JP2004131798A - 酸化チタン層とその製造方法、及びこれを用いた反射防止フィルム - Google Patents

酸化チタン層とその製造方法、及びこれを用いた反射防止フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】酸化チタン層をプラズマCVD法により短時間で製造した場合であっても、長時間の高湿高温放置後・紫外線照射後の密着性や透明性が良好である、酸化チタン層の製造方法、さらにこの方法を用いて製造した酸化チタン層、及び当該酸化チタン層を積層体中に用いた反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の酸化チタン層の製造方法によれば、有機チタン化合物ガスと水素ガスとを反応室14内へ供給し、これらのガスを放電させてプラズマ21状態とし、前記反応室14内に載置された基材11上に酸化チタン層22を積層させるプラズマCVD法であって、前記反応室14内に有機チタン化合物ガス、水素ガス以外に酸素ガスと反応不活性ガスを供給することで、酸化チタン層22を積層させるので、従来のプラズマCVD法においては残基となる部分においても、水素と反応することが可能となる。
【選択図】    図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ、CRT(陰極線管)ディスプレイ、もしくはプラズマディスプレイパネル等のディスプレイの前面に設ける反射防止フィルム等の光学部品に使用できる酸化チタン層とその製造方法、及びこれを用いた反射防止フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTなどのコンピューター、ワープロ、テレビ、表示板に使用される各種ディスプレイや、計器等の表示体、バックミラー、ゴーグル、窓ガラスなどには、ガラスやプラスティックなどの透明な基板が使用されている。そして、それらの透明な基材を通して、文字や図形その他の情報を読み取るため、透明な基材の表面で光が反射すると、それらの情報が読み取り難くなるという欠点がある。
【0003】
そこで、ディスプレイの前面に、基材に反射防止機能を付与することが行なわれる。例えば、透明基材に直接、真空成膜法により酸化ケイ素(以下、「シリカ」とする場合がある。)、酸化ジルコニウム、酸化チタン、フッ化マグネシウムなどの無機化合物からなる反射防止膜を形成する方法がある。真空成膜法は、真空環境下で基材の表面に対して成膜を行なうものである。真空環境下では、一般の大気環境下に比べて、雰囲気ガスの成分が著しく制限されるため、不純物の少ない良質な膜を形成することができる。たとえば、真空チャンバ内を排気しながら、特定の成膜処理用ガスを所定量だけ導入した場合、真空チャンバ内の雰囲気には、理論的には当該成膜処理用ガスが所定量だけ含まれることになるので、最適な条件での成膜処理が可能になる。
【0004】
具体的な真空成膜の方法としては、真空蒸着、スパッタリング、CVD、イオンプレーティング、プラズマ放電、グロー放電、電子線照射、紫外線照射、材料噴霧など種々の方法が知られている。また、成膜対象となる基材としては、金属板、ガラス板、金属フィルム、プラスティックフィルム、紙など多岐に渡っており、既に成膜が完了した基材に対して、更に上層の成膜を形成する処理を繰り返して行ない、多層構造を得る工程が行われることも少なくない。真空成膜法では、成膜対象となる基材を真空チャンバ内に収容し、チャンバ内を排気して一定の真空度に維持した状態で所定の成膜方法を実行することになる。必要に応じて、チャンバ内には成膜処理用ガスが導入される。
しかし、上記の真空成膜法を行なう場合、使用できる基材に対し、耐溶剤性、耐熱性等の限定された条件がある。
【0005】
従来、光の反射防止技術には、次のような技術があった。すなわち、ガラスやプラスティック表面に反射防止塗料を塗布する方法、ガラス等の透明基板の表面に0.1μm程度のMgF等の極薄膜や金属蒸着膜を設ける方法、プラスティックレンズ等のプラスティック表面に電離放射線硬化型樹脂を塗工し、その上に蒸着によりSiOやMgFの膜を形成する方法(例えば、特許文献1参照)、電離放射線硬化型樹脂の硬化型膜上に低屈折率の塗膜を形成する方法(例えば、特許文献2参照)があった。
また、プラスティックフィルム上に高屈折率層の酸化チタン層をプラズマCVD法で形成し、その最外層に低屈折率層を形成した反射防止フィルムが知られている。(例えば、特許文献3参照)
【0006】
【特許文献1】
特開平7−27902号公報
【特許文献2】
特開2000−347003号公報
【特許文献3】
特開2002−200692号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来の反射防止技術では、反射防止性において十分に満足できるものではない。
また、従来公知のプラズマCVD法により製造した高屈折率層としての酸化チタン層は成膜速度が速いが、高温高湿下に放置したり、紫外線照射による環境試験後には、基材との密着性に欠けるといった欠点があった。これは酸化チタン層に含まれる有機物が高湿高温放置・紫外線照射により、何らかの反応を起こしており、これにより層の成分が変化していると考えられる。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、酸化チタン層をプラズマCVD法により短時間で製造した場合であっても、長時間の高湿高温放置後・紫外線照射後の密着性や透明性が良好である、酸化チタン層の製造方法、さらにこの方法を用いて製造した酸化チタン層、及び当該酸化チタン層を積層体中に用いた反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載するように、有機チタン化合物ガスと水素ガスとを反応室内へ供給し、これらのガスを放電させてプラズマ状態とし、前記反応室内に載置された基材上に酸化チタン層を積層させるプラズマCVD法であって、前記反応室内に有機チタン化合物ガス、水素ガス以外に酸素ガスと反応不活性ガスを供給することで酸化チタン層を製造する方法である。
