JP2004126000A - 二層リコート方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光ファイバ同士の接続後や光ファイバ部品作製後、クラッドが露出した被覆除去部を再び樹脂材料で再被覆するリコート方法において、
第1リコート樹脂で被覆除去端前後のみを覆うように、1層目のリコートを施した後、その上から、第2リコート樹脂で被覆除去部全体を覆うように2層目のリコートを施すようにしたものである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバ同士の融着接続後或いは光ファイバ部品作製後、クラッド(石英部)が露出した被覆除去部を再被覆するリコート方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報輸送の大量化、高速化に伴い通信経路を構成する経路として光ファイバが多用されてきている。光ファイバによる情報通信には光ファイバ同士の融着接続はもちろん、光ファイバ部品としてのファイバグレーティングも必要不可欠となっている。
【0003】
一般に、光ファイバとしては、石英ガラス系の光ファイバ裸線に合成樹脂等の有機材料による被覆が施されたものが用いられている。この有機材料による被覆は、ガラス製の光ファイバ裸線に外部環境中の塵、埃あるいは異物等が衝突して傷が発生し、光ファイバの破断強度が低下するのを防ぐためのものである。ところが、光ファイバ同士の接続やファイバグレーティングなどの光ファイバ部品の作製の際に、光ファイバの被覆(ファイバ被覆)を除去する必要がある。そして光ファイバ同士の接続後或いはファイバグレーティング作製後に、露出したクラッドへのゴミの付着や光ファイバ表面の侵食、機械強度の低下を防ぐために、露出したクラッドを再び樹脂材料で覆うリコート法が提案され、実施されている。(例えば、特許文献1〜6参照)
【0004】
リコートする樹脂材料には通常紫外線照射により硬化する紫外線硬化型樹脂が用いられ、実際にリコートする方式としてはダイス方式やモールド方式などがある。
モールド方式は、石英ガラスの上に溝を堀り、溝にファイバ被覆除去部をセットし、リコート樹脂を流し紫外線で照射硬化させる方法である。
一方、ダイス方式は、リコート樹脂を乗せたダイスを光ファイバのクラッドに沿って上下することにより、樹脂を塗布する方法である。ダイス方式では、光ファイバの長手方向にリコート径の制御が難しく、作業性が良くないため、最近ではモールド方式が主流となっている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−072001号公報
【特許文献2】
特開2002−072000号公報
【特許文献3】
特開平4−275507号公報
【特許文献4】
特開平8−054530号公報
【特許文献5】
特開平7−311316号公報
【特許文献6】
特開2000−258651号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このリコート部に85℃から−40℃の温度変化を繰り返すヒートサイクル試験を行うと、温度変化により元々の樹脂とリコート樹脂の界面に繰り返し応力がかかる。それにより、界面に亀裂が発生し、この亀裂が進行すると樹脂同士(元々の樹脂とリコート樹脂)が完全に分離して、光ファイバの石英部(クラッド)が外部にむき出しになってしまう場合があった。このように、石英部(クラッド)が外部にむき出しになることをここでは割れと呼ぶが、この割れが発生すると光ファイバが外部から守られず、破断強度が低下するだけでなく、伝送損失も増大する等の恐れがあった。
【0007】
この問題の解決策として、図3に示すように、ファイバグレーティング21作製後、光ファイバの被覆(ファイバ被覆10)が除去されてクラッド20が露出している被覆除去部を再び樹脂材料(リコート樹脂100)で被覆するにあたって、リコート部の径(φ4)を元々の樹脂10の径よりも大きくし、元々の樹脂10の全周をリコート樹脂100で覆うようにすることで樹脂同士の接着性を向上する方法が提案されている。この元々の樹脂10をリコート樹脂100で覆っている部分をここではオーバーラップ部と呼ぶ。
しかし、このオーバーラップ部の厚さを光ファイバの全周にわたって均一にすることは難しく、光ファイバの中心とリコート部の中心がずれてしまい、いわゆる偏肉が生じやすい。そして、偏肉が生じ、オーバーラップ部の一部が薄くなってしまうと、オーバーラップによる特性改善効果が低減してしまうことから、冷熱の繰り返しによる亀裂や割れを完全になくすことは困難であった。
