JP2004128854A - 音響再生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】イヤホンを装着しているにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態を実現し、3次元音場再生についての制御精度を向上させ、より自然な状態の頭外音像定位を実現する音響再生装置を提供すること。
【解決手段】HRTF測定処理部110が出力した信号を外部スピーカ500で再生し、この信号と受聴者が装着した挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音した音とに基づいてHRTF測定処理部110が受聴者の頭部伝達関数を再現するHRTFフィルタ係数を算出しメモリ130に保存しておく。音源ソースの再生時には、HRTF再生処理部120が音源ソース信号に測定したHRTFフィルタ係数と挿耳型イヤホンを使ったときに外耳道が開いた状態になるように外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数を畳み込み、挿耳型イヤホン200のスピーカユニット220で出力する。
【選択図】 図1
【解決手段】HRTF測定処理部110が出力した信号を外部スピーカ500で再生し、この信号と受聴者が装着した挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音した音とに基づいてHRTF測定処理部110が受聴者の頭部伝達関数を再現するHRTFフィルタ係数を算出しメモリ130に保存しておく。音源ソースの再生時には、HRTF再生処理部120が音源ソース信号に測定したHRTFフィルタ係数と挿耳型イヤホンを使ったときに外耳道が開いた状態になるように外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数を畳み込み、挿耳型イヤホン200のスピーカユニット220で出力する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は3次元の音場再生を行なう音響再生装置に関するもので、特に、挿耳型イヤホンにより3次元の音場再生を行なう音響再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、イヤホンやヘッドホンを用いた3次元の音場再生を行なう音響再生装置は、バイノーラル録音技術を応用したものだった。
【0003】
この種の音響再生装置は、実音場においてダミーヘッドによる録音を行なうことで、音源からダミーヘッドの鼓膜までの音響的な伝達を再現するものであった(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
最近では、ダミーヘッドの頭部伝達関数(HRTF:Head Related Transfer Function)をデジタル信号処理によって再現する応用手法が用いられている(例えば、特許文献1または2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−300598号公報
【特許文献2】
特開平11−127500号公報
【非特許文献1】
イェンス ブラウエルト・森本政之・後藤敏幸編著「空間音響」鹿島出版会、昭和61年7月10日、p.193−203
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際のHRTFには個人差があり、ダミーヘッドはひとつの平均的なHRTFを提供するに過ぎず、3次元の音場再生を行う場合、受聴者本人のものでないHRTFを使用すると本人のHRTFを使用するのに比べて、その制御効果が大きく低下するときがある。
【0007】
このため、全ての人に充分な効果を得ることは困難であった。制御効果が低下した場合によく生じる問題としては、音像の前後誤判定や音像の頭内定位などがある。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、イヤホンを装着しているにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態を実現し、3次元音場再生についての制御精度を向上させ、より自然な状態の頭外音像定位を実現する音響再生装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の音響再生装置は、受聴者の外耳道の入口での音を収音するマイクユニットと音の再生を行なうためのスピーカユニットとを有する左耳用および右耳用挿耳型イヤホンと、インパルス応答測定用の信号を外部スピーカに出力し、前記マイクユニットで収音した前記外部スピーカから出力した音と前記インパルス応答測定用の信号とに基づいて前記受聴者の頭部伝達関数を再現する左耳用および右耳用フィルタ係数を算出する測定処理部と、予め設定されたダミーヘッドにおける前記挿耳型イヤホンを使ったときに外耳道が開いた状態になるように外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する左耳用フィルタ係数とを入力される音源ソース信号に畳み込み左耳用再生信号を生成するとともに、予め設定されたダミーヘッドにおける前記挿耳型イヤホンを使ったときに外耳道が開いた状態に外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する右耳用フィルタ係数とを入力される音源ソース信号に畳み込み右耳用再生信号を生成し、前記左耳用および右耳用再生信号をそれぞれ対応する前記左耳用または右耳用挿耳型イヤホンのスピーカユニットに出力する再生処理部とを備える構成を有している。
【0010】