【0010】
従来のプラズマCVD法においては、層成分中に有機チタン化合物ガスと酸素ガスとが十分に反応せず、未反応のまま残った基が存在しているために、長時間の高湿高温放置後・紫外線照射後の密着性に欠ける問題が生じる。
しかしながら、本発明によれば、有機チタン化合物ガスと酸素ガスと水素ガスと反応不活性ガスとを反応室内へ供給し、これらのガスを放電させてプラズマ状態とし、前記反応室内に載置された基材上に酸化チタン層を積層させるので、従来のプラズマCVD法においては残基となる部分においても、酸素や水素と反応することが可能となる。その結果、層成分中に残基が生じることがない。
【0011】
したがって、本発明の方法により製造された酸化チタン層は、長時間の高湿高温放置後・紫外線照射後でも密着性に問題が生じることはなく、さらに層中の残基が酸素や水素と反応することにより、層成分が変化することもないため屈折率が変化することもない。
本発明によれば、前記請求項1に記載の酸化チタン層の製造方法において、前記水素ガスが酸素ガスに同伴されて、反応室内に供給されるので、酸素及び水素が十分に存在している状況下において、酸化チタン層を積層せしめることができる。
【0012】
また、本発明の酸化チタン層は、上記課題を解決するために、請求項2に記載するように、前記請求項1に記載の酸化チタン層の製造方法により製造されたことを特徴とする。
本発明によれば、酸化チタン層は前記請求項1に記載の酸化チタン層の製造方法により製造されているので、当該酸化チタン層中にいわゆる残基が存在することがない。したがって、層形成後において、層の成分が変化することもなく、安定した屈折率を有する酸化チタン層であると言える。
【0013】
本発明の酸化チタン層は、上記課題を解決するために、請求項4に記載するように、前記請求項2に記載の酸化チタン層の赤外吸収域3300cm−1と1400〜1500cm−1にOH基のピークが見られないことを特徴とするものである。
また、酸化チタン層は前記請求項3、4に記載するように、有機物の割合が非常に小さいため、長時間の高湿高温放置・紫外線照射の条件下においても、初期状態と同等の密着性を維持している。
ここでの初期状態と同等とは、クロスハッチによる密着性テストにおいて、100/100であることを示す。
【0014】
さらに、本発明は、上記問題を解決するために、請求項5に記載するように、基材と、基材上に位置し、複数の薄層が積層されてなる積層体と、を有する反射防止フィルムであって、前記積層体中の複数の薄層のうち少なくとも1層が前記請求項3に記載の酸化チタン層であり、つまり屈折率が1.9以上2.5以下(λ=550nm)で、酸化チタン層の組成がTiO:H(x=1.0〜2.0、y=0.1〜0.5)であることを特徴とする。本発明の反射防止フィルムは、光学特性として、反射率が5〜25%(λ=550nm)であり、透過率が70〜90%(λ=550nm)である。
【0015】
本発明によれば、反射防止フィルムは、基材と、基材上に位置し、複数の薄層が積層されてなる積層体と、を有し、前記積層体中の複数の薄層のうちの少なくとも1層が前記請求項3に記載の酸化チタン層であるので、長時間の高湿高温放置後・紫外線照射後でも当該酸化チタン層は残基を有していないことから、その直下の層との密着性にも優れている。そのため積層体が剥離してしまうことも防止できる。
また、本発明によれば、反射防止フィルムは、その反射率が5〜25%(λ=550nm)であるので、従来から用いられている様々な用途に使用することが可能である。
さらに本発明によれば、反射防止フィルムは、その透過率が70〜90%(λ=550nm)であるので、透明性においても十分であり、上記と同様に様々な用途に使用することが可能である。
【0016】
また本発明は、上記問題を解決するために、請求項6に記載するように、前記請求項5に記載の反射防止フィルムであって、積層体の構成が基材側から、屈折率が1.55以上1.80未満(λ=550nm)の中屈折率層としてのシリカ層、請求項3に記載の高屈折率層としての酸化チタン層、屈折率が1.55未満の低屈折率層としてのシリカ層であることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0017】
さらに本発明は、上記問題を解決するために、請求項7に記載するように、前記請求項5に記載の反射防止フィルムであって、積層体の構成が基材側から、前記請求項3に記載の高屈折率層としての酸化チタン層、屈折率が1.55未満の低屈折率層としてのシリカ層、前記請求項3に記載の高屈折率層としての酸化チタン層、屈折率が1.55未満の低屈折率層としてのシリカ層であることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0018】