【0008】
このヒートサイクルによる割れは、光ファイバの被覆除去端10Aの伸縮によるものと考えられる。光ファイバにおいて、石英ガラス系のクラッド20の線膨張係数は0.4〜0.5×10−6(l/K)であるのに対し、周囲の樹脂の熱膨張係数は通常100倍以上であることから、ヒートサイクルによる冷熱の繰り返しにより、クラッド(石英部)と樹脂との位置関係が変化することが考えられ、特に被覆除去端10Aの部分は束縛がないため、冷熱の繰り返しにより容易に変動することが考えられる。
また、通常のファイバ被覆(元々の樹脂)10は、ヤング係数の小さいプライマリ樹脂をヤング係数の大きなセカンダリ樹脂で覆った2層構造から構成されている。これはプライマリ樹脂が緩衝材の役割を果たし、光ファイバが引っ張られたり、曲げられたりするときに、光ファイバ石英部への影響を軽減するためである。しかしこのプライマリ樹脂は、通常石英との密着性が小さく、そのため被覆が容易に変動することが考えられる。
すなわち、光ファイバの被覆除去部にリコート樹脂100をリコートした場合、被覆除去端10Aの変位(被覆除去長の増大)に伴い、リコートしたリコート樹脂100が被覆除去端10Aに引っ張られ、これによって割れが発生すると考えられる。
【0009】
なお、この割れは元々の樹脂被覆が厚いほど発生しやすい。一般的には直径125μmの石英ガラスを樹脂で直径250μmまで被覆した光ファイバが幅広く使用されているが、直径400μmまで樹脂で覆った光ファイバも一部で使用されており、この400μm径の光ファイバのリコートにおいて、特に割れの問題が大きかった。
もちろん元々の樹脂との密着性の高いリコート樹脂を使用すれば、冷熱の繰り返しによる割れを抑えることができる。しかし、密着性を考慮してリコート樹脂を選択した場合、リコートする樹脂によっては、リコート後の光学特性、特にファイバグレーティングのような光ファイバ部品の光学特性を大きく変化させてしまう虞があった。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、光ファイバ部品の光学特性を維持すると同時に、ヒートサイクルによる割れの発生を抑えるリコート方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、光ファイバ同士の接続後や光ファイバ部品作製後、クラッドが露出した被覆除去部を再び樹脂材料で再被覆するリコート方法において、第1リコート樹脂で被覆除去端前後のみを覆うように、1層目のリコートを施した後、その上から、第2リコート樹脂で被覆除去部全体を覆うように2層目のリコートを施す。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好適な実施例について図面を参照して説明する。
【0013】
本発明による二層リコート方法を図1に示す。
図1に示すように、この発明のリコート方法は、光ファイバ同士の接続後や光ファイバ部品(例えば、ファイバグレーティング21)の作製の際に、光ファイバの被覆(ファイバ被覆)10を除去してクラッド(石英部)20を露出させた被覆除去部を、ファイバグレーティング21作製後、クラッド(石英部)20へのゴミの付着や光ファイバ表面の侵食、機械強度の低下を防ぐため、再び樹脂材料で被覆(リコート)するものであって(図1(a)参照)、第1リコート樹脂1によって被覆除去端10A前後だけを覆うように1層目のリコートをした後(図1(b)参照)、その上から、第2リコート樹脂2によって被覆除去部全体を覆うように2層目のリコートをする(図1(c)参照)。
【0014】
すなわち、1層目のリコートにより被覆除去端10Aだけを覆い、被覆除去端10Aを固定する機能をもつ第1リコート樹脂1と、その上から、2層目のリコートにより被覆除去部全体を覆い、光ファイバの光学特性に影響を与えることなく光ファイバを保護する機能をもつ第2リコート樹脂2による二層リコート構造となっている。
これによって、光ファイバ部品の光学特性に影響を与えることなく、かつ亀裂や割れが発生しないことを発見した。
【0015】
この方法は、まず第1リコート樹脂によって被覆除去端10A前後だけを覆うように1層目のリコートを行い、被覆除去端10Aを固定することにより、冷熱の繰り返し変化に伴ったファイバ被覆(元々の樹脂10)の伸縮を抑えることを試みたものである(図1(b)参照)。
