JP2004122989A - 四輪駆動車の動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この装置は、左右後輪33L,33Rの回転速度差を許容するリヤデフ32を有する後輪側駆動系30と、左右前輪43L,43Rの回転速度差を許容するフロントデフ42を有する前輪側駆動系40とを備える。また、後輪側駆動系30及び前輪側駆動系40の差動を許容するセンターデフ25と、該差動の制限及び制限解除を切替える差動制限機構24とを備える。差動制限機構24によって上記差動が制限されているときにあって、各車輪33L,33R,43L,43Rに関するスリップ量についての条件を含む所定の条件が満たされたときに、同差動についての制限を強制的に解除する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、四輪駆動車にあって動力源からの動力を各車輪へと伝達する四輪駆動車の動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、このような四輪駆動車の動力伝達装置にあっては、その前輪側駆動系及び後輪側駆動系に、左右の車輪間における回転速度差(差動)を許容するディファレンシャルをそれぞれ備えている。また、それらディファレンシャルの他に、前輪側駆動系と後輪側駆動系との間における差動を許容するセンターディファレンシャルを備えた動力伝達装置もある。そして、それらデファレンシャルを備えた装置にあっては、各車輪のスリップ状況や車両の操舵状況に応じたかたちで各車輪間における差動が許容され、車載エンジンからの動力が効率的に路面に伝達されるようになっている。
【0003】
ところで、上記センターデファレンシャルを備えた四輪駆動車は、低μ路や凸凹路等といった難路を走行する場合において1つの車輪でも空転すると、他の車輪への動力伝達がなされにくくなる。そこで従来は、こうした点に鑑み、センターデファレンシャルを介した前輪側駆動系と後輪側駆動系との間における差動を制限する機能、いわゆるデフロック機能を有する動力伝達装置が提案され、実用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、そうしたデフロック機能を備えた動力伝達装置の一例を、図5を参照して説明する。
図5に示すように、四輪駆動車100は、動力源としてのエンジン11を備えている。そして、このエンジン11の出力軸(図示略)に付与される動力(回転トルク)は、変速機12を介して、トランスファ20に伝達される。
【0005】
このトランスファ20は、変速機12の出力軸(図示略)と後輪用プロペラシャフト31とを駆動連結し、同出力軸の回転トルクを後輪用ディファレンシャル32に伝達している。そして、エンジン11の回転トルクは、変速機12や後輪用プロペラシャフト31を介して後輪用ディファレンシャル32に伝達され、同ディファレンシャル32から左右の後輪33L,33Rにそれぞれ分配される。
【0006】
また、トランスファ20は、変速機12の出力軸と前輪用プロペラシャフト41とについてもこれを、多板クラッチ機構等により構成された差動制限機構24や、センターディファレンシャル25を介して接続している。
【0007】
そして、上記差動制限機構24の非作動時には、センターディファレンシャル25を通じた後輪用プロペラシャフト31と前輪用プロペラシャフト41との間における差動が許容された状態で、上記変速機12の出力軸と後輪用プロペラシャフト31及び前輪用プロペラシャフト41とが駆動連結される。
【0008】
一方、上記差動制限機構24の作動時には、上記変速機12の出力軸と後輪用プロペラシャフト31及び前輪用プロペラシャフト41とが、いわゆる直結された状態で駆動連結される。従ってこのときには、たとえ後輪33L,33Rが空転している場合であれ、前輪43L,43Rへの動力伝達は確保される。また同様に、たとえ前輪43L,43Rが空転している場合であっても、後輪33L,33Rへの動力伝達は確保される。すなわち、後輪33L,33R及び前輪43L,43Rが共に空転しない限り、四輪駆動車100としての走行性能は確保されるようになり、難路における四輪駆動車の走破性能の向上を図ることが可能になる。
【0009】
【特許文献1】
特開昭63−134346号公報(第13−15頁、第1図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したデフロック機能が設定されると、難路における四輪駆動車の走破性能を向上させることが可能になるとはいえ、新たに以下に述べるような不都合が生じることが発明者によって確認されている。
【0011】
例えば、上記四輪駆動車100にあっては、その制動に際し、各車輪33L,33R,43L,43Rの回転が強制的に停止される。そして通常、その制動力は、後輪33L,33Rに比べて、前輪43L,43Rの方により大きな力が作用するように設定されている。このため、上記差動制限機構24が作動しているときに前輪43L,43R及び後輪33L,33Rが共にスリップし、更にはそれに伴ってエンジン回転速度が高くなっているときに四輪駆動車100が制動状態になると、その運転状態が以下の(条件イ)〜(条件ハ)を同時に満たす状態となることがある。
(条件イ)エンジン11の出力軸が大きな回転トルクを有した状態で回転している。
(条件ロ)後輪33L,33Rが未だ強制停止に至っていない。
(条件ハ)前輪43L,43Rが強制停止されている。
【0012】