反射防止フィルムの積層体を上記のような層構成とすることにより、層構成中における高屈折率としての酸化チタン層にあっては、長時間の高湿高温放置後・紫外線照射後でも密着性に問題が生じることはなく、さらに層中の残基が酸素や水素と反応することにより、層成分が変化することもないため屈折率が変化することもないという作用効果を発揮し、さらに上記層構成とすることによって効率よく光の反射を防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態について、詳述する。
(1)酸化チタン層の製造方法
まず、本発明の酸化チタン層の製造方法について、図面を用いて説明する。
本発明の酸化チタン層の製造方法は、有機チタン化合物ガスと水素ガスとを反応室内へ供給し、これらのガスを放電させてプラズマ状態とし、前記反応室内に載置された基材上に酸化チタン層を積層させるプラズマCVD法であって、前記反応室内に、有機チタン化合物ガス及び反応不活性ガス、酸素ガス、水素ガスを供給することで酸化チタン層を積層させるものである。
【0020】
図1は、本発明の方法を実施するためのプラズマCVD装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すプラズマCVD装置1は、平行平板型のプラズマCVD装置であり、反応室2と、有機チタン化合物ガス用タンク3と、酸素ガス用タンク4と、水素ガス用タンク5と、真空ポンプ6から概略構成されている。そして、反応室2内には上部電極7と下部電極8が設置されており、上部電極7には電源装置9が接続されている。
【0021】
当該プラズマCVD装置1により、本発明の酸化チタン層を製造する際には、基材11を上部電極7上に載置し、反応室2内を真空ポンプ6を用いて、減圧する。そして、上部電極7に所定の電力を印加する。
この状態で、前記有機チタン化合物ガス用タンク3から有機チタン化合物ガスをキャリアガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等の反応不活性ガス)と反応室2内の電極近傍へ導入すると共に、酸素ガス用タンク4から酸素ガスを水素ガス用タンク5から水素ガスを反応室2内の電極近傍へ導入する。この際、反応室2と真空ポンプ6の間にあるバルブ10の開閉度を制御し、反応室2内の圧力を一定に保つ。こうすることにより、反応室2内に導入された有機チタン化合物ガスは放電されてプラズマ状態となり、有機チタン化合物ガスと共に反応室2内に導入された酸素ガス、水素ガスと化学反応を起こし、その結果、基材11上に酸化チタン層が形成される。
【0022】
このように形成された酸化チタン層は、多量に存在する酸素ガスと水素ガスと充分に化学反応を起こすことが可能であるため、層形成後において長時間の高湿高温放置後・紫外線照射後も酸化チタン層の成分が変化することなく屈折率も安定する。
本発明の方法を実施するためのプラズマCVD装置1における反応室や、各種ガス用のタンク、及び真空ポンプ等については、本発明については特に限定されず、従来公知のプラズマCVD装置と同様のものを用いることができる。
ここで、反応室内に導入するガスの量についても、特に限定するものではなく、成層する酸化チタン層の厚さや、成層スピードにより任意に決定することができる。
【0023】
本発明の方法で用いる有機チタン化合物ガスとしては、Ti(i−OC(チタンテトラi−プロポキシド)、Ti(OCH(チタンテトラメトキシド)、Ti(OC(チタンテトラエトキシド)、Ti(n−OC(チタンテトラn−プロポキシド)、Ti(n−OC(チタンテトラn−ブトキシド)、Ti(t−OC(チタンテトラt−ブトキシド)、Ti(sec−OC(チタンテトラsec−ブトキシド)等のチタンアルコキシド、及びTiCl(四塩化チタン)等が挙げられる。その中でも、Ti(i−OC(チタンi−プロポキシド)、Ti(t−OC(チタンテトラt−ブトキシド)は蒸気圧が高いという理由で好適である。
【0024】
このような有機チタン化合物ガスを反応室へ導入する際には、当該ガスを反応室内に均一に分布させるためのアシストガスを用いてもよい。この場合、当該アシストガスについては特に限定されない。
本発明の酸化チタン層の製造方法は、有機チタン化合物ガス及び反応不活性ガスと酸素ガス、水素ガスとを反応室内へ供給し、これらのガスを放電させてプラズマ状態とし、前記反応室内に載置された基材上に酸化チタン層を積層させることを特徴とするプラズマCVD法であれば、特に限定されるものではなく、必ずしも上記の図1に示す平行平板型のプラズマCVD装置1を用いなくてもよい。
【0025】
次に、本発明の酸化チタン層の製造方法を実施するためのプラズマCVD装置の他例を示す概略構成図である図2をもとにして、説明する。
図2は巻き取り型のプラズマCVD装置の概略構成図である。当該巻き取り型のCVD装置1は基材11が長尺のフィルムである場合に好適に用いられるものであり、その基本的な構造は図1に示す平行平板型のプラズマCVD装置と同様である。
【0026】
図2に示す巻き取り型のプラズマCVD装置1では、連続ウェッブ状の基材フィルム11が基材巻き出し部12より巻き出されて真空容器13中のプラズマCVDの反応室14に導入される。反応室14は、成膜用ドラム18の外周に沿って設置されている。これは、積層膜が形成される基材11は、成膜用ドラム18と同期しながら反応室14内に挿入され、かつ成膜用ドラム18上において積層膜を形成するものであることから、このように配置することにより連続して膜を積層することができる。
【0027】
