JP2004129840A - 脱臭体および脱臭体を用いた脱臭装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の吸着脱臭体である活性炭やゼオライト、シリカゲルでは、トイレ臭などの複合臭気、特に硫黄系の臭気を脱臭する能力が極めて低いという課題があった。また、粒状の活性炭、ゼオライト、シリカゲルなどは単位体積当たりの表面積が小さいため、臭気をフィルターに通したワンパスでの脱臭率が悪いという課題もあった。
【解決手段】硫化水素を吸着する能力が極めて高い化学吸着作用を有するマンガン、銅、コバルトの複合酸化物を用いることにより、トイレ臭に含まれる硫化水素を化学吸着作用により極めて高い脱臭能力で除去することができる。また、粉末状の化学吸着作用を有する吸着剤を、接着剤を利用したり、熱溶着などを利用したりすることにより繊維に担持することで、単位体積当たりの表面積を大きくすることができ、ワンパスでの脱臭率を向上させることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】硫化水素を吸着する能力が極めて高い化学吸着作用を有するマンガン、銅、コバルトの複合酸化物を用いることにより、トイレ臭に含まれる硫化水素を化学吸着作用により極めて高い脱臭能力で除去することができる。また、粉末状の化学吸着作用を有する吸着剤を、接着剤を利用したり、熱溶着などを利用したりすることにより繊維に担持することで、単位体積当たりの表面積を大きくすることができ、ワンパスでの脱臭率を向上させることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭体および脱臭装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来は、粒状の活性炭やゼオライトやシリカゲル等を充填し臭気を脱臭する脱臭体としたものや、粒状の活性炭を不織布同士の間にホットメルト系接着剤を用いて担持し臭気を脱臭する脱臭体としたものや、それらをファンにより空気を吸引しフィルタを通すことで脱臭を行う脱臭装置のフィルタに利用したものが大部分であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、活性炭やゼオライト、シリカゲルでは、トイレ臭などの複合臭気、特に硫黄系の臭気を脱臭する能力が極めて低いという課題があった。また、粒状の活性炭、ゼオライト、シリカゲルなどは単位体積当たりの表面積が小さいため、臭気をフィルターに通したワンパスでの脱臭率が悪いという課題もあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するものであり、化学吸着作用を有する吸着剤と、繊維とを備え、前記化学吸着作用を有する吸着剤が前記繊維に担持された脱臭体としたもので、硫黄系の臭気、特に硫化水素を吸着する能力が極めて高い化学吸着作用を有する吸着剤を用いることにより、トイレ臭に含まれる硫化水素を化学吸着作用により極めて高い脱臭能力で除去することができ、また化学吸着であるため、一度吸着した硫化水素を再度放出することがない。
【0005】
また、粉末状の化学吸着作用を有する吸着剤を、接着剤を利用したり、熱溶着などを利用したりすることにより繊維に担持することで、単位体積当たりの表面積を大きくすることができ、ワンパスでの脱臭率を向上させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、少なくとも化学吸着作用を有する吸着剤と、繊維とを備え、前記化学吸着作用を有する吸着剤が前記繊維に担持された脱臭体としたもので、トイレ臭に含まれる硫化水素や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を化学吸着作用により極めて高い脱臭能力で除去することができ、また化学吸着であるため、一度吸着した硫化水素を再度放出することがない。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤が接着剤により繊維に担持された請求項1記載の脱臭体としたもので、単位体積当たりの表面積を大きくすることができ、臭気の脱臭能力を高めた脱臭体を実現することができる。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、少なくとも接着剤に、樹脂を水に分散させた水性エマルジョン型接着剤を含む請求項2記載の脱臭体としたもので、樹脂のエマルジョン型接着剤を用いることにより、化学吸着作用を有する吸着剤を繊維に担持後も繊維の柔軟性を保持することができるため、脱臭体を自由に加工することができ、様々な脱臭用途に用いることができる脱臭体を実現できる。
【0009】
また、請求項4記載の発明は、水に分散させた樹脂がアクリル共重合樹脂である請求項3記載の脱臭体としたもので、化学吸着作用を有する吸着剤を繊維に担持後も繊維の柔軟性を保持することができ、またアクリル共重合樹脂は湿気に強く、高湿度雰囲気で用いても、化学吸着作用を有する吸着剤が繊維から剥がれ落ちることがない脱臭体を実現できる。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤が繊維に溶着により担持された請求項1記載の脱臭体としたもので、接着剤を用いずに化学吸着作用を有する吸着剤を繊維に担持することにより、化学吸着作用を有する吸着剤の表面が接着剤に覆われることがない。したがって、化学吸着作用を有する吸着剤の極めて高い脱臭能力を低下させることなく、繊維に担持することで単位体積当たりの表面積を大きくすることができ、臭気の脱臭能力を高めた脱臭体を実現することができる。
【0011】
また、請求項6記載の発明は、繊維に少なくとも熱可塑性樹脂製の繊維を含む請求項1もしくは5いずれか1項に記載の脱臭体としたもので、熱をかけることにより容易に化学吸着作用を有する吸着剤を繊維に担持することができ、臭気の脱臭能力を高めた脱臭体を実現することができる。
【0012】
また、請求項7記載の発明は、繊維が織布もしくは不織布を形成する請求項1、5、6いずれか1項に記載の脱臭体としたもので、化学吸着作用を有する吸着剤を担持した脱臭体を容易に望む形に加工する、もしくは望む形に加工したあと容易に化学吸着作用を有する吸着剤を担持することができる。
