JP2004124008A - 植物油燃料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】不飽和脂肪酸がエステル結合したトリグリセリドからなる植物油に対するエステル交換工程P1と、前記エステル交換工程P1で生成された不飽和脂肪酸エステルに対するオゾン処理工程P2と、前記オゾン処理工程P2で生成されたオゾニドに対する還元工程P3を少なくとも含む低粘度植物油燃料の製造方法を提供する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物油燃料の製造方法に関する。詳しくは、ディーゼルエンジン用の低公害代替燃料として有用な植物油燃料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べ、燃費、耐久性に優れているが、このディーゼルエンジンから排出される排気ガス中には、CO2、NOx、SOx、DEPなどの大気汚染物質が多く含まれていることから、軽油に替わる低公害燃料の開発が進められている。
【0003】
一方では、低公害型の新型ディーゼルエンジンやDEP除去装置の開発も行われている。しかし、従来の軽油には約500ppmの硫黄が含まれているので、前記新型エンジンやDEP除去装置の機能を低下させてしまうという問題があり、硫黄を50ppm以下にまで抑えた低公害燃料の開発が望まれている。
【0004】
つまるところ、ディーゼルエンジンの低公害化を推進するためには、エンジン自体の改良やその周辺装置の改良という技術アプローチだけでは限界があるので、燃料面からのアプローチが有望と考えられている。
【0005】
最近、硫黄を含まない低公害燃料の開発の中で、植物油を用いた代替軽油の研究が進んでいる。この中で、植物油(植物性廃油)にメタノール(又はエタノール)と触媒(水酸化ナトリウム)を混入し、加温・撹拌加えてエステル交換反応を進行させる等して得られる「メチルエステル化燃料」が注目されている。
【0006】
本願発明者らは、植物油脂を直接オゾン処理して得られるオゾニド等の反応生成物が、可燃性を有し、従来のメチルエステル化燃料よりも代替軽油としての好適な性状を示すこと、更には、前記反応生成物は、従来の市販軽油と比べて前記ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれるCO2、SOx、NOx濃度を従来のレベルの50〜30%以下にまで改善できることを明らかにした(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−219886号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、既存のメチルエステル化燃料は、市販軽油に比較して粘度、流動点、引火点が高く、また、製造工程においても歩留まりが悪い等の問題を抱えているので、現時点において代替軽油燃料として採用することは困難である。このため、欧米では、軽油又は灯油と混合し、増量剤として用いるのが一般的である。これは、従来のメチルエステル化燃料は、原料の植物油を、トランスエステリフィケーション反応によってメチルエステル化して得られる長鎖の脂肪酸エステル(分子量多い脂肪酸エステル)をそのまま利用したことに主な原因があると考えられる。
【0009】
また、上記特許文献1に開示された従来技術では、反応生成物の粘度は、市販軽油に比べて依然として高いレベルにあるという技術的課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、原料である植物油を所定の方法によって低分子化(クラッキング)することにより、粘度の低い植物油燃料を製造できる方法を提供することを主目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するために、本願では、以下の植物油燃料の製造方法を提供する。なお、本願において、「植物油燃料」とは、植物油を原料として製造された燃料を意味する。