こうした運転状態にあっては、上記(条件イ),(条件ロ)に起因する回転トルクが、センターディファレンシャル25及び前輪用プロペラシャフト41を介して前輪用ディファレンシャル42に直接伝達される。一方、上記(条件ハ)によって、同回転トルクの伝達対象である前輪43L,43Rはこれが強制停止されている。このため、このとき上記前輪用ディファレンシャル42に入力される回転トルクは、同ディファレンシャル42に大きな負荷として作用してその耐久性を低下させる一因となる。
【0013】
なお、上記特許文献1に記載の装置では、車両の急制動による安定性確保を意図して、四輪駆動車が制動状態となったことを条件に、上記デフロック機能の作動を強制的に解除するようにしている。そしてこの場合には、上記(条件イ)〜(条件ハ)が同時に満たされることもない。しかし、同特許文献1に記載の装置の場合、車速が極低速、若しくは停車中と判断される場合には、上記デフロック機能の解除が行われない構成となっている。このため、車速が極低速若しくは停車中(車速「0」)と判断されている状態で、デフロック機能の設定に起因する上記(条件イ)〜(条件ハ)が同時に満たされるようなことがあると、やはり上記不都合の発生も避けられないものとなる。
【0014】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車速がたとえ極低速若しくは停車状態にあったとしても、デフロック状態での制動操作に起因する動力伝達系への不要なトルク伝達を好適に抑制することのできる四輪駆動車の動力伝達装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
先ず、請求項1に記載の発明は、左右後輪の回転速度差を許容する後輪用ディファレンシャルを備える後輪側駆動系と、左右前輪の回転速度差を許容する前輪用ディファレンシャルを備える前輪側駆動系と、これら後輪側駆動系及び前輪側駆動系の差動を許容する差動機構と、該差動機構を通じた差動の制限及び制限解除を切替える差動制限機構とを有して、車載エンジンから出力される動力を前記左右後輪及び前記左右前輪に伝達する四輪駆動車の動力伝達装置において、前記左右後輪及び前記左右前輪に関するスリップ量を監視し、該監視するスリップ量を含む所定の条件が満たされるとき、前記差動制限機構によって前記後輪側駆動系及び前記前輪側駆動系の差動が制限されていることを条件に、該差動制限機構による差動の制限を強制解除する差動制限解除手段を備えることをその要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、いかなる車速であれ、車輪のスリップ量についての条件が成立するとき、換言すれば、四輪駆動車が制動状態になるとその動力伝達系、特に前輪用ディファレンシャルに大きな負荷が作用するおそれのあるときに、前輪側駆動系及び後輪側駆動系間における差動制限を強制解除することができるようになる。従って、車速が極低速若しくは停車状態にあったとしても、差動制限状態での制動操作に起因する上記動力伝達系への不要なトルク伝達を好適に抑制することができるようになる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記差動制限解除手段は、前記左右後輪及び前記左右前輪の回転速度を車輪毎に各別に検出し、該検出した回転速度のうち最も速いものと最も遅いものとの速度差に基づいて前記スリップ量を監視することをその要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、各車輪間における回転速度差に基づいて、それら車輪に関するスリップの有無や、同スリップの度合いを好適に監視することができるようになる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記車載エンジンの出力軸に駆動連結される変速機を更に有し、前記差動制限解除手段は、前記変速機の変速位置と、前記四輪駆動車の走行速度と、前記車載エンジンの出力軸の回転速度とに基づいて前記スリップ量を監視することをその要旨とする。
【0020】
変速機を備えた車両にあっては、該変速機の変速位置と同車両の走行速度とに基づいて、その各車輪にスリップが生じていない状況下におけるエンジン出力軸の回転速度を推定することが可能である。この点、上記構成によれば、そうして推定されるエンジン出力軸の回転速度と、実際の回転速度との比較に基づいて、各車輪に関するスリップの有無や、同スリップの度合いをより正確に判断することができるようになる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記所定の条件が、前記監視するスリップ量が所定量以上である条件を含むことをその要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、各車輪に関するスリップ量が、前記動力伝達系、特に前輪用ディファレンシャルに大きな負荷が作用するおそれのある量を超えて大きくなっていることを好適に判断することができるようになる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記所定の条件が、前記監視するスリップ量が所定量以上である条件、及び前記車載エンジンの出力軸の回転速度が所定速度以上である条件を含むことをその要旨とする。
【0024】
