JP2004117425A - 静電式現像用トナー及び静電式現像用トナー製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂、ワックス、極性制御剤及び着色剤からなるトナーにおいて、前記結着樹脂の主成分がポリエステル樹脂であると共に結着樹脂が親水性官能基を有しており、前記極性制御剤がトナー粒子表面に打ち込まれたものであり、該極性制御剤を構成する主要元素がX線光電子分光の測定により検出される。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
電子写真、静電記録、静電印刷等に用いる静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真、静電記録、静電印刷等において、現像剤として乾式トナーを用いる場合、その現像工程においては、通常、感光体等からなる像担持体に静電荷像が形成され、該静電荷像に現像剤が一旦付着され、次に転写工程において感光体から転写紙等の転写媒体に現像剤が転写され、該転写された現像剤が定着工程において紙面に定着される。該現像剤としては、キャリアとトナーから成る二成分系現像剤及び、キャリアを必要としない一成分系現像剤(磁性トナー、非磁性トナー)が知られている。該乾式トナーとしては、スチレン系樹脂、ポリエステルなどの結着剤と着色剤を溶融混練し、微粉砕したものが用いられている。
【0003】
かかる電子写真、静電記録、静電印刷等の分野においては、近年、高品位、高画質の画像が要求され、そのために、トナーの粒子径を小さくしたり、その粒度分布を狭くしたりすることが試みられてきた。
【0004】
しかしながら、従来から行われてきた混練、粉砕法によるトナーの製造方法では、得られるトナー粒子の形状が不定形であった。そのため画像形成装置の内部において、二成分系現像剤として用いる場合は現像部内でのキャリアと攪拌する際に、一成分系現像剤として用いる場合は現像ローラー、トナー供給ローラー、層厚規制ブレード、摩擦帯電ブレードなどとの接触する際のストレスによりさらにトナーが粉砕され、極微粒子が発生したり、流動化剤がトナー表面に埋め込まれたりして、画像品質が低下するという問題が発生していた。
【0005】
また形状が不定形なトナー粒子は、その形状ゆえに粉体としての流動性が悪く、多量の流動化剤を必要としたり、トナーボトル内えてへの充填率が低くなったりするので、コンパクト化への阻害要因となってきた。
【0006】
またフルカラー画像を作成する場合、多色トナーで形成された画像が、感光体から転写媒体や紙へ転写されるプロセスも複雑になっている。ところが、粉砕トナーのような不定形の形状のトナー粒子は、転写性が悪いので、転写された画像のぬけやそれを補うためトナー消費量が多いなどの問題を有している。
【0007】
近年このような問題を解決して、転写効率を向上させることにより、トナーの消費量を減少させて画像のぬけの無い高品位の画像を得たり、ランニングコストを低減することが強く要求されている。転写効率が非常に良いならば、感光体や転写媒体から未転写トナーを取り除くためのクリーニングユニットが必要なくなり、機器の小型化、低コスト化が図れ、廃棄トナーも無くなるというメリットも同時に有しているからである。このような不定形の形状のトナー粒子の欠点を補うために種々のトナー製造法が試みられてきた。
【0008】
一方、乾式トナーは紙などに現像転写された後、熱ロールを用いて加熱溶融することで定着する。その際、熱ロール温度が高すぎるとトナーが過剰に溶融し熱ロールに融着する問題(ホットオフセット)が発生する。また、熱ロール温度が低すぎるとトナーが充分に溶融せず定着が不十分になる問題が発生する。従って、よりホットオフセット発生温度が高く(耐ホットオフセット性)、かつ定着温度が低い(低温定着性)トナーを開発することにより、省エネルギー化、複写機等の装置の小型化を図ることが求められてきた。
【0009】
またトナーには、保管中および画像形成装置内における高温度の雰囲気下でもブロッキングしない耐熱保存性が要求される。とりわけフルカラー複写機、フルカラープリンターにおいては、その画像の光沢性および混色性が必要なことから、トナーはより低溶融粘度のもの、具体的にはシャープメルト性のポリエステル系のトナーバインダーが用いられてきた。このようなトナーではホットオフセットの発生がおこりやすいことから、従来からフルカラー用の機器では、熱ロールにシリコーンオイルなどを塗布することが行われてきた。
【0010】
しかしながら、熱ロールにシリコーンオイルを塗布する方法は、オイルタンク、オイル塗布装置が必要であり装置が複雑、大型となる。また、熱ロールの劣化をも引き起こし、一定期間毎のメンテナンスを必要とする。さらに、コピー用紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用フィルム等にオイルが付着することが不可避であり、とりわけOHPにおいては付着オイルによる色調の悪化の問題があった。
【0011】
また、従来の粉砕型トナーの製造においては、結着樹脂、極性制御剤及び着色剤を混練・粉砕・分級することによって微粉末トナーを作るため、極性制御剤が微粉末粒の表面や内部を問わず分布する結果、トナー自身の帯電制御はできるが、形状がいびつなため、感光体表面に作った画像に乱れを生じさせたり、内部に存在する極性制御剤が役割を果たせず資源の無駄になっていた。
【0012】
また、重合型トナーにおいては、水溶性液体の中で着色剤とワックスが重合体粒子(結着樹脂)の内部に包含されるようにモノマーを重合反応させるので、表面張力により得られる重合体粒子は略球に近い形状になる。これをミキサーに入れて、極性制御剤と攪拌することにより、重合型トナーの表面近傍に極性制御剤を付着・包埋させてから、乾燥すると球状のトナー粒子を得ることができる。かかるトナー粒子を用いると、感光体表面に作った画像に乱れを生じさせることを防ぐことができる。しかし、一部の極性制御剤はトナー内部に包埋されるため、無駄になる極性制御剤がかなりあった。
【0013】
また、従来の重合型トナーは、その製造処方によりトナーの表面近傍に極性制御剤を付着・包埋させたものであっても、極性制御剤を付着・包埋させていないものであっても、単に極性制御剤の効力が有効か否かという問題以外に、地汚れと謂う問題を引き起こしていた。すなわち、極性制御剤のない重合トナーをフルカラー複写機、フルカラープリンターに供すると酷い地汚れを起こしていたが、一部の(極性制御剤を同量攪拌付着させた)処方の重合トナーでも同じようにフルカラー複写機、フルカラープリンターに供すると地汚れを起こすものがあった。
【0014】
前記トナー粒子を小粒径化した場合の粉体流動性、転写性(粒径・形状の問題)を改善するものとしては、例えば、特開平9−43909号公報(特許文献1)には、着色剤、極性樹脂および離型剤を含むビニル単量体組成物を水中に分散させた後、懸濁重合した重合トナーが開示され、特開平9−34167号公報(特許文献2)には、ポリエステル系樹脂からなるトナーを水中にて溶剤を用いて球形化したトナーが開示されている。