【0013】
また、請求項8記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤は少なくともマンガン、コバルト、銅、亜鉛のいずれかを含む酸化物、水酸化物、複合酸化物、あるいはその混合物である請求項1、2、5いずれか1項に記載の脱臭体としたもので、これらは硫化水素を主に硫酸化物や硫黄として化学吸着し脱臭するものだが、特にマンガン、コバルト、銅、亜鉛の酸化物や複合酸化物などは、硫酸化物を作りやすく、また硫化水素を分解し硫黄にしやすいため、硫化水素を除去する能力が非常に高い。
【0014】
また、請求項9記載の発明は、物理吸着作用を有する吸着剤を含む請求項1〜8いずれか1項に記載の脱臭体としたもので、ゼオライトやセピオライト、シリカ、アルミナ等の物理吸着作用を有する吸着剤を加えることで、トイレ臭のアンモニアや二硫化ジメチルに対する脱臭作用を高めることができる。
【0015】
また、請求項10記載の発明は、請求項1〜9いずれか1項に記載の脱臭体と前記脱臭体を吊す手段とを備えた脱臭装置としたもので、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高く、簡便に持ち運びができる脱臭装置を実現できる。
【0016】
また、請求項11記載の発明は、少なくとも臭気を含む空気を導入する吸気口と、前記臭気を含む空気を吸気する吸気手段と、前記吸気手段により吸気した空気に含まれる臭気を脱臭するフィルターと、前記フィルターにより脱臭された空気を排出する排気口とを備え、前記フィルターが請求項1〜9いずれか1項に記載の脱臭体である脱臭装置としたもので、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高い脱臭体をフィルターとして用いることで、ワンパスでの脱臭率を向上させた脱臭装置を実現できる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施例1)
図1、2は本発明の第一の実施例における脱臭体の模式図である。図1(a)、図2(a)は本実施例の脱臭体の模式図であり、図1(b)、図2(b)は脱臭体1の一部分を拡大した模式図である。図1の脱臭体1は、化学吸着作用を有する吸着剤2(以下、本実施例では化学吸着剤2という)を、接着剤3により繊維4に担持したものの集合体からなり、図1(b)は接着剤3を用いて化学吸着剤2を繊維4に担持した模式図を示す。本実施例では、化学吸着剤2にマンガン、銅、コバルトの複合酸化物(以下、本実施例では複合酸化物Aという)を用い、接着剤3に水性のアクリル共重合樹脂接着剤を用いた。なお、本実施例ではマンガン、銅、コバルトの複合酸化物を用いたが、これに限定するものではなく、マンガン、銅、亜鉛、コバルトのいずれかを含む酸化物、水酸化物、複合酸化物あるいはその混合物とすることにより、同様に硫化水素に対する強力な化学吸着作用を有する脱臭体とすることができる。
【0019】
本実施例で用いた複合酸化物Aは、特に硫化水素の除去に優れ、硫化水素を最終的に硫酸塩の形で化学吸着する、かつ硫黄の結晶として複合酸化物Aの表面に化学吸着するものである。また、同じ硫黄系臭気であるメチルメルカプタンを二硫化ジメチルに転化する触媒作用も有する。複合酸化物Aは0.1〜1μm程度の平均径であるが、この大きさに限定されるものではない。しかしながら、極力大きさを小さくした方が、同体積での表面積を大きく取ることができるので好ましい。さらに、化学吸着剤2と接着剤3の形は球状に限定されるものではなく、脱臭体の表面に凹凸を設けることにより、単位体積あたりの表面積を増やすことができるようになり、より効果的である。
【0020】
また、図2に示すように、脱臭体1に、化学吸着剤2に加え、物理吸着作用を有する吸着剤5(以下、本実施例では、物理吸着剤5という)を添加し、それらが接着剤3により繊維に担持されているものである。このような構成をとることにより、トイレ臭に含まれる硫化水素は化学吸着作用により除去でき、さらにアンモニアや二硫化ジメチルを物理吸着作用により除去できるため、トイレ臭が全般的に除去することが可能となる。また、メチルメルカプタンを二硫化ジメチルに転化する触媒作用をも有する化学吸着作用を有する吸着剤を用いることにより、トイレ臭に含まれるメチルメルカプタンは二硫化ジメチルとなり、物理吸着作用を有する吸着剤に吸着されることで、さらにトイレ臭が全般的に除去することが可能となる。本実施例では、物理吸着剤5として、疎水性ゼオライトを用いたが、親水性のゼオライト、セピオライト、シリカ、アルミナ等を用いても同様な効果が得られる。また、本実施例で用いた疎水性ゼオライトは0.1〜1μm程度の平均径であるが、この大きさに限定されるものではない。しかしながら、極力大きさを小さくした方が、同体積での表面積を大きく取ることができるので好ましい。さらに、疎水性ゼオライトの形は球状に限定されるものではなく、脱臭体の表面に凹凸を設けることにより、単位体積あたりの表面積を増やすことができるようになり、より効果的である。
【0021】
接着剤3には、水に、酢酸ビニル、アクリル、エチレン、ビニルアルコール、変性ウレタンなどの樹脂粒子や、これらの樹脂からなる共重合樹脂粒子を分散させた水系エマルジョン型接着剤を用いるのが望ましい。この接着剤は、水を蒸発させることにより、樹脂粒子や共重合樹脂粒子の濃度が高くなり、そしてこれら粒子の表面同士がくっつき始め、粒子表面が互いに溶け合い、被膜を形成することで接着作用が発揮される。このように、樹脂皮膜となるため、繊維に化学吸着剤2を担持した後も非常に柔軟で加工性に優れる。これら繊維からなる織布や不織布も、非常に柔軟で加工性に優れ、フィルターとして最適であり、また脱臭能力を有するカーテンとして使用することもできる。
【0022】