真空容器13の全体は、真空ポンプ15により、排気される。また、同時に反応室14には、有機チタン化合物ガス用タンクから規定流量の有機チタン化合物ガス(原料ガス)が供給され、活性ガス(酸素ガス、水素ガス等であり、原料ガスと反応して真空成膜を生成するための反応ガスの働きをもつ)と不活性ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等のガスで原料ガスとの反応性の低いガス)がそれぞれ配管を利用して、ガス導入口16から供給され、反応室14の内部は、常に一定圧力のこれらのガスで満たされている。また各配管は、液化を防ぐためにヒーターなどで加熱する場合もある。(特に有機チタン化合物ガスは液化しやすいので加熱する場合がある。)
【0028】
基材フィルム11は、基材巻き出し部12から、反転ロール17を経て、成膜用ドラム18に巻きつき、成膜用ドラム18の回転と同期しながら反転ロール17′の方向に送られていく。この時、成膜用ドラム18は温度コントロールが可能であり、基材フィルム11の表面温度と成膜用ドラム18の表面温度はほぼ等しい。従って、プラズマCVD時に酸化チタンが堆積する基材フィルム11の表面温度、すなわちプラズマCVDの成膜温度を任意にコントロールできる。この例においては、プラズマCVD法により、酸化チタン層22を基材フィルム11上に成膜する場合の成膜温度を、そのときの成膜用ドラム18の表面温度により表示される。
【0029】
電極19と成膜用ドラム18との間には、電源20によりRF電圧が印加される。このとき、電源の周波数は、ラジオ波に限らず、直流からマイクロ波まで適当な周波数を使用することも可能である。そして、電極19と成膜用ドラム18の間にRF電圧を印加することにより、この両電極の周辺にプラズマ21が発生する。そして、このプラズマ21中で原料ガスと酸素ガス、水素ガスが反応し、真空成膜を生成して成膜用ドラム18に巻き付いた基材フィルム11上に堆積して、高屈折率層の酸化チタン層22が形成される。その後、反転ロール17′を経て、基材巻き取り部12′で巻き取られる。
【0030】
上記のように、プラズマCVD法では、プラズマ21により原料ガスと酸素ガス、水素ガスが化学反応し、成膜用ドラム18により適切な温度に冷却された基材フィルム11上に堆積して、真空薄膜を形成するので、基材11が高温にさらされ、伸び、変形、カール等することなく、酸化チタン層22の形成が可能である。さらに、プラズマCVD法においては、材料ガス流量・圧力、放電条件、基材11の送りスピードのコントロールにより、形成される薄膜の屈折率、膜厚等を広範囲でコントロールでき、所望の光学特性の膜を得ることができる。
また、プラズマCVD法には、プラズマを発生するために用いる電力の印加方法の違いにより、容量結合型プラズマCVD法と誘導結合型プラズマCVD法の2種類があるが、本発明においてはどちらのプラズマCVD法を用いることも可能である。
【0031】
(2)酸化チタン層
次に、本発明の酸化チタン層について説明する。
本発明の酸化チタン層は、前記で説明した本発明の酸化チタン層の製造方法により製造されたことに特徴を有している。当該方法により製造された酸化チタン層は、層の成分中にいわゆる残基がない。したがって、長時間の高湿高温放置後・紫外線照射後においても屈折率が変化することがないため、本発明の酸化チタン層は反射防止フィルムにおける積層体を構成する薄層として、好適に用いることができる。
【0032】
また、本発明の酸化チタン層の成分としては、相対原子数で、Ti:O:C=1:2.2〜2.7:0.1〜0.5であり、Ti−O−CO−Ti結合のような炭酸エステルや炭酸塩がほとんど含まれないもの、つまり以下に示すXPS測定装置、測定条件でXPS測定を行った際に、炭酸エステルや炭酸塩が検出限界以下のものである。
【0033】
(XPS測定装置)
VG Scientific 社製:XPS(ESCAVAB 220I−XL)
(XPS測定条件)
X線源: Monochromated Al Kα
X線出力:10KV、20mA(200W)
レンズ:Large Area XL
アパーチャ開度:F.O.A=open,A.A=open
測定領域:700μmφ
荷電中和:電子中和銃 +4V、中和補助マスク使用
光電子脱出深度:90度
【0034】
(3)反射防止フィルムについて
次に、上述してきた本発明の酸化チタン層を用いた反射防止フィルムについて説明する。
図3〜5に示すように、本発明の反射防止フィルム27は基材11と、この基材11上に設けられており、複数の薄層(反射防止層26)が積層されてなる積層体であり、当該反射防止積層体の一層には、上述の本発明の酸化チタン層22が用いられていることに特徴を有するものである。
【0035】
以下に図を用いて本発明の反射防止フィルムを構成する基材、基材上に設けられる複数の薄層、すなわち反射防止層についてそれぞれ説明する。
(基材)
まず、基材11について説明する。
本発明の反射防止フィルムにおいて、基材は、当該反射防止フィルムの土台となる部分である。基材は可視光域で透明な高分子フィルムであれば特に限定されるものではない。前記高分子フィルムにおいては、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリウレタン系フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネイトフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、トリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、アクリロニトリルフィルム、メタクリロニトリルフィルム等が挙げられる。さらには、無色のフィルムがより好ましく使用できる。中でも、一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムが透明性、耐熱性に優れていることから好適に用いられ、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。また光学異方性のない点で、トリアセチルセルロースも好適に用いられる。高分子フィルムの厚みは、通常は6〜188μm程度である。