この構成により、受聴者自身の頭部伝達関数を再現するフィルタ係数が測定され、このフィルタ係数と挿耳型イヤホンを使ったときの外耳道を開いた状態に補正するフィルタ係数とが音源ソース信号に畳み込まれて挿耳型イヤホンで再生され、挿耳型イヤホンを装着しているのにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態が実現されるとともに、精度の高い3次元音場再生が実現されることとなる。
【0011】
ここで、前記再生処理部は、音源ソース信号再生時に前記左耳用および右耳用挿耳型イヤホンのマイクユニットにより収音した音に前記外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数を畳み込み、前記左耳用および右耳用再生信号の対応する再生信号に加算し、加算された前記左耳用および右耳用再生信号をそれぞれ対応する前記左耳用または右耳用挿耳型イヤホンのスピーカユニットに出力する構成とした。
【0012】
この構成により、挿耳型イヤホンのマイクユニットで収音した音に挿耳型イヤホンを使ったときの外耳道を開いた状態に補正するフィルタ係数が畳み込まれ、再生信号に加算されて挿耳型イヤホンで再生され、音源ソースに受聴者のいる実音場の音がミックスされて再生されることとなる。
【0013】
また、前記再生処理部は、マルチチャンネルの音源ソース信号をチャンネル毎に入力可能に構成され、前記チャンネル毎の音源ソース信号それぞれに前記外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する左耳用フィルタ係数とを畳み込み、畳み込まれた前記チャンネル毎の音源信号を加算して前記左耳用再生信号を生成するとともに、前記チャンネル毎の音源ソース信号それぞれに前記外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する右耳用フィルタ係数とを畳み込み、畳み込まれた前記チャンネル毎の音源信号を加算して前記右耳用再生信号を生成する構成とした。
【0014】
この構成により、マルチチャンネルの音源ソース信号のそれぞれのチャンネルの信号に受聴者自身の頭部伝達関数を再現するフィルタ係数と挿耳型イヤホンを使ったときの外耳道を開いた状態に補正するフィルタ係数とが畳み込まれ、加算されて挿耳型イヤホンで再生され、挿耳型イヤホンを装着しているのにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態が実現されるとともに、精度の高い3次元音場再生が実現されることとなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態の音響再生装置を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態の音響再生装置は、受聴者の外耳道の入口での音を収音するマイクユニット210と音の再生を行なうためのスピーカユニット220とを有する挿耳型イヤホン200と、HRTFの測定処理を行なうHRTF測定処理部110と再生時のHRTFに関する畳み込み処理を行なうHRTF再生処理部120とHRTFの測定データの保存を行なうメモリ130とを有する3次元音場再生装置100とを備えている。
【0017】
このような音響再生装置の原理について説明する。Henrik Muller ”Fundamentals of Binaural Technology” Applied Acoustics 36 (1992) pp.171−218 によると、人が音像定位を行なうとき、外耳道の入口から鼓膜までの間は1次元問題として考えられることが明らかになっている。
【0018】
これは、音源の方向に関わらず、外耳道入口から鼓膜までの音響的な伝達関数が一定であることを意味する。このため、3次元音場再生処理に関して次式が成り立つ。
SOURCE’=SOURCE*EEC_man*EEC_dm−1*ED_dm*(SIP*EC_close_dm)−1
【0019】
ここで、SOURCE’はイヤホンから再生すべき音響信号、SOURCEは使用する音源ソース信号、EEC_manは図2に示すように実際の音源(外部スピーカ500など)から受聴者の閉じた外耳道入口までの伝達関数、EEC_dmは図3に示すように実際の音源(外部スピーカ500など)からダミーヘッドの閉じた外耳道入口までの伝達関数、ED_dmは図4に示すように実際の音源(外部スピーカ500など)からダミーヘッドの鼓膜位置までの伝達関数、SIPはイヤホンユニットのもつ再生周波数特性、EC_close_dmは図5に示すようにダミーヘッドの外耳道が閉じた状態での挿耳型イヤホン200のスピーカユニット220の位置(内側)から鼓膜位置までの伝達関数である。
【0020】
本実施の形態においては、両耳受聴によって3次元音場再生処理を実現するため、EEC_manについては右耳と左耳について2種類の伝達関数を用意する必要がある。更に精度の高い制御をおこなうためには受聴者個人の鼓膜位置までの伝達関数を測定する必要があるが、実現が非常に困難である。そのため、本実施の形態では「外耳道の入口までの音響伝達特性は受聴者個人のものを使い、外耳道入口から鼓膜位置までの伝達特性については、便宜上ダミーヘッドのものを用いる」という近似を行なっている。
【0021】
次に、上式のEEC_dm−1 *ED_dmの項に注目すると、この項は、閉じた状態の外耳道入口(外側)から鼓膜位置までの伝達関数になっている。即ち、この項では外耳道が閉じた状態を開いた状態に補正する制御が行なわれている。
【0022】
また、上式は SOURCE,EEC_man,それ以降の項の3部に分けて考えることができる。EEC_manは受聴者の耳介の形状等に関係する項であり、EEC_dm−1以降の項はイヤホンとダミーヘッドに関係する項、つまり受聴者が代わっても変化の無い項である。よって、EEC_dm−1以降の項のことを、以下では外耳道補正関数(Hc)と表記する。更に、EEC_manのことを単純にHRTFと表記することにすれば、上式は、
SOURCE’_L,R=SOURCE*HRTF_L,R*Hc
