JP2004131331A - 溶融スラグを用いたタイルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融スラグを比較的多く配合でき、最高焼成温度を従来の天然原料を用いたタイルの場合より低く設定できる。
【解決手段】下水汚泥を溶融して得たスラグを篩分して篩下となる平均粒度0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以下のダストスラグ40〜60重量%と、粘土、陶石、長石から1種以上選択される一般的な陶磁器原料の粉砕物60〜40重量%とを混合し、調湿し、成形し、最高温度が950〜1150℃の範囲の焼成温度で焼成するタイルの製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融スラグを原料とした建築用タイルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、下水汚泥の処理として、800℃以上の温度で焼却して、減容化した焼却灰とし、これを埋め立てなどの利用していたが、近年、さらに減容化するとともに有害金属分の溶出が防止できるよう、高温で溶融した後、空冷または水冷して溶融スラグの状態にする減容化処理が広く用いられるようになってきた。
【0003】
この溶融スラグは、莫大な量として生成するもので、その有効利用が種々研究されている。しかしながらその大部分は、砕石の代替品として埋め立てに利用されるのが実態であり、大量に利用できる適当な用途は開発されていない。さらに、埋め立て用の場合には、粒径が約15mm以上の粗粒が利用されるものの、0.5mm以下のダスト分は、適当な活用方法がなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平4−124059号公報
また、これら溶融スラグを建築用陶磁器タイルの原料として利用することが、試みられている。例えば、特開平4−124059号公報には、「陶磁器質タイル」として、下水汚泥からなる溶融処理スラグを用いるタイルが開示されているが、この場合の溶融スラグは、カルシウム成分を20〜60重量%程度に調整して塩基度を高めたスラグであり、かつ、ろう石、珪砂、粘土、珪酸ソーダを配合して、焼成温度を1120〜1200℃程度に調整したものであった。このように、予め溶融スラグの塩基度を調整しなければならないという問題があった。
【0005】
【特許文献2】特開平10−259053号公報
また、特開平10−259053号公報には、タイル、ブロック、煉瓦、瓦などに用いられる「窯業製品」が開示されている。これは、いずれも廃棄物から生成される溶融スラグとフライアッシュとから構成するもので、廃棄物の利用率が95%以上で、焼成温度も800〜1000℃の極めて低いという特徴があるものの、フライアッシュを必須原料とする点に原料調達上の制約がある上、安定した製品が得られる焼成温度幅が狭く、生産技術上の問題があった。
【0006】
【特許文献3】特開平11−292612号公報
また、特開平11−292612号公報には、建築材料に利用する「緻密化焼結体」として、下水汚泥溶融スラグを骨材とし、これに低火度粉体を混合する手法が開示されている。ところがこの低火度粉体は、800〜1100℃で液相を生じる板ガラス屑、1号水ガラス、真珠岩粉末などの溶融助剤であり、一般的な原料でないため、原料調達上の制約があり、生産技術上の問題もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、溶融スラグを比較的多く配合でき、最高焼成温度を従来の天然原料を用いたタイルの場合より低く設定でき、かつ焼成時の変形が少ない、溶融スラグを用いたタイルの製造方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の問題は、下水汚泥溶融スラグと、粘土、陶石、長石から1種以上選択される一般的な陶磁器原料粉砕物とを混合し、調湿し、成形し、焼成する各工程からなることを特徴とする溶融スラグを用いたタイルの製造方法によって、解決することができる。
【0009】