上記構成によれば、各車輪に関するスリップ量及びエンジンの出力軸の回転速度が、共に前記動力伝達系、特に前輪用ディファレンシャルに大きな負荷が作用するおそれのある閾値を超えていることをより好適に判断することができるようになる。これにより、上記差動制限の強制解除を的確に実行することができるようになり、ひいては動力伝達系、特に前輪用ディファレンシャルへの不要なトルク伝達についてもこれをより好適に抑制することができるようになる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記所定の条件として、前記四輪駆動車がほぼ停止状態にある条件を更に含むことをその要旨とする。
【0026】
前述した動力伝達系への負荷は、例えば急峻な登り坂を走行しているときや低μ路での発進時、凸凹路の走行時等において、四輪駆動車を走行させるべくエンジン回転速度が高められているにも拘わらず同車両がほぼ停止したままである状況下に陥った場合に生じ易いことが発明者によって確認されている。この点、上記構成によれば、そうした状況下において、四輪駆動車の動力伝達系、特に前輪用ディファレンシャルに不要なトルクが伝達されることを的確に抑制することができるようになる。
【0027】
また、請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記所定の条件として、前記四輪駆動車の制動操作が行われた条件を更に含むことをその要旨とする。
【0028】
上記構成によれば、前記動力伝達系に大きな負荷が発生するきっかけとなる制動力の発生を的確に察知して、同制動力の発生と同時に、あるいはその発生に先立って、後輪側駆動系と前輪側駆動系との間における差動制限を解除することが可能になる。従ってこの場合も、動力伝達系への不要なトルク伝達を効率的に抑制することができるようになる。
【0029】
また、請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、前記左右後輪及び前記左右前輪のスリップ状況に応じてそれら車輪に各別に制動力を自動付与する制動力付与手段を更に備え、前記所定の条件として、該制動力付与手段による制動力の自動付与が必要とされる条件を更に含むことをその要旨とする。
【0030】
四輪駆動車にあって難路走行時に車輪が浮くなどして空転した場合に、制動力を自動付与することで空転輪を強制停止させて反力を生じさせ、他の車輪への伝達動力を確保するようにしたシステムが提案され、実用されている。そして、こうしたシステムによって発生される制動力についても、これが上記動力伝達系への負荷発生のきっかけになり得る。この点、上記構成によれば、そうしたシステムが搭載される四輪駆動車にあって、同システムによる制動力の発生を的確に察知した上で、後輪側駆動系と前輪側駆動系との間における差動制限を解除することができるようになる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる四輪駆動車の動力伝達装置の一実施の形態について説明する。
【0032】
ここでは先ず、本実施の形態にかかる四輪駆動車の動力伝達装置の概略構成について、図1を参照して説明する。
同図1に示されるように、四輪駆動車10には、その動力源であるエンジン11と、同エンジン11の出力軸の回転を変速する変速機12とが配設されている。
【0033】
また、この四輪駆動車10は、エンジン11の動力を後輪33L,33Rと前輪43L,43Rとに分配する、いわゆるトランスファ20を備えている。このトランスファ20の入力軸21には、上記変速機12のファイナルギア(図示略)が連結されている。
【0034】
このトランスファ20にあって、その入力軸21に連結された後輪用出力軸22には、後輪用プロペラシャフト31や、後輪用ディファレンシャル(リヤデフ)32等からなる後輪側駆動系30が接続されている。この後輪側駆動系30にあって、そのリヤデフ32は、左右の後輪33L,33Rにそれぞれ接続された左右一対のリヤアクスル(左右後輪の車軸)34L,34Rに連結されている。なお、リヤデフ32は、複数のギヤにより構成される周知のギヤ機構からなるものであり、左右の後輪33L,33R間の差動を許容する差動機である。
【0035】
また、上記トランスファ20にあって、その入力軸21と前輪用出力軸23とは、差動制限機構24や、センターディファレンシャル(センターデフ)25を介して接続されている。また、トランスファ20の前輪用出力軸23には、前輪用プロペラシャフト41や、前輪用ディファレンシャル(フロントデフ)42等からなる前輪側駆動系40が接続されている。この前輪側駆動系40にあって、フロントデフ42は、左右の前輪43L,43Rにそれぞれ接続された左右一対のフロントアクスル(左右後輪の車軸)44L,44Rに連結されている。なお、上記フロントデフ42は、上記リヤデフ32と同様の周知のギヤ機構からなるものであり、左右の前輪43L,43R間の差動を許容する差動機である。
【0036】
また、上記センターデフ25は、リヤデフ32やフロントデフ42と同様に周知のギヤ機構からなるものであり、特に後輪用出力軸22(後輪用プロペラシャフト31)と前輪用出力軸23(前輪用プロペラシャフト41)との間の差動回転を許容する差動機である。なお、本実施の形態では、このセンターデフ25が、後輪側駆動系30と前輪側駆動系40との間における差動を許容する差動機構として機能する。
【0037】
更に、上記差動制限機構24は、クラッチ機構24aと、同クラッチ機構24aの作動及び非作動を切替えるアクチュエータ24bとにより構成されている。この差動制限機構24は、前述したように、その作動に伴って、センターデフ25を通じた後輪用プロペラシャフト31と前輪用プロペラシャフト41との間における差動を制限する(前記デフロック機能を作動させる)。なお、上記クラッチ機構24aとしては、例えばクラッチプレートとクラッチディスクとの圧着及びその開放を作動油圧の制御により行う油圧駆動式の多板クラッチ機構等を採用することができる。