と表すことができる。ただしHRTFの添え字は受聴者の耳の左右(L,R)を表し、SOURCE’の添え字は再生に使用するイヤホンの左右を表す。
【0023】
上式において、受聴者が変わる場合、HRTF_L,Rについて新たにフィルタ係数などのデータを用意する必要がある。本実施の形態の挿耳型イヤホン200は、外耳道の入口での音を測定するマイクユニット210を備えることにより、受聴者のHRTF計測を簡便に行なうことが可能である。また、再生用のイヤホンを別の種類のものに代える場合はHcについてのみ新たにフィルタ係数などのデータを用意するだけでよい。
【0024】
次に、HRTFの計測を行う場合の動作について図6を用いて説明する。HRTFを計測するときには、3次元音場再生装置100のHRTF測定処理部110が出力する信号を外部スピーカ500に出力し、受聴者の耳に挿耳型イヤホン200を装着し、挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音した信号によりHRTFの計測を行なう。
【0025】
HRTF測定処理部110は、インパルス応答測定用の信号を発生する波形発生部111と、波形発生器が発生した信号と挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音した信号に基づいて系のインパルス応答を計算する計算部112とを備えている。
【0026】
まず、波形発生部111によりM系列ノイズやTSP(Time Stretched Pulse)信号などのインパルス応答測定用の信号が発生され、外部スピーカ500に出力される。
【0027】
このインパルス応答測定用の信号は外部スピーカ500により音として出力され、受聴者が装着した挿耳型イヤホン200のマイクユニット210により収音される。
【0028】
マイクユニット210で収音された音は、電気信号に変換されHRTF測定処理部110に入力される。
【0029】
HRTF測定処理部110の計算部112は、波形発生部111が発生した信号とマイクユニット210で収音された信号が入力され、この2つの信号に基づいて系のインパルス応答を計算する。このインパルス応答は、外部スピーカ500からマイクユニット210までの経路の伝達関数を意味する(大賀寿郎、山崎芳男、金田豊 共著「音響システムとディジタル処理」社団法人電子情報通信学会編、158−165頁)。
【0030】
このようにして得られたインパルス応答は受聴者の頭部伝達関数を再現するHRTFフィルタ係数としてメモリ130に保存される。
【0031】
このHRTFの計測は左右両方の耳についてそれぞれ行なわれ、左右両方の耳それぞれのHRTFフィルタ係数が計算される。
【0032】
このように本実施の形態においては、HRTF測定処理部110が出力する信号を外部スピーカ500に出力し、受聴者が挿耳型イヤホン200を装着するだけで、容易にHRTFフィルタ係数を計測することができ、受聴者個人に特化したHRTFフィルタ係数を計測できるので、メモリ130に大量のHRTFフィルタ係数を保存し、その中から効果の高いものを選択するような場合に比べ、メモリ容量を削減することができるとともに、大量のHRTFフィルタ係数から効果の高いものを選択しなくても効果の高いHRTFフィルタ係数を得ることができる。
【0033】
また、受聴者が自分でHRTFフィルタ係数を計測するので、受聴者の好みの位置(上方を含む3次元)に音源を配置した状態のHRTFフィルタ係数を得ることができる。
【0034】
本実施の形態の音響再生装置を携帯電話に組み込む場合、HRTFフィルタ係数測定用の外部スピーカ500として携帯電話のスピーカを使用してもよい。
【0035】
次に、3次元音場再生音を再生する場合の動作について図7を用いて説明する。3次元音場再生音を再生するときには、3次元音場再生装置100のHRTF再生処理部120にマルチチャンネルの音源ソースを入力し、HRTF再生処理部120で音源ソースにフィルタ係数を畳み込み、挿耳型イヤホン200に出力する。
【0036】
HRTF再生処理部120は、音源ソースの各チャネル毎に左耳用と右耳用のHRTF及びHcのフィルタ係数を別々に音源ソースの信号に畳み込み各チャネル毎に左耳用と右耳用の信号を出力する畳込み部121と、畳込み部121の出力する各チャネル毎の左耳用と右耳用の信号を左耳用と右耳用別々に加算し左耳用と右耳用の信号を出力する加算部122とを備えている。
【0037】
HRTF再生処理部120に入力された音源ソースは、チャンネル毎に左耳用、右耳用に設けられた畳込み部121L、121Rにそれぞれ入力される。
【0038】
畳込み部121L、121Rにはメモリ130からHRTF測定処理部110により保存された左耳用と右耳用それぞれのHRTFフィルタ係数及び予めメモリ130内に保存されている挿耳型イヤホン200を使ったときの外耳道が閉じた状態を開いた状態に補正するためのHcフィルタ係数が入力され、畳込み部121L、121Rは、入力された音源ソースに入力されたHRTFフィルタ係数及びHcフィルタ係数を畳み込み、対応する左耳用、右耳用の加算部122L、122Rそれぞれに出力する。
【0039】
加算部122L、122Rは、入力されるマルチチャンネルの各チャンネルの音源ソースにフィルタ係数が畳み込まれた信号を加算し、挿耳型イヤホン200の対応する左右それぞれのスピーカユニット220に出力する。
【0040】
このように本実施の形態においては、音源ソースにHRTF測定処理部110で測定した受聴者個人のHRTFフィルタ係数を畳み込んでいるので、3次元音場再生の制御効果を高めることができる。
【0041】
また、挿耳型イヤホン200を使ったときの外耳道が閉じた状態を開いた状態に補正するためのHcフィルタ係数を畳み込んで外耳道伝達関数の補正を行っているので、イヤホンを装着しているにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態を実現することができる。これにより、3次元音場再生時の制御精度を向上させることができ、より自然な状態の頭外音像定位を実現することができる。