【0015】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されているトナーは粉体流動性、転写性の改善効果は見られるものの、特許文献1に開示されているトナーは、低温定着性が不十分であり、定着に必要なエネルギーが多くなる問題点がある。特にフルカラー用のトナーではこの問題が顕著である。特許文献2に開示されているトナーは、低温定着性ではより優れるものの、耐ホットオフセット性が不十分であり、フルカラー用において熱ロールへのオイル塗布を不用にできるものではない。
【0016】
また、特開平11−133666号公報(特許文献3)には、ウレア結合で変性されたポリエステル樹脂を用いた略球形の乾式トナーが開示されている。特許文献3のトナーはウレア結合によって伸長されたポリエステルを用いることによってトナーの粘弾性を適宜調節でき、フルカラートナーとしての適正な光沢性と離型性を両立することができる点で優れている。特に定着ローラーが使用中に電荷を帯び、転写媒体上の未定着画像上のトナーが静電的に散ったり、定着ローラーに付着してしまう、いわゆる静電オフセットは、ウレア結合成分の正帯電性とポリエステル樹脂自身の弱負帯電性の中和により緩和することができた。しかし耐ホットオフセット性という点においては、オイル塗布をすることなく満足な離型性を得られるレベルには達しているものではない。
【0017】
また、耐熱保存性、低温定着性、耐ホットオフセット性を両立させるものとして、特開昭57−109825号公報(特許文献4)には、多官能のモノマーを用いて部分架橋せしめたポリエステルをトナーバインダーとして用いたものが開示されている。特公平7−101318号公報(特許文献5)には、ウレタン変性したポリエステルをトナーバインダーとして用いたものなどが開示されている。また、特開平7−56390号公報(特許文献6)には、フルカラー用に熱ロールへのオイル塗布量を低減するものとしてポリエステル微粒子とワックス微粒子を造粒したものが開示されている。
【0018】
しかしながら、特許文献4〜特許文献6に開示されているトナーは、いずれも粉体流動性、転写性が不十分であり、小粒径化して高画質化できるものではない。さらに、特許文献4および特許文献5に開示されているトナーは、耐熱保存性と低温定着性の両立がまだ不十分であるとともに、フルカラー用には光沢性が発現しないため実際に使用できるものではない。また、特許文献6に開示されているトナーは低温定着性が不十分であるとともに、オイルレス定着におけるホットオフセット性も満足できるものではない。
【0019】
【特許文献1】
特開平9−43909号公報
【特許文献2】
特開平9−34167号公報
【特許文献3】
特開平11−133666号公報
【特許文献4】
特開昭57−109825号公報
【特許文献5】
特公平7−101318号公報
【特許文献6】
特開平7−56390号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、粉体流動性に優れ、現像性、転写性に優れ、耐熱保存性と低温定着性と耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、地汚れのない、高品質のコピー画像を得ることができ、カラートナーと使用する場合の光沢性と耐ホットオフセット性が優れるため、定着ロールにオイル塗布をする必要がない静電荷像現像用現像剤を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、次の静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、窒素の原子比の測定法が提供される。
[1]少なくとも結着樹脂、ワックス、極性制御剤及び着色剤からなるトナーにおいて、前記結着樹脂の主成分がポリエステル樹脂であると共に結着樹脂が親水性官能基を有しており、前記極性制御剤がトナー粒子表面に打ち込まれたものであり、該極性制御剤を構成する主要元素がX線光電子分光の測定により検出されることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
[2]前記極性制御剤が、安息香酸金属塩、安息香酸誘導体の金属塩、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩のいずれかから選択されることを特徴とする前記[1]に記載の静電荷像現像用トナー。
[3]前記該金属が亜鉛であり、X線光電子分光の測定により検出される該亜鉛の下記(1)式により定まる原子比が3%以上であることを特徴とする前記[2]に記載の静電荷像現像用トナー。
【数2】
(ここで各々の元素の主ピークに対しては、炭素の相対感度=0.31、酸素の相対感度=0.69、窒素の相対感度=0.49、亜鉛の相対感度=3.5、シリコンの相対感度=0.26である。窒素、シリコン等の検出元素の相対強度とは窒素、シリコン等のスペクトル面積を各々の元素の相対感度で割った値である。)
[4]前記水性官能基がウレア基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
[5]前記着色剤がカーボン・ブラックであることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
[6]前記極性制御剤を、結着樹脂内に着色剤とワックスを内包した状態の球形トナーを乾燥してから、乾燥したトナーを結着樹脂のガラス軟化点より高い温度に保って、ミキサーによる低速の予備混合を行い、次に高速の本混合を行うことにより、請求項1〜5のいずれかに記載のトナーを得ることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
[7]前記高速回転の本混合を3分間ごとの間欠動作により行うことを特徴とする前記[6]に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
[8]前記ミキサーによる低速回転を2000回転/分以上で行い、高速回転を6000回転/分で3分毎ごとの間欠動作により行うことを特徴とする前記[7]に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
[9]前記ミキサーによる低速回転を2000回転/分以上で3分間、6000回転/分の高速回転を10分以上連続して行うことを特徴とする前記[6]に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
[10]前記極性制御剤を、トナー100重量部に対して1.7〜3.5重量部用いることを特徴とする請求項[6]〜[9]のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
[11]前記[1]〜[5]に記載のいずれかに記載のX線光電子分光の測定において、液体窒素から蒸発するガスを試料台内に導入することにより、試料台を冷却しながら測定することを特徴とするX線光電子分光による測定法。