【0038】
一方、本実施の形態の装置にあって、前記リヤアクスル34L,34R、及び前記フロントアクスル44L,44Rには、その回転に対する制動力を発生させるためのブレーキ機構35L,35R,45L,45Rが各別に設けられている。また、これらブレーキ機構35L,35R,45L,45Rには、ブレーキペダル13と連動して作動するアクチュエータ14が接続されている。そして、ブレーキペダル13が踏み込まれると、上記ブレーキ機構35L,35R,45L,45Rが制動力を発生して各車輪33L,33R,43L,43Rの回転が減速され、ひいては四輪駆動車10が減速される。
【0039】
また、本実施の形態の装置は、こうしたアクチュエータ14の他にも、後述する電子制御ユニット50からの指令に基づいて各ブレーキ機構35L,35R,45L,45Rが発生する制動力を各別に制御するアクチュエータ15を備えている。このアクチュエータ15は、具体的には、例えば四輪駆動車10の難路走行中に車輪が浮いて空転した場合において対応するブレーキ機構を作動させて空転輪を強制停止させる等といったように、各車輪33L,33R,43L,43Rのスリップ状況に応じて各車輪に各別に制動力を自動付与すべく作動する。なお、各ブレーキ機構35L,35R,45L,45Rは、それらを同時に作動させた場合において、後輪用のブレーキ機構35L,35Rよりも前輪用のブレーキ機構45L,45Rの方が大きな制動力を発生するように設定されている。
【0040】
他方、上記四輪駆動車10には、その運転状態やエンジン11の運転状態を検出するための各種のセンサ類が設けられている。こうしたセンサとして、例えば、エンジン11には、その出力軸の回転速度(エンジン回転速度NE)を検出するためのエンジン回転速度センサ55が設けられている。また、各車輪33L,33R,43L,43Rの近傍には、その回転速度を各別に検出するための車輪速センサ56a,56b,56c,56dがそれぞれ設けられている。更に、ブレーキペダル13の近傍には、その踏込みの有無を検出するためのブレーキスイッチ57が設けられている。併せて、四輪駆動車10の運転室内には、差動制限スイッチ58が設けられている。この差動制限スイッチ58が「オン」操作されることをもって、前記センターデフ25を通じた差動についての制限が実行される。
【0041】
また、本実施の形態の装置は電子制御ユニット50を備えている。そして、この電子制御ユニット50は、上記各種のセンサ類の検出信号を取り込むとともにそれら信号に基づいて各種の演算を行い、その演算結果に応じて上記エンジン11の駆動を制御する等、四輪駆動車10の運転状態を総合的に制御する。
【0042】
また、この電子制御ユニット50は、それぞれ例えばマイクロコンピュータ等からなる4WD(四輪駆動)制御装置51や、TRC(トラクション)制御装置52等も備えている。
【0043】
上記4WD制御装置51は、上記差動制限スイッチ58の操作状態等を監視するとともにその監視結果に基づいて前記差動制限機構24(アクチュエータ24b)の駆動を制御することで、上記センターデフ25を通じた差動の制限と同制限の解除との切替制御を実行する。
【0044】
上記TRC制御装置52は、上記車輪速センサ56a〜56d等の検出信号を取り込むとともにそれら信号に基づいて各種の演算を行い、その演算結果に基づいて前記アクチュエータ15の駆動を制御する。本実施の形態では、このTRC制御装置及びアクチュエータ15が、各車輪33L,33R,43L,43Rに各別に制動力を自動付与する制動力付与手段として機能する。
【0045】
さて、本実施の形態の動力伝達装置では、基本的に、前述した大きな負荷がフロントデフ42に作用するおそれのあるときに、上記センターデフ25を通じた前記後輪側駆動系30と前輪側駆動系40との間における差動制限を強制的に解除するようにしている。
【0046】
ここで、上記負荷は、前記(条件イ)〜(条件ハ)が同時に満たされるとき、詳しくは、以下の(条件A)〜(条件C)が同時に満たされるときに発生し易いことが発明者によって確認されている。なお、こうした状況下に陥るおそれのあるときとしては、例えば、急峻な坂道での登坂走行時や、低μ路での発進時、凸凹路の走行時などが挙げられる。
(条件A)前輪43L,43Rの少なくとも一方、及び後輪33L,33Rの少なくとも一方がスリップしていること。
(条件B)四輪駆動車10がほぼ停止していること。
(条件C)ブレーキペダル13が踏み込まれて各ブレーキ機構35L,35R,45L,45Rの作動が開始されたこと、若しくはスリップしている車輪を停止させるべく対応するブレーキ機構の作動が開始されたこと(アクチュエータ15の作動が開始されたこと)。
【0047】
そこで、本実施の形態の動力伝達装置では、上記差動制限についての強制解除の実行を、以下の(条件a)〜(条件c)に示す所定の条件が満たされたことをもって、開始するようにしている。なお、これら(条件a)〜(条件c)が同時に満たされたことをもって、その直後に上記(条件A)〜(条件C)が同時に満たされる可能性が高いことが判断される。
(条件a)各車輪33L,33R,43L,43Rに関するスリップ量Nsが所定量αよりも大きくなっていること。なお、スリップ量Nsとしては、各車輪33L,33R,43L,43Rの回転速度のうち最も速いものと最も遅いものとの速度差が算出され、用いられる。また、所定量αとしては、そうしたスリップ量Nsが、いずれの車輪にもスリップが生じていないときに取りうる速度差を超えて大きくなっていること、更にはフロントデフ42に大きな負荷を作用させるおそれのある量となっていることを的確に判断することの可能な値が実験等により予め求められている。