【0042】
また、自然な頭外音像定位感は、音像の頭内定位に起因する耳の疲れを軽減する効果をもたらす。
【0043】
次に、3次元音場再生音を再生しながら実音場の音も同時に出力する場合の動作について図8を用いて説明する。3次元音場再生音と同時に実音場の音も出力するときには、挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音した音にHRTF再生処理部120でHcフィルタ係数を畳み込み、3次元音場再生音と加算して挿耳型イヤホン200に出力する。
【0044】
HRTF再生処理部120は、上述の畳込み部121、加算部122に加え、挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音されHRTF測定処理部110を経由して入力されるミックス用外部音信号にHcフィルタ係数を畳み込むHc畳込み部123を備えており、このHc畳込み部123の左右それぞれの出力は加算部122により畳込み部121が出力する3次元音場再生音に加算される。
【0045】
受聴者が装着している挿耳型イヤホン200のマイクユニット210は、受聴者の外耳道の入口での音を収音し、収音したアナログ信号をHRTF測定処理部110に入力する。
【0046】
HRTF測定処理部110は、入力されたアナログ信号をAD変換してステレオ2チャンネルのミックス用外部音信号としてHRTF再生処理部120に入力する。
【0047】
HRTF再生処理部120に入力されたミックス用外部音信号は、Hc畳込み部123でHRTF測定処理部110により予めメモリ130に保存された挿耳型イヤホン200を使ったときの外耳道が閉じた状態を開いた状態に補正するためのHcフィルタ係数を畳み込まれる。
【0048】
HRTF再生処理部120に入力されたマルチチャンネルの音源ソース(図ではnチャンネル)は、上述と同様に、畳込み部121によりチャンネル毎に左右それぞれのHRTFフィルタ係数及びHcフィルタ係数を畳み込まれ、加算部122で左右それぞれに各チャンネルの信号が加算される。
【0049】
このとき、Hc畳込み部123でHcフィルタ係数を畳み込まれたミックス用外部音信号も加算部122で各チャンネルの信号に加算される。
【0050】
加算部122L、122Rで加算された信号は、DA変換によりアナログ信号に変換され、挿耳型イヤホン200の左右それぞれのスピーカユニット220に出力される。
【0051】
このように本実施の形態においては、受聴者の装着している挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音した音にHcフィルタ係数を畳み込んで音源ソースの再生音に加算しているので、音源ソースの再生時に受聴者のいる実音場の音をミックスして再生することができる。この実音場の音は、受聴者本人のHRTF情報を含んだ状態で収音されるため、挿耳型イヤホン200のスピーカユニット220から再生される音は受聴者にとって自然な音場を形成する音となる。このため、受聴者は、音源ソースの音とともに外部の音を自然な音場で聴くことができ、受聴者にオープンエア型のモニタ環境を提供することができる。
【0052】
オープンエア型のモニタ環境は、例えば、放送局のスタジオモニタなどでカメラマンが実音を聞きながら指示の音声を聞いたり、美術館や動物園などの展示物案内の音声を回りの音を聞きつつ自然に聞いたり、会議システムにおいて参加者が音場を共有したりすることへ応用することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、測定処理部で受聴者本人の頭部伝達関数を再現するためのフィルタ係数を測定し、測定したフィルタ係数と挿耳型イヤホンを使ったときに外耳道が開いた状態になるように外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数を音源ソース信号に畳み込むことにより、イヤホンを装着しているにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態を実現し、3次元音場再生についての制御精度を向上させ、より自然な状態の頭外音像定位を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の音響再生装置を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態の音響再生装置の伝達関数EEC_manを説明する図
【図3】本発明の一実施の形態の音響再生装置の伝達関数EEC_dmを説明する図
【図4】本発明の一実施の形態の音響再生装置の伝達関数ED_dmを説明する図
【図5】本発明の一実施の形態の音響再生装置の伝達関数EC_close_dmを説明する図
【図6】本発明の一実施の形態の音響再生装置のHRTF測定を説明するブロック図
【図7】本発明の一実施の形態の音響再生装置の3次元音場再生音の再生を説明するブロック図
【図8】本発明の一実施の形態の音響再生装置の3次元音場再生音と実音場の音の同時再生を説明するブロック図
【符号の説明】
100 3次元音場再生装置
110 HRTF測定処理部
111 波形発生部
112 計算部
120 HRTF再生処理部
121 畳込み部
122 加算部
123 Hc畳込み部
130 メモリ
200 挿耳型イヤホン
210 マイクユニット
220 スピーカユニット
500 外部スピーカ
【発明の属する技術分野】
本発明は3次元の音場再生を行なう音響再生装置に関するもので、特に、挿耳型イヤホンにより3次元の音場再生を行なう音響再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、イヤホンやヘッドホンを用いた3次元の音場再生を行なう音響再生装置は、バイノーラル録音技術を応用したものだった。
