JP2004122262A - 刃先交換式チップ及び丸チップの固定構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】すくい面2に逆角錐台形状のくぼみを有し、逆角錐台の斜面とすくい面2のなす角度θが30°〜85°である刃先交換式チップである。このような丸チップ1をホルダーと押え具とにて固定する。ホルダーは、押えネジ用のネジ穴と、丸チップ固定用の第一のすべり面と、先端に丸チップ保持用の切欠とを有する。丸チップ押え具は、丸チップ引込ピンと、押えネジ用の長穴と、丸チップ固定用の第二のすべり面を有する。押えネジで丸チップ押え具をホルダーに締め付けると、押え具は、第一のすべり面に沿って下方と後方へ移動し、第一のすべり面と第二のすべり面が圧接され、丸チップを強固に保持する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い硬度を持つ焼結体を用いた刃先交換式丸チップ及び丸チップの固定構造に関するもので、特に重切削分野に用いられ、刃先交換型で中心部に凹部を持つ丸チップおよびその固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
丸チップの中心部に凹部を設けた超硬合金やセラミックの丸チップは、よく知られている。一つの例は、多角形のチップに逆円錐状の穴を設け、チップの保持力を高めたスローアウエイバイトがある(例えば、特許文献1参照)。
また、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムのような多角形の酸化セラミック切削工具に横長のくぼみを設けた切削工具も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
実公昭51−24626号公報(第1頁、第4図)
【特許文献2】
特開昭58−59706号公報(第1−2頁、第2図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
丸チップは、使用済の切刃を回転させ、次の新しい切刃を使って切削する。従って、丸チップは、丸い切刃を全部使用できるという長所があるが、反面では使用後の丸チップの回転角度が一定しないという問題があった。回転角度は、一つのチップの使用回数を定め、かつ切削面の仕上がり状態に影響を与える。
【0005】
従来は、回転角度は作業者の感に頼っていたので、工具の使用量が人によって異なるという問題点があった。又同時に、回転角度が不足して、使用済みの切刃を再度使用するということもあった。この場合は、摩耗した切刃を使用することになるので、被削面が悪くなったり工具の破損が起こったりして問題となっていた。本発明は、使用後の回転角度が一定となるような工具の形状とそのホルダーを提供しようとするものである。
【0006】
一方、別の課題として、超高圧焼結体ではこのような中心部に凹部を有するチップは、まだ実用化されていない。超高圧焼結体とは、ダイヤモンド粉末や、CBN(立方晶窒化硼素)粉末等を数GPaの圧力と千℃以上の温度の焼結条件で焼結したものである。この材料は、硬度が極めて高いので凹部を設けるなどの加工に要する費用が高くチップとしての経済性がないという問題があった。これらの材料は、一般的にはレーザー加工、放電ワイヤ加工、通常の放電加工などで加工できることが知られている。しかしながら、チップの表面に凹部を加工するには、上記のいずれの方法も経済性の問題があり実現できなかった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の刃先交換式チップは、丸チップであって、丸チップのすくい面に、逆角錐台形状のくぼみを有し、該逆角錐台形状を構成する斜面がすくい面となす角度θが30°〜85°である。前記した逆角錐台が正逆角錐台とすることにより無駄なく丸チップを使うことができる。
【0008】
前記逆角錐台をなす斜面が、凹状であっても良い。また前記複数の斜面に対向するすくい面上に番号などの符号を付けると誤りなく全ての部分を使用することができる。丸チップのすくい面を立方晶窒化硼素焼結体またはダイヤモンド焼結体で構成することもできる。
【0009】
別の発明は、丸チップを押えネジと丸チップ押え具を用いてホルダーへ取り付ける固定構造であって、ホルダーは、押えネジ用のネジ穴と、丸チップ固定用の第一のすべり面と、ホルダーの先端に丸チップ保持用の切欠とを有し、丸チップ押え具は、丸チップ引込ピンと、押えネジ用の長穴と、丸チップ固定用の第二のすべり面を有し、押えネジで前記丸チップ押え具をホルダーに締め付けることで第一のすべり面と第二のすべり面が圧接され、丸チップと丸チップ引込ピンを圧接固定するものである。また、前記の丸チップのすくい面は、逆角錐台形状のくぼみを有し、該逆角錐台形状を構成する斜面がすくい面となす角度θを30〜85°とすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下図面を用いて本発明を詳細に説明する。図1(A)は、本発明の丸チップの斜視図であり、図1(B)は、図1(A)の辺の中央を通るX−X断面図である。図1(B)においてθは、すくい面と逆角錐台の斜面とのなす角度である。逆角錐台形状のくぼみは、斜面3、4、5などと底面6などで構成される。それぞれの斜面に対応するすくい面に符号7、8、9などを付すと、使用済み切刃の管理が容易になる。図1に示す丸チップの一例は、直径が10mm、厚さが3.9mm、逆角錐台の深さは1.2mm、すくい面上の逆角錐台の一辺の長さは4mm、θは60°であった。なお本発明の丸チップは、直径5〜25mmのものに適していて、逆角錐台の深さは丸チップの厚さの10〜50%が適している。
