JP2004132635A - 2つの保冷庫を有する車両用の冷凍装置、およびその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エバポレータでの冷媒の「寝込み」を防止して2つの保冷庫を迅速に、かつ効率よく冷却する。
【解決手段】圧縮機1、コンデンサ2および膨張弁3A,3Bとともに冷凍サイクルを実現する系統に並列に接続され、2つの保冷庫(前室A、後室B)に振り分けられるエバポレータ4A,4Bを備える車両用冷凍装置において、前室A、後室Bのいずれか一方が目標とする設定温度に冷却されるまで、エバポレータ4A,4Bへの冷媒の導入/中断を交互に行い、これによって前室A、後室Bの冷却を交互に行うことにする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2つの保冷庫を有する車両用の冷凍装置、およびその制御方法に関し、2つの保冷庫の温度を迅速に、かつ効率よく冷却する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
日常生活で目にする2つの保冷庫を備える機器としては、冷蔵庫が挙げられるが、家庭用冷蔵庫においては、食品類の鮮度を保つために冷蔵することだけでなく、冷蔵よりも冷凍能力が必要とされる冷凍食品などを解凍させない構成であることを要求される。
【0003】
このため、冷蔵室用エバポレータと冷凍室エバポレータは基本的に直列接続され、冷凍室のみを冷却できるように冷蔵室用エバポレータをショートカットできる回路構成を採用している。そして、二室制御の方法として、コンプレッサの運転回転数に応じて冷却時間を変更する制御(例えば、特許文献1参照)や、プリセット時間を用いて両室同時冷却と冷凍室冷却を切り換える制御(例えば特許文献2参照)を行っている。
【0004】
しかし、これらは定置式の家庭用冷蔵庫ならではの前提として、2つの保冷庫の目標設定温度が2,3種の選択は可能であるにしても、固定されている場合の制御に限られるものである。このため、異なる温度帯における保冷を保冷対象の物品に応じた細かい条件のもとで行うよう求められ、また、輸送毎に輸送物品が異なるような物流の分野に応用するには、二室からなる保冷室の構成や用途の面で上述したような先行技術は大きくかけ離れていると言わざるを得ず、技術思想的に直ちに輸送車両用の冷凍装置に応用することはできない。
【0005】
したがって、現状では、輸送対象に応じた冷却方法を選択できるように、保冷車においては、異なる温度帯の商品を輸送するために、保冷庫内を2つに区画し、各庫に個別にエバポレータを設置してそれぞれ冷却(冷凍または冷蔵)を行っている。これら2つの保冷庫の冷却を同時に開始すると、保冷車に搭載された冷凍装置は、2つの保冷庫を並行して冷却し、設定温度の高い一方の保冷庫内の温度が設定温度に達したら一方の保冷庫の冷却を停止し、設定温度の低い他方の保冷庫に対象を絞って設定温度に達するまで冷却を続ける。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−304328号公報 (第6頁、第4図)
【特許文献2】
特開2002−02236号公報 (第5頁、第3図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のごとく目標とすべき設定温度の異なる2つの保冷庫の冷却を同時に行おうとすると、設定温度の低いエバポレータの内部において意図せずして冷媒が凝縮してしまう。この現象は、2つのエバポレータに導入された冷媒の蒸発温度が成り行きで変化して2つの異なる設定温度のほぼ中間値を指し、設定温度のより低い保冷庫側のエバポレータに導入される冷媒が凝縮してしまうために起こるものであり、庫内温度の差が大きくなるほど顕著になる。このようにして一方のエバポレータに冷媒が溜まると(これを冷媒が「寝込む」という)、冷媒回路の制御としては2つの保冷庫を同時に冷却運転していても実際には低温側が冷却されないという不都合が生じる。また、冷凍装置の内部で実質的に機能する冷媒の量が減少してしまい、冷却能力の不足や、冷媒の不足による圧縮機の吐出温度の上昇といった不都合が生じる。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、エバポレータでの冷媒の「寝込み」を防止して2つの保冷庫を迅速に、かつ効率よく冷却することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための手段として、次のような構成の車両用冷凍装置およびその制御方法を採用する。
すなわち本発明に係る請求項1記載の車両用冷凍装置は、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁とともに冷凍サイクルを実現する系統に並列に接続され、2つの保冷庫に振り分けられる第1、第2のエバポレータを備える車両用冷凍装置であって、
