JP2004127906A - 耐雷架空地線 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】グリース8に亜鉛粉末に混合した亜鉛入りグリース10を、例えば光ファイバ複合型の架空地線21の撚線5の内部隙間に充填しあるいは外周に塗布する。雷撃時に、亜鉛入りグリース内の亜鉛粉末が蒸発することで、雷エネルギーを蒸発熱として吸収する等の亜鉛の電線保護効果が発揮され、架空地線の耐雷性能が大幅に向上する。また、グリースとして導電性グリースを用いると、さらに耐雷性が向上する。電線サイズを大きくする対策のような重量増大がほとんどない。個々の素線に亜鉛を厚く被覆する方法と比べて安価であり、製造が容易である。
【選択図】 図1
Description
【発明に属する技術分野】
この発明は、架空送電線の上方に架設される架空地線に関するものであり、特に耐雷性を向上せしめるものである。
【0002】
【従来の技術】
送電線本線(電力線)への雷の直撃を防止するために、通常、複数本の導体素線を撚り合わせた架空地線を本線の上方に1本または複数本架設することが行われている。そして、この架空地線の撚線中心部に光ファイバを収容して情報通信手段としての機能を持たせたものが、いわゆる光ファイバ複合架空地線である。図2はこの種の従来の光ファイバ複合型の架空地線1の一例を示すもので、光ファイバ(光ファイバケーブル)2を収容したアルミパイプ3の周囲に、鋼線4aの外周にアルミ被覆4bを形成したアルミ覆鋼線4を複数本撚り合わせた構造となっている。複数本のアルミ覆鋼線4を撚り合わせた全体すなわち撚線を5で示す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の架空地線1が直接雷撃を受けた際に、雷撃の規模が小さい場合(例えば数クーロン以下)であれば、架空地線1が大きな損傷を受けることはない。しかし、雷撃の規模が大きい場合には、架空地線1の素線切れ(一部のアルミ覆鋼線4の破断)や時には断線等の大きな事故が発生する場合がある。このような事故が発生した場合には、送電線本線に影響して停電の原因になるばかりでなく、図示例の光ファイバ複合型の架空地線1の場合、アルミパイプ3内に収容された光ファイバ2が損傷して光通信が遮断されるという二次的な事故につながる恐れもある。
【0004】
このため、架空地線の耐雷性能を向上させることが要求されるが、耐雷性能向上の方法として、架空地線の電線サイズを大きくする方法が考えられる。しかし、電線サイズを大きくすると、重量が増大し、鉄塔にかかる荷重が大きくなってしまい、結果として建設費用のコストアップにつながるという問題が生じる。
【0005】
また、図3に示した架空地線11のように、個々のアルミ覆鋼線14の外周に亜鉛を厚く被覆する方法(亜鉛被覆を15で示す)も考案されている。これは架空地線の素線を亜鉛で被覆することで、亜鉛による電線保護効果を利用するというものである。亜鉛は次のような作用で耐雷性能向上に寄与することが知られている。
▲1▼亜鉛の沸点が架空地線を構成するアルミ覆鋼線の鋼線の融点と比べて十分低いことから、雷エネルギーによる熱でアルミ覆鋼線が融解してしまう前に亜鉛が蒸発し、この時、雷エネルギーを蒸発熱として吸収する。このためアルミ覆鋼線の融解が抑制される。
▲2▼架空地線が直接雷撃を受けた際に、覆っている亜鉛が爆発的に沸騰し、蒸発することにより、アークスポットが分散し、架空地線の一部が集中的に溶損することが防止される。
しかし、個々のアルミ覆鋼線4の外周に亜鉛を厚く被覆するこの方法は、架空地線のコストが高くなるので、一般には使用されていない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、重量増大を招くことなく、耐雷性能の向上を容易にかつ安価に実現できる耐雷架空地線を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1の発明は、複数本の導体素線を撚り合わせてなる架空地線において、