【0012】
まず、本発明に係る植物油燃料の製造方法は、不飽和脂肪酸がエステル結合したトリグリセリド(トリアシルグリセロール)からなる植物油を原料として、この植物油に対するエステル交換(トランスエステリフィケーション:Transesterification)工程と、前記エステル交換工程で生成された不飽和脂肪酸エステルに対するオゾン処理工程と、前記オゾン処理工程で生成されたオゾニドに対する還元工程を少なくとも含む方法である。以下、各工程について詳説する。
【0013】
まず、エステル交換工程では、植物油中の前記トリグリセリドに対してメタノール等のアルコールを反応させてアルコキシル基を交換する、いわゆる「アルコーリシス」(エステル交換の一種)を行って、不飽和脂肪酸エステルとグリセリン(グリセロール)からなる反応生成物を得る。即ち、この工程により、トリグリセリド構造を壊し、不飽和脂肪酸エステルを遊離させる。
【0014】
ここで、本発明に係るエステル交換工程では、水酸化ナトリウム(NaOH)を触媒に過剰のメタノールの存在下で行う慣用の手順を採用せず、触媒としてナトリウムメトキシド(NaOCH3)を選択して用いるように工夫する。NaOCH3は、メタノールと反応して反応物中に水を生成することがないため、後掲する「オゾン処理工程」において副生産物の生成を極力抑制することができるという利点がある。
【0015】
次に、不飽和脂肪酸エステルとグリセリンからなる前記反応生成物中からグリセリンを、減圧連続遠心分離機を用いて分離除去すると同時に過剰のメタノールの回収を効率よく行い、回収したメタノールを前記エステル交換工程に再利用するように工夫する。
【0016】
続く「オゾン処理工程」では、前記不飽和脂肪酸エステルに対してオゾンO3を接触させて、前記不飽和脂肪酸エステルの二重結合部分にオゾンを付加し、可燃性のオゾニドを生成させる。このオゾン処理工程は、従来のように植物油に直接オゾンを接触させる工程ではなく、前記エステル交換工程によって遊離させた不飽和脂肪酸エステルに対してオゾン処理を行う点に特徴がある。
【0017】
続く「還元工程」では、前記オゾニドを還元処理して、前記二重結合部分を分断し、最終的に低分子化された可燃性物質であるアセタールやアルケンを得る。
即ち、前記オゾン処理工程とそれに続く還元工程の一連の反応は、いわゆるオゾン分解反応であって、このオゾン分解反応を利用した低分子化処理(クラッキング)工程であると言える。
【0018】
ここで、本発明において特に好ましい還元工程は、電気分解による「電気化学的還元工程」である。一般に、オゾニドは比較的反応性の高い物質であり、金属触媒下の化学的還元によって開裂が起こることが知られている。しかし、電気伝導度の極めて低いオゾニドの還元に「電気分解」を適用するという着想は従来にはなかった。オゾニドの電気化学的還元に成功すれば、通常加熱分解処理を前提としているクラッキングを常温、常圧下で実施できるという利点がある。
【0019】
そこで、本願発明者らは、鋭意研究を重ね、まず、サイクリックボルタノメトリック法によってオゾニドの還元電位を明らかにした。そして、金属を溶出する活性電極を用いて電気分解すると、オゾニドから生じるカーバニイオンの伝導性に基づき、オゾニドの開裂が効率良く進行することを突き止めた。
【0020】
特に、銅を陽極及び陰極に用いると、LiClO4、NaClO4等の油脂溶解性電解質を電解開始剤として添加することによって、50V程度の電圧でオゾニドの電気化学的還元が確実に達成できるようになる。また、前記油脂溶解性電解質の添加量は、電気化学的還元工程の進行に伴って、イオン性の反応中間体が発生するので、電気分解開始に必要な少量で足りるという利点がある。
【0021】
