JP2004132334A - 温度調整システム、蓄熱システムおよびポンプ制御装置 - Google Patents
温度調整システム、蓄熱システムおよびポンプ制御装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】内燃機関の暖機行程において、蓄熱用ポンプを流量で制御する蓄熱システムを提供する。
【解決手段】本発明による蓄熱システムは、現在流量が目標流量となるように蓄熱用ポンプへの供給電力を制御する。蓄熱用ポンプを流量で制御することにより、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定した暖機行程が実現される。暖機が完了すると、完了時の電力値を今回学習値として記録する。この今回学習値は、次回の暖機行程における初期印加電力として利用される。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明による蓄熱システムは、現在流量が目標流量となるように蓄熱用ポンプへの供給電力を制御する。蓄熱用ポンプを流量で制御することにより、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定した暖機行程が実現される。暖機が完了すると、完了時の電力値を今回学習値として記録する。この今回学習値は、次回の暖機行程における初期印加電力として利用される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度調整システム、蓄熱システムおよびポンプ制御装置に関し、特に内燃機関における温度調整システム、蓄熱システムおよびそれらのシステムに用いるポンプ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両に搭載される内燃機関は、気筒内に噴射する燃料を細かな霧状にして良好な燃焼状態を実現し、排気エミッションの悪化を抑制する。機関温度が低い状態では燃料を十分に微粒化することが難しいため、微粒化を促進するべく機関始動前に内燃機関を暖機する技術が知られている。この技術では、機関運転中に内燃機関で温められた冷却水を蓄熱タンクに貯留しておき、この貯留された温水を次回の機関始動前に内燃機関に供給して、内燃機関を暖機する。
【0003】
従来の暖機行程を行う方法として、電動ポンプを用いて内燃機関に断続的に熱供給する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また暖機行程を実現するものではないが、電動ポンプの制御方法として、エンジン水温に応じたフィードバック制御とオープンループ制御を切り換える技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−59729号公報
【特許文献2】
特開平5−231149号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
暖機行程を最短時間で完了させるには、電動ポンプの印加電圧を最大とすればよいが、その場合には電動ポンプにかかる負荷が大きく、耐久性の観点から好ましくない。一方、電動ポンプの印加電圧を小さくすると、電動ポンプにかかる負荷は軽減されるが、暖機行程完了までの時間が長くなり、内燃機関の始動が遅れる。そのため暖機行程を効率的に実現するには、電動ポンプの作動状態を最適に制御する必要がある。内燃機関の冷却水循環系においては、ポンプおよび配管系のバラツキや経時変化の影響などにより、電動ポンプの作動状態は個体ごとに異なる。
【0006】
また、温度調整システムにおいて、冷却水を循環させるポンプの駆動力損失を最小化するためには、その系内の冷却に要する流量と系内の管路損失分とを考慮した駆動力でポンプを駆動することが望ましい。従来の温度調整システムにおいては、ポンプの駆動力が許す限り、温度が目標温度となるようにポンプを過剰に駆動しているため、ポンプの駆動力損失が大きくなる。また、冷却系が早く目標温度に到達しても、他の関連するシステムの準備が間に合わないこともあり、このような場合に冷却系のポンプを過剰に駆動させることは無駄であった。
【0007】
特許文献1における暖機方法は、蓄熱タンクの熱量を長期間に亘って活用することを目的とし、要素バラツキを吸収する電動ポンプの制御について意図するものではない。蓄熱タンクの制御電圧を固定とする場合には、電動ポンプ能力の低下または配管系通水抵抗の増加などにより、内燃機関の暖機にかかる時間が長くなり、内燃機関の始動遅れが生じる。特許文献2は暖機方法に関するものではないが、電動ポンプを水温を用いて制御する方法を開示する。この制御方法を応用して、暖機行程における電動ポンプの作動状態を温度制御するアプローチも考えられるが、冷却水循環系の構造によっては、温度制御が複雑となる場合も生じる。
【0008】
そこで本発明者は、温度制御とは異なる新規なポンプの制御方法を想到するに至った。本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、暖機行程などのポンプ駆動行程におけるポンプの駆動力を効率的に制御するポンプ制御装置、温度調整システムおよび蓄熱システムを提供することにある。また本発明の目的は、ポンプや配管系などの個体バラツキや経時変化の影響を吸収するようにポンプの駆動力を制御するポンプ制御装置、温度調整システムおよび蓄熱システムを提供することにある。また本発明の目的は、ポンプの駆動力を学習制御するポンプ制御装置、温度調整システムおよび蓄熱システムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を実現するために、本発明の一つの態様は、温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプと、ポンプの流量に基づいて、ポンプの駆動力を制御する制御部とを備える温度調整システムを提供する。ここで流体は、液体や気体を含む。この態様の温度調整システムによると、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定したポンプ駆動行程を実現する。制御部は、ポンプの流量が目標流量となるようにポンプの駆動力を制御してもよい。目標流量は、ポンプの駆動力損失を少なくするように設定される。
【0010】