複数本の導体素線からなる撚線の内部隙間に、亜鉛粉末を混合したグリースを充填したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、複数本の導体素線を撚り合わせてなる架空地線において、複数本の導体素線からなる撚線の外周に、亜鉛粉末を混合したグリースを塗布したことを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2の耐雷架空地線を、光ファイバを収容した金属管を撚線の内部に配置してなる光ファイバ複合型架空地線に適用したことを特徴とする。
【0010】
請求項4は、請求項1〜3記載の耐雷架空地線において、グリースとして、導電性グリースを用いたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の一実施形態の耐雷架空地線21を示す。この実施形態は、光ファイバ複合型の架空地線に適用したもので、基本構造自体は図2で示したものと同様であり、光ファイバ(光ファイバケーブル)2を収容したアルミパイプ3の周囲に、鋼線4aの外周にアルミ被覆4bを形成したアルミ覆鋼線4を複数本撚り合わせてなる構造である。複数本のアルミ覆鋼線4を撚り合わせた全体すなわち撚線を5で示す。
本発明では、グリースに亜鉛粉末を混合した亜鉛入りグリース10を、撚線5の内部隙間に充填するか、あるいは撚線5の外周に塗布するか、あるいは、充填および塗布する。図示例では、亜鉛入りグリース10を撚線5の内部隙間に充填し、かつ外面にも塗布した場合である。
この亜鉛入りグリース10は架空地線製造時に充填・塗布することが望ましいが、既設の架空地線の外周に後から塗布することも可能である。
【0012】
上記の架空地線21によれば、雷撃を受けた際に、架空地線を構成するアルミ覆鋼線の鋼線の融点と比べて亜鉛の沸点が十分低いことから、雷エネルギーによる熱でアルミ覆鋼線が融解してしまう前に亜鉛が蒸発し、この時、雷エネルギーを蒸発熱として吸収する。このためアルミ覆鋼線の融解が抑制される。また、亜鉛の沸騰・蒸発により、アークスポットが分散し、架空地線の一部が集中的に溶損することが防止される。
雷撃時にこのような亜鉛の電線保護効果が発揮され、架空地線21の損傷を防止することができる。さらに、その際に、亜鉛入りグリース10内の亜鉛粉末とともにグリースも蒸発することから、グリースの蒸発熱による雷エネルギーの吸収の効果も同時に得ることができるので、上記の亜鉛による効果と相俟って、架空地線の耐雷性能が大幅に向上する。
また、架空地線の各素線に亜鉛を厚く被覆をする従来方法と比べて安価であり、かつ、耐雷性能向上に寄与する亜鉛を架空地線内に含ませることが容易である。
【0013】
また、充填・塗布されたグリースによる通常の防食作用が得られるとともに、亜鉛粉末がもつ犠牲陽極効果による腐食防止の作用も得られので、架空地線の防食性能が格段に向上する。
【0014】
なお、亜鉛粉末を混合するグリースの種類は従来から一般に用いられているものでよく、例えば鉱油をベースオイルとし金属石けんを増ちょう剤とした金属石けん系のグリースを用いることができるが、増稠剤として錯塩石けんを用いた錯塩石けん系グリース(コンプレックスグリース)を用いてもよいし、有機化ベントナイトやシリカゲル等の増稠剤を用いた非石けん系グリースを用いることもできるし、また、鉱油の代わりにシリコーンオイル等の合成油を用いたものでもよい。
【0015】
また、グリースとして導電性グリースを用いることもできる。導電性グリースを用いた場合、電線に流れ込むアーク電流の経路がグリース塗布面全体に分散するため、電線の損傷を軽減することができる。導電性グリースとしては、導電性を呈するものであればよく、各種の市販品を用いることができるが、例えばカルシウム石けんグリースにグラファイト(黒鉛)を添加したグラファイトグリースを用いると好適である。グラファイトグリースは、潤滑剤としては一般的には高温耐荷重性良好という特性が利用されるが、ここでは導電性グリースとしての性質を利用する。導電性の程度としては、例えば600Ω・cm程度以下が望ましい。なお、グラファイトを例えば20%程度混合すると、比抵抗300Ω・cm程度の導電性を持たせることが可能である。