前記2つの保冷庫のいずれか一方が目標温度に冷却されるまで、前記第1、第2のエバポレータへの冷媒の導入/中断を交互に行う制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の車両用冷凍装置は、請求項1記載の車両用冷凍装置において、前記第1のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)を、前記第2のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)に等しくすることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の車両用冷凍装置は、請求項1記載の車両用冷凍装置において、前記第1のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)に対する、前記第2のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)の比を、
前記第1のエバポレータを設置される保冷庫の設定温度に対する、前記第2のエバポレータを設置される保冷庫の設定温度の比に比例させることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の車両用冷凍装置は、請求項2または3記載の車両用冷凍装置において、前記2つの保冷庫のいずれかが設定温度に達したら、その保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒導入を停止し、もうひとつの保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒の導入を、設定温度に達するまで中断することなく継続することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の車両用冷凍装置の制御方法は、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁とともに冷凍サイクルを実現する系統に並列に接続され、2つの保冷庫に振り分けられる第1、第2のエバポレータを備える車両用冷凍装置の制御方法であって、
前記第1、第2のエバポレータへの冷媒の導入/中断を交互に行うことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の車両用冷凍装置の制御方法は、請求項5記載の車両用冷凍装置の制御方法において、前記第1のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)を、前記第2のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)に等しくすることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の車両用冷凍装置の制御方法は、請求項5記載の車両用冷凍装置の制御方法において、前記第1のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)に対する、前記第2のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)の比を、
前記第1のエバポレータを設置される保冷庫の設定温度に対する、前記第2のエバポレータを設置される保冷庫の設定温度の比に比例させることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の車両用冷凍装置の制御方法は、請求項6または7記載の車両用冷凍装置の制御方法において、前記2つの保冷庫のいずれかが設定温度に達したら、その保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒導入を停止し、もうひとつの保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒の導入を、設定温度に達するまで中断することなく継続することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、2つの保冷庫のいずれか一方が目標とする設定温度に冷却されるまで、第1、第2のエバポレータへの冷媒の導入/中断を交互に行うことにより、従来のように2つのエバポレータに並行に冷媒を導入する場合とは異なり、冷媒の蒸発温度が設定温度より低くならず、冷媒の凝縮が起こらなくなるので、冷凍装置の内部で実質的に機能する冷媒が減少することがない。
【0018】