【0036】
上記のプラスティックフィルムの厚さは、9〜100μmの範囲、好ましくは12〜38μmの範囲から適宜選択実施される。プラスティックフィルムの厚さが9μm未満の場合には、プラスティックフィルムに皺、カール等の欠点が発生し易く、取り扱いにくいので好ましくない。
【0037】
(反射防止層)
次に、上記基材上に設けられる複数の薄層である反射防止層26について説明する。
本発明の反射防止フィルム(反射防止積層体)は、基材上に複数の薄層が積層されてなるものであり、前記で説明した本発明の酸化チタン層を少なくとも一層有するものである。一般に反射防止フィルムは、光学特性の異なる複数の層を積層することにより、積層体全体で反射防止作用を奏するものである。本発明の反射防止フィルムにおける積層体は、上記本発明の酸化チタン層が少なくとも一層設けられていればよく、その他の層については反射防止フィルム全体として反射防止効果を奏するように自由に積層することが可能である。
【0038】
本発明における反射防止層26は、プラスティックフィルム上の基材上に、真空成膜法により少なくとも2層以上の構成で形成される。この2層以上の反射防止層は、各層の光学特性がそれぞれ異なるもので、各層の光学特性(特に屈折率)や層構成により、積層体全体として効果的に反射を防止するように構成されている。通常、反射防止層の積層体を構成する層は、その屈折率により、低屈折率層23、中屈折率層24、高屈折率層25に大別される。
【0039】
上記の低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層は、反射防止層を構成する薄膜において、その屈折率を相対的に比べた場合の違いから区別して名づけたものである。本発明では、低屈折率層は、比較的屈折率が低い層であり、1.55未満の屈折率を有する。また、高屈折率層は比較的が高い層で、1.80以上の屈折率をもつ。中屈折率層は、低屈折率層と高屈折率層の中間の屈折率を有するもので、1.55以上1.80未満の屈折率を有するものである。但し、本発明の屈折率は全て550nmの波長光で測定したものである。
【0040】
(低屈折率層)
本発明における反射防止層で使用する低屈折率層23は、屈折率が1.55未満のもので、屈折率が1.3〜1.5程度のものが好ましく、その範囲にあるものとしては、例えばシリカ膜(酸化シリカ膜)や、フッ化マグネシウムや酸フッ化ケイ素等が挙げられる。
光学特性に関し、低屈折率材料に求められる物性はフッ化マグネシウムや酸フッ化ケイ素の方がシリカ膜よりも優れている。しかし、フッ化マグネシウム等は、機械強度や耐湿性等がシリカ膜に比べ劣るので、その用途によっては、強度向上層やバリア層を追加して積層する等の手段との併用が好ましい。その点において、シリカ膜については、前記フッ化マグネシウム等のように併用手段等を特に必要としないため、総合的には最も好適である。
【0041】
低屈折率層の形成方法は、プラズマCVD法、蒸着法、もしくはスパッタリング法等の真空成膜法により形成することができ、その膜厚は10〜1000nm程度であり、10〜200nmの範囲が好ましい。その膜厚が少なすぎると、屈折率の異なる層と積層させて反射防止効果がほとんど期待できなくなり、また膜厚が多すぎると、層の圧力により基材変形や層剥がれの発生する場合があり好ましくない。
低屈折率層として、シリカ膜がプラズマCVD法により形成されたものが好ましく、特に好ましくは、プラスティックフィルムの温度が、−10〜150℃に制御されてシリカが積層された反射防止フィルムが好ましい。このようにして積層されたシリカ膜は、膜厚分布に優れており、反射防止フィルムとして好適である。
【0042】
上記のプラズマCVD法によるシリカ膜を形成するために、その原料ガスとしては、シラン、ジシラン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、テトラメトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラエトキシシラン等のSi系化合物を用いることが可能である。
【0043】
(中屈折率層)
本発明の反射防止層における中屈折率層24は、反射防止機能を高めるために用いられる層である。この中屈折率層は、可視光域で透明であり、かつ屈折率が1.55以上1.80未満の範囲内となる物質で形成された層であれば、特に限定されるものではない。具体的な中屈折率層を形成するための物質としては、例えば、不純物の少ない酸化シリコン、炭素含有酸化シリコン、Al、SiN、SiONや、ZrO、SiO、ZnOの微粒子を有機ケイ素化合物等に分散したもの等が用いられる。また、中屈折率層は必ずしも一層である必要もなく、複数の異なった層を積層して全体として上記の屈折率となるような層構成とすることにより当該積層膜を中屈折率層とすることも可能である。
【0044】
中屈折率層の形成方法は、プラズマCVD法、蒸着法、もしくはスパッタリング法等の真空成膜法により形成することができ、その膜厚は10〜1000nm程度であり、10〜200nmの範囲が好ましい。その膜厚が少なすぎると、屈折率の異なる層と積層させて反射防止効果がほとんど期待できなくなり、また膜厚が多すぎると、層の圧力により基材変形や層剥がれの発生する場合があり好ましくない。