(条件b)四輪駆動車10の走行速度SPDが所定速度β未満であること。なお、この所定速度βとしては、四輪駆動車10がほぼ停止状態にあることを判断するための値が設定される。また、上記走行速度SPDとしては、各車輪33L,33R,43L,43Rの回転速度のうち最も遅い速度が用いられる。
(条件c)ブレーキ機構の作動が開始される状況下になったこと。具体的には、ブレーキペダル13が踏み込まれたこと、若しくはスリップしている車輪に制動力を自動付与すべく対応するブレーキ機構が作動する状況下になったこと。
【0048】
また、本実施の形態の動力伝達装置では、上述した差動制限についての強制解除の実行を、エンジン回転速度NEが所定速度γよりも低い速度になったことをもって停止するようにしている。なお、この所定速度γとしては、エンジン回転速度NEが、フロントデフ42に上記大きな負荷が作用するおそれのない速度まで十分に低下したことを判断するための値が、実験等により求められた上で、予め設定されている。
【0049】
以下、こうした差動制限についての強制解除を行う処理の処理手順について、図2を参照して説明する。
なお、図2は上記強制解除を行う処理の具体的な処理手順を示すフローチャートである。また、図2のフローチャートに示される一連の処理は、その処理手順を概念的に示したものであり、実際には、所定周期毎の割り込み処理として、前記4WD制御装置51により実行される。本実施の形態では、この強制解除処理が、上記差動制限を強制解除する差動制限解除手段として機能する。
【0050】
同図2に示されるように、この処理では先ず、上述した差動制限についての強制解除を実行する条件が成立しているか否かを判断すべく、以下の処理(ステップS101〜S104)が実行される。
【0051】
すなわち先ず、四輪駆動車10やエンジン11の運転状態が読み込まれた後(ステップS101)、前記(条件a)及び(条件b)が共に満たされているか否かが判断され(ステップS102)、更には前記(条件c)が満たされているか否かが判断される(ステップS103)。
【0052】
そして、(条件a)〜(条件c)のいずれか1つでも満たされていないと判断される場合には(ステップS102乃至S103:NO)、このとき上記フロントデフ42に大きな負荷が作用するおそれがないとして、以下の処理を実行することなく、本処理は一旦終了される。
【0053】
一方、本処理が繰り返し実行され、(条件a)〜(条件c)が全て満たされるようになると(ステップS102及びS103:YES)、次に前記差動制限機構24を通じた後輪側駆動系30と前輪側駆動系40との間における差動制限が実行されているか否かが判断される(ステップS104)。本実施の形態では、具体的には、前記差動制限スイッチ58が「オン」操作されてクラッチ機構24aが作動しているか否かが判断される。
【0054】
そして、上記差動制限が実行されていないと判断される場合には(ステップS104:NO)、この場合にもフロントデフ42に大きな負荷が作用するおそれがないとして、以下の処理を実行することなく、本処理は一旦終了される。
【0055】
一方、上記差動制限が実行されていると判断される場合には(ステップS104:YES)、上記差動制限についての強制解除を実行する条件が成立しているとして、同強制解除を実行すべく、以下の処理(ステップS105〜S107)が実行される。
【0056】
ここでは先ず、前記クラッチ機構24aの駆動が停止され、上記差動制限が解除される(ステップS105)。なお、この解除は、ブレーキ機構が作動する以前のタイミングにおいて実行される。
【0057】
その後、エンジン回転速度NEが前記所定速度γ未満であるか否かが判断される(ステップS106)。そして、エンジン回転速度NEが所定速度γ以上であると判断される場合には(ステップS106:NO)、未だフロントデフ42に大きな負荷が作用するおそれのある状況下であるとして、本処理(ステップS106)が繰り返し実行される。
【0058】
そしてその後、エンジン回転速度NEが所定速度γ未満にまで低下すると(ステップS106:YES)、フロントデフ42に大きな負荷が作用するおそれがなくなったとして、上記クラッチ機構24aの駆動が再開されて、上記差動制限が再度実行された後(ステップS107)、本処理は一旦終了される。
【0059】
以下、上述した強制解除処理がどのように行われるかを、図3に示すタイミングチャートを参照しつつ説明する。
なお、図3は、上記強制解除処理の処理態様の一例を示している。また、図3は、こうした強制解除処理の一例において、以下に記載する各項目についてそれぞれ示している。すなわち、同図において、(a)はスリップ量Nsの推移を、(b)は四輪駆動車10の走行速度SPDの推移を、(c)はエンジン回転速度NEの推移を、(d)はブレーキスイッチ57の作動状態の推移を、(e)はクラッチ機構24aの作動状態の推移をそれぞれ示している。
【0060】
更に、同図の例にあって、時刻t1以前においては、以下の各条件が満たされている。
・同図(b)に示すように、四輪駆動車10が停止されている(走行速度SPDが「0」である)。
・同図(d)に示すように、ブレーキスイッチ57が「オン」になっている、すなわちブレーキペダル13が踏み込まれている。
・同図(e)に示すように、クラッチ機構24aが作動しており、後輪側駆動系30と前輪側駆動系40との差動が制限されている。
【0061】