本発明においては、第1のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間を第2のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間に等しくすることにより、設定温度のより高い保冷庫が、設定温度のより低い保冷庫よりも速く冷却される。これは、設定温度のより高い保冷庫の冷却を優先して行う場合に好適である。
【0019】
本発明においては、前記第1、第2のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間の比を、2つの保冷庫の設定温度の比に比例させることにより、2つの保冷庫がほぼ同じ時間で冷却される。これは設定温度のより低い保冷庫の冷却を優先して行う場合に好適である。
【0020】
本発明においては、一方の保冷庫が設定温度に達したら、その保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒導入を停止し、他方の保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒の導入を、設定温度に達するまで中断することなく継続することにより、後に残った保冷庫の冷却が迅速に進められる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る実施形態を図1ないし図3に示して説明する。
図1には2つの保冷庫を有する冷凍車に搭載される車両用冷凍装置の概要を示す。同図において、符号1は圧縮機、2はコンデンサ、3A,3Bは膨張弁、4A,4Bはエバポレータ(第1、第2のエバポレータ)、5はアキュムレータ、6はレシーバである。各機器は図中に実線で示す冷媒配管を介して接続されて冷凍サイクルを実現する系統を構成している。さらに、図中の符号7は制御部、8は入力部、9は記憶部である。
【0022】
2つのエバポレータ4A,4Bは、膨張弁3A,3Bとともに前記系統に並列に接続されている。並列に分岐して膨張弁3A、エバポレータ4Aを配置される一方の配管にはエバポレータ4Aへの冷媒の導入を断続する開閉弁10Aが設けられ、膨張弁3B、エバポレータ4Bを配置される一方の配管にはエバポレータ4Bへの冷媒の導入を断続する開閉弁10Bが設けられる。膨張弁3A、エバポレータ4Aおよび開閉弁10Aはユニット化されて2つの保冷庫の一方(以下ではここを前室Aと呼ぶ)に配置され、膨張弁3B、エバポレータ4Bおよび開閉弁10Bもユニット化されて2つの保冷庫の他方(以下ではここを後室Bと呼ぶ)に配置されている。前室A、後室Bには、それぞれ室温センサ12A,12Bが設置されている。
【0023】
制御部7は、室温センサ12A,12Bの計測結果および前室A、後室Bそれぞれの設定温度に基づいて開閉弁10A,10Bの駆動を制御する。入力部8は、前室A、後室Bそれぞれの設定温度や、各室の1回当たりの冷却期間(エバポレータへの冷媒導入期間)等の情報を入力するのに使われる。記憶部9は、室温センサ12A,12Bの計測結果および前室A、後室Bそれぞれの設定温度、その他の情報を記憶しておくようになっている。
【0024】
図1のように構成された車両用冷凍装置の作動の仕方を[前室(後室)単独冷却モード]、[2室同時冷却モード]と[2室交互冷却モード]の3つについて説明する。
[前室(後室)単独冷却モード]
このモードが選択されると、制御部7は、開閉弁10A(後室単独冷却の場合は10B)を開き、開閉弁10B(後室単独冷却の場合は10A)を閉じる。圧縮機1で圧縮された冷媒は、高温高圧のガス冷媒となってコンデンサ2に流入し、屋外の空気に熱を与え、自らは凝縮して高温高圧の液冷媒となる。
【0025】
凝縮、液化した冷媒は、レシーバ6、開閉弁10A(後室単独冷却の場合は10B)を流通し、膨張弁3A(後室単独冷却の場合は3B)を流通する過程で断熱膨張し、低温低圧の液冷媒となってエバポレータ4A(後室単独冷却の場合は4B)に流入する。エバポレータ4A(後室単独の場合は4B)に流入した冷媒は、前室A内の空気を冷却し、自らは蒸発して低温低圧のガス冷媒となる。蒸発、気化した冷媒はアキュムレータ5を流通し、圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は上記の行程を繰り返す。
【0026】
[2室同時冷却モード]
このモードは前室と後室とを同時に冷却するものであり、このモードが選択されると、制御部7は、上述した開閉弁10Aと10Bとを同時に開き、前後各室の単独冷却モードを同時に実現する。
【0027】
[2室交互冷却モード]
このモードが選択されると、制御部7は、開閉弁10A,10Bを交互に開閉する。圧縮機1で圧縮された冷媒は、高温高圧のガス冷媒となってコンデンサ2に流入し、屋外の空気に熱を与え、自らは凝縮して高温高圧の液冷媒となる。
【0028】