このような構造では、ファイバーグレイティング21などがある光ファイバの中心部には1層目のリコート(第1リコート樹脂1)が存在しないため、1層目のリコート(第1リコート樹脂1)としてどの様な樹脂を用いても、光学部品(ファイバグレーティング21)の光学特性に変化を与えることはない。
従って、1層目のリコートに用いる樹脂(第1リコート樹脂1)を選択するにあたって、光学特性に与える影響を考えることなく、元々の樹脂10との密着性とクラッド20との密着性の高い樹脂を用いることができ、これによって割れを生じることなく、光ファイバの被覆除去部の伸縮(被覆除去端10Aの変位)を抑えることが可能となる。
この発明の実施例では、第1リコート樹脂1として、室温におけるヤング率が580MPa、線膨張係数が1.3×10−4℃− 1のUV硬化型樹脂を用いた。
【0016】
次に、図1(c)に示すように、1層目のリコート(第1リコート樹脂1)の上から、光ファイバの被覆除去部全体に対して、第2リコート樹脂2でリコートする。第2リコート樹脂2は光ファイバ被覆除去部全体を被覆するため、被覆除去部にある光ファイバ部品、例えばファイバグレーティング21のような光ファイバ部品の光学特性に影響しないような樹脂を選択する必要がある。
この実施例では、第2リコート樹脂2として、室温におけるヤング率が17MPa、線膨張係数が0.9×10−4℃− 1のUV硬化型樹脂を用いた。
【0017】
このような、第1リコート樹脂1による被覆除去端10Aのみのリコート(1層目のリコート)と、第2リコート樹脂2による被覆除去部全体のリコート(2層目のリコート)とによる二層リコート法は、二種類の樹脂を使い分けることにより、ファイバグレーティング21などの光ファイバ部品の光学特性に影響を与えることなく光ファイバを保護し、かつ冷熱の繰り返し変化による割れが発生することがないリコート方法である。
【0018】
以下に、この発明による実施例の詳細を説明するとともに、本発明による二層リコート方法の効果について検討する。
【0019】
まず、1層目のリコート(第1リコート樹脂1)による効果を確認するために、以下の実験を行った。
【0020】
ファイバ裸線に樹脂を被覆した光ファイバの直径(ファイバ径(φ1))が400μmの光ファイバのファイバ被覆を25mm除去し、クラッド(石英部)20を露出した被覆除去部を形成するとともに、前記被覆除去部において長さ5mmのファイバグレーティング21を作製し、その後、第1リコート樹脂によって被覆除去端10A前後のみを覆うように1層目のリコートを行った(図1(b)参照)。
【0021】
1層目のリコート樹脂(第1リコート樹脂1)としては、室温におけるヤング率が580MPa、線膨張係数が1.3×10−4℃−1のUV硬化型樹脂を用いた。また、被覆除去部の左右両端に位置する被覆除去端10A前後を第1リコート樹脂1で覆うにあたって、1層目のリコート長さを左右それぞれ6mmとし、元々の樹脂10と第1リコート樹脂1とのオーバラップ11を3mmにした。そして、第1リコート樹脂1による1層目のリコート径(φ2)を430μmとし、10サンプル作製した。
【0022】
これら1層目のリコートを施したサンプル(Sample 1〜10)をヒートサイクル試験にかけ、露出している被覆除去長のヒートサイクル依存性(被覆除去端10Aの変位)を検討した。
第1リコート樹脂1で被覆除去端10A前後を覆うように1層目のリコートしたサンプルを作製した後、露出している被覆除去長(e)を測定し(図1(b)参照)、その後、ヒートサイクルをかけ、露出している被覆除去長(e)を再度測定し、その変動量を調べた結果を表1に示す。
なおヒートサイクル試験は、サンプルを−40℃と85℃の恒温槽にそれぞれ15分ずつ保持し、冷熱の温度変化を500サイクル、750サイクル繰り返した。
【0023】
【表1】
【0024】
またその比較例として、ファイバ被覆の一部を剥いた状態で第1リコート樹脂1によるリコートをしていないものを10サンプル作製し、これらサンプル(Sample 11〜20)のファイバ被覆除去長(f)を測定してから(図1(a)参照)、ヒートサイクル試験を行い、その後再度被覆除去長を測定し、冷熱の繰り返しによる前記被覆除去長(f)の変動量を調べ、結果を表2に示す。
なおヒートサイクル試験は、サンプルを−40℃と85℃の恒温槽にそれぞれ15分ずつ保持し、冷熱の温度変化を500サイクル、750サイクル繰り返した。