また特に、水系エマルジョン型接着剤として、分散粒子をアクリル共重合樹脂粒子とすることで、耐湿性を大きく向上させることができる。これにより、高湿度下での連続使用が可能となり、複合酸化物Aは高湿度雰囲気でより吸着性能を発揮する化学吸着剤であるため、高湿度雰囲気で非常に脱臭性能の高い脱臭体を実現することができる。また、複合酸化物Aと接着剤との混合比は特に限定するものではないが、接着剤が多くなると、複合酸化物Aの表面を接着剤3が覆ってしまうため化学吸着作用が低下し、極端に接着剤が少ないと、複合酸化物Aが繊維から剥がれ落ちやすいものとなる。望ましくは、複合酸化物Aと接着剤が重量比で1:1〜10:1程度である。
【0023】
次に繊維4について説明する。繊維4は材質や形を限定するものではなく、接着剤3により複合酸化物Aと接着されるものであり、また繊維自身からアンモニアや硫化水素などの臭気ガスがほぼ発生しないものであれば良い。また、繊維4を織布もしくは不織布状とすることにより、取扱いが非常に容易となり、また加工性も向上するため、自由な形状に加工することができる。織布もしくは不織布に、複合酸化物Aを担持しても良いし、繊維4に複合酸化物Aを担持した後に、織布もしくは不織布としても良い。
【0024】
以下、脱臭体に対する実験例を示す。
【0025】
<実験例1>
複合酸化物Aを水に分散させ、さらに固形分濃度52wt%の水系アクリル共重合接着剤を加え、水と複合酸化物Aと接着剤の固形分との比が、8:1:1のスラリー(以下、本実施例ではスラリーAという)と、8:1:0.3のスラリー(以下、本実施例ではスラリーBという)と、8:1:0.15のスラリー(以下、本実施例ではスラリーCという)を作製した。また、複合酸化物Aと疎水性ゼオライトを1:1で混合したサンプル(以下、本実施例では複合酸化物Bという)を作製し、それを水に分散させ、さらに固形分濃度52wt%の水系アクリル共重合接着剤を加え、水と複合酸化物Bと接着剤の固形分との比が、8:1:1のスラリー(以下、本実施例ではスラリーDという)と、8:1:0.3のスラリー(以下、本実施例ではスラリーEという)と、8:1:0.15のスラリー(以下、本実施例ではスラリーFという)を作製した。
【0026】
次に、目付が100g/m2、厚さ2.5mm、縦15cm、横10cmの不織布を6枚用意し、それぞれをスラリーA、B、C、D、E、Fへ浸漬し、引き上げた後に120℃の恒温槽で約2時間乾燥させた(以下、本実施例ではそれぞれ、化学A、化学B、化学C、化学物理A、化学物理B、化学物理Cという)。化学A、化学B、化学Cには複合酸化物Aが約50g/m2が担持され、化学物理A、化学物理B、化学物理Cには複合酸化物Bが約50g/m2が担持されていた。また、平均径約2mmの活性炭を0.75gをシャーレに入れたもの(以下、本実施例では活性炭Aという)を用意し、さらに目付が100g/m2、厚さ1.25mm、縦15cm、横10cmの不織布同士の間に、平均径約2mmの活性炭を約50g/m2担持し、ホットメルト接着剤で接着したもの(以下、本実施例ではホットメルトAという)を用意した。
【0027】
8種類の各サンプルをそれぞれ50ppmの硫化水素濃度に調整した10L容器の中へ入れ、硫化水素濃度が0.1ppm以下になるまでの時間を測定した。また、同様にアンモニアでも測定を行った。さらに、各種サンプルの担持物の手への付着具合を確かめた。それらの結果を(表1)に示す。なお、付着具合の「○」は全く付着しないことを示し、「×」は相当量が付着することを示す。
【0028】
【表1】
【0029】
(表1)より、複合酸化物A、Bを担持したサンプルは活性炭と比較して、硫化水素の脱臭性能が非常に高い脱臭体であり、接着剤量を減らしたサンプルほど、脱臭性能が高い脱臭体となる。これは、接着剤の量を多くすると、接着剤が複合酸化物A、B表面に付着し、吸着サイトを減らすために脱臭性能が低下すると考えられるが、接着剤量を極端に減少させると、繊維との接着強度が落ちるため、手などへの付着が目立つようになる。
【0030】
また、疎水性ゼオライトを添加したサンプルはアンモニアの脱臭にも非常に優れた脱臭体となり、接着剤量を減らしたサンプルほど、脱臭性能が高い脱臭体となる。これにより、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高い脱臭体を実現できる。
【0031】
(実施例2)
図3は本発明の第二の実施例における脱臭体の模式図である。図3(a)は本実施例の脱臭体の模式図であり、(b)は脱臭体11の一部分を拡大した模式図である。図3の脱臭体11は、化学吸着剤12と物理吸着剤13を超音波溶着や、熱溶着などの溶着を用いて繊維14に担持したものの集合体からなる。本実施例では、化学吸着剤12に実施例1と同様に複合酸化物Aを用い、物理吸着剤13に疎水性ゼオライトを用いた。化学吸着剤12と物理吸着剤13との配合比は特に限定するものではなく、用途に応じて、配合比を変えることが望ましい。すなわち、主に硫化水素脱臭用途の場合、化学吸着剤12の量を多くし、アンモニアや二硫化ジメチルの脱臭用途の場合、物理吸着剤13の量を多くした脱臭体を用いる。
【0032】
次に繊維14について説明する。繊維14は材質や形を限定するものではなく、繊維14自身からアンモニアや硫化水素などの臭気ガスがほぼ発生しないものであれば良い。繊維14の材質を樹脂とすると、超音波溶着や熱溶着により接着剤を用いずに化学吸着剤12と物理吸着剤13を繊維14に溶着できる。これにより、化学吸着剤12や物理吸着剤13表面に付着した接着剤が、吸着サイトを減らし脱臭性能を低下するという現象を抑えることができるため、非常に脱臭性能の高い脱臭体を実現できる。特に、繊維14に熱可塑性樹脂を選ぶことにより、熱溶着により簡単に化学吸着剤12と物理吸着剤13を繊維14に担持することができ、またその担持強度も高いものとなり、化学吸着剤12や物理吸着剤13の落下や手への付着がほとんど無い。また、繊維14を織布もしくは不織布状とすることにより、取扱いが非常に容易となり、また加工性も向上するため、自由な形状に加工することができる。織布もしくは不織布に、化学吸着剤12と物理吸着剤13を担持しても良いし、繊維14に化学吸着剤12と物理吸着剤13を担持した後に、織布もしくは不織布としても良い。
【0033】
以下、脱臭体に対する実験例を示す。
【0034】
<実験例2>