本発明の別の態様は、温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプと、前回以前のポンプ駆動行程におけるポンプの駆動力に基づいて、ポンプの駆動力を学習制御する制御部とを備える温度調整システムを提供する。ポンプ駆動行程とは、内燃機関の冷却行程や暖機行程など、ポンプが駆動される行程を意味する。この態様の温度調整システムによると、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定したポンプ駆動行程を実現する。
【0011】
制御部は、ポンプ駆動行程の終了時に、ポンプの駆動力を制御する制御値を学習値として記録してもよい。例えばポンプが電動式である場合、制御値は、ポンプに供給する電力値であってよく、具体的にはポンプに供給する電力量、電圧値または電流値などである。ポンプがクランクシャフトにより駆動される機械式である場合、制御値は、ポンプの駆動力を調整するために供給する電力値や制御信号であってよく、ポンプとクランクシャフトの間に変速機が設けられる場合には、この変速機の動作を調整するための制御信号であってよい。今回の制御値を学習値として記録することにより、次回のポンプ駆動行程で、この学習値を用いたポンプの学習制御を行うことができる。制御部は、ポンプの初期制御値を前回の学習値に設定してもよい。また制御部は、ポンプの流量に基づいてポンプの駆動力を制御して、ポンプの流量が目標流量となる制御値を学習値として記録してもよい。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプの制御装置に関し、このポンプ制御装置は、ポンプの流量に基づいてポンプの駆動力を制御する。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプの制御装置に関し、このポンプ制御装置は、前回以前のポンプ駆動行程におけるポンプの駆動力に基づいて、ポンプの駆動力を学習制御する。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、内燃機関を暖機するために用いる流体を貯留する蓄熱タンクと、内燃機関の暖機行程中、蓄熱タンクに貯留された流体を内燃機関に供給する電動ポンプと、電動ポンプの流量に基づいて、電動ポンプへの供給電力を制御する制御部とを備える蓄熱システムを提供する。ここで流体は液体や気体を含み、制御部は、電動ポンプに供給する電力量、電圧値または電流値などを供給電力として制御する。この態様の蓄熱システムによると、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定した暖機行程を実現する。これにより、内燃機関の始動遅れを回避することができる。制御部は、電動ポンプの流量が目標流量となるように供給電力を制御してもよい。目標流量は、ポンプの耐久性と暖機行程の予定時間とのバランスから設定される。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、内燃機関を暖機するために用いる流体を貯留する蓄熱タンクと、内燃機関の暖機行程中、蓄熱タンクに貯留された流体を内燃機関に供給する電動ポンプと、前回以前の暖機行程において電動ポンプに供給した電力値に基づいて、電動ポンプへの供給電力を学習制御する制御部とを備える蓄熱システムを提供する。この態様の蓄熱システムによると、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定した暖機行程を実現する。これにより、内燃機関の始動遅れを回避することができる。
【0016】
制御部は、暖機行程の終了時に、電動ポンプに供給した電力値を学習値として記録してもよい。既述のごとく、電力値は、電力量、電圧値および電流値を含む概念である。今回の電力値を学習値として記録することにより、次回の暖機行程で、この学習値を用いた電動ポンプの学習制御を行うことができる。制御部は、電動ポンプに供給する初期電力を前回の学習値に設定してもよい。また制御部は、電動ポンプの流量に基づいて電動ポンプへの供給電力を制御して、電動ポンプの流量が目標流量となる電力値を学習値として記録してもよい。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、蓄熱タンクに貯留された流体を内燃機関に供給する電動ポンプの制御装置に関し、このポンプ制御装置は、電動ポンプの流量に基づいて、電動ポンプへの供給電力を制御する。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、蓄熱タンクに貯留された流体を内燃機関に供給する電動ポンプの制御装置に関し、このポンプ制御装置は、前回以前の暖機行程において電動ポンプに供給した電力値に基づいて、電動ポンプへの供給電力を学習制御する。
以上の各構成を方法またはプログラムとして表現したものも、本発明として有効である。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態に係る内燃機関1とその冷却水循環系の概略構成を示す。この内燃機関1は車両に設けられ、電動機と組み合わされてハイブリッド駆動装置を構成してもよい。この冷却水循環系は、冷却水を循環させて、内燃機関1または車内の温度を調整する温度調整システムとして機能する。具体的に冷却水循環系は、内燃機関1を冷却する機関冷却システムとして機能し、また内燃機関1により温められた冷却水を蓄える蓄熱システム、および車内を暖房するヒータシステムとして機能する。冷却水循環系として図示される個々の構成は、各システムの構成要素として適宜その役割を担う。
【0020】
冷却水の流路は、電子制御装置(以下、ECUと表記する)30により制御される。ECU30は、図示のごとく単一の構成であってもよいが、空調などの用途にそれぞれ特化した複数の構成として存在してもよい。以下では制御機能を実現する構成を、統一的にECU30として表現する。
【0021】
内燃機関1はその内部に冷却水通路2を有し、冷却水通路2の上流側は循環ポンプ3の吐出口に接続される。一般に循環ポンプ3は機械式で、内燃機関1のクランクシャフト(図示せず)によって駆動される。循環ポンプ3とクランクシャフトの間に変速機が設けられ、循環ポンプ3の駆動力が、この変速機を調整することにより適宜調整されてもよい。なお、循環ポンプ3の構造は任意に定めることができ、冷却水の循環効率の観点から電動式に構成されてもよい。機関冷却システムは、循環ポンプ3およびラジエータ5を含んで構成される。循環ポンプ3は、内燃機関1の温度を調整するべく冷却水を循環させる。サーモスタット弁8は、冷却水温度に応じて循環ポンプ3の吸込み口の接続先を切り換える。冷却水温度が所定値以上のとき、サーモスタット弁8は循環ポンプ3の吸込み口をラジエータ戻し管路6に接続する。このとき冷却水は、循環ポンプ3から冷却水通路2、ラジエータ導入管路4、ラジエータ5、ラジエータ戻し管路6およびポンプ導入管路7を通る流路を循環する。なお、吸気絞り弁21のケーシングが分岐管路20に設けられており、高温の冷却水により温められる。一方、冷却水温度が低いときは、サーモスタット弁8が循環ポンプ3の吸込み口をバイパス管路9に接続し、冷却水が循環ポンプ3から冷却水通路2、バイパス管路9およびポンプ導入管路7を通る流路を循環する。