また、グリースに導電性グリースを用いた場合、亜鉛粉末を混合させているグリースが導電性を呈することで、亜鉛粉末が犠牲陽極として実際に作用することを促進し、したがって、亜鉛粉末の犠牲陽極効果がさらに増大し、防食性能が向上する。
【0016】
なおく、特殊なグリースである必要はないが、、亜鉛粉末はグリース内に均一に混合できるものであれば、特に形および大きさに制約はないが、例えば、一般に亜鉛末と称される亜鉛微粉末を用いることができる。
【0017】
上記実施形態の架空地線は撚線層が一層であるが、複数の撚線層を持つ架空地線にも当然適用できる。また、架空地線を構成する素線は、丸素線に限らずセグメント素線でもよく、また、必ずしもアルミ覆鋼線に限らない。
また、上記実施形態は光ファイバ複合型の架空地線への適用であるが、これに限定されるものではなく、複数本の導体素線の撚り合わせのみからなる単なる架空地線への適用も可能である。
【0018】
【発明の効果】
本発明の耐雷架空地線によれば、亜鉛粉末を混合した亜鉛入りグリースを、架空地線を構成する撚線の内部隙間に充填し、あるいは撚線の外周に塗布したので、次のような効果を奏する。
▲1▼雷撃時に亜鉛粉末が蒸発することで雷エネルギーを蒸発熱として吸収する等の亜鉛の電線保護効果により、架空地線の耐雷性能が大幅に向上する。
▲2▼雷撃時に亜鉛粉末とともにグリースも蒸発することから、グリースの蒸発熱による雷エネルギーの吸収の効果も期待でき、この点でも架空地線の耐雷性能が向上する。
▲3▼架空地線の各素線に亜鉛を厚く被覆する従来方法と比べて安価であり、かつ、耐雷性能向上に寄与する亜鉛を架空地線内に含ませる手段として極めて容易である。
▲4▼充填・塗布されたグリースによる防食作用が得られ、また、亜鉛粉末がもつ犠牲陽極効果による腐食防止の作用も得られので、架空地線の耐食性能が向上する。
▲5▼電線サイズを大きくするという対策のような重量増大は殆どなく、建設コストアップ等の問題は生じない。
【0019】
請求項4のようにグリースとして導電性グリースを用いると、電線に流れ込むアーク電流の経路がグリース塗布面全体に分散することで、電線の損傷を軽減するので、耐雷性能をさらに向上させることができる。
また、亜鉛粉末を混合させているグリースが導電性を呈することで、亜鉛粉末の犠牲陽極効果がさらに増大し、防食性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の耐雷架空地線を示す横断面図である。
【図2】一般的な光ファイバ複合型の架空地線を示す横断面図である。
【図3】従来の耐雷架空地線を示す横断面図である。
【符号の説明】
2 光ファイバ
3 アルミパイプ(金属管)
4 アルミ覆鋼線(導体素線)
4a 鋼線
4b アルミ被覆
10 亜鉛入りグリース
21 光ファイバ複合架空地線(耐雷架空地線)
Claims (4)
- 複数本の導体素線を撚り合わせてなる架空地線において、
複数本の導体素線からなる撚線の内部隙間に、亜鉛粉末を混合したグリースを充填したことを特徴とする耐雷架空地線。 - 複数本の導体素線を撚り合わせてなる架空地線において、
複数本の導体素線からなる撚線の外周に、亜鉛粉末を混合したグリースを塗布したことを特徴とする耐雷架空地線。 - 光ファイバを収容した金属管を撚線の内部に配置してなる光ファイバ複合型架空地線に適用したことを特徴とする請求項1又は2記載の耐雷架空地線。
- 前記グリースとして、導電性グリースを用いたことを特徴とする請求項1〜3記載の耐雷架空地線。
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