【0003】
この種の音響再生装置は、実音場においてダミーヘッドによる録音を行なうことで、音源からダミーヘッドの鼓膜までの音響的な伝達を再現するものであった(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
最近では、ダミーヘッドの頭部伝達関数(HRTF:Head Related Transfer Function)をデジタル信号処理によって再現する応用手法が用いられている(例えば、特許文献1または2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−300598号公報
【特許文献2】
特開平11−127500号公報
【非特許文献1】
イェンス ブラウエルト・森本政之・後藤敏幸編著「空間音響」鹿島出版会、昭和61年7月10日、p.193−203
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際のHRTFには個人差があり、ダミーヘッドはひとつの平均的なHRTFを提供するに過ぎず、3次元の音場再生を行う場合、受聴者本人のものでないHRTFを使用すると本人のHRTFを使用するのに比べて、その制御効果が大きく低下するときがある。
【0007】
このため、全ての人に充分な効果を得ることは困難であった。制御効果が低下した場合によく生じる問題としては、音像の前後誤判定や音像の頭内定位などがある。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、イヤホンを装着しているにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態を実現し、3次元音場再生についての制御精度を向上させ、より自然な状態の頭外音像定位を実現する音響再生装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の音響再生装置は、受聴者の外耳道の入口での音を収音するマイクユニットと音の再生を行なうためのスピーカユニットとを有する左耳用および右耳用挿耳型イヤホンと、インパルス応答測定用の信号を外部スピーカに出力し、前記マイクユニットで収音した前記外部スピーカから出力した音と前記インパルス応答測定用の信号とに基づいて前記受聴者の頭部伝達関数を再現する左耳用および右耳用フィルタ係数を算出する測定処理部と、予め設定されたダミーヘッドにおける前記挿耳型イヤホンを使ったときに外耳道が開いた状態になるように外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する左耳用フィルタ係数とを入力される音源ソース信号に畳み込み左耳用再生信号を生成するとともに、予め設定されたダミーヘッドにおける前記挿耳型イヤホンを使ったときに外耳道が開いた状態に外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する右耳用フィルタ係数とを入力される音源ソース信号に畳み込み右耳用再生信号を生成し、前記左耳用および右耳用再生信号をそれぞれ対応する前記左耳用または右耳用挿耳型イヤホンのスピーカユニットに出力する再生処理部とを備える構成を有している。
【0010】
この構成により、受聴者自身の頭部伝達関数を再現するフィルタ係数が測定され、このフィルタ係数と挿耳型イヤホンを使ったときの外耳道を開いた状態に補正するフィルタ係数とが音源ソース信号に畳み込まれて挿耳型イヤホンで再生され、挿耳型イヤホンを装着しているのにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態が実現されるとともに、精度の高い3次元音場再生が実現されることとなる。
【0011】
ここで、前記再生処理部は、音源ソース信号再生時に前記左耳用および右耳用挿耳型イヤホンのマイクユニットにより収音した音に前記外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数を畳み込み、前記左耳用および右耳用再生信号の対応する再生信号に加算し、加算された前記左耳用および右耳用再生信号をそれぞれ対応する前記左耳用または右耳用挿耳型イヤホンのスピーカユニットに出力する構成とした。
【0012】
この構成により、挿耳型イヤホンのマイクユニットで収音した音に挿耳型イヤホンを使ったときの外耳道を開いた状態に補正するフィルタ係数が畳み込まれ、再生信号に加算されて挿耳型イヤホンで再生され、音源ソースに受聴者のいる実音場の音がミックスされて再生されることとなる。
【0013】
また、前記再生処理部は、マルチチャンネルの音源ソース信号をチャンネル毎に入力可能に構成され、前記チャンネル毎の音源ソース信号それぞれに前記外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する左耳用フィルタ係数とを畳み込み、畳み込まれた前記チャンネル毎の音源信号を加算して前記左耳用再生信号を生成するとともに、前記チャンネル毎の音源ソース信号それぞれに前記外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する右耳用フィルタ係数とを畳み込み、畳み込まれた前記チャンネル毎の音源信号を加算して前記右耳用再生信号を生成する構成とした。
【0014】