【0022】
ヒータシステムは、ヒータ11およびヒータ用ポンプ15を含んで構成される。ヒータ用ポンプ15は、ヒータ用管路14に設けられる。ヒータ用ポンプ15は、内燃機関1が自律的に一時停止するような車両の場合に、電動ポンプとして設けられるのが好ましい。車内の暖房時、冷却水通路2において温められた冷却水を第1共通管路12およびヒータ用管路14を経てヒータ11に供給する。このときECU30が、三方向切換弁13を制御して第1共通管路12およびヒータ用管路14を連通させ、ヒータ用ポンプ15を作動させる。空調専用のECUが存在する場合には、そのECUがヒータ用ポンプ15を作動させる。この冷却水は第2共通管路16およびポンプ導入管路7を経て冷却水通路2に戻される。なお、内燃機関1の冷温時に車内を暖房する場合、ECU30が三方向切換弁13を制御して温水排出管路22とヒータ用管路14を連通させ、蓄熱タンク17に貯留された温水をヒータ11に供給してもよい。また、内燃機関1の運転中は、循環ポンプ3により、温められた冷却水がヒータ11に供給される。
【0023】
蓄熱システムは、蓄熱タンク17および電動式の蓄熱用ポンプ18を含んで構成される。蓄熱タンク17の入口が、温水回収管路23、第2共通管路16を経て内燃機関1側に連結し、また出口が温水排出管路22、三方向切換弁13、第1共通管路12を経て内燃機関1側に連結する。機関水温センサ10が冷却水通路2の冷却水温度を検出し、蓄熱水温センサ19が蓄熱タンク17の出口付近の冷却水温度を検出する。検出結果はECU30に伝達される。
【0024】
冷却水通路2の冷却水温度が所定値を超えると、ECU30は三方向切換弁13を制御して第1共通管路12、ヒータ用管路14および温水排出管路22を連通させて全通状態とし、蓄熱用ポンプ18を作動する。冷却水通路2で温められた冷却水は、ラジエータ導入管路4、ラジエータ5、ラジエータ戻し管路6、第2共通管路16および温水回収管路23を通って蓄熱タンク17に貯留される。蓄熱タンク17に温水を貯留する行程を「蓄熱行程」と呼ぶ。温水の回収流路は、これに限定するものではなく、例えばラジエータ5を通らない管路を新たに設けてもよい。
【0025】
内燃機関1の始動時、内燃機関1を予め暖機するために、蓄熱タンク17に貯留した温水を、温水排出管路22および第1共通管路12を経て内燃機関1に供給する。このときECU30は、三方向切換弁13を制御して温水排出管路22および第1共通管路12を連通させ、蓄熱用ポンプ18を作動する。これにより蓄熱用ポンプ18が、蓄熱タンク17に貯留された温水を内燃機関1に供給する。温水を内燃機関1に供給する行程を「暖機行程」と呼ぶ。温水は内燃機関1のシリンダヘッド部に供給されて、吸気ポートまたは燃焼室を優先的に暖機することが好ましい。
【0026】
図2は、本実施の形態に係る蓄熱システムによる暖機行程のフローチャートを示す。この暖機行程において、ECU30は、蓄熱用ポンプ18の作動状態を流量により制御するポンプ制御装置として機能する。具体的にECU30は、蓄熱用ポンプ18の流量に基づいて、蓄熱用ポンプ18の印加電圧を制御する。
【0027】
まずECU30が、蓄熱用ポンプ18の作動要求があるか否かを判断する(S10)。ポンプ作動要求は機関始動の際に生成され、内燃機関1とモータとを切り換え又は併用して駆動動力源とするハイブリッド車の場合には、内燃機関1の始動ごとに生成されてもよい。ポンプ作動要求がない場合(S10のN)、ECU30は、蓄熱用ポンプ18の印加電圧を0に設定し(S12)、蓄熱用ポンプ18を作動させない。ポンプ作動要求がある場合(S10のY)、ECU30は、暖機行程を開始するべく、記憶部24に記録された前回学習値を読み出し、この前回学習値を印加電圧の初期値として蓄熱用ポンプ18に印加する(S14)。
【0028】
前回学習値は、内燃機関1の前回運転時に蓄熱用ポンプ18の目標流量を達成するように設定された電圧値である。印加する初期電圧を前回学習値に設定することにより、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収した効率よい流量制御を実現できる。目標流量は、ポンプの耐久性と暖機行程の予定時間とのバランスから設定される流量である。目標流量を蓄熱用ポンプ18の最大吐出量に設定することはポンプ耐久性の観点から好ましくなく、また小さく設定しすぎることも暖機行程の時間がかかりすぎることから好ましくない。このような事情の下、目標流量が適切に設定される。
【0029】
続いてECU30は蓄熱用ポンプ18の現在流量FPを推定し、推定した現在流量FPと目標流量FRとを比較する(S16)。蓄熱タンク17から温水が流れている状況を判別する際、蓄熱水温センサ19から機関水温センサ10までの流路距離が既知であるため、ECU30は、蓄熱水温センサ19の水温変化(上昇)の後、機関水温センサ10の水温変化(上昇)までの時間をもとに、現在の推定流量を算出する。なお蓄熱水温センサ19から機関水温センサ10までの管路上に、流量センサが設けられてもよい。推定した現在流量FPが目標流量FRよりも小さい場合(S16の経路a)、蓄熱用ポンプ18の印加電圧を上昇させる(S18)。一方、推定した現在流量FPが目標流量FRよりも大きい場合(S16の経路c)、蓄熱用ポンプ18の印加電圧を低下させる(S20)。現在流量FPと目標流量FRとの差分に対応した電圧の上昇量ないしは低下量を記録したテーブルを予め記憶部24に格納しておき、ECU30は、このテーブルを参照して、印加電圧の上昇量ないしは下降量を設定してもよい。またECU30は、所定量だけ印加電圧を上昇または低下させてもよい。現在流量FPが目標流量FRに等しい場合には(S16の経路b)、印加電圧の調整を行わない。なお、現在流量FPと目標流量FRとの差分が所定の範囲内にあるとき、ECU30は、現在流量FPが目標流量FRに等しいと判定してもよい。