また、この電気化学的還元工程に際して添加する電子供与体(プロトンドナー)の種類を選択することによって最終反応生成物を調整、決定できるという利点もある。そして、電気分解の過程で反応液中に溶出する金属イオン(例えば、銅イオン)は、活性炭又はキレート剤に吸着させて反応液中から効率良く除去することができ、これにより、最終生成物である燃料中に前記金属イオンが混入してしまうことを防止できる。なお、金属イオンの活性炭による吸着除去は、水洗除去の場合のような排水処理設備が不要となるという利点がある。
【0022】
更に、不飽和脂肪酸エステルに対する前記オゾン処理工程の過程においては、オゾニドの他に副生成物が発生してしまうが、これらの副生成物についても前記電気化学的還元工程によって分解し、低分子化された可燃性物質に導くことが可能となる。
【0023】
以上説明した「還元工程」を経て得られた可燃性の反応生成物は、分子量が低分子化(クラッキング)されているの、粘度が低いという有利性を備えている。
具体的には、市販のディーゼル油の粘度(2.5cSt程度)に匹敵するか、それ以下の粘度の植物油燃料を得ることが可能となる。この結果、この植物油燃料は、軽油又は灯油と混合することなく使用することが可能となる。
【0024】
ここで、本発明において使用できる植物油は、不飽和脂肪酸がエステル結合したトリグリセリド(トリアシルグリセロール)を含む植物油であり、例えば、ヒマワリ油、アマニ油、ベニバナ油、大豆油、ピーナッツ油、ゴマ油、菜種油、とうもろこし油、ハマナ油、綿実セリ油などを挙げることができる。
【0025】
特に、好ましいのはヒマワリ油である。ヒマワリ油は、オレイン酸(18:1)が17%、リノール酸(18:2)が74%であり、不飽和脂肪酸が計91%を占めているので、二重結合部分のオゾン処理工程を効率良く行うことができる。特に、二つの二重結合を有するリノール酸はオゾンとの反応性が高いので、該リノール酸を豊富に含むヒマワリ油は、本発明に係る製造方法の原料に適している。
【0026】
また、ヒマワリ油は、その茎部分からパルプ生産が可能であり、成長が早く播種後約4ヶ月で収穫できる。例えば、サンライトという品種では、1haあたり2.6トンもの子実を収穫できる。この子実中の油含有量は52%であり、結局1haあたり1.35トンの油を得ることができる(栽培地:北海道での試験栽培に基づくデータ)。また、ヒマワリは、成長が早いことから、大気中の二酸化炭素を吸収固定する能力に優れていることから、軽油代替燃料の原料生産を目的とするヒマワリの生産活動は、地球環境の改善にも寄与する。
【0027】
以上をまとめると、不飽和脂肪酸がエステル結合したトリグリセリド(トリアシルグリセロール)を含むヒマワリ油等の植物油に対するエステル交換工程と、このエステル交換工程で生成(遊離)された不飽和脂肪酸エステルに対するオゾン処理工程と、このオゾン処理工程で生成するオゾニドに対する電気化学的還元工程等の還元工程を組み合わせた製造方法によって、ディーゼル油代替燃料として好適である低粘度の植物油燃料を効率よく製造できるという技術的意義を有している。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る植物油燃料の製造方法の好適な実施形態を、添付図面に基づいて説明する。まず、図1は、本発明に係る植物油燃料の製造方法の工程フロー図である。
【0029】
まず、本発明に係る植物油燃料の製造方法は、不飽和脂肪酸がエステル結合したトリグリセリド(トリアシルグリセロール)である植物油に対してエステル交換反応を行うエステル交換工程P1と、このエステル交換工程P1で生成された不飽和脂肪酸エステルに対してオゾンを接触させるオゾン処理工程P2と、このオゾン処理工程P2で生成されたオゾニドを還元して開裂させる還元工程P3を少なくとも含むことを特徴とする。以下、各工程P1〜P3の好適な実施形態について、順次説明する。
【0030】
<エステル交換工程P1>