中屈折率層は、炭素を含有する酸化シリコン層(SiOxCy)が好ましく用いられる。それは、酸化シリコン層に炭素を含有させることにより、屈折率を所望の範囲に調整することが容易にできるからである。また、中屈折率層は、次に説明する高屈折率層、前記に説明した低屈折率層を含めて、2層以上から構成される反射防止層全ては、各層の成層条件を比較的容易に管理でき、また複数の薄層を同時に形成することができるプラズマCVD法により形成することが望ましい。
【0045】
(高屈折率層)
本発明の反射防止層における高屈折率層25は、可視光域で透明性を有し、その屈折率が1.80以上(λ=550nm)である。この高屈折率層として、金属酸化物薄膜が挙げられ、具体的には、酸化チタン、ITO(インジウム/スズ酸化物)層、Y層、In層、Si層、SnO層、ZrO層、HfO層、Sb層、Ta層、ZnO層、WO層等を挙げることができ、この中でも特に酸化チタンまたは高抵抗を示すITO層を用いることが好ましい。但し、本発明における反射防止フィルムの反射防止積層体では、反射防止層として高屈折率層を1層しか使用しない場合は、本発明の酸化チタン層を高屈折率層とする。また、反射防止層として図5に示すように、高屈折率層を2層以上用いる場合は、その高屈折率層のうち少なくとも1層は本発明の酸化チタン層とする。
【0046】
高屈折率層の形成方法は、プラズマCVD法、蒸着法、もしくはスパッタリング法等により形成でき、高屈折率層の膜厚は5〜300nm程度であり、10〜150nmの範囲が好ましい。その膜厚が少なすぎると、屈折率の異なる層と積層させて反射防止効果がほとんど期待できなくなり、また膜厚が多すぎると、層の圧力により基材変形や層剥がれの発生する場合があり好ましくない。
【0047】
また、本発明の反射防止フィルムにおいては積層体以外に、ハードコート層を、設けることも可能である。
本発明に用いられるハードコート層は、本発明の反射防止フィルムに強度を持たせることを目的として形成される層である。従って反射防止フィルムの用途によっては必ずしも必要なものではない。ハードコート層を形成するための材料は、可視光域で透明な材料であって、反射防止フィルムに強度をもたせることができるものが必要であり、その強度としては、JIS K5400で示す鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すことが好ましい。
【0048】
具体的には、熱硬化型樹脂及び/又は電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましく、さらに具体的には、アクリレート系の官能基をもつもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル、ポリエーテル、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン、ポリチオールポリエン系樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート(以下、アクリレートとメタアクリレートとを(メタ)アクリレートと記載する。)等のオリゴマー又はプレポリマー及び反応性の希釈剤であるエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びに多官能モノマー、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、へキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含むものが使用される。
【0049】
更に、上記の電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂として使用するときは、これらの中に光重合開始剤として、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して使用することが好ましい。
【0050】
上記の電離放射線硬化型樹脂には、一般式RmSi(OR′)nで表される反応性有機ケイ素化合物(式中のR、R′は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+n=4であり、そしてm及びnはそれぞれ整数である。)を含ませることもできる。このようなケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
以上のようなハードコート層の膜厚は、通常1〜30μmの範囲であり、その形成方法は、通常のコーティング方法を用いることが可能であり、特に限定されるものではない。ハードコート層の厚みが薄すぎると、その上に形成する各層の硬度を維持できなくなり、また厚すぎると、反射防止フィルム全体のフレキシブルさを低下させ、また、硬化に時間がかかる等、生産効率の低下をまねく。
【0052】
ハードコート層を設ける位置であるが、ハードコート層を設ける目的は反射防止フィルムに強度を持たせることであり、反射防止機能を向上せしめるためのものではないため、低屈折率層として最上層に位置するシリカ層から離れた位置に設置することが好ましく、基材フィルムのすぐ上に設置することが好ましい。
なお、本発明は、上述してきた反射防止フィルム及びその製造方法に限定されるものではない。上記の実施の形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的範囲と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。