【0011】
図2(A)は、ホルダー14と丸チップ押え具10を用いて、丸チップ1を保持した状態を示したものである。ホルダー14は、先端に丸チップ保持用の切欠と、押えネジ用のネジ穴15と、押えネジ11を挟んで切欠と対向する位置(図2(A)において右側)に設けられた第一のすべり面12とを有する。丸チップ押え具10は、一端(同左側)に丸チップ1と接触する丸チップ引込ピン13と、中間に設けられた押えネジ用の長穴16と、他端(同右側)に設けられると共にホルダー14の第一のすべり面に当接される第二のすべり面12’とを有する。そして、一端側(先端部)で丸チップ1を保持し、後部はホルダー14の第一のすべり面12上に第二のすべり面12’がまたがるようになっている。図2(A)に示すようにホルダー14に丸チップ押え具10を配置しホルダー14の押えネジ11をネジ穴15に締めると、ネジ11は押えネジ用の長穴16に入っているので、丸チップ押え具10は第一のすべり面12に沿って第二のすべり面12’が後方斜め下に引っ張られる。そのとき、先端部にある、丸チップ引込ピン13によって、丸チップ1も後方へ引っ張られホルダー14に固定される。
【0012】
図2(B)において丸チップ引込ピン13は、丸チップ1に設けられた逆角錐台の二つの斜面で拘束され丸チップ1を引き込んでいる。このような二面による引き込みピンの拘束とすることもできる。図2(B)では引込ピン13は、円柱状であるが、円柱に限るものではない。丸チップ引込ピンの形状は、斜面と多くの点で接触することによって一層保持強度を高めることができる。図2(B)の丸チップ引込ピンの形状は、角型であってもよいし、また、俵を横にした形状であってもかまわない。
【0013】
このように固定された丸チップによって切削し、切刃の寿命が来ると、ホルダーからはずし新しい切刃となるように丸チップを回転して次の切削に移る。
【0014】
以下の説明は先の例と異なり、引き込みピンはひとつの斜面のみに当たる場合であって、図1(A)を用いてより詳細に説明する。まず、第一の斜面3を用いて丸チップ1を固定した場合、被削材は第一の斜面3に対向する切刃で切削される。その切刃には、ひとつの点の符号7が付されている。第一の斜面3に対向する切刃の寿命が来ると、次は第二の斜面4を用いて丸チップ1を固定する。第二の斜面4に対向する切刃で切削し、そこには二つの点からなる符号8が付されている。そして同様に次の斜面5を用いて丸チップ1を固定して切削する。この面には符号9が付されている。このような操作を繰り返して、丸チップを効率よく使用することができる。また、図2(A)のような位置で丸チップを保持する場合は、切刃の符号は保持する部分に対向する切刃に付すのが望ましい。
【0015】
このとき、切削によって使用できなくなるチップの範囲が、切削条件によって定まる。従って、切削条件を定めると、使用できなくなる切刃の範囲が定まるので、予め使用回数を定め、逆角錐台の角数を決めて丸チップを購入することもできる。逆にチップにあわせて、切削条件を定めることもできる。
【0016】
本発明において、多面体を構成する斜面とすくい面のなす角度をθとすると、その角度は30°〜85°の範囲が望ましい。30°未満であると、丸チップ押え具10をネジ11で締め付けたとき、丸チップの引込力が不足して強固な固定ができない。また、85°を越えると下方への押え分力が不足して、やはり強固な固定ができない。
【0017】
本発明は、セラミックス工具や、超硬合金工具、サーメット工具、超高圧焼結体にも適用できる。これらの工具材料は、脆いので逆角錐台形状の斜面のなす交線の部分は丸まった形状が望ましい。この丸まった形状は、逆角錐台の一辺の10%程度以下が望ましい。丸まった部分がない場合は、重切削したときに応力の集中が起こり亀裂発生の原因となる場合がある。
【0018】
逆角錐台は、セラミック、超硬合金やサーメットでは、金型で形成されるので、比較的容易に工業的に製造できる。しかしながら本発明が特に効果を発揮するのは、立方晶窒化硼素(CBN)焼結体、やダイヤモンド焼結体のいわゆる超高圧焼結体の場合である。特にCBN焼結体の場合は、硬度の高い焼入れ鋼などを切削するので、切削抵抗が大きく丸チップの固定は特に厳重でなければならない。また、前記の超高圧焼結体は、硬度が高いので表面に凹所を設けるということは特別困難であった。宝石や、芸術品のような販売価格の高価なものや価格のないものと異なり工業用品である本発明の製品は、それ相応の価格でなければならない。