まず、エステル交換工程P1は、オレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸がエステル結合したトリグリセリドからなる植物油、例えば、ヒマワリ油、アマニ油、ベニバナ油、大豆油、ピーナッツ油、ゴマ油、菜種油、とうもろこし油、ハマナ油、綿実セリ油に対するエステル交換反応である。特に好適には、不飽和脂肪酸を90%以上含み、特にリノール酸を豊富に含むヒマワリ油に対して、過剰のメチルアルコールを過剰に添加することによってアルコキシル基交換を行い(アルコーリシスを行い)、トリグリセリドから不飽和脂肪酸メチルエステル並びにグリセリドを遊離させる反応である(化学式(1)参照)。
【0031】
【化1】
【0032】
本発明に係る製造方法における前記エステル交換反応の際の触媒としては、ナトリウムメトキシド(NaOCH3)を選択し、採用する。NaOCH3は、メタノールと反応して反応物中に水を生成することがないため、後掲するオゾン処理工程P2において副生産物の生成を極力抑制することができるからである。
【0033】
本エステル交換反応の好適条件は、ヒマワリ油とメタノールのモル比を1:6(但し、ヒマワリ油のモル分子量は879.5g/モル)として混合し、これに予めメタノールに溶解させたNaOCH3をヒマワリ油に対して重量比0.5%になるように添加する。冷却還流器を備えた撹拌反応槽において、温度を60〜70℃に保って30分〜1時間反応を行わせる。この条件によって98%以上のエステル交換が達成される。
【0034】
続いて、エステル交換工程P1による反応生成物に対して減圧遠心分離処理を行って、不飽和脂肪酸メチルエステルとグリセリドを分離すると同時に、過剰分のメタノールを回収する。回収したメタノールは、エステル交換工程P1に再利用する。
【0035】
<オゾン処理工程P2>
前記エステル交換工程P1によって得られたエステル化ヒマワリ油に対してオゾン(O3)を接触させる。オゾン処理の好適条件は、通気攪拌反応槽内においてエステル化ヒマワリ油を20〜30℃の反応温度に保ち、オゾン混合ガス通気速度を2〜4vvm、オゾン投入量(エステル化ヒマワリ油単位容積当たり添加されたオゾン量)を100〜150kg−O3/m3とする。このオゾン処理により、不飽和脂肪酸メチルエステルの二重結合部分にオゾンが付加したオゾニド並びにその副生成物が生成する(化学式(2)参照)。
【0036】
【化2】
【0037】
図2は、上記好適条件のもとでエステル化ヒマワリ油を3時間オゾン処理した場合の不飽和結合部位の変化とオゾニド生成の様子をフーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)によって示したものである。
【0038】
図2(A)は、エステル化ヒマワリ油の分析結果で、不飽和二重結合の特徴的分子構造であるC=Cおよび=C−Hがそれぞれの吸光波長である1650および3200cm−1に観察される。
【0039】
図2(B)は、オゾン処理3時間後の分析結果であり、C=Cおよび=C−Hの吸光ピ−クは完全に消滅し、オゾニドの吸光波長1080cm−1 に新たなピークが出現している。
【0040】
また、図3は、オゾン処理中における通気攪拌反応槽のガス出入り口におけるオゾン濃度を測定し、オゾン吸収率の経時変化を算出して示した結果である。本図から明らかなように、不飽和二重結合とオゾンの反応は極めて早く、不飽和二重結合が存在する限り、投入されたオゾンは100%吸収される。よって、反応槽から排出されるオゾンの廃ガス処理は不要であることが分かる。また、反応槽出口におけるオゾン濃度の計測は、反応の進行状況を掌握するために大変便利な指標となる。
【0041】
図4は、図3の実験中におけるエステル化ヒマワリ油に含まれる各種不飽和脂肪酸メチルエステルの変化をGC/MS(質量分析ガスクロマトグラフィー)で測定した結果を示したものである。不飽和二重結合を2箇所に有するリノール酸メチルエステル(C18:2)は、1箇所に有するオレイン酸メチルエステル(C18:1)に対して優先的にオゾンと反応することが明らかであり、不飽和二重結合数の多い脂肪酸を有する植物油が適している。
【0042】