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示すように、第1リコート樹脂によるリコートがないサンプル(Sample11〜20)における被覆除去長の変動量は、500サイクルでは、平均伸びは0.37mmであり、750サイクルでは平均伸びが0.48mmとなった。すなわち、ヒートサイクルの回数の増加に伴って、被覆除去長が増大している(被覆除去端10Aが変位している)ことがわかる。
このことから、従来技術のリコート法(図3参照)では、リコートしたリコート樹脂100が被覆除去端10Aに引っ張られ、割れを生じると考えられる。
【0027】
一方、表1に示すように、第1リコート樹脂1によって被覆除去端10Aをリコートしたサンプル(Sample 1〜10)における被覆除去長の変動量は、500サイクルでは平均伸びが0.02mmであり、750サイクルでは平均伸びが0.04mmであり、第1リコート樹脂1によって被覆除去端10Aをリコートしたもの(1層目のリコートを施したサンプル)にあっては、明らかに被覆除去長の変動(被覆除去端10Aの変位)が小さかった。
【0028】
なお、被覆除去長の測定精度は、±0.05mmなので、ヒートサイクルによる被覆除去長の伸縮量(変動量)がほとんど測定エラーの範囲内であり、従って被覆除去長の変動がほどんどない結果となった。
つまり、1層目のリコートを施す(ファイバ被覆除去端10Aを第1リコート樹脂1で覆う)ことによって、被覆除去端10Aが固定され、ヒートサイクル試験による温度の繰り返し変化をしても、被覆除去端10Aが変位しないことが確認された。
【0029】
なお、被覆除去端10A前後のみを覆う1層目のリコートにおいて、リコートの長さとオーバーラップ11の長さをそれぞれ変化させ、リコートの効果や影響について検討した。
【0030】
元々の樹脂10と第1リコート樹脂1とのオーバーラップ11の長さを2mmから6mmに変化させた結果、1層目のリコートによる被覆除去端の固定機能に問題はなく、実施例と同様の固定機能を持つことがわかった。但し、オーバーラップ11の長さが2mm以下と短い場合は、光ファイバの被覆除去端を全周にわたって被覆できないケースもあり、従って、オーバーラップ11の長さを2mm以上とすることが好ましい。
【0031】
また、1層目のリコートの長さは6mm以下であることが好ましい。
光ファイバをリコートするための装置(リコータ)のモールドは、長さ50mmであるのが一般的であるため、1層目のリコートを長くしてオーバーラップ11が長くなると、1層目のリコートの上から2層目のリコートをするときに、2層目のリコート樹脂(第2リコート樹脂2)が1層目のリコート樹脂全体を覆うようにオーバーラップできなくなる虞がある。また1層目のリコートを長くしてクラッド(石英部)20の被覆が長くなると、ファイバグレーティング21などの光ファイバ部品の光特性に影響を与える虞がある。
【0032】
次に、この発明の二層リコート方法による実施例では、第2リコート樹脂2として、室温におけるヤング率が17MPa、線膨張係数が0.9×10−4℃−1のUV硬化型樹脂を使用し、1層目のリコートの上から、被覆除去部全体を覆うようにして2層目のリコートを実施した。なお2層目リコート径(φ3)は500μmとした。
【0033】
そして、この発明の二層リコート方法によってリコートした光ファイバの光学特性の変動を調べるため、今回はリコート前後のファイバグレーティングの反射の中心波長変動量を調べ、光学特性の変動ファクタとして評価した。
この実施例によるサンプル(Sample 21〜25)について、リコート前のファイバグレーティングの中心波長と、リコート後のファイバグレーティングの中心波長を測定し、リコート前後におけるファイバグレーティングの中心波長変動量を調べ、その結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
なお比較例として、1層目のリコート(被覆除去端10Aのみのリコート)のときに用いた第1リコート樹脂1(室内におけるヤング率580MPa)を使用し、従来技術によるリコート方法の如く、前記樹脂だけで被覆除去部全体をリコートしたサンプル(Sample 26〜30)を作製し(図3参照)、同様にして、これらサンプルにおけるリコート前後のファイバグレーティングの中心波長変動量を調べ、その結果を表4に示す。
なおこれらサンプルによるリコート径(φ4)は500μmとした。
【0036】
【表4】
【0037】