(実施例1)
図2の装置を使用して、基材として厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、及びSi基板を用い、当該基材上に酸化チタン層を形成した。有機チタン化合物ガスとしては、85℃で気化させたチタンテトライソプロポキシドTi(i−OCを用いた。有機チタン化合物ガス、酸素ガス、及び水素ガスのそれぞれの流量は下記に示す通りである。今回使用したプラズマCVD装置は容量結合型で、高周波電源として13.56MHzのRF電源を用いた。また連続成膜時の基材の高分子フィルムの送り速度は、1m/minである。その他の条件は以下に示す。
【0054】
原料ガス:Ti(O−iC
原料ガス(モノマー)流量:30sccm
但し、原料ガスには有機チタン化合物ガスとキャリアガスとして反応不活性ガスのアルゴンガスを混合したものを使用している。
ガスの流量:3000sccm
Heガスの流量:200sccm
ガスの流量:300sccm
印加電力:1.0kW
【0055】
尚、上記のガス流量単位sccmは、standard cubic cm per minuteのことである。
以上の条件でポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成した酸化チタン層における屈折率等の測定結果を以下に示す。
【0056】
<酸化チタン層測定結果>
膜厚:40nm
成膜速度:40nm・m/min
屈折率(λ=550nm):2.25
酸化チタン層の組成:TiO1.60.2:H
【0057】
<上記薄膜測定に使用した装置>
膜厚測定 エリプソメーター
型番 UVISELTM メーカー JOBIN YVON
屈折率測定 エリプソメーター
型番 UVISELTM メーカー JOBIN YVON
なお、上記の組成分析には光電子分光分析装置を用い、赤外吸収の測定には赤外吸収分光分析装置を用いた。
【0058】
さらに酸化チタン層を製造して、300時間のUV(SWOM,B.P63℃)照射、500時間の加熱加湿放置(60℃、90%RH)試験後の基材と酸化チタン層との密着性は初期状態と同等であり、屈折率も2.25と安定していることが分かった。
【0059】
(比較例1)
水素ガスを供給しないこと以外は、すべて上記実施例1と同様の条件で酸化チタン層を製造した。また、製造した酸化チタン層の測定に使用した装置も上記実施例1と同様のものである。その得られた酸化チタン層の屈折率等の測定結果を以下に示す。
【0060】
<酸化チタン層測定結果>
膜厚:40nm
成膜速度:40nm・m/min
屈折率(λ=550nm):2.25
酸化チタン層の組成:TiO1.60.2:H
【0061】
以上に示した酸化チタン膜の形成結果のごとく、屈折率2.25の均質な酸化チタン膜がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成できた。しかし、この酸化チタン膜を300時間のUV(SWOM,B.P63℃)照射、500時間の加熱加湿放置(60℃、90%RH)試験後には基材と酸化チタン層との密着性に欠けるものであった。
上記の実施例1と比較例1で得られた各酸化チタン層について、赤外分光スペクトルを測定すると、図7に示す結果が得られた。これにより、比較例1の酸化チタン層は、赤外吸収域3300cm−1と1400〜1500cm−1にOH基のピークが認められ、酸化チタンの層成分中に有機チタン化合物ガスと酸素ガスとが十分に反応しない際に生じる未反応の有機物である残基が、存在していることを示している。その未反応の残基は、高湿高温放置・紫外線照射により、何らかの反応を起こして、酸化チタン層の成分が変化すると考えられ、基材との密着性の低下や、屈折率の低下等の性能が劣化してしまうことを裏付けている。
それに対し、実施例1の酸化チタン層は、赤外吸収域3300cm−1と1400〜1500cm−1にOH基のピークが見られず、酸化チタンの層成分中に有機チタン化合物ガスと酸素ガスとが十分に反応しない際に生じる未反応の有機物である残基が、存在していないことを示している。したがって、酸化チタン層成分が変化することもないため、基材との密着性が低下せず、また屈折率が変化することもないことを示している。
【0062】
(実施例2)
プラズマCVD装置を用いて、下記に示す積層構造を有する本発明の反射防止フィルムを製造した。各層の形成条件を以下に示す。
透明基材フィルムとして、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。
次いで、その基材フィルム上にウェットコートにより、下記の条件でハードコート層を設けた。
【0063】
(ハードコート層の条件)
紫外線硬化型樹脂PET−D31(大日精化工業(株))を塗工方式により形成した。
紫外線硬化条件:480mJ
厚さ:乾燥時6μm
【0064】
次に、公知のロール巻き取り機構を備えた、図6に示すようなプラズマCVD装置を用いて、ハードコート層側から、中屈折率層24、高屈折率層25、低屈折率層23の3層からなる反射防止層26を形成した。
すなわち、各反応室(a,b,c)にはガス成分としてはアルゴン、酸素、ヘリウム混合ガスを使用した。反応室aで中屈折率層を形成し、反応室bで高屈折率層を形成し、反応室cで低屈折率層を形成した。また、連続成膜時の基材の送り速度は1m/minである。その他の条件は以下に示す。
【0065】
(中屈折率層の形成)
原料ガス:(CHSiOSi(CH
原料ガス(モノマー)流量:1000sccm
