した。図3に示すように、4本のピークに分離した。
【0023】
実施例4
5×10−4モルのステアリン酸を10mLのアセトンに溶解させた。これとアルミナ担体材料(300メッシュ、粒径約45μm、1.5g)とを混合し、室温下、3時間攪拌した。反応終了後、反応させた担体をアセトンで数回洗浄した。10mLの0.1mM、10mMの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、ステアリン酸結合アルミナ担体と室温で1時間攪拌しながら混合した。混合後、担体を乾燥し、カラム長5cm、内径4.6mmのカラムに水酸化ナトリウム水溶液で処理したステアリン酸化アルミナ担体を約0.7g、充填圧100kgf/cm2、圧送液水120mLで充填した。充填後、メタノールを溶離液として、1mL/分でカラムを10分間洗浄した後、紫外可視検出器SPD−6AVを備えた高速液体クロマトグラフィー装置LC−9Aに取り付け、ウラシル、ナフタレン、ジフェニルを含む50%メタノール溶液をサンプルとし、溶離液として60%メタノール水を使用し、流速1mL/分で溶離し、検出波長254nmで検出した。図4に示すように、3本のピークに分離した。また、水酸化ナトリウムで処理してもしなくても分離はそれほど変わらなかった。
【0024】
実施例5
5×10−4モルのパルミチン酸を10mLのアセトンに溶解させた。これとアルミナ担体材料(300メッシュ、粒径約45μm、1.5g)とを混合し、室温下、3時間攪拌した。反応終了後、反応させた担体をアセトンで数回洗浄した。乾燥後、カラム長1cm、内径4.6mmのカラムにパルミチン酸化アルミナ担体を0.15g充填した。充填後、メタノールを溶離液として、1mL/分でカラムを10分間洗浄した後、高速液体クロマトグラフィー装置LC−9Aに取り付けた。100mLのフタル酸ジエチル水溶液(4.6×10−7M)を流速1mL/分で流し、フタル酸ジエチルを吸着させた。1mLのメタノールを溶媒として脱着させ、吸着前後で、紫外可視分光光時計UV−1600(株式会社島津製作所、京都府)で230nmを観測波長として吸光度を測定した。その結果、吸着率はほぼ100%であり、脱着率は40%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】種々のカルボン酸化合物で修飾したアルミナ担体を充填したカラムで、ウラシル(a)、ベンゼン(b)、ナフタレン(c)、ジフェニル(d)を含む試料を分離した際のクロマトグラムを示す。
【図2】トリコサン酸およびパルミチン酸の1:3混合カルボン酸を反応させたアルミナ担体を充填したカラムで、ウラシル、ナフタレン、ジフェニルを含む試料を分離した際のクロマトグラムを示す。
【図3】アルミナ担体を充填後パルミチン酸と反応させたカラムで、ウラシル、ベンゼン、ナフタレン、ジフェニルを含む試料を分離した際のクロマトグラム
【図4】ステアリン酸を反応させたアルミナ担体をアルカリ処理後、充填したカラムで、ウラシル(a)、ナフタレン(b)、ジフェニル(c)を含む試料を分離した際のクロマトグラムを示す。
Claims (10)
- カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物からなる担体材料、又は前記金属化合物を被覆してなる担体材料の表面に、カルボン酸化合物を結合させてなるクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体。
- 金属化合物が、酸化アルミニウム及び酸化銀からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体。
- 担体材料が、多孔質担体材料又は非多孔質担体材料である請求項1又は2記載のクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体。
- 担体材料が、酸化アルミニウム及び酸化銀からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載のクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体。
- 担体材料が、シリカ、ガラス、セルロース、セラミックス、カーボン又は架橋型高分子化合物である請求項1〜4のいずれか1項記載のクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体。
- 担体材料が、球状担体材料、繊維状担体材料、破砕状担体材料、又は細管内表面である請求項1〜5のいずれか1項記載のクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体。
- カルボン酸化合物が、炭素数1から40のアルキルカルボン酸化合物である請求項1〜6のいずれか1項記載のクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体。
- カルボン酸化合物が、ステアリン酸を含む請求項7記載のクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体。
- カルボン酸化合物が、二種類以上のカルボン酸化合物を含む請求項1〜8のいずれか1項記載のクロマトグラフィー用担体又は前処理用担体。
- カルボン酸化合物と反応しうる金属化合物からなる担体材料、又は前記金属化合物を被覆してなる担体材料と、該カルボン酸化合物とを含む、クロマトグラフィー用担体又は前処理用担体製造用キット
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002305625A JP2004138575A (ja) | 2002-10-21 | 2002-10-21 | クロマトグラフィー用担体、前処理用担体及びキット |
EP20030023901 EP1413882A1 (en) | 2002-10-21 | 2003-10-21 | Carrier for chromatography, carrier for pre-treatment and kit for preparing the same |
US10/689,927 US20040144715A1 (en) | 2002-10-21 | 2003-10-21 | Carrier for chromatography, carrier for pre-treatment and kit for preparing the same |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002305625A JP2004138575A (ja) | 2002-10-21 | 2002-10-21 | クロマトグラフィー用担体、前処理用担体及びキット |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004138575A true JP2004138575A (ja) | 2004-05-13 |
Family
ID=32064277
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002305625A Pending JP2004138575A (ja) | 2002-10-21 | 2002-10-21 | クロマトグラフィー用担体、前処理用担体及びキット |
Country Status (3)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20040144715A1 (ja) |
EP (1) | EP1413882A1 (ja) |
JP (1) | JP2004138575A (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8017015B2 (en) * | 2006-10-20 | 2011-09-13 | Quest Diagnostics Investments Incorporated | Monolithic column chromatography |
DE102011101880A1 (de) * | 2011-05-18 | 2012-11-22 | Süd-Chemie AG | Verfahren zur Herstellung von Separationsmedien zur Aufreinigung und/oder Isolierung von Enzymen und/oder Proteinen |
Family Cites Families (11)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5689058A (en) * | 1979-12-21 | 1981-07-20 | Toyo Soda Mfg Co Ltd | Method for analyzing hydrocarbon compound |
US4648975A (en) * | 1983-08-17 | 1987-03-10 | Pedro B. Macedo | Process of using improved silica-based chromatographic supports containing additives |
DK165090D0 (da) * | 1990-07-09 | 1990-07-09 | Kem En Tec As | Konglomererede partikler |