また、本発明は、前記下水汚泥溶融スラグが、溶融炉で製造されるスラグを篩分して得られる平均粒度0.5mm以下、望ましくは0.1mm以下のダストスラグである形態の前記した溶融スラグを用いたタイルの製造方法として具体化できる。また、前記下水汚泥溶融スラグを40〜60重量%混合し、950〜1150℃の最高温度で焼成する形態の前記した溶融スラグを用いたタイルの製造方法に好ましく具体化される。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の溶融スラグを用いたタイルの製造方法に係る実施形態について説明する。
本発明は、下記に詳述する特徴ある原料を対象とした混合、調湿、成形、焼成の各工程から構成される。そして、先ず、本発明の特徴的な原料混合物は、下水汚泥を溶融して得た溶融スラグの粒子と、粘土、陶石、長石から1種以上選択される一般的な陶磁器原料の粉砕物とを組合せて主成分としたものである。本発明では、これら主成分の他に、10%以下のバインダ材、着色用顔料などの調整成分を添加できるのはもちろんである。
【0011】
この溶融スラグとしては、下水汚泥溶融スラグが利用されるのであるが、特に、溶融炉で製造されるスラグを篩分して得られる埋め立て用の粗粒スラグを生産したときに、篩下となる平均粒度0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以下のダストスラグを利用するのが本発明の特徴である。そして、本発明では、下水汚泥溶融スラグと組み合わされる特定の陶磁器原料との関係において、配合量の40〜60重量%を溶融スラグで占めることができる点も重要な特徴である。
【0012】
そして、本発明においては、前記溶融スラグの粒子に対して、粘土、陶石、長石から1種以上選択される一般的な陶磁器原料の粉砕物を組み合わせるものであり、溶融スラグの好ましい配合量の範囲40〜60重量%に対して、後記の低温度焼成や好ましい変形率を維持するためには、この陶磁器原料の配合量は、60〜40%が好適である。
【0013】
次に、これら陶磁器原料を個別に説明する。
先ず、粘土は、成形用配合物に可塑性を付与してプレス成形を容易にするとともに、焼成前の成形体の取り扱いに耐える強度を付与する成分であり、また焼成時にスラグ成分と反応しにくく、焼成時の変形を抑制する成分として重要である。
【0014】
長石は、アルカリを含むアルミナ珪酸塩であり、1200℃以上では、強力な溶融助剤として作用するが、本発明のような1150℃以下の焼成温度域では、溶融スラグと反応して、粘度の高いガラス成分を生じることにより、成形体の焼結を促進するが、スラグの欠点である焼成時の変形率が大きくなるのを抑制するものと思われる。
【0015】
陶石は、構成鉱物としては石英と絹雲母からなり、その性質は珪石と長石と粘土の複合的性質を示す。
【0016】
次に、本発明の製造工程において、特に指摘されるべき点を説明すると、第1に、粗粉砕が省略できる点にある。すなわち、利用される溶融スラグは、前記のような溶融炉で製造されるスラグを篩分して得られる前記粒度範囲の細粒であるダストスラグであるから、さらに粉砕する必要がなく、そのまま成形工程に適用可能なのである。また、この細粒の溶融スラグを用いる利点は、次に説明する焼成温度に重大な関係を持っている。
【0017】
第2には、焼成工程において、従来の天然原料を用いた一般の陶磁器タイルの焼成温度である1200〜1300℃に対して、本発明では、焼成温度は最高温度が950〜1150℃の範囲で焼成可能であり、その結果、焼成時のエネルギコストの削減効果は特に大きなものがある。
【0018】
本発明でこのような低温度焼成が可能となる理由は、配合される下水汚泥溶融スラグ粒子の溶融開始温度が基本的に低いことに基づく。本発明が利用する下水汚泥スラグは、ごみスラグと同様にSiO、CaO、Al、Fe、Pなどの無機酸化物成分を主成分とするが、Fe、Pなどの融点低下成分の含有量が大であることから、ごみスラグを利用する場合より、低温度焼成が可能となるのである。
【0019】