ガスの流量:250sccm
Heガスの流量:1000sccm
Arガスの流量:150sccm
印加電力:1.0kW
【0066】
(高屈折率層の形成)
高屈折率層としての本発明の酸化チタン層は、実施例1と同様の条件で形成した。
【0067】
(低屈折率層の形成)
原料ガス:(CHSiOSi(CH
原料ガス(モノマー)流量:600sccm
ガスの流量:3000sccm
Arガスの流量:150sccm
印加電力:0.7kW
【0068】
上記条件で形成した反射防止フィルムは、高分子フィルム基材のわずかな伸び、変性もなく、良好な状態であった。また、300時間のUV(SWOM,B.P63℃)照射、500時間の加熱加湿放置(60℃、90%RH)試験後にも密着性は初期と同等のものであった。
【0069】
【発明の効果】
本発明の酸化チタン層の製造方法によれば、有機チタン化合物ガスと水素ガスとを反応室内へ供給し、これらのガスを放電させてプラズマ状態とし、前記反応室内に載置された基材上に酸化チタン層を積層させるプラズマCVD法であって、前記反応室内に有機チタン化合物ガス、水素ガス以外に酸素ガスと反応不活性ガスを供給することで、酸化チタン層を積層させるので、従来のプラズマCVD法においては残基となる部分においても、水素と反応することが可能となる。その結果、300時間のUV(SWOM,B.P63℃)照射、500時間の加熱加湿放置(60℃、90%RH)試験後にも密着性は初期と同等の状態を保つことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸化チタン層の製造方法を実施するためのプラズマCVD装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の酸化チタン層の製造方法を実施するためのプラズマCVD装置の他例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の反射防止フィルムの他例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の反射防止フィルムの他例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の反射防止フィルムの反射防止層を積層して製造するプラズマCVD装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】実施例1と比較例1で得られた各酸化チタン層の赤外分光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
1   プラズマCVD装置
2   反応室
3   有機チタン化合物ガス用タンク
4   酸素ガス用タンク
5   水素ガス用タンク
6   真空ポンプ
7   上部電極
8   下部電極
9   電源装置
10   バルブ
11   基材
12   基材巻き出し部
12′  基材巻き取り部
13   真空容器
14   反応室
15   真空ポンプ
16   ガス導入口
17   反転ロール
17′  反転ロール
18   成膜用ドラム
19   電極
20   電源
21   プラズマ
22   酸化チタン層
23   低屈折率層
24   中屈折率層
25   高屈折率層
26   反射防止層
27   反射防止フィルム(反射防止積層体)
a1、b1、c1   電極
a2、b2、c2   ガス導入口

Claims (7)

  1. 有機チタン化合物ガスと水素ガスとを反応室内へ供給し、これらのガスを放電させてプラズマ状態とし、前記反応室内に載置された基材上に酸化チタン層を積層させるプラズマCVD法であって、前記反応室内に、有機チタン化合物ガス及び反応不活性ガス、酸素ガス、水素ガスを供給することで酸化チタン層を積層させることを特徴とするプラズマCVD法を用いた酸化チタン層の製造方法。
  2. 前記請求項1に記載の酸化チタン層の製造方法により製造されたことを特徴とする酸化チタン層。
  3. 前記請求項2に記載の酸化チタン層の屈折率が1.9以上2.5以下(λ=550nm)で、酸化チタン層の組成がTiO:H(x=1.0〜2.0、y=0.1〜0.5)であることを特徴とする酸化チタン層。
  4. 前記請求項2に記載の酸化チタン層の赤外吸収域3300cm−1と1400〜1500cm−1にOH基のピークが見られないことを特徴とする酸化チタン層。
  5. 基材と基材上に位置し、複数の薄層が積層されてなる積層体とを有する反射防止フィルムであって、前記積層体中の複数の薄層のうち少なくとも1層が前記請求項3に記載の酸化チタン層であることを特徴する反射防止フィルム。
  6. 前記請求項5に記載の反射防止フィルムであって、積層体の層構成が基材側から屈折率が1.55以上1.80未満の中屈折率層としてのシリカ層、前記請求項3に記載の高屈折率層としての酸化チタン層、屈折率が1.55未満の低屈折率層としてのシリカ層であることを特徴とする反射防止フィルム。
  7. 前記請求項5に記載の反射防止フィルムであって、積層体の層構成が基材側から前記請求項3に記載の高屈折率層としての酸化チタン層、屈折率が1.55未満の低屈折率層としてのシリカ層、前記請求項3に記載の高屈折率層としての酸化チタン層、屈折率が1.55未満の低屈折率層としてのシリカ層であることを特徴とする反射防止フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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