さて、本例にあっては、そうした時刻t1において、同図(d)に示されるように、ブレーキペダル13の踏み込みが解除される。そして、これに併せて、アクセルペダルが踏み込まれる。これに伴い、同図(c)に示されるように、エンジン回転速度NEが上昇する。なお、本例では、エンジン回転速度NEが上昇するとはいえ、同図(a)に示されるように、車輪がスリップして前記スリップ量Nsが大きくなるだけで、同図(b)に示されるように、四輪駆動車10の走行速度SPDが前記所定速度βを超えることはない(前記(条件b)が満たされている)。また、その後における時刻t2において、上記スリップ量Nsが前記所定量αを超える(前記(条件a)が満たされる)。
【0062】
その後の時刻t3において、同図(d)に示されるようにブレーキスイッチ57が「オン」になると、すなわちブレーキペダル13が踏み込まれると、これに伴い、前記ブレーキ機構35L,35R,45L,45Rが作動する条件が満たされる(前記条件c)が満たされる)。すなわち、本例では、このとき(条件a)〜(条件c)が同時に満たされ、これをもって、同図(e)に示されるように、クラッチ機構24aの作動が強制停止されて上記差動制限が強制的に解除される。これにより、上記フロントデフ42に上述した大きな負荷が作用することが抑制される。
【0063】
そして、その後の時刻t5において、同図(c)に示されるように、エンジン回転速度NEが前記所定速度γを下回ると、同図(e)に示されるように、クラッチ機構24aの作動が再開され、上記差動制限についてもこれが再開される。
【0064】
ちなみに、本例では、上記差動制限についての強制解除が実行されている期間(時刻t3〜t5)中の時刻t4において、同図(a)に示されるように、スリップ量Nsが「0」になるとともに、同図(b)に示されるように、走行速度SPDが「0」になる、すなわち四輪駆動車10が停止する。換言すれば、上記期間中において、各ブレーキ機構35L,35R,45L,45Rが制動力を発生し、これにより各車輪33L,33R,43L,43Rが強制停止される。すなわち、本例では、上述した大きな負荷がフロントデフ42に作用するおそれがなくなった後に、上記差動制限が再開される。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)車輪33L,33R,43L,43Rに関するスリップ量Nsについての条件を含む所定の条件が満たされたことをもって、センターデフ25を通じた後輪側駆動系30と前輪側駆動系40との間における差動制限を強制解除するようにした。このため、四輪駆動車10の走行速度SPDがいかなる速度である場合であれ、同四輪駆動車10が制動状態になるとフロントデフ42に大きな負荷がかかるおそれがあることをもって、上記差動制限を強制解除することができるようになる。これにより、上記走行速度SPDが極低速若しくは停車状態にあったとしても、差動制限が実行されている状態でのブレーキ機構の作動に起因するフロントデフ42への不要なトルク伝達を好適に抑制することができるようになる。
【0066】
(2)また、上記スリップ量Nsとして、各車輪33L,33R,43L,43Rの回転速度のうち最も速いものと最も遅いものとの速度差を用いるようにした。これにより、このスリップ量Nsを通じて、それら車輪33L,33R,43L,43Rに関するスリップの有無や、同スリップの度合いを好適に監視することができるようになる。
【0067】
(3)スリップ量Nsについての条件として、「各車輪33L,33R,43L,43Rに関するスリップ量Nsが所定量αよりも大きくなっていること。」といった(条件a)を設定するようにした。これにより、上記スリップ量Nsが、フロントデフ42に大きな負荷が作用するようになるおそれのある量を超えて大きくなっていることを好適に判断することができるようになる。
【0068】
(4)四輪駆動車10の走行速度SPDが所定速度β未満であることを一条件として、上記差動制限についての強制解除を実行するようにした。これにより、四輪駆動車10を走行させるべくエンジン回転速度NEが高められているにも拘わらず同四輪駆動車10がほぼ停止したままである状況下に陥ったときにのみ、上記差動制限についての強制解除を実行することができるようになる。換言すれば、フロントデフ42に大きな負荷が作用する可能性が高いときに限って上記強制解除を実行することができるようになり、ひいてはフロントデフ42に大きな負荷が作用することを的確に抑制することができるようになる。
【0069】
(5)ブレーキ機構の作動が開始される状況下になったことを一条件として、上記差動制限についての強制解除を実行するようにした。これにより、上述した負荷発生のきっかけとなる制動力の発生を的確に察知するとともに、同制動力の発生と同時に、あるいはその発生に先立って、上記強制解除を実行することができるようになる。従って、フロントデフ42に大きな負荷が作用することを的確に抑制することができるようになり、ひいては前輪側駆動系40についての耐久性の低下を効率よく抑制することができるようになる。
【0070】
(6)エンジン回転速度NEが所定速度γを下回ったことを条件に、上記差動制限を再開するようにした。これにより、フロントデフ42に大きな負荷が作用するおそれのなくなったタイミングで、上記差動制限を再開することができるようになる。
【0071】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態では、ブレーキ操作部材としてブレーキペダル13を用いた例を示したが、これに代えてブレーキレバー等を用いることもできる。
【0072】