[12]X線光電子分光装置の真空容器(メインチャンバー)内の水蒸気が測定トナーの表面に付着しないように1×10−8ミリバール(1×10−6ヘクトパスカル)より高い真空度に保ちながら測定することを特徴とする請求項11に記載のX線光電子分光による測定法。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の静電荷像用トナー(以下、本発明トナーという。)は、少なくとも結着樹脂、ワックス、極性制御剤及び着色剤からなり、結着樹脂の主成分はポリエステル樹脂であり、該結着樹脂は親水性官能基を有している。
尚、本明細書において、結着樹脂の主成分はポリエステル樹脂であるとは、結着樹脂の50重量%以上がポリエステル樹脂であることをいう。
【0023】
本発明トナーにおいては、上記ポリエステル樹脂の少なくともその一部が変性ポリエステルであるという態様で、結着樹脂が親水性官能基を有していることが好ましい。ここで変性ポリエステルとは、ポリエステル樹脂中に酸、アルコールのモノマーユニットに含まれる官能基とエステル結合以外の結合基が存在したり、またポリエステル樹脂中に構成の異なる樹脂成分が共有結合、イオン結合などで結合したものをいう。
【0024】
例えば、ポリエステル末端をエステル結合以外のもので反応させたもの、具体的には末端に酸基、水酸基と反応するイソシアネート基などの官能基を導入し、活性水素化合物とさらに反応させ末端を変性したものが含まれる。また、活性水素基が複数存在する化合物であればポリエステル末端同士を結合させたものも含まれる(ウレア変性ポリエステル、ウレタン変性ポリエステルなど)。また、ポリエステル主鎖中に二重結合などの反応性基を導入し、そこからラジカル重合を起こして側鎖に炭素−炭素結合のグラフト成分を導入したり、二重結合同士を橋かけしたものも含まれる(スチレン変性、アクリル変性ポリエステルなど)。また、ポリエステルの主鎖中に構成の異なる樹脂成分を共重合させたもの、例えば末端がカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基によって変性されたシリコーン樹脂と共重合させたものも含まれる(シリコーン変性ポリエステルなど)。以下、具体的に説明する。
【0025】
前記ウレア変性ポリエステル(i)とは、ウレア結合で変性されたポリエステルをいい、例えばイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との反応物などが挙げられる。
【0026】
上記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。
【0027】
上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0028】
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0029】
前記ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、および(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
【0030】
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0031】
前記ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプローラークタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0032】
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0033】
末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0034】
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0035】
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0036】
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することが好ましい。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0037】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0038】
本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0039】
本発明のウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0040】
本発明において、結着樹脂の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
【0041】
また、結着樹脂のガラス転移点(Tg)は通常50〜70℃、好ましくは55〜65℃である。50℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明のトナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0042】
上記Tgの測定方法について概説する。Tgを測定する装置として、理学電機社製TG−DSCシステムTAS−100を使用した。
まず試料約10mgをアルミ製試料容器に入れ、それをホルダユニットにのせ、電気炉中にセットする。まず、室温から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置、室温まで試料を冷却して10min放置、窒素雰囲気下で再度150℃まで昇温速度10℃/minで加熱してDSC測定を行った。Tgは、TAS−100システム中の解析システムを用いて、Tg近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点から算出した。
【0043】
本発明においては、前記ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)をトナーの結着樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。
【0044】
上記(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。
【0045】
(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0046】
(ii)のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、30000を超えると低温定着性が悪化する。
【0047】
(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(ii)の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
【0048】
本発明トナーを構成するワックスとしては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。
【0049】
本発明で用いるワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0050】