しかし、溶融スラグを用いたセラミック製品が多く提案されながら本格的に実用化されなかった理由は、小型の試験サンプルでは良好でも、実際の形状の荷口試験において軟化変形による形状不良が発生し、十分な歩留まりが得られなかったことによる。ところが、本発明では、前記した特定の陶磁器原料を配合することにより、低温焼成を可能としながら、焼成時の変形率が劣化しないので、低温度焼成が工業的に実現可能となったのである。
【0020】
【実施例】
次に、本発明の実施例について比較例とともに説明する。
先ず、この実施例と比較例に用いた原料の化学組成を表1に示す。なお、スラグは、一般的な下水汚泥溶融スラグであって、スラグ溶融炉で製造されたスラグを篩分して得られる平均粒度0.5mm以下のダストスラグを用いた。粘土は小松粘土、長石は砂姿長石、陶石は天草陶石であって、タイル原料として広く普及している原料である。
【0021】
【表1】原料の酸化物組成(重量%)
Figure 2004131331
RO:CaO+MgO
O:KO+Na
【0022】
本発明の実施例および範囲外の比較例の試料を次により製作した。
溶融スラグを除く前記各原料をジョークラッシャなどにより予め粒径2mm以下に粗粉砕し、次いでボールミルによって、200メッシュ(75μmアンダ)になるよう湿式粉砕した。これに前記溶融スラグを表2の配合率に応じて混合し、これをスプレードライヤにて、水分7〜10%に乾燥するとともに、粒径500μm程度の二次粒子に造粒して、成形用素地を得た。これを用いて、上下パンチ型金型にて150〜180MPaの加圧プレス成形を行い、サイズ45×90×7〜8.5(mm)の成形体を得た。
【0023】
得られた成形体を乾燥し、ガス加熱式トンネル炉で焼成した。最高焼成温度は、表2に示す通りである。なお、床用タイルの場合には、前記成形体の釉薬を施さない無釉式とすることができるが、壁用タイルの場合には、必要に応じて釉薬を片面に施す釉薬タイルとすることができる。
【0024】
【表2】実施例
Figure 2004131331
【0025】
【表3】比較例
Figure 2004131331
【0026】
表2の試験結果によれば、いずれの実施例において、従来のタイル焼成温度より100〜300℃低い焼成温度でありながら、建築用タイルとして好ましい品質である、吸水率 1%以下であって、曲げ強度100MPa以上の焼成体が得られた。また、変形率も10%以下であって、形状の整った焼成体を得ることができた。これに対して、表3に示す比較例(焼成温度が低い試料32の場合)は、吸水率が大、変形率が大、などとバランスのよい品質を得るのが困難であった。
【0027】
なお、吸水率は常法の水中煮沸法により測定し、また曲げ強度は、焼成試料について、スパン45mm、中央1点荷重方式の折り曲げ試験によって測定した。変形率は、タイルの側反り、ばちを変形率%として測定した。
【0028】
【発明の効果】
本発明の溶融スラグを用いたタイルの製造方法は、以上説明したように構成されているので、溶融スラグを40重量%以上配合するので、従来、用途のなかったダストスラグの好ましい利用方法であり、さらに最高焼成温度を従来の天然原料を用いたタイルの場合より低く設定できるから、焼成時のエネルギコストを顕著に節減できるうえ、高い歩留まりが期待できるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した溶融スラグを用いたタイルの製造方法として、工業的価値はきわめて大なるものがある。

Claims (3)

  1. 下水汚泥溶融スラグと、粘土、陶石、長石から1種以上選択される一般的な陶磁器原料粉砕物とを混合し、調湿し、成形し、焼成する各工程からなることを特徴とする溶融スラグを用いたタイルの製造方法。
  2. 前記下水汚泥溶融スラグが、溶融炉で製造されるスラグを篩分して得られる平均粒度0.5mm以下、望ましくは0.1mm以下のダストスラグである請求項1に記載の溶融スラグを用いたタイルの製造方法。
  3. 前記下水汚泥溶融スラグを40〜60重量%混合し、950〜1150℃の最高温度で焼成する請求項1または2に記載の溶融スラグを用いたタイルの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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