ここで、オゾニドと共に発生する上記化学式(2)にも示された副生成物は増粘作用を有する。図5は、図3に示したオゾン処理過程におけるエステル化ヒマワリ油の粘度と密度の変化を示したものである。オゾン処理前のエステル化ヒマワリ油の粘度4cStがオゾン処理時間の増大に伴って、17cSt前後まで増加する。このため、本製造方法中のオゾン処理に用いる反応槽には、強い剪断力を有する撹拌装置やジェットポンプ等を用いることが望ましい。
【0043】
また、図4の結果と対比することにより、過剰量のオゾン添加を行うと、前記副生成物が増加して、粘度の上昇をもたらすことが判明した。このため、オゾン添加量は、量論的に必要最低量を添加し、副生成物の生成を抑制しながらオゾニドを生成させるようにすることが望ましい。
【0044】
<還元工程P3>
次工程である還元工程P3は、前記オゾン処理工程P2で得られたオゾニド及び副生成物に対する還元処理を行う工程であって、該工程によって可燃性を有する低分子物質(例えば、アセタール、アルケン)を得る工程である。本製造方法では、慣用の化学的還元ではなく、電気分解に基づく電気化学的還元処理を採用する。
【0045】
図6は、オゾニドを電気的還元処理によって開裂できることを検証するために行ったサイクリックボルタメターによる解析結果である。ガラスカーボンを作用電極、白金をAg/AgNO3参照電極に対する対極として用いた。この図6では、オゾニドの還元電位が−1.7Vであり、電気化学的還元処理が可能であることを示している。
【0046】
電気分解は、銅、パラジウム、白金、チタン等、特に好適には銅を陽極並びに陰極として採用する。そして、電気伝導度の低いオゾニドに対する電気化学的還元処理を効率よく行うために、LiClO4やNaClO4等の油脂溶解性電解質を添加し、更に反応中間体であるカーバニイオンに対して電子供与体(プロトンドナー)を添加することによって、25〜50V程度の電圧条件でオゾニドを電気分解することができる。
【0047】
図7(A)は、メチルエステル化したヒマワリ油をオゾン処理した結果を示す図(グラフ)であり、吸光波長1650cm−1及び3200cm−1における不飽和結合C=C及び=C−Hが消滅し、1080cm−1におけるオゾニドが存在していることがわかる。
【0048】
図7(B)は、オゾン処理したエステル化ヒマワリ油の電気還元に際して、電子供与体として酢酸を用い、陽極、陰極に銅を、また電解質としてLiClO4を添加して25V、1Aで約1.5時間処理した後の処理液のFT−IR分析結果を示したものである。オゾニドの1080cm−1のピークは殆ど消滅し、新たにアルデヒド(2700cm−1)とアルケン(1640cm−1)が検出された。
【0049】
また、酢酸と共にメタノールを添加して同様な電気還元を行った場合のFT−IR分析結果を図7(C)に示した。この場合、アルデヒド、アルケンのピークが低下し、1120cm−1に吸光波長を有するアセタールが出現している。
【0050】
ここで、図8は、上記の実験結果に基づいて想定したオゾニドの電気化学的還元(銅電極による電気分解)の反応機構を簡略に表す図である。まず、図8(A)は、オゾニドの還元によって、オゾニドが開裂して、カーバニイオンが生成するまでの反応段階を示している。
【0051】
このカーバニイオンが電気伝導性の中間反応物であることは、図9に示す、オゾニドの定電流電気化学的処理における電圧変化に関する実験により明らかである。NaClO4を電解質として添加して0.5Aでの定電流電気還元を実施し、この時の電圧変化を測定した。電気還元の進行に伴ってカーバニイオンが蓄積し、電圧は実験開始時の80Vから30Vにまで低下した。
【0052】
図8(B)は、カーバニイオンに電子供与体からプロトン(H+)が供与され、アルコールを経て最終生成物である可燃性のアルケンが生成する反応過程を示している。
【0053】
図8(C)は、カーバニイオンに電子供与体からプロトン(H+)が供与され、アルコールを経て最終生成物である可燃性のアセタールが生成する反応過程を示している。
【0054】