この構成により、マルチチャンネルの音源ソース信号のそれぞれのチャンネルの信号に受聴者自身の頭部伝達関数を再現するフィルタ係数と挿耳型イヤホンを使ったときの外耳道を開いた状態に補正するフィルタ係数とが畳み込まれ、加算されて挿耳型イヤホンで再生され、挿耳型イヤホンを装着しているのにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態が実現されるとともに、精度の高い3次元音場再生が実現されることとなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態の音響再生装置を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態の音響再生装置は、受聴者の外耳道の入口での音を収音するマイクユニット210と音の再生を行なうためのスピーカユニット220とを有する挿耳型イヤホン200と、HRTFの測定処理を行なうHRTF測定処理部110と再生時のHRTFに関する畳み込み処理を行なうHRTF再生処理部120とHRTFの測定データの保存を行なうメモリ130とを有する3次元音場再生装置100とを備えている。
【0017】
このような音響再生装置の原理について説明する。Henrik Muller ”Fundamentals of Binaural Technology” Applied Acoustics 36 (1992) pp.171−218 によると、人が音像定位を行なうとき、外耳道の入口から鼓膜までの間は1次元問題として考えられることが明らかになっている。
【0018】
これは、音源の方向に関わらず、外耳道入口から鼓膜までの音響的な伝達関数が一定であることを意味する。このため、3次元音場再生処理に関して次式が成り立つ。
SOURCE’=SOURCE*EEC_man*EEC_dm−1*ED_dm*(SIP*EC_close_dm)−1
【0019】
ここで、SOURCE’はイヤホンから再生すべき音響信号、SOURCEは使用する音源ソース信号、EEC_manは図2に示すように実際の音源(外部スピーカ500など)から受聴者の閉じた外耳道入口までの伝達関数、EEC_dmは図3に示すように実際の音源(外部スピーカ500など)からダミーヘッドの閉じた外耳道入口までの伝達関数、ED_dmは図4に示すように実際の音源(外部スピーカ500など)からダミーヘッドの鼓膜位置までの伝達関数、SIPはイヤホンユニットのもつ再生周波数特性、EC_close_dmは図5に示すようにダミーヘッドの外耳道が閉じた状態での挿耳型イヤホン200のスピーカユニット220の位置(内側)から鼓膜位置までの伝達関数である。
【0020】
本実施の形態においては、両耳受聴によって3次元音場再生処理を実現するため、EEC_manについては右耳と左耳について2種類の伝達関数を用意する必要がある。更に精度の高い制御をおこなうためには受聴者個人の鼓膜位置までの伝達関数を測定する必要があるが、実現が非常に困難である。そのため、本実施の形態では「外耳道の入口までの音響伝達特性は受聴者個人のものを使い、外耳道入口から鼓膜位置までの伝達特性については、便宜上ダミーヘッドのものを用いる」という近似を行なっている。
【0021】
次に、上式のEEC_dm−1 *ED_dmの項に注目すると、この項は、閉じた状態の外耳道入口(外側)から鼓膜位置までの伝達関数になっている。即ち、この項では外耳道が閉じた状態を開いた状態に補正する制御が行なわれている。
【0022】
また、上式は SOURCE,EEC_man,それ以降の項の3部に分けて考えることができる。EEC_manは受聴者の耳介の形状等に関係する項であり、EEC_dm−1以降の項はイヤホンとダミーヘッドに関係する項、つまり受聴者が代わっても変化の無い項である。よって、EEC_dm−1以降の項のことを、以下では外耳道補正関数(Hc)と表記する。更に、EEC_manのことを単純にHRTFと表記することにすれば、上式は、
SOURCE’_L,R=SOURCE*HRTF_L,R*Hc
と表すことができる。ただしHRTFの添え字は受聴者の耳の左右(L,R)を表し、SOURCE’の添え字は再生に使用するイヤホンの左右を表す。
【0023】
上式において、受聴者が変わる場合、HRTF_L,Rについて新たにフィルタ係数などのデータを用意する必要がある。本実施の形態の挿耳型イヤホン200は、外耳道の入口での音を測定するマイクユニット210を備えることにより、受聴者のHRTF計測を簡便に行なうことが可能である。また、再生用のイヤホンを別の種類のものに代える場合はHcについてのみ新たにフィルタ係数などのデータを用意するだけでよい。
【0024】
次に、HRTFの計測を行う場合の動作について図6を用いて説明する。HRTFを計測するときには、3次元音場再生装置100のHRTF測定処理部110が出力する信号を外部スピーカ500に出力し、受聴者の耳に挿耳型イヤホン200を装着し、挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音した信号によりHRTFの計測を行なう。
【0025】
HRTF測定処理部110は、インパルス応答測定用の信号を発生する波形発生部111と、波形発生器が発生した信号と挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音した信号に基づいて系のインパルス応答を計算する計算部112とを備えている。
【0026】
まず、波形発生部111によりM系列ノイズやTSP(Time Stretched Pulse)信号などのインパルス応答測定用の信号が発生され、外部スピーカ500に出力される。
【0027】
このインパルス応答測定用の信号は外部スピーカ500により音として出力され、受聴者が装着した挿耳型イヤホン200のマイクユニット210により収音される。
【0028】
マイクユニット210で収音された音は、電気信号に変換されHRTF測定処理部110に入力される。
【0029】
HRTF測定処理部110の計算部112は、波形発生部111が発生した信号とマイクユニット210で収音された信号が入力され、この2つの信号に基づいて系のインパルス応答を計算する。このインパルス応答は、外部スピーカ500からマイクユニット210までの経路の伝達関数を意味する(大賀寿郎、山崎芳男、金田豊 共著「音響システムとディジタル処理」社団法人電子情報通信学会編、158−165頁)。
【0030】