【0030】
印加電圧の調整後、ECU30は暖機が完了したか否かを判定する(S22)。暖機行程は、吸気ポートの推定壁温が所定温度に達したときに終了とする。吸気ポートの壁温は、内燃機関1の冷却水温度から推定される。まだ暖機が完了していない場合には(S22のN)、S16に戻って現在流量FPと目標流量FRとを比較し、印加電圧の調整を行う。暖機が完了すると(S22のY)、ECU30は、その時点の印加電圧を今回の学習値と設定して、記憶部24に記録する。今回の学習値は、次回の暖機行程において蓄熱用ポンプ18の初期電圧値として利用される。蓄熱用ポンプ18の停止後、内燃機関1が始動する。このような制御により、個体差によらず暖機までの時間を一定とすることができ、関連する制御の制御性を改善することができる。
【0031】
以上の暖機行程において、目標流量は所定値に固定されてもよいが、内燃機関1の冷却水温度などに依存して設定されてもよい。例えば、暖機行程前に内燃機関1の冷却水温度がある程度高い場合には、蓄熱用ポンプ18の負荷を軽減するために、目標流量を小さくして流量制御を行うことも有効である。また、S22で暖機完了でない場合にS16に戻ることとしているが、必ずしもステップを戻る必要はない。その場合には、S18またはS20でテーブルを参照して印加電圧を調整後、S24で、調整した電圧値を今回の学習値として記録してもよい。なお、複数の目標流量が設定される場合には、目標流量ごとに学習が行われることが好ましい。
【0032】
以上、目標流量となるように蓄熱用ポンプ18の流量を制御する例について説明したが、変形例として、現在の推定吸気ポート壁温が目標吸気ポート壁温となるように流量を制御してもよい。ECU30は、機関水温センサ10の検出結果から吸気ポート壁温を推定することができる。目標吸気ポート壁温は所定値に固定されてもよく、また環境に応じて適宜設定されてもよい。また直噴式の内燃機関1の場合には、推定燃焼室壁温が目標燃焼室壁温となるように流量を制御してもよい。また冷却水の流量調整方法の例として、蓄熱タンク17の出口から内燃機関1に向かう管路中に弁を設置し、その通路面積を制御することにより、冷却水の流量を制御してもよい。通常状態における弁の通路面積は、広げる方向または狭める方向に制御できるように予め絞り気味としておくことが好ましい。この場合、ECU30は、蓄熱用ポンプ18の流量に応じて蓄熱用ポンプ18の印加電圧を調整するとともに、弁の開度も調整することにより蓄熱用ポンプ18の流量を制御する。
【0033】
実施の形態では、ECU30が蓄熱用ポンプ18の印加電圧を調整したが、ポンプの駆動形式に応じて、電圧以外の制御量、例えば電力量や電流値を調整して流量を制御してもよい。また、実施の形態では蓄熱システムにおけるポンプの流量制御および学習制御の例について説明したが、この技術は、図1に示す温度調整システムにおける他のポンプの流量制御および学習制御にも適用することが可能である。例えば、ECU30は流量に基づいて、内燃機関1の温度を調整するべく流体を内燃機関1に供給する循環ポンプ3の駆動力を制御してもよい。循環ポンプ3が機械式の場合には、循環ポンプ3とクランクシャフトの間に設けられる変速機を調整してポンプ駆動力を制御してもよく、また電動式の場合には、蓄熱用ポンプ18に関して説明したように、ポンプへの供給電力を制御してポンプ駆動力を制御してもよい。同様に、ECU30は、車内温度を調整するべく流体を内燃機関1に供給するヒータ用ポンプ15についても、流量に基づいてポンプ駆動力を制御することができる。
【0034】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。なお本発明はこの実施の形態に限定されることなく、そのさまざまな変形例もまた、本発明の態様として有効である。
【0035】
【発明の効果】
本発明によると、ポンプの駆動力を流量で制御することにより、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定したポンプ駆動行程を実現する温度調整システム、蓄熱システムおよびポンプ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る内燃機関とその冷却水循環系の概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る蓄熱システムによる暖機行程のフローチャートである。
【符号の説明】
1・・・内燃機関、2・・・冷却水通路、3・・・循環ポンプ、10・・・機関水温センサ、13・・・三方向切換弁、17・・・蓄熱タンク、18・・・蓄熱用ポンプ、19・・・蓄熱水温センサ、24・・・記憶部、30・・・ECU。
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度調整システム、蓄熱システムおよびポンプ制御装置に関し、特に内燃機関における温度調整システム、蓄熱システムおよびそれらのシステムに用いるポンプ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両に搭載される内燃機関は、気筒内に噴射する燃料を細かな霧状にして良好な燃焼状態を実現し、排気エミッションの悪化を抑制する。機関温度が低い状態では燃料を十分に微粒化することが難しいため、微粒化を促進するべく機関始動前に内燃機関を暖機する技術が知られている。この技術では、機関運転中に内燃機関で温められた冷却水を蓄熱タンクに貯留しておき、この貯留された温水を次回の機関始動前に内燃機関に供給して、内燃機関を暖機する。
【0003】
従来の暖機行程を行う方法として、電動ポンプを用いて内燃機関に断続的に熱供給する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また暖機行程を実現するものではないが、電動ポンプの制御方法として、エンジン水温に応じたフィードバック制御とオープンループ制御を切り換える技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−59729号公報
【特許文献2】
特開平5−231149号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