ここで、最初に制御部7が開閉弁10Aを開き、開閉弁10Bを閉じた場合には、凝縮、液化した冷媒は、レシーバ6、開状態にある開閉弁10Aを流通し、膨張弁3Aを流通する過程で断熱膨張し、低温低圧の液冷媒となってエバポレータ4Aに流入する。エバポレータ4Aに流入した冷媒は、前室A内の空気を冷却し、自らは蒸発して低温低圧のガス冷媒となる。蒸発、気化した冷媒はアキュムレータ5を流通し、圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は制御部7が開閉弁の開閉状態を切り換えるまで上記の行程を繰り返す。
【0029】
そして、後述する所定の時間条件を満たすことを契機に、制御部7が開閉弁10Aと閉じ、開閉弁10Bを開いて対象弁の切換を行った場合には、凝縮、液化した冷媒は、レシーバ6、開状態にある開閉弁10Bを流通し、膨張弁3Bを流通する過程で断熱膨張し、低温低圧の液冷媒となってエバポレータ4Bに流入する。エバポレータ4Bに流入した冷媒は、後室B内の空気を冷却し、自らは蒸発して低温低圧のガス冷媒となる。蒸発、気化した冷媒はアキュムレータ5を流通し、圧縮機1に吸入されて圧縮され、以降は上記の行程を、制御部7により冷媒の流れが再度切り換えられるまで繰り返す。
【0030】
以下に、本実施形態にかかる2室冷却制御方法を図2ないし図4に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、制御部7は、室温センサ12A,12Bによって前室A、後室Bの庫内温度Ft,Rtをそれぞれ計測する(ステップ101)。次に、庫内温度Ftがあらかじめ設定された前室Aの目標温度(設定温度)Fsetよりも高く、かつ庫内温度Rsetがあらかじめ設定された後室Bの目標温度(設定温度)Rsetよりも高いか否かを判別する(ステップ102)。
【0031】
制御部7が、前室Aの庫内温度Ftが設定温度Fsetよりも高く、かつ後室Bの庫内温度Rsetが設定温度Rsetよりも高いと判断した場合は、前述した[2室同時冷却モード]と[2室交互冷却モード]のいずれを実行するかを選択するため、庫内温度Ft,Rtの差の絶対値が5度(℃)よりも大きいか否かを判別する(ステップ103)。両室とも設定温度よりも高いと判断しなかった場合、すなわち、制御部7がいずれか一室が設定温度に到達したと判断した場合には、[2室同時冷却モード]から抜けて[前室(後室)単独冷却モード]への移行を行い、両室ともに設定温度に到達したと判断した場合には、冷却運転自体の停止を選択する(ステップ104)。
【0032】
続いて、制御部7が、ステップ103において庫内温度Ft,Rtの差の絶対値が5度(℃)よりも大きいと判断した場合は、[2室交互冷却モード]に移行するが、まずは、開閉弁10Aを開くとともに開閉弁10Bを閉じて[前室冷却モード▲1▼]に入る(ステップ105)。庫内温度Ft,Rtの差の絶対値が5度(℃)以下であると判断した場合は、開閉弁10A,10Bをともに開いて[2室同時冷却モード]に入り(ステップ106)、ステップ101に戻って上記の処理を繰り返す。
【0033】
このように、本実施形態では5度(℃)を臨界数値としたが、制御部7は、2室の庫内温度の差を、低温室側で冷媒凝縮が生じ寝込みが顕在化する所定温度差以内にあるか否かを判別し、所定温度差以内で2室同時冷却モードが有効に機能する場合は同時運転により冷却を加速させ、所定温度差以上になって2室同時冷却モードによる冷却が有効に機能しない、もしくはその蓋然性が高くなった場合には、後述する前室冷却モードまたは後室冷却モードを選択的に切り換える2室交互冷却モードによる制御に移行する制御フローを採用する。このような制御フローを採用することにより、システム全体として追従性の高い冷凍装置の制御が可能となる。
【0034】
以下、制御部7による2室交互冷却モードについて詳細に説明する。ここで、2室交互冷却モードは、ステップ105からステップ113までの処理によってなされる。まず、制御部7は[前室冷却モード▲1▼]に入ると、前室Aのみを冷却した状態で(ステップ105)、同モードの開始からの期間(エバポレータ4Aへの冷媒導入期間;TA)が例えば1分が経過したか否かを判別する(ステップ107)。1分が経過していないうちは同モードを継続し、1分が経過したら、前室Aの庫内温度Ftを計測したうえで(ステップ108)、前室Aの設定温度Fsetが現状の庫内温度Ftよりも高いか否かを判別する(ステップ109)。
【0035】
制御部7が、前室Aの設定温度Fsetが庫内温度Ftよりも高いと判断した場合は、前室が目標とした設定温度Fsetに到達したものとして後述するステップ121に移行し、設定温度Fsetが庫内温度Ft以下の場合は、開閉弁10Aを閉じるとともに開閉弁10Bを開いて切換を行い、[後室冷却モード▲1▼]に入る(ステップ110)。
【0036】