このようにして得られたインパルス応答は受聴者の頭部伝達関数を再現するHRTFフィルタ係数としてメモリ130に保存される。
【0031】
このHRTFの計測は左右両方の耳についてそれぞれ行なわれ、左右両方の耳それぞれのHRTFフィルタ係数が計算される。
【0032】
このように本実施の形態においては、HRTF測定処理部110が出力する信号を外部スピーカ500に出力し、受聴者が挿耳型イヤホン200を装着するだけで、容易にHRTFフィルタ係数を計測することができ、受聴者個人に特化したHRTFフィルタ係数を計測できるので、メモリ130に大量のHRTFフィルタ係数を保存し、その中から効果の高いものを選択するような場合に比べ、メモリ容量を削減することができるとともに、大量のHRTFフィルタ係数から効果の高いものを選択しなくても効果の高いHRTFフィルタ係数を得ることができる。
【0033】
また、受聴者が自分でHRTFフィルタ係数を計測するので、受聴者の好みの位置(上方を含む3次元)に音源を配置した状態のHRTFフィルタ係数を得ることができる。
【0034】
本実施の形態の音響再生装置を携帯電話に組み込む場合、HRTFフィルタ係数測定用の外部スピーカ500として携帯電話のスピーカを使用してもよい。
【0035】
次に、3次元音場再生音を再生する場合の動作について図7を用いて説明する。3次元音場再生音を再生するときには、3次元音場再生装置100のHRTF再生処理部120にマルチチャンネルの音源ソースを入力し、HRTF再生処理部120で音源ソースにフィルタ係数を畳み込み、挿耳型イヤホン200に出力する。
【0036】
HRTF再生処理部120は、音源ソースの各チャネル毎に左耳用と右耳用のHRTF及びHcのフィルタ係数を別々に音源ソースの信号に畳み込み各チャネル毎に左耳用と右耳用の信号を出力する畳込み部121と、畳込み部121の出力する各チャネル毎の左耳用と右耳用の信号を左耳用と右耳用別々に加算し左耳用と右耳用の信号を出力する加算部122とを備えている。
【0037】
HRTF再生処理部120に入力された音源ソースは、チャンネル毎に左耳用、右耳用に設けられた畳込み部121L、121Rにそれぞれ入力される。
【0038】
畳込み部121L、121Rにはメモリ130からHRTF測定処理部110により保存された左耳用と右耳用それぞれのHRTFフィルタ係数及び予めメモリ130内に保存されている挿耳型イヤホン200を使ったときの外耳道が閉じた状態を開いた状態に補正するためのHcフィルタ係数が入力され、畳込み部121L、121Rは、入力された音源ソースに入力されたHRTFフィルタ係数及びHcフィルタ係数を畳み込み、対応する左耳用、右耳用の加算部122L、122Rそれぞれに出力する。
【0039】
加算部122L、122Rは、入力されるマルチチャンネルの各チャンネルの音源ソースにフィルタ係数が畳み込まれた信号を加算し、挿耳型イヤホン200の対応する左右それぞれのスピーカユニット220に出力する。
【0040】
このように本実施の形態においては、音源ソースにHRTF測定処理部110で測定した受聴者個人のHRTFフィルタ係数を畳み込んでいるので、3次元音場再生の制御効果を高めることができる。
【0041】
また、挿耳型イヤホン200を使ったときの外耳道が閉じた状態を開いた状態に補正するためのHcフィルタ係数を畳み込んで外耳道伝達関数の補正を行っているので、イヤホンを装着しているにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態を実現することができる。これにより、3次元音場再生時の制御精度を向上させることができ、より自然な状態の頭外音像定位を実現することができる。
【0042】
また、自然な頭外音像定位感は、音像の頭内定位に起因する耳の疲れを軽減する効果をもたらす。
【0043】
次に、3次元音場再生音を再生しながら実音場の音も同時に出力する場合の動作について図8を用いて説明する。3次元音場再生音と同時に実音場の音も出力するときには、挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音した音にHRTF再生処理部120でHcフィルタ係数を畳み込み、3次元音場再生音と加算して挿耳型イヤホン200に出力する。
【0044】
HRTF再生処理部120は、上述の畳込み部121、加算部122に加え、挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音されHRTF測定処理部110を経由して入力されるミックス用外部音信号にHcフィルタ係数を畳み込むHc畳込み部123を備えており、このHc畳込み部123の左右それぞれの出力は加算部122により畳込み部121が出力する3次元音場再生音に加算される。
【0045】
受聴者が装着している挿耳型イヤホン200のマイクユニット210は、受聴者の外耳道の入口での音を収音し、収音したアナログ信号をHRTF測定処理部110に入力する。
【0046】
HRTF測定処理部110は、入力されたアナログ信号をAD変換してステレオ2チャンネルのミックス用外部音信号としてHRTF再生処理部120に入力する。
【0047】
HRTF再生処理部120に入力されたミックス用外部音信号は、Hc畳込み部123でHRTF測定処理部110により予めメモリ130に保存された挿耳型イヤホン200を使ったときの外耳道が閉じた状態を開いた状態に補正するためのHcフィルタ係数を畳み込まれる。
【0048】
HRTF再生処理部120に入力されたマルチチャンネルの音源ソース(図ではnチャンネル)は、上述と同様に、畳込み部121によりチャンネル毎に左右それぞれのHRTFフィルタ係数及びHcフィルタ係数を畳み込まれ、加算部122で左右それぞれに各チャンネルの信号が加算される。
【0049】
このとき、Hc畳込み部123でHcフィルタ係数を畳み込まれたミックス用外部音信号も加算部122で各チャンネルの信号に加算される。
【0050】