複合酸化物Aと疎水性ゼオライトを1:1で混合したサンプル(以下、本実施例では複合酸化物Bという)、7:3で混合したサンプル(以下、本実施例では複合酸化物Cという)、3:7で混合したサンプル(以下、本実施例では複合酸化物Dという)を作製した。次に、材質がポリオレフィンで目付が100g/m2、厚さ2.5mm、縦15cm、横10cmの不織布を3枚用意し、複合酸化物B、C、Dそれぞれを、熱溶着により担持した脱臭体(以下、本実施例ではそれぞれ溶着A、溶着B、溶着Cという)を作製した。溶着A、溶着B、溶着Cにはそれぞれ複合酸化物B、C、Dが約50g/m2が担持されていた。また、実施例1で用いた化学物理Cと活性炭AとホットメルトAを用意した。
【0035】
6種類の各サンプルをそれぞれ50ppmの硫化水素濃度に調整した10L容器の中へ入れ、硫化水素濃度が0.1ppm以下になるまでの時間を測定した。また、同様にアンモニアでも測定を行った。さらに、各種サンプルの担持物の手への付着具合を確かめた。それらの結果を(表2)に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
(表2)より、複合酸化物B、C、Dを担持したサンプルは活性炭と比較して、硫化水素の脱臭性能が非常に高い脱臭体であり、接着剤を用いて担持した脱臭体より、脱臭性能が高い脱臭体となる。
【0038】
(実施例3)
図4は本発明の第三の実施例における脱臭装置の断面模式図である。脱臭装置20は、吸気口21、吸気手段22、フィルター23、排気口24から構成されている。吸気口21と排気口24については、その大きさや形を限定するものではなく、臭気を含む空気が通ることができれば良い。吸気手段22も、方式、大きさ、形などを限定するものではないが、シロッコファンやプロペラファンなどが望ましい。フィルター23には、実施例1、2で記載したように、複合酸化物Aと疎水性ゼオライトとを接着剤もしくは溶着により繊維に担持し、それを織布または不織布にした脱臭体を用いる。これにより、ワンパスでの脱臭効率が向上し、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を素速く除去できる脱臭装置を実現できる。
【0039】
さらに、本実施例の脱臭装置に、においセンサと吸気手段22を制御する装置を設けることにより、より使い勝手の良いものとなる。
【0040】
<実験例3>
実施例1で用いた化学物理C、ホットメルトAと、実施例2で用いた溶着Aをフィルターとして用いた脱臭装置を用意した(以下、本実施例ではそれぞれ化学物理C’、ホットメルトA’、溶着A’という)。これらに、吸気口から50ppm硫化水素と50ppmアンモニアの混合ガスを流し、排気口においてガス検知管によりそれぞれのガス濃度を測定し、初期のワンパスでの脱臭率を算出した。
【0041】
また、化学物理C’、ホットメルトA’、溶着A’をそれぞれ7m3チャンバーの中に置き、それぞれのチャンバーに硫化水素とアンモニアの混合ガスを導入し、硫化水素濃度とアンモニア濃度がそれぞれ50ppmになるよう調整した。その後、それぞれのチャンバー内の脱臭装置を運転し、硫化水素濃度とアンモニア濃度の経時変化を測定し、両方の濃度が0.1ppm以下になる時間を算出した。
【0042】
これらの結果を(表3)に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
(表3)より、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高い脱臭体をフィルターとして用いることで、ワンパスでの脱臭率を向上させた脱臭装置を実現できる。
【0045】
(実施例4)
図5は本発明の第四の実施例における脱臭装置の模式図である。脱臭体30とそれを吊す手段31から構成され、介護者のオムツ交換時などに介護者を囲むように利用すると、発生する臭気の拡散を抑え、脱臭する脱臭装置として作用する。また、トイレなどに設置しておくと、トイレ臭を効率よく脱臭する脱臭装置として作用する。脱臭体30は実施例1、2で記載したように、複合酸化物Aと疎水性ゼオライトとを接着剤もしくは溶着により繊維に担持し、それを織布または不織布にした脱臭体を用いる。また、吊す手段について、その大きさや形、数などは特に限定されるものではない。吊す手段を脱着可能とすることで、本脱臭装置を簡単に持ち運ぶことができる。
【0046】
したがって、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高く、簡便に持ち運びができる脱臭装置を実現できる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高い脱臭体を実現できる。
【0048】
また、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高い脱臭体をフィルターとして用いることで、ワンパスでの脱臭率を向上させた脱臭装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の第一の実施例における脱臭体の模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【図2】(a)本発明の第一の実施例における脱臭体の模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【図3】(a)本発明の第二の実施例における脱臭体の一部分を拡大した模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【図4】本発明の第三の実施例における脱臭装置の断面模式図
【図5】本発明の第四の実施例における脱臭装置の模式図
【符号の説明】
1 固形化した脱臭体
2 化学吸着作用を有する吸着剤
3 接着剤
4 繊維
5 物理吸着作用を有する吸着剤
11 脱臭体
12 化学吸着作用を有する吸着剤
13 物理吸着作用を有する吸着剤
14 繊維
20 脱臭装置
21 吸気口
22 吸気手段
23 フィルター
24 排気口
30 脱臭体