制御部7は、[後室冷却モード▲1▼]に入ると、後室Bのみを冷却した状態で(ステップ110)、同モードの開始からの期間(エバポレータ4Bへの冷媒導入期間;TB)が例えば1分が経過したか否かを判別する(ステップ111)。1分が経過していないうちは同モードを継続し、1分が経過したら、後室Bの庫内温度Rtを計測したうえで(ステップ112)、後室Bの設定温度Rsetが現状の庫内温度Rtよりも高いか否かを判別する(ステップ113)。
【0037】
制御部7が、後室Bの設定温度Rsetが庫内温度Rtよりも高いと判断した場合は、後室が目標とした設定温度Rsetに到達したものとして、図3に示すように、開閉弁10Aを開くとともに開閉弁10Bを閉じて[前室冷却モード▲2▼]に入る(ステップ114)。設定温度Rsetが庫内温度Rt以下の場合は、ステップ105に戻って上記の処理を繰り返す。
結果として、制御部7は、前室A、後室Bのいずれかが設定温度に到達したと判断するまで(ステップ109,113)、1分毎に冷却対象となる保冷庫を切換える制御を継続する(ステップ105〜113)。
【0038】
上述した交互冷却モードをにおいて、後室が設定温度Rsetに到達した場合には、制御部7は、[前室冷却モード▲2▼]に入り、前室Aのみを冷却した状態で(ステップ114)、同モードの開始からの期間(TA)が例えば1分が経過したか否かを判別する(ステップ115)。1分が経過していないうちは同モードを継続し、1分が経過したら、後室Bの庫内温度Rtを計測したうえで(ステップ116)、後室Bの設定温度Rsetが現状の庫内温度Rtよりも高いか否かを判別する(ステップ117)。
【0039】
制御部7は、後室Bの設定温度Rsetが庫内温度Rt以下であると判断した場合は、ステップ105に戻って上記の処理を繰り返し、設定温度Rsetが庫内温度Rtよりも高いと判断した場合は、前室Aの庫内温度Ftを計測したうえで(ステップ118)、前室Aの設定温度Fsetが現状の庫内温度Ftよりも高いか否かを判別する(ステップ119)。
ここで、制御部7が、前室Aの設定温度Fsetが庫内温度Ft以下であると判断した場合は、ステップ114に戻って上記の処理を繰り返し、設定温度Fsetが庫内温度Ftよりも高いと判断した場合は、圧縮機1を停止し(ステップ120)、[2室交互冷却モード]を終了する。
【0040】
一方、1分毎に冷却対象となる保冷庫を切換える制御シーケンス(ステップ105〜113)において、制御部7が、ステップ109において前室Aの設定温度Fsetが庫内温度Ftよりも高いと判断した場合は、図4に示したように、開閉弁10Aを閉じるとともに開閉弁10Bを開いて[後室冷却モード▲2▼]に入る(ステップ121)。
【0041】
制御部7は、[後室冷却モード▲2▼]に入ると、後室Bのみを冷却した状態で(ステップ121)、同モードの開始からの期間(TB)が例えば1分が経過したか否かを判別する(ステップ122)。1分が経過していないうちは同モードを継続し、1分が経過したら、前室Aの庫内温度Ftを計測したうえで(ステップ123)、前室Aの設定温度Fsetが現状の庫内温度Ftよりも高いか否かを判別する(ステップ124)。
【0042】
制御部7が、前室Aの設定温度Fsetが庫内温度Ft以下であると判断した場合は、ステップ105に戻って上記の処理を繰り返し、設定温度Fsetが庫内温度Ftよりも高いと判断した場合は、後室Bの庫内温度Rtを計測したうえで(ステップ125)、後室Bの設定温度Rsetが現状の庫内温度Rtよりも高いか否かを判別する(ステップ126)。
ここで、制御部7が、後室Bの設定温度Rsetが庫内温度Rt以下の場合は、ステップ121に戻って上記の処理を繰り返し、設定温度Rsetが庫内温度Rtよりも高い場合は、ステップ120に移行し、圧縮機1を停止して[2室交互冷却モード]を終了する。
【0043】
言い換えれば、制御部7は、前室A、後室Bのいずれかが設定温度に到達したと判断した場合には(ステップ109,113)、設定温度に到達していない保冷庫に対して、到達していない保冷庫が設定温度に到達するか(ステップ119,126)、もしくは、すでに到達していた室の温度が設定温度以下になるまで(ステップ117,124)、単独冷却モードを実行する制御を行う。
【0044】
以上説明したように、本実施形態においては、前室A、後室Bのいずれか一方が目標とする設定温度に冷却されるまで、各室に振り分けて設置されたエバポレータ4A,4Bへの冷媒の導入/中断を交互に行うようになっている。これにより、従来のように2つのエバポレータに並行に冷媒を導入する場合とは異なり、冷媒の蒸発温度が設定温度より低くならず、冷媒の凝縮が起こらなくなるので、冷凍装置の内部で実質的に機能する冷媒が減少することがない。
【0045】