実施例の如く、まず被覆除去端10Aのみをヤング率580MPaの第1リコート樹脂1でリコート(リコート径(φ2)は430μm)した後、その上から被覆除去部全体を覆うようにヤング率17MPaの第2リコート樹脂2でリコート(リコート径(φ3)は500μm)した場合(二層リコート方法によるリコート)、表3に示すように中心波長変動量の平均値は−0.032nmであり、この値は測定系の誤差範囲内であり、従って中心波長はほとんど変動していないと考えられる。
一方、比較例の如く、ヤング率580MPaの樹脂で被覆除去部全体を覆うようにリコート(リコート径(φ4)は500μm)した場合(一層のみのリコート)、表4に示すように、中心波長変動量の平均値が−0.143nmと大きく、光学特性に大きく影響していることが明らかとなった。
【0038】
なお、2層目のリコート径(φ3)を900μmとした場合、リコート後の光学特性の初期変動が大きく、実用にはリコート部の直径(φ3)は900μm以下であることが望ましい。
そして、リコート部の直径(φ3)を元々の光ファイバ被覆径(φ1)よりも小さくすることは困難であるため、元々の光ファイバの被覆径(光ファイバの直径(φ1))も900μm以下である必要がある。
すなわち、一般的には直径125μmの石英ガラスを樹脂で直径250μmまで被覆した光ファイバが幅広く使用されていることから、光ファイバの直径が250μm以上900μm以下であり、リコート径も250μmから900μmまでであることが好ましい。
【0039】
さらに、二層リコート方法(図1参照)によってリコートした実施例のサンプル(15個)についてヒートサイクル試験を行い、割れの評価を行った。
ヒートサイクル試験は、サンプルを−40℃と85℃の恒温槽にそれぞれ15分ずつ保持し、500回繰り返して行った。
【0040】
さらに、この実施例では、ファイバ径(φ1)400μmの光ファイバの被覆覆除去部に、1層目のリコート径(φ2)が430μm、2層目のリコート径(φ3)が500μmとなるように二層リコートしたが、1層目のリコート径(φ1)と2層目のリコート径(φ2)との組合わせを、φ1=430μmとφ2=450μmとなるように二層リコートした第2実施例と、φ1=450μmとφ2=500μmとなるように二層リコートした第3実施例について、それぞれ15サンプル作製し、実施例と同様にヒートサイクル試験して、それぞれの割れの発生率を調べた。
【0041】
なお比較として、従来技術によるリコート(一層リコート)方法によってリコートしたサンプル(15個)を作製し(図3参照)、これらサンプルを実施例と同様にヒートサイクル試験し、その割れの評価を行った。なお、リコート樹脂として、室温におけるヤング率が17MPa、線膨張係数が0.9×10−4℃− 1のUV硬化型樹脂を用いた。
また従来技術のリコート径(φ4)は、対比する各実施例における最終的なリコート径(つまり2層目のリコート径)と同等になるようにした。
【0042】
この発明の二層リコート方法によってリコートした実施例(実施例、第2実施例、第3実施例)によるサンプルと、従来技術のリコート方法(一層リコート)によってリコートしたサンプルの、ヒートサイクル試験による割れの発生率について表5に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
従来技術によるリコート(一層リコート)では、300回以下のヒートサイクルの時点で、サンプル全数に割れが観察されたものも確認された。
これに対して、この発明の二層リコート方法によるリコートでは、ヒートサイクルが500回経過しても、割れが発生しなかった。
すなわち、1層目のリコートによって、被覆除去端10Aを第1リコート樹脂1で固定することによって、温度変化による被覆除去端10Aの伸縮(変位)を抑え、リコート部における亀裂の成長を抑制することができた。
【0045】
また、表5に示すように、1層目と2層目のリコート径を変化させた第2実施例、第3実施例についても、実施例と同様に、割れの発生を抑えることができた。なお、1層目と2層目のリコート径を変化させたものについても、実施例と同様に、被覆除去端10Aの固定機能に優れ、かつ光学特性への影響がないことを確認した。
【0046】
この発明の二層リコート方法では、被覆除去端10Aの固定機能と、光学特性への影響とを考慮し、1層目のリコート(第1リコート樹脂1)と、2層目のリコート(第2リコート樹脂2)に、別々の樹脂を用いた。
【0047】