31 吊す手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭体および脱臭装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来は、粒状の活性炭やゼオライトやシリカゲル等を充填し臭気を脱臭する脱臭体としたものや、粒状の活性炭を不織布同士の間にホットメルト系接着剤を用いて担持し臭気を脱臭する脱臭体としたものや、それらをファンにより空気を吸引しフィルタを通すことで脱臭を行う脱臭装置のフィルタに利用したものが大部分であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、活性炭やゼオライト、シリカゲルでは、トイレ臭などの複合臭気、特に硫黄系の臭気を脱臭する能力が極めて低いという課題があった。また、粒状の活性炭、ゼオライト、シリカゲルなどは単位体積当たりの表面積が小さいため、臭気をフィルターに通したワンパスでの脱臭率が悪いという課題もあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するものであり、化学吸着作用を有する吸着剤と、繊維とを備え、前記化学吸着作用を有する吸着剤が前記繊維に担持された脱臭体としたもので、硫黄系の臭気、特に硫化水素を吸着する能力が極めて高い化学吸着作用を有する吸着剤を用いることにより、トイレ臭に含まれる硫化水素を化学吸着作用により極めて高い脱臭能力で除去することができ、また化学吸着であるため、一度吸着した硫化水素を再度放出することがない。
【0005】
また、粉末状の化学吸着作用を有する吸着剤を、接着剤を利用したり、熱溶着などを利用したりすることにより繊維に担持することで、単位体積当たりの表面積を大きくすることができ、ワンパスでの脱臭率を向上させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、少なくとも化学吸着作用を有する吸着剤と、繊維とを備え、前記化学吸着作用を有する吸着剤が前記繊維に担持された脱臭体としたもので、トイレ臭に含まれる硫化水素や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を化学吸着作用により極めて高い脱臭能力で除去することができ、また化学吸着であるため、一度吸着した硫化水素を再度放出することがない。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤が接着剤により繊維に担持された請求項1記載の脱臭体としたもので、単位体積当たりの表面積を大きくすることができ、臭気の脱臭能力を高めた脱臭体を実現することができる。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、少なくとも接着剤に、樹脂を水に分散させた水性エマルジョン型接着剤を含む請求項2記載の脱臭体としたもので、樹脂のエマルジョン型接着剤を用いることにより、化学吸着作用を有する吸着剤を繊維に担持後も繊維の柔軟性を保持することができるため、脱臭体を自由に加工することができ、様々な脱臭用途に用いることができる脱臭体を実現できる。
【0009】
また、請求項4記載の発明は、水に分散させた樹脂がアクリル共重合樹脂である請求項3記載の脱臭体としたもので、化学吸着作用を有する吸着剤を繊維に担持後も繊維の柔軟性を保持することができ、またアクリル共重合樹脂は湿気に強く、高湿度雰囲気で用いても、化学吸着作用を有する吸着剤が繊維から剥がれ落ちることがない脱臭体を実現できる。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤が繊維に溶着により担持された請求項1記載の脱臭体としたもので、接着剤を用いずに化学吸着作用を有する吸着剤を繊維に担持することにより、化学吸着作用を有する吸着剤の表面が接着剤に覆われることがない。したがって、化学吸着作用を有する吸着剤の極めて高い脱臭能力を低下させることなく、繊維に担持することで単位体積当たりの表面積を大きくすることができ、臭気の脱臭能力を高めた脱臭体を実現することができる。
【0011】
また、請求項6記載の発明は、繊維に少なくとも熱可塑性樹脂製の繊維を含む請求項1もしくは5いずれか1項に記載の脱臭体としたもので、熱をかけることにより容易に化学吸着作用を有する吸着剤を繊維に担持することができ、臭気の脱臭能力を高めた脱臭体を実現することができる。
【0012】
また、請求項7記載の発明は、繊維が織布もしくは不織布を形成する請求項1、5、6いずれか1項に記載の脱臭体としたもので、化学吸着作用を有する吸着剤を担持した脱臭体を容易に望む形に加工する、もしくは望む形に加工したあと容易に化学吸着作用を有する吸着剤を担持することができる。
【0013】
また、請求項8記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤は少なくともマンガン、コバルト、銅、亜鉛のいずれかを含む酸化物、水酸化物、複合酸化物、あるいはその混合物である請求項1、2、5いずれか1項に記載の脱臭体としたもので、これらは硫化水素を主に硫酸化物や硫黄として化学吸着し脱臭するものだが、特にマンガン、コバルト、銅、亜鉛の酸化物や複合酸化物などは、硫酸化物を作りやすく、また硫化水素を分解し硫黄にしやすいため、硫化水素を除去する能力が非常に高い。
【0014】
また、請求項9記載の発明は、物理吸着作用を有する吸着剤を含む請求項1〜8いずれか1項に記載の脱臭体としたもので、ゼオライトやセピオライト、シリカ、アルミナ等の物理吸着作用を有する吸着剤を加えることで、トイレ臭のアンモニアや二硫化ジメチルに対する脱臭作用を高めることができる。
【0015】
また、請求項10記載の発明は、請求項1〜9いずれか1項に記載の脱臭体と前記脱臭体を吊す手段とを備えた脱臭装置としたもので、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高く、簡便に持ち運びができる脱臭装置を実現できる。
【0016】
また、請求項11記載の発明は、少なくとも臭気を含む空気を導入する吸気口と、前記臭気を含む空気を吸気する吸気手段と、前記吸気手段により吸気した空気に含まれる臭気を脱臭するフィルターと、前記フィルターにより脱臭された空気を排出する排気口とを備え、前記フィルターが請求項1〜9いずれか1項に記載の脱臭体である脱臭装置としたもので、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高い脱臭体をフィルターとして用いることで、ワンパスでの脱臭率を向上させた脱臭装置を実現できる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施例1)