暖機行程を最短時間で完了させるには、電動ポンプの印加電圧を最大とすればよいが、その場合には電動ポンプにかかる負荷が大きく、耐久性の観点から好ましくない。一方、電動ポンプの印加電圧を小さくすると、電動ポンプにかかる負荷は軽減されるが、暖機行程完了までの時間が長くなり、内燃機関の始動が遅れる。そのため暖機行程を効率的に実現するには、電動ポンプの作動状態を最適に制御する必要がある。内燃機関の冷却水循環系においては、ポンプおよび配管系のバラツキや経時変化の影響などにより、電動ポンプの作動状態は個体ごとに異なる。
【0006】
また、温度調整システムにおいて、冷却水を循環させるポンプの駆動力損失を最小化するためには、その系内の冷却に要する流量と系内の管路損失分とを考慮した駆動力でポンプを駆動することが望ましい。従来の温度調整システムにおいては、ポンプの駆動力が許す限り、温度が目標温度となるようにポンプを過剰に駆動しているため、ポンプの駆動力損失が大きくなる。また、冷却系が早く目標温度に到達しても、他の関連するシステムの準備が間に合わないこともあり、このような場合に冷却系のポンプを過剰に駆動させることは無駄であった。
【0007】
特許文献1における暖機方法は、蓄熱タンクの熱量を長期間に亘って活用することを目的とし、要素バラツキを吸収する電動ポンプの制御について意図するものではない。蓄熱タンクの制御電圧を固定とする場合には、電動ポンプ能力の低下または配管系通水抵抗の増加などにより、内燃機関の暖機にかかる時間が長くなり、内燃機関の始動遅れが生じる。特許文献2は暖機方法に関するものではないが、電動ポンプを水温を用いて制御する方法を開示する。この制御方法を応用して、暖機行程における電動ポンプの作動状態を温度制御するアプローチも考えられるが、冷却水循環系の構造によっては、温度制御が複雑となる場合も生じる。
【0008】
そこで本発明者は、温度制御とは異なる新規なポンプの制御方法を想到するに至った。本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、暖機行程などのポンプ駆動行程におけるポンプの駆動力を効率的に制御するポンプ制御装置、温度調整システムおよび蓄熱システムを提供することにある。また本発明の目的は、ポンプや配管系などの個体バラツキや経時変化の影響を吸収するようにポンプの駆動力を制御するポンプ制御装置、温度調整システムおよび蓄熱システムを提供することにある。また本発明の目的は、ポンプの駆動力を学習制御するポンプ制御装置、温度調整システムおよび蓄熱システムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を実現するために、本発明の一つの態様は、温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプと、ポンプの流量に基づいて、ポンプの駆動力を制御する制御部とを備える温度調整システムを提供する。ここで流体は、液体や気体を含む。この態様の温度調整システムによると、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定したポンプ駆動行程を実現する。制御部は、ポンプの流量が目標流量となるようにポンプの駆動力を制御してもよい。目標流量は、ポンプの駆動力損失を少なくするように設定される。
【0010】
本発明の別の態様は、温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプと、前回以前のポンプ駆動行程におけるポンプの駆動力に基づいて、ポンプの駆動力を学習制御する制御部とを備える温度調整システムを提供する。ポンプ駆動行程とは、内燃機関の冷却行程や暖機行程など、ポンプが駆動される行程を意味する。この態様の温度調整システムによると、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定したポンプ駆動行程を実現する。
【0011】
制御部は、ポンプ駆動行程の終了時に、ポンプの駆動力を制御する制御値を学習値として記録してもよい。例えばポンプが電動式である場合、制御値は、ポンプに供給する電力値であってよく、具体的にはポンプに供給する電力量、電圧値または電流値などである。ポンプがクランクシャフトにより駆動される機械式である場合、制御値は、ポンプの駆動力を調整するために供給する電力値や制御信号であってよく、ポンプとクランクシャフトの間に変速機が設けられる場合には、この変速機の動作を調整するための制御信号であってよい。今回の制御値を学習値として記録することにより、次回のポンプ駆動行程で、この学習値を用いたポンプの学習制御を行うことができる。制御部は、ポンプの初期制御値を前回の学習値に設定してもよい。また制御部は、ポンプの流量に基づいてポンプの駆動力を制御して、ポンプの流量が目標流量となる制御値を学習値として記録してもよい。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプの制御装置に関し、このポンプ制御装置は、ポンプの流量に基づいてポンプの駆動力を制御する。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプの制御装置に関し、このポンプ制御装置は、前回以前のポンプ駆動行程におけるポンプの駆動力に基づいて、ポンプの駆動力を学習制御する。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、内燃機関を暖機するために用いる流体を貯留する蓄熱タンクと、内燃機関の暖機行程中、蓄熱タンクに貯留された流体を内燃機関に供給する電動ポンプと、電動ポンプの流量に基づいて、電動ポンプへの供給電力を制御する制御部とを備える蓄熱システムを提供する。ここで流体は液体や気体を含み、制御部は、電動ポンプに供給する電力量、電圧値または電流値などを供給電力として制御する。この態様の蓄熱システムによると、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定した暖機行程を実現する。これにより、内燃機関の始動遅れを回避することができる。制御部は、電動ポンプの流量が目標流量となるように供給電力を制御してもよい。目標流量は、ポンプの耐久性と暖機行程の予定時間とのバランスから設定される。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、内燃機関を暖機するために用いる流体を貯留する蓄熱タンクと、内燃機関の暖機行程中、蓄熱タンクに貯留された流体を内燃機関に供給する電動ポンプと、前回以前の暖機行程において電動ポンプに供給した電力値に基づいて、電動ポンプへの供給電力を学習制御する制御部とを備える蓄熱システムを提供する。この態様の蓄熱システムによると、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定した暖機行程を実現する。これにより、内燃機関の始動遅れを回避することができる。