1層目のリコートに用いる第1リコート樹脂の選択において、室温におけるヤング率が17MPaから580MPaまでの樹脂によって被覆除去端10A前後をリコートし、ヒートサイクル試験による検討を行った。500サイクルの冷熱を繰り返した結果、ヤング率が200MPa以下の樹脂を用いた場合は割れが確認され、ヤング率が200MPa以上の樹脂を用いた場合は割れが観察されなかった。
従って、被覆除去端10A前後をリコートするための第1リコート樹脂1を選択するにあたって、ヤング率が200MPa以上の樹脂を用いることが好ましい。
【0048】
また2層目のリコートに用いる樹脂(第2リコート樹脂2)の選択において、室温におけるヤング率が17MPaから580MPaまでの各リコート樹脂で被覆除去部全体を覆うように、リコート径500μmでリコートし、リコート前後のファイバグレーティング21の中心波長変動量を調べた。その結果を図2に示す。
なお、この変動量の測定にあたっては、図3に示すように、被覆除去部全体のリコートを一層のみで行った。
【0049】
図2に示すように、室温におけるヤング率が200MPa以上の樹脂を使用した場合、中心波長変動量が0.06nmを超え、ファイバグレーティングのような光ファイバ部品をリコートする樹脂としては適切でない。
従って本発明では、ファイバグレーティング21のような光ファイバ部品をリコートする第2リコート樹脂2としては、室温におけるヤング率が200MPa以下の樹脂を使用することが好ましい。
【0050】
以上のことより、この発明では光学特性への影響と、元々の樹脂との密着性を考慮し、1層目のリコート樹脂(第1リコート樹脂1)として、被覆除去端10Aの固定を図るために、室温におけるヤング率200MPa以上の樹脂が望ましく、2層目のリコート樹脂として(第2リコート樹脂2)として、光学特性の影響を抑えるためにヤング率200MPa以下の樹脂が望ましい。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、光ファイバ同士の接続後や光ファイバ部品作製後、クラッドが露出した被覆除去部を再び樹脂材料で再被覆するリコート方法において、第1リコート樹脂で被覆除去端前後のみを覆うように、1層目のリコートを施した後、その上から、第2リコート樹脂で被覆除去部全体を覆うように2層目のリコートを施したものであって、
▲1▼第1リコート樹脂によって被覆除去端のみをリコートし(1層目のリコート)、光ファイバ被覆除去端を固定し、光ファイバ被覆部の伸縮を抑え、亀裂・割れの発生・進展を制御するとともに、
▲2▼第2リコート樹脂によって被覆除去部全体をリコートし(2層目のリコート)、光学特性に影響を与えることなく光ファイバを保護するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】好適な実施例を示すリコート部の模式図。
【図2】リコート樹脂のヤング率と光ファイバの光学特性への影響を示す図。
【図3】従来例を示すリコート部の模式図。
【符号の説明】
1 第1リコート樹脂
11 オーバーラップ
2 第2リコート樹脂
10 ファイバ被覆、元々の樹脂
10A 被覆除去端
20 クラッド(石英部)
21 ファイバグレーティング
Claims (4)
- 光ファイバ同士の接続後や光ファイバ部品作製後、クラッドが露出した被覆除去部を再び樹脂材料で再被覆するリコート方法において、
第1リコート樹脂で被覆除去端前後のみを覆うように、1層目のリコートを施した後、その上から、第2リコート樹脂で被覆除去部全体を覆うように2層目のリコートを施すことを特徴とする二層リコート方法。 - ファイバ裸線に樹脂を被覆した光ファイバの直径が250μm以上900μm以下であり、リコート径も250μmから900μmまでであることを特徴とする請求項1に記載の二層リコート方法。
- 1層目のリコートの長さを6mm以下とするとともに、元々の樹脂と1層目のリコートとのオーバーラップの長さを2mm以上としたことを特徴とする請求項1または2に記載の二層リコート方法。
- 第1リコート樹脂として、室内におけるヤング率が200MPa以上の樹脂を用いるとともに、第2リコート樹脂として、室内におけるヤング率が200MPa以下の樹脂を用いることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の二層リコート方法。
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