図1、2は本発明の第一の実施例における脱臭体の模式図である。図1(a)、図2(a)は本実施例の脱臭体の模式図であり、図1(b)、図2(b)は脱臭体1の一部分を拡大した模式図である。図1の脱臭体1は、化学吸着作用を有する吸着剤2(以下、本実施例では化学吸着剤2という)を、接着剤3により繊維4に担持したものの集合体からなり、図1(b)は接着剤3を用いて化学吸着剤2を繊維4に担持した模式図を示す。本実施例では、化学吸着剤2にマンガン、銅、コバルトの複合酸化物(以下、本実施例では複合酸化物Aという)を用い、接着剤3に水性のアクリル共重合樹脂接着剤を用いた。なお、本実施例ではマンガン、銅、コバルトの複合酸化物を用いたが、これに限定するものではなく、マンガン、銅、亜鉛、コバルトのいずれかを含む酸化物、水酸化物、複合酸化物あるいはその混合物とすることにより、同様に硫化水素に対する強力な化学吸着作用を有する脱臭体とすることができる。
【0019】
本実施例で用いた複合酸化物Aは、特に硫化水素の除去に優れ、硫化水素を最終的に硫酸塩の形で化学吸着する、かつ硫黄の結晶として複合酸化物Aの表面に化学吸着するものである。また、同じ硫黄系臭気であるメチルメルカプタンを二硫化ジメチルに転化する触媒作用も有する。複合酸化物Aは0.1〜1μm程度の平均径であるが、この大きさに限定されるものではない。しかしながら、極力大きさを小さくした方が、同体積での表面積を大きく取ることができるので好ましい。さらに、化学吸着剤2と接着剤3の形は球状に限定されるものではなく、脱臭体の表面に凹凸を設けることにより、単位体積あたりの表面積を増やすことができるようになり、より効果的である。
【0020】
また、図2に示すように、脱臭体1に、化学吸着剤2に加え、物理吸着作用を有する吸着剤5(以下、本実施例では、物理吸着剤5という)を添加し、それらが接着剤3により繊維に担持されているものである。このような構成をとることにより、トイレ臭に含まれる硫化水素は化学吸着作用により除去でき、さらにアンモニアや二硫化ジメチルを物理吸着作用により除去できるため、トイレ臭が全般的に除去することが可能となる。また、メチルメルカプタンを二硫化ジメチルに転化する触媒作用をも有する化学吸着作用を有する吸着剤を用いることにより、トイレ臭に含まれるメチルメルカプタンは二硫化ジメチルとなり、物理吸着作用を有する吸着剤に吸着されることで、さらにトイレ臭が全般的に除去することが可能となる。本実施例では、物理吸着剤5として、疎水性ゼオライトを用いたが、親水性のゼオライト、セピオライト、シリカ、アルミナ等を用いても同様な効果が得られる。また、本実施例で用いた疎水性ゼオライトは0.1〜1μm程度の平均径であるが、この大きさに限定されるものではない。しかしながら、極力大きさを小さくした方が、同体積での表面積を大きく取ることができるので好ましい。さらに、疎水性ゼオライトの形は球状に限定されるものではなく、脱臭体の表面に凹凸を設けることにより、単位体積あたりの表面積を増やすことができるようになり、より効果的である。
【0021】
接着剤3には、水に、酢酸ビニル、アクリル、エチレン、ビニルアルコール、変性ウレタンなどの樹脂粒子や、これらの樹脂からなる共重合樹脂粒子を分散させた水系エマルジョン型接着剤を用いるのが望ましい。この接着剤は、水を蒸発させることにより、樹脂粒子や共重合樹脂粒子の濃度が高くなり、そしてこれら粒子の表面同士がくっつき始め、粒子表面が互いに溶け合い、被膜を形成することで接着作用が発揮される。このように、樹脂皮膜となるため、繊維に化学吸着剤2を担持した後も非常に柔軟で加工性に優れる。これら繊維からなる織布や不織布も、非常に柔軟で加工性に優れ、フィルターとして最適であり、また脱臭能力を有するカーテンとして使用することもできる。
【0022】
また特に、水系エマルジョン型接着剤として、分散粒子をアクリル共重合樹脂粒子とすることで、耐湿性を大きく向上させることができる。これにより、高湿度下での連続使用が可能となり、複合酸化物Aは高湿度雰囲気でより吸着性能を発揮する化学吸着剤であるため、高湿度雰囲気で非常に脱臭性能の高い脱臭体を実現することができる。また、複合酸化物Aと接着剤との混合比は特に限定するものではないが、接着剤が多くなると、複合酸化物Aの表面を接着剤3が覆ってしまうため化学吸着作用が低下し、極端に接着剤が少ないと、複合酸化物Aが繊維から剥がれ落ちやすいものとなる。望ましくは、複合酸化物Aと接着剤が重量比で1:1〜10:1程度である。
【0023】
次に繊維4について説明する。繊維4は材質や形を限定するものではなく、接着剤3により複合酸化物Aと接着されるものであり、また繊維自身からアンモニアや硫化水素などの臭気ガスがほぼ発生しないものであれば良い。また、繊維4を織布もしくは不織布状とすることにより、取扱いが非常に容易となり、また加工性も向上するため、自由な形状に加工することができる。織布もしくは不織布に、複合酸化物Aを担持しても良いし、繊維4に複合酸化物Aを担持した後に、織布もしくは不織布としても良い。
【0024】
以下、脱臭体に対する実験例を示す。
【0025】
<実験例1>
複合酸化物Aを水に分散させ、さらに固形分濃度52wt%の水系アクリル共重合接着剤を加え、水と複合酸化物Aと接着剤の固形分との比が、8:1:1のスラリー(以下、本実施例ではスラリーAという)と、8:1:0.3のスラリー(以下、本実施例ではスラリーBという)と、8:1:0.15のスラリー(以下、本実施例ではスラリーCという)を作製した。また、複合酸化物Aと疎水性ゼオライトを1:1で混合したサンプル(以下、本実施例では複合酸化物Bという)を作製し、それを水に分散させ、さらに固形分濃度52wt%の水系アクリル共重合接着剤を加え、水と複合酸化物Bと接着剤の固形分との比が、8:1:1のスラリー(以下、本実施例ではスラリーDという)と、8:1:0.3のスラリー(以下、本実施例ではスラリーEという)と、8:1:0.15のスラリー(以下、本実施例ではスラリーFという)を作製した。