加算部122L、122Rで加算された信号は、DA変換によりアナログ信号に変換され、挿耳型イヤホン200の左右それぞれのスピーカユニット220に出力される。
【0051】
このように本実施の形態においては、受聴者の装着している挿耳型イヤホン200のマイクユニット210で収音した音にHcフィルタ係数を畳み込んで音源ソースの再生音に加算しているので、音源ソースの再生時に受聴者のいる実音場の音をミックスして再生することができる。この実音場の音は、受聴者本人のHRTF情報を含んだ状態で収音されるため、挿耳型イヤホン200のスピーカユニット220から再生される音は受聴者にとって自然な音場を形成する音となる。このため、受聴者は、音源ソースの音とともに外部の音を自然な音場で聴くことができ、受聴者にオープンエア型のモニタ環境を提供することができる。
【0052】
オープンエア型のモニタ環境は、例えば、放送局のスタジオモニタなどでカメラマンが実音を聞きながら指示の音声を聞いたり、美術館や動物園などの展示物案内の音声を回りの音を聞きつつ自然に聞いたり、会議システムにおいて参加者が音場を共有したりすることへ応用することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、測定処理部で受聴者本人の頭部伝達関数を再現するためのフィルタ係数を測定し、測定したフィルタ係数と挿耳型イヤホンを使ったときに外耳道が開いた状態になるように外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数を音源ソース信号に畳み込むことにより、イヤホンを装着しているにもかかわらず外耳道が開いた状態の受聴状態を実現し、3次元音場再生についての制御精度を向上させ、より自然な状態の頭外音像定位を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の音響再生装置を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態の音響再生装置の伝達関数EEC_manを説明する図
【図3】本発明の一実施の形態の音響再生装置の伝達関数EEC_dmを説明する図
【図4】本発明の一実施の形態の音響再生装置の伝達関数ED_dmを説明する図
【図5】本発明の一実施の形態の音響再生装置の伝達関数EC_close_dmを説明する図
【図6】本発明の一実施の形態の音響再生装置のHRTF測定を説明するブロック図
【図7】本発明の一実施の形態の音響再生装置の3次元音場再生音の再生を説明するブロック図
【図8】本発明の一実施の形態の音響再生装置の3次元音場再生音と実音場の音の同時再生を説明するブロック図
【符号の説明】
100 3次元音場再生装置
110 HRTF測定処理部
111 波形発生部
112 計算部
120 HRTF再生処理部
121 畳込み部
122 加算部
123 Hc畳込み部
130 メモリ
200 挿耳型イヤホン
210 マイクユニット
220 スピーカユニット
500 外部スピーカ
Claims (3)
- 受聴者の外耳道の入口での音を収音するマイクユニットと音の再生を行なうためのスピーカユニットとを有する左耳用および右耳用挿耳型イヤホンと、インパルス応答測定用の信号を外部スピーカに出力し、前記マイクユニットで収音した前記外部スピーカから出力した音と前記インパルス応答測定用の信号とに基づいて前記受聴者の頭部伝達関数を再現する左耳用および右耳用フィルタ係数を算出する測定処理部と、入力される音源ソース信号に予め設定されたダミーヘッドにおける前記挿耳型イヤホンを使ったときに外耳道が開いた状態になるように外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する左耳用フィルタ係数とを畳み込んで左耳用再生信号を生成するとともに、入力される音源ソース信号に予め設定されたダミーヘッドにおける前記挿耳型イヤホンを使ったときに外耳道が開いた状態に外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する右耳用フィルタ係数とを畳み込んで右耳用再生信号を生成し、前記左耳用および右耳用再生信号をそれぞれ対応する前記左耳用または右耳用挿耳型イヤホンのスピーカユニットに出力する再生処理部とを備えることを特徴とする音響再生装置。
- 前記再生処理部は、音源ソース信号再生時に前記左耳用および右耳用挿耳型イヤホンのマイクユニットにより収音した音に前記外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数を畳み込み、前記左耳用および右耳用再生信号の対応する再生信号に加算し、加算された前記左耳用および右耳用再生信号をそれぞれ対応する前記左耳用または右耳用挿耳型イヤホンのスピーカユニットに出力することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
- 前記再生処理部は、マルチチャンネルの音源ソース信号をチャンネル毎に入力可能に構成され、前記チャンネル毎の音源ソース信号それぞれに前記外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する左耳用フィルタ係数とを畳み込み、畳み込まれた前記チャンネル毎の音源信号を加算して前記左耳用再生信号を生成するとともに、前記チャンネル毎の音源ソース信号それぞれに前記外耳道伝達関数を補正するフィルタ係数と前記受聴者の頭部伝達関数を再現する右耳用フィルタ係数とを畳み込み、畳み込まれた前記チャンネル毎の音源信号を加算して前記右耳用再生信号を生成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の音響再生装置。
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Legal Events
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