本明細書におけるワックスの融点は、理学電機製のRigaku THERMO FLEX TG8110型により昇温速度10℃/minの条件で測定し、発吸熱曲線の主体極大ピークを融点とする。
【0051】
さらなる離型効果をトナーに付与する方法として、トナー粒子を気相中あるいは水中にて加熱処理を施す方法がある。これにより、ワックスがトナー粒子内で動き、ワックス粒子同士の合一を促進したり、内部にあるワックス粒子がトナー粒子表面へ移行したりする。
【0052】
本発明トナーを構成する着色剤としては公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
尚、これらの着色剤の中でも黒色の着色剤に限定した場合は、地汚れが最も少ない点でカーボンブラックが好ましい。
【0053】
本発明で用いる着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0054】
上記マスターバッチはマスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練してマスターバッチを得る事ができる。この際着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。またいわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0055】
着色された本発明トナー粒子においては、流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μmであることが好ましく、特に5mμ〜500mμであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい。
【0056】
無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0057】
この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が、外添剤として挙げられる。
【0058】
又、表面処理剤を用いて表面処理を行うことにより、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0059】
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0060】
本発明のトナーの体積平均粒径は3〜10μmであることが好ましい。10μmより大きいと高画質の画像を得るのが困難になり、3μmよりも小さいと転写性、クリーニング性が低下したり、フィルミングやキャリアへのスペントなどが発生しやすくなる。
【0061】
本発明のトナーを2成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いれば良く、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100重量部に対してトナー1〜10重量部が好ましい。磁性キャリアとしては、粒子径20〜200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど従来から公知のものが使用できる。
【0062】
本発明におけるトナー粒径、トナー粒子の粒度分布は、コールターカウンター法により測定する。該方法による測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)があげられる。
以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0063】
また、本発明のトナーの被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。またポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂およびスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が使用できる。また必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。
【0064】
また、本発明のトナーはキャリアを使用しない1成分系の磁性トナー或いは、非磁性トナーとしても用いることができる。
【0065】
本発明トナーの製法を例示する。本発明トナーを構成する結着樹脂は、例えば以下の方法で製造することができる。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。さらに(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際および(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを前記(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
【0066】
本発明トナーは、例えば以下の方法で製造することができる。但し、本発明はこれらに限定されることはない。
【0067】
(水系媒体中でのトナー製造法)
本発明トナーの製造に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
【0068】
本発明トナーは、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、(B)と反応させて形成しても良いし、あらかじめ製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いても良い。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
【0069】
プレポリマー(A)と他のトナー組成物である着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、未変性ポリエステル樹脂など(以下、水系媒体中での本発明トナー製造法の説明においてトナー原料と呼ぶ)は、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0070】
トナー原料を水系媒体中に分散させる方法は特に限定されるものではなく、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。但し、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温で分散させるほうが、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
【0071】
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0072】
水が含まれる液体に、トナー組成物が分散された油性相を乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0073】
またフルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0074】