【0016】
制御部は、暖機行程の終了時に、電動ポンプに供給した電力値を学習値として記録してもよい。既述のごとく、電力値は、電力量、電圧値および電流値を含む概念である。今回の電力値を学習値として記録することにより、次回の暖機行程で、この学習値を用いた電動ポンプの学習制御を行うことができる。制御部は、電動ポンプに供給する初期電力を前回の学習値に設定してもよい。また制御部は、電動ポンプの流量に基づいて電動ポンプへの供給電力を制御して、電動ポンプの流量が目標流量となる電力値を学習値として記録してもよい。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、蓄熱タンクに貯留された流体を内燃機関に供給する電動ポンプの制御装置に関し、このポンプ制御装置は、電動ポンプの流量に基づいて、電動ポンプへの供給電力を制御する。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、蓄熱タンクに貯留された流体を内燃機関に供給する電動ポンプの制御装置に関し、このポンプ制御装置は、前回以前の暖機行程において電動ポンプに供給した電力値に基づいて、電動ポンプへの供給電力を学習制御する。
以上の各構成を方法またはプログラムとして表現したものも、本発明として有効である。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態に係る内燃機関1とその冷却水循環系の概略構成を示す。この内燃機関1は車両に設けられ、電動機と組み合わされてハイブリッド駆動装置を構成してもよい。この冷却水循環系は、冷却水を循環させて、内燃機関1または車内の温度を調整する温度調整システムとして機能する。具体的に冷却水循環系は、内燃機関1を冷却する機関冷却システムとして機能し、また内燃機関1により温められた冷却水を蓄える蓄熱システム、および車内を暖房するヒータシステムとして機能する。冷却水循環系として図示される個々の構成は、各システムの構成要素として適宜その役割を担う。
【0020】
冷却水の流路は、電子制御装置(以下、ECUと表記する)30により制御される。ECU30は、図示のごとく単一の構成であってもよいが、空調などの用途にそれぞれ特化した複数の構成として存在してもよい。以下では制御機能を実現する構成を、統一的にECU30として表現する。
【0021】
内燃機関1はその内部に冷却水通路2を有し、冷却水通路2の上流側は循環ポンプ3の吐出口に接続される。一般に循環ポンプ3は機械式で、内燃機関1のクランクシャフト(図示せず)によって駆動される。循環ポンプ3とクランクシャフトの間に変速機が設けられ、循環ポンプ3の駆動力が、この変速機を調整することにより適宜調整されてもよい。なお、循環ポンプ3の構造は任意に定めることができ、冷却水の循環効率の観点から電動式に構成されてもよい。機関冷却システムは、循環ポンプ3およびラジエータ5を含んで構成される。循環ポンプ3は、内燃機関1の温度を調整するべく冷却水を循環させる。サーモスタット弁8は、冷却水温度に応じて循環ポンプ3の吸込み口の接続先を切り換える。冷却水温度が所定値以上のとき、サーモスタット弁8は循環ポンプ3の吸込み口をラジエータ戻し管路6に接続する。このとき冷却水は、循環ポンプ3から冷却水通路2、ラジエータ導入管路4、ラジエータ5、ラジエータ戻し管路6およびポンプ導入管路7を通る流路を循環する。なお、吸気絞り弁21のケーシングが分岐管路20に設けられており、高温の冷却水により温められる。一方、冷却水温度が低いときは、サーモスタット弁8が循環ポンプ3の吸込み口をバイパス管路9に接続し、冷却水が循環ポンプ3から冷却水通路2、バイパス管路9およびポンプ導入管路7を通る流路を循環する。
【0022】
ヒータシステムは、ヒータ11およびヒータ用ポンプ15を含んで構成される。ヒータ用ポンプ15は、ヒータ用管路14に設けられる。ヒータ用ポンプ15は、内燃機関1が自律的に一時停止するような車両の場合に、電動ポンプとして設けられるのが好ましい。車内の暖房時、冷却水通路2において温められた冷却水を第1共通管路12およびヒータ用管路14を経てヒータ11に供給する。このときECU30が、三方向切換弁13を制御して第1共通管路12およびヒータ用管路14を連通させ、ヒータ用ポンプ15を作動させる。空調専用のECUが存在する場合には、そのECUがヒータ用ポンプ15を作動させる。この冷却水は第2共通管路16およびポンプ導入管路7を経て冷却水通路2に戻される。なお、内燃機関1の冷温時に車内を暖房する場合、ECU30が三方向切換弁13を制御して温水排出管路22とヒータ用管路14を連通させ、蓄熱タンク17に貯留された温水をヒータ11に供給してもよい。また、内燃機関1の運転中は、循環ポンプ3により、温められた冷却水がヒータ11に供給される。
【0023】
蓄熱システムは、蓄熱タンク17および電動式の蓄熱用ポンプ18を含んで構成される。蓄熱タンク17の入口が、温水回収管路23、第2共通管路16を経て内燃機関1側に連結し、また出口が温水排出管路22、三方向切換弁13、第1共通管路12を経て内燃機関1側に連結する。機関水温センサ10が冷却水通路2の冷却水温度を検出し、蓄熱水温センサ19が蓄熱タンク17の出口付近の冷却水温度を検出する。検出結果はECU30に伝達される。
【0024】
冷却水通路2の冷却水温度が所定値を超えると、ECU30は三方向切換弁13を制御して第1共通管路12、ヒータ用管路14および温水排出管路22を連通させて全通状態とし、蓄熱用ポンプ18を作動する。冷却水通路2で温められた冷却水は、ラジエータ導入管路4、ラジエータ5、ラジエータ戻し管路6、第2共通管路16および温水回収管路23を通って蓄熱タンク17に貯留される。蓄熱タンク17に温水を貯留する行程を「蓄熱行程」と呼ぶ。温水の回収流路は、これに限定するものではなく、例えばラジエータ5を通らない管路を新たに設けてもよい。
【0025】
内燃機関1の始動時、内燃機関1を予め暖機するために、蓄熱タンク17に貯留した温水を、温水排出管路22および第1共通管路12を経て内燃機関1に供給する。このときECU30は、三方向切換弁13を制御して温水排出管路22および第1共通管路12を連通させ、蓄熱用ポンプ18を作動する。これにより蓄熱用ポンプ18が、蓄熱タンク17に貯留された温水を内燃機関1に供給する。温水を内燃機関1に供給する行程を「暖機行程」と呼ぶ。温水は内燃機関1のシリンダヘッド部に供給されて、吸気ポートまたは燃焼室を優先的に暖機することが好ましい。