DE4130475A1 (de) * | 1991-09-13 | 1993-03-18 | Merck Patent Gmbh | Modifizierte chromatographische traegermaterialien |
EP0645048A1 (en) * | 1992-06-08 | 1995-03-29 | BioQuest Incorporated | Preparation of controlled size inorganic particles for use in separations, as magnetic molecular switches, and as inorganic liposomes for medical applications |
US5316680A (en) * | 1992-10-21 | 1994-05-31 | Cornell Research Foundation, Inc. | Multimodal chromatographic separation media and process for using same |
US5591690A (en) * | 1994-06-29 | 1997-01-07 | Midwest Research Institute | Self assembled molecular monolayers on high surface area materials as molecular getters |
IL116377A (en) * | 1994-12-15 | 2003-05-29 | Cabot Corp | Reaction of carbon black with diazonium salts, resultant carbon black products and their uses |
US6277489B1 (en) * | 1998-12-04 | 2001-08-21 | The Regents Of The University Of California | Support for high performance affinity chromatography and other uses |
EP1328327A2 (en) * | 2000-09-01 | 2003-07-23 | Cabot Corporation | Chromatography and other adsorptions using modified carbon-clad metal oxide particles |
JP2004532392A (ja) * | 2001-02-20 | 2004-10-21 | アドヴィオン バイオサイエンシィズ インコーポレイテッド | 親和性吸着剤を有するマイクロチップ電子噴霧装置およびカラムならびにそれらの使用法 |
-
2002
- 2002-10-21 JP JP2002305625A patent/JP2004138575A/ja active Pending
-
2003
- 2003-10-21 EP EP20030023901 patent/EP1413882A1/en not_active Withdrawn
- 2003-10-21 US US10/689,927 patent/US20040144715A1/en not_active Abandoned
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
US20040144715A1 (en) | 2004-07-29 |
EP1413882A1 (en) | 2004-04-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Fumes et al. | Recent advances and future trends in new materials for sample preparation | |
Qiu et al. | Development of silica-based stationary phases for high-performance liquid chromatography | |
Kabir et al. | Innovations in sol-gel microextraction phases for solvent-free sample preparation in analytical chemistry | |
Radi et al. | Thermodynamics and kinetics of heavy metals adsorption on silica particles chemically modified by conjugated β-ketoenol furan | |
Hu et al. | Applications of nanoparticle-modified stationary phases in capillary electrochromatography | |
Tang et al. | Nanoparticle-based monoliths for chromatographic separations | |
Lv et al. | Layer-by-layer fabrication of restricted access media-molecularly imprinted magnetic microspheres for magnetic dispersion microextraction of bisphenol A from milk samples | |
Marechal et al. | Is click chemistry attractive for separation sciences? | |
EP2028487B1 (en) | Filler for optical isomer separation | |
Khataei et al. | Applications of porous frameworks in solid‐phase microextraction | |
WO2008102920A1 (ja) | 光学異性体分離用充填剤 | |
Moghimi et al. | Solid phase extraction of Hg (П) in water samples by nano-Fe | |
Yangfang et al. | Preparation and evaluation of monodispersed, submicron, non‐porous silica particles functionalized with β‐CD derivatives for chiral‐pressurized capillary electrochromatography | |
EP0150849B1 (en) | Agent for separation | |
JP2004003897A (ja) | クロマトグラフィー用担体、前処理用担体及びキット | |
JP2010052986A (ja) | 表面処理されたシリカ及びその製造方法 | |
JP2004138575A (ja) | クロマトグラフィー用担体、前処理用担体及びキット | |
JP2005017268A (ja) | 光学異性体用分離剤、その製造方法、及び光学異性体用分離カラム | |
Liu et al. | Enantioseparation of racemic amlodipine using immobilized ionic liquid by solid‐phase extraction | |
WO2013054129A1 (en) | Novel chromatography method using mesoporous silicon imide derivatives as the stationary phase | |
Jurado et al. | Cyanogen bromide activation and coupling of ligands to diol-containing silica for high-performance affinity chromatography: Optimization of conditions | |
US20070251870A1 (en) | Chromatographic stationary phase | |
Ling et al. | Preparation, characterization, and separation mechanism of a dehydroabietic-acid-based shape-selective chromatographic stationary phase1 | |
JP4700171B2 (ja) | 液体クロマトグラフィー用親水性ods充填剤の製造方法 | |
Radi et al. | New polysiloxane‐chemically immobilized C, C‐bipyrazolic receptor for heavy metals adsorption |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050705 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070131 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070326 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20070820 |