【0026】
次に、目付が100g/m2、厚さ2.5mm、縦15cm、横10cmの不織布を6枚用意し、それぞれをスラリーA、B、C、D、E、Fへ浸漬し、引き上げた後に120℃の恒温槽で約2時間乾燥させた(以下、本実施例ではそれぞれ、化学A、化学B、化学C、化学物理A、化学物理B、化学物理Cという)。化学A、化学B、化学Cには複合酸化物Aが約50g/m2が担持され、化学物理A、化学物理B、化学物理Cには複合酸化物Bが約50g/m2が担持されていた。また、平均径約2mmの活性炭を0.75gをシャーレに入れたもの(以下、本実施例では活性炭Aという)を用意し、さらに目付が100g/m2、厚さ1.25mm、縦15cm、横10cmの不織布同士の間に、平均径約2mmの活性炭を約50g/m2担持し、ホットメルト接着剤で接着したもの(以下、本実施例ではホットメルトAという)を用意した。
【0027】
8種類の各サンプルをそれぞれ50ppmの硫化水素濃度に調整した10L容器の中へ入れ、硫化水素濃度が0.1ppm以下になるまでの時間を測定した。また、同様にアンモニアでも測定を行った。さらに、各種サンプルの担持物の手への付着具合を確かめた。それらの結果を(表1)に示す。なお、付着具合の「○」は全く付着しないことを示し、「×」は相当量が付着することを示す。
【0028】
【表1】
【0029】
(表1)より、複合酸化物A、Bを担持したサンプルは活性炭と比較して、硫化水素の脱臭性能が非常に高い脱臭体であり、接着剤量を減らしたサンプルほど、脱臭性能が高い脱臭体となる。これは、接着剤の量を多くすると、接着剤が複合酸化物A、B表面に付着し、吸着サイトを減らすために脱臭性能が低下すると考えられるが、接着剤量を極端に減少させると、繊維との接着強度が落ちるため、手などへの付着が目立つようになる。
【0030】
また、疎水性ゼオライトを添加したサンプルはアンモニアの脱臭にも非常に優れた脱臭体となり、接着剤量を減らしたサンプルほど、脱臭性能が高い脱臭体となる。これにより、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高い脱臭体を実現できる。
【0031】
(実施例2)
図3は本発明の第二の実施例における脱臭体の模式図である。図3(a)は本実施例の脱臭体の模式図であり、(b)は脱臭体11の一部分を拡大した模式図である。図3の脱臭体11は、化学吸着剤12と物理吸着剤13を超音波溶着や、熱溶着などの溶着を用いて繊維14に担持したものの集合体からなる。本実施例では、化学吸着剤12に実施例1と同様に複合酸化物Aを用い、物理吸着剤13に疎水性ゼオライトを用いた。化学吸着剤12と物理吸着剤13との配合比は特に限定するものではなく、用途に応じて、配合比を変えることが望ましい。すなわち、主に硫化水素脱臭用途の場合、化学吸着剤12の量を多くし、アンモニアや二硫化ジメチルの脱臭用途の場合、物理吸着剤13の量を多くした脱臭体を用いる。
【0032】
次に繊維14について説明する。繊維14は材質や形を限定するものではなく、繊維14自身からアンモニアや硫化水素などの臭気ガスがほぼ発生しないものであれば良い。繊維14の材質を樹脂とすると、超音波溶着や熱溶着により接着剤を用いずに化学吸着剤12と物理吸着剤13を繊維14に溶着できる。これにより、化学吸着剤12や物理吸着剤13表面に付着した接着剤が、吸着サイトを減らし脱臭性能を低下するという現象を抑えることができるため、非常に脱臭性能の高い脱臭体を実現できる。特に、繊維14に熱可塑性樹脂を選ぶことにより、熱溶着により簡単に化学吸着剤12と物理吸着剤13を繊維14に担持することができ、またその担持強度も高いものとなり、化学吸着剤12や物理吸着剤13の落下や手への付着がほとんど無い。また、繊維14を織布もしくは不織布状とすることにより、取扱いが非常に容易となり、また加工性も向上するため、自由な形状に加工することができる。織布もしくは不織布に、化学吸着剤12と物理吸着剤13を担持しても良いし、繊維14に化学吸着剤12と物理吸着剤13を担持した後に、織布もしくは不織布としても良い。
【0033】
以下、脱臭体に対する実験例を示す。
【0034】
<実験例2>
複合酸化物Aと疎水性ゼオライトを1:1で混合したサンプル(以下、本実施例では複合酸化物Bという)、7:3で混合したサンプル(以下、本実施例では複合酸化物Cという)、3:7で混合したサンプル(以下、本実施例では複合酸化物Dという)を作製した。次に、材質がポリオレフィンで目付が100g/m2、厚さ2.5mm、縦15cm、横10cmの不織布を3枚用意し、複合酸化物B、C、Dそれぞれを、熱溶着により担持した脱臭体(以下、本実施例ではそれぞれ溶着A、溶着B、溶着Cという)を作製した。溶着A、溶着B、溶着Cにはそれぞれ複合酸化物B、C、Dが約50g/m2が担持されていた。また、実施例1で用いた化学物理Cと活性炭AとホットメルトAを用意した。
【0035】
6種類の各サンプルをそれぞれ50ppmの硫化水素濃度に調整した10L容器の中へ入れ、硫化水素濃度が0.1ppm以下になるまでの時間を測定した。また、同様にアンモニアでも測定を行った。さらに、各種サンプルの担持物の手への付着具合を確かめた。それらの結果を(表2)に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
(表2)より、複合酸化物B、C、Dを担持したサンプルは活性炭と比較して、硫化水素の脱臭性能が非常に高い脱臭体であり、接着剤を用いて担持した脱臭体より、脱臭性能が高い脱臭体となる。
【0038】
(実施例3)
図4は本発明の第三の実施例における脱臭装置の断面模式図である。脱臭装置20は、吸気口21、吸気手段22、フィルター23、排気口24から構成されている。吸気口21と排気口24については、その大きさや形を限定するものではなく、臭気を含む空気が通ることができれば良い。吸気手段22も、方式、大きさ、形などを限定するものではないが、シロッコファンやプロペラファンなどが望ましい。フィルター23には、実施例1、2で記載したように、複合酸化物Aと疎水性ゼオライトとを接着剤もしくは溶着により繊維に担持し、それを織布または不織布にした脱臭体を用いる。これにより、ワンパスでの脱臭効率が向上し、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を素速く除去できる脱臭装置を実現できる。