【0026】
図2は、本実施の形態に係る蓄熱システムによる暖機行程のフローチャートを示す。この暖機行程において、ECU30は、蓄熱用ポンプ18の作動状態を流量により制御するポンプ制御装置として機能する。具体的にECU30は、蓄熱用ポンプ18の流量に基づいて、蓄熱用ポンプ18の印加電圧を制御する。
【0027】
まずECU30が、蓄熱用ポンプ18の作動要求があるか否かを判断する(S10)。ポンプ作動要求は機関始動の際に生成され、内燃機関1とモータとを切り換え又は併用して駆動動力源とするハイブリッド車の場合には、内燃機関1の始動ごとに生成されてもよい。ポンプ作動要求がない場合(S10のN)、ECU30は、蓄熱用ポンプ18の印加電圧を0に設定し(S12)、蓄熱用ポンプ18を作動させない。ポンプ作動要求がある場合(S10のY)、ECU30は、暖機行程を開始するべく、記憶部24に記録された前回学習値を読み出し、この前回学習値を印加電圧の初期値として蓄熱用ポンプ18に印加する(S14)。
【0028】
前回学習値は、内燃機関1の前回運転時に蓄熱用ポンプ18の目標流量を達成するように設定された電圧値である。印加する初期電圧を前回学習値に設定することにより、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収した効率よい流量制御を実現できる。目標流量は、ポンプの耐久性と暖機行程の予定時間とのバランスから設定される流量である。目標流量を蓄熱用ポンプ18の最大吐出量に設定することはポンプ耐久性の観点から好ましくなく、また小さく設定しすぎることも暖機行程の時間がかかりすぎることから好ましくない。このような事情の下、目標流量が適切に設定される。
【0029】
続いてECU30は蓄熱用ポンプ18の現在流量FPを推定し、推定した現在流量FPと目標流量FRとを比較する(S16)。蓄熱タンク17から温水が流れている状況を判別する際、蓄熱水温センサ19から機関水温センサ10までの流路距離が既知であるため、ECU30は、蓄熱水温センサ19の水温変化(上昇)の後、機関水温センサ10の水温変化(上昇)までの時間をもとに、現在の推定流量を算出する。なお蓄熱水温センサ19から機関水温センサ10までの管路上に、流量センサが設けられてもよい。推定した現在流量FPが目標流量FRよりも小さい場合(S16の経路a)、蓄熱用ポンプ18の印加電圧を上昇させる(S18)。一方、推定した現在流量FPが目標流量FRよりも大きい場合(S16の経路c)、蓄熱用ポンプ18の印加電圧を低下させる(S20)。現在流量FPと目標流量FRとの差分に対応した電圧の上昇量ないしは低下量を記録したテーブルを予め記憶部24に格納しておき、ECU30は、このテーブルを参照して、印加電圧の上昇量ないしは下降量を設定してもよい。またECU30は、所定量だけ印加電圧を上昇または低下させてもよい。現在流量FPが目標流量FRに等しい場合には(S16の経路b)、印加電圧の調整を行わない。なお、現在流量FPと目標流量FRとの差分が所定の範囲内にあるとき、ECU30は、現在流量FPが目標流量FRに等しいと判定してもよい。
【0030】
印加電圧の調整後、ECU30は暖機が完了したか否かを判定する(S22)。暖機行程は、吸気ポートの推定壁温が所定温度に達したときに終了とする。吸気ポートの壁温は、内燃機関1の冷却水温度から推定される。まだ暖機が完了していない場合には(S22のN)、S16に戻って現在流量FPと目標流量FRとを比較し、印加電圧の調整を行う。暖機が完了すると(S22のY)、ECU30は、その時点の印加電圧を今回の学習値と設定して、記憶部24に記録する。今回の学習値は、次回の暖機行程において蓄熱用ポンプ18の初期電圧値として利用される。蓄熱用ポンプ18の停止後、内燃機関1が始動する。このような制御により、個体差によらず暖機までの時間を一定とすることができ、関連する制御の制御性を改善することができる。
【0031】
以上の暖機行程において、目標流量は所定値に固定されてもよいが、内燃機関1の冷却水温度などに依存して設定されてもよい。例えば、暖機行程前に内燃機関1の冷却水温度がある程度高い場合には、蓄熱用ポンプ18の負荷を軽減するために、目標流量を小さくして流量制御を行うことも有効である。また、S22で暖機完了でない場合にS16に戻ることとしているが、必ずしもステップを戻る必要はない。その場合には、S18またはS20でテーブルを参照して印加電圧を調整後、S24で、調整した電圧値を今回の学習値として記録してもよい。なお、複数の目標流量が設定される場合には、目標流量ごとに学習が行われることが好ましい。
【0032】
以上、目標流量となるように蓄熱用ポンプ18の流量を制御する例について説明したが、変形例として、現在の推定吸気ポート壁温が目標吸気ポート壁温となるように流量を制御してもよい。ECU30は、機関水温センサ10の検出結果から吸気ポート壁温を推定することができる。目標吸気ポート壁温は所定値に固定されてもよく、また環境に応じて適宜設定されてもよい。また直噴式の内燃機関1の場合には、推定燃焼室壁温が目標燃焼室壁温となるように流量を制御してもよい。また冷却水の流量調整方法の例として、蓄熱タンク17の出口から内燃機関1に向かう管路中に弁を設置し、その通路面積を制御することにより、冷却水の流量を制御してもよい。通常状態における弁の通路面積は、広げる方向または狭める方向に制御できるように予め絞り気味としておくことが好ましい。この場合、ECU30は、蓄熱用ポンプ18の流量に応じて蓄熱用ポンプ18の印加電圧を調整するとともに、弁の開度も調整することにより蓄熱用ポンプ18の流量を制御する。
【0033】
実施の形態では、ECU30が蓄熱用ポンプ18の印加電圧を調整したが、ポンプの駆動形式に応じて、電圧以外の制御量、例えば電力量や電流値を調整して流量を制御してもよい。また、実施の形態では蓄熱システムにおけるポンプの流量制御および学習制御の例について説明したが、この技術は、図1に示す温度調整システムにおける他のポンプの流量制御および学習制御にも適用することが可能である。例えば、ECU30は流量に基づいて、内燃機関1の温度を調整するべく流体を内燃機関1に供給する循環ポンプ3の駆動力を制御してもよい。循環ポンプ3が機械式の場合には、循環ポンプ3とクランクシャフトの間に設けられる変速機を調整してポンプ駆動力を制御してもよく、また電動式の場合には、蓄熱用ポンプ18に関して説明したように、ポンプへの供給電力を制御してポンプ駆動力を制御してもよい。同様に、ECU30は、車内温度を調整するべく流体を内燃機関1に供給するヒータ用ポンプ15についても、流量に基づいてポンプ駆動力を制御することができる。