なお、上記還元工程P3の際には、オゾニドに加えて前記副生成物の電気分解も進行するため、粘度は、一気に、オゾン処理エステル化ヒマワリ油の12.2cStから市販のディーゼル油に匹敵する2.75cStまで低下させることができ、引火点についても25℃にまで低下させることができた。
【0055】
この電気分解に基づく電気化学的還元工程によれば、常温、常圧の条件で、いわゆるクラッキングを行うことができるので、生産コストやエネルギー消費において極めて有利である。
【0056】
ここで、前記電子供与体としては、メチルアルコール(CH3OH)等の第1級アルコール、更にはs−ブチルアルコール等の第2級アルコール、t−ブチルアルコール等の第3級アルコール、酢酸(CH3COOH)等を採用することができ、この電子供与体の種類を選択することによって、最終生成物である低分子可燃性物質の組成や性状を変化させることができる。
【0057】
なお、電気分解の過程で反応液中に溶出する金属イオン(例えば、銅イオン)は、活性炭又はキレート剤等の吸着剤に吸着させて反応液中から効率良く除去することができる。これにより、最終生成物である燃料中に前記金属イオンが混入してしまうことを防止できる。なお、金属イオンの活性炭又はキレート剤等による吸着除去は、水洗除去の場合のような排水処理設備が不要となるという利点がある。
【0058】
【発明の効果】
本発明に係る植物油燃料の製造方法によれば、植物油をエステル交換した後にオゾン処理してオゾニドを得て、このオゾニドを還元処理したことによって、可燃性を有する低粘度の低分子燃料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る植物油燃料の製造方法の工程フロー図
【図2】赤外吸光分析結果を示す図(グラフ)
(A)ヒマワリ油メチルエステル
(B)オゾン処理ヒマワリ油メチルエステル
【図3】ヒマワリ油メチルエステルによるオゾン吸収の経時変化を示す図(グラフ)
【図4】オゾン処理による脂肪酸メチルエステルの組成変化を示す図(グラフ)
【図5】ヒマワリ油メチルエステルのオゾン処理による密度、動粘度の変化を示す図(グラフ)
【図6】オゾニドのサイクリックボルタモメーターを示す図(グラフ)
【図7】赤外吸光分析結果を示す図(グラフ)
(A)オゾン処理後のヒマワリ油メチルエステル
(B)酢酸を水素供与体とした電気化学的還元処理後のオゾン処理ヒマワリ油メチルエステル
(C)酢酸とメタノールを水素供与体とした電気化学的還元処理後のオゾン処理ヒマワリ油メチルエステル
【図8】オゾン処理ヒマワリ油メチルエステルの電気化学的還元処理における反応機構を示す図
(A)オゾニドの還元によって、オゾニドが開裂して、カーバニイオンが生成するまでの反応段階
(B)カーバニイオンに電子供与体からプロトン(H+)が供与され、アルコールを経て最終生成物である可燃性のアルケンが生成する反応過程
(C)カーバニイオンに電子供与体からプロトン(H+)が供与され、アルコールを経て最終生成物である可燃性のアセタールが生成する反応過程
【図9】オゾニドの定電流電気化学的還元処理における電圧変化を示す図(グラフ
Claims (5)
- 不飽和脂肪酸がエステル結合したトリグリセリドからなる植物油に対するエステル交換工程と、前記エステル交換工程で生成された不飽和脂肪酸エステルに対するオゾン処理工程と、前記オゾン処理工程で生成されたオゾニドに対する還元工程を少なくとも含むことを特徴とする植物油燃料の製造方法。
- 前記還元工程が電気化学的還元工程であることを特徴とする請求項1記載の植物油燃料の製造方法。
- 前記電気化学的還元工程は、銅電極を用いることを特徴とする請求項2記載の植物油燃料の製造方法。
- 前記電気化学的還元工程の際に前記銅電極から溶出する銅イオンを活性炭又はキレート剤に吸着させて反応生成物から除去することを特徴とする請求項2記載の植物油燃料の製造方法。
- 前記植物油は、ヒマワリ油であることを特徴とする請求項1記載の植物油燃料の製造方法。
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