【0039】
さらに、本実施例の脱臭装置に、においセンサと吸気手段22を制御する装置を設けることにより、より使い勝手の良いものとなる。
【0040】
<実験例3>
実施例1で用いた化学物理C、ホットメルトAと、実施例2で用いた溶着Aをフィルターとして用いた脱臭装置を用意した(以下、本実施例ではそれぞれ化学物理C’、ホットメルトA’、溶着A’という)。これらに、吸気口から50ppm硫化水素と50ppmアンモニアの混合ガスを流し、排気口においてガス検知管によりそれぞれのガス濃度を測定し、初期のワンパスでの脱臭率を算出した。
【0041】
また、化学物理C’、ホットメルトA’、溶着A’をそれぞれ7m3チャンバーの中に置き、それぞれのチャンバーに硫化水素とアンモニアの混合ガスを導入し、硫化水素濃度とアンモニア濃度がそれぞれ50ppmになるよう調整した。その後、それぞれのチャンバー内の脱臭装置を運転し、硫化水素濃度とアンモニア濃度の経時変化を測定し、両方の濃度が0.1ppm以下になる時間を算出した。
【0042】
これらの結果を(表3)に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
(表3)より、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高い脱臭体をフィルターとして用いることで、ワンパスでの脱臭率を向上させた脱臭装置を実現できる。
【0045】
(実施例4)
図5は本発明の第四の実施例における脱臭装置の模式図である。脱臭体30とそれを吊す手段31から構成され、介護者のオムツ交換時などに介護者を囲むように利用すると、発生する臭気の拡散を抑え、脱臭する脱臭装置として作用する。また、トイレなどに設置しておくと、トイレ臭を効率よく脱臭する脱臭装置として作用する。脱臭体30は実施例1、2で記載したように、複合酸化物Aと疎水性ゼオライトとを接着剤もしくは溶着により繊維に担持し、それを織布または不織布にした脱臭体を用いる。また、吊す手段について、その大きさや形、数などは特に限定されるものではない。吊す手段を脱着可能とすることで、本脱臭装置を簡単に持ち運ぶことができる。
【0046】
したがって、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高く、簡便に持ち運びができる脱臭装置を実現できる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高い脱臭体を実現できる。
【0048】
また、トイレ臭などの硫黄系臭気を含む複合臭気や、寝たきりの方の介護時や用便時に発生する臭気を除去する脱臭能力が高い脱臭体をフィルターとして用いることで、ワンパスでの脱臭率を向上させた脱臭装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の第一の実施例における脱臭体の模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【図2】(a)本発明の第一の実施例における脱臭体の模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【図3】(a)本発明の第二の実施例における脱臭体の一部分を拡大した模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【図4】本発明の第三の実施例における脱臭装置の断面模式図
【図5】本発明の第四の実施例における脱臭装置の模式図
【符号の説明】
1 固形化した脱臭体
2 化学吸着作用を有する吸着剤
3 接着剤
4 繊維
5 物理吸着作用を有する吸着剤
11 脱臭体
12 化学吸着作用を有する吸着剤
13 物理吸着作用を有する吸着剤
14 繊維
20 脱臭装置
21 吸気口
22 吸気手段
23 フィルター
24 排気口
30 脱臭体
31 吊す手段
Claims (11)
- 少なくとも化学吸着作用を有する吸着剤と、繊維とを備え、前記化学吸着作用を有する吸着剤が前記繊維に担持された脱臭体。
- 化学吸着作用を有する吸着剤が接着剤により繊維に担持された請求項1記載の脱臭体。
- 少なくとも接着剤に、樹脂を水に分散させた水性エマルジョン型接着剤を含む請求項2記載の脱臭体。
- 水に分散させた樹脂がアクリル共重合樹脂である請求項3記載の脱臭体。
- 化学吸着作用を有する吸着剤が繊維に溶着により担持された請求項1記載の脱臭体。
- 繊維に少なくとも熱可塑性樹脂製の繊維を含む請求項1もしくは5いずれか1項に記載の脱臭体。
- 繊維が織布もしくは不織布を形成する請求項1、5、6いずれか1項に記載の脱臭体。
- 化学吸着作用を有する吸着剤は少なくともマンガン、コバルト、銅、亜鉛のいずれかを含む酸化物、水酸化物、複合酸化物、あるいはその混合物である請求項1、2、5いずれか1項に記載の脱臭体。
- 物理吸着作用を有する吸着剤を含む請求項1〜8いずれか1項に記載の脱臭体。
- 請求項1〜9いずれか1項に記載の脱臭体と前記脱臭体を吊す手段とを備えた脱臭装置。
- 少なくとも臭気を含む空気を導入する吸気口と、前記臭気を含む空気を吸気する吸気手段と、前記吸気手段により吸気した空気に含まれる臭気を脱臭するフィルターと、前記フィルターにより脱臭された空気を排出する排気口とを備え、前記フィルターが請求項1〜9いずれか1項に記載の脱臭体である脱臭装置。
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2002
- 2002-10-10 JP JP2002297285A patent/JP2004129840A/ja not_active Withdrawn
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KR20160071428A (ko) | 2013-10-17 | 2016-06-21 | 도아고세이가부시키가이샤 | 소취 필터 |
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