・上記実施の形態では、センターデフ25を通じた後輪側駆動系30と前輪側駆動系40との間における差動を制限するための差動制限機構24として、クラッチ機構24a及びアクチュエータ24bを設けるようにしたが、これに限られない。ブレーキ機構の作動が開始される状況下になってから同作動が開始されるまでの期間において上記差動制限を確実に強制解除することが可能なだけの応答性が確保されるのであれば、差動制限機構として任意の構成のものを採用することができる。
【0073】
・上記実施の形態では、上記差動制限を強制解除する条件として、(条件a)〜(条件c)を設定したが、それら条件のうち(条件b)や(条件c)を省略してもよい。こうした構成にあっても、図4のフローチャートにその一例を示すように、少なくとも(条件a)が満たされた(ステップS202:YES)ことをもって上記差動制限についての強制解除を実行することはできる。そして、これにより、四輪駆動車10の走行速度SPDがいかなる速度であれ、差動制限が実行されている状態でのブレーキ機構の作動に起因するフロントデフ42への不要なトルク伝達を抑制するといった構成を実現することはできる。
【0074】
・上記実施の形態では、各車輪33L,33R,43L,43Rの回転速度を各別に検出するとともに、それら回転速度のうち最も速いものと最も遅いものとの速度差を算出し、その算出した速度差を四輪駆動車10のスリップ量Nsとして用いるようにした。こうした手法に限らず、フロントデフ42に大きな負荷が作用するおそれのあることを好適に判断することが可能であれば、スリップ量の算出手法、あるいは検出手法は、適宜変更可能である。
【0075】
・また、そうした変更例としては、例えば、変速機12の変速位置と四輪駆動車10の走行速度SPDとエンジン回転速度NEとに基づき各車輪33L,33R,43L,43Rに関するスリップ量を算出すること等が考えられる。ここで、変速機を備えた車両にあっては、変速機の変速位置と車両の走行速度とに基づいて、その各車輪にスリップが生じていない状況下におけるエンジン回転速度を推定することが可能である。従って、上記変更例によっても、変速機12の変速位置と四輪駆動車10の走行速度SPDとにより推定されるエンジン回転速度と、実際のエンジン回転速度NEとの比較に基づいて、各車輪に関するスリップの有無や、同スリップの度合いを好適に監視することができるようになる。また特に、この変更例にあっては、各車輪33L,33R,43L,43Rの回転速度を監視することなくスリップ量を算出することが可能になる。このため、各車輪33L,33R,43L,43Rの回転速度がスリップ量の算出以外の用途で用いられない車両であれば、車輪速センサ56a〜56dを省略することができるようになる。
【0076】
・上記実施の形態では、上記差動制限についての強制解除の実行が開始された後において、エンジン回転速度NEが所定速度γを下回ったことを条件に、同差動制限を再開するようにした。この再開条件は、フロントデフ42に大きな負荷が作用するおそれがなくなったことを好適に判断することの可能な条件であれば、任意に変更可能である。
【0077】
・上記実施の形態では、各車輪33L,33R,43L,43Rのスリップ状況に応じてそれら車輪33L,33R,43L,43Rに各別に制動力を自動付与するシステムが搭載された四輪駆動車10に、本発明を適用するようにした。こうしたシステムが搭載されていない四輪駆動車にも、本発明は適用可能である。
【0078】
・上記実施の形態では、各ブレーキ機構35L,35R,45L,45Rが、それらを同時に作動させた場合において、後輪用のブレーキ機構35L,35Rよりも、前輪用のブレーキ機構45L,45Rの方が大きな制動力を発生するように設定された四輪駆動車10に本発明を適用するようにした。これとは逆に、前輪用のブレーキ機構よりも、後輪用のブレーキ機構の方が大きな制動力を発生するように、各ブレーキ機構が設定された四輪駆動車にも本発明は適用可能である。こうした構成にあっては、前記差動制限が実行されている状態でのブレーキ機構の作動に起因してリヤデフ32に大きなトルクが作用するおそれが生じることとなるが、このとき同差動制限を強制解除することで、同リヤデフ32への不要なトルク伝達を抑制することが可能になる。
【0079】
・上記実施の形態では、差動制限スイッチ58が「オン」操作されることにより差動制限機構24を作動させるタイプの四輪駆動車10に本発明を適用するようにした。これに限らず、例えば後輪用プロペラシャフト31と前輪用プロペラシャフト41との回転速度差や走行速度SPD等といった走行状態、あるいは路面状況等に基づいて差動制限機構の作動を自動制御するタイプの四輪駆動車にも、本発明は適用可能である。
【0080】
・上記実施の形態では、後輪側駆動系30と前輪側駆動系40とが共にエンジン11の出力軸に常時連結されるタイプの四輪駆動車10に本発明を適用するようにしたが、これに限られない。本発明は、後輪側駆動系、あるいは前輪側駆動系を四輪駆動車の動力伝達系から一時的に切り離すことの可能な動力切断機構を有するタイプの四輪駆動車にも適用可能である。
【0081】