【0019】
本発明は、超高圧焼結体の表面を加工すべく、いろいろ試みて漸く見出したレーザー加工方法によって始めて達成できたものである。レーザー光源としては、微細加工用レーザーとして工業的に一般的に使用されている波長1064nmのYAGレーザーを使用する。また、同じ波長に近い発信光を持つ半導体レーザーも使用できる。レーザー光の出力を調整し、同時にガルバノメーターミラーにより集光性を高めた高出力パルスYAGレーザーを用いて、発信周波数、加工ピッチを制御することで、等高線状に一定の加工量で掘り進みながら加工を行う。このレーザー加工方法では、レーザー光の総出力を低く抑え、且つ集光度を高めることにより、加工面への熱影響を少なくすることができる。例えば、DECKEL MAHO社製のDML40を用いて本件発明を達成することができる。
【0020】
また、斜面は、平面であってもいいし、すくい面に対して凹面になっていてもいい。その凹面の例を図3に示す。図3(A)では、斜面3、4、5などがビール樽状になっていて斜面は曲面になっている。図3(B)は、図3(A)のくぼみの辺の中心を通るY−Y断面図に丸チップ引込ピン13が押えた状態を示している。この場合のθは、図3(B)において、丸チップ引込ピン13が曲面と接触する部分における接線とすくい面がなす角度である。なお、斜面としては、半径の大きな円錐台の一部でもよいが、そのときθは一定になる。
【0021】
この発明においても丸チップ1は、すくい面2の中央部に逆角錐台形状のくぼみをもち、第一の斜面3に対向する切刃に符号7、同様に第二の斜面4に対向する切刃に符号8、第三の斜面5に対向する切刃に符号9を付すことができる。図1と同様に、符号は点の数で示されているが、その他数字やアルファベットなどを付すことができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、丸チップを切削加工分野で効率よく使用しようとするものであって、切削条件によって中心部の多角形逆円錐台の角数を選択し設計どおりの使用回数を常に保証する刃先交換式チップとその固定構造を提供することができる。この発明によって、超高圧焼結体製の丸チップを用いて、従来不可能とされていた焼入れ鋼などの重切削ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は本発明で得られた丸チップの斜視図であり、図1(B)は図1(A) のX−X断面概観図である。
【図2】図2(A)は図2(B)のZ−Z断面図であり、本発明で得られた丸チップをホルダーで保持した状態を示す側面断面図であり、図2(B)は本発明で得られた丸チップをホルダーで保持した状態を示す上面概観図である。
【図3】図3(A)は本発明の丸チップの正面図であり、図3(B)は丸チップ引込ピンが接触した状態の図3(A)のY−Y断面図である。
【符号の説明】
1 丸チップ
2 すくい面
3 第一の斜面
4 第二の斜面
5 第三の斜面
6 底面
7 第一の斜面に対向する切刃の符号
8 第二の斜面に対向する切刃の符号
9 第三の斜面に対向する切刃の符号
10 丸チップ押え具
11 押えネジ
12 第一のすべり面
12’ 第二のすべり面
13 丸チップ引込ピン
14 ホルダー
15 ネジ穴
16 長穴
Claims (7)
- 丸チップのすくい面に、逆角錐台形状のくぼみを有し、該逆角錐台形状を構成する斜面がすくい面となす角度θが30〜85°であることを特徴とする刃先交換式チップ。
- 前記逆角錐台が逆正角錐台であることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式チップ。
- 前記逆角錐台をなす斜面が、凹状であることを特徴とする請求項1または2に記載の刃先交換式チップ。
- 前記複数の斜面に対向するすくい面に符号を付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の刃先交換式チップ。
- 前記丸チップのすくい面が立方晶窒化硼素焼結体またはダイヤモンド焼結体で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の刃先交換式チップ。
- 丸チップを押えネジと丸チップ押え具を用いてホルダーへ取り付ける固定構造であって、
前記ホルダーは、押えネジ用のネジ穴と、丸チップ固定用の第一のすべり面と、ホルダーの先端に丸チップ保持用の切欠とを有し、
前記丸チップ押え具は、丸チップ引込ピンと、押えネジ用の長穴と、丸チップ固定用の第二のすべり面を有し、
前記押えネジで前記丸チップ押え具をホルダーに締め付けることで第一のすべり面と第二のすべり面が圧接され、丸チップ引込ピンで丸チップを前記切欠に圧接固定することを特徴とする丸チップの固定構造。 - 前記の丸チップのすくい面は、逆角錐台形状のくぼみを有し、該逆角錐台形状を構成する斜面がすくい面となす角度θが30〜85°であることを特徴とする請求項6記載の丸チップの固定構造。
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