また、エバポレータ4Aへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)と、エバポレータ4Bへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)とが等しく設定されており、前室Aの冷却モード1回当たりの冷却と、後室Bの冷却モード1回当たりの冷却とを等しい時間間隔(例えば1分)で交互に行うようになっている。これにより、設定温度のより高い保冷庫が、設定温度のより低い保冷庫よりも速く冷却される。これは、設定温度のより高い保冷庫の冷却を優先して行う場合に好適である。
【0046】
さらに、前室A、後室Bのいずれか一方が設定温度に達したら、その保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒導入を停止し、他方の保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒の導入を、設定温度に達するまで中断することなく継続するようになっている。これにより、後に残った保冷庫の冷却が迅速に進められる。
【0047】
上記のように構成された空気調和装置によれば、冷却能力の不足や、冷媒の不足による圧縮機の吐出温度の上昇といった不都合が生じず、2つの保冷庫を迅速に、かつ効率よく冷却することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、エバポレータ4Aへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)と、エバポレータ4Bへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)とを等しく設定し、前室Aの冷却モード1回当たりの冷却期間と、後室Bの冷却モード1回当たりの冷却期間とを等しい時間間隔(例えば1分)で交互に行うようにした。このようにすると、設定温度のより高い保冷庫の冷却を優先して行う場合に好適である。
【0049】
ところで、エバポレータ4Aへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)に対する、エバポレータ4Bへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)の比を、前室Aの設定温度に対する後室Bの設定温度の比に比例させてもよい。このようにすると、設定温度のより低い保冷庫の冷却モード1回当たりの冷却期間を、設定温度のより高い保冷庫の冷却モード1回当たりの冷却期間よりも長くなるから、設定温度のより低い保冷庫が、冷却モード1回当たりでより強く冷却されることになり、設定温度のより低い保冷庫の冷却を優先して行う場合に好適である。
【0050】
交互冷却を行う時間条件は、上記の1分に限られるものではなく、前室、後室の冷却能力に応じた所定の時間を設定し得るものであり、例えば下記のごとく与えられる。
設定温度が高い場合、冷凍能力は大きく、保冷庫外部からの侵入熱は小さい。冷凍能力と侵入熱の関係は次式で与えられる。
【数1】
Figure 2004132635
【数2】
Figure 2004132635
ここで、Q:冷凍能力(α,β,γは定数)、W:熱負荷、U:侵入熱U値(W/℃)、AT:外気温度、RT:庫内温度
冷凍能力Q>熱負荷Wであれば冷却可能であり、2室交互冷却モードでは上記2式に基づいて以下の関係が導かれる。
【数3】
Figure 2004132635
ここで、RT:前室温度、RT:後室温度、X:運転時間率、U:前室U値、U:後室U値
【0051】
この式を満足するXが最適運転時間率であり、交互運転切替時に随時演算し、設定される。但し、この式を満足できない条件も存在し、この場合の最大運転時間は5分以下とする。例えば、コンビニエンスストア等への配送では停車が多く、10分毎位で荷降ろしが行われるので、5分以下の設定が好適である。
また、冷凍機と保冷庫の大きさの組み合わせは概略決まっており、上記U値は冷凍機の機種毎に値を設定すれば良い。
【0052】
本実施形態においては、前室Aの冷却モード1回当たりの冷却期間、および後室Bの冷却モード1回当たりの冷却期間を変更することで、2つの保冷庫を迅速に、かつ効率よく冷却しながら、装置を使用する側のニーズに応じて多彩な使い方を提供できる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来のように2つのエバポレータに並行に冷媒を導入する場合とは異なり、冷媒の蒸発温度が設定温度より低くならず、冷媒の凝縮が起こらなくなるので、冷凍装置の内部で実質的に機能する冷媒が減少することがない。これにより、冷却能力の不足や、冷媒の不足による圧縮機の吐出温度の上昇といった不都合が生じず、2つの保冷庫を迅速に、かつ効率よく冷却することができる。
【0054】
本発明によれば、2つの保冷庫を迅速に、かつ効率よく冷却しながらも、設定温度のより高い保冷庫の冷却を優先したり、設定温度のより低い保冷庫の冷却を優先したりといった、装置を使用する側のニーズに応じた多彩な使い方を提供できる。