界面活性剤の商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フローラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(ダイキン工業社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F−150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0075】
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−l21(旭硝子社製)、フローラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDSー202(ダイキンエ業社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0076】
また水に難溶の無機化合物分散剤としてリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いる事が出来る。
【0077】
また高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロー2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クローラーイド、メタクリル酸クローラーイドなどの酸クローラーイド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0078】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0079】
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0080】
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0081】
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)や(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いたほうが粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は沸点が100℃未満の揮発性であることが除去は容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。プレポリマー(A)100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
【0082】
伸長および/または架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0083】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0084】
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
【0085】
得られた乾燥後のトナーの粉体を離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
【0086】
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0087】
本発明トナーは、以上説明したような構成を有する小粒径のトナーであり、適切な分子量、適切なワックスの分散状態に制御することにより、粉体流動性、転写性、耐熱保存性、低温定着性、耐ホットオフセット性のいずれにも優れたものである。
【0088】
本発明トナーにおいては、極性制御剤がトナー粒子表面に打ち込まれており、トナー粒子内部には極性制御剤が存在しない。このように構成されていると、少ない量の極性制御剤を用い、予め作製されたトナー粒子を処理することで、最も効率良く(極性制御剤の無駄がなく)且つ容易に帯電制御をすることができ、地汚れを防ぐことが出来る。かかる構成は、図1に示すように、小粒径の球状トナーに対して最も、効果的に適用され、地汚れを起こすことがないトナー粒子を得ることができる。参考のために、従来の粉砕法で製造されたトナー粒子を、図2に示す。従来法で製造されたトナー粒子においては、極性制御剤がトナー粒子の内部にも存在するので、無駄が多い。
尚、図1、図2において、1は着色剤、2はワックス、3結着剤、4は極性制御剤をそれぞれ示す。
【0089】
本発明において、トナー粒子表面に打ち込む極性制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、安息香酸金属塩、安息香酸誘導体の金属塩、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等である。本発明においては、これらの中でも、安息香酸金属塩、安息香酸誘導体の金属塩、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩が安価且つ容易に入手できるの好ましく、安価且つ容易に入手できるという点で該金属が亜鉛であることがより好ましい。
【0090】
具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0091】
本発明においては、トナー100重量部に対して該極性制御剤を1.7〜3.5重量部用いることが好ましく、2.0〜3.0重量部用いることがより好ましい。極性制御剤の使用量が1.7重量部未満では、地汚れを防ぐことが出来ない虞がある。一方、3.5重量部を超える場合は、効率が悪くなり、極性制御剤が無駄になる虞がある。
【0092】
トナー粒子表面に極性制御剤を打ち込む方法としては、結着樹脂内に着色剤とワックスを内包した状態の球形トナーを乾燥してから、乾燥したトナーを結着樹脂のガラス軟化点より高い温度に保って、ミキサーによる低速の予備混合を行い、次に高速の本混合を行うことが好ましい。即ち、結着樹脂と着色剤とワックスを少なくとも含むトナーを作製し、これを乾燥してから、低速の予備混合と、高速の本混合を行えば、トナー粒子の表面に極性制御剤を確実に打ち込むことができる。
【0093】
上記高速回転の本混合は、3分間ごとの間欠動作により行うことが、極性制御剤を無駄にすることなくトナー粒子の表面に打ち込むことができるので、好ましい。
【0094】
前記ミキサーによる低速回転は2000回転/分以上で行い、高速回転は6000回転/分で3分毎ごとの間欠動作により行うことが、極性制御剤をより無駄にすることなくトナー粒子の表面に打ち込むことができるので、より好ましい。
【0095】
前記ミキサーによる低速回転は2000回転/分以上で3分間、6000回転/分の高速回転は10分以上連続して行うことが、極性制御剤を更に無駄にすることなくトナー粒子の表面に打ち込むことができるので、更に好ましい。
【0096】
前記ミキサーによる低速回転を2000回転/分以上で3分間、6000回転/分の高速回転を10分以上連続して行うことが、工程に無駄がなくトナー粒子の表面に打ち込むことができるので、好ましい。