【0034】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。なお本発明はこの実施の形態に限定されることなく、そのさまざまな変形例もまた、本発明の態様として有効である。
【0035】
【発明の効果】
本発明によると、ポンプの駆動力を流量で制御することにより、ポンプおよび配管系の個体バラツキや経時変化の影響を吸収して、安定したポンプ駆動行程を実現する温度調整システム、蓄熱システムおよびポンプ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る内燃機関とその冷却水循環系の概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る蓄熱システムによる暖機行程のフローチャートである。
【符号の説明】
1・・・内燃機関、2・・・冷却水通路、3・・・循環ポンプ、10・・・機関水温センサ、13・・・三方向切換弁、17・・・蓄熱タンク、18・・・蓄熱用ポンプ、19・・・蓄熱水温センサ、24・・・記憶部、30・・・ECU。
Claims (16)
- 温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプと、
前記ポンプの流量に基づいて、前記ポンプの駆動力を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする温度調整システム。 - 前記制御部は、前記ポンプの流量が目標流量となるように前記ポンプの駆動力を制御することを特徴とする請求項1に記載の温度調整システム。
- 温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプと、
前回以前のポンプ駆動行程における前記ポンプの駆動力に基づいて、前記ポンプの駆動力を学習制御する制御部と、
を備えることを特徴とする温度調整システム。 - 前記制御部は、ポンプ駆動行程の終了時に、前記ポンプの駆動力を制御する制御値を学習値として記録することを特徴とする請求項3に記載の温度調整システム。
- 前記制御部は、前記ポンプの初期制御値を前回の学習値に設定することを特徴とする請求項4に記載の温度調整システム。
- 前記制御部は、前記ポンプの流量に基づいて、前記ポンプの駆動力を制御することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の温度調整システム。
- 温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプの制御装置であって、
前記ポンプの流量に基づいて、前記ポンプの駆動力を制御することを特徴とするポンプ制御装置。 - 温度を調整するべく流体を内燃機関に供給するポンプの制御装置であって、
前回以前のポンプ駆動行程における前記ポンプの駆動力に基づいて、前記ポンプの駆動力を学習制御することを特徴とするポンプ制御装置。 - 内燃機関を暖機するために用いる流体を貯留する蓄熱タンクと、
前記内燃機関の暖機行程中、前記蓄熱タンクに貯留された流体を前記内燃機関に供給する電動ポンプと、
前記電動ポンプの流量に基づいて、前記電動ポンプへの供給電力を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする蓄熱システム。 - 前記制御部は、前記電動ポンプの流量が目標流量となるように供給電力を制御することを特徴とする請求項9に記載の蓄熱システム。
- 内燃機関を暖機するために用いる流体を貯留する蓄熱タンクと、
前記内燃機関の暖機行程中、前記蓄熱タンクに貯留された流体を前記内燃機関に供給する電動ポンプと、
前回以前の暖機行程において前記電動ポンプに供給した電力値に基づいて、前記電動ポンプへの供給電力を学習制御する制御部と、
を備えることを特徴とする蓄熱システム。 - 前記制御部は、暖機行程の終了時に、前記電動ポンプに供給した電力値を学習値として記録することを特徴とする請求項11に記載の蓄熱システム。
- 前記制御部は、前記電動ポンプに供給する初期電力を前回の学習値に設定することを特徴とする請求項12に記載の蓄熱システム。
- 前記制御部は、前記電動ポンプの流量に基づいて、前記電動ポンプへの供給電力を制御することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の蓄熱システム。
- 蓄熱タンクに貯留された流体を内燃機関に供給する電動ポンプの制御装置であって、
前記電動ポンプの流量に基づいて、前記電動ポンプへの供給電力を制御することを特徴とするポンプ制御装置。 - 蓄熱タンクに貯留された流体を内燃機関に供給する電動ポンプの制御装置であって、
前回以前の暖機行程において前記電動ポンプに供給した電力値に基づいて、前記電動ポンプへの供給電力を学習制御することを特徴とするポンプ制御装置。
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JP2002300024A JP2004132334A (ja) | 2002-10-15 | 2002-10-15 | 温度調整システム、蓄熱システムおよびポンプ制御装置 |
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CN115217609A (zh) * | 2022-06-06 | 2022-10-21 | 广州汽车集团股份有限公司 | 发动机的热管理控制方法、装置、电子设备及存储介质 |
-
2002
- 2002-10-15 JP JP2002300024A patent/JP2004132334A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
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CN115217609B (zh) * | 2022-06-06 | 2023-07-14 | 广州汽车集团股份有限公司 | 发动机的热管理控制方法、装置、电子设备及存储介质 |
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