【0055】
本発明によれば、一方の保冷庫が設定温度に達したら、その保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒導入を停止し、他方の保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒の導入を、後に残った保冷庫の冷却が、設定温度に達するまで中断することなく継続されるので、結果的に2つの保冷庫を迅速に、かつ効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であって、2つの保冷庫を有する車両用冷凍装置の概要を示す図である。
【図2】図1の車両用冷凍装置における2つの保冷庫の冷却制御を説明するためのフローチャートである。
【図3】同じく、図1の車両用冷凍装置における2つの保冷庫の冷却制御を説明するためのフローチャートである。
【図4】同じく、図1の車両用冷凍装置におおける2つの保冷庫の冷却制御を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1   圧縮機
2   コンデンサ
3A,3B 膨張弁
4A,4B エバポレータ(第1、第2のエバポレータ)
5   アキュムレータ
6   レシーバ
7   制御部
8   入力部
9   記憶部
10A,10B 開閉弁
12A,12B 室温センサ

Claims (8)

  1. 圧縮機、コンデンサおよび膨張弁とともに冷凍サイクルを実現する系統に並列に接続され、2つの保冷庫に振り分けられる第1、第2のエバポレータを備える車両用冷凍装置であって、
    前記2つの保冷庫のいずれか一方が目標温度に冷却されるまで、前記第1、第2のエバポレータへの冷媒の導入/中断を交互に行う制御部を備えることを特徴とする車両用冷凍装置。
  2. 前記第1のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)を、前記第2のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)に等しくすることを特徴とする請求項1記載の車両用冷凍装置。
  3. 前記第1のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)に対する、前記第2のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)の比を、
    前記第1のエバポレータを設置される保冷庫の設定温度に対する、前記第2のエバポレータを設置される保冷庫の設定温度の比に比例させることを特徴とする請求項1記載の車両用冷凍装置。
  4. 前記2つの保冷庫のいずれかが設定温度に達したら、その保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒導入を停止し、もうひとつの保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒の導入を、設定温度に達するまで中断することなく継続することを特徴とする請求項2または3記載の車両用冷凍装置。
  5. 圧縮機、コンデンサおよび膨張弁とともに冷凍サイクルを実現する系統に並列に接続され、2つの保冷庫に振り分けられる第1、第2のエバポレータを備える車両用冷凍装置の制御方法であって、
    前記第1、第2のエバポレータへの冷媒の導入/中断を交互に行うことを特徴とする車両用冷凍装置の制御方法。
  6. 前記第1のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)を、前記第2のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)に等しくすることを特徴とする請求項5記載の車両用冷凍装置の制御方法。
  7. 前記第1のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TA)に対する、前記第2のエバポレータへの1回当たりの冷媒導入期間(TB)の比を、
    前記第1のエバポレータを設置される保冷庫の設定温度に対する、前記第2のエバポレータを設置される保冷庫の設定温度の比に比例させることを特徴とする請求項5記載の車両用冷凍装置の制御方法。
  8. 前記2つの保冷庫のいずれかが設定温度に達したら、その保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒導入を停止し、もうひとつの保冷庫に設置されたエバポレータへの冷媒の導入を、設定温度に達するまで中断することなく継続することを特徴とする請求項6または7記載の車両用冷凍装置の制御方法。
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