【0097】
本発明トナーにおいては、以上説明したようにトナー粒子の表面に極性制御剤が打ち込まれている。該極性制御剤としては前述したように、安息香酸金属塩、安息香酸誘導体の金属塩、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩が好ましく使用され、該金属が亜鉛であるものがより好ましく使用される。
【0098】
本発明者等は、このようにして得られた本発明トナー粒子につき、X線光電子分光の測定を行い、該極性制御剤を構成する主要元素がX線光電子分光の測定により確認できることを見出した。このことを具体的に図3、図4に基づいて説明する。図3は、トナー粒子表面に極性制御剤を打ち込む前における、BindingEnergy1014〜1032eVでのX線光電子分光のスペクトル図であり、図4は、トナー粒子表面に極性制御剤(安息香酸亜鉛)を打ち込んだ後における、BindingEnergy1014〜1032eVでのX線光電子分光のスペクトル図である。図3と図4を比較すると、亜鉛のピークが図4にのみ現れていることが確認される。このことから、本発明トナー粒子においては、X線光電子分光の測定限界が50オングストロームであることから、極性制御剤がトナー粒子の表面から50オングストロームの深さ程度以上に打ち込まれていることが判る。
【0099】
又、本発明者等は、本発明トナー粒子についてX線光電子分光の測定を行い、親水性官能基を構成する主要元素であって、X線光電子分光の測定により得られるスペクトル面積が、前記極性制御剤を打ち込む前に対し打ち込んだ後に減少して検出されるものが存在することを見出した。このことを具体的に、図5、図6に基づいて説明する。図5は、トナー粒子表面に極性制御剤を打ち込む前における、BindingEnergy390〜408eVでのX線光電子分光のスペクトル図であり、図4は、トナー粒子表面に極性制御剤(安息香酸亜鉛)を打ち込んだ後における、BindingEnergy390〜408eVでのX線光電子分光のスペクトル図である。図5と図6を比較すると、結着樹脂を構成するウレア変性ポリエステルのウレア基に由来する窒素が、図5、図6共に400±1eV付近に現れてはいるが、極性制御剤(安息香酸亜鉛)を打ち込んだ後では、窒素のピーク面積が大きく減少していることが判る。
【0100】
この現象は、ウレア基(−NHCONH−)が親水性で極性制御剤を引き寄せる機能を有するので、極性制御剤がウレア基を取り囲むように打ち込まれ、トナー粒子の最表面(0〜50Å)からウレア基が大きく減少して検出されたことによると考えられる。
【0101】
本発明においては、前記X線光電子分光の測定により検出される亜鉛の下記(1)式により定まる原子比が3%以上であることが好ましい。該原子比が3%未満の場合は、地汚れを防止できない虞がある。
【0102】
【数3】
【0103】
ここで、炭素の相対感度=0.31、酸素の相対感度=0.69、窒素の相対感度=0.49、亜鉛の相対感度=3.5、シリコンの相対感度=0.26である。また、窒素、シリコン等の検出元素の相対強度とは窒素、シリコン等のスペクトル面積を各々の元素の相対感度で割った値である。
【0104】
本発明においては、該親水性官能基がウレア基であり、上記親水性官能基を構成する主要元素が窒素であり、X線光電子分光の測定により得られるスペクトル面積から下記(3)式により算出される窒素の原子比において、該極性制御剤を打ち込む前と後の差が0.5%以上であることが好ましい。該原子比の差が、0.5%未満の場合は地汚れを防止できない虞がある。
【0105】
【数4】
【0106】
ここで、炭素の相対感度=0.31、酸素の相対感度=0.69、窒素の相対感度=0.49、亜鉛の相対感度=3.5、シリコンの相対感度=0.26である。
【0107】
次に、X線光電子分光の測定について説明する。
X線光電子分光の測定には、モノクローム光源を使用する測定法とモノクローム光源を使用しない測定がある。図7は、モノクローム光源を使用する測定の概略図を、図8にモノクローム光源を使用しない測定の概略図を示す。
尚、図7、図8は、VG Scientific社製X線光電子分光装置ESCALAB Mk−IIについてのものである。
【0108】
モノクロ−ムX線光源を使用する場合と使用しない場合の大きな違いは、光源と試料の距離である。具体的には、モノクロ−ムX線光源を使用した場合は、試料と光源との距離が1m以上であるのに対し、使用しない場合は3〜5cm程度である。このような違いから、モノクロ−ムX線光源を使用した場合はX線の強度が極端に落ちるため、微量の極性制御剤の測定には不向きである。一方、モノクロ−ムX線光源を使用しない場合は、X線の強度の点では微量の極性制御剤の測定は可能であるが、300w程度の出力を供給すると測定試料の温度が水の沸点位まで上がり、静電式複写機のトナーについて測定しようとすると、トナー内側からワックスが融出するので測定できなくなる。最新のモノクローム光源を使ったX線光電子分光装置(図示せず)もあるが、FE(フィールドエミッション)銃から出た高密度電子ビームにより励起された、高出力X線を直径3〜7μの点に集光するため、X線の強度の点では微量の極性制御剤の測定は可能であるがやはり測定試料が温度上昇することは避けられない。従って、いずれの方式を採用するにせよ、微量の極性制御剤やポリエステル樹脂の変性基を測定する場合は、測定試料の温度の上昇を防ぐことが要求される。
【0109】
そこで、本発明者等は様々な測定方法を検討した結果、液体窒素から蒸発するガスを試料台内に導入することにより、試料台を冷却しながら測定すれば、測定試料である粉体のトナー内側からワックスが融出するのを防ぐことができ、微量の極性制御剤やポリエステル樹脂の変性基を測定できることに成功した。図9に基づいて、試料台を冷却する方法について具体的に説明する。
【0110】
図9はX線光電子分光の冷却システムの説明図である。尚、図9において、24は試料保持台、26は試料保持台の中を冷却媒体が通るパイプである。又、23は窒素ガス、27は液体窒素27、29は吸引側パイプである。
図9に示すように、吸引側パイプ29を液体窒素27の表面付近に置き、その表面から蒸発して来る窒素ガス23を排出側に設けたサクション・ポンプ(図示せず)を使って極弱い力で吸引してパイプ26の中を通すことによって、試料保持台24の温度を−80〜−190℃くらいに効率よく下げることが出来る。
【0111】
X線光電子分光により微量の極性制御剤やポリエステル樹脂の変性基を測定する場合は、X線光電子分光装置の真空容器(メインチャンバー)内の水蒸気が測定トナーの表面に付着しないように1×10−8ミリバール(1×10−6ヘクトパスカル)より高い真空度に保つことが好ましい。
このように測定すれば、X線光電子分光装置の真空容器内を飛び回る水分子や拡散オイルの分子が、氷点下の低温試料保持台や測定試料の表面に吸着することを防いで、微量の極性制御剤やポリエステル樹脂の変性基を測定することができる。
【0112】