・また、こうした動力切断機構を有するタイプの四輪駆動車にあって、前記差動制限が実行されている状態でのブレーキ機構の作動に起因して後輪側駆動系や前輪側駆動系に大きなトルクが作用するおそれがあるときに、後輪側駆動系あるいは前輪側駆動系を同四輪駆動車の動力伝達系から切り離すようにしてもよい。こうした構成によれば、少なくとも切り離された側の駆動系への不要なトルク伝達についてはこれを抑制することができるようになる。ちなみに、このとき常時接続されている側の駆動系に大きな負荷が作用するおそれは残るが、こうしたタイプの四輪駆動車にあっては、一方の駆動系のみによって走行する際における動力伝達系の耐久性を確保すべく、常時接続されている側の駆動系の強度が高く設定されている。このため、上記負荷が四輪駆動車の動力伝達系の耐久性を低下させる可能性は低いといえる。なお、こうした構成にあっては、上記動力切断機構が、後輪側駆動系と前輪側駆動系との差動を許容する差動機構、及び同差動の制限と制限解除とを切替える差動制限機構として機能する。更に、こうした構成が適用される四輪駆動車10であれば、センターデフ25を備えていない四輪駆動車にも、本発明を適用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる四輪駆動車の動力伝達装置の一実施の形態についてその概略構成を示すブロック図。
【図2】同実施の形態にかかる強制解除処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図3】同強制解除処理についてその処理態様の一例を示すタイミングチャート。
【図4】同強制解除処理の変形例についてその処理手順を示すフローチャート。
【図5】従来の四輪駆動車の動力伝達装置についてその概略構成を示すブロック図。
【符号の説明】
10…四輪駆動車、11…エンジン、12…変速機、13…ブレーキペダル、14,15,24b…アクチュエータ、20…トランスファ、21…入力軸、22…後輪用出力軸、23…前輪用出力軸、24…差動制限機構、24a…多板クラッチ機構、25…ディファレンシャル(センターデフ)、30…後輪側駆動系、31…後輪用プロペラシャフト、32…後輪用ディファレンシャル(リヤデフ)、33L,33R…後輪、34L,34R…リヤアクスル、35L,35R,45L,45R…ブレーキ機構、40…前輪側駆動系、41…前輪用プロペラシャフト、42…前輪用ディファレンシャル(フロントデフ)、43L,43R…前輪、44L,44R…フロントアクスル、50…電子制御ユニット、51…4WD制御装置、52…TRC制御装置、55…エンジン回転速度センサ、56a,56b,56c,56d…車輪速センサ、57…ブレーキスイッチ、58…差動制限スイッチ。
Claims (8)
- 左右後輪の回転速度差を許容する後輪用ディファレンシャルを備える後輪側駆動系と、左右前輪の回転速度差を許容する前輪用ディファレンシャルを備える前輪側駆動系と、これら後輪側駆動系及び前輪側駆動系の差動を許容する差動機構と、該差動機構を通じた差動の制限及び制限解除を切替える差動制限機構とを有して、車載エンジンから出力される動力を前記左右後輪及び前記左右前輪に伝達する四輪駆動車の動力伝達装置において、
前記左右後輪及び前記左右前輪に関するスリップ量を監視し、該監視するスリップ量を含む所定の条件が満たされるとき、前記差動制限機構によって前記後輪側駆動系及び前記前輪側駆動系の差動が制限されていることを条件に、該差動制限機構による差動の制限を強制解除する差動制限解除手段を備える
ことを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。 - 前記差動制限解除手段は、前記左右後輪及び前記左右前輪の回転速度を車輪毎に各別に検出し、該検出した回転速度のうち最も速いものと最も遅いものとの速度差に基づいて前記スリップ量を監視する
請求項1に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。 - 請求項1に記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、
前記車載エンジンの出力軸に駆動連結される変速機を更に有し、前記差動制限解除手段は、前記変速機の変速位置と、前記四輪駆動車の走行速度と、前記車載エンジンの出力軸の回転速度とに基づいて前記スリップ量を監視する
ことを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。 - 前記所定の条件が、前記監視するスリップ量が所定量以上である条件を含む
請求項1〜3のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。 - 前記所定の条件が、前記監視するスリップ量が所定量以上である条件、及び前記車載エンジンの出力軸の回転速度が所定速度以上である条件を含む
請求項1〜3のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。 - 前記所定の条件として、前記四輪駆動車がほぼ停止状態にある条件を更に含む
請求項4または5に記載の四輪駆動車の動力伝達装置。 - 前記所定の条件として、前記四輪駆動車の制動操作が行われた条件を更に含む
請求項4〜6のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置。 - 請求項4〜7のいずれかに記載の四輪駆動車の動力伝達装置において、
前記左右後輪及び前記左右前輪のスリップ状況に応じてそれら車輪に各別に制動力を自動付与する制動力付与手段を更に備え、前記所定の条件として、該制動力付与手段による制動力の自動付与が必要とされる条件を更に含む
ことを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。
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-
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