更に、本発明の結着樹脂は親水性の官能基を有し、測定試料を真空容器に入れる前の段階で、大気中の水分をかなり吸着するのでり、本発明トナーを測定するには、まず予備室(サブチャンバー)で高真空で充分な時間を掛けて脱水を行わせしめることが好ましい。より好ましくは1×10− 8ミリバール(1×10−6ヘクトパスカル)より高い真空度で3時間、出来れば一晩くらい放置したほうが良い。予備室での脱水が終了したら、予備室と同等か若しくはそれ以上高真空度に保たれた測定室(メインチャンバー)に測定試料であるトナーを入れ、試料ホルダー25取り付け孔にセットし、測定する。
【0113】
まず、吸気系29の先にある(図示されない)サクションポンプのスイッチを入れ、充分測定試料が冷却されるのを待つ。このときの吸気量はゴムパイプの断面に指の腹を押し当てると微かに吸着する程度であり、強力な吸気は急激な温度低下により、測定試料の水分吸着を招くので好ましくない。試料台24は一般に熱伝導性の良い銅合金で出来ているので、排気側のゴムパイプに霜が充分付着すれば、測定試料がX線の暴露でも融けない温度に維持することが出来る。
【0114】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。
【0115】
実施例で用いるトナーを構成する結着樹脂の合成
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、イソフタル酸276部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応させ、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応させた後、160℃まで冷却して、これに32部の無水フタル酸を加えて2時間反応させた。
【0116】
次いで、80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソフォロンジイソシアネート188部と2時間反応させ、イソシアネート含有プレポリマー(1)を得た。次いでプレポリマー(1)267部とイソホロンジアミン14部を50℃で2時間反応させ、重量平均分子量64000のウレア変性ポリエステル(1)を得た。
【0117】
上記と同様にビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部と、テレフタル酸276部を常圧下、230℃で8時間重縮合反応させ、次いで10〜15mmHgの減圧で5時間反応させて、ピーク分子量5000の変性されていないポリエステル(a)を得た。
【0118】
ウレア変性ポリエステル(1)200部と変性されていないポリエステル(a)800部を酢酸エチル/MEK(1/1)混合溶剤2000部に溶解、混合し、結着樹脂(1)の酢酸エチル/MEK溶液を得た。一部減圧乾燥し、結着樹脂(1)を単離した。Tgは62℃であった。
【0119】
実施例で用いるトナーの作成
ビーカー内に前記の結着樹脂(1)の酢酸エチル/MEK溶液240部、カルナバワックス(分子量2000、酸価3、融点84℃)10部、黒色顔料カーボンブラック(キャボット社製リーガル400R)4部を入れ、60℃にてTK式ホモミキサーを用いて12000rpmで攪拌し、均一に溶解、分散させた。ビーカー内にイオン交換水706部、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)294部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を入れ均一に溶解させた。ついで60℃に昇温し、TK式ホモミキサーで12000rpmに攪拌しながら、上記トナー材料溶液を投入し10分間攪拌した。ついでこの混合液を攪拌棒および温度計付のコルベンに移し、98℃まで昇温して溶剤を除去し、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、体積平均粒径が6μmのトナー粒子を得た。次に、得られたトナー粒子を70℃の湯浴中で2時間ほど加熱処理し本発明の実施例、比較例で使用するトナーSを得た。評価結果を表に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
粉体流動性の評価方法
ホソカワミクロン製パウダーテスターを用いてかさ密度を測定した。流動性の良好なトナーほど、かさ密度は大きい。以下の4段階で評価した。
×:0.25未満
△:0.25〜0.30
○:0.30〜0.35
◎:0.35以上
【0122】
定着下限温度の評価方法
前述した、PFAチューブローラーを使用した市販カラー複写機(PRETER550;リコー製)改造した装置を用いて、これにリコー製のタイプ6200紙をセットし複写テストを行った。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって定着下限温度とした。
【0123】
ホットオフセット発生温度(HOT)の評価方法
上記定着下限温度と同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。ホットオフセットが発生した定着ロール温度をもってホットオフセット発生温度とした。
【0124】
実施例1
前記トナーSRを結着樹脂のガラス転移点温度より高い80℃で、上記トナーS100重量部に対して、極性制御剤として安息香酸亜鉛(堺化学、p−t−安息香酸亜鉛)0.6重量部を混ぜてミキサーにより、2000rpmで3回の予備攪拌を行ってから、6000rpmで3分間の攪拌を5回行い、極性制御剤をトナー粒子表面内に打ち込んでポリエステルタイプの本発明トナー(球状、SR型トナー)を完成させた。
【0125】
実施例2〜6
表2に示す条件で予備攪拌、本攪拌を行ったこと以外は、実施例1と同様に、トナーを作成した。尚、表1中の参考例とあるのは、極性制御剤(安息香酸亜鉛)が打ち込まれていないトナーSについて記載したものである。
【0126】
【表2】
【0127】
実施例1で得られた極性制御剤(安息香酸亜鉛)が打ち込まれたトナーを、VGサイエンティフィック社製X線光電子分光器ESCALAB Mk−IIの試料台に貼られた両面接着テープの上に均一に載せた。次に、アルミニウムKαの軟X線を、光源出力250W、スリット径∞にて測定条件とし、亜鉛のメインピークである2p3/2スペクトルを検出すべく1022±10eVで測定したところ、図7のような1022.9eV付近に約1400カウント/秒程のピークを得た。これにより実施例1で得られたトナーの場合、極性制御剤(安息香酸亜鉛)に含まれる亜鉛は外気接触面から最表面(30乃至50オングストローム)深さまでの領域に存在することが知られた。
【0128】
これに対し、極性制御剤(安息香酸亜鉛)が打ち込まれていない前記トナーSRについて、上記と同様に亜鉛のメインピークである2p3/2スペクトルを検出すべく1022±10eVで測定したところ、図3のように1022.0±10eV付近には光電子スペクトルらしきピークは得られなかった。図3、図4に示されていることから、トナーSの場合は、極性制御剤(安息香酸亜鉛)の亜鉛は外気接触面から最表面(30乃至50オングストローム)深さまでの領域には存在せず、さらに電子プローブ微小領域分析器により1乃至2ミクロンの深さまでには存在しないことが判る。
【0129】
一方、トナーSRについて、VGサイエンティフィック社製X線光電子分光器ESCALAB Mk−IIを用い、上記亜鉛の測定と同様に、ウレア基(−NHCONH−)に含まれる窒素のメインピークである1sスペクトルを測定したところ、図5のように400±1eV付近にハッキリした二つのピークを持つスペクトルを得た。
【0130】
これに対し、実施例1で得られた極性制御剤(安息香酸亜鉛)が打ち込まれたトナーについて、VGサイエンティフィック社製X線光電子分光器ESCALAB Mk−IIを用い、上記亜鉛の測定と同様に、トナー結着剤に含まれる親水性で極性制御剤(安息香酸亜鉛)を引き寄せる役目を果たすウレア基(−NHCONH−)に含まれる窒素のメインピークである1sスペクトルを測定した。その結果、図6のように400±1eV付近に形の崩れたピークを持つスペクトルを得た。
図5、図6に示されていることから、実施例1のトナー粒子においては極性制御剤(安息香酸亜鉛)がウレア基を取り囲むように打ち込まれ、トナーの最表面(30〜50Å)からウレア基が大きく減少していることが分かる。
【0131】
実施例2〜6、参考例で得られたトナーについて、実施例1と同様に、電子分光器ESCALAB Mk−IIを用いて原子比を測定した結果、更に地汚れについて測定した結果を、地汚れ指標、目視判定として表2に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
(地汚れの測定法)
まず、本トナー100重量部(体積平均流形7.5μm)に、疎水性シリカ0.7重量部をスーパーミキサーにて混合し、本トナー5wt%に対し、シリコーン樹脂をコーティングした平均粒径50μmのフェライトキャリア95w%を混合して現像剤を作成し、リコー製プリテール650で画像を出したサンプルの地肌部を評価対象とした。
【0134】
(地汚れ)
先述した市販カラー複写機(PRETER650:リコー製)で画像を出した白紙画像を現像中に停止させ、現像後の感光体上の現像剤をテープ転写し、未転写のテープの画像濃度との差を938スペクトロデンシトメーター(X−Rite社製)により測定した。また白紙画像のサンプルの地肌部を目視判定し、4段階で評価した。反射濃度計では検出出来ない地汚れでも目視で確認されたサンプルは△とした。
◎:地汚れ、未発生
○:地汚、注意しないと気がつかない程度に発生
△:地汚れ、若干発生
×:地汚れ、発生
【0135】
【発明の効果】
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂の主成分がポリエステル樹脂であると共に結着樹脂が親水性官能基を有しており、前記極性制御剤がトナー粒子表面に打ち込まれているので、地汚れのない、高品質のコピー画像を得ることができる。又、耐熱保存性に優れ、さらに低温定着性と耐ホットオフセット性のいずれにも優れる。又、カラートナーとした場合の光沢性に優れ、かつ耐ホットオフセット性が優れるため、定着ロールにオイル塗布をする必要がない。又、粉体流動性に優れ、現像性、転写性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】小粒径の球状トナーの表面に極性制御剤が打ち込まれたトナー粒子の説明図。
【図2】粉砕法で製造された小粒径のトナー粒子の説明図。
【図3】極性制御剤が打ち込まれる前におけるトナー粒子についての、BindingEnergy1014〜1032eVでのX線光電子分光のスペクトル図。
【図4】極性制御剤が打ち込まれた後におけるトナー粒子についての、BindingEnergy1014〜1032eVでのX線光電子分光のスペクトル図。
【図5】極性制御剤が打ち込まれる前におけるトナー粒子についての、BindingEnergy390〜408eVでのX線光電子分光のスペクトル図。
【図6】極性制御剤が打ち込まれた後におけるトナー粒子についての、BindingEnergy390〜408eVでのX線光電子分光のスペクトル図。
【図7】モノクローム光源を使用するX線光電子分光測定の概略図。
【図8】モノクローム光源を使用しないX線光電子分光測定の概略図。
【図9】X線光電子分光装置の冷却システムの説明図。
【符号の説明】
1 ワックス
2 着色剤
3 極性制御剤
4 結着剤
Claims (12)
- 少なくとも結着樹脂、ワックス、極性制御剤及び着色剤からなるトナーにおいて、前記結着樹脂の主成分がポリエステル樹脂であると共に結着樹脂が親水性官能基を有しており、前記極性制御剤がトナー粒子表面に打ち込まれたものであり、該極性制御剤を構成する主要元素がX線光電子分光の測定により検出されることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 該極性制御剤が、安息香酸金属塩、安息香酸誘導体の金属塩、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩のいずれかから選択されることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 該親水性官能基がウレア基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 該着色剤がカーボン・ブラックであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 結着樹脂内に着色剤とワックスを内包した状態の球形トナーを乾燥してから、乾燥したトナーを結着樹脂のガラス軟化点より高い温度に保って、ミキサーによる低速の予備混合を行い、次に高速の本混合を行って、極性制御剤をトナー粒子表面に打ち込むことにより、請求項1〜5のいずれかに記載のトナーを得ることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 該高速回転の本混合を3分間ごとの間欠動作により行うことを特徴とする請求項6に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 該ミキサーによる低速回転を2000回転/分以上で行い、高速回転を6000回転/分で3分毎ごとの間欠動作により行うことを特徴とする請求項7記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 該ミキサーによる低速回転を2000回転/分以上で3分間、6000回転/分の高速回転を10分以上連続して行うことを特徴とする請求項6に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 該極性制御剤を、トナー100重量部に対して1.7〜3.5重量部用いることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のX線光電子分光の測定において、液体窒素から蒸発するガスを試料台内に導入することにより、試料台を冷却しながら測定することを特徴とするX線光電子分光による測定法。
- 1×10−8ミリバール(1×10−6ヘクトパスカル)より高い真空度に保ちながら測定することを特徴とする請求項11に記載のX線